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特許7108746ペットフード製品及びペットフード用スプーン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】ペットフード製品及びペットフード用スプーン
(51)【国際特許分類】
   A23K 10/00 20160101AFI20220721BHJP
   A23K 50/48 20160101ALI20220721BHJP
【FI】
A23K10/00
A23K50/48
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021086136
(22)【出願日】2021-05-21
【審査請求日】2021-06-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-20
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100214215
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼梨 航
(72)【発明者】
【氏名】農端 理壽
(72)【発明者】
【氏名】山本 沙耶香
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ユンイ
(72)【発明者】
【氏名】池崎 遊馬
【合議体】
【審判長】前川 慎喜
【審判官】森次 顕
【審判官】有家 秀郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-151878(JP,A)
【文献】特開2021-46253(JP,A)
【文献】特開2002-96835(JP,A)
【文献】特開2019-122358(JP,A)
【文献】米国特許第4830222(US,A)
【文献】特開2007-159421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 5/00-5/02
A47G21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、
前記底部の外周縁から上方に延在するとともに前記底部の周囲を取り囲み、前記底部とともに上方に向けて開口する収容部を画定する周壁部と、
前記周壁部から外向きに突出した保持部と、を備えた容器と、
前記収容部に収容された間食用ウェットフード、と
を含むペットフード製品であって、
前記収容部の開口径がφ20mm以上、φ50mm以下である、ペットフード製品(ただし、前記保持部に、前記保持部の長手方向に沿う方向に長手方向を持つ補強凹部が形成されているペットフード製品を除く)
【請求項2】
前記保持部の長さが20mm以上である、請求項1に記載のペットフード製品。
【請求項3】
前記保持部の長さが40mm以下である、請求項1又は2に記載のペットフード製品。
【請求項4】
前記収容部の深さが20mm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のペットフード製品。
【請求項5】
前記収容部の深さが10mm以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のペットフード製品。
【請求項6】
前記底部が、平面視で6個以上の辺を有する多角形状である、請求項1~のいずれか一項に記載のペットフード製品。
【請求項7】
前記底部が、平面視で円形状である、請求項1~のいずれか一項に記載のペットフード製品。
【請求項8】
前記底部が存在する水平面と直交する軸線と前記保持部とがなす角度は45~90°である、請求項1~のいずれか一項に記載のペットフード製品。
【請求項9】
Bostwick粘度測定器により測定された前記ウェットフードの粘度が5mm/分以上である、請求項1~のいずれか一項に記載のペットフード製品。
【請求項10】
Bostwick粘度測定器により測定された前記ウェットフードの粘度が60mm/分以下である、請求項1~のいずれか一項に記載のペットフード製品。
【請求項11】
更に、開口縁部に取り外し可能に接合された蓋体を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のペットフード製品。
【請求項12】
前記蓋体が剥離部を有し、前記剥離部は前記保持部側に設けられている、請求項11に記載のペットフード製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットフード製品及びペットフード用スプーンに関する。
【背景技術】
【0002】
