(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】鏡胴
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20220720BHJP
G02B 7/08 20210101ALI20220720BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G02B7/08 Z
(21)【出願番号】P 2021534026
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2020028073
(87)【国際公開番号】W WO2021015166
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2019135988
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 博之
(72)【発明者】
【氏名】川鍋 裕一
(72)【発明者】
【氏名】大塚 慎治
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-162822(JP,A)
【文献】特開2008-224949(JP,A)
【文献】特開2013-257369(JP,A)
【文献】特開2014-35438(JP,A)
【文献】特開2009-75328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G02B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って配置された第1溝及び周方向に沿って配置された第2溝を有する第1筒と、
カム溝を有し、前記第1筒の内周部に嵌合して、回転可能に保持された第2筒と、
前記第2筒に収容されて、軸方向に移動可能に保持された第3筒と、
前記第3筒の外周部に取り付けられて、前記カム溝及び前記第1溝に嵌合するカムフォロアと、
前記第2溝を通して前記第2筒の外周部に取り付けられたローラ支持軸と、
前記ローラ支持軸に支持された第1ローラと、
前記第1筒の外周部に嵌合して、軸方向に移動可能に保持された第1枠と、
前記第1枠を軸方向に付勢して、前記第1枠を前記第1ローラに押圧当接させる付勢部材と、
を備えた鏡胴。
【請求項2】
前記ローラ支持軸に支持され、かつ、前記第2溝に嵌合して、前記第2筒を前記第1筒に対して軸方向に位置決め、及び/又は、前記第2筒の可動範囲を規制する第2ローラを更に備えた、
請求項1に記載の鏡胴。
【請求項3】
前記第1ローラ及び前記第2ローラのいずれか一方がベアリングで構成される、
請求項2に記載の鏡胴。
【請求項4】
前記第2筒は、互いに平行に配置された一対の前記カム溝を有し、
一対の前記カム溝に個別に嵌合する一対の前記カムフォロアを備えた、
請求項1から3のいずれか1項に記載の鏡胴。
【請求項5】
前記第3筒は、第3筒本体部と、前記第3筒本体部の外周部に嵌合して、軸方向に移動可能に保持された第3筒可動部と、前記第3筒本体部に対して前記第3筒可動部を軸方向に付勢する付勢部と、を有し、
一対の前記カムフォロアは、一方が前記第3筒可動部に取り付けられ、他方が前記第3筒本体部に取り付けられる、
請求項4に記載の鏡胴。
【請求項6】
前記第2筒は、前記第3筒の全可動域において、前記カム溝の開口部が前記第3筒によって遮蔽される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の鏡胴。
【請求項7】
前記第2筒は、前記第3筒本体部に前記第3筒可動部を装着することにより、前記第3筒の全可動域において、前記カム溝の開口部が前記第3筒本体部及び前記第3筒可動部によって遮蔽される、
請求項5に記載の鏡胴。
【請求項8】
前記第1筒の外周部に固定して装着された第2枠を更に有し、
前記付勢部材が、前記第1枠と前記第2枠との間に配置されたバネで構成される、
請求項1から7のいずれか1項に記載の鏡胴。
【請求項9】
前記第1筒がフランジ部を有し、
前記付勢部材が、前記第1枠と前記フランジ部との間に配置されたバネで構成される、
請求項1から7のいずれか1項に記載の鏡胴。
【請求項10】
前記カムフォロアは、
前記第3筒の外周部に取り付けられる軸部と、
前記軸部に装着されて、前記カム溝及び前記第1溝に嵌合するベアリングと、
を有する、
請求項1から9のいずれか1項に記載の鏡胴。
【請求項11】
前記第2筒を回転駆動する駆動部を更に備えた、
請求項1から10のいずれか1項に記載の鏡胴。
【請求項12】
前記駆動部は、
モータと、
ギア列を有し、前記モータの回転を減速させて前記第2筒に伝達する減速機と、
を有する、
請求項11に記載の鏡胴。
【請求項13】
前記第3筒は、内周部にレンズを保持する、
請求項1から12のいずれか1項に記載の鏡胴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鏡胴に係り、特に回転駆動される鏡胴に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転駆動されるカム筒の端面にスラストリングを当接させて、カム筒を光軸方向に付勢し、カム筒のガタを低減させること、及び、カム筒の停止精度を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の技術に係る1つの実施形態は、停止精度を向上できる鏡胴を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)軸方向に沿って配置された第1溝及び周方向に沿って配置された第2溝を有する第1筒と、カム溝を有し、第1筒の内周部に嵌合して、回転可能に保持された第2筒と、第2筒に収容されて、軸方向に移動可能に保持された第3筒と、第3筒の外周部に取り付けられて、カム溝及び第1溝に嵌合するカムフォロアと、第2溝を通して第2筒の外周部に取り付けられたローラ支持軸と、ローラ支持軸に支持された第1ローラと、第1筒の外周部に嵌合して、軸方向に移動可能に保持された第1枠と、第1枠を軸方向に付勢して、第1枠を第1ローラに押圧当接させる付勢部材と、を備えた鏡胴。
