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特許7107448導電性ピラー及びその製造方法並びに接合構造の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】導電性ピラー及びその製造方法並びに接合構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20220720BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20220720BHJP
   G03F 7/42 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
H01L21/92 604Z
H01L21/92 603Z
H01L21/92 604N
H01L21/92 604S
H01L21/60 311Q
H01L21/92 602E
H01L21/92 604C
G03F7/40 521
G03F7/42
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021549079
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2020047075
(87)【国際公開番号】W WO2021145129
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2020005885
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020042068
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 亮太
(72)【発明者】
【氏名】矢田 真
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0061796(US,A1)
【文献】特開2016-115846(JP,A)
【文献】特開2015-122435(JP,A)
【文献】特開2010-109380(JP,A)
【文献】特開2014-143305(JP,A)
【文献】特開平08-222840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0076163(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60 -21/607
H01L 21/3205-21/3215
H01L 21/768
H01L 23/48 -23/538
H01L 25/00 -25/18
H05K 1/09 - 1/18
H05K 3/10 - 3/28
H05K 3/32 - 3/34
G03F 7/40 - 7/42
H01B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極パッドが形成された基材上に、前記電極パッド上に開口部を有するレジスト層を形成する工程と、
前記開口部を有するレジスト層が形成された前記基材上の表面にCuをスパッタ又は蒸着し、Cu薄膜を形成する工程と、
前記開口部に銅微粒子ペーストを充填する工程と、
前記銅微粒子ペーストが充填された基材を加熱し、前記銅微粒子ペーストを焼結させる工程と、
を、この順に備える導電性ピラーの製造方法。
【請求項2】
電極パッドと、前記電極パッド上のCu薄膜からなる第一の接合層と、前記第一の接合層上の銅微粒子の焼結体とを備える導電性ピラーの製造方法であって、
電極パッドが形成された基材上の表面にTiをスパッタ又は蒸着し3~600nm厚のTi薄膜を形成する工程と、前記Ti薄膜上にCuをスパッタ又は蒸着し3~3000nm厚のCu薄膜を形成する工程と、
前記Cu薄膜上に、前記電極パッド上に開口部を有するレジスト層を形成する工程と、
前記開口部に平均一次粒子径が10nm以上1μm未満の銅微粒子から構成される銅微粒子ペーストを充填する工程と、
酸素濃度200ppm以上の酸素含有雰囲気に暴露する工程と、
前記銅微粒子ペーストが充填された基材を加熱し、前記銅微粒子ペーストを焼結させる工程と、
を、この順に備える焼結体の上面全体を通して1つの凹型形状が形成された導電性ピラーの製造方法。
【請求項3】
前記銅微粒子ペーストを焼結させる工程の後、さらに前記基材上の最外層の表面に残った前記銅微粒子ペーストの残渣を除去する工程を備える、請求項1又は2に記載の導電性ピラーの製造方法。
【請求項4】
前記銅微粒子ペーストの残渣を除去する工程が、ウェットエッチングである、請求項3に記載の導電性ピラーの製造方法。
【請求項5】
前記銅微粒子ペーストを焼結させる工程の後、さらに前記レジスト層、及び、露出したCu薄膜を除去する工程を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性ピラーの製造方法。
【請求項6】
前記電極パッドが形成された基材と、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法により形成された導電性ピラーと、第二の接合層と、被接合部材とを、この順に接合する接合構造の製造方法。
【請求項7】
基材上に設けられた金属微粒子の焼結体で構成され、
前記焼結体の上面が、焼結体の上面全体を通して1つの凹型形状であり、
前記焼結体の側面が、Cu薄膜で覆われている導電性ピラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ピラー及びその製造方法並びに接合構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップと半導体基板とを電気的に接続する方法として、フリップチップ実装法が用いられている。フリップチップ実装法は、半導体チップ上に配置された電極パッド上にバンプを形成し、バンプを介して半導体チップと半導体基板とを対向配置し、加熱することによりバンプを溶融して接合する方法である。また、フリップチップ実装法では、半導体チップ上に配置された電極パッド上にシード層と呼ばれるメッキ下地層を介して導電性ピラーを形成し、その上にバンプを形成する場合がある。
【0003】
電極パッド上にメッキ下地層を介して形成される導電性ピラーとして、銅ピラーがある。銅ピラーは、従来、以下に示す方法により形成されている。電極パッドを有する半導体チップ上に、メッキ下地層とレジスト層とをこの順に形成する。次に、レジスト層の一部を除去して、電極パット上のメッキ下地層を露出させる。続いて、電気メッキ法を用いてメッキ下地層上に銅ピラーを形成する。その後、レジスト層を除去し、レジスト層の下に配置されていたメッキ下地層を、エッチングにより除去する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
電気メッキ法を用いずに、銅ペーストを原料にして銅ピラーを形成する方法も報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-135974号公報
【文献】米国特許第9859241号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電気メッキ法を用いて銅ピラーを形成する方法では、電気メッキ法を採用するための設備導入コストが大きいうえに、大量の廃液を再生又は処分する必要があり、環境負荷も大きかった。
また、電気メッキ法を用いずに銅ペーストを原料にして銅ピラーを形成する方法では、半導体チップ側の基材上の電極は、金属材料にアルミニウム又はアルミニウムを主体とする金属種を用いることが一般的である。アルミニウムは非常に酸化されやすく、瞬時に酸化膜が形成される。結果として、酸化膜が銅との接合を阻害するため、無加圧条件で銅ペーストを接合させることは難しい。半導体チップ上に銅ペーストを原料とする銅ピラーを形成し、その上に形成したバンプを介して半導体チップと半導体基板とを電気的に接続した場合、半導体チップと半導体基板との接合強度が十分に得られない場合があった。このため、バンプなどの接合層を介して半導体チップと半導体基板とを高い接合強度で接合できる導電性ピラーが求められていた。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、半導体チップ等の基材上に設けられ、前記基材と被接合部材とを接合層を介して高い接合強度で接合できる、導電性ピラー及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、本発明の導電性ピラーを有し、基材と被接合部材とを高い接合強度で接合できる接合構造の製造方法および電子機器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 電極パッドが形成された基材上に、前記電極パッド上に開口部を有するレジスト層を形成する工程と、
前記開口部を有するレジスト層が形成された前記基材上の表面にCuをスパッタ又は蒸着し、Cu薄膜を形成する工程と、
前記開口部に銅微粒子ペーストを充填する工程と、
前記銅微粒子ペーストが充填された基材を加熱し、前記銅微粒子ペーストを焼結させる工程と、
を、この順に備える導電性ピラーの製造方法。
[2] 電極パッドと、前記電極パッド上のCu薄膜からなる第一の接合層と、前記第一の接合層上の銅微粒子の焼結体とを備える導電性ピラーの製造方法であって、
電極パッドが形成された基材上の表面にCuをスパッタ又は蒸着し、Cu薄膜を形成する工程と、
前記Cu薄膜上に、前記電極パッド上に開口部を有するレジスト層を形成する工程と、
前記開口部に銅微粒子ペーストを充填する工程と、
前記銅微粒子ペーストが充填された基材を加熱し、前記銅微粒子ペーストを焼結させる工程と、
を、この順に備える導電性ピラーの製造方法。
[3] 前記銅微粒子ペーストを焼結させる工程の後、さらに前記基材上の最外層の表面に残った前記銅微粒子ペーストの残渣を除去する工程を備える、前記[1]又は[2]に記載の導電性ピラーの製造方法。
[4] 前記銅微粒子ペーストの残渣を除去する工程が、ウェットエッチングである、前記[3]に記載の導電性ピラーの製造方法。
[5] 前記銅微粒子ペーストを焼結させる工程の後、さらに前記レジスト層、及び、露出したCu薄膜を除去する工程を備える、前記[1]~[4]のいずれか1項に記載の導電性ピラーの製造方法。
[6] 前記電極パッドが形成された基材と、前記[1]~[5]のいずれか1項に記載の方法により形成された導電性ピラーと、第二の接合層と、被接合部材とを、この順に接合する接合構造の製造方法。
[7] 基材上に設けられた金属微粒子の焼結体で構成され、
前記焼結体の上面が、前記基材側に窪んだ凹型形状であり、
前記焼結体の側面が、Cu薄膜で覆われている導電性ピラー。
【発明の効果】
【0009】
本発明の導電性ピラーの製造方法により、電気メッキ法を用いずに、基材と被接合部材とを接合層を介して高い接合強度で接合できる導電性ピラーを製造できる。
【0010】
本発明の接合構造の製造方法により、電気メッキ法を用いずに、基材と被接合部材とを接合層を介して高い接合強度で接合できる接合構造を製造でき、また、前記接合構造を含む電子機器を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(A)~図1(D)は、本実施形態の導電性ピラーの製造方法の一例を説明するための工程図である。
図2図2は、本実施形態の導電性ピラーの製造方法で得られる導電性ピラーの一例を示した断面図である。
図3図3(A)~図1(D)は、本実施形態の導電性ピラーの製造方法の一例を説明するための工程図である。
図4図4は、本実施形態の導電性ピラーの製造方法で得られる導電性ピラーの一例を示した断面図である。
図5図5は、本実施形態の導電性ピラーの製造方法で得られる導電性ピラーの一例を示した断面図である。
図6図6(A)~図6(C)は、本実施形態の接合構造の製造方法の一例を説明するための工程図である。
図7図7(A)は、本実施形態の接合構造の製造方法で得られる接合構造の一例を示した断面図である。図7(B)は、本実施形態の接合構造の製造方法で得られる接合構造の他の一例を示した断面図である。
図8図8(A)~図8(C)は、本実施形態の接合構造の製造方法の一例を説明するための工程図である。
図9図9(A)は、本実施形態の接合構造の製造方法で得られる接合構造の一例を示した断面図である。図9(B)は、本実施形態の接合構造の製造方法で得られる接合構造の他の一例を示した断面図である。
図10図10は、銅微粒子の粒子径分布を示したグラフである。
図11図11は、実施例1の導電性ピラーの断面を撮影した顕微鏡写真である。
図12図12は、実施例1の導電性ピラーの上面を撮影した顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の導電性ピラー、接合構造、電子機器および導電性ピラーの製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。このため、各構成要素の寸法比率などは、実際とは異なっている場合がある。
【0013】
<<導電性ピラーの製造方法>>
図1及び図3は、導電性ピラーの製造方法の一例を説明するための工程図である。説明の便宜上、図1に記載した導電性ピラーの製造方法を実施形態1とし、図3に記載した導電性ピラーの製造方法を実施形態2とし、本発明に係る導電性ピラーの製造方法について以下詳細に説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1は、本実施形態の導電性ピラーの製造方法の一例を示した図である。
本実施形態の導電性ピラーの製造方法は、電極パッドと、前記電極パッド上のCu薄膜からなる第一の接合層と、前記第一の接合層上の銅微粒子の焼結体とを備える導電性ピラーの製造方法であって、
電極パッドが形成された基材上の表面にCuをスパッタ又は蒸着し、Cu薄膜を形成する工程(図1(A))と、
前記Cu薄膜上に、前記電極パッド上に開口部を有するレジスト層を形成する工程(図1(B))と、
前記開口部に銅微粒子ペーストを充填する工程(図1(C))と、
前記銅微粒子ペーストが充填された基材を加熱し、前記銅微粒子ペーストを焼結させる工程(図1(D))と、
を、この順に備える。
【0015】
(実施形態2)
図3は、本実施形態の導電性ピラーの製造方法の一例を示した側面図である。
本実施形態の導電性ピラーの製造方法は、電極パッドが形成された基材上に、前記電極パッド上に開口部を有するレジスト層を形成する工程(図3(A))と、
前記開口部を有するレジスト層が形成された前記基材上の表面にCuをスパッタ又は蒸着し、Cu薄膜を形成する工程と(図3(B))、
前記開口部に銅微粒子ペーストを充填する工程と(図3(C))、