ペットフードは、給与目的を機会で分けると主食と間食に分けられる。主食としてのペットフードは「総合栄養食」と言い、当該ペットフードと水を与えていれば必要とされる栄養素が摂取できるように作られる。
一方、「間食」は、ペットのしつけや運動、ご褒美として与えるなど限られた量を与えることが意図されているペットフードである。
ペットフードの目的別による分類は、「総合栄養食」「間食」「療法食」、そのいずれにも該当しない「その他の目的食」に分かれる。
【0003】
ペットフードの水分含有量による分類としては、水分含有量が10%程度(12%以下)であるドライフード、水分含有量が25~35%程度であり、発泡処理されているソフトフード、水分含有量が25~35%程度であり、発泡処理されていないセミモイストフード、及び水分含有量が75%程度であるウェットフードに大別される。
【0004】
ウェットフードはペットの嗜好性が高いことから、近年その需要がますます増加している。ウェットフードは、水分含有量が高いことから、通常給餌の際に皿等の容器に入れてペットに与えられる。
【0005】
一方、開封後短期間で消費される商品に関しては、スティック状の多層フィルム容器(いわゆるスティックタイプ)も多用されている。
スティックタイプは、直接ペットに簡便に給餌できる利点がある。しかしながら、スティック状フィルム容器では、内容物が粘性を有する物品の場合、指先で摘んで最後まで絞り出す様にすることが多く行われているも、最後の絞り出しでは、破断口近辺に内容物が残らないようにすると指先に内容物が付着して指や手を汚すことがあった。これに対し、手を汚すことなく内容物を絞り出すことのできる簡易絞り出し器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3218518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウェットフードを給餌の際に皿等の容器に入れてペットに与えられる場合、容器を床に置く場合が多い。しかしながら、容器を床に置いて給餌すると、ペットにとっては負担のかかる姿勢となる場合があり、消化器系に負担がかかるおそれがある。また、容器を床に置いて給餌する場合、給餌者にとっては、ペットがウェットフードを舐める際にペットフードが飛び散る等、皿が床面を滑って動いてしまう事による床擦れ等によって床が汚れる等の問題が生じる可能性がある。
【0008】
スティックタイプでウェットフードを直接ペットに給餌する場合、内容物が床にこぼれないようにペットの上方から給餌することが多い。しかしながら、ペットの上方からウェットフードを給餌し、ペットに無理な姿勢を強いる状況が発生する場合、ペットの首や腰に負担がかかる可能性がある。
また、スティックタイプは、ペットの顔や体の上方にウェットフードが存在する為、フードを押し出すタイミングがずれると、内容物がこぼれたり、ペットの顔や毛が汚れる場合もあった。ウェットフードがペットの毛に付着した状態で時間が経過すると、ウェットフードが固まってしまうため、水等で洗い流すことが難しく、毛をカットする等の対応が必要になる場合が生じるという問題があった。
また、スティックタイプは、内容物の残りを絞り出す際に給餌者の手が汚れたり、ペットに誤って噛まれたりするという問題もあった。一方、特許文献1のような簡易絞り出し器を用いた場合、スティック状フィルム容器をセットする手間がかかるだけでなく、給餌の際に給餌者の両手が塞がってしまう。そのため、給餌者は給餌の際にペットを撫でたり、ペットの給餌時の写真を撮る等が困難であった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、給餌者が片手で簡便に、ペットにとって適切な姿勢で給餌可能なペットフード製品及びペットフード用スプーンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の態様を包含する。
(1)底部と、前記底部の外周縁から上方に延在するとともに前記底部の周囲を取り囲み、前記底部とともに上方に向けて開口する収容部を画定する周壁部と、前記周壁部から外向きに突出した保持部と、を備えた容器と、前記収容部に収容されたウェットフード、とを含むペットフード製品。
(2)前記保持部の長さが20mm以上である、前記(1)に記載のペットフード製品。
(3)前記保持部の長さが40mm以下である、前記(1)又は(2)に記載のペットフード製品。
(4)前記収容部の深さが20mm以下である、前記(1)~(3)のいずれかに記載のペットフード製品。
(5)前記収容部の深さが10mm以上である、前記(1)~(4)のいずれかに記載のペットフード製品。
(6)前記収容部の開口径がφ20mm以上である、前記(1)~(5)のいずれかに記載のペットフード製品。
(7)前記収容部の開口径がφ50mm以下である、前記(1)~(6)のいずれかに記載のペットフード製品。
