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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20220722BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20220722BHJP
   A61F 13/537 20060101ALI20220722BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
A61F13/511 110
A61F13/511 400
A61F13/533 100
A61F13/537 210
A61F13/537 310
A61F13/539
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019095320
(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公開番号】P2020188908
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】山本 純子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼阪 翔士
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170222(WO,A1)
【文献】特許第6445732(JP,B1)
【文献】国際公開第2015/033995(WO,A1)
【文献】特開2009-268559(JP,A)
【文献】特開2004-229767(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203751(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/204016(WO,A1)
【文献】特開2016-67613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保水性繊維を含む、液透過性のトップシートと、
液不透過性のバックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された、パルプ繊維を含む吸収体と、
前記トップシートと前記吸収体との間に配置された、液透過性の中間シートと、
を含む吸収性物品であって、
前記トップシートに、繊維密度が比較的高い第1の高密度領域と、繊維密度が比較的低い第1の低密度領域とがそれぞれ区画されており、
前記中間シートに、繊維密度が比較的高い第2の高密度領域と、繊維密度が比較的低い第2の低密度領域とがそれぞれ区画されており、
前記第1の高密度領域は、前記吸収性物品の長さ方向に延びる第1の中心線に沿って拡がっており、
前記吸収性物品の厚さ方向に透視したときに、前記第1の高密度領域が前記第2の高密度領域よりも肌側に位置するように前記第1の高密度領域と前記第2の高密度領域とが互いに重なるとともに、前記第2の高密度領域の両側縁が前記第1の高密度領域の両側縁よりも、前記第1の中心線に関し、外側に位置しており
前記第1の高密度領域が、前記トップシートに対する、肌側から非肌側に向かうエンボス加工によって形成された領域であるとともに、第1の低圧搾部分によって前記第1の高密度領域の長さ方向に不連続な第1の高圧搾部分を含み、
前記第2の高密度領域が、前記トップシートを含まない前記中間シートに対する、肌側から非肌側に向かうエンボス加工によって形成された領域であるとともに、第2の低圧搾部分によって前記第2の高密度領域の長さ方向に不連続な第2の高圧搾部分を含み、
前記第1の高密度領域を形成するエンボスパターンと前記第2の高密度領域を形成するエンボスパターンとが互いに異なっている、
吸収性物品。
【請求項2】
前記トップシートが、互いに積層された肌側層及び非肌側層を含み、前記肌側層は熱可塑性樹脂繊維を含むことなく保水性繊維を含み、前記非肌側層は少なくとも熱可塑性樹脂繊維を含む、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第1の高圧搾部分が、第1の融着部分と、前記第1の融着部分の周囲の第1の非融着部分と、を含む、請求項に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記第2の高圧搾部分が、第2の融着部分と、前記第2の融着部分の周囲の第2の非融着部と、を含む、請求項1から3までのいずれか1つに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第2の高密度領域を形成するエンボスパターンの最小単位の面積が、前記第1の高密度領域を形成するエンボスパターンの最小単位の面積よりも小さい、請求項からまでのいずれか1つに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収性物品の厚さ方向に透視したときに、前記第1の高圧搾部分と前記第2の低圧搾部分とが互いに重なっている、請求項からまでのいずれか1つに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体が、前記吸収体の10質量%以上の高吸収ポリマーを含む、請求項1からまでのいずれか1つに記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記中間シートが、高吸収ポリマーを含む、請求項1からまでのいずれか1つに記載の吸収性物品。
【請求項9】
保水性繊維を含む、液透過性のトップシートと、
