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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】搬送リング
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/458 20060101AFI20220720BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20220720BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
C23C16/458
H01L21/205
H01L21/68 N
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019540344
(86)(22)【出願日】2018-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2018051827
(87)【国際公開番号】W WO2018138197
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】102017101648.1
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017115416.7
(32)【優先日】2017-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502010251
【氏名又は名称】アイクストロン、エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(72)【発明者】
【氏名】クリュッケン、ヴィルヘルム・ヨゼフ・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】アイケルカンプ、マルティン
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102013012082(DE,A1)
【文献】特開2007-258694(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0261187(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
H01L 21/205
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板ホルダ(12)の環状段部に載置され、リング開口を少なくとも部分的に囲包するリング形状本体(1)の使用であって、前記リング開口に関して径方向外方に突出する第1のセクション(2)と径方向内方に突出する第2のセクション(3)とを有し、
前記第1のセクション(2)は、第1の上向きの上方主面(4)と第1の下向きの下方主面(6)とを有し、かつ、
前記第2のセクション(3)は、第2の上向きの上方主面(5)により基板(11)の縁を載置するための支持面を形成すると共に、上向きの環状段部(15)に載置される第2の下向きの下方主面()を有し、
CVDリアクタ内で、リング開口の面の面法線に関する軸方向の温度差があるとき、前記セクション(2、3)の各々が、それぞれのセクションを介した各下方主面(6、7)から各上方主面(4、5)への軸方向熱伝導を決定する熱伝導特性を有し、
軸方向に単位面積要素を通って流れる熱が前記第1のセクション(2)において前記第2のセクション(3)よりも小さい点で、前記第1のセクション(2)の少なくとも1つの熱伝導特性が前記第2のセクション(3)の熱伝導特性と異なる、前記使用において、
前記基板ホルダ(12が加熱されたサセプタ(16)により担持され、前記第1のセクション(2)は径方向外方に前記基板ホルダ(12)を超えて突出しかつ前記サセプタ(16)の表面(17)から熱輻射により第1の熱フロー(Q)を受取り、かつ、
前記基板(11)の縁が前記第2のセクション(3)を介して第2の熱フロー(Q)により加熱され、
前記熱フロー(Q、Q)が、前記サセプタ(16)の表面(17)とプロセスチャンバ天井(19)との温度差の結果であることを特徴とする使用。
【請求項2】