【0006】
(2)ローラ支持軸に支持され、かつ、第2溝に嵌合して、第2筒を第1筒に対して軸方向に位置決め、及び/又は、第2筒の可動範囲を規制する第2ローラを更に備えた、(1)の鏡胴。
【0007】
(3)第1ローラ及び第2ローラのいずれか一方がベアリングで構成される、(2)の鏡胴。
【0008】
(4)第2筒は、互いに平行に配置された一対のカム溝を有し、一対のカム溝に個別に嵌合する一対のカムフォロアを備えた、(1)から(3)のいずれか一の鏡胴。
【0009】
(5)第3筒は、第3筒本体部と、第3筒本体部の外周部に嵌合して、軸方向に移動可能に保持された第3筒可動部と、第3筒本体部に対して第3筒可動部を軸方向に付勢する付勢部と、を有し、一対のカムフォロアは、一方が第3筒可動部に取り付けられ、他方が第3筒本体部に取り付けられる、(4)の鏡胴。
【0010】
(6)第2筒は、第3筒の全可動域において、カム溝の開口部が第3筒によって遮蔽される、(1)から(5)のいずれか一の鏡胴。
【0011】
(7)第2筒は、第3筒本体部に第3筒可動部を装着することにより、第3筒の全可動域において、カム溝の開口部が第3筒本体部及び第3筒可動部によって遮蔽される、(5)の鏡胴。
【0012】
(8)第1筒の外周部に固定して装着された第2枠を更に有し、付勢部材が、第1枠と第2枠との間に配置されたバネで構成される、(1)から(7)のいずれか一の鏡胴。
【0013】
(9)第1筒がフランジ部を有し、付勢部材が、第1枠とフランジ部との間に配置されたバネで構成される、(1)から(7)のいずれか一の鏡胴。
【0014】
(10)カムフォロアは、第3筒の外周部に取り付けられる軸部と、軸部に装着されて、カム溝及び第1溝に嵌合するベアリングと、を有する、(1)から(9)のいずれか一の鏡胴。
【0015】
(11)第2筒を回転駆動する駆動部を更に備えた、(1)から(10)のいずれか一の鏡胴。
【0016】
(12)駆動部は、モータと、ギア列を有し、モータの回転を減速させて第2筒に伝達する減速機と、を有する、(11)の鏡胴。
【0017】
(13)第3筒は、内周部にレンズを保持する、(1)から(12)のいずれか一の鏡胴。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施の形態の交換レンズの全体の概略構成を示す断面図
【
図6】一対のカムフォロアの設置部を拡大した断面図
【
図7】位置決めローラの設置個所での交換レンズの断面図
【
図9】位置決めローラ及びトルク付与ローラの構成を示す断面図
【
図10】ケースを取り除いた状態の駆動ユニットの概略構成を示す斜視図
【
図11】鏡胴に対するモータ及び減速機の取り付け状態を示す図
【
図12】鏡胴に対するモータ及び減速機の取り付け状態を示す図
【
図13】トルクT1、T2及びT3の算出方法の説明図
【
図18】トルク付与ローラの設置数を調整して負荷トルクを調整する方法の説明図
【
図19】第2の実施の形態の交換レンズの全体の概略構成を示す断面図
【
図20】第1の実施の形態の交換レンズにおいて、第2レンズ筒が最も前側に移動した場合のカム筒と第2レンズ筒との関係を示した図
【
図21】第1の実施の形態の交換レンズにおいて、第2レンズ筒が最も後側に移動した場合のカム筒と第2レンズ筒との関係を示した図
【
図22】第2の実施の形態の交換レンズにおいて、第2レンズ筒が最も前側に移動した場合のカム筒と第2レンズ筒との関係を示した図
【
図23】第2の実施の形態の交換レンズにおいて、第2レンズ筒が最も後側に移動した場合のカム筒と第2レンズ筒との関係を示した図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0020】
[第1の実施の形態]
ここでは、レンズ交換式カメラの交換レンズに本発明を適用した場合を例に説明する。レンズ交換式カメラでは、交換レンズがカメラ本体に対して着脱自在に装着される。
【0021】
[全体の概略構成]
図1は、第1の実施の形態の交換レンズの全体の概略構成を示す断面図である。本実施の形態の交換レンズ1は、いわゆる単焦点のAFレンズである。AFレンズは、AF(Auto Focus)が可能なレンズである。特に、本実施の形態の交換レンズ1は、フォーカシングのためのモータを内蔵する。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態の交換レンズ1は、光軸Zに沿って順に第1レンズ群L1及び第2レンズ群L2を有する。第1レンズ群L1は固定のレンズ群である。第2レンズ群L2は、光軸Zに沿って移動するレンズ群である。第2レンズ群L2は、フォーカスレンズ群である。第2レンズ群L2を光軸Zに沿って移動させることにより、焦点調節が行われる。
【0023】
本実施の形態の交換レンズ1の鏡胴10は、主として、固定筒12、第1レンズ筒14、カム筒16、第2レンズ筒18、外装体20及びマウント22等で構成される。
【0024】
〈固定筒〉
固定筒12は、交換レンズ1をカメラ本体に装着した場合にカメラ本体に対して固定の要素である。固定筒12は、第1固定筒12A、第2固定筒12B及び後端カバー12Cを一体化して構成される。第1固定筒12A及び第2固定筒12Bは、互いのフランジ部をネジ(不図示)で締結することにより、同軸上に繋ぎ合わされる。後端カバー12Cは、第2固定筒12Bの端部にネジ(不図示)でネジ止めすることにより、第2固定筒12Bの端部に取り付けられる。固定筒12は、第1筒の一例である。