前記銅微粒子ペーストが充填された基材を加熱し、前記銅微粒子ペーストを焼結させる工程と(図3(D))、
を、この順に備える。
【0016】
<Cu薄膜を形成する工程>
実施形態1におけるCu薄膜を形成する工程は、電極パッド13が形成された基材上の表面にCuをスパッタ又は蒸着し、Cu薄膜17を形成する(図1(A)参照)。本実施形態では、基材11上には、電極パッド13が形成されているので、図1(A)に示すように、基材11が露出した表面だけでなく、基材11上の電極パッド13の上の表面にもCu薄膜17が形成される。
【0017】
実施形態2におけるCu薄膜を形成する工程は、開口部16aを有するレジスト層16が形成された基材上の表面にCuをスパッタ又は蒸着し、Cu薄膜17を形成する(図3(B)参照)。本実施形態では、レジスト層16は電極パッド13上に開口部16aを有するので、図3(B)に示すように、レジスト層16の表面だけでなく、開口部16aによって露出した基材11上の電極パッド13の上の表面にもCu薄膜17が形成される。
レジスト層上部のCu薄膜17aの膜厚は、電極パッド上のCu薄膜17cの膜厚にほぼ等しい。レジスト層の開口部の側面のCu薄膜17bの膜厚は、レジスト層上部のCu薄膜17aの膜厚及び電極パッド上のCu薄膜17cの膜厚よりも薄い。しかし、レジスト層の開口部の側面のCu薄膜17bの膜厚は、スパッタ時に基材を傾斜させ、回転させた場合には、レジスト層上部のCu薄膜17aの膜厚及び電極パッド上のCu薄膜17cの膜厚とほぼ等しくすることができる。
【0018】
電極パッド13を有する基材11としては、特に限定されるものではなく、任意の電気回路が形成された半導体チップ、半導体ウエハ、インターポーザなどの半導体材料基材が挙げられる。基材11の材料としては、例えば、銅などの金属、セラミック、シリコン、樹脂、およびこれらの複合材料など、基材11に使用される公知の材料を用いることができる。また、電極パッド13の材料としては、Ti、Cu、Al、Auなどの金属または合金からなる導電材料を用いることができる。電極パッド13は、1種類の材料からなる単層構造のものであってもよいし、2種類以上の材料で形成された多層構造のものであってもよい。Cu薄膜との濡れ性、すなわち密着性が向上し、安定な導電性ピラーを形成できることから、Cu薄膜に接触する電極パッド13の最外層はチタンを含有する層であることが好ましい。例えば、Ti膜の単層構造、又は、チタン-タングステン合金/銅(TiW/Cu)、チタン/銅(Ti/Cu)若しくはチタン/銅/ニッケル金(Ti/Cu/NiAu)、チタン/窒化チタン/チタン(Ti/TiN/Ti)などの多層構造が挙げられる。
【0019】
Cu薄膜17は、市販のスパッタ装置を用いて、電極パッドが形成された基材上の表面又は開口部を有するレジスト層が形成された前記基材上の表面に、Cuをスパッタし、形成することができる。具体的には、真空中でAr等の不活性ガスを導入し、Cuターゲットにマイナスの電圧を印加してグロー放電を発生させ、不活性ガス原子をイオン化し、高速でターゲットの表面にガスイオンを衝突させて激しく叩き、CuターゲットのCu原子を激しく弾き出し、電極パッドが形成された基材上の表面又は開口部を有するレジスト層が形成された前記基材上の表面に、付着・堆積してCu薄膜を形成する。
【0020】
また、市販の真空蒸着装置を用いて、電極パッドが形成された基材上の表面又は開口部を有するレジスト層が形成された前記基材上の表面に、Cuを蒸着し、Cu薄膜を形成することができる。具体的には、Cuの蒸着材料を真空蒸着装置内部の発熱源(蒸着源)に載せて、真空中で熱を加えると、加熱されたCuの蒸着材料が気化・昇華し、真空蒸着装置内の真空中に飛散したCu原子は、電極パッドが形成された基材上の表面又は開口部を有するレジスト層が形成された前記基材上の表面に、付着(蒸着)してCu薄膜を形成する。
【0021】
Cu薄膜17の膜厚は、3~3000nmの範囲で容易に調整することができ、3~3000nmであることが好ましく、10~2000nmであることがより好ましく、50~1000nmであることが特に好ましい。
【0022】
Cu薄膜17は、単層構造のものであってもよいし、最外層にCu薄膜を形成することができれば、2種類以上の材料で形成された多層構造のものであってもよい。
【0023】
例えば、電極パッド13がアルミニウムなどの酸化されやすい金属からなる場合、電極パッド13の上に直接Cu薄膜を形成しようとすると、電極パッド13と導電性ピラー1との間の接合強度を容易に強くするためには、電極パッド13の上に酸化被膜が形成されないようにするか、または、酸化被膜を除去する必要がある。アルミニウム製の電極パッド13の上に直接Cu薄膜を形成するよりも、アルミニウム製の電極パッド13の上にTi薄膜を形成し、該Ti薄膜の上にCu薄膜を形成する方が、電極パッド13と導電性ピラー1との間の接合強度を容易に強くすることができる場合がある。
【0024】
Ti薄膜の形成は、Cu薄膜の形成におけるCuターゲットをTiターゲットに変更すること以外は、Cu薄膜の形成と同様に、Tiをスパッタ又は蒸着して、Cu薄膜を形成することができる。
【0025】
Ti薄膜の膜厚は、3~600nmの範囲で容易に調整することができ、3~600nmであることが好ましく、10~400nmであることがより好ましく、50~200nmであることが特に好ましい。
【0026】
電気メッキ法を用いてメッキ下地層上に銅ピラーを形成する従来の方法では、メッキ下地層としてのCu層に電位を印加しなければならず、かつ電流を流さなければならないので、Cu層に低電気抵抗の性質が要求される。そのため、従来は、レジスト層の下の基材の全面に厚膜のメッキ下地層が設けられていた。本実施形態の導電性ピラーの製造方法においては、Cu薄膜は電極パッドと銅ピラーとの間の第一の接合層として機能するものであり、電気メッキ法のように電流を流す必要がないので、Cu薄膜の膜厚を薄膜化することができる。Cu薄膜の膜厚を薄膜化できれば、Cu薄膜をエッチングにより除去するための時間を大幅に短縮することができ、またエッチング剤の使用量も削減できるという利点がある。特に、実施形態2の導電性ピラーの製造方法においては、開口部を有するレジスト層が形成された基材上の表面にCu薄膜を形成するので、銅微粒子ペーストを焼結させる工程の後、レジスト層を除去する工程において、従来の課題となっていたアンダーカットの発生を防ぐことができる。電極パッド13の材料として、例えば、Ti、Alなどの2種類以上の金属材料で形成された多層構造のものであっても、アンダーカットの発生を防ぐことができる。
【0027】
<レジスト層を形成する工程>
レジスト層は、レジスト層16をパターニングすることにより、レジスト層16の一部を除去して、電極パット13を露出させる円柱状の凹部からなる開口部16aを形成することができる(図1(B)、図3(A)参照)。レジスト層16のパターニング方法としては、公知の方法を用いることができる。開口部16aは、焼結体12を製造するための鋳型として機能する。
【0028】
図1(B)におけるレジスト層16は、Cu薄膜17上に、電極パッド13上に開口部16aを有する形状とすることができる。
【0029】
図3(A)におけるレジスト層16は、基材11上に、電極パッド13上に開口部16aを有する形状とすることができる。
【0030】
レジスト層16の材料としては、例えば、フォトレジスト (photo-resist)、ポリイミド、エポキシ、エポキシモールディングコンパウンド(epoxy-molding compound:EMC)など、各種ドライフィルムを用いることができる。
【0031】
開口部16aは、略円柱形状を有する。開口部16aが、略円柱形状を有するものであると、焼結体12と、第一の接合層及び後述する接合層(第二の接合層)との接合性が良好となり、基材11と、基材11と接合される被接合部材とがより高い接合強度で接合されるため、好ましい。
【0032】
開口部16aが略円柱形状のとき、開口部16aの大きさ及びこれにより形成できる導電性ピラー1の大きさは、当該円柱の底面の直径で表すことができ、電子機器の小型化に伴う接合構造の微細化に対応できるように、直径100μm以下であることが好ましく、更に好ましくは50μm以下であり、特に好ましくは30μm以下である。開口部16aの大きさ及び導電性ピラー1の大きさは、第一の接合層及び後述する第二の接合層との接合性および導電性がより一層良好なものとなるため、直径5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。当該円柱の底面の直径が、5~100μmであることが好ましく、10~50μmであることがより好ましく、20~30μmであることがさらに好ましい。
【0033】
開口部16aの平面形状は、略円形形状に限定されるものではなく、電極パッド13の平面形状などに応じて適宜決定できる。開口部16aの平面形状は、例えば、略矩形などの多角形状であってもよいし、略楕円形、略長円形などの形状であってもよい。この場合において、開口部16aの大きさ及びこれにより形成できる導電性ピラー1の大きさは、該平面形状の円相当径で表すことができ、好ましい当該円相当径は、前記円柱の底面の直径と同様である。これに伴い、焼結体12の平面形状を、例えば、略矩形などの多角形状や、略楕円形、略長円形などの形状に形成することができ、焼結体12の大きさを制御することができる。
【0034】
すなわち、開口部16aが柱形状のとき、開口部16aの大きさ及びこれにより形成できる導電性ピラー1の大きさは、当該柱形状の底面の円相当径で表すことができ、電子機器の小型化に伴う接合構造の微細化に対応できるように、当該円相当径が100μm以下であることが好ましく、更に好ましくは50μm以下であり、特に好ましくは30μm以下である。開口部16aの大きさ及び導電性ピラー1の大きさは、第一の接合層及び後述する第二の接合層との接合性および導電性がより一層良好なものとなるため、当該円相当径が5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。当該円相当径が、5~100μmであることが好ましく、10~50μmであることがより好ましく、20~30μmであることがさらに好ましい。
【0035】
<銅微粒子ペーストを充填する工程>
開口部16aに、銅微粒子ペースト12cを、スキージ12dを用いて充填することにより、電極パッド13を有する基材11上に、銅微粒子ペースト12cからなる柱状体が形成される(図1(C)、図3(C)参照)。
【0036】
銅微粒子ペースト12cを開口部16aに充填する際には、アルゴンガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気下または還元性ガス雰囲気下で行ってもよい。この場合、銅微粒子ペースト12cに含まれる銅微粒子が酸化されにくく、好ましい。
【0037】
銅微粒子ペースト12cの充填に使用するスキージ12dとしては、例えば、プラスチック、ウレタンゴムなどのゴム、セラミック、金属などからなるものを用いることができる。
銅微粒子ペースト12cを開口部16aに充填する方法としては、スキージ12dを用いる方法に限定されるものではなく、ドクターブレード、ディスペンサ、インクジェット、プレス注入、真空印刷、加圧による押込みなどの方法を用いてもよい。
次に、<銅微粒子ペーストを充填する工程>で用いることのできる、(銅微粒子ペースト)について説明する。
【0038】
(銅微粒子ペースト)
本実施形態において開口部16aに充填する銅微粒子ペースト12cとしては、平均一次粒子径1μm未満の銅微粒子を含むものを用いることが好ましい。銅微粒子ペースト12cとしては、例えば、平均一次粒子径1μm未満の銅微粒子と、溶媒と、必要に応じて含有される分散剤、保護剤およびその他の添加剤との混合物などを用いることができる。銅微粒子および分散剤は、銅微粒子ペースト12c中に、銅微粒子と分散剤との複合体として含有されていてもよい。また、銅微粒子および保護剤は、銅微粒子ペースト12c中に、銅微粒子と保護剤との複合体として含有されていてもよい。銅微粒子ペースト12cは、例えば、銅微粒子ペースト12cとなる材料を、公知の方法で混合することにより製造できる。以下、銅微粒子と分散剤との複合体、及び、銅微粒子と保護剤との複合体を、総称して、「銅微粒子複合体」という。
【0039】
銅微粒子の平均一次粒子径、及び、銅微粒子複合体の平均一次粒子径は、1μm未満が好ましく、500nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましい。銅微粒子の平均一次粒子径、及び、銅微粒子複合体の平均一次粒子径は、10nm以上1μm未満が好ましく、20nm以上500nm以下がより好ましく、30nm以上100nm以下がさらに好ましい。
【0040】
銅微粒子ペースト12cに含まれる銅微粒子の形状については、特に制限はない。例えば、銅微粒子として、球状、フレーク状などの銅微粒子を用いることができる。
【0041】
本実施形態において、導電性ピラー1の材料として使用される銅微粒子の平均一次粒子径は、焼結後の焼結体12(導電性ピラー1)を形成する銅微粒子のX線小角散乱測定法(以下、「SAXS」ということがある。)を用いて測定した平均粒子径が、所定の範囲内となるように、適宜決定される。例えば、SAXSを用いて測定した平均粒子径が1μm未満である銅微粒子の焼結体12からなる導電性ピラー1を製造する場合には、銅微粒子ペースト12cに含まれる銅微粒子の平均一次粒子径を1μm未満とする。SAXSを用いて測定した平均粒子径が100nm以下である銅微粒子の焼結体12からなる導電性ピラー1を製造する場合には、銅微粒子ペースト12cに含まれる銅微粒子の平均一次粒子径を100nm以下とする。
【0042】
本実施形態において、導電性ピラー1の材料として使用される銅微粒子の粒子径が1μm未満であるとは、銅微粒子の平均一次粒子径が1μm未満であることを意味する。
なお、銅微粒子ペースト12cに含まれる銅微粒子が、銅微粒子と分散剤との複合体および/または銅微粒子と保護剤との複合体として含有されている場合、複合体の平均一次粒子径を銅微粒子の平均一次粒子径とみなす。
【0043】
導電性ピラー1の材料として使用される銅微粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により算出できる。
本実施形態では、導電性ピラー1の材料として使用される銅微粒子の平均一次粒子径として、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影した写真の画像を解析することにより算出した値を用いる。
【0044】
