(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13363 20060101AFI20220722BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
G02F1/13363
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2020031386
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2019039799
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019070651
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】山田 直良
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 之人
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/022623(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/043438(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/208516(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/110277(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/207797(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/061959(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0300847(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0072713(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13363
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第一偏光子、1/4波長位相差層、液晶セル、および、第二偏光子をこの順に備える液晶表示装置であって、
前記液晶セルは、少なくとも一方が電極を有する対向配置された一対の基板と、前記一対の基板間に配置され、配向制御された液晶性化合物を含む液晶層とを有し、前記電極によって前記基板に対して平行な成分を持つ電界を形成する、IPS方式またはFFS方式の液晶セルであり、
前記液晶セルにおける液晶層が、1/4波長となる位相差または3/4波長となる位相差を有し、
前記1/4波長位相差層は、波長550nmにおける位相差Re(550)が以下の式(1)を満たす負のAプレートであり、
前記第一偏光子の吸収軸の方位と、前記1/4波長位相差層の遅相軸の方位とのなす角が40°以上50°未満であ
り、
前記液晶セルに電圧が印加されていないとき、前記液晶セルにおける液晶層の波長550nmにおける位相差Δnd(550)と、前記1/4波長位相差層の波長550nmにおける位相差Re(550)との差異が10nm以下である、液晶表示装置。
式(1) : 100nm ≦ Re(550) ≦ 160nm
【請求項2】
少なくとも第一偏光子、1/4波長位相差層、液晶セル、および、第二偏光子をこの順に備える液晶表示装置であって、
前記液晶セルは、少なくとも一方が電極を有する対向配置された一対の基板と、前記一対の基板間に配置され、配向制御された液晶性化合物を含む液晶層とを有し、前記電極によって前記基板に対して平行な成分を持つ電界を形成する、IPS方式またはFFS方式の液晶セルであり、
前記液晶セルにおける液晶層が、1/4波長となる位相差または3/4波長となる位相差を有し、
前記1/4波長位相差層は、波長550nmにおける位相差Re(550)が以下の式(1)を満たす正のAプレートであり、かつ、前記1/4波長位相差層の位相差Re(λ)が以下の式(1-1)および式(1-2)を満たし、
前記第一偏光子の吸収軸の方位と、前記1/4波長位相差層の遅相軸の方位とのなす角が40°以上50°未満であ
り、
前記液晶セルに電圧が印加されていないとき、前記液晶セルにおける液晶層の波長550nmにおける位相差Δnd(550)と、前記1/4波長位相差層の波長550nmにおける位相差Re(550)との差異が10nm以下である、液晶表示装置。
式(1) : 100nm ≦ Re(550) ≦ 160nm
式(1-1) : Re(450)/Re(550)< 1.0
式(1-2) : Re(650)/Re(550)> 1.0
【請求項3】
前記液晶セルに電圧が印加されていないとき、前記液晶セルにおける液晶層の遅相軸の方位と、前記1/4波長位相差層の遅相軸の方位とのなす角が85°以上95°未満である、請求項1
または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
視認側の最表面に反射防止層を有してなる、請求項1~
3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記液晶セルが、視認側の表面に酸化インジウムスズ層を有してなる、請求項1~
4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第一偏光子の吸収軸の方位と、前記第二偏光子の吸収軸の方位とのなす角が85°以上95°未満である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記1/4波長位相差層の位相差Re(λ)が、可視光の波長域において順分散の波長分散性を示し、かつ、前記1/4波長位相差層の位相差Re(λ)と、前記液晶層の位相差Δnd(λ)とが、以下の式(2)を満たす、請求項1および3~
6のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
式(2) :
Re(650)/Re(550)=Δnd(650)/Δnd(550)±0.05
【請求項8】
前記1/4波長位相差層が、円盤状液晶性化合物の分子が垂直に配向した状態で固定化したフィルムである、請求項1および3~
7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記第一偏光子と前記1/4波長位相差層との間に、光学補償層を有してなる、請求項1~
8のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記液晶セルと前記第二偏光子との間に、光学補償層を有してなる、請求項1~
8のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
少なくとも第一偏光子、1/4波長位相差層、液晶セル、および、第二偏光子をこの順に備える液晶表示装置であって、
前記液晶セルは、少なくとも一方が電極を有する対向配置された一対の基板と、前記一対の基板間に配置され、配向制御された液晶性化合物を含む液晶層とを有し、前記電極によって前記基板に対して平行な成分を持つ電界を形成する、IPS方式またはFFS方式の液晶セルであり、
前記液晶セルにおける液晶層が、1/4波長となる位相差または3/4波長となる位相差を有し、
前記1/4波長位相差層は、波長550nmにおける位相差Re(550)が以下の式(1)を満たす負のAプレートであり、
前記第一偏光子の吸収軸の方位と、前記1/4波長位相差層の遅相軸の方位とのなす角が40°以上50°未満であり、
前記第一偏光子と前記1/4波長位相差層との間に、光学補償層を有してなり、
前記光学補償層の波長550nmにおける位相差Re1(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth1(550)が、以下の式(3)および式(4)を満たす
、液晶表示装置。
式(1) : 100nm ≦ Re(550) ≦ 160nm
式(3) : 200nm≦Re1(550)≦400nm
式(4) : -40nm≦Rth1(550)≦40nm
【請求項12】
少なくとも第一偏光子、1/4波長位相差層、液晶セル、および、第二偏光子をこの順に備える液晶表示装置であって、
前記液晶セルは、少なくとも一方が電極を有する対向配置された一対の基板と、前記一対の基板間に配置され、配向制御された液晶性化合物を含む液晶層とを有し、前記電極によって前記基板に対して平行な成分を持つ電界を形成する、IPS方式またはFFS方式の液晶セルであり、
前記液晶セルにおける液晶層が、1/4波長となる位相差または3/4波長となる位相差を有し、
前記1/4波長位相差層は、波長550nmにおける位相差Re(550)が以下の式(1)を満たす負のAプレートであり、
前記第一偏光子の吸収軸の方位と、前記1/4波長位相差層の遅相軸の方位とのなす角が40°以上50°未満であり、
前記液晶セルと前記第二偏光子との間に、光学補償層を有してなり、
前記光学補償層の波長550nmにおける位相差Re1(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth1(550)が、以下の式(3)および式(4)を満たす
、液晶表示装置。
式(1) : 100nm ≦ Re(550) ≦ 160nm
式(3) : 200nm≦Re1(550)≦400nm
式(4) : -40nm≦Rth1(550)≦40nm
【請求項13】
少なくとも第一偏光子、1/4波長位相差層、液晶セル、および、第二偏光子をこの順に備える液晶表示装置であって、
前記液晶セルは、少なくとも一方が電極を有する対向配置された一対の基板と、前記一対の基板間に配置され、配向制御された液晶性化合物を含む液晶層とを有し、前記電極によって前記基板に対して平行な成分を持つ電界を形成する、IPS方式またはFFS方式の液晶セルであり、
前記液晶セルにおける液晶層が、1/4波長となる位相差または3/4波長となる位相差を有し、
前記1/4波長位相差層は、波長550nmにおける位相差Re(550)が以下の式(1)を満たす正のAプレートであり、かつ、前記1/4波長位相差層の位相差Re(λ)が以下の式(1-1)および式(1-2)を満たし、
前記第一偏光子の吸収軸の方位と、前記1/4波長位相差層の遅相軸の方位とのなす角が40°以上50°未満であり、
前記第一偏光子と前記1/4波長位相差層との間に、光学補償層を有してなり、
前記光学補償層の波長550nmにおける位相差Re1(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth1(550)が、以下の式(3)および式(4)を満たす
、液晶表示装置。
式(1) : 100nm ≦ Re(550) ≦ 160nm