【0025】
〈第1レンズ筒〉
第1レンズ筒14は、第1レンズ群L1を保持する枠である。第1レンズ群L1は、第1レンズ筒14の内周部に位置決めされて保持される。第1レンズ筒14は、第1固定筒12Aの内周部に位置決めされて保持される。
【0026】
〈カム筒〉
カム筒16は、第2固定筒12Bの内周部に嵌合して、第2固定筒12Bの内周部に回転可能に保持される。カム筒16は、第2筒の一例である。
【0027】
〈第2レンズ筒〉
第2レンズ筒18は、第2レンズ群L2を保持する枠である。第2レンズ群L2は、第2レンズ筒18の内周部に位置決めされて保持される。第2レンズ筒18は、カム筒16の内周部に収容されて、軸方向に移動可能に保持される。第2レンズ筒18は、カム筒16を回転させることにより、光軸Zに沿って前後移動する。第2レンズ筒18の駆動機構及び位置検出機構については後述する。第2レンズ筒18は、第3筒の一例である。
【0028】
〈外装体〉
外装体20は、交換レンズ1の外装を構成する。外装体20は、複数の要素を組み合わせて構成される。外装体20を構成する要素には、交換レンズ1の操作部材(たとえば、フォーカスリング2等)も含まれる。外装体20は、固定筒12に固定して取り付けられる。
【0029】
〈マウント〉
マウント22は、鏡胴10の後端部に備えられる。マウント22は、たとえば、バヨネットマウントで構成される。交換レンズ1は、このマウント22を介して、カメラ本体に着脱自在に装着される。
【0030】
[第2レンズ筒の駆動機構]
図2及び
図3は、外装体を取り除いた状態の鏡胴の後段部分(固定筒12の第2固定筒12Bよりも後側の部分)の斜視図である。なお、
図2は、鏡胴の後段部分を前側から見た斜視図である。また、
図3は、鏡胴の後段部分を後側から見た斜視図である。また、
図4は、鏡胴の後段部分の分解斜視図である。
【0031】
第2レンズ筒18の駆動機構は、いわゆるカム機構によって構成される。カム機構は、第2レンズ筒18に備えられる一対のカムフォロア30A、30Bと、カム筒16に備えられる一対のカム溝40A、40Bと、第2固定筒12Bに備えられる直進溝50と、カム筒16に備えられる位置決めローラ60と、第2固定筒12Bに備えられる位置決め溝70と、カム筒16を回転させる駆動ユニット80と、を備えて構成される。また、この第2レンズ筒18の駆動機構には、カム筒16の回転に負荷トルクを与えるトルク付与機構100が含まれる。
【0032】
〈カムフォロア〉
一対のカムフォロア30A、30Bは、第2レンズ筒18の外周面上の3箇所に備えられる。一対のカムフォロア30A、30Bは、周方向に沿って等間隔に配置される。各設置部において、一対のカムフォロア30A、30Bは、光軸Zに沿って前後に配置される。以下、必要に応じて、前側(被写体側)に位置するカムフォロア30Aを第1カムフォロア30A、後側(像側)に位置するカムフォロア30Bを第2カムフォロア30Bと称して、両者を区別する。
【0033】
図5は、カムフォロアの構成を示す断面図である。なお、同図は、第2カムフォロア30Bのものであるが、第1カムフォロア30Aも同じ構成である。
【0034】
図5に示すように、カムフォロアは、軸部31と、その軸部31に装着された一対のベアリング32A、32Bと、を有する。
【0035】
軸部31は、円筒形状を有する。軸部31は、中空部にネジ33が通されて、第2レンズ筒18の外周部にネジ止めされる。第2レンズ筒18の外周部には、軸部31の取り付け個所にネジ穴35が備えられる。
【0036】
一対のベアリング32A、32Bは、それぞれボールベアリング等の転がり軸受で構成される。一対のベアリング32A、32Bは、軸部31の先端側に位置する第1ベアリング32Aと、軸部31の基端部側に位置する第2ベアリング32Bとで構成される。第1ベアリング32A及び第2ベアリング32Bの間にはスペーサ34が配置される。第1ベアリング32A及び第2ベアリング32Bは、その内輪部が軸部31に軽圧入されて、軸部31に装着される。軸部31に装着された第1ベアリング32A及び第2ベアリング32Bは、その外輪部が軸部31に対して回転自在に保持される。
【0037】
第2レンズ筒18は、
図1及び
図4に示すように、本体部18Aと、その本体部18Aの先端に備えられた可動部18Bと、を有する。
【0038】
可動部18Bは、円筒形状を有する。本体部18Aは、先端に可動部18Bが嵌合する嵌合部18aを有する。嵌合部18aは、段部で構成され、本体部18Aの先端部分を縮小させて構成される。可動部18Bは、嵌合部18aの外周に嵌合させて、本体部18Aに取り付けられる。本体部18Aは、第3筒本体部の一例であり、可動部18Bは、第3筒可動部の一例である。
【0039】
抜け止めの機構として、可動部18Bの内周には、突起部24が備えられる。一方、嵌合部18aの外周には、溝部26が備えられる。突起部24は、可動部18Bの内周面上の3箇所に備えられる。溝部26は、突起部24が嵌合する溝で構成される。溝部26は、嵌合部18aの外周面上の3箇所に備えられる。溝部26は、導入部26A及び規制部26Bを有する。導入部26Aは、本体部18Aの先端から光軸Zに沿って形成される。規制部26Bは、導入部26Aの端部から周方向に沿って形成される。
【0040】
可動部18Bは、突起部24を溝部26の規制部26Bに嵌合させて、本体部18Aに取り付けられる。これにより、本体部18Aに対して可動部18Bが抜け止めされて取り付けられる。
【0041】
なお、突起部24は、規制部26Bに対して一定の遊びをもって嵌合するように構成される。すなわち、その光軸方向の幅が、規制部26Bの光軸方向の幅よりも狭く構成される。これにより、突起部24を規制部26Bに嵌合させた状態で可動部18Bを光軸Zに沿って移動可能に保持できる。