前記熱伝導特性が、前記セクションの熱伝導率であり、前記第1のセクション(2)の熱伝導率が、前記第2のセクション(3)のそれよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記熱伝導特性が、前記セクション(2,3)の少なくとも軸方向に向いた表面の放射率であり、前記第1のセクション(2)の表面の放射率が、前記第2のセクション(3)の表面の放射率よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記第1のセクション(2)と前記第2のセクション(3)との間に配置され、前記熱伝導特性が実質的に前記第2のセクション(3)のそれに対応する第3のセクション(8)を特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記第2のセクション(3)及び前記第3のセクション(8)が、基板ホルダ(12)の環状段部(15)に載置されていることを特徴とする請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記基板ホルダ(12)が、下方から加熱されるサセプタ(16)により担持され、かつ前記第1のセクション(2)が、前記基板ホルダ(12)の側面(18)を超えて自由に突出していることを特徴とする請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記リング形状本体(1)が、複数の互いに接続された要素(24、25、26)からなり、それらが、互いに異なる熱伝導特性を有しかつ/又はスペーサ要素(28)により互いに離間していることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記第1のセクション(2)に割り当てられた1又は複数のリング要素(25、26)が小さい熱伝導率を有しかつ特に石英又は酸化ジルコニウムからなり、かつ、少なくとも前記第2のセクションに割り当てられたベース体(24)が大きい熱伝導率を有しかつ特にグラファイト又はシリコンカーバイドからなることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
表面の互いに異なる放射率が、互いに異なる表面コーティングにより、又は、少なくとも1つの反射要素(27)により決定されることを特徴とする請求項3~8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
前記第1のセクション(2)に割り当てられた1又は複数のリング要素(24、25)が、より小さい熱伝導率をもつ透明材料からなり、その中に反射層(27)として金属層が封入されていることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
前記第2のセクション(3)の熱伝導率が、前記第1のセクション(2)の熱伝導率より少なくとも10倍大きいことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
前記第1のセクション(2)の表面(4)の放射率が0.3より小さく、前記第2のセクション(3)及び/又は第3のセクション(8)の表面(5、9)の放射率が0.3より大きいことを特徴とする請求項4又は5に記載の使用。
【請求項13】
前記リング形状本体(1)が、前記第1のセクション(2)及び前記第2のセクション(3)に亘って延在するベース体(24)により形成されており、前記第1のセクション(2)は、前記ベース体(24)とは異なる熱伝導特性をもつ少なくとも1つのリング要素(25、26)を有することを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
前記第1のセクション(2)及び前記第3のセクション(8)の各々が、プロセスチャンバ天井(19)の方に向いた表面(4、9)を有し、前記第1のセクション(2)の表面(4)が、前記第3のセクション(8)の表面(9)の少なくとも2倍の大きさであることを特徴とする請求項4、5、又は12に記載の使用。
【請求項15】
前記第2のセクション(3)におけるプロセスチャンバ天井(19)の方に向いた表面(5)が、前記基板(11)の縁を載置するための載置領域を形成し、前記載置領域が、前記第3のセクション(8)の境界面(20)により囲包されており、前記第3のセクション(8)は、前記第2のセクション(3)と同様に、前記サセプタ(16)の方に向いた表面(10、7)により前記基板ホルダ(12)の環状段部(15)に載置されていることを特徴とする請求項4、5、12、又は14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング開口を少なくとも部分的に囲包するリング形状本体の形態の、基板を搬送するための装置に関し、リング開口に関して径方向外方に突出する第1のセクションと、径方向内方に突出する第2のセクションとを有し、それらのセクションが第1及び第2の熱伝導特性を有し、それらの熱伝導特性は、リング開口の面の面法線に関する軸方向の温度差があるとき、それらのセクションを介した軸方向の熱伝導を決定する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1により、プロセスチャンバ内に回転可能に配置されたサセプタ上に複数の基板ホルダが配置されたCVDリアクタが知られている。