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特許7108051液晶組成物、高分子液晶性化合物の製造方法、光吸収異方性膜、積層体および画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】液晶組成物、高分子液晶性化合物の製造方法、光吸収異方性膜、積層体および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220720BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220720BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220720BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
B32B27/00 Z
G02F1/1335 510
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020561319
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2019048062
(87)【国際公開番号】W WO2020129729
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2018239442
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】松山 拓史
(72)【発明者】
【氏名】星野 渉
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/124198(WO,A1)
【文献】特開2002-256031(JP,A)
【文献】特開2007-262195(JP,A)
【文献】特開2005-255805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 7/023
B32B 27/00
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子液晶性化合物および二色性物質を含有する液晶組成物であって、
前記高分子液晶性化合物が、下記式(1)で表される繰り返し単位(1)と、下記式(2)で表される繰り返し単位(2)と、を有する共重合体であり、
前記繰り返し単位(1)の含有量が、前記高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位の含有量に対して、90質量%以上であり、
前記繰り返し単位(2)の含有量が、前記高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位の含有量に対して、10質量%以下である、液晶組成物。
【化1】
前記式(1)中、P1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、M1は環状構造を3個以上含むメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
【化2】
前記式(2)中、P2およびP3はそれぞれ独立に繰り返し単位の主鎖を表し、L2およびL3はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、SP2およびSP3はそれぞれ独立に単結合またはスペーサー基を表し、M2およびM3はそれぞれ独立にメソゲン基を表し、nおよびmはそれぞれ独立に0または1の整数を表す。ただし、前記式(2)中、P2とP3が同一の基であり、L2とL3がいずれも単結合または同一の基であり、SP2とSP3がいずれも単結合または同一の基である。
【請求項2】
前記式(2)中、nおよびmの合計が1または2である、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
前記式(2)中、-(M2)-(M3)-で表される部分構造が2個以上の環状構造を含む、請求項1または2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
前記式(2)中、M2とM3が同一の基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項5】
前記繰り返し単位(2)の含有量が、前記高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位の含有量に対して、0.001~3質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の液晶組成物の製造方法であって、
下記式(1a)で表される単官能モノマーと、下記式(2a)で表される多官能モノマーと、を共重合して、前記液晶組成物に含まれる高分子液晶性化合物を得る工程を含み、
前記単官能モノマーの含有量が、前記高分子液晶性化合物の重合に使用する全モノマーの含有量に対して、90質量%以上であり、
前記多官能モノマーの含有量が、前記高分子液晶性化合物の重合に使用する全モノマーの含有量に対して、10質量%以下である、液晶組成物の製造方法。
【化3】
前記式(1a)中、P1aは重合性基を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、M1は環状構造を3個以上含むメソゲン基を表し、T1aは末端基を表す。
【化4】
前記式(2a)中、P2aおよびP3aはそれぞれ独立に重合性基を表し、L2およびL3はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、SP2およびSP3はそれぞれ独立に単結合またはスペーサー基を表し、M2およびM3はそれぞれ独立にメソゲン基を表し、nおよびmはそれぞれ独立に0または1の整数を表す。ただし、前記式(2a)中、P2aとP3aが同一の基であり、L2とL3がいずれも単結合または同一の基であり、SP2とSP3がいずれも単結合または同一の基である。
【請求項7】
前記式(2a)中、nおよびmの合計が1または2である、請求項に記載の液晶組成物の製造方法。
【請求項8】
前記式(2a)中、-(M2)-(M3)-で表される部分構造が2個以上の環状構造を含む、請求項またはに記載の液晶組成物の製造方法。
【請求項9】
前記式(2a)中、M2とM3が同一の基である、請求項のいずれか1項に記載の液晶組成物の製造方法。
【請求項10】
前記多官能モノマーの含有量が、前記高分子液晶性化合物の重合に使用する全モノマーの含有量に対して、0.001~3質量%である、請求項6~のいずれか1項に記載の液晶組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか1項に記載の液晶組成物を用いて形成される、光吸収異方性膜。
【請求項12】
基材と、前記基材上に設けられる請求項1に記載の光吸収異方性膜とを有する、積層体。
【請求項13】
さらに、前記光吸収異方性膜上に設けられるλ/4板を有する、請求項1に記載の積層体。
【請求項14】
請求項1に記載の光吸収異方性膜、または、請求項1もしくは請求項1に記載の積層体を有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶組成物、高分子液晶性化合物の製造方法、光吸収異方性膜、積層体および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー光や自然光を含む照射光の減衰機能、偏光機能、散乱機能、遮光機能などが必要となった際には、それぞれの機能ごとに異なった原理によって作動する装置を利用していた。そのため、上記の機能に対応する製品も、それぞれの機能別に異なった製造工程によって製造されていた。
例えば、液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)では、表示における旋光性および複屈折性を制御するために直線偏光板および円偏光板が用いられている。また、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:OLED)においても、外光の反射防止のために円偏光板が使用されている。
【0003】
従来、これらの偏光板(偏光素子)には、ヨウ素が二色性物質として広く使用されてきたが、ヨウ素の代わりに有機色素を二色性物質として使用する偏光素子についても検討されている。
例えば、特許文献1には、高分子液晶性化合物と二色性物質とを含有する液晶組成物において、主鎖からスペーサー基までのlogP値と、メソゲン基のlogP値との差が4以上となる繰り返し単位を有する高分子液晶性化合物を用いれば、配向度の高い光吸収異方性膜を形成できることが記載されている(段落0007等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/124198号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載された光吸収異方性膜について検討したところ、高い配向度を示すものの、光吸収異方性膜の形成に用いられる高分子液晶性化合物の種類によっては、高分子液晶性化合物を含む液晶組成物が基材上ではじかれて、光吸収異方性膜の面状均一性が不十分となったりする等の問題が生じることを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、面状均一性に優れ、かつ、高い配向度の光吸収異方性膜を形成できる液晶組成物、高分子液晶性化合物の製造方法、光吸収異方性膜、積層体および画像表示装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、二色性物質とともに配合する高分子液晶性化合物が特定構造の繰り返し単位(1)および(2)を有し、上記高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位の含有量に対して、繰り返し単位(1)の含有量が90質量%以上であり、かつ、繰り返し単位(2)の含有量が10質量%以下であれば、面状均一性に優れ、かつ、高い配向度の光吸収異方性膜を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0008】
[1]
高分子液晶性化合物および二色性物質を含有する液晶組成物であって、
上記高分子液晶性化合物が、後述の式(1)で表される繰り返し単位(1)と、後述の式(2)で表される繰り返し単位(2)と、を有する共重合体であり、
上記繰り返し単位(1)の含有量が、上記高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位の含有量に対して、90質量%以上であり、
上記繰り返し単位(2)の含有量が、上記高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位の含有量に対して、10質量%以下である、液晶組成物。
後述の式(1)中、P1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、M1は環状構造を3個以上含むメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
後述の式(2)中、P2およびP3はそれぞれ独立に繰り返し単位の主鎖を表し、L2およびL3はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、SP2およびSP3はそれぞれ独立に単結合またはスペーサー基を表し、M2およびM3はそれぞれ独立にメソゲン基を表し、nおよびmはそれぞれ独立に0または1の整数を表す。
[2]
後述の式(2)中、nおよびmの合計が1または2である、[1]に記載の液晶組成物。
[3]
後述の式(2)中、-(M2)-(M3)-で表される部分構造が2個以上の環状構造を含む、[1]または[2]に記載の液晶組成物。
[4]