【0042】
可動部18Bは、本体部18Aに取り付ける際、付勢バネ18Cを介して本体部18Aに取り付けられる。付勢バネ18Cは、ウェーブワッシャ(波形座金)で構成される。ウェーブワッシャは、平座金を波型に曲げたものであり、つぶされることにより、バネの働きをして、軸方向の隙間を除去する。付勢バネ18Cは、可動部18Bの後端部において、可動部18Bと本体部18Aとの間に配置される。これにより、可動部18Bが、本体部18Aに対して、光軸Zに沿って先端方向に付勢される。
【0043】
一方のカムフォロアである前側の第1カムフォロア30Aは、可動部18Bに備えられ、他方のカムフォロアである後側の第2カムフォロア30Bは、本体部18Aに備えられる。上記のように、可動部18Bは、本体部18Aに対して光軸Zに沿って先端方向に付勢される。したがって、第1カムフォロア30A及び第2カムフォロア30Bは、光軸Zに沿って、互いに離れる方向に付勢される。
【0044】
〈カム溝〉
図4に示すように、一対のカム溝40A、40Bは、カム筒16の周面の3箇所に備えられる。一対のカム溝40A、40Bの配置間隔は、一対のカムフォロア30A、30Bの配置間隔と同じである。すなわち、周方向に沿って等間隔に配置される。一対のカム溝40A、40Bは、同じ形状(カム軌跡)を有し、光軸Zに沿って前後に配置される。したがって、一対のカム溝40A、40Bは、互いに平行に配置される。以下、必要に応じて、前側に位置するカム溝40Aを第1カム溝40A、後側に位置するカム溝40Bを第2カム溝40Bと称して、両者を区別する。
【0045】
一対のカムフォロア30A、30
Bは、一対のカム溝40A、40Bに個別に嵌合する。すなわち、第1カムフォロア30Aは、第1カム溝40Aに嵌合し、第2カムフォロア30Bは、第2カム溝40Bに嵌合する。
図6は、一対のカムフォロアの設置部を拡大した断面図である。上記のように、第1カムフォロア30A及び第2カムフォロア30Bは、付勢バネ18Cにより、光軸Zに沿って互いに離れる方向に付勢される。したがって、第1カムフォロア30Aを第1カム溝40Aに嵌合させると、第1カムフォロア30Aは、第1カム溝40Aの前側の内壁面40aに押圧当接して嵌合する。一方、第2カムフォロア30Bは、第2カム溝40Bに嵌合させると、第2カム溝40Bの後側の内壁面40bに押圧当接して嵌合する。これにより、カム筒16と第2レンズ筒18との間に生じるガタを除去でき、第2レンズ筒18をカム筒16に対して安定して保持できる。
【0046】
〈直進溝〉
図4に示すように、直進溝50は、光軸Zに沿って配置された直線状の溝で構成される。直進溝50は、第2固定筒12Bの周面の3箇所に備えられる。直進溝50の配置間隔は、一対のカムフォロア30A、30Bの配置間隔と同じである。すなわち、周方向に沿って等間隔に配置される。一対のカムフォロア30A、30Bは、同じ直進溝50に嵌合する。直進溝50は、第1溝の一例である。
【0047】
〈位置決めローラ〉
位置決めローラ60は、第2固定筒12Bに対してカム筒16を光軸方向に位置決めするローラである。また、位置決めローラ60は、カム筒16の回動範囲を規制するローラとしても機能する。
【0048】
図4に示すように、位置決めローラ60は、カム筒16の外周面上の3箇所に備えられる。位置決めローラ60は、周方向に沿って等間隔に配置される。
【0049】
図7は、位置決めローラの設置個所での交換レンズの断面図である。また、
図8は、位置決めローラの設置部を拡大した断面図である。また、
図9は、位置決めローラ及びトルク付与ローラの構成を示す断面図である。
【0050】
位置決めローラ60は、ベアリング(ボールベアリング等の転がり軸受)で構成される。位置決めローラ60は、その内輪部が、カム筒16に備えられたローラ支持軸61に軽圧入されて、ローラ支持軸61に装着される。ローラ支持軸61に装着された位置決めローラ60は、その外輪部が回転自在に支持される。
【0051】
ローラ支持軸61は、円筒形状を有する。ローラ支持軸61は、中空部にネジ62が通されて、カム筒16の外周部にネジ止めされる。カム筒16の外周部には、ローラ支持軸61の取り付け個所にネジ穴64が備えられる。
【0052】
〈位置決め溝〉
図4に示すように、位置決め溝70は、周方向に沿って配置された直線状の溝で構成される。位置決め溝70は、第2固定筒12Bの周面の3箇所に備えられる。位置決め溝70の配置間隔は、位置決めローラ60の配置間隔と同じである。すなわち、周方向に沿って等間隔に配置される。位置決め溝
70は、第2溝の一例である。
【0053】
位置決めローラ60は、位置決め溝70に嵌合する。これにより、第2固定筒12Bに対して、カム筒16が光軸方向に位置決めされる。また、第2固定筒12Bに対して、カム筒16の回動範囲(可動範囲)が規制される。位置決めローラ60は、第2ローラの一例である。
【0054】
〈駆動ユニット〉
駆動ユニット80は、カム筒16を回転駆動する。カム筒16は、その後端の内周部に駆動用のギア部16Aを有する。駆動ユニット80は、このギア部16Aを回転駆動して、カム筒16を回転させる。
【0055】
図4に示すように、駆動ユニット80は、固定筒12の後端カバー12Cに取り付けられる。駆動ユニット80は、モータ及び減速機を含み、これらをケース82に組み付けてユニット化される。
【0056】
図10は、ケースを取り除いた状態の駆動ユニットの概略構成を示す斜視図である。また、
図11及び
図12は、鏡胴に対するモータ及び減速機の取り付け状態を示す図である。
図11は、外装体を取り除いた状態の鏡胴の背面図に相当する。また、
図12は、外装体を取り除いた状態の鏡胴の後段部分の背面斜視図に相当する。なお、
図11及び
図12では、便宜上、固定筒12の後端カバー12C及び駆動ユニット80のケース82を省いた状態の図を示している。
