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  • 特許-ハロゲン酸素酸溶液の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】ハロゲン酸素酸溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 11/04 20060101AFI20220720BHJP
   C07C 211/63 20060101ALI20220720BHJP
   C11D 7/18 20060101ALI20220720BHJP
   C11D 7/08 20060101ALI20220720BHJP
   C07C 209/68 20060101ALI20220720BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
C01B11/04
C07C211/63
C11D7/18
C11D7/08
C07C209/68
H01L21/304 647Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021156931
(22)【出願日】2021-09-27
(62)【分割の表示】P 2021551839の分割
【原出願日】2021-04-16
(65)【公開番号】P2022008572
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2020074063
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根岸 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】下田 享史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 聡洋
(72)【発明者】
【氏名】松田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森脇 正之
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/225541(WO,A1)
【文献】特開2008-285565(JP,A)
【文献】特開2010-031277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 11/04
C07C 209/68
C07C 211/63
C11D 7/08
C11D 7/18
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機アルカリ溶液とハロゲンを連続的に反応器内に供給して混合し、生じるハロゲン酸素酸を含む反応液を連続的に取り出す工程と、前記ハロゲン酸素酸を含む反応液を濾過する濾過工程を含む、ハロゲン酸素酸の製造方法であって、
前記反応液の液滞在時間が0.1~120分であり、
前記反応液の連続的な取り出しが、反応器内の反応液のpHが一定になってから行われ、
前記反応器内の反応液のpHが10.5~14.5であり、
前記反応器内の反応液の量を一定に保つ、製造方法
【請求項2】
前記連続的に取り出される反応液の量が、連続的に供給される前記有機アルカリ溶液と前記ハロゲンの量に対応する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ハロゲン酸素酸を含む反応液を保存する保存工程を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記有機アルカリ溶液の25℃におけるpHが10.5以上、14.5以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記保存工程における、保存時の25℃におけるpHが12.0以上、14.0未満である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記有機アルカリが水酸化オニウムであり、前記ハロゲン酸素酸がハロゲン酸素酸オニウムである、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記水酸化オニウムが水酸化第四級アンモニウムであり、前記ハロゲン酸素酸オニウムが次亜ハロゲン酸第四級アンモニウムである、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記水酸化第四級アンモニウムが水酸化テトラメチルアンモニウムであり、前記次亜ハロゲン酸第四級アンモニウムが次亜ハロゲン酸テトラメチルアンモニウムである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ハロゲンが塩素、臭素、次亜塩素酸、次亜臭素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、塩素酸、または臭素酸である、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン酸素酸溶液、例えば次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液の製造方法に関する。より具体的には、本発明は、保存安定性に優れた次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液のようなハロゲン酸素酸溶液を工業的に有利に製造する装置、方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子のデザインルールの微細化が進み、半導体素子製造工程における不純物管理に対する要求がより厳しくなっている。半導体素子の製造工程で発生する不純物は、製造工程毎に異なるため、製造工程毎に汚染源を特定し、さらに、その汚染源となる不純物の濃度を管理することが重要である。
また、半導体素子の製造効率を向上させるために、300ミリを超える大口径の半導体ウエハが使用されている。大口径の半導体ウエハでは、電子デバイスが作製されない端面部や裏面部の面積が小口径の半導体ウエハと比較して大きい。 そのため、金属配線を形
成する工程やバリアメタルを形成する工程において、半導体素子を形成する半導体ウエハ表面部だけでなく、端面部や裏面部などにも金属配線材料やバリアメタル材料(以下、ま
とめて「金属材料等」とする場合もある)が付着し易くなる。その結果、大口径の半導体
ウエハでは小口径のウエハに比べ、端面部や裏面部に付着する余剰の金属材料等の量が増加している。
【0003】
半導体ウエハの端面部や裏面部に付着した余剰の金属材料等は、金属配線やバリアメタル形成後の工程である酸素によるアッシング工程やプラズマによる ドライエッチング工
程において、金属、もしくは金属酸化物のパーティクルとして製造装置内を汚染し、クロスコンタミネーションの原因となる。そのため、端面部や裏面部に付着した金属材料等は、 次工程に持ち込む前に除去する必要があった。
これら金属材料等の中でも、白金、及びルテニウムに代表される貴金属類は、その後のエッチング工程や洗浄工程では酸化、溶解、除去され難くい。そのため、これら貴金属類は、他の金属材料よりも優先して半導体ウエハから除去することが好ましい。特に、ルテニウムは、配線材料に銅を使用した場合よりも抵抗値を低減可能という理由で、半導体素子のデザインルールが10nm以下の配線材料として多用されているため、不要な箇所から素早く除去することが望まれている。
【0004】
一般的に半導体ウエハの洗浄液として、酸化力が高い次亜塩素酸塩を利用した洗浄方法が提案されている。具体的には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用した方法が提案されている(特許文献1、2参照)。
しかしながら、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を洗浄液として使用する方法では、必然的に該洗浄液に含まれるナトリウムイオンが多くなる。その結果、半導体ウエハ等にナトリウムイオンが付着し易くなり、半導体の生産効率が低下するおそれがあった。
これに対して、ナトリウムを必須成分としない次亜塩素酸溶液(特許文献3参照)、または次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム水溶液(特許文献4参照)を使用した洗浄液の開発も行われている。
しかしながら、これら次亜塩素酸を使用した洗浄液(特許文献3参照)は金属膜や金属酸化物膜を備えた基板の洗浄に使用されるものであり、特に貴金属の除去を目的としているものではない。そのため、貴金属等の金属/金属酸化物膜の除去には適していない。
【0005】
一方、特許文献4に記載された次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を含む洗浄液も、フォトレジストや残査の洗浄のために使用される洗浄液であり、ルテニウムを含む
銅やアルミニウムの金属被覆は洗浄対象としていない。具体的に実施例においては、金属膜がエッチングされ難いことが示されている。特許文献5では、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液のpHを最適にすることにより、優れた保存安定性、エッチング性能が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-161381号公報
【文献】特開2009-081247号公報
【文献】特開2003-119494号公報
【文献】特開2005-227749号公報
【文献】国際公開第2019/225541号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献5には、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液の製造方法において、バッチ式の反応条件が示されている。しかし、その製造装置に関しては、一例として、バッチ反応装置が示されているだけであり、工業的に大量製造する場合の製造装置及び製造方法の詳細は示されておらず、より効率的な製造方法の開発が求められていた。
従って、本発明の目的は、有機アルカリ溶液とハロゲンとを反応させることによる、ハロゲン酸素酸溶液の製造に関して、工業的に有利な製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために研究を重ねた結果、有機アルカリ溶液とハロゲンを混合する反応器に、有機アルカリ溶液とハロゲンとを連続供給するとともに、反応器に設置した反応液の取り出し手段を用いて、連続的に反応液を取り出すことで、バッチ式反応よりも、より安定的、効率的にハロゲン酸素酸を工業的に製造する方法および製造装置を提供するものである。
【0009】
すなわち、本発明は以下の要旨を含む。
項1 有機アルカリ溶液とハロゲンを連続的に供給して混合し、生じるハロゲン酸素酸を含む反応液を連続的に取り出す工程を含む、ハロゲン酸素酸の製造方法。
