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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】研磨方法および研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/00 20120101AFI20220720BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220720BHJP
   B24B 47/22 20060101ALI20220720BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20220720BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20220720BHJP
   B24B 21/00 20060101ALN20220720BHJP
【FI】
B24B49/00
H01L21/304 622Y
B24B47/22
B24B9/00 601G
B24B49/10
B24B21/00 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018009755
(22)【出願日】2018-01-24
(65)【公開番号】P2018171698
(43)【公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2017068444
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】杜 峯杰
(72)【発明者】
【氏名】柏木 誠
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-022059(JP,A)
【文献】特開平09-085619(JP,A)
【文献】特開2010-131687(JP,A)
【文献】特開2009-119537(JP,A)
【文献】特開2015-196211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/00、49/10
B24B 47/22
B24B 9/00
B24B 21/00
B24B 7/04
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つのセンサで、基板保持面上の少なくとも3点の高さをそれぞれ測定し、
前記センサの出力信号に基づいて前記基板保持面の傾きを算出し、
押圧部材の押圧面と平行な面上の少なくとも3点の高さを前記センサでそれぞれ測定し、
前記センサの出力信号に基づいて前記押圧面の傾きを算出し、
前記基板保持面と前記押圧面との相対的角度を算出し、その後、
基板を前記基板保持面上に保持し、
前記相対的角度が許容範囲内となるように前記基板保持面または前記押圧面の傾きを調整し、その後、
前記基板保持面または前記押圧面の傾きが調整された状態で、前記押圧面で研磨具を前記基板に押し付けることで該基板の研磨を開始することを特徴とする研磨方法。
【請求項2】
前記相対的角度が許容範囲内となるように前記基板保持面または前記押圧面の傾きが調整された状態で、前記押圧面で研磨具を前記基板に押し付けることで該基板を研磨する工程は、前記相対的角度が許容範囲内となるように傾きが調整された前記押圧面で研磨具を前記基板の周縁部に押し付ける工程であることを特徴とする請求項1に記載の研磨方法。
【請求項3】
前記基板を前記基板保持面上に保持する工程は、前記相対的角度が許容範囲内となるように傾きが調整された前記基板保持面上に基板を保持する工程であることを特徴とする請求項1に記載の研磨方法。
【請求項4】
前記基板保持面上の少なくとも3点は、前記基板保持面の外周部上の少なくとも3点であることを特徴とする請求項1に記載の研磨方法。
【請求項5】
前記基板保持面上の少なくとも3点の高さを測定する工程は、少なくとも3つのセンサで、基板保持面内の複数の領域のそれぞれにおいて少なくとも3点の高さを測定する工程であり、
前記基板保持面の傾きを算出する工程は、前記複数の領域のそれぞれの傾きを算出し、該算出された前記複数の領域の傾きの平均を算出し、該算出された平均を前記基板保持面の傾きに指定する工程であることを特徴とする請求項1に記載の研磨方法。
【請求項6】
前記複数の領域のそれぞれにおいて少なくとも3点の高さを測定する工程は、前記基板保持面を間欠的に回転させながら行われることを特徴とする請求項5に記載の研磨方法。
【請求項7】
前記複数の領域は、前記基板保持面の中心の周りに等間隔で配列されていることを特徴とする請求項5に記載の研磨方法。
【請求項8】
前記基板保持面の傾きおよび前記押圧面の傾きは、3次元の座標系上のベクトルとして表されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の研磨方法。
【請求項9】
基板保持面を有する基板保持部と、
研磨具を基板に押し付けるための押圧面を有する押圧部材と、
前記基板保持面上の少なくとも3点の高さ、および前記押圧面と平行な面上の少なくとも3点の高さを測定する少なくとも3つのセンサと、
前記センサの出力信号に基づいて前記基板保持面の傾きおよび前記押圧面の傾きを算出し、前記基板保持面と前記押圧面との相対的角度を算出する処理部と、
前記基板保持面または前記押圧面の傾きを調整する傾き調整装置と
記基板保持面または前記押圧面の傾きが調整された状態で、前記押圧部材に押圧力を与えて前記研磨具を前記基板保持面上の基板に押し付ける押圧装置を備え
前記押圧装置は、前記傾き調整装置により前記基板保持面または前記押圧面の傾きが調整された後に、前記研磨具を前記基板保持面上の基板に押し付けて前記基板の研磨を開始することを特徴とする研磨装置。
【請求項10】
前記傾き調整装置は、前記押圧面の傾きを調整するための第1チルト機構および第2チルト機構を備え、前記押圧部材は前記第1チルト機構および前記第2チルト機構に連結されていることを特徴とする請求項9に記載の研磨装置。
【請求項11】
前記第1チルト機構および前記第2チルト機構は、互いに垂直な第1支持軸および第2支持軸をそれぞれ備えており、前記押圧部材は、前記第1支持軸および前記第2支持軸を中心に回転可能であることを特徴とする請求項10に記載の研磨装置。
【請求項12】
前記傾き調整装置は、前記押圧面を傾動させる押圧部材傾動アクチュエータであり、前記押圧部材傾動アクチュエータは、少なくとも2つのアクチュエータを備えていることを特徴とする請求項9に記載の研磨装置。
【請求項13】
前記傾き調整装置は、前記基板保持面を傾動させる基板保持面傾動アクチュエータであり、前記基板保持面傾動アクチュエータは、少なくとも2つのアクチュエータを備えていることを特徴とする請求項9に記載の研磨装置。
【請求項14】
前記センサは、前記基板保持面の外周部の上方に位置していることを特徴とする請求項9に記載の研磨装置。
【請求項15】
前記センサは、変位センサであることを特徴とする請求項9に記載の研磨装置。
【請求項16】
前記センサが固定されたブラケットをさらに備えたことを特徴とする請求項9に記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハなどの基板の表面または周縁部を研磨具で研磨して、所望の研磨プロファイルを得る研磨方法および研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の周縁部を研磨するために、従来から研磨装置が使用されている。図42は、従来の研磨装置を示す模式図である。ウェーハなどの基板Wは、基板保持部である基板ステージ200のステージ面200a上に真空吸引などにより保持され、基板ステージ200とともにその軸心を中心に回転される。研磨具である研磨テープ205は、押圧部材208によって基板Wの周縁部に押し付けられる。押圧部材208はエアシリンダ209に連結されており、研磨テープ205を基板Wに押し付ける力はエアシリンダ209から押圧部材208に付与される。基板Wの研磨中、基板Wの中心に純水が供給され、基板Wの上面は純水で覆われる。研磨テープ205は、純水の存在下で基板Wの周縁部を研磨し、基板Wの周縁部に図43に示すような階段状の窪み210を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-150131号公報
【文献】特開2013-172019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、研磨装置の組み立て精度などの問題に起因して、基板ステージ200および押圧部材208の一方または両方が傾いていることがある。例えば、図44に示すように、押圧部材208が傾いている場合、研磨テープ205は基板Wの周縁部に対して斜めに押し当てられ、結果として、斜めに研磨された面が基板Wの周縁部に形成されてしまう。同様に、図45に示すように、基板ステージ200の軸心が傾いている場合、研磨テープ205は基板Wの周縁部に対して斜めに押し当てられ、結果として、斜めに研磨された面が基板Wの周縁部に形成されてしまう。
【0005】
同様の問題は、図46に示す、基板の表面(表側面または裏側面)を研磨する研磨装置にも起こりうる。図46に示す研磨装置は、基板Wを保持し、回転させる基板保持部300と、基板Wの表面(表側面または裏側面)を研磨する研磨ヘッド301を有する。研磨ヘッド301は、研磨テープなどの研磨具302を保持している。研磨ヘッド301は、その下部に押圧部材303を備えており、研磨具302を押圧部材303で基板Wの表面に押し付けるように構成されている。研磨ヘッド301はその軸心を中心に回転しながら、基板保持部300によって回転されている基板Wの表面に研磨具302を押し付けることで、基板Wの表面を研磨する。
【0006】
図46に示す研磨装置において、研磨ヘッド301または基板保持部300のいずれかが他方に対して傾いていると、研磨具302は基板Wの表面に適切に接触することができず、結果として所望の研磨プロファイルを得ることができない。
【0007】
そこで、本発明は、基板保持部と研磨具を基板に押圧する押圧部材との相対的角度を最適にすることができる研磨方法および研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、少なくとも3つのセンサで、基板保持面上の少なくとも3点の高さをそれぞれ測定し、前記センサの出力信号に基づいて前記基板保持面の傾きを算出し、押圧部材の押圧面と平行な面上の少なくとも3点の高さを前記センサでそれぞれ測定し、前記センサの出力信号に基づいて前記押圧面の傾きを算出し、前記基板保持面と前記押圧面との相対的角度を算出し、その後、基板を前記基板保持面上に保持し、前記相対的角度が許容範囲内となるように前記基板保持面または前記押圧面の傾きを調整し、その後、前記基板保持面または前記押圧面の傾きが調整された状態で、前記押圧面で研磨具を前記基板に押し付けることで該基板の研磨を開始することを特徴とする研磨方法である。
【0009】
