(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】パンツ型おむつ
(51)【国際特許分類】
A61F 13/51 20060101AFI20220720BHJP
A61F 13/496 20060101ALI20220720BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
A61F13/51
A61F13/496
A61F13/49 413
A61F13/49 312Z
A61F13/49 315A
(21)【出願番号】P 2017214648
(22)【出願日】2017-11-07
【審査請求日】2020-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】植田 麻穂
(72)【発明者】
【氏名】藤井 敬司
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-073511(JP,A)
【文献】特開2013-255679(JP,A)
【文献】特開2013-144246(JP,A)
【文献】特開2012-228594(JP,A)
【文献】国際公開第2017/175291(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向を有し、
前側胴回り部と、
後側胴回り部と、
吸収体と、
前記左右方向に伸縮する弾性部材と、を有し、
前記前側胴回り部又は前記後側胴回り部の少なくとも一方に、前記前後方向に貫通した孔部を備えた
パンツ型おむつであって、
前記前側胴回り部又は前記後側胴回り部の少なくとも一方は、肌側シートと、前記肌側シートより非肌側に設けられた非肌側シートを有し、
前記肌側シートと前記非肌側シートは、前記吸収体より非肌側に設けられており、
前記前側胴回り部及び前記後側胴回り部のうち、前記前後方向において、前記前側胴回り部と前記後側胴回り部とが重ねられていない非重なり領域に、少なくとも1つの前記孔部を備え、
前記上下方向において、前記吸収体より上側に、前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に前記弾性部材が
設けられており、
前記後側胴回り部は、
前記前側胴回り部と前記前後方向に重ねられた後側重なり領域と、
前記前側胴回り部と前記前後方向に重ねられていない後側非重なり領域と、を備えており、
前記前側胴回り部と前記後側胴回り部とは、前記左右方向の両端部において互いに接合されており、 前記後側非重なり領域は、接合された前記両端部の最下端よりも下側に突出した部分に設けられており、
前記後側重なり領域及び前記後側非重なり領域には、それぞれ、少なくとも1つの前記孔部が設けられており、
前記後側非重なり領域において単位面積あたりに備えられている前記孔部の数は、前記後側重なり領域において単位面積あたりに備えられている前記孔部の数よりも少ない、ことを特徴とする
パンツ型おむつ。
【請求項2】
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向を有し、
前側胴回り部と、
後側胴回り部と、
吸収体と、
前記吸収体を肌側から覆うトップシートと、
前記左右方向に伸縮する弾性部材と、を有し、
前記前側胴回り部又は前記後側胴回り部の少なくとも一方に、前記前後方向に貫通した孔部を備えた
パンツ型おむつであって、
前記トップシートより肌側に位置するシート部材と、を有し、
前記前側胴回り部及び前記後側胴回り部のうち、前記前後方向において、前記前側胴回り部と前記後側胴回り部とが重ねられていない非重なり領域に、少なくとも1つの前記孔部を備え、
前記上下方向の前記吸収体より上側において、前記トップシートと前記シート部材との間に前記弾性部材が
設けられておらず、
前記後側胴回り部は、
前記前側胴回り部と前記前後方向に重ねられた後側重なり領域と、
前記前側胴回り部と前記前後方向に重ねられていない後側非重なり領域と、を備えており、
前記前側胴回り部と前記後側胴回り部とは、前記左右方向の両端部において互いに接合されており、 前記後側非重なり領域は、接合された前記両端部の最下端よりも下側に突出した部分に設けられており、
前記後側重なり領域及び前記後側非重なり領域には、それぞれ、少なくとも1つの前記孔部が設けられており、
前記後側非重なり領域において単位面積あたりに備えられている前記孔部の数は、前記後側重なり領域において単位面積あたりに備えられている前記孔部の数よりも少ない、ことを特徴とする
パンツ型おむつ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の
パンツ型おむつであって、
前記後側胴回り部は、前記左右方向に伸縮する弾性部材を
備え、
前記後側非重なり領域における最も下側に位置する第1下端弾性部材と、前記第1下端弾性部材の上側に隣り合う前記弾性部材との間隔が、
前記後側重なり領域における最も下側に位置する第2下端弾性部材と、前記第2下端弾性部材の上側に隣り合う前記弾性部材との間隔よりも大きい、ことを特徴とする
パンツ型おむつ。
【請求項4】
請求項3に記載の
パンツ型おむつであって、
前記第1下端弾性部材の張力は、前記第2下端弾性部材の張力よりも小さい、ことを特徴とする
パンツ型おむつ。
【請求項5】
請求項3または4に記載の
パンツ型おむつであって、
前記後側非重なり領域のうち、前記第1下端弾性部材よりも前記上下方向の下側に、少なくとも1つの前記孔部を備えている、ことを特徴とする
パンツ型おむつ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の
