(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】ろ過装置、精製装置、薬液の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 61/14 20060101AFI20220722BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20220722BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20220722BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20220722BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20220722BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20220722BHJP
B01D 71/28 20060101ALI20220722BHJP
B01D 71/32 20060101ALI20220722BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20220722BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20220722BHJP
B01D 71/82 20060101ALI20220722BHJP
B01D 65/02 20060101ALI20220722BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20220722BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
B01D61/14 500
B01D61/58
B01D69/00
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/26
B01D71/28
B01D71/32
B01D71/56
B01D71/68
B01D71/82
B01D71/82 500
B01D65/02
B01J20/22 Z
B01J20/28 Z
(21)【出願番号】P 2020507463
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2019007325
(87)【国際公開番号】W WO2019181387
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2018055014
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】大松 禎
(72)【発明者】
【氏名】上村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】清水 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智美
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/175856(WO,A1)
【文献】特開2003-251120(JP,A)
【文献】特開平09-034121(JP,A)
【文献】特開2011-131208(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170428(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
B01J 20/22
B01J 20/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入部と、流出部と、
フィルタAと、前記フィルタAとは異なる少なくとも1つのフィルタBと、前記フィルタA及び前記フィルタBが直列に配置された前記流入部から前記流出部にいたる流通路とを有する、被精製液を精製して薬液を得るためのろ過装置であって、
前記フィルタAは、ポリフルオロカーボン製の多孔質基材と、前記多孔質基材を覆うように配置された吸着性基を有する樹脂を含有する被覆層と、を有し、
前記吸着性基が、エーテル基、水酸基、チオエーテル基、及び、チオール基からなる群より選択される少なくとも1種を有する基であり、
前記多孔質基材の孔内部の表面に前記被覆層が形成されている、ろ過装置。
【請求項2】
流入部と、流出部と、
フィルタAと、前記フィルタAとは異なる少なくとも1つのフィルタBと、前記フィルタA及び前記フィルタBが直列に配置された前記流入部から前記流出部にいたる流通路とを有する、被精製液を精製して薬液を得るためのろ過装置であって、
前記フィルタAは、ポリフルオロカーボン製の多孔質基材と、前記多孔質基材を覆うように配置された吸着性基を有する樹脂を含有する被覆層と、を有し、
前記吸着性基が、エーテル基、水酸基、チオエーテル基、及び、チオール基からなる群より選択される少なくとも1種を有する基である、ろ過装置。
【請求項3】
前記フィルタBは、前記流通路上において前記フィルタAの上流側に配置されたフィルタBUを少なくとも1つ含む、請求項1
又は2に記載のろ過装置。
【請求項4】
少なくとも1つの前記フィルタBUは、前記フィルタAより大きな孔径を有する請求項
3に記載のろ過装置。
【請求項5】
少なくとも1つの前記フィルタBUは、20nm以上の孔径を有する請求項
3又は4に記載のろ過装置。
【請求項6】
少なくとも1つの前記フィルタBUは、イオン交換基を有する樹脂を含有する、請求項
3~5のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項7】
前記イオン交換基が、酸基、塩基基、アミド基、及び、イミド基からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項
6に記載のろ過装置。
【請求項8】
少なくとも1つの前記フィルタBUは、前記フィルタAと材料が異なる、請求項
3~7のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項9】
前記フィルタA、及び、前記フィルタBUからなる群より選択される少なくとも1種のフィルタからなる第1基準フィルタの下流側から、前記第1基準フィルタの上流側へと、前記被精製液を返送可能な返送流通路を有する、請求項
3~8のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項10】