基板ホルダは、下方から加熱されるサセプタの上向きの主面上に、温度伝達する平面配置で置かれている。基板ホルダの上向きの主面上に基板、特に半導体基板が置かれ、それは、サセプタの上方に配置されたプロセスチャンバ内に供給されるプロセスガスによりコーティングされる。基板を基板ホルダ上面に自動的に載置しそこから再び取り出すためにグリッパが設けられ、それは2つのグリップアームを有し、それらは搬送リングの縁の下に係合し、搬送リングは基板ホルダの環状段部に載置されて径方向内向きのセクションにより基板の外縁に下から係合する。搬送リングの径方向外向きのセクションが、基板ホルダの側縁を規定する側面を超えて突出することによって、搬送リングの外向きセクションがグリッパの2つのグリップアームにより下から係合され得る。
【0003】
コーティングプロセスが、その上壁を冷却されたプロセスチャンバ内で行われることによって、加熱されたサセプタとプロセスチャンバ天井との間に温度勾配が形成される。温度勾配は、サセプタからプロセスチャンバ天井への熱フローを生じ、その熱フローは、500℃を超える高いサセプタ温度により、1000℃を超える所定のプロセスにおいても、熱輻射によって、及び、基板ホルダとその上に載置された基板を介した熱伝導によっても生じる。
【0004】
別の装置が特許文献2に記載されている。しかしながらその場合、基板は、搬送リングの第2のセクション上に載置されない。それに替えて、搬送リングが、径方向内向きに突出するリング形状の支持要素を担持し、その支持要素の上で基板の外縁が支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2012/096466号公報
【文献】独国特許出願公開第10 2004 058 521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基板上に堆積される層がより高い横方向の均一性を得られるように搬送リングをさらに改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
CVDリアクタにおける搬送リングの汎用的配置において、グリッパのグリップアームにより支持するために径方向外方に向いた第1のセクションが、基板の縁に下から係合するために径方向内方に突出する第2のセクションよりも低い温度に加熱されることが、モデル計算において示される。搬送リングを形成する本体の熱伝導特性の結果として、熱が第2のセクションから第1のセクションへと流れ、その結果、基板の縁領域が基板の中央領域よりも低い表面温度となる。その基板は、基板ホルダの上向き主面の上方に配置されかつ特にその主面に接触して載置されている。この温度差によって、中央領域よりも縁領域において他の成長条件が優勢となる結果、基板上に堆積された層の化学量論的組成、その層厚又はそのドーピングが、少なくとも縁領域において不均一性を有することとなる。よって搬送リング上において、一方では、基板の縁を担持する領域で大きい熱伝導率を有することによって、サセプタから供給される熱が基板ホルダ及び搬送リングを介して基板の縁へと流れ、それによって基板の縁を、基板の中央領域が加熱されるのと同じ温度に加熱することが要求される。他方では、搬送リングにおける基板の縁を担持するセクションから、搬送リングにおけるグリッパ上での支持のために必要なセクションの方への熱損失を最小とすることが要求される。
【0008】
本発明によれば、本体の複数のセクションが異なる熱伝導特性を有する。距離を規定するために、本体により少なくとも部分的に囲包されるリング開口の面の面法線の方向に延在する仮想的な軸が想定される。グリッパのグリップアームにより下から係合するために用いられる第1のセクションが、本発明によれば径方向外方に突出するセクションである。特に厚さを薄くした段を形成する第2のセクションは、その上に基板の縁が載置され、本発明では径方向内方に突出するセクションである。本体を通る熱伝導は、軸方向に行われ、すなわち本体の下向きの主面から、上方のプロセスチャンバ天井の方に向いた本体の主面まで行われる。熱伝導特性は、特に、セクションの熱伝導率またはセクションの表面の放射率である。本発明によれば、少なくとも1つの熱伝導特性が、軸方向に単位面積要素を通って流れる熱が第1のセクションにおいて第2のセクションにおけるよりも小さい点において、第1のセクションと第2のセクションとで異なっている。