パンツ型おむつであって、
液吸収性の吸収性本体を備え、
前記吸収性本体の前側上端部が前記前側胴回り部と接合され、前記吸収性本体の後側上端部が前記後側胴回り部と接合されており、
前記吸収性本体の前記左右方向両端部には、前記上下方向に沿って伸縮する脚回り弾性部材が設けられており、
前記後側非重なり領域のうち、前記上下方向において、前記脚回り弾性部材による伸縮性が発現している範囲と重複しない領域に、少なくとも1つの前記孔部を備えている、ことを特徴とする
パンツ型おむつ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の
パンツ型おむつであって、
液吸収性の吸収性本体を備え、
前記吸収性本体の前側上端部が前記前側胴回り部と接合され、前記吸収性本体の後側上端部が前記後側胴回り部と接合されており、
前記吸収性本体の前記左右方向両端部には、前記上下方向に沿って伸縮する脚回り弾性部材が設けられており、
前記後側非重なり領域のうち、前記上下方向において、前記脚回り弾性部材による伸縮性が発現している範囲と重複する領域では、
前記左右方向における前記吸収性本体の一方側の端から、
前記左右方向における前記吸収性本体の一方側の端と前記後側胴回り部の一方側の端との間の距離の1/2以上離れた位置に、少なくとも1つの前記孔部を備えている、ことを特徴とする
パンツ型おむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型おむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、尿などの排泄物を吸収する吸収性物品として使い捨ておむつ等が知られている。例えば、文献1には、厚み方向に貫通した複数のスリット8を形成することで、オープン型の使い捨ておむつ1内及びパンツ型の使い捨ておむつ30内の蒸れを防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、文献1に示す使い捨ておむつ1、30の自然状態においては、胴回り弾性部材7の収縮によって、使い捨ておむつ1、30の着用者や着用させようとする者が、スリット8を視認することができない恐れがあり、通気性の良を外観から認識することができない場合があった。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、吸収性物品の着用者や着用させようとする者に、吸収性物品の貫通孔を視認させやすくして、通気性の良さを認識させやすくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための主たる発明は、 互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向を有し、
前側胴回り部と、
後側胴回り部と、
吸収体と、
前記左右方向に伸縮する弾性部材と、を有し、
前記前側胴回り部又は前記後側胴回り部の少なくとも一方に、前記前後方向に貫通した孔部を備えたパンツ型おむつであって、
前記前側胴回り部又は前記後側胴回り部の少なくとも一方は、肌側シートと、前記肌側シートより非肌側に設けられた非肌側シートを有し、
前記肌側シートと前記非肌側シートは、前記吸収体より非肌側に設けられており、
前記前側胴回り部及び前記後側胴回り部のうち、前記前後方向において、前記前側胴回り部と前記後側胴回り部とが重ねられていない非重なり領域に、少なくとも1つの前記孔部を備え、
前記上下方向において、前記吸収体より上側に、前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に前記弾性部材が設けられており、
前記後側胴回り部は、
前記前側胴回り部と前記前後方向に重ねられた後側重なり領域と、
前記前側胴回り部と前記前後方向に重ねられていない後側非重なり領域と、を備えており、
前記前側胴回り部と前記後側胴回り部とは、前記左右方向の両端部において互いに接合されており、 前記後側非重なり領域は、接合された前記両端部の最下端よりも下側に突出した部分に設けられており、
前記後側重なり領域及び前記後側非重なり領域には、それぞれ、少なくとも1つの前記孔部が設けられており、
前記後側非重なり領域において単位面積あたりに備えられている前記孔部の数は、前記後側重なり領域において単位面積あたりに備えられている前記孔部の数よりも少ない、ことを特徴とするパンツ型おむつである。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸収性物品の貫通孔を視認しやすくなり、通気性の良さを実感させやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは、自然状態のおむつ1を前側から見た概略正面図である。
図1Bは、自然状態のおむつ1を後側から見た概略背面図である。
【
図2】
図2は、展開した伸長状態のおむつ1を肌側から見た平面図である。
【
図5】
図5A及び
図5Bはおむつ1に設けられる非重なり領域の変形例について示す図である。
【
図6】
図6Aは、
図2中の後側胴回り部30のA-A断面の模式図、
図6Bは、
図2中の後側胴回り部30のB-B断面の模式図である。
【
図7】後側非重なり領域30NLにおける孔部50の配置の変形例について示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向を有し、前側胴回り部と、後側胴回り部と、を有し、前記前側胴回り部又は前記後側胴回り部の少なくとも一方に、前記前後方向に貫通した孔部を備えた吸収性物品であって、前記前側胴回り部及び前記後側胴回り部のうち、前記前後方向において、前記前側胴回り部と前記後側胴回り部とが重ねられていない非重なり領域に、少なくとも1つの前記孔部を備えている、ことを特徴とする吸収性物品。
