(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】流体制御装置、流体制御システム、流体制御方法、及び、流体制御装置用プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 7/06 20060101AFI20220720BHJP
C23C 16/448 20060101ALI20220720BHJP
G05D 16/20 20060101ALI20220720BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
C23C16/448
G05D16/20 Z
H01L21/31 B
(21)【出願番号】P 2017135676
(22)【出願日】2017-07-11
【審査請求日】2020-06-16
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】安田 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】ホーク トーマス
【合議体】
【審判長】刈間 宏信
【審判官】田々井 正吾
【審判官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-019003(JP,A)
【文献】特開2004-263230(JP,A)
【文献】国際公開第2007/114156(WO,A1)
【文献】特表2007-535617(JP,A)
【文献】特許第4197648(JP,B2)
【文献】特開2007-034667(JP,A)
【文献】特表2011-524589(JP,A)
【文献】特表2017-509793(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0041564(US,A1)
【文献】特開2014-013461(JP,A)
【文献】実開昭60-153312(JP,U)
【文献】特開2014-089536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/00 - 7/06
G05D 16/00 - 16/20
C23C 16/00 - 16/56
H01L 21/00 - 21/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路に設けられた第2バルブよりも上流側に設けられた流体機器モジュールと、少なくとも前記流体機器モジュールの一部を制御する制御機構とを備えた流体制御装置であって、
前記流体機器モジュールが、
前記第2バルブよりも上流側に設けられた流体抵抗と、
前記流体抵抗よりも上流側に設けられた第1圧力センサと、
前記第1圧力センサよりも上流側に設けられた第1バルブと、を備え、
前記制御機構が、
前記第1圧力センサで測定される第1圧力に基づいて、前記第1バルブを制御する第1圧力フィードバック制御部を備え、
前記第1圧力フィードバック制御部が、前記第2バルブが閉鎖している状態において、前記第1圧力センサで測定される第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第1バルブを制御し、
前記制御機構が、第1圧力が目標バースト圧力となり、前記第2バルブが開放された以降において、前記流路に流れる流体の流量が目標一定流量となるように前記第1バルブを制御するように構成されていることを特徴とする流体制御装置。
【請求項2】
前記流体機器モジュールが、
前記流体抵抗よりも下流側、かつ、前記第2バルブよりも上流側に設けられた第2圧力センサをさらに備え、
前記制御機構が、
前記第1圧力センサで測定される第1圧力と前記第2圧力センサで測定される第2圧力に基づいて前記流路に流れる流体の流量を算出する流量算出部と、
前記流量算出部で算出される測定流量に基づいて、前記第1バルブを制御する流量フィードバック制御部と、をさらに備え、
前記流量フィードバック制御部が、第1圧力が目標バースト圧力となり、前記第2バルブが開放された以降において、測定流量が目標一定流量となるように前記第1バルブを制御する請求項1記載の流体制御装置。
【請求項3】
前記第1圧力フィードバック制御部が、前記第2バルブが閉鎖しており、第1圧力が目標バースト圧力となった以降において、第1圧力が目標一定流量に相当し、目標バースト圧力よりも低い目標維持圧力となるように前記第1バルブを制御する請求項1記載の流体制御装置。
【請求項4】
前記制御機構が、
前記第1圧力フィードバック制御部による前記第1バルブの制御が行われる前において、前記第2圧力センサで測定される第2圧力に基づいて、前記第1バルブを制御する第2圧力フィードバック制御部をさらに備え、
前記第1圧力フィードバック制御部が、第1圧力が目標バースト圧力よりも高い圧力になった以降において、第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第1バルブを制御する請求項2記載の流体制御装置。
【請求項5】
前記第1圧力フィードバック制御部が、第1圧力、及び、第2圧力に基づいて算出される前記第1バルブから前記第2バルブまでのチャージ容積に流入した流体の質量が、目標バースト圧力に基づいて算出される目標質量となった場合に、第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第1バルブの制御を開始する請求項4記載の流体制御装置。
【請求項6】
前記制御機構が、
前記第2バルブを制御する第2バルブ制御部をさらに備え、
前記第2バルブ制御部が、前記第1圧力フィードバック制御部による前記第1バルブの制御によって第1圧力が目標バースト圧力となった以降に前記第2バルブを開放するように構成された請求項1記載の流体制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載の流体制御装置と、
前記第2バルブと、を備えた流体制御システム。
【請求項8】
流路に設けられた第2バルブよりも上流側に設けられた流体機器モジュールと、少なくとも前記流体機器モジュールの一部を制御する制御機構とを備え、前記流体機器モジュールが、前記第2バルブよりも上流側に設けられた流体抵抗と、前記流体抵抗よりも上流側に設けられた第1圧力センサと、前記第1圧力センサよりも上流側に設けられた第1バルブと、を備えた流体制御装置を用いた流体制御方法であって、
