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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】流動接触分解ガソリンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 11/18 20060101AFI20220721BHJP
【FI】
C10G11/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019069973
(22)【出願日】2019-04-01
(65)【公開番号】P2020169235
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 晃平
(72)【発明者】
【氏名】本多 慶彦
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4200520(US,A)
【文献】特開2020-55899(JP,A)
【文献】特開2011-79909(JP,A)
【文献】特開昭62-72784(JP,A)
【文献】特開2003-105345(JP,A)
【文献】特開昭61-235491(JP,A)
【文献】特開2007-54753(JP,A)
【文献】特開2004-83615(JP,A)
【文献】特開2000-319667(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101191068(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも脱硫重油を含む原料油を供給する、流動接触分解触媒を投入しながら用いる流動接触分解装置において、当該流動接触分解触媒の投入量に対する該原料油中のバナジウム相当金属量を0.4質量%以上4.0質量%以下とすることで、装置内流動接触分解触媒の残留炭素分を0.05質量%超0.50質量%以下とする、流動接触分解ガソリンの製造方法。
【請求項2】
前記バナジウム相当金属量を0.4質量%超2.5質量%以下とする請求項1に記載の流動接触分解ガソリンの製造方法。
【請求項3】
前記流動接触分解装置における再生塔の運転温度が、615℃以上645℃以下である請求項1又は2に記載の流動接触分解ガソリンの製造方法。
【請求項4】
前記原料油中の重質軽油の含有量が、10容量%以上90容量%以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の流動接触分解ガソリンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動接触分解ガソリンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題に対する意識の高まりに伴い流動接触分解ガソリン等の流動接触分解装置(FCC装置)から得られる各種留分中の硫黄分の低減が求められるようになっている。当該硫黄分の低減手法としては、流動接触分解ガソリン中の硫黄分を下げるには、所望のレベルに脱硫した原料油を用いる、または流動接触分解ガソリン留分を水素化や吸着でさらに脱硫する、流動接触分解装置で用いられる脱硫触媒(FCC触媒)の開発及び改良による方法などが一般的である。例えば、バナジウムを高含量で含むアルミナ、シリカ等の無機酸化物を担体とする触媒をFCC触媒として用いて流動接触分解した石油留分の硫黄含量を低減させる方法(例えば、特許文献1参照)、酸化物マトリックス内に分散したゼオライト等に、Ni、Cu等の所定の金属種を含む化合物を担持した触媒を用いて、硫黄分を減少させた流動接触分解ガソリンを製造する方法(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。しかし、これらの方法では、流動接触分解ガソリンの収率が十分ではないといった問題があった。
【0003】
流動接触分解ガソリンの収率の向上、留分中の硫黄分の含有量の低減を目的として、バナジウム、ニッケルの蓄積量を所定の範囲内とし、ゼオライトを含有する触媒を用いることで、低硫黄分流動接触分解ガソリンを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2003-510405号公報
【文献】特開平6-277519号公報
