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特許7108032研磨粒子と洗浄ブラシとの間の相互作用を低減するための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】研磨粒子と洗浄ブラシとの間の相互作用を低減するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20220720BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20220720BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20220720BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20220720BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220720BHJP
   B08B 1/00 20060101ALI20220720BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D3/37
C11D3/20
C11D3/43
H01L21/304 644Z
H01L21/304 647A
H01L21/304 622Q
B08B1/00
B08B3/08 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020530678
(86)(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 US2018060002
(87)【国際公開番号】W WO2019112751
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-08-14
(31)【優先権主張番号】62/594,139
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト, ダニエラ
【審査官】山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-512959(JP,A)
【文献】特開2008-147449(JP,A)
【文献】特開2005-060660(JP,A)
【文献】特開2010-021457(JP,A)
【文献】特開昭59-195649(JP,A)
【文献】特開2009-194049(JP,A)
【文献】特開2009-278018(JP,A)
【文献】特開2009-071165(JP,A)
【文献】特開2003-289060(JP,A)
【文献】特表2010-527405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
B08B 1/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械加工後(CMP後)洗浄ブラシから研磨粒子を除去する方法であって、
ポリマー表面を有し、ポリマー表面に研磨粒子残留物を有するCMP後洗浄ブラシを提供することであって、ポリマー表面がビニルアルコールモノマーを含むモノマーから作られたポリマーを含み、且つ研磨粒子残留物が粒子の表面に水素結合基を有する研磨粒子を含む、提供すること、
洗浄剤と
粒子除去剤と
を含む、1から4のpHを有する洗浄溶液を提供すること、および
ポリマー表面を洗浄溶液と接触させることにより、ポリマー表面から研磨粒子残留物を除去すること
を含む、方法。
【請求項2】
基板の化学機械加工後(CMP後)洗浄の方法であって、
ポリマー表面を有するCMP後洗浄ブラシを提供すること、
クエン酸及び1種以上の有機溶媒を含む洗浄剤と
乳酸、マレイン酸、尿素、グリコール酸、ソルビトール、ホウ砂、プロリン、ベタイン、グリシン、ヒスチジン、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、ジメチルスルホキシド、スルホラン、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、マンニトール、アラビノールおよびデキストランまたはそれらの組み合わせである粒子除去剤と
を含む、7未満のpHを有する洗浄溶液を提供すること、
基板表面に残留物を有する表面を含む基板を提供することであって、残留物が研磨粒子を含む、基板を提供すること、ならびに
基板表面をポリマー表面と接触させ、ポリマー表面に対して基板表面を移動させながら基板表面およびポリマー表面を洗浄溶液に曝露することにより、基板表面から残留物を除去すること
を含む、方法。
【請求項3】
洗浄溶液が2から3.5の範囲のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
粒子除去剤が、1個または複数の水素結合性基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
水素結合性基が、カルボン酸、アミノ基、アルコール、ホスフィン、ホスフェート、ホスホネート、アルカノールアミン、カルバミド、尿素、ウレタン、エステル、ベタイン、シラノール基または硫黄含有基である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
研磨粒子が、シリカ粒子、セリア粒子、酸化セリア粒子、アルミナ粒子、二酸化チタン、ジルコニア、ダイヤモンド類もしくは炭化シリコン粒子またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
洗浄剤が、1種以上のキレート剤および有機溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
化学機械加工後工程において基板を洗浄するのに有用な、2.5未満のpHを有する洗浄溶液濃縮物であって、
洗浄溶液濃縮物が、
1種以上の有機溶媒を含む洗浄剤、および
なくとも0.1重量パーセントの、乳酸、マレイン酸、尿素、グリコール酸、ソルビトール、ホウ砂、プロリン、ベタイン、グリシン、ヒスチジン、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、ジメチルスルホキシド、スルホラン、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、マンニトール、アラビノールおよびデキストランまたはそれらの組み合わせである粒子除去剤
を含む、濃縮物。
【請求項9】
0.1から20重量パーセントの洗浄剤、および
0.1から20重量パーセントの粒子除去剤
を含む、請求項8に記載の濃縮物。
【請求項10】
洗浄剤が、1種以上のキレート剤を含む、請求項8に記載の濃縮物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学機械加工後洗浄工程において使用される洗浄ブラシのポリマー表面からなど、ポリマー表面から研磨粒子を除去するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路、光学装置、記憶装置、磁気電気部品、ならびに電子、記憶、光学および類似の用途において使用される他のマイクロデバイスまたはマイクロデバイス部品を含むマイクロ電子デバイスの生産(製作)に関する技術分野では、マイクロ電子デバイスは、基板表面から材料を的確に除去することを含む工程により調製される。ある種のデバイスを調製するために使用される方法は、基板の表面において異なる材料を堆積させ、選択的に除去する一連の工程を含み得る。加工中に適用される材料は、とりわけ、金属などの導電性材料、シリコンベースの材料(例えば、酸化シリコン)などの半導体材料、誘電層またはポリマー材料であり得る。材料は、マイクロ電子構造の層を基板上に構築するように、表面において選択的に適用し、選択的に除去することができる。材料の除去は、選択的な化学的手段、研磨手段またはこれらの組み合わせにより行うことができる。
【0003】
これらのデバイスの調製では、研磨手段により基板表面を平坦化する、平らにする、または研磨する加工工程が一般に使用される。表面において材料を選択的に適用および除去する工程間で、高度に精製された(例えば、平らな、平坦化された、または研磨された)レベルの仕上げを実現するために表面が加工される。そのような加工のための標準的な技術が化学機械加工(CMP)である。化学機械加工では、基板の表面が、パッドと表面との間の相対的な動きを伴って研磨スラリーおよびCMPパッドと接触する。このスラリーは、液体担体(水または有機溶媒)、溶解した化学薬品(すなわち、有機化学材料)および分散した研磨粒子を含む。(表面は、典型的には、粒子状副生成物、例えば、先の加工工程から存在する様々なタイプの金属酸化物を含むことになる。)スラリーの原料およびパッドと基板表面との間の動きの組み合わせは、基板表面から材料を除去し、さらなる加工のために平坦化された表面または研磨された表面を実現するのに効果的である。