前記第2バルブが閉鎖している状態において、前記第1圧力センサで測定される第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第1バルブを制御し、
第1圧力が目標バースト圧力となり、前記第2バルブが開放された以降において、前記流路に流れる流体の流量が目標一定流量となるように前記第1バルブを制御することを特徴とする流体制御方法。
【請求項9】
流路に設けられた第2バルブよりも上流側に設けられた流体機器モジュールと、少なくとも前記流体機器モジュールの一部を制御する制御機構とを備えた流体制御装置であり、前記流体機器モジュールが、前記第2バルブよりも上流側に設けられた流体抵抗と、前記流体抵抗よりも上流側に設けられた第1圧力センサと、前記第1圧力センサよりも上流側に設けられた第1バルブと、を備えた流体制御装置に用いられるプログラムであって、
前記第1バルブを制御する第1バルブ制御部としての機能をコンピュータに発揮させるものであり、
前記第1バルブ制御部が、
前記第1圧力センサで測定される第1圧力に基づいて、前記第1バルブを制御する第1圧力フィードバック制御部を備え、
前記第1圧力フィードバック制御部が、前記第2バルブが閉鎖している状態において、前記第1圧力センサで測定される第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第1バルブを制御し、
前記第1バルブ制御部が、第1圧力が目標バースト圧力となり、前記第2バルブが開放された以降において、測定流量が目標一定流量となるように前記第1バルブを制御することを特徴とする流体制御装置用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造装置において各種ガスの流体量を制御するために用いられる流体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体の成膜装置の一種である原子層堆積装置(ALD(Atomic Layer Deposition))においては、成分ガスと水蒸気ガスを交互に短時間だけ導入して、オングストローム単位の膜厚で成膜を実現する事が意図されている。
【0003】
このため、例えば1原子分の膜が成膜されるのに必要な流量の各種ガスを成膜チャンバ内へ導入できるように、成膜チャンバ内に導入される各種ガスの流量を制御する流体制御システムは、短時間でバルブの開閉を切り替えるパルス制御によって駆動される(特許文献1参照)。
【0004】
図9(a)に示すように、ALDプロセスにおいて用いられる流体制御システム200Aは、メイン流路の下流端部から分岐した2本の分岐流路を有する流路構造に設けられる。前記メイン流路には、流量フィードバック制御が行われるマスフローコントローラMFCと、ボリュームVとが設けられる。また、第1の分岐流路は成膜チャンバCHMへ接続され、当該成膜チャンバCHMの上流側には第1空圧弁AV1が設けられている。さらに第2の分岐流路は排気流路に接続されており、第2空圧弁AV2が設けられている。
【0005】
このように構成された流体制御システム200Aにおいて、マスフローコントローラMFCはボリュームVに流入するガスの流量が、常に目標流量で一定に保たれるように流量フィードバック制御を行う。また、
図9(b)に示すように、第1空圧弁AV1が開放されている状態では第2空圧弁AV2が閉鎖され、第1空圧弁AV1が閉鎖されている状態では第2空圧弁AV2が開放されるようにそれぞれの動きが同期したパルス制御が繰り返される。このようにして、ボリュームVに対して周期的に同じ圧力のガスがチャージされ、成膜チャンバCHMへ同じ流量で供給できると考えられている。
【0006】
しかしながら、上述したような制御は、空圧弁が指令値に対して高速で応答できるとともに、その応答速度が常に一定であるという前提が必要となる。例えば空圧弁は、工場内における圧縮空気供給源から空気の供給を受けて動作するが、空圧弁以外の機器と圧縮空気供給源は共用されるため、各動作時において供給圧が変動することがある。このため、空圧弁の開放又は閉鎖時における応答特性は、動作ごとに異なってしまう可能性がある。そうすると、各空圧弁が開放、閉鎖されている時間は常に一定になるとは限らないため、成膜チャンバに供給されるガスの流量が各パルスで安定しないという問題が発生する。
【0007】
このように各制御機器の時間的な制御精度に依存して、成膜チャンバに供給されるガスの流量精度が決まってしまうが、ALDのような高速のパルス制御で求められる時間的な制御精度を実現することは現状では難しい。
【0008】
また、第1空圧弁を開放している間に発生する圧力変動等の外乱が発生したとしても流量が一定に保たれるようにロバスト性を高めることも求められているが、空圧弁はオンオフバルブであるため、そのような要望に応えることも難しい。
【0009】
さらに、上記の流体制御システムでは、成膜チャンバにガスを供給していない間は、前記マスフローコントローラを通過したガスの一部は第2空圧弁を介して排気され、成膜チャンバに供給されず無駄になってしまう。
【0010】
加えて、上記の流体制御システムは、2つの分岐流路が必要となるため、大型化や複雑化を招いてしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上述したような問題を一挙に解決するためになされたものであり、時間的な制御性能を高めなくても例えばパルス制御で実現される流体の流量を毎回安定させることができ、1つの流路で構成することで流体供給時に無駄となる流体を無くすことが可能となる流体制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明に係る流体制御装置は、流路に設けられた第2バルブよりも上流側に設けられた流体機器モジュールと、少なくとも前記流体機器モジュールの一部を制御する制御機構とを備えた流体制御装置であって、前記流体機器モジュールが、前記第2バルブよりも上流側に設けられた流体抵抗と、前記流体抵抗よりも上流側に設けられた第1圧力センサと、前記第1圧力センサよりも上流側に