液不透過性のバックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された、パルプ繊維を含む吸収体と、
前記トップシートと前記吸収体との間に配置された、液透過性の中間シートと、
を含む吸収性物品であって、
前記トップシートに、繊維密度が比較的高い第1の高密度領域と、繊維密度が比較的低い第1の低密度領域とがそれぞれ区画されており、
前記中間シートに、繊維密度が比較的高い第2の高密度領域と、繊維密度が比較的低い第2の低密度領域とがそれぞれ区画されており、
前記第1の高密度領域は、前記吸収性物品の長さ方向に延びる中心線に沿って拡がっており、
前記吸収性物品の厚さ方向に透視したときに、前記第1の高密度領域が前記第2の高密度領域よりも肌側に位置するように前記第1の高密度領域と前記第2の高密度領域とが互いに重なるとともに、前記第2の高密度領域の両側縁が前記第1の高密度領域の両側縁よりも、前記第1の中心線に関し、外側に位置しており、
前記第1の高密度領域が、前記トップシートに対する、肌側から非肌側に向かうエンボス加工によって形成された領域であるとともに、第1の低圧搾部分によって前記第1の高密度領域の長さ方向に不連続な第1の高圧搾部分を含み、
前記第2の高密度領域が、前記トップシートを含まない前記中間シートに対する、肌側から非肌側に向かうエンボス加工によって形成された領域であるとともに、第2の低圧搾部分によって前記第2の高密度領域の長さ方向に不連続な第2の高圧搾部分を含み、
前記第2の高密度領域を形成するエンボスパターンの最小単位の面積が、前記第1の高密度領域を形成するエンボスパターンの最小単位の面積よりも小さい、
吸収性物品。
【請求項10】
保水性繊維を含む、液透過性のトップシートと、
液不透過性のバックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された、パルプ繊維を含む吸収体と、
前記トップシートと前記吸収体との間に配置された、液透過性の中間シートと、
を含む吸収性物品であって、
前記トップシートに、繊維密度が比較的高い第1の高密度領域と、繊維密度が比較的低い第1の低密度領域とがそれぞれ区画されており、
前記中間シートに、繊維密度が比較的高い第2の高密度領域と、繊維密度が比較的低い第2の低密度領域とがそれぞれ区画されており、
前記第1の高密度領域は、前記吸収性物品の長さ方向に延びる中心線に沿って拡がっており、
前記吸収性物品の厚さ方向に透視したときに、前記第1の高密度領域が前記第2の高密度領域よりも肌側に位置するように前記第1の高密度領域と前記第2の高密度領域とが互いに重なるとともに、前記第2の高密度領域の両側縁が前記第1の高密度領域の両側縁よりも、前記第1の中心線に関し、外側に位置しており、
前記第1の高密度領域が、前記トップシートに対する、肌側から非肌側に向かうエンボス加工によって形成された領域であるとともに、第1の低圧搾部分によって前記第1の高密度領域の長さ方向に不連続な第1の高圧搾部分を含み、
前記第2の高密度領域が、前記トップシートを含まない前記中間シートに対する、肌側から非肌側に向かうエンボス加工によって形成された領域であるとともに、第2の低圧搾部分によって前記第2の高密度領域の長さ方向に不連続な第2の高圧搾部分を含み、
前記吸収性物品の厚さ方向に透視したときに、前記第1の高圧搾部分と前記第2の低圧搾部分とが互いに重なっている、
吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、表面シートをコットン不織布によって構成するとともに、表面シートの下層であって吸収体との間に、コットン不織布よりも低繊維密度でかつ親水性を有する熱融着性繊維シートを介在させ、これらの積層状態で、表面側から多数のエンボスが施されている、吸収性物品が公知である(例えば、特許文献1参照)。特許文献1によれば、このようにすると、エンボス加工時にコットン不織布のコットン繊維が熱融着性繊維シート内に入り込み、液体がコットン繊維から熱融着性繊維シートへ速やかに浸透する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-148328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のエンボス部は、表面シートから吸収体に向けて先細りするコーン状周面を有する。このため、表面シートから熱融着性繊維シート又は吸収体に向かう液体が、吸収性物品の厚さ方向に見て、エンボス部の中心に集められるおそれがある。その結果、液体が中間シート又は吸収体の特定部分に集中するおそれがある。液体が特定部分に過剰に集中すると、中間シート又は吸収体への液体の吸収が制限されるおそれがある。
【0005】
中間シート又は吸収体への液体の吸収が制限されると、液体は表面シート内に保持されたままになる。この場合、液体が表面シート内を面内方向(シートの表面に沿う方向)に拡散するおそれがあり、ウェットな状態にある表面シートの部分の面積が大きくなるおそれがある。着用者の肌が表面シートのウェットな部分に長時間にわたり触れ続けていると、着用者の不快感が増大するおそれがある。表面シートがコットン不織布から構成された場合には、液体は表面シート内を面内方向に拡散しやすく、したがって上述の問題がより深刻になるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下が開示される。
[構成1]
保水性繊維を含む、液透過性のトップシートと、
液不透過性のバックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された、パルプ繊維を含む吸収体と、
前記トップシートと前記吸収体との間に配置された、液透過性の中間シートと、
を含む吸収性物品であって、