式(1-1) : Re(450)/Re(550)< 1.0
式(1-2) : Re(650)/Re(550)> 1.0
式(3) : 200nm≦Re1(550)≦400nm
式(4) : -40nm≦Rth1(550)≦40nm
【請求項14】
少なくとも第一偏光子、1/4波長位相差層、液晶セル、および、第二偏光子をこの順に備える液晶表示装置であって、
前記液晶セルは、少なくとも一方が電極を有する対向配置された一対の基板と、前記一対の基板間に配置され、配向制御された液晶性化合物を含む液晶層とを有し、前記電極によって前記基板に対して平行な成分を持つ電界を形成する、IPS方式またはFFS方式の液晶セルであり、
前記液晶セルにおける液晶層が、1/4波長となる位相差または3/4波長となる位相差を有し、
前記1/4波長位相差層は、波長550nmにおける位相差Re(550)が以下の式(1)を満たす正のAプレートであり、かつ、前記1/4波長位相差層の位相差Re(λ)が以下の式(1-1)および式(1-2)を満たし、
前記第一偏光子の吸収軸の方位と、前記1/4波長位相差層の遅相軸の方位とのなす角が40°以上50°未満であり、
前記液晶セルと前記第二偏光子との間に、光学補償層を有してなり、
前記光学補償層の波長550nmにおける位相差Re1(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth1(550)が、以下の式(3)および式(4)を満たす
、液晶表示装置。
式(1) : 100nm ≦ Re(550) ≦ 160nm
式(1-1) : Re(450)/Re(550)< 1.0
式(1-2) : Re(650)/Re(550)> 1.0
式(3) : 200nm≦Re1(550)≦400nm
式(4) : -40nm≦Rth1(550)≦40nm
【請求項15】
少なくとも第一偏光子、1/4波長位相差層、液晶セル、および、第二偏光子をこの順に備える液晶表示装置であって、
前記液晶セルは、少なくとも一方が電極を有する対向配置された一対の基板と、前記一対の基板間に配置され、配向制御された液晶性化合物を含む液晶層とを有し、前記電極によって前記基板に対して平行な成分を持つ電界を形成する、IPS方式またはFFS方式の液晶セルであり、
前記液晶セルにおける液晶層が、1/4波長となる位相差または3/4波長となる位相差を有し、
前記1/4波長位相差層は、波長550nmにおける位相差Re(550)が以下の式(1)を満たす負のAプレートであり、
前記第一偏光子の吸収軸の方位と、前記1/4波長位相差層の遅相軸の方位とのなす角が40°以上50°未満であり、
前記第一偏光子と前記1/4波長位相差層との間に、光学補償層を有してなり、
前記光学補償層が、第一光学異方性層と第二光学異方性層との積層体であり、
前記第一光学異方性層の波長550nmにおける位相差Re1(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth1(550)が、以下の式(5)および(6)を満たし、
前記第二光学異方性層の波長550nmにおける位相差Re2(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth2(550)が、以下の式(7)および(8)を満たす
、液晶表示装置。
式(1) : 100nm ≦ Re(550) ≦ 160nm
式(5) : 80nm≦Re1(550)≦200nm
式(6) : 20nm≦Rth1(550)≦150nm
式(7) : 0nm≦Re2(550)≦40nm
式(8) : -160nm≦Rth2(550)≦-40nm
【請求項16】
少なくとも第一偏光子、1/4波長位相差層、液晶セル、および、第二偏光子をこの順に備える液晶表示装置であって、
前記液晶セルは、少なくとも一方が電極を有する対向配置された一対の基板と、前記一対の基板間に配置され、配向制御された液晶性化合物を含む液晶層とを有し、前記電極によって前記基板に対して平行な成分を持つ電界を形成する、IPS方式またはFFS方式の液晶セルであり、
前記液晶セルにおける液晶層が、1/4波長となる位相差または3/4波長となる位相差を有し、
前記1/4波長位相差層は、波長550nmにおける位相差Re(550)が以下の式(1)を満たす負のAプレートであり、
前記第一偏光子の吸収軸の方位と、前記1/4波長位相差層の遅相軸の方位とのなす角が40°以上50°未満であり、
前記液晶セルと前記第二偏光子との間に、光学補償層を有してなり、
前記光学補償層が、第一光学異方性層と第二光学異方性層との積層体であり、
前記第一光学異方性層の波長550nmにおける位相差Re1(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth1(550)が、以下の式(5)および(6)を満たし、
前記第二光学異方性層の波長550nmにおける位相差Re2(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth2(550)が、以下の式(7)および(8)を満たす
、液晶表示装置。
式(1) : 100nm ≦ Re(550) ≦ 160nm
式(5) : 80nm≦Re1(550)≦200nm
式(6) : 20nm≦Rth1(550)≦150nm
式(7) : 0nm≦Re2(550)≦40nm
式(8) : -160nm≦Rth2(550)≦-40nm
【請求項17】
少なくとも第一偏光子、1/4波長位相差層、液晶セル、および、第二偏光子をこの順に備える液晶表示装置であって、
前記液晶セルは、少なくとも一方が電極を有する対向配置された一対の基板と、前記一対の基板間に配置され、配向制御された液晶性化合物を含む液晶層とを有し、前記電極によって前記基板に対して平行な成分を持つ電界を形成する、IPS方式またはFFS方式の液晶セルであり、
前記液晶セルにおける液晶層が、1/4波長となる位相差または3/4波長となる位相差を有し、
前記1/4波長位相差層は、波長550nmにおける位相差Re(550)が以下の式(1)を満たす正のAプレートであり、かつ、前記1/4波長位相差層の位相差Re(λ)が以下の式(1-1)および式(1-2)を満たし、
前記第一偏光子の吸収軸の方位と、前記1/4波長位相差層の遅相軸の方位とのなす角が40°以上50°未満であり、
前記第一偏光子と前記1/4波長位相差層との間に、光学補償層を有してなり、
前記光学補償層が、第一光学異方性層と第二光学異方性層との積層体であり、
前記第一光学異方性層の波長550nmにおける位相差Re1(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth1(550)が、以下の式(5)および(6)を満たし、
前記第二光学異方性層の波長550nmにおける位相差Re2(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth2(550)が、以下の式(7)および(8)を満たす
、液晶表示装置。
式(1) : 100nm ≦ Re(550) ≦ 160nm
式(1-1) : Re(450)/Re(550)< 1.0
式(1-2) : Re(650)/Re(550)> 1.0
式(5) : 80nm≦Re1(550)≦200nm
式(6) : 20nm≦Rth1(550)≦150nm
式(7) : 0nm≦Re2(550)≦40nm
式(8) : -160nm≦Rth2(550)≦-40nm
【請求項18】
少なくとも第一偏光子、1/4波長位相差層、液晶セル、および、第二偏光子をこの順に備える液晶表示装置であって、
前記液晶セルは、少なくとも一方が電極を有する対向配置された一対の基板と、前記一対の基板間に配置され、配向制御された液晶性化合物を含む液晶層とを有し、前記電極によって前記基板に対して平行な成分を持つ電界を形成する、IPS方式またはFFS方式の液晶セルであり、
前記液晶セルにおける液晶層が、1/4波長となる位相差または3/4波長となる位相差を有し、
前記1/4波長位相差層は、波長550nmにおける位相差Re(550)が以下の式(1)を満たす正のAプレートであり、かつ、前記1/4波長位相差層の位相差Re(λ)が以下の式(1-1)および式(1-2)を満たし、
前記第一偏光子の吸収軸の方位と、前記1/4波長位相差層の遅相軸の方位とのなす角が40°以上50°未満であり、
前記液晶セルと前記第二偏光子との間に、光学補償層を有してなり、
前記光学補償層が、第一光学異方性層と第二光学異方性層との積層体であり、
前記第一光学異方性層の波長550nmにおける位相差Re1(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth1(550)が、以下の式(5)および(6)を満たし、
前記第二光学異方性層の波長550nmにおける位相差Re2(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth2(550)が、以下の式(7)および(8)を満たす
、液晶表示装置。
式(1) : 100nm ≦ Re(550) ≦ 160nm
式(1-1) : Re(450)/Re(550)< 1.0
式(1-2) : Re(650)/Re(550)> 1.0
式(5) : 80nm≦Re1(550)≦200nm
式(6) : 20nm≦Rth1(550)≦150nm
式(7) : 0nm≦Re2(550)≦40nm
式(8) : -160nm≦Rth2(550)≦-40nm
【請求項19】
前記第一光学異方性層が正のAプレートであり、前記第二光学異方性層が正のCプレートである、請求項
15~18のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項20】
前記第一光学異方性層と前記第二光学異方性層の少なくとも一方が、液晶性化合物が配向した状態で固定化したフィルムである、請求項
19に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも第一偏光子、1/4波長位相差層、液晶セル、および、第二偏光子をこの順に備える液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IPS(In-Plane Switching)型およびFFS(Fringe Field Switching)型の液晶表示装置は、液晶層に対し、液晶層を挟持する基板の面に平行な成分を含む電界を印加し、液晶層の液晶性化合物を基板面内方向に応答させる、横電界方式とも呼ばれる方式(モード)である。
IPS型およびFFS型は、その構造から、原理的に視野角への制限が少ない方式であるため、視野角が広い上に、色度および色調の変化が少ないといった特性を持つ駆動方式として知られている。
【0003】