前記フィルタBは、前記流通路上において前記フィルタAの下流側に配置されたフィルタBDを少なくとも含む、請求項
1~9のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項11】
少なくとも1つの前記フィルタBDが、前記フィルタAより小さな孔径を有する、請求項
10に記載のろ過装置。
【請求項12】
少なくとも1つの前記フィルタBDが、20nm以下の孔径を有する、請求項
10又は11に記載のろ過装置。
【請求項13】
前記フィルタBDが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフルオロカーボン、ポリスチレン、ポリスルホン、及び、ポリエーテルスルホンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項
10~12のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項14】
前記フィルタBDが、親水性基を有する第2の樹脂を含有する請求項
10~13のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項15】
前記フィルタA、及び、前記フィルタBDからなる群より選択される少なくとも1種のフィルタからなる第2基準フィルタの下流側から、前記第2基準フィルタの上流側へと、前記被精製液を返送可能な返送流通路を有する、請求項
10~14のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項16】
前記流通路上に、前記フィルタAと直列に配置されたタンクを更に有する請求項
1~15のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項17】
前記流通路において、前記タンクの上流側に、
前記タンクと直列に配置された、孔径20nm以上のフィルタCを更に有する請求項
16に記載のろ過装置。
【請求項18】
前記薬液が、現像液、リンス液、ウェハ洗浄液、ライン洗浄液、プリウェット液、ウェハリンス液、レジスト液、下層膜形成用液、上層膜形成用液、及び、ハードコート形成用液からなる群より選択される少なくとも1種であるか、又は、
水性現像液、水性リンス液、剥離液、リムーバー、エッチング液、酸性洗浄液、及び、リン酸、リン酸-過酸化水素水混合液からなる群より選択される少なくとも1種である請求項
1~17のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項19】
前記薬液のpHが0~9である、請求項
1~18のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項20】
請求項
1~19のいずれか一項に記載のろ過装置と、
前記ろ過装置の前記流入部に接続された少なくとも1つの蒸留器と、
を有する精製装置。
【請求項21】
前記少なくとも1つの蒸留器は、直列に接続された複数の蒸留器を含む、請求項
20に記載の精製装置。
【請求項22】
被精製液を精製して薬液を得る、薬液の製造方法であって、請求項
1~19のいずれか一項に記載のろ過装置を用いて、被精製液を精製して薬液を得る、ろ過工程を有する、薬液の製造方法。
【請求項23】
前記ろ過工程の前に、前記フィルタA、及び、前記フィルタBを洗浄するフィルタ洗浄工程を更に有する、請求項
22に記載の薬液の製造方法。
【請求項24】
前記ろ過工程の前に、前記ろ過装置の接液部を洗浄する装置洗浄工程を更に有する、請求項
22又は23に記載の薬液の製造方法。
【請求項25】
被精製液を精製して薬液を得る、薬液の製造方法であって、
前記被精製液を、
ポリフルオロカーボン製の多孔質基材と、前記多孔質基材を覆うように配置された吸着性基を有する樹脂を含有する被覆層を含み、前記多孔質基材の孔内部の表面に前記被覆層が形成されているフィルタA、及び、
前記フィルタAとは異なるフィルタB、を用いてろ過して薬液を得る工程を有
し、
前記吸着性基が、エーテル基、水酸基、チオエーテル基、及び、チオール基からなる群より選択される少なくとも1種を有する基である、薬液の製造方法。
【請求項26】
被精製液を精製して薬液を得る、薬液の製造方法であって、
前記被精製液を、
ポリフルオロカーボン製の多孔質基材と、前記多孔質基材を覆うように配置された吸着性基を有する樹脂を含有する被覆層を含むフィルタA、及び、
前記フィルタAとは異なるフィルタB、を用いてろ過して薬液を得る工程を有し、
前記吸着性基が、エーテル基、水酸基、チオエーテル基、及び、チオール基からなる群より選択される少なくとも1種を有する基である、薬液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過装置、精製装置、及び、薬液の製造方法に関する。
【0002】
フォトリソグラフィを含む配線形成工程による半導体デバイスの製造の際、プリウェット液、レジスト液(レジスト樹脂組成物)、現像液、リンス液、剥離液、化学機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)スラリー、及び、CMP後の洗浄液等として、又は、それらの希釈液として、水及び/又は有機溶剤を含有する薬液が用いられている。
近年、フォトリソグラフィ技術の進歩によりパターンの微細化が進んでいる。
このような配線形成工程に用いられる薬液には、更なる欠陥抑制性能の向上が求められている。このような薬液は、一般に、薬液に求められる成分を主成分として含有する被精製液を、フィルタ等を用いて精製して不純物等を除くことにより得られると考えられている。
【0003】
このような薬液の精製に使用できるとされるフィルタとして、特許文献1~5には、多孔質フルオロポリマー支持体、及び、所定の被覆を含む、親水性複合多孔質膜が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-2273号公報
【文献】特開2016-194040号公報
【文献】特開2016-194037号公報
【文献】特開2016-029146号公報
【文献】特開2016-196625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上記フィルタを用いて被精製液を精製して薬液を得て、上記薬液に係る欠陥抑制性能を評価したところ、十分な欠陥抑制性能が得られないことがあることを知見した。そこで、本発明は、優れた欠陥抑制性能を有する薬液を製造可能なろ過装置の提供を課題とする。また、本発明は、精製装置、及び、薬液の製造方法の提供も課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題が達成されることを見出した。