項2 前記連続的に取り出される反応液の量が、連続的に供給される前記有機アルカリ溶液と前記ハロゲンの量に対応する、項1に記載の製造方法。
項3 前記ハロゲン酸素酸を含む反応液を濾過する濾過工程を含む、項1または2に記載の製造方法。
項4 前記ハロゲン酸素酸を含む反応液を保存する保存工程を含む、項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
項5 前記有機アルカリ溶液の25℃におけるpHが10.5以上、14.5以下である、項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
項6 前記保存工程における、保存時の25℃におけるpHが12.0以上、14.0未満である、項4に記載の製造方法。
項7 前記有機アルカリが水酸化オニウムであり、前記ハロゲン酸素酸がハロゲン酸素酸オニウムである、項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
項8 前記水酸化オニウムが水酸化第四級アンモニウムであり、前記ハロゲン酸素酸オニウムが次亜ハロゲン酸第四級アンモニウムである、項7に記載の製造方法。
項9 前記水酸化第四級アンモニウムが水酸化テトラメチルアンモニウムであり、前記次亜ハロゲン酸第四級アンモニウムが次亜ハロゲン酸テトラメチルアンモニウムである項8に記載の製造方法。
項10 前記ハロゲンが塩素、臭素、次亜塩素酸、次亜臭素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、塩素酸、または臭素酸である、項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
項11 反応器と、該反応器への有機アルカリ溶液供給手段及びハロゲン供給手段と、該反応器から反応液を外部に取り出すための反応液取り出し手段とを備えるハロゲン酸素酸の製造装置であって、
有機アルカリ溶液と、ハロゲンとが、それぞれ有機アルカリ溶液供給手段及びハロゲン供給手段により反応器に連続供給されて混合することにより、反応液としてハロゲン酸素酸を含む溶液が生成し、反応液取り出し手段により反応液を連続的に取り出す、ハロゲン酸素酸の製造装置。
項12 前記有機アルカリが、水酸化オニウムであり、前記ハロゲン酸素酸がハロゲン酸素酸オニウムである、項11に記載の製造装置。
項13 前記反応液取り出し手段により取り出された反応液の一部を反応器に戻す、反応液循環手段をさらに備える、項11または12に記載の製造装置。
項14 前記反応液取り出し手段により取り出される反応液の量が、前記有機アルカリ供給手段により供給される有機アルカリと、前記ハロゲン供給手段により供給されるハロゲンの量に対応する、項11~13のいずれか一項に記載の製造装置。
項15 反応器における反応液のpH測定手段、反応器における反応温度制御手段及び反応器における温度測定手段の少なくとも一つをさらに備える、項11~14のいずれか一項に記載の製造装置。
項16 前記反応器内に配置され、有機アルカリ溶液とハロゲンの混合を促進するスパージャーを前記ハロゲン供給手段が備える、項11~15のいずれか一項に記載の製造装置。
項17 前記反応器から取り出される反応液の25℃におけるpHが12.0~13.8である、項11~16のいずれか一項に記載の製造装置。
項18 前記反応器内のハロゲン酸素酸オニウムを含む反応液の25℃におけるpHが10.5~14.5である、項11~17のいずれか一項に記載の製造装置。
項19 前記反応器の容積が、有機アルカリ溶液の液滞在時間として0.1~120分を保つ大きさである、項11~18のいずれか一項に記載の製造装置。
項20 前記ハロゲンが、塩素、臭素、次亜塩素酸、次亜臭素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、塩素酸、または臭素酸である、項11~19のいずれか一項に記載の製造装置。
項21 前記反応器内の内面が有機高分子材料で形成されている、項11~20のいずれか一項に記載の製造装置。
【発明の効果】
【0010】
反応器に、有機アルカリ溶液とハロゲンを連続供給するとともに、反応器に設置した取り出し手段を用いて、生成するハロゲン酸素酸を含む反応液を連続的に取り出す事により、反応器内の混合液では、定常状態において、原料である有機アルカリと、生成したハロゲン酸素酸の成分濃度、pH等が一定に保たれる。これにより、副反応等が抑制され、安定的にハロゲン酸素酸が得られる。また、原料の連続供給と、反応生成物の連続取り出しにより、工業的な大量製造に対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態にかかる製造装置の一態様を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ハロゲン酸素酸の製造方法>
(反応形式)
次に、本実施形態の最大の特徴は、有機アルカリ溶液とハロゲンを連続供給し、生成したハロゲン酸素酸を含む反応液を連続的に取り出す形式を採用することである。なお、ハロゲン酸素酸を含む反応液の連続的な取り出しは、連続的に供給される有機アルカリ溶液
とハロゲンの量に対応する量を取り出すように行われる態様が好ましい。対応する量とは、供給される有機アルカリ溶液とハロゲンの総量と同じ量または比例する量(有機アルカリとハロゲンの総量>取り出し量:いずれも体積)という意味である。後述する製造装置においても同じである。
本発明において、連続的とは常に、一定に連続してという意味だけでなく、一度止めて一定の時間を置いた後に、断続的に行うことも意味する。また、いわゆるバッチ式の反応形式を除くという意味である。
定常状態における反応器内の成分である、有機アルカリ、生成したハロゲン酸素酸の量と、反応器内の反応液におけるpH等を一定に保つことが好ましく、供給量を精度よく調整する事が好適な態様である。
従来のバッチ式の反応形式では反応器内に仕込んだ有機アルカリ溶液にハロゲンを添加していくというプロセスであるため、反応初期時の反応液のpHが高くなる傾向があり、高いpHではハロゲン酸素酸の分解が生じやすかった。また、高いpH領域で生成したハロゲン酸素酸中ではハロゲン酸素酸の分解で生じる分解生成物が生成するため保存安定性に課題があった。一方で、有機アルカリ溶液とハロゲンを連続的に供給するとともに、反応液を連続的に取り出せば、一定時間経過後に反応器内の反応液が定常状態となり、pHが一定に保たれるので、安定状態となった後のハロゲン酸素酸では分解が抑制される。
本発明の実施形態にかかる製造方法によれば、反応液のpHが高い状態が続くことを防止できる。なお、本発明におけるpHは、特に断りが無い限り25℃における値である。
【0013】
また、反応器内の反応液の量を一定に保つ事が好適な態様であり、反応器の側面にオーバーフローで反応液を取り出せる取り出し口を設置したり、反応器内の液面の高さを測定して、液面が一定になるように、反応液の抜き出し量を調整したり、または、反応液を含む反応器の重量を測定し、重量が一定になるようにすることで、反応器内の液面が一定になるように反応液の抜き出し量を調整したりすることが好ましい。
このように、有機アルカリとハロゲンとを連続供給し、生成したハロゲン酸素酸を含む溶液に伴って増加した増量分の反応液を連続的に取り出す形式を採用することで、本反応の最大の副反応を引き起こす高pHの滞在時間を低減できる。ハロゲンとして塩素ガスまたは塩素を用いた場合、その結果として、塩素収率を高く維持できる。ここでいう塩素収率は、供給した塩素分子のモル数に対する生成した次亜塩素酸イオンのモル数の割合(%)から求めることができる。加えた塩素が全量反応した(分解が起こっていない)場合は、塩素収率は100%となる。反応中に次亜塩素酸イオンが分解した場合は、塩素収率が低下する。
なお、反応器内への有機アルカリとハロゲンの連続供給は一定の割合で行われることが好ましい。一定の割合で供給するとは、供給速度が一定であるという意味である。また、反応液の連続的な取り出しは、本発明の実施形態にかかる製造方法の実施の開始と同時に始まらなくてもよく、反応器内の反応液のpHが一定になってから行ってもよい。
加えて、反応器内の成分、反応液のpHを均一にする事は好ましい態様である。反応器内において、供給される有機アルカリとハロゲンの反応液のpHが10.5~14.5が好適である。また、上記有機アルカリ溶液とハロゲンの反応液のpHが10.5~13.8である事がより好ましい。また、上記有機アルカリ溶液とハロゲンの反応液のpHが12.0~13.8である事がさらに好ましい。
また、反応器から取り出される反応液のpHは、12.0~13.8である事が好ましい。本明細書においては特に断らない限り、数値A及びBについて「A~B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。
【0014】
反応器内の反応液は均一に攪拌されることが好ましい。反応液を均一にする攪拌方法は、マグネットを利用したスターラー形式、攪拌機、反応液の循環手段を用いた循環等が一般的に採用される。半導体薬液として使用する場合には、パーティクル、金属成分等のコ
ンタミネーションを極力低減する必要があり、駆動部からのコンタミネーション等を低減する目的で、反応液の循環手段を用いた液循環を用いる方法が好適である。反応液の循環手段については後述するが、例えば反応液取り出し手段から取り出された反応液の一部を、ポンプを用いて反応器に戻す方法を挙げることができる。
また、反応器の容積は、反応器内の反応液の滞在時間を長くすると装置が大きくなる事に加え、副反応の要因ともなることから、反応器の容積を反応器に供給する有機アルカリ溶液の時間あたりの容量で除した値を液滞在時間と定義し、液滞在時間として、1~120分となる反応器の容積が好適な態様である。より好ましくは、1~100分である。
【0015】
(有機アルカリ溶液)
反応器に供給する有機アルカリ溶液は、有機アルカリが水に溶解した水溶液又は非水系溶媒に溶解した溶液の何れでもよい。有機アルカリ溶液は、水、又は非水系溶媒に有機アルカリを溶解させることや市販の有機アルカリ溶液を所望の濃度に希釈することなどで得ることができる。非水系溶媒としては、有機アルカリを溶解できる公知の有機溶媒を挙げることができる。具体的には、アルコール、グリコールが挙げられ、特にメタノール、プロピレングリコールが好ましい。これら溶媒の中でも、工業的に入手が容易であって、かつ高純度の有機アルカリ溶液を入手可能であるという点から、該溶媒は水であることが好ましい。有機アルカリ溶液の濃度は、特に限定されないが、有機アルカリの濃度が高濃度になると塩が析出し、固体となる。したがって、有機アルカリ溶液の濃度は、好ましくは0.01~30質量%、より好ましくは0.05~27.5質量%、さらに好ましくは0.1~25質量%である。
【0016】