(8)前記底部が、平面視で6個以上の辺を有する多角形状である、前記(1)~(7)のいずれかに記載のペットフード製品。
(9)前記底部が、平面視で円形状である、前記(1)~(8)のいずれかに記載のペットフード製品。
(10)前記底部が存在する水平面と直行する軸線と前記保持部とがなす角度は45~90°である、前記(1)~(9)のいずれかに記載のペットフード製品。
(11)Bostwick粘度測定器により測定された前記ウェットフードの粘度が5mm/分以上である、前記(1)~(10)のいずれかに記載のペットフード製品。
(12)Bostwick粘度測定器により測定された前記ウェットフードの粘度が60mm/分以下である、前記(1)~(11)のいずれかに記載のペットフード製品。
(13)更に、開口縁部に取り外し可能に接合された蓋体を含む、前記(1)~(12)のいずれかに記載のペットフード製品。
(14)前記蓋体が剥離部を有し、前記剥離部は前記保持部側に設けられている、前記(1)~(13)のいずれかに記載のペットフード製品。
(15)底部と、前記底部の外周縁から上方に延在するとともに前記底部の周囲を取り囲み、前記底部とともに上方に向けて開口する収容部を画定する周壁部と、前記周壁部から外向きに突出した保持部と、を備えたペットフード用スプーン。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、給餌者が片手で簡便に、ペットにとって適切な姿勢で給餌可能なペットフード製品及びペットフード用スプーンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るペットフード製品を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るペットフード製品における図1のI-I’線に対応する断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るペットフード製品の平面図である。
図4】本発明の実施形態に係るペットフード製品における保持部の形状例を示す平面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係るペットフード製品を示す斜視図である。
図6】本発明の他の実施形態に係るペットフード製品を示す断面図である。
図7】本発明の他の実施形態に係るペットフード製品を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「ペット」とは人に飼育されている動物をいう。より狭義の意味では、ペットは飼い主に愛玩される動物である。また、「ペットフード」とは、ペット用の飼料をいう。本発明にかかるペットフードを「動物用飼料」又は「動物の餌」として販売することが可能である。
【0014】
本明細書において「嗜好性」とは、ペットに好まれて食されるか否かの指標であり、食感、食味、におい等に起因する。
【0015】
本明細書において、ペットフードの水分含有率(重量%)は常圧加熱乾燥法で求められる。この方法で求められる水分含有率には具材中の水分も含まれる。
(常圧加熱乾燥法)
アルミ秤量缶の重量(W1グラム)を恒量値として予め測定する。このアルミ秤量缶に
試料を入れて重量(W2グラム)を秤量する。つぎに強制循環式の温風乾燥器を使用して
、135℃、2時間の条件で試料を乾燥させる。乾燥雰囲気中(シリカゲルデシケーター
中)で放冷した後、重量(W3グラム)を秤量する。得られた各重量から下記式を用いて
水分含有率を求める。
水分含有率(単位:重量%)=(W2-W3)÷(W2-W1)×100
【0016】
<ペットフード製品>
以下、本発明のペットフード製品の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下で説明する各実施形態において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
図1は、本発明の一実施形態に係るペットフード製品を示す斜視図である。図2は、本発明の一実施形態に係るペットフード製品における図1のI-I’線に対応する断面図である。図3は、本発明の一実施形態に係るペットフード製品の平面図である。
【0017】
図1に示すように、ペットフード製品1は、容器2と、容器2に収容されたウェットフード3とを含む。
【0018】
(容器)
容器2は、底部21と、底部21の外周縁から上方に延在するとともに底部21の周囲を取り囲み、底部21とともに上方に向けて開口する収容部23を画定する周壁部22と、周壁部22から外向きに突出した保持部24と、を備える。
【0019】
容器2の材料は特に限定されないが、成形性やウェットフードの保存安定性の観点から、熱可塑性樹脂、アルミニウム、スチール等の金属、食品容器に用いられる紙材料、ビスケット等の可食材料が好ましく、熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0020】