【0007】
[1] 流入部と、流出部と、フィルタAと、フィルタAとは異なる少なくとも1つのフィルタBと、フィルタA及びフィルタBが直列に配置された流入部から流出部にいたる流通路とを有する、被精製液を精製して薬液を得るためのろ過装置であって、フィルタAは、ポリフルオロカーボン製の多孔質基材と、多孔質基材を覆うように配置された吸着性基を有する樹脂を含有する被覆層と、を有するろ過装置。
[2] 吸着性基が、エーテル基、水酸基、チオエーテル基、チオール基、4級アンモニウム基、カルボン酸基、及び、スルホン酸基からなる群より選択される少なくとも1種を有する基である、[1]に記載のろ過装置。
[3] フィルタBは、流通路上においてフィルタAの上流側に配置されたフィルタBUを少なくとも1つ含む、[1]又は[2]に記載のろ過装置。
[4] 少なくとも1つのフィルタBUは、フィルタAより大きな孔径を有する[3]に記載のろ過装置。
[5] 少なくとも1つのフィルタBUは、20nm以上の孔径を有する[3]又は[4]に記載のろ過装置。
[6] 少なくとも1つのフィルタBUは、イオン交換基を有する樹脂を含有する、[3]~[5]のいずれかに記載のろ過装置。
[7] イオン交換基が、酸基、塩基基、アミド基、及び、イミド基からなる群より選択される少なくとも1種である、[6]に記載のろ過装置。
[8] 少なくとも1つのフィルタBUは、フィルタAと材料が異なる、[3]~[7]のいずれかに記載のろ過装置。
[9] フィルタA、及び、フィルタBUからなる群より選択される少なくとも1種のフィルタからなる第1基準フィルタの下流側から、第1基準フィルタの上流側へと、被精製液を返送可能な返送流通路を有する、[3]~[8]のいずれかに記載のろ過装置。
[10] フィルタBは、流通路上においてフィルタAの下流側に配置されたフィルタBDを少なくとも含む、[1]~[9]のいずれかに記載のろ過装置。
[11] 少なくとも1つのフィルタBDが、フィルタAより小さな孔径を有する、[10]に記載のろ過装置。
[12] 少なくとも1つのフィルタBDが、20nm以下の孔径を有する、[10]又は[11]に記載のろ過装置。
[13] フィルタBDが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフルオロカーボン、ポリスチレン、ポリスルホン、及び、ポリエーテルスルホンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、[10]~[12]のいずれかに記載のろ過装置。
[14] フィルタBDが、親水性基を有する第2の樹脂を含有する[10]~[13]のいずれかに記載のろ過装置。
[15] フィルタA、及び、フィルタBDからなる群より選択される少なくとも1種のフィルタからなる第2基準フィルタの下流側から、第2基準フィルタの上流側へと、被精製液を返送可能な返送流通路を有する、[10]~[14]のいずれかに記載のろ過装置。
[16] 流通路上に、フィルタAと直列に配置されたタンクを更に有する[1]~[15]のいずれかに記載のろ過装置。
[17] 流通路において、タンクの上流側に、タンクと直列に配置された、孔径20nm以上のフィルタCを更に有する[16]に記載のろ過装置。
[18] 薬液が、現像液、リンス液、ウェハ洗浄液、ライン洗浄液、プリウェット液、ウェハリンス液、レジスト液、下層膜形成用液、上層膜形成用液、及び、ハードコート形成用液からなる群より選択される少なくとも1種であるか、又は、水性現像液、水性リンス液、剥離液、リムーバー、エッチング液、酸性洗浄液、及び、リン酸、リン酸-過酸化水素水混合液からなる群より選択される少なくとも1種である[1]~[17]のいずれかに記載のろ過装置。
[19] 薬液のpHが0~9である、[1]~[18]のいずれかに記載のろ過装置。
[20] [1]~[19]のいずれかに記載のろ過装置と、ろ過装置の流入部に接続された少なくとも1つの蒸留器と、を有する精製装置。
[21] 少なくとも1つの蒸留器は、直列に接続された複数の蒸留器を含む、[20]に記載の精製装置。
[22] 被精製液を精製して薬液を得る、薬液の製造方法であって、[1]~[19]のいずれかに記載のろ過装置を用いて、被精製液を精製して薬液を得る、ろ過工程を有する、薬液の製造方法。
[23] ろ過工程の前に、フィルタA、及び、フィルタBを洗浄するフィルタ洗浄工程を更に有する、[22]に記載の薬液の製造方法。
[24] ろ過工程の前に、ろ過装置の接液部を洗浄する装置洗浄工程を更に有する、[22]又は[23]に記載の薬液の製造方法。
[25] 被精製液を精製して薬液を得る、薬液の製造方法であって、被精製液を、ポリフルオロカーボン製の多孔質基材と、多孔質基材を覆うように配置された吸着性基を有する樹脂を含有する被覆層を含むフィルタA、及び、フィルタAとは異なるフィルタB、を用いてろ過して薬液を得る工程を有する、薬液の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた欠陥抑制性能を有する薬液を製造可能なろ過装置を提供できる。また、本発明は、精製装置、及び、薬液の製造方法も提供できる。
【0009】
なお、本明細書において、薬液の「欠陥抑制性能」は、実施例に記載した方法により評価される薬液の性能を意味する。半導体基板の製造に用いられる薬液には、薬液の種類及び役割に応じたそれぞれの「欠陥抑制性能」が求められる。
本明細書においては、プリウェット液、現像液、及び、リンス液等のレジスト膜の形成の際に用いられる薬液については、後述する実施例における[試験例1]に記載した残渣欠陥をリソグラフィープロセスにおける欠陥の代表的な指標値のひとつとして捉え、残渣欠陥抑制性能を「欠陥抑制性能」とする。また、樹脂を含有し、レジスト膜の形成に用いられるレジスト樹脂組成物については、後述する実施例における[試験例3]に記載したブリッジ欠陥をレジスト樹脂組成物に由来するリソグラフィープロセスにおける欠陥の代表的な指標値のひとつとして捉え、ブリッジ欠陥抑制性能を「欠陥抑制性能」とする。また、エッチング液、及び、レジスト剥離液等として用いられる薬液については、後述する実施例における[試験例2]に記載したパーティクル欠陥を薬液由来の欠陥の代表的な指標値のひとつとして捉え、パーティクル欠陥抑制性能を「欠陥抑制性能」とする。
以下、単に「欠陥抑制性能」という場合、薬液の種類に応じたそれぞれの欠陥抑制性能(残渣欠陥抑制性能、ブリッジ欠陥抑制性能、又は、パーティクル欠陥抑制性能)を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係るろ過装置の変形例を表す模式図である。