設けられた第1バルブと、を備え、前記制御機構が、前記第1圧力センサで測定される第1圧力に基づいて、前記第1バルブを制御する第1圧力フィードバック制御部を備え、前記第1圧力フィードバック制御部が、前記第2バルブが閉鎖している状態において、前記第1圧力センサで測定される第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第1バルブを制御し、前記制御機構が、第1圧力が目標バースト圧力となり、前記第2バルブが開放された以降において、前記流路に流れる流体の流量が目標一定流量となるように前記第1バルブを制御するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る流体制御方法は、流路に設けられた第2バルブよりも上流側に設けられた流体機器モジュールと、少なくとも前記流体機器モジュールの一部を制御する制御機構とを備えた流体制御装置であり、前記流体機器モジュールが、前記第2バルブよりも上流側に設けられた流体抵抗と、前記流体抵抗よりも上流側に設けられた第1圧力センサと、前記第1圧力センサよりも上流側に設けられた第1バルブと、を備えた流体制御装置を用いた流体制御方法であって、前記第2バルブが閉鎖している状態において、前記第1圧力センサで測定される第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第1バルブを制御し、第1圧力が目標バースト圧力となり、前記第2バルブが開放された以降において、前記流路に流れる流体の流量が目標一定流量となるように前記第1バルブを制御することを特徴とする。
【0015】
このようなものであれば、前記第1圧力フィードバック制御部による前記第1バルブの制御によって、前記第2バルブが閉鎖されている状態において前記第1バルブから前記第2バルブに至る流路の容積内に目標バースト圧力で流体をチャージすることができる。このため、前記第2バルブが開放される前には毎回同じ圧力を実現でき、当該第2バルブが開放された際に流れるインパルス状のバースト流の流量を毎回ほぼ同じ値にすることができる。
【0016】
言い換えると、前記第2バルブが開放される前の流体のチャージ状態は、前記第1バルブ、又は、前記第2バルブの時間的な制御特性である過渡応答特性に依存しないので、従来よりも圧力のチャージに関する繰り返し精度を向上させることができる。
【0017】
さらに、前記制御機構が、前記第2バルブが開放された以降において、前記流路に流れる流体の流量が目標一定流量となるように前記第1バルブを制御するので、インパルス状のバースト流が発生した後については、外乱等があってもその流量が維持され、流量制御のロバスト性を高めることができる。
【0018】
加えて、上記の構成によれば、流路は1本であればよく、流路構成を簡素化でき、さらには前記第2バルブを閉鎖して目標バースト圧力へチャージする際には排気されて無駄となる流体を無くすことができる。
【0019】
前記第2バルブが開放されて、バースト流が発生した後において流体の流量を目標流量で一定に保つための具体的な制御態様としては、前記流体機器モジュールが、前記流体抵抗よりも下流側、かつ、前記第2バルブよりも上流側に設けられた第2圧力センサをさらに備え、前記制御機構が、前記第1圧力センサで測定される第1圧力と前記第2圧力センサで測定される第2圧力に基づいて前記流路に流れる流体の流量を算出する流量算出部と、前記流量算出部で算出される測定流量に基づいて、前記第1バルブを制御する流量フィードバック制御部と、をさらに備え、前記流量フィードバック制御部が、第1圧力が目標バースト圧力となり、前記第2バルブが開放された以降において、測定流量が目標一定流量となるように前記第1バルブを制御するものが挙げられる。
【0020】
前記制御機構により、第1圧力に基づいた圧力フィードバック制御から測定流量に基づいた流量フィードバック制御へ切り替える際に、流路に流れる流体の流量に変動が生じにくくし、より制御精度を高められるようにするには、前記第1圧力フィードバック制御部が、前記第2バルブが閉鎖しており、第1圧力が目標バースト圧力となった以降において、第1圧力が目標一定流量に相当し、目標バースト圧力よりも低い目標維持圧力となるように前記第1バルブを制御するものであればよい。
【0021】
前記第1バルブから前記第2バルブへ至る流路の容積内において目標バースト圧力をチャージする際に、チャージ開始当初は前記第1バルブが全開とされてより多くの流体が流れ込むようにし、目標バースト圧力に近づいてからは徐々に前記第1バルブが閉鎖されるようにして、容積全体を速やかに目標バースト圧力に設定できるようにするには、前記制御機構が、前記第1圧力フィードバック制御部による前記第1バルブの制御が行われる前において、前記第2圧力センサで測定される第2圧力に基づいて、前記第1バルブを制御する第2圧力フィードバック制御部をさらに備え、前記第1圧力フィードバック制御部が、第1圧力が目標バースト圧力よりも高い圧力になった以降において、第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第1バルブを制御するものであればよい。
【0022】
前記第1バルブから前記第2バルブに至る流路の容積内全体で目標バースト圧力を達成させるのに必要な量よりも多くの流体が流入するのを事前に防ぎつつ、圧力チャージの高速化を実現できるようにするには、前記第1圧力フィードバック制御部が、第1圧力、及び、第2圧力に基づいて算出される前記第1バルブから前記第2バルブまでのチャージ容積に流入した流体の質量が、目標バースト圧力に基づいて算出される目標質量となった場合に、第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第1バルブの制御を開始するものであればよい。
【0023】
目標バースト圧力が容積内にチャージされるタイミングと、前記第2バルブの開放タイミングを同期させて、常に同じ状態のバースト流が発生させることができるようにするには、前記制御機構が、前記第2バルブを制御する第2バルブ制御部をさらに備え、前記第2バルブ制御部が、前記第1圧力フィードバック制御部による前記第1バルブの制御によって第1圧力が目標バースト圧力となった以降に前記第2バルブを開放するように構成されたものであればよい。
