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特許7107993充電式リチウムイオン電池用の粉末状リチウムコバルト系酸化物化合物及びその製造方法
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  • 特許-充電式リチウムイオン電池用の粉末状リチウムコバルト系酸化物化合物及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】充電式リチウムイオン電池用の粉末状リチウムコバルト系酸化物化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20220720BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220720BHJP
   C01G 51/00 20060101ALI20220720BHJP
   C01G 51/04 20060101ALI20220720BHJP
   H01M 50/247 20210101ALI20220720BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G51/00 A
C01G51/04
H01M50/247
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020125336
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2021018992
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2019/056282
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2019/056284
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(31)【優先権主張番号】62/877,364
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501094270
【氏名又は名称】ユミコア
(73)【特許権者】
【識別番号】517107151
【氏名又は名称】ユミコア・コリア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キョンセ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】マキシム・ブランジェロ
【審査官】菊地 リチャード平八郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/162165(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/099156(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/135414(WO,A1)
【文献】特表2018-527718(JP,A)
【文献】特開2006-302542(JP,A)
【文献】特開2017-021941(JP,A)
【文献】特開2010-262826(JP,A)
【文献】特開2013-120734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05-10/0587
H01M 50/247
H01G 11/00-11/86
C01G 51/04
C01G 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メジアン粒径D50が20.00μm以上、かつ45.00μm以下の粒子を含むリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末であって、前記粒子は、0.85以上1.00以下の平均円形度を有し、前記粒子は、一般式Li1+aCo1-x-y-zAlM’Me (式中、M’及びMeは、Ni、Mn、Nb、Ti、W、Zr、及びMgからなる群の少なくとも1つの元素を含み、-0.01≦a≦0.01、0.002≦x≦0.050、0≦y≦0.020、及び0≦z≦0.050である)を有し、
前記リチウムコバルト系酸化物の粒子は、R-3m構造及び0.85以上1.15以下の(018)回折ピーク非対称因子AD(018)を有し、前記回折ピーク非対称因子は、放射波長λ値が0.825Åに等しいシンクロトロンXRDスペクトル分析によって得られる、リチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末。
【請求項2】
0.90以上1.00以下の平均円形度を有する、請求項1に記載のリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末。
【請求項3】
3.95g/cm以上4.40g/cm以下の圧縮密度を有する、請求項1又は2に記載のリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末。
【請求項4】
少なくとも570mAh/cm、かつ最大700mAh/cmの容積容量、及び最大80mAh/gの比浮遊容量を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末。
