(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】拡散板、投写式画像表示装置、及び拡散板の設計方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20220722BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20220722BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20220722BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20220722BHJP
G03B 21/62 20140101ALI20220722BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G02B3/00 A
G02B27/01
G03B21/14 Z
G03B21/62
(21)【出願番号】P 2018543884
(86)(22)【出願日】2017-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2017035802
(87)【国際公開番号】W WO2018066501
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-08-11
(31)【優先権主張番号】P 2016195461
(32)【優先日】2016-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】内田 厚
(72)【発明者】
【氏名】唐井 賢
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-183498(JP,A)
【文献】国際公開第2016/051766(WO,A1)
【文献】特開2005-351952(JP,A)
【文献】特開2005-70631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
G02B 3/00 - 3/14
G02B 5/00 - 5/136
G02B 27/01
G03B 21/00 - 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射光学系で使用される拡散板であって、
投射光を投射される投射側主面と、
出射光を出射させる出射側主面と、
前記投射側主面、及び前記出射側主面の少なくとも一方に、レンズ機能を有する微細構造体と、を備え、
前記投射光の開口数NAが、0を超過し、0.140以下であり、
前記微細構造体は、マイクロレンズ状の形状を有するマイクロレンズ形状部を複数備え、
前記マイクロレンズ形状部における前記投射光の光軸と、前記投射側主面の法線とが交差してなす入射角度θiは、0度~50度の範囲内であり、
前記マイクロレンズ形状部の複数のうち少なくとも一つは、前記マイクロレンズ形状部における前記出射光の光軸と、前記投射側主面の法線とが交差してなす出射角度θoで、前記出射光を出射させ、
出射角度θoは、前記入射角度θiと異なり、
前記出射光は、所望の拡散角度の範囲内において、実質的に均一な輝度を有し、
前記マイクロレンズ形状部のマイクロレンズ基準面に実質的に垂直な断面における、前記マイクロレンズ形状部の断面形状は、前記投射光の光軸周りに非対称な断面形状を持っており、
前記投射光の光軸と前記出射光の光軸とが交差してなす角度の差分の絶対値が、0~40度以内で変化して
おり、
拡散角度に対する測定輝度分布において、
前記出射光の光軸の位置に相当する拡散角度を、光軸拡散角度θaとすると、
前記拡散角度の所定範囲における最小角度θminから前記光軸拡散角度θaまでの測定輝度の積算値Toが、拡散角度の全範囲における測定輝度の積算値Taの50%であり、
所定の拡散角度θsにおける輝度Lsと、前記所定の拡散角度θbにおける輝度Lbとが、いずれも前記出射光の光軸での光軸輝度Loの70%に相当し、
前記所定の拡散角度θsが、前記光軸拡散角度θaよりも小さく、
前記所定の拡散角度θbが、前記光軸拡散角度θaよりも大きいとき、
前記拡散角度θsから前記光軸拡散角度θaまでの各輝度からLo*0.7を減算した輝度の積算値Tsと、前記光軸拡散角度θaから前記所定の拡散角度θbまでの輝度の積算値Tbとの比である均一性評価指標Ts/Tbは、
D <Ts/Tb< 1/D
を満たし、
均一性評価指標Ts/Tbの許容範囲の下限値Dは、
D=0.63*exp(0.45*((90-(θs+θb))/90)^2)
を満たす、
ことを特徴とする拡散板。
【請求項2】
投射光学系で使用される拡散板であって、
投射光を投射される投射側主面と、
出射光を出射させる出射側主面と、
前記投射側主面、及び前記出射側主面の少なくとも一方に、レンズ機能を有する微細構造体と、を備え、
前記投射光の開口数NAが、0を超過し、0.140以下であり、
前記微細構造体は、マイクロレンズ状の形状を有するマイクロレンズ形状部を複数備え、
前記マイクロレンズ形状部における前記投射光の光軸と、前記投射側主面の法線とが交差してなす入射角度θiは、0度を超過し、50度以下であり、
前記マイクロレンズ形状部の複数のうち少なくとも一つは、前記マイクロレンズ形状部における前記出射光の光軸と、前記投射側主面の法線とが交差してなす出射角度θoで、前記出射光を出射させ、
前記出射角度θoは、前記入射角度θiと同じであり、
前記出射光は、所望の拡散角度の範囲内において、実質的に均一な輝度を有し、
前記マイクロレンズ形状部のマイクロレンズ基準面に実質的に垂直な断面における、前記マイクロレンズ形状部の断面形状は、前記投射光の光軸周りに非対称な断面形状を持っており、
前記投射光の光軸と前記出射光の光軸とが交差してなす角度の差分の絶対値が、0~40度以内で変化して
おり、
拡散角度に対する測定輝度分布において、
前記出射光の光軸の位置に相当する拡散角度を、光軸拡散角度θaとすると、
前記拡散角度の所定範囲における最小角度θminから前記光軸拡散角度θaまでの測定輝度の積算値Toが、拡散角度の全範囲における測定輝度の積算値Taの50%であり、
所定の拡散角度θsにおける輝度Lsと、前記所定の拡散角度θbにおける輝度Lbとが、いずれも前記出射光の光軸での光軸輝度Loの70%に相当し、
前記所定の拡散角度θsが、前記光軸拡散角度θaよりも小さく、
前記所定の拡散角度θbが、前記光軸拡散角度θaよりも大きいとき、
前記拡散角度θsから前記光軸拡散角度θaまでの各輝度からLo*0.7を減算した輝度の積算値Tsと、前記光軸拡散角度θaから前記所定の拡散角度θbまでの輝度の積算値Tbとの比である均一性評価指標Ts/Tbは、
D <Ts/Tb< 1/D
を満たし、
均一性評価指標Ts/Tbの許容範囲の下限値Dは、
D=0.63*exp(0.45*((90-(θs+θb))/90)^2)
を満たす、
ことを特徴とする拡散板。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の拡散板であって、
前記マイクロレンズ形状部の底面形状は、長方形であり、
前記マイクロレンズ形状部は、格子状に周期的に配列されている、
ことを特徴とする拡散板。
【請求項4】
請求項
3に記載の拡散板であって、
前記マイクロレンズ形状部の最深部から最頂部までの高さH1[μm]は、
0<H1≦75
を満たす、