一方、液晶表示装置は、晴れた日の屋外など、強い外光下での視聴において外光が反射され、表示画像の視認性が著しく低下するという問題があった。そこで、液晶表示装置においては、外光の反射を抑制するために、視認側の最表面に反射防止層を設置したり、反射防止コーティングを施したりすることが一般的に行われている。
【0004】
さらに、液晶表示装置においては、液晶セル内のカラーフィルタ、ブラックマトリックス、配線、および電極など、内部構造に起因する外光反射も存在し、これらは表面に対する反射防止処理だけでは抑制できないため、問題になっていた。特に、IPS型およびFFS型の液晶表示装置は、静電気除去を目的として液晶セルの表面にITO(酸化インジウムスズ)などの透明電極が配置されることがあり、これら透明電極において外光が反射されるという問題があった。
【0005】
そこで、IPS型およびFFS型の液晶表示装置に関して、特許文献1には、偏光子及び1/4波長位相差板を備える円偏光板を配置し、液晶セルの内部構造に起因する外光反射を抑制する構成が開示されている。また、特許文献1には、液晶セルの表面に、NZ係数>0.9の1/4波長位相差板と偏光子とを含む円偏光板を配置し、外光反射を抑制する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載された円偏光板を用いた方法は、液晶表示装置における外光反射を抑制し、強い外光下における視認性の低下を抑制できるが、一方で、暗室など強い外光のない視聴環境においては、黒表示の光漏れが強く、かえって表示品位が低下することが分かった。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、外光反射を抑制し、強い外光下における視認性の低下を抑制するとともに、暗室など外光のない視聴環境においても、黒表示の光漏れを抑制し、高い表示品位を有する液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により上記目的を達成することができることを見出した。
【0010】
<1>
少なくとも第一偏光子、1/4波長位相差層、液晶セル、および、第二偏光子をこの順に備える液晶表示装置であって、
上記液晶セルは、少なくとも一方が電極を有する対向配置された一対の基板と、上記一対の基板間に配置され、配向制御された液晶性化合物を含む液晶層とを有し、上記電極によって上記基板に対して平行な成分を持つ電界を形成する、IPS方式またはFFS方式の液晶セルであり、
上記液晶セルにおける液晶層が、1/4波長となる位相差または3/4波長となる位相差を有し、
上記1/4波長位相差層は、波長550nmにおける位相差Re(550)が以下の式(1)を満たす負のAプレートであり、
上記第一偏光子の吸収軸の方位と、上記1/4波長位相差層の遅相軸の方位とのなす角が40°以上50°未満である、液晶表示装置。
式(1) : 100nm ≦ Re(550) ≦ 160nm
<2>
少なくとも第一偏光子、1/4波長位相差層、液晶セル、第二偏光子をこの順に備える液晶表示装置であって、
上記液晶セルは、少なくとも一方が電極を有する対向配置された一対の基板と、上記一対の基板間に配置され、配向制御された液晶性化合物を含む液晶層とを有し、上記電極によって上記基板に対して平行な成分を持つ電界を形成する、IPS方式またはFFS方式の液晶セルであり、
上記液晶セルにおける液晶層が、1/4波長となる位相差または3/4波長となる位相差を有し、
上記1/4波長位相差層は、波長550nmにおける位相差Re(550)が以下の式(1)を満たす正のAプレートであり、かつ、上記1/4波長位相差層の位相差Re(λ)が以下の式(1-1)および式(1-2)を満たし、
上記第一偏光子の吸収軸の方位と、上記1/4波長位相差層の遅相軸の方位とのなす角が40°以上50°未満である、液晶表示装置。
式(1) : 100nm ≦ Re(550) ≦ 160nm
式(1-1) : Re(450)/Re(550)< 1.0
式(1-2) : Re(650)/Re(550)> 1.0
<3>
上記液晶セルに電圧が印加されていないとき、上記液晶セルにおける液晶層の波長550nmにおける位相差Δnd(550)と、上記1/4波長位相差層の波長550nmにおける位相差Re(550)との差異が10nm以下である、<1>または<2>に記載の液晶表示装置。
<4>
上記液晶セルに電圧が印加されていないとき、上記液晶セルにおける液晶層の遅相軸の方位と、上記1/4波長位相差層の遅相軸の方位とのなす角が85°以上95°未満である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
<5>
視認側の最表面に反射防止層を有してなる、<1>~<4>のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
<6>
上記液晶セルが、視認側の表面に酸化インジウムスズ層を有してなる、<1>~<5>のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
<7>
上記第一偏光子の吸収軸の方位と、上記第二偏光子の吸収軸の方位とのなす角が85°以上95°未満である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
<8>
上記1/4波長位相差層の位相差Re(λ)が、可視光の波長域において順分散の波長分散性を示し、かつ、上記1/4波長位相差層の位相差Re(λ)と、上記液晶層の位相差Δnd(λ)が、以下の式(2)を満たす、<1>および<3>~<7>のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
式(2) :
Re(650)/Re(550)=Δnd(650)/Δnd(550)±0.05
<9>
上記1/4波長位相差層が、円盤状液晶性化合物の分子が垂直に配向した状態で固定化したフィルムである、<1>および<3>~<8>のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
<10>
上記第一偏光子と上記1/4波長位相差層との間に、光学補償層を有してなる、<1>~<9>のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
<11>
上記液晶セルと上記第二偏光子との間に、光学補償層を有してなる、<1>~<9>のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
<12>
上記光学補償層の波長550nmにおける位相差Re1(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth1(550)が、以下の式(3)および式(4)を満たす、<10>または<11>に記載の液晶表示装置。
式(3) : 200nm≦Re1(550)≦400nm
式(4) : -40nm≦Rth1(550)≦40nm
<13>
上記光学補償層が、第一光学異方性層と第二光学異方性層の積層体であり、第一光学異方性層の波長550nmにおける位相差Re1(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth1(550)が、以下の式(5)および(6)を満たし、第二光学異方性層の波長550nmにおける位相差Re2(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth2(550)が、以下の式(7)および(8)を満たす、<10>または<11>に記載の液晶表示装置。
式(5) : 80nm≦Re1(550)≦200nm
式(6) : 20nm≦Rth1(550)≦150nm
式(7) : 0nm≦Re2(550)≦40nm
式(8) : -160nm≦Rth2(550)≦-40nm
<14>
上記第一光学異方性層が正のAプレートであり、上記第二光学異方性層が正のCプレートである、<13>に記載の液晶表示装置。
<15>
上記第一光学異方性層と上記第二光学異方性層の少なくとも一方が、液晶性化合物が配向した状態で固定化したフィルムである、<14>に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外光反射を抑制し、強い外光下における視認性の低下を抑制するとともに、暗室など外光のない視聴環境においても、黒表示の光漏れを抑制し、高い表示品位を有する液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、従来の液晶表示装置の一形態を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の液晶表示装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の液晶表示装置の一実施形態において、黒表示の状態を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の液晶表示装置の一実施形態において、外光が入射した様子を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の液晶表示装置の別の一実施形態を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の液晶表示装置の別の一実施形態において、外光が入射した様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
また、本明細書において、偏光板とは、偏光子の少なくとも一方の表面に保護層又は機能層が配置されたものをいい、偏光子と偏光板は区別して用いる。
【0015】
また、本明細書において、平行及び直交とは、厳密な意味での平行及び直交を意味するのではなく、それぞれ、平行又は直交から±5°の範囲を意味する。
【0016】
本明細書において、Re(λ)およびRth(λ)は、各々、波長λにおける面内の位相差および厚さ方向の位相差を表す。特に記載がないとき、波長λは550nmとする。
本明細書において、Re(λ)およびRth(λ)は、AxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)を用い、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)、
Re(λ)=(nx-ny)×d、
および、
Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×d
が算出される。
【0017】
本発明において、屈折率nxおよびnyは、それぞれ、光学部材の面内方向における屈折率であり、通常、nxが遅相軸方位の屈折率、nyが進相軸方位(すなわち、遅相軸と直交する方位)の屈折率である。また、nzは厚み方向における屈折率である。nx、ny、およびnzは、たとえば、アッベ屈折計(NAR-4T、アタゴ(株)製)を使用し、光源にナトリウムランプ(λ=589nm)を用いて測定することができる。