ここで、前記容積容量は、以下のように決定される。
第1の充放電容量(CQ1及びDQ1)を、0.1Cレートの定電流モードで測定する。ここで、1Cは160mAh/gとして定義し、充電終止電圧は4.30Vであり、放電終止電圧は3.0Vである。
圧縮密度を、以下の手順に従って測定する。3グラムのカソード活物質粉末を、直径が1.3cmのペレットダイに充填し、207MPaの圧力を30秒間加えて緩和し、圧縮カソード活物質粉末の厚さを測定し、圧縮カソード活物質粉末の体積をペレットダイの厚さおよび直径から計算する。
前記容積容量が放電容量に圧縮密度を掛けることにより得られる。
ここで、前記比浮遊容量は、以下のように決定される。
コインセルを、まず、50℃チャンバー内でC/20レートの定電流モードで4.5Vまで充電する。
次いで、コインセルを、120時間の期間にわたり4.5Vの一定の電圧に保ち、電流が一定の電圧に印加される。
前記比浮遊容量は、前記期間中のmAh/gで表される総容量である。
【請求項5】
0.85以上かつ最大1.00のAD(018)因子を有する、請求項1に記載のリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末。
【請求項6】
y及びz=0である、請求項1に記載のリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末。
【請求項7】
請求項1又は6に記載のカソード活物質粉末を製造するための方法であって、
- 一般式Li1+a’Co1-x’-y’Alx’M’y’(M’は、Ni、Mn、Nb、Ti、W、Zr、及びMgからなる群の少なくとも1つの元素であり、0.03≦a’≦0.10、0.002≦x’≦0.050及びy’≦0.02である)を有する、第1のカソード活物質粉末を調製する工程と、
- 前記第1のカソード活物質粉末を、第1のCo含有前駆体、及び任意選択によりMe源と混合して第1の混合物を調製する工程であって、前記第1の混合物中における、Meを含まない場合にLi対(Co+Al+M’)又はMeを含む場合にLi対(Co+Al+M’+Me)のモル比は0.99以上1.01以下である、工程と、
- 前記第1の混合物を800℃以上1100℃以下の温度で焼結して第1の焼結凝集粉末を得て、前記第1の焼結凝集粉末を微粉砕し篩い分けて、請求項1から6のいずれか一項に記載のカソード活物質粉末を得る工程と
を含む、方法。
【請求項8】
- Li源、第2のCo含有前駆体、任意選択によりM’源、及びAl源を含む第2の混合物を調製する工程であって、前記第2の混合物は、1.03以上1.10以下のLi対(Co+Al+M’)のモル比を有する、工程、又は
- Li源、第2のCo、Al含有前駆体及び任意選択によりM’含有前駆体の第3の混合物を調製する工程であって、前記第3の混合物は、1.03以上1.10以下のLi対(Co+Al+M’)のモル比を有する、工程と、
- 前記第2又は前記第3の混合物を、酸素含有雰囲気中で少なくとも5時間にわたって950℃以上1100℃以下の温度で焼結させて、第2の焼結凝集粉末を得る工程と、
- 前記第2の焼結凝集粉末を微粉砕し篩い分けて、前記第1のカソード活物質粉末を得る工程と
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2のCo含有前駆体が、20.00μm以上45.00μm以下のD50を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
リチウムイオン二次電池における、請求項1に記載のリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末の使用。
【請求項11】
請求項1に記載のリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末を含む、リチウムイオン二次電池。
【請求項12】
スマートフォン又はポータブルコンピュータにおける、請求項11に記載のリチウムイオン二次電池の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポータブル電子機器用途に適したリチウムイオン二次電池(LIB)用のリチウムコバルト系酸化物(LCO)カソード活物質粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
ポータブル電子機器の機能と性能は常に改善されているため、より高い容積エネルギー密度を有するLIBが必要である。
【0003】
カソード活物質粉末の容積エネルギー密度は、以下の等式により得られる。
【0004】
容積エネルギー密度(mAh/cm)=容積容量(mAh/cm)×充電終止電圧(V)、
(式中、
【0005】
【数1】
【0006】
である)
【0007】
充電終止電圧が高ければ(基準電位Li/Liに対して4.5V以上等)、カソード材料粉末の容積エネルギー密度の大幅な増加につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、本発明の分析方法によって得られる少なくとも570mAh/cmの改善された容積容量を有する、リチウムイオン二次電池用のリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末を提供することである。
【0009】