したがって、径方向外側に配置された第1のセクションは、基板の縁を接触状態で載置させる第2のセクションよりも大きな熱フロー抵抗を有する。それに替えて又はそれに組み合わせて、第1のセクションの表面の放射率を、第2のセクションの放射率よりも小さくすることができる。搬送リングを形成する本体は、リングであることができる。リング形状本体は、閉じた又は開いたリングを形成することができる。第1のセクションは、直接、第2のセクションと境界を接することができる。第1のセクションと第2のセクションとの間の境界は、基板ホルダの環状段部の領域に存在することができ、その環状段部の上にリング形状本体が載置される。しかしながら、その境界は、基板ホルダの縁すなわち基板ホルダの側面の直ぐ上に位置することもできる。しかしながら、その境界はまた、径方向外方に基板ホルダの縁を超えて突出したリング形状本体の領域に位置することもできる。
本発明の進展において、第1のセクションが第2のセクションと直接境界を接しておらず、第1のセクションと第2のセクションとの間に介在セクションが延在することが提示される。この第3のセクションは、第2のセクションすなわちその縁に基板が載置されるセクションと同じ熱伝導特性を、すなわち特に同じ熱フロー抵抗を有することができる。第1のセクションと第3のセクションとの間の境界は、基板ホルダの環状段部に位置することができる。あるいは、環状段部の縁又は環状段部の径方向外側に位置することもできる。第1のセクションは、基板ホルダを径方向外側に完全に超えて突出することが好ましい。したがって、それは基板ホルダの側面を超えて自由に突出することによって、サセプタの表面から輻射により加熱される。
本発明による搬送リングの構成では、従来技術に対して、リング形状本体から熱の形態でエネルギーが放散することが低減される結果を得られる。したがって、基板の縁温度が基板の中央温度から大きく逸脱しなくなる結果、上述した冷却効果が軽減される。熱伝導が低減することにより、基板ホルダへの接触により加熱される第2のセクションから、実質的に輻射により又はプロセスチャンバに存在するガスを介した熱伝導により熱が放散される第1のセクションへ流れる熱が少なくなる。第1のセクションの上向きの主面が小さい放射率を有する結果、冷却されたプロセスチャンバ天井の方への輻射によるエネルギー放出も低減されることが特に提示される。
グリッパにより基板を取り扱うための手段であるリング形状本体が、複数の部品から構成されることが好ましい。その場合、それらの部品が異なる熱伝導特性を有するか又はそれらの表面が異なる放射率を有する。好ましくは、第1のセクションが、小さい熱伝導率を有する1つのリング要素から形成されるか又は複数のリング要素から形成される。したがって、径方向外側のセクションは、石英、酸化ジルコニウム又はその他の材料からなる1又は複数のリング要素を有することによって、径方向内方に突出するセクションの材料と比べて小さい熱伝導率を有する。径方向内方に突出するセクションは、大きい熱伝導率を有するベース体を形成することができる。このベース体は、グラファイト、シリコンカーバイド又はその他の良好な熱伝導材料からなることができる。
異なる放射率は、材料選択のみによって規定できるのではない。それは、セクションの表面に異なるコーティングをすることでも可能である。特に第1のセクションが反射要素を有することが提示される。反射要素は、外側から封入された金属片とすることができ、その場合、透明材料により封入することができる。
第1のセクションは、透明材料からなりかつ/又は小さい熱伝導率をもつ1又は複数のリング要素からなることができる。リング要素は、金属層とすることができる反射層を封入する。第1のセクションの表面の放射率は、0.3より小さくすることができる。第2のセクション及び/又は第3のセクションの表面の放射率は、0.3より大きい。ここでのそれは、プロセスチャンバ天井の方に向いた表面に関する。熱伝導率は、10倍異なることができる。第2のセクションの熱伝導率は、第1のセクションの熱伝導率の少なくとも10倍の大きさであることが好ましい。本発明の好ましい変形形態においては、ベース体が良好な熱伝導材料、例えばグラファイト又は酸化ジルコニウムからなり、リング形状本体の径方向幅全体に延在する。したがって、ベース体は、第2のセクションを形成する。ベース体は、第1のセクションの担持部分を形成し、その上に小さい熱伝導率及び/又は高い反射率をもつリング形状要素が配置される。