準備する有機アルカリ溶液中には、通常は大気に由来する二酸化炭素が含まれている。二酸化炭素は、炭酸イオン、又は重炭酸イオンとして溶液中に存在している。二酸化炭素濃度は、特に制限されないが、炭酸イオンに換算して、0.001ppm以上500ppm以下(質量基準である)であることが好ましく、0.005ppm以上300ppm以下であることがより好ましく、0.01ppm以上100ppm以下であることがさらに好ましい。上記有機アルカリ溶液に含まれる二酸化炭素濃度が0.001ppm以上500ppm以下であることにより、得られるハロゲン酸素酸溶液のpH変化を抑制できる。その結果、該ハロゲン酸素酸溶液の保存安定性を向上できる。このような二酸化炭素濃度の有機アルカリ溶液は、市販のものを利用できる。
【0017】
有機アルカリ溶液を準備する溶媒としては、水のみを溶媒とした水溶液を準備してもよいし、有機溶媒と混合して、非水系溶液として準備してもよいし、水溶液と有機溶媒を混合してもよい。ハロゲン酸素酸を含む溶液の用途、洗浄対象物に対応して、溶媒を適宜変更すればよい。例えば、洗浄対象物をルテニウムとする場合は、溶媒は水のみで十分な洗浄が可能なため、有機アルカリ水溶液として準備すればよい。
【0018】
本実施形態において、有機アルカリ溶液は、水酸化オニウムの溶液であることが好ましく、水酸化オニウムの例として、水酸化アンモニウム、水酸化ホスホニウム、水酸化スルホニウム、多重結合を含む水酸化イミニウム、水酸化ジアゼニウム等が挙げられる。中でも、比較的安定な化合物が多く存在する水酸化アンモニウムの溶液であることがより好ましい。また、上述の水酸化オニウムの溶液は、水酸化オニウムの水溶液であることが好ましい。また、上述の水酸化アンモニウムの溶液は、水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液であることが好ましい。
水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液は、アルキル基の炭素数が1~10である水酸化第四級アルキルアンモニウムの溶液であることが好ましく、炭素数1~5である水酸化第四級アルキルアンモニウムの溶液であることがより好ましい。具体的な水酸化第四級アルキルアンモニウムを例示すると、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、コリンなどである。これらの水酸化
第四級アルキルアンモニウムは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、水酸化第四級アルキルアンモニウムに含まれる4つのアルキル基の炭素数は同一であってもよく、異なっていてもよい。
なお、上記及び下記の説明における種々の条件、例えば、反応器に供給する有機アルカリ溶液における有機アルカリの濃度範囲、そのpHの範囲や、反応液における有機アルカリの濃度範囲、そのpHの範囲などは、上記の有機アルカリの具体例のいずれを用いた場合にも適用可能である。
【0019】
(有機アルカリ溶液とハロゲンとを混合し、ハロゲン酸素酸を含む反応液を製造する工程)
有機アルカリ溶液とハロゲンとを混合し、それらを反応させてハロゲン酸素酸を含む反応液を製造する工程において、反応器内で生じる該ハロゲン酸素酸を含む反応液のpHは低下する傾向がある。後述する濾過工程の条件や、有機アルカリの溶解性を考慮すると、本実施形態においては、原料となる有機アルカリ溶液のpHの下限は10.5以上であり、好ましくは11.0以上、さらに好ましくは11.5以上、特に好ましくは12.0を超える。有機アルカリ溶液のpHの上限は、該有機アルカリの濃度によって決まる。有機アルカリ溶液のpHの上限の一例として14.5以下を挙げることができる。
【0020】
また、本実施形態において使用する有機アルカリ溶液は、金属、具体的には、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、銅、銀、カドミウム、および鉛の含有量が、それぞれ0.01ppb以上20ppb以下であることが好ましい。なお、当然のことながら、使用する有機アルカリ溶液に含まれる金属の含有量は、0.01ppb未満であってもよいが、このような有機アルカリ溶液を入手すること自体が困難である。
そのため、上記金属の含有量が上記範囲を満足する有機アルカリ溶液を使用することにより、それ自体の入手が容易となり、かつ、該ハロゲン酸素酸を含む反応液の製造中、および製造後における濾過工程によって該金属不純物の除去・低減が容易となる。濾過工程によって金属不純物が除去・低減できる理由は明らかではないが、ある程度の量の金属不純物が存在することによって、濾過による除去が難しいコロイド状ではなく、ある程度の大きさを有する不純物粒子が生成し、濾過による除去が可能になるためと考えられる。そのため、本実施形態で使用する有機アルカリ溶液は、pHが下がることにより金属不純物の固体物が濾過工程で除去・低減できるため、超高純度の有機アルカリ溶液ではなくとも好適に使用できる。この効果をより高め、特にアルカリ性でイオンとなっている不純物をより一層除去・低減するためには、有機アルカリ溶液に含まれる、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、銅、銀、カドミウム、および鉛の金属含量はそれぞれ、0.01ppb以上5ppb以下となることがより好ましく、0.01ppb以上2ppb以下であることがさらに好ましい。
以上のような有機アルカリ溶液は、市販のものを使用することができる。中でも、電解法、および/又はイオン交換樹脂等と接触させて高純度化した、半導体素子のフォトレジスト現像液として使用されている有機アルカリ溶液を好適に利用できる。そして、これら市販のものを、超純水のような金属不純物が含まれない溶媒で希釈して使用することもできる。
本発明の実施形態にかかる製造方法において、使用する有機アルカリ溶液の供給速度は、反応器の容積を1リットルとした場合、好ましくは1mL/min~5L/min、より好ましくは8.3mL/min~1L/min、さらに好ましくは、10mL/min~1L/minである。
【0021】
(有機アルカリ溶液と、ハロゲンとを接触させることで起こる反応)
例えば、有機アルカリとして水酸化第四級アルキルアンモニウムを用いる場合、その溶液とハロゲンとを接触、反応させることにより、水酸化第四級アルキルアンモニウムの水
酸化物イオンが、ハロゲンによって生成された次亜塩素酸イオンと置換され、次亜ハロゲン酸第四級アルキルアンモニウム溶液が生成する。
【0022】
本実施形態において、使用するハロゲンは、特に制限されるものではなく、市販のものを採用できる。ハロゲンの具体例としては、塩素、臭素、次亜塩素酸、次亜臭素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、塩素酸、または臭素酸を挙げることができる。ハロゲンとして次亜塩素酸、次亜臭素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、塩素酸、または臭素酸を用いる場合、該ハロゲンを含む溶液であってもよいし、該ハロゲンの塩を含む溶液であってもよいし、該ハロゲンのイオンを含む溶液であってもよい。ハロゲンとして塩素または臭素を用いる場合、それらのガス、塩素水または臭素水などを用いることができる。これらの中でも塩素ガスを用いることが好ましい。
【0023】
上記ハロゲンとして、半導体材料のエッチング、半導体材料の原料として使用されるような高純度のものを使用することができる。ハロゲンとして塩素ガスまたは臭素ガスを用いる場合は、高純度の中でも、特に水分量が少ないものが好ましく、具体的には10体積ppm以下(質量基準)の水分量のものを使用することが好ましい。この理由は明らかではないが以下のようなことが考えられる。例えば、塩素ガスを用いて、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液を製造する場合、通常、塩素ガスは配管を経由して輸送される。そのため、水が多く存在すると、塩化水素が発生して配管、および流量計等の金属部材を腐食させ、塩素ガスと共に腐食した金属不純物が系内に導入され易くなると考えられる。そのため、塩素ガスに含まれる水分量は10体積ppm以下のものを使用することが好ましい。当然のことながら、市販の塩素ガスをそのまま使用することもできるし、反応系内に導入される直前に、乾燥材等を接触させて塩素ガスに含まれる水分量を低減させることもできる。塩素ガスに含まれる水分量の下限は、特に制限されるものではないが、工業的に入手可能なものを考えると、0.1体積ppmである。
【0024】
本実施形態において、ハロゲンとして塩素ガスを用いる場合、該塩素ガスに含まれる二酸化炭素の濃度は、特に制限されないが、0.001体積ppm以上80体積ppm以下であることが好ましく、0.005体積ppm以上50体積ppm以下であることがより好ましく、0.01体積ppm以上2体積ppm以下であることがさらに好ましい。塩素ガスに含まれる二酸化炭素濃度が0.001体積ppm以上80体積ppm以下の範囲であれば、得られる次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液のpH変化を抑制できる。その結果、該次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液の保存安定性を向上できる。このような二酸化炭素濃度の塩素ガスは、市販のものを利用できる。
【0025】
次に、本実施形態において、有機アルカリ溶液として水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液を用い、ハロゲンとして塩素ガスを用い、それらを接触させる方法を本発明の実施形態の一例として説明する。以下の説明では、特に断りなく、有機アルカリ溶液として水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液を用い、ハロゲンとして塩素ガスを用いることを前提とすることがあるが、あくまでも一例としての説明である。
【0026】
図1に示すように、反応器内に供給する塩素ガスの供給方法は、公知の方法を採用することができる。塩素ガス供給手段の端部は反応器内に位置し、供給した塩素ガスが反応器内で均一に分散することが好ましい。塩素ガス供給手段として配管を例示することができ、その端部にスパージャーと呼ばれる分散器等を配置して、塩素ガスが反応器内の液相で拡散するように供給することが好ましい。スパージャーはガス分散器として一般的に用いられる物であれば制限はなく、リング状の環に複数の孔を設置した形状のもの、枝状に設置した管に複数の孔を設置した形状のもの、管の先端、側面等に多孔質材料を設置したガス分散を均一にすることを促進するものが好ましい。管に設置する孔は、塩素ガスのガス噴き出し速度、反応器内の液深さ等を考慮して適宜決定すればよい。
また、反応系への二酸化炭素の混入を避けるため、本発明の実施形態にかかる製造装置での反応は、閉鎖系で行うことが好ましい。簡易的には、図1に示したように、反応器内に準備した水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液に、塩素ガスを吹き込むことで、十分に反応させることができ、保存安定性に優れた次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液を製造することができる。