本発明の好ましい態様は、前記相対的角度が許容範囲内となるように前記基板保持面または前記押圧面の傾きが調整された状態で、前記押圧面で研磨具を前記基板に押し付けることで該基板を研磨する工程は、前記相対的角度が許容範囲内となるように傾きが調整された前記押圧面で研磨具を前記基板の周縁部に押し付ける工程であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記基板を前記基板保持面上に保持する工程は、前記相対的角度が許容範囲内となるように傾きが調整された前記基板保持面上に基板を保持する工程であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記基板保持面上の少なくとも3点は、前記基板保持面の外周部上の少なくとも3点であることを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記基板保持面上の少なくとも3点の高さを測定する工程は、少なくとも3つのセンサで、基板保持面内の複数の領域のそれぞれにおいて少なくとも3点の高さを測定する工程であり、前記基板保持面の傾きを算出する工程は、前記複数の領域のそれぞれの傾きを算出し、該算出された前記複数の領域の傾きの平均を算出し、該算出された平均を前記基板保持面の傾きに指定する工程であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数の領域のそれぞれにおいて少なくとも3点の高さを測定する工程は、前記基板保持面を間欠的に回転させながら行われることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数の領域は、前記基板保持面の中心の周りに等間隔で配列されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記基板保持面の傾きおよび前記押圧面の傾きは、3次元の座標系上のベクトルとして表されることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様は、基板保持面を有する基板保持部と、研磨具を基板に押し付けるための押圧面を有する押圧部材と、前記基板保持面上の少なくとも3点の高さ、および前記押圧面と平行な面上の少なくとも3点の高さを測定する少なくとも3つのセンサと、前記センサの出力信号に基づいて前記基板保持面の傾きおよび前記押圧面の傾きを算出し、前記基板保持面と前記押圧面との相対的角度を算出する処理部と、前記基板保持面または前記押圧面の傾きを調整する傾き調整装置と、前記基板保持面または前記押圧面の傾きが調整された状態で、前記押圧部材に押圧力を与えて前記研磨具を前記基板保持面上の基板に押し付ける押圧装置を備え、前記押圧装置は、前記傾き調整装置により前記基板保持面または前記押圧面の傾きが調整された後に、前記研磨具を前記基板保持面上の基板に押し付けて前記基板の研磨を開始することを特徴とする研磨装置である。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記傾き調整装置は、前記押圧面の傾きを調整するための第1チルト機構および第2チルト機構を備え、前記押圧部材は前記第1チルト機構および前記第2チルト機構に連結されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1チルト機構および前記第2チルト機構は、互いに垂直な第1支持軸および第2支持軸をそれぞれ備えており、前記押圧部材は、前記第1支持軸および前記第2支持軸を中心に回転可能であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記傾き調整装置は、前記押圧面を傾動させる押圧部材傾動アクチュエータであり、前記押圧部材傾動アクチュエータは、少なくとも2つのアクチュエータを備えていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記傾き調整装置は、前記基板保持面を傾動させる基板保持面傾動アクチュエータであり、前記基板保持面傾動アクチュエータは、少なくとも2つのアクチュエータを備えていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記センサは、前記基板保持面の外周部の上方に位置していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記センサは、変位センサであることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記センサが固定されたブラケットをさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板保持面と押圧面との相対的角度に基づいて基板保持面または押圧部材の傾きを調整することができる。押圧部材は研磨具を最適な角度でステージ面上の基板の表面または周縁部に押圧することができる。結果として、所望の研磨プロファイルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(a)および図1(b)は、基板の周縁部を示す拡大断面図である。
図2】研磨装置の一実施形態を模式的に示す平面図である。
図3図2に示す研磨装置を矢印A方向から見た側面図である。
図4図2に示す研磨装置を矢印B方向から見た側面図である。
図5】センサを模式的に示す斜視図である。
図6】研磨ヘッドの構成を示す模式図である。
図7】ベースブロックおよび第1支持軸を図6の矢印Cで示す方向から見た図である。
図8】エアシリンダ、直動ガイド、および押圧部材を示す正面図である。
図9】基板ステージのステージ面の傾きを測定しているセンサおよび処理部を示す図である。
図10】ステージ面内の複数の領域でステージ面の傾きを測定する一実施形態を示す模式図である。
図11】センサによって測定される基準面内の3つの点を示す図である。
図12】センサのゼロリセット前の基準面での3つの点のそれぞれの座標を示す図である。
図13】センサのゼロリセット後の基準面での3つの点のそれぞれの座標を示す図である。
図14】3つの点の座標から、互いに直交する3つのベクトルを作成する工程を説明する図である。
図15】法線ベクトルを、X指向ベクトル,Y指向ベクトル,およびZ指向ベクトルに分解する工程を説明する図である。
図16】押圧部材の押圧面の傾きを測定しているセンサおよび処理部を示す図である。
図17】押圧面の傾きをステージ面の傾きに一致させる工程の流れを説明するフローチャートである。
図18】押圧面の傾きをステージ面の傾きに一致させる工程の流れを説明するフローチャートである。
図19】研磨装置の他の実施形態を模式的に示す側面図である。
図20】突出部の上面が3つのセンサの下方に位置するまで研磨ヘッドが移動された状態を示す図である。
図21】研磨装置のさらに他の実施形態を模式的に示す側面図である。
図22図21に示すアクチュエータの配置を示す図である。
図23】アクチュエータの詳細な構成の一例を示す図である。
図24】2つのアクチュエータおよび1つのボールジョイントを備えたステージ傾動アクチュエータを示す平面図である。
図25図21に示す研磨装置の平面図である。
図26】基準プレートの基準面がセンサの下方に位置するまで研磨ヘッドおよび基準プレートが移動された状態を示す図である。
図27】ステージ面の傾きを押圧面の傾きに一致させる工程の流れを説明するフローチャートである。
図28】ステージ面の傾きを押圧面の傾きに一致させる工程の流れを説明するフローチャートである。
図29】基板保持部に代えて、アクチュエータを研磨ヘッドに連結させた実施形態を示す図である。
図30】研磨装置のさらに他の実施形態を模式的に示す側面図である。
図31図30に示す研磨ヘッドの底面図である。
図32】研磨ヘッドが研磨位置にあるときの平面図である。
図33図32に示す静圧支持ステージを示す断面図である。
図34図34(a)および図34(b)は、基板保持部の基板保持面を説明する図である。
図35】基板保持部にダミー基板が保持されている状態を示す図である。
図36】センサがダミー基板の下面上の3点の高さを測定している状態を示す図である。
図37】センサが研磨具の研磨面(下面)の高さを測定している状態を示す図である。
図38】研磨ヘッドの底部にセンサターゲット治具が取り付けられた状態を示す図である。
図39図39(a)は、センサターゲット治具を研磨ヘッドに着脱可能に取り付けるための締結機構の一例を示す図であり、図39(b)は、締結機構の他の例を示す図である。
図40】センサによってセンサターゲット治具の平坦面上の3点の高さを測定しているときの状態を示す図である。
図41】基板保持部の全体を傾動させる基板保持面傾動アクチュエータを備えた研磨装置の一実施形態を示す図である。
図42】従来の研磨装置を示す模式図である。
図43】基板の周縁部に形成された階段状の窪みを示す断面図である。
図44】傾いた押圧部材が研磨テープを基板の周縁部に対して押し当てている状態を示す図である。
図45】押圧部材が研磨テープを傾いた基板の周縁部に対して押し当てている状態を示す図である。
図46】従来の研磨装置の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1(a)および図1(b)は、基板の周縁部を示す拡大断面図である。より詳しくは、図1(a)はいわゆるストレート型の基板の断面図であり、図1(b)はいわゆるラウンド型の基板の断面図である。基板の例としては、ウェーハが挙げられる。基板の周縁部は、ベベル部、トップエッジ部、およびボトムエッジ部を含む領域として定義される。図1(a)の基板Wにおいて、ベベル部は、上側傾斜部(上側ベベル部)P、下側傾斜部(下側ベベル部)Q、および側部(アペックス)Rから構成される基板Wの最外周面(符号Sで示す)である。図1(b)の基板Wにおいては、ベベル部は、基板Wの最外周面を構成する、湾曲した断面を有する部分(符号Sで示す)である。トップエッジ部は、ベベル部Sよりも半径方向内側に位置する環状の平坦部T1である。ボトムエッジ部は、トップエッジ部とは反対側に位置し、ベベル部Sよりも半径方向内側に位置する環状の平坦部T2である。トップエッジ部T1は、デバイスが形成された領域を含むこともある。以下の説明では、トップエッジ部T1を研磨する実施形態について説明するが、本発明はボトムエッジ部T2の研磨、およびベベル部Sの研磨にも適用することができる。
【0016】
図2は、研磨装置の一実施形態を模式的に示す平面図であり、図3図2に示す研磨装置を矢印A方向から見た側面図であり、図4図2に示す研磨装置を矢印B方向から見た側面図である。研磨装置は、基板(例えば、ウェーハ)Wを保持し、回転させる基板保持部1を備えている。この基板保持部1は、基板Wを保持することができる基板ステージ2と、基板ステージ2をその軸心Lを中心に回転させるステージモータ3とを有する。基板ステージ2の上面は、基板Wを保持するための基板保持面であるステージ面2aを構成する。基板ステージ2は、ステージモータ3に連結されており、基板ステージ2のステージ面2aは、基板ステージ2の軸心Lを中心にステージモータ3によって回転されるようになっている。研磨される基板Wは、基板ステージ2のステージ面2aに真空吸引などにより保持され、基板ステージ2とともにステージモータ3によって回転される。
【0017】
研磨装置は、研磨テープ7を基板Wの周縁部に押し付ける押圧部材11を備えた研磨ヘッド10を有している。押圧部材11は、基板ステージ2の上方に配置されており、かつ基板ステージ2の軸心Lからずれた位置に配置されている。より具体的には、押圧部材11は、ステージ面2a上に保持された基板Wの周縁部の上方に配置されている。
【0018】
研磨テープ7は、基板Wを研磨するための研磨具である。研磨テープ7の一端は巻き出しリール14に固定され、研磨テープ7の他端は巻き取りリール15に固定されている。研磨テープ7の大部分は巻き出しリール14と巻き取りリール15の両方に巻かれており、研磨テープ7の一部は巻き出しリール14と巻き取りリール15との間を延びている。巻き出しリール14および巻き取りリール15は、それぞれリールモータ17,18によって反対方向のトルクが加えられており、これにより研磨テープ7にはテンションが付与される。
【0019】
巻き出しリール14と巻き取りリール15との間には、テープ送り装置20が配置されている。研磨テープ7は、テープ送り装置20によって一定の速度で巻き出しリール14から巻き取りリール15に送られる。巻き出しリール14と巻き取りリール15との間を延びる研磨テープ7は2つのガイドローラー21,22によって支持されている。これら2つのガイドローラー21,22は巻き出しリール14と巻き取りリール15との間に配置されている。ガイドローラー21,22の間を延びる研磨テープ7の下面は、基板Wを研磨する研磨面を構成する。研磨具として、研磨テープ7に代えて固定砥粒(すなわち砥石)を用いてもよい。
【0020】
押圧部材11は2つのガイドローラー21,22の間に位置している。基板Wの周縁部と研磨テープ7との接触点において、ガイドローラー21,22間の研磨テープ7が基板Wの接線方向に延びるようにガイドローラー21,22が配置されている。
【0021】
基板Wの研磨は次のようにして行われる。基板Wは、その表面に形成されている膜(例えば、デバイス層)が上を向くように基板ステージ2に保持され、さらに基板Wは基板ステージ2とともにその軸心Lを中心に回転される。回転する基板Wの中心には、図示しない液体供給ノズルから液体(例えば、純水)が供給される。この状態で、研磨ヘッド10の押圧部材11は研磨テープ7を基板Wの周縁部、より具体的には基板Wのトップエッジ部(図1(a)および図1(b)の符号T1参照)に押し付ける。回転する基板Wと、研磨テープ7との摺接により、基板Wが研磨される。基板Wを研磨しているときの研磨テープ7は、図2に示すように、基板Wと研磨テープ7との接触点において基板Wの接線方向に延びている。
【0022】
研磨装置は、基板ステージ2のステージ面2aの高さを測定することができる3つのセンサ30を備えている。一実施形態では、ステージ面2aの高さは、ある基準点からステージ面2aまでの距離である。これらセンサ30は、基板保持面であるステージ面2aの外周部の上方に位置しており、ステージ面2aの外周部の高さを測定できるように配置されている。これは、押圧部材11に最も近いステージ面2aの領域の高さを測定するためである。