【0024】
本発明に係る流体制御装置と、前記第2バルブと、を備えた流体制御システムであれば、例えばALDのような用途において必要とされる流体制御特性を達成できる。
【0025】
既存の流体制御装置について例えばプログラムをアップデートすることにより、本発明に係る流体制御装置と同等の性能を発揮できるようにするには、流路に設けられた第2バルブよりも上流側に設けられた流体機器モジュールと、少なくとも前記流体機器モジュールの一部を制御する制御機構とを備えた流体制御装置であり、前記流体機器モジュールが、前記第2バルブよりも上流側に設けられた流体抵抗と、前記流体抵抗よりも上流側に設けられた第1圧力センサと、前記流体抵抗よりも下流側、かつ、前記第2バルブよりも上流側に設けられた第2圧力センサと、前記第1圧力センサよりも上流側に設けられた第1バルブと、を備えた流体制御装置に用いられるプログラムであって、前記第1バルブを制御する第1バルブ制御部としての機能をコンピュータに発揮させるものであり、前記第1バルブ制御部が、前記第1圧力センサで測定される第1圧力に基づいて、前記第1バルブを制御する第1圧力フィードバック制御部を備え、前記第1圧力フィードバック制御部が、前記第2バルブが閉鎖している状態において、前記第1圧力センサで測定される第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第1バルブを制御し、前記第1バルブ制御部が、第1圧力が目標バースト圧力となり、前記第2バルブが開放された以降において、測定流量が目標一定流量となるように前記第1バルブを制御することを特徴とする流体制御装置用プログラムを用いればよい。
【0026】
なお、流体制御装置用プログラムは、電子的に配信されるものであってもよいし、CD、DVD、HDD、フラッシュメモリ等のプログラム記憶媒体に記憶されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0027】
このように本発明に係る流体制御装置によれば、前記第2バルブが閉鎖されている間は第1圧力に基づいて目標バースト圧力となるように圧力フィードバック制御を行い、前記第2バルブが開放されてバースト流が発生した後は測定流量に基づく流量フィードバック制御が行うことができる。このため、各流体機器モジュールの時間的な制御特性に依存しておらず、毎回同じ目標バースト圧力をチャージして、同じ状態のバースト流を発生させることができる。さらに、バースト流が発生した後は目標一定流量で保たれるように前記第1バルブが動作するので、外乱に対するロバスト性を発揮することができる。
【0028】
加えて、本発明に係る流体制御装置は複数のラインを必要とせず、流路構成を簡素化し、目標バースト圧力をチャージするために排気されて無駄となる流体も無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る流体制御装置、及び、流体制御システムを示す模式図。
【
図2】第1実施形態における第2バルブのパルス制御動作を示す模式的グラフ。
【
図3】第1実施形態における第2バルブの開放前後における各種制御パラメータと第1バルブの動作を示すタイミングチャート。
【
図4】第1実施形態における流体制御装置、及び、流体制御システムの動作を示すフローチャート。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る流体制御装置、及び、流体制御システムを示す模式図。
【
図6】第2実施形態における流体制御装置、及び、流体制御システムの動作を示すフローチャート。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る流体制御装置、及び、流体制御システムを示す模式図。
【
図8】第3実施形態における流体制御装置、及び、流体制御システムの動作を示すフローチャート。
【
図9】従来の流体制御システムと、その動作について示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の第1実施形態に係る流体制御装置100、及び、流体制御システム200について各図を参照しながら説明する。
【0031】
第1実施形態の流体制御システム200は、原子層堆積装置(以下、ALDとも言う)の成膜チャンバに対して各種ガスをパルス制御によって間欠的に供給するものである。例えばALDの成膜チャンバに対しては、プリカーサと呼ばれるTMA等の成分ガスと水蒸気ガスが交互に供給される。このため流体制御システム200は、TMAを供給するための流路と、水蒸気ガスを供給するための流路にそれぞれ1つずつ設けてある。以下の説明では1つの流路に注目して流体制御装置100、及び、流体制御システム200の詳細について説明する。
【0032】
流体制御システム200は、
図1に示すように、流路に設けられ第2バルブV2と、流路において第2バルブV2よりも上流側に設けられた流体機器モジュールFM、及び、少なくとも前記流体機器モジュールFMの一部を制御する制御機構COMを備えた流体制御装置100と、を備えている。
【0033】
第2バルブV2は
図2に示すように所定周期ごとにオンオフが繰り返されるパルス制御により、開放又は全閉が繰り返されるものである。例えばオン期間におけるパルス幅については例えば10msecオーダに設定してあり、全体の周期については100msecオーダに設定してある。ALDにおいてはこのようなパルス制御が例えば1000サイクル繰り返されて、基板上に1000層分の半導体層が形成される。第2バルブV2は、オンオフバルブであればよく、例えばALDプロセスように応答性を向上させた空圧弁であってもよいし、ピエゾアクチュエータを用いたピエゾバルブであってもよい。
【0034】
前記流体制御装置100は、第2バルブV2が開放されているオン期間において毎回、ほぼ同じ流量のガスが流れるように
図3のグラフに示すような制御を行う。具体的には、流体制御装置100は、第2バルブV2が閉鎖されているオフ期間において目標バースト圧力が第2バルブV2の上流側にチャージされるように動作する。また、流体制御装置100は、第2バルブV2が開放されているオン期間においてはインパルス状のバースト流が発生した後に目標一定流量で行われるように動作する。