【
図4】本発明の第三実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図5】本発明の第三実施形態に係るろ過装置の変形例を表す模式図である。
【
図6】本発明の第四実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図7】本発明の第五実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図8】本発明の第五実施形態に係るろ過装置の変形例を表す模式図である。
【
図9】本発明の第六実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図10】本発明の第六実施形態に係るろ過装置の変形例を表す模式図である。
【
図11】蒸留器で予め精製された蒸留済み被精製液を使用して薬液を製造する場合の各装置の関係を表す模式図である。
【
図12】本発明の第一実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図13】本発明の第二実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図17】本発明の実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図18】本発明の実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図19】本発明の実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図20】本発明の実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図21】本発明の実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図22】本発明の実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図23】本発明の実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図24】従来技術に係る精製装置を表す模式図である。
【
図25】従来技術に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図26】本発明の実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図27】本発明の実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図28】本発明の実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図29】本発明の実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図30】本発明の実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図31】本発明の実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[ろ過装置]
本発明の実施形態に係るろ過装置は、流入部と、流出部と、フィルタAと、フィルタAとは異なる少なくとも1つのフィルタBと、フィルタA及びフィルタBが直列に配置された流入部から流出部にいたる流通路(被精製液の流れる経路)とを有するろ過装置であって、(言い換えれば、流入部と流出部との間に、フィルタAと上記フィルタAとは異なる少なくとも1つのフィルタBとが直列に配置され、流入部から流出部にいたる流通路を有するろ過装置であって、)フィルタAは、ポリフルオロカーボン製の多孔質基材と、上記基材の少なくとも一部を覆うように配置された吸着性基を有する樹脂を含有する被覆層と、を有するろ過装置である。
【0013】
一般に、薬液の欠陥抑制性能に関係する薬液中の不純物としては、例えば、ゲル状の有機化合物(特に高分子化合物)成分、無機微粒子、及び、無機イオン等が想定される。
これらのうち、薬液中の固形分となり得るゲル状の高分子化合物、又は、無機微粒子は、フィルタが有するふるい効果により除去されやすく、結果として、得られる薬液の欠陥抑制性能が向上するものと想定される。
一方、粒子以外の無機成分、及び、イオン性の成分は、フィルタが有する吸着機能(イオン相互作用による吸着、及び、親疎水性の相互作用による吸着等)により除去されやすく、結果として、得られる薬液の欠陥抑制性能が向上するものと想定される。
【0014】
ふるい効果を有するフィルタと吸着効果のあるフィルタとをろ過装置の流通路上に直列に配置すると、それぞれのフィルタを単独で使用した場合に得られる薬液が有するよりも、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られることが本発明者らによって初めて知見された。本発明者らは、このような結果が得られたメカニズムを以下のように推測している。
【0015】
本発明者らの検討によれば、単独では欠陥源とはならないような微小ゲル(有機化合物を含有する)と、無機微粒子及び/又は無機イオンとが相互作用したり、単独では欠陥源とならない微小無機微粒子及びトレースメタル等とゲル状の有機化合物とが相互作用したり、及び、微小ゲルと微小無機微粒子及びトレースメタル等とが相互作用することによって、欠陥が生ずる場合があることが明らかとなっている。
特に、微小ゲルは、薬液中では溶媒和の影響で分子ふるい効果によるろ過では充分に除去しきれず、薬液をウェハ上に塗布した後、乾燥させる際に溶媒和の効果が低減することでゲルを形成するため、欠陥の発生要因の1つとなるものと想定される。
【0016】
このような複合的な欠陥源に対しては、相互作用する原因成分それぞれの除去が効果的であり、微小ゲル成分、及び、微小ゲル成分と相互作用しうる無機の超微粒子成分、及び、無機イオン成分を、ふるい効果および吸着効果により除去することで、欠陥のさらなる低減に繋げることができると想定される。
【0017】
本実施形態に係るろ過装置は、吸着性基を有する樹脂により被覆された多孔質ポリフルオロカーボン(例えば、ポリテトラフルオロエチレン:PTFE膜)によるふるい効果と、更に組み合わせるフィルタによるイオン源、及び/又は、無機微粒子の除去効果とを有する。これらの組み合わせによる相互作用によって、欠陥を生じやすくなる原因となる物質を被精製液中から効率的に除去することができ、結果として、薬液中の欠陥低減効果をより向上させることができるものと推測される。