【0023】
3つのセンサ30は、ブラケット35に固定されており、ブラケット35は固定柱36に着脱可能に固定されている。固定柱36は、その位置および角度が不変な静止部材であり、基礎面5に固定されている。ステージモータ3も基礎面5に固定されている。ブラケット35に保持されたセンサ30と、基板ステージ2との相対位置は固定である。一方、研磨ヘッド10の少なくとも押圧部材11は、センサ30および基板ステージ2に対して傾動することが可能に構成されている。
【0024】
研磨装置は、センサ30の出力信号に基づいてステージ面2aの傾きを算出する処理部40をさらに備えている。図2に示すように、処理部40は、その内部に記憶装置40aと、演算装置40bを備えている。記憶装置40aはハードディスクドライブ(HDD)またはソリッドステートドライブ(SSD)などを備える。演算装置40bとしては、CPU(Central Processing Unit)が使用される。記憶装置40aにはプログラムが予め格納されており、演算装置40bはプログラムに従って動作する。センサ30は、処理部40に接続されており、センサ30の出力信号は処理部40に送られるようになっている。センサ30の出力信号は、ステージ面2aの高さを示す信号である。
【0025】
図4に示すように、研磨ヘッド10は、押圧部材11に押付力を与える押圧装置としてのエアシリンダ25と、エアシリンダ25が固定されるベースブロック39を備えている。本実施形態では、エアシリンダ25は、ベースブロック39に取り付けられた固定部材42を介してベースブロック39に固定されている。ベースブロック39は、第1支持軸51に回転可能に支持されている。押圧部材11はエアシリンダ25に連結されている。
【0026】
図2に示すように、第1支持軸51は、研磨ヘッド10を所定の第1の方向Dに移動させる研磨ヘッド移動装置41に連結されている。本実施形態における第1の方向Dは、基板ステージ2を上から見たときの基板ステージ2の軸心Lと押圧部材11とを結ぶ直線(想像線)が延びる方向である。第1の方向Dは、ガイドローラー21,22間を延びる研磨テープ7に対して垂直である。研磨ヘッド移動装置41は、第1支持軸51が固定された直動ガイド43と、第1支持軸51に連結されたボールねじ機構44と、ボールねじ機構44に連結されたサーボモータ45とを備えている。直動ガイド43およびボールねじ機構44は、上記第1の方向Dに延びている。サーボモータ45がボールねじ機構44を駆動すると、第1支持軸51が第1の方向Dに移動する。エアシリンダ25およびベースブロック39は第1支持軸51に連結されているので、サーボモータ45がボールねじ機構44を駆動すると、第1支持軸51とともに研磨ヘッド10は、第1の方向Dに、すなわち、基板ステージ2のステージ面2aおよびセンサ30に近づく方向、および遠ざかる方向に移動する。
【0027】
図4に示すように、直動ガイド43およびモータ台46は、ベースプレート47に固定されている。サーボモータ45はモータ台46に固定されている。ベースプレート47は設置ブロック48を介して基礎面5に固定されている。
【0028】
図5は、センサ30を模式的に示す斜視図である。センサ30は、互いに離間しており、かつ同じ高さに配置されている。本実施形態では、各センサ30には、測定対象物に接触するプローブを有する接触型変位センサが使用されている。3つのセンサ30の配置は、これらセンサ30が直線上に並ばない限り、特に限定されない。一実施形態では、4つ以上のセンサ30を設けてもよい。一実施形態では、センサ30は非接触式の変位センサであってもよい。
【0029】
図6は、研磨ヘッド10の構成を示す模式図である。図6に示すように、研磨ヘッド10は、研磨テープ7を基板Wの周縁部に押し付ける押圧部材11と、押圧部材11を保持する押圧部材ホルダ28と、押圧部材ホルダ28を通じて押圧部材11に押付力を与える押圧装置としてのエアシリンダ25とを備えている。図6では、基板Wおよび研磨テープ7は図示されていない。押圧部材11は、押圧部材ホルダ28の端部に固定されている。上述したように、押圧部材11は、基板ステージ2の軸心Lから離れた位置に配置されている。
【0030】
押圧部材11は、ステージ面2aと平行な押圧面11aを有している。この押圧面111aは平坦面であり、押圧部材11は押圧面11aで研磨テープ7を基板Wの周縁部に押し付けるように構成されている。エアシリンダ25は、基板ステージ2の軸心Lと平行に延びる直動ガイド33に連結されており、さらにエアシリンダ25は直動ガイド33を介して押圧部材ホルダ28および押圧部材11に連結されている。より具体的には、エアシリンダ25のピストンロッド27は、直動ガイド33の可動部33aに固定されており、押圧部材ホルダ28は直動ガイド33の可動部33aに固定されている。したがって、押圧部材11および押圧部材ホルダ28はピストンロッド27と一体に移動する。ピストンロッド27、押圧部材ホルダ28、および押圧部材11の移動方向は、直動ガイド33によって、基板ステージ2の軸心Lと平行な方向、すなわち、ステージ面2aに対して垂直な方向に制限される。本実施形態では、基板ステージ2の軸心Lは鉛直方向に延びている。
【0031】
図6に示すように、研磨ヘッド10はベースブロック39をさらに備えている。エアシリンダ25および直動ガイド33はベースブロック39に固定されている。本実施形態では、エアシリンダ25は、ベースブロック39に取り付けられた固定部材42を介してベースブロック39に固定されている。ベースブロック39は、第1支持軸51に回転可能に支持されている。ベースブロック39には、固定プレート52が複数の(図6では4つの)第1ねじ55によって固定されている。
【0032】
図7は、ベースブロック39および第1支持軸51を図6の矢印Cで示す方向から見た図である。第1支持軸51は、円筒部51bと、該円筒部51bよりも幅の広いフランジ部51cとを有している。ベースブロック39は、第1支持軸51の円筒部51bに回転可能に支持されている。より具体的には、ベースブロック39には、第1支持軸51の円筒部51bが貫通する円形の通孔39aが形成されている。第1支持軸51の円筒部51bの外周面は、ベースブロック39の通孔39aに接触しており、ベースブロック39は第1支持軸51に回転可能に支持されている。
【0033】
固定プレート52およびベースブロック39には、第1ねじ55が貫通する通孔(図示せず)が形成されている。第1ねじ55は固定プレート52およびベースブロック39の通孔を通って延び、第1支持軸51のフランジ部51cに形成されたねじ孔(図示せず)にねじ込まれている。ベースブロック39に形成されている各通孔の直径は、第1ねじ55の直径よりも大きく、第1ねじ55とベースブロック39の通孔との間にはある程度の隙間が存在している。よって、ベースブロック39は、第1支持軸51を中心にある程度の範囲内で回転可能となっている。第1ねじ55を締め付けると、ベースブロック39は、固定プレート52と第1支持軸51のフランジ部51cとの間に挟まれ、これによりベースブロック39の回転が防止される。
【0034】
第1支持軸51は、その端部に多角形部51aを有している。多角形部51aは円筒部51bの端部に接続されている。図6に示すように、固定プレート52には、第1支持軸51の多角形部51aが貫通する多角形孔52aが形成されている。この多角形孔52aは、多角形状の面から構成されており、この多角形状の面は、第1支持軸51の多角形部51aの外面に接触している。多角形部51aは多角形孔52aに嵌合されており、これら多角形部51aと多角形孔52aとの係合により、固定プレート52は第1支持軸51に対して相対的に回転できないようになっている。
【0035】
固定プレート52には、切り欠き52bが形成されている。この切り欠き52bは第1支持軸51の軸心から離れた位置に配置されている。切り欠き52b内には偏心カム57が配置されており、この偏心カム57はベースブロック39に回転可能に取り付けられている。
【0036】
押圧部材11は、押圧部材ホルダ28、直動ガイド33、およびベースブロック39を介して第1支持軸51に連結されている。基板Wの研磨中は、第1ねじ55は締め付けられた状態に維持されている。よって、ベースブロック39、押圧部材11、直動ガイド33、エアシリンダ25を含む研磨ヘッド10の姿勢は固定されている。第1ねじ55を緩めると、研磨ヘッド10は第1支持軸51の軸心を中心に回転することが許容される。第1ねじ55を緩めた状態で偏心カム57を回転させると、研磨ヘッド10は、第1支持軸51の軸心を中心に図6の矢印で示す方向に回転する。
【0037】
研磨ヘッド10の回転角度は、偏心カム57の回転角度に依存する。言い換えれば、押圧部材11の押圧面11aの傾きは、偏心カム57の回転によって調整される。本実施形態では、第1支持軸51、固定プレート52、偏心カム57、および第1ねじ55は、第1支持軸51を中心に押圧部材11を回転可能とすることで押圧面11aの傾きを調整する第1チルト機構60を構成する。
【0038】
図6に示すように、直動ガイド33の可動部33aには第2支持軸62が固定されている。この第2支持軸62は、第1支持軸51に垂直な方向に延びている。押圧部材11を保持した押圧部材ホルダ28は、第2支持軸62に回転可能に支持されている。押圧部材ホルダ28は、複数の(本実施形態では2つの)第2ねじ64によって直動ガイド33の可動部33aに固定されている。より具体的には、押圧部材ホルダ28には、第2ねじ64が貫通する通孔(図示せず)が形成されており、第2ねじ64は通孔を通じて直動ガイド33の可動部33aのねじ孔(図示せず)にねじ込まれている。押圧部材ホルダ28に形成された通孔の直径は、第2ねじ64の直径よりも大きく、第2ねじ64と通孔との間にはある程度の隙間が存在している。よって、押圧部材ホルダ28は、第2支持軸62を中心にある程度の範囲内で回転可能となっている。
【0039】
図8は、エアシリンダ25、直動ガイド33、および押圧部材11を示す正面図である。押圧部材ホルダ28および押圧部材11は、第2支持軸62に回転可能に支持されており、かつ押圧部材ホルダ28は第2ねじ64により直動ガイド33の可動部33aに固定されている。第2ねじ64が締め付けられている限り、押圧部材ホルダ28および押圧部材11の第2支持軸62を中心とした回転は許容されない。一実施形態では、第2ねじ64は1つでもよい。
【0040】
押圧部材11は、押圧部材ホルダ28を介して第2支持軸62に連結されている。基板Wの研磨中は、第2ねじ64は締め付けられた状態に維持されている。よって、押圧部材11および押圧部材ホルダ28の姿勢は固定されている。第2ねじ64を緩めると、押圧部材11および押圧部材ホルダ28は、第2支持軸62を中心に矢印で示す方向に回転することが許容される。第2ねじ64が緩められた状態で押圧部材11および押圧部材ホルダ28を手動で傾け、その後第2ねじ64を締め付けることにより、押圧部材11の押圧面11aの傾きを調整することができる。本実施形態では、第2支持軸62および第2ねじ64は、第1支持軸51とは垂直な第2支持軸62を中心として押圧部材11を回転可能とすることで押圧面11aの傾きを調整する第2チルト機構69を構成する。
【0041】
押圧部材11の押圧面11aは、基板ステージ2のステージ面2aと平行であることが望ましい。しかしながら、図44および図45を参照して説明したように、研磨装置の組み付け精度などに起因して、押圧部材11の押圧面11aおよび/または基板ステージ2のステージ面2aが傾くことがある。そこで、本実施形態では、押圧部材11の押圧面11aが、ステージ面2aと平行になるように、傾き調整装置である第1チルト機構60および第2チルト機構69により押圧面11aの傾きが調整される。
【0042】
3つのセンサ30は、ステージ面2aの傾きを算出するのに必要な、ステージ面2a上の3つの点の高さを測定する。これら3つの点の位置は、3つのセンサ30の位置に対応する。本実施形態では、3つの点は、ステージ面2aの外周部上の点である。図9は、基板ステージ2のステージ面2aの傾きを測定しているセンサ30および処理部40を示す図である。3つのセンサ30は、ステージ面2a上の3つの点の高さを測定し、測定された高さをそれぞれ示す3つの出力信号を処理部40に送る。
【0043】
処理部40は、受信した3つの出力信号と、3つのセンサ30の相対位置からステージ面2a上の3つの点の位置を特定する。3つのセンサ30の相対位置は固定であり、かつそれぞれのセンサ30の相対位置は既知である。ステージ面2a上の3つの点の位置は、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸から定義される3次元の座標系上の座標として表すことができる。以下、このX軸、Y軸、Z軸から定義される3次元の座標系をXYZ座標系と称する。