【0010】
このような吸収性物品によれば、自然状態において、前側からも後側からも孔部が視認しやすい。また、孔部が非重なり領域に設けられていることから、使用者は、該孔部を通して前後方向の一方側から他方側を見ることが可能となるため、貫通孔であることを認識しやすい。したがって、使用者に、吸収性物品の貫通孔を視認させやすく、また、通気性の良さを認識させやすくすることができる。
【0011】
かかる吸収性物品において、前記後側胴回り部は、前記前側胴回り部と前記前後方向に重ねられていない後側非重なり領域を備えており、前記後側非重なり領域に、少なくとも1つの前記孔部を備えている、ことが望ましい。
【0012】
このような吸収性物品によれば、後側胴回り部において、前側からも後側からも孔部が視認しやすく、また、孔部が貫通孔であることを認識しやすくなる。したがって、使用者に、吸収性物品の貫通孔を視認させやすく、また、通気性の良さを認識させやすくすることができる。
【0013】
かかる吸収性物品において、前記前側胴回り部と前記後側胴回り部とは、前記左右方向の両端部において互いに接合されており、前記後側非重なり領域は、接合された前記両端部の最下端よりも下側に突出した部分に設けられている、ことが望ましい。
【0014】
このような吸収性物品によれば、後側非重なり領域が、吸収性物品の着用時において、着用者の臀部を覆う臀部カバーとしての機能を有し、また、当該臀部カバーに設けられた孔部が使用者に認識されやすくなる。これにより、汗をかきやすい臀部において良好な通気性を有していることを、使用者に認識させることができる。
【0015】
かかる吸収性物品において、前記後側胴回り部は、前記左右方向に伸縮する弾性部材を備え、前記後側胴回り部は、前記前側胴回り部と前記前後方向に重ねられている後側重なり領域を有しており、前記後側非重なり領域における最も下側に位置する第1下端弾性部材と、前記第1下端弾性部材の上側に隣り合う前記弾性部材との間隔が、前記後側重なり領域における最も下側に位置する第2下端弾性部材と、前記第2下端弾性部材の上側に隣り合う前記弾性部材との間隔よりも大きい、ことを特徴とする吸収性物品。
ことが望ましい。
【0016】
このような吸収性物品によれば、後側非重なり領域における収縮力を後側重なり領域における収縮力よりも小さくすることができるため、後側非重なり領域の孔部が皺で覆われてしまう恐れを軽減し、吸収性物品を前側から見た場合にも、後側胴回り部の孔部を視認しやすくすることができる。
【0017】
かかる吸収性物品において、前記第1下端弾性部材の張力は、前記第2下端弾性部材の張力よりも小さい、ことが望ましい。
【0018】
このような吸収性物品によれば、後側非重なり領域における収縮力をより小さくすることができるため、後側非重なり領域の孔部が皺で覆われてしまう恐れを軽減し、吸収性物品を前側から見た場合にも、後側胴回り部の孔部をより視認しやすくすることができる。
【0019】
かかる吸収性物品において、前記後側非重なり領域のうち、前記第1下端弾性部材よりも前記上下方向の下側に、少なくとも1つの前記孔部を備えている、ことが望ましい。
【0020】
このような吸収性物品によれば、第1下端弾性部材よりも下側の領域では、弾性部材(第1下端弾性部材)による張力が作用し難いため皺が形成され難い。したがって、当該領域に配置された孔部は、皺や収縮の影響を受け難く、より視認しやすくなる。
【0021】
かかる吸収性物品において、液吸収性の吸収性本体を備え、前記吸収性本体の前側上端部が前記前側胴回り部と接合され、前記吸収性本体の後側上端部が前記後側胴回り部と接合されており、前記吸収性本体の前記左右方向両端部には、前記上下方向に沿って伸縮する脚回り弾性部材が設けられており、前記後側非重なり領域のうち、前記上下方向において、前記脚回り弾性部材による伸縮性が発現している範囲と重複しない領域に、少なくとも1つの前記孔部を備えている、ことが望ましい。
【0022】
このような吸収性物品によれば、上下方向において脚回り弾性部材による伸縮性が発現している範囲と重複しない領域では、該脚回り弾性部材による収縮力が作用し難いため、当該領域に配置された孔部は上下方向に縮み難く、視認性が悪化することを抑制しやすくなる。したがって、後側非重なり領域が良好な通気性を有していることを使用者に認識させやすくなる。
【0023】
かかる吸収性物品において、液吸収性の吸収性本体を備え、前記吸収性本体の前側上端部が前記前側胴回り部と接合され、前記吸収性本体の後側上端部が前記後側胴回り部と接合されており、前記吸収性本体の前記左右方向両端部には、前記上下方向に沿って伸縮する脚回り弾性部材が設けられており、前記後側非重なり領域のうち、前記上下方向において、前記脚回り弾性部材による伸縮性が発現している範囲と重複する領域では、前記左右方向における前記吸収性本体の一方側の端から、前記左右方向における前記吸収性本体の一方側の端と前記後側胴回り部の一方側の端との間の距離の1/2以上離れた位置に、少なくとも1つの前記孔部を備えている、ことが望ましい。
【0024】
このような吸収性物品によれば、脚回り弾性部材から所定距離以上離れて孔部が配置されることにより、該脚回り弾性部材による収縮力が孔部の位置まで作用し難くなり、孔部は上下方向に縮み難く、視認性が悪化することを抑制しやすくなる。これにより、後側非重なり領域が良好な通気性を有していることを使用者に認識させやすくすることができる。
【0025】