具体的には、銅微粒子を、任意の濃度で溶媒に分散させた分散液を、カーボン膜被覆グリッド上にキャストし、乾燥させて溶媒を除去し、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察用試料とする。得られたTEM像の中から無作為に微粒子を200個抽出する。抽出した微粒子それぞれの面積を求め、真球に換算したときの粒子径を個数基準として算出した値を、平均一次粒子径として採用する。無作為に抽出される銅微粒子から、2個の粒子が重なったものは除外する。多数の粒子が、接触又は二次凝集して集合している場合には、集合を構成している銅微粒子はそれぞれ独立した粒子であるものとして取り扱う。例えば、5個の一次粒子が接触又は二次凝集して1つの集合を構成している場合、集合を構成する5個の粒子それぞれが銅微粒子の平均一次粒子径の算出対象となる。
【0045】
銅微粒子ペースト12cに含まれる溶媒としては、銅微粒子が均一に分散した銅微粒子ペースト12cが得られるように、銅微粒子ペースト12c中に含まれる銅微粒子(銅微粒子が、分散剤との複合体および/または保護剤との複合体である場合には複合体)を凝集させないものを用いることが好ましい。溶媒としては、水酸基を含む1種以上の溶媒を用いてもよいし、水酸基を含まない1種以上の溶媒を用いてもよいし、水酸基を含有する溶媒と水酸基を含有しない溶媒とを混合して用いてもよい。
【0046】
水酸基を含む溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、4-メチル-2-ペンタノール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、イソブチレングリコール、2,2-ジメチル-1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、2,5-ヘキサンジオール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
【0047】
水酸基を含まない溶媒としては、例えば、アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、アクリロニトリル、プロピオニトリル、n-ブチロニトリル、イソブチロニトリル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクト、プロピオラクトン、炭酸-2,3-ブチレン、炭酸エチレン、炭酸1,2-エチレン、炭酸ジメチル、炭酸エチレン、マロン酸ジメチル、乳酸エチル、安息香酸メチル、サリチル酸メチル、二酢酸エチレングリコール、ε-カプロラクタム、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-エチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ホルムアミド、ピロリジン、1-メチル-2-ピロリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ナフタレンなどが挙げられる。
【0048】
銅微粒子ペースト12cに含有される添加剤としては、例えば、シリコン素系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、消泡剤などが挙げられる。
【0049】
銅微粒子ペースト12cに含有される分散剤としては、例えば、チオエーテル型有機化合物などを用いることができる。分散剤として好適なチオエーテル型有機化合物としては、例えば、下記式(1)で示されるエチル3-(3-(メトキシ(ポリエトキシ)エトキシ)-2-ヒドロキシプロピルスルファニル)プロピオナート〔ポリエチレングリコールメチルグリシジルエーテル(ポリエチレングリコール鎖の分子量200~3000(炭素数8~136))への3-メルカプトプロピオン酸エチルの付加化合物〕などが挙げられる。
【0050】
【化1】
(式(1)中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。nは200~3000である。)
【0051】
式(1)で示される化合物は、ポリエチレングリコールメチルグリシジルエーテルへの3-メルカプトプロピオン酸エチルの付加化合物であり、ポリエチレングリコールメチルグリシジルエーテルにおけるポリエチレングリコール鎖の分子量が200~3000(炭素数8~136)のものである。式(1)で示される化合物として、具体的には、例えば、ポリエチレングリコール鎖が分子量200(炭素数8)、1000(炭素数46)、2000(炭素数91)、3000(炭素数136)であるものなどが挙げられる。
【0052】
ポリエチレングリコールメチルグリシジルエーテルにおけるポリエチレングリコール鎖の分子量が200以上であると、銅微粒子を溶媒に良好に分散させることができ、分散不良による凝集を抑制できる。また、分子量が3000以下であると、銅微粒子ペースト12cを焼結して形成される焼結体12中に、分散剤が残留しにくくなる。後述する第二の接合層となる材料に対する焼結体12の濡れ性が良好となり、第二の接合層となる材料が焼結体12の複数の溝部12a内に充填されやすく、アンカー部が形成されやすくなる。
【0053】
式(1)で示される化合物は、銅微粒子と複合体を形成する。式(1)で示される化合物と銅微粒子との複合体は、水、エチレングリコールなどの溶媒に容易に均一に分散する。したがって、式(1)で示される化合物と銅微粒子との複合体を用いることで、容易に銅微粒子が均一に分散した銅微粒子ペースト12cが得られる。銅微粒子が均一に分散した銅微粒子ペースト12cを用いることにより、銅微粒子が均一に配置された特性の安定した導電性ピラー1が得られる。
【0054】
銅微粒子と分散剤との複合体は、例えば、銅微粒子と分散剤とを混合して反応させる方法により製造できる。銅微粒子と分散剤との複合体としては、例えば、以下に示す方法により製造した複合体〔1〕および複合体〔2〕などが挙げられる。複合体〔1〕および複合体〔2〕は必要に応じて精製してから銅微粒子ペースト12cの材料として用いてもよい。
【0055】
(複合体〔1〕の製造)
酢酸銅(II)一水和物と、分散剤としての式(1)で示される化合物と、エチレングリコールとからなる混合物に、窒素を吹き込みながら加熱し、攪拌し、脱気してから室温に戻す。次いで、室温に戻した混合物に、ヒドラジン水和物を水で希釈したヒドラジン溶液を滴下して、銅を還元する。
以上の工程により、銅からなる銅微粒子と、式(1)で示される化合物からなる分散剤との複合体〔1〕が得られる。
【0056】
(複合体〔2〕の製造)
硝酸銅と、保護剤としてのオクチルアミンおよびリノール酸とを、トリメチルペンタンに混合攪拌して溶解し、混合溶液とする。その後、この混合溶液に、水素化ホウ素ナトリウムを含むプロパノール溶液を滴下して銅を還元する。
以上の工程により、黒色の固体からなり、銅からなる銅微粒子と、有機物からなる保護剤との複合体〔2〕が得られる。
【0057】
本実施形態においては、銅微粒子ペースト12cを、開口部16aに充填して柱状体を形成した後、柱状体を焼結して焼結体12を形成する前に、柱状体の少なくとも表面(図1(C)、図3(C)においては上面)を酸素濃度200ppm以上の酸素含有雰囲気に暴露する工程を行うことが好ましい。このことにより、柱状体の表面を形成している銅微粒子ペースト12cに含まれる銅微粒子が酸化される。
【0058】
柱状体の少なくとも表面を暴露する酸素含有雰囲気における酸素濃度は、200ppm以上であることが好ましく、1000ppm以上であることがより好ましい。酸素含有雰囲気中の酸素濃度が200ppm以上であると、柱状体の表面を形成している銅微粒子ペースト12cに含まれる銅微粒子の酸化が促進されるため、柱状体の少なくとも表面を酸素含有雰囲気に暴露する時間が短時間で済み、好ましい。
柱状体の少なくとも表面を暴露する酸素含有雰囲気における酸素濃度は、30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、大気中の酸素濃度(20.1%)以下であることがさらに好ましい。酸素含有雰囲気中の酸素濃度が30%以下であると、柱状体を形成している銅微粒子ペースト12cに含まれる銅微粒子が、過剰に酸化されることを防止できる。
【0059】
柱状体の少なくとも表面を酸素濃度200ppm以上の酸素含有雰囲気に暴露する暴露時間は、暴露する温度、銅微粒子ペースト12cに含まれる銅微粒子の種類などに応じて適宜決定できる。暴露時間は特に限定されないが、例えば、温度25℃の環境下で酸素濃度200ppm以上の酸素含有雰囲気に暴露する場合、1分~180分の範囲であることが好ましく、3分~60分の範囲であることがより好ましい。暴露時間が1分以上であると、柱状体の表面を形成している銅微粒子ペースト12cに含まれる銅微粒子が十分に酸化される。その結果、柱状体を焼結することによって、十分な深さおよび数を有する複数の溝部12aが形成され、好ましい。また、暴露時間が180分以下であると、柱状体の表面を形成している銅微粒子ペースト12cに含まれる銅微粒子が過剰に酸化されることを防止できる。
【0060】
柱状体を焼結して焼結体12を形成する前に、柱状体に含まれる銅微粒子が過剰に酸化されると、焼結後に得られる焼結体12の導電性が不十分になる恐れがある。柱状体に含まれる銅微粒子が過剰に酸化された場合には、焼結体12を形成した後に、必要に応じて従来公知の方法により焼結体12を還元すればよい。
酸素濃度200ppm以上の酸素含有雰囲気としては、例えば、大気が挙げられる。
【0061】
<銅微粒子ペーストを焼結させる工程>
銅微粒子ペースト12cからなる柱状体を焼結することで、基材11上に、上面12bに基材11側に窪んだ凹型形状を有する焼結体12を形成することができる(図1(D)、図3(D)参照)。
焼結体12の凹型形状は、銅微粒子ペースト12cからなる柱状体が焼結されることによって、レジスト層16の開口部16aの形状の柱状体(銅微粒子ペースト12c)が、開口部16aの内面と密着した状態を維持しつつ、柱状体に含まれる銅微粒子同士が融着して柱状体よりも体積が減少したことにより形成されるものと推定される。
【0062】
図1(D)においては、柱状体(銅微粒子ペースト12c)が、レジスト層16の開口部16aの内面と強固に密着した状態を維持しており、焼結させる前後で開口部16aの底のCu薄膜17と密着した部分は、基材の面に平行な方向には収縮が阻害されるので、焼結体の平面形状は柱状体の平面形状から変化しない。
【0063】
図3(D)においては、柱状体(銅微粒子ペースト12c)及びその側面を覆うCu薄膜が、レジスト層16の開口部16aの内面と強固に密着した状態を維持しており、焼結させる前後で開口部16aに露出した基材の面に平行な方向には収縮が阻害されるので、焼結体の平面形状は柱状体の平面形状から変化しない。
【0064】
いずれの実施形態においても、当該銅微粒子ペーストを焼結させる工程を経て得られる導電性ピラーは寸法安定性に優れる。銅微粒子の焼結体12が、電極パッド13上の、Cu薄膜からなる第一の接合層17cの上に直接形成されるので、第一の接合層17cと焼結体12との間が強固に結合できる。導電性ピラー1において、Cu薄膜17からなる第一の接合層17cと焼結体12との間が強固に結合しているので、導電性ピラー1の強度向上に質するものと推定される。導電性ピラー1は、基材11上の電極パッド13と、電極パッド13上のCu薄膜(第一の接合層17c)と、第一の接合層17c上の焼結体12とで構成されている。焼結体12は多孔質構造を有しているので、Cu薄膜17とは区別可能である。また、焼結体12は多孔質構造であるため、導電性ピラーにおいて応力緩和層としての役割を果たし、接合強度の向上に寄与すると考えられる。
【0065】
焼結体12を形成する工程の前に、柱状体の少なくとも露出した表面(図1(C)及び図3(C)においては上面)を酸素濃度200ppm以上の酸素含有雰囲気に暴露する工程を行った場合、柱状体を焼結することにより、焼結体12の上面12bには、図1(D)及び図3(D)に示すように、上面12bから基材11に向かって延出する複数の溝部12aが形成される。これは、焼結体12となる柱状体の表面を形成している銅微粒子ペースト12cに含まれる銅微粒子が、酸化されていることによるものと推定される。
【0066】
従来の技術では、銅微粒子などの金属微粒子を含むペーストを基材上に塗布して焼結し、焼結体からなる配線などを形成する場合、金属微粒子を含むペーストを基材上に塗布する工程から焼結が完了するまでの一連の工程を不活性ガス雰囲気中で行っている。これは、金属微粒子を含むペースト中に含まれる銅微粒子などの金属微粒子が酸化される(例えば、特許第6168837号公報、特許第6316683号公報参照。)こと防ぐためである。したがって、従来の技術では、金属微粒子を含むペーストを基材上に塗布する工程から焼結が完了するまでの一連の工程の途中で雰囲気を変更することはなく、基材上に塗布された金属微粒子を含むペーストが、焼結される前に酸素を含む雰囲気に暴露されることはなく、焼結体の上面に溝部が形成されることはなかった。
【0067】
必要に応じて、銅微粒子ペーストを焼結させる工程の前に、レジスト層の上部に残った銅微粒子ペースト12cを取り除く工程、または、レジスト層上部のCu薄膜17aの上に残った銅微粒子ペースト12cを取り除く工程を追加して行ってもよい。
銅微粒子ペースト12cを取り除く工程としては、布で拭き取る方法でもよいが、レジスト層上部の銅微粒子ペースト12cを全て取り除くには、洗浄液で洗い流すエッチング方法を採用することが好ましい。
【0068】
ただし、後述するように、実施形態2においては、銅微粒子ペーストを焼結させる工程の後に、基材上の最外層の表面に残った前記銅微粒子ペーストの残渣を除去する工程において、図3(D)に示すレジスト層上部のCu薄膜17aを、図2に示すように、同時に除去できるので、銅微粒子ペーストを焼結させる工程の前に、レジスト層上部のCu薄膜17aに残った銅微粒子ペースト12cを取り除く工程は省略することができ、工程数及び製造費用を削減できる利点がある。
【0069】
本実施形態においては、必要に応じて、柱状体を焼成する前に、柱状体に含まれる溶媒を低温で揮発させる仮焼成を行ってもよい。
柱状体を焼成する焼成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、真空はんだリフロー装置、ホットプレート、熱風オーブンなどを用いることができる。
【0070】
銅微粒子ペーストが充填された基材を加熱する温度及び時間は、柱状体(銅微粒子ペースト12c)に含まれる銅微粒子同士が融着して、十分な導電性および強度を有する焼結体12が得られる範囲であればよい。銅微粒子ペーストが充填された基材を加熱する温度は、150~350℃であることが好ましく、200~250℃であることがより好ましい。加熱時間は、1~60分間の範囲であることが好ましく、5~15分間の範囲であることがより好ましい。
【0071】