【0044】
図10は、ステージ面2a内の複数の領域でステージ面2aの傾きを測定する一実施形態を示す模式図である。この実施形態では、基板ステージ2は、45度きざみで間欠的に回転され、ステージ面2aの8つの領域R1~R8でステージ面2aの傾きが測定される。最初に、基板ステージ2が静止している状態で、図11に示すように、センサ30は基準面である領域R1内の3点S1,S2,S3の高さを測定する。領域R1内の3点S1,S2,S3は、3つのセンサ30の位置によって一意に決まる点である。3つのセンサ30の位置は、対応する3つの点S1,S2,S3が一直線上に並ばない限り特に限定されない。しかし、押圧部材11の接触面積に比べて3つのセンサ30がなす面の面積がきわめて大きくなるようにセンサ30が配置されたとき、例えば、基板の外周縁上に120度間隔でセンサ30が配置されたときは、基板の周縁部を研磨するにあたっての押圧部材11の押圧面11aの傾きが精度良く測定できない可能性もありうる。また、基板の中心付近に3つのセンサ30を設けた場合には、押圧部材11の押圧面11aの傾きを精度良く測定できない可能性もありうる。したがって、より精度良く測定したい場合には、押圧部材11の押圧面11aの近傍に3つのセンサ30がすべて位置するようにすることが好ましい。
【0045】
処理部40は、点S2と点S3とを結ぶ第1直線L1を、XYZ座標系のY軸として定義する。基板ステージ2の上から見たときに、第1直線L1が第1支持軸51(図7参照)の軸線と平行であるように、3つのセンサ30が設置されている。処理部40は、点S1から延びてY軸に垂直に交わる第2直線L2を、XYZ座標系のX軸として定義する。基板ステージ2の上から見たときに、第2直線L2は第2支持軸62(図6参照)の軸線と平行である。X軸とY軸との交点Oは、XYZ座標系の原点である。X軸とY軸の両方に垂直であって、かつ原点Oを通る直線は、XYZ座標系のZ軸に定義される。このようにして、基準面である領域R1内の3点S1,S2,S3の位置からXYZ座標系が決定される。
【0046】
次に、センサ30のゼロリセットが行われる。センサ30のゼロリセットは、センサ30のキャリブレーションであり、基準面(領域R1)上の3点の高さの測定値を0にリセットする動作である。センサ30のゼロリセット前の領域R1での3つの点S1,S2,S3のそれぞれの座標は、次のようになる(図12参照)。
S1の座標:(-d1,0,α)
S2の座標:(0,-d2,β)
S3の座標:(0,d3,γ)
d1(絶対値)は原点Oから点S1までの距離であり、d2(絶対値)は原点Oから点S2までの距離であり、d3(絶対値)は原点Oから点S3までの距離である。d1,d2,d3は、3つのセンサ30の相対位置から算出することができる。α,β,γは、点S1,S2,S3のZ軸上の座標であり、基準面R1でセンサ30から得られた測定値(すなわちセンサ30の出力信号)である。
【0047】
続いて、処理部40はセンサ30のゼロリセットを実行する。具体的には、点S1,S2,S3のZ軸上の座標(すなわち3つのセンサ30の出力信号)は0にリセットされる。センサ30のゼロリセットが実行された後の領域R1での3つの点S1,S2,S3の座標をそれぞれS1R1,S2R1,S3R1とすると、座標S1R1,S2R1,S3R1は、次のように表される(図13参照)。
S1R1:(-d1,0,0)
S2R1:(0,-d2,0)
S3R1:(0,d3,0)
【0048】
次に、処理部40は、領域R1の傾きを示す領域R1の法線ベクトルを次のようにして求める。まず、処理部40は、3つの点の座標S1R1,S2R1,S3R1から、互いに直交する3つのベクトルを作成する(図14参照)。
ベクトルV1R1=S2R1-S1R1=(d1,-d2,0)
ベクトルV2R1=S3R1-S2R1=(0,d3+d2,0)
ベクトルV3R1=V1R1×V2R1,(×はクロス積を表す)
ベクトルV1R1は、点S1から点S2に向かうベクトルであり、ベクトルV2R1は、点S2から点S3に向かうベクトルである。ベクトルV3R1は、ベクトルV1R1およびベクトルV2R1の両方に直交するベクトルである。すなわち、ベクトルV3R1は、領域R1の法線ベクトルである。図14では、3つのV1R1,V2R1,V3R1の始点は、点S1上に置かれているが、他の点でもよい。
【0049】
次に、図15に示すように、処理部40は、領域R1の法線ベクトルV3R1を、X軸上のX指向ベクトルV3R1,Xと、Y軸上のY指向ベクトルV3R1,Yと、Z軸上のZ指向ベクトルV3R1,Zに分解する。法線ベクトルV3R1は、X指向ベクトルV3R1,Xと、Y指向ベクトルV3R1,Yと、Z指向ベクトルV3R1,Zの和であり、次のように表される。
法線ベクトルV3R1=V3R1,X+V3R1,Y+V3R1,Z
なお、X指向ベクトルとは、あるベクトルをX軸、Y軸、Z軸に分解したときの、X軸に投影された成分をなすベクトルと定義される。同様に、Y軸指向ベクトルはあるベクトルをX軸、Y軸、Z軸、に分解したときのY軸に投影された成分をなすベクトル、Z軸指向ベクトルはあるベクトルをX軸、Y軸、Z軸、に分解したときのZ軸に投影された成分をなすベクトルとそれぞれ定義される。
【0050】
なお、図15では、説明のために、領域R1の法線ベクトルV3R1はZ軸に対して傾いているが、基準面である領域R1においてセンサ30がゼロリセットされているので、領域R1の法線ベクトルV3R1は実際にはZ軸と平行である。したがって、領域R1のX指向ベクトルV3R1,XおよびY指向ベクトルV3R1,YのそれぞれのX成分、Y成分、Z成分は0である。
【0051】
次いで、基板ステージ2は45度だけ回転され、その後静止する。そして、同様に、領域R2において、センサ30はステージ面2a上の3点の高さを測定し、処理部40は領域R2の傾きを表す法線ベクトルを算出する。このような動作を繰り返し、処理部40は8つの領域R1~R8の傾きをそれぞれ表す8つの法線ベクトルV3R1,V3R2,V3R3,V3R4,V3R5,V3R6,V3R7,V3R8を作成する。各法線ベクトルは、XYZ座標系上で表される。法線ベクトルは、X軸上のX指向ベクトルと、Y軸上のY指向ベクトルと、Z軸上のZ指向ベクトルの1セットから構成される。より具体的には、法線ベクトルは、X指向ベクトル、Y指向ベクトル、およびZ指向ベクトルの和である。
【0052】
処理部40は、8つの法線ベクトル(すなわち、8つのX指向ベクトル、8つのY指向ベクトル、および8つのZ指向ベクトル)の平均を算出し、算出された法線ベクトルの平均を、ステージ面2aの傾きを示す法線ベクトルに指定し、処理部40の記憶装置40aに記憶する。ステージ面2aの傾きを正確に求めるために、ステージ面2a内の複数の領域(例えば、領域R1~R8)は、ステージ面2aの外周部に位置し、かつ基板ステージ2の軸心L、すなわちステージ面2aの中心の周りに等間隔に分布していることが好ましい。
【0053】
上述した実施形態では、ステージ面2aのより正確な傾きを求めるために、ステージ面2a内の複数の領域R1~R8でステージ面2aの傾きが測定される。すなわち、基板ステージ2をその軸心Lを中心に間欠的に回転させながら、センサ30および処理部40がステージ面2a内の複数の領域でステージ面2aの傾きを測定する。処理部40は、それぞれの領域で得られた傾きの平均(すなわち法線ベクトルの平均)を算出し、この平均をステージ面2a全体の傾きを表す法線ベクトルに指定する。一実施形態では、ステージ面2a内の1つの領域でのみステージ面2aの傾きを求めてもよい。例えば、処理部40は、上述した領域R1での法線ベクトルV3R1をステージ面2aの傾きとしてもよい。
【0054】
ステージ面2aの傾きが決定された後、押圧部材11の押圧面11aの傾きが測定される。図16は、押圧部材11の押圧面11aの傾きを測定しているセンサ30および処理部40を示す図である。図16に示すように、測定前に、押圧部材11の下面である押圧面11aには、ターゲットプレート71が取り付けられる。ターゲットプレート71は、ねじなどの締結具(図示せず)によって取り外し可能に押圧部材11の押圧面11aに固定される。ターゲットプレート71は、ステンレス鋼などの金属、またはセラミックなどの硬質材から構成される。ターゲットプレート71は、押圧面11aよりも面積の大きな、平坦な上面71aを有しており、センサ30はターゲットプレート71の上方に位置する。ターゲットプレート71の上面71aは押圧部材11の押圧面11aに接触しているので、ターゲットプレート71の上面71aは、押圧面11aと平行である。すなわち、ターゲットプレート71の上面71aの傾きは、押圧面11aの傾きと同じである。
【0055】
3つのセンサ30は、押圧面11aの傾きを算出するのに必要な、ターゲットプレート71上の3つの点の高さを測定する。これら3つの点の位置は、3つのセンサ30の位置に対応する。図16に示すように、3つのセンサ30は、ターゲットプレート71の上面71a上の3つの点の高さを測定し、測定された高さをそれぞれ示す3つの出力信号を処理部40に送る。処理部40は、センサ30の出力信号に基づいて押圧面11aの傾きを算出する。すなわち、処理部40は、受信した3つの出力信号と、3つのセンサ30の相対位置からターゲットプレート71上の3つの点の位置を特定し、3つの点を含む平面の法線ベクトルを算出する。この法線ベクトルは、ターゲットプレート71の傾き、すなわち押圧面11aの傾きを表すベクトルである。押圧面11aの傾きが算出された後、ターゲットプレート71は、押圧部材11に取り付けたままに維持される。
【0056】
処理部40は、ステージ面2aの傾きおよび押圧面11aの傾きに基づいて、ステージ面2aと押圧面11aとの相対的角度を算出するように構成されている。以下の説明では、ステージ面2aの傾きを示す法線ベクトルを第1法線ベクトルと称し、押圧面11aの傾きを示す法線ベクトルを第2法線ベクトルと称する。第1法線ベクトルおよび第2法線ベクトルは、上述したX軸、Y軸、Z軸から定義される3次元のXYZ座標系上のベクトルである。第1法線ベクトルと同様に、第2法線ベクトルは、X軸上のX指向ベクトルと、Y軸上のY指向ベクトルと、Z軸上のZ指向ベクトルの1セットから構成される。すなわち、第2法線ベクトルは、X指向ベクトル、Y指向ベクトル、およびZ指向ベクトルの和である。
【0057】
処理部40は、第1法線ベクトルおよび第2法線ベクトルに基づき、押圧面11aとステージ面2aとの相対的角度を算出する。相対的角度は、X軸角度およびY軸角度から構成される。より具体的には、処理部40は、ステージ面2aと押圧面11aとの間の相対的角度、すなわち第1法線ベクトルと第2法線ベクトルとのなす角度を算出し、算出された角度をX軸角度およびY軸角度に分解する。X軸角度は、XYZ座標系のX軸を中心とした回転方向の角度であり、Y軸角度は、XYZ座標系のY軸を中心とした回転方向の角度である。X軸角度およびY軸角度は、押圧面11aをステージ面2aと平行にするために必要な押圧部材11の補正角度に相当する。
【0058】
押圧面11aの傾きは、算出されたX軸角度およびY軸角度に基づいて調整される。具体的には、第1ねじ55を緩め、偏心カム57を回転させることにより、押圧部材11を含む研磨ヘッド10全体を第1支持軸51を中心にY軸角度だけ回転させる。研磨ヘッド10を第1支持軸51を中心に回転させる間、センサ30はターゲットプレート71上の3つの点の高さを継続的に測定する。センサ30はブラケット35に固定されているので、研磨ヘッド10が傾いたときでもセンサ30の姿勢は変わらない。ターゲットプレート71は研磨ヘッド10の押圧面11aに固定されているので、研磨ヘッド10を第1支持軸51を中心に回転させるにつれて、センサ30の出力信号が変化する。このセンサ30の出力信号の変化は、押圧面11aの傾きの変化に相当する。研磨ヘッド10を第1支持軸51を中心に回転させている間、処理部40はY軸角度を継続的に算出する。作業員は、Y軸角度が0になるまで、研磨ヘッド10を第1支持軸51を中心に回転させる。その後、第1ねじ55を締め付ける。
【0059】
次に、第2ねじ64を緩め、押圧部材ホルダ28および押圧部材11を第2支持軸62を中心に回転させる。押圧部材ホルダ28および押圧部材11を第2支持軸62を中心に回転させる間、センサ30はターゲットプレート71上の3つの点の高さを継続的に測定し、処理部40はX軸角度を継続的に算出する。作業員は、X軸角度が0になるまで、押圧部材11を第2支持軸62を中心に回転させる。その後、第2ねじ64を締め付ける。ステージ面2aと押圧面11aとの間の相対的角度が実質的に0、すなわちX軸角度およびY軸角度の両方が実質的に0であるということは、押圧面11aはステージ面2aに実質的に平行であることを意味する。なお、実質的に0とは、ステージ面2aと押圧面11aとの間の相対的角度(絶対値)が許容範囲内にあることを意味する(以下同じ)。この許容範囲は予め定められた角度範囲であり、例えば0~2度である。このようにして押圧部材11の押圧面11aの傾きを調整することができる。調整された押圧面11aはステージ面2aに実質的に平行である。一実施形態では、最初に押圧部材11を第2支持軸62を中心に回転させ、その後研磨ヘッド10を第1支持軸51を中心に回転させてもよい。