ことを特徴とする拡散板。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載された拡散板と、
前記投射光を前記拡散板に投射する投射装置と、を備える投写式画像表示装置。
【請求項6】
投射光を投射される投射側主面と、出射光を出射させる出射側主面と、を備える拡散板の光拡散パターンを設計する拡散板の設計方法であって、
前記拡散板の前記投射側主面に垂直に光を投射させることを仮定したときにおいて所望の光拡散特性を有するように、基準マイクロレンズを準備する基準マイクロレンズ設計工程と、
前記拡散板の前記投射側主面の各位置における前記投射光の光軸の傾きと、前記拡散板の前記出射側主面の各位置における前記出射光の光軸の傾きと、前記出射光の配光特性とに基づいて、前記基準マイクロレンズの形状に対して、前記投射光の光軸の傾きと前記出射光の光軸の傾きとに対応するための傾斜対応レンズ設計工程と、を備え、
前記傾斜対応レンズ設計工程では、
レンズ設計パラメータは、レンズの中心位置をずらす中心位置ずらし量を含み、
前記投射光の光軸と前記出射光の光軸とが交差してなす角度の差分の絶対値が、0~40度以内で変化して
おり、
拡散角度に対する測定輝度分布において、
前記出射光の光軸の位置に相当する拡散角度を、光軸拡散角度θaとすると、
前記拡散角度の所定範囲における最小角度θminから前記光軸拡散角度θaまでの測定輝度の積算値Toが、拡散角度の全範囲における測定輝度の積算値Taの50%であり、
所定の拡散角度θsにおける輝度Lsと、前記所定の拡散角度θbにおける輝度Lbとが、いずれも前記出射光の光軸での光軸輝度Loの70%に相当し、
前記所定の拡散角度θsが、前記光軸拡散角度θaよりも小さく、
前記所定の拡散角度θbが、前記光軸拡散角度θaよりも大きいとき、
前記拡散角度θsから前記光軸拡散角度θaまでの各輝度からLo*0.7を減算した輝度の積算値Tsと、前記光軸拡散角度θaから前記所定の拡散角度θbまでの輝度の積算値Tbとの比である均一性評価指標Ts/Tbは、
D <Ts/Tb< 1/D
を満たし、
均一性評価指標Ts/Tbの許容範囲の下限値Dは、
D=0.63*exp(0.45*((90-(θs+θb))/90)^2)
を満たす、
拡散板の設計方法。
【請求項7】
前記傾斜対応レンズ設計工程では、前記レンズ設計パラメータは、さらに、レンズの傾き量を含む、
ことを特徴とする請求項
6に記載の拡散板の設計方法。
【請求項8】
前記傾斜対応レンズ設計工程では、前記レンズ設計パラメータは、さらに、レンズの曲率半径を拡大させる、又は、縮小するレンズ曲率半径の変化量を含む、
ことを特徴とする請求項
6又は
7に記載の拡散板の設計方法。
【請求項9】
前記傾斜対応レンズ設計工程では、前記レンズ設計パラメータは、さらに、三次関数またはそれに類する関数でレンズ形状を調整する調整量を含む、
ことを特徴とする請求項
6~
8のいずれか1項に記載の拡散板の設計方法。
【請求項10】
前記基準マイクロレンズが、前記投射側主面または前記出射側主面の法線方向を含み、異なる2つの断面において、2つの断面形状をそれぞれ制御するレンズ形状を有し、
前記基準マイクロレンズの前記2つの断面形状について、レンズ設計をする、
ことを特徴とする請求項
6~
9のいずれか1項に記載の拡散板の設計方法。
【請求項11】
前記基準マイクロレンズが、トロイダル形状を有する、又はバイコーニック面を有する、
ことを特徴とする請求項
10に記載の拡散板の設計方法。
【請求項12】
投射光を投射されて、反射光を反射する主面と、
前記主面にミラー機能を有する微細構造体と、を備え、
前記投射光の開口数NAが、0を超過し、0.140以下であり、
前記微細構造体は、マイクロレンズ状の形状を有するマイクロレンズ形状ミラー部を複数備え、
前記マイクロレンズ形状ミラー部における前記投射光の光軸と、前記主面の法線とが交差してなす入射角度θiは、0度~50度の範囲内であり、
前記マイクロレンズ形状ミラー部の複数のうち少なくとも一つは、前記マイクロレンズ形状ミラー部における前記反射光の光軸と、前記主面の法線とが交差してなす反射角度で、前記反射光を反射し、
前記反射光は、前記入射角度θiと異なり、
前記反射光は、所望の拡散角度の範囲内において、実質的に均一な輝度を有し、
前記マイクロレンズ形状ミラー部のマイクロレンズ基準面に実質的に垂直な断面における、前記マイクロレンズ形状ミラー部の断面形状は、前記投射光の光軸周りに非対称な断面形状を持っており、
前記投射光の光軸と前記反射光の光軸とが交差してなす角度の差分の絶対値が、0~40度以内で変化して
おり、
拡散角度に対する測定輝度分布において、
前記反射光の光軸の位置に相当する拡散角度を、光軸拡散角度θaとすると、
前記拡散角度の所定範囲における最小角度θminから前記光軸拡散角度θaまでの測定輝度の積算値Toが、拡散角度の全範囲における測定輝度の積算値Taの50%であり、
所定の拡散角度θsにおける輝度Lsと、前記所定の拡散角度θbにおける輝度Lbとが、いずれも前記反射光の光軸での光軸輝度Loの70%に相当し、
前記所定の拡散角度θsが、前記光軸拡散角度θaよりも小さく、
前記所定の拡散角度θbが、前記光軸拡散角度θaよりも大きいとき、
前記拡散角度θsから前記光軸拡散角度θaまでの各輝度からLo*0.7を減算した輝度の積算値Tsと、前記光軸拡散角度θaから前記所定の拡散角度θbまでの輝度の積算値Tbとの比である均一性評価指標Ts/Tbは、
D <Ts/Tb< 1/D
を満たし、
均一性評価指標Ts/Tbの許容範囲の下限値Dは、
D=0.63*exp(0.45*((90-(θs+θb))/90)^2)
を満たす、
拡散板。
【請求項13】
投射光を投射されて、反射光を反射する主面と、
前記主面にミラー機能を有する微細構造体と、を備え、
前記投射光の開口数NAが、0を超過し、0.140以下であり、
前記微細構造体は、マイクロレンズ状の形状を有するマイクロレンズ形状ミラー部を複数備え、
前記マイクロレンズ形状ミラー部における前記投射光の光軸と、前記主面の法線とが交差してなす入射角度θiは、0度を超過し、50度以下であり、
前記マイクロレンズ形状ミラー部の複数のうち少なくとも一つは、前記マイクロレンズ形状ミラー部における前記反射光の光軸と、前記主面の法線とが交差してなす反射角度で、前記反射光を反射し、
前記反射光は、前記入射角度θiと同じであり、
前記反射光は、所望の拡散角度の範囲内において、実質的に均一な輝度を有し、
前記マイクロレンズ形状ミラー部のマイクロレンズ基準面に実質的に垂直な断面における、前記マイクロレンズ形状ミラー部の断面形状は、前記投射光の光軸周りに非対称な断面形状を持っており、
前記投射光の光軸と前記反射光の光軸とが交差してなす角度の差分の絶対値が、0~40度以内で変化して
おり、
拡散角度に対する測定輝度分布において、
前記反射光の光軸の位置に相当する拡散角度を、光軸拡散角度θaとすると、
前記拡散角度の所定範囲における最小角度θminから前記光軸拡散角度θaまでの測定輝度の積算値Toが、拡散角度の全範囲における測定輝度の積算値Taの50%であり、
所定の拡散角度θsにおける輝度Lsと、前記所定の拡散角度θbにおける輝度Lbとが、いずれも前記反射光の光軸での光軸輝度Loの70%に相当し、
前記所定の拡散角度θsが、前記光軸拡散角度θaよりも小さく、
前記所定の拡散角度θbが、前記光軸拡散角度θaよりも大きいとき、