【文献】特開2005-15782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年、環境問題に対する意識の高まりは増すばかりであり、環境に関する規制は年々厳しくなっている。また、需要者のコストに対する要求も年々厳しくなっており、環境に関する規制を満足するだけでなく、より安価に流動接触分解ガソリンを提供する必要が生じており、その収率の向上が求められている。そのため、特許文献3で開示される流動接触分解ガソリンを製造する方法より、更なる改良が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、流動接触分解ガソリンを収率よく製造し得る、流動接触分解ガソリンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により解決できることを見出した。すなわち本発明は、下記の構成を有する流動接触分解ガソリンの製造方法を提供するものである。
【0008】
1.少なくとも脱硫重油を含む原料油を供給する、流動接触分解触媒を投入しながら用いる流動接触分解装置において、その流動接触分解触媒の投入量に対する該原料油中のバナジウム相当金属量を0.4質量%以上4.0質量%以下とすることで、装置内流動接触分解触媒の残留炭素分を0.05質量%超0.50質量%以下とする、流動接触分解ガソリンの製造方法。
2.前記バナジウム相当金属量を0.4質量%超2.5質量%以下とする上記1に記載の流動接触分解ガソリンの製造方法。
3.前記流動接触分解装置における再生塔の運転温度が、615℃以上645℃以下である上記1又は2に記載の流動接触分解ガソリンの製造方法。
4.前記原料油中の重質軽油の含有量が、10容量%以上90容量%以下である上記1~3のいずれか1に記載の流動接触分解ガソリンの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流動接触分解ガソリンを収率よく製造し得る、流動接触分解ガソリンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔流動接触分解ガソリンの製造方法〕
本発明における実施形態(以後、単に本実施形態と称する場合がある。)に係る流動接触分解ガソリンの製造方法は、少なくとも脱硫重油を含む原料油を供給する、流動接触分解触媒を投入しながら用いる流動接触分解装置において、当該流動接触分解触媒の投入量に対する該原料油中のバナジウム相当金属量を0.4質量%以上4.0質量%以下とすることで、装置内流動接触分解触媒の残留炭素分を0.05質量%超0.50質量%以下とすることを特徴とするものである。
【0011】
本実施形態では、流動接触分解触媒の投入量に対する原料油中のバナジウム相当金属量を所定の範囲内とすることで、投入する流動接触分解触媒及び装置内流動接触分解触媒(以下、「平衡触媒」とも称する。)上での原料油の過分解を抑制し、かつ該触媒のバナジウム等の被毒金属種による活性の低下を抑制することができ、結果として流動接触分解ガソリンの収率を向上させることができる。より具体的には、流動接触分解装置に供給する原料油中のバナジウム相当金属量を制御することにより、装置内接触分解触媒(平衡触媒)を所定のバナジウム相当金属量とするとともに、該触媒(平衡触媒)の残留炭素分を制御することができるので、流動接触分解ガソリンの収率を向上させることができる。
【0012】
流動接触分解装置で用いられる流動接触分解触媒は、当該装置内の反応塔に固定されるものではなく反応塔内を流動しながら原料油と流動接触することで、原料油の分解反応による流動接触分解ガソリンの生成を促進している。そのため、流動接触分解触媒は、流動接触分解ガソリン及び生成ガス等とともに、その一部は流動接触分解装置外に流出することとなる。また、流動接触分解装置で用いられる流動接触分解触媒は、原料油の分解反応及び触媒再生処理を繰り返して用いられることから、劣化する。そのため、その一部を一定量流動接触分解装置外に抜き出して、新触媒を投入することが一般的に行われており、新触媒を常時補充することとなる。本実施形態の流動接触分解ガソリンの製造方法では、該新触媒の投入量及び原料油の供給量を調整することで、装置内接触分解触媒(平衡触媒)を所定のバナジウム相当金属量とするとともに、該触媒(平衡触媒)の残留炭素分を制御することにより、流動接触分解ガソリンの収率を向上させることができる。
【0013】
(原料油)
本実施形態の流動接触分解ガソリンの製造方法において用いられる原料油は、少なくとも脱硫重油を含むものである。