【0060】
押圧面11aの傾きが調整された後、ターゲットプレート71は、押圧部材11から取り外される。さらに、センサ30およびブラケット35が研磨装置から取り外される。研磨される基板Wは、その中心が基板ステージ2の軸心Lに一致した状態で、ステージ面2aに保持される。基板Wは、基板ステージ2の軸心Lを中心にステージモータ3によって回転される。基板Wの中心に液体(例えば、純水)を供給しながら、研磨ヘッド10は、押圧部材11の押圧面11aで研磨テープ7を基板Wの周縁部に押し付け、該周縁部を研磨する。本実施形態によれば、基板ステージ2のステージ面2aと押圧部材11の押圧面11aとは互いに平行であるので、研磨テープ7は基板Wのトップエッジ部(図1(a)および図1(b)の符号T1参照)と平行に押圧される。
【0061】
以下、押圧面11aの傾きをステージ面2aの傾きに一致させる工程の流れについて図17および図18のフローチャートを参照して説明する。ステップ1では、3つのセンサ30は、基準面であるステージ面2aの領域R1内の3点の高さを測定し、処理部40は、上述したように3つの点の高さと3つのセンサ30の相対位置に基づいてXYZ座標系を決定する。ステップ2では、処理部40は、センサ30をゼロリセットする。ステップ3では、処理部40は、領域R1内の3点の位置(座標)から領域R1の傾きを算出する。
【0062】
ステップ4では、3つのセンサ30は、ステージ面2a内の他の領域(例えば領域R2)内の3点の高さを測定する。ステップ5では、処理部40は、他の領域内の3点の位置(座標)から前記他の領域の傾きを算出する。ステップ6では、予め定義された複数の領域R1~R8の全ての傾きが算出されるまで、ステップ4とステップ5が繰り返される。ステップ7では、処理部40は、複数の領域R1~R8の傾きの平均を算出し、この傾きの平均をステージ面2aの傾きに指定し、処理部40の記憶装置40aに記憶する。
【0063】
図18に示すように、ステップ8では、ターゲットプレート71が押圧部材11の押圧面11aに取り付けられる。ステップ9では、センサ30は、ターゲットプレート71上の3点の高さを測定する。ステップ10では、処理部40は、ターゲットプレート71上の3点の位置(座標)に基づいて押圧面11aの傾きを算出する。ステップ11では、処理部40は、ステージ面2aの傾きと押圧面11aの傾きとからステージ面2aと押圧面11aとの間の相対的角度(すなわちX軸角度およびY軸角度)を算出する。
【0064】
ステップ12では、センサ30がターゲットプレート71上の3点の高さを測定しながら、押圧部材11の押圧面11aの傾きが調整される。処理部40は、センサ30の出力信号に基づいてステージ面2aと押圧面11aとの間の相対的角度(すなわちX軸角度およびY軸角度)をリアルタイムで算出し、その算出されたX軸角度およびY軸角度を表示器(図示せず)上に表示することができる。作業員は、Y軸角度が実質的に0になるまで、押圧部材11を含む研磨ヘッド10を第1支持軸51を中心に回転させる。同様に、作業員は、X軸角度が実質的に0になるまで、押圧部材ホルダ28および押圧部材11を第2支持軸62を中心に回転させる(ステップ13)。
【0065】
ステップ14では、ターゲットプレート71が押圧面11aから取り外され、さらに、ブラケット35がセンサ30とともに固定柱36から取り外される。ステップ15では、研磨すべき基板Wは、その中心が基板ステージ2の軸心Lに一致した状態で、ステージ面2a上に置かれる。ステップ16では、基板Wは、真空吸引などによりステージ面2a上に保持され、さらにステージ面2aおよび基板Wは基板ステージ2の軸心Lを中心に回転される。回転する基板Wの中心には、純水などの液体が供給される。ステップ17では、押圧面11aがステージ面2aと平行な状態で、押圧部材11は研磨テープ7を基板Wの周縁部(本実施形態ではトップエッジ部)に押し付け、研磨テープ7は液体の存在下で周縁部を研磨する。
【0066】
本実施形態によれば、ステージ面2aと押圧面11aとが平行な状態で、基板Wが研磨テープ7により研磨される。結果として、図43に示すような階段状の窪み210を基板Wの周縁部に形成することができる。
【0067】
図19は、研磨装置の他の実施形態を模式的に示す側面図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図1乃至図18に示す実施形態の構成および動作と同じであるので、その重複する説明を省略する。図19に示すように、押圧部材11は、基板ステージ2の軸心Lおよびセンサ30に向かって突出する突出部72を有している。この突出部72は、押圧部材11の押圧面11aと平行な上面72aを有している。したがって、突出部72の上面72aの傾きは、押圧面11aの傾きと同じである。上面72aは、3つのセンサ30がなす三角形の面積よりも大きな面積を有する。
【0068】
3つのセンサ30が基板ステージ2のステージ面2aの高さを測定する前、突出部72を含む研磨ヘッド10は研磨ヘッド移動装置41によって基板ステージ2から遠ざかる方向に移動される。3つのセンサ30が基板ステージ2のステージ面2aの高さを測定している間は、突出部72を含む研磨ヘッド10は基板ステージ2のステージ面2aから離れたままである。そして、ステージ面2aの高さの測定が終了した後、図20に示すように、突出部72の上面72aが3つのセンサ30の下方に位置するまで、研磨ヘッド10は研磨ヘッド移動装置41によって基板ステージ2に向かって移動される。3つのセンサ30は、押圧面11aと平行な突出部72の上面72a上の3点の高さを測定し、測定された高さをそれぞれ示す3つの出力信号を処理部40に送る。処理部40は、センサ30の相対位置、およびセンサ30の出力信号に基づいて押圧面11aの傾きを算出する。本実施形態では、上述したターゲットプレート71は不要である。
【0069】
図21は、研磨装置のさらに他の実施形態を模式的に示す側面図である。図21では研磨テープ7の図示は省略されている。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図1乃至図16に示す実施形態の構成および動作と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、研磨ヘッド10ではなく、基板ステージ2を傾けることによって、ステージ面2aと押圧面11aとの間の相対的角度を実質的に0にする、すなわち押圧面11aとステージ面2aとを実質的に互いに平行にする点で上述した実施形態と異なっている。本実施形態では、第1チルト機構60および第2チルト機構69は省略してもよい。
【0070】
図21に示すように、基板ステージ2およびステージモータ3の全体を傾動させるための3つのアクチュエータ80がステージモータ3に連結されている。これら3つのアクチュエータ80は、基板保持面であるステージ面2aを含む基板ステージ2の全体を傾動させる基板保持面傾動アクチュエータ81を構成する。基板保持面傾動アクチュエータ81は、ステージ面2aの傾きを調整する傾き調整装置である。図22は、図21に示すアクチュエータ80の配置を示す図である。図22に示すように、これら3つのアクチュエータ80は、基板ステージ2の軸心Lの周りに等間隔で配列されている。各ステージモータ3は、ボールねじ機構およびサーボモータとの組み合わせから構成することができる。各アクチュエータ80は、ステージモータ3を上下動させることが可能に構成される。したがって、3つのアクチュエータ80は、基板ステージ2を所望の方向に所望の角度で傾動させることができる。
【0071】
図23は、アクチュエータ80の詳細な構成の一例を示す図である。3つのアクチュエータ80は、支持部材76を介してステージモータ3に連結されている。ステージモータ3は、支持部材76に固定されている。3つのアクチュエータ80は支持部材76に傾動可能に連結されている。各アクチュエータ80は、ボールねじ機構84とサーボモータ85との組み合わせから構成されている。
【0072】
3つのアクチュエータ80は動作制御部86に接続されており、これらアクチュエータ80の動作は動作制御部86によって制御される。上述した処理部40は動作制御部86に接続されており、処理部40によって算出されたステージ面2aと押圧面11aとの間の相対的角度の情報は動作制御部86に送られる。動作制御部86は、上記算出された相対的角度が実質的に0になるまで、3つのアクチュエータ80を操作して基板ステージ2の傾きを調整する。
【0073】
センサ30は基板ステージ2のステージ面(基板保持面)2a上の3点の高さを測定しながら、3つのアクチュエータ80が作動して、ステージ面2aと押圧面11aとの間の相対的角度が実質的に0となるように基板ステージ2の傾きを調整する。
【0074】
一実施形態では、4つ以上のアクチュエータ80を基板ステージ2の軸心Lの周りに配列してもよい。さらに一実施形態では、図24に示すように、2つのアクチュエータ80および1つのボールジョイント82を基板ステージ2の軸心Lの周りに配置してもよい。ボールジョイント82は、荷重を支持しつつ、支持対象物を全方向に傾けることが可能な装置である。図24に示す例では、2つのアクチュエータ80および1つのボールジョイント82は、基板保持面であるステージ面2aを含む基板ステージ2の全体を傾動させる基板保持面傾動アクチュエータ81を構成する。
【0075】
図25は、図21に示す研磨装置の平面図である。第1支持軸51には、連結アーム90を介して基準プレート92が固定されている。より具体的には、連結アーム90の一端は第1支持軸51に固定され、連結アーム90の他端は基準プレート92に固定されている。基準プレート92はステージ面2aの外側に位置している。基準プレート92は平坦な上面を有しており、この上面は、センサ30のキャリブレーションである上述したセンサ30のゼロリセットに使用される基準面92aを構成する。本実施形態では、基準面92aは水平面である。
【0076】
研磨装置は、研磨ヘッド10および基準プレート92を第1の方向Dに移動させる研磨ヘッド移動装置41(以下、第1研磨ヘッド移動装置41という)に加えて、研磨ヘッド10および基準プレート92を第1の方向Dと垂直な第2の方向Fに移動させる第2研磨ヘッド移動装置95をさらに備えている。本実施形態では、第2研磨ヘッド移動装置95は、ボールねじ機構とサーボモータとの組み合わせから構成されているが、他の構成を備えてもよい。
【0077】
リールモータ17,18、テープ送り装置20(図3参照)、およびガイドローラー21,22は、フレーム97に保持されており、このフレーム97はベースプレート47に固定されている。第1研磨ヘッド移動装置41もベースプレート47に固定されている。ベースプレート47は、第2研磨ヘッド移動装置95に連結されており、ベースプレート47は第2研磨ヘッド移動装置95によって第2の方向Fに移動される。したがって、共通のベースプレート47に連結されている研磨ヘッド10、基準プレート92、巻き出しリール14、巻き取りリール15、リールモータ17,18、テープ送り装置20、およびガイドローラー21,22は、一体に第2研磨ヘッド移動装置95によって第2の方向Fに移動される。
【0078】
センサ30のゼロリセットが行われるとき、図26に示すように、基準プレート92の基準面92aが3つのセンサ30の下方に位置するまで、第2研磨ヘッド移動装置95は研磨ヘッド10、基準プレート92、巻き出しリール14、巻き取りリール15、リールモータ17,18、テープ送り装置20、およびガイドローラー21,22を移動させる。センサ30は基準面92a上の3点の高さを測定し、その高さの測定値を処理部40に送る。処理部40は基準面92a上の3点の高さの測定値を0にリセットする。センサ30のゼロリセットが終了した後、図25に示すように、基準プレート92がステージ面2aの外側に位置し、かつ研磨ヘッド10が元の研磨位置に戻るまで、第2研磨ヘッド移動装置95は研磨ヘッド10、基準プレート92、巻き出しリール14、巻き取りリール15、リールモータ17,18、テープ送り装置20、およびガイドローラー21,22を移動させる。
【0079】
