(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】優先度判定装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 30/20 20180101AFI20220722BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20220722BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20220722BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
G16H30/20
A61B6/03 360D
A61B5/055 380
A61B5/00 G
(21)【出願番号】P 2018217754
(22)【出願日】2018-11-20
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武井 瑞希
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-157527(JP,A)
【文献】国際公開第2009/050962(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61B 6/00- 6/14
A61B 5/055
A61B 5/00- 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
優先度の判定対象となる医用画像に、異常が含まれることの確信度を表す解析結果を取得する解析結果取得部と、
前記確信度が、該確信度の最大値と最小値との中央値に近いほど大きい優先度を導出する優先度導出部とを備えた優先度判定装置。
【請求項2】
前記医用画像を解析して前記解析結果を生成する画像解析部をさらに備えた請求項1に記載の優先度判定装置。
【請求項3】
複数の医用画像に関して、前記医用画像に関する情報と前記優先度の情報とを対応づけて表示する表示制御部をさらに備えた請求項1または2に記載の優先度判定装置。
【請求項4】
前記優先度導出部は、前記中央値の設定を受け付ける請求項1から3のいずれか1項に記載の優先度判定装置。
【請求項5】
コンピュータが、優先度の判定対象となる医用画像に、異常が含まれることの確信度を表す解析結果を取得し、
前記確信度が、該確信度の最大値と最小値との中央値に近いほど大きい優先度を導出する優先度判定方法。
【請求項6】
優先度の判定対象となる医用画像に、異常が含まれることの確信度を表す解析結果を取得する手順と、
前記確信度が、該確信度の最大値と最小値との中央値に近いほど大きい優先度を導出する手順とをコンピュータに実行させる優先度判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医用画像の読影、並びに医用画像を用いての患者の検査、診断および治療等を行う際の優先度を判定する優先度判定装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CT(Computed Tomography)装置およびMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等の医療機器の進歩により、より質の高い高解像度の医用画像を用いての画像診断が可能となってきている。とくに、対象部位を脳とした場合において、CT画像およびMRI画像等を用いた画像診断により、脳梗塞および脳出血等の血管障害を起こしている領域を特定することができるため、特定した結果に基づいて適切な治療が行われるようになってきている。
【0003】
また、ディープラーニング等により学習がなされた判別器を用いたCAD(Computer-Aided Diagnosis)により医用画像を解析して、脳内における出血領域、梗塞領域、および出血体積等、並びに心臓における虚血領域を抽出し、これらを解析結果として取得することも行われている。このように、解析処理により生成される解析結果は、患者名、性別、年齢および医用画像を取得したモダリティ等の検査情報と対応づけられて、データベースに保存されて、診断に供される。この際、医用画像を取得した放射線科等の技師が、医用画像に応じた読影医を決定し、医用画像およびCADによる解析結果を、決定した読影医に伝えるようにしている。読影医は、自身の読影端末において、配信された医用画像および解析結果を参照して医用画像の読影を行い、読影レポートを作成する。
【0004】
ここで、CADによって医用画像を解析することにより、医用画像の各画素が病変、出血および梗塞等の異常があることのスコアが、例えば0以上1以下の値で出力される。そして、CADは異常領域に含まれる画素のスコアの代表値(例えば平均値および最大値等)に基づいて、医用画像に異常が含まれることの確信度を出力する。例えば、確信度が0であれば異常が含まれる可能性は極めて低く、確信度が1であれば異常が含まれる可能性が極めて高いものとなる。このため、CADが出力した確信度を参照することにより、読影医は医用画像における異常の程度を予測しつつ、医用画像を読影することができる。