後述の式(2)中、P2とP3が同一の基であり、L2とL3がいずれも単結合または同一の基であり、SP2とSP3がいずれも単結合または同一の基であり、M2とM3が同一の基である、[1]~[3]のいずれかに記載の液晶組成物。
[5]
上記繰り返し単位(2)の含有量が、上記高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位の含有量に対して、0.001~3質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の液晶組成物。
[6]
単官能モノマーと、多官能モノマーと、を共重合して、高分子液晶性化合物を得る工程を含み、
上記単官能モノマーの含有量が、上記高分子液晶性化合物の重合に使用する全モノマーの含有量に対して、90質量%以上であり、
上記多官能モノマーの含有量が、上記高分子液晶性化合物の重合に使用する全モノマーの含有量に対して、10質量%以下である、高分子液晶性化合物の製造方法。
[7]
上記単官能モノマーが、メソゲン基を含む、[6]に記載の高分子液晶性化合物の製造方法。
[8]
上記単官能モノマーが、後述の式(1a)で表される化合物である、[6]または[7]に記載の高分子液晶性化合物の製造方法。
後述の式(1a)中、P1aは重合性基を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、M1は環状構造を3個以上含むメソゲン基を表し、T1aは末端基を表す。
[9]
上記多官能モノマーが、後述の式(2a)で表される化合物である、[6]~[8]のいずれかに記載の高分子液晶性化合物の製造方法。
後述の式(2a)中、P2aおよびP3aはそれぞれ独立に重合性基を表し、L2およびL3はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、SP2およびSP3はそれぞれ独立に単結合またはスペーサー基を表し、M2およびM3はそれぞれ独立にメソゲン基を表し、nおよびmはそれぞれ独立に0または1の整数を表す。
[10]
後述の式(2a)中、nおよびmの合計が1または2である、[9]に記載の高分子液晶性化合物の製造方法。
[11]
後述の式(2a)中、-(M2)-(M3)-で表される部分構造が2個以上の環状構造を含む、[9]または[10]に記載の高分子液晶性化合物の製造方法。
[12]
後述の式(2a)中、P2aとP3aが同一の基であり、L2とL3がいずれも単結合または同一の基であり、SP2とSP3がいずれも単結合または同一の基であり、M2とM3が同一の基である、[8]~[11]のいずれかに記載の高分子液晶性化合物の製造方法。
[13]
上記多官能モノマーの含有量が、上記高分子液晶性化合物の重合に使用する全モノマーの含有量に対して、0.001~3質量%である、[6]~[12]のいずれかに記載の高分子液晶性化合物の製造方法。
[14]
[1]~[5]のいずれかに記載の液晶組成物を用いて形成される、光吸収異方性膜。
[15]
基材と、上記基材上に設けられる[14]に記載の光吸収異方性膜とを有する、積層体。
[16]
さらに、上記光吸収異方性膜上に設けられるλ/4板を有する、[15]に記載の積層体。
[17]
[14]に記載の光吸収異方性膜、または、[15]もしくは[16]に記載の積層体を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、面状均一性に優れ、かつ、高い配向度の光吸収異方性膜を形成できる液晶組成物、高分子液晶性化合物の製造方法、光吸収異方性膜、積層体および画像表示装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、「アクリル酸」および「メタクリル酸」の総称であり、(メタ)アクリロイルとは、「アクリロイル」および「メタクリロイル」の総称である。
【0011】
[液晶組成物]
本発明の液晶組成物は、高分子液晶性化合物および二色性物質を含有する液晶組成物であって、上記高分子液晶性化合物が、後述の式(1)で表される繰り返し単位(1)と、後述の式(2)で表される繰り返し単位(2)と、を有する共重合体であり、上記繰り返し単位(1)の含有量が、上記高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位の含有量に対して、90質量%以上であり、上記繰り返し単位(2)の含有量が、上記高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位の含有量に対して、10質量%以下である。
本発明の液晶組成物によれば、面状均一性に優れ、かつ、高い配向度の光吸収異方性膜を形成できる。この理由の詳細は明らかではないが、概ね以下のように推定している。
繰り返し単位(2)は、多官能モノマーを重合して、高分子液晶性化合物に導入される単位である。そのため、高分子液晶性化合物には、繰り返し単位(2)によって3次元架橋構造を形成した高分子量体が含まれていると考えられる。ここで、繰り返し単位(2)の含有量は繰り返し単位(1)の含有量と比較して少ないので、繰り返し単位(2)を含む高分子量体は、液晶組成物中に僅かに含まれていると考えられる。
このような高分子量体が僅かに存在することで、液晶組成物のはじきが抑制されて、面状均一性に優れた光吸収異方性膜が得られたと推測される。
また、高分子量体の含有量が僅かであるので、繰り返し単位(1)によってもたらされる配向度に優れるという効果が維持できたと推測される。
【0012】
〔高分子液晶性化合物〕
高分子液晶性化合物は、繰り返し単位(1)と繰り返し単位(2)との共重合体であり、ブロック重合体、交互重合体、ランダム重合体、および、グラフト重合体など、いずれの重合体であってもよい。
【0013】
<繰り返し単位(1)>
本発明の液晶組成物に含まれる高分子液晶性化合物は、下記式(1)で表される繰り返し単位(1)を含む。
【0014】
【化1】
【0015】
式(1)中、P1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、M1は環状構造を3個以上含むメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
【0016】
P1が表す繰り返し単位の主鎖としては、具体的には、例えば、下記式(P1-A)~(P1-D)で表される基が挙げられ、なかでも、原料となる単量体の多様性および取り扱いが容易である観点から、下記式(P1-A)で表される基が好ましい。
【0017】
【化2】
【0018】
式(P1-A)~(P1-D)において、「*」は、式(1)におけるL1との結合位置を表す。式(P1-A)~(P1-D)において、R、R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基を表す。上記アルキル基は、直鎖または分岐のアルキル基であってもよいし、環状構造を有するアルキル基(シクロアルキル基)であってもよい。また、上記アルキル基の炭素数は、1~5が好ましい。
式(P1-A)で表される基は、(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られるポリ(メタ)アクリル酸エステルの部分構造の一単位であることが好ましい。
式(P1-B)で表される基は、エポキシ基を有する化合物のエポキシ基を開環重合して形成されるエチレングリコール単位であることが好ましい。
式(P1-C)で表される基は、オキセタン基を有する化合物のオキセタン基を開環重合して形成されるプロピレングリコール単位であることが好ましい。
式(P1-D)で表される基は、アルコキシシリル基およびシラノール基の少なくとも一方の基を有する化合物の縮重合によって得られるポリシロキサンのシロキサン単位であることが好ましい。ここで、アルコキシシリル基およびシラノール基の少なくとも一方の基を有する化合物としては、式SiR(OR-で表される基を有する化合物が挙げられる。式中、Rは、(P1-D)におけるRと同義であり、複数のRはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表す。
【0019】
L1は、単結合または2価の連結基である。
L1が表す2価の連結基としては、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-C(O)NR-、-NRC(O)-、-S(O)-、および、-NR-などが挙げられる。式中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基(例えば、後述する置換基W)を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表わす。上記2価の連結基の具体例において、左側の結合手がP1と結合し、右側の結合手がSP1と結合する。
P1が式(P1-A)で表される基である場合には、L1は-C(O)O-で表される基が好ましい。
P1が式(P1-B)~(P1-D)で表される基である場合には、L1は単結合が好ましい。
【0020】
SP1が表すスペーサー基は、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む基、または、炭素数2~20の直鎖または分岐のアルキレン基が好ましい。ただし、上記アルキレン基は、-O-、-O-CO-、-CO-O-、または-O-CO-O-を含んでいてもよい。
SP1が表すスペーサー基は、液晶性を発現しやすいことや、原材料の入手性などの理由から、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む基であるがより好ましい。
ここで、SP1が表すオキシエチレン構造は、*-(CH-CHO)n1-*で表される基が好ましい。式中、n1は1~20の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。n1は、本発明の効果がより優れる理由から、2~10の整数であることが好ましく、2~4の整数がより好ましく、3であることが最も好ましい。
また、SP1が表すオキシプロピレン構造は、*-(CH(CH)-CHO)n2-*で表される基が好ましい。式中、n2は1~3の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
また、SP1が表すポリシロキサン構造は、*-(Si(CH-O)n3-*で表される基が好ましい。式中、n3は6~10の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
また、SP1が表すフッ化アルキレン構造は、*-(CF-CFn4-*で表される基が好ましい。式中、n4は6~10の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
【0021】
M1が表すメソゲン基とは、液晶形成に寄与する液晶分子の主要骨格を示す基である。液晶分子は、結晶状態と等方性液体状態の中間の状態(メソフェーズ)である液晶性を示す。メソゲン基については特に制限はなく、例えば、「Flussige Kristalle in Tabellen II」(VEB Deutsche Verlag fur Grundstoff Industrie,Leipzig、1984年刊)、特に第7頁~第16頁の記載、および、液晶便覧編集委員会編、液晶便覧(丸善、2000年刊)、特に第3章の記載、を参照することができる。
M1が表すメソゲン基は、環状構造を3個以上含み、3~5個含むのが好ましく、3~4個含むのがより好ましく、3個含むのが特に好ましい。
環状構造の具体例としては、芳香族炭化水素基、複素環基、および脂環式基が挙げられ、これらの中でも芳香族炭化水素基が好ましい。
【0022】
M1が表すメソゲン基としては、液晶性の発現、液晶相転移温度の調整、原料入手性および合成適性という観点、ならびに、本発明の効果がより優れるから、下記式(M1-A)または下記式(M1-B)で表される基が好ましく、式(M1-B)で表される基がより好ましい。
【0023】
【化3】