以下では、上記ろ過装置について、図面を用いて説明する。なお、本発明の実施形態に係るろ過装置はフィルタAとフィルタBとが流通路上に直列に配置されているため、被精製液は、フィルタA及びフィルタB(又は、フィルタB及びフィルタA)によって順次ろ過される。以下、本発明の実施形態に係るろ過装置について説明するが、以下の説明では、フィルタに導入した被精製液の全量をフィルタでろ過する、全量ろ過方式(デッドエンド方式)のろ過装置を例示するが、本発明の実施形態に係るろ過装置としては上記に制限されず、導入した被精製液を精製済み被精製液と濃縮液とに分離する(更に濃縮液を再度被精製液としてフィルタに導入する場合もある)クロスフロー方式のろ過装置であってもよく、これらを組み合わせた方式であってもよい。
【0018】
〔第一実施形態〕
図1は、本発明の第一実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
ろ過装置100は、流入部101及び流出部102の間に、フィルタAであるフィルタ103及び上記フィルタ103とは異なるフィルタ104(フィルタBUに該当する)が配管105を介して直列に配置されたろ過装置である。
流入部101、フィルタ104、配管105、フィルタ103、及び、流出部102は、それぞれの内部に被精製液を流通できるよう構成されており、上記部材が連結されて、流通路S1(被精製液が流れる経路)が形成されている。
【0019】
流入部101、及び、流出部102としては、ろ過装置に被精製液を導入し、及び、排出できればその形態としては特に制限されないが、典型的には、流入口と流出口とを有する中空円筒状の配管(流入部、及び、流出部)等が挙げられる。以下流出部と流入部とがそれぞれ配管である形態を例に説明する。
流入部101、配管105、及び、流出部102の形態としては特に制限されないが、典型的には、内部に被精製液を流通可能に形成された中空円筒状の形態が挙げられる。これらの材料としては特に制限されないが、接液部(被精製液をろ過するに際して、被精製液が接触する可能性のある部分)は、後述する耐腐食材料で形成されていることが好ましい。
【0020】
ろ過装置100の流入部101から導入された被精製液は、流通路S1に沿ってろ過装置100内を流通し、その間にフィルタ104(フィルタBU)、及び、フィルタ103(フィルタA)によって順次ろ過されて、流出部102からろ過装置100外へと排出される。なお被精製液の形態については後述する。
なお、ろ過装置100は、被精製液を流通させる目的で、流通路S1上に(例えば、流入部101、配管105、及び、流出部102等)に、図示しないポンプ、ダンパ、及び、弁等を有していてもよい。
【0021】
フィルタ103(フィルタA)及びフィルタ104(フィルタBU)の形態としては特に制限されない。フィルタA及びフィルタBの形態としては、例えば、平面状、プリーツ状、らせん状、及び、中空円筒状等が挙げられる。なかでも取り扱い性により優れる点で、典型的には、被精製液が透過可能な材料で形成された、及び/又は、被精製液が透過可能な構造である、芯材と、上記心材に巻き回される形で芯材上に配置されたフィルタとを有するカートリッジフィルタの形態が好ましい。この場合、芯材の材料としては特に制限されないが、後述する耐腐食材料から形成されることが好ましい。
【0022】
フィルタの配置の方法としては特に制限されないが、典型的には、少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を含み、入口と出口との間に少なくとも1つの流通路が形成された、図示しないハウジング内に配置されることが好ましい。その場合、フィルタはハウジングの内の流通路を横切るように配置される。ハウジング内に形成された流通路は、流通路S1の一部をなし、被精製液は流通路S1を流通する際に、流通路S1を横切るように配置されたフィルタによってろ過される。
【0023】
ハウジングの材料としては特に制限されないが、被精製液と適合できるあらゆる不浸透性の熱可塑性材料を含めて任意の適切な硬い不浸透性の材料が挙げられる。例えば、ハウジングはステンレス鋼などの金属、又はポリマーから製作できる。ある実施形態において、ハウジングはポリアクリレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、又はポリカーボネート等のポリマーである。
また、より優れた本発明の効果を有するろ過装置が得られる点で、ハウジングの接液部の少なくとも一部、好ましくは接液部の表面積に対して90%、より好ましくは接液部の表面積に対して99%は、後述する耐腐食材料からなることが好ましい。なお、本明細書において接液部とは、被精製液が接触する可能性のある部分(但し、フィルタ自体を除く)を意味し、ハウジング等のユニットの内壁等を意味する。
【0024】
<フィルタA>
フィルタAはポリフルオロカーボン製の多孔質基材と、上記多孔質基材を覆うように配置された吸着性基を有する樹脂を含有する被覆層と、を有する。なお、多孔質基材の表面の全体が上記被覆層で覆われることが好ましいが、一部、被覆層で覆われていない領域があってもよい。なお、表面には多孔質基材の孔の表面も含まれる。
ポリフルオロカーボン製の多孔質基材としては特に制限されず、公知の多孔質基材を使用できる。
ポリフルオロカーボンは、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン-クロロトリフロオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、及び、ポリフッ化ビニル等が挙げられ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。フィルタAとしては、PTFE製の多孔質基材として市販されているもの等を適宜使用できる。
【0025】
フィルタAの孔径として特に制限されないが、一般に0.1~50nmが好ましく、0.1~20nmがより好ましい。
なお、本明細書において、孔径とは、イソプロパノール(IPA)又は、HFE-7200(「ノベック7200」、3M社製、ハイドロフロオロエーテル、C4F9OC2H5)のバブルポイントによって決定される孔径を意味する。
【0026】
上記フィルタAの製造方法としては特に制限されないが、典型的には、ポリフルオロカーボン(例えばPTFE)製の多孔質基材に、吸着性基を有する樹脂を含有する被覆層形成用組成物を用い、上記多孔質基材に被覆層形成用組成物を接触させて(例えば、塗布、及び/又は、噴霧)多孔質基材の表面(孔内部の表面も含む)に被覆層を形成する方法が好ましい。
【0027】