【0005】
このような医用画像の読影を行う際には、読影を行うべき医用画像の読影リストが読影端末に送られる。読影リストには、上述した検査情報が含まれる。このように、読影リストを読影端末に表示する際に、先に読影を行って欲しい医用画像を読影リストの上位に表示する手法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された手法においては、緊急、至急および通常等の読影の優先順位を表すステータス情報に基づいて、読影を行う検査の順序が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、読影の際の優先順位を決定するために、学習済みの判別器を用いることが考えられる。この場合、判別器を学習するためには、医用画像およびその医用画像に対する読影の優先度が既知の学習データを大量に用意する必要がある。しかしながら、そのような学習データを集めることは大変な作業となるため、医用画像から読影の優先度を判別する判別器を生成することは困難である。また、医用画像の読影をどのように優先させるかについては、医師の裁量に依存するところが大きいため、汎用的に読影の優先度を決定することは困難である。
【0008】
また、医用画像において読影医が容易に見つけることができる異常は、CADが出力する確信度が高くなる。このため、医用画像において容易に見つけることができる異常は、CADによる確信度を参照しなくても、読影医が見つけることは容易である。一方、異常の領域が極めて視認しにくい場合、または非常に希な病変等は、確信度は大きくもなく小さくもない値となる。このような医用画像は、読影医が診ても異常か否かの判断に迷ったり、異常を見落としたりする可能性があるため、より丁寧な読影が必要である。
【0009】
本開示は上記事情に鑑みなされたものであり、医用画像の読影、並びに医用画像を用いての患者の検査、診断および治療等を行う際の優先度を適切に判定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
優先度の判定対象となる医用画像に、異常が含まれることの確信度を表す解析結果を取得する解析結果取得部と、
確信度が、確信度の最大値と最小値との中央値に近いほど大きい優先度を導出する優先度導出部とを備える。
【0011】
なお、本開示による優先度判定装置においては、医用画像を解析して解析結果を生成する画像解析部をさらに備えるものであってもよい。
【0012】
また、本開示による優先度判定装置においては、複数の医用画像に関して、医用画像に関する情報と優先度の情報とを対応づけて表示する表示制御部をさらに備えるものであってもよい。
【0013】
また、本開示による優先度判定装置においては、優先度導出部は、中央値の設定を受け付けるものであってもよい。
【0014】
本開示による優先度判定方法は、優先度の判定対象となる医用画像に、異常が含まれることの確信度を表す解析結果を取得し、
確信度が、確信度の最大値と最小値との中央値に近いほど大きい優先度を導出する。
【0015】
なお、本開示による優先度判定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
【0016】
本開示による他の優先度判定装置は、コンピュータに実行させるための命令を記憶するメモリと、
記憶された命令を実行するよう構成されたプロセッサとを備え、プロセッサは、
優先度の判定対象となる医用画像に、異常が含まれることの確信度を表す解析結果を取得し、
確信度が、確信度の最大値と最小値との中央値に近いほど大きい優先度を導出する処理を実行する。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、医用画像の解析結果を用いて、医用画像の読影、並びに医用画像を用いての患者の検査、診断および治療等を行う際の優先度を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の実施形態による優先度判定装置を適用した医用情報システムの概略構成を示す図
【
図2】本開示の実施形態による優先度判定装置の概略構成を示す図
【
図4】医用画像に関する情報と優先度の情報とのリストを示す図
【
図5】本実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。
図1は本開示の実施形態による優先度判定装置を適用した医用情報システムの概略構成を示す図である。
図1に示す医用情報システム1は、公知のオーダリングシステムを用いた診療科の医師からの検査オーダに基づいて、被写体である患者の検査対象部位の撮影、撮影により取得された医用画像の保管、読影医による医用の読影と読影レポートの作成、および依頼元の診療科の医師による読影レポートの閲覧と読影対象の医用画像の詳細観察とを行うためのシステムである。