以下、ステージ面2aの傾きを押圧面11aの傾きに一致させる工程の流れについて図27および図28のフローチャートを参照して説明する。ステップ1では、基準プレート92の基準面92aが3つのセンサ30の下方に位置するまで、第2研磨ヘッド移動装置95は研磨ヘッド10および基準プレート92を移動させる。ステップ2では、3つのセンサ30は、基準プレート92の基準面92a内の3点の高さを測定し、処理部40は、上述したように3点の高さと3つのセンサ30の相対位置に基づいてXYZ座標系を決定する。ステップ3では、処理部40は、センサ30をゼロリセットする。ステップ4では、基準プレート92がステージ面2aの外側に位置するまで、第2研磨ヘッド移動装置95は研磨ヘッド10および基準プレート92を移動させる。
【0080】
ステップ5では、3つのセンサ30は、ステージ面2a内の領域(例えば図10のR1参照)内の3点の高さを測定する。ステップ6では、処理部40は、領域内の3点の位置(座標)から該領域の傾きを算出する。ステップ7では、予め定義された複数の領域R1~R8(図10参照)の全ての傾きが算出されるまで、ステップ5とステップ6が繰り返される。ステップ8では、処理部40は、複数の領域R1~R8の傾きの平均を算出し、この傾きの平均をステージ面2aの傾きに指定し、処理部40の記憶装置40aに記憶する。
【0081】
図28に示すように、ステップ9では、ターゲットプレート71が押圧部材11の押圧面11aに取り付けられる。ステップ10では、センサ30は、ターゲットプレート71上の3点の高さを測定する。ステップ11では、処理部40は、ターゲットプレート71上の3点の位置(座標)に基づいて押圧面11aの傾きを算出する。ステップ12では、ターゲットプレート71が押圧部材11から取り外される。ステップ13では、処理部40は、ステージ面2aの傾きと押圧面11aの傾きとからステージ面2aと押圧面11aとの間の相対的角度を算出する。
【0082】
ステップ14では、センサ30がステージ面2a上の3点の高さを測定しながら、3つのアクチュエータ80が作動して、ステージ面2aと押圧面11aとの間の相対的角度が実質的に0となるようにステージ面2aの傾きを調整する。ステップ15では、ブラケット35がセンサ30とともに固定柱36から取り外される。ステップ16では、研磨すべき基板Wは、その中心が基板ステージ2の軸心Lに一致した状態で、ステージ面2a上に置かれる。ステップ17では、基板Wは、真空吸引などによりステージ面2a上に保持され、さらにステージ面2aおよび基板Wは基板ステージ2の軸心Lを中心に回転される。回転する基板Wの中心には、純水などの液体が供給される。ステップ18では、押圧面11aがステージ面2aと平行な状態で、押圧部材11は研磨テープ7を基板Wの周縁部(本実施形態ではトップエッジ部)に押し付け、研磨テープ7は液体の存在下で周縁部を研磨する。
【0083】
図19に示す、押圧面11aに平行な上面72aを有する突出部72は、図21に示す実施形態にも適用することは可能である。
【0084】
図29は、基板保持部1に代えて、アクチュエータ80を研磨ヘッド10に連結させた実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図19に示す構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。研磨ヘッド10の全体を傾動させるための3つのアクチュエータ80は、支持部材76を介して設置ブロック48に連結されている。設置ブロック48は、支持部材76に固定されている。3つのアクチュエータ80は支持部材76に傾動可能に連結されている。アクチュエータ80の配置は図22に示す配置と同じであり、各アクチュエータ80の構成は図23に示す構成と同じである。本実施形態では、第1チルト機構60および第2チルト機構69は省略してもよい。
【0085】
3つのアクチュエータ80は動作制御部86に接続されており、これらアクチュエータ80の動作は動作制御部86によって制御される。上述した処理部40は動作制御部86に接続されており、処理部40によって算出されたステージ面2aと押圧面11aとの間の相対的角度の情報は動作制御部86に送られる。動作制御部86は、上記算出された相対的角度が実質的に0になるまで、3つのアクチュエータ80を操作して押圧部材11の傾きを調整する。
【0086】
センサ30は突出部72の上面72a上の3点の高さを測定しながら、3つのアクチュエータ80が作動して、ステージ面2aと押圧面11aとの間の相対的角度が実質的に0となるように押圧部材11の押圧面11aの傾きを調整する。本実施形態では、3つのアクチュエータ80は、押圧部材11を含む研磨ヘッド10の全体を傾動させる押圧部材傾動アクチュエータ87を構成する。押圧部材傾動アクチュエータ87は、押圧部材11の押圧面11aの傾きを調整する傾き調整装置を構成する。図24に示す実施形態と同じように、押圧部材傾動アクチュエータ87は、2つのアクチュエータ80および1つのボールジョイント82を備えてもよい。
【0087】
図29に示す押圧部材傾動アクチュエータ87は、図2乃至図4を参照して説明した実施形態に適用してもよい。
【0088】
図30は、研磨装置のさらに他の実施形態を模式的に示す側面図である。本実施形態の研磨装置は、ウェーハなどの基板の表面(表側面または裏側面)を研磨するための装置である。基板保持部111と、この基板保持部111に保持された基板Wの第一の面A1を研磨する研磨ヘッド150とを備えている。研磨ヘッド150は、基板保持部111に保持されている基板Wの上側に配置されている。
【0089】
一実施形態では、基板Wの第一の面A1は、デバイスが形成されていない、またはデバイスが形成される予定がない基板Wの裏側面、すなわち非デバイス面である。反対側の面である基板Wの第二の面A2は、デバイスが形成されている、またはデバイスが形成される予定である基板Wの表側面、すなわちデバイス面である。一実施形態では、基板Wの第一の面A1は基板Wの表側面(デバイス面)であり、基板Wの第二の面A2は基板Wの裏側面(非デバイス面)である。非デバイス面である裏側面の例としては、シリコン面が挙げられる。本実施形態では、基板Wは、その第一の面A1が上向きの状態で、基板保持部111に水平に保持される。第一の面A1は、研磨装置で研磨される被研磨面である。
【0090】
基板保持部111は、ベースプレート112の上面に固定されている。基板保持部111は、基板Wの周縁部を把持する複数のチャック114と、これらチャック114を介して基板Wを回転させる環状の中空モータ(チャックモータ)116を備えている。チャック114は、中空モータ116に固定されており、中空モータ116によって基板保持部111の軸心CPを中心に回転される。基板Wは、チャック114によって水平に保持される。複数のチャック114は、基板保持部111の軸心CPの周りに配置されており、基板保持部111の軸心CPから同じ距離に位置している。複数のチャック114によって基板Wが保持されたとき、基板Wの中心点は基板保持部111の軸心CP上にある。
【0091】
基板Wを保持した全てのチャック114は、中空モータ116によって基板保持部111の軸心CP、すなわち基板Wの軸心を中心に一体に回転される。一実施形態では、基板保持部111は、チャック114に代えて、自身の軸心を中心に回転することができる複数のローラーを備えてもよい。複数のローラーを備えた基板保持部111によれば、基板の周縁部はローラーに保持され、各ローラーが自身の軸心を中心に回転することによって、基板はその軸心を中心に回転される。
【0092】
基板保持部111に保持された基板Wの上方には、基板Wの第一の面A1にリンス液(例えば純水)を供給するリンス液供給ノズル118が配置されている。このリンス液供給ノズル118は、図示しないリンス液供給源に接続されている。リンス液供給ノズル118は、基板Wの中心を向いて配置されている。リンス液は、リンス液供給ノズル118から基板Wの中心に供給され、遠心力によりリンス液は基板Wの第一の面A1上を広がる。
【0093】
研磨ヘッド150はヘッドシャフト120に連結されている。このヘッドシャフト120は、研磨ヘッド150をその軸心HPを中心として回転させるヘッド回転機構122に連結されている。さらに、ヘッドシャフト120には、研磨ヘッド150に下向きの荷重を付与する荷重付与装置としてのエアシリンダ125が連結されている。研磨ヘッド150は、複数の研磨具130を基板Wの第一の面A1に押し付けるための複数の押圧部材155を備えている。研磨ヘッド150はハウジング126を備えており、押圧部材155はハウジング126内に収容されている。複数の研磨具130は研磨ヘッド150に保持されており、研磨具130の裏側は押圧部材155の押圧面155aに接触している。図30では2つの研磨具130および2つの押圧部材155のみが描かれているが、本実施形態では、3つの研磨具130および3つの押圧部材155が設けられている。
【0094】
図31は、図30に示す研磨ヘッド150の底面図である。研磨具130の下面は、基板Wを研磨する研磨面130aを構成する。研磨面130aは、研磨ヘッド150の半径方向に延びている。研磨具130は研磨ヘッド150の軸心HPまわりに等間隔に配列されている。
【0095】
図30に戻り、研磨具130は研磨ヘッド150から下方に突出している。研磨ヘッド150がその軸心HPを中心に回転すると、3つの研磨具130も同様に軸心HPを中心に回転する。研磨ヘッド150は、軸心HPを中心に回転しながら研磨具130の研磨面130aを基板Wの第一の面A1に摺接させて、該第一の面A1を研磨する。一実施形態では、研磨ヘッド150は、2つの研磨具130、または4つ以上の研磨具130を保持してもよい。さらに、一実施形態では、研磨ヘッド150は、1つの研磨具130のみを保持してもよい。
【0096】
本実施形態では、研磨具130は、砥粒を含んだ研磨層が片面に形成された研磨テープから構成されている。研磨テープの両端は、図示しない2つのリールに保持されており、2つのリールの間を延びる研磨テープの下面(研磨面130a)が押圧部材155の押圧面155aによって基板Wの第一の面A1に押し付けられる。一実施形態では、研磨具130は、スポンジ、不織布、発泡ポリウレタン、または固定砥粒であってもよい。
【0097】
基板保持部111の内側には、3つのセンサ30が配置されている。センサ30の構成および配列は、上述した実施形態で説明したセンサ30と同じであるので、その重複する説明を省略する。センサ30は、後述するように、研磨具130の研磨面130aの高さ、および基板保持部111の基板保持面の高さを測定するために設けられている。
【0098】
3つのセンサ30は、ブラケット133に固定されている。ブラケット133はセンサ昇降装置135に固定されており、センサ昇降装置135はベースプレート112に固定されている。3つのセンサ30は、ブラケット133を介してセンサ昇降装置135に連結されている。センサ昇降装置135は3つのセンサ30およびブラケット133を一体に上昇および下降するように構成されている。センサ昇降装置135は、例えば、エアシリンダから構成される。図30は、センサ30およびブラケット133が下降した位置にある状態を示している。センサ30は、処理部40に電気的に接続されており、センサ30の出力信号は処理部40に送られるようになっている。処理部40は、その内部に記憶装置40aと、演算装置40bを備えている。処理部40の詳細な構成および動作は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0099】
ヘッド回転機構122およびエアシリンダ125は、水平に延びる旋回アーム140に固定されている。ヘッドシャフト120および研磨ヘッド150は、旋回アーム140の一端に回転可能に支持されている。旋回アーム140の他端はアーム支持軸141に固定されている。アーム支持軸141は鉛直に延びており、アーム支持軸141の下部はアーム回転機構143に連結されている。アーム回転機構143は、モータおよび減速機構などから構成されており、アーム支持軸141をその軸心SPを中心に所定の角度だけ回転させることが可能に構成されている。アーム回転機構143がアーム支持軸141を回転させると、研磨ヘッド150および旋回アーム140は、アーム支持軸141を中心に旋回する。より具体的には、研磨ヘッド150は、基板Wを研磨するための研磨位置(後述する)と、センサ30の上方位置と、基板保持部111の外側の退避位置との間を移動する。図30は、研磨ヘッド150がセンサ30の上方位置にある状態を示している。
【0100】
研磨ヘッド150は、基板Wのサイズよりも小さいサイズを有している。研磨ヘッド150の軸心HPは、基板保持部111の軸心CPからずれている。したがって、研磨ヘッド150は、基板保持部111に保持された基板Wに対して偏心している。研磨ヘッド150は、基板保持部111の軸心CP上にある。
【0101】