【0057】
上記のように、駆動ユニット80は、モータ84、及び、そのモータ84の回転を減速させる減速機88を有する。駆動ユニット80は、駆動部の一例である。
【0058】
モータ84は、たとえば、ステッピングモータで構成される。モータ84には、その回転数を検出するためのエンコーダ86が備えられる。
【0059】
減速機88は、ギア列を有する。ギア列は、複数のギア88A~88Fを組み合わせて構成される。本実施の形態の減速機88は、ギア列の一部にウォームギアを含む。ウォームギアは、ウォーム及びウォームホイールで構成される。本実施の形態の減速機88では、モータ84の出力軸に連結されるギア88Aがウォームで構成される。最終のギア88Fは、駆動ギアを構成する。駆動ユニット80は、後端カバー12Cに取り付けられることにより、駆動ギア88Fがカム筒16のギア部16Aに噛み合わされる。これにより、モータ84を駆動すると、その回転が減速機88を介してカム筒16のギア部16Aに伝達され、カム筒16が回転する。
【0060】
〈トルク付与機構〉
トルク付与機構100は、カム筒16の回転に負荷トルクを与える。
図4に示すように、トルク付与機構100は、カム筒16に備えられるトルク付与ローラ102と、トルク付与ローラ102に押圧当接される付勢リング104と、付勢リング104を付勢する付勢バネ106と、付勢バネ106を支持するバネ支持枠108と、を有する。
【0061】
トルク付与ローラ102は、円筒状の筒体(いわゆる通常のローラ)で構成される。
図9に示すように、トルク付与ローラ102は、カム筒16に備えられたローラ支持軸61に支持される。より具体的には、その内周部にローラ支持軸61を嵌合させることにより、ローラ支持軸61に装着され、ローラ支持軸61に対して回転自在に支持される。
【0062】
上記のように、このローラ支持軸61は、位置決めローラ60を支持する軸でもある。トルク付与ローラ102は、位置決めローラ60の上にスペーサ110を介してローラ支持軸61に装着される。ローラ支持軸61に装着されたトルク付与ローラ102は、ローラ支持軸61を固定するネジ62の頭部62Aで抜け止めされて、回転自在に支持される。
【0063】
ベアリングで構成されている位置決めローラ60とは異なり、トルク付与ローラ102は、ローラ支持軸61に嵌合しているだけなので、回転の際に負荷が生じる。具体的には、トルク付与ローラ102の内周部とローラ支持軸61の外周部との間の摩擦(回転摩擦)で回転に負荷が生じる。なお、このようにトルク付与ローラ102とローラ支持軸61との間には摩擦が生じることから、トルク付与ローラ102及びローラ支持軸61には、磨耗に強い材質のものを選択することが好ましい。たとえば、トルク付与ローラ102及びローラ支持軸61は、いずれか一方をステンレス製とし、他方を真鍮製とすることができる。なお、トルク付与ローラ102については、樹脂製とすることもできる。たとえば、摺動特性に優れたポリアセタール製のものを用いることもできる。トルク付与ローラ102は、第1ローラの一例である。
【0064】
付勢リング104は、
図4に示すように、リング形状を有し、第2固定筒12Bの外周部に嵌合して、第2固定筒12Bの外周部に装着される。第2固定筒12Bの外周部に装着された付勢リング104は、光軸Zに沿って前後移動可能に保持される。付勢リング104は、たとえば、アルマイト加工されたアルミニウム製とすることができる。付勢リング104は、第1枠の一例である。
【0065】
付勢バネ106は、ウェーブワッシャで構成される。付勢バネ106は、第2固定筒12Bの外周部に装着されて、付勢リング104をトルク付与ローラ102に向けて付勢する。付勢バネ106は、付勢部材の一例である。
【0066】
バネ支持枠108は、
図4に示すように、リング状の枠体で構成される。バネ支持枠108は、第2固定筒12Bの外周部に嵌合して、第2固定筒12Bの外周部に装着される。第2固定筒12Bに装着されたバネ支持枠108は、周面の複数個所をネジ108Aでネジ止めされて、第2固定筒12Bに固定される。バネ支持枠108は、第2枠の一例である。
【0067】
付勢バネ106は、バネ支持枠108と付勢リング104との間に配置されて、付勢リング104をトルク付与ローラ102に向けて付勢する。これにより、付勢リング104が、トルク付与ローラ102に押圧当接される。また、この付勢リング104が、トルク付与ローラ102に押圧当接することにより、カム筒16の回転に負荷トルクが与えられる。また、この付勢リング104が、トルク付与ローラ102に押圧当接することにより、カム筒16が光軸Zに沿って付勢され、固定筒12に対するカム筒16のガタが除去される。
【0068】
[第2レンズ筒の位置検出機構]
第2レンズ筒18の位置検出機構は、モータ84に備えられたエンコーダ86と、固定筒12に備えられたフォトインタラプタ120と、によって構成される。
【0069】
上記のように、エンコーダ86は、モータ84の回転数を検出する。フォトインタラプタ120は、第2レンズ筒18が原点位置に位置したことを検出する。フォトインタラプタ120は、固定筒12の後端カバー12Cに備えられる。フォトインタラプタ120は、第2レンズ筒18に備えられた遮光部122を検出して、第2レンズ筒18が原点位置に位置したことを検出する。
【0070】
第2レンズ筒18の位置は、次の手順で検出される。まず、フォトインタラプタ120によって、第2レンズ筒18が原点位置に位置したことを検出する。検出後のモータ84の回転数をエンコーダ86によって検出する。これにより、原点位置に対する第2レンズ筒18の位置を検出される。すなわち、モータ84の回転数に対する第2レンズ筒18の移動量は既知なので、原点位置からのモータ84の回転数を検出することにより、原点位置に対する第2レンズ筒18の位置を検出できる。