前記拡散角度θsから前記光軸拡散角度θaまでの各輝度からLo*0.7を減算した輝度の積算値Tsと、前記光軸拡散角度θaから前記所定の拡散角度θbまでの輝度の積算値Tbとの比である均一性評価指標Ts/Tbは、
D <Ts/Tb< 1/D
を満たし、
均一性評価指標Ts/Tbの許容範囲の下限値Dは、
D=0.63*exp(0.45*((90-(θs+θb))/90)^2)
を満たす、
拡散板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散板及び投写式画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイやレーザプロジェクタなどのスクリーンとして、マイクロレンズアレイを用いた拡散板が使用されている。マイクロレンズアレイを用いた場合、乳半板やすりガラスなどの拡散板を用いる場合と比較して、レーザ光のスペックルノイズを抑制できる利点がある。
【0003】
特許文献1には、レーザ光を光源とし、複数画素の配列で形成される映像を投影するレーザプロジェクタと、複数のマイクロレンズが配列されたマイクロレンズアレイとを用いた拡散板を有する画像形成装置が記載されている。マイクロレンズアレイを用いた場合、入射された光を適切に拡散させることができると共に、必要な拡散角を自由に設計することができる。
【0004】
特許文献2には、垂直な側面を有するピストン形状(嵩上げ部)をマイクロレンズに設けた拡散板が開示されている。また、同文献には、マイクロレンズを含む微細構造の形状又は位置を定義するパラメータの少なくとも一つを予め定められた確率密度関数に従ってランダム分布させた拡散板が開示されている。さらに、同文献には、このような拡散板において、個々の微細構造を回転させることで、光ビームをコリメートさせることが開示されている。個々のマイクロレンズは、スクリーン全体の光軸に平行ではない光軸を有する。マイクロレンズから出射する光ビームの光軸は、マイクロレンズに入射した光ビームの光軸に対して、傾いており、平行ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-145745号公報
【文献】特表2004-505306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の発明者等は、以下の課題を見出した。
出射光の光軸が入射光の光軸に対して傾いており、その出射光が所定の拡散範囲において拡散し、その輝度が均一となることが要求されている。また、入射光が拡散板に対して傾いて入射する場合においても、その輝度が均一となることが要求されている。さらに、この要求された出射光を出射するマイクロレンズを備える拡散板が望まれている。
【0007】
特許文献2に開示される拡散板は、入射光の光軸に対して傾いた光軸を有する出射光を個々のマイクロレンズからそれぞれ出射する。しかし、出射光の拡散分布が偏ったり、拡散光の投影形状が歪んだりする等して、その輝度が均一でないことがあった。入射光が拡散板に対して傾いて入射する場合においても、その輝度が均一でないことがあった。
【0008】
本発明は、出射光の輝度が拡散範囲において均一な拡散板を提供するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る拡散板は、
投射光学系で使用される拡散板であって、
投射光を投射される投射側主面(例えば、主面1a)と、
出射光を出射させる出射側主面(例えば、主面1b)と、
前記投射側主面、及び前記出射側主面の少なくとも一方に、レンズ機能を有する微細構造体と、を備え、
前記投射光の開口数NAが、0を超過し、0.140以下であり、
前記微細構造体は、マイクロレンズ状の形状を有するマイクロレンズ形状部を複数備え、
前記マイクロレンズ形状部における前記投射光の光軸と、前記投射側主面の法線とが交差してなす入射角度θiは、0度~50度の範囲内であり、
前記マイクロレンズ形状部の複数のうち少なくとも一つは、前記マイクロレンズ形状部における前記出射光の光軸と、前記投射側主面の法線とが交差してなす出射角度θoで、前記出射光を出射させ、
出射角度θoは、前記入射角度θiと異なり、
前記出射光は、所望の拡散角度の範囲内において、実質的に均一な輝度を有し、
前記マイクロレンズ形状部のマイクロレンズ基準面に実質的に垂直な断面における、前記マイクロレンズ形状部の断面形状は、前記投射光の光軸周りに非対称な断面形状を持つ。
【0010】
また、本発明に係る拡散板は、
投射光学系で使用される拡散板であって、
投射光を投射される投射側主面と、
出射光を出射させる出射側主面と、
前記投射側主面、及び前記出射側主面の少なくとも一方に、レンズ機能を有する微細構造体と、を備え、
前記投射光の開口数NAが、0を超過し、0.140以下であり、
前記微細構造体は、マイクロレンズ状の形状を有するマイクロレンズ形状部を複数備え、
前記マイクロレンズ形状部における前記投射光の光軸と、前記投射側主面の法線とが交差してなす入射角度θiは、0度を超過し、50度以下であり、
前記マイクロレンズ形状部の複数のうち少なくとも一つは、前記マイクロレンズ形状部における前記出射光の光軸と、前記投射側主面の法線とが交差してなす出射角度θoで、前記出射光を出射させ、
前記出射角度θoは、前記入射角度θiと同じであり、
前記出射光は、所望の拡散角度の範囲内において、実質的に均一な輝度を有し、
前記マイクロレンズ形状部のマイクロレンズ基準面に実質的に垂直な断面における、前記マイクロレンズ形状部の断面形状は、前記投射光の光軸周りに非対称な断面形状を持つ。
【0011】
また、拡散角度に対する測定輝度分布において、前記出射光の光軸の位置に相当する拡散角度を、光軸拡散角度θaとすると、前記拡散角度の所定範囲における最小角度θminから前記光軸拡散角度θaまでの測定輝度の積算値Toが、拡散角度の全範囲における測定輝度の積算値Taの50%であり、前記投射光の光軸と前記出射光の光軸とが交差してなす角度の差分の絶対値が、0~40度以内で変化しており、所定の拡散角度θsにおける輝度Lsと、前記所定の拡散角度θbにおける輝度Lbとが、いずれも前記出射光の光軸での光軸輝度Loの70%に相当し、前記所定の拡散角度θsが、前記光軸拡散角度θaよりも小さく、前記所定の拡散角度θbが、前記光軸拡散角度θaよりも大きいとき、前記拡散角度θsから前記光軸拡散角度θaまでの各輝度からLo*0.7を減算した輝度の積算値Tsと、前記光軸拡散角度θaから前記所定の拡散角度θbまでの輝度の積算値Tbとの比である均一性評価指標Ts/Tbは、D <Ts/Tb< 1/Dを満たし、均一性評価指標Ts/Tbの許容範囲の下限値Dは、D=0.63*exp(0.45*((90-(θs+θb))/90)^2)を満たす、ことを特徴としてもよい。
また、前記マイクロレンズ形状部の底面形状は、長方形であり、前記マイクロレンズ形状部は、格子状に周期的に配列されている、ことを特徴としてもよい。
また、前記マイクロレンズ形状部の最深部から最頂部までの高さH1[μm]は、0<H1≦75を満たす、ことを特徴としてもよい。
【0012】
一方、本発明に係る投写式画像表示装置は、上記された拡散板と、前記投射光を前記拡散板に投射する投射装置と、を備える。
【0013】
他方、本発明に係る拡散板の設計方法は、
投射光を投射される投射側主面と、出射光を出射させる出射側主面と、を備える拡散板の光拡散パターンを設計する拡散板の設計方法であって、
前記拡散板の前記投射側主面に垂直に光を投射させることを仮定したときにおいて所望の光拡散特性を有するように、基準マイクロレンズを準備する基準マイクロレンズ設計工程と、