銅微粒子が融着する温度は、熱重量分析装置(TG-DTA)または示差走査熱量計(DSC)を用いて測定できる。
【0072】
焼結する際の雰囲気は特に限定されるものではないが、銅粒子の酸化を防止する観点から、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で焼成することが好ましく、還元性のガスを用いてもよい。
以上の工程により、電極パッドと、前記電極パッド上のCu薄膜からなる第一の接合層と、前記第一の接合層上の銅微粒子の焼結体とを備える導電性ピラー1が得られる。
以下に、本実施形態の導電性ピラーの製造方法によって得られる導電性ピラー1について説明する。
【0073】
(導電性ピラー)
導電性ピラー1の製造方法では、SAXSを用いて測定した平均粒子径が1μm未満である銅微粒子の焼結体12を製造するために、平均一次粒子径1μm未満の銅微粒子ペースト12cを用いる。銅微粒子の平均一次粒子径が1μm未満である銅微粒子ペースト12cは、開口部16aに充填する際の充填性が良好である。したがって、開口部16aに充填した銅微粒子ペースト12c(柱状体)を焼結して形成された焼結体12からなる導電性ピラー1は、銅微粒子を高密度で含む導電性の良好なものとなる。また、銅微粒子ペースト12cが良好な充填性を有するため、接合構造の微細化に対応できる微細な導電性ピラー1を形成できる。しかも、銅微粒子ペースト12cが良好な充填性を有するため、銅微粒子ペースト12c(柱状体)を焼結して形成された焼結体12は、電極パッド13上のCu薄膜17(第一の接合層17c)および後述する第二の接合層との接合性および電気的接続が良好となる。
【0074】
また、導電性ピラー1が、SAXSを用いて測定した平均粒子径が100nm以下の銅微粒子の焼結体12である場合、銅微粒子ペースト12cとして、平均一次粒子径が100nm以下の銅微粒子を含むものを用いる。この銅微粒子ペースト12cは、開口部16aに充填する際の充填性がより一層良好であり、より好ましい。
具体的には、銅微粒子ペースト12cに含まれる銅微粒子の平均一次粒子径が100nm以下である場合、例えば、開口部16aが直径100μmの円柱形状を有する微細なものであっても、導電ペースト12cを開口部16a内に高密度で充填できる。
【0075】
導電性ピラー1の、SAXSを用いて測定した平均粒子径は、1μm未満が好ましく、500nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましい。導電性ピラー1の、SAXSを用いて測定した平均粒子径は、10nm以上1μm未満が好ましく、20nm以上500nm以下がより好ましく、30nm以上100nm以下がさらに好ましい。
【0076】
これに対し、例えば、SAXSを用いて測定した平均粒子径が1μm以上である銅微粒子の焼結体を製造するために、平均一次粒子径が1μm以上の銅微粒子ペーストを用いる場合、銅微粒子ペーストの開口部への充填性が不十分となる。したがって、微細な導電性ピラーの製造が困難となり、接合構造の微細化に対応しにくい。
【0077】
また、導電性ピラー1の製造方法では、銅微粒子ペースト12cに含まれる銅微粒子の平均一次粒子径が1μm未満であるので、銅微粒子ペースト12c(柱状体)を焼結することによって得られる銅微粒子同士の融着機能により、導電性ピラー1の形状を形成できる。
【0078】
導電性ピラーの製造方法において、導電性ピラー1となる焼結体12は、電極パッド13を有する基材11上の電極パッド13の上にCu薄膜(すなわち、第一の接合層17c)を介して設けられる(図1(D)、図3(D)参照)。電極パッド13は、アルミニウム製であることが多い。アルミニウム製の電極パッド13の表面に酸化被膜が形成されると、電極パッド13と焼結体12との間の接合強度(シェア強度)が損なわれるおそれがあるが、本実施形態の導電性ピラー1の製造方法では、電極パッド13の上の表面にCu薄膜(すなわち、第一の接合層17c)を形成するので、電極パッド13の表面に酸化被膜が形成されることを防ぐことができ、結果、アルミニウム製の電極パッド13と焼結体12からなる導電性ピラー1との間を高い接合強度(シェア強度)で接合できる。
【0079】
開口部16aが、略円柱形状を有することにより、焼結体12は、略円柱状の外形形状を有する。焼結体12が、略円柱状の外形形状を有するものであると、後述する第二の接合層との接合性が良好となり、基材11と、基材11と接合される被接合部材とがより高い接合強度で接合されるため、好ましい。
略円柱状の焼結体12の大きさは、電子機器の小型化に伴う接合構造の微細化に対応できるように、直径200μm以下であることが好ましく、更に好ましくは100μm以下であり、特に好ましくは50μm以下である。焼結体12の大きさは、後述する第二の接合層との接合性および導電性がより一層良好なものとなるため、直径5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。略円柱状の焼結体12の上面及び底面の直径は、5~200μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましく、20~50μmであることがさらに好ましい。
【0080】
焼結体12の平面形状は、略円形形状に限定されるものではなく、電極パッド13の平面形状などに応じて適宜決定できる。焼結体12の平面形状は、例えば、略矩形などの多角形状であってもよいし、略楕円形、略長円形などの形状であってもよい。
【0081】
焼結体12の上面12bは、基材11側に窪んだ凹型形状を有している(図1(D)、図3(D)参照)。凹部形状は、略半球型の形状を有することが好ましい。この場合、焼結体12の上面12bと、後述する第二の接合層との接触面積が広いものとなり、導電性ピラーの側面からずり応力をかけたときに第二の接合層との界面での破断が生じにくく、焼結体12と第二の接合層との接合性がより一層良好となる。その結果、基材11と、被接合部材とがより高い接合強度で接合されるため、好ましい。
【0082】
焼結体12の上面12bは、上面12bから基材11に向かって延出する複数の溝部12aが形成されていることが好ましい(図1(D)、図3(D)参照)。焼結体12が、複数の溝部12aを有している場合、後述する接合層となる材料が溶融して溝部12a内に入り込み、その後に硬化することにより、アンカー部が形成される。その結果、焼結体12と接合層との接合性がより一層良好となり、基材11と、基材11と接合される被接合部材とがより高い接合強度で接合されるため、好ましい。
【0083】
焼結体12は、平均粒子径が1μm未満の銅微粒子の焼結体からなり、銅微粒子が焼結により融着した多孔質構造を有する。
焼結体12を形成している銅微粒子の平均粒子径として、X線小角散乱測定法(Small-Angle X-ray Scattering、SAXS)を用いて測定した測定値を用いる。
【0084】
導電性ピラー1は、平均粒子径1μm未満の銅微粒子の焼結体12であるので、高密度で銅微粒子を含む導電性の良好なものとなる。また、導電性ピラー1が平均粒子径1μm未満の銅微粒子の焼結体12であると、例えば、焼結体12が略円柱状であって、直径が接合構造の微細化に対応できる100μm以下の小さいものであっても、十分な数の銅微粒子を高密度で含むことにより、十分な導電性を有するものとなる。したがって、本実施形態の導電性ピラー1は、接合構造の微細化に対応できる。
【0085】
また、導電性ピラー1が平均粒子径1μm未満の銅微粒子の焼結体12であるので、平均粒子径1μm以上の銅微粒子の焼結体である場合と比較して、焼結体12の表面に露出する銅微粒子の表面積が広くなる。このため、焼結体12と、電極パッド13および後述する第二の接合層との接合性および電気的接続が良好となる。
さらに、導電性ピラー1が平均粒子径1μm未満の銅微粒子の焼結体12であるため、焼結によって得られる銅微粒子同士の融着機能により、導電性ピラー1の形状を形成できる。
【0086】
これに対し、銅微粒子の平均粒子径が1μm以上である場合、焼結することによる銅微粒子同士の融着機能を用いて、導電性ピラーの形状を形成することは難しい。したがって、銅微粒子の平均粒子径が1μm以上である場合、導電性ピラー中に、銅微粒子同士を接合するためのパインダー樹脂を含有させる必要がある。よって、銅微粒子の平均粒子径が1μm以上である場合、本実施形態の導電性ピラー1と比較して、耐熱性能が劣るものとなる。
【0087】
導電性ピラー1は、SAXSを用いて測定した平均粒子径が100nm以下である銅微粒子の焼結体12であることがより好ましい。銅微粒子の平均粒子径が100nm以下であると、より高密度で銅微粒子を含み、表面に露出する銅微粒子の表面積がより広い焼結体12からなる導電性ピラー1となり、好ましい。
【0088】
銅微粒子として用いられる金属種としては、Cu一種類のみであってもよいし、Cu以外の金属元素を一種類以上混合した混合物であってもよいし、Cu以外の金属元素を一種類以上含む合金であっても良い。
【0089】
本実施形態の導電性ピラー1の製造方法は、基材11上に、平均一次粒子径1μm未満の銅微粒子を用いて柱状体を形成する工程と、前記柱状体を焼結して、上面12bに基材11側に窪んだ凹型形状を有する焼結体12を形成する工程とを有する。したがって、本実施形態の導電性ピラー1の製造方法によれば、電気メッキ法を用いずに、導電性ピラー1を製造できる。
【0090】
これに対し、例えば、電気メッキ法を用いて基材上に銅ピラーを形成する場合、銅ピラーを形成した後、レジスト層の下に配置されていたメッキ下地層をエッチング除去する際に、メッキ下地層とともに基材の一部が除去されてしまうことがあった。また、電気メッキ法を用いて銅ピラーを形成する場合、銅ピラーの形成に必要な設備を導入するコストが大きく、有害廃液による環境負荷も大きかった。
【0091】
<残渣を除去する工程>
前記銅微粒子ペーストを焼結させる工程の後、さらに基材上の最外層の表面に残った前記銅微粒子ペーストの残渣を除去する工程を備えることが好ましい。前記銅微粒子ペーストを焼結させる工程では、レジスト層の表面に前記銅微粒子ペーストの残渣が残ってしまうことがある。そのまま、図1(D)又は図3(D)に示す焼結体12の基材11側に窪んだ凹型形状に、後述する第二の接合層22となる材料22aを供給すると、レジスト層16の上部と、第二の接合層22となる材料22aとの表面エネルギー差が小さいので、レジスト層16の上部を含む全体に第二の接合層22となる材料22aが乗ってしまい、図6又は8(A)に示すように、第二の接合層22を凸形状に形成することが難しくなる。前記銅微粒子ペーストを焼結させる工程の後、さらにレジスト層の表面に残った前記銅微粒子ペーストの残渣を除去する工程を備えることで、レジスト層16と、第二の接合層22となる材料22aとの表面エネルギー差が大きいことにより、図6(A)又は図8(A)に示すように、第二の接合層22は、凸曲面状に盛り上がった形状を有するものとなる。
【0092】
レジスト層の表面に残った前記銅微粒子ペーストの残渣を除去する方法としては、例えば、化学機械研磨(CMP)等の物理的方法や、液体に溶解する成分を溶解させるウェットエッチング、反応性の気体(エッチングガス)やイオン、ラジカルによって材料をエッチングするドライエッチング等の化学的方法が適用できる。なかでも、酸またはアルカリに接触させて酸またはアルカリに溶解する成分を溶解させるウェットエッチングが好ましく、銅エッチング液として、公知公用の物質を用いることができる。例えば、過酸化水素、硫酸、アゾール類、及び臭素イオンを含有するエッチング液(特開2006-13340号公報)、硫酸、過酸化水素、及びベンゾトリアゾール誘導体を含むことを特徴とするエッチング剤(特開2009-149971号公報)、過酸化水素、及び硫酸を主成分としてアゾール類を添加剤として含むことを特徴とするエッチング液(特開2006-9122号公報)、過酸化水素、硫酸、アミノテトラゾール、及びフェニル尿素を含有するエッチング液(特開2000-297387号公報)、過酸化水素、鉱酸、アゾール類、銀イオン、及びハロゲンを含有するエッチング液(特開2003-3283号公報)、過酸化水素、硫酸、ベンゾトリアゾール類、及び塩化物イオンを含有するエッチング液(特開2005-213526号公報))、過酸化水素、硫酸、フェニル尿素、ハロゲンイオン、及びテトラゾール類を含有するエッチング液(特開2015-120970号公報)等を用いることができる。
【0093】
実施形態2においては、基材上の最外層の表面に残った前記銅微粒子ペーストの残渣を除去する工程において、ペーストと図3(D)に示すレジスト層上部のCu薄膜17a、図4に示すように、同時に除去できるメリットがある。銅微粒子ペーストの残渣を除去しても、焼結体の側面のCu薄膜17b及び電極パッド上のCu薄膜17cはレジスト層16に埋められているので残る。
【0094】
例えば実施形態1に示すように、レジスト層下部にCu薄膜17dが形成されている場合、基材上の最外層の表面に残った銅微粒子ペーストの残渣を除去する工程において、Cu薄膜17dを同時に除去することができないために、レジスト層上部の上に残った銅微粒子ペースト12cを取り除く工程と、レジスト層下部のCu薄膜17dを取り除く工程の両方が必要になる。
ところが、レジスト層上部にCu薄膜17aを有する実施形態2に係る導電性ピラー1の製造方法は、銅微粒子ペーストを焼結させる工程の後、基材上のレジスト層の表面を含む最外層の表面に残った銅微粒子ペーストの残渣を除去する工程において、レジスト層上部のCu薄膜17aを、同時に除去できるので、銅微粒子ペーストを焼結させる工程の前に、レジスト層上部の上に残った銅微粒子ペースト12cを取り除く工程を省略することができるメリットがある。
【0095】
<レジスト層、及び、露出したCu薄膜を除去する工程>
実施形態1に係る導電性ピラーの製造方法においては、銅微粒子ペーストを焼結させる工程の後、図2に示すように、さらに前記レジスト層を除去し、次に、露出したCu薄膜を除去する工程を備えることができる。
初めに、図1(D)に示される基材11の上にレジスト層16の下のCu薄膜17dを介して設けられているレジスト層16を除去して、レジスト層16の下のCu薄膜17dを露出させる。レジスト層16を除去する方法としては、公知の方法を用いることができる。
次に、露出したCu薄膜17dを除去して、図3に示すように、基材11を露出させる。露出したCu薄膜17dの除去方法としては、前記銅微粒子ペーストの残渣を除去する方法として説明したと同じ方法が挙げられる。
これにより、基材11上の電極パッド13の上に、Cu薄膜17からなる第一の接合層17cを介して設けられた銅微粒子の焼結体12で構成された導電性ピラー1が得られる。焼結体12の上面は、基材11側に窪んだ凹型形状である。
【0096】