脱硫重油は、重油直接脱硫装置(「RH装置」とも称する。)で水素化脱硫処理して得られる重油留分(「DSAR」とも称する。)である。重油直接脱硫装置(RH装置)は、通常、常圧蒸留装置、減圧蒸留装置に接続され、これらの装置から得られる残油(重油)を触媒により水素化脱硫処理する装置である。この装置では、水素化脱硫及び水素化分解が行われ、得られる反応生成物は、気液分離され、液相は蒸留等の分離操作により、ナフサ留分、軽油留分、重油留分等の所望の留分に分留され、回収される。ここで回収される重油留分が、脱硫重油(DSAR)である。
【0014】
RH装置で処理される重油としては特に制限なく、例えば、原油の常圧蒸留残油(AR)、減圧蒸留残油(VR)、重質サイクル油(HCO:Heavy Cycle Oil)、流動接触分解残油(CLO:Clarified Oil)、重質軽油、ビスブレーキング油、ビチューメン等の高密度の石油留分が挙げられ、これらは単独であっても、又は複数種が組み合わされていてもよい。
【0015】
RH装置における水素化脱硫及び水素化分解は、通常触媒の存在下で行われ、反応温度、反応圧力、液空間速度等の各種反応条件を調整することにより、所望の脱硫率、重油の分解率を達成することができる。水素化脱硫及び水素化分解は、特に制限されないが、通常300~450℃の反応温度で、通常10~22MPaの水素加圧下で行われ、液空間速度(LHSV)は通常0.1~10h-1とし、水素/重油比は通常200~10,000Nm/kLである。
【0016】
原料油には、脱硫重油以外の留分が含まれていてもよい。そのような留分としては特に制限はなく、例えば、原油の常圧蒸留、減圧蒸留により得られる重質軽油(HGO)、減圧軽油(VGO)、これらの重質軽油及び減圧軽油等を間接脱硫装置で脱硫処理して得られる脱硫減圧軽油(VHHGO)、間接脱硫重油と溶剤脱れき装置から得られる脱れき油(DAO)、減圧重油(VR)、コーカーガスオイル、コーカーボトム油等の各種重質油が挙げられる。中でも、重質軽油(HGO)、減圧軽油(VGO)が好ましく、重質軽油(HGO)が含まれることがより好ましい。
【0017】
原料油中の脱硫重油の含有量は、特に制限はないが、好ましくは10容量%以上、より好ましくは20容量%以上、より好ましくは30容量%以上であり、上限として好ましくは90容量%以下、より好ましくは75容量%以下、更に好ましくは50容量%以下である。
原料油中の脱硫重油以外の留分の含有量は、特に制限はないが、好ましくは10容量%以上、より好ましくは25容量%以上、更に好ましくは50容量%以上であり、上限として好ましくは90容量%以下、より好ましくは80容量%以下、更に好ましくは70容量%以下である。
原料油中の脱硫重油、脱硫重油以外の留分の含有量が上記範囲内であると、流動接触分解触媒の投入量に対する原料油中のバナジウム相当金属量を所定範囲内としやすくなり、また後述するように再生塔における運転温度を通常より低くして流動接触分解触媒の水熱熱劣化を抑制しながら該触媒上の残留炭素分の低減を図ることができ、結果として流動接触分解ガソリンの収率の向上を図ることができる。
【0018】
流動接触分解触媒の投入量に対する原料油中のバナジウム相当金属量は、0.4質量%以上4.0質量%以下であることを要する。ここで、流動接触分解触媒の投入量は、流動接触分解装置への新触媒の投入量のことであり、またバナジウム相当金属量(Veq、質量ppm)とは、原料油中のバナジウムの含有量(V、質量ppm)及びニッケルの含有量(Ni、質量ppm)を用いた、以下の式で表される数値である。
Veq=V+1/4×Ni
【0019】
流動接触分解触媒の投入量に対する原料油中のバナジウム相当金属量が0.4質量%未満であると、原料油の過分解が進行するため、流動接触分解ガソリンの収率が低下する。一方、当該金属量が4.0質量%超であると、流動接触分解触媒がバナジウム等の被毒金属で覆われてしまい、活性が低下するともに、該触媒の再生時に該被毒金属により水熱熱劣化及び破壊が生じる。流動接触分解ガソリンの収率を向上させ、かつ触媒の活性の低下、水熱熱劣化及び破壊を防止する観点から、流動接触分解触媒の投入量に対する原料油中のバナジウム相当金属量は、好ましくは0.4質量%超、より好ましくは0.6質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、上限として好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.7質量%以下である。
【0020】
本実施形態の流動接触分解ガソリンの製造方法において、流動接触分解触媒の投入量に対する原料油中のバナジウム相当金属量は、流動接触分解触媒の投入量の調整、流動接触分解処理装置への原料油の供給量の調整により制御することができ、より容易に制御する観点から、原料油の調整により行うことが好ましい。
【0021】