前記拡散板の前記投射側主面の各位置における前記投射光の光軸の傾きと、前記拡散板の前記投射側主面の各位置における前記投射光の光軸の傾きと、前記出射光の配光特性とに基づいて、前記基準マイクロレンズの形状に対して、前記投射光の光軸の傾きと前記出射光の光軸の傾きとに対応するための傾斜対応レンズ設計工程と、を備え、
前記傾斜対応レンズ設計工程では、
レンズ設計パラメータは、レンズの中心位置をずらす中心位置ずらし量を含む。
【0014】
また、前記傾斜対応レンズ設計工程では、前記レンズ設計パラメータは、さらに、レンズの傾き量を含む、ことを特徴としてもよい。
また、前記傾斜対応レンズ設計工程では、前記レンズ設計パラメータは、さらに、レンズの曲率半径を拡大させる、又は、縮小するレンズ曲率半径の変化量を含む、ことを特徴としてもよい。
また、前記傾斜対応レンズ設計工程では、前記レンズ設計パラメータは、さらに、三次関数またはそれに類する関数でレンズ形状を調整する調整量を含む、ことを特徴としてもよい。
また、前記基準マイクロレンズが、前記投射側主面または前記出射側主面の法線方向を含み、異なる2つの断面において、2つの断面形状をそれぞれ制御するレンズ形状を有し、
前記基準マイクロレンズの前記2つの断面形状について、レンズ設計をする、ことを特徴としてもよい。
また、前記基準マイクロレンズが、トロイダル形状を有する、又はバイコーニック面を有する、ことを特徴としてもよい。
【0015】
ところで、本発明にかかる拡散板は、
投射光を投射されて、反射光を反射する主面と、
前記主面にミラー機能を有する微細構造体と、を備え、
前記投射光の開口数NAが、0を超過し、0.140以下であり、
前記微細構造体は、マイクロレンズ状の形状を有するマイクロレンズ形状ミラー部を複数備え、
前記マイクロレンズ形状ミラー部における前記投射光の光軸と、前記主面の法線とが交差してなす入射角度θiは、0度~50度の範囲内であり、
前記マイクロレンズ形状ミラー部の複数のうち少なくとも一つは、前記マイクロレンズ形状ミラー部における前記反射光の光軸と、前記主面の法線とが交差してなす反射角度で、前記反射光を反射し、
前記反射光は、前記入射角度θiと異なり、
前記反射光は、所望の拡散角度の範囲内において、実質的に均一な輝度を有し、
前記マイクロレンズ形状ミラー部のマイクロレンズ基準面に実質的に垂直な断面における、前記マイクロレンズ形状ミラー部の断面形状は、前記投射光の光軸周りに非対称な断面形状を持つ。
ところで、本発明にかかる拡散板は、
投射光を投射されて、反射光を反射する主面と、
前記主面にミラー機能を有する微細構造体と、を備え、
前記投射光の開口数NAが、0を超過し、0.140以下であり、
前記微細構造体は、マイクロレンズ状の形状を有するマイクロレンズ形状ミラー部を複数備え、
前記マイクロレンズ形状ミラー部における前記投射光の光軸と、前記主面の法線とが交差してなす入射角度θiは、0度を超過し、50度以下であり、
前記マイクロレンズ形状ミラー部の複数のうち少なくとも一つは、前記マイクロレンズ形状ミラー部における前記反射光の光軸と、前記主面の法線とが交差してなす反射角度で、前記反射光を反射し、
前記反射光は、前記入射角度θiと同じであり、
前記反射光は、所望の拡散角度の範囲内において、実質的に均一な輝度を有し、
前記マイクロレンズ形状ミラー部のマイクロレンズ基準面に実質的に垂直な断面における、前記マイクロレンズ形状ミラー部の断面形状は、前記投射光の光軸周りに非対称な断面形状を持つ。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、出射光の輝度が拡散範囲において均一な拡散板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1に係る拡散板の構成を示す模式上面図である。
【
図2】実施の形態1に係る投写式画像装置を示す模式図である。
【
図3】実施の形態1に係る拡散板の一具体例から出射された出射光の拡散角度に対する輝度を示すグラフである。
【
図4】実施の形態1に係る拡散板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態1に係るマイクロレンズアレイの設計工程を示すフローチャートである。
【
図6】出射光の拡散特性の均一性の評価方法を説明するための図である。
【
図7】垂直方向の入射角度の定義を説明するための図である。
【
図8】水平方向の入射角度の定義を説明するための図である。
【
図9A】実施の形態1に係る拡散板のマイクロレンズに係る基準マイクロレンズを示す図である。
【
図9B】実施の形態1に係る拡散板のマイクロレンズを示す図である。
【
図10】拡散板のマイクロレンズの各位置のレンズ面高さを示すグラフである。
【
図11】拡散板のマイクロレンズの各位置のレンズ面高さを示すグラフである。
【
図12】出射光の拡散角度に対する輝度を示すグラフである。
【
図13】拡散板のマイクロレンズの各位置のレンズ面高さを示すグラフである。
【
図14】出射光の拡散角度に対する輝度を示すグラフである。
【
図15】出射光の拡散角度に対する輝度を示すグラフである。
【
図16】拡散板から出射された出射光の拡散角度に対する輝度を示すグラフである。
【
図17】出射光の拡散特性の均一性の評価方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
図1~
図3を参照して、実施の形態1に係る拡散板について説明する。
図1は、実施の形態1に係る拡散板の構成を示す模式上面図である。
図2は、実施の形態1に係る投写式画像装置を示す模式図である。
図3は、実施の形態1に係る拡散板の一具体例から出射された出射光の拡散角度に対する輝度を示すグラフである。なお、
図1では、拡散板の主面を原点とするxy座標系を規定した。
図2では、右手系xyz座標系を規定したが、見易さのため、拡散板10の主面1aから、離れた箇所に記載した。
【0019】
図1及び
図2に示すように、拡散板10は、基板1と、基板1に配列されている複数のマイクロレンズ2とを備える。具体的には、基板1は、主面1a、1bを備え、複数のマイクロレンズ2は、主面1aに格子状に配列されている。例えば、拡散板10及び基板1は、水平方向Hに沿う長さH
Lの長辺と、垂直方向Vに沿う長さV
Lの短辺との長方形状の板状体である。なお、水平方向H及び垂直方向Vは、出射光が拡散板10に当たって、映像等を物体に映し出す際、映像等の方向に相当するものである。この例では、拡散板10は、所定の向きに固定されており、水平方向Hは、X方向に沿い、垂直方向VはY方向に沿う。複数のマイクロレンズ2の形状は、出射光の光軸が入射光の光軸に対して所望の傾斜角度で傾くように制御されている。また、複数のマイクロレンズ2の形状は、出射光が所望の拡散形状及び拡散範囲を有するように制御されている。
【0020】
図1に示すマイクロレンズ2の一例は矩形格子状に配置されているが、マイクロレンズ2の格子状の配置は矩形格子に限定されるものではなく、正方格子、正三角格子、斜方格子、平行体格子などであってもよい。複数のマイクロレンズ2の底面の形状は、正方形又は長方形のような矩形に限定されるものではなく、四角形、六角形、その他の多角形としてもよい。複数のマイクロレンズ2は、基板1の主面1a上に周期的に配列されていることが好ましい。また、拡散板10は、マイクロレンズ2ではなく、レンズ機能を有する微細構造体(図示略)を備えてもよい。この微細構造体は、マイクロレンズ状の形状を有するマイクロレンズ形状部(図示略)を複数備える。マイクロレンズ形状部の最深部から最頂部までの高さH1[μm]は、