本実施形態に係るペットフード製品によれば、給餌者が手から給餌できるので、容器や内容物が動く事なく、ペットの顔の下にペットフード製品を配置することが出来るので、ペットにとって適切な姿勢で給餌が可能となる。また、給餌者にとって、スティックタイプのウェットフードとは異なり押出す必要がないので、片手で簡便に取り扱い性良く給餌が可能である。そのため、給餌者は給餌の際にペットを撫でて幸福感を感じたり、ペットの給餌時の写真を撮る等の思い出作りが可能となり、給餌者とペットとの親密感を増し、双方の健康に資することができる。
【0021】
図1において、底部21は円形状である。しかしながら、本実施形態では底部21の形状は特に限定されず、例えば、円形状、楕円形状、2以上の円の組み合わせ、ドーナツ形状、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形状、星型、ハート型、猫の顔のモチーフ等の異形形状等が挙げられる。
なかでも、ペットフードの食べ残しを生じずに、ペットにとって適切な姿勢で給餌しやすくする観点から、底部21は、平面視で6個以上の辺を有する多角形状又は円形状であることが好ましく、円形状であることがより好ましい。
【0022】
周壁部22は、底部21の外周縁から上方に延在するとともに底部21の周囲を取り囲み、底部21とともに上方に向けて開口する収容部23を画定する。
周壁部22は、全周囲に亘って同じ高さで形成されていてもよく、部分的に高さが相違するように形成されていてもよい。
【0023】
周壁部22は、その上端部から水平方向に張り出す開口縁部22aを有してもよい。開口縁部22aには、取り外し可能に接合された蓋体25を設置してもよい(図5参照)。
開口縁部22aの幅は特に限定されないが、1~10mmが好ましく、2~8mmがより好ましく、3~6mmが更に好ましい。
また、開口縁部22aの厚みは特に限定されないが、0.3~1mmが好ましく、0.4mm~0.9mmがより好ましく、0.5mm~0.8mmが更に好ましい。
【0024】
収容部23の深さは特に限定されないが、10mm以上であることが好ましく、12mm以上であることがより好ましい。また、収容部23の深さは、20mm以下が好ましく、18mm以下が更に好ましい。
収容部23の深さが上記の好ましい範囲の下限値以上であると、ペットフードのこぼれを生じずに、ペットにとって適切な姿勢で給餌しやすくなる。一方、収容部23の深さが上記の好ましい範囲の上限値以下であると、ペットの顔を汚すことことなく、ペットにとって適切な姿勢で給餌しやすくなる。
【0025】
なお、本実施形態において、収容部23の深さとは、ペットフード製品1の側断面視において、底部21の最下点から収容部23の開口の最上点までの距離Dである。
【0026】
収容部23の開口径は特に限定されないが、φ20mm以上であることが好ましく、φ25mm以上であることがより好ましく、φ30mm以上であることが更に好ましい。また、収容部23の開口径はφ50mm以下であることが好ましく、φ45mm以下であることがより好ましく、φ40mm以下であることが更に好ましい。
収容部23の開口径が上記の好ましい範囲の下限値以上であると、ペットフードのこぼれを生じずに、ペットにとって適切な姿勢で給餌しやすくなる。一方、収容部23の開口径が上記の好ましい範囲の上限値以下であると、ペットの顔を汚すことことなく、ペットにとって適切な姿勢で給餌しやすくなる。
【0027】
なお、本実施形態において、収容部23の開口径φとは、ペットフード製品1の側断面視において、収容部23の開口の最上点における最大径である。
【0028】
保持部24は、周壁部22から外向きに突出する。給餌者の取り扱い性の観点から、保持部24は、周壁部22の上方部から略水平方向に延在することが好ましい。
【0029】
保持部24の長さは特に限定されないが、20mm以上が好ましく、22mm以上がより好ましく、25mm以上が更に好ましい。また、保持部24の長さは、40mm以下が好ましく、39m以下がより好ましく、38mm以下が更に好ましい。
保持部24の長さが上記の好ましい範囲の下限値以上であると、ペットの顔や給餌者の手を汚すことことなく、ペットにとって適切な姿勢で給餌しやすくなる。また、ペットフードがこぼれにくく、汚れ発生を防止しやすくなる。一方、保持部24の長さが上記の好ましい範囲の上限値以下であると、容器が揺れにくくなり、ペットにとって適切な姿勢で給餌しやすくなる。また、ペットフードがこぼれにくく、汚れ発生を防止しやすくなる。
【0030】
なお、本実施形態において、保持部24の長さとは、ペットフード製品1の側断面視において、周壁部22の端部と保持部24の端部とが接続する点Pから保持部24の他の端部Tまでの距離Lをいう。