従来、レジスト層の下に銅メッキ下地層を形成し、電気メッキ法で銅ピラーを形成する場合、レジスト層の下のCuメッキ下地層に電位を印加して、均一な電流を流す必要があるので、銅メッキ下地層は厚くする必要があった。また、Cuメッキ下地層及び銅ピラーは同じ銅で形成されるので、レジスト層の下の銅メッキ下地層をエッチングする際、銅ピラーもエッチングされ、細くなってしまうおそれがあった。
実施形態1では、電気メッキ法で銅ピラーを形成する場合と異なり、レジスト層の下のメッキ下地層に電位を印加する必要がなく、均一な電流を流す必要もないので、レジスト層の下のCu薄膜を薄くすることができる。Cu薄膜及び導電性ピラーは同じ銅で形成されるので、導電性ピラーがエッチングにより細くなるおそれがある。しかし、本実施形態においては、レジスト層の下のCu薄膜を薄くすることができるので、Cu薄膜を除去する際に、導電性ピラーがエッチングによって細くなるおそれが少ない。また、Cu薄膜及び導電性ピラーは、同様にエッチングされるので、アンダーカットは生じない。
なお、銅メッキ下地層の下にTi薄膜を形成した場合、レジスト層の除去の後、露出したTi薄膜のエッチングの際、銅ピラーの下のTi薄膜もエッチングされてしまい、結果、アンダーカットが生じてしまう。
実施形態1では、Cu薄膜の下にTi薄膜を形成した場合であっても、従来の、レジスト層の下に銅メッキ下地層を形成し、電気メッキ法で銅ピラーを形成する場合よりもCu薄膜及びTi薄膜を薄くすることができるので、導電性ピラーの根元にアンダーカットが生じるおそれが少ない。
【0097】
ここで得られる導電性ピラー1において、銅微粒子の焼結体12は、電極パッド13上の、Cu薄膜からなる第一の接合層17cの上に直接形成されるので、第一の接合層17cと焼結体12との間が強固に結合できる。また、導電性ピラー1は、根元にアンダーカットが生じるおそれが少ないので、微細な形状の導電性ピラーを安定性良く形成することができる。また、基材11と被接合部材とを第二の接合層22を介して高い接合強度で接合できることが期待できる。
【0098】
<レジスト層を除去する工程>
実施形態2に係る導電性ピラーの製造方法においては、銅微粒子ペーストを焼結させる工程の後、図5に示すように、さらに前記レジスト層を除去する工程を備えることができる。実施形態2では、図4.0cmに示される基材11の上に直接設けられているレジスト層16を除去して、図5に示すように、基材11を露出させる。これにより、基材11上に電極パッド13を介して設けられた金属微粒子の焼結体12で構成され、焼結体12の上面が、基材11側に窪んだ凹型形状であり、焼結体12の側面がCu薄膜17bで覆われている導電性ピラー1が得られる。
電気メッキ法で銅ピラーを形成する場合の様に、レジスト層の下にメッキ下地層が配置されていないので、本実施形態のレジスト層を除去する工程においては、メッキ下地層をエッチング除去する必要がなく、導電性ピラー1の根元にはアンダーカットが生じるおそれがない。また、焼結体の側面のCu薄膜17bを残してレジスト層16を除去することができる。
【0099】
図5に示すレジスト層16を除去する場合を例に挙げて説明したが、図3(D)に示すレジスト層16の表面にCu薄膜17が形成している状態から、直接、レジスト層16を除去してもよい。レジスト層16を除去する方法としては、公知の方法を用いることができる。
ここで得られる導電性ピラー1は、アンダーカットがなく、また、焼結体12の側面がCu薄膜17bで覆われているので、基材11と被接合部材とを接合層を介して高い接合強度で接合できる。また、微細な形状の導電性ピラーを安定性良く形成することができることが期待できる。
【0100】
<<接合構造の製造方法>>
図6及び図8は、接合構造の製造方法の一例を説明するための工程図である。図6(C)及び図8(C)に記載した接合構造の製造方法について、以下詳細に説明する。説明の便宜上、図6に記載した接合構造の製造方法を実施形態3とし、図8に記載した接合構造の製造方法を実施形態4とした。
【0101】
(実施形態3)
本実施形態の接合構造の製造方法として、図1(D)に示す導電性ピラー1を用いて接合構造を製造する場合を例に挙げて詳細に説明する。
図6(A)~図6(C)は、実施形態3の接合構造の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【0102】
図6(C)に示す接合構造20を製造するには、図6(A)に示すように、図1(D)に示す焼結体12の上部の基材11側に窪んだ凹型形状部に、第二の接合層22となる材料22aを供給して溶融(リフロー)させて固化させる。このことにより、焼結体12の凹部形状に沿って第二の接合層22からなるバンプを設ける。得られた第二の接合層22は、図6(A)に示すように、レジスト層16と、第二の接合層22となる材料22aとの表面エネルギー差が大きいことにより、凸曲面状に盛り上がった形状を有するものとなる。
【0103】
図6(A)に示すように、焼結体12の上面12bに、上面12bから基材11に向かって延出する複数の溝部12aが形成されている。したがって、第二の接合層22となる材料22aを溶融(リフロー)することにより、第二の接合層22となる材料22aが溝部12a内に入り込み、溝部12a内に充填されてアンカー部が形成される。また、焼結体12の多孔質構造にも、第二の接合層22となる溶融した材料22aが入り込んで固化する。
【0104】
また、焼結体12の凹型形状に供給された第二の接合層22となる材料22aは、焼結体12中の銅微粒子と金属間化合物層25を形成する。焼結体12は、多孔質構造であるため、比表面積が大きい。このため、本実施形態では、例えば、導電性ピラーが電気メッキ法などを用いて形成された緻密なバルク金属からなるものである場合と比較して、素早く金属間化合物層25が形成される。
【0105】
(実施形態4)
本実施形態の接合構造の製造方法として、図4に示す導電性ピラー1を用いて接合構造を製造する場合を例に挙げて詳細に説明する。
図8(A)~図8(C)は、本実施形態の接合構造の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【0106】
図8(C)に示す接合構造20を製造するには、図8(A)に示すように、図4に示す焼結体12の基材11側に窪んだ凹型形状に、接合層22となる材料22aを供給して溶融(リフロー)させて固化させる。このことにより、焼結体12の凹部形状に沿って接合層22からなるバンプを設ける。得られた接合層22は、図8(A)に示すように、レジスト層16と、接合層22となる材料22aとの表面エネルギー差が大きいことにより、凸曲面状に盛り上がった形状を有するものとなる。
【0107】
図8(A)に示すように、焼結体12の上面12bに、上面12bから基材11に向かって延出する複数の溝部12aが形成されている。したがって、接合層22となる材料22aを溶融(リフロー)することにより、接合層22となる材料22aが溝部12a内に入り込み、溝部12a内に充填されてアンカー部が形成される。また、焼結体12の多孔質構造にも、接合層22となる溶融した材料22aが入り込んで固化する。
【0108】
また、焼結体12の凹型形状に供給された接合層22となる材料22aは、焼結体12中の銅微粒子と金属間化合物層25を形成する。焼結体12は、多孔質構造であるため、比表面積が大きい。このため、本実施形態では、例えば、導電性ピラーが電気メッキ法などを用いて形成された緻密なバルク金属からなるものである場合と比較して、素早く金属間化合物層25が形成される。
【0109】
焼結体12の凹型形状に第二の接合層22となる材料22aを供給する方法としては、例えば、ステンシルマスク法・ドライフィルム法などの印刷法、ボールマウント法、蒸着法、溶融はんだインジェクション法(IMS法)などを用いることができる。これらの中でも特に、図6(A)及び図8(A)に示すように、注入ヘッド22bを用いて溶融はんだを焼結体12の凹型形状に埋め込むIMS法を用いることが好ましい。IMS法を用いることで、第二の接合層22となる材料22aであるはんだを、溶融した状態で焼結体12の凹型形状に供給でき、好ましい。
【0110】
<レジスト層、及び、露出したCu薄膜を除去する工程>
図6(B)に示すように、実施形態3においては、レジスト層16及び露出したレジスト層16の下のCu薄膜17dを除去する工程を備えることができる。
はじめに、図6(A)に示される基材11の上にレジスト層16の下のCu薄膜17dを介して設けられているレジスト層16を除去して、レジスト層16の下のCu薄膜17dを露出させる。レジスト層16を除去する方法としては、公知の方法を用いることができる。
次に、露出したCu薄膜17dを除去して、図6(B)に示すように、基材11を露出させる。露出したCu薄膜17dの除去方法としては、前記銅微粒子ペーストの残渣を除去する方法として説明したと同じ方法が挙げられる。
これにより、基材11上の電極パッド13の上に、Cu薄膜17からなる第一の接合層17cを介して設けられた銅微粒子の焼結体12で構成された導電性ピラー1が得られる。ここで得られた導電性ピラー1は、焼結体12の上面が、基材11側に窪んだ凹型形状であり、焼結体12の凹部形状に沿って第二の接合層22からなるバンプが設けられている。
【0111】
上述の通り、実施形態3では、電気メッキ法で銅ピラーを形成する場合と異なり、レジスト層の下のメッキ下地層に電位を印加する必要がなく、均一な電流を流す必要もないので、レジスト層の下のCu薄膜を薄くすることができる。実施形態3においては、レジスト層の下から露出したCu薄膜を除去する際に、導電性ピラーがエッチングによって細くなるおそれが少なく、導電性ピラー1の根元にアンダーカットが生じるおそれが少ない。
【0112】
ここで得られる導電性ピラー1は、アンダーカットが生じるおそれが少ないので、微細な形状の導電性ピラーを安定性良く形成することができる。また、基材11と被接合部材とを第二の接合層22を介して高い接合強度で接合できることが期待できる。
【0113】
<レジスト層を除去する工程>
図8(B)に示すように、実施形態4においては、レジスト層16を除去する。レジスト層16を除去する方法としては、公知の方法を用いることができる。
図8(A)に示される基材11の上に直接設けられているレジスト層16を除去して、図8(B)に示すように、基材11を露出させる。これにより、基材11上に電極パッド13を介して設けられた金属微粒子の焼結体12で構成された導電性ピラーが得られる。ここで得られた導電性ピラーは、焼結体12の上面が、基材11側に窪んだ凹型形状であり、焼結体12の凹部形状に沿って接合層22からなるバンプを設けられ、焼結体12の側面が、Cu薄膜17bで覆われている。
レジスト層を除去する工程においても、レジスト層16を除去する際、電気メッキ法で銅ピラーを形成する場合の様に、レジスト層の下にメッキ下地層が配置されていないので、多段階のエッチングを必要とせず、1回の工程でレジスト層16を除去できるので、電極パッド13と焼結体12との間にアンダーカットが生じるおそれがなく、良好な柱形状の微小な銅ピラーを形成することができる。焼結体の側面のCu薄膜17bを残してレジスト層16を除去することができる。また、アンダーカットが生じるおそれがないので、実施形態2の導電性ピラーの製造方法は、後述する図9(B)のように、平面形状の大きさが異なる導電性ピラー1a、1b、1cを一度に形成することができたり、平面形状が異なる複数の導電性ピラーを一度に形成することができたりする利点がある。
ここで得られる導電性ピラーは、アンダーカットがなく、また、焼結体12の側面がCu薄膜17bで覆われているので、微細な形状の導電性ピラーを安定性良く形成することができる。また、基材11と被接合部材とを接合層22を介して高い接合強度で接合できることが期待できる。
【0114】
図8においては、接合層22を形成した後に、レジスト層16を除去する場合を例に挙げて説明したが、レジスト層16は、接合層22の形成後に除去しなくてもよい。レジスト層16を除去しない場合、レジスト層16は、基材11と後述する被接合部材とを積層することにより、基材11と被接合部材との間に配置される。
【0115】
<基材と被接合部材とを接続する工程>
フリップチップ実装法により、基材11と被接合部材21とを電気的に接続する。具体的には、図6(C)及び8(C)に示すように、焼結体12上に第二の接合層22が形成された基材11と、被接合部材21とを対向配置させて積層する。実施形態4では、被接合部材21の電極23が設けられた面を上に向けて配置し、基材11の第二の接合層22が形成された面を下に向けて配置する。そして、被接合部材21の電極23と、基材11の第二の接合層22とを重ね合わせた状態とする。その後、基材11と被接合部材21とを積層した状態で加熱して第二の接合層22を溶融し、基材11と被接合部材21とを接合し、第二の接合層22を固化させる。
以上の工程により、接合構造20が得られる。
【0116】
導電性ピラー1は、基材11上の電極パッド13の上に、Cu薄膜17からなる第一の接合層17cを介して設けられた銅微粒子の焼結体12で構成されている。銅微粒子の焼結体12が、電極パッド13上の、Cu薄膜からなる第一の接合層17cの上に直接形成されるので、第一の接合層17cと焼結体12との間が強固に結合できる。焼結体12は、銅微粒子のSAXSを用いて測定した平均粒子径が1μm未満であり、焼結体12の上面12b(図6(C)及び8(C)においては下面)が、基材11側に窪んだ凹型形状である。このため、導電性ピラー1の凹部形状に沿って第二の接合層22を設けることにより、導電性ピラー1の凹部形状に入り込んだ第二の接合層22が形成される。しかも、導電性ピラー1において、銅微粒子の焼結体12は、SAXSを用いて測定した平均粒子径が1μm未満であり、銅微粒子が焼結により融着した多孔質構造を有する。このため、第二の接合層22を形成する際に、焼結体12の多孔質構造に、第二の接合層22となる溶融した材料22aが入り込んで固化する。これらのことから、実施形態1の導電性ピラー1は、第二の接合層22との接合面積が大きいので、例えば、電気メッキ法で形成されることにより上面が基材と平行な平面とされた緻密な金属からなる導電性ピラーと比較して、第二の接合層22と高い接合強度(シェア強度)で接合される。その結果、実施形態1の導電性ピラー1によれば、基材11と被接合部材21とを第二の接合層22を介して高い接合強度(シェア強度)で接合できる。
【0117】
また、導電性ピラー1は、平均粒子径1μm未満の銅微粒子の焼結体12からなり、銅微粒子が焼結により融着した多孔質構造を有するため、電気メッキ法などを用いて形成された緻密なバルク金属と比較して、熱膨張率の差によって生じる応力を緩和でき、優れた耐久性が得られる。
【0118】