また、波長依存性を測定する場合は、多波長アッベ屈折計DR-M2(アタゴ(株)製)にて、干渉フィルタとの組合せで測定できる。
また、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することもできる。
【0018】
本明細書において、NZ係数は、以下の式(9)で定義される。
式(9) : NZ=(nx-nz)/(nx-ny)
また、前述のReおよびRthの定義により、NZ係数は以下の式(10)によっても求めることができる。
式(10) : NZ=0.5+Rth/Re
特に記載がないとき、NZ係数は波長550nmにおける値とする。
【0019】
[従来の液晶表示装置]
はじめに、従来の液晶表示装置の構造について、図面を用いて説明する。
図1は、従来の液晶表示装置の一形態である。
液晶表示装置100は、第一偏光板10(11~13)、液晶セル20(21~24)、第二偏光板30(31~33)、およびバックライトユニット40を有する。
第一偏光板10は、第一偏光板の外側保護層11、第一偏光子12、および第一偏光板の内側保護層13を有する。
第二偏光板30は、第二偏光板の内側保護層31、第二偏光子32、および第二偏光板の外側保護層33を有する。
液晶表示装置100の視認側に配置される偏光板(
図1においては、第一偏光板10)の外側保護層は、反射防止層であり得る。また、第一偏光板10または第二偏光板30の内側保護層は、光学補償層であり得る。
また、液晶セル20は、第一基板22、液晶層23、および第二基板24を有する。さらに、第一基板22は、表面に透明電極21が設置されている。
バックライトユニット40から出射された光は、第二偏光板30を透過することで直線偏光となり、次に液晶セル20の液晶層23により偏光状態が変化し、その結果として、第一偏光板10における透過率が変化する。したがって、液晶層23を駆動することで透過光の明暗を調整することができる。液晶表示装置100は、このような仕組みにより画像表示が可能になっている。
IPS型またはFFS型の場合、液晶層23は、液晶性化合物が基板に対し平行になるように配向している。液晶層23の駆動は、基板の面に平行な成分を含む電界を印加することで行われ、このとき、液晶性化合物は基板面内で回転する。
液晶表示装置100を外光下で視聴した場合、外光は第一偏光板10の最表面、すなわち、保護層11の最表面や、透明電極21の表面、および、図示されない液晶セル20内のカラーフィルタ、ブラックマトリックス、配線などにより、反射される。これらの反射光は、液晶層23の状態に関わらず、一定の光量が反射されるため、画像表示の視認性を著しく低下させる。
【0020】
[本発明の液晶表示装置]
図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す模式的な図である。
液晶表示装置200は、第一偏光板10(11~14)、液晶セル20(21~24)、第二偏光板30(31~33)、および、バックライトユニット40を有し、第一偏光板10は、第一偏光板の外側保護層11、第一偏光子12、第一偏光板の内側保護層13、および、1/4波長位相差層14を有している。
1/4波長位相差層14の遅相軸の方位140は、第一偏光子12の吸収軸の方位120とのなす角が約45°である。これにより、第一偏光板10は円偏光板となっている。
一方、バックライトユニット40から出射され、第二偏光板30を透過した光は直線偏光となっている。
そのため、液晶表示装置200において黒表示を実現するには、液晶層23において直線偏光を円偏光に変換する必要があり、液晶層23は、実質的に1/4波長となる位相差、または3/4波長となる位相差を有している必要がある。
ここで、1/4波長となる位相差とは、波長550nmにおける位相差Δnd(550)が100nm以上160nm以下を満たす位相差をいう。
同様に、3/4波長となる位相差とは、波長550nmにおける位相差Δnd(550)が340nm以上480nm以下を満たす位相差をいう。
【0021】
図3は、液晶表示装置200が黒表示となっているときの模式図である。
液晶層23の遅相軸の方位230は、第二偏光子32の吸収軸の方位320とのなす角が約45°であり、1/4波長位相差層14の遅相軸の方位140とのなす角が約90°になっている。
バックライトユニット40から出射した光700は、第二偏光子32および液晶層23を透過することにより円偏光に変換される。この円偏光は、第一偏光板10において吸収される回転方向になっており、光700は第一偏光板10を透過できず、黒表示となる。
【0022】
図4は、液晶表示装置200が黒表示となっているとき、外光が入射する様子の模式図である。
第一偏光板10の視認側から入射した外光800は、第一偏光板10により円偏光に変換されるが、透明電極21などによって反射され、円偏光の回転方向が逆転する。この逆転した円偏光は、第一偏光板10において吸収される回転方向になっており、結果として、外光反射が効果的に抑制される。
【0023】
[本発明の液晶表示装置の別の一例]
図5は、本発明の液晶表示装置の別の一例を示す模式的な図である。
液晶表示装置300は、第二偏光板30が視認側に配置され、第一偏光板10が背面側に配置されている以外は、前述の液晶表示装置200と同様の構造である。
【0024】
図6は、液晶表示装置300が黒表示となっているとき、外光が入射する様子の模式図である。
液晶表示装置300を黒表示とする仕組みは液晶表示層200と同様であり、液晶層23の遅相軸の方位230は、1/4波長位相差層14の遅相軸の方位140とのなす角が約90°になっている。第二偏光板30の視認側から入射した外光800は、液晶層23を透過することで円偏光となるが、配線などの液晶セル20の内部構造により反射され、再び液晶層23を透過することで、直線偏光に戻る。このときの偏光方位は、第二偏光板30において吸収される方位になっており、結果として、外光反射が効果的に抑制される。
【0025】
以上、説明したように、本発明の液晶表示装置は、外光下で使用した場合の黒表示において、バックライトユニットからの光と外光反射がいずれも効果的に遮蔽され、良好な黒表示を得ることができる。また、液晶層23を駆動し、黒表示以外の表示とした場合においては、外光反射のみが効果的に遮蔽され、良好な視認性を得ることができる。
【0026】
〔保護層〕
本発明の液晶表示装置は、第一偏光子および第二偏光子の保護のために保護層を有していてもよい。
保護層の種類は特に制限されないが、例えば、セルロースアシレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレートおよびポリメタクリレート、環状ポリオレフィン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル等のフィルムを用いることができる。なかでも、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートが好ましい。また市販品のセルロースアセテートフィルム(例えば、富士フイルム株式会社製の「TD80U」や「Z-TAC」等)を利用することもできる。
第一偏光子および第二偏光子は、保護層を片面のみに有していても、両面に有していてもよい。また、保護層は1層のみの形態であっても、2層以上が積層された形態であってもよい。
外側(すなわち、視認側の最表面)の保護層は、反射防止層であるか、反射防止層が積層されていてもよい。視認側の最表面に反射防止層を有する場合、偏光板の表面における外光の反射や、バックライトユニットからの光の反射を抑制することができるため、好ましい。反射防止層としては、従来公知の反射防止層を適宜採用することができるが、屈折率が互いに異なる2以上の層の積層体からなる反射防止層であることが好ましく、特開2008-262187号公報に記載れた態様、すなわち、中屈折率層、高屈折率層、および、低屈折率層をこの順に有する3層構成の態様がより好ましい。
また、内側の保護層は、光学補償層であるか、光学補償層が積層されていてもよい。内側の保護層が光学補償層を含む場合、斜め方向からの視聴における色味変化や、コントラストの低下を低減でき、高い表示品位を得ることができるため、好ましい。
さらに、背面側に配置される偏光板の外側保護層は、反射偏光子であるか、反射偏光子が積層されていてもよい。背面側の偏光板の外側保護層が反射偏光子を含む場合、バックライトユニットからの光のうち、背面側の偏光子を透過しない偏光成分を反射し、再利用することによって、液晶表示装置の輝度を向上させることができるため、好ましい。反射偏光子としては、3M社製輝度向上フィルム「DBEF」や、旭化成株式会社製ワイヤグリッド偏光フィルム「WGF」などを好適に用いることができる。
【0027】
保護層の厚みは特に制限されないが、液晶表示装置の薄型化の点からは、80μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、25μm以下がさらに好ましい。下限は特に制限されないが、機械的強度の点から、1μm以上が好ましい。
【0028】
〔偏光子〕
本発明の液晶表示装置における第一偏光子および第二偏光子の種類は特に制限なく、公知のものを使用できる。
本発明では、通常用いられる直線偏光子を利用することができる。直線偏光子は、バインダーとヨウ素若しくは二色性色素とからなる偏光子、または塗布型偏光子が好ましい。直線偏光子におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。ヨウ素および二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、または、二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。現在、市販の偏光子は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、ヨウ素または二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されることが一般的である。
【0029】
偏光子の厚みは特に制限されないが、液晶表示装置の薄型化の観点からは、30μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。下限は特に制限されないが、機械的強度の点から、2μm以上が好ましい。
【0030】
本発明においては、第一偏光子の吸収軸の方位と、第二偏光子の吸収軸の方位とのなす角が85°以上95°未満であることが好ましく、88°以上93°未満であることがより好ましく、90°であることが最も好ましい。
【0031】
〔1/4波長位相差層〕
1/4波長位相差層は、第一偏光子の内側(すなわち、液晶セル側)に設置される。
1/4波長位相差層は、第一偏光板の内側保護層に積層されていてもよいし、内側保護層が1/4波長位相差層を兼ねていてもよい。