【0031】
保持部24の幅は特に限定されないが、15~35mmが好ましく、16~30mmがより好ましく、17~25mmが更に好ましい。なお、本実施形態において、保持部24の幅とは、ペットフード製品1の平面視における保持部24の最大幅と最小幅との平均値をいう。
保持部24の厚みは特に限定されないが、0.1~1mmが好ましく、0.2~0.9mmがより好ましく、0.3~0.8mmが更に好ましい。なお、本実施形態において、保持部24の厚みとは、ペットフード製品1の側断面視における保持部24の最大厚みと最小厚みの平均値をいう。
【0032】
保持部24の形状は、給餌者が片手で持つことが出来れば特に限定されない。図4は、本発明の実施形態に係るペットフード製品における保持部の形状例を示す平面図である。具体的には、保持部24の形状としては、例えば、平面視において、肉球、尻尾、猫(正面又は横向き)、犬(正面又は横向き)、ウサギ(正面又は横向き)、ねずみ、鶏、鹿等のペットをモチーフとした形状;魚、肉(ラムチョップ、骨付き肉等)、チキン、人参、ブロッコリー、果物(バナナ等)、アイスクリーム、貝(牡蠣等)の食べ物をモチーフとした形状;円形、三角形、四角形、台形、五角形等の多角形状;星型、ハート型、クローバー、リボン型、王冠型等の異形形状と長尺形状との組み合わせ;花等の植物をモチーフとした形状;フォーク等の食器をモチーフとした形状とゆで卵等の食べ物をモチーフとした形状との組み合わせ等が挙げられる。なお、保持部と収容部が、様々な動物や植物、幾何学模様が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0033】
底部21が存在する水平面と直行する軸線Vと保持部24とがなす角度θは45~90°であることが好ましく、60~90°がより好ましく、70~90°が更に好ましい。
角度θが上記の好ましい範囲内であると、よりペットにとって適切な姿勢で給餌しやすくなる。
【0034】
(容器の変形例)
図5は、本発明の他の実施形態に係るペットフード製品を示す斜視図である。図5に示す態様では、開口縁部22aに取り外し可能に接合された蓋体25が設けられている。
蓋体25を設けることにより、給餌まで収容部23内のウェットフード3が乾燥することを防止できる。ウェットフード3の状態を良好に保つことにより、よりペットにとって適切な姿勢で給餌しやすくなる。
【0035】
図5に示すように、蓋体25は、保持部24側に剥離部25aを有してもよい。蓋体25が保持部24側に剥離部25aを有すると、給餌直前に蓋体25を外す際に収容部23からウェットフード3がこぼれることを防止しやすくなる。
【0036】
また、本実施形態において、周壁部22の保持部24側から最も遠い位置を「前部周壁部22b」、周壁部22の保持部24側に最も近い位置を「後部周壁部22c」として、前部周壁部22bと後部周壁部22cの高さの差が0~10mmであると、底部21に角度が付くので給餌しやすく、ペットもウェットフードを食べやすくなる。本実施形態において、前部周壁部22bの高さは、後部周壁部22cの高さより0.5~5mm低くてもよい。
【0037】
図6は、本発明の他の実施形態に係るペットフード製品を示す断面図である。図6において、前部周壁部22bの高さは、後部周壁部22cの高さよりも低く形成されている。図6の実施形態では、給餌の際にペットフードが収容部23からこぼれにくく、ペットもウェットフード3を舐めやすくなる。そのため、ペットの顔を汚すことことなく、ペットにとって適切な姿勢で給餌しやすくなる。
【0038】
図7は、本発明の他の実施形態に係るペットフード製品を示す断面図である。図7において、前部周壁部22bの高さは、後部周壁部22cの高さよりも高く形成されている。図7の実施形態では、収容部23の前部にペットが舐め切れていないウェットフード3をきれいに舐めさせるため、ペットフード製品の給餌角度を変えたりする工夫ができる。そのため、通常の給餌時よりペットがウェットフードを舐める時間が少し長くなり、給餌時にペットの多彩な表情を見ることができ、ペットとのコミュニケーション時間が増やすことができる。
また、図7の実施形態では、例えば給餌を一時中断する際にペットフード製品を床又は台等に置く場合であっても、底部21と保持部24とで安定してペットフード製品1を床又は台等に配置することができる。
【0039】
(ウェットフード)
本実施形態において、ウェットフードとは、最終的な市場提供形態として、乾燥処理が施されたドライフードと比べ、水分を多く含むペットフードを云う。前記ペットフードの水分含有率は、前記ペットフード全体の質量に対して通常50質量%以上であり、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。
【0040】