かかる吸収性物品において、前記後側胴回り部は、前記前側胴回り部と前記前後方向に重ねられた後側重なり領域と、前記前側胴回り部と前記前後方向に重ねられていない後側非重なり領域と、を備えており、前記後側非重なり領域において単位面積あたりに備えられている前記孔部の数は、前記後側重なり領域において単位面積あたりに備えられている前記孔部の数よりも少ない、ことが望ましい。
【0026】
このような吸収性物品によれば、後側重なり領域と比較して強度が低くなりやすい後側非重なり領域において開孔密度を小さくすることにより、後側非重なり領域の強度が過度に低下することを抑制することができる。これにより、後側非重なり領域を破れ難くするとともに、各々の孔部を目立ちやすくして、使用者に良好な通気性を認識させやすくすることができる。
【0027】
===本実施形態に係る使い捨ておむつについて===
<<<使い捨ておむつ1の構成について>>>
図1Aは、本実施形態の吸収性物品の一例としての自然状態のおむつ1を前側から見た概略正面図である。
図1Bは、自然状態のおむつ1を後側から見た概略背面図である。
図2は、展開した伸長状態のおむつ1を肌側から見た平面図である。
図3は、
図2中のIII-III断面図である。
図4は、
図2中のIV-IV断面図である。
【0028】
以下の説明では、
図1の状態(自然状態)のおむつ1は、「上下方向」を有し、おむつ1の上下方向の胴回り開口部BH側を「上側」、股下側を「下側」という。また、おむつ1は、上下方向と交差する「左右方向」と、上下方向及び左右方向と交差する「前後方向」を有し、前後方向の前側を「腹側」、後側を「背側」ともいう。さらに、前後方向を「厚さ方向」ともいい、着用者に接触する側を「肌側」、その反対側を「非肌側」ともいう。また、
図2の状態(展開状態及び伸長状態)でのおむつ1の長手方向を「長手方向」、長手方向の一方側を「腹側」、他方側を「背側」ともいい、長手方向の一方側の端部及び他方側の端部をそれぞれ「上側」、長手方向における略中央部C10側を「下側」ともいう。
図2等におけるC-Cは、左右方向中心を示している。
【0029】
なお、おむつ1の「自然状態」とは、以下のように定義される。まず、製品として梱包されているおむつ1をパッケージから取り出した後、前側胴回り部20及び後側胴回り部30を左右方向の両外側に引っ張り、前側胴回り部20及び後側胴回り部30がそれぞれ各部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長させる。この伸長させた状態を15秒継続させた後、おむつ1の伸長させた状態を解除して机等の平面に置く。そして、この平面に置いた状態で5分間経過させた状態がおむつ1の自然状態である。「展開状態」とは、前側胴回り部20の側端部20aと後側胴回り部30の側端部30aとの接合をそれぞれ分離し、開いておむつ1全体を平面的に展開した状態である。「伸長状態」とは、おむつ1(前側胴回り部20及び後側胴回り部30)を皺がなくなるまで伸長させた状態をいい、具体的には、おむつ1を構成する部材(前側胴回り部20や後側胴回り部30)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長された状態をいう。
【0030】
本実施形態に係る使い捨ておむつ1(以下、「おむつ1」と呼ぶ。)は、主に乳幼児を着用対象とした所謂3ピースタイプのパンツ型おむつであり、着用者の股間に配置される吸収性本体10と、吸収性本体10の前側上端部に接合され、着用者の腹側を覆う前側胴回り部20と、吸収性本体10の後側上端部に接合され、背側を覆う後側胴回り部30を有する。前側胴回り部20と後側胴回り部30は、それぞれ「胴回り部」ともいう。
【0031】
図2に示すように、展開状態のおむつ1は、前側胴回り部20と後側胴回り部30とが長手方向に間隔を空けて平行に並んだ状態で、これら胴回り部20、30同士の間に吸収性本体10が架け渡されて、吸収性本体10の縦方向の端部と各胴回り部20、30がそれぞれ接着剤等により接合固定されて、平面視略H形状となっている。そして、略H形状の展開状態から、長手方向の略中央部C10を折り位置として吸収性本体10を二つ折りするとともに、二つ折り状態で、互いに対向する前側胴回り部20と後側胴回り部30の左右方向の両端部、つまり、前側胴回り部20の側端部(「端部」ともいう。)20aと後側胴回り部30の側端部30a(「端部」ともいう。)を溶着等で接合すると、前側胴回り部20と後側胴回り部30が環状に繋がって、
図1A及び
図1Bに示すような胴回り開口BH及び一対の脚回り開口LH、LHが設けられたパンツ型のおむつ1となる。
【0032】
図2、
図3及び
図4に示すように、吸収性本体10は、平面視略長方形状を有し、吸収性本体10の長手方向は、上下方向に沿うように配置されている。また、吸収性本体10は、吸収体11と、吸収体11を肌側から覆うトップシート13と、吸収体11を非肌側から覆う外装シート14、バックシート15とを備える。
【0033】
吸収体11は、尿等の排泄物を吸収することができる液吸収性の吸収性コア11cと、吸収性コア11cの外周面を被覆するティッシュペーパー等の液透過性のコアラップシート11rを有する。吸収性コア11cは、所定の液体吸収性素材を所定形状の一例である平面視略砂時計形状に成形した成形体である。液体吸収性素材としては、パルプ繊維等の液体吸収性繊維や、高吸収性ポリマー(所謂SAP)等の液体吸収性粒状物を例示できる。
【0034】
トップシート13は、吸収体11から上下方向及び左右方向に突出する平面サイズの不織布等の液透過性のシートである。また、バックシート15は、吸収体11から上下方向及び左右方向に突出する平面サイズのシートであり、液不透過性の防漏シートである。バックシート15の非肌側には、不織布の外装シート14が設けられている。