【0027】
本実施形態において、ハロゲンの使用量(使用するハロゲンのモル数)は、特に制限されることはなく、用いる有機アルカリの濃度及び総量、得られるハロゲン酸素酸の濃度及び総量等を勘案して適宜決定すればよい。例えば、ハロゲンとして次亜塩素酸、次亜臭素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、塩素酸、若しくは臭素酸を用いる場合、ハロゲンの使用量は、水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液1リットルに対して、8μmol~3.4molであることが好ましい。この範囲でハロゲンを使用することにより、ハロゲン酸素酸を安定に製造することができる。水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液1リットルに対して、3.4molを超える使用量とすることもできるが、得られるハロゲン酸素酸のpHが低下し、ハロゲン酸素酸が分解しやすい傾向がある。一方、8μmol未満の場合は、ハロゲン酸素酸濃度が低く、製造効率が悪くなる。そのため、工業的な製造を考慮すると、水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液1リットルに対して、8μmol~3.4molであることが好ましく、80μmol~3.2molであることがより好ましく、800μmol~3.0molであることがさらに好ましい。ただし、ハロゲンの使用量は、得られる溶液のpH、すなわち、得られる次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液のpHにおいて決定することもできる。
【0028】
また、本実施形態において、ハロゲンとして塩素ガスを用いる場合、ハロゲンの使用量(使用する塩素ガスの全量)は、特に制限されないが、水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液1リットルに対して、0℃、1atm換算で、0.1~37000mLであることが好ましい。この範囲で塩素ガスを使用することにより、反応系内の急激なpH変化を抑制し、濾過工程による金属不純物の除去・低減が容易となる。水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液1リットルに対して、塩素ガスの使用量が0℃、1atm換算で、37000mLを越える使用量とすることもできるが、水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液のpHの低下・変動が大きくなり、さらには未反応の塩素ガスが残留する傾向にある。一方、0.1mL未満の場合は、十分な次亜塩素酸イオンが生成できない傾向にある。そのため、工業的な製造を考慮すると、水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液1リットルに対して、塩素ガスの使用量が0℃、1atm換算で、0.1~37000mLの範囲であることが好ましく、1~35000mLの範囲であることがより好ましく、10~31000mLの範囲であることがさらに好ましい。ただし、塩素ガスの使用量は、得られる溶液のpH、すなわち、得られる次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液のpHにおいて決定することもできる。
【0029】
また、塩素ガスを以下の速度で反応器内に供給することが好ましい。塩素ガスの供給流量(速度)は、急激なpHの低下を生じさせない、および反応に関与しない塩素ガスを低減するという点で、水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液、1リットルに対して、0℃、1atm換算で、0.0034Pa・m/sec以上63Pa・m/sec以下(0.090mmol/min以上1.7mol/min以下)が好ましい。この範囲を満足することにより、反応性が十分となり、急激なpHの低下・変動がなく、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液を製造できる。この効果をより発揮するためには、塩素ガスの反応系内への供給量は、0.017Pa・m/sec以上5.1Pa・m/sec以下がより好ましく、0.034Pa・m/sec以上1.7Pa・m/sec以下がさらに好ましい。
【0030】
本実施形態において、有機アルカリには、さらに臭素塩が含まれていてもよい。臭素塩
を含む有機アルカリ中で、ハロゲンと有機アルカリが反応し、例えば、次亜ハロゲン酸とハロゲン化物を生じる。さらに、該次亜ハロゲン酸は、臭素塩に含まれる臭化物イオン、次亜臭素酸イオン、亜臭素酸イオン、臭素酸イオン、過臭素酸イオン、または臭素塩から生じた臭素分子と反応し、新たなハロゲン酸素酸を与える。ここで、上記次亜ハロゲン酸と上記イオン、または上記次亜ハロゲン酸と臭素分子との反応は、臭素塩および有機アルカリを含む溶液にハロゲンを添加する事で新たなハロゲン酸素酸が生じる反応であればよく、例えば、酸化還元反応であってもよいし、不均化反応であってもよいし、ラジカル反応であってもよい。
【0031】
本発明において臭素塩とは、臭素原子を含んで成る塩であり、例えば、次亜臭素酸塩、亜臭素酸塩、臭素酸塩、過臭素酸塩、臭化物である。臭化物としては、臭化水素、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ルビジウム、臭化セシウム、臭化アンモニウム、臭化オニウムを挙げることができる。ここでいう臭化オニウムとは、オニウムイオンと臭化物イオンから形成される化合物である。ここで、オニウムイオンとは、例えば、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、フルオロニウムイオン、クロロニウムイオン、ブロモニウムイオン、ヨードニウムイオン、オキソニウムイオン、スルホニウムイオン、セレノニウムイオン、テルロニウムイオン、アルソニウムイオン、スチボニウムイオン、ビスムトニウムイオン等の陽イオンを指す。また、処理液中で次亜臭素酸または次亜臭素酸イオンを生成する化合物も、臭素含有化合物として好適に用いることができる。このような化合物の例として、ブロモヒダントイン類、ブロモイソシアヌル酸類、ブロムスルファミン酸類、ブロムクロラミン類等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。より具体的に化合物を例示すれば、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、トリブロモイソシアヌル酸などである。
【0032】
より具体的に説明するために、臭素塩が臭化テトラメチルアンモニウムであり、有機アルカリが水酸化テトラメチルアンモニウムであり、ハロゲンが塩素である場合の、臭素塩、有機アルカリ、およびハロゲンの反応を例示すると次のようになる。臭化テトラメチルアンモニウムと水酸化テトラメチルアンモニウムを含む水溶液に塩素ガスを吹き込むと、水酸化テトラメチルアンモニウムと塩素が反応し、次亜塩素酸と塩化物が生じる。該次亜塩素酸の一部が、溶液中の臭化テトラメチルアンモニウムに含まれる臭化物イオンと反応し、該臭化物イオンを直接酸化して、次亜臭素酸を生み出す。結果として、次亜塩素酸、次亜臭素酸、塩化物(塩化テトラメチルアンモニウム)、未反応の臭化テトラメチルアンモニウム、および水酸化テトラメチルアンモニウムを含む水溶液が得られる。すなわち、二種のハロゲン酸素酸(次亜塩素酸および次亜臭素酸)を含むハロゲン酸素酸が得られる。また、臭素塩及び有機アルカリを含む溶液中の臭化テトラメチルアンモニウムのモル数に比べて塩素分子のモル数が少ない場合は、次亜臭素酸、塩化物(塩化テトラメチルアンモニウム)、未反応の臭化テトラメチルアンモニウム、および水酸化テトラメチルアンモニウムを含む水溶液が得られる。
【0033】
有機アルカリに加えられてもよい臭素塩の濃度は特に制限されることはなく、例えば、0.1μmol/L~10mol/Lの範囲を例示できる。このようにして得られた、複数種のハロゲン酸を含む溶液は、半導体製造に好適に用いることができる。
【0034】
(反応時の気相部)
反応時の気相部の二酸化炭素濃度が100体積ppm以下であることが、好ましい。本実施形態において、気相部とは、反応時に、水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液と接触する気体で占められた部分のことであり、例えば、図1に示す製造方法であれば、反応器内の気体が占める部分(上部空間)である。
本実施形態において、気相部の二酸化炭素濃度の上限は、100体積ppmであることが好ましい。100体積ppmを越える二酸化炭素濃度の場合は、反応時に式(1)、(2)の反応によって炭酸イオン、重炭酸イオンが発生し、それに伴って次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液のpHが低下してしまう。
CO + OH → HCO …(1)
HCO + OH → CO 2- + HO …(2)
上記の化学反応によってpHが低下すると、得られる次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液の保存中に次亜塩素酸イオンが分解して、保存安定性が悪化すると推測している。
なお、本実施形態において、気相部の二酸化炭素濃度が、0.001~100体積ppm、好ましくは、0.01~80体積ppmであれば、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液のpHを十分に制御することが可能となり、保存安定性に優れた次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液を製造することができる。
【0035】
(反応時の液相部のpH)
本実施形態の反応時の液相部のpHは、10.5以上であることが好ましい。なお、本実施形態において、液相部とは、反応時に、水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液と塩素ガスとが混合して生成する反応液で占められる部分のことである。例えば、図1に示す製造方法であれば、反応器内の反応液が占める部分(下部空間)である。液相部のpHの上限は特に限定はされないが、反応中のpHが過度に高いと、反応終了後に同じpHで長期間保存すると、次亜塩素酸イオンが分解され、有効塩素濃度が低下することがある。したがって、反応時の液相部のpHは、10.5以上14.5以下であることが好ましく、10.5以上13.8以下がより好ましく、12.0以上13.8以下がさらに好ましい。pHが上記範囲であれば、得られる次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液の保存中に、次亜塩素酸イオンの分解が抑制され、保存安定性が向上する。なお、反応時のpHが高い場合であっても、後述するように保存時のpHを特定範囲に制御することで、保存安定性は向上する。一方、反応時のpHが低すぎると式(3)に示す化学反応のため、保存安定性が低下する。