ウェットフードは、典型的には、ベースミート部を含み、更にチャンク部及び/又はフレークを含んでもよい。ここで「チャンク」とは、原材料を小片状に固めた部分を云い、チャンク部とはチャンクの集合を云う。「フレーク」とは、魚類や肉類を細かくしたものをいう。「ベースミート」部は、前記ペットフードのうちチャンク部及びフレーク部以外のウェット部分を云う。
【0041】
前記ウェットフードに含まれるチャンク部及び/又はフレークの割合は特に制限されず、ペットフード全体の質量に対して0~30質量%であることが好ましく、0~25質量%であることがより好ましい。
【0042】
前記チャンクの形状は特に制限されず、例えば、球状、多角体状、柱状、ドーナッツ状、板状又は碁石状等のペレット(粒)に成形した形状が挙げられる。このようなペレットの大きさは特に制限されないが、例えば、水平台に置いたペレットを上方から見た場合の短経および長径が1~25mm、水平台上のペレットの下面(下端)から上面(上端)までの厚みが1~20mmであることが好ましく、短経および長径が3~11mm、厚みが3~9mmであることがより好ましく、短径および長径が5~9mm、厚み5~8mmであることがさらに好ましい。
前記ベースミート部の様態は特に制限されず、液体状、ゲル状、固体状等の様態又はそれらの組み合わせが挙げられる。また、前記ベースミート部に固体を含有させる場合、形状は特に制限されないが、上記のチャンクの形状と同様のものが挙げられる。
【0043】
ウェットフードに含まれるタンパク質、炭水化物、及び脂質の割合は特に制限されない。例えば、ペットフードに含まれる前記タンパク質の割合を、ペットフード全体の乾物換算質量に対して26~60質量%、より好ましくは35~55質量%とすることができる。ペットフードに含まれる前記炭水化物の割合を、ペットフード全体の乾物換算質量に対して5~30質量%、より好ましくは10~20質量%とすることができる。また、ペットフードに含まれる前記脂質の割合を、ペットフード全体の乾物換算質量に対して9~30質量%、より好ましくは20~30質量%とすることができる。
【0044】
本実施形態において、Bostwick粘度測定器により測定されたウェットフードの粘度が5mm/分以上であることが好ましく、7mm/分以上がより好ましく、10mm/分以上が更に好ましい。また、Bostwick粘度測定器により測定されたウェットフードの粘度が60mm/分以下が好ましく、59mm/分以下がより好ましく、58mm/分以下が更に好ましい。
ウェットフードの粘度が上記の好ましい範囲内であると、ペットの顔の汚れやペットフードの飛び散りを生じずに、ペットにとって適切な姿勢で給餌しやすくなりやすい。
【0045】
本実施形態に係るペットフード製品は、特に猫用、小型犬用又は超小型犬用であることが好ましい。
【0046】
<原材料>
ウェットフードを構成する原材料は、特に制限されず、従来のペットフードに使用されている原材料を適用することができる。例えばタンパク質成分の他に、炭水化物成分、ビタミン類、ミネラル類、塩類、脂肪、油、動物食材のエキス(抽出物)等を添加しても構わない。
【0047】
ウェットフードを調製する際に、原材料として増粘剤を添加してもよい。
前記増粘剤としては、例えば、グアーガム、澱粉、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム等の多糖類が挙げられる。
【0048】
ウェットフードの原材料に含まれるタンパク質成分として、マグロ、イワシ、カツオ等の魚類、又はウシ、ブタ、ニワトリ等の家畜を使用する場合、これらの原材料は予め公知方法によって、加熱若しくは調理されていても構わない。
【0049】
ウェットフードは、例えば、タンパク質成分及び水を混合し、必要に応じて増粘剤を添加することにより製造することができる。混合の方法は特に制限されず、ミキサー又はミンサーを用いた公知方法が適用可能であり、均一に混合できる方法を採用することが好ましい。タンパク質成分は、予めミンチ状にミキシング(加工)してから他の原材料と混合することにより、各原材料をより均一に混合できる。混合後に、ペットフードがペースト状になっていても構わない。また、ペースト状のペットフード中に、塊状の(固形の)具材が分散していても構わない。ペットフード中の原材料が均一に混合されていること又はペットフードがペースト状であることにより、ペットが当該ペットフードの一部分だけ又は一部の原材料のみを食する事を抑制し、完食率を向上させることができる。
【0050】
原材料を混合する時間及び温度は適宜設定することが可能である。混合時間を調整することにより、ペットフードの粘度を調整することができる。また、混合する水の量を調整することにより、ペットフードの粘度及び水分含量を調整することができる。ペットフードの粘度は、増粘剤の配合量によっても調整することができる。また、ペットフードを構成する全材料の重量に対する、固体成分を含有する材料の重量を調整することにより、FWを調整することができる。