【0035】
以下では流体制御装置100の具体的な構成について詳述する。
【0036】
流体制御装置100の流体機器モジュールFMは、
図1に示すように、内部流路が形成されたブロックBに対して複数の機器が取り付けられたものである。流体機器モジュールFMは第2バルブV2とは独立してユニット化してあり、流路に対してブロックBが取り付けられるようにしてある。また、流体機器モジュールFMと第2バルブV2との間には第2バルブV2が閉鎖されている状態において流体であるガスが溜められる下流側ボリュームVが配置してある。この下流側ボリュームVは、例えば流路において他の配管部分よりも径が大きく形成された部分である。
【0037】
この流体機器モジュールFMは、上流側から順番に、供給圧センサP0、第1バルブV1、第1圧力センサP1、流体抵抗R、第2圧力センサP2がブロックBに対して設けてある。
【0038】
供給圧センサP0は、上流側から供給される成分ガス又は水蒸気ガスの供給圧をモニタリングするためのものである。
【0039】
第1バルブV1は、例えばピエゾアクチュエータによって弁体が駆動され、弁体と弁座間の開度が制御されるものである。
【0040】
流体抵抗Rは、例えば層流素子であり、前後に差圧を形成して流路に流れるガスの流量を測定するために用いられる。すなわち、第1圧力センサP1、第2圧力センサP2は流体抵抗Rの前後の差圧を測定される第1圧力、及び、第2圧力に基づいて流量を算出できるように構成してある。
【0041】
第1圧力センサP1は、第1バルブV1と流体抵抗Rとの間の流路の容積である第1容積内に流入しているガスの圧力を第1圧力として測定するものである。
【0042】
第2圧力センサP2は、第2バルブV2と下流側ボリュームVとの間に配置され、流体抵抗Rから第2バルブV2に至るまでの流路の容積である第2容積内に流入しているガスの圧力を第2圧力として測定するものである。
【0043】
第1圧力、及び、第2圧力は測定流量を算出するために用いられるだけでなく、後述するようにそれぞれ単独で第1バルブV1を制御するために用いられる。
【0044】
制御機構COMは、CPU、メモリ、A/D・D/Aコンバータ、入出力手段等を備えたいわゆるコンピュータによって構成してあり、メモリに格納されている流体制御装置用プログラムが実行されて、各種機器が協業することにより、少なくとも流量算出部FC、第1バルブ制御部1、第2バルブ制御部2としての機能を発揮するものである。
【0045】
流量算出部FCは、第1圧力センサP1で測定される第1圧力、及び、第2圧力センサP2で測定される第2圧力に基づいて、流路を流れるガスの流量を算出する。流量の算出式については知られている様々な式を用いることができる。
【0046】
第1バルブ制御部1は、第1バルブV1の開度を例えば印加する電圧を変化させて制御するものである。この第1バルブ制御部1は、所定の制御タイミングごとにフィードバックされる値の種類、又は、目標値が変更されて、制御モードが切り替えられるように構成してある。このような制御モードの切替によって、第2バルブV2が開放されているオン期間においてバースト流が流れた後に一定流量が維持されるようにガスを流す。ここで、バースト流とは第2バルブV2が閉鎖されているオフ期間において流路内の容積にチャージされたガスが、第2バルブV2が開放された時点で一気に流出する流れを指す。バースト流は、当該バースト流が流れた後に保たれる一定流量よりも流量値が大きく、維持時間は短い。例えば、第1実施形態では、バースト流の流量値は一定流量値に対して2倍以上となる。
【0047】
より具体的には、第1バルブ制御部1は、第1圧力フィードバック制御部11、第2圧力フィードバック制御部12、流量フィードバック制御部13、制御切替部14と、を備えている。
【0048】
制御切替部14は、第1圧力フィードバック制御部11、第2圧力フィードバック制御部12、流量フィードバック制御部13のいずれか1つに第1バルブV1の制御を実施させるものである。制御切替部14は流量算出部FCから入力される測定流量、第2圧力センサP2から入力される第2圧力に基づいて、判定条件を満たすごとに第1バルブV1の制御を切り替える。なお、判定条件等の詳細については後述する動作の説明において詳述する。
【0049】
第1圧力フィードバック制御部11は、第1圧力センサP1で測定される第1圧力に基づいて第1バルブV1を制御するものである。より具体的には、第1圧力フィードバック制御部11は、設定される目標圧力と第1圧力との偏差が小さくなるように第1バルブV1の開度を制御する。なお、第1実施形態では目標圧力として、少なくとも目標バースト圧力と目標維持圧力の2種類が設定され、制御条件が満たされると制御切替部14によって適宜変更される。ここで、目標バースト圧力は、第2バルブV2が閉鎖されている状態において流路内の容積にチャージされるガスの圧力の目標値であって、発生させたいバースト流の流量値の大きさに応じて設定される。また、目標維持圧力は、バースト流が発生した後に維持した一定流量に応じて設定されるガスの圧力の目標値である。バースト流の流量値は、一定流量値よりも大きく設定するので、目標バースト圧力は目標維持圧力よりも高い圧力に設定される。また、第1圧力フィードバック制御部11は、第2バルブV2が開放される時点の前後において第1バルブV1の開度を制御する。
【0050】
第2圧力フィードバック制御部12は、第2圧力センサP2で測定される第2圧力に基づいて第1バルブV1を制御するものである。より具体的には、第2圧力フィードバック制御部12は、設定される目標圧力と第2圧力との偏差が小さくなるように第1バルブV1の開度を制御する。また、第2圧力フィードバック制御部12は、第2バルブV2が閉鎖されている状態において第1バルブV1から第2バルブV2までの容積に所定質量のガスが流入するまでの間、第1バルブV1の開度を制御する。
【0051】
流量フィードバック制御部13は、流量算出部FCで算出される測定流量に基づいて第1バルブV1を制御するものである。より具体的には、流量フィードバック制御部13は、設定される目標流量と測定流量との偏差が小さくなるように第1バルブV1の開度を制御する。また、流量フィードバック制御部13は、第1圧力フィードバック制御部11、及び、第2圧力フィードバック制御部12による第1バルブV1の制御が行われていない間、第1バルブV1の制御を行う。