【0035】
吸収性本体10の左右方向における両側部、すなわち脚回り開口LHを形成する部位には、吸収性本体10の長手方向に沿って伸縮するレッグギャザーLG(脚周り伸縮部)がそれぞれ設けられている。レッグギャザーLGは、バックシート15及び外装シート14の厚さ方向の間に、吸収性本体10の長手方向に沿って伸長された状態の糸ゴム等の脚回り弾性部材45が挟み込まれて固定されることにより形成されている(
図4等参照)。この脚回り弾性部材45によって、吸収性本体10の長手方向(上下方向)に沿った伸縮性がレッグギャザーLGに付与され、おむつ1着用時における脚回り開口LHのフィット性を向上させている。
【0036】
また、吸収性本体10の左右方向において、レッグギャザーLGよりも内側には、一対のレッグサイドギャザーLSG(立体ギャザー)が設けられている。レッグサイドギャザーLSGは、吸収性本体10の肌側に備えられ、脚繰りの隙間からの液漏れを防止する防漏壁としての機能を有している。レッグサイドギャザーLSGは、吸収性本体10の左右方向両端から、外装シート14が肌側に立ち上がることにより形成される。レッグサイドギャザーLSGの左右方向の内側端部には、吸収性本体10の長手方向に沿って伸長された状態の糸ゴム等の防漏壁弾性部材46が設けられており、該防漏壁弾性部材46による伸縮性が付与されることによって、レッグサイドギャザーLSGが肌側に立ち上がる。
【0037】
図3に示すように、前側胴回り部20は、厚さ方向の肌側から順に肌側シート21及び非肌側シート22が重ねられて接合されており、後側胴回り部30は、厚さ方向の肌側から順に肌側シート31及び非肌側シート32が重ねられて接合されている。肌側シート21、非肌側シート22、及び肌側シート31、非肌側シート32は、いずれもスパンボンドやSMS(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド)等の不織布からなる平面視略矩形のシート部材からなる。本実施形態においては、肌側シート21、31にはSMS不織布を用いており、非肌側シート22、32には、スパンボンド不織布を用いている。スパンボンド不織布は、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等の熱可塑性樹脂の単独繊維や、PP及びPEの鞘芯構造等の複合繊維からなるものであっても良い。
【0038】
肌側シート21と非肌側シート22、及び肌側シート31と非肌側シート32は、ホットメルト等の接着剤でそれぞれ接合されて前側胴回り部20、及び後側胴回り部30が形成されている。
【0039】
図3に示すように、前側胴回り部20の上側の端部は、肌触りの向上と耐久性向上のために、前側胴回り部20の上端である前側上端20tを起点として、非肌側シート22が肌側の下方へ折り返されて、折り返し部分22fを形成している。同様に、後側胴回り部30の上部も、後側胴回り部30の上端である後側上端30tを起点として、非肌側シート32が肌側の下方へ折り返されて、折り返し部分32fを形成している。
【0040】
また、前側胴回り部20は、折り返し部分22fの下端部から吸収性本体10の腹側の上端部までを肌側から覆うように配置したシート部材24を備えている。同様に、後側胴回り部30は、折り返し部分32fの下端部から吸収性本体10の背側の上端部までを肌側から覆うように配置したシート部材34を備えている。シート部材24、34は、不織布等からなる矩形状のシート部材である。このシート部材24、34によって、吸収性本体10の上下方向の端部が着用者の肌と直接接触することを抑制することができ、着用時における胴回りの肌触りを良好なものにすることができる。また、シート部材24、34は、前側胴回り部20及び後側胴回り部30の上下方向の上側端部の強度を高めることができる。
【0041】
さらに、前側胴回り部20及び後側胴回り部30は、肌側から非肌側に貫通する孔部50が、上下方向及び左右方向に所定の間隔で複数設けられている(
図1、
図2参照)。孔部50の詳細については、後述する。
【0042】
前側胴回り部20の肌側シート21と非肌側シート22の間には、左右方向に沿った糸ゴム等の複数の弾性部材25、25・・・が配置されている。弾性部材25は、左右方向に伸長された状態で、肌側シート21及び非肌側シート22に、接着剤等により接合固定されている。複数の弾性部材25、25・・・は、上下方向に間隔を空けながら、並んで配置されている。
【0043】
同様に、後側胴回り部30の肌側シート31と非肌側シート32の間には、左右方向に沿った糸ゴム等の複数の弾性部材35、35・・・が配置されている。弾性部材35は、左右方向に伸長された状態で、肌側シート31及び非肌側シート32に、接着剤等により接合固定されている。複数の弾性部材35、35・・・は、上下方向に間隔を空けながら、並んで配置されている。
【0044】
弾性部材25、35は、前側胴回り部20及び後側胴回り部30に対して左右方向の伸縮性を付与し、自然状態において前側胴回り部20及び後側胴回り部30に複数の皺を形成させる。前側胴回り部20及び後側胴回り部30に形成された皺の多くは、各シート21、22、31、32を左右方向に縮めて、上下方向に沿った形状となる。
【0045】
なお、弾性部材25、35のうち、左右方向の中央部付近の吸収体11と重複する領域を非連続として、当該領域においては、弾性部材25、35による伸縮性が発現しないようにしている。これにより、吸収体11に作用する左右方向の収縮が抑制されて、吸収体11を略平坦に維持しやすくなるため、排泄物の漏れ等を抑制することができる。