2HClO + ClO + 2OH
ClO + 2Cl + 2HO …(3)
【0036】
(反応温度)
本実施形態の製造方法における反応温度の範囲は、-35℃以上45℃以下が好ましく、-15℃以上40℃以下がより好ましく、-5℃以上35℃以下がさらに好ましい。反応温度が上記範囲であれば、水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液と塩素が十分に反応し、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液を高い生成効率で得ることができる。なお、反応温度が-35℃未満の場合、水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液の凝固がはじまり、塩素との反応が十分でなくなってしまう。一方、反応温度が45℃を超える場合は、水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液中に生成した次亜塩素酸イオンが熱によって分解する。特に反応時のpHが13.8以上では、反応温度が高くなると次亜塩素酸イオンの分解が顕著になる。次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウムの収率は、塩素収率で評価できる。以上のように、本実施形態の製造方法によれば、保存安定性に優れた、例えば、製造後10日経過しても、洗浄、除去力を十分保つことができる次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液を製造することができる。このことから明らかな通り、本実施形態の製造方法で得られた次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液は、保存安定性に優れており、半導体素子の製造工程において好適に使用することができる。
【0037】
(反応器の内面の材料)
本実施形態においては、反応器内で上記水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液と上記塩素ガスとを接触させて、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液を製造する。この
とき、先ず、反応器内に所定量の上記水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液を導入しておき、次いで塩素ガスを該水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液と接触するように導入すればよい。
そして、本実施形態においては、反応器内の水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液が接触する面(以下、単に「反応器の内面」とする場合もある)を、汎用のホウケイ酸ガラス、または有機高分子材料で形成する。本発明者等の検討によれば、反応器として、汎用のホウケイ酸ガラス製(以下、ガラス製)の反応器を使用すると、原料として使用する水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液が、該ガラス製に含まれる金属成分、例えば、ナトリウム、カリウム、およびアルミニウムが若干溶解する。これは、原料として使用する水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液がアルカリ性を示すことに起因すると考えられる。そのため、より好ましくは、反応器の内面を有機高分子材料で形成することにより、上記金属を含む不純物(金属不純物)の混入をより低減できる。
また、反応は遮光された環境下で行うことが好ましく、具体的には、反応器は反応器内が遮光されているものであることが好ましい。反応器内に存在する上記塩素ガスは、光に励起され塩素ラジカルを発生する事がある。塩素ラジカルが発生した場合、反応器内に存在する水酸化第四級アルキルアンモニウムや反応で生成する上記次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウムに影響し、分解を生じる事がある。また、上記次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム自体、光により分解する事があり、反応器、付属する配管等を遮光する事が好ましい態様である。
【0038】
本実施形態においては、溶媒に有機溶媒を使用する場合には反応装置を防爆構造とすることが好ましい。そのため、簡易な装置構成とするためには、水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液は水を溶媒とすることが好ましい。
本実施形態において、反応器の内面に使用する有機高分子材料としては、塩化ビニル系樹脂(軟質・硬質塩化ビニル樹脂)、ナイロン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン)、フッ素系樹脂等を使用できる。中でも、成型のし易さ、耐溶剤性、不純物の溶出が少ないもの等を考慮すると、フッ素系樹脂が好ましい。
【0039】
上記フッ素樹脂としては、フッ素原子を含有する樹脂(ポリマー)であれば特に制限されず、公知のフッ素樹脂を用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体、及びパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)の環化重合体等が挙げられる。中でも、反応器自体の入手のし易さ、生産性等を考慮すると、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体を使用することが好ましい。
本実施形態において、反応器の内面を有機高分子材料で形成する方法としては、反応器全体を有機高分子材料で形成する方法、ガラス製・ステンレス製の反応器の内面のみを有機高分子材料で覆う方法などが挙げられる。
【0040】
また、有機高分子材料から金属成分が溶出するのを防ぐために洗浄してから使用することもできる。具体的には、高純度硝酸・塩酸のような酸で十分に洗浄し(例えば、1mol/Lの酸濃度の溶液に12時間浸漬させて洗浄し)、超純水等でさらに洗浄することが好ましい。また、安定した反応を行うためには、水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液と塩素ガスとを反応させる前に、上記有機高分子材料で形成された反応器の内面を上記方法で洗浄することが好ましい。
本実施形態おいては、反応器内の水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液が接触する面を有機高分子材料で形成すれば、その他の部分は、ガラスであっても、ステンレス鋼であ
っても、不動態化処理したステンレス鋼であってもよい。ただし、影響は少ないため、必須ではないが、攪拌棒等も同じ有機高分子材料で形成することが好ましい。本実施形態おいては、反応器内で上記水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液と塩素ガスとを接触させればよいが、攪拌中の上記水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液に塩素ガスを導入することが好ましい。その際の反応温度の範囲は、特に制限されるものではないが、上記の反応温度と同様とすることが好ましい。また、反応系内に二酸化炭素が存在すると、得られる次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液のpHが低下する傾向にある。そのため、安定した製造を考慮すると、反応系内には、二酸化炭素が含まれないようにすることが好ましい。具体的には、二酸化炭素量が低減された水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液、塩素ガス等を使用することが好ましい。そして、二酸化炭素量が低減された不活性ガス存在下(例えば、窒素ガス存在下)にて反応を実施することが好ましい。このような条件で反応することで、得られる次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液のpH低下を抑制できるため、保存安定性が向上する。
【0041】
<濾過工程>
本実施形態にかかる製造方法では、水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液と塩素ガスとが接触して、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液を生成してくると、反応系内の溶液のpHが低下する。その際、金属不純物を含む固体物が析出する場合があり、それを除去・低減するために、好ましい実施形態では、濾過する工程をさらに含むことが好ましい。すなわち、上記の反応の途中、または所定の濃度まで塩素ガスを供給して得られる次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液を濾過することが好ましい。なお、濾過工程は、後述する保存工程あるいは希釈工程の後に行ってもよい。濾過工程においては、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液のpHに応じて、濾取される金属成分が異なることがある。
【0042】
具体的には、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液のpHを13.5以下とした場合、好ましくは該溶液のpHが12.5を超え13.5以下の場合には、マグネシウム、鉄、カドミウム等の水酸化物、ニッケル、銀の酸化物が固体化するため、濾過工程を行うことにより、これら不純物も除去・低減できる。また、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液のpHが12.5以下となった場合、好ましくは該溶液のpHが9.0以上12.5以下の場合には、上記不純物に加えて、銅、鉛の酸化物が固体化するため、濾過工程を行うことにより、これら不純物も除去・低減できる。なお、溶液のpHは温度に依存し変動することがある。上記のpHは25℃での値を目安とする。実際に濾過工程を実施する際の液温は25℃に限定はされないが、好ましくは0~60℃、さらに好ましくは10℃~50℃で行う。このような金属不純物の固体物は、原料とする水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液、および塩素ガスの純度を高めても生成する。特に、反応器の内面を有機高分子材料で形成した場合にも、該固体物が生成される場合がある。この原因は明らかではないが、塩素ガスという腐食性の高いガスを使用しているため、反応装置内のどこからか金属不純物が反応系内に含まれるためと推定している。