図30に示すように、研磨装置は、押圧部材155を含む研磨ヘッド150の全体を傾斜させる押圧部材傾動アクチュエータ87を備えている。押圧部材傾動アクチュエータ87は、3つのアクチュエータ80を備えており、各アクチュエータ80は、ボールねじ機構84とサーボモータ85との組み合わせから構成されている。3つのアクチュエータ80は動作制御部86に接続されており、これらアクチュエータ80の動作は動作制御部86によって制御される。上述した処理部40は動作制御部86に接続されており、処理部40によって算出された基板保持部111の基板保持面と押圧部材155の押圧面155aとの間の相対的角度の情報は動作制御部86に送られる。動作制御部86は、上記算出された相対的角度が実質的に0になるまで、3つのアクチュエータ80を操作して押圧部材155の傾きを調整する。
【0102】
図22に示す実施形態と同じように、3つのアクチュエータ80は、アーム支持軸141の軸心SPの周りに配列されている。一実施形態では、4つ以上のアクチュエータ80をアーム支持軸141の軸心SPの周りに配列してもよい。さらに一実施形態では、図24に示す実施形態と同じように、押圧部材傾動アクチュエータ87は、アーム支持軸141の軸心SPの周りに配列された2つのアクチュエータ80および1つのボールジョイント82を備えてもよい。
【0103】
本実施形態では、押圧部材傾動アクチュエータ87は、ヘッドシャフト120、旋回アーム140、アーム支持軸141、アーム回転機構143、および支持部材76を介して研磨ヘッド150に連結されている。アーム回転機構143は、支持部材76に固定されている。3つのアクチュエータ80は支持部材76に傾動可能に連結されている。
【0104】
ブラケット133に保持されたセンサ30と、基板保持部111との相対位置は固定である。一方、研磨ヘッド150の押圧部材155は、センサ30および基板保持部111に対して傾動することが可能に構成されている。
【0105】
図32は、研磨ヘッド150が研磨位置にあるときの平面図である。研磨位置にある研磨ヘッド150の下方には静圧支持ステージ170が配置されている。静圧支持ステージ170は、センサ30と同様に、基板保持部111の内側に配置され、センサ30に隣接している。静圧支持ステージ170は、基板保持部111に保持されている基板Wの下側に配置されている。
【0106】
図33は、図32に示す静圧支持ステージ170を示す断面図である。研磨ヘッド150は研磨位置にあり、静圧支持ステージ170は、研磨ヘッド150の下方に位置する。この静圧支持ステージ170は、チャック114に保持された基板Wの第二の面A2(第一の面A1とは反対側の面)に流体を接触させて基板Wを流体で支持するように構成されている。静圧支持ステージ170は、チャック114に保持された基板Wの第二の面A2に近接した基板支持面170aを有している。本実施形態の基板支持面170aは円形であるが、四角形または他の形状を有していてもよい。
【0107】
静圧支持ステージ170は、基板支持面170aに形成された複数の流体排出口172と、複数の流体排出口172にそれぞれ接続された複数の流体供給路174をさらに備えている。流体供給路174は、図示しない流体供給源に接続されている。各流体供給路174を通る流体の流量は、図示しない流量調節弁によって調節されるようになっている。本実施形態では、3つの流体排出口172が設けられている。一実施形態では、複数の流体排出口172は、基板支持面170aの全体に均一に分布する複数の開口部であってもよい。
【0108】
図33に示すように、静圧支持ステージ170は、ステージ昇降機構175に連結されている。ステージ昇降機構175は、ベースプレート112の上面に固定されている。ステージ昇降機構175により静圧支持ステージ170はその基板支持面(上面)170aが基板Wの下面(第二の面A2)に近接した位置に達するまで上昇されるようになっている。静圧支持ステージ170は、基板保持部111に保持されている基板Wの下方に配置され、基板支持面170aは基板Wの第二の面A2から僅かに離れている。
【0109】
流体(例えば、純水などの液体)は、流体供給路174を通じて複数の流体排出口172に供給され、基板支持面170aと基板Wの第二の面A2との間の空間は流体で満たされる。基板Wは、基板支持面170aと基板Wの第二の面A2との間に存在する流体によって支持される。基板Wと静圧支持ステージ170とは非接触に保たれる。一実施形態では、基板Wと静圧支持ステージ170との間のクリアランスは50μm~500μmとされる。
【0110】
静圧支持ステージ170は、流体を介して基板Wの第二の面A2を非接触に支持することができる。したがって、基板Wの第二の面A2にデバイスが形成されている場合には、静圧支持ステージ170は、デバイスを破壊することなく基板Wを支持することができる。静圧支持ステージ170に使用される流体としては、非圧縮性流体である純水などの液体、または空気や窒素などの圧縮性流体である気体を用いてもよい。純水が使用される場合、流体供給路174に接続される流体供給源として、研磨装置が設置されている工場に設置された純水供給ラインを使用することができる。
【0111】
研磨ヘッド150の下面と静圧支持ステージ170の基板支持面170aは、同心状に配置される。さらに、研磨ヘッド150の下面と静圧支持ステージ170の基板支持面170aは、基板Wに関して対称的に配置される。すなわち、研磨ヘッド150の下面と静圧支持ステージ170の基板支持面170aは基板Wを挟むように配置されており、研磨ヘッド150から基板Wに加えられる荷重は、研磨ヘッド150の真下から静圧支持ステージ170によって支持される。したがって、研磨ヘッド150は、大きな荷重を基板Wの第一の面A1に加えることができる。
【0112】
次に、研磨装置の動作について説明する。研磨される基板Wは、搬送ロボット(図示せず)により基板保持部111に渡される。基板Wは、第一の面A1が上向きの状態で、基板保持部111のチャック114により把持され、さらに中空モータ116により基板Wの軸心を中心に回転される。流体(例えば、純水などの液体)は、流体供給路174を通じて複数の流体排出口172に供給され、静圧支持ステージ170の基板支持面170aと基板Wの第二の面A2との間の空間は流体で満たされる。基板Wは、基板支持面170aと基板Wの第二の面A2との間を流れる流体によって支持される。
【0113】
リンス液供給ノズル118は、リンス液を基板Wの中心に供給し、リンス液は遠心力により基板Wの第一の面A1上を広がる。ヘッド回転機構122は、研磨ヘッド150をその軸心HPを中心に回転させる。そして、エアシリンダ125は、回転する研磨ヘッド150を基板Wの第一の面A1に向かって移動させ、押圧部材155の押圧面155aは研磨具130の研磨面130aを基板Wの第一の面A1に押し付ける。リンス液が基板Wの第一の面A1上に存在する状態で、研磨具130は、基板Wの第一の面A1に摺接され、第一の面A1を研磨する。
【0114】
先に述べた実施形態と同じように、基板Wの研磨の前に、押圧部材155の押圧面155aが、基板保持部111の基板保持面と平行になるように、押圧部材傾動アクチュエータ87により押圧面155aの傾きが調整される。より具体的には、センサ30は、基板保持部111の基板保持面上の3点の高さ、および押圧部材155の押圧面155a上の3点の高さを測定し、処理部40は、基板保持部111の基板保持面の傾き、および押圧部材155の押圧面155aの傾きを算出し、さらに基板保持部111の基板保持面の傾きと押圧部材155の押圧面155aの傾きに基づいて、基板保持部111の基板保持面と押圧面155aとの相対的角度を算出する。処理部40は、算出した相対的角度を動作制御部86に送信する。そして、動作制御部86は、押圧部材傾動アクチュエータ87に指令を発して、相対的角度が実質的に0となるように押圧部材傾動アクチュエータ87を作動させ、押圧部材155を含む研磨ヘッド150の傾きを調整する。
【0115】
ここで、基板保持部111の基板保持面について、図34(a)および図34(b)を参照して説明する。基板Wは、基板保持部111の基板保持面上に保持される。この基板保持部111の基板保持面は、基板保持部111に保持されているときの基板Wの傾き(姿勢)を決定する基板保持部111の複数の基板接触点によって形成される平面である。図34(a)に示す実施形態では、基板Wの傾きは、複数のチャック114の基板接触点114aによって決定される。したがって、図34(b)に示すように、基板保持部111の基板保持面は、複数のチャック114の複数の基板接触点114aを含む平面(想像面)である。図2乃至図4に示す上述した実施形態では、基板保持部1の基板保持面は、基板ステージ2のステージ面2aである。
【0116】
基板保持面上の3点の高さは次のようにしてセンサ30によって測定される。図35に示すように、アーム回転機構143は、研磨ヘッド150を基板保持部111の外側の退避位置に移動させる。次いで、研磨される基板Wを模したダミー基板160を複数のチャック114に保持させる。ダミー基板160は、基板Wと同じ形状および同じ大きさの外縁を有したダミー構造体であり、平坦面160aを有する。ノッチまたはオリエンテーションフラットなどの切り欠きは、ダミー基板160には形成されていなくてもよい。ダミー基板160は、金属、または硬質の樹脂から形成されてもよく、または研磨される基板Wと同じ形状および同じ大きさの他の基板であってもよい。
【0117】
ダミー基板160の周縁部は、複数のチャック114の複数の基板接触点114aによって支持される。ダミー基板160の下面は平坦面160aであり、この平坦面160aは、複数の基板接触点114aを含む基板保持面に一致する。
【0118】
図36に示すように、センサ昇降装置135は、3つのセンサ30を所定の測定位置まで上昇させる。3つのセンサ30は、ダミー基板160の平坦面160a、すなわち基板保持面上の3点の高さを測定する。これら3つの点の位置は、3つのセンサ30の位置に対応する。3つのセンサ30は、測定された高さをそれぞれ示す3つの出力信号を処理部40に送る。処理部40は、受信した3つの出力信号と、3つのセンサ30の相対位置から基板保持面上の3つの点の位置を特定する。処理部40は、基板保持面上の3点の位置(座標)に基づいて基板保持面の傾きを算出する。算出された基板保持面の傾きは、処理部40の記憶装置40aに記憶される。基板保持面上の3点の高さが測定された後、ダミー基板160は基板保持部111から取り除かれる。
【0119】
基板保持面の傾きは、先に述べた実施形態でのステージ面2aの傾きの測定と同様にして算出される。処理部40は、3つのセンサ30のゼロリセットを実行してもよい。すなわち、3つのセンサ30によって得られたダミー基板160の平坦面160a(すなわち基板保持面)上の3点の高さの測定値は、0にリセットされてもよい。
【0120】
先に述べた実施形態と同じように、基板保持面上の3点の高さは、ダミー基板160の平坦面160a内の複数の領域で測定してもよい。具体的には、ダミー基板160を基板保持部111で間欠的に回転させながら、基板保持面上の3点の高さを、ダミー基板160の平坦面160a内の複数の領域で測定し、これら複数の領域でのダミー基板160の平坦面160aの傾きを算出し、該算出された複数の領域の傾きの平均を算出し、該算出された平均が基板保持面の傾きに決定される。ダミー基板160の平坦面160a内の複数の領域は、平坦面160aの中心(すなわち、基板保持面の中心)の周りに等間隔で配列されていることが好ましい。
【0121】
次に、研磨具130の研磨面(下面)130aの高さがセンサ30によって測定される。図37は、センサ30が研磨具130の研磨面(下面)130aの高さを測定している状態を示す図である。アーム回転機構143は、研磨ヘッド150を3つのセンサ30の上方位置に移動させる。次いで、センサ30は、センサ昇降装置135によって所定の測定位置まで上昇され、3つのセンサ30は3つの研磨具130の研磨面130a上の3点の高さをそれぞれ測定する。研磨具130の裏側は、押圧部材155の押圧面155aによって支持されているので、研磨具130の研磨面130aは、押圧部材155の押圧面155aと平行である。3つのセンサ30は、3つの研磨具130の研磨面130a上の3つの点の高さをそれぞれ測定し、測定された高さをそれぞれ示す3つの出力信号を処理部40に送る。
【0122】
処理部40は、受信した3つの出力信号と、3つのセンサ30の相対位置から、上述した実施形態と同じように、3つの研磨具130の研磨面130aの傾きを算出する。3つの研磨具130の研磨面130aの傾きは、3つの押圧部材155の押圧面155aの傾きに相当する。
【0123】