第1のセクションと第3のセクションは、一緒に、プロセスチャンバ天井の方に向いた表面を形成する。第1のセクションも同様に、プロセスチャンバ天井の方に向いた表面を形成し、その場合、第1のセクションの表面が第3のセクションの表面の少なくとも2倍の大きさであることが好ましい。第3のセクションと第2のセクションとの境界は、基板の縁が載置される支持領域の境界面の領域に位置することができる。したがって、第3のセクションは、軸方向に計測した厚さが第2のセクションよりも大きいことが好ましく、その場合、第1のセクションは第3のセクションと同じ軸方向厚さを有することが好ましい。しかしながら、第1及び第3のセクションは、それらの熱フロー抵抗が異なる。
本発明の好ましい構成では、リング形状本体が、複数のリング形状部品からなり、それらが径方向外側領域のみにおいて互いに上下に配置されることが好ましい。これらの部品は、異なる熱伝導率を有することができる。しかしながら、リング形状本体が、複数のリング形状要素からなり、その場合、リング形状要素同士の間にギャップを設けることも提示される。本発明によれば、ギャップ高さがスペーサ要素により規定される。リング要素は、ここでも、径方向外側領域のみに設けられることが好ましい。スペーサ要素は、リング要素の広い主面から突出する突起とすることができる。しかしながら、突起は、ベース体の広い主面から突出することもでき、それによってリング要素が突起の上に載置される。突起が半球形状の立ち上がり部分を有することが好ましい。突起は、ベース体又はリング要素と同じ材料から作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、CVDリアクタのサセプタ機構の平面図である。
図2図2は、図1のラインII-IIの断面図である。
図3図3は、第2の例示的実施形態の図2における図である。
図4図4は、第3の例示的実施形態の図2における図である。
図5図5は、図3における本発明の第4の例示的実施形態である。
図6図6は、図4における第5の例示的実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例示的実施形態により本発明をより詳細に説明する。
本発明は、結晶又は非結晶の層、特に半導体層を基板11上に堆積するための装置に関し、基板11はその下面により基板ホルダ12の支持面上に載置される。円形ディスク形状の基板ホルダ12の広い下方主面14は、サセプタ16の上向きの表面17上に接触しておかれている。サセプタ16は、図示しない加熱装置により下方から加熱される。
【0011】
基板11の上方には、プロセスチャンバがあり、その中に図示しないガス入口部材によりプロセスガスが供給される。プロセスガスは、プロセスチャンバ内又は加熱された基板11の表面上のいずれかで熱分解する。分解生成物が互いに反応して、特に結晶層を形成する。それは2つ、3つ又はそれ以上の成分からなることができる。
【0012】
プロセスチャンバは、上方において、図示しない冷却要素により冷却されるプロセスチャンバ天井19を境界とする。
【0013】
サセプタ温度Tsは、500℃と1000℃の間にある。プロセスチャンバ天井19の温度Tcは、100℃と300℃の間の範囲内にある。この温度差の結果、サセプタ16の表面17とプロセスチャンバ天井19との間に鉛直方向の温度勾配が形成され、それにより、サセプタ16からプロセスチャンバ天井19へと熱が流れることになる。これは、一方では熱輻射によるが、基板ホルダ12を介した熱伝導にもより、基板ホルダ12は良好な熱伝導材料、例えばグラファイトからなる。
【0014】
図1は、プロセスチャンバの床上の平面図である。図1には図示できない、下方から加熱されるサセプタ16上に、同様に図示しない複数の円形ディスク形状の基板ホルダ12が置かれている。同様に図1には図示できない、支持面を形成する環状段部15に、搬送リングを形成するリング形状本体1が載置される。各基板ホルダ12は、中間部材21、22により囲まれており、中間部材21、22は各基板ホルダ同士の間の表面を充填し、かつ、良好な熱伝導材料、例えばグラファイトから作製されている。
【0015】
基板ホルダ12及び搬送リング1の各々のために、2つの実質的に径方向に互いに平行に延在するチャネル23が中間部材22に設けられ、それらにより、図示しないグリッパのアームが、リング形状本体1を持ち上げるために、リング形状本体1の第1のセクション2の広い下方主面の下側から係合することができる。径方向内方に突出する、リング形状本体1の第2のセクション上に基板11の縁が載置されることによって、リング形状本体1の持ち上げにより基板11を基板ホルダ12から取り外すことができる。
【0016】