本実施形態の流動接触分解ガソリンの製造方法において、装置内流動接触分解触媒(平衡触媒)は、0.05質量%超0.50質量%以下であることを要する。残留炭素分が0.50質量%超となると、装置内流動接触分解触媒(平衡触媒)が残留炭素で覆われる、また装置内流動接触分解触媒(平衡触媒)の例えばゼオライト等の担体がコーキングを生じることにより、触媒の活性の低下が生じ、流動接触分解ガソリンの収率が低下する。触媒の活性の低下を抑制し、かつ過分解を抑制し、流動接触ガソリンの収率を向上させる観点から、装置内流動接触分解触媒(平衡触媒)の残留炭素分は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、上限として好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.45質量%以下、更に好ましくは0.4質量%以下である。
本明細書において、流動接触分解触媒の残留炭素分は、炭素・硫黄分析装置(例えば、「EMIA-920V2(型番)」、株式会社堀場製作所製)により測定した数値である。
【0022】
また、装置内流動接触分解触媒のバナジウム相当金属量は、好ましくは800質量ppm以上、より好ましくは1500質量ppm以上、更に好ましくは2500質量ppm以上、より更に好ましくは3000質量ppm以上であり、上限として好ましくは5000質量ppm以下、より好ましくは4500質量ppm以下である。上記範囲内であると、触媒の活性の低下を抑制し、流動接触分解ガソリンの収率を向上させることができる。
本明細書において、流動接触分解触媒上のバナジウム相当金属量は、ASTM D7085-04:Standard Guide for Determination of Chemical Elements in Fluid Catalytic Cracking Catalysts by X-ray Fluorescence Spectrometry(XRF)に基づき算出される値とする。
【0023】
本実施形態で用いられる流動接触分解装置は、通常製油所に設けられる流動接触分解装置と称される装置であれば特に制限なく適用可能である。例えば、流動接触分解装置は、サイクロン、分解生成物排出ライン、ストリッパー、スペント触媒トランスファーライン及びライザー等を有し、原料油の流動接触分解が行われる反応塔と、エアブロワー、エアグリッド、サイクロン、再生触媒トランスファーライン及び排ガスライン等を有し、触媒の再生を行う再生塔と、を備える装置である。
【0024】
反応塔では、ライザー内で原料油の分解反応により生成した分解生成物はサイクロンに供給され、サイクロンでは遠心力を利用して分解生成物と流動接触分解触媒とを分離し、分解生成物は分解生成物排出ラインより反応塔から排出され、流動接触分解触媒はスチームが供給されるストリッパーで該触媒上の炭化水素を除去してからスペント触媒トランスファーラインより反応塔から排出され、再生塔に移送される。
【0025】
再生塔では、エアブロワーからエアグリッドを経由して再生塔内に供給される空気と、スペント触媒トランスファーラインから再生塔に供給される反応塔で使用された流動接触分解触媒とを接触させて、該触媒上の炭化水素(「コーク」とも称する。)を燃焼させることにより、流動接触分解触媒が再生される。再生された流動接触分解触媒(「再生触媒」とも称する。)と、コークの燃焼により生じた排ガスとはサイクロンで分離され、再生触媒は再生触媒トランスファーラインより再生塔から排出され、ライザーに供給される。一方、排ガスは排ガスラインから再生塔から排出される。
【0026】
反応塔の運転条件としては、反応塔の出口温度として、好ましくは450℃以上、より好ましくは470℃以上、更に好ましくは490℃以上であり、上限として好ましくは550℃以下、より好ましくは540℃以下、更に好ましくは530℃以下である。このような反応条件とすると、分解反応の進行がより促進され、また流動接触分解触媒上の非蒸発の炭化水素をより低減することができ、再生塔に持ち込まれる炭化水素の量をより低減することができるので、安定した運転が可能となるので、結果として流動接触分解ガソリンの収率が向上する。
【0027】