上記被覆層は、吸着性基を有する樹脂を含有する。樹脂としては特に制限されず、公知の樹脂が使用できる。吸着性基としては、特に制限されないが、エーテル基、水酸基、チオエーテル基、チオール基、4級アンモニウム基(4級アンモニウム塩基)、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、スルホニウム基、ジエステル基、及び、これらを有する基等が挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる点で、エーテル基、水酸基、チオエーテル基、チオール基、4級アンモニウム基、カルボン酸基、及び、スルホン酸基からなる群より選択される少なくとも1種を有する基が好ましい。なかでも、チオエーテル基を有し、更に、エーテル基、水酸基、チオール基、4級アンモニウム基、カルボン酸基、及び、スルホン酸基からなる群より選択される少なくとも1種を有する基が好ましい。
なお、樹脂は、吸着性基の1種を単独で有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0028】
吸着性基としては特に制限されないが、*-S-L(R1)m(R2)n-m-1で表される基がより好ましい。上記式中、Lは、n(nは2以上の整数である)価の連結基であり、R1は水酸基、チオール基、4級アンモニウム基、カルボン酸基、及び、スルホン酸基からなる群より選択される少なくとも1種の基であり、R2は水素原子又は1価の有機基を表す。また、*は結合位置を表し、mは、0以上、n-1以下の整数を表す。
【0029】
(フィルタAの第一実施形態)
フィルタAの第一実施形態としては、ポリフルオロカーボン(典型的には、ポリテトラフルオロエチレン、以下、ポリテトラフルオロエチレンとして説明する)製の多孔質基材と、上記多孔質基材の少なくとも一部を覆うように配置された、以下のコポリマー(I)、及び、コポリマー(II)からなる群より選択される少なくとも1種を含有する被覆層とを有するものが挙げられる。
【化1】
【0030】
式(I)又は(II)のコポリマーはランダムコポリマー又はブロックコポリマーであり、Rfはパーフルオロ置換基であり、Rhは吸着性基であり、Raはメチル基又はエチル基であり、m及びnは独立して10~1000が好ましく、Xはアルキル基であり、Yは反応性官能基であり、被覆層において、上記コポリマーはそれぞれ架橋結合されていてもよい。
【0031】
n及びmは、各繰り返し単位(以下「単位」ともいう。)の重合度を表し、それぞれ独立に、10~1000が好ましく、50~400がより好ましい。
【0032】
ブロックコポリマー中におけるモノマーブロックの含有量(質量基準)としては特に制限されないが、例えば、2種のポリマーブロックの含有量比が、99:1~50:50(いずれも質量%)とすることができ、好ましくは90:10~70:30、より好ましくは75:25~で、ブロックコポリマーにおいて存在することができる。
【0033】
コポリマーの分子量としては特に制限されないが、数平均分子量又は重量平均分子量(Mn又はMw)が、10000~1000000が好ましく、20000~200000がより好ましく、40000~100000が更に好ましい。
【0034】
Yの反応性置換基としては、アミノ基、ヒドロキシル基、アクリロイル基、及び、メタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、2種以上有していてもよい。
【0035】
Rfのパーフルオロ置換基としては、パーフルオロ置換アルキル基又はパーフルオロ置換アルキル鎖が好ましく、アルキル鎖は、分子鎖に1つ又は複数の酸素原子を有していてもよい。例えば、RfとしてはCpF2p+1-(CH2)q(OCH2)rが好ましく、このとき、式中、pは1~12、qは0~3、rは0~2である。より具体的には、Rfは式(I)についてC8F17CH2、C6F13(CH2)2OCH2、C4F9CH2、及び、CF3等が挙げられる。
また、Rfは式(II)について、例えば、CpF2p+1-CH2CH2、及び、CpF2p+1-CH2OCH2等が挙げられ、とり具体的には、C8F17CH2、及び、C6F13(CH2)2OCH2等が挙げられる。
また、式(II)について、RfはC8F17CH2CH2であってもよい。
【0036】
Rhの吸着性基としては、例えば、水酸基、オキシアルキレン基、塩素原子、アリルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルチオプロピルオキシ基、及び、これらを有する基等が挙げられ、水酸基、塩素原子、アリルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルチオプロピルオキシ基、又は、これらを有する基が好ましい。アルコキシ基、アルキルチオ基、及び、アルキルチオプロピルオキシ基のアルキル部分は、水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、4級アンモニウム基、アルキルスルホン基、及び/又は、複素環基で置換されていてもよい。
【0037】
式(II)のコポリマーにおいて、Raはメチル基であることが好ましい。
【0038】
また、Xはメチル基であることが好ましい。
【0039】
Yは、吸着性基であってもよく、また、例えばピペリジニル基、ピリジニウム基、ジメチルアミノ基、及び、ジエチルアミノ基等の3級アミノ基、又は、4級アンモニウム基が好ましい。
【0040】
式(I)のランダムコポリマーは、置換エポキシド混合物のカチオン開環重合を含む方法によって調製することができる。例えば、適切な置換基を有するエポキシドモノマーの混合物は、トリアルキルアルミニウム、並びにハロゲンアニオン及び対イオンである有機カチオンを含んだ開始剤塩を用いることによって重合することができる。対カチオンである有機カチオンを含んだ塩における有機カチオンは、好ましくは、ビス(トリアリールホスホラニリデン)アンモニウムイオン、ビス(トリアルキルホスホラニリデン)アンモニウムイオン、及びトリアリールアルキルホスホニウムイオンなどのアンモニウムイオン又はホスホニウムイオンであり、例えば米国特許出願公開第2009/0030175A1号に記載されている。トリアリールアルキルホスホニウムイオンの例として[MePPh
3]
+があり、Meはメチルである。したがって、各モノマー、パーフルオロアルキルエポキシモノマー及びt-ブチルグリシジルエーテル(TBGE)の混合物を以下で説明するように重合することができ、得られたコポリマーを、トリフルオロ酢酸などの酸とさらに反応させて、ペンダントt-ブチル基を取り除く。
【化2】
【0041】