1/4波長位相差層を含む第一偏光板は、液晶セルの視認側に配置されていても、背面側に配置されていても良いが、透明電極における外光反射を抑制する観点からは、液晶セルの視認側に配置されることが望ましい。
【0032】
1/4波長位相差層は、可視域の波長のいずれかにおいて、およそ1/4波長となる位相差を有していればよい。具体的には、波長550nmにおける位相差Re(550)が、
式(1) : 100nm ≦ Re(550) ≦ 160nm
の範囲であればよい。外光反射をより効果的に遮蔽する観点からは、
式(11) : 120nm ≦ Re(550) ≦ 150nm
が好ましく、
式(12) : 130nm ≦ Re(550) ≦ 145nm
がより好ましい。
【0033】
また、1/4波長位相差層は、位相差Reの波長分散性が、液晶セル中の液晶層の位相差Δndの波長分散性に類似していることが好ましい。一般に、液晶層に用いられる液晶性化合物は順分散の波長分散性を有するため、1/4波長位相差層も順分散の波長分散性を有することが好ましい。
ここで、順分散の波長分散性とは、Re(λ)およびRth(λ)が、波長λが大きくなるに従って小さな値となることを言う。
より好ましくは、1/4波長位相差層の位相差Reの波長分散性が、液晶層の位相差Δndの波長分散性と実質的に一致していることが好ましい。具体的には、以下の式(2)を満たすことが好ましい。
式(2) :
Re(650)/Re(550)=Δnd(650)/Δnd(550)±0.05
1/4波長位相差層の位相差Reの波長分散性が、液晶層の位相差Δndの波長分散性に類似しているか、一致していると、液晶表示装置を黒表示とした場合の光漏れを抑制し、高い表示品位を実現できるため、好ましい。
【0034】
また、1/4波長位相差層は、負のAプレートである。
一般に、液晶セルの液晶層に用いられる液晶性化合物は正のAプレートであるため、1/4波長位相差層を負のAプレートとすることで光学補償を行い、液晶表示装置を斜めから視聴した場合の黒表示の光漏れを抑制し、高い表示品位を実現できる。
ここで、負のAプレートとは、屈折率nx、ny、およびnzが、以下の式(13)を満たす光学部材のことを言う。
式(13) : nx ≒ nz > ny
また、正のAプレートとは、屈折率nx、ny、およびnzが、以下の式(14)を満たす光学部材のことを言う。
式(14) : nx > ny ≒ nz
ただし、式(13)および式(14)において、「≒」は、両者が完全に同一である場合だけでなく、両者が実質的に同一である場合も包含する。負のAプレートは、NZ係数が実質的に0である。また、正のAプレートは、NZ係数が実質的に1である。
【0035】
また、1/4波長位相差層の別の態様として、1/4波長位相差層は、正のAプレートであり、かつ、位相差Reの波長分散性が逆分散の波長分散性を有する。
ここで、逆分散の波長分散性とは、Re(λ)およびRth(λ)が、波長λが大きくなるに従って大きな値となることを言い、このとき、位相差Re(λ)は以下の式(1-1)および式(1-2)を満たす。
式(1-1) : Re(450)/Re(550)< 1.0
式(1-2) : Re(650)/Re(550)> 1.0
1/4波長位相差層が正のAプレートであり、かつ、位相差Reの波長分散性が逆分散の波長分散性を有していると、可視光の全ての波長域において外光の反射を低減し、反射光の色味付きを抑制できるため、好ましい。
【0036】
1/4波長位相差層の遅相軸の方位は、第一偏光子の吸収軸の方位とのなす角が40°以上50°未満になるように配置される。このような配置のとき、第一偏光板は円偏光板として機能することになり、外光の反射を効果的に抑制することができる。1/4波長位相差層の遅相軸の方位と第一偏光子の吸収軸の方位とのなす角は、43°以上48°未満であることがより好ましく、45°であることが最も好ましい。
【0037】
1/4波長位相差層としては、適切に延伸処理がなされたポリマーフィルム、又は、液晶性化合物を用いて形成されるフィルムを用いることができる。
1/4波長位相差層を負のAプレートとするためには、重合性基を有する円盤状液晶性化合物を含む組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜中の円盤状液晶性化合物が垂直になるように配向させ、硬化処理を施して固定化したフィルムを用いることが好ましい。
円盤状液晶性化合物とは、分子が円盤状の形状をした液晶性化合物であり、ディスコティック液晶性化合物とも呼ばれる。重合性基を有する円盤状液晶性化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報や特開2010-244038号公報に記載のものを好ましく用いることができるが、これらに限定されない。
【0038】
〔液晶セル〕
液晶セルは、横電界方式であるIPSモードまたはFFSモードの液晶セルである。
IPSモードの液晶セルは、電圧無印加時に液晶層中の液晶性化合物(特に、棒状液晶性化合物が好ましい)が実質的に面内に水平に配向しており、電圧印加によって液晶性化合物の配向方向を変えることでスイッチングすることが特徴である。具体的には、特開2004-365941号公報、特開2004-12731号公報、特開2004-215620号公報、特開2002-221726号公報、特開2002-55341号公報、特開2003-195333号公報に記載のものなどを参照できる。これらのモードは黒表示時に液晶性化合物が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶性化合物を基板の表面に対して平行配向させて、黒表示を実現する。
FFSモードは、IPSモードと同様に基板の表面に対して液晶性化合物が常に水平であるようにスイッチングするモードであり、基板の表面に対して水平方向の横電界を用いて液晶分子をスイッチングさせる。一般的に、FFSモードはベタ電極と層間絶縁膜とくし歯電極を有しており、電界方向がIPSとは異なる特徴を有している。
【0039】
液晶層に含まれる液晶性化合物は、白表示時および黒表示時のいずれも、基板の表面に対して水平に配向していることが理想的であるが、低傾斜角で傾斜配向していてもよい。一般に、液晶セルの基板を布でラビングし、液晶層を配向する場合、液晶性化合物は基板界面に対し低傾斜角で傾斜配向しており、UV(Ultraviolet)光をガラス基板に照射することにより液晶層を配向する場合(光配向)、液晶性化合物は水平に近い配向をする。黒表示時の斜め方向からの視認における、方位による色味変化を抑制する観点からは、光配向を用いることが好ましい。
【0040】
液晶セルの構成としては、少なくとも液晶層と、液晶層を挟むように第一基板および第二基板が配置されていればよく、他の部材が含まれていてもよい。
また、本発明においては、少なくとも一方の基板の表面上に電極が配置されており、酸化インジウムスズ(ITO)層からなる透明電極が配置されていることが好ましく、視認側の基板の表面に、ITO層からなる透明電極が配置されていることがより好ましい。基板の表面上に透明電極が配置されていると、液晶表示装置が静電気により誤動作することを防止することができるため、好ましい。
また、液晶セルには、カラーフィルタ層やTFT(Thin Film Transistor)層が含まれていてもよい。カラーフィルタ層やTFT層の位置は特に制限されず、2枚の基板のいずれかの表面に配置されることが一般的である。
【0041】
液晶セルは、黒表示時、すなわち、上記液晶セルに電圧が印加されていないときにおいて、実質的に1/4波長となる位相差、または3/4波長となる位相差を有することが好ましい。液晶セルが実質的に1/4波長または3/4波長となる位相差を有していると、バックライトユニットから出射された光を円偏光に変換することができる。
また、液晶セルが黒表示時において、実質的に1/4波長となる位相差、または3/4波長となる位相差を有するように、液晶層が、実質的に1/4波長となる位相差、または3/4波長となる位相差を有することが好ましい。液晶層が1/4波長となる位相差を有する場合には、黒表示の光漏れを低減する観点から、液晶層の波長550nmにおける位相差Δnd(550)と、1/4波長位相差層の波長550nmにおける位相差Re(550)との差異が10nm以下であることが好ましい。
【0042】
液晶セルの液晶層は、黒表示時、すなわち、上記液晶セルに電圧が印加されていないときにおいて、1/4波長位相差層の遅相軸の方位とのなす角が85°以上95°未満であることが好ましい。黒表示の光漏れを低減する観点からは、1/4波長位相差層の遅相軸の方位とのなす角は、88°以上93°未満であることがより好ましく、90°であることが最も好ましい。
【0043】
液晶セルの液晶層は、白表示時において、遅相軸の方位が1/4波長位相差層の遅相軸の方位とのなす角が、45°未満であることが好ましい。白表示の輝度を向上させる観点からは、30°未満であることが好ましく、0°であることが最も好ましい。
【0044】
〔光学補償層〕
本発明の液晶表示装置は、第一偏光子と1/4波長位相差層との間、または、液晶セルと第二偏光子との間に、光学補償層を有することが好ましい。光学補償層を有することにより、斜め方向からの視聴における色味変化や、コントラストの低下を低減でき、高い表示品位を得ることができるため、好ましい。光学補償層は1層または2層以上で構成されるが、本発明においては、1層又は2層で構成されることが好ましい。2層で構成される場合には、光学補償層は第一光学異方性層と第二光学異方性層の積層体である。
光学補償層の厚みは、液晶表示装置の薄型化の観点で、光学特性、機械物性、及び、製造適性を損ねない限りは薄いことが好ましく、具体的には、1~150μmが好ましく、1~70μmがより好ましく、1~30μmがさらに好ましい。
【0045】
光学補償層は、製造のしやすさ等の観点から、ポリマーフィルム、又は、液晶性組成物を用いて形成されるフィルムであることが好ましい。
ポリマーフィルムとしては、セルロースアシレート系フィルム、シクロオレフィン系ポリマーフィルム(シクロオレフィン系ポリマーを用いたポリマーフィルム)、又は、アクリル系ポリマーフィルムが好ましい。アクリル系ポリマーフィルムとしては、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、及び、グルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーを含むことが好ましい。
【0046】
また、液晶性組成物を用いて形成されるフィルムとしては、液晶性化合物が配向した状態で固定化したフィルムが好ましい。なかでも、重合性基を有する液晶性化合物を含む組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜中の液晶性化合物を配向させて、硬化処理を施して液晶性化合物の配向を固定化してなるフィルムがより好ましい。