【0051】
ウェットフードは、通常、固形状の具材と液体状のスープとが分離した形態にはならず、前述した特定の粘度及び水分含量を有するペースト状の成分のみ又はペースト状の成分と固形の具材とが絡み合った形態を有する。ウェットフードは、スープ成分と固形の具材とが分離した形態ではなく、前述した粘度及び水分含量を有するペースト状の形態(成分)を少なくとも一部に有することが好ましい。前記ペースト状の成分に加えて、固形の具材を含有していてもよい。この場合、固形の具材がペースト状の成分と絡み合う形態となるため、ペースト状の成分と合わせて固形の具材がペットの口中に運ばれる。ウェットフードの完食率を向上させることができる。
【0052】
ウェットフードがチャンク部を含む場合、以下に示すような原材料を用いて、チャンク部とベースミート部を製造することができる。
【0053】
(ベースミート部原材料)
前記ウェットフードのベースミート部に含まれる原材料は特に制限されないが、ベースミート部にはタンパク質原材料を主な原材料として用いることができる。前記ベースミート部のタンパク質原材料としては、植物由来の蛋白質、動物由来の蛋白質又はこれらの混合物が例示できる。具体的には、前記植物由来の蛋白質は、例えばグルテン、小麦蛋白質、大豆蛋白質、米蛋白質、とうもろこし蛋白質等が挙げられる。前記動物由来の蛋白質としては、例えば牛、豚、鶏及び魚介類の筋肉、臓器などの蛋白質、乳の蛋白質又はこれらの混合物が例示できる。
ベースミート部の前記以外の原材料として、油脂、チキンエキス、フィッシュエキス、調味料、増粘剤及び水等を加えることができる。
【0054】
(チャンク部原材料)
前記ペットフードのチャンク部には、タンパク質原材料を用いることができる。前記チャンク部のタンパク質原材料としては、上記のベースミート部に用いたものと同様のタンパク質原材料を用いることができる。
【0055】
さらに、前記ペットフードのチャンク部には穀類を加えても好い。穀類としては、とうもろこし、小麦、大麦、オート麦、米、大豆等を好ましいものとして例示できる。これらの穀物類には、炭水化物の他に、蛋白質、灰分、ミネラル、ビタミン等が含まれうるので、栄養源として使用できる。また、穀類を加えることにより、ペットフード全体に対するアミノ酸の配合率を調整(主には低下させること)が容易となる。
チャンク部の前記以外の原材料として、調味料、結着剤及び水等を加えることができる。
【0056】
<ペットフード用スプーン>
本実施形態に係るペットフード用スプーンは、本実施形態に係るペットフード製品の容器と同様である。
【0057】
本実施形態によれば、給餌者が手から給餌できるので、容器や内容物が動く事なく、ペットの顔の下にペットフード製品を配置することが出来るので、ペットにとって適切な姿勢で給餌が可能となる。また、給餌者にとって、スティックタイプのウェットフードとは異なり押出す必要がないので、片手で簡便に取り扱い性良く給餌が可能である。そのため、給餌者は給餌の際にペットを撫でて幸福感を感じたり、ペットの給餌時の写真を撮る等の思い出作りが可能となり、給餌者とペットとの親密感を増し、双方の健康に資することができる。
【0058】
本実施形態に係るペットフード用スプーンは、特に猫用、小型犬用又は超小型犬用であることが好ましい。
また、本実施形態に係るペットフード用スプーンは、ウェットフードの給餌に用いられることが好ましい。
【実施例
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0060】
[ウェットフードの製造]
まぐろ30%、増粘剤2.8%、水及びエキス67.2%を混合し、ミキサーで粉砕して均一に混合することにより、ウェットフードを製造した。
【0061】
[試験例1:保持部の長さの評価]
表1に示す保持部の長さを採用し、図1に示すペットフード製品を製造した。なお、各例において、容器の形状は保持部の長さ以外は同じである。また、各例において、同じ組成のウェットフードを採用した。
各例のペットフード製品を猫に給餌し、ペットフードの食べ残し、こぼれ、与えやすさについて以下の基準にしたがって評価した。結果を表1に示す。
<食べ残しの評価>
○:完食した(収容部に残ったペットフードが5%以下)。
△:やや残った(収容部に残ったペットフードが5%超~10%)。
×:かなり残った(収容部に残ったペットフードが10%超)。
<こぼれの評価>
猫に給餌した時の、こぼれの有無を確認した。
<与えやすさの評価>
○:猫にも給餌者にも汚れが生じなかった。
△:猫の顔又は給餌者の手にやや汚れが生じた。
×:猫の顔又は給餌者の手に汚れが生じた。
【0062】
【表1】
【0063】