接合構造20は、基材11と被接合部材21との間に配置され、導電性ピラー1と、導電性ピラー1の凹部形状に沿って設けられた第二の接合層22とを有する。したがって、実施形態1の接合構造20は、導電性ピラー1の凹部形状に第二の接合層22が入り込んだものであり、第二の接合層22を介して基材11と被接合部材21とが高い接合強度で接合されたものとなる。
【0119】
第二の接合層22の材料としては、Au、Ag、Cu、Sn、Ni、はんだ合金等を用いることができ、Sn、Pb、AgおよびCuから選択される1種以上の金属を含有する合金を用いることが好ましい。第二の接合層22は、単一成分のみで形成されていてもよいし、複数の成分を含むものであってもよい。
第二の接合層22の材料として用いるはんだ合金としては、Sn-Ag合金、Sn-Pb合金、Sn-Bi合金、Sn-Zn合金、Sn-Sb合金、Sn-Bi合金、Sn-In合金、Sn-Cu合金、SnにAu、Ag、Bi、InおよびCuからなる群より選ばれる2つの元素を添加した合金等を用いることができる。
【0120】
[接合構造]
図6(C)及び8(C)は、接合構造の製造方法で得られる接合構造の一例を示した断面図である。図6(C)及び8(C)に示す接合構造20は、基材11と、前記導電性ピラー1と、導電性ピラー1の凹部形状に沿って設けられた第二の接合層22と、被接合部材21とを有する。銅微粒子の焼結体12が、電極パッド13上の、Cu薄膜からなる第一の接合層17cの上に直接形成されるので、第一の接合層17cと焼結体12との間が強固に結合できる。そして、導電性ピラー1において、Cu薄膜17からなる第一の接合層17cと焼結体12との間が強固に結合しているので、導電性ピラー1及び接合構造20の強度向上に質するものと推定される。図6(C)及び8(C)に示す接合構造20では、導電性ピラー1の上面12b(図6(C)及び8(C)においては下面)から基材11に向かって延出する複数の溝部12a内に、第二の接合層22の一部が充填されてアンカー部が形成されている。このため、図6(C)及び8(C)に示す接合構造20では、導電性ピラー1の焼結体12と第二の接合層22とがより一層高い接合強度(シェア強度)で接合されたものとなる。
【0121】
図6(C)及び8(C)に示す接合構造20は、導電性ピラー1と第二の接合層22との界面に金属間化合物層25を有する。金属間化合物層25は、導電性ピラー1と第二の接合層22との接合強度(シェア強度)を向上させる。金属間化合物層25は、第二の接合層22中の成分が導電性ピラー1の内部に向かって拡散するとともに、焼結体12中の銅微粒子成分が第二の接合層22の内部に向かって拡散することにより形成される。したがって、金属間化合物層25の組成は、焼結体12および第二の接合層22を形成している金属種および焼結条件により変化する。
【0122】
図6(C)及び8(C)に示すように、接合構造20は、基材11と被接合部材21とが対向して配置されている。被接合部材21としては、任意の電気回路が形成され、表面に電極23を有する基板であれば得に制限はない。例えば、被接合部材21としては、ガラス基板、セラミックス基板、Siインターポーザ等のSi基板、樹脂基板、プリント配線板などを用いることができ、微細な導電性ピラー1を有する接合構造20を作製する場合には、寸法安定性が優れるガラス基板、セラミックス基板、Si基板を好適に選択することができる。
【0123】
図7及び9には、基材11と被接合部材21とが対向して配置された3つの接合構造20を示しているが、基材11と被接合部材21とが対向して配置される接合構造20の数は、3つに限定されるものではなく、1つまたは2つでもよいし、4つ以上であってもよく、必要に応じて決定される。
接合構造20は、本実施形態の導電性ピラー1と、導電性ピラー1の凹部形状に沿って設けられた第二の接合層22とを有する。図7に示す接合構造20では、図1(D)に示す導電性ピラー1が、図1(D)における上下方向を反転させた状態で設置されており、また、図9に示す接合構造20では、図3(D)に示す導電性ピラー1が、図3(D)における上下方向を反転させた状態で設置されている。
第二の接合層22が一種類の材料からなる単層構造である場合を例に挙げて説明するが、第二の接合層は、二種類以上の材料が積層された多層構造のものであってもよい。
【0124】
(他の例)
図7(A)及び9(A)は、本実施形態の接合構造の製造方法で得られる接合構造の一例を示した断面図である。
図7(A)及び9(A)に示すように、基材11と被接合部材21との間における接合構造20の配置されていない領域に、封止樹脂26を充填する。封止樹脂26の充填方法としては、従来公知の方法を用いることができる。
【0125】
図7(A)及び9(A)に示すように、基材11と被接合部材21との間における接合構造20の配置されていない領域には、封止樹脂26が充填されている。封止樹脂26の材料としては、エポキシ樹脂など従来公知のものを用いることができる。
【0126】
図7(A)及び9(A)は、本実施形態の接合構造の製造方法で得られる接合構造の他の一例を示した断面図である。
【0127】
図7(A)及び9(A)に示すように、基材11と被接合部材21とが対向して配置された3つの接合構造20が、全て略同じ形状を有する場合を例に挙げて説明したが、基材11と被接合部材21との間に本実施形態の接合構造が複数設けられている場合、複数の接合構造のうち、一部または全部が異なる形状であってもよい。すなわち、各接合構造の有する導電性ピラーおよび第二の接合層の形状は、基材11の電極パッドおよび被接合部材21の電極の平面形状に応じて適宜決定できる。
【0128】
図7(B)は、本実施形態の接合構造の他の一例を示した断面図である。図7(B)に示す例が、図7(A)に示す例と異なるところは、接合構造の形状のみである。このため、図7(B)において、図7(A)と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0129】
図9(B)は、本実施形態の接合構造の他の一例を示した断面図である。図9(B)に示す例が、図9(A)に示す例と異なるところは、接合構造の形状のみである。このため、図9(B)において、図9(A)と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0130】
図7(B)及び9(B)に示すように、基材11と被接合部材21との間には、複数(図7(B)及び9(B)に示す例では3つ)の接合構造20a、20b、20cが設けられている。図7(B)及び9(B)に示す接合構造20a、20b、20cにおいては、3つの接合構造20a、20b、20cのうち1つの接合構造20aの平面形状が、他の接合構造20b、20cよりも大きいものとなっており、他の接合構造20b、20cの形状が同じとなっている。
【0131】
より詳細には、図7(B)及び9(B)に示すように、3つの接合構造20a、20b、20cのうち、1つの接合構造20aと接触している電極パッド13aおよび電極23aの平面形状が、他の電極パッド13および電極23よりも大きいものとなっている。それに伴って接合構造20aの有する略円柱状の導電性ピラー1aの外径(直径)が、他の導電性ピラー1b、1cと比較して大きいものとされている。また、接合構造20aの有する第二の接合層22の大きさも、他の接合構造20b、20cの有する第二の接合層22と比較して大きいものとされている。また、図7(B)及び9(B)に示すように、基材11と被接合部材21との間隔は略一定とされており、3つの接合構造20a、20b、20cにおける基材11の厚み方向の長さは略同じとされている。
【0132】
図7(B)及び9(B)に示す3つの接合構造20a、20b、20cは、レジスト層16をパターニングする工程において、導電性ピラー1a、1b、1cの外形形状にそれぞれ対応する形状を有するレジスト開口部を形成すること以外は、上述した図7(A)及び9(A)に示す3つの接合構造20と同様の方法を用いて、同時に製造できる。したがって、図7(B)及び9(B)に示す3つの接合構造20a、20b、20cを製造する場合と、図7(A)及び9(A)に示す3つの接合構造20を製造する場合とでは、得られる接合構造の寸法精度および製造工程数に違いはない。
【0133】
これに対し、例えば、電気メッキ法を用いて基材上に複数の銅ピラーを形成する場合、複数の銅ピラー中に形状の異なる銅ピラーが含まれていると、以下に示す不都合が生じる。すなわち、メッキレートの制御が困難となって、銅ピラーの寸法精度が不十分になる場合がある。また、全ての銅ピラーを同時に形成できず、製造工程が非常に煩雑になる場合がある。したがって、電気メッキ法を用いて基材上に複数の銅ピラーを形成する場合には、形状の異なる銅ピラーを含む複数の銅ピラーを設けることは困難であった。
【0134】
なお、図7(B)及び9(B)においては、基材11と被接合部材21との間に配置された3つの接合構造20a、20b、20cを示しているが、基材11と被接合部材21との間に配置される接合構造20a、20b、20cの数は、3つに限定されるものではなく、例えば、接合構造20aと接合構造20bの2つのみであってもよいし、4つ以上であってもよく、必要に応じて決定される。
【0135】
また、図7(B)及び9(B)においては、導電性ピラー1a、1b、1cの平面形状が全て略円形形状である場合を例に挙げて説明したが、各導電性ピラーの平面形状は略円形に限定されるものではなく、電極パッド13の平面形状などに応じて適宜決定できる。
また、図7(B)及び9(B)においては、3つの接合構造20a、20b、20cにおける基材11の厚み方向の長さが略同じである場合を例に挙げて説明したが、各接合構造の基材11の厚み方向の長さは、一部または全部が異なっていてもよい。
【0136】
本実施形態の接合構造の製造方法により、接合構造20を含む電子機器を製造することができる。本実施形態の電子機器は、接合構造20を複数含むことが好ましい。この場合、複数の接合構造20のうち、一部または全部が異なる形状であってもよい。
具体的には、本実施形態の電子機器としては、本実施形態の接合構造20を複数含む3次元(3D)実装構造を有するデバイス、または本実施形態の接合構造20を複数含むインターポーザを用いた2.5次元(2.5D)実装構造を有するデバイスなどが挙げられる。
本実施形態の電子機器は、本実施形態の接合構造20を含むため、基材11と被接合部材21とが高い接合強度で接合されたものとなる。
【実施例
【0137】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
[銅微粒子ペーストの製造]
導電性ピラーの製造に使用する銅微粒子ペーストとして、以下に示す方法により、銅微粒子と分散剤との複合体と、溶媒とを含むものを製造した。
【0138】
<複合体の水分散液の製造>
酢酸銅(II)一水和物(3.00g、15.0mmol)(東京化成工業社製)、式(1)で示されるエチル3-(3-(メトキシ(ポリエトキシ)エトキシ)-2-ヒドロキシプロピルスルファニル)プロピオナート〔ポリエチレングリコールメチルグリシジルエーテル(ポリエチレングリコール鎖の分子量2000(炭素数91))への3-メルカプトプロピオン酸エチルの付加化合物〕(0.451g)、およびエチレングリコール(10mL)(関東化学社製)からなる混合物に、窒素を50mL/分の流量で吹き込みながら加熱し、125℃で2時間通気攪拌して脱気した。この混合物を室温に戻し、ヒドラジン水和物(1.50g、30.0mmol)(東京化成工業社製)を水7mLで希釈した希釈溶液を、シリンジポンプを用いてゆっくり滴下した。希釈溶液の約1/4量を2時間かけてゆっくり滴下し、ここで一旦停止し、2時間攪拌して発泡が沈静化するのを確認した後、残量を更に1時間かけて滴下した。得られた褐色の溶液を60℃に昇温して、さらに2時間攪拌し、還元反応を終結させた。
【0139】
つづいて、得られた反応混合物をダイセン・メンブレン・システムズ社製の中空糸型限外濾過膜モジュール(HIT-1-FUS1582、145cm、分画分子量15万)中に循環させ、浸出する濾液と同量の0.1%ヒドラジン水和物水溶液を加えながら、限外濾過モジュールからの濾液が約500mLとなるまで循環させて精製した。0.1%ヒドラジン水和物水溶液の供給を止め、そのまま限外濾過法により濃縮することにより、2.85gのチオエーテルを含む有機化合物と銅微粒子との複合体の水分散液を得た。水分散液中の不揮発物含量は16%であった。
【0140】
<銅微粒子ペーストの調製>
上記の水分散液5mLをそれぞれ50mL三口フラスコに封入し、ウォーターバスを用いて40℃に加温しながら、減圧下で窒素を5mL/分の流速で流して、水を完全に除去し、銅微粒子複合体の乾燥粉末1.0gを得た。得られた銅微粒子複合体の乾燥粉末に、銅微粒子複合体の含有率が、銅微粒子ペースト100%に対して、70%になるように、アルゴンガス置換したグローブバッグ内で30分間窒素バブリングしたエチレングリコールを添加した。その後、大気下において瑪瑙製の乳鉢で3分間混練し、銅微粒子複合体の含有率が70%の銅微粒子ペーストを作製した。作製した銅微粒子ペーストについて、以下に記載した方法で物性を評価した。
【0141】
<熱重量分析(TG-DTA)による重量減少率の測定>
合成した銅微粒子複合体の乾燥粉末2~25mgを、熱重量分析用アルミパンに精密にはかりとり、EXSTAR TG/DTA6300型示差熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)に載せた。そして、不活性ガス雰囲気下において、室温~600℃まで毎分10℃の割合で昇温し、100℃~600℃の重量減少率を測定した。その結果から、銅微粒子複合体の乾燥粉末中に、3%のポリエチレンオキシド構造を含む有機物が存在することを確認した。
【0142】
<平均一次粒子径の測定>
合成した銅微粒子複合体の平均一次粒子径を、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定した。まず、合成した銅微粒子複合体の乾燥粉末を、水で100倍に希釈して分散液とした。次に、分散液をカーボン膜被覆グリッド上にキャストして乾燥させ、透過型電子顕微鏡(装置:TEMJEM-1400(JEOL製)、加速電圧:120kV)にて観察した。そして、得られたTEM像の中から無作為に200個の銅微粒子複合体を抽出し、それぞれ面積を求め、真球に換算したときの粒子径を個数基準として算出し、平均一次粒子径とした。その結果、合成した銅微粒子複合体の平均一次粒子径は、42nmであった。
【0143】
<導電性ピラーを形成している銅微粒子の平均粒子径の測定>
後述する実施例の導電性ピラーの製造方法を模擬して、上記の方法により得られた銅微粒子ペーストの焼結体を作成した。具体的には、上記の方法により得られた銅微粒子ペーストを、アルゴンガス雰囲気中でシリコンウエハ上に、膜厚が1mmとなるように均一に塗布した。
【0144】