【0052】
第2バルブ制御部2は、第2バルブV2の開閉タイミングを制御するものであり、例えば予め定められた周期でオンオフを繰り返すパルス制御を行うものである。より具体的には、第2バルブ制御部2は、流体制御装置100により第1バルブV1から第2バルブV2までの流路の容積に目標バースト圧力がチャージされるまでの間は第2バルブV2を閉鎖し、チャージされてから所定時間後に第2バルブV2を開放するようにそのタイミングが設定してある。なお、第2バルブ制御部2は、例えば第1圧力センサP1において測定される第1圧力が所定期間、目標バースト圧力が維持された場合には、所定待機時間後に第2バルブV2を開放するようにしてもよい。すなわち、第2バルブ制御部2は、第1圧力、第2圧力、測定流量をトリガ-として動作するように構成してもよい。
【0053】
次にこのように構成された第1実施形態の流体制御システム200による1サイクルの制御動作について
図3のタイミングチャート、及び、
図4のフローチャートを参照しながら説明する。以下の説明では第2バルブV2が閉鎖されてオフ期間が始まり、第2バルブV2が開放されて再び閉鎖されるまでの間の動作に注目して説明する。
【0054】
図4に示すように、第2バルブV2が閉鎖されると(ステップS1)、第1バルブ制御部1は、流量フィードバック制御部13によって目標維持流量が維持されるように第1バルブV1の制御が行われる(ステップS2)。
図3における閉鎖時流量フィードバック期間に示すように第2バルブV2が閉鎖されている間は、流量フィードバック制御により第1バルブV1の開度が制御され、第1バルブV1から第2バルブV2の間の容積に流入するガスによって第1圧力、第2圧力が上昇する。
図4に示すように、制御切替部14において第2圧力が閾値を超えたかどうかの判定が行われ(ステップS3)、超えていない場合にはステップS2の流量フィードバックによって第1バルブV1を制御する動作が継続される。
【0055】
一方、第2圧力が閾値を超えた場合には、制御切替部14はユーザにより設定されている目標バースト圧力と、第1バルブV1から第2バルブV2までの流路の容積に基づいて目標質量Tmを算出する(ステップS4)。ここで、目標質量Tmは例えば第1バルブV1から第2バルブV2までの流路の容積全体が目標バースト圧力となった場合に充填されているガスの理想質量に対して所定割合だけ小さい値に設定してある。すなわち、目標質量Tmとなった時点では、容積内の一部では目標バースト圧力以上となっていても、全体で平均すると目標バースト圧力には到達していない。目標質量Tmについては流体制御装置100の設計値から算出される第1バルブV1から流体抵抗Rまでの第1容積の体積と、流体制御装置100の設計値から算出される流体抵抗RからブロックBの出口までの容積の値、及び、ユーザにより設定される下流側ボリュームVの容積の値から算出される流体抵抗Rから第2バルブV2までの第2容積の体積の和に目標バースト圧力を乗じることで算出できる。
【0056】
さらに、制御切替部14は流量フィードバック制御部13による第1バルブV1の制御から、第2圧力フィードバック制御部12による第1バルブV1の制御へと切り替える(ステップS5)。ここで、
図3における第2圧力フィードバック制御期間に示すように、目標バースト圧力と第2圧力との偏差が大きいので、第2圧力フィードバック制御部12によって第1バルブV1は、ほぼ全開状態に保たれることによる。したがって、最大の流量でガスが容積に対して流入することになり、容積内の圧力を急速に上昇させることができる。
【0057】
図4に示すように、第2圧力フィードバック制御部12による制御が継続している間、制御切替部14は容積に対して流入している現在のガスの質量を算出する(ステップS6)。ここで、現在のガスの質量は、第1容積の体積に現在測定されている第1圧力を乗じた値と、第2容積の体積に現在測定されている第2圧力を乗じた値の和として算出される。
【0058】
さらに、制御切替部14は、現在質量Cmと目標質量Tmを比較し(ステップS7)、現在質量Cmが目標質量Tmに到達していない間はステップS5及びステップS6の動作が継続される。現在質量Cmが目標質量Tmと同じ値になった時点で、制御切替部14は第2圧力フィードバック制御部12による第1バルブV1の制御から、第1圧力フィードバック制御部11による第1バルブV1の制御へと切り替える(ステップS8)。ここで、
図3における第1圧力フィードバック制御期間中のバースト圧チャージ期間の開始点を見ると分かるように、制御が切り替えられた時点では第1圧力は目標バースト圧力を超えているが、第2圧力は目標バースト圧力に到達していない状態となる。これは、流体抵抗Rよりも上流側の第1容積のほうが先にガスが流入するため、第2容積の圧力のほうが遅れて圧力が上昇することと、流体抵抗Rよりも下流側の第2圧力に基づいて第1バルブV1を制御していることに起因する。すなわち、第2圧力に基づいて第1バルブV1が制御されているので、第1容積内の圧力が先に目標バースト圧力に到達しても第1バルブV1の開度が小さくされることがなく、そのまま目標バースト圧力以上となるように開度が維持される。このようにすることで、容積に対してガスを急速に流入させ、容積全体が目標バースト圧力となるまでにかかる時間を短縮している。
【0059】
また、第1圧力フィードバック制御部11による第1バルブV1の制御が開始された時点では第1圧力は目標バースト圧力よりも高い圧力となっているので、第1バルブV1は閉鎖される方向へと制御される。
【0060】
この結果、流入するガスの量が徐々に低下するとともに第1容積中のガスが第2容積へと移動する。この変化が生じている間、
図4に示すよう、制御切替部14は、第1圧力(第2圧力)が目標バースト圧力になったかどうかを判定する(ステップS9)。第1圧力が目標バースト圧力になっていない間はステップS8の動作が継続され、第1圧力が目標バースト圧力になった時点で、第2バルブV2が開放されてバースト流が発生した後において保たれる目標一定流量に相当する圧力である目標維持圧力を算出する(ステップS10)。例えば第2バルブV2が開放されている状態では成膜チャンバに接続される流体抵抗Rの下流側はほぼ真空圧に保たれるので、目標一定流量を実現するために必要な目標維持圧力は流量算出式に基づいて算出できる。