改善された容積容量に加えて、本発明によるLCOカソード活物質化合物は、今のところ4.5V以上の電圧で十分な構造安定性を有するはずである。このような十分な安定性は、LIBにおけるカソード活物質粉末の使用中の最大80mAh/gの比浮遊容量(本発明の分析方法によって得られる)によって示される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、メジアン粒径D50が20.00μm以上、好ましくは25.00μm以上、かつ45.00μm以下の粒子を含むリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末であって、前記粒子は、0.85以上1.00以下の平均円形度を有し、前記粒子は、一般式Li1+aCo1-x-y-zAlM’Me (式中、M’及びMeは、Ni、Mn、Nb、Ti、W、Zr、及びMgからなる群の少なくとも1つの元素を含み、-0.01≦a≦0.01、0.002≦x≦0.050、0≦y≦0.020、及び0≦z≦0.050である)を有し、前記リチウムコバルト系酸化物の粒子は、R-3m構造及び0.85以上1.15以下の(018)回折ピーク非対称因子AD(018)を有し、前記回折ピーク非対称因子は、放射波長λ値が0.825Åに等しいシンクロトロンXRDスペクトル分析によって得られる、
請求項1に記載のリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末を提供することにより達成される。
【0011】
Table 2(表2)に示す結果に示されているように、570mAh/cmを超える改善された容積容量及び80mAh/g未満の比浮遊容量が、以下の特性:
- メジアン粒径D50 38.00μm、
- 平均円形度 0.87、及び
- (018)回折ピークのピーク非対称因子(AD(018)) 0.88
を有する、EX1によるLCOカソード材料粉末を使用した電池により達成されることが実際に観察されている。
【0012】
本発明の枠組みにおいて、ピーク非対称因子AD(018)は、粒子に含まれる元素アルミニウムの均一性の程度を示す。AD(018)値 1.00は、アルミニウム原子が粒子内に均一又は均質に分布していることを示す。
【0013】
より具体的には、AD(018)=D2/D1であり、式中、
1)D1は、
i)(018)回折ピークが最大強度(IMAX)となる第1の2θ角度(A1)の値(x軸上)と、
ii)第1の2θ角度(A1)の値より小さく、(018)回折ピークが、最大強度(IMAX)の10%に等しい、つまりI10% =0.1IMAXである、第1の強度(I10% )を有する、第2の2θ角度(A2)の値(x軸上)と、の間の第1の2θ角度差(°で表される)である。
2)D2は、
i)第1の2θ角度(A1)の値と、
ii)第1の2θ角度(A1)の値より小さく、(018)回折ピークが、最大強度(IMAX)の10%に等しい、つまりI10% =0.1IMAXである第2の強度(I10% )を有する、第3の2θ角度(A3)の値(x軸上)と、の間の第2の2θ角度差(°で表される)である。
【0014】
元素アルミニウムの均質な分布によって、高電圧での結晶構造の安定性が改善され、このことは、AD(018)=1.00に近づくにつれて比浮遊容量が減少することを示すTable 2(表2)で実証される。したがって、AD(018)は、高電圧(つまり、少なくとも4.5Vの電圧)での、特許請求されたLCOカソード活物質粉末の安定性の指標である。
【0015】
カソード活物質粉末は、Al対(Co+Al+M’+Me)のモル比(x)が、容量の損失を最小限に抑えるために0.050以下であり、サイクル中のLCOカソード活物質粉末の結晶構造を安定化するために0.002以上である粒子を含む。
【0016】
カソード活物質粉末は、Li対(Co+Al+M’+Me)のモル比(1+a)が0.99以上1.01以下、好ましくは0.995以上1.005以下の粒子を含む。
【0017】
比1+aが0.99未満(a<-0.01)の場合、カソード活物質粒子の構造中にコバルト原子を保持するのに十分なLiがないために、4.50V等の高電圧でCo溶解が起こり、カソード活物質粉末の容量が低下する。比1+aが1.01より大きい(a>0.01)場合、カソード活物質粉末のサイクル寿命が劣化する。
【0018】
本発明の枠組みにおいて、D50は体積メジアン粒径であり、20.00μm以上、好ましくは25.00μm以上、かつ45.00μm以下である。好ましくは、本発明によるカソード活物質粉末は、30.00μm以上40.00μm以下のD50を有する。
【0019】
このタイプのカソード活物質の従来のD50値(20.00μm未満)と比較して、本発明によるLCOカソード活物質粉末のD50が大きいため、特許請求されたLCOカソード活物質粉末は、従来のものよりはるかに高い充填密度値を示す。しかし、D50は45.00μm未満である必要があり、これは、この上限よりも高いD50値の場合、LCOカソード活物質粉末からの調製中に、カソードの表面に引っ掻きが見られるためである。
【0020】
本発明の枠組みにおいて、粒子の平均円形度は、0.85以上1.00以下である。
【0021】
本発明は、以下の実施形態に関する。
【0022】
実施形態1