0<H1≦75
を満たすと好ましい。投射式画像表示装置に用いられる拡散板においては、マイクロレンズ形状部の高さH1が重要である。高さH1が75μm以下であるとき、個々のマイクロレンズが視認されにくくなる。そのため、投射式画像表示装置により表示される画像において粒状感が生じにくくなる。したがって、マイクロレンズ形状部の高さH1は、75μm以下であると好ましい。なお、高さH1は、0μmより大きいとよい。
また、マイクロレンズ形状部のマイクロレンズ基準面(図示略)に実質的に垂直な断面における、マイクロレンズ形状部の断面形状は、投射光L1の光軸A1周りに非対称な断面形状を持つとよい。ここで、マイクロレンズ基準面は、マイクロレンズ2の底面に相当する。
【0021】
拡散板10は、投写式画像表示装置の一構成要素として、使用することができる。
図2に示すように、投写式画像表示装置100は、拡散板10と、投射光L1を投射する投射装置20とを備える。投射光L1を拡散板10に投射すると、画像や映像を拡散板10に映し出されるものである。具体的には、投写式画像表示装置100を車載ヘッドアップディスプレイとして用いた場合、投射光L1を拡散板10に投射すると、画像や映像が拡散板10に映し出される。続いて、この画像や映像が、必要に応じてミラー(図示略)や車のフロントウインドウ(図示略)等を経て、ユーザに視認される。
【0022】
投射装置20は、拡散板10に向かって投射光L1を投射し、拡散させることのできる位置に配置されている。なお、
図2に示す投写式画像表示装置100では、投射装置20は、拡散板10の基板1の主面1a側に配置されているが、投射装置20は、拡散板10の基板1の主面1b側に配置されていてもよい。
【0023】
ここで、投射装置20が拡散板10に向かって投射光L1を投射する。拡散板10の投射光L1はマイクロレンズ2及び主面1aに入射する。主面1aに関して実質的に垂直な軸A0がある。軸A0と、投射光L1の光軸A1とのなす角度が、投射光L1の拡散板10への入射角度θiである。ここで、入射角度θiが、0度から50度までの範囲内であると好ましい。なお、この明細書では、角度の単位として、「度」と「deg」を用いたが、いずれも同じ意味の単位を指し示すものである。表面に微細な凹凸(レンズ)がついた構造を持つ拡散板においては、50度を超える入射光では、拡散板内部で内部全反射が生じ、輝度ムラが悪化する場合がある。このため入射角度θiは50度以下が好ましい。
投射光L1は拡散板10に入射した後、拡散板10を透過し、拡散板10の主面1bから出射光L2として出射する。出射光L2は、拡散範囲Rd内に拡散しつつ、光軸A2に沿って進む。ここで、投射装置20から拡散板10に投射された投射光L1の、光軸A1に対する最大角度をθ
naとすると、投射光L1の開口数NAは、下記の式1で表現される。
【数1】
ここで、開口数NAが、0.140以下であると好ましい。投射光の光源としては一般的にLEDやレーザが用いられる。これらの光源を用いて映像を投影するには投射光のNAを0.140以下にすることで高精細な映像が得られる。なお、開口数NAは、0より大きいとよい。
【0024】
(出射光の光軸の定義の一具体例)
ここで、
図3及び
図16を参照して、出射光L2の光軸A2の定義の一具体例について説明する。
図3は、実施の形態1に係る拡散板の一具体例から出射された出射光の拡散角度に対する輝度を示すグラフである。
図16は、拡散板から出射された出射光の拡散角度に対する輝度を示すグラフである。
図3及び
図16に示すように、評価したい測定断面における、配光特性において、左側から積算していったときに全輝度の積算値の半分となる角度を出射光の光軸と定義する。具体的には、拡散角度の所定範囲に対する測定輝度分布において、出射光の光軸の位置に相当する拡散角度を、光軸拡散角度θaとする。拡散角度の所定範囲における最小角度θminから光軸拡散角度θaまでの測定輝度の積算値Toが、拡散角度の全範囲における測定輝度の積算値Taの50%であると、定義する。
【0025】
再び、
図2を参照して、拡散板10を備える投写式画像表示装置100について説明する。
拡散板10全体の軸A0と、出射光L2の光軸A2とのなす角度が、出射光L2の拡散板10への出射角度θoである。出射角度θoは、入射角度θiと異なり、言い換えると、大きいか又は小さい。出射光L2の光軸A2は、投射光L1の光軸A1に対して、所定の角度で傾いている。つまり、光軸A2は、光軸A1と同じ方向に延びておらず、平行でもない。出射光L2の光軸A2は、投射光L1の光軸A1に対して、光軸ズレ角度θvで曲がることになる。言い換えると、光軸A2と、光軸A1とのなす角度は、光軸ズレ角度θvである。また、出射角度θoと入射角度θiとの差分の絶対値が光軸ズレ角度θvであり、光軸ズレ角度θvが0~40度以内であると好ましい。光軸ズレ角度θvが大きくなるほど微細凹凸の斜面角度が大きくなる傾向にある。光軸ズレ角度θvが40度以下であるとき、投射板に入射した光が、内部で全反射し難くなる。そのため、この入射した光が、安定して投射板から出射し、画像における輝度が安定する等の良好な影響が多くなる。このため、光軸ズレ角度θvは40度以下にすることが好ましい。
【0026】
出射光L2は、光軸A2を中心に均一に拡散する。具体的には、出射光L2の輝度は、光軸A2と実質的に垂直な面上において、光軸A2を中心に対称となるように分布する。出射光L2の輝度は、光軸A2と実質的に垂直な面上において、光軸A2からの距離に応じて減少してもよいし、光軸A2からの距離によることなく一定であってもよい。
【0027】
従って、投写式画像表示装置100は、光軸A2を投射光L1の光軸A1に対して傾けて、出射光L2を出射することができる。また、投写式画像表示装置100は、出射光L2が光軸A2を中心に均一な輝度を有するように、投射光L1を拡散しつつ出射する。そのため、投写式画像表示装置100は、ヘッドアップディスプレイ用のスクリーンとして、好適である。
【0028】
(拡散板の製造方法)
図4及び
図5を参照して、実施の形態1に係る拡散板の製造方法について説明する。
図4は拡散板の製造方法の手順を示すフローチャートである。
図5は、実施の形態1に係るマイクロレンズアレイの設計工程を示すフローチャートである。
【0029】
図4に示すように、拡散板の製造方法は、所望の光拡散特性を発現するマイクロレンズアレイを設計する工程(S100)と、そのマイクロレンズアレイの金型を作製する工程(S200)と、金型を用いて樹脂にマイクロレンズアレイの形状を転写する工程(S300)と、を備える。
以下、各工程を順に説明する。
【0030】
図5を参照して、マイクロレンズアレイを設計する工程(S100)について説明する。まず、拡散板の仕様を決定する(ST110)。具体的には、拡散板に用いる材料の光学物性(特に屈折率)、使用波長、及び必要な拡散特性の仕様を決定する。
【0031】
続いて、拡散板に求められる拡散特性と材料の光学特性とから基準マイクロレンズの設計を行う(ST120)。これは投射式画像表示装置に求められる配光特性から、拡散形状、例えばトップハットやガウシアン分布、を設定し、さらに拡散の広がり角度を設定すればよい。基準マイクロレンズの設計段階では、レンズ主面に実質的に垂直に、光が入射し、出射光は同じ光軸であると仮定して設計しておけばよい。基準マイクロレンズの設計は、光線追跡でもよく、回折計算によってでもよく、必要に応じて使い分ければよい。基準マイクロレンズ設計を回折計算で行い、傾斜対応レンズ設計は光線追跡を用いて行ってもよいし、両方回折計算でもよく、両方光線追跡を用いて設計してもよい。本発明の説明においては、両工程とも光線追跡法を用いて説明を行う。なお、本実施例では、光線追跡については照明設計解析ソフトウェアLightTools(登録商標)を用いて解析した。