液晶性化合物としては、棒状液晶性化合物及び円盤状液晶性化合物が挙げられ、配向状態を固定化するために重合性基を有していることが好ましい。
【0047】
光学補償層が液晶性組成物を用いて形成されるフィルムである場合には、光学補償層は配向膜を有していてもよい。配向膜は、一般的にはポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。利用されるポリマー材料は、ポリビニルアルコールまたはポリイミド、および、その誘導体が好ましい。特に、変性または未変性のポリビニルアルコールが好ましい。本発明に使用可能な配向膜については、WO01/88574A1号公報の43頁24行~49頁8行、特許第3907735号公報の段落[0071]~[0095]に記載の変性ポリビニルアルコール等を参照することができる。なお、前述の配向膜には、通常、公知のラビング処理が施される。
配向膜の厚さは、薄い方が好ましいが、光学補償層形成のための配向能の付与、および、フィルムの表面凹凸を緩和して均一な膜厚の光学補償層を形成するという観点からは、ある程度の厚みが必要となる。具体的には、配向膜の厚さは、0.01~10μmであることが好ましく、0.01~1μmであることがより好ましく、0.01~0.5μmであることがさらに好ましい。
また、配向膜として光配向膜を利用することも好ましい。光配向膜としては特に限定されないが、WO2005/096041号公報の段落[0024]~[0043]に記載のものやRolic echnologies社製の商品名LPP-JP265CPなどを好適に用いることができる。
【0048】
(光学補償層が1層からなる場合)
光学補償層が1層からなる場合、光学補償層の波長550nmにおける位相差Re1(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth1(550)が、以下の式(3)および式(4)を満たすことが好ましい。
式(3) : 200nm≦Re1(550)≦400nm
式(4) : -40nm≦Rth1(550)≦40nm
また、光学補償層は、以下の式(15)及び(16)を満たすことがより好ましい。
式(15) : 280nm≦Re1(550)≦320nm
式(16) : -20nm≦Rth1(550)≦20nm
【0049】
また、光学補償層が1層からなり、かつ、第一偏光子と1/4波長位相差層との間に配置される場合は、光学補償層の遅相軸の方位は、第一偏光子の吸収軸の方位と90°をなす方位であることが好ましい。
また、光学補償層が1層からなり、かつ液晶セルと第二偏光子との間に配置される場合は、光学補償層の遅相軸の方位は、第二偏光子の吸収軸の方位と90°をなす方位であることが好ましい。
【0050】
1層からなる光学補償層は、例えば、ポリマーフィルムを延伸することによって得られる。具体的には、例えば、芳香族アシル基で置換されたセルロースアシレートであるセルロースアセテートベンゾエートを用いたフィルムの場合、セルロースアセテートベンゾエートを溶媒に溶解させたドープを成膜用の金属支持体上に流延し、溶媒を乾燥してフィルムを得て、得られたフィルムを1.3~1.9倍程度の大きな延伸倍率で延伸してセルロース分子鎖を配向させる方法が挙げられる。
また、例えば、特開平5-157911号公報、特開2006-72309号公報、または特開2007-298960に記載のように、高分子フィルムの片面又は両面に収縮性フィルムを貼り合わせて、加熱延伸することにより作製することも可能である。
【0051】
光学補償層は、Re1およびRth1が逆分散の波長分散性を示すことも好ましい。
ここで、逆分散の波長分散性とは、Re1(λ)およびRth1(λ)が、波長λが大きくなるに従って大きな値となることを言う。
光学補償層が逆分散の波長分散性を有すると、斜め方向からの視聴における色味変化や、コントラストの低下をより低減できるため、好ましい。
【0052】
(光学補償層が2層からなる場合)
光学補償層が2層からなる場合、第一光学異方性層がnx>ny≧nzの2軸フィルム(B-プレート又は正のAプレート)、第二光学異方性層がnx≒ny<nzの[準]一軸性フィルム(正の[準]Cプレート)であることが好ましい。
具体的には、第一光学異方性層の波長550nmにおける位相差Re1(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth1(550)が、以下の式(5)および(6)を満たし、第二光学異方性層の波長550nmにおける位相差Re2(550)および波長550nmにおける厚み方向の位相差Rth2(550)が、以下の式(7)および(8)を満たすことが好ましい。
式(5) : 80nm≦Re1(550)≦200nm
式(6) : 20nm≦Rth1(550)≦150nm
式(7) : 0nm≦Re2(550)≦40nm
式(8) : -160nm≦Rth2(550)≦-40nm
また、第一光学異方性層が、以下の式(17)および式(18)を満たし、第二光学異方性層が、以下の式(19)および式(20)を満たすことがより好ましい。
式(17) : 100nm≦Re1(550)≦150nm
式(18) : 50nm≦Rth1(550)≦120nm
式(19) : 0nm≦Re2(550)≦20nm
式(20) : -140nm≦Rth2(550)≦-80nm
また、第一光学異方性層は、第二光学異方性層に対し、液晶セルの側に配置される。
【0053】
また、光学補償層が2層からなり、かつ、第一偏光子と1/4波長位相差層との間に配置される場合は、第一光学異方性層の遅相軸の方位は、第一偏光子の吸収軸の方位と平行であることが好ましい。
また、光学補償層が2層からなり、かつ液晶セルと第二偏光子との間に配置される場合は、第一光学異方性層の遅相軸の方位は、第二偏光子の吸収軸の方位と平行であることが好ましい。
【0054】
第一光学異方性層は、溶融成膜方式および溶液成膜方式等の適宜な方式で製造したポリマーフィルム(例えば、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、及び、ポリカーボネートフィルム)を、例えば、ロールの周速制御による縦延伸方式、テンターによる横延伸方式、および、二軸延伸方式等により、延伸処理することにより得られる。より具体的には、特開2005-338767号公報の記載を参照することができる。また、配向により2軸性を示す重合性基を有する液晶性化合物を含む液晶性組成物から形成されるポリマーを用いることもできる。また、液晶性化合物の配向状態を固定して所望の位相差を有する層を形成することも可能である。つまり、第一光学異方性層は、液晶性化合物が配向した状態で固定化したフィルムであることが好ましく、棒状液晶性化合物が基板面に対して水平方向に配向した状態で固定化したフィルムであることがより好ましい。
液晶性化合物としては、逆分散の波長分散性を示す液晶性化合物を用いることも好ましい。例えば、WO2017/043438号パンフレットに記載される逆分散の波長分散性を示す液晶性化合物が挙げられる。
第一光学異方性層の厚みは、1~80μmが好ましく、1~40μmがより好ましく、1~25μmが特に好ましい。
【0055】
第一光学異方性層は、正のAプレート(ポジティブAプレート)であることが好ましい。
【0056】
第二光学異方性層は、ポリマーフィルム(例えば、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、及び、ポリカーボネートフィルム)の面内レターデーションを発現させない様に成膜し、熱収縮フィルム等を用いて厚み(nz)方向に延伸する方法で得ることができる。
また、液晶性化合物の配向状態を固定して所望の位相差を有する層を形成することも可能である。つまり、第二光学異方性層は、液晶性化合物が配向した状態で固定化したフィルムであることが好ましく、棒状液晶性化合物が基板面に対して垂直方向に配向した状態で固定化したフィルムであることがより好ましい。
液晶性化合物としては、逆分散の波長分散性を示す液晶性化合物を用いることも好ましい。例えば、WO2017/043438号パンフレットに記載される逆分散の波長分散性を示す液晶性化合物が挙げられる。
第二光学異方性層の厚みは、1~80μmが好ましく、1~40μmがより好ましく、1~25μmがさらに好ましい。
【0057】
第二光学異方性層は、正のCプレート(ポジティブCプレート)であることが好ましい。
【0058】
〔位相差層の形成方法〕
1/4波長位相差層、および、光学補償層は、位相差層を有するフィルムを、偏光子または基板に接着して形成することができる。このとき、位相差層は偏光子または基板に接着層を介して接着されていてもよい。
また、位相差層を有するフィルムは、支持体に位相差層が積層された形態であってもよい。支持体を有することによってフィルムの取扱性が向上し、さらに、位相差層を偏光子または基板に接着した後、支持体を剥離して位相差層のみを転写することによって、偏光板または液晶セルを薄型化することができる。
【0059】
位相差層を基板上に転写する方法については特に制限されない。例えば、位相差層を有するフィルムを、ラミネータを用いて加熱及び/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着して、基板に貼り付けることができる。具体的には、特開平7-110575号公報、特開平11-77942号公報、特開2000-334836号公報、特開2002-148794号公報に記載のラミネータ及びラミネート方法が挙げられるが、低異物の観点で、特開平7-110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。その後、支持体は剥離してもよい。
【0060】
(その他の層)
位相差層を有するフィルムは、クッション層を有していてもよい。クッション層を有することによって、基板等に転写する際、相手基板側の凹凸を吸収し、凹凸追従性を付与することができる。クッション層は、支持体と位相差層の間に設置され、基板へ転写した後、剥離されるものであってもよいし、位相差層の上に設置され、基板に転写した後、基板と位相差層との間に残り、平坦化層としての機能を果たすものであってもよい。また、クッション層は、基板との接着層を兼ねていてもよい。
【0061】
クッション層は、熱可塑性樹脂層であることが好ましい。熱可塑性樹脂層に用いる成分としては、特開平5-72724号公報に記載されている有機高分子物質が好ましく、ヴイカーVicat法(具体的にはアメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質より選ばれることが特に好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル或いはそのケン化物の様なエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステル或いはそのケン化物、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニル及びそのケン化物の様な塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N-アルコキシメチル化ナイロン、N-ジメチルアミノ化ナイロンの様なポリアミド樹脂等の有機高分子が挙げられる。