【0071】
[交換レンズの作用]
以上のように構成される本実施の形態の交換レンズ1は、モータ84を駆動することにより、フォーカスレンズ群である第2レンズ群L2が光軸Zに沿って前後移動し、焦点調節される。より具体的には、モータ84を駆動すると、そのモータ84の回転がカム筒16に伝達され、カム筒16が回転することにより、カムの作用で第2レンズ群L2を保持した第2レンズ筒18が光軸Zに沿って前後移動する。
【0072】
カム筒16には、ギア列を介して、モータ84の回転が伝達される。このため、停止する際に可動部の慣性力や重力の影響によって、バックラッシの範囲で第2レンズ筒18の停止位置が不安定になる。しかし、本実施の形態の交換レンズ1には、トルク付与機構100が備えられているため、高い停止精度を確保できる。すなわち、トルク付与機構100によって、カム筒16の回転に負荷トルクが与えられるため、ギアの噛み合わせ部分にガタがある場合であっても、第2レンズ筒18を安定して停止させることができる。
【0073】
なお、負荷トルクは、次のように与えられる。カム筒16には、トルク付与ローラ102が備えられている。トルク付与ローラ102には、付勢バネ106で付勢された付勢リング104が押圧当接されている。カム筒16を回転させると、トルク付与ローラ102が、付勢リング104に沿って転動する。これにより、トルク付与ローラ102の内周とローラ支持軸61の外周との間に回転摩擦が発生する。この回転摩擦が、カム筒16の負荷トルクとして作用する。
【0074】
このように、本実施の形態の交換レンズ1によれば、カム筒16の回転に負荷トルクが与えられるため、第2レンズ筒18を安定して停止させることができる。また、負荷トルクは、トルク付与ローラ102の回転摩擦で発生するため、常に安定した状態で付与できる。
【0075】
トルク付与機構100は、カム筒16のガタを取り除く機能も有している。すなわち、位置決めローラ60と同軸上に備えられたトルク付与ローラ102を付勢リング104で光軸方向に付勢することにより、位置決めローラ60が位置決め溝70の内壁面に押圧当接される。これにより、固定筒12に対するカム筒16のガタを取り除くことができる。また、位置決めローラ60と軸(ローラ支持軸61)を共用することにより、構成を簡素化できる。
【0076】
[負荷トルクの最適化]
負荷トルクは、慣性力及び重力による回転を抑制できる値に設定される。一例として、カム筒を設定減速度で停止させるために必要なトルクをT1、レンズを下向き又は上向きにして第2レンズ筒が自重で落ちる方向に駆動した場合に第2レンズ筒を設定減速度で停止させるために必要なトルクをT2とした場合、負荷トルクTFは、下記の条件式を満たすように設定される。
【0077】
TF>(T1+T2)
なお、トルクT1、T2は、駆動制御で設定されたモータの減速度から算出される。ベアリングの動摩擦係数は、きわめて小さいため、計算上無視している。
【0078】
図13は、トルクT1、T2及びT3の算出方法の説明図である。
【0079】
(1)トルクT1
トルクT1[N・m]は、次式により算出される。
【0080】
T1=I×AC
ここで、Iは、カム筒の慣性モーメントI、ACは、カム筒の減速度[rad/s2]である。
【0081】
カム筒の減速度AC[rad/s2]は、次式により算出される。
【0082】
AC=AM/RR
ここで、AMは、モータの減速度[rad/s2]である。また、RRは、減速比である。減速比RRは、次式で算出される。
【0083】
RR=モータの回転数/カム筒の回転数
(2)トルクT2
トルクT2[N・m]は、次式により算出される。
【0084】
T2=FR×R
ここで、FRは、
図13に示すように、カム筒の回転方向分力[N]である。また、Rは、回転中心からカム溝までの距離[m]である。カム筒の回転方向分力FR[N]は、次式により算出される。
【0085】
FR=tan(θ)×FL
ここで、θは、
図13に示すように、カム角度[rad]である。また、FLは、レンズを下向き又は上向きにして第2レンズ筒が自重で落ちる方向に駆動した場合に第2レンズ筒を減速させるために必要な力[N]である。FL[N]は、次式により算出される。
【0086】
FL=M+(M×AL)
ここで、M[Kg]は、第2レンズ群を含む第2レンズ筒の全体の重量である。また、ALは、第2レンズ筒[rad/s2]の減速度である。AL[rad/s2]は、次式により算出される。
【0087】
AL=AM×L
ここで、AMは、モータの減速度[rad/s2]である。また、Lは、カムリード[m/rad]である。カムリードは、1[rad]に進む移動量である。
【0088】
(3)負荷トルクTF
負荷トルクTF[N・m]は、次式により算出される。
【0089】
TF=W×μ×RM
ここで、Wは、摩擦面に垂直な荷重[N]である。また、μは、摩擦面の動摩擦係数である。また、RMは、摩擦面の回転中心からの距離[m]である。
【0090】
負荷トルクTFが、上記条件を満たすように、トルク付与ローラ102に付与する荷重、トルク付与ローラ102とローラ支持軸61との間の動摩擦係数等を設定する。なお、トルク付与ローラ102に付与する荷重は、付勢バネ106のバネ定数(付勢バネの力量)によって調整できる。また、動摩擦係数については、トルク付与ローラ102及びローラ支持軸61の材質、表面粗さ等で調整できる。
【0091】
負荷トルクTFが、上記条件を満たすことにより、レンズの駆動制御で設定したモータの減速度より早く停止し、状態を保持できる。これにより、安定した位置精度を確保できる。負荷トルクTFは、上記条件を満たす範囲で極力小さく設定することによって駆動速度と停止精度の両立を実現する。
【0092】
[変形例]
(1)トルク付与機構の変形例
(a)第1の変形例