第1の態様では、本発明は、メジアン粒径D50が25.00μm以上かつ45.00μm以下の粒子を含むリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末であって、前記粒子は、0.85以上1.00以下の平均円形度を有し、前記粒子は、一般式Li1+aCo1-x-y-zAlM’Me (式中、M’及びMeは、Ni、Mn、Nb、Ti、W、Zr、及びMgからなる群の少なくとも1つの元素を含み、-0.01≦a≦0.01、0.002≦x≦0.050、0≦y≦0.020、及び0≦z≦0.050である)を有し、前記リチウムコバルト系酸化物の粒子は、R-3m構造及び0.85以上1.15以下の(018)回折ピーク非対称因子AD(018)を有し、前記回折ピーク非対称因子は、λ値が0.825Åに等しいシンクロトロンXRDスペクトル分析によって得られる、リチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末に関する。
【0023】
好ましくは、カソード活物質粉末は、0.85以上かつ最大1.00のAD(018)因子を有する。
【0024】
好ましくは、リチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末は、平均円形度が0.90以上1.00以下、好ましくは0.95以上1.00以下、より好ましくは0.85以上0.95以下、最も好ましくは0.90以上0.95以下の粒子を含む。
【0025】
任意選択により、リチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末は、メジアン粒径D50が35.00μm以上45.00μm以下の粒子を含む。
【0026】
リチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末は、メジアン粒径D50が35.00μm以上40.00μm以下の粒子を含んでもよい。
【0027】
より好ましくは、y及びz=0である。
【0028】
D50は、μm+/-0.01μmで表される体積ベースの値である(以下の1.1節を参照のこと)。
【0029】
平均円形度は、数値ベースの値である(以下の1.7節を参照のこと)。
【0030】
実施形態2
好ましくは、実施形態1のカソード活物質粉末は、3.95g/cm以上4.40g/cm以下の圧縮密度を有する。
【0031】
実施形態3
より好ましくは、実施形態1又は2によるカソード活物質粉末は、少なくとも570mAh/cm、好ましくは最大700mAh/cmの容積容量、及び最大80mAh/gの比浮遊容量を有する。
【0032】
実施形態4
第4の実施形態では、本発明は、本発明によるカソード活物質粉末を製造するための方法も含む。
【0033】
本発明による方法は、
- 第1のカソード活物質粉末であって、一般式Li1+a’Co1-x’-y’Alx’M’y’(M’は、Ni、Mn、Nb、Ti、W、Zr、及びMgからなる群の少なくとも1つの元素であり、0.03≦a’≦0.10、0.002≦x’≦0.050及びy’≦0.02である)を有し、D50が20.00μm以上、好ましくは25.00μm以上、かつ45.00μm以下の粒子を含み、前記粒子は、0.85以上及び1.00以下の平均円形度を有する、第1のカソード活物質粉末を調製する工程と、
- 第1のカソード活物質粉末を、第1のCo含有前駆体、及び任意選択によりMe源と混合して第1の混合物を調製する工程であって、前記混合物中におけるLi対(Co+Al+M’)又はLi対(Co+Al+M’+Me)のモル比は0.99以上1.01以下である、工程と、
- 前記第1の混合物を800℃以上1100℃以下の温度で焼結して第1の焼結凝集粉末を得、前記第1の焼結凝集粉末を微粉砕し篩い分けて、実施形態1による第2のカソード活物質粉末を得る工程とを含む。
【0034】
好ましくは、第1のカソード活物質粉末は、平均円形度が0.90以上1.00以下、好ましくは0.95以上1.00以下、より好ましくは0.85以上0.95以下、最も好ましくは0.90以上0.95以下の粒子を含む。
【0035】
任意選択により、第1のカソード活物質粉末は、メジアン粒径D50が35.00μm以上45.00μm以下である粒子を含む。
【0036】
好ましくは、第1のCo含有前駆体は、実施形態1によるものであり、以下でLCO2と呼ばれる、第2のカソード活物質の容積密度を最大化するために、10.00μm未満、より好ましくは5.00μm未満のD50を有する。
【0037】
より好ましくは、第1の混合物を、空気等の酸素含有雰囲気中で、1時間以上にわたって、800℃以上の温度で焼結させる。
【0038】
本発明では、Li対(Co+Al+M’)のモル比(1+a’)を1.03~1.10の間の範囲に制御することにより、LCO2粒子の特許請求されたD50値の範囲を達成できることが観察される。
【0039】
実施形態5
実施形態4による第5の実施形態では、第1のカソード活物質粉末(以下、LCO1と呼ぶ)を調製する工程は、
- Li源、第2のCo含有前駆体、任意選択によりM’源、及びAl源を含む第2の混合物を調製する工程であって、前記第2の混合物は、1.03以上1.10以下のLi対(Co+Al+M’)のモル比を有する、工程、又は
- Li源、第2のCo、Al含有前駆体及び任意選択によりM’含有前駆体の第3の混合物を調製する工程であって、前記第3の混合物は、1.03以上1.10以下のLi対(Co+Al+M’)のモル比を有する、工程と、
- 前記第2又は前記第3の混合物を、空気等の酸素含有雰囲気中で少なくとも5時間にわたって950℃以上1100℃以下の温度で焼結させて、第2の焼結凝集粉末を得る工程と、
- 第2の焼結凝集粉末を微粉砕し篩い分けて、実施形態4による第1のカソード活物質粉末を得る工程とを含む固相反応である。