【0062】
また、位相差層を有するフィルムは、位相差層やクッション層の成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることも好ましい。中間層としては、特開平5-72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜を用いることが好ましく、この場合、露光時感度がアップし、露光機の時間負荷が減り、生産性が向上する。酸素遮断膜としては、低い酸素透過性を示し、水又はアルカリ水溶液に分散又は溶解するものが好ましく、公知のものの中から適宜選択することができる。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの組み合わせである。
【0063】
また、位相差層を有するフィルムは、貯蔵の際の汚染や損傷から保護するために、薄い保護フィルムを設けることが好ましい。保護フィルムは支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、樹脂層から容易に分離されねばならない。保護フィルム材料としては例えばシリコン紙、ポリオレフィンもしくはポリテトラフルオロエチレンシートが適当である。
【実施例】
【0064】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、及び、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0065】
<IPSモード液晶セルの作製>
2枚のガラス基板の間に液晶層を有するIPSモード液晶セルを作製した。液晶セルを形成する際に、ガラス基板に対して特開2005-351924号公報の実施例11を参考に光配向処理を実施して配向層を形成し、液晶セル内の液晶性化合物を配向させた。液晶性化合物の基板面とのチルト角は0.1°であった。液晶層中の液晶性化合物のΔnは、波長550nmにおいて0.08625であり、基板の間隔(ギャップ;d)を調整することによりΔndを調整した。また、一方の基板には、液晶層側の表面に青色、緑色、および赤色のサブピクセルからなる画素を有するカラーフィルタ層を形成した。カラーフィルタ層の形成にあたっては、特開2010-44285号公報を参照した。さらに、同じ基板のカラーフィルタ層とは反対側の表面に、ITO(酸化インジウムスズ)を蒸着した。このようにして、液晶セル201、202、および203を作成した。
液晶セル201、202および203それぞれについて、電圧無印加時の実質的な位相差Δndを、AxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0066】
【0067】
<1/4波長位相差フィルムの作製>
(アルカリ鹸化処理セルロースアシレートフィルムの作成)
富士フイルム株式会社製のセルロースアセテートフィルム「Z-TAC」を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムのバンド面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを作製した。
【0068】
─────────────────────────────────
(アルカリ溶液の組成)
─────────────────────────────────
・水酸化カリウム 4.7質量部
・水 15.8質量部
・イソプロパノール 63.7質量部
・界面活性剤
SF-1:C14H29O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
・プロピレングリコール 14.8質量部
─────────────────────────────────
【0069】
(配向膜の形成)
上記のように鹸化処理したセルロースアシレートフィルムに、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥した。
【0070】
─────────────────────────────────
(配向膜塗布液の組成)
─────────────────────────────────
・下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
・水 371質量部
・メタノール 119質量部
・グルタルアルデヒド 0.5質量部
・光重合開始剤
(イルガキュアー2959、チバ・ジャパン製) 0.3質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0071】
【0072】
(円盤状液晶性化合物を含む1/4波長位相差層の形成)
上記作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向とラビングローラーの回転軸とのなす角が45°になるように調節した。
【0073】
下記の組成の円盤状液晶性化合物を含む塗布液Aを、上記作製した配向膜上にワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度(V)は36m/minとした。塗布液の溶媒の乾燥及び円盤状液晶性化合物の配向熟成のために、120℃の温風で90秒間加熱した。続いて、80℃にてUV照射を行い、液晶性化合物の配向を固定化した。液晶性化合物層の厚さが1.0μm~2.0μmになるように適宜調節し、1/4波長位相差フィルム141、および142を得た。
【0074】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(塗布液Aの組成)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記の円盤状液晶性化合物 91質量部
・下記アクリレートモノマー 5質量部
・光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
・増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
・下記のピリジニウム塩 0.5質量部
・下記のフッ素系ポリマー(FP1) 0.2質量部
・下記のフッ素系ポリマー(FP3) 0.1質量部
・メチルエチルケトン 189質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0075】
【0076】
アクリレートモノマー:
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製)
【0077】
【0078】
(棒状液晶性化合物を含む1/4波長位相差層の形成)
1/4波長位相差フィルム141および142と同様にして、下記棒状液晶性化合物を配向膜上に塗布し、液晶性化合物層の厚さが1.0μm~2.0μmになるように適宜調節し、1/4波長位相差フィルム143を得た。
【0079】
【0080】
(棒状液晶性化合物を含む1/4波長位相差層の転写用フィルムの作製)
特開2012-155308号公報の実施例3の記載を参考に、光配向膜用塗布液1を調製した。
【0081】
下記組成の液晶層形成用組成物1を調製した。
【0082】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(液晶層形成用組成物1の組成)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・液晶性化合物R2 42.00質量部
・液晶性化合物R3 42.00質量部
・重合性化合物B2 16.00質量部
・重合開始剤P3 0.50質量部
・界面活性剤S3 0.15質量部
・ハイソルブMTEM(東邦化学工業社製) 2.00質量部
・NKエステルA-200(新中村化学工業社製) 1.00質量部
・メチルエチルケトン 424.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
なお、下記液晶性化合物R2およびR3の構造式中、アクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、下記液晶性化合物R2およびR3は、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
富士フイルム株式会社製のセルロースアセテートフィルム「Z-TAC」の片側の面に、先に調製した光配向膜用塗布液1をバーコーターで塗布した。塗布後、120℃のホットプレート上で2分間乾燥して溶剤を除去し、塗膜を形成した。得られた塗膜を偏光紫外線照射(10mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向膜を形成した。
次いで、光配向膜上に、先に調製した液晶層形成用組成物1をバーコーターで塗布し、組成物層を形成した。形成した組成物層をホットプレート上で110℃まで加熱した後、60℃に冷却させて配向を安定化させた。その後、60℃に保ち、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm)で紫外線照射(500mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)によって配向を固定化し、厚さ2μmの1/4波長位相差層144を作製した。得られた位相差層144の位相差はRe1(550)=140nmであった。また、Re1(450)/Re1(550)は0.86、Re1(650)/Re1(550)は1.03であり、逆分散の波長分散性を有していた。また、得られた1/4波長位相差層144の厚み方向の位相差はRth1(550)=70nmであった。
【0089】
(クッション層用塗布液CU-1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、クッション層用塗布液CU-1として用いた。
───────────────────────────――――――
クッション層用塗布液組成(%)
───────────────────────────――――――
・メチルメタクリレート/2-エチルヘキシルアクリレート/
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合組成比(モル比)=55/30/10/5、
重量平均分子量=10万、Tg≒70℃)
5.89
・スチレン/アクリル酸共重合体
(共重合組成比(モル比)=65/35、
重量平均分子量=1万、Tg≒100℃)
13.74
・BPE-500(新中村化学工業(株)製) 9.20