【0024】
式(M1-A)中、A1は、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。これらの基は、アルキル基、フッ化アルキル基またはアルコキシ基または後述する置換基Wなどの置換基で置換されていてもよい。
A1で表される2価の基は、4~6員環であることが好ましい。また、A1で表される2価の基は、単環でも、縮環であってもよい。
*は、SP1またはT1との結合位置を表す。
【0025】
A1が表す2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、フルオレン-ジイル基、アントラセン-ジイル基およびテトラセン-ジイル基などが挙げられ、メソゲン骨格の設計の多様性や原材料の入手性などの観点から、フェニレン基またはナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
【0026】
A1が表す2価の複素環基としては、芳香族または非芳香族のいずれであってもよいが、配向度がより向上するという観点から、2価の芳香族複素環基であることが好ましい。
2価の芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
2価の芳香族複素環基の具体例としては、例えば、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、ピリダジン-ジイル基、イミダゾール-ジイル基、チエニレン(チオフェン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、オキサゾール-ジイル基、チアゾール-ジイル基、オキサジアゾール-ジイル基、ベンゾチアゾール-ジイル基、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、チエノチアゾール-ジイル基、チアゾロチアゾール-ジイル基、チエノチオフェン-ジイル基、および、チエノオキサゾール-ジイル基などが挙げられる。
【0027】
A1が表す2価の脂環式基の具体例としては、シクロペンチレン基およびシクロへキシレン基などが挙げられる。
【0028】
式(M1-A)中、a1は3~10の整数を表す。複数のA1は同一でも異なっていてもよい。
【0029】
式(M1-B)中、A2およびA3はそれぞれ独立に、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。A2およびA3の具体例および好適態様は、式(M1-A)のA1と同様であるので、その説明を省略する。
式(M1-B)中、a2は2~10の整数を表し、複数のA2は同一でも異なっていてもよく、複数のLA1は同一でも異なっていてもよい。a2は、本発明の効果がより優れる理由から、2であることがより好ましい。
式(M1-B)中、複数のLA1はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基であり、複数のLA1のうち少なくとも1つが2価の連結基である。a2が2である場合、本発明の効果がより優れる理由から、2つのLA1のうち、一方が2価の連結基であり、他方が単結合であることが好ましい。
【0030】
式(M1-B)中、LA1が表す2価の連結基としては、-O-、-(CH-、-(CF-、-Si(CH-、-(Si(CHO)-、-(OSi(CH-(gは1~10の整数を表す。)、-N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)-C(Z’)-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-C(O)O-、-N(Z)C(O)-、-C(O)N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)O-、-O-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)N(Z”)-、-N(Z”)-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)-S-、-S-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-N=C(Z’)-(Z、Z’、Z”は独立に、水素、炭素数1~4のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、または、ハロゲン原子を表す。)、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、-SC(O)-、および、-C(O)S-などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、-C(O)O-が好ましい。LA1は、これらの基を2つ以上組み合わせた基であってもよい。
【0031】
M1の具体例としては、例えば以下の構造が挙げられる。なお、下記具体例において、「Ac」は、アセチル基を表す。
【0032】
【化4】
【0033】
【化5】
【0034】
T1が表す末端基としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数1~10のアシルアミノ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数1~10のスルホニルアミノ基、炭素数1~10のスルファモイル基、炭素数1~10のカルバモイル基、炭素数1~10のスルフィニル基、および、炭素数1~10のウレイド基、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基などが挙げられる。T1は、これらの基を2つ以上組み合わせた基であってもよい。
上記(メタ)アクリロイルオキシ基含有基としては、例えば、-L-A(Lは単結合又は連結基を表す。連結基の具体例は上述したL1及びSP1と同じである。Aは(メタ)アクリロイルオキシ基を表す)で表される基が挙げられる。
T1は、本発明の効果がより優れる理由から、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。これらの末端基は、これらの基、または、特開2010-244038号公報に記載の重合性基によって、さらに置換されていてもよい。
T1の主鎖の原子数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましく、1~7が特に好ましい。T1の主鎖の原子数が20以下であることで、光吸収異方性膜の配向度がより向上する。ここで、T1おける「主鎖」とは、M1と結合する最も長い分子鎖を意味し、水素原子はT1の主鎖の原子数にカウントしない。例えば、T1がn-ブチル基である場合には主鎖の原子数は4であり、T1がsec-ブチル基である場合の主鎖の原子数は3である。
【0035】
繰り返し単位(1)の含有量は、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位の含有量(100質量%)に対して、90質量%以上であり、本発明の効果がより発揮される点から、95~99.999質量%が好ましく、97~99.95質量%がより好ましい。
本発明において、高分子液晶性化合物に含まれる各繰り返し単位の含有量は、各繰り返し単位を得るために使用される各単量体の仕込み量(質量)に基づいて算出される。
繰り返し単位(1)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。高分子液晶性化合物が繰り返し単位(1)を2種以上含むと、高分子液晶性化合物の溶媒に対する溶解性が向上すること、および、液晶相転移温度の調整が容易になることなどの利点がある。繰り返し単位(1)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0036】
繰り返し単位(1)を2種以上含む場合には、T1に重合性基を含まない繰り返し単位(1)と、T1に重合性基を含む繰り返し単位(1)と、を併用してもよい。これにより、光吸収異方性膜の硬化性がより向上する。
この場合、高分子液晶性化合物中における、T1に重合性基を含まない繰り返し単位(1)に対する、T1に重合性基を含む繰り返し単位(1)の割合(T1に重合性基を含む繰り返し単位(1)/T1に重合性基を含まない繰り返し単位(1))が、質量比で0.005~4が好ましく、0.01~2.4がより好ましい。質量比が4以下であると、配向度に優れるという利点がある。質量比が0.05以上であると、光吸収異方性膜の硬化性がより向上する。
【0037】
<繰り返し単位(2)>
本発明の液晶組成物に含まれる高分子液晶性化合物は、下記式(2)で表される繰り返し単位(2)を含む。
【0038】
【化6】
【0039】
式(2)中、P2およびP3はそれぞれ独立に繰り返し単位の主鎖を表し、L2およびL3はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、SP2およびSP3はそれぞれ独立に単結合またはスペーサー基を表し、M2およびM3はそれぞれ独立にメソゲン基を表し、nおよびmは0または1の整数を表す。
【0040】
P2およびP3の具体例および好適態様は、式(1)のP1と同様であるので、その説明を省略する。P2およびP3は、同一の基であってもよいし、互いに異なる基であってもよいが、光吸収異方性膜の配向度がより向上する点から、同一の基であるのが好ましい。
L2およびL3が2価の連結基である場合の具体例および好適態様は、式(1)のL1と同様であるので、その説明を省略する。L2およびL3は、いずれも単結合であってもよいし、同一の基であってもよいし、互いに異なる基であってもよいが、光吸収異方性膜の配向度がより向上する点から、いずれも単結合または同一の基であるのが好ましく、同一の基であるのがより好ましい。
SP2およびSP3がスペーサー基である場合の具体例および好適態様は、式(1)のSP1と同様であるので、その説明を省略する。SP2およびSP3は、いずれも単結合であってもよいし、同一の基であってもよいし、互いに異なる基であってもよいが、光吸収異方性膜の配向度がより向上する点から、いずれも単結合または同一の基であるのが好ましく、同一の基であるのがより好ましい。
ここで、式(2)における同一の基とは、各基が結合する向きを問わずに化学構造が同一であるという意味であり、例えば、SP2が*-CH-CH-O-**(*はL2との結合位置を表し、**はM2との結合位置を表す。)であり、SP3が*-O-CH-CH-**(*はM3との結合位置を表し、**はL3との結合位置を表す。)である場合も、同一の基である。
【0041】
nおよびmはそれぞれ独立に、0または1の整数であり、光吸収異方性膜の配向度がより向上する点から、1であるのが好ましい。
nおよびmは、同一であっても、異なっていてもよいが、光吸収異方性膜の配向度がより向上する点から、いずれも1であるのが好ましい。
nおよびmの合計は、光吸収異方性膜の配向度がより向上する点から、1または2であるのが好ましく(すなわち、式(2)で表される繰り返し単位がメソゲン基を有すること)、2であるのがより好ましい。
M2およびM3が表すメソゲン基の定義は、式(1)のM1で説明したメソゲン基の定義と同様である。
【0042】
-(M2)-(M3)-で表される部分構造は、光吸収異方性膜の配向度がより向上する点から、環状構造を有するのが好ましい。この場合、光吸収異方性膜の配向度がより向上する点から、-(M2)-(M3)-で表される部分構造における環状構造の個数は、2個以上が好ましく、2~8個がより好ましく、2~6個がさらに好ましく、2~4個が特に好ましく、4個が最も好ましい。
M2およびM3が表すメソゲン基はそれぞれ独立に、光吸収異方性膜の配向度がより向上する点から、環状構造を1個以上含むのが好ましく、2~4個含むのが好ましく、2~3個含むのがより好ましく、2個含むのが特に好ましい。
環状構造の具体例としては、芳香族炭化水素基、複素環基、および脂環式基が挙げられ、これらの中でも芳香族炭化水素基が好ましい。