【0032】
続いて、拡散板の凹凸パターン部の屈折率、基材フィルムの材料や屈折率を基に設計する(基準マイクロレンズ設計工程ST120)。基準マイクロレンズの数は1つでもよく、必要に応じて2つ以上でもよい。特にレンズサイズが100μm以下では回折光の強度が高い結果となった場合には、2種類以上用いたり、ランダムなレンズ形状を用いたり、位相に変調を加える形状を用いたりしてもよい。基準マイクロレンズ設計の段階では、同一の基準マイクロレンズが拡散板の基板の主面の全面に一様に敷き詰められていると、仮定していると考えてよい。基準マイクロレンズは、例えば、トロイダル形状、又はバイコーニック面を有する。
【0033】
続いて、拡散板の各位置における、入射光の光軸の傾きと、出射光の光軸の傾きと、必要な拡散特性の設定をする(光設定工程ST130)。
【0034】
続いて、設計した基準マイクロレンズを基に、傾斜対応レンズ設計工程ST140に進む。当工程では、光設定工程ST130で設定した拡散板の各位置における、入射光の光軸の傾きと、出射光の光軸の傾きと、及び必要な拡散特性の設定をインプットデータとして、拡散板の各位置における、レンズ形状の設計を行う。傾斜対応レンズ設計は、全ての個々のレンズについて光線追跡や回折計算を行って設計を行ってもよいし、変化させるレンズパラメータを選択し、そのパラメータを変化させてもよい。
【0035】
ところで、一般的なマイクロレンズアレイを含む拡散板では、マイクロレンズの数は100万個を超えることもあるため個々のレンズに対して個別に設計することは多くの労力を要する。そこで、傾斜対応レンズ設計工程ST140では、設計レンズのパラメータとして、曲率半径、円錐係数、三次補正係数、レンズの中心位置のずらし量、レンズの傾きを選んだ。そして、例えば、入射光が最低角度で入射される部分と、入射光が最高角度で入射される部分で、前述のパラメータ調整により傾斜対応を行うことで、それぞれのパラメータの上下限を設定し、その間について内挿法を用いることで個々のレンズ設計を省略した。この最低角度は、入射光の光軸と、拡散板に実質的に垂直な仮想軸との交差する角度の、最低値である。また、この最高角度は、入射光の光軸と、拡散板に実質的に垂直な仮想軸との交差する角度の、最高値である。この方法により限定されたパラメータを元に拡散板全面の各々の位置の傾斜対応レンズ設計を行うことと同じ設計効果が得られる。
【0036】
(出射光の拡散特性の均一性)
次に、
図6及び
図17を用いて、出射光の拡散特性の均一性を定量的に評価する方法について説明する。
図6及び
図17は、出射光の拡散特性の均一性の評価方法を説明するための図である。
【0037】
出射光の拡散分布において、出射光の光軸の位置に相当する光軸拡散角度θaでの光軸輝度Loを基準に、
図6及び
図17の紙面に向かって左側、すなわち、光軸拡散角度θaよりも小さい角度の領域で、光軸輝度Loの70%に相当する輝度値に対応する拡散角度θsがある。また、
図6及び
図17の紙面に向かって右側、すなわち、光軸拡散角度θaよりも大きい角度の領域で、光軸輝度Loの70%に相当する輝度値に対応する拡散角度θbがある。次に、拡散角度θsから拡散角度θbまでの範囲において、光軸輝度Loを基準とし、その後、各輝度から光軸輝度Lo×0.7を減算し、拡散角度θsから光軸拡散角度θaまでの積算輝度Tsと、光軸拡散角度θaから拡散角度θbまでの積算輝度Tbとを計算する。そして積算輝度Tsと積算輝度Tbの比である均一性評価指標Ts/Tbを計算し、均一性評価指標Ts/Tbと、出射光の拡散範囲θs+θbとに基づいて、出射光の拡散特性の均一性の評価を行う。
具体的には、拡散範囲θs+θbの広さに応じて、均一性評価指標Ts/Tbの許容範囲D~1/Dは変化する。これは、均一性評価指標Ts/Tbが同じ値であっても、拡散範囲θs+θbが狭い場合、出射光の拡散特性の均一性が低いと視認される傾向にあるのに対して、拡散範囲θs+θbが広い場合、均一性が高いと視認される傾向が有る。これを元に以下のように拡散範囲θs+θbに応じて均一性評価指標の許容範囲D~1/Dを決定する。均一性の許容範囲の下限値Dは、以下の式で表される。
D = 0.63*exp( 0.45*( (90 - (θs+θb))/90)^2 )
均一性の許容範囲の下限値Dと、その上限値1/Dを用いて、均一性評価指標Ts/Tbの範囲は以下の範囲にあれば、出射光の拡散特性の均一性は良好と判断されて、良い。
D <Ts/Tb< 1/D
具体的には、拡散範囲θs+θbが10度であれば、均一性の許容範囲の下限値Dが0.90であり、その上限値1/Dが1.11である。均一性評価指標Ts/Tbが、均一性の許容範囲の下限値D0.90を超えて、且つ、その上限値1/D1.11未満であれば、拡散板は、出射光を均一な拡散分布で拡散させるため、好ましい。拡散範囲θs+θbが20度であれば、均一性評価指標Ts/Tbが、均一性の許容範囲の下限値D0.83を超えて、且つ、その上限値1/D1.21未満であれば、拡散板は、出射光を均一な拡散分布で拡散させるため、好ましい。
具体的には、
図6に示す例では、拡散範囲θs+θbが10度であり、均一性評価指標Ts/Tbは、0.99であるため、均一性の許容範囲の下限値D0.9から上限値1/D1.11までの範囲内にある。すなわち、
図6に示す例では、出射光の拡散特性は均一であると認定される。
一方、
図17に示す例では、拡散範囲θs+θbが10度であり、均一性評価指標Ts/Tbは、約0.86であるため、均一性の許容範囲の下限値D0.9を下回る。すなわち、
図17に示す例では、出射光の拡散特性は均一でないと認定される。
【0038】
(発明の効果の一例)
本発明に係る拡散板及び投写式画像表示装置によれば、入射光によらず出射光の拡散特性を均一にできることから映像を隅まで明るく視認できたり、高品位な映像を提供したりすることができる。また、出射光の光軸を入射光の光軸に対して曲げることで、拡散板に映像範囲の拡大などの機能を持たせた拡散板を提供することができ、装置の小型化や、映像表示装置の設計自由度を向上させることができる。
【実施例】
【0039】
次に、実施の形態1に係る拡散板の製造方法の一具体例を用いて、製造した実施例1~4について説明する。まず、実施の形態1に係る拡散板の製造方法の一具体例について説明する。
【0040】
(実施例1~4の共通の設計事項)
まず、基準マイクロレンズ設計工程ST120では、具体的に、基準マイクロレンズの形状について説明をする。基準マイクロレンズのレンズ形状は、一般的な回転対称形状を用いてもよく、その場合、基準マイクロレンズの断面形状、具体的には、基準マイクロレンズの中心とレンズ面との交点を基準としたサグ量z[μm]は、下記の式2で表される。ここで、Cは曲率[1/μm]であり、Kは円錐係数、rは中心からの距離[μm]である。曲率Cは、曲率半径R[μm]を用いて、C=1/Rと表される。
【数2】
【0041】