【0004】
CMP工程の後、スラリーの一部である様々な材料ならびに基板表面から除去された材料は、化学的残留物または研磨残留物として基板の表面に残る。化学的残留物は、CMPプロセス後に基板表面に存在する残留化学原料、およびCMPスラリー中に元々存在する化学材料またはその派生物(例えば、反応生成物)である残留化学原料であり得る。研磨粒子残留物は、CMPスラリー中に元々存在した、CMP工程の最後に基板表面に残る研磨粒子を指す。他のタイプの残留物は、研磨粒子および化学的残留物の組み合わせ、例えば、凝集、凝固または沈殿した有機および研磨粒子材料であり得る。
【0005】
基板表面から残留物を除去するために、マイクロ電子デバイスの加工中に、例えばCMP工程の後またはCMP工程中に、かなりの努力がなされる。残留研磨粒子は、スクラッチ、ならびに基板の下流の加工または下流の製品の品質に悪影響を与え得る埋め込まれた粒子の形態のデバイス欠陥などの表面欠陥をもたらす可能性があるため、残留研磨粒子の形態の残留物は、特に、基板表面から除去されなければならない。残留研磨粒子を含む残留物を除去するための方法には、「CMP後洗浄」技術、方法または工程と呼ばれることもある洗浄技術が含まれる。これらは、表面から残留物を化学的かつ機械的に除去するために、移動するポリマーブラシによる接触と共に、残留物を含む基板の表面に適用される洗浄溶液の使用を伴う。
【0006】
多種多様なCMP後洗浄機器および洗浄溶液が市販されている。例の装置は、移動するブラシを含む洗浄チャンバを、洗浄チャンバ内で基板表面上に洗浄溶液を分配し、基板とブラシとの間の動きおよび接触を実現するためのシステムと共に含む。このチャンバは通常、洗浄を促進するために加熱することができる。使用中、残留物を除去するために、洗浄溶液が基板表面に適用され、この表面を、移動するブラシと接触させる。これらのタイプの装置および方法の例は既知であり、商業的に有用であり、様々な基板の効率的かつ効果的なCMP後洗浄が可能であろうが、CMP基板表面から残留物を除去するために、既存の技術を改善し、よりいっそう効果的な新しい洗浄溶液および洗浄方法を開発することが常に必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、化学機械加工後洗浄工程において使用される洗浄ブラシのポリマー表面からなど、ポリマー表面から研磨粒子を除去するのに有用な方法および組成物、ならびに関連する洗浄溶液に関する。本出願人は、研磨粒子、特に、研磨粒子の表面に水素結合性基を有する研磨粒子、CMP後洗浄工程において使用される洗浄溶液中の正電荷(正のゼータ電位)、またはその両方が、CMP後洗浄工程中、洗浄ブラシのポリマー表面に存在する水素結合性基に引き付けられ得ることを明らかにした。
【0008】
マイクロ電子デバイス基板の加工中、CMP後洗浄工程前に、マイクロ電子デバイス基板は、残留研磨粒子など、その表面に残留物を有することがある。CMP後洗浄工程中、その研磨粒子は、基板表面から(少なくとも大部分が)除去され、CMP後洗浄工程と共に使用される洗浄溶液中に分散する。洗浄溶液中にある間、特に低pH(例えば、6または7未満)の条件で、分散した研磨粒子は、正電荷、すなわち、正のゼータ電位を示し得る。研磨粒子の表面はまた、(-OH)基などの水素結合性基、例えば、シリカ粒子の場合、シラノール(-SiOH)を含むことができる。その上に水素結合性基を有する正に荷電した粒子の表面は、CMP後洗浄工程において使用されるポリマーブラシの表面に存在する水素結合性基に静電気的に引き付けられ、これと水素結合を形成することができる。研磨粒子は、ポリマーブラシの表面に引き付けられてそこに蓄積することができ、水素結合により、表面に対する引力を、特に低pHを有する洗浄溶液の存在下で維持することができる。CMP後洗浄工程中に洗浄ブラシの表面に研磨粒子が存在および蓄積することの1つの潜在的な結果は、CMP後洗浄工程後のブラシ跡の存在であり得る。
【0009】
本明細書において使用されるとき、「水素結合性基」は、例えば、粒子除去剤、ブラシのポリマー表面または研磨粒子の1つの特徴として、別の水素結合性基と相互作用して水素結合を形成することができる極性化合物または極性基である。例には、電気陰性度が高い原子、例えば窒素(N)、酸素(O)、硫黄(S)またはフッ素(F)に共有結合された水素(H)原子を含む基が含まれる。ある特定の水素結合性基には、カルボン酸、アミノ基、アルコール、ホスフィン、ホスフェート、ホスホネート、アルカノールアミン、カルバミド、尿素、ウレタン、エステル、ベタイン、シラノール基または硫黄含有基が含まれる。
【0010】
本発明に記載の洗浄溶液およびその使用方法によれば、洗浄溶液は、粒子除去剤と呼ばれる溶解した化学原料を含み、これは、CMP後洗浄工程中、洗浄スラリー中の正に荷電した研磨粒子とポリマーブラシ表面との間の水素結合の形成を防止する;CMP後洗浄工程中、そのような研磨粒子とポリマーブラシ表面との間の水素結合の形成を抑制もしくは低減する;またはポリマーブラシの表面に引き付けられ、これと水素結合を形成したような研磨粒子を除去する(CMP後洗浄工程中、または基板なしでブラシを洗浄する別個の工程中のいずれか)のに効果的である。
【0011】
1つの態様において、本発明は、化学機械加工後(CMP後)洗浄ブラシから研磨粒子を除去する方法に関する。この方法は、ポリマー表面を有し、ポリマー表面に研磨粒子残留物を有するCMP後洗浄ブラシを提供すること;および7未満のpHを有する洗浄溶液を提供することを含む。洗浄溶液は、洗浄剤と粒子除去剤とを含む。この方法は、ポリマー表面を洗浄溶液と接触させることにより、ポリマー表面から研磨粒子残留物を除去することも含む。
【0012】
別の態様において、本発明は、基板の化学機械加工後(CMP後)洗浄の方法に関する。この方法は、ポリマー表面を有するCMP後洗浄ブラシを提供すること;および洗浄剤と粒子除去剤とを含む洗浄溶液を提供することを含む。この方法は、基板表面に残留物を有する表面を含む基板を提供することであって、残留物が研磨粒子を含む、基板を提供すること、ならびに基板表面をポリマー表面と接触させながら、ポリマー表面に対して基板表面を移動させながら基板表面およびポリマー表面を洗浄溶液に曝露することにより、基板表面から残留物を除去することも含む。
【0013】
別の態様において、本発明は、化学機械加工後工程において基板を洗浄するのに有用な洗浄溶液濃縮物に関する。洗浄溶液濃縮物は、洗浄剤、および水素結合性基を含む少なくとも0.1重量パーセントの粒子除去剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】具体的に記載された方法および材料を使用して洗浄されたウエハの性能データを示す図である。
図2】ブラシ痕形成の提案された機構を示す図である。
図3】記載のように、表面にシリカを有するブラシのFTIRスペクトルデータを示す図である。
図4】異なる洗浄材料による、表面にシリカを有するブラシのFTIRスペクトルデータを示す図である。
図5】記載の様々な洗浄溶液を使用して得られたデータを示す図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
異なる態様において、本明細書は、CMP後洗浄工程において使用される洗浄ブラシの表面から研磨粒子を除去する方法(この方法は、CMP後洗浄プロセスに組み込まれており、またはブラシから研磨粒子を除去する別個のプロセスもしくは工程である);基板表面から残留物を除去するためのCMP後洗浄プロセス中、洗浄ブラシの表面からの研磨粒子の蓄積を防止する方法;およびこれらの方法において効果的な洗浄溶液であって、洗浄溶液が粒子除去剤を含む、洗浄溶液に関する。
【0016】
化学機械加工、すなわち、CMPまたは「CMP加工」の間、表面からの微量の材料の制御された除去により基板の表面を平坦化または研磨するために基板が加工される。マイクロ電子デバイス基板、すなわち、略して「基板」は、任意のタイプのマイクロ電子デバイスまたはその前駆体であり得、これは、集積回路、光学装置、ソリッドステート記憶装置、ハードディスク記憶装置、磁気電気部品、または電子、記憶、光学もしくは類似の用途において有用であり、基板の表面を化学機械加工する1つまたは複数の工程を含み、基板の表面において材料の組み合わせを堆積させ、選択的に除去する複数の工程をしばしば含む製作プロセスにより調製される別のタイプのマイクロデバイスもしくはマイクロデバイス部品のいずれかであるか、あるいはそれを含むデバイスまたは前駆体を意味する。