M2およびM3は、同一の基であってもよいし、互いに異なる基であってもよいが、光吸収異方性膜の配向度がより向上する点から、同一の基であるのが好ましい。
【0043】
M2およびM3が表すメソゲン基としては、液晶性の発現、液晶相転移温度の調整、原料入手性および合成適性という観点、ならびに、本発明の効果がより優れるから、下記式(M2-A)または下記式(M2-B)で表される基が好ましく、式(M2-B)で表される基がより好ましい。
【0044】
【化7】
【0045】
式(M2-A)中、A4は、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。これらの基は、アルキル基、フッ化アルキル基またはアルコキシ基または後述する置換基Wなどの置換基で置換されていてもよい。
A4で表される2価の基は、4~6員環であることが好ましい。また、A4でされる2価の基は、単環でも、縮環であってもよい。
*は、M2で表されるメソゲン基である場合には、SP2またはT2との結合位置を表し、M3で表されるメソゲン基である場合には、SP3またはT3との結合位置を表す。
【0046】
A4が表す2価の芳香族炭化水素基、2価の複素環基、および、2価の脂環式基の具体例および好適態様は、上述の式(M1-A)のA1と同様であるので、その説明を省略する。
【0047】
式(M2-A)中、a3は1~4(好ましくは2~4、より好ましくは2)の整数を表す。a3が2以上の場合、複数のA4は同一でも異なっていてもよい。
【0048】
式(M2-B)中、A5およびA6はそれぞれ独立に、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。A5およびA6の具体例および好適態様は、式(M2-A)のA4と同様であるので、その説明を省略する。
式(M2-B)中、a4は1~3の整数を表し、a4が2以上の場合、複数のA5は同一でも異なっていてもよく、複数のLA2は同一でも異なっていてもよい。a4は、本発明の効果がより優れる理由から、1であることがより好ましい。
式(M2-B)中、a4が1である場合には、LA2は2価の連結基である。a4が2以上である場合には、複数のLA2はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基であり、複数のLA2のうち少なくとも1つが2価の連結基である。
【0049】
式(M2-B)中、LA2が表す2価の連結基の具体例および好適態様は、上述の式(M1-A)のLA1と同様であるので、その説明を省略する。
【0050】
M2およびM3の具体例としては、例えば以下の構造が挙げられる。なお、下記具体例において、「Ac」は、アセチル基を表す。
【0051】
【化8】
【0052】
【化9】
【0053】
特に、繰り返し単位(2)は、P2とP3が同一の基であり、L2とL3がいずれも単結合または同一の基であり、SP2とSP3がいずれも単結合または同一の基であり、M2とM3が同一の基であるのが好ましい。これにより、光吸収異方性膜の配向度がより向上する。
【0054】
繰り返し単位(2)の含有量は、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位の含有量(100質量%)に対して、10質量%以下であり、本発明の効果がより発揮される点から、0.001~5質量%が好ましく、0.05~3質量%がより好ましい。
繰り返し単位(2)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位(2)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0055】
<置換基W>
本明細書における置換基Wについて記載する。
置換基Wとしては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(例えば、tert-ブチル基)(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルまたはアリールスルフィニル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールまたはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(-B(OH)2)、ホスファト基(-OPO(OH)2)、スルファト基(-OSO3H)、その他の公知の置換基などが挙げられる。
なお、置換基の詳細については、特開2007-234651号公報の段落[0023]に記載される。
【0056】
<物性>
高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、1000~500000が好ましく、2000~300000がより好ましい。高分子液晶性化合物のMwが上記範囲内にあれば、高分子液晶性化合物の取り扱いが容易になる。
特に、塗布時のクラック抑制の観点から、高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000以上が好ましく、10000~300000がより好ましい。
また、配向度の温度ラチチュードの観点から、高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000未満が好ましく、2000以上10000未満が好ましい。
ここで、本発明における重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により測定された値である。
・溶媒(溶離液):N-メチルピロリドン
・装置名:TOSOH HLC-8220GPC
・カラム:TOSOH TSKgelSuperAWM-H(6mm×15cm)を3本接続して使用
・カラム温度:25℃
・試料濃度:0.1質量%
・流速:0.35mL/min
・校正曲線:TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000~1050(Mw/Mn=1.03~1.06)までの7サンプルによる校正曲線を使用
【0057】
高分子液晶性化合物の液晶性は、ネマチック性およびスメクチック性のいずれを示してもよいが、少なくともネマチック性を示すことが好ましい。
ネマチック相を示す温度範囲は、室温(23℃)~450℃であることが好ましく、取り扱いや製造適性の観点から、50~400℃であることが好ましい。
【0058】
〔二色性物質〕
本発明の液晶組成物が含有する二色性物質は、特に限定されず、可視光吸収物質(二色性色素)、発光物質(蛍光物質、燐光物質)、紫外線吸収物質、赤外線吸収物質、非線形光学物質、カーボンナノチューブ、無機物質(例えば量子ロッド)、などが挙げられ、従来公知の二色性物質(二色性色素)を使用することができる。
具体的には、例えば、特開2013-228706号公報の[0067]~[0071]段落、特開2013-227532号公報の[0008]~[0026]段落、特開2013-209367号公報の[0008]~[0015]段落、特開2013-14883号公報の[0045]~[0058]段落、特開2013-109090号公報の[0012]~[0029]段落、特開2013-101328号公報の[0009]~[0017]段落、特開2013-37353号公報の[0051]~[0065]段落、特開2012-63387号公報の[0049]~[0073]段落、特開平11-305036号公報の[0016]~[0018]段落、特開2001-133630号公報の[0009]~[0011]段落、特開2011-215337号公報の[0030]~[0169]、特開2010-106242号公報の[0021]~[0075]段落、特開2010-215846号公報の[0011]~[0025]段落、特開2011-048311号公報の[0017]~[0069]段落、特開2011-213610号公報の[0013]~[0133]段落、特開2011-237513号公報の[0074]~[0246]段落、特願2015-001425号公報の[0022]~[0080]段落、特願2016-006502号公報の[0005]~[0051段落]、WO2016/060173号の[0005]~[0041]段落、WO2016/136561号の[0008]~[0062]段落、WO2017/154835号の[0014]~[0033]段落、WO2017/154695号の[0014]~[0033]段落、WO2017/195833号の[0013]~[0037]段落、WO2018/164252号の[0014]~[0034]段落などに記載された二色性色素が挙げられる。
【0059】
本発明においては、2種以上の二色性物質を併用してもよく、例えば、光吸収異方性膜を黒色に近づける観点から、波長370~550nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の色素化合物と、波長500~700nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の色素化合物とを併用することが好ましい。
【0060】
本発明においては、耐押圧性がより良好となる理由から、二色性物質が架橋性基を有していることが好ましい。
架橋性基としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、スチリル基などが挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0061】
二色性物質の含有量は、光吸収異方性膜の配向度および均一性のバランスが良好となる観点から、高分子液晶性化合物100質量部に対して2~400質量部であることが好ましく、3~300質量部であることがより好ましく、4~200質量部であることがさらに好ましい。
【0062】
〔重合開始剤〕
本発明の液晶組成物は、重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤としては特に制限はないが、感光性を有する化合物、すなわち光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、各種の化合物を特に制限なく使用できる。光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号および同2951758号の各明細書)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報および米国特許第4239850号明細書)、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書)、および、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報および特開平10-29997号公報)などが挙げられる。
このような光重合開始剤としては、市販品も用いることができ、BASF社製のイルガキュア(IRGACURE)184、907、369、651、819、OXE-01およびOXE-02などが挙げられる。
本発明の液晶組成物が重合開始剤を含有する場合、重合開始剤の含有量は、液晶組成物中の上記二色性物質と上記高分子液晶性化合物との合計100質量部に対し、0.01~30質量部が好ましく、0.1~15質量部が好ましい。重合開始剤の含有量が0.01質量部以上であることで、光吸収異方性膜の耐久性が良好となり、30質量部以下であることで、光吸収異方性膜の配向が良好となる。
【0063】
〔溶媒〕
本発明の液晶組成物は、作業性等の観点から、溶媒を含有するのが好ましい。