【0043】
濾過工程は、除去・低減を目的とする金属類が固体化されるpHで実施すればよい。そのため、1回のみの実施であってもよいし、各pHで複数回実施することもできる。その際、各pHで孔径の異なる濾過フィルターを複数準備し、孔径の大きな濾過フィルターから順に濾過することでより濾過効率が向上する。具体的には1段階目に粗大粒子を、2段階目で微粒子を除去することで実施可能である。なお、金属成分を含む固体物、例えば、単なる金属の不純物、金属酸化物、金属水酸化物、および/又はコロイド状物の内、1μm以上100μm以下の粒子のことを、以下、単に「粗大粒子」とする場合がある。一方、0.01μm以上1μm未満の粒子のことを、以下、単に「微粒子」ということがある。なお、固体物の粒径はレーザー回折による円相当径をいう。
上記濾過工程は、特に制限されるものではなく、公知の濾過装置、濾過フィルターを使
用して実施することができる。ただし、不要な金属成分を増加させないためには、濾過装置において、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液が接触する可能性のある面は、有機高分子材料で形成されることが好ましい。この有機高分子は、上記に例示したものと同じものが使用できる。
【0044】
具体的な濾過フィルターとして、有機高分子材料あるいは無機材料からなる濾過フィルターを使用することが好ましい。例えば、ポリオレフィン製(ポリプロピレン製、ポリエチレン製、超高分子量ポリエチレン製)、ポリスルフォン製、酢酸セルロース製、ポリイミド製、ポリスチレン、上記フッ素系樹脂、および/又は石英繊維製からなる濾過フィルターを挙げることができる。また、濾過フィルターは正に帯電している膜と負に帯電している膜とを組み合わせて使用することが好ましい。この理由は、多くの金属酸化物や金属水酸化物がアルカリ性雰囲気下で負に帯電しており、静電吸着によって正に帯電した濾過フィルターにより効果的に金属成分を除去することが可能となるためである。また一部の金属成分はカチオンの状態で存在していて正に帯電している。このため、負に帯電している濾過フィルターには静電吸着によって効果的にイオン化した金属成分を除去することが可能となる。さらに、イオン交換能やキレート形成能を有するフィルター、例えば、イオン交換樹脂やキレート交換樹脂を含んで成るフィルターを用いることもできる。これらのフィルターは複数組み合わせて使用してもよい。
【0045】
濾過フィルターの孔径は、特に制限されるものではないが、粗大粒子の除去には孔径が1μm以上の濾過フィルター、あるいは精密濾過フィルターを使用することができる。一方、微粒子の除去には孔径が0.01μm以上1μm未満の精密濾過フィルター、限外濾過フィルター、あるいはナノフィルトレーション膜を使用することができる。以上のような濾過フィルターは、市販のものを使用できる。具体的には、日本インテグリス社製のポリテトラフルオロエチレン製「フロロガードATXフィルター(孔径0.05μm、)」、「クイックチェンジATEフィルター(孔径0.03μm)」、「トレントATEフィルター(孔径0.02μm)」、「クイックチェンジATEフィルター(孔径0.03μm)」、「フロロラインP-1500(孔径0.05μm、0.1μm)」を使用できる。
【0046】
以上の濾過工程は、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液のpHを、その用途に適した範囲に調整する前に実施することができる。この場合、一旦濾過工程を行った後、再度、塩素ガスと混合して目的とするpHの次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液を調製することができる。また、水、塩化水素等の酸、および/又は水酸化第四級テトラメチルアンモニウム水溶液等のアルカリを混合して目的とするpHの次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液を調製することもできる。一方、製造した次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液のpHが洗浄液として適したpHである場合には、該溶液を濾過して、そのまま半導体素子を製造する際に使用する洗浄液とすればよい。
このような濾過工程を行うことにより、特に、マグネシウム、鉄、ニッケル、銅、銀、カドミウム、および鉛等の金属成分を低減することができる。
【0047】
<保存工程>
本実施形態にかかる製造方法の後、あるいは該製造方法にさらに上記濾過工程を含んだ製造方法を経て得られるハロゲン酸素酸を含む反応液(以下では次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液を例示して説明する)は、そのまま洗浄液等の所定の用途に使用できるが、一般には、保存工程(貯蔵、輸送を含む)の後に、使用される。次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液は単体では保存安定性が悪く、安定化剤の添加が必要とされていた。しかし、安定化剤は有機物残渣の原因となることがあり、改善が求められていた。これに対し、以下に説明する保存工程をさらに経ることで、保存安定性がより向上した次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液の供給が可能になる。
本発明の一実施形態である次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液の製造方法は、上記の工程後に、反応液を保存する保存工程を含むことが好ましく、該保存工程において、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液の25℃におけるpHが、12.0以上14.0未満となるように調整することが好ましい。なお、上記の本実施形態の製造方法の後に濾過工程を含む場合、その濾過工程の後に保存工程を含むようにしてもよい。
【0048】
保存対象である次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液の濃度は、特に制限されないが、工業的な製造を考慮すると、所定のpHにおける次亜塩素酸イオンが0.001~20質量%、第四級アルキルアンモニウムイオンが0.001~50質量%、それぞれ含まれている次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液であることが好ましい。なお、「所定のpH」とは、保存工程におけるpHとして選択された12.0以上、14.0未満の何れかのpHをいう。
【0049】
その他、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液に、その用途に応じて所望により各種の添加剤を配合してもよい。例えば、添加剤として、金属キレート化剤、錯体化剤、金属溶解促進剤、金属腐食阻害剤、界面活性剤、酸、アルカリなどを加えることができる。これらの添加剤を加えることにより半導体ウエハ処理時に金属溶解の促進または抑制、表面ラフネスの改善、処理速度の向上、パーティクル付着の低減などが期待できるため、これら添加剤を含む洗浄液は半導体ウエハ処理に好適に利用できる。好ましい実施形態に係る次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液の保存工程は、限定されたpHの範囲で次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液を保存する。保存工程について、以下に詳細に記載する。
【0050】
ここで「保存」とは、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液が25℃におけるpHを12.0以上14.0以下の状態で保存を開始してから、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液の濃度、及び/またはpHを調整するまでを意味する。なお、pHを調整した後の溶液のpHが12.0以上14.0以下である場合、該溶液をさらに保存すれば、それはやはり本実施形態の保存工程に該当する。次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液のpHが最初から12.0以上14.0以下であればそのまま保存すればよく、pHが12.0未満又は14.0を超える場合である場合にはpHを12.0以上14.0以下の範囲に調整した後保存すればよい。
【0051】
なお、溶液のpHは温度に依存し変動することがある。上記のpHは25℃での値を目安とする。実際に溶液を保存する際の液温は25℃に限定はされない。したがって、保存時の条件は、特に限定されることはないが、一般的な保存条件、すなわち、-25~50℃で公知の容器、キャニスター缶や樹脂製の保存容器に保存するのが好ましく、-20~40℃で、遮光できる保存容器、キャニスター缶等の輸送容器や樹脂製の保存容器に不活性ガスを充填して、暗所で保存することが、さらに好ましい。保存する温度が上記範囲を超える場合、長期間の保存の間に次亜塩素酸イオンが熱分解によって酸素分子を形成して容器が膨張し、破損することもある。
【0052】
好ましい実施形態では、25℃におけるpHが12.0以上14.0以下の次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液として保存する。このpHの範囲内であれば、次亜塩素酸イオン濃度が低下せず、長期間の保存が可能である。pHが12.0未満の場合は、次亜塩素酸イオンの不均化反応が進行し、次亜塩素酸イオンが分解され、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液の酸化力が低下する。一方、pHが14.0を超える場合は、カチオンである有機イオンが分解すると推定される。その結果、有機イオンの嵩高さによって阻害されていた次亜塩素酸イオンの不均化反応が再び進行し、次亜塩素酸イオンが分解すると推定される。25℃におけるpHが12.0以上14.0以下の次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液として保存することが好ましい。
【0053】