次に、処理部40は、基板保持部111の基板保持面の傾きと、研磨具130の研磨面130aの傾き(すなわち押圧部材155の押圧面155aの傾き)に基づいて、基板保持部111の基板保持面と押圧部材155の押圧面155aとの相対的角度を算出する。処理部40は、算出した相対的角度を動作制御部86に送信する。そして、動作制御部86は、押圧部材傾動アクチュエータ87に指令を発して、相対的角度が実質的に0となるように押圧部材傾動アクチュエータ87を作動させ、押圧部材155を含む研磨ヘッド150の傾きを調整する。傾きが調整された研磨ヘッド150によって保持された研磨具130の研磨面130aは、基板保持部111の基板保持面と実質的に平行である。
【0124】
次に、アーム回転機構143は、再度、研磨ヘッド150を基板保持部111の外側の退避位置に移動させる。基板Wは、基板保持部111のチャック114により把持され、さらに中空モータ116により基板Wの軸心を中心に回転される。アーム回転機構143は、研磨ヘッド150を静圧支持ステージ170の上方の研磨位置に移動させる。流体(例えば、純水などの液体)は、流体供給路174を通じて複数の流体排出口172に供給され、静圧支持ステージ170の基板支持面170aと基板Wの第二の面A2との間の空間は流体で満たされる。基板Wは、基板支持面170aと基板Wの第二の面A2との間を流れる流体によって支持される。
【0125】
リンス液供給ノズル118は、リンス液を基板Wの中心に供給し、リンス液は遠心力により基板Wの第一の面A1上を広がる。ヘッド回転機構122は、研磨ヘッド150をその軸心HPを中心に回転させる。そして、エアシリンダ125は、回転する研磨ヘッド150を基板Wの第一の面A1に向かって移動させ、押圧部材155の押圧面155aは研磨具130の研磨面130aを基板Wの第一の面A1に押し付ける。リンス液が基板Wの第一の面A1上に存在する状態で、研磨具130は、基板Wの第一の面A1に摺接され、第一の面A1を研磨する。
【0126】
本実施形態によれば、研磨具130の研磨面130aは、基板保持部111の基板保持面と実質的に平行である。したがって、研磨具130の研磨面130aは、基板Wの第一の面A1と実質的に平行な状態で、基板Wの第一の面A1に摺接される。
【0127】
研磨具130の研磨面130aの傾きは、押圧部材155の押圧面155aの傾きに相当する。したがって、研磨具130の研磨面130a上の3点の高さから押圧部材155の押圧面155aの傾きを上述のように算出することは可能である。一実施形態では、図38に示すように、研磨ヘッド150の底部にセンサターゲット治具180を取り付け、研磨具130の研磨面130a上の3点の高さに代えて、センサターゲット治具180の平坦面180a上の3点の高さから押圧部材155の押圧面155aの傾きを算出してもよい。
【0128】
図38に示すセンサターゲット治具180は、着脱可能に研磨ヘッド150の底部に取り付けられる。センサターゲット治具180の下面は平坦面180aを構成しており、平坦面180aは押圧部材155の押圧面155aと平行である。センサターゲット治具180は、3つの研磨具130の研磨具130aの全体を覆う底壁181と、底壁181の縁に接続された周壁182を有する。周壁182は底壁181から上方に延び、研磨ヘッド150の側面を囲んでいる。周壁182の内面は、研磨ヘッド150の側面と実質的に同じ形状および同じ大きさを有しており、研磨ヘッド150の側面は周壁182の内面に嵌合する。底壁181の下面は、押圧部材155の押圧面155aと平行な平坦面180aである。センサターゲット治具180は、金属、硬質の樹脂などから構成することができる。
【0129】
図39(a)は、センサターゲット治具180を研磨ヘッド150に着脱可能に取り付けるための締結機構の一例を示す図であり、図39(b)は、締結機構の他の例を示す図である。図39(a)に示す例では、センサターゲット治具180の周壁182には貫通穴182aが形成されている。研磨ヘッド150の側面にはねじ穴184が形成されている。ねじ185は、センサターゲット治具180の貫通孔182aを通って研磨ヘッド150のねじ穴184にねじ込まれ、これによってセンサターゲット治具180は研磨ヘッド150に固定される。ねじ185を研磨ヘッド150から取り外すことにより、センサターゲット治具180を研磨ヘッド150から取り外すことができる。図39(a)に示す例では、センサターゲット治具180を研磨ヘッド150に着脱可能に取り付けるための締結機構は、貫通穴182a、ねじ185、およびねじ穴184から構成される。
【0130】
図39(b)に示す例では、研磨ヘッド150の底面に磁石187が固定されており、センサターゲット治具180の底壁181の上面にも磁石188が固定されている。研磨ヘッド150の側面をセンサターゲット治具180の周壁182の内面に嵌合させると、研磨ヘッド150上の磁石187は、センサターゲット治具180上の磁石188を引き寄せ、これによってセンサターゲット治具180は研磨ヘッド150に固定される。図39(b)に示す例では、センサターゲット治具180を研磨ヘッド150に着脱可能に取り付けるための締結機構は、研磨ヘッド150に固定された磁石187、およびセンサターゲット治具180に固定された磁石188から構成される。センサターゲット治具180が磁性材料から構成されている場合は、センサターゲット治具180に固定された磁石188を省略してもよい。この場合、締結機構は、研磨ヘッド150に固定された磁石187から構成される。
【0131】
締結機構は、図39(a)および図39(b)に示す例に限定されない。例えば、締結機構は、パチン錠などのラッチから構成してもよい。図39(b)に示す磁石187または磁石188のいずれか一方は磁性材料に置き換えてもよい。
【0132】
図40は、センサ30によってセンサターゲット治具180の平坦面180a上の3点の高さを測定しているときの状態を示す図である。センサ昇降装置135は、3つのセンサ30を所定の測定位置まで上昇させる。3つのセンサ30は、センサターゲット治具180の平坦面180a上の3点の高さを測定する。これら3つの点の位置は、3つのセンサ30の位置に対応する。3つのセンサ30は、測定された高さをそれぞれ示す3つの出力信号を処理部40に送る。
【0133】
処理部40は、受信した3つの出力信号と、3つのセンサ30の相対位置からセンサターゲット治具180の平坦面180a上の3つの点の位置を特定する。処理部40は、センサターゲット治具180の平坦面180a上の3点の位置(座標)に基づいてセンサターゲット治具180の平坦面180aの傾きを算出する。センサターゲット治具180の平坦面180aの傾きは、押圧部材155の押圧面155aに対応する。算出されたセンサターゲット治具180の平坦面180aの傾き、すなわち押圧部材155の押圧面155aの傾きは、処理部40の記憶装置40aに記憶される。センサターゲット治具180の平坦面180a上の3つの点の高さが測定された後、センサターゲット治具180は研磨ヘッド150から取り除かれる。
【0134】
図30乃至図40を参照して説明した実施形態では、押圧部材155を含む研磨ヘッド150の全体を傾動させるために、押圧部材傾動アクチュエータ87が設けられている。一実施形態では、図41に示すように、押圧部材傾動アクチュエータ87に代えて、基板保持部111の全体を傾動させる基板保持面傾動アクチュエータ81を設けてもよい。基板保持面傾動アクチュエータ81の構成は、図22乃至図24を参照して説明した基板保持面傾動アクチュエータ81と同じであるので、その重複する説明を省略する。基板保持面傾動アクチュエータ81の3つのアクチュエータ80は、ベースプレート112に傾動可能に連結されている。3つのアクチュエータ80は、基板保持部111の軸心CPの周りに配列されている。
【0135】
センサ30を支持しているセンサ昇降装置135は、ベースプレート112には固定されておらず、基板保持部111とは接触していない。本実施形態では、センサ昇降装置135は、ベースプレート112に形成された孔を貫通して延びる設置台190に固定されており、この設置台190は設置面191に固定されている。基板保持部111の全体は、センサ30およびセンサ昇降装置135とは独立して傾動される。すなわち、基板保持部111の全体は基板保持面傾動アクチュエータ81により傾動可能であり、その一方でセンサ30およびセンサ昇降装置135の姿勢は不変である。
【0136】
基板Wの研磨の前に、基板保持部111の基板保持面が、押圧部材155の押圧面155aと平行になるように、基板保持面傾動アクチュエータ81により基板保持部111の傾きが調整される。より具体的には、センサ30は、基板保持部111の基板保持面の高さ、および押圧部材155の押圧面155aの高さを測定し、処理部40は、基板保持部111の基板保持面の傾き、および押圧部材155の押圧面155aの傾きを算出し、さらに基板保持部111の基板保持面の傾きと押圧部材155の押圧面155aの傾きに基づいて、基板保持部111の基板保持面と押圧面155aとの相対的角度を算出する。処理部40は、算出した相対的角度を動作制御部86に送信する。そして、動作制御部86は、基板保持面傾動アクチュエータ81に指令を発して、相対的角度が実質的に0となるように基板保持面傾動アクチュエータ81を作動させ、基板保持部111の傾きを調整する。傾きが調整された基板保持部111の基板保持面は、研磨ヘッド150に保持された研磨具130の研磨面130aと平行である。
【0137】
今まで説明した実施形態では、基板保持部111の基板保持面の上方に研磨ヘッド150が配置され、基板保持部111の基板保持面の下方にセンサ30が配置されているが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。一実施形態では、基板保持部111の基板保持面の上方にセンサ30が配置され、基板保持部111の基板保持面の下方に研磨ヘッド150が配置されてもよい。
【0138】
本発明は、円形基板のトップエッジを研磨するための研磨装置のみならず、四角形基板のトップエッジを研磨するための研磨装置にも適用することができることはもちろんである。また、本明細書において「基板」には、半導体基板、ガラス基板、プリント回路基板だけでなく、磁気記録媒体、磁気記録センサ、ミラー、光学素子や微小機械素子、あるいは部分的に製作された集積回路を含む。また、基板は、例えば表面にニッケルあるいはコバルトを含有する層を有するものであってもよい。
【0139】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0140】
1 基板保持部
2 基板ステージ
2a ステージ面
3 ステージモータ
7 研磨テープ
10 研磨ヘッド
11 押圧部材
11a 押圧面
14 巻き出しリール
15 巻き取りリール
17,18 リールモータ
20 テープ送り装置
21,22 ガイドローラー
25 エアシリンダ
27 ピストンロッド
28 押圧部材ホルダ
30 センサ
33 直動ガイド
35 ブラケット
39 ベースブロック
40 処理部
41 研磨ヘッド移動装置
42 固定部材
43 直動ガイド
44 ボールねじ機構
45 サーボモータ
46 モータ台
47 ベースプレート
48 設置ブロック
51 第1支持軸
51a 多角形部
52 固定プレート
52a 多角形孔
52b 切り欠き
55 第1ねじ
57 偏心カム
60 第1チルト機構
62 第2支持軸
64 第2ねじ
69 第2チルト機構
71 ターゲットプレート
72 突出部
72a 突出部の上面
76 支持部材
80 アクチュエータ
81 基板保持面傾動アクチュエータ
82 ボールジョイント
84 ボールねじ機構
85 サーボモータ
86 動作制御部
87 押圧部材傾動アクチュエータ
90 連結アーム
92 基準プレート
92a 基準面
95 第2研磨ヘッド移動装置
97 フレーム
98 リール移動機構
111 基板保持部
112 ベースプレート
114 チャック
116 中空モータ(チャックモータ)
118 リンス液供給ノズル
120 ヘッドシャフト
122 ヘッド回転機構
125 エアシリンダ
130 研磨具
130a 研磨面
126 ハウジング
133 ブラケット
135 センサ昇降装置
140 旋回アーム
141 アーム支持軸
143 アーム回転機構
150 研磨ヘッド
155 押圧部材
155a 押圧面
160 ダミー基板
160a 平坦面
170 静圧支持ステージ
170a 基板支持面
172 流体排出口
174 流体供給路
175 ステージ昇降機構
180 センサターゲット治具
180a 平坦面
181 底壁
182 周壁
182a 貫通穴
184 ねじ穴
185 ねじ
187 磁石
188 磁石
190 設置台
191 設置面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46