前記トップシートに、繊維密度が比較的高い第1の高密度領域と、繊維密度が比較的低い第1の低密度領域とがそれぞれ区画されており、
前記中間シートに、繊維密度が比較的高い第2の高密度領域と、繊維密度が比較的低い第2の低密度領域とがそれぞれ区画されており、
前記第1の高密度領域は、前記吸収性物品の長さ方向に延びる第1の中心線に沿って拡がっており、
前記吸収性物品の厚さ方向に透視したときに、前記第1の高密度領域が前記第2の高密度領域よりも肌側に位置するように前記第1の高密度領域と前記第2の高密度領域とが互いに重なるとともに、前記第2の高密度領域の両側縁が前記第1の高密度領域の両側縁よりも、前記第1の中心線に関し、外側に位置している、
吸収性物品。
【0007】
構成1によれば、トップシートが保水性繊維を含んでいる。その結果、トップシートの優れた肌触りが提供される。また、構成1によれば、吸収性物品の厚さ方向に透視したときに、第1の高密度領域が第2の高密度領域よりも肌側に位置するように第1の高密度領域と第2の高密度領域とが互いに重なっている。その結果、液体は第1の高密度領域を速やかに流れた後に第2の高密度領域に到り、第2の高密度領域を速やかに流れる。したがって、液体が吸収性物品の内部に送られるのがより促進される。しかも、構成1によれば、第2の高密度領域の両側縁がそれぞれ、第1の高密度領域の両側縁よりも外側に位置する。その結果、中間シート又は吸収体において、液体が第1の高密度領域の第1の中心線から離れる方向に流れるのが促進され、すなわち中間シート又は吸収体において面内方向に拡散するのがより促進される。したがって、中間シート又は吸収体の部分に液体が集中するのがより制限される。これにより、液体がトップシートから中間シート又は吸収体に、より速やかに送られ、液体がトップシートに保持され続けるのがより制限される。したがって、着用者の不快感がより制限される。
【0008】
[構成2]
前記トップシートが、互いに積層された肌側層及び非肌側層を含み、前記肌側層は熱可塑性樹脂繊維を含むことなく保水性繊維を含み、前記非肌側層は少なくとも熱可塑性樹脂繊維を含む、構成1に記載の吸収性物品。
【0009】
構成2によれば、肌側層の保水性繊維によってトップシートの優れた肌触りが提供される。また、非肌側層の熱可塑性樹脂繊維によってトップシートの熱融着による接合性が高められる。
【0010】
[構成3]
前記第1の高密度領域が、前記トップシートに対する、肌側から非肌側に向かうエンボス加工によって形成された領域であるとともに、第1の低圧搾部分によって前記第1の高密度領域の長さ方向に不連続な第1の高圧搾部分を含み、
前記第2の高密度領域が、前記トップシートを含まない前記中間シートに対する、肌側から非肌側に向かうエンボス加工によって形成された領域であるとともに、第2の低圧搾部分によって前記第1の高密度領域の長さ方向に不連続な第2の高圧搾部分を含む、
構成1又は2に記載の吸収性物品。
【0011】
構成3によれば、第1の高密度領域及び第2の高密度領域が、より簡単にかつより確実に形成される。また、構成3によれば、第1の高圧搾部分は、第1の高密度領域の長さ方向に不連続であり、第2の高圧搾部分は、第2の高密度領域の長さ方向に不連続である。その結果、第1の高密度領域及び第2の高密度領域によって吸収性物品の変形が制限されるのが、より低減される。
【0012】
[構成4]
前記第1の高圧搾部分が、第1の融着部分と、前記第1の融着部分の周囲の第1の非融着部分と、を含む、構成3に記載の吸収性物品。
【0013】
液体は、融着部分を透過しにくく、非融着部分を速やかに流れる。その結果、構成4によれば、第1の高圧搾部分に到達した液体が第1の融着部分の周囲の第1の非融着部分を流れるのが促進される。したがって、液体が面内方向に拡散するのがより促進される。
【0014】
[構成5]
前記第2の高圧搾部分が、第2の融着部分と、前記第2の融着部分の周囲の第2の非融着部分と、を含む、構成3又は4に記載の吸収性物品。
【0015】
構成5によれば、第1の高圧搾部分から第2の高圧搾部分に到達した液体が第2の融着部分の周囲の第2の非融着部分を流れるのが促進される。したがって、液体が面内方向に拡散するのがより促進される。
【0016】
[構成6]
前記第2の高密度領域を形成するエンボスパターンの最小単位の面積が、前記第1の高密度領域を形成するエンボスパターンの最小単位の面積よりも小さい、構成3から5までのいずれか1つに記載の吸収性物品。
【0017】
エンボスパターンの最小単位の面積が小さいと、シートの単位面積あたりに形成される高密度領域の高圧搾部分の面積の合計を大きくすることが可能となる。したがって、構成6によれば、第2の高密度領域に形成される第2の高圧搾部分の面積の合計が、第1の高密度領域に形成される第1の高圧搾部分の面積の合計よりも大きい。その結果、液体が、第1の高密度領域に比べて、第2の高密度領域をより流れやすい。したがって、液体がトップシートから中間シートへ流れるのがより促進される。また、第2の高密度領域が融着部分を含む場合には、構成6によれば、第2の高密度領域に含まれる融着部分の面積の合計がより小さい。その結果、吸収性物品の内部への液体の流れが融着部分によって制限されるのがより低減される。
【0018】
[構成7]
前記吸収性物品の厚さ方向に透視したときに、前記第1の高圧搾部分と前記第2の低圧搾部分とが互いに重なっている、構成3から6までのいずれか1つに記載の吸収性物品。
【0019】
構成7によれば、第1の高圧搾部分と第2の低圧搾部分との重なり部分において、トップシートと中間シートとが厚さ方向に互いに密着しやすい。その結果、重なり部分においても、トップシートから中間シートへの液体の流れがより促進される。
【0020】
[構成8]
前記吸収体が、前記吸収体の10質量%以上の高吸収ポリマーを含む、構成1から7までのいずれか1つに記載の吸収性物品。