【0040】
Li源は、LiO、LiOH、LiOH・HO、LiCO、及びLiNOのいずれかのうちの1つ又は複数である。
【0041】
Co含有前駆体は、CoO、CoCO、CoO(OH)、及びCo(OH)のいずれかのうちの1つ又は複数である。
【0042】
任意選択により、Co含有前駆体は、Al及びM’を含む。
【0043】
好ましくは、第2のCo含有前駆体は、20.00μm以上、好ましくは25.00μm以上、かつ45.00μm以下のD50を有する。
【0044】
第2のCo含有前駆体のD50が20.00μm未満の場合、第2の混合物のLi対(Co+Al+M’)のモル比を増加させるか、又は1100℃を超える温度で前記第2の混合物を焼結する必要がある。
【0045】
本発明の方法において、第2のCo含有前駆体は、第1のカソード材料粉末のD50と実質的に等しいD50を有する。第1のカソード材料粉末のD50は、実施形態1~3によるコバルト酸リチウムカソード活物質粉末のD50と実質的に等しい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】0.825Åに等しいλ値のシンクロトロンXRDスペクトル分析によって得られた、ベースラインを差し引いた後のR-3m構造を有するCEX2Aの(018)回折ピーク、(x軸:2θ(°)及びy軸:強度I)である。
図2】EX1のモルホロジーである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明を、以下の実施例において更に説明する。
【0048】
1.分析方法の説明
1.1.粒径分布
D50は、粉末の粒径分布(以下、psdと呼ぶ)の指標であり、レーザーpsd測定法により得られる。本発明では、レーザーPSDは、例えば、粉末を水性媒体に分散させた後、Hydro 2000MU湿式分散アクセサリを備えたMalvern Mastersizer 2000を使用して測定する。水性媒体中の粉末の分散を改善するために、十分な超音波照射及び撹拌を施し、適切な界面活性剤を水性媒体中に導入する。
【0049】
本発明による粉末が多峰性PSDプロファイルを有する場合、前記多峰性プロファイルをデコンボリューションし、次に、D50が25.00μm~45.00μmの範囲に含まれる1つ又はいくつかのデコンボリューションモードが識別される場合、前記粉末は請求項1に記載のD50を有する。
【0050】
本発明による粉末が、D50が20.00μm、好ましくは25.00μmから45.00μmの範囲に含まれる単一モードの単峰性psdプロファイルを有する場合、前記粉末は、したがって、請求項1に記載のD50を有する。
【0051】
1.2.圧縮密度
圧縮密度(PD)を、以下の手順で測定する。3グラムのLCOカソード活物質粉末を、直径「d」が1.3cmのペレットダイに充填する。207MPaの圧力を30秒間加える。荷重を緩和した後、圧縮LCOカソード活物質粉末の厚さ「t」を測定する。圧縮密度PDは、3gを圧縮粉末の体積(π×(d/2)×t)で割ったものである。
【0052】
1.3.誘導結合プラズマ
前記誘導結合プラズマ(ICP)法を用いて、Agillent ICP 720-ES装置を使用して、Li、Co、及びAl等の元素の含有量を測定する。
【0053】
2gの粉末試料を、三角フラスコ内の10mLの高純度塩酸に溶解させる。フラスコをガラスで覆い、前駆体の完全な溶解が達成されるまでホットプレート上で加熱する。室温に冷却した後、溶液を100mLメスフラスコに移す。フラスコに溶液を充填した後、メスフラスコに100mLの目盛りまで脱イオン水を充填する。5mLの得られた溶液を50mLメスフラスコに移して2回目の希釈を行い、ここで、メスフラスコに50mLの目盛りまで10%塩酸を充填し、次に均質化する。最後に、この50mLの溶液をICP測定に使用する。
【0054】
1.4.高角度分解能シンクロトロンX線回折
高角度分解能シンクロトロン粉末X線回折(SXRD)を、ALBAシンクロトロン(Cerdanyola del Valles、Spain)のBL04-MSPDビームラインで行う。すべての粉末を直径0.5mmのキャピラリーに詰めた。典型的な2θ角度範囲は0°~70°で、0.006°の角度段階と3分の累積時間を用いた。パターンを、波長λ=0.825Å+/-0.010Åを用い、Debye-Scherrerジオメトリにより記録した。
【0055】
Inorganic Crystal Structure Database(ICSD、FIZ Karlsruhe社及びthe U.S. Secretary of Commerceにより提供)には、1913年以降に公開されたすべての無機結晶構造に関する情報が含まれている。得られた回折パターンのピーク位置及び粉末試料の元素(Li、Co、O、Al等)をICSDで検索し、粉末試料の結晶構造を決定する。
【0056】
1.5.ピーク非対称因子
ピーク非対称因子AD(018)を、SXRDデータ(1.4節を参照)から、以下の手順に従って取得する: 2θ回折角33.7°±0.2°にあるピークは、R-3m構造の(018)方向に対応する。
【0057】
ピークのベースライン(バックグラウンド)(33.50°から33.85°に及ぶベースライン)を、Origin 9.1ソフトウェアのベースライン関数によって直線法で差し引く。
【0058】