溶媒としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロピラン、ジオキソランなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチルなど)、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1,2-ジメトキシエタンなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンなど)、および、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジンなど)などの有機溶媒、ならびに、水が挙げられる。これの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの溶媒のうち、溶解性に優れるという効果を活かす観点から、ケトン類(特にシクロペンタノン、シクロヘキサノン)、エーテル類(特にテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロピラン、ジオキソラン)、および、アミド類(特に、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン)が好ましい。
本発明の液晶組成物が溶媒を含有する場合、溶媒の含有量は、液晶組成物の全質量に対して、80~99質量%が好ましく、83~98質量%がより好ましく、85~96質量%がさらに好ましい。
【0064】
〔界面改良剤〕
本発明の液晶組成物は、界面改良剤を含むことが好ましい。界面改良剤を含むことにより、塗布表面の平滑性が向上し、配向度が向上したり、ハジキおよびムラを抑制して、面内の均一性の向上が見込まれる。
界面改良剤としては、液晶性化合物を塗布表面側で水平にさせるものが好ましく、特開2011-237513号公報の[0253]~[0293]段落に記載の化合物(水平配向剤)を用いることができる。また、特開2007-272185号公報の[0018]~[0043]等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマーも用いることができる。界面改良剤としては、これら以外の化合物を用いてもよい。
本発明の液晶組成物が界面改良剤を含有する場合、界面改良剤の含有量は、液晶組成物中の上記二色性物質と上記高分子液晶性化合物との合計100質量部に対し、0.001~5質量部が好ましく、0.01~3質量部が好ましい。
【0065】
[高分子液晶性化合物の製造方法]
本発明の高分子液晶性化合物の製造方法は、単官能モノマーと、多官能モノマーと、を共重合して、高分子液晶性化合物を得る工程を含み、上記単官能モノマーの含有量が、上記高分子液晶性化合物の重合に使用する全モノマーの含有量に対して、90質量%以上であり、上記多官能モノマーの含有量が、上記高分子液晶性化合物の重合に使用する全モノマーの含有量に対して、10質量%以下である。
本製造方法によって得られる高分子液晶性化合物には、上述の本発明の液晶組成物に含まれる高分子液晶性化合物と同様に、高分子量体が僅かに含まれていると推測される。そのため、本製造方法によって得られる高分子液晶性化合物を含む液晶組成物を用いれば、面状均一性に優れ、高い配向度の光吸収異方性膜を形成できる。
上述の本発明の液晶組成物に含まれる高分子液晶性化合物は、例えば、本製造方法によって製造できる。
【0066】
〔単官能モノマー〕
本発明において、単官能モノマーとは、重合性基を1個のみ含むモノマーを意味する。
単官能モノマーは、光吸収異方性膜の配向度がより向上する点から、メソゲン基を含むのが好ましく、環状構造を3個以上含むメソゲン基を含むのがより好ましく、下記式(1a)で表される化合物であるのが特に好ましい。環状構造の具体例およびメソゲン基の定義は、式(1)のM1で説明した通りであるので、その説明を省略する。
【0067】
【化10】
【0068】
式(1a)中、P1aは重合性基を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、M1は環状構造を3個以上含むメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
【0069】
P1aが表す重合性基としては、下記式(P1a-A)~(P1a-D)で表される基が挙げられ、中でも、下記式(P1a-A)で表される基が好ましい。
【0070】
【化11】
【0071】
式(P1a-A)~(P1a-D)において、「*」は、式(1a)におけるL1との結合位置を表す。
式(P1a-A)において、Rは水素原子またはメチル基を表す。式(P1a-A)で表される基は、(メタ)アクリル酸エステルの部分構造であることが好ましい。
式(P1a-B)で表される基は、エポキシ基を有する化合物の部分構造である。
式(P1a-C)で表される基は、オキセタン基を有する化合物の部分構造である。
式(P1a-D)で表される基は、アルコキシシリル基およびシラノール基の少なくとも一方の基を有する化合物の部分構造である。
式(P1a-A)~(P1a-D)におけるR、R、RおよびRはそれぞれ、式(P1-A)~(P1-D)におけるR、R、RおよびRと同義である。式(P1a-D)におけるRは、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表す。
【0072】
式(1a)におけるL1の具体例および好適態様は、式(1)のL1と同様であるので、その説明を省略する。
式(1a)におけるSP1の具体例および好適態様は、式(1)のSP1と同様であるので、その説明を省略する。
式(1a)におけるM1の具体例および好適態様は、式(1)のM1と同様であるので、その説明を省略する。
【0073】
T1aが表す末端基は、重合性基を含まない。重合性基の具体例は上述の通りである。
T1aが表す末端基としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数1~10のアシルアミノ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数1~10のスルホニルアミノ基、炭素数1~10のスルファモイル基、炭素数1~10のカルバモイル基、炭素数1~10のスルフィニル基、および、炭素数1~10のウレイド基などが挙げられる。T1aは、これらの基を2つ以上組み合わせた基であってもよい。
T1aは、本発明の効果がより優れる理由から、炭素数1~10のアルコキシ基(より好ましくは炭素数1~5のアルコキシ基、特に好ましくはメトキシ基である)、または、炭素数1~10のアルコキシ基と炭素数1~10のアシルオキシ基とを組み合わせた基であって末端がハロゲン原子で置換された基(例えば、*-O-R-O-C(O)-R-Xで表される基。RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表し、*はM1との結合位置を表す。)であるのが好ましい。
【0074】
単官能モノマーの含有量は、高分子液晶性化合物の重合に使用する全モノマーの含有量(100質量%)に対して、90質量%以上であり、本発明の効果がより発揮される点から、95~99.999質量%が好ましく、97~99.95質量%がより好ましい。
単官能モノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。単官能モノマーを2種以上使用すると、得られる高分子液晶性化合物の溶媒に対する溶解性が向上すること、および、液晶相転移温度の調整が容易になることなどの利点がある。単官能モノマーを2種以上使用する場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0075】
〔多官能モノマー〕
本発明において、多官能モノマーとは、重合性基を2個以上含むモノマーを意味する。
多官能モノマーは、光吸収異方性膜の配向度がより向上する点から、下記式(2a)で表される化合物であるのが好ましい。
【0076】
【化12】
【0077】
式(2a)中、P2aおよびP3aはそれぞれ独立に重合性基を表し、L2およびL3はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、SP2およびSP3はそれぞれ独立に単結合またはスペーサー基を表し、M2およびM3はそれぞれ独立にメソゲン基を表し、nおよびmはそれぞれ独立に0または1の整数を表す。
【0078】
式(2a)におけるP2aおよびP3aの具体例および好適態様は、式(1a)のP1aと同様であるので、その説明を省略する。P2aおよびP3aは、同一の基であってもよいし、互いに異なる基であってもよいが、光吸収異方性膜の配向度がより向上する点から、同一の基であるのが好ましい。
式(2a)におけるL2およびL3が2価の連結基である場合の具体例および好適態様は、式(2)のL2およびL3と同様であるので、その説明を省略する。L2およびL3は、いずれも単結合であってもよいし、同一の基であってもよいし、互いに異なる基であってもよいが、光吸収異方性膜の配向度がより向上する点から、いずれも単結合または同一の基であるのが好ましく、同一の基であるのがより好ましい。
式(2a)におけるSP2およびSP3がスペーサー基である場合の具体例および好適態様は、式(2)のSP2およびSP3と同様であるので、その説明を省略する。SP2およびSP3は、いずれも単結合であってもよいし、同一の基であってもよいし、互いに異なる基であってもよいが、光吸収異方性膜の配向度がより向上する点から、いずれも単結合または同一の基であるのが好ましく、同一の基であるのがより好ましい。
式(2a)におけるM2およびM3の具体例および好適態様(例えば、-(M2)-(M3)-で表される部分構造が2個以上の環状構造を含むのが好ましいことなど)は、式(2)のM2およびM3と同様であるので、その説明を省略する。
式(2a)におけるnおよびmの具体例および好適態様(例えば、nおよびmの合計が1または2であるのが好ましいことなど)は、式(2)のnおよびmと同様であるので、その説明を省略する。nおよびmは、同一であってもよいし、異なっていてもよいが、光吸収異方性膜の配向度がより向上する点から、いずれも1であるのが好ましい。
ここで、式(2a)における同一の基の定義は、式(2)と同様であるので、その説明を省略する。
【0079】
特に、多官能モノマーは、P2aとP3aが同一の基であり、L2とL3がいずれも単結合または同一の基であり、SP2とSP3がいずれも単結合または同一の基であり、M2とM3が同一の基であるのが好ましい。これにより、光吸収異方性膜の配向度がより向上する。
【0080】
多官能モノマーの含有量は、高分子液晶性化合物の重合に使用する全モノマーの含有量(100質量%)に対して、10質量%以下であり、本発明の効果がより発揮される点から、0.001~5質量%が好ましく、0.05~3質量%がより好ましい。
多官能モノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。多官能モノマーを2種以上使用する場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0081】
〔工程〕
単官能モノマーと多官能モノマーとを共重合する重合法としては特に限定されず、モノマーの種類によって公知の重合法から適宜選択すればよいが、ラジカル重合であるのが好ましい。
重合では、上記モノマーの他に、溶媒(例えば、水および/または有機溶媒)、重合開始剤、連鎖移動剤、キレート化剤、および、pH調整剤等を使用してもよい。
【0082】
単官能モノマーと多官能モノマーとを共重合することで、単官能モノマーに基づく繰り返し単位と、多官能モノマーに基づく繰り返し単位と、を有する高分子液晶性化合物が得られる。得られる高分子液晶性化合物は、多官能モノマーのP2aおよびP3aに相当する部位が架橋点となっている3次元架橋構造を有すると推測される。
ここで、上記共重合の後に、単官能モノマーに基づく繰り返し単位(好ましくは、繰り返し単位の側鎖)に、重合性基を導入する処理を行ってもよい。重合性基の具体例としては、上記式(1)のT1における重合性基が挙げられる。
【0083】
高分子液晶性化合物の製造方法の他の態様としては、単官能モノマーを単独で重合して、繰り返し単位(1)を得た後、多官能モノマーを用いて、繰り返し単位(1)と繰り返し単位(2)と共重合する方法が挙げられる。
【0084】