試験例1-1では、給餌者の手と収容部との間の距離が短いため、ペットフードが給餌者の手に当たる、猫が給餌者の手を舐める等により給餌者の手が汚れることが分かった。
試験例1-4では、給餌者の手と収容部との間の距離が長いため、給餌の際に容器が揺れてしまい、収容部が猫の顔に当たり、猫の口の周りが汚れることが分かった。
したがって、表1に示す結果から、保持部の長さは、20mm以上40mm以下が好ましいことが確認された。
【0064】
[試験例2:収容部の深さの評価]
表2に示す収容部の深さを採用し、図1に示すペットフード製品を製造した。なお、各例において、容器の形状は収容部の深さ以外は同じである。また、各例において、同じ組成のウェットフードを採用した。
各例のペットフード製品を猫に給餌し、ペットフードの食べ残し、こぼれ、口の周りの汚れについて以下の基準にしたがって評価した。結果を表2に示す。
<食べ残しの評価>
○:完食した(収容部に残ったペットフードが5%以下)。
△:やや残った(収容部に残ったペットフードが5%超~10%)。
×:かなり残った(収容部に残ったペットフードが10%超)。
<こぼれの評価>
猫に給餌した時の、ペットフードのこぼれの有無を確認した。
<口の周りの汚れ>
猫に給餌した時の、猫の口の周りの汚れの有無を確認した。
【0065】
【表2】
【0066】
表2に示す結果から、収容部の深さは、10mm以上20mm以下が好ましいことが確認された。
【0067】
[試験例3:収容部の開口径の評価]
表3に示す収容部の開口径を採用し、図1に示すペットフード製品を製造した。なお、各例において、容器の形状は収容部の開口径以外は同じである。また、各例において、同じ組成のウェットフードを採用した。
各例のペットフード製品を猫に給餌し、ペットフードの食べ残し、口の周りの汚れについて以下の基準にしたがって評価した。結果を表3に示す。
<食べ残しの評価>
○:完食した(収容部に残ったペットフードが5%以下)。
△:やや残った(収容部に残ったペットフードが5%超~10%)。
×:かなり残った(収容部に残ったペットフードが10%超)。
<口の周りの汚れ>
猫に給餌した時の、猫の口の周りの汚れの有無を確認した。
【0068】
【表3】
【0069】
表3に示す結果から、収容部の開口径は、φ20mm以上φ50mm以下が好ましいことが確認された。
【0070】
[試験例4:底部の形状の評価]
表4に示す底部の形状を採用し、図1に示すペットフード製品を製造した。なお、各例において、容器の形状は底部の形状以外は同じである。また、各例において、同じ組成のウェットフードを採用した。
各例のペットフード製品を猫に給餌し、ペットフードの食べ残しについて以下の基準にしたがって評価した。結果を表4に示す。
<食べ残しの評価>
○:完食した(収容部に残ったペットフードが5%以下)。
△:やや残った(収容部に残ったペットフードが5%超~10%)。
×:かなり残った(収容部に残ったペットフードが10%超)。
【0071】
【表4】
【0072】
表4に示す結果から、底部の形状は、平面視で6個以上の辺を有する多角形状であることが好ましいことが確認された。
【0073】
[試験例5:ウェットフードの粘度の評価]
表5に示す粘度を有するウェットフードを採用し、図1に示すペットフード製品を製造した。なお、各例において、容器の形状は同じである。ウェットフードの粘度は、Bostwick粘度測定器により測定された値である。
各例のペットフード製品を猫に給餌し、ペットフードの食べ残し、こぼれについて以下の基準にしたがって評価した。結果を表5に示す。
<食べ残しの評価>
○:完食した(収容部に残ったペットフードが5%以下)。
△:やや残った(収容部に残ったペットフードが5%超~10%)。
×:かなり残った(収容部に残ったペットフードが10%超)。
<こぼれの評価>
猫に給餌した時の、ペットフードのこぼれの有無を確認した。
【0074】
【表5】
【0075】
表5に示す結果から、Bostwick粘度測定器により測定された前記ウェットフードの粘度は、5以上mm/min60mm/min以下が好ましいことが確認された。
【符号の説明】
【0076】
1 ペットフード製品
2 容器
21 底部
22周壁部
23収容部
24保持部
3 ウェットフード
【要約】
【課題】給餌者が片手で簡便に、ペットにとって適切な姿勢で給餌可能なペットフード製品及びペット用スプーンの提供。
【解決手段】底部(21)と、前記底部(21)の外周縁から上方に延在するとともに前記底部(21)の周囲を取り囲み、前記底部(21)とともに上方に向けて開口する収容部(23)を画定する周壁部(22)と、前記周壁部(22)から外向きに突出した保持部(24)と、を備えた容器(2)と、前記収容部(23)に収容されたウェットフード(3)、とを含むペットフード製品(1)。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7