【0017】
記載の方法における使用のための基板は、半導電材料(例えば、シリコン)、セラミック(例えば、炭化シリコン、窒化シリコン)、ガラス材料、導電性材料(例えば、金属および金属合金)、電気絶縁(誘電)材料、バリア材料および同種のものを含む、インプロセスマイクロ電子デバイスの一部である任意の材料または材料の組み合わせを表面において含むことができる。導電性材料は、銅、タングステン、銀、アルミニウムおよびコバルトを含む金属または金属の合金、ならびにその他およびその合金であってもよい。電気絶縁性の誘電材料は、数例挙げると、様々な形態のドープされた、または多孔質の二酸化シリコン、熱酸化物、TEOSを含む様々な現在既知であるか、もしくは開発予定の絶縁性の低誘電率材料または超低誘電率材料のいずれかであってもよい。バリア層として存在し得る基板の材料の例には、タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、コバルト、ニッケル、マンガン、ルテニウム、窒化ルテニウム、炭化ルテニウムまたは窒化ルテニウムタングステンが含まれる。
【0018】
CMPプロセスは、スラリーを基板の表面に適用し、パッドと表面との間の動きを伴ってスラリーおよび基板をパッド(すなわち、「CMPパッド」または「CMP研磨パッド」)と接触させるものである。スラリーは、基板の表面から材料を摩擦により(機械的に)除去するよう設計された研磨粒子を含む。スラリーは典型的には、基板表面からのある種の材料の除去速度を制御する(増加または減少させる);異なる材料の除去の所望の選択性を実現する;CMP工程中およびCMP工程後の基板表面における欠陥の存在および残留物の量を低減する;あるいはCMPプロセスの最後におけるCMPプロセスの効率もしくは基板の品質に関する改善された結果または所望の結果を促進するのに効果的であり得る、その中に溶解した様々な化学原料も含むであろう。
【0019】
例のスラリー(「CMPスラリー」)は、その中に化学材料および研磨粒子が溶解または分散した大部分は水(好ましくは、脱イオン水)であり得る液体担体を含む。スラリーの化学材料は、所望の除去速度、除去の選択性、および仕上げた基板表面の最終的なトポグラフィ(例えば、平滑性、うねりなど)を実現するよう選択することができる。特定のスラリー中の特定のタイプおよび量の化学材料は、様々な因子、例えば、基板表面に存在する1つまたは複数のタイプの材料、CMP加工条件、CMP工程において使用されるCMPパッドのタイプ、スラリーの1つまたは複数のタイプの研磨粒子などに依存し得る。例の化学原料には、とりわけ、溶媒、界面活性剤、触媒、安定剤、酸化剤、(除去速度を制御するための)有機抑制剤、キレート剤として機能することができるような化学材料が含まれる。その他の可能な化学材料には、pH調整剤(塩基、酸)、腐食抑制剤および殺生物剤(防腐剤として)が含まれる。
【0020】
研磨粒子は、基板表面から特定の材料を効率的に、任意選択で選択的に、均一に除去するサイズおよび組成の特徴を有することができる。例の研磨粒子は、アルミナ、セリア、酸化セリア、ジルコニウム、酸化ジルコニウム、シリカ(様々な形態)、二酸化チタン、ジルコニア、ダイヤモンド類、炭化シリコン、または他の金属、セラミックもしくは金属酸化物材料でできていてもよく、あるいはそれらを含んでもよい。様々なサイズ、サイズ分布、粒子形状および他の物理的特性または機械的特性のこれらのタイプの研磨粒子が利用でき、様々な基板またはCMPプロセスと共に使用するために選択することができる。スラリー中の研磨粒子の量も、加工される基板のタイプおよびCMPプロセスの特徴に関する類似の因子に基づいて選択することができる。
【0021】
異なるタイプの基板の加工において使用するために、研磨粒子がCMPスラリー中に分散しているとき、正または負であり得る静電荷を示すよう研磨粒子を選択することができる。分散した研磨粒子の電荷の強さは、粒子の「ゼータ電位」(または界面動電位)と一般に呼ばれ、これは、粒子を取り囲むイオンの電荷と、スラリー(例えば、液体担体およびその中に溶解したその他の任意の成分)のバルク液体の電荷との間の電位差を指す。分散した粒子のゼータ電位は、典型的には、その中に粒子が分散している液体媒体のpHに依存する。所与のスラリーまたは他の液体媒体において、荷電した研磨粒子のゼータ電位がゼロになるpHは等電点と呼ばれる。分散した研磨粒子を含む溶液のpHが等電点から上昇または下降すると、表面電荷(したがって、ゼータ電位)は、それに応じて(より大きい負またはより大きい正のゼータ電位値に)小さくまたは大きくなる。
【0022】
CMP加工の工程中、スラリーの溶解および分散した(例えば、懸濁した)原料、ならびに基板表面から除去されることによるなど、CMPプロセス中に生成される他の溶解または分散した材料を含む様々な材料がスラリー中に存在する。さらに存在し得るのは、これらのいずれかの派生物、反応生成物、凝集物、凝固物および沈殿物である。CMP加工工程中のスラリー中に存在する任意のそのような材料は、潜在的に、CMP加工工程の最後に基板の表面に残る残留物になる可能性がある。したがって、CMP工程後に基板表面にある残留物は、CMPスラリー中に元々存在する溶解した化学材料または固体研磨粒子;加工中に基板表面から除去される材料(例えば、金属イオン)またはスラリーの化学材料の反応もしくは化学変性(例えば、酸化または還元)により加工中に生成される材料;あるいは沈殿物、凝集物および凝固物を含む、これらの組み合わせを含み得る。
【0023】
一般に既知であるように、様々なCMP後洗浄工程が、CMP加工工程の後にマイクロ電子デバイスの表面上に存在する残留物を除去するのに有用である。これらの洗浄工程は、特殊なCMP後洗浄機器の使用を伴うことがあり、一般にこれを伴い、このCMP後洗浄機器は、基板表面から残留物を機械的に除去するための移動するポリマーブラシの表面への適用と組み合わせた、洗浄溶液が基板の表面に送られる洗浄チャンバを含む洗浄装置を含んでもよい。条件および洗浄時間(移動するブラシおよび洗浄溶液に基板表面が曝露される時間を意味する)は、例えば、基板のタイプ、ブラシのタイプ、表面にある残留物のタイプおよび量、洗浄溶液のタイプなどの因子に基づいて選択することができる。
【0024】
ポリマーブラシの使用を伴う様々なCMP後洗浄ツールは既知であり、市販されている。これらの装置は一般に、移動可能な洗浄ブラシ(典型的には複数の洗浄ブラシ);洗浄溶液源;熱源;および表面から残留物を機械的に除去するのに効果的な条件(時間および温度)で、基板、洗浄溶液および移動するブラシと接触させて洗浄溶液を配置するよう適合させた、制御システムを含む、システム、機構、デバイスを含む洗浄チャンバを含む。このタイプの機器を販売している企業には、とりわけ、Entegris,Inc.;AION;Ceiba Technologies,Inc.;Rippey Corp.;Applied Materials;Ebarraが含まれる。
【0025】
本明細書によるCMP後洗浄装置および方法における使用のためのポリマー洗浄ブラシは、水素結合性基、例えば、ポリマー骨格に結合されたヒドロキシ基(-OH)を含むポリマー表面を含む。ポリマー表面を含み、CMP後洗浄プロセスにおいて有用である洗浄ブラシは周知である。ポリマー骨格に結合されたヒドロキシ基を有するポリマー表面を含む洗浄ブラシの例には、ビニルアルコールから少なくとも部分的に誘導されたポリマー、すなわち、ビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマーのいずれかであるポリマー、ポリビニルアルコールと一般に呼ばれる(「PVOH」または「PVA」としても知られる)ようなポリマー(コポリマーおよびホモポリマー)でできたブラシが含まれる。
【0026】
CMP後洗浄工程において使用される洗浄ブラシの例は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第20013/0048018号に記載されている。その中に記載されているように、出発材料としてポリビニルアルコールを使用することにより洗浄ブラシを調製することができ、次いで、これを加工して、ポリビニルアセタールの弾性材料を形成することができる。アルデヒド、例えば、ホルムアルデヒドを使用してポリビニルアルコール出発材料を加工して、ポリビニルアルコールブラシ材料を生産することができる。ポリビニルアルコールの代わりに、またはそれに加えて、他のポリマーがブラシ用のポリマー材料として有用であり得、水素結合性基を含むことができる。そのような他のポリマーの例には、ポリマーおよびコポリマーのナイロン、ポリウレタンおよびこれらの組み合わせが含まれ、これらは、市販のCMP後洗浄プロセスにおいて本明細書に記載のように基板から残留物を洗浄するのに適した洗浄ブラシに形成することができる。