図1は、ベースラインを差し引いた後の、CEX2A(R-3m)カソード活物質粉末に関連する(018)回折ピークを示す。このスペクトルは、1.4節で説明した分析方法に従ってシンクロトロンXRDによって得られた。
【0059】
D(018)は、D2/D1比に対応しており、式中、
1)D1は、
i)(018)回折ピークが最大強度(IMAX)となる第1の2θ角度(A1=33.664°)の値(x軸上)と、
ii)第1の2θ角度(A1)の値より小さく、(018)回折ピークが、最大強度(IMAX)の10%に等しい第1の強度(I10% )を有する、第2の2θ角度(A2=33.601°)の値(x軸上)と、の間の第1の2θ角度差(°で表される)である。
2)D2は、
i)第1の2θ角度(A1)の値と、
ii)第1の2θ角度(A1)の値より大きく、(018)回折ピークが、最大強度(IMAX)の10%に等しい第2の強度(I10% )を有する、第3の2θ角度(A3=33.709°)の値(x軸上)と、の間の第2の2θ角度差(°で表される)である。
【0060】
CEX2Aでは、D2/D1=0.045/0.063=0.72である。
【0061】
1.6.電気化学分析:容量及び浮遊試験分析
1.6.1.コインセル作製
放電容量及び浮遊試験分析で使用されるコインセルを、以下の工程に従って組み立てる。
工程1)カソードの作製:
固体:LCOカソード活物質粉末、導体(Super P、Timcal社)、及びバインダー(KF#9305、Kureha社)を質量比90:5:5で含むスラリーと、溶媒(NMP、Sigma-Aldrich社)とを高速ホモジナイザーで混合し、均質化されたスラリーを得る。均質化されたスラリーを、230μmギャップのドクターブレードコーターを使用して、アルミ箔の片面に塗布する。スラリーコーティングアルミ箔を、120℃のオーブン内で乾燥させ、次にカレンダー装置を使用して圧縮し、真空オーブン内で再度乾燥させて、溶媒を完全に除去する。
【0062】
工程2)コインセルの組み立て:
コインセルを、不活性ガス(アルゴン)が充填されたグローブボックス内で組み立てる。放電容量分析では、セパレーター(Celgard)が、カソードとアノードとして使用される1片のリチウム箔との間に位置している。浮遊試験では、2片のセパレーターがカソードと、グラファイトで構成されているアノードとの間に位置している。EC:DMC(体積で1:2)中の1M LiPFを電解質として使用し、セパレーターと電極との間に滴下する。次に、コイン電池を完全に密閉して、電解液の漏れを防ぐ。
【0063】
1.6.2.放電容量分析
第1の充放電容量(CQ1及びDQ1)を、0.1Cレートの定電流モードで測定し、ここで、1Cは160mAh/gとして定義し、充電終止電圧は4.30Vであり、放電終止電圧は3.0Vである。体積放電容量DQ1V(mAh/cm)は、DQ1にPDを掛けて得られる。
【0064】
1.6.3.浮遊試験分析
浮遊試験では、高温にて高電圧でのLCO化合物の結晶安定性を分析する。
【0065】
作製されたコインセルは、以下の充電プロトコルに従って試験する。コインセルを、まず、50℃チャンバー内でC/20レート(1C=160mAh/g)の定電流モードで4.5Vまで充電する。次に、コインセルを、5日間(120時間)一定の電圧(4.5V)に保ち、これは非常に過酷な条件である。
【0066】
副反応又は金属溶解が起こると、電圧降下が発生する。電気化学機器は、電流の(損失)を自動的に補償して、電圧を一定に保つ。したがって、記録された電流は、サイクル中に進行している副反応の測定値である。
【0067】
比浮遊容量(QF)は、浮遊試験中の総容量(mAh/g)である。浮遊試験後、コインセルを分解する。アノード及びセパレーター(アノードに接近して局在している)を、金属溶解分析のためにICPによって分析する。測定されたコバルト含有量を、電極内の活物質の総量によって正規化して、比コバルト溶解値(CoDis)を得る。
【0068】
1.7.モルホロジー分析
粉末試料のモルホロジーを、走査型電子顕微鏡(SEM)技術により分析する。測定を、JEOL JSM-6000により実施する。粉末試料の画像を、500倍の倍率で記録して、粉末試料粒子の平均円形度を実証する。SEM画像では、10個の粒子を選択し、これらの粒子の円形度を、以下のように計算する。
【0069】
【数2】
【0070】
式中、Aは粒子の面積であり、Pは粒子の周長であり、これらのパラメータはImageJソフトウェアを使用して取得される(Image JユーザーガイドバージョンIJ 1.46rの30.2~30.7節-「測定の設定」を参照のこと)。
【0071】
本発明による平均円形度は、以下のように表してもよい。
【0072】
【数3】
【0073】
式中、nは、以下に示すプロトコルに従って分析した粒子iの数である。平均円形度は、数値ベースの平均値である。
【0074】
500倍の倍率で記録されたSEM画像では、十分な粒子数は少なくとも10個である。少なくとも10個の粒子のサイズは少なくとも20.00μmである。
【0075】
前述のように、円形度の計算は
i)a)粒子のSEM画像の外側の境界を決定することによって、b)外側の境界を個々のセグメントベースの選択に分解し、これらの選択のそれぞれが個々の周長を有することによって、c)個々の周囲の長さの値を加算して、粒子の周長の値を取得することによって、得られる周長、及び
ii)外側の境界によって画定された表面に含まれる複数のピクセル領域を加えることによって得られる領域、の測定を意味する。
【0076】