式(I)のブロックコポリマーは、Rf置換基を有するエポキシドモノマーの逐次重合と、次いで、例えばアルキル基などの適切な置換基を有する他のエポキシドモノマーの開環重合とを含む方法によって調製することができる。したがって、例えば、第1のステップにおいて、Rf基で置換されたエポキシドである第1のモノマーのホモポリマーを生成することができ、TBGEなどの置換エポキシドを有する第2のモノマーを添加することができ、ブロックコポリマーを得るまで重合を続ける。
【0042】
式(II)のランダムコポリマーは、2位にRf置換基を有する1つのモノマーと、2位にRa置換基を有する他のモノマーである、2つの2-置換2-オキサゾリンモノマーの混合物のカチオン開環重合を含む方法によって調製することができる。
【0043】
以下に説明するように、式(II)のブロックコポリマーは、2-メチル-2-オキサゾリンなどの、Ra置換基を有するオキサゾリンモノマーの逐次カチオン開環重合と、次いでPF8Et-オキサゾリン(PF8EtはC
8F
17CH
2CH
2である)等のRf置換基を有する他のオキサゾリンモノマーのカチオン開環重合とを含む方法によって調製することができる。
【化3】
【0044】
また、式(II)のブロックコポリマーは、2位にRf置換基を有する2-オキサゾリンモノマーの逐次カチオン開環重合と、次いで2位にRa置換基を有する他の2-オキサゾリンモノマーのカチオン開環重合とを含む方法によって調製することができる。
【0045】
以下に説明するように、Rf置換基を有する2-オキサゾリンモノマーは、3-パーフルオロアルキル-プロピオン酸とエタノールアミンとの反応、又は3-パーフルオロアルキル-プロピオニトリルとエタノールアミンとの反応によって調製することができる。
【0046】
【0047】
モノマーの重合は、例えば、カチオン開環重合を行う際に一般に用いられる溶媒などを用いて行う。適切な溶媒の例として、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素、n-ペンタン、ヘキサン、及びヘプタンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及びトリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、並びにその混合物が挙げられる。
【0048】
モノマー濃度は、1~50質量%の範囲が好ましく、2~45質量%がより好ましく、3~40質量%が更に好ましい。
【0049】
重合温度は特に制限されず、例えば、-20~100℃が好ましく、20~100℃がより好ましい。
【0050】
重合反応の時間は特に制限されず、例えば、1分~100時間が好ましい。
【0051】
ポリマーは、適切な技術、例えば非溶媒を用いた沈殿又は適切にクエンチされた反応混合物の濃縮によって、単離することができる。
【0052】
コポリマーは、任意の既知の技術によって、分子量及び分子量分布について特性決定することができる。例えば、MALS(多角度光散乱検出器)-GPC(Gel Permeation Chromatography)技術を用いることができる。MALS-GPC技術は、移動相を用いて、高圧ポンプによって、ポリマー溶液を、固定相を充填したカラム群を通して溶出する。固定相により、ポリマー試料が分子鎖の大きさによって分離され、次いで3つの異なる検出器によってポリマーが検出される。直列の検出器を用いることができ、例えば、一列に並んだ、紫外線検出器(UV検出器)、続いて多角度レーザー光散乱検出器(MALS検出器)、続いて示差屈折率検出器(RI検出器)である。UV検出器によって、波長254nmでポリマーの光吸収が測定され、MALS検出器によって、移動相に相対的な、ポリマー鎖からの散乱光が測定される。
【0053】
また、当分野の技術者に既知である典型的な方法に基づいて、コポリマーは、ペンダントアリル部分を親水性チオール(例えば、チオグリセロール、メルカプト酢酸)とチオールエン反応させることによって、さらに改質することができる。
【0054】
また、European Polymer Journal vol.43(2007)4516に記載の、当分野の技術者に既知である典型的な方法に基づいて、コポリマーは、ペンダントクロロメチル部分を親水性チオール(例えば、チオグリセロール、メルカプト酢酸)と求核置換反応させることによって、さらに改質することができる。
【0055】
コポリマーは、Yで架橋結合可能な反応性官能基を含むように、さらに改質することができる。例えば、1つ又は複数のヒドロキシル基をアクリロイルクロリド又はメタクリロイルクロリドを有するエステル基へ変換して、アクリレートコポリマー又はメタクリレートコポリマーをもたらすことができる。或いは、1つ又は複数のヒドロキシル基にアミノ酸を結合させて、アミノエステル官能基をもたらすことができる。
【0056】
・フィルタA(第一実施形態)の作製方法
次に、上記被覆層を有するフィルタAの作製方法の典型例について説明する。フィルタAの作製方法としては、例えば、以下の工程を順に有する作製方法が挙げられる。
・ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材を準備する工程
・溶媒及び式(I)又は式(II)のコポリマーを含有する溶液で、上記多孔質基材を被覆して、被覆層付き多孔質基材を得る工程であって、
【0057】
【0058】
式(I)又は(II)のコポリマーはランダムコポリマー又はブロックコポリマーであり、Rfはパーフルオロ置換基であり、Rhは吸着性基であり、Raはメチル基又はエチル基であり、m及びnは独立して10~1000であり、Xはアルキル基であり、Yは反応性官能基である、工程
・被覆層付き多孔質基材を乾燥させて、溶媒及びコポリマーを含む被覆層から、溶媒の少なくとも一部を取り除く工程
更に、上記作製方法は、
・被覆層に存在するコポリマーを架橋結合させる工程
を有していてもよい。
【0059】
Yがアクリレート官能基又はメタクリレート官能基を有する場合、例えば、光開始剤及び紫外線等の高エネルギ放射線を用いて、架橋結合を形成することができる。架橋結合は、被覆層に非常に安定なポリマー網目構造をもたらすと考えられる。
【0060】
光開始剤としては、例えば、カンファーキノン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、ホスフィンオキシド及び誘導体、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルケタール、フェニルグリオキサルエステル及びその誘導体、二量体フェニルグリオキサルエステル、ペルエステル、ハロメチルトリアジン、ヘキサアリールビスイミダゾール/共開始剤系、フェロセニウム化合物、チタノセン、並びにその組み合わせが挙げられる。