【0027】
例のブラシには、第1の端部および第2の端部、ならびにブラシのベース面から延びる複数のノジュールを有する外面を有する(記載の)円柱状のポリマーフォームブラシが含まれる。ノジュールは、第1の端部と第2の端部との間に、ブラシの長さに沿って位置し、間隙または開口により互いに分離されている。ノジュールは、任意の形状を有してもよく、しばしば、円形の上面、およびブラシのベースからノジュールの上面まで延びる表面高さを含む。第1の端部と第2の端部との間に延びる軸の周りをブラシが回転すると、ブラシの円柱状の外面が回転し、表面上のノジュールが回転する。それに適用された洗浄溶液を有する基板の表面をブラシおよびブラシノジュールの移動する表面と接触させてこのノジュールを表面に接触させ、表面からの残留物の除去を促進することができる。
【0028】
洗浄プロセスのタイミングおよび条件は、(例えば、研磨粒子残留物により測定される)残留物の総量の大部分を基板表面から効率よく除去するのに効果的であるべきである。例えば、典型的なCMP後洗浄装置および方法を使用することにより、洗浄溶液を基板表面と接触させることができ、表面は、洗浄工程の前に、表面に存在する高い割合の残留物(例えば、研磨粒子残留物)を除去するのに十分な時間、(基板表面とブラシとの間の動きを伴って)ポリマーブラシと接触することになる。望ましくは、有用なCMP後洗浄工程により、残留物除去の前に、基板表面上に存在する少なくとも85パーセントの残留物(例えば、研磨粒子残留物)、より好ましくは少なくとも90パーセント、さらにより好ましくは少なくとも95パーセント、最も好ましくは少なくとも99パーセントを除去することができる。基板の表面に残っているある量の残留物(例えば、粒子残留物)を測定するのに有用な方法および機器は周知であり、市販されている。
【0029】
そのようなレベルの残留物除去を実現するために、洗浄装置による基板の例の洗浄時間は、摂氏約20度から摂氏約90度、好ましくは摂氏約20から約50度の範囲内の温度において、約1秒から約20分、好ましくは約5秒から10分の範囲内、例えば、約15秒から約5分の範囲内であり得る。時間および温度のこれらの範囲内の加工時間は例示であり、基板の表面からCMP後残留物を少なくとも部分的に洗浄するのに効果的であれば、その他の任意の適した時間および温度条件が使用されてもよい。
【0030】
本発明によれば、本出願人は今回、研磨粒子、特に、研磨粒子の表面に水素結合性基を有する研磨粒子、CMP後洗浄工程において使用される洗浄溶液中の正電荷(正のゼータ電位)、またはその両方が、CMP後洗浄工程中、洗浄ブラシのポリマー表面に存在する水素結合性基に引き付けられ得ることを具体的に明らかにした。
【0031】
CMP後洗浄工程前に、マイクロ電子デバイス基板は、その表面に研磨粒子残留物を有することがある。洗浄工程中、その研磨粒子は、基板表面から(少なくとも大部分が)除去され、CMP後洗浄工程と共に使用される洗浄溶液中に分散する。洗浄溶液中にある間、特に低pH(例えば、6または7未満)の条件で、分散した研磨粒子は、正電荷、すなわち、正のゼータ電位を示し得る。研磨粒子の表面はまた、(-OH)基などの水素結合性基、例えば、シリカ粒子の場合、シラノール(-SiOH)を含むことができる。その上に水素結合性基を有する正に荷電した粒子の表面は、CMP後洗浄工程において使用されるポリマーブラシの表面に存在する水素結合性基に静電気的に引き付けられ、これと水素結合を形成することができる。研磨粒子は、ポリマーブラシの表面に引き付けられてそこに蓄積することができ、水素結合により、表面に対する引力を、特に低pHを有する洗浄溶液の存在下で維持することができる。
【0032】
CMP後洗浄工程中に洗浄ブラシの表面に研磨粒子が存在および蓄積することの1つの潜在的な結果は、CMP後洗浄工程後のブラシ跡の存在であり得る。ブラシ跡(または「ブラシ痕」)は、CMP後洗浄工程後に基板表面上に存在する残留研磨粒子の目に見えるパターンである。パターンは、基板表面、例えば洗浄ブラシノジュールの円形表面を洗浄するために使用される洗浄ブラシの表面の形状または特徴と一致する形状または特徴(例えば、寸法)を含むことができる。残留研磨粒子により形成されるブラシ跡パターンの例には、ノジュールの形状およびサイズと一致する円形の跡、ならびに円形のブラシノジュールの直径に対応する線の長さを有する、残留研磨粒子により形成された特異な線である線パターンが含まれる。ブラシ跡は、CMP後洗浄の工程後に基板上に残る研磨粒子(すなわち、研磨粒子残留物)のパターンでできること、およびそのパターンにより形成されることがある。本明細書の好ましいCMP後洗浄プロセスにより、CMP後洗浄工程後の基板の表面において、ブラシ跡の発生を低減もしくは最小化することができ、または好ましくはブラシ跡をなくすことができる。
【0033】
本発明の例の方法によれば、CMP後洗浄工程は、水素結合性基を含むポリマー表面を有するスクラブブラシを含む装置を含む。さらに、洗浄工程において使用される洗浄溶液は、約7未満など、例えば、約1から最高約5もしくは6、または約1もしくは2から最高約3、3.5もしくは4の範囲内の低pHを有することができる。これらの因子により、CMP後洗浄工程中、洗浄溶液中に(水素結合性基を有する)正に荷電した研磨粒子が存在することができ、正に荷電した研磨粒子は、ブラシ表面にある水素結合性基に引き付けられるようになり、正に荷電した研磨粒子は、水素結合によりポリマーブラシ表面に引き付けられる。
【0034】
出願人の新規な本発明の洗浄溶液およびその使用方法によれば、洗浄溶液は、粒子除去剤と呼ばれる溶解した化学原料を含み、これは、CMP後洗浄工程中、洗浄スラリー中の正に荷電した研磨粒子とポリマーブラシ表面との間の水素結合の形成を防止する;CMP後洗浄工程中、そのような研磨粒子とポリマーブラシ表面との間の水素結合の形成を抑制もしくは低減する;またはポリマーブラシの表面に引き付けられ、これと水素結合を形成したような研磨粒子を除去する(CMP後洗浄工程中、または基板なしでブラシを洗浄する別個の工程中のいずれか)のに効果的である。
【0035】
したがって本明細書の洗浄溶液は、粒子除去剤を含み、洗浄剤として機能する1つまたは複数の原料(例えば、キレート剤、有機溶媒)を含んでいてもよく、少量またはより少量の他の任意選択の助剤、例えば酸、界面活性剤、殺生物剤などを含んでいてもよい溶解した原料を含む水性媒体(好ましくは脱イオン水)を含む溶液を含み、またはその溶液の形態である。
【0036】
粒子除去剤は、少なくとも1個の水素結合性基を含み、記載の洗浄溶液中に、正に荷電した研磨粒子および洗浄ブラシのポリマー表面の存在下で存在するとき、洗浄ブラシの表面に存在して水素結合により洗浄ブラシの表面に引き付けられる研磨粒子の量を粒子除去剤が低減するように、その程度まで、ポリマーブラシ表面の水素結合性基、正に荷電した研磨粒子の水素結合性基、またはその両方と会合するのに効果的であり得る(オリゴマーまたはポリマーを含む)化合物である。
【0037】
例えば低pHで正に荷電している(基板表面上の残留物としてそこに運ばれた)分散した研磨粒子を含む洗浄溶液中、粒子除去剤は、ポリマー洗浄ブラシの表面に存在する水素結合性基に正に荷電した粒子が引き付けられるのを抑制または防止するように、正に荷電した粒子の水素結合性基と会合することができる。さらに、水素結合性基を含む洗浄ブラシの存在下かつ低pHで、粒子除去剤はまた、洗浄溶液中に存在する正に荷電した研磨粒子を洗浄ブラシが引き付けるのを抑制または防止するように、洗浄ブラシの表面に存在する水素結合性基と会合するようになる。より一般的に考えると、粒子除去剤は、水素結合性基を含む正に荷電した研磨粒子と、水素結合性基を含む洗浄ブラシのポリマー表面との間の水素結合を防止または妨害することができる。粒子除去剤と洗浄ブラシ表面との間、および粒子除去剤と正に荷電した研磨粒子との間のこれらの効果および相互作用(単独または組み合わせ)は、洗浄溶液中(例えば、CMP後洗浄工程中)に存在する全て、洗浄ブラシ表面の水素結合性基と、正に荷電した研磨粒子の水素結合性基との間の相互作用の量を効果的に減少させる。その結果、より少ない数の研磨粒子が洗浄ブラシの表面に存在し、水素結合により表面と会合することになる。