【0046】
<<<孔部50について>>>
以下、孔部50について説明する。前側胴回り部20及び後側胴回り部30に備えられた複数の孔部50は、それぞれ肌側シート21、31及び非肌側シート22、32を貫通しており、おむつ1の着用時において、肌側から非肌側への通気性を向上させる。前側胴回り部20及び後側胴回り部30の孔部50は、それぞれ略円形状で、略同じ大きさである。
図2に示すように、前側胴回り部20には、左右において吸収性本体10より外側、且つ、上下方向において吸収体11と重なる領域11fに、複数の孔部50が千鳥状に配置されている。このとき、弾性部材25が孔部50によって切断されないこと、すなわち、弾性部材25が孔部50によって非連続とされていないことが好ましい。本実施形態における孔部50は、
図2に示されるように上下方向に隣り合う弾性部材25,25の間の領域に、弾性部材25と重複しないように配置されているため、弾性部材25は孔部50によって非連続とされていない。
【0047】
同様に、後側胴回り部30には、左右方向において吸収性本体10より外側、且つ、上下方向において吸収体11と重なる領域11bに、複数の孔部50が千鳥状に配置されている。そして、各々の孔部50は、
図2に示されるように上下方向に隣り合う弾性部材35,35の間の領域に、弾性部材35と重複しないように配置されており、弾性部材35は孔部50によって非連続とされていない。
【0048】
なお、孔部50が備えられている領域はこの限りでない。例えば、前側胴回り部20及び後側胴回り部30において、領域11f,11bよりも上下方向の上側の領域や、吸収体11の上端部よりも上側の領域等に孔部50が備えられていても良い。
【0049】
おむつ1は、前側胴回り部20と後側胴回り部30とが前後方向に重ねられた重なり領域と、前後方向に重ねられていない非重なり領域とを有している。ここで、「前後方向に重ねられた」とは、自然状態において前側胴回り部20と後側胴回り部30とが前後方向に重複した部分を有していることを言う。同様に、「前後方向に重ねられていない」とは、自然状態において前側胴回り部20と後側胴回り部30とが前後方向に重複した部分を有していないことを言う。つまり、おむつ1を着用させようとする人(若しくは購入した人)がパッケージからおむつ1を取り出して実際に使用する際に、前側胴回り部20と後側胴回り部30とが重なって見える領域が重なり領域であり、重なって見えない部分が非重なり領域である。
【0050】
本実施形態では、
図1A及び
図1Bに示されるように、上下方向において側端部20a及び側端部30aが形成されている領域では、前側胴回り部20と後側胴回り部30とが前後方向に重複している。一方、側端部20a及び側端部30aよりも下側の領域では両者が重複していない。すなわち、後側胴回り部30は、側端部(端部)30aと前後方向に重複する領域において、前側胴回り部20と重ねられた後側重なり領域30Lを有し、側端部(端部)30aの最下端よりも下側に突出した領域において、前側胴回り部20と重ねられていない後側非重なり領域30NLを有している。そして、おむつ1では、後側非重なり領域30NLに少なくとも1以上の孔部50が備えられている。後側非重なり領域30NLは、自然状態のおむつ1において、前側からも後側からも視認可能な部分である(
図1A及び
図1B参照)。したがって、当該部分に配置された孔部50は、自然状態において前側からも後側からも視認しやすく、且つ、貫通孔であることが認識されやすい。
【0051】
仮に、孔部50が前側胴回り部20と後側胴回り部30とが前後方向に重ねられた重なり領域にのみ備えられていた場合、当該重なり領域では前側及び後側のどちらか一方側からしか孔部50を視認することができない。さらにこの場合、孔部50の前後方向に重ねて胴回り部20,30が設けられていることから、孔部50が貫通孔であることがわかり難い。例えば、おむつ1の使用者(おむつ1を着用させようとする者や、おむつ1の着用者)が前側胴回り部20の重なり領域に設けられた孔部50を前後方向の前側から見たとき、前後方向の後側に重ねられた後側胴回り部30によって孔部50が塞がれているように見えるため、孔部50が貫通孔であることを認識し難い場合がある。
【0052】
これに対して、本実施形態では、後側非重なり領域30NLに孔部50が設けられていることから、おむつ1の使用者は、該孔部50を通して前後方向の一方側から他方側を見ることが可能となる。すなわち、孔部50が前側からも後側から視認可能であり、且つ、貫通孔であることを認識しやすい。したがって、おむつ1が良好な通気性を有していることを認識しやすくなる。また、後側非重なり部30NLは、おむつ1の着用時に着用者の臀部を覆う臀部カバーとしての機能を有する部分である。したがって、おむつ1は、着用時に汗をかきやすい臀部領域において良好な通気性を有していることを、使用者に認識させることができる。
【0053】
なお、
図1A及び
図1Bでは、おむつ1の非重なり領域として後側胴回り部30に後側非重なり領域30NLが示されているが、前側胴回り部20及び後側胴回り部30の他の部分に非重なり領域が設けられていても良い。
図5A及び
図5Bはおむつ1に設けられる非重なり領域の変形例について示す図である。
図5Aは、変形例のおむつ1を自然状態において前側から見た概略正面図であり、
図5Bは、変形例のおむつ1を自然状態において後側から見た概略背面図である。同
図5A及び