【0020】
図1に示すように、医用情報システム1は、複数のモダリティ2、読影端末である複数の読影ワークステーション(WS)3、診療科ワークステーション(WS)4、医用情報管理サーバ5、医用情報データベース6、読影レポートサーバ7、および読影レポートデータベース8が、ネットワーク10を介して互いに通信可能な状態で接続されて構成されている。
【0021】
各機器は、医用情報システム1の構成要素として機能させるためのアプリケーションプログラムがインストールされたコンピュータである。アプリケーションプログラムは、DVD(Digital Versatile Disc)あるいはCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体からコンピュータにインストールされる。または、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、もしくはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じてコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。
【0022】
モダリティ2は、被写体の診断対象となる部位を撮影することにより、診断対象部位を表す医用画像を取得する装置である。具体的には、CT装置、MRI装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、およびCR(Computed Radiography)装置等である。
【0023】
読影WS3は、医用画像の読影医が、医用画像の読影および読影レポートの作成に使用するコンピュータであり、処理装置、高精細ディスプレイ等の表示部、並びにキーボードおよびマウス等の入力部により構成される。読影WS3は、本実施形態による優先度判定装置を内包する。本実施形態による優先度判定装置については後述する。読影WS3では、医用情報管理サーバ5に対する医用画像の閲覧要求、医用情報管理サーバ5から受信した医用画像に対する各種画像処理、医用画像の表示、読影レポートの作成の支援、読影レポートサーバ7に対する読影レポートの登録要求と閲覧要求、並びに読影レポートサーバ7から受信した読影レポートの表示等の各処理が、各処理のためのソフトウェアプログラムを実行することにより行われる。なお、これらの処理のうち、本実施形態の優先度判定装置が行う処理以外の処理は、周知のソフトウェアプログラムにより行われるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0024】
診療科WS4は、診療科の医師が画像の詳細観察、読影レポートの閲覧、および電子カルテの作成等に使用するコンピュータであり、処理装置、高精細ディスプレイ等の表示部、並びにキーボードおよびマウス等の入力部により構成される。診療科WS4では、医用情報管理サーバ5に対する医用情報の閲覧要求、医用情報管理サーバ5から受信した医用情報の表示、読影レポートサーバ7に対する読影レポートの閲覧要求、および読影レポートサーバ7から受信した読影レポートの表示等の各処理が、各処理のためのソフトウェアプログラムを実行することにより行われる。
【0025】
医用情報管理サーバ5は、汎用のコンピュータにデータベース管理システム(DataBase Management System: DBMS)の機能を提供するソフトウェアプログラムがインストールされたものである。また、医用情報管理サーバ5は医用情報データベース6が構成される大容量ストレージを備えている。このストレージは、医用情報管理サーバ5とデータバスによって接続された大容量のハードディスク装置であってもよいし、ネットワーク10に接続されているNAS(Network Attached Storage)およびSAN(Storage Area Network)に接続されたディスク装置であってもよい。また、医用情報管理サーバ5は、モダリティ2からの医用画像等の医用情報の登録要求を受け付けると、その医用情報をデータベース用のフォーマットに整えて医用情報データベース6に登録する。
【0026】
また、医用情報管理サーバ5は、読影WS3および診療科WS4からの医用画像の閲覧要求をネットワーク10経由で受信すると、医用情報データベース6に登録されている医用画像を検索し、検索された医用画像を要求元の読影WS3および診療科WS4に送信する。
【0027】