【0038】
したがって、本発明の洗浄溶液は、そのような研磨粒子の存在下かつ低pHで洗浄溶液が洗浄ブラシに曝露されるとき、洗浄ブラシのポリマー表面に存在する正に荷電した研磨粒子の量(例えば、濃度)を低減するのに効果的な量およびタイプで、ある量の粒子除去剤を含む。
【0039】
記載の粒子除去剤として有用であり得る原料の例には、記載のように、1個または複数の水素結合性基を含み(洗浄溶液中に低pHで存在するとき)、ポリマー洗浄ブラシの表面における正に荷電した研磨粒子の存在を低減するのに効果的である洗浄溶液中に含まれ得る有機化合物、ポリマー、オリゴマーなどが含まれる。例の化合物には一般に、とりわけ、窒素含有化合物;アミノ酸;モノ、ジまたはマルチカルボキシレート含有基;アルコール(例えば、ポリオール);酸が含まれる。
【0040】
粒子除去剤のいくつかの具体例には、非イオン性、アニオン性、カチオン性および両性イオン性の小分子、ならびに中性のpHにおいて高分子電解質として振る舞うことができるポリマーが含まれる。アニオン性ポリマーまたはアニオン性高分子電解質は、天然、変性天然ポリマー、または合成ポリマーであり得る。記載の洗浄溶液中に含まれ得る例示的な天然および変性天然アニオン性ポリマーには、アルギン酸(または塩)、カルボキシメチルセルロース、デキストラン硫酸、ポリ(ガラクツロン酸)およびそれらの塩が含まれるが、これらに限定されない。例示的な合成アニオン性高分子電解質には、(メタ)アクリル酸(または塩)、ポリ(アクリル酸)、マレイン酸(または無水物)、スチレンスルホン酸(または塩)、ビニルスルホン酸(または塩)、アリルスルホン酸(または塩)、アクリルアミドプロピルスルホン酸(または塩)および同種のもの(ここで、カルボン酸およびスルホン酸の塩は、好ましくはアンモニウムカチオンまたはアルキルアンモニウムカチオンで中和されている)のホモポリマーまたはコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。高分子電解質アニオン性ポリマーの好ましいカチオンは、アンモニウムカチオン(NH )、コリニウムN(CH(CHCHOH)およびN(CHである。したがって、合成および天然の高分子電解質アニオン性ポリマーの好ましい組み合わせの例は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸(または無水物)、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルホスホン酸、アクリルアミドプロピルスルホン酸、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、デキストラン硫酸、ポリ(ガラクツロン酸)およびそれらの塩のホモポリマーまたはコポリマーである。
【0041】
カチオン性ポリマーおよびカチオン性高分子電解質は、天然、変性天然ポリマー、または合成ポリマーであり得る。例示的な天然および変性天然カチオン性ポリマーには、キトサン、カチオン澱粉、ポリリジンおよびそれらの塩が含まれるが、これらに限定されない。例示的なカチオン性合成高分子電解質には、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、ジアリルジメチルアンモニウムブロミド、ジアリルジメチルアンモニウムサルフェート、ジアリルジメチルアンモニウムホスフェート、ジメタアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジエチルアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジ(ベータ-ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド、ジアリルジ(ベータ-エトキシエチル)アンモニウムクロリド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート酸付加塩および四級塩、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート酸付加塩および四級塩、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート酸付加塩および四級塩、N,N’-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド酸付加塩および四級化塩(ここで、四級塩は、アルキル四級化塩およびベンジル四級化塩を含む);アリルアミン、ジアリルアミン、(ビニルアルキルアミドポリマーの加水分解により得られた)ビニルアミン、ビニルピリジン、キトサン、カチオン澱粉、ポリリジンおよびそれらの塩のホモポリマーまたはコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
他の例には、2-ピロリジノン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリジノン(HEP)、グリセロール、1,4-ブタンジオール、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、ジメチルスルホン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラグリム、ジグリム、グリコールエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGBE)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(EGHE)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(DEGHE)、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPGME)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(TPGME)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル(DPGPE)、トリプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル(DOWANOL PnB)、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル(DOWANOL PPh))、n-エチルピロリドン、n-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルおよびそれらの組み合わせが含まれる。代わりに、または加えて、洗浄添加剤には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロプリメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース。カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、N-ビニルピロリドンモノマーを使用して調製された任意のポリマー、ポリアクリル酸エステルおよびポリアクリル酸エステルの類似体、ポリアミノ酸(例えば、ポリアラニン、ポリロイシン、ポリグリシン)、ポリアミドヒドロキシウレタン、ポリラクトン、ポリアクリルアミド、キサンタンガム、キトサン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン(PEI)、糖アルコール、例えばソルビトール、スクロース、フルクトース、ラクトース、ガラクトース、マルトース、エリトリトール、マルチトール、トレイトール、アラビノール、リビトール、マンニトール、ガラクチトール、イノシトールおよびキシリトール、アンヒドロソルビトールのエステル、二級アルコールエトキシレート、例えばTERGITOL、ペンタエリトリトール、ジペンタエリチトール、トリメチロールプロパン、ジメチルプロピオン酸およびキシロン酸を含む多官能アルコール、ヌクレオプベース、例えばウラシル、シトシン、グアニン、チミン、ならびにそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0043】