図2は、搬送リング1の第1の実施形態を示す。第1の実施形態は、搬送リング1の開口面を通る軸に関して径方向外側のセクション2である第1のセクション2を有する。径方向外側のセクション2は、プロセスチャンバ19の方に向いた広い上方主面4とサセプタ16の方を向いた広い下方主面6とを有し、下方主面6はサセプタ16の表面17に直接対向しており、したがってサセプタ16が放射する熱輻射を受ける。熱Qは、第1のセクション2を軸方向に通過し、熱輻射を介して上方主面4からプロセスチャンバ天井19の方向に実質的に放出される。
【0017】
径方向内方に突出する第2のセクション3は、第1のセクション2よりも薄い軸方向厚さを有する。第2のセクション3は、下向きの広い主面7を有し、その主面7により第2のセクション3は、基板ホルダ12の上向きの環状段部15に載置されている。支持面5を形成する上向きの広い主面上に、基板11の縁が載置される。
【0018】
基板11は、基板ホルダ12による熱伝導を介して及び支持面13による熱伝導を介してプロセス温度に加熱される。 基板11の縁は、第2のセクション3を通る熱フローQにより加熱され、すなわち主面7から支持面5への熱フローにより加熱される。サセプタ16から第1のセクション2への熱伝導は、サセプタ16から第2のセクション3への熱伝導よりも小さいので、熱が第2のセクション3から第1のセクション2へ流れ、主面4からプロセスチャンバ天井19に熱輻射により放射される傾向がある。搬送リング1内のこの鉛直方向及び径方向の熱フローを阻止するために、第2のセクション3の熱伝導率が、第1のセクション2の熱伝導率よりも大きい
【0019】
第2のセクション3は、第1のセクション2と直接境界を接することができる。
【0020】
しかしながらその場合、図2に示した例示的実施形態では、第1のセクション2と第2のセクション3との間に第3のセクション8が設けられている。第3のセクション8は、上向きの広い主面9を有し、主面9は主面4と面一である。第3のセクション8の下向きの広い主面10は、第1のセクション2の主面6と面一である。
【0021】
第2のセクション3は、鉛直方向の境界面20の領域において第3のセクション8と境界を接している。境界面20は、第2のセクション3の厚さを薄くした領域を囲包している。境界面20は段部を形成する。
【0022】
第2のセクション3の材料特性は、実質的に第3のセクション8の材料特性と同じである。第1のセクション2の材料特性は、第1のセクション2の熱フロー抵抗が第2のセクション3の熱フロー抵抗より大きい点において、第2のセクション3の材料特性とは異なる。特に、第2のセクション3の熱伝導特性及び、必要に応じて第3のセクション8の熱伝導特性を、第1のセクション2の熱伝導特性よりも大きくする。第1のセクション2と、第2のセクション3及び第3のセクション8とは、異なる材料から作製することができる。リング形状本体1は、複数の部材から構成することができる。それらの部材は、互いに形状的連結または力学的連結により接続することができる。しかしながら、それらの部材は、互いに焼結することもできる。また、複数部品体とすることもできる。
【0023】
図2に示した例示的実施形態では、第1のセクション2と第3のセクション8との間の境界、及び、第3のセクション8と第2のセクション3との間の境界が、基板ホルダ12の環状段部15の上方に位置する。
【0024】
上向きの主面4、9及び5、並びに下向きの主面6、10及び7は、赤外線輻射の放射率と赤外線輻射の反射率とを有する。第1のセクション2に割り当てられた表面4、6の放射率、少なくとも上向きの主面4の放射率は、第2のセクション3に割り当てられた主面5、7及び第3のセクション8に割り当てられた主面9、10の放射率よりも小さい。その場合、少なくとも上向きの主面5の放射率が、上向きの主面4の放射率よりも大きい。したがって、主面4、6は、主面5及び7並びに9及び10よりも大きな反射率を有する。
【0025】
しかしながら、熱伝導率、放射率又は反射率の熱伝導特性のうち1つのみが異なっていれば十分である。
【0026】
図3は、本発明の第2の実施形態を示す。その場合、リング形状本体1が、ベース体24を有し、それは均一材料で第2のセクションと、第3のセクションと、第1のセクションの下方領域とを形成する。第2のセクション3は、第3のセクション8の軸方向厚さが第2のセクション3の軸方向厚さよりも厚いという点で第3のセクション8とは実質的に異なることによって、支持面5は、第3のセクション8の上方主面9へと繋がる鉛直方向の段部20に隣接している。下方主面7、6は、互いに面一である。
【0027】
ベース体24の領域上には、透明材料からなる2つのリング要素25、26が配置されている。リング要素25、26は、石英からなることができる。それらは、グラファイトからなることができるベース体24の材料よりも小さい熱伝導率を有する。
【0028】
2つのリング要素25、26の間には、反射体が配置されている。それは、2つのリング要素25、26の間に封入された金属フィルムとすることができる。