医用情報データベース6には、モダリティ2において取得された医用画像の画像データが登録される。なお、医用画像には検査情報が付帯情報として付与される。付帯情報には、例えば、個々の医用画像を識別するための画像ID(identification)、患者を識別するための患者ID、検査を識別するための検査ID、その医用画像が生成された検査日、検査時刻、その医用画像を取得するための検査で使用されたモダリティの種類、患者氏名、年齢、性別等の患者情報、検査部位(撮影部位)、撮影情報(撮影プロトコル、撮影シーケンス、撮像手法、撮影条件、造影剤の使用等)、および1回の検査で複数の医用画像を取得したときのシリーズ番号あるいは採取番号等の情報が含まれる。なお、1回の検査で複数の医用画像を取得する際には、異なるモダリティ2により複数の医用画像が取得される場合がある。例えば、1つの検査でCT画像およびMRI画像の双方が取得される場合がある。
【0028】
また、医用情報データベース6には、医用画像に対する解析結果等が医用情報として登録される。医用画像に対する解析結果は、後述する読影WS3に内包された優先度判定装置において取得されたものとすればよいが、優先度判定装置とは別に設けられてネットワーク10に接続された解析装置において取得されたものであってもよい。また、診療科WS4において医用画像の解析を行うことが可能な場合には、診療科WS4において取得された解析結果であってもよい。
【0029】
読影レポートサーバ7は、コンピュータにデータベース管理システム(DBMS)の機能を提供するソフトウェアプログラムが組み込まれる。読影レポートサーバ7は、読影WS3からの読影レポートの登録要求を受け付けると、その読影レポートをデータベース用のフォーマットに整えて読影レポートデータベース8に登録する。
【0030】
読影レポートデータベース8には、例えば、読影対象の医用画像を識別する画像ID、読影を行った読影医を識別するための読影医ID、病変名、病変の位置情報、所見、および所見の確信度等の情報が記録された読影レポートが登録される。
【0031】
上述したように読影WS3には、本実施形態による優先度判定装置が内包されてなる。このため、読影WS3には、本実施形態の優先度判定プログラムがインストールされてなる。優先度判定プログラムは、DVDあるいはCD-ROM等の記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体から読影WS3を構成するコンピュータにインストールされる。または、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、もしくはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、コンピュータにダウンロードされ、インストールされる。
【0032】
図2は、コンピュータに優先度判定プログラムをインストールすることにより実現される、本実施形態による優先度判定装置の概略構成を示す図である。
図2に示すように、優先度判定装置9は、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12およびストレージ13を備えている。また、優先度判定装置9には、液晶ディスプレイ等の表示部14、並びにキーボードおよびマウス等の入力部15が接続されている。
【0033】
ストレージ13は、ハードディスクまたはSSD(Solid State Drive)等のストレージデバイスからなる。ストレージ13には、ネットワーク10を経由して医用情報管理サーバ5から取得した、医用画像および処理に必要な情報を含む各種情報が記憶されている。
【0034】
また、メモリ12には、優先度判定プログラムが記憶されている。優先度判定プログラムは、CPU11に実行させる処理として、医用情報管理サーバ5から優先度判定の対象となる、患者の医用画像を取得する画像取得処理、医用画像を解析して医用画像に異常が含まれることの確信度を表す解析結果を取得する解析結果取得処理、確信度が、確信度の最大値と最小値との中央値に近いほど大きい優先度を導出する優先度導出処理、並びに複数の医用画像に関して、医用画像に関する情報と優先度の情報とを対応づけて表示部14に表示する表示制御処理を規定する。
【0035】
そして、CPU11がプログラムに従いこれらの処理を実行することで、コンピュータは、画像取得部21、解析結果取得部22、優先度導出部23および表示制御部24として機能する。
【0036】
なお、読影WS3が優先度判定装置9以外の処理を行うための装置として機能する場合には、その機能を実行するプログラムが実行される。例えば、医用画像の読影を行う場合には読影プログラムが実行される。
【0037】
画像取得部21は、医用情報管理サーバ5等とネットワーク10を介して通信を行う通信インターフェースからなり、優先度判定プログラムの指示により、優先度判定の対象となる患者の医用画像G0を医用情報管理サーバ5を介して、医用情報データベース6から取得する。なお、本実施形態においては、医用画像は脳のCT画像とするが、MRI画像であってもよい。
【0038】