・メガファックF-780-F
(大日本インキ化学工業(株)社製) 0.55
・メタノール 11.22
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 6.43
・メチルエチルケトン 52.97
───────────────────────────――――――
【0090】
(クッション層の形成)
上記1/4波長位相差層144の上に、上記クッション層用塗布液CU-1を、スリット状ノズルを用いて塗布、乾燥させた。このようにして、厚さ14.6μmのクッション層を形成し、1/4波長位相差層144の転写用フィルム145を作製した。
【0091】
作製した1/4波長位相差フィルム141、142、143、および1/4波長位相差層144の位相差ReおよびRthを、AxoScanで測定した。結果を表2に示す。これらの1/4波長位相差フィルムを、1/4波長位相差層として用いた。
【0092】
【0093】
<光学補償フィルム(1層構成)の作製>
特開2006-72309号公報の実施例1に示されるサンプルに対して、膜厚調整を行い、光学補償フィルム501を作製した。
光学補償フィルム501の位相差をAxoScanで測定した結果、Re1(550)=230nm、Rth1(550)=0nm、Re1(450)/Re1(550)=1.00、Re1(550)/Re1(650)=1.00であった。
光学補償フィルム501を、1層構成の光学補償層として用いた。
【0094】
<光学補償フィルム(2層構成)の作製>
上記の1/4波長位相差層144を、第一光学異方性層として用いた。
【0095】
上記の第一光学異方性層の塗布側の面を放電量150W・min/m2でコロナ処理を行い、以下の液晶層形成用組成物2を用いて、上記の第一光学異方性層と同様の手順で、第一光学異方性層上に第二光学異方性層を作製し、光学補償フィルム51を得た。第二光学異方性層の厚みは、厚み方向の位相差がRth2(550)=-110nmとなるように調整された。また、第二光学異方性層のRth2(450)/Rth2(550)は0.95であり、逆分散の波長分散性を有していた。また、第二光学異方性層の面内位相差は、Re2(550)=0.1nmであった。
【0096】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(液晶層形成用組成物2の組成)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記液晶性化合物R1 50.0質量部
・下記液晶性化合物R2 33.3質量部
・下記液晶性化合物R3 16.7質量部
・下記化合物B1 1.5質量部
・下記単量体K1 4.0質量部
・下記重合開始剤P1 5.0質量部
・下記重合開始剤P2 2.0質量部
・下記界面活性剤S1 0.4質量部
・下記界面活性剤S2 0.5質量部
・アセトン 200.0質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 50.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0097】
・液晶性化合物R1
下記液晶性化合物(RA)(RB)(RC)の83:15:2(質量比)の混合物
【化10】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
・単量体K1:A-TMMT(新中村化学工業株式会社)
【0102】
【0103】
【0104】
・界面活性剤S1(Mw:15000,下記式中の数値は質量%)
【化16】
【0105】
・界面活性剤S2(重量平均分子量:11,200)
【化17】
【0106】
上記のようにして作製した光学補償フィルム502を、2層構成の光学補償層として用いた。
【0107】
<反射防止層の作製>
富士フイルム株式会社製のセルロースアセテートフィルム「TD80U」を基材とし、特開2008-262187号公報を参照して、表面に3層構成の反射防止層を有する反射防止層601を作製した。反射防止層601の表面反射率は、0.5%以下であった。
【0108】
[実施例1]
反射防止層601を、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に55℃で3分間浸漬した。次に、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。さらに、再度、室温の水洗浴槽中で洗浄した後、100℃の温風で乾燥し、鹸化処理を行った。
上記の手順で鹸化処理を行った反射防止層601と、ポリビニルアルコール系偏光子、および1/4波長位相差フィルム141を、偏光子の吸収軸と1/4波長位相差フィルム141の遅相軸が45°の角度をなすように、接着剤を用いて貼り合わせた。このとき、接着剤はPVA((株)クラレ製、PVA-117H)3%水溶液を用いた。こうして、視認側に使用する偏光板101を作製した。
また、富士フイルム株式会社製のセルロースアセテートフィルム「TD80U」を、上記と同様の手順で鹸化処理し、上記と同様の手順でポリビニルアルコール系偏光子と貼り合わせた。このとき、偏光子のTD80Uと反対側の面には、保護層を配置しなかった。こうして、背面側に使用する偏光板102を作製した。
液晶セル201の両面に、上記作製した偏光板101および102を、総研科学社製の粘着剤シートSK2057を用いて貼り合わせた。このとき、偏光板101は、反射防止層601の側が視認側の最表面となるようにし、1/4波長位相差フィルム141の側が液晶セル201のITOに接するように配置した。また、偏光子102は、TD80Uの側が外側になるように配置した。
また、偏光板101と偏光板102の偏光子の吸収軸が、90°の角をなすように配置し、かつ、1/4波長位相差フィルム141の遅相軸と、液晶セル201の電圧無印加時の実質的な遅相軸が、90°の角をなすように配置した。すなわち、液晶セル201の電圧無印加時の実質的な遅相軸と、偏光子102の吸収軸は、45°の角をなしていた。
次に、アップル社製のディスプレイ一体型コンピュータiMacのディスプレイを分解し、取り出したバックライトの上に、作製した液晶セルを、偏光板101の側が視認側となるように設置した。このようにして、実施例1の液晶表示装置を作製した。
【0109】
[実施例2~7および比較例]
実施例2~7および比較例の液晶表示装置を、表3に示す構成で、実施例1と同様にして作製した。
ただし、光学補償フィルム501を偏光子と貼り合わせる際には、光学補償フィルム501の遅相軸と、偏光子の吸収軸が、90°の角をなすように配置した。また、光学補償フィルム502を偏光子と貼り合わせる際には、光学補償フィルム502の遅相軸と、偏光子の吸収軸が平行となるようにし、第二光学異方性層の側が偏光子に接するように接着した後、光学補償フィルム502の支持体として用いたZ-TACを剥離した。
また、光学補償フィルムと、1/4波長位相差フィルムとを貼り合わせる際には、総研科学社製の粘着剤シートSK2057を使用した。
このようにして、実施例2~7および比較例の液晶表示装置を作製した。
【0110】
[実施例8]
1/4波長位相差層144の転写用フィルム145を、液晶セル201に視認側の面と重ね合わせ、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(LamicII型))を用いて、線圧100N/cm、温度130℃、搬送速度2.2m/分の条件下で貼り合わせた。その後、転写用フィルム145の支持体のみを剥離し、除去した。このようにして、液晶セル201に視認側に1/4波長位相差層144を転写した。このとき、1/4波長位相差層144の遅相軸と、液晶セル201の電圧無印加時の実質的な遅相軸が、90°の角をなすように配置した。
その他の工程は実施例1と同様にして、表3に示す構成で実施例8の液晶表示装置を作製した。
【0111】
<液晶表示装置の評価>
(外光反射率の評価)
作製した実施例および比較例の液晶表示装置のバックライトを消灯し、コニカミノルタジャパン株式会社製の分光測色計「CM-700d」を用いて、外光反射率を測定した。波長550nmにおいて測定されたSCI値から、波長550nmにおいて測定されたSCEの値を減じ、得られた値を、波長550nmにおける外光反射率とした。
外光反射率は、1.0%以下であるとき、強い外光下に相当し得る照度5万ルクスの外光下においても、表示画像が良好な視認性を有していた。
【0112】
(暗室における正面コントラストの評価)
作製した実施例および比較例の液晶表示装置を暗室に設置し、電圧を印加しない状態(すなわち、黒表示の状態)でバックライトを点灯させた。この状態における液晶表示装置の光漏れの輝度を、株式会社トプコンテクノハウス製分光輝度計SR-UL2を用いて測定した。このとき、分光輝度計は、液晶セルを垂直に見込むように設置した。
次に、液晶表示装置に電圧を印加して白表示の状態とし、上記と同様に、輝度を分光輝度計SR-UL2を用いて測定した。
得られた白表示の輝度を、黒表示の輝度で除して、正面コントラストの値を算出した。
正面コントラストは、300以上であるとき、暗室において高い表示品位を有していた。
【0113】
(暗室における視野角コントラストの評価)
作製した実施例および比較例の液晶表示装置を暗室に設置し、上述と同様にして、分光輝度計SR-UL2を用いてコントラストを測定した。ただし、分光輝度計は、液晶セルの垂直方向からの角度が60°であり、方位角が視認側偏光子の吸収軸の方位に対し0°~180°の範囲で、15°キザミで変化するように位置および角度を調整しながら、測定した。測定したすべての方位角において、コントラストが最小となる方位角を決定し、そのときのコントラストを、視野角コントラストとした。
視野角コントラストは、10以上であるとき、暗室において良好な視野角特性となり、50以上であるとき、暗室において非常に良好な視野角特性となった。
【0114】
実施例および比較例の評価結果を表3に示す。
【0115】
【0116】
表3に示すように、本発明の液晶表示装置は、外光反射を抑制し、強い外光下における視認性を維持するとともに、暗室など外光のない視聴環境においても、黒表示の光漏れを抑制し、高い表示品位をしていることが確認された。
【符号の説明】
【0117】
10 第一偏光板
11 第一偏光板の外側保護層
12 第一偏光子
13 第一偏光板の内側保護層
14 1/4波長位相差層
20 液晶セル
21 透明電極
22 液晶セルの第一基板
23 液晶層
24 液晶セルの第二基板
30 第二偏光板
31 第二偏光板の内側保護層
32 第二偏光子
33 第二偏光板の外側保護層
40 バックライトユニット
100 液晶表示装置
120 第一偏光子の吸収軸
140 1/4波長位相差層の遅相軸
200 液晶表示装置
230 液晶層の遅相軸
300 液晶表示装置
320 第二偏光子の吸収軸
700 バックライトユニットから出射した光
800 外光