さらに他の例には、乳酸、マレイン酸、尿素、グリコール酸、ソルビトール、ホウ砂(すなわち、ホウ酸ナトリウム)、プロリン、ベタイン、グリシン、ヒスチジン、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、ジメチルスルホキシド、スルホラン、グリセロール、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、ドデシルホスホン酸またはそれらの組み合わせが含まれる。これらのうち、マイクロ電子デバイス基板のためのCMP後洗浄工程における使用には、特定の粒子除去剤、例えば、マレイン酸、ホウ砂(すなわち、ホウ酸ナトリウム)、ジメチルスルホキシド、グリセロールまたはそれらの組み合わせが好ましいこともある。
【0044】
特定の例の洗浄溶液によれば、(CMP後洗浄プロセス中の)使用ポイントにおける洗浄溶液中の1つまたは複数の粒子除去剤の総量は、洗浄溶液の総重量に基づいて、少なくとも約0.01重量パーセント、より好ましくは少なくとも約0.02重量パーセント、例えば少なくとも0.05重量パーセントであり得る。例の量は、洗浄溶液の総重量に基づいて、最大約1重量パーセント、より好ましくは最大約0.3重量パーセント、例えば、最大約0.2重量パーセントの粒子除去剤であり得る。
【0045】
濃縮された形態の特定の例の洗浄溶液によれば、使用ポイント組成物に希釈する前、洗浄溶液濃縮物中の1つまたは粒子除去剤の総量は、洗浄溶液の総重量に基づいて、少なくとも約7パーセント、例えば少なくとも約10重量パーセントであり得るが、洗浄溶液の総重量に基づいて、20重量パーセント以下、好ましくは8重量パーセント以下、例えば、7重量パーセント以下の粒子除去剤であり得る。
【0046】
粒子除去剤に加えて、記載の洗浄組成物は、好ましくは、例えば、CMP後洗浄工程中に、基板の表面から残留物を除去するのを助ける洗浄剤として作用する1つまたは複数の他の溶解した化学原料を含むことができる。1つまたは複数の洗浄剤は、様々な既知の洗浄機構または隔離機構により、例えば、有機材料である残留物を溶解させることにより、固体または粒子状残留物を分散させることにより、あるいはCMP工程後に基板の表面に存在する残留物またはCMP後洗浄工程中に基板を洗浄するために使用される洗浄溶液中に存在する残留物と相互作用する、またはそれを分離することにより作用することができる。
【0047】
CMP後洗浄溶液および方法における使用に有用な有機溶媒の例は既知である。例の溶媒は、とりわけ、極性有機溶媒、アルコール、グリコールおよびアミンであり得る。非限定的な例には、より低分子量のアルコール、例えばCからCアルキルアルコール、アルキレングリコール、エタノールアミン(例えば、モノエタノールアミン)、N,N’-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンなどが含まれる。
【0048】
有機アミンの例示的な例には、一般式NR[式中、R、RおよびRは、互いに同じでも、異なっていてもよく、水素、直鎖または分岐鎖のC-Cアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシル)、直鎖または分岐鎖のC-Cアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールおよびヘキサノール)、および式R-O-R[式中、RおよびRは、互いに同じでも、異なっていてもよく、上で定義したC-Cアルキルからなる群から選択される]を有する直鎖または分岐鎖のエーテルからなる群から選択される]を有する化学種が含まれる。アミンがエーテル成分を含むとき、アミンはアルコキシアミンと考えてもよい。最も好ましくは、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、直鎖または分岐鎖のC-Cアルコールである。例には、限定することなしに、アルカノールアミン類、例えばアルカノールアミン、例えばアミノエチルエタノールアミン、N-メチルアミノエタノール、アミノエトキシエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、1-アミノ-2-プロパノール、3-アミノ-1-プロパノール、ジイソプロピルアミン、イソプロピルアミン、2-アミノ-1-ブタノール、イソブタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、他のC-Cアルカノールアミンおよびそれらの組み合わせ;アミン類、例えばトリエチレンジアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミンおよびそれらの組み合わせ;ジグリコールアミン;モルホリン;ならびにアミン類およびアルカノールアミン類の組み合わせが含まれる。好ましくは、有機アミンにはモノエタノールアミンが含まれる。
【0049】
一般に、有機溶媒は、例えば有機残留物を溶解させることにより、洗浄剤として有機溶媒が本明細書に記載のように効果的になるのに有用になるであろう量で洗浄溶液中に含まれ得る。所与の洗浄溶液に含まれる特定のタイプおよび量の有機溶媒は、洗浄される基板のタイプ、基板表面に存在する残留物のタイプおよび量、洗浄溶液中の他の原料、ならびにCMP後洗浄プロセスにおいて使用される条件(タイミング、温度など)を含む因子に基づいて選択することができる。
【0050】
特定の例の洗浄溶液によれば、(CMP後洗浄プロセス中の)使用ポイントにおける洗浄溶液中の1つまたは複数の有機溶媒の総量は、洗浄溶液の総重量に基づいて、約1重量パーセント未満、より好ましくは約0.33重量パーセント未満、最も好ましくは0.13重量パーセント以下、例えば、洗浄溶液の総重量に基づいて、0.067重量パーセント以下または0.033重量パーセント以下であり得る。好ましくは、存在する場合、有機溶媒の量は、洗浄溶液の総重量に基づいて、少なくとも0.0003重量パーセント、より好ましくは少なくとも0.001重量パーセント、例えば、少なくとも0.015または0.025重量パーセントであり得る。
【0051】
濃縮された形態の特定の例の洗浄溶液によれば、使用ポイント組成物に希釈する前、洗浄溶液濃縮物中の1つまたは複数の有機溶媒の総量は、洗浄溶液の総重量に基づいて、20重量パーセント以下、より好ましくは10重量パーセント以下、最も好ましくは7重量パーセント以下、例えば、2重量パーセント以下または1重量パーセント以下であり得る。好ましくは、存在する場合、有用な量は、洗浄溶液の総重量に基づいて、少なくとも0.005重量パーセント、より好ましくは少なくとも0.01重量パーセント、例えば少なくとも0.05重量パーセントまたは少なくとも0.2もしくは0.35重量パーセントであり得る。
【0052】
洗浄溶液は、少なくとも1つのキレート剤を含んでいてもよい。一般に、CMP後洗浄組成物において使用されるキレート剤は、錯体分子を典型的には金属イオンと、しばしば鉄イオンと形成して、洗浄溶液内のイオンを不活性化し、イオンによる化学反応または化学活性を防止する化合物である。CMP後洗浄組成物における使用のための様々なキレート剤が既知であり、様々なキレート剤を本明細書の洗浄組成物および方法において使用することができる。ある特定の例には、酸含有有機分子、特にカルボン酸含有有機分子、例えば、フタル酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスパラギン酸を含む直鎖もしくは分岐鎖のC-Cカルボン酸化合物またはそれらの組み合わせ、ならびに、グリシン、アミノ酸および同種のものが含まれる。クエン酸は、鉄イオン(例えば、Fe+2、Fe+3)のキレート化に好ましいキレート剤であり得る。糖アルコール、例えばアラビトール、エリトリトール、グリセロール、水素化澱粉加水分解物(HSH)、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトールおよびキシリトールも、金属イオンの好ましいキレート試薬である。
【0053】