解析結果取得部22は、医用画像G0を解析して医用画像G0に、異常が含まれることの確信度を表す解析結果R0を取得する。本実施形態においては、解析結果取得部22は、医用画像G0における各画素(ボクセル)が梗塞であることの確信度を表す解析結果を取得する。このために、解析結果取得部22は、CT画像における各画素(ボクセル)が梗塞であるか否かを判別するように機械学習がなされた判別器を備える。本実施形態においては、判別器は、CT画像である医用画像G0に含まれる梗塞の領域を判別できるようにディープラーニング(深層学習)がなされたニューラルネットワークからなる。判別器は、CT画像である医用画像G0が入力されると、医用画像G0内の各画素(ボクセル)が、梗塞であることのスコアを出力するように学習がなされる。ここで、スコアは例えば0以上1以下の値を取り、値が大きいほどその画素が梗塞であることの確信度が高いことと表すものとなる。
【0039】
判別器は、ディープラーニングがなされたニューラルネットワークの他、例えばサポートベクタマシン(SVM(Support Vector Machine))、アダブースト(AdaBoost)、およびランダムフォレスト(RandomForest)等からなるものであってもよい。
【0040】
解析結果取得部22は、医用画像G0の各画素におけるスコアに基づいて、確信度を表す解析結果R0を取得する。例えば、医用画像G0の全画素におけるスコアの代表値を確信度として求めればよい。代表値としては、スコアの平均値、中央値、最大値および最小値などを用いることができる。また、スコアがあらかじめ定められたしきい値以上となる領域についてのみのスコアの代表値を確信度としてもよい。
【0041】
また、解析結果取得部22は、判別器を備えるものとしているが、確信度の取得は、判別器を用いるものには限定されない。
【0042】
優先度導出部23は、解析結果取得部22が取得した確信度を表す解析結果R0が、確信度が取り得る値の最大値と最小値との中央値に近いほど大きい優先度を導出する。本実施形態においては、判別器が出力するスコアが0以上1以下であるため、確信度が取り得る最大値は1、最小値は0である。このため、本実施形態においては中央値を0.5に設定する。
図3は、確信度と優先度との関係を示す図である。
図3に示すように、確信度が0および1の場合に優先度は0となり、確信度が0.5の場合に最大値の1.0となるように2次曲線的に変化するものとなる。なお、確信度に対する優先度の変化の仕方はこれに限定されるものではなく、直線的あるいは3次曲線的に変化するものであってもよい。また,中央値としては、厳密に中央である必要はなく、例えば±10%程度中央値から外れた値であっても、中央値として用いてもよい。
【0043】
なお、優先度導出部23は、入力部15からの入力により中央値を任意に設定することが可能である。例えば、中央値を0.6に設定したり、0.7に設定したりすることも可能である。
【0044】
表示制御部24は、複数の医用画像に関して、医用画像G0に関する情報と優先度の情報とを対応づけたリストを生成し、生成したリストを表示部14に表示する。
図4は医用画像に関する情報と優先度の情報とを対応づけたリストを示す図である。
図4に示すようにリストL0には、優先度、患者名、患者IDおよび性別が含まれている。なお、リストに含める情報はこれらに限定されるものではなく、検査日、検査技師および診療医の情報等を含めてもよい。
【0045】
また、リストL0における優先度の欄は優先度導出部23が導出した優先度を表す。また、優先度の欄には、横長長円形のマークMが表示される。表示制御部24は、優先度があらかじめ定められたしきい値Th1以上となった医用画像について、マークMに色を付与する。
図4において色が付与された状態を斜線を付与することにより示している。色としては、例えば赤色および黄色等、任意の色とすることができる。また、色に変えて優先度がしきい値Th1以上となった患者名を点滅させる等してもよい。なお、
図4においては、例えばしきい値Th1を0.6としている。このため、優先度がしきい値Th1未満となった医用画像のマークMには何ら色は付与されない。これにより、読影医は、表示部14に表示されたリストL0を見れば、リストL0に含まれる複数の医用画像のうちのいずれの医用画像を優先的に読影すればよいかを認識できる。
【0046】
ネットワーク10は、病院内の各種機器を接続する有線または無線のローカルエリアネットワークである。読影WS3および診療科WS4が他の病院あるいは診療所に設置されている場合には、ネットワーク10は、各病院のローカルエリアネットワーク同士をインターネットまたは専用回線で接続した構成としてもよい。
【0047】
次いで、本実施形態において行われる処理について説明する。
図5は本実施形態において、読影WS3に内包される優先度判定装置9が行う処理を示すフローチャートである。まず、画像取得部21が優先度判定の対象となる、患者の医用画像G0を取得する(ステップST1)。次いで、解析結果取得部22が、医用画像G0を解析して、医用画像G0に異常が含まれることの確信度を表す解析結果R0を取得する(ステップST2)。そして、優先度導出部23が、確信度が、確信度の最大値と最小値との中央値に近いほど大きい優先度を導出する(ステップST3)。そして、表示制御部24が、複数の医用画像に関して、医用画像に関する情報と優先度の情報とを対応づけて表示部14に表示し(優先度表示;ステップST4)、処理を終了する。