1.00の平均円形度は、試料を表す粒子が球形であることを意味する。
【0077】
1.00未満の平均円形度は、試料を表す粒子が非球形であることを意味する。
【0078】
0を超えかつ1未満の平均円形度は、楕円形を指す。
本発明を、以下の実施例において更に説明する。
【0079】
2.実施例及び比較例
実施例1
【0080】
D50が38.00μmのCoCO粉末とAl粉末とを混合して、Al対(Co+Al)のモル比が0.04の混合物を得、この混合物を、空気流下で600℃にて3時間加熱して、AlコーティングCo酸化物「CAO1」を調製する。CAO1粉末とLiCOとを混合して、Li対(Co+Al)のモル比が1.04の混合物を得、この混合物を、空気流下で1000℃にて10時間加熱する。焼結粉末を粉砕し、一般式がLi1.04Co0.96Al0.04であり、かつD50が37.00μmであるLCO1A-EX1と名付ける。
【0081】
Li対(Co+Al)のモル比が1.06であることを除いて、LCO1A-EX1と同じ手順で調製されるLCO1B-EX1は、Li1.06Co0.96Al0.04の一般式及び39.00μmのD50を有する。
【0082】
D50が3.00μmのCo粉末とAl粉末とを混合して、Al対(Co+Al)のモル比が0.04の混合物を得、この混合物を、空気流下で1000℃にて10時間加熱して、AlコーティングCo酸化物「CAO2」を調製する。
【0083】
LCO1A-EX1とCAO2とを混合して、一般式がLi1.00Co0.96Al0.04のEX1Aを調製する。この混合物を、空気流下で980℃にて1時間加熱する。焼結粉末を粉砕し、EX1Aと名付ける。
【0084】
EX1Bは、LCO1A-EX1の代わりにLCO1B-EX1を使用することを除いて、EX1Aと同じ手順で調製される。
【0085】
EX1A及びEX1Bは、本発明によるものである。
【0086】
比較例1
CAO2とLiCOとを混合して、Al対(Co+Al)のモル比が1.00の混合物を得、この混合物を、空気流下で1000℃にて10時間加熱する。焼結粉末を粉砕し、一般式がLi1.00Co0.96Al0.04であり、かつD50が4.00μmであるLCO1A-CEX1と名付ける。
【0087】
LCO1B-CEX1、LCO1C-CEX1、及びLCO1D-CEX1は、混合物中のLi対(Co+Al)のモル比がそれぞれ1.02、1.04、及び1.06であることを除いて、LCO1A-CEX1と同じ手順で調製される。LCO1B-CEX1、LCO1C-CEX1、及びLCO1D-CEX1の一般式は、それぞれLi1.02Co0.96Al0.042、Li1.04Co0.96Al0.04、及びLi1.06Co0.96Al0.04である。LCO1B-CEX1、LCO1C-CEX1、及びLCO1D-CEX1のD50は、それぞれ8.00μm、15.00μm、20.00μmである。
【0088】
LCO1A-CEX1を、空気流下で980℃にて1時間加熱する。焼結粉末を粉砕し、一般式がLi1.00Co0.96Al0.04であるCEX1Aと名付ける。
【0089】
LCO1B-CEX1とCAO2とを混合して、Li対(Co+Al)のモル比が1.00の混合物を得る。この混合物を、空気流下で980℃にて1時間加熱する。焼結粉末を粉砕し、一般式がLi1.00Co0.96Al0.04であるCEX1Bと名付ける。
【0090】
CEX1C及びCEX1Dは、LCO1B-CEX1の代わりにLCO1C-CEX1及びLCO1D-CEX1を使用することを除いて、EX1Bと同じ手順で調製される。
【0091】
CEX1A、CEX1B、CEX1C、及びCEX1Dは、本発明によるものではない。
【0092】
比較例2
CAO2とLiCOとを混合して、Li対(Co+Al)のモル比が0.99の混合物を得、この混合物を、空気流下で980℃にて10時間加熱する。焼結粉末を粉砕し、一般式がLi0.99Co0.96Al0.04であるCEX2Aと名付ける。
【0093】
約3.00μmのCo粉末とAl粉末とを混合して、Al対(Co+Al)のモル比が0.04である混合物を得、CAO3と名付ける。CAO3とLiCOとを混合して、Li対(Co+Al)が0.99の混合物を得、この混合物を、空気流下で980℃にて10時間加熱する。焼結粉末を粉砕し、一般式がLi0.99Co0.96Al0.04であるCEX2Bと名付ける。
【0094】
CEX2A及びCEX2Bは、本発明によるものではない。
【0095】
3.考察
Table 1(表1)は、実施例1及び比較例1によるLCOカソード活物質粉末の重要な調製条件を示す。EX1A及びEX1Bは、本発明で特許請求される方法による2つの焼結工程によって調製される。CEX1A及びCEX1Bを調製する方法は、LCO1のCo前駆体のD50が20.00μmを超えることも、比1+a’が1.03以上になることもないため、本発明によるものではない。LCO1のD50は20.00μmを超えていないので、CEX1C及びCEX1Dを調製する方法もまた、本発明によるものではない。
【0096】
Table 2(表2)は、実施例1、比較例1、及び比較例2のLCO化合物の、1.2節 ペレット密度、1.6.2.放電容量分析、1.6.3.浮遊試験分析、及び1.4.高角度分解能シンクロトロンXRD(SXRD)、で説明した分析方法に従って得られた分析結果を示す。
【0097】
DQ1Vは、電池の容積容量に対応する。パラメータQF及びCoDisは、浮遊試験(1.6.3節を参照)によって得られ、4.50V以上等の高電圧での結晶構造の安定性の指標である。QF及びCoDisは、できるだけ低くする必要がある。