本明細書において企図される他の金属キレート試薬には、酢酸、アセトンオキシム、アクリル酸、アジピン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、ベタイン、ジメチルグリオキシム、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、グルタミン、グルタル酸、グリセリン酸、グリセロール、グリコール酸、グリオキシル酸、ヒスチジン、イミノ二酢酸、イソフタル酸、イタコン酸、乳酸、ロイシン、リジン、マレイン酸、無水マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、2,4-ペンタンジオン、フェニル酢酸、フェニルアラニン、フタル酸、プロリン、プロピオン酸、ピロカテコール、ピロメリト酸、キナ酸、セリン、ソルビトール、コハク酸、酒石酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、チロシン、バリン、キシリトール、エチレンジアミン、シュウ酸、タンニン酸、ピコリン酸、1,3-シクロペンタンジオン、カテコール、ピロガロール、レゾルシノール、ヒドロキノン、シアヌル酸、バルビツル酸、1,2-ジメチルバルビツル酸、ピルビン酸、プロパンチオール、ベンゾヒドロキサム酸類、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン(HEM)、N-アミノエチルピペラジン(N-AEP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1,2-シクロヘキサンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸(CDTA)、N-(ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン三酢酸(HEdTA)、イミノ二酢酸(IDA)、2-(ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸(HIDA)、ニトリロ三酢酸、アミノトリス(メチレンリン酸)、ヒドロキシエチリジンジホスホン酸、エチレンジアミノテトラキス(メチレンリン酸)、エチレンジアミノペンタキス(メチレンリン酸)、チオ尿素、1,1,3,3-テトラメチル尿素、尿素、尿素誘導体、グリシン、システイン、グルタミン酸、イソロイシン、メチオニン、ピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、ピロリジン、スレオニン、トリプトファン、サリチル酸、ジピコリン酸、p-トルエンスルホン酸、5-スルホサリチル酸およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
有用なキレート剤の他の例には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、コハク酸、アスパラギン酸、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、アクリルアミド、ホスホネートメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、アリルハロゲン化物のうちの1つもしくは複数またはそれらの組み合わせを含んでもよいモノマーから誘導されたカルボン酸基含有オリゴマーおよびポリマーが含まれる。ポリアクリル酸は、シリカ窒化物(SiN)のキレート化に好ましいキレート剤であり得る。さらに他の例には、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、ペンタン-1,2,3,4,5-ペンタカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリト酸、メリト酸およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0055】
一般に、キレート剤は、キレート剤が本明細書に記載のように効果的になるのに有用な量で洗浄溶液中に含まれ得る。所与の洗浄溶液に含まれる特定のタイプおよび量のキレート剤は、洗浄される基板のタイプ、基板表面に存在する残留物のタイプ、洗浄溶液中の他の原料、およびCMP後洗浄プロセスの条件を含む因子に基づいて選択することができる。
【0056】
特定の例の洗浄溶液によれば、(CMP後洗浄プロセス中の)使用ポイントにおける洗浄溶液中の1つまたは複数のキレート剤の総量は、最大約5重量パーセント、例えば最大約2重量パーセント、最も好ましくは最大約1重量パーセントであり得る。好ましくは、存在する場合、量は、洗浄溶液の総重量に基づいて、少なくとも0.0005重量パーセント、より好ましくは少なくとも0.001重量パーセント、例えば少なくとも0.007重量パーセントであり得る。
【0057】
濃縮された形態の特定の例の洗浄溶液によれば、使用ポイント組成物に希釈する前、洗浄溶液濃縮物中の1つまたは複数のキレート剤の総量は、洗浄溶液の総重量に基づいて、20重量パーセント以下、より好ましくは13重量パーセント以下、最も好ましくは10または7重量パーセント以下、例えば、3重量パーセント以下または1.5重量パーセント以下であり得る。好ましくは、量は、洗浄溶液の総重量に基づいて、少なくとも0.008重量パーセント、より好ましくは少なくとも0.015重量パーセント、例えば少なくとも0.1重量パーセントまたは少なくとも0.3重量パーセントであり得る。
【0058】
洗浄溶液は、洗浄溶液を使用するCMP後洗浄工程の洗浄効果または効率を改善するために、他の原料または助剤を含んでいてもよい。任意選択で、例えば、洗浄溶液は、洗浄溶液濃縮物または使用ポイント組成物のpHを制御するために、pH調整剤または緩衝系を含んでもよい。適したpH調整剤の例には、とりわけ、pHを低下させるのに効果的な有機酸および無機酸、例えば硝酸、硫酸、リン酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、塩酸、マロン酸、マレイン酸が含まれる。他の選択肢の原料には、界面活性剤(任意のタイプ)または殺生物剤が含まれる。
【0059】
本明細書によれば、記載の粒子除去剤を含む洗浄溶液を取り込んでいる記載のCMP後洗浄方法は、同等の洗浄方法の洗浄溶液が(その量を含む)本明細書に記載の粒子除去剤を含まないことを除いて(同等の残留物を含む)同一の基板上で(同じ洗浄装置、ブラシ、洗浄溶液の量、洗浄時間、洗浄温度などを使用する)同一の様式で実施される同等の洗浄方法に比べて、CMP後洗浄工程の最後に基板の表面に存在するブラシ跡の発生が低減するように好ましくかつ有利にCMP工程後に基板を洗浄するのに有用であり得る。本明細書のCMP後基板洗浄方法の実施形態によれば、(例えば、記載の量で)粒子除去剤を含む記載の洗浄溶液の使用により、その他は同一であるが粒子除去剤を含まない洗浄溶液を使用する、(同一または同等の残留物を含む)同一の基板上のその他は同一のCMP後洗浄方法に比べて、CMP後洗浄プロセスの最後に基板の表面上のブラシ跡(特に線状のブラシ跡)の存在を(例えば、少なくとも50、75、90または95または99パーセント)低減させることができる。
【0060】
また本明細書によれば、(記載の量を含む)記載の粒子除去剤を含む記載の洗浄溶液を取り込んでいる記載のCMP後洗浄方法により、同等の洗浄方法の洗浄溶液が(例えば、本明細書に記載の量で)粒子除去剤を含まないことを除いて(同等の残留物を含む)同一の基板上で(同じ洗浄装置、ブラシ、洗浄溶液の量、洗浄時間、洗浄温度などを使用する)同一の様式で実施される同等の洗浄方法に比べて、洗浄工程の間または最後にポリマー洗浄ブラシの表面に存在する研磨粒子の量を減少させることができる。記載の洗浄溶液を使用する本明細書のCMP後基板洗浄方法の実施形態によれば、その他は同一であるが粒子除去剤を含まない洗浄溶液を使用する、同一の基板上のその他は同一のCMP後洗浄方法に比べて、CMP後洗浄プロセスの間または最後に記載のポリマー洗浄ブラシの表面(例えば、水素結合により引き付けられた)に存在する研磨粒子の存在を(例えば、少なくとも50、75、90または95または99パーセント)低減させることができる。
【0061】
例の洗浄溶液は、基板表面に存在する残留物を除去するのに有用であり、または洗浄ブラシのポリマー表面において研磨粒子の存在を低減させる(すなわち、除去する)もしくは研磨粒子の蓄積を低減させるのに有用である。これらの目的のいずれかのための基板またはブラシの加工において、洗浄溶液は、基板の表面層を構成する材料を除去することが意図される、またはそのために(本明細書に記載のように)使用される洗浄溶液ではない。その結果として、記載の洗浄溶液は、基板の表面から材料を除去する効果を有するのに有用であり、その効果を有することが意図されるいかなる相当量の化学材料または研磨材料も必要とせず、好ましくは排除することができ、これらの原料は、基板表面から材料を除去するためにCMPプロセスにおいて使用されるよう設計されているCMPスラリー中に典型的に存在し得るタイプの研磨粒子、酸化剤、界面活性剤、触媒などを含む。
【0062】
(本明細書に記載の方法において使用される前の元の形態の)記載の洗浄溶液は、CMP加工工程において存在し得るタイプの研磨粒子を排除することができる。これらは、CMP加工工程中に基板の表面から材料を機械的に除去するために使用するためのCMPスラリー中に存在する固体粒子(例えば、ナノ粒子)である。例には、シリカ粒子、セリア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ならびにスラリー中に固体(非溶解)形態で存在する他の金属および金属酸化物研磨粒子などが含まれる。(洗浄工程において使用される前の元の形態の)本明細書の洗浄溶液は、洗浄溶液の総重量に基づいて、1、0.1、0.01、0.001、0.0001重量パーセント以下の固体研磨粒子を含み得る。これらの量は、使用ポイントにおける洗浄溶液を表し、濃縮組成物の場合である。