再生塔における運転温度は好ましくは615℃以上、より好ましくは620℃以上であり、上限として好ましくは645℃以下、より好ましくは635℃以下である。再生温度が615℃以上であると、コークを十分に燃焼できるため、触媒活性が向上する。一方、再生温度が645℃以下であると、コークの燃焼によるスチームの発生をより抑制し、触媒活性の劣化(水熱熱劣化)をより抑制できるため、触媒活性が向上する。また、触媒の循環量が低下することなく、分解率が向上するため、結果として流動接触分解ガソリンの収率が向上する。また、上記運転温度の範囲は、通常の再生塔の運転温度が660~720℃程度であることを考慮すると、低い温度範囲で再生塔を運転しているといえる。本実施形態においては、流動接触分解触媒の投入量に対して原料油の供給量を調整することで、装置内流動接触分解触媒(平衡触媒)を所定のバナジウム相当金属量とするとともに、該触媒の残留炭素分を制御し、結果として流動接触分解ガソリンの収率の向上を図っているが、再生塔の運転温度を通常より低くできることは、該調整による副次的な効果ともいえる。また、原料油中の脱硫重油の含有量を上記範囲内とし、かつ脱硫重油以外の留分として上記例示したもの、中でも好ましくは重質軽油(HGO)、減圧軽油(VGO)、より好ましくは重質軽油(HGO)が含有させることにより、相対的に重油留分の含有量が低減するので、再生塔の運転温度をより低下させやすくなる。
【実施例
【0028】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0029】
(測定方法)
1.原料油中のバナジウム含有量及びニッケル含有量
石油学会規格JPI-5S-59-99に準拠して測定した。測定したバナジウム含有量をV(質量ppm)、ニッケル含有量をNi(質量ppm)とし、以下の式によりバナジウム相当金属量を算出した。
Veq=V+1/4×Ni
2.触媒の比表面積
BET窒素吸着法(ASTM D4365-95)に準拠して測定し、算出した。
3.触媒の細孔容量
ASTM D4222-03、D4641-94に規定される窒素吸着、脱着等温線から算出した(N吸着法)。
4.触媒上のバナジウム相当金属量
装置内流動接触分解触媒上のバナジウム相当金属量について、ASTM D7085-04:Standard Guide for Determination of Chemical Elements in Fluid Catalytic Cracking Catalysts by X-ray Fluorescence Spectrometry(XRF)に基づき算出した。
5.触媒上の残留炭素分
装置内流動接触分解触媒上の残留炭素分について、炭素・硫黄分析装置(「EMIA-920V2(型番)」、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。
【0030】
(実施例1)
以下のようにして原料油の流動接触分解反応を行った。
下記留分を含み、第1表に示される性状を有する原料油を、下記の流動接触分解触媒を循環させる流動接触分解装置の反応塔に供給し、第1表に示される原料油の通油量、流動接触分解触媒の投入量、流動接触分解触媒上のバナジウム相当金属量及び残留炭素分となるようにしながら、分解反応を行った。
(原料油の性状)
脱硫重油 含有量:30容量%
脱硫軽油 含有量:70容量%
(流動接触分解触媒)
成分:超安定性Y型ゼオライトを25質量%、アルミナを5質量%、粘土鉱物を60質量%、シリカ5質量%、その他不純物等含め5質量%を含有する触媒を用いた。
比表面積:250m/g
細孔容量:0.20cm/g
(流動接触分解装置の運転条件)
反応塔出口温度(ROT):518℃±3℃
再生塔の運転温度:630±3℃
触媒循環量:48±1ton/min
【0031】
(実施例2及び比較例1)
実施例1において、流動接触分解触媒の投入量に対する該原料油中のバナジウム相当金属量を第1表に記載の量とした以外は、実施例1と同様にして分解反応を行った。流動接触分解ガソリンの収率等を第1表に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
上記結果から、実施例では流動接触分解触媒の投入量に対する原料油中のバナジウム相当金属量を1.50、1.21質量%と0.4質量%以上4.0質量%以下の範囲内とし、装置内流動接触分解触媒(平衡触媒)の残留炭素分を0.05質量%超0.50質量%以下の範囲内とすることで、61.8%、61.5%という優れた流動接触分解ガソリンの収率が得られた。
また、従来法による比較例1では、流動接触分解触媒の投入量に対する原料油中のバナジウム相当金属量が0.20質量%と0.4質量%以上4.0質量%以下の範囲外とすると、装置内流動接触分解触媒(平衡触媒)の残留炭素分が0.58質量%と0.05質量%超0.50質量%以下の範囲外となり、流動接触分解ガソリンの収率は60.0%に留まった。よって、本実施形態の流動接触分解ガソリンの製造方法によれば、従来法に比べて収率は1.5~1.8%向上することが確認された。