上記の保存方法により、保存安定性が向上する理由は明らかではないが、本発明者らは以下のように推定している。次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液中では、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウムはその一部が次亜塩素酸イオンと有機イオンに解離しているが、大部分は次亜塩素酸イオンと有機イオンとがイオン結合しており、有機イオンの立体的な嵩高さが、次亜塩素酸イオンの不均化反応を抑制していると推測している。このため、有機イオンの立体的な嵩高さが大きくなるほど、不均化反応を抑制し、保存安定性が向上すると考えられる。有機イオンは嵩高い第四級アルキルアンモニウムイオン、例えば、テトラメチルアンモニウムイオンであれば、十分に不均化反応を抑制できる。本実施形態にかかる保存工程を経れば、保存期間が30日でも、好ましくは60日でも、さらに好ましくは90日でも、保存中の次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液の酸化力は、ほとんど変化しない。したがって、保存後、使用する条件に応じて、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液を希釈するのみで、様々な用途に使用することができる。保存期間が長期間になればなるほど、生産性向上の効果を期待することができる。上記保存工程を経て保存した後に、上記の希釈工程を経ることで、次亜塩素酸イオン濃度の高い希釈液(洗浄液)が得られる。
【0054】
<ハロゲン酸素酸を含む溶液の製造装置>
次に、ハロゲン酸素酸の製造装置の実施形態を説明する。上記の製造方法は、本実施形態の製造装置を用いて実施することができる。なお、本実施形態にかかる製造装置の一例として、有機アルカリとして水酸化第四級アンモニウム溶液を用い、ハロゲンとして塩素ガスを用いた場合を例示する。なお、原料として供給する有機アルカリ及びハロゲンの種類、濃度等の条件は上記のハロゲン酸素酸の製造方法で説明した条件をそのまま用いることができる。
【0055】
図1に本実施形態にかかる製造装置の概略図を示す。図1に記載の製造装置は、反応器1と、該反応器への有機アルカリ供給手段として水酸化第四級アンモニウム溶液供給配管2と、該反応器へのハロゲン供給手段として塩素ガス供給配管3と、該反応器から反応液を外部に取り出すための反応液取り出し手段として、反応液取り出し配管10と、を備える。
反応器1において、供給する水酸化第四級アンモニウム溶液は、水酸化第四級アンモニウム溶液供給配管2より供給され、供給する塩素ガスは、塩素ガス供給配管3より供給され、いずれも連続的に供給される。また、生成する反応液は、反応液取り出し配管10から連続的に取り出される。
反応器1、水酸化第四級アンモニウム溶液供給配管2、および反応液取り出し配管10の内面については、上記の製造方法で説明した条件をそのまま用いることができる。反応器1、水酸化第四級アンモニウム溶液供給配管2、および反応液取り出し配管10の内面は有機高分子材料で形成されていることが好ましい。
【0056】
供給する水酸化第四級アンモニウム溶液と、塩素ガスのそれぞれの供給速度は、上記で説明した製造方法と同じ条件を用いることができる。具体的には、水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液1リットルに対して、0℃、1atm換算で、0.0034Pa・m/sec以上16.9Pa・m/sec以下が好ましい。
また、塩素ガス供給手段は、塩素ガスの液相内への分散が起こりやすくなるためのスパージャーを備えてもよい。具体的には、塩素ガス供給配管3の反応器側の先端に、スパージャー(図示せず)を設置する態様を挙げることができる。スパージャーとしては、例えば、塩素ガス供給配管3の先端にリング状の環を設け、その環に複数の孔を設置して、塩素ガスが孔から吹き出すようにすることで、反応器内の塩素ガス分散を行うものが採用できる。スパージャーの形状は、反応器内の塩素ガスの分散ができるだけ均一になるようなものであることが好ましい。孔からの塩素ガスの吹き出し速度は、0℃、1atm換算で
、0.1m/sec以上10m/sec以下が好ましい。
反応器1の容積としては、供給する水酸化第四級アンモニウム溶液の液滞在時間として、0.1~120分となる容積が好適な態様である。より好ましくは、0.1~100分である。
反応器1には、反応器1内の気相部のガス成分の濃度を調整するために、反応器1内に窒素を供給するための手段を備えてもよい。窒素を供給する手段として、反応器1の外部から内部に窒素を供給するためのポンプと、窒素が流通する配管とを備える構成を挙げることができる。
【0057】
水酸化第四級アンモニウムと塩素の反応は、発熱反応である。本実施形態にかかる製造装置において、反応器1内の温度は、例えば、反応器1における温度測定手段として、反応器内温度測定装置4を用いて測定することができる。また、本実施形態にかかる製造装置は、反応器における反応温度制御手段、具体的には反応器の除熱を行う手段として、反応器温度制御ジャケット5を備えてもよい。この反応器温度制御ジャケット5により除熱を行うことができる。
また、本実施形態にかかる製造装置は、反応器内の反応液のpH測定手段として、反応器1内に配置された反応器内pH測定装置6(図1のpH1)を備えてもよい。反応器内pH測定装置6により、反応器内の反応液のpHを測定することができる。本実施形態にかかる製造装置は、上記の反応器における反応温度測定手段、反応温度制御手段及びpH測定手段の少なくとも一つを備えることが好ましく、二つ備えることがより好ましく、全て備えることがさらに好ましい。
【0058】
本実施形態にかかる製造装置において、反応器1内の反応液の攪拌は、反応液循環手段により行われてもよい。具体的には、本実施形態にかかる製造装置は、反応液の取り出し手段である配管10とは別に、反応液の循環手段として、反応液循環用の取り出し配管7と、反応液の取り出しと送液を行うための反応液循環ポンプ8と、反応器内に反応液を送液するための反応液吐出配管9とをさらに備えてもよい。その態様では、取り出し配管7を通して、反応液がポンプ8により取り出されるとともに、反応液吐出配管9を通して、反応器1に反応液が吐出されることでリサイクルされる。反応液の循環量は特に制限はないが、反応器内での溶液が均一になるように設定することが好ましい。
反応液循環用の取り出し配管7および反応液吐出配管9の内面については、上記の製造方法で説明した条件をそのまま用いることができる。反応液循環用の取り出し配管7および反応液吐出配管9の内面は有機高分子材料で形成されていることが好ましい。ポンプ8は、ケミカルダイヤフラムポンプ、チューブポンプ、マグネットポンプ等を使用できる。中でも、金属成分による汚染防止のため、接液部が上記フッ素樹脂からなるポンプを使用することが好ましく、その中でも入手のし易さを考慮すると、マグネットポンプを使用することが好ましい。
【0059】
本実施形態にかかる製造装置は、反応器内の反応液の液面が一定になるように、反応液取り出し手段である配管10に、液面が一定以上になった場合に反応液を別の場所に送液するためのオーバーフロー用の配管をさらに備えてもよい。例えば、配管10に設置した反応液のオーバーフロー用の配管11を通して、反応液を一定量取り出すことができる。なお、反応器内の反応液の液面の高さを確認し、オーバーフローさせる反応液の流量を調整するために、本実施形態にかかる製造装置は、液面確認装置(図示せず)を備えていてもよい。また、本実施形態にかかる製造装置は、反応器1の重量を測定するための重量測定装置をさらに備えてもよい。その態様では、反応器1を重量測定装置に設置して、反応器内の反応液の重量が一定となるように、反応液取り出しの量を調整することで、反応器内の反応液の液面高さを一定にすることができる。
加えて、本実施形態にかかる製造装置では、反応液の取り出し手段である配管10に、取り出した反応液用のpH測定手段として、pH測定装置12(図1のpH2)を設置す
ることもできる。pH測定装置12により、取り出した反応液のpHを測定することができる。
反応液の取り出し配管10には、未反応の塩素等が系外に排出されないように、除害手段を設けてもよく、具体的には苛性ソーダ除害13を設置してもよい。苛性ソーダ除害13の構成としては、例えば反応液の取り出し配管10を通して送液された反応液に含まれるガスを、苛性ソーダを含む溶液に潜らせる構成を用いることができる。
また、反応器から生じる排ガスに関して、同様に未反応塩素ガスが製造装置の系外に排出されないように、反応器1は除害手段を有してもよい。除害手段は、反応器から延びる排ガス配管14と、該排ガス配管14に接続する反応器排ガス用の苛性ソーダ除害15と、から構成されてもよい。苛性ソーダ除害15の構成としては、反応器1から排ガス配管14を通して排出される排ガスを、苛性ソーダを含む溶液に潜らせる構成を用いることができる。
【0060】
反応液の取り出し配管10を通して取り出された反応液は、製品調製器(図示せず)に送液されてもよい。製品調製器では、反応器から送液された反応液の濃度やpHの調整が行われる。製品調製器には、必要に応じて、有機アルカリ溶液、例えば水酸化第四級アンモニウム溶液、塩酸及び水のいずれか一以上を供給することで、反応液の成分濃度やpHを調整する。製品調製器の構成としては、反応液に加えて上記の水酸化第四級アンモニウム溶液、塩酸及び水のいずれか一以上が供給されるのに十分な容積を有するタンクを挙げることができる。
製品調製器の内面については、上記の製造方法で説明した条件をそのまま用いることができる。製品調製器の内面は有機高分子材料で形成されていることが好ましい。
また、製品調製器は、調製器内の気相部のガス成分の濃度を調整するために、調製器内に窒素を供給するための手段を備えてもよい。窒素を供給する手段として、調製器の外部から内部に窒素を供給するためのポンプと、窒素が流通する配管とを備える構成を挙げることができる。
【0061】
また、本実施形態にかかる製造装置は、上記の製品調製器の上流または下流もしくはその両方に、濾過装置を設けてもよい。濾過装置としては、反応液移送管、ポンプ、濾過フィルター、反応液返送管とを備える構成を例示できる。これらの濾過装置における各部材は、次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウムを含む反応液と接触するため、上記有機高分子材料で形成されることが好ましい。また、濾過フィルターについては上記の濾過工程で例示したものを用いることができる。
【0062】
本実施形態にかかる製造装置は、上記の反応器や製品調製器に供給される有機アルカリ溶液を調製するための有機アルカリ溶液調製器を、さらに備えていてもよい。有機アルカリ溶液調製器には、原料である有機アルカリと、水と、が供給される。有機アルカリ溶液調製器では、有機アルカリ溶液の濃度やpHが調整される。有機アルカリ溶液調製器の構成としては、有機アルカリ供給用の配管と、水供給用の配管と、調製された有機アルカリ溶液を取り出すための取り出し配管とを備えるタンクを例示できる。取り出し配管から取り出された有機アルカリ溶液は、有機アルカリ溶液が流通する配管を通して、上記の反応器または製品調製器もしくはその両方に供給される。また、有機アルカリ調製器は、調製器内の溶液の温度を制御するために、循環型の温度制御手段を備えていてもよい。循環型の温度制御手段の構成としては、上記の取り出し配管から取り出された有機アルカリ溶液の一部が流通する配管と、該配管から供給された有機アルカリ溶液を熱交換するための熱交換器と、該熱交換器を通して温度制御された有機アルカリ溶液を有機アルカリ溶液調製器に戻すための配管と、有機アルカリ溶液の循環を行うためのポンプと、を備える構成を挙げることができる。