【0063】
同様に、記載の好ましい洗浄溶液は、基板表面からの表面層材料の効果的な除去を促進するために、CMP基板の表面層を構成する材料との、またはスラリーの別の材料との化学的相互作用により機能する化学材料を必要とせず、排除することができてもよい。そのような化学材料の例には、とりわけ、界面活性剤、触媒(例えば、金属イオン触媒、特に鉄イオン触媒)および酸化剤が含まれる。例の洗浄溶液は、総重量洗浄溶液に基づいて、1、0.1、0.01、0.001もしくは0.0001重量パーセント以下の界面活性剤、触媒もしくは酸化剤のいずれか1つまたは組み合わせを含み得る。これらの量は、使用ポイントにおける洗浄溶液を表し、濃縮組成物の場合である。
【0064】
記載の洗浄溶液から原料としての触媒、酸化剤および界面活性剤を排除する目的で、「界面活性剤」は、2つの液体間または液体と固体との間の表面張力(または界面張力)を低下させる有機化合物であり、典型的には、疎水性基(例えば、炭化水素(例えば、アルキル)「尾部」)および親水性基を含む有機両親媒性化合物である。界面活性剤は、任意のHLB(親水性-親油性バランス)値のものでもよく、荷電、非荷電などのものでもよく、多種多様な界面活性剤の例は、化学およびCMPの技術分野において周知である。
【0065】
「触媒」は、CMP基板の表面層における金属材料の存在下、特に、スラリーを使用し、触媒の金属イオンがその除去を促進するCMPプロセス工程中に基板表面から除去される金属材料の存在下、特に酸化薬剤の存在下で、可逆的酸化還元が可能な溶液(例えば、CMPスラリーの液体担体)に金属イオンを供給するのに効果的であり得る材料である。金属イオン型触媒の例は、CMPの技術分野において周知であり、金属イオン、例えば、鉄、コバルト、銅、ユーロピウム、マンガン、タングステン、モリブデン、レニウムまたはイリジウムのイオンをスラリーに供給することができる。そのような鉄イオン触媒の例は、液体担体に溶解することができて、第二鉄(鉄(III))または第一鉄(鉄(II))化合物、例えば、硝酸鉄、硫酸鉄、ハロゲン化鉄(フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物、ならびに過塩素酸塩類、過臭素酸塩類および過ヨウ素酸塩類を含む)、および有機鉄化合物、例えば、酢酸鉄類、アセチルアセトン鉄類、クエン酸鉄類、グルコン酸鉄類、マロン酸鉄類、シュウ酸鉄類、フタル酸鉄類およびコハク酸鉄類、ならびにそれらの混合物が含まれ得る。
【0066】
酸化剤(酸化薬剤としても知られる)は、無機または有機過化合物である、またはそれらを含む化合物である。過化合物は、少なくとも1個のペルオキシ基(-O-O-)を含む化合物、または最も高い酸化状態の元素を含む化合物であると理解することができる。少なくとも1個のペルオキシ基を含む化合物の例には、過酸化水素およびその付加物、例えば尿素過酸化水素および過炭酸塩、有機過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル、過酢酸および過酸化ジ-t-ブチル、一過硫酸塩(SO )、二過硫酸塩(S )ならびに過酸化ナトリウムが含まれる。最も高い酸化状態の元素を含む化合物の例には、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩類、過臭素酸、過臭素酸塩類、過塩素酸、過塩素酸塩類、過ホウ酸および過ホウ酸塩類および過マンガン酸塩類が含まれる。CMPスラリーにしばしば好ましい酸化薬剤は過酸化水素である。
【0067】
使用ポイントにおいて、CMP後洗浄工程における使用のための洗浄溶液を形成するために、濃縮された形態の記載の洗浄組成物を希釈することができる。濃縮物は、希釈すると所望の濃度の各原料を有する使用ポイント組成物を与える量の記載の化学原料を含むことができる。濃縮物は、使用組成物のpH未満になるであろうpHを有することができて、例えば、濃縮物のpHは2.5未満または2未満であり得る。使用組成物を形成するために濃縮物に加えられる水の量、すなわち希釈率は、所望の通りでよい。例の濃縮物は、10、50、100または200の倍率で、例えば、濃縮物の体積の10倍、50倍、100倍または200倍である水の体積と濃縮物の体積を組み合わせることにより希釈することができる。
【0068】
記載の洗浄溶液を使用するための方法の様々な例によれば、研磨粒子残留物を含む基板の表面から残留物を除去するために、CMP後洗浄工程において、例えばCMP後洗浄装置を使用して、マイクロ電子デバイス基板を洗浄することができる。基板は、マイクロ電子デバイス基板、一般に、表面層を含むマイクロ電子フィーチャの層を生成するために基板上に選択的に堆積され、基板から選択的に除去された材料と共にベースを含むことができる平坦なウエハであり得る。表面層は、1つまたは複数の金属(例えば、銅、タングステン、銀、コバルト、ニッケルなど)、絶縁または誘電材料(例えば、TEOS、窒化シリコン)および半導電材料を含むそのような堆積材料でできていてもよい。表面には、基板の表面層を構成する堆積材料の一部ではないが、CMP工程において使用された研磨粒子を含む記載の残留物が存在し得る。
【0069】
残留物を含む基板の具体例は、表面にある金属フィーチャ(例えば、ライナーまたは相互接続(例えば、プラグ)構造物としてのタングステン、銅またはコバルト)、および1つまたは複数の非金属材料、例えば誘電材料またはバリア層(例えば、とりわけ、TEOS、窒化シリコン)を含むCMP後マイクロ電子デバイス基板である。基板は、表面にある残留物、例えば研磨粒子を含む。研磨粒子は、任意の有用なタイプのもの、例えば、アルミナ、シリカ、セリア、ジルコニア、または関連する酸化物のものでもよい。研磨粒子は一般に、特定のタイプのウエハおよびウエハの表面にある材料を加工するのに有用であるタイプのものになるであろう。例えば、表面にあるタングステンフィーチャおよび誘電材料を含む基板が、シリカ研磨粒子を含むCMP工程により、あらかじめ加工されてもよい。
【0070】
ある洗浄工程によれば、表面に残留物を有するCMP基板がポリマー洗浄ブラシと接触し、記載の洗浄溶液が洗浄ブラシおよび基板表面の上に分配される。ブラシと基板表面との間の相対的な動きが、所望の圧力量と共に実現される。CMP後洗浄工程は、CMP工程後に基板表面に存在する研磨粒子を含む残留物の量を低減するのに効果的である。
【実施例
【0071】
本明細書に記載の本発明の概念を示す実施例ならびに比較例を表1に挙げる:
【0072】
PETEOSウエハをIC 1010パッド上でコロイド状シリカベースのCMPスラリーを使用して研磨し、pHが異なる以下の5種類の製剤を使用して洗浄した:コントロール、pH6、クリーナー1、2および3(pH=2)および商品、dアンモニア、pH10。AMAT Reflexion LK研磨ツールで研磨を行い、KLAT SP-3ツール(欠陥サイズ≧0.1/0.065/0.060μm)およびKLAT eDR-7100欠陥検査ツール(顕微鏡、SEM、EDX)で欠陥検査を行った。
【0073】
Entegris製ブラシ(PVP1ARXR1)を使用し、メガソニック工程なしで洗浄を行った。
【0074】
図1は、pH<6およびpH>6で洗浄されたPETEOSウエハに関する欠陥データ、ならびにクリーナー1、2および3をpH~2で使用したときのみ検出されたブラシ跡を示す。
【0075】
図2は、低pHにおけるシリカ-ブラシ水素結合に基づくブラシ痕形成の機構を示す。
【0076】
シリカを負荷しているブラシは、FTIR分光法を使用して検出することもでき、そこではっきりと、1100cm-1付近のシリカSi-O-Siピークは、1016cm-1付近にあるブラシの特徴的なピークC-O-Cと区別することができる(図3)。
【0077】
この実験において使用されたH結合シリカブラシ洗浄添加剤を含むリストを表2に示す:
【0078】
これらの添加剤を含むいくつかのpH2製剤を使用して洗浄されたシリカ汚染されたブラシのFTIRスペクトルを図4に示す:
【0079】
5は、試料1~8(表1)(本発明、濃縮シリカ-H結合添加剤またはブラシ-H結合添加剤を使用)対これらの添加剤を含まない比較例の直接比較としてPETEOSウエハ上の欠陥を示す。
図1
図2
図3
図4
図5