【0021】
構成8によれば、液体が吸収体内に、より確実に保持される。
【0022】
[構成9]
前記中間シートが、高吸収ポリマーを含む、構成1から8までのいずれか1つに記載の吸収性物品。
【0023】
構成9によれば、液体が中間シート内に、より確実に保持される。
【発明の効果】
【0024】
トップシートの優れた肌触りを維持しつつ、トップシートから吸収性物品の内部への液体の吸収をより促進することができ、したがって着用者の不快感をより制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による実施形態の吸収性物品の模式的平面図である。
図2図1の線CL-CLに沿う、本発明による実施形態の吸収性物品の模式的断面図である。
図3】本発明による実施形態のトップシートの模式的部分拡大断面図である。
図4】本発明による実施形態の第1の高密度領域の、(A)模式的部分平面図、(B)図4(A)の線L10に沿う模式的部分断面図である。
図5】本発明による実施形態の中間シートの模式的平面図である。
図6】本発明による実施形態の吸収性物品の模式的部分透視図である。
図7】本発明による実施形態の吸収性物品の模式的部分拡大透視図である。
図8図7の線X-Xに沿う、本発明による実施形態の吸収性物品の模式的部分断面図である。
図9】(A)本発明による実施形態の第1の高密度領域を形成するエンボスパターンの最小単位の模式図、及び、(B)本発明による実施形態の第2の高密度領域を形成するエンボスパターンの最小単位の模式図である。
図10】本発明による実施形態の第1の高圧搾部分の模式的断面図である。
図11】融着部分が形成されない場合における液体の流れを説明するための、本発明による実施形態の吸収性物品の模式的部分断面図である。
図12】融着部分が形成された場合における液体の流れを説明するための、本発明による実施形態の吸収性物品の模式的部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1及び図2は、本発明による実施形態の吸収性物品1の模式的平面図及び模式的断面図をそれぞれ示している。本発明による実施形態の吸収性物品1は軽失禁パッドから構成される。本発明による別の実施形態(図示しない)では吸収性物品1は例えば、パンティライナ、生理用ナプキン、使い捨ておむつ、などから構成される。なお、図面において、L,W,Tは吸収性物品1の長さ方向、幅方向、及び厚さ方向をそれぞれ示している。また、図1において、CLは長さ方向L中心線を、CWは幅方向W中心線を、それぞれ示している。本発明による実施形態の吸収性物品1は、長さ方向中心線CL及び幅方向中心線CWそれぞれに関して対称をなしている。
【0027】
図1及び図2を参照すると、本発明による実施形態の吸収性物品1は、保水性繊維を含む、液透過性のトップシート2と、液不透過性のバックシート3と、トップシート2とバックシート3との間に配置された、パルプ繊維を含む吸収体4と、トップシート2と吸収体4との間に配置された、液透過性の中間シート5と、を含む。これらトップシート2、バックシート3、吸収体4、及び、中間シート5は、厚さ方向Tに互いに重ねられる。本発明による実施形態では、トップシート2及びバックシート3は、長さ方向L及び幅方向Wに関し、互いにほぼ同じ大きさである。また、本発明による実施形態では、吸収体4及び中間シート5は長さ方向L及び幅方向Wに関し、トップシート2及びバックシート3よりも小さい。
【0028】
本発明による実施形態のトップシート2は、図3に示されるように、厚さ方向Tに互いに積層された肌側層2a及び非肌側層2bを含む。肌側層2aは、着用者の肌により近い位置にあり、着用者の肌に接触しうる。非肌側層2bは、着用者の肌からより遠い位置にあり、着用者の肌に接触しない。本発明による実施形態の肌側層2a及び非肌側層2bはそれぞれ、シート状の不織布から形成される。また、本発明による実施形態の肌側層2a及び非肌側層2bは、交絡により互いに接合される。交絡の例には、スパンレース法、ウォータージェット法、エアスルー法が含まれる。また、本発明による実施形態では、トップシート2は2層から形成される。本発明による別の実施形態(図示しない)では、トップシート2は1層又は3層以上から形成される。
【0029】
本発明による実施形態の肌側層2aは、熱可塑性樹脂繊維を含むことなく保水性繊維を含む。本発明による別の実施形態(図示しない)では、肌側層2aは保水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含む。また、本発明による実施形態の非肌側層2bは、少なくとも熱可塑性樹脂繊維を含む。一例では、非肌側層2bは、熱可塑性樹脂繊維及び保水性繊維を含む。別の例では、非肌側層2bは保水性繊維を含むことなく熱可塑性樹脂繊維を含む。保水性繊維は、水分を吸収し、保持する性質を有する。一方、熱可塑性樹脂繊維は、水と馴染み難い、又は、水分を保持し難い性質、例えばイオン交換水(例示:比抵抗値10MΩ・cm)との接触角が80°~100°程度である性質を有する。
【0030】