次に、シリコンウエハ上に塗布した銅微粒子ペースト中の溶媒を低温で揮発させる仮焼成を行った。仮焼成は、窒素ガス雰囲気中で、卓上型真空はんだリフロー装置(ユニテンプ社製)を用いて、銅微粒子ペーストの塗布されたシリコンウエハを120℃で5分間加熱することにより行った。
次に、シリコンウエハ上に塗布した銅微粒子ペーストを焼結して、焼結体を形成した。銅微粒子ペーストの焼結は、蟻酸蒸気を含む窒素雰囲気中で、卓上型真空はんだリフロー装置(ユニテンプ社製)を用いて、仮焼成後のシリコンウエハを250℃で10分間加熱することにより行った。
【0145】
得られた焼結体をシリコンウエハから掻き落とし、銅微粒子焼結体の粉末を採取した。採取した銅微粒子焼結体の平均粒子径を、X線小角散乱測定法(SAXS)により測定した。その結果は、後述する実施例の導電性ピラーを形成している金属微粒子の平均粒子径とみなすことができる。
焼結体中の銅微粒子の平均粒子径の測定には、リガク社製のX線回折装置(商品名:SmartLab)を用いた。測定は、回折角度2θを0から4°までの範囲とし、ステップモードで行った。なお、ステップ角は0.005°、計測時間は5秒とした。
【0146】
銅微粒子の平均粒子径は、SAXSにより得られた測定データを、解析ソフト(NANO-Solver Ver.3)を用いて計算することにより見積もった。その結果を図10に示す。図10は、銅微粒子の粒子径分布を示したグラフである。図10に示すように、焼結体中の銅微粒子の粒子径は、体積分率6%が322nm(分布1)、体積分率91%が45nm(分布2)、体積分率4%が15nm(分布3)であった。この結果から、焼結体中の銅微粒子の平均粒子径は59.112nmと見積もられた。
【0147】
[実施例1]
<導電性ピラーの作製>
Al製の電極パッド13が設けられた直径4インチのシリコンウエハ(基材11)上に、Arガスを用い、Arプラスイオンを衝突させて逆スパッタしてクリーニングしてから、スパッタ法により膜厚250nmのCu薄膜17を形成した(図1A))。
【0148】
次に、最終膜厚が30μmになるようにレジスト樹脂を塗布した。レジストを露光・現像し、Al製電極パッド上に開口部16aが設けられるように、レジスト層16に複数の開口パターンを形成させた(図1(B))。レジスト層16の開口パターンの形状は上面及び底面の直径が30~75μmの円柱形状、並びに、上面及び底面の一辺が30~75μmの正方形の四角柱形状の凹部からなり、開口部の深さは30μmであった。円柱形状の開口部のアスペクト比(深さ:直径)は、1.0:1.0~2.5となるようにデザインした。
【0149】
次いで、以下に示す方法により、上記の方法により得られた銅微粒子ペーストを、円柱形状及び四角柱形状の開口部内に充填し、基材11上の開口部16a内に銅微粒子ペースト12cで構成される柱状体を形成した(図1(C))。銅微粒子ペーストの充填は、アルゴンガス雰囲気中で行った。銅微粒子ペーストの充填は、基材上に銅微粒子ペーストを載せ、半自動スクリーン印刷装置(セリア製)に設置したスキージを、基板上でアタック角度70°、移動速度10mm/sで1往復掃引して塗布する方法により行った。スキージとしては、硬度70°のウレタンゴム製の角スキージを用いた。
【0150】
次に、銅微粒子ペースト12cで構成される柱状体が形成された基材を、蟻酸蒸気を含んだ窒素ガス雰囲気下においてホットプレートを用いて温度250℃の環境下で10分間暴露することにより、銅微粒子ペーストを焼結させた(図1(D))。
【0151】
次に、導電性ペーストを充填し焼結した基材を、銅エッチング剤(菱江化学社製 WLC-C2)に30秒間浸漬させることにより、基材上の最外層の表面に残った銅微粒子ペーストの残渣を除去した。
以上の工程により、実施例1の導電性ピラーを得た(図1(D))。
【0152】
実施例1の導電性ピラーは、図1(D)に示されるように、基材11上の電極パッド13の上に、Cu薄膜17からなる第一の接合層17cを介して設けられた銅微粒子の焼結体12で構成されている。焼結体12は銅微粒子が焼結により融着した多孔質構造を有し、上面12bが基材11側に窪んだ凹型形状である。
【0153】
図11は、実施例1の導電性ピラーのうち、開口パターンの形状が、上面及び底面の直径が50μmの円柱形状である部分の断面を撮影した顕微鏡写真である。図12は、図11に示す導電性ピラーの上面を撮影した顕微鏡写真である。
図11及び図12において、符号11は基材、符号12は焼結体、符号12bは焼結体の上面、符号13は電極パッドを示す。図11に示すように、実施例の導電性ピラー(焼結体12)は、上面12bが基材11側に窪んだ凹型形状であった。
【0154】
[実施例2]
<導電性ピラーの作製>
次に、実施例1の導電性ピラーを形成している焼結体の基材側に窪んだ凹型形状に、IMS(Injection Molded Soldering)工法(例えば、特開2015-106617号公報参照。)を用いて、第二の接合層22となる材料22aとして溶融はんだ(SAC305)を供給し、焼結体の凹部形状に沿ってバンプを設けた。具体的には、溶融はんだを保持する注入ヘッド22b(リザーバ)から開口部分に、直接溶融はんだを射出して供給した(図6(A))。はんだ合金としては、SAC305を使用した。これにより、はんだ合金からなる第二の接合層(バンプ)を作製した。得られた第二の接合層は、凸曲面状に盛り上がった形状であった。その後、レジスト層を除去した。さらに、銅エッチング剤(菱江化学社製 WLC-C2)に15秒間浸漬させることにより、基材上に露出したレジスト層16の下のCu薄膜17dをエッチング除去して、実施例2の導電性ピラーを得た(図6(B))。
【0155】
実施例2の導電性ピラーは、基材上のAl製電極パッドの上に厚さ250nmのCu薄膜(第一の接合層17c)を介して設けられ、ピラーの高さ(焼結体の高さ)が15~20μm、金属間化合物層の厚さが1~5μm、第二の接合層の高さが5~15μm程度であった。
レジスト層の開口パターンの直径に対して、導電性ピラーの直径は、ほぼ同じである。 実施例2の導電性ピラーの場合、Cu薄膜及び導電性ピラーは同じCuで形成されている。したがって、Cu薄膜をエッチングした時に、アンダーカットが生じない。
【0156】
(バンプとの接合強度(シェア強度)の評価試験)
レジスト層を除去して得られた実施例2の導電性ピラーのうち、上面及び底面の一辺が75μmの正方形の、四角柱形状の導電性ピラーについて、後述する評価方法により、バンプとの接合強度(シェア強度)の評価試験を実施した。
【0157】
[実施例3]
<接合構造の作製>
次に、焼結体からなる実施例2の導電性ピラー上にはんだ合金からなる第二の接合層(バンプ)が形成された基材と、表面に銅からなる電極を有するSi基板(被接合部材)とを対向配置させて積層した。具体的には、被接合部材の電極が設けられた面を上に向けて配置し、基材の第二の接合層が形成された面を下に向けて配置して、被接合部材の電極と、基材の第二の接合層とを重ね合わせた状態とした(図6(C))。そして、基材と被接合部材とを積層した状態で加熱して、第二の接合層を溶融し、基材と被接合部材とを接合し、実施例3の接合構造を形成した。チップアッセンブリ後の導電性ピラーの高さは20μmであった。
【0158】
(電気抵抗測定及び絶縁信頼性試験)
基材と被接合部材とが実施例2の導電性ピラーにより接合された実施例3の接合構造について、後述する評価方法により、導電性ピラーの電気抵抗測定及び絶縁信頼性試験を実施した。
【0159】
[実施例4]
<接合構造の作製>
その後、基材と被接合部材との間における接合構造の配置されていない領域に、エポキシ樹脂からなるアンダーフィル剤を注入する方法により、封止樹脂を充填し、実施例4の接合構造を得た(図7(A)及び図7(B))。
【0160】
基材11と被接合部材21との間には、導電性ピラーの焼結体12と、焼結体12の凹部形状に沿って設けられた第二の接合層22とを有する接合構造が形成されていた(図7(A)及び図7(B))。
【0161】
(温度サイクル試験(DTC試験))
実施例2の導電性ピラーを備える実施例4の接合構造について、後述する評価方法により、温度サイクル試験(DTC試験)を実施した。
【0162】
(高温保存試験(HTS試験))
実施例2の導電性ピラーを備える実施例4の接合構造について、後述する評価方法により、高温保存試験(HTS試験)を実施した。
【0163】
[実施例5]
<導電性ピラーの作製>
Al製電極が設けられた直径4インチのシリコンウエハ(基材)上に、最終膜厚が30μmになるようにレジスト樹脂を塗布した。レジストを露光・現像し、Al製電極パッド上に開口部が設けられるように、複数の開口パターンを形成させた(図3(A))。開口パターンの形状は上面及び底面の直径が20~75μmの円柱形状、並びに、上面及び底面の一辺が20~75μmの正方形の四角柱形状の凹部からなり、開口部の深さは30μmであった。円柱形状の開口部のアスペクト比(深さ:直径)は、1.0:1.0~2.5となるようにデザインした。
【0164】
次いで、Al製電極上に開口部を有するレジスト層が形成されたシリコンウエハ上の表面を、Arガスを用い、Arプラスイオンを衝突させて逆スパッタしてクリーニングしてから、スパッタ法により膜厚250nmのCu薄膜を形成した(図3(B))。開口パターンの形状は、ほとんど変化していない。
【0165】
次いで、以下に示す方法により、上記の方法により得られた銅微粒子ペーストを、円柱形状及び四角柱形状の開口部内に充填し、基材上に銅微粒子で構成される柱状体を形成した(図3(C))。銅微粒子ペーストの充填は、アルゴンガス雰囲気中で行った。銅微粒子ペーストの充填は、基材上に銅微粒子ペーストを載せ、半自動スクリーン印刷装置(セリア製)に設置したスキージを、基材上でアタック角度70°、移動速度10mm/sで掃引して塗布する方法により行った(図3(C))。スキージとしては、スクリーン印刷用の硬度70°のウレタンゴム製の角スキージを用いた。
【0166】
次に、柱状体の形成された基材を、蟻酸蒸気を含んだ窒素ガス雰囲気下においてホットプレートを用いて温度250℃の環境下で10分間暴露することにより、銅微粒子ペーストを焼結させた(図3(D))。
【0167】
次に、導電性ペーストを充填し焼結した基材を、銅エッチング剤(菱江化学社製 WLC-C2)に30秒間浸漬させることにより、基材上の最外層の表面に残った銅微粒子ペーストの残渣と、レジスト層上部のCu薄膜17aと、を除去した。
以上の工程により、基材上に設けられた焼結体からなる実施例5の導電性ピラーを得た(図4)。
【0168】
実施例5の導電性ピラーは、図5に示されるように、基材11上に設けられた銅微粒子の焼結体12で構成され、焼結体12は銅微粒子が焼結により融着した多孔質構造を有し、上面12bが基材11側に窪んだ凹型形状であり、焼結体12の側面が、Cu薄膜で覆われていた。
【0169】
[実施例6]
<導電性ピラーの作製>
次に、実施例1の導電性ピラーを形成している焼結体の基材側に窪んだ凹型形状に、IMS工法を用いて、溶融はんだ(SAC305)を供給し、焼結体の凹部形状に沿ってバンプを設けた。具体的には、溶融はんだを保持する注入ヘッド(リザーバ)から開口部分に、直接溶融はんだを射出して供給した(図8(A))。はんだ合金としては、SAC305を使用した。これにより、はんだ合金からなる第二の接合層(バンプ)を作製した。得られた第二の接合層は、凸曲面状に盛り上がった形状であった。その後、レジスト層を除去して、実施例2の導電性ピラーを得た(図8(B))。
【0170】
実施例6の導電性ピラーは、基材上のAl製電極パッドの上に厚さ250nmのCu薄膜(第一の接合層)を介して設けられ、焼結体の側面がCu薄膜で覆われており、ピラーの高さ(焼結体の高さ)が15~20μm、金属間化合物層が1~5μm、第二の接合層が5~15μm程度であった。
実施例6の導電性ピラーの製造方法においては、開口部を有するレジスト層が形成された基材上の表面にCu薄膜を形成しており、レジスト層を除去する工程の後、露出した基材11の上にCu薄膜は存在せず、更にCu薄膜を除去するためのエッチング工程を設ける必要がないので、アンダーカットは発生しない。
開口パターンの直径に対して、導電性ピラーの直径は、ほぼ同じである。
【0171】
(バンプとの接合強度(シェア強度)の評価試験)
レジスト層を除去して得られた実施例6の導電性ピラーのうち、上面及び底面の一辺が75μmの正方形の、四角柱形状の導電性ピラーについて、後述する評価方法により、バンプとの接合強度(シェア強度)の評価試験を実施した。
【0172】
[実施例7]
<接合構造の作製>
次に、焼結体からなる実施例6の導電性ピラー上にはんだ合金からなる第二の接合層(バンプ)が形成された基材と、表面に銅からなる電極を有するSi基板(被接合部材)とを対向配置させて積層した。具体的には、被接合部材の電極が設けられた面を上に向けて配置し、基材の第二の接合層が形成された面を下に向けて配置して、被接合部材の電極と、基材の第二の接合層とを重ね合わせた状態とした(図8(C))。そして、基材と被接合部材とを積層した状態で加熱して、第二の接合層を溶融し、基材と被接合部材とを接合し、実施例7の接合構造を形成した。チップアッセンブリ後の導電性ピラーの高さは20μmであった。
【0173】
(電気抵抗測定及び絶縁信頼性試験)
基材と被接合部材とが実施例6の導電性ピラーにより接合された実施例7の接合構造について、後述する評価方法により、導電性ピラーの電気抵抗測定及び絶縁信頼性試験を実施した。
【0174】
[実施例8]
<接合構造の作製>
その後、基材と被接合部材との間における接合構造の配置されていない領域に、エポキシ樹脂からなるアンダーフィル剤を注入する方法により、封止樹脂を充填し、実施例8の接合構造を得た(図9(A)及び図9(B))。
【0175】
基材11と被接合部材21との間には、導電性ピラーの焼結体12と、焼結体12の凹部形状に沿って設けられた接合層22とを有する接合構造が形成されていた(図9(A)及び図9(B))。
【0176】
(温度サイクル試験(DTC試験))
実施例6の導電性ピラーを備える実施例8の接合構造について、後述する評価方法により、温度サイクル試験(DTC試験)を実施した。
【0177】
(高温保存試験(HTS試験))
実施例6の導電性ピラーを備える実施例8の接合構造について、後述する評価方法により、高温保存試験(HTS試験)を実施した。
【0178】
[比較例1]
<導電性ピラーの作製>
Al製電極が設けられた直径4インチのシリコンウエハ(基材)上の全面に、Arガスを用い、Arプラスイオンを衝突させて逆スパッタしてクリーニングしてから、スパッタ法により膜厚250nmのCu薄膜を形成した。
Al製電極の上に直接溶融はんだを供給しようとしても、Al製電極は溶融はんだに対して濡れ性がない。Cu薄膜の形成を必須としたのは、溶融はんだに対する濡れ性が良いからである。