【0048】
このように、本実施形態においては、患者の医用画像G0に異常が含まれることの確信度を表す解析結果R0を取得し、確信度が、確信度の最大値と最小値との中央値に近いほど大きい優先度を導出するようにした。このため、読影医が診ても異常か否かの判断に迷ったり、異常を見落としたりする可能性がある医用画像の優先度を大きくすることができる。したがって、本実施形態によれば、医用画像G0の解析結果R0を用いて、医用画像の読影、並びに医用画像を用いての患者の検査、診断および治療等を行う際の優先度を適切に判定することができる。
【0049】
とくに、複数の医用画像に関して、医用画像に関する情報と優先度の情報とを対応づけたリストを生成し、生成したリストを表示部14に表示しているため、読影医は、複数の医用画像のうちのいずれの医用画像を優先的に読影すればよいかを容易に認識できる。
【0050】
なお、上記実施形態において、優先度導出部23が導出した優先度を、医用情報管理サーバ5へ送信し、医用画像と対応づけて医用情報データベース6に登録してもよい。これにより、診療科WS4等のネットワーク10に接続された読影WS3以外の端末において、医用画像と併せて優先度を取得することにより、
図4に示すリストL0を読影WS3と同様に生成して表示することができる。また、上記実施形態において、表示制御部24が生成したリストL0を、医用情報データベース6に登録してもよい。これにより、診療科WS4等のネットワーク10に接続された読影WS3以外の端末において、リストL0を取得することにより、
図4に示すリストL0を表示することができる。したがって、診断医等は、いずれの医用画像を取得した患者を優先的に診断および治療等すればよいかを、容易に認識できる。
【0051】
また、上記実施形態においては、優先度判定装置9の解析結果取得部22において、医用画像G0を解析して解析結果を取得しているが、これに限定されるものではない。優先度判定装置9とは別に設けられた解析装置により医用画像を解析し、解析装置により取得された解析結果を、解析結果取得部22により取得してもよい。また、診療科WS4が医用画像の解析を行うことができる場合もある。このような場合には、診療科WS4により取得された解析結果を、優先度判定装置9の解析結果取得部22が取得してもよい。また、解析結果が医用情報データベース6に登録されている場合には、解析結果取得部22は医用情報データベース6から解析結果を取得してもよい。
【0052】
また、上記実施形態においては、診療科WS4に、本実施形態による優先度判定プログラムをインストールしてもよい。この場合、診療科WS4において優先度が導出され、優先度の情報と医用画像の情報とが対応づけられて表示されることとなる。
【0053】
また、上記実施形態においては、本実施形態による優先度判定プログラムを実行する専用の端末を、優先度判定装置として別途設置するようにしてもよい。この場合、別途設置された優先度判定装置において導出された優先度は医用情報データベース6に登録され、読影WS3および診療科WS4等において、
図4に示すリストL0を生成および表示するために使用される。また、別途設置された優先度判定装置において、リストL0を生成して医用情報データベース6に登録するようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態において、例えば、画像取得部21、解析結果取得部22、優先度導出部23、および表示制御部24といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0055】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせまたはCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0056】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアとの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0057】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 医用情報システム
2 モダリティ
3 読影ワークステーション
4 診療科ワークステーション
5 医用情報管理サーバ
6 医用情報データベース
7 読影レポートサーバ
8 読影レポートデータベース
9 優先度判定装置
10 ネットワーク
11 CPU
12 メモリ
13 ストレージ
14 ディスプレイ
15 入力部
21 画像取得部
22 解析結果取得部
23 優先度導出部
24 表示制御部
L0 リスト
M マーク