本発明による実施形態の保水性繊維の成分の例には、セルロース系繊維が含まれる。セルロース系繊維の例には、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、精製セルロース繊維及び半合成セルロース繊維が含まれる。天然セルロース繊維の例には、植物繊維が含まれる。植物繊維の例には、種子毛繊維、じん皮繊維、葉脈繊維、果実繊維が含まれる。種子毛繊維の例には、コットンが含まれる。じん皮繊維の例には、麻が含まれる。葉脈繊維の例には、マニラ麻が含まれる。果実繊維の例には、やしが含まれる。コットンの例には、ヒルスツム種コットン、バルバデンセ種コットン、アルボレウム種コットン及びヘルバケウム種コットンが含まれる。ヒルスツム種コットンの例には、アップランドコットンが含まれる。また、コットンの例には、オーガニックコットン、プレオーガニックコットン(商標)、オーガニックでないコットンが含まれる。オーガニックコットンは、GOTS(Global Organic Textile Standard)の認証を受けたコットンを意味する。再生セルロース繊維の例には、レーヨンが含まれる。レーヨンの例には、ビスコースから得られるビスコースレーヨン、ポリノジック、モダール、及び、セルロースの銅アンモニア塩溶液から得られる銅アンモニアレーヨン(「キュプラ」とも称される)が含まれる。精製セルロース繊維の例には、リヨセル、具体的には、パルプを、N-メチルモルホリンN-オキシドの水溶液に溶解させて紡糸原液(ドープ)とし、N-メチルモルホリンN-オキシドの希薄溶液中に押出して繊維としたものが含まれる。精製セルロースは、例えば、テンセル(商標)として市販されている。半合成セルロース繊維の例には、半合成セルロースが含まれる。半合成セルロースの例には、アセテート繊維が含まれる。アセテート繊維の例には、トリアセテート及びジアセテートが含まれる。中でも、保水性及び肌触りの観点から、天然セルロース繊維が好ましく、コットンがより好ましく、ヒルスツム種コットンが更に好ましい。
【0031】
本発明による実施形態の熱可塑性樹脂繊維の成分の例には、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が含まれる。オレフィン系樹脂の例には、ポチエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)が含まれる。ポリエステル系樹脂の例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)が含まれる。ポリアミド系樹脂の例には、6-ナイロン等のポリアミド系樹脂が含まれる。熱可塑性樹脂繊維の構造の例には、複合繊維、中空タイプ、異形断面型繊維、立体捲縮繊維、分割繊維が含まれる。複合繊維の例には、芯鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維、島/海型繊維が含まれる。異形断面型繊維の例には、扁平断面繊維、Y字形断面繊維、C字形断面繊維が含まれる。立体捲縮繊維の例には、潜在捲縮繊維、顕在捲縮繊維が含まれる。
【0032】
本発明による実施形態のバックシート3は、液不透過性の不織布、合成樹脂フィルム、不織布及び合成樹脂フィルムの複合シート、又は、SMS不織布から形成される。
【0033】
本発明による実施形態の吸収体4は、厚さ方向Tに互いに積層された吸収コア4a及びティッシュ4bを含む。本発明による別の実施形態(図示しない)の吸収体4は、ティッシュ4bを含むことなく吸収コア4aを含む。本発明による実施形態の吸収コア4aは、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー(SAP)を含む。本発明による実施形態の高吸収性ポリマーの例には、デンプン系、アクリル酸系、又はアミノ酸系の、粒子状又は繊維状の高吸収性ポリマーが含まれる。本発明による別の実施形態(図示しない)の吸収コア4aは、高吸収性ポリマー(SAP)を含むことなくパルプを含む。一方、本発明による実施形態では、ティッシュ4bは、吸収コア4aの、トップシート2側又は肌側、及び、バックシート3側又は非肌側のいずれか一方又は両方に配置される。本発明による実施形態のティッシュ4bは、SAPを含むことなく、液透過性の不織布シートから形成される。なお、本発明による実施形態の吸収体4は、吸収体4の10質量%以上のSAPを含む。このようにすると、液体が吸収体4内に、より確実に保持される。
【0034】
本発明による実施形態の中間シート5は、厚さ方向Tに互いに積層されたSAPシート5a及びセカンドシート5bを含む。本発明による別の実施形態(図示しない)の中間シート5は、セカンドシート5bを含むことなくSAPシート5aを含む。本発明による実施形態のSAPシート5aは、互いに重ねられた2枚の液透過性の不織布シート5a1,5a1と、これら不織布シート5a1,5a1同士間に配置されたSAP5a2と、を含む。本発明による実施形態の不織布シート5a1,5a1は、熱可塑性樹脂繊維を含む。また、本発明による実施形態では、不織布シート5a1,5a1の幅方向W両端部は、不織布シート5a1,5a1の幅方向W中央部に折り重ねられる。一方、本発明による実施形態のセカンドシート5bは、液透過性の不織布シートから形成される。本発明による実施形態のセカンドシート5bは、SAPシート5aのトップシート2側に配置される。本発明による実施形態のセカンドシート5bは、熱可塑性樹脂繊維を含む。本発明による実施形態では、中間シート5もSAPを含むので、液体が吸収性物品1又は中間シート5内に、より確実に保持される。
【0035】
更に、本発明による実施形態の吸収性物品1は、トップシート2とバックシート3とを融着(熱融着)により互いに接合する融着領域6を備える。融着領域6は、長さ方向L及び幅方向Wに関し吸収体4及び中間シート5よりも外側において、吸収性物品1の周縁に沿って連続的に設けられる。その結果、吸収体4及び中間シート5がトップシート2とバックシート3との間に保持される。
【0036】
更に、本発明による実施形態の吸収性物品1は、トップシート2と中間シート5との間、中間シート5と吸収体4との間、吸収体4とバックシート3との間、吸収コア4aとティッシュ4bとの間、SAPシート5aとセカンドシート5bとの間、及び、SAPシート5aの不織布シート5a1,5a1同士間、にそれぞれ設けられた接着剤層(図示しない)を含む。接着剤の例には、ホットメルト接着剤が含まれる。
【0037】