図5Bに示されるように、変形例のおむつ1では、後側胴回り部30の上端30tが前側胴回り部20の上端20tよりも上下方向の上側に位置している。つまり、変形例の後側胴回り部30の上端部は、前側胴回り部20の上端20tよりも上側に突出しており、当該突出した領域は、前側胴回り部20と前後方向に重ねられていない後側非重なり領域30NLUとなっている。そして、後側非重なり領域30NLUに孔部50が備えられている。
【0054】
この変形例の場合も、後側非重なり領域30NLUに備えられた孔部50は、前側からも後側からも視認可能であり、且つ、貫通孔であることが一見して明らかである。したがって、使用者は、変形例のおむつ1が後側非重なり領域30NLUにおいて良好な通気性を有していることを認識しやすい。なお、
図5A及び
図5Bでは、後側非重なり領域30NLUが後側胴回り部30の上端部に設けられていたが、非重なり領域が前側胴回り部20側に設けられ、前側胴回り部20の非重なり領域に孔部50が備えられていても良い。この場合も上記と同様に、孔部50が前側からも後側からも視認可能であり、且つ、貫通孔であることが一見して明らかであることから、おむつ1が良好な通気性を有していることを使用者に認識させやすくすることができる。
【0055】
また、おむつ1では、
図2に示されるように後側非重なり領域30NLにおける最も下側に位置する弾性部材35a(第1弾性部材)と、弾性部材35aの上下方向の上側に隣り合う弾性部材35bとの間隔Lxが、後側胴回り部30のうち前側胴回り部20と重ねられた領域(上下方向において側端部20a,30aが形成されている領域)における最も下側に位置する弾性部材35c(第2弾性部材)と、弾性部材35cの上下方向の上側に隣り合う弾性部材35dとの間隔Lyよりも大きいことが好ましい(Lx>Ly)。このように弾性部材35を配置することで、非重なり後側非重なり領域30NLの収縮力をより小さくして、後側非重なり領域30NLに形成される皺の数を減らし、後側非重なり領域30NLにおいて孔部50を視認しやすくすることができる。
【0056】
ここで、「収縮力」とは、自然状態において、前側胴回り部20又は後側胴回り部30の収縮状態を維持する力である。より詳しく言うと、おむつ1を左右方向の任意の位置で前側胴回り部20又は後側胴回り部30をそれぞれ右半分と左半分とに分断した場合に、右半分と左半分との間で相互に作用する力が収縮力である。この収縮力が大きいほど自然状態でより収縮された状態となり、発生する皺の数も多くなる。
【0057】
図6Aは、
図2中の後側胴回り部30のA-A断面の模式図、
図6Bは、
図2中の後側胴回り部30のB-B断面の模式図である。
図6Aは、上述した間隔Lyに含まれる領域の断面を表し、
図6Bは、上述した間隔Lxに含まる領域の断面を表している。また、
図6A及び
図6Bにおいて、肌側シート31と非肌側シート32は、それぞれ一体化して示しており、その断面を左斜め下のハッチング領域で示している。
【0058】
同
図6A及び
図6Bに示すように、弾性部材35が左右方向に収縮することによって、後側胴回り部30が左右方向に収縮し、厚さ方向に起伏した複数の皺が形成される。このとき、
図6Aに示されるA-A断面の方が、
図6Bに示されるB-B断面よりも収縮力の大きさが大きいため、後側胴回り部30に形成される単位領域当たりの皺の数はA-A断面の方がB-B断面よりも多くなる。
【0059】
そのため、多くの皺が形成されている
図6Aでは、皺によって隠されてしまう孔部50が存在し、後側胴回り部30を非肌側から見た場合に視認することができる孔部50の数が少なくなってしまう。また、後側胴回り部30自体を左右方向に縮めることに伴い、孔部50も左右方向に縮められてしまい、孔部50を視認しづらくなってしまう。一方、皺がより少ない
図6Bでは、後側胴回り部30を非肌側から見た場合に、孔部50が皺によって隠され難くなる。また、
図6Bでは、
図6Aの場合よりも左右方向への収縮が小さくなるため、孔部50の左右方向への縮みよりもより少ない縮み度合いとなるため、より孔部50を視認しやすくなる。
【0060】
また、後側非重なり領域30NLにおける最も下側に位置する弾性部材35aの張力が、後側胴回り部30のうち前側胴回り部20と重ねられた領域における最も下側に位置する弾性部材35cの張力よりも小さいことがより好ましい。これによって、後側非重なり領域30NLの収縮力をより小さくして、後側非重なり領域30NLに形成される皺の数を減らし、後側非重なり領域30NLにおいて孔部50が皺で覆われてしまう恐れを軽減し、おむつ1を前側及び後側のどちらから見ても、後側非重なり領域30NLの孔部を視認しやすくすることができる。
【0061】
また、後側非重なり領域30NLにおける最も下側に位置する弾性部材35aよりもさらに下側に孔部50が設けられていることがより好ましい。弾性部材35aよりも下側の領域では他の領域と比較して弾性部材35の張力が作用し難く収縮し難いため、後側胴回り部30に皺が形成され難い。したがって、当該領域に配置された孔部50は、皺や収縮の影響を受け難く、より視認しやすくなる。これにより、使用者は、おむつ1における良好な通気性をより認識しやすくなる。
【0062】
また、
図2に示されるように、後側非重なり領域30NLに備えられている孔部50のうち少なくとも一部は、上下方向において、レッグギャザーLGを形成する脚回り弾性部材45による伸縮性が発現している範囲(
図2の実線で示される範囲、以下脚回り弾性部材45の「有効長」とも呼ぶ)と重複しない領域に配置されている。言い換えると、後側非重なり領域30NLのうち、上下方向において脚回り弾性部材45の有効長と重複しない領域に少なくとも1つの孔部50が備えられている。
【0063】