[光吸収異方性膜]
本発明の光吸収異方性膜は、上述した本発明の液晶組成物を用いて形成される光吸収異方性膜である。
本発明の光吸収異方性膜の製造方法の一例としては、上記液晶組成物を基材上に塗布して塗布膜を形成する工程(以下、「塗布膜形成工程」ともいう。)と、塗布膜に含まれる二色性物質を配向させる工程(以下、「配向工程」ともいう。)と、をこの順に含む方法が挙げられる。
以下、本発明の光吸収異方性膜を作製する製造方法の各工程について説明する。
【0085】
〔塗布膜形成工程〕
塗布膜形成工程は、上記液晶組成物を基材上に塗布して塗布膜を形成する工程である。
上述した溶媒を含有する液晶組成物を用いたり、液晶組成物を加熱などによって溶融液などの液状物としたものを用いたりすることにより、基材上に液晶組成物を塗布することが容易になる。
液晶組成物の塗布方法としては、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、および、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。
本態様では、液晶組成物が基材上に塗布されている例を示したが、これに限定されず、例えば、基材上に設けられた配向膜上に液晶組成物を塗布してもよい。基材および配向膜の詳細については後述する。
【0086】
〔配向工程〕
配向工程は、塗布膜に含まれる二色性物質を配向させる工程である。これにより、光吸収異方性膜が得られる。
配向工程は、乾燥処理を有していてもよい。乾燥処理によって、溶媒などの成分を塗布膜から除去することができる。乾燥処理は、塗布膜を室温下において所定時間放置する方法(例えば、自然乾燥)によって行われてもよいし、加熱および/または送風する方法によって行われてもよい。
ここで、液晶組成物に含まれる二色性物質は、上述した塗布膜形成工程または乾燥処理によって、配向する場合がある。例えば、液晶組成物が溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗布膜を乾燥して、塗布膜から溶媒を除去することで、光吸収異方性を持つ塗布膜(すなわち、光吸収異方性膜)が得られる。
【0087】
配向工程は、加熱処理を有することが好ましい。これにより、塗布膜に含まれる二色性物質を配向させることができるため、加熱処理後の塗布膜を光吸収異方性膜として好適に使用できる。
加熱処理は、製造適性などの面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。また、加熱時間は、1~300秒が好ましく、1~60秒がより好ましい。
【0088】
配向工程は、加熱処理後に実施される冷却処理を有していてもよい。冷却処理は、加熱後の塗布膜を室温(20~25℃)程度まで冷却する処理である。これにより、塗布膜に含まれる二色性物質の配向を固定することができる。冷却手段としては、特に限定されず、公知の方法により実施できる。
以上の工程によって、光吸収異方性膜を得ることができる。
なお、本態様では、塗布膜に含まれる二色性物質を配向する方法として、乾燥処理および加熱処理などを挙げているが、これに限定されず、公知の配向処理によって実施できる。
【0089】
〔他の工程〕
光吸収異方性膜の製造方法は、上記配向工程後に、光吸収異方性膜を硬化させる工程(以下、「硬化工程」ともいう。)を有していてもよい。
硬化工程は、例えば、加熱および/または光照射(露光)によって実施される。このなかでも、硬化工程は光照射によって実施されることが好ましい。
硬化に用いる光源は、赤外線、可視光または紫外線など、種々の光源を用いることが可能であるが、紫外線であることが好ましい。また、硬化時に加熱しながら紫外線を照射してもよいし、特定の波長のみを透過するフィルターを介して紫外線を照射してもよい。
また、露光は、窒素雰囲気下で行われてもよい。ラジカル重合によって光吸収異方性膜の硬化が進行する場合において、酸素による重合の阻害が低減されるため、窒素雰囲気下で露光することが好ましい。
【0090】
光吸収異方性膜の膜厚は、0.1~5.0μmが好ましく、0.3~1.5μmであることがより好ましい。液晶組成物中の二色性物質の濃度によるが、膜厚が0.1μm以上であると、優れた吸光度の光吸収異方性膜が得られ、膜厚が5.0μm以下であると、優れた透過率の光吸収異方性膜が得られる。
【0091】
[積層体]
本発明の積層体は、基材と、基材上に設けられる本発明の光吸収異方性膜とを有する。
また、本発明の積層体は、上記光吸収異方性膜上に、λ/4板を有していてもよい。
さらに、本発明の積層体は、上記基材と上記光吸収異方性膜との間に、配向膜を有していてもよい。
さらに、本発明の積層体は、上記光吸収異方性膜とλ/4板との間に、バリア層を有していてもよい。
以下、本発明の積層体を構成する各層について説明する。
【0092】
〔基材〕
基材としては、光吸収異方性膜の用途に応じて選択することができ、例えば、ガラスおよびポリマーフィルムが挙げられる。基材の光透過率は、80%以上であるのが好ましい。
基材としてポリマーフィルムを用いる場合には、光学的等方性のポリマーフィルムを用いるのが好ましい。ポリマーの具体例および好ましい態様は、特開2002-22942号公報の[0013]段落の記載を適用できる。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても国際公開第2000/26705号公報に記載の分子を修飾することで発現性を低下させたものを用いることもできる。
【0093】
〔光吸収異方性膜〕
光吸収異方性膜については、上述した通りであるので、その説明を省略する。
【0094】
〔λ/4板〕
「λ/4板」とは、λ/4機能を有する板であり、具体的には、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板である。
例えば、λ/4板が単層構造である態様としては、具体的には、延伸ポリマーフィルムや、支持体上にλ/4機能を有する光学異方性層を設けた位相差フィルムなどが挙げられ、また、λ/4板が複層構造である態様としては、具体的には、λ/4板とλ/2板とを積層してなる広帯域λ/4板が挙げられる。
λ/4板と光吸収異方性膜とは、接して設けられていてもよいし、λ/4板と光吸収異方性膜との間に、他の層が設けられていてもよい。このような層としては、密着性担保のための粘着層または接着層、およびバリア層が挙げられる。
【0095】
〔バリア層〕
本発明の積層体がバリア層を有する場合、バリア層は、光吸収異方性膜とλ/4板との間に設けられる。なお、光吸収異方性膜とλ/4板との間に、バリア層以外の他の層(例えば、粘着層または接着層)を有する場合には、バリア層は、例えば、光吸収異方性膜と他の層との間に設けることができる。
バリア層は、ガス遮断層(酸素遮断層)とも呼ばれ、大気中の酸素等のガス、水分、または、隣接する層に含まれる化合物等から光吸収異方性膜を保護する機能を有する。
バリア層については、特開2014-159124号公報の[0014]~[0054]段落、特開2017-121721号公報の[0042]~[0075]段落、特開2017-115076号公報の[0045]~[0054]段落、特開2012-213938号公報の[0010]~[0061]段落、特開2005-169994号公報の[0021]~[0031]段落の記載を参照できる。
【0096】
〔配向膜〕
本発明の積層体は、基材と光吸収異方性膜との間に、配向膜を有していてもよい。
配向膜は、配向膜上において本発明の液晶組成物に含まれる二色性物質を所望の配向状態とすることができるのであれば、どのような層でもよい。
有機化合物(好ましくはポリマー)の膜表面へのラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュアブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。なかでも、本発明では、配向膜のプレチルト角の制御し易さの点からはラビング処理により形成する配向膜が好ましく、配向の均一性の点からは光照射により形成する光配向膜も好ましい。
【0097】
<ラビング処理配向膜>
ラビング処理により形成される配向膜に用いられるポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明においては、ポリビニルアルコールまたはポリイミド、およびその誘導体が好ましく用いられる。配向膜については国際公開第2001/88574A1号公報の43頁24行~49頁8行の記載を参照することができる。配向膜の厚さは、0.01~10μmであることが好ましく、0.01~1μmであることがさらに好ましい。
【0098】
<光配向膜>
光照射により形成される配向膜に用いられる光配向材料としては、多数の文献などに記載がある。本発明においては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報、特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報、または、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミドもしくはエステルが好ましい例として挙げられる。より好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、または、エステルである。
【0099】
上記材料から形成した光配向膜に、直線偏光または非偏光照射を施し、光配向膜を製造する。
本明細書において、「直線偏光照射」「非偏光照射」とは、光配向材料に光反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光配向材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。光照射に用いる光のピーク波長は、200nm~700nmが好ましく、光のピーク波長が400nm以下の紫外光がより好ましい。
【0100】
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプおよびカーボンアークランプなどのランプ、各種のレーザー[例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーおよびYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザー]、発光ダイオード、ならびに、陰極線管などを挙げることができる。
【0101】
直線偏光を得る手段としては、偏光板(例えば、ヨウ素偏光板、二色色素偏光板、および、ワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例えば、グラントムソンプリズム)もしくはブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、または、偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルターまたは波長変換素子などを用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0102】
照射する光は、直線偏光の場合には、配向膜に対して上面、または裏面から配向膜表面に対して垂直、または斜めから光を照射する方法が採用される。光の入射角度は、光配向材料によって異なるが、0~90°(垂直)が好ましく、40~90°が好ましい。
非偏光の場合には、配向膜に対して、斜めから非偏光を照射する。その入射角度は、10~80°が好ましく、20~60°がより好ましく、30~50°がさらに好ましい。
照射時間は、1分~60分が好ましく、1分~10分がより好ましい。
【0103】
パターン化が必要な場合には、フォトマスクを用いた光照射をパターン作製に必要な回数施す方法、または、レーザー光走査によるパターンの書き込みによる方法を採用できる。
【0104】
〔用途〕
本発明の積層体は、偏光素子(偏光板)として使用でき、例えば、直線偏光板または円偏光板として使用できる。