本実施例の拡散板で用いた基準マイクロレンズの断面形状は、下記の式3で表される。ここでは、基準マイクロレンズは、長方形の底面を有するトロイダルレンズである。XYZ3次元座標を用いて、基準マイクロレンズにおける各位置を規定する。具体的には、その底面がXY平面に沿い、底面に関して実質的に垂直な仮想軸をZとする。X方向及びY方向にそれぞれ基準マイクロレンズのレンズ凸面の曲率が定義されている。ここで、基準マイクロレンズの中心を原点として、基準マイクロレンズの中心軸からのX方向の距離r
xと、基準マイクロレンズの中心軸からのY方向の距離r
yと、X方向(XZ平面)の曲率C
x[1/μm]と、Y方向の曲率C
y[1/μm]と、X方向(XZ平面)の円錐係数K
xと、Y方向(YZ平面)の円錐係数K
yとの関係は、式3を用いて、表すことができる。また、斜め入射対応設計では、式3に示されるように、3次関数による補正係数Ax、Ayを有する3次関数の補正式が加わる。
【数3】
【0042】
(実施例1~4のインプット事項とその共通設計事項)
続いて、実施例1~4のインプット事項とその共通設計事項について説明する。拡散板のパターン部分の屈折率は1.52とし、拡散板の基材としてポリカーボネートを用いて、基材の屈折率は1.59とする。拡散板から出射される出射光の拡散特性では、拡散形状は長方形とする。さらに、水平方向H、(例えば、
図1に示す拡散板10の長辺側の外縁に沿う方向)において、出射光の拡散角度は全角で20度とし、垂直方向V(例えば、
図1に示す拡散板10の短辺側の外縁に沿う方向)において、出射光の拡散角度は全角で10度とする。
また、各方向での配光形状はトップハットに近い形状とした。投射装置からの映像は、拡散板の微細凹凸面(パターン面、具体的には、マイクロレンズアレイ、より具体的には、
図2に示すマイクロレンズ2)に入射され、基材面の平坦面(例えば、
図2に示す主面1b)から映像光が拡散するとともに出射される。
【0043】
また、
図1に示す拡散板10の一具体例がある。この一具体例は長方形状板であり、その水平方向Hにおける長辺の長さH
Lを60mm(±30mm)、垂直方向Vにおける長辺の長さV
Lを30mm(±15mm)とする。この一具体例に投射光を投射すると、投射光に含まれる光線がこの拡散板の一具体例の原点に相当する箇所に垂直に入射する。また、
図7に示すように、垂直方向Vにおいてこの拡散板の一具体例の両端では、±5度に傾いた光線が入射する。また、
図8に示すように、水平方向Hにおいてこの拡散板の一具体例の両端では、±10度に傾いた光線が入射する。
図7及び
図8に示すように、基準マイクロレンズ各位置におけるx、y軸方向それぞれの入射光の光軸角度をθih(x,y)、θiv(x,y)とする。また、出射方向の光軸角度をθoh(x,y)、θov(x,y)とする。ここでそれぞれの角度は場所の関数としてあらわされる。また、出射光の光軸の入射光軸からのズレを、x,y軸方向にそれぞれDθoh(x,y)、Dθov(x,y)とする。
【0044】
これらの情報を基に、投射光を垂直(この場合、θih=0、θiv=0)に入射させる場合の条件で基準マイクロレンズの設計を行った。基準マイクロレンズの諸条件は、水平方向ピッチPx30[μm]、曲率半径Rx44.6[μm]、円錐係数kx-0.75、垂直方向ピッチPy30[μm]、曲率半径Ry89.3[μm]、円錐係数ky-0.75と設定した。水平方向ピッチPxは、隣り合う基準マイクロレンズ同士の境界間の距離である。垂直方向ピッチPyは、隣り合う基準マイクロレンズ同士の境界間の距離である。
【0045】
続いて、傾斜対応レンズ設計では、各傾斜に対応するためのパラメータとして、XY座標の各位置において、レンズ中心位置のずらし量をDh、Dv[μm]、レンズ曲率半径係数をαx、αy、3次関数による補正係数をAx、Ayとする。
【0046】
XY座標のとある位置において、
図9Bに示すマイクロレンズ2での中心位置Roは、
図9Aに示す基準マイクロレンズ21での中心位置Roから所定の距離だけずれた位置にある。具体的には、マイクロレンズ2での中心位置Roは、基準マイクロレンズ21での中心位置Roから、X方向に距離Dh、Y方向において距離Dvずれている。言い換えると、X方向におけるレンズ中心位置のずらし量Dhは、基準マイクロレンズ21の中心位置Roからマイクロレンズ2の中心位置RoまでのX方向における距離である。Y方向におけるレンズ中心位置のずらし量Dvは、基準マイクロレンズ21の中心位置Roからマイクロレンズ2の中心位置RoまでのY方向における距離である。
【0047】
(実施例1)
前述の共通設計事項を基に、拡散板の出射光について、条件を決める。拡散板の出射光が各入射光の光軸に対して、垂直方向Vにおいて、全て-2度光軸を傾けるものとする(ここで、Dθov=-2deg)。その他の拡散特性は同一のものとする。
【0048】
ここで、拡散板において垂直方向Vのみに光軸を曲げるため、レンズ設計についても垂直方向に沿う断面(V断面)のみ行えばよい。垂直方向V全域で有効な傾斜対応レンズ設計を行うため、垂直方向Vに延びる直線にある位置V1、V2、V3のそれぞれにおいてパラメータ設計を行う。XY直交座標を用いると、位置V1(0mm, 0mm)、位置V2(0mm, +15mm)、位置V3(0mm, -15mm)と表現される。
【0049】
まず、位置V1(0mm, 0mm)において、配光特性は、垂直方向Vにおける、レンズ基板の主面に対する入射光の光軸の角度が0[deg]であり、レンズ基板の主面に対する出射光軸の角度は-2[deg]、出射配光角は-7~+3[deg]の範囲内にあればよい。これを実現するためには、レンズ中心位置のずらし量Dvは-6[μm]とする。本設計による位置V1におけるマイクロレンズの断面形状を、
図10に示す。また、垂直方向Vにおける配光特性を、
図6に示す。なお、
図10では、投射光L1及び出射光L2の進む方向を示す矢印を記載した。後述する
図11、13でも、
図10と同様に、この矢印を記載した。また、ここでは、拡散範囲θs+θbが10度であるので、均一性評価指標Ts/Tbが、均一性の許容範囲の下限値Dである0.90を超過し、且つ、その上限値である1/D1.11未満であれば、出射光の拡散分布は、均一とされる。均一性評価指標Ts/Tbは0.99であり、均一性の許容範囲の下限値Dを超過しており、且つ、その上限値1/D未満なので、均一である。
【0050】
続いて、位置V2(0mm, +15mm)において、垂直方向Vにおける、レンズ基板の主面に対する入射光の光軸の角度が5[deg]であり、レンズ基板の主面に対する出射光の光軸の角度は、3[deg](=5[deg]-2[deg])であればよく、出射配光角は-2~+8[deg]であればよい。これを実現する設計として、Y方向におけるレンズ中心位置のずらし量Dv=-6[μm]、Y方向におけるレンズ曲率半径係数αy=1-0.01、つまり0.99、Y方向における3次関数補正量Ay=0.02/15^3(=5.926E-06)とした。本設計による位置V2におけるマイクロレンズの断面形状を、
図11に示す。また、垂直方向Vにおける配光特性を、
図12に示す。また、均一性評価指標Ts/Tbは1.01であり、均一性の許容範囲の下限値Dを超過し、且つ、その上限値1/D未満なので、均一である。
【0051】
続いて、位置V3(0mm, -15mm)において設計を行う。垂直方向Vにおける、レンズ基板の主面に対する入射光の光軸の角度が-5[deg]であり、レンズ基板の主面に対する出射光の光軸の角度は、-7[deg](=-5[deg]-2[deg])、出射配光角は-12~-2[deg]であればよい。これを実現する設計として、Y方向におけるレンズ中心のずらし量Dv=-6[μm]、レンズ曲率半径係数αy=1+0.01、つまり1.01、3次関数補正量Ay=-0.02/15^3(=5.926E-06)とした。本設計による位置V3におけるマイクロレンズの断面形状を、