図14は、トルク付与機構の第1の変形例を示す図である。
【0093】
上記実施の形態のトルク付与機構100では、トルク付与ローラ(第1ローラ)102及び位置決めローラ(第2ローラ)60がローラ支持軸61を共用している。
【0094】
トルク付与ローラ102と位置決めローラ60とがローラ支持軸61を共用する構成においては、
図14に示すように、トルク付与ローラ102をベアリング(ローラベアリング等)で構成し、位置決めローラ60をいわゆる通常のローラ(円筒状の筒体)で構成した場合も、同様の作用効果を得ることができる。この場合、位置決めローラ60の内周面とローラ支持軸61の外周面とが摩擦面として機能する。すなわち、位置決めローラ60の内周面とローラ支持軸61の外周面との間で発生する摩擦力が負荷トルクとして作用する。
【0095】
(b)第2の変形例
図15は、トルク付与機構の第2の変形例を示す図である。
【0096】
同図に示す例では、トルク付与ローラ102及び位置決めローラ60の双方を通常のローラで構成している。この場合も、同様の作用効果が得られる。この場合、トルク付与ローラ102及び位置決めローラ60の内周面とローラ支持軸61の外周面とが摩擦面として機能する。
【0097】
(c)第3の変形例
図16は、トルク付与機構の第3の変形例を示す図である。
【0098】
同図は、トルク付与ローラ102を専用の軸(ローラ支持軸)で支持する場合の例を示している。同図に示すように、トルク付与ローラ102を支持するローラ支持軸112は、カム筒16に備えられる。ローラ支持軸112は、円筒形状を有し、中空部にネジ66が通されて、カム筒16にネジ止めされる。カム筒16には、ローラ支持軸102Aの取り付け個所にネジ穴58が備えられる。また、第2固定筒12Bには、ローラ支持軸102Aが通される溝72が備えられる。溝72は、周方向に沿って配置される。
【0099】
このように、トルク付与ローラ102は、位置決めローラ60とは別に設けることもできる。なお、上記実施の形態のように、位置決めローラ60と軸を共用した場合には、構成を簡素化できる。
【0100】
(d)変形例4
上記実施の形態では、付勢バネ106の支持部であるバネ支持枠108をネジ108Aで第2固定筒12Bに取り付ける構造とされているが、付勢バネ106の支持部は第2固定筒12Bに一体的に備える構成としてもよい。
【0101】
図17は、付勢バネの支持部の変形例を示す図である。
【0102】
図17に示す例では、第2固定筒12Bが、外周部にフランジ部12bを有し、そのフランジ部12bが、付勢バネ106の支持部と
して機能する。付勢バネ106は、付勢リング104とフランジ部12bとの間には配置されて、付勢リング104を光軸Zに沿ってトルク付与ローラ102の方向に付勢する。
【0103】
なお、
図17に示す例では、前側からトルク付与ローラ102を付勢する場合の例を示している。すなわち、トルク付与ローラ102の前側に付勢リング104を配置し、トルク付与ローラ102に対して前側から付勢する構成としている。このように、トルク付与ローラ102を前側から付勢する構成とすることもできる。
【0104】
このように、付勢バネ106の支持部を第2固定筒12Bに一体化した場合には、構成を簡素化できる。一方、上記実施の形態のように、バネ支持枠108を第2固定筒12Bに着脱できる構成にした場合には、組み立て性及びメンテナンス性を向上できる。
【0105】
なお、上記実施の形態では、付勢バネ106をウェーブワッシャで構成しているが、付勢バネの構成は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、コイルバネ等で構成することもできる。
【0106】
(2)負荷トルクの調整方法の変形例
トルク付与機構100が付与する負荷トルクは、トルク付与ローラ102の設置数によって調整することもできる。すなわち、必要な負荷トルクに応じて、トルク付与ローラ102の設置数を増減させる。
【0107】
なお、上記実施の形態のように、位置決めローラ60が支持されたローラ支持軸61にトルク付与ローラ102を取り付ける構成の場合、トルク付与ローラ102として使用するローラ(通常のローラ)をベアリングに置き換えることで、その設置数を調整できる。
図18は、トルク付与ローラの設置数を調整して負荷トルクを調整する方法の説明図である。同図は、3つあるトルク付与ローラ102の1つをベアリングに置き換えた場合の例を示している。
【0108】
なお、トルク付与ローラ102及び位置決めローラ60がローラ支持軸61を共用する構成においては、位置決めローラ60を構成するローラをベアリングから通常のローラに置き換えることで、負荷トルクを調整することもできる。
【0109】
(3)鏡胴の変形例
上記実施の形態では、第2レンズ筒18を一対のカムフォロア30A、30B及び一対のカム溝40A、40Bで駆動する構成としているが、1つのカムフォロア及び1つのカム溝で駆動する構成としてもよい。
【0110】
[第2の実施の形態]
図19は、第2の実施の形態の交換レンズの全体の概略構成を示す断面図である。
【0111】
本実施の形態の交換レンズ1は、第2レンズ筒18の構成が上記第1の実施の形態の交換レンズと相違する。本実施の形態の交換レンズ1では、第2レンズ筒18が、その全可動域において、カム筒16に備えられた一対のカム溝40A、40Bの開口部を遮蔽するように構成される。すなわち、どの位置にあっても、一対のカム溝40A、40Bの開口部を遮蔽するように構成される。
【0112】
まず、比較のため、第1の実施の形態の交換レンズ1におけるカム筒16と第2レンズ筒18との関係について説明する。
【0113】
(1)第1の実施の形態の交換レンズ
図20は、第1の実施の形態の交換レンズにおいて、第2レンズ筒が最も前側に移動した場合のカム筒と第2レンズ筒との関係を示した図である。また、