【0098】
EX1A及びEX1Bは、QF及びCoDisが低めであり、DQ1Vが高めである。
【0099】
CEX2AとCEX2Bは、単一の焼結工程によって調製される。これは、元素アルミニウムの均一分布を単一の焼結工程では達成することができないことを示している。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
本発明は、以下の項によって網羅される。
【0103】
1.メジアン粒径D50が20.00μm以上、好ましくは25.00μm以上、かつ45.00μm以下の粒子を含むリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末であって、前記粒子は、0.85以上1.00以下の平均円形度を有し、前記粒子は、一般式Li1+aCo1-x-y-zAlM’Me (式中、M’及びMeは、Ni、Mn、Nb、Ti、W、Zr、及びMgからなる群の少なくとも1つの元素を含み、-0.01≦a≦0.01、0.002≦x≦0.050、0≦y≦0.020、及び0≦z≦0.050である)を有し、
前記リチウムコバルト系酸化物の粒子は、R-3m構造及び0.85以上1.15以下の(018)回折ピーク非対称因子AD(018)を有し、前記回折ピーク非対称因子は、放射波長λ値が0.825Åに等しいシンクロトロンXRDスペクトル分析によって得られる、リチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末。
【0104】
2.0.90以上1.00以下の平均円形度を有する、第1項に記載のリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末。
【0105】
3.3.95g/cm以上4.40g/cm以下の圧縮密度を有する、第1項又は第2項に記載のリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末。
【0106】
4.少なくとも570mAh/cm、好ましくは最大700mAh/cmの容積容量、及び最大80mAh/gの比浮遊容量を有する、第1項から第3項のいずれか一項に記載のリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末。
【0107】
5.0.85以上かつ最大1.00のAD(018)因子を有する、前第1項から第4項のいずれか一項に記載のリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末。
【0108】
6.y及びz=0である、第1項から第5項のいずれか一項に記載のリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末。
【0109】
7. 第1項から第6項のいずれか一項に記載のカソード活物質粉末を製造するための方法であって、
- 一般式Li1+a’Co1-x’-y’Alx’M’y’(M’は、Ni、Mn、Nb、Ti、W、Zr、及びMgからなる群の少なくとも1つの元素であり、0.03≦a’≦0.10、0.002≦x’≦0.050及びy’≦0.02である)を有し、D50が20.00μm以上、好ましくは25.00μm以上、かつ45.00μm以下の粒子を含む、第1のカソード活物質粉末を調製する工程であって、前記粒子は、0.85以上1.00以下の平均円形度を有する、工程と、
- 第1のカソード活物質粉末を、第1のCo含有前駆体、及び任意選択によりMe源と混合して第1の混合物を調製する工程であって、前記混合物中におけるLi対(Co+Al+M’)又はLi対(Co+Al+M’+Me)のモル比は0.99以上1.01以下である、工程と、
- 前記第1の混合物を800℃以上1100℃以下の温度で焼結して第1の焼結凝集粉末を得、前記第1の焼結凝集粉末を微粉砕し篩い分けて、第1項から第6項のいずれか一項に記載のカソード活物質粉末を得る工程とを含む、方法。
【0110】
8.- Li源、第2のCo含有前駆体、任意選択によりM’源、及びAl源を含む第2の混合物を調製する工程であって、前記第2の混合物は、1.03以上1.10以下のLi対(Co+Al+M’)のモル比を有する、工程、又は
- Li源、第2のCo、Al含有前駆体及び任意選択によりM’含有前駆体の第3の混合物を調製する工程であって、前記第3の混合物は、1.03以上1.10以下のLi対(Co+Al+M’)のモル比を有する、工程と、
- 前記第2又は前記第3の混合物を、空気等の酸素含有雰囲気中で少なくとも5時間にわたって950℃以上1100℃以下の温度で焼結させて、第2の焼結凝集粉末を得る工程と、
- 第2の焼結凝集粉末を微粉砕し篩い分けて、20.00μm以上、好ましくは25.00μm以上、かつ45.00μm以下のD50を有し、0.85以上1.00以下の平均円形度を有する、第1のカソード活物質粉末を得る工程とを含む、第7項に記載の方法。
【0111】
9.第2のCo含有前駆体が、20.00μm以上45.00μm以下のD50を有する、第7項に記載の方法。
【0112】
10.第1項から第9項のいずれか一項に記載のリチウムコバルト系酸化物カソード活物質粉末を含む、リチウムイオン二次電池。
【0113】
11.スマートフォン等の電子機器、又はポータブルコンピュータにおける、第10項に記載のリチウムイオン二次電池の使用。
図1
図2