上下方向における脚回り弾性部材45の有効長範囲では、後側非重なり領域30NLを上下方向に収縮させる力が作用する。したがって、当該領域に配置されている孔部50は上下方向に縮められやすく、視認し難くなるおそれがある。これに対して、上下方向において脚回り弾性部材45による伸縮性が発現している範囲(有効長)と重複しない領域では、該脚回り弾性部材45による上下方向の収縮力が作用し難いため、当該領域に配置された孔部50は上下方向に縮み難く、視認性が悪化することを抑制しやすくなる。したがって、脚回り弾性部材45の有効長と重複しない領域に孔部50が備えられていることにより、後側非重なり領域30NLが良好な通気性を有していることを使用者に認識させやすくなる。
【0064】
但し、後側非重なり領域30NLのうち、上下方向において脚回り弾性部材45の有効長と重複する領域に孔部50が備えられていても良い。
図7は、後側非重なり領域30NLにおける孔部50の配置の変形例について示す概略平面図である。同
図7では、後側非重なり領域30NLに設けられた複数の孔部50のうち、孔部50Lが上下方向において脚回り弾性部材45の有効長と重複する領域に配置されている。
【0065】
孔部50が上下方向において脚回り弾性部材45の有効長と重複する場合、該孔部50は、左右方向において該脚回り弾性部材45から所定の距離だけ離れた位置に配置されることが望ましい。
図7で、吸収性本体10の左右方向の端10esと後側胴回り部30の左右方向の端30esとの間の左右方向における距離をWS30とすると、吸収性本体10の左右方向の端10esからWS30の1/2以上離れた位置に孔部50Lが備えられている。脚回り弾性部材45から所定距離(WS30×1/2)以上離れて孔部50Lが配置されることにより、該脚回り弾性部材45による伸縮性が孔部50Lの位置まで作用し難くなり、孔部50Lは上下方向に縮み難く、視認性が悪化することを抑制しやすくなる。これにより、後側非重なり領域30NLが良好な通気性を有していることを使用者に認識させやすくすることができる。
【0066】
また、おむつ1の後側胴回り部30では、前後方向において前側胴回り部20と重ねられていない後側非重なり領域30NLに備えられている孔部50の単位面積あたりの数が、前後方向において前側胴回り部20と重ねられた領域(後側重なり領域30L)に備えられている孔部50の単位面積あたりの数よりも少ない。すなわち、後側胴回り部30では、後側非重なり領域30NLにおける開孔密度が、後側重なり領域30Lにおける開孔密度よりも小さい。
【0067】
後側非重なり領域30NL(臀部カバー)は、前後方向に他のシート部材が重ね合わされていない(シート部材が積層されていない)ため、後側重なり領域30Lと比較して強度が低くなりやすく、おむつ1を着用する際に、使用者(着用する者や、着用させる者)の指が引っかかる等によって破れてしまうおそれがある。そこで、後側非重なり領域30NLにおける開孔密度を後側重なり領域30Lよりも小さくすることで、強度が過度に低下することを抑制して後側非重なり領域30NLを破れ難くすることができる。また、開孔密度が小さいことにより、後側非重なり領域30NLでは各々の孔部50が目立ちやすくなり、使用者に良好な通気性を認識させやすくしている。
【0068】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0069】
上述の実施形態においては、前側胴回り部20及び後側胴回り部30の両方に、それぞれ孔部50を形成したが、これに限られない。例えば、前側胴回り部20又は後側胴回り部30のいずれかのみに孔部50を形成したものでも良い。但し、前側胴回り部20と後側胴回り部30の両方に孔部50形成することによって、おむつ1の通気性をより向上させることができる。
【0070】
上述の実施形態においては、前側胴回り部20及び後側胴回り部30に、円形状の孔部50を設けたがが、これに限られない。例えば、矩形や楕円、星形等任意の形状の貫通孔を設けても良い。さらに、前側胴回り部20と後側胴回り部30とで、異なる形状の孔部50を設けても良いし、異なる大きさの孔部50を設けても良い。
【0071】
上記実施の形態に係るおむつ1は、乳幼児を着用対象としたが、これに限定されるものではなく、大人を着用対象としても良い。また、上述の実施形態においては、吸収性物品の一例として所謂3ピースタイプの使い捨ておむつ1を例示したが、何らこれに限られない。例えば、前側胴回り部20と後側胴回り部30を一体として形成した所謂2ピースタイプの使い捨ておむつや、テープ式の使い捨ておむつでも良い。
【符号の説明】
【0072】
1 おむつ(吸収性物品)、
10 吸収性本体、10es 端(左右方向)、
11 吸収体、
11c 吸収性コア、11r コアラップシート、
11f 領域、11b 領域、
13 トップシート、14 外装シート、15 バックシート、
20 前側胴回り部、
20a 側端部(端部)、20t 前側上端、
21 肌側シート、22 非肌側シート、22f 折り返し部分、
24 シート部材、25 弾性部材、26 弾性部材、28 弾性部材、
30 後側胴回り部、
30a 側端部(端部)、30es 端(左右方向)、30t 後側上端、
30L 後側重なり領域、
30NL 後側非重なり領域、30NLU 後側非重なり領域、
31 肌側シート、32 非肌側シート、32f 折り返し部分、
34 シート部材、35 弾性部材、
35a 弾性部材(第1弾性部材)、35b 弾性部材、
35c 弾性部材(第2弾性部材)、35d 弾性部材、
45 脚回り防漏壁弾性部材46 防漏壁弾性部材、
50 孔部、50L 孔部、
BH 胴回り開口部、LH 脚回り開口部、
LG レッグギャザー、LSG レッグサイドギャザー(立体ギャザー)