本発明の積層体が上記λ/4板などの光学異方性層を有さない場合には、積層体は直線偏光板として使用できる。
一方、本発明の積層体が上記λ/4板を有する場合には、積層体は円偏光板として使用できる。
【0105】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、上述した光吸収異方性膜または上述した積層体を有する。
本発明の画像表示装置に用いられる表示素子は特に限定されず、例えば、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)表示パネル、および、プラズマディスプレイパネルなどが挙げられる。
これらのうち、液晶セルまたは有機EL表示パネルであるのが好ましく、液晶セルであるのがより好ましい。すなわち、本発明の画像表示装置としては、表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置であるのが好ましく、液晶表示装置であるのがより好ましい。
【0106】
〔液晶表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である液晶表示装置としては、上述した光吸収異方性膜と、液晶セルと、を有する態様が好ましく挙げられる。より好適には、上述した積層体(ただし、λ/4板を含まない)と、液晶セルと、を有する液晶表示装置である。
なお、本発明においては、液晶セルの両側に設けられる光吸収異方性膜(積層体)のうち、フロント側の偏光素子として本発明の光吸収異方性膜(積層体)を用いるのが好ましく、フロント側およびリア側の偏光素子として本発明の光吸収異方性膜(積層体)を用いるのがより好ましい。
以下に、液晶表示装置を構成する液晶セルについて詳述する。
【0107】
<液晶セル>
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、またはTN(Twisted Nematic)モードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60~120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT(Thin Film Transistor)液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2-176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58~59(1998)記載)および(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、およびPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006-215326号公報、および特表2008-538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10-54982号公報、特開平11-202323号公報、特開平9-292522号公報、特開平11-133408号公報、特開平11-305217号公報、特開平10-307291号公報などに開示されている。
【0108】
〔有機EL表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、光吸収異方性膜と、λ/4板と、有機EL表示パネルと、をこの順で有する態様が好適に挙げられる。
より好適には、視認側から、λ/4板を有する上述した積層体と、有機EL表示パネルと、をこの順に有する態様である。この場合には、積層体は、視認側から、基材、必要に応じて設けられる配向膜、光吸収異方性膜、必要に応じて設けられるバリア層、および、λ/4板の順に配置されている。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【実施例
【0109】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容および処理手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0110】
[単官能モノマー(1a-1)の合成]
〔化合物(1a-1-1)の合成〕
【0111】
【化13】
【0112】
2-クロロエトキシエトキシエタノール(365g)のノルマルブタノール(nBuOH)溶液(480mL)にブチルパラベン(300g)、および、炭酸カリウム(299g)を添加した。100℃で18時間攪拌した後、水(1050mL)を添加し、分液操作により反応液を洗浄した。得られた有機層に、22質量%水酸化ナトリウム水溶液(420g)を加え、50℃で3時間撹拌した。その後、室温に戻し、濃塩酸をpH3になるまで滴下し、分液操作により反応液を洗浄した。得られた有機層を、10℃以下に冷やしたイソプロピルアルコール(540mL)とノルマルヘキサン(1260mL)の混合溶液に滴下し、濾過操作を行うことで、白色固体である化合物(1a-1-1)を361g(2工程収率87%)得た。
H-NMR(Nuclear Magnetic Resonance)(溶媒:DMSO(ジメチルスルホキシド)-d6)δ(ppm):3.38-3.64(m,8H),3.73-3.79(m,2H),4.13-4.19(m,2H),4.58(br s,1H),6.98-7.05(m,2H),7.85-7.90(m,2H),12.63(br s,1H)
【0113】
〔化合物(1a-1-2)の合成〕
【0114】
【化14】
【0115】
化合物(1a-1-1)300gを、N-エチルピロリドン(NEP)(450mL)、および、酢酸エチル(800mL)に溶解させ、内温を5℃まで冷却した。そこに、3-クロロプロピオン酸クロリド(169g)を内温が15℃以上に上昇しないように滴下した。10℃で3時間撹拌した後、10質量%食塩水(1200mL)を加え、室温にて分液を行った。得られた有機層に、再び10質量%食塩水(1200mL)を加え、分液を行った。その後、有機層に、撹拌しながらメタノール(750mL)と水(750mL)を滴下し、15℃まで冷却してから、再び水(300mL)を滴下した。次に、濾過操作を行うことで、白色固体である化合物(1a-1-2)を332g(収率83%)得た。
H-NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):2.82(t,2H),3.65-3.83(m,8H),3.85-3.95(m,2H),4.15-4.25(m,2H),4.25-4.35(m,2H),6.93-7.00(m,2H),8.02-8.08(m,2H)
【0116】
〔化合物(1a-1-3)の合成〕
【0117】
【化15】
【0118】
メタンスルホニルクロリド(MsCl)(56g)の酢酸エチル溶液(253mL)を、内温0℃まで冷却した。そこに、化合物(1a-1-2)(168g)とジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(63g)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(930mg)の酢酸エチル溶液(253mL)を内温が10℃以上に上昇しないように滴下した。5℃で1時間撹拌した後、4-ヒドロキシ-4’-メトキシビフェニル(85g、ただし4,4’-ビフェノールを0.2質量%含有)、N-メチルイミダゾール(17g)を加え、ジイソプロピルエチルアミン(55g)を内温が10℃以上に上昇しないように滴下した。その後、室温で4時間撹拌した。食塩34gと0.5N塩酸水(660mL)を混合した水溶液を、反応液に加えて反応を停止し、分液操作を行った。抽出した有機層に、撹拌しながら、アセトニトリル(168mL)とメタノール(842mL)を加え、水(337mL)を滴下した。その後、0度まで冷却し、濾過操作を行うことで、白色固体である化合物(1a-1-3)219g(収率95%)を得た。
なお、式中、Meは、メチル基を表す。以下の式についても同様である。
H-NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):2.83(t,2H)3.65-3.80(m,8H),3.86(s,3H),3.87-3.95(m,2H),4.18-4.26(m,2H),4.27-4.35(m,2H),6.95-7.05(m,4H),7.22-7.28(m,2H),7.48-7.62(m,4H),8.14-8.18(m,2H)
【0119】
(4-ヒドロキシ-4’-メトキシビフェニルの合成)
上記1-1-3aの合成で使用した4-ヒドロキシ-4’-メトキシビフェニルは、次のようにして合成した。
4,4’-ビフェノール(55.8g)とヨウ化メチル(18.6mL)のジメチルスルフィド溶液(150mL)に、7.8質量%水酸化カリウム溶液(651g)を室温で加え、8時間撹拌した。反応液を、セライトを用いてろ過し、得られたろ液に濃塩酸(24mL)を滴下してから、ろ過操作を行うことで、4,4’-ビフェノールを含有する白色固体を得た。得られた白色固体をテトラヒドロフラン(100mL)に溶解させ、0.5N水酸化ナトリウム水溶液(80mL)とメタノール(50mL)を加えた後に、1N塩酸水(40mL)と水(20mL)を滴下して結晶を析出させ、ろ過操作を行うことで、4-ヒドロキシ-4’-メトキシビフェニルの白色固体(21g,収率35%)を得た。なお、高速液体クロマトグラフィーによる分析により白色固体中に、4,4’-ビフェノールが0.2質量%残存していることを確認した。
【0120】
(単官能モノマー(1a-1)の合成)
【0121】
【化16】
【0122】
【化17】
【0123】
化合物(1a-1-3)(160g)とジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(1300mg)を、酢酸エチル(180mL)、トルエン(176mL)、アセトニトリル(208)mLの混合溶液に溶解させた後、トリエチルアミン(TEA)(60g)を滴下した。60度で3時間撹拌した。室温まで冷却した後、1N塩酸水(288mL)を、反応液に加えて反応を停止し、分液操作を行った。抽出した有機層をフィルター濾過した後、撹拌しながら、メタノール(960mL)を滴下した。その後、0度まで冷却し、濾過操作を行うことで、白色固体である化合物(1a-1)(単官能モノマー(1a-1))138g(収率93%)を得た。化合物純度は98%であった。なお、高速液体クロマトグラフィーによる分析により白色固体中に、化合物(2a-1)(多官能モノマー(2a-1))が0.3質量%残存していることを確認した。
H-NMR(溶媒:CDCl)δ(ppm):3.68-3.80(m,6H),3.85(s,3H),3.87-3.94(m,2H),4.18-4.26(m,2H),4.32-4.38(m,2H),5.83(dd,1H),6.16(dd,1H),6.43(dd,1H),6.95-7.05(m,4H),7.22-7.28(m,2H),7.48-7.62(m,4H),8.13-8.20(m,2H)
【0124】
[単官能モノマー(1a-2)の合成]
【0125】
【化18】
【0126】
単官能モノマー(1a-2)は、国際公開第2018/124198号に記載の方法に従って合成をおこなった。
【0127】
[多官能モノマー(2a-1)の合成]
【0128】
【化19】
【0129】