図13に示す。また、垂直方向Vにおける配光特性を、
図14に示す。また、均一性評価指標Ts/Tbは0.98であり、均一性の許容範囲の下限値Dを超過しており、且つ、その上限値1/D未満なので、均一である。
【0052】
この位置V1~V3の3点の設計値より、Y座標の各位置における各パラメータ、3次関数補正量Ayと、レンズ曲率半径係数αyとは、下記の式で表現される。
Ay=0.02/(15^3)×(Y/15)
αy=1-0.01×(Y/15)
これにより拡散板内のY座標における任意の位置において上記設計を適用することで、所望の出射光特性を得ることができる。
【0053】
(実施例2)
前述の共通設計事項を基に、拡散板の出射光について、条件を加える。拡散板の出射光の光軸が各入射光の光軸に対して、水平方向Hにおいて、全て-3deg傾くように設定した(ここで、Dθoh=-3deg)。その他の拡散特性は、実施例1と同一の条件に設定した。X座標の各位置における各パラメータ、レンズ中心位置のずらし量Dhと、レンズ曲率半径係数αxと、3次関数による補正係数Axとは、下記の式で表現される。
Dh=-4.45-0.1×(X/30)
αx=1-0.02×|(X/30)| (X>=0)
αx=1+0.05×|(X/30)| (X<0)
Ax=0.15/(15^3)×(X/30)
また均一性評価指標Ts/TbはX=-30mmの位置で1.03、X=+30mmの位置で1.00であり、均一である。
これにより拡散板内のX座標における任意の位置において上記設計を適用することで、所望の出射光の配光特性を得ることができる。
【0054】
(実施例3)
実施例1と実施例2との設計を同時にそれぞれの垂直方向V、又は水平方向Hに沿う断面形状について適用すると、出射光の光軸を入射光の光軸に対して、垂直方向Vに-2[deg]、水平方向Hに-3[deg]同時に曲げることができる。このように出射光の光軸を2次元方向に曲げる設計をも行うことができる。
【0055】
(実施例4)
実施例1では、出射光の光軸を入射光の光軸に対して一定の変化を与えたが、実施例4では、垂直方向Vについて拡散板面内におけるY座標の位置-15mmから+15mmまで範囲において、入射光の入射角度θivが-5degから+5degまで変化する条件で、Yの各位置で、出射光の光軸を、入射光の光軸に対してY方向における出射角度Dθov[deg]だけ変化させる。つまりY方向に沿って連続的な光軸変化を可変させる。入射光軸の変化は最大2degとし、Dθov= 2*Y/15 [deg]
とした。
Y方向における出射角度θov[deg]を定義すれば、各Y位置における出射角度θovは以下の式となる。
θov=θiv+Dθov
実施例1と同様に、実施例4に係る拡散板の3点で設計を行ったところ次のパラメータにより目標の特性を得られる。レンズ中心のずらし量Dvと、3次関数補正量Ayとを以下の式で表現されるよう、設定した。
Dv=-6.0*Y/15
Ay= -0.02/15^3(=5.926E-06)*Y/15
αx=1+0.02×|(Y/15)|
また均一性評価指標Ts/TbはY=-15mmの位置で0.98、Y=+15mmの位置で0.98であり、均一である。これにより各位置で光軸を変化させつつ、配光特性の幅はほぼ固定でき、強度分布もフラットとなり配光特性の断面形状を維持できる。
【0056】
(比較例)
次に、比較例1及び2について説明する。
比較例1では、実施例1で用いた拡散板のマイクロレンズアレイの基準マイクロレンズと同一構成の基準マイクロレンズを有する拡散板を用いた。この拡散板に、5度に傾けた光を入射させた場合の配光特性を
図17に示す。出射光の光軸θaは5degであり、拡散範囲θs+θbは10degであり、均一性評価指標Ts/Tbの許容範囲D~1/Dは、0.90を超過し、1.11未満である。しかし、均一性評価指標Ts/Tbは0.86であり、許容範囲D~1/Dに含まれないため、均一性が良好でないと判断した。このように従来のマイクロレンズアレイを有する拡散板では、斜めに光を入射させると、光軸は入射光とほとんど変わらずに、配光分布が傾いており輝度ムラが生じることがわかる。
【0057】
比較例2では、実施例1で用いた拡散板のマイクロレンズアレイの基準マイクロレンズと同一構成の基準マイクロレンズ自体を10度傾けた傾斜レンズを有する拡散板を用いた。この傾斜レンズは、簡易的にy*tan(10deg)だけ基準レンズ形状を変化させることで10度傾けた形状と同一の形状を有する。このときの配光特性を
図15に示す。出射光の光軸θa=5.2degであり、拡散範囲θs+θbは9.7degであり、均一性評価指標Ts/Tbの許容範囲D~1/Dは、0.90を超過し、1.11未満である。しかし、均一性評価指標Ts/Tbは、0.87であり、許容範囲D~1/Dに含まれないため、均一性が良好でないと判断した。
この拡散板を傾け、垂直に光を入射させると出射光の光軸が曲げることができるが、出射光の配光分布が傾いており輝度ムラが生じてしまうことがわかる。
【0058】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施の形態1に係る拡散板10は、透過型の拡散板であったが、反射型の拡散板であってもよい。具体的には、反射型の拡散板は、投射光を投射されて、反射光を反射する主面と、この主面にミラー機能を有する微細構造体とを備える。また、投射光の開口数NAが、0を超過し、0.140以下である微細構造体は、マイクロレンズ状の形状を有するマイクロレンズ形状ミラー部を複数備える。マイクロレンズ形状ミラー部における投射光の光軸と、主面の法線とが交差してなす入射角度θiは、0度~50度の範囲内である。マイクロレンズ形状ミラー部の複数のうち少なくとも一つは、マイクロレンズ形状ミラー部における反射光の光軸と、主面の法線とが交差してなす反射角度で、反射光を反射する。この反射光を入射角度θiよりも異なる。反射光は、所望の拡散角度の範囲内において、実質的に均一な輝度を有する。マイクロレンズ形状ミラー部のマイクロレンズ基準面に実質的に垂直な断面における、マイクロレンズ形状ミラー部の断面形状は、投射光の光軸周りに非対称な断面形状を持つ。
また、上記した反射型の拡散板では、マイクロレンズ形状ミラー部における投射光の光軸と、主面の法線とが交差してなす入射角度θiは、0度を超過し、50度以下であり、反射光が入射角度θiと同じであってもよい。
なお、マイクロレンズ形状ミラー部は、上記した拡散板10の設計方法を用いて設計されてもよい。
【0059】
この出願は、2016年10月3日に出願された日本出願特願2016-195461を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0060】
10 拡散板
1 基板 1a、1b 主面
2 マイクロレンズ
100 投写式画像表示装置
20 投射装置
A0 軸 A1、A2 光軸
Ax 3次関数による補正係数
Dh、Dv レンズ中心位置のずらし量
H 水平方向
L1 投射光 L2 出射光
Lb、Ls 輝度 Lo 光軸輝度
Rd 拡散範囲 Ro 中心位置
Ta、Tb、To、Ts 積算値
V 垂直方向
V1-V3 位置
αx、αy レンズ曲率半径係数 θb、θs 拡散角度
θi 入射角度 θa 光軸拡散角度
θo、θoy 出射角度 θv 光軸ズレ角度