【0061】
さらに、制御切替部14は算出された目標維持圧力を第1圧力フィードバック制御部11に対して目標圧力として設定し、目標維持圧力と第1圧力の偏差が小さくなるように第1バルブV1の制御が行われるように制御を切り替える(ステップS11)。すなわち、
図3のバースト待機期間に示すように、第1圧力よりも目標維持圧力は低い圧力に設定されるので、
図3及び
図4に示すように、第1バルブV1は全閉された状態が保たれる(ステップS12)。
【0062】
図3のバースト待機期間に示すように第1圧力、第2圧力がともに目標バースト圧力で保たれている状態が所定時間継続された後、
図3及び
図4に示すように、第2バルブ制御部2は第2バルブV2を開放し、(ステップS13)、その結果、インパルス状のバースト流が発生する(ステップS14)。また、
図3のバースト期間においても第1圧力フィードバック制御部11は、目標維持流量で第1圧力が保たれるように動作している。
【0063】
バースト期間において、制御切替部14は第2圧力が閾値を下回ったかどうかを判定し(ステップS15)、下回った場合には、制御切替部14は第1圧力フィードバック制御部11による第1バルブV1の制御から流量フィードバック制御部13による第1バルブV1の制御へと切り替える(ステップS16)。
図3のバースト後流量一定期間に示すように、事前に第1圧力が目標一定流量に相当する目標維持流量となるように制御されているので、バースト流量が目標一定流量まで低下した時点でほとんど変動なく、制御を切り替えることができる。
【0064】
以上のようなステップS1からステップS16までの動作をサイクルごとに繰り返すことにより、各サイクル中に実施される各オン期間において流れる流量がほぼ同じになるように制御される。
【0065】
このように構成された流体制御システム200、及び、流体制御装置100によれば、第2バルブV2が閉鎖されている間の期間において、圧力フィードバックによって第1バルブV1から第2バルブV2までの流路の容積にガスが目標バースト圧力となるようにチャージされるので、開放時に発生するバースト流の流量を毎回ほぼ同じ流量にすることができる。
【0066】
また、バースト流が流れた後の一定流量期間においては制御が圧力フィードバックから流量フィードバックに切り替えられて流れる流量を目標一定流量で保つことができる。このため、オン期間中に例えばガスの供給圧が変動する等といった外乱が発生したとしても、流れる流量に変動が生じにくくなり、流量制御をロバストなものにできる。また、バースト流が流れた後に一定流量に保たれるので、短時間のステップ入力に対して追従するように流量制御を行う場合と比較して、一定流量で安定するまでにかかる立ち上がり時間を短縮し、流量制御として見た場合の応答速度を向上させることができる。
【0067】
さらに、オン期間において流れるガスの流量は圧力フィードバック制御と流量フィードバック制御に基づいて決定されており、オン期間又はオフ期間の時間長さの制御精度に依存せずに決定できる。
【0068】
したがって、第2バルブV2が開放されているオン期間において流れるガスの流量は各オン期間において常に同じ値に揃えることができる。このため、ALDのように高速のパルス制御によりガスを成膜チャンバに供給する用途に対しても好適に用いることができる。
【0069】
加えて、1つの流路しか必要とせず、従来のように複数の流路が必要となって構造が複雑化することがない。また、ガスをチャージしている間において排気されるガスが存在せず、無駄をなくすことができる。
【0070】
また、第1バルブV1から第2バルブV2の容積に対してガスをチャージする際に第2圧力フィードバック制御部12による制御をまず行い、その後、第1圧力フィードバック制御部11へと切り替えることにより、容積全体を目標バースト圧力までチャージするのに必要な時間を短縮できる。このため、パルス制御のサイクル周期を短縮することができ、ALDにおいて全ての半導体層を形成するまでにかかるサイクルタイムを短縮し、半導体製造のスループットを向上させることができる。
【0071】
次に本発明の第2実施形態に係る流体制御システム200、及び、流体制御装置100について
図5及び
図6を参照しながら説明する。なお、第1実施形態において説明した各部について対応するものについては同じ符号を付すこととする。
【0072】
第2実施形態の流体制御装置100は、第1実施形態と比較して制御機構COMの構成が異なっている。すなわち、
図5に示すように第2実施形態の流体制御装置100は第2圧力フィードバック制御部12が省略してあるとともに、制御切替部14、及び、第1圧力フィードバック制御部11の構成が一部異なっている。また、第1実施形態の動作を示す
図4のフローチャートと第2実施形態の動作を示す
図6のフローチャートを比較すると分かるように、第2実施形態では、第1実施形態におけるステップS4、ステップS6が省略され、ステップS5、及び、ステップS7が異なっている。
【0073】
以下では、第1実施形態とは異なっている部分についてのみ詳述する。
【0074】
第2実施形態の第1圧力フィードバック制御部11は、第1バルブV1から第2バルブV2に至る流路の容積に対してガスがチャージされる際の第1バルブV1の動作を制御する。すなわち、第1圧力フィードバック制御部11は、
図6のステップS3に示すように第2圧力が閾値を超えた場合には、第1バルブV1を目標チャージ圧力と第1圧力の偏差が小さくなるように制御する(ステップS5’)。ここで、目標チャージ圧力は、目標バースト圧力よりも高い圧力であり、例えば第1実施形態において
図3の第2圧力フィードバック期間において達成される第1圧力の最高値が設定される。
【0075】
制御切替部14は、第1圧力が目標チャージ圧力に到達したことを検出すると(ステップS7’)、第1圧力フィードバック制御部11の目標圧力を目標バースト圧力へと下げる。以降の動作については第1圧力フィードバック制御部11、及び、制御切替部14の動作は第1実施形態と同様である。
【0076】
このように構成された第2実施形態の流体制御システム200、及び、流体制御装置100であっても、第1実施形態と同様に短時間で第1バルブV1から第2バルブV2に至る流路の容積全体に目標バースト圧力となるまでガスをチャージすることができる。