有機アルカリ溶液調製器は、調製器内の気相部のガス成分の濃度を調整するために、調製器内に窒素を供給するための手段を備えてもよい。窒素を供給する手段として、調製器
の外部から内部に窒素を供給するためのポンプと、窒素が流通する配管とを備える構成を挙げることができる。
【実施例
【0063】
次に、実施例及び比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0064】
<pH測定方法>
水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液、および次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液30mLを、卓上型pHメーター(LAQUA F-73、堀場製作所社製)を用いてpH測定した。pH測定は、25℃で安定した後に、実施した。
【0065】
<有効塩素濃度および次亜塩素酸イオン濃度の算出方法>
100mL三角フラスコに処理液(次亜塩素酸第四級アンモニウム溶液)0.5mLとヨウ化カリウム(富士フイルム和光純薬工業社製、試薬特級)2g、10質量%酢酸8mL、超純水10mLを加え、固形物が溶解するまで攪拌し、褐色溶液を得た。
調製した褐色溶液は、0.02Mチオ硫酸ナトリウム溶液(富士フイルム和光純薬工業社製、容量分析用)を用いて溶液の色が褐色から極薄い黄色になるまで酸化還元滴定し、次いで、でんぷん溶液を加え薄紫色の溶液を得た。
この溶液に、更に0.02Mチオ硫酸ナトリウム溶液を続けて加え、無色透明になった点を終点として有効塩素濃度を算出した。また、得られた有効塩素濃度から次亜塩素酸イオン濃度を算出した。例えば、有効塩素濃度1質量%であれば次亜塩素酸イオン濃度は0.73質量%となる。
【0066】
<気相部の二酸化炭素濃度の算出方法>
反応液内の気相部の二酸化炭素濃度は、COモニター(CUSTOM社製、CO-M1)を用いて測定した。
【0067】
<塩素収率>
供給した塩素分子のモル数に対する生成した次亜塩素酸イオンのモル数の割合(%)から塩素収率を求めた。加えた塩素が全量反応した(分解が起こっていない)場合は、塩素収率は100%となる。反応中に次亜塩素酸イオンが分解した場合は、塩素収率が低下する。
【0068】
<保存安定性の評価方法>
次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液をグローブバッグ内に移し、グローブバッグ内の二酸化炭素濃度が1ppm以下になった後、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂:テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)製容器に移し替え、密閉した。次に、23℃の遮光された環境で10日間保管後、PFA製容器内の次亜塩素酸第四級アルキルアンモニウム溶液の次亜塩素酸イオン濃度を測定した。次亜塩素酸イオン濃度比(10日後濃度/初期濃度)が60%以上100%以下を良好、60%未満を不良とした。
【0069】
<実施例1>
直径130mmの円筒反応器(PTFE製)に500mLの水酸化テトラメチルアンモニウム溶液(8.6質量%、pH14.0)を仕込み、反応器に取り付けた循環ポンプで500mL/minで反応器内の液を循環しながら、8.6質量%、pH14.0の水酸化テトラメチルアンモニウム溶液を41mL/min、塩素ガスを17.7mmol/minで反応器に供給した。生成した次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液は、反応器の底から38mmの高さに設置した液取り出し口から抜き出した。反応器内の液滞在時間は12minで、反応温度は25℃であった。
反応器出口の生成した次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液は、30分後には安定し、安定後226分間反応させ、単位時間当たり得られた液量は0.041×226/256=0.036L/minであった。有効塩素濃度は3.1質量%、pHは12.9、塩素収率は99%以上であった。保存安定性は良好であった。なお、反応器内のpHは12.9から13.2であった。
【0070】
<実施例2>
直径130mmの円筒反応器(PTFE製)に1500mLの水酸化テトラメチルアンモニウム溶液(8.6質量%、pH14.0)を仕込み、反応器に取り付けた循環ポンプで1500mL/minで反応器内の液を循環しながら、8.6質量%、pH14.0の水酸化テトラメチルアンモニウム溶液を82mL/min、塩素ガスを35.3mmol/minで反応器に供給した。生成した次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液は、反応器の底から113mmの高さに設置した液抜き出し口から抜き出した。反応器内の液滞在時間は18minで、反応温度は25℃であった。
反応器出口の生成した次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液は、30分後には安定し、安定後226分間反応させ、単位時間当たり得られた液量は0.082×226/256=0.072L/minであった。有効塩素濃度は3.1質量%、pHは12.9、塩素収率は99%以上であった。保存安定性は良好であった。なお、反応器内のpHは12.9から13.2であった。
【0071】
<実施例3>
8.6質量%、pH14.0の水酸化テトラメチルアンモニウム溶液を164mL/min、塩素を70.7mmol/minで反応器に供給する以外は、実施例2と同様に行った。反応器内の液滞在時間は9minで、反応温度は25℃であった。
反応器出口の生成した次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液は、30分後には安定し、安定後226分間反応させ、単位時間当たり得られた液量は0.164×226/256=0.145L/minであった。有効塩素濃度は3.1質量%、pHは12.9、塩素収率は99%以上であった。保存安定性は良好であった。なお、反応器内のpHは12.9から13.2であった。
【0072】
<実施例4>
8.6質量%、pH14.0の水酸化テトラメチルアンモニウム溶液を246mL/min、塩素を106mmol/minで反応器に供給する以外は、実施例2と同様に行った。反応器内の液滞在時間は6minで、反応温度は25℃であった。
反応器出口の生成した次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液は、30分後には安定し、安定後226分間反応させ、単位時間当たり得られた液量は0.246×226/256=0.217L/minであった。有効塩素濃度は3.1質量%、pHは12.9、塩素収率は99%以上であった。保存安定性は良好であった。なお、反応器内のpHは12.9から13.2であった。
反応条件について、表1に反応条件を記載し、表2に結果等を整理した。
【0073】
<比較例>
比較例として、バッチ反応を利用した場合の実験例を示す。
直径190mmの円筒反応器に10,000mLの8.6質量%、pH14.0の水酸化テトラメチルアンモニウム溶液を仕込み、反応器に取り付けた循環ポンプで500mL/minで反応器内の液を循環しながら、塩素を17.7mmol/minで供給した。生成した次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液は、反応器内の液滞在時間256minで取り出した。単位時間当たり得られた液量は10/256=0.039L/minであった。反応温度は25℃であった。
生成した次亜塩素酸第四級テトラメチルアンモニウム溶液は、有効塩素濃度は2.9質量%、pHは12.9、塩素収率は91%であった。保存安定性は不良であった。
【0074】
<実施例5>
直径130mmの円筒反応器(PTFE製)に500mLの水酸化テトラメチルアンモニウム溶液(0.003質量%、pH10.5)を仕込み、反応器に取り付けた循環ポンプで500mL/minで反応器内の液を循環しながら、0.003質量%、pH10.5の水酸化テトラメチルアンモニウム溶液を500mL/min、塩素ガスを0.08mmol/minで反応器に供給した。生成した次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液は、反応器の底から38mmの高さに設置した液取り出し口から抜き出した。反応器内の液滞在時間は1minで、反応温度は25℃であった。
反応器出口の生成した次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液は、30分後には安定し、安定後226分間反応させ、単位時間当たり得られた液量は0.500×226/256=0.441L/minであった。有効塩素濃度は0.001質量%、pHは9.0、塩素収率は99%以上であった。得られた液をその後、水酸化テトラメチルアンモニウム溶液を加えてpH12.0に調整したところ保存安定性は良好であった。
【0075】
<実施例6>
直径130mmの円筒反応器(PTFE製)に500mLの水酸化テトラメチルアンモニウム溶液(25質量%、pH14.4)を仕込み、反応器に取り付けた循環ポンプで500mL/minで反応器内の液を循環しながら、25質量%、pH14.4の水酸化テトラメチルアンモニウム溶液を51mL/min、塩素を69.8mmol/minで反応器に供給した。生成した次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液は、反応器の底から38mmの高さに設置した液取り出し口から抜き出した。反応器内の液滞在時間は10minで、反応温度は25℃であった。
反応器出口の生成した次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液は、30分後には安定し、安定後226分間反応させ、単位時間当たり得られた液量は0.500×226/256=0.441L/minであった。有効塩素濃度は8.8質量%、pHは12.0、塩素収率は99%以上であり、保存安定性は良好であった。
【表1】
【表2】
【符号の説明】
【0076】
1 反応器
2 水酸化第四級アルキルアンモニウム溶液供給配管
3 塩素ガス供給配管
4 反応器内温度測定装置
5 反応器温度制御ジャケット
6 反応器内pH測定装置(pH1)
7 反応液循環用の取り出し配管
8 反応液循環ポンプ
9 反応液吐出配管
10 反応器取り出し配管
11 反応液オーバーフロー用の配管
12 取り出した反応液用のpH測定装置(pH2)
13 苛性ソーダ除害装置
14 排ガス配管
15 反応器排ガス用の苛性ソーダ除害装置
図1