【0029】
金属フィルム27は、第1のセクション2又は、第1のセクション2のプロセスチャンバ天井に向いた主面4に大きな反射率を付与することによって、第2のセクション3又は第3のセクション8の上向きの主面9又は5よりも小さい放射率を付与する。
【0030】
図4に示した第3の実施形態では、ベース体24が、搬送リング1の径方向外縁まで拡張された突出部を形成し、図3に示した例示的実施形態の突出部と同様に、支持面5の高さに延在しかつ第3のセクション8のリング形状段部により支持面5から分離された上向きの支持面を形成する。
【0031】
第1のセクション2のこの支持面上に、ここでは単一のリング要素が載置される。リング要素25は、熱伝導率の小さい材料から作製される。
【0032】
搬送リング1における表面、特に冷却されたプロセスチャンバの方に向いた表面が、異なる放射率を有することが提示される。径方向外側に位置する主面は放射率が小さく、その結果、反射率が高くなる。それに対して、径方向内側の主面は、反射率が小さく、放射率が大きい。安定な熱特性を得るために、表面又は表面コーティングの放射率が、化学反応又は寄生堆積物により変化しないようにすべきである。このことは、小さい熱伝導率をもつ透明材料、例えば石英ガラスからなるリング要素を用いることにより実現される。リング要素に、反射性の、特に金属の層が封入され、それは全ての側面を保護透明材料で囲包される。反射率は、60%より大きくすべきである。
【0033】
熱伝導の小さい材料からなるリング要素と、支持面5との間に、大きい熱伝導率とすなわち小さい熱フロー抵抗とを有するリング形状のウェブが配置されることが提示される。それにより、基板の縁領域における温度が高められ、基板がこのウェブにより横方向からも加熱されることが確保される。第3のセクション8を形成するウェブは、環状段部15を介した熱伝導により加熱される。第1のセクション2の表面は、少なくとも第3のセクション8の表面の大きさとすべきであり、第3のセクション8を形成するリング形状のウェブの径方向幅は、少なくとも0.5mmとすべきである。
【0034】
図2図4では、基板ホルダ12が実質的にサセプタ16の上に載置されて示されている。しかしながら、基板ホルダ12は、サセプタ16のポケット内に収容することもできる。基板ホルダ12が、サセプタ16に対し回転可能に設けられることも可能である。例えば、基板ホルダ12の広い主面14の下方にガス出口チャネルが開口し、それを通って基板ホルダ12とサセプタ16との間の隙間空間にパージガスが導入され、それは、基板ホルダ12を上に載せるガスクッションを形成する。パージガスの適切なフロー方向により、基板ホルダ12は回転することができる。
【0035】
図5は、図3に示したものと類似の実施形態を示す。ベース体24は、実質的に水平面である径方向外側に位置する支持面を形成する。この支持面上に第1のリング要素25が載置される。リング要素25は、ベース体24が作製された材料と同じ材料からなることができる。第1のリング要素25上に、第2のリング要素26が支持される。リング要素26は、ベース体24が作製された材料と同じ材料からなることができる。ベース体24と、直ぐ上に位置する第1のリング要素25との間にギャップ29が延在する。ギャップ29のギャップ高さは、スペーサ要素28により規定される。各スペーサ要素28は、ギャップ29がその間に延在する2つの主面の一方を起点とする立ち上がり部分である。
【0036】
例示的実施形態では、各スペーサ要素28が、第2のリング要素26が載置している第1のリング要素25の半球形状の立ち上がり部分である。装置の動作中、ギャップ29は、熱フロー絶縁ギャップとして作用する。
【0037】
第4の例示的実施形態の図示しない変形形態では、第1のリング要素25と第2のリング要素26との間に第2のギャップを形成するために追加のスペーサ要素を設けることができる。
【0038】
図6に示した第5の実施形態は、実質的に図4に示した第3の実施形態に対応する。ベース体24の水平面上に、ベース体24が作製された同じ材料からなることができるリング要素25が径方向外側の領域で支持されている。しかしながら、ベース体24とリング要素25の材料が互いに異なることもできる。リング要素25の下方主面とベース体24の上方主面との間のギャップ29が重要である。ギャップ29のギャップ高さは、スペーサ要素28により規定される。図6に示した例示的実施形態では、スペーサ要素28がリング要素25により形成されている。それは、下向きの主面におけるノブ状の立ち上がりである。それらのノブは、ここでは半球形状を有することができる。
【0039】