メタンスルホニルクロリド(MsCl)(73.4mmol,5.7mL)のテトラヒドロフラン(THF)溶液(70mL)にジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(200mg)を加え、内温を-5℃まで冷却した。そこに、化合物2a-1-1(国際公開第2018/124198号に記載の方法で合成)(66.7mmol,21.6g)とジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(75.6mmol,13.0mL)のTHF溶液を内温が0℃以上に上昇しないように滴下した。-5℃で30分撹拌した後、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)(200mg)を加え、ジイソプロピルエチルアミン(75.6mmol,13.0mL)と、4,4’-ビフェノール(30mmol,5.59g)のテトラヒドロフラン(THF)およびジメチルアセトアミド(DMAc)溶液を内温が0℃以上に上昇しないように滴下した。その後、室温で4時間撹拌した。メタノール(5mL)を加えて反応を停止した後に、水と酢酸エチルを加えた。酢酸エチルで抽出した有機層を、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、酢酸エチルおよびヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体である化合物(2a-1)(多官能モノマー(2a-1))を12g得た。
【0130】
[多官能モノマー(2a-2)の合成]
【0131】
【化20】
【0132】
多官能モノマー(2a-2)は、公知の方法に従って合成した。
【0133】
[多官能モノマー(2a-3)]
【0134】
【化21】
【0135】
多官能モノマー(2a-3)は、東京化成工業株式会社製のテトラエチレングリコールジアクリラートを用いた。
【0136】
[多官能モノマー(2a-4)の合成]
【0137】
【化22】
【0138】
化合物(1a-2)(単官能モノマー(1a-2))(60g)とジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(1300mg)を、酢酸エチル(90mL)、トルエン(80mL)、アセトニトリル(104mL)の混合溶液に溶解させた後、トリエチルアミン(TEA)(30g)を滴下した。60℃で3時間撹拌した。室温まで冷却した後、1N塩酸水(140mL)を、反応液に加えて反応を停止し、分液操作を行った。抽出した有機層をフィルター濾過した後、撹拌しながら、メタノール(480mL)を滴下した。その後、0℃まで冷却し、濾過操作を行うことで、白色固体である化合物(2a-4)(多官能モノマー(2a-4))50gを得た。
【0139】
[高分子液晶性化合物1-1の製造]
【0140】
【化23】
【0141】
単官能モノマー(1a-1)(0.8g。ただし、多官能モノマー(2a-1)を0.3質量%含有)および単官能モノマー(1a-2)(0.2g)のDMAc溶液(3.3mL)を、窒素気流下、内温が80℃になるまで加熱した。そこに、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル(0.54mmol,0.012g)のDMAc溶液(0.5mL)を加え、80℃で2時間撹拌した。その後、H-NMRスペクトル測定にて重合性基の消失を確認し、室温まで冷却した。メタノールを加えてろ過を行い、残渣をメタノールで洗浄することで白色固体である化合物P1-1を0.90g得た。得られた化合物P1-1のクロロホルム溶液(7mL)に、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(50mg)、および、トリエチルアミン(EtN)(0.7mL)を加え、内温を50℃まで加熱した。50℃で9時間撹拌した後、H-NMRスペクトル測定にて原料の消失を確認し、室温へと冷却した。そこに、メタノールを加えてろ過を行い、残渣をメタノールで洗浄することで白色固体である高分子液晶性化合物1-1を0.8g得た。得られた高分子液晶性化合物1-1をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)で分析したところ、重量平均分子量(Mw)は17000(ポリスチレン換算)であった。
【0142】
[高分子液晶性化合物1-2~1-4の製造]
重合に使用した多官能モノマー(2a-1)の合計量が表1に示す量になるように、多官能モノマーを添加した以外は、高分子液晶性化合物1-1の製造と同様にして、高分子液晶性化合物1-2~1-4を合成した。
【0143】
[高分子液晶性化合物1-5の製造]
単官能モノマー(1a-1)に含まれていた多官能モノマー(2a-1)を除去するまでカラムクロマトグラフィーによる精製を繰り返した。このようにして得られた単官能モノマー(1a-1)と、単官能モノマー(1a-2)と、多官能モノマー(2a-2)と、を表1の配合割合になるように使用した以外は、高分子液晶性化合物1-1の製造と同様にして、高分子液晶性化合物1-5を合成した。
【0144】
[高分子液晶性化合物1-6の製造]
多官能モノマー(2a-2)の代わりに多官能モノマー(2a-3)を使用した以外は、高分子液晶性化合物1-5の製造と同様にして、高分子液晶性化合物1-6を合成した。
【0145】
[高分子液晶性化合物1-7の製造]
多官能モノマー(2a-2)の代わりに多官能モノマー(2a-4)を使用した以外は、高分子液晶性化合物1-5の製造と同様にして、高分子液晶性化合物1-7を合成した。
【0146】
[高分子液晶性化合物1-8の製造]
多官能モノマー(2a-2)を使用しなかった以外は、高分子液晶性化合物1-5の製造と同様にして、高分子液晶性化合物1-8を合成した。
【0147】
[高分子液晶性化合物1-9の製造]
重合に使用した多官能モノマー(2a-1)の合計量が表1に示す量になるように、多官能モノマーを添加した以外は、高分子液晶性化合物1-1の製造と同様にして、高分子液晶性化合物1-9を合成した。
【0148】
[高分子液晶性化合物1-10の製造]
多官能モノマー(2a-2)を使用しなかった以外は、高分子液晶性化合物1-5の製造と同様にして、高分子液晶性化合物1-10を合成した。
【0149】
高分子液晶性化合物1-1~1-10の構造を以下に示す。
なお、高分子液晶性化合物の式番号の右側に記した数値は、繰り返し単位の質量比を表す。具体的には、高分子液晶性化合物が3種の繰り返し単位を有する場合には、上段の繰り返し単位の質量:中段の繰り返し単位の質量:下段の繰り返し単位の質量、を意味する。また、高分子液晶性化合物が2種の繰り返し単位を有する場合には、上段の繰り返し単位の質量:下段の繰り返し単位の質量、を意味する。
【0150】
【化24】
【0151】
【化25】
【0152】
【化26】
【0153】
[実施例1]
〔配向膜の作製〕
ガラス基材(セントラル硝子社製、青板ガラス、サイズ300mm×300mm、厚み1.1mm)をアルカリ洗剤で洗浄し、次いで純水を注いだ後、ガラス基材を乾燥させた。
下記の配向膜形成用組成物1を#12のバーを用いて乾燥後のガラス基材上に塗布し、塗布した配向膜形成用組成物1を110℃で2分間乾燥して、ガラス基材上に塗布膜を形成した。
得られた塗布膜にラビング処理(ローラーの回転数:1000回転/スペーサー厚2.9mm、ステージ速度1.8m/分)を1回施して、ガラス基材上に配向膜1を作製した。
【0154】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜形成用組成物1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・変性ビニルアルコール(下記式(PVA-1)参照) 2.00質量部
・水 74.08質量部
・メタノール 23.86質量部
・光重合開始剤
(IRGACURE2959、BASF社製) 0.06質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0155】
【化27】
【0156】
〔光吸収異方性膜の作製〕
得られた配向膜1上に、下記の液晶組成物1を1000回転でスピンコートして、塗布膜を形成した。
塗布膜を室温で30秒間乾燥させた後、さらに180℃で15秒間加熱した。
次いで、塗布膜を室温になるまで冷却した後、80℃にて高圧水銀灯を用いて照度28mW/cm2の照射条件で60秒間照射することにより、配向膜1上に光吸収異方性膜1を作製した。
【0157】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶組成物1の組成(固形分中の二色性物質の含有量:25質量%)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記高分子液晶性化合物1-1 70質量部
・下記二色性物質D1 10質量部
・下記二色性物質D2 13.2質量部
・重合開始剤Irg-819(BASF社製) 0.5質量部
・下記界面改良剤F1 0.3質量部
・クロロホルム 1860質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0158】
【化28】
【0159】
【化29】
【0160】
[実施例2~7および比較例1~3]
液晶組成物における高分子液晶性化合物の種類を表1に示すように変更して得られた液晶組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、配向膜1上に光吸収異方性膜を作製した。
【0161】
[評価]
〔配向度〕
光学顕微鏡(株式会社ニコン製、製品名「ECLIPSE E600 POL」)の光源側に直線偏光子を挿入した状態で、サンプル台に実施例および比較例の各光吸収異方性膜をセットし、マルチチャンネル分光器(Ocean Optics社製、製品名「QE65000」)を用いて第1表に記載の波長域における光吸収異方性膜の吸光度を測定し、以下の式により配向度を算出した。結果を下記第1表に示す。
配向度:S=[(Az0/Ay0)-1]/[(Az0/Ay0)+2]
Az0:光吸収異方性膜の吸収軸方向の偏光に対する吸光度
Ay0:光吸収異方性膜の偏光軸方向の偏光に対する吸光度
【0162】
〔面状の均一性〕
クロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に、配向膜上に配置された光吸収異方性膜を挟持して観察し、この光吸収異方性膜を水平面内で回転させ、明暗の状態を確認した。明暗の状態より、塗布時のムラやハジキ、配向欠陥の有無を確認した。
A:目視で全体にムラ、ハジキが観察されない
B:目視で一部分にムラ、ハジキが観察される
C:目視で全体にムラ、ハジキが観察される
【0163】
【表1】
【0164】
表1に示すように、二色性物質と、上述の繰り返し単位(1)および上述の繰り返し単位(2)を有する高分子液晶性化合物と、を含む液晶組成物において、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位の含有量に対して、繰り返し単位(1)の含有量が90質量%以上であり、かつ、繰り返し単位(2)の含有量が10質量%以下であれば、面状均一性に優れ、かつ、高い配向度の光吸収異方性膜を形成できることが示された(実施例1~7)。
また、実施例2と実施例5との対比から、式(2)に相当する繰り返し単位において、P2およびP3に相当する基が同一の基であり、L2およびL3に相当する基が同一の基であり、SP2およびSP3に相当する基が同一の基であり、M2およびM3に相当する基が同一の基である高分子液晶性化合物を用いれば(実施例2)、より高い配向度の光吸収異方性膜を形成できることが示された。同様の傾向が、実施例1と実施例7との対比からも示された。
また、実施例2と実施例6との対比から、式(2)に相当する繰り返し単位がメソゲン基を含む高分子液晶性化合物を用いれば(実施例2)、より高い配向度の光吸収異方性膜を形成できることが示された。
これに対して、上述の繰り返し単位(2)を有しない高分子液晶性化合物を用いた場合、光吸収異方性膜の面状均一性が劣ることが示された(比較例1および3)。
また、上述の繰り返し単位(1)および上述の繰り返し単位(2)を有する高分子液晶性化合物を含む液晶組成物において、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位の含有量に対して、繰り返し単位(2)の含有量が10質量%を超えると、液晶組成物がゲル化して、各評価を実施できなかった(比較例2)。