更に、本発明による実施形態の吸収性物品1は、トップシート2と反対側又は非肌側においてバックシート3に設けられた粘着部(図示しない)と、粘着部を覆うセパレータ(図示しない)と、を含む。粘着部は、一例では、幅方向Wに互いに離間しつつそれぞれ長さ方向Lに延びる、複数の粘着テープから形成される。粘着部は吸収性物品1を着用者の下着などに固定するのに用いられる。
【0038】
本発明による実施形態のトップシート2には、図1に示されるように、エンボス加工が施されたエンボス領域10,10,10a,10aと、エンボス加工が施されていない非エンボス領域11と、がそれぞれ区画されている。本発明による実施形態のエンボス領域10,10,10a,10aは、少なくともトップシート2に対する、肌側から非肌側に向かうエンボス加工によって形成された領域である。本発明による実施形態のエンボス領域10,10は、幅方向Wに互いに離間しつつ、長さ方向Lに延びる第1の中心線L10に沿ってそれぞれ拡がっている。なお、図1に示されるように、本発明による実施形態の第1の中心線L10は曲線状に延びている。図1の10e,10eは、エンボス領域10の幅方向Wの縁、すなわち側縁を示している。したがって、エンボス領域10は側縁10e,10e同士間に拡がる。一方、本発明による実施形態のエンボス領域10a,10aは、長さ方向Lに互いに離間しつつ、エンボス領域10,10同士の間を吸収性物品1の幅方向Wにそれぞれ拡がっている。このようなエンボス領域10,10,10a,10aを設けることにより、吸収性物品1がエンボス領域10,10,10a,10aに沿って折れ曲がりやすくなる。その結果、着用者の動き又は姿勢に関わらず、吸収性物品1が着用者の肌に密着し続けることが可能となる。
【0039】
図4(A)及び図4(B)は、本発明による実施形態のエンボス領域10を模式的に示している。なお、容易な理解のために、図4(A)及び図4(B)ではエンボス領域10が直線状に描かれている。図4(A)及び図4(B)に示されるように、本発明による実施形態のエンボス領域10は、第1の低圧搾部分10Lによってエンボス領域10の長さ方向に不連続な第1の高圧搾部分10Hを含む。本発明による実施形態では、第1の低圧搾部分10Lは、エンボス加工によって形成される凹溝の深さ(厚さ方向T寸法)が比較的小さく、第1の高圧搾部分10Hは、凹溝の深さが比較的大きい。また、本発明による実施形態の第1の高圧搾部分10Hには、凹溝深さが比較的大きい高圧搾区域10HHと、凹溝深さが比較的小さい低圧搾区域10HLとが区画される。図4(A)では、容易な理解のために、高圧搾区域10HHにハッチングが付されている。高圧搾部分又は高圧搾区域の繊維密度は、低圧搾部分又は低圧搾区域の繊維密度よりも高い。本発明による実施形態では、エンボス領域11,11もエンボス領域10,10と同様に構成される。
【0040】
一方、本発明による実施形態の中間シート5には、図5に示されるように、エンボス加工が施されたエンボス領域12,12と、エンボス加工が施されていない非エンボス領域13と、がそれぞれ区画されている。本発明による実施形態のエンボス領域12,12は、トップシート2を含まない中間シート5に対する、肌側から非肌側に向かうエンボス加工によって形成された領域である。本発明による実施形態のエンボス領域12,12は、幅方向Wに互いに離間しつつ、長さ方向Lに延びる第2の中心線L12に沿ってそれぞれ拡がっている。なお、図5に示されるように、本発明による実施形態の第2の中心線L12は曲線状に延びている。なお、図5の12e,12eは、エンボス領域12の幅方向Wの縁、すなわち側縁を示している。したがって、エンボス領域12は側縁12e,12e同士間に拡がる。更に、図5に示されるように、本発明による実施形態の中間シート5のSAP5a2は、エンボス領域12,12によって、幅方向Wに互いに分離された3つの部分に区画される。また、本発明による実施形態の中間シート5の互いに折り重ねられた不織布シート5a1,5a1(図2)は、中間シート5の長さ方向L両端部14,14において互いに接合される。
【0041】
また、本発明による実施形態のエンボス領域12は、図5に示されるように、第2の低圧搾部分12Lによってエンボス領域12の長さ方向に不連続な第2の高圧搾部分12Hを含む。本発明による実施形態の第2の高圧搾部分12Hは、格子状に配置される。
【0042】
エンボス領域は繊維密度が比較的高く、非エンボス領域は繊維密度が比較的低い。そうすると、本発明による実施形態のトップシート2には、エンボス領域10,10から形成された、繊維密度が比較的高い第1の高密度領域10,10と、非エンボス領域11から形成された、繊維密度が比較的低い第1の低密度領域11と、が区画されている、ということになる。同様に、本発明による実施形態の中間シート5には、エンボス領域12,12から形成された、繊維密度が比較的高い第2の高密度領域12,12と、非エンボス領域13から形成された、繊維密度が比較的低い第1の低密度領域13と、が区画されている、ということになる。なお、容易な理解のために、図2ではエンボス領域10,10,12,12が省略されている。
【0043】
このように、本発明による実施形態では、第1の高密度領域10,10及び第2の高密度領域12,12がエンボス加工によって形成される。したがって、第1の高密度領域10,10及び第2の高密度領域12,12が、より簡単にかつより確実に形成される。また、本発明による実施形態では、第1の高密度領域10,10が第1の高密度領域10,10の長さ方向に不連続であり、第2の高密度領域12,12が第2の高密度領域12,12の長さ方向に不連続である。その結果、第1の高密度領域10,10及び第2の高密度領域12,12が折れ曲がる方向に、吸収性物品1が変形しやすい。したがって、第1の高密度領域10,10及び第2の高密度領域12,12によって吸収性物品1の変形が制限されるのが、より低減される。