図21は、第1の実施の形態の交換レンズにおいて、第2レンズ筒が最も後側に移動した場合のカム筒と第2レンズ筒との関係を示した図である。同図において、破線はカム筒16を示し、実線は第2レンズ筒18を示している。また、同図においては、便宜上、カムフォロアを省略している。
【0114】
図20に示すように、第1の実施の形態の交換レンズ1では、第2レンズ筒18が最も前側に移動した場合、第2カム溝40Bの後端部分(光軸方向の後側の端部)が、第2レンズ筒18に遮蔽されずに開放される。
【0115】
また、
図21に示すように、第2レンズ筒18が最も後側に移動した場合、第1カム溝40Aの前端部分(光軸方向の前側の端部)が、第2レンズ筒18に遮蔽されずに開放される。
【0116】
(2)第2の実施の形態の交換レンズ
次に、本実施の形態の交換レンズ1におけるカム筒16と第2レンズ筒18との関係について説明する。
【0117】
図22は、本実施の形態の交換レンズにおいて、第2レンズ筒が最も前側に移動した場合のカム筒と第2レンズ筒との関係を示した図である。
図23は、本実施の形態の交換レンズにおいて、第2レンズ筒が最も後側に移動した場合のカム筒と第2レンズ筒との関係を示した図である。同図において、破線はカム筒16を示し、実線は第2レンズ筒18を示している。また、同図においては、便宜上、カムフォロアを省略している。
【0118】
図22に示すように、本実施の形態の交換レンズ1の場合、第2レンズ筒18が最も前側に移動した場合、カム筒16に備えられた一対のカム溝40A、40Bは、いずれも第2レンズ筒18によって、その開口部が遮蔽される。
図23に示すように、第2レンズ筒18が最も後側に移動した場合も同様に、カム筒16に備えられた一対のカム溝40A、40Bは、いずれも第2レンズ筒18によって、その開口部が遮蔽される。
【0119】
このように、本実施の形態の交換レンズ1では、第2レンズ筒18の全可動域において、一対のカム溝40A、40Bの開口部が、第2レンズ筒18によって遮蔽される。これにより、カム溝40A、40Bを介してカム筒16の内側に塵埃が進入するのを防止できる。特に、本実施の形態の交換レンズ1のように、カム筒16の外側に摩擦部を有する場合には、摩擦粉の進入を防止できるので、有効に作用する。
【0120】
第2レンズ筒18は、カム筒16の内周面に嵌合する部分の長さ(光軸方向の長さ)を調整することによって、その全可動域でカム溝40A、40Bの開口部を遮蔽するように構成する。すなわち、嵌合部がカム溝40A、40Bをオーバーラップするように構成する。
【0121】
本実施の形態の交換レンズ1のように、第2レンズ筒18が可動部18Bを有する場合には、可動部18Bの長さを調整することで、第1カム溝40Aの開口部を遮蔽する機能を実現できる。
【0122】
[その他の実施の形態]
上記実施の形態では、レンズ交換式カメラの交換レンズに本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。たとえば、レンズ一体式カメラ(レンズがカメラ本体に一体的に備えられたカメラ)のレンズの鏡胴に適用することもできる。また、カメラ以外にも、たとえば、顕微鏡、望遠鏡等の鏡胴に適用することもできる。また、カメラには、スチルカメラの他、ビデオカメラ、テレビカメラ、シネカメラ等の各種カメラが含まれ、更に、カメラ機能を備えた機器(たとえば、カメラ付きの携帯電話、スマートフォン、タブレットコンピュータ等)も含まれる。
【0123】
また、上記実施の形態では、鏡胴に駆動部が内蔵される場合を例に説明したが、駆動部は鏡胴外に備えられていてもよい。たとえば、レンズ交換式カメラにおいて、カメラ本体側に駆動部(モータ)を備え、カメラ本体側から回転動力を得て、カム筒を回転駆動する場合にも同様に適用できる。
【0124】
また、上記実施の形態では、駆動部を、いわゆる減速機付きのモータで構成しているが、駆動部の構成は、これに限定されるものではない。なお、上記のように、ギア列を有する減速機付きのモータにおいては、停止する際に可動部の慣性力や重力の影響によって、バックラッシの範囲で第2レンズ筒18の停止位置が不安定になるので、本発明は特に有効に作用する。
【符号の説明】
【0125】
1 交換レンズ
2 フォーカスリング
10 鏡胴
12 固定筒
12A 第1固定筒
12B 第2固定筒
12C 後端カバー
12b フランジ部
14 第1レンズ筒
16 カム筒
16A ギア部
18 第2レンズ筒
18A 本体部
18B 可動部
18C 付勢バネ(ウェーブワッシャ)
18a 嵌合部
20 外装体
22 マウント
24 突起部
26 溝部
26A 導入部
26B 規制部
30A カムフォロア(第1カムフォロア)
30B カムフォロア(第2カムフォロア)
31 軸部
32A ベアリング(第1ベアリング)
32B ベアリング(第2ベアリング)
33 ネジ
34 スペーサ
35 ネジ穴
40A カム溝(第1カム溝)
40B カム溝(第2カム溝)
40a 内壁面
40b 内壁面
50 直進溝
58 ネジ穴
60 位置決めローラ
61 ローラ支持軸
62 ネジ
62A 頭部
64 ネジ穴
66 ネジ
70 位置決め溝
72 溝
80 駆動ユニット
82 ケース
84 モータ
86 エンコーダ
88 減速機
88A ギア(ウォーム)
88B ギア
88C ギア
88D ギア
88E ギア
88F ギア(駆動ギア)
100 トルク付与機構
102 トルク付与ローラ
102A ローラ支持軸
104 付勢リング
106 付勢バネ(ウェーブワッシャ)
108 バネ支持枠
108A ネジ
110 スペーサ
112 ローラ支持軸
120 フォトインタラプタ
122 遮光部
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群
Z 光軸