上述した実施形態は、本発明を全体として説明するために用いられ、各々が独立して、少なくとも以下の組合せにより従来技術をさらに進展させるものであり、その場合、2つ又はそれより多い又は全てのこれらの特徴の組合せも、組み合わせることができる:すなわち、
【0040】
軸方向に単位面積要素を通って流れる熱が第1のセクション2において第2のセクション3よりも小さい点において、第1のセクション2の少なくとも1つの熱伝導特性が第2のセクション3の熱伝導特性と異なることを特徴とする装置。
【0041】
上記熱伝導特性が、それらのセクションの熱伝導率であり、第1のセクション2の熱伝導率が第2のセクション3のそれよりも小さいことを特徴とする装置。
【0042】
上記熱伝導特性が、少なくとも軸方向に向いた上記セクション2、3の表面の放射率であり、第1のセクション2の表面の放射率が、第2のセクション3の表面の放射率よりも小さいことを特徴とする装置。
【0043】
第1のセクション2と第2のセクション3との間に配置され、その熱伝導特性が実質的に第2のセクション3のそれに対応する第3のセクション8を特徴とする装置。
【0044】
第2のセクション3及び必要に応じて第3のセクション8が、基板ホルダ12の環状段部15に載置されていることを特徴とする装置。
【0045】
基板ホルダ12が、下方から加熱されるサセプタにより担持され、かつ第1のセクション2が、基板ホルダ12の側面18を超えて自由に突出していることを特徴とする装置。
【0046】
リング形状本体1が、複数の互いに接続された要素24、25、26からなり、それらが互いに異なる熱伝導特性を有しかつ/又はスペーサ要素28により互いに離間していることを特徴とする装置。
【0047】
第1のセクション2に割り当てられた1又は複数のリング要素25、26が、小さい熱伝導率を有し、特に石英又は酸化ジルコニウムからなり、少なくとも第2のセクションに割り当てられているベース体24が、大きい熱伝導率を有しかつ特にグラファイト又はシリコンカーバイドからなることを特徴とする装置。
【0048】
表面の互いに異なる放射率が、互いに異なる表面コーティングにより、又は、少なくとも1つの反射要素27により決定されることを特徴とする装置。
【0049】
第1のセクション2に割り当てられた1又は複数のリング要素24、25が、より小さい熱伝導率をもつ透明材料からなり、その中に反射層27、特に金属層が封入されていることを特徴とする装置。
【0050】
第2のセクション3の熱伝導率が、第1のセクション2の熱伝導率の少なくとも10倍であり、かつ/又は、第1のセクション2の表面4の放射率が、0.3より小さく、かつ、第2のセクション3及び/又は第3のセクション8の表面5、9の放射率が0.3より大きいことを特徴とする装置。
【0051】
リング形状本体1が、第1のセクション2及び第2のセクション3に亘って延在するベース体24から形成されており、第1のセクション2が、ベース体24とは異なる熱伝導特性をもつ少なくとも1つのリング要素25、26を有する
【0052】
第1のセクション2及び第3のセクション8がそれぞれ、プロセスチャンバ天井19に向いた表面4、9を有し、第1のセクション2の表面4が第3の表面8の表面9の少なくとも2倍の大きさであることを特徴とする装置。
【0053】
プロセスチャンバ天井19の方に向いた第2のセクション3の表面5が、基板11の縁を支持するための支持領域を形成し、その支持領域が、第3のセクション8の境界面20により囲包されており、第3のセクション8は、第2のセクション3と同様に、サセプタ16の方に向いた表面10、7により基板ホルダ12の環状段部15に載置されていることを特徴とする装置。
【0054】
開示されたすべての特徴は、(個々に、しかしながら互いに組み合わせても)本発明に本質的である。関連する/添付の優先書類の開示内容(先願の複写)も、本願の請求項にこれらの書類の特徴を含める目的で、本願の開示に完全に組み込まれる。従属項は、特にこれらの請求項の分割出願を行うために、従来技術からの発明の進展とは独立したそれらの構成を特徴とする。
【符号の説明】
【0055】
1 リング形状本体
2 第1のセクション
3 第2のセクション
4 主面
5 支持面
6 主面
7 主面
8 第3のセクション
9 主面
10 主面
11 基板
12 基板ホルダ
13 接触面
14 主面
15 支持面、環状段部
16 サセプタ
17 表面
18 側面
19 プロセスチャンバ天井
20 境界面
21 スペーサ
22 スペーサ
23 チャネル
24 ベース体
25 リング要素
26 リング要素
27 反射要素
28 スペーサ要素
29 ギャップ
Ts サセプタ温度
Tc プロセスチャンバ天井温度
熱フロー
熱フロー
図1
図2
図3
図4
図5
図6