【0044】
図6は、厚さ方向Tに透視した、本発明による実施形態の第1の高密度領域10,10及び第2の高密度領域12,12を示している。図6を参照すると、本発明による実施形態では、厚さ方向Tに透視したときに、第1の高密度領域10,10と、第2の高密度領域12,12とが互いに重なっている。このことを、図7及び図8を参照して更に説明する。
【0045】
図7は、本発明による実施形態の第1の高密度領域10及び第2の高密度領域12の模式的部分拡大透視図を示している。なお、容易な理解のために、図7では第1の高密度領域10及び第2の高密度領域12が直線状に描かれている。また、図8は、図7の線X-Xに沿った模式的断面図を示している。図6に加えて図7及び図8を参照すると、本発明による実施形態では、厚さ方向Tに透視したときに、第1の高密度領域10,10と、第2の高密度領域12,12とが互いに重なっている。この場合、本発明による実施形態では、第2の中心線L12が、幅方向中心線CWに関し、第1の中心線L10よりも、外側に位置する。
【0046】
また、本発明による実施形態では、図7に示されるように、第1の高密度領域10は第2の高密度領域12よりも肌側に位置する。すなわち、本発明による実施形態では、第1の高密度領域10の第1の高圧搾部分10Hが、第2の高密度領域12の第2の高圧搾部分12Hよりも肌側に位置する。このような第1の高密度領域10は、例えば、第1の高密度領域10を形成するエンボス加工が比較的弱く施されることによって、形成される。
【0047】
更に、本発明による実施形態では、第2の高密度領域12の両側縁12e,12eが第1の高密度領域10の両側縁10e,10eよりも、第1の中心線L10に関し、外側OWに位置している。
【0048】
また、本発明による実施形態では、図7及び図8に示されるように、厚さ方向Tに透視したときに、第1の高圧搾部分10Hと第2の低圧搾部分12Lとが、位置20において、互いに重なっている。
【0049】
本発明による実施形態では、第1の高密度領域10及び第2の高密度領域12はそれぞれ、あらかじめ定められたエンボスパターンでもって形成される。図9(A)は、本発明による実施形態の第1の高密度領域10を形成するエンボスパターンの最小単位10mを模式的に示している。この最小単位10mは、概ね、第1の高圧搾部分10Hの形状に対応する。一方、図8(B)は、本発明による実施形態の第2の高密度領域12を形成するエンボスパターンの最小単位12mを模式的に示している。この最小単位12mは、概ね、第2の高圧搾部分12Hの形状に対応する。本発明による実施形態では、最小単位12mの面積が最小単位10mの面積よりも小さい。
【0050】
図10(A)及び図10(B)は、本発明による実施形態の第1の高圧搾部分10Hを模式的に示している。本発明による実施形態の第1の高圧搾部分10Hはそれぞれ、凹溝DPの形をなしている。この場合、凹溝の底壁BT及び底壁BT周りの周壁PRの繊維密度は、他の部分に比べて、高い。液体は、このような繊維密度が高い部分を速やかに流れる。図10(B)の例では、底壁BTに融着部分HFが形成された場合を示している。この場合、融着部分HFの周囲に、環状の非融着部分NHFが位置する。融着部分HFは、例えばエンボス加工の際に印加された熱でもって底壁BTに形成され、フィルム状をなす。液体は融着部分HFを透過しにくく、したがって液体が非融着部分NHTを流れるのが促進される。なお、図10(A)の例では、融着部分は形成されていない。本発明による実施形態の第2の高密度領域12Hも同様であるので説明を省略する。
【0051】
本発明による実施形態では、第1の高圧搾部分10Hは、一例では、融着部分を含まない。別の例では、第1の高圧搾部分10Hは、第1の融着部分HFと、第1の融着部分HFの周囲の第1の非融着部分NHFとを含む。一方、本発明による実施形態では、第2の高圧搾部分12Hは、一例では、融着部分を含まない。別の例では、第2の高圧搾部分12Hは、第1の融着部分HFと、第1の融着部分HFの周囲の第1の非融着部分NHFとを含む。
【0052】
なお、本発明による実施形態の吸収性物品1は、例えば次のようにして製造される。すなわち、まず中間シート5が製造され、この中間シート5に対しエンボス加工が施されて、第2の高密度領域12,12が形成される。次いで、第2の高密度領域12,12が形成された中間シート5と、トップシート2、吸収体4、及びバックシート3とが互いに積層され、互いに接合されて、吸収性物品1が製造される。次いで、この吸収性物品1にエンボス加工が施されて、第1の高密度領域10,10が形成される。
【0053】
さて、尿などの液体は、まずトップシート2に吸収され、次いで中間シート5を介して吸収体4に到り、保持される。この場合、本発明による実施形態では、トップシート2が保水性繊維を含む肌側層2aを含んでいる。したがって、トップシート2の優れた肌触りが提供される。また、本発明による実施形態では、トップシート2が熱可塑性樹脂繊維を含む非肌側層2bを含んでいる。その結果、トップシート2の肌側層2aに吸収された液体が良好に非肌側層2bに引き込まれる。したがって、肌側層2aのドライ性が高められる。
【0054】
また、本発明による実施形態では、トップシート2及びバックシート3が熱融着領域6により互いに接合される。この場合、本発明による実施形態では、バックシート3に対面するトップシート2の非肌側層2bが熱可塑性樹脂繊維を含んでいる。したがって、保水性繊維がバックシート3に接合される場合に比べて、トップシート2がバックシート3に対し、融着により、より良好に接合される。
【0055】