【0077】
また、第2バルブV2開放前に必要とされる目標チャージ圧力をチャージし、各オン期間において第2バルブV2が開放される際に発生するバースト流の流量をほぼ同じにしつつ、バースト流が流れた後は流量フィードバックによる第1バルブV1の制御により目標一定流量で保つことができる。
【0078】
したがって、第2実施形態であっても第1実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0079】
次に本発明の第3実施形態に係る流体制御システム200、及び、流体制御装置100について
図7及び
図8を参照しながら説明する。なお、第1実施形態において説明した各部について対応するものについては同じ符号を付すこととする。
【0080】
第3実施形態の流体制御装置100は、第1実施形態と比較して制御機構COMの構成が異なっている。すなわち、
図7に示すように第3実施形態の流体制御装置100は、供給圧センサP0、第2圧力センサP2、第2圧力フィードバック制御部12、流量算出部FC、流量フィードバック制御部13が省略してあるとともに、制御切替部14、及び、第1圧力フィードバック制御部11の構成が一部異なっている。また、第1実施形態の動作を示す
図4のフローチャートと第3実施形態の動作を示す
図8のフローチャートを比較すると分かるように、第3実施形態では、第1実施形態におけるステップS2~S4、S6、S15が省略され、ステップS5、及び、ステップS7が第2実施形態と同様の動作に変更してある。さらに、第3実施形態では、第1実施形態におけるステップS16についても動作が異なっている。
【0081】
すなわち、第3実施形態の流体制御装置100は、第1圧力のみに基づいて制御されているが、制御切替部14が目標圧力を変更することにより、制御モードが変更されるように構成してある。
【0082】
以下では、第1実施形態、及び、第2実施形態とは異なっている部分についてのみ詳述する。
【0083】
第3実施形態の第1圧力フィードバック制御部11は、第1バルブV1から第2バルブV2に至る流路の容積に対してガスがチャージされる際の第1バルブV1の動作を制御する。より具体的には、第1圧力フィードバック制御部11は、前述した第2実施形態のステップS5’S7’と同様の動作を行うように構成してある。
【0084】
また、容積全体に対して目標バースト圧力でガスがチャージされた後に第2バルブV2が開放された後は第1実施形態では第1フィードバック制御部による制御から流量フィードバック制御部13による制御に切り替えられていたのに対して、
図8のステップS16’に示すように、第1圧力が目標一定流量に相当する目標維持圧力となるように第1圧力フィードバック部により第1バルブV1の制御が継続されるようにしてある。
【0085】
このような第3実施形態であっても、流体抵抗Rの下流側に圧力変動が生じない限りは第1実施形態、第2実施形態と同様にバースト流が流れた後は目標一定流量で保つことができる。
【0086】
その他の実施形態について説明する。
【0087】
流体制御装置については、第2バルブ制御部を省略して例えば第2バルブの開閉制御については行わないように構成してもよい。例えば、別のシステムにより、第2バルブの開閉がパルス制御されている場合には、その別のシステムからタイミング信号を取得し、そのタイミング信号に合わせて第1バルブ制御部による第1バルブの制御を行うように構成すればよい。
【0088】
流量を一定にするための制御は、測定流量をフィードバックする制御だけでなく、圧力のみをフィードバックして、流体抵抗の上流側の圧力を一定に保つことによる制御であっても構わない。例えば流体抵抗の下流側が真空引きされるような成膜チャンバに接続されており、圧力がほぼ一定に保たれている場合には、流量に相当する差圧を形成することで実質的に流量制御を実現できる。したがって、本明細書では流量制御は流量をフィードバックするものだけでなく、圧力フィードバックがされるものも含むように定義している。
【0089】
第2バルブが開放されている状態においては、少なくとも一部の期間は流量フィードバック、又は、圧力フィードバックにより目標一定流量が保たれるように構成されていればよい。例えば、バースト流が流れている間については流量フィードバック制御部による制御を行わずに、バースト流の流量が所定流量となってから流量制御を開始するようにしてもよい。
【0090】
第2バルブが閉鎖されている状態において第1バルブから第2バルブに至る流路の容積全体に目標バースト圧力となるようにチャージする際に、各実施形態のように第1圧力が一度目標バースト圧力を超えた状態にしないようにしてもよい。すなわち、第2バルブが閉鎖されている状態において、第1圧力フィードバック制御部による第1バルブの制御について最初から目標バースト圧力だけで目標値の変更を行わずに制御を継続してもよい。
【0091】
流体抵抗については層流素子に限られるものではなく、オリフィスやその他の抵抗素子であっても構わない。
【0092】
流体機器モジュールについては、第1バルブ、第1圧力センサ、流体抵抗、第2圧力センサがそれぞれ1つのブロックに取り付けられて単一のユニット化されているものに限られず、各機器がばらばらに流路上に設けられてモジュールを形成するものであってもよい。
【0093】
本発明に係る流体制御装置は、ALDにのみ適用されるものではなく、その他のガスや液体の流量制御に用いられるものである。特に第2バルブについてオン期間とオフ期間が交互に高速で切り替えられるパルス制御等において特に顕著な効果を奏し得る。
【0094】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0095】
200・・・流体制御システム
100・・・流体制御装置
FM ・・・流体機器モジュール
COM・・・制御機構
1 ・・・第1バルブ制御部
11 ・・・第1圧力フィードバック制御部
12 ・・・第2圧力フィードバック制御部
13 ・・・流量フィードバック制御部
14 ・・・制御切替部
2 ・・・第2バルブ制御部
V1 ・・・第1バルブ
V2 ・・・第2バルブ
R ・・・流体抵抗
P1 ・・・第1圧力センサ
P2 ・・・第2圧力センサ