次に、更にその上に、最終膜厚が30μmになるようにレジスト樹脂を塗布した。レジストを露光・現像し、Al製電極上に開口部が設けられるように、複数の開口パターンを形成させた。レジスト層の開口パターンの形状は上面及び底面の直径が30~75μmの円柱形状、並びに、上面及び底面の一辺が30~75μmの正方形の、四角柱形状の凹部からなり、開口部の深さは30μmであった。円柱形状の開口部のアスペクト比(深さ:直径)は、1.0:1.0~2.5となるようにデザインした。
【0179】
次いで、IMS工法を使用して、溶融はんだを保持するリザーバから、溶融はんだを射出し、開口部へ直接溶融はんだを供給した。はんだ合金は、SAC305を使用した。これにより、はんだ合金のみから成る導電性ピラーを作製した。固化したはんだ合金は、レジスト層との表面エネルギー差によりその頭部が凸曲面状に盛り上がった形状を示した。その後、レジスト層を除去し、次に、露出したCu薄膜を銅エッチング剤(菱江化学社製 WLC-C2)に浸漬することによりエッチング除去して、比較例1の導電性ピラーを得た。
【0180】
比較例1においては、Cu薄膜を基材上の全面に形成し、更にその上にレジストパターンを形成している。はんだ合金の下にCu薄膜がある。そのため、レジストストリップ後に、Cu薄膜をエッチングする時、はんだ合金は溶出しないのに対し、露出したCu薄膜と共に導電性ピラーの下のCu薄膜も溶出してしまうためにアンダーカットが生じた。
【0181】
(バンプとの接合強度(シェア強度)の評価試験)
基材のAl製電極上に形成されたはんだ合金のみから成る比較例1の導電性ピラーのうち、上面及び底面の一辺が75μmの正方形の、四角柱形状の導電性ピラーについて、後述する評価方法により、バンプとの接合強度(シェア強度)の評価試験を実施した。
【0182】
[比較例2]
<接合構造の作製>
次に、比較例1の導電性ピラーが形成された基材と、表面に銅からなる電極を有するSi基板(被接合部材)とを対向配置させて積層した。具体的には、被接合部材の電極が設けられた面を上に向けて配置し、基材の比較例1の導電性ピラーが形成された面を下に向けて配置して、被接合部材の電極と、はんだ合金のみから成る比較例1の導電性ピラーとを重ね合わせた状態とした。そして、基材と被接合部材とを積層した状態で加熱して、はんだ合金を溶融し、基材と被接合部材とを接合し、比較例2の接合構造を形成した。チップアッセンブリ後の導電性ピラーの高さは15μmであった。
【0183】
(電気抵抗測定及び絶縁信頼性試験)
基材と被接合部材とが比較例1の導電性ピラーにより接合された比較例2の接合構造について、後述する評価方法により、導電性ピラーの電気抵抗測定及び絶縁信頼性試験を実施した。
【0184】
[比較例3]
<接合構造の作製>
その後、基材と被接合部材との間における接合構造の配置されていない領域に、エポキシ樹脂からなるアンダーフィル剤を注入する方法により、封止樹脂を充填し、比較例3の接合構造を得た。
【0185】
(温度サイクル試験(DTC試験))
比較例1の導電性ピラーを備える比較例3の接合構造について、後述する評価方法により、温度サイクル試験(DTC試験)を実施した。
【0186】
(高温保存試験(HTS試験))
比較例1の導電性ピラーを備える比較例3の接合構造について、後述する評価方法により、高温保存試験(HTS試験)を実施した。
【0187】
[比較例4]
<導電性ピラーの作製>
Al製電極が設けられた直径4インチのシリコンウエハ(基材)上の全面に、スパッタ法により膜厚50nmのTi薄膜及び膜厚250nmのCu薄膜を形成した。次に、更にその上に、最終膜厚が30μmになるようにレジスト樹脂を塗布した。レジストを露光・現像し、Al製電極上に開口部が設けられるように、複数の開口パターンを形成させた。レジスト層の開口パターンの形状は上面及び底面の直径が30~75μmの円柱形状、並びに、上面及び底面の一辺が30~75μmの正方形の、四角柱形状の凹部からなり、開口部の深さは30μmであった。円柱形状の開口部のアスペクト比(深さ:直径)は、1.0:1.0~2.5となるようにデザインした。
【0188】
次いで、作製した電極基材を5wt%硫酸に浸漬し、酸化被膜を除去する前処理を行った。前処理の後、硫酸銅・5水和物65g/L、硫酸170g/L、塩化ナトリウム70mg/Lからなる銅メッキ液を調製した。銅メッキ液に、前処理した電極基材を浸漬させ、分極させた。レジスト層のパターン開口部の露出したカソード電極面に銅メッキを行い、銅メッキからなる導電性ピラーを作製した。
次いで、IMS工法を使用して、溶融はんだを保持するリザーバから、溶融はんだを射出し、開口部へ直接溶融はんだを供給した。はんだ合金は、SAC305を使用した。これにより、はんだ合金のみから成る導電性ピラーを作製した。固化したはんだ合金は、レジスト層との表面エネルギー差によりその頭部が凸曲面状に盛り上がった形状を示した。
レジスト層をエッチング除去し、次に、露出したCu薄膜を銅エッチング剤(菱江化学社製 WLC-C2)に浸漬することによりエッチング除去し、最後に、露出したTi薄膜をウェハーバンプ向けスパッタTiエッチング剤(菱江化学社製WLC-T)に20秒間浸漬させることによりエッチング除去して、比較例4の導電性ピラーを得た。評価に供した比較例4の導電性ピラーは、直径が75μmの円柱状であり、ピラー高さは20μmであった。但し、Ti薄膜部分の層の径が細くエッチングされてしまい、アンダーカットが生じていた。
比較例4の様に、導電性ピラーをメッキ法で形成する場合、カソード電極面となるCu薄膜を基材上の全面に形成する必要がある。そのため、レジストストリップ後のエッチングでアンダーカットが生じる。
【0189】
(バンプとの接合強度(シェア強度)の評価試験)
基材のAl製電極上に形成された銅メッキのみから成る比較例4の導電性ピラーのうち、上面及び底面の一辺が75μmの正方形の、四角柱形状の導電性ピラーについて、後述する評価方法により、バンプとの接合強度(シェア強度)の評価試験を実施した。
【0190】
[比較例5]
<接合構造の作製>
次に、比較例4の銅メッキからなる導電性ピラー上にはんだ合金からなる接合層が形成された基材と、表面に銅からなる電極を有するSi基板(被接合部材)とを対向配置させて積層した。具体的には、被接合部材の電極が設けられた面を上に向けて配置し、基材の接合層が形成された面を下に向けて配置して、被接合部材の電極と、基材の接合層とを重ね合わせた状態とした。そして、基材と被接合部材とを積層した状態で加熱して、接合層を溶融し、基材と被接合部材とを接合し、比較例5の接合構造を形成した。チップアッセンブリ後の導電性ピラーの高さは20μmであった。
【0191】
(電気抵抗測定及び絶縁信頼性試験)
基材と被接合部材とが比較例4の導電性ピラーにより接合された比較例5の接合構造について、後述する評価方法により、導電性ピラーの電気抵抗測定及び絶縁信頼性試験を実施した。
【0192】
[比較例6]
<接合構造の作製>
その後、基材と被接合部材との間における接合構造の配置されていない領域に、エポキシ樹脂からなるアンダーフィル剤を注入する方法により、封止樹脂を充填し、比較例6の接合構造を得た。
【0193】
(温度サイクル試験(DTC試験))
比較例4の導電性ピラーを備える比較例6の接合構造について、後述する評価方法により、温度サイクル試験(DTC試験)を実施した。
【0194】
(高温保存試験(HTS試験))
比較例4の導電性ピラーを備える比較例6の接合構造について、後述する評価方法により、高温保存試験(HTS試験)を実施した。
【0195】
[評価方法及び評価結果]
実施例2及び6の導電性ピラー、実施例3、4並びに7、8の接合構造、比較例1及び4の導電性ピラー、比較例2、3及び比較例5、6の接合構造について、以下に示す方法により「バンプの接合強度」「絶縁信頼性」「DTC耐久性」及び「HTS耐久性」を評価した。
【0196】
「バンプとの接合強度(シェア強度)」
実施例2及び6、比較例1及び比較例4の導電性ピラーから、上面及び底面の一辺が75μmの正方形であり、高さが30μmである四角柱形状の導電性ピラーの試験片を、それぞれ、8個づつ採取した。そして、JIS Z-03918-5:2003「鉛フリーはんだ試験方法」に記載の方法で、各試験片について、高さをAl製電極より7μm、スピードを200μm/sの条件で、それぞれせん断力を付加し、バンプとの接合強度(シェア強度)を測定した。平均値及び標準偏差の測定結果を、表1に示す。
表1に示すように、実施例2及び6の導電性ピラーとバンプとの接合強度(シェア強度)は、はんだ合金のみから成る比較例1の導電性ピラーとバンプとの接合強度(シェア強度)よりも優れており、銅メッキのみから成る比較例4の導電性ピラーとバンプとの接合強度(シェア強度)と同等に優れるものであった。
【0197】
【表1】
【0198】
「導電性ピラーの電気抵抗」
実施例2の導電性ピラーにより接合された実施例3の接合構造、実施例6の導電性ピラーにより接合された実施例7の接合構造、比較例1の導電性ピラーにより接合された比較例2の接合構造、及び、比較例4の導電性ピラーにより接合された比較例5の接合構造から、上面及び底面の直径が40μmの円柱形状の導電性ピラーの接合構造を採取した。それぞれ、80個又は82個の導電性ピラーが直列に接続された配線の16箇所について、4端子法により電気抵抗を測定し、得られた抵抗値を、80又は82で割り算した値の平均値から、導電性ピラーの抵抗値を求めた。導電性ピラー以外の接続回路の部分の抵抗は、微少抵抗であるから無視することができる。16個の測定値の平均値及び標準偏差の測定結果を、表2に示す。
表2に示すように、実施例3及び7の接合構造は、比較例2の接合構造や比較例5の接合構造と同等の、良好な導電性を示した。
【0199】
「絶縁信頼性」
実施例2の導電性ピラーにより接合された実施例3の接合構造、実施例6の導電性ピラーにより接合された実施例7の接合構造、比較例1の導電性ピラーにより接合された比較例2の接合構造、及び、比較例4の導電性ピラーにより接合された比較例5の接合構造から、上面及び底面の直径が40μmの円柱形状の導電性ピラーの接合構造を採取した。それぞれの接合構造について、絶縁信頼性試験(HAST試験:Highly Accelerated Storage Test)を実施した。それぞれの接合構造を加速寿命試験装置(HIRAYAMA社製、商品名:PL-422R8、条件:130℃/85%RH/100時間、3.7V印加)に設置し、絶縁信頼性試験用の試験片を得た。試験片を研磨した後、金属顕微鏡(OLYMPUS株式会社製、BX60)を用いて接続部の断面の画像を取り込み評価した。画像処理ソフトAdobe Photoshopを用いて、色調補正及び二階調化により腐食部分を識別し、ヒストグラムにより腐食部分の占める割合を算出した。接続部の2バンプ間の半導体接着部を100%とし、その範囲内の変色部分を上記と同様の方法により算出した。腐食部分の占有率(腐食発生率)が20%以下の場合を「A」(良好。腐食抑制)と評価し、20%より多い場合を「B」(不良)と評価した。評価結果を、表2に示す。
表2に示すように、実施例3及び7の接合構造は、比較例2及び5の接合構造に比べて、電気抵抗がより優れており、絶縁信頼性も良好であった。
【0200】
【表2】
【0201】
「温度サイクル試験(DTC試験)」
実施例2の導電性ピラーにより接合された実施例4の接合構造、実施例6の導電性ピラーにより接合された実施例8の接合構造、比較例1の導電性ピラーにより接合された比較例3の接合構造、及び、比較例4の導電性ピラーにより接合された比較例6の接合構造から、それぞれ、上面及び底面の直径が40μmの、円柱形状の導電性ピラーの試験片を10個採取し、これらについて、温度サイクル試験(DTC試験)を行った。
吸湿リフロー(Moisture Sensitivity Level:MSL)の後に、温度サイクル(Deep Thermal Cycle:DTC)試験を行った。MSLは、JDEC Level3(30℃/60%RH-196時間後にリフロー Max260℃×3回)で行った。DTC試験は、-55℃/125℃で行い、0サイクル時、500サイクル後及び1000サイクル後で体積抵抗値(Ω)を測定し、0サイクル時の体積抵抗値(Ω)に対する変化率(ΔR)を求めた。
表3に示すように、実施例2の導電性ピラーにより接合された実施例4の接合構造、実施例6の導電性ピラーにより接合された実施例8の接合構造、比較例1の導電性ピラーにより接合された比較例3の接合構造、及び、比較例4の導電性ピラーにより接合された比較例6の接合構造は、全て、ΔR<±2%の範囲内にあり、不良が無く、良好であった。
【0202】
「高温保存試験(HTS試験)」
実施例2の導電性ピラーにより接合された実施例4の接合構造、実施例6の導電性ピラーにより接合された実施例8の接合構造、比較例1の導電性ピラーにより接合された比較例3の接合構造、及び、比較例4の導電性ピラーにより接合された比較例6の接合構造から、それぞれ、上面及び底面の直径が40μmの円柱形状の導電性ピラーについて、HTS試験(High Temperature Storage Test)を実施した。それぞれの試験片を、高温恒温器を使用して、温度150℃の高温環境に1000時間暴露した。500時間毎に試験片を取り出し、抵抗値を測定した。それぞれ、80個又は82個の導電性ピラーが直列に接続された配線の電気抵抗値を4端子法により測定し、電気抵抗値の変化率(ΔR)を求めた。
表3に示すように、実施例2の導電性ピラーにより接合された実施例4の接合構造、実施例6の導電性ピラーにより接合された実施例8の接合構造、比較例1の導電性ピラーにより接合された比較例3の接合構造、及び、比較例4の導電性ピラーにより接合された比較例6の接合構造は、全て、ΔR<±2%の範囲内にあり、良好であった。
【0203】
【表3】
【0204】
表1~表3に示すように、実施例の導電性ピラーは、優れたバンプとの接合強度(シェア強度)を有するので、実施例の接合構造は、基材と被接合部材とをより高い接合強度で接合できる。また、実施例の接合構造は、電気抵抗、絶縁信頼性、温度サイクル試験、高温保存試験のいずれもが良好な評価結果を示した。
【符号の説明】
【0205】
1:導電性ピラー、11:基材、12:焼結体、12a:溝部、12b:上面、12c:銅微粒子ペースト、12d:スキージ、13:電極パッド、16:レジスト層、16a:開口部、17:Cu薄膜、17a:レジスト層上部のCu薄膜、17b:焼結体の側面のCu薄膜(レジスト層の開口部の側面のCu薄膜)、17c:第一の接合層(電極パッド上のCu薄膜)、17d:レジスト層の下のCu薄膜、20:接合構造、21:被接合部材、22:第二の接合層、22b:注入ヘッド、23:電極、25:金属間化合物層、26:封止樹脂。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12