更に、本発明による実施形態では、厚さ方向Tに透視したときに、第1の高密度領域10,10が第2の高密度領域12,12よりも肌側に位置するように、第1の高密度領域10,10と第2の高密度領域12,12とが互いに重なっている。その結果、液体は、第1の高密度領域10,10を速やかに流れ、次いで第2の高密度領域12,12に到り、第2の高密度領域12,12を速やかに流れる。しあがって、液体が吸収性物品1の内部に速やかに送られる。
【0056】
また、本発明による実施形態では、第2の高密度領域12,12の両側縁12e,12eがそれぞれ、第1の高密度領域10,10の両側縁10e,10eよりも、第1の中心線L10からみて、外側に位置する。その結果、液体が第1の高密度領域10,10から第2の高密度領域12,12に流れることにより、中間シート5又は吸収体4において、液体が第1の高密度領域10,10の第1の中心線L10から離れる方向に流れるのが促進される。したがって、中間シート5又は吸収体4において、液体が面内方向に拡散するのがより促進され、中間シート5又は吸収体4の部分に液体が集中するのがより制限される。これにより、液体がトップシート2から中間シート5又は吸収体4に、より速やかに送られ、液体がトップシート2に保持され続けるのがより制限される。したがって、着用者の不快感がより制限される。
【0057】
図11及び図12には、本発明による実施形態の第1の高密度領域10及び第2の高密度領域12における液体の流れが模式的に示されている。第1の高密度領域10及び第2の高密度領域12に融着部分が形成されていない図11の例では、液体は主として、第1の高密度領域10の底壁及び周壁(図10(A))を通り、次いで第2の高密度領域12の底壁及び周壁を通って流れる。したがって、液体が第1の高密度領域10,10の第1の中心線L10から離れる方向に流れるのが促進される。第1の高密度領域10及び第2の高密度領域12に融着部分が形成されている図12の例では、液体が融着部分を透過しにくいので、液体は主として、第1の高密度領域10の周壁又は非融着部分(図10(B))を通り、次いで第2の高密度領域12の周壁又は非融着部分を通って流れる。したがって、液体が第1の高密度領域10,10の第1の中心線L10から離れる方向に流れるのが更に促進される。
【0058】
このような肌側層2aの部分に液体が集中するという技術的課題は、肌側層2aが保水性繊維を含むときに深刻となるおそれがあり、肌側層2aが保水性繊維100%から形成されていると更に深刻となるおそれがある。本発明による実施形態は、この課題に着目し、これを解決するものである。すなわち、本発明による実施形態によれば、トップシート2の優れた肌触りを維持しつつ、トップシート2から吸収性物品1の内部への液体の吸収がより促進され、したがって着用者の不快感がより制限される。
【0059】
更に、本発明による実施形態では、第2の高密度領域12を形成するエンボスパターンの最小単位12mの面積が、第1の高密度領域10を形成するエンボスパターンの最小単位10mの面積よりも小さい。エンボスパターンの最小単位の面積が小さいと、シートの単位面積あたりに形成される高密度領域の高圧搾部分の面積の合計を大きくすることが可能となる。本発明による実施形態では、第2の高密度領域12に形成される第2の高圧搾部分12Hの面積の合計が、第1の高密度領域10に形成される第1の高圧搾部分10Hの面積の合計よりも大きい。その結果、液体が、第1の高密度領域10に比べて、第2の高密度領域12をより流れやすい。したがって、液体がトップシート2から中間シート5へ流れるのがより促進される。
【0060】
また、第2の高密度領域12が融着部分を含む場合、本発明による実施形態では、第2の高密度領域12に含まれる融着部分の面積の合計が低減されている。液体は融着部分を透過しにくいので、融着部分は液体が吸収性物品1の内部に送られるのを制限するおそれがある。したがって、本発明による実施形態では、吸収性物品の内部への液体の流れが融着部分によって制限されるのがより低減される。
【0061】
更に、本発明による実施形態では、第2のエンボス領域12,12の各高圧搾部12Hの面積が、第1のエンボス領域10,10の各高圧搾部10Hの面積よりも小さい。各高圧搾部の面積をより小さくすると、シートの単位面積あたりに形成される凹溝の周長の合計をより大きくすることが可能となる。したがって、シートの単位面積あたりに形成される高密度領域の面積の合計をより大きくすることが可能となる。本発明による実施形態では、第2のエンボス領域12,12に形成される高密度領域の面積の合計が、第1のエンボス領域10,10に形成される高密度領域の面積の合計よりも大きい。その結果、中間シート5又は吸収体4において、液体の面内方向の拡散が更に促進される。また、第2のエンボス領域12,12が熱融着部HFを含む場合には、熱融着部HFの面積がより小さくなる。したがって、吸収性物品1の内部への液体の流れが第2のエンボス領域12,12の熱融着部HFによって制限されるのがより低減される。
【0062】
更に、本発明による実施形態では、厚さ方向Tに透視したときに、第1の高圧搾部分10Hと第2の低圧搾部分12Lとが、位置20において、互いに重なっている。その結果、位置20において、トップシート2と中間シート5とが互いに密着しやすい。したがって、位置20においても、トップシート2から中間シート5への液体の流れがより促進される。
【符号の説明】
【0063】
1 吸収性物品
2 トップシート
3 バックシート
4 吸収体
5 中間シート
10 第1の高密度領域
10e 第1の高密度領域の両側縁
11 第1の低密度領域
12 第2の高密度領域
12e 第2の高密度領域の両側縁
13 第2の低密度領域
L 吸収性物品の長さ方向
L10 第1の高密度領域の中心線
T 吸収性物品の厚さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12