【0061】
被覆層の形成方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。まずポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製多孔質基材をIPA(イソプロパノール)で予め湿らせ、0.1~10質量%の濃度範囲の被覆ポリマー溶液に膜を浸漬することによって、室温で被覆される。被覆時間は、1分~12時間の範囲が好ましい。多孔質基材は、浸漬後、100℃~160℃の対流オーブンで乾燥させる。乾燥時間は、10分~12時間の範囲が好ましい。
【0062】
表面張力に関して、表面改質の変化を、CWST(critical wetting surface tension)を測定することによって評価する。その方法は、一定の組成の一組の溶液に依存するものである。各溶液は、特定の表面張力をもつ。溶液の表面張力は、僅かな非等価増分で、25~9210-5N/cmの範囲である。膜の表面張力を測定するために、白色光テーブルの上に膜を配置し、ある表面張力の溶液一滴を膜表面に付与し、液滴が、膜に浸透し、光が膜を透過する指標として明るい白色になる時間を記録する。液滴が膜を浸透するのにかかる時間が10秒以下である場合、瞬間ぬれと考えられる。その時間が10秒より長い場合、溶液は膜を部分的にぬらすと考えられる。
【0063】
本実施形態に係るフィルタAの孔径としては特に制限されないが、1nm~10μmが好ましく、1~100nmがより好ましい。
【0064】
(フィルタAの第二実施形態)
フィルタAの第二実施形態としては、ポリフルオロカーボン(典型的には、ポリテトラフルオロエチレン、以下、ポリテトラフルオロエチレンとして説明する)製の多孔質基材と、上記多孔質基材の少なくとも一部を覆うように配置された、以下の単位A、及び、単位Bを有するコポリマーを含有する被覆層とを有するものが挙げられる。
【0065】
ここで、単位Aは次式のものであり、
【化6】
単位Bは次式のものであり、
式中、
コポリマーは、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーであり、n及びmは、コポリマーに存在する繰り返し単位A及びBの数であり、独立して1~1000が好ましく、nとmの合計は10以上であり、被覆層内において、コポリマーは、架橋結合されていてもよい。
【0066】
なお、本明細書の式において、繰り返し単位の式の点線は、コポリマーがブロックコポリマー又はランダムコポリマーであり得ることを示す。ブロックコポリマーは、括弧(繰り返し単位)によって表されることがあり、ランダムコポリマーは、角括弧[繰り返し単位]によって表されることがある。
【0067】
n及びmは、コポリマーに存在するモノマーのモル分率を表し、n及びmは、それぞれ独立して、1~99モル%の範囲が好ましく、20~50モル%の範囲がより好ましい。
【0068】
コポリマーは、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーであり得る。ブロックコポリマーは、ジブロックコポリマー(A-B)、トリブロックコポリマー(A-B-A若しくはB-A-B)、又は、マルチブロックコポリマー((A-B)x)であり得る。任意選択で、コポリマーは、第3のセグメントC、例えば、A-B-Cなどの、トリブロックコポリマー又はランダムコポリマーを含むことができる。
【0069】
コポリマーは、任意の適切な分子量、例えば、一実施形態において、数平均分子量(Mn)又は重量平均分子量(Mw)が、10000~1000000が好ましく、75000~500000がより好ましく、250000~500000が更に好ましい。
【0070】
ブロックコポリマー中における各モノマーブロックの含有量(質量基準)としては特に制限されないが、2つのモノマーブロックの含有量比が、99:1~50:50(いずれも質量%)とすることができ、好ましくは90:10~70:30、より好ましくは75:25~で、ブロックコポリマーにおいて存在することができる。
【0071】
コポリマーは、任意の適切な分子鎖末端、例えば、アリール基及びアルコキシ基、好ましくはフェニル基及びエトキシ基から選択される、分子鎖末端を有することができる。
【0072】
アニオンは、任意の適切なアニオン、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、又は、ヨウ化物、トシレート、メシレート、ベシレート、スルホネート、スルフェート、ホスフェート、又はホスホネートであってよい。
【0073】
コポリマーの具体例としては、以下の式で表されるものが挙げられる。
【化7】
【0074】
上記コポリマーは、任意の適切な方法、例えば、環状モノマーの開環メタセシス重合(ROMP)によって、調製することができる。一般に、カルベン配位子を含む遷移金属触媒がメタセシス反応を媒介する。なお、コポリマーの調製方法としては、特開2016-194040号公報の0018~0033段落に記載の方法が挙げられ、上記方法は本明細書に組み込まれる。
【0075】
・フィルタA(第二実施形態)の作製方法
次に、上記被覆層を有するフィルタAの作製方法の典型例について説明する。フィルタAの作製方法としては、例えば、以下の工程を順に有する作製方法が挙げられる。
・ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材を準備する工程
・溶媒及びコポリマーを含有する溶液で、上記多孔質基材を被覆して、被覆層付き多孔質基材を得る工程
・被覆層付き多孔質基材を乾燥させて、溶媒の少なくとも一部を取り除く工程
更に、上記作製方法は、以下の工程を有していてもよい。
・被覆層中のコポリマーを架橋結合させる工程
なお、各工程の形態は、フィルタAの第一実施形態に係る各工程と同様であり、説明を省略する。
【0076】
(フィルタAの第三実施形態)
フィルタAの第三実施形態は、ポリフルオロカーボン(典型的には、ポリテトラフルオロエチレン、以下、ポリテトラフルオロエチレンとして説明する)製の多孔質基材と、上記多孔質基材の少なくとも一部を覆うように配置された、架橋結合されたポリマー網目構造を含む被覆層とを有するものが挙げられる。フィルタAの第三実施形態は、ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材を、溶媒、架橋剤、光開始剤、及び、重合された1,5-シクロオクタジエン繰り返し単位からなる主鎖を含み、上記繰り返し単位の少なくとも1つが、主鎖に結合したペンダント吸着性基を含み、上記繰り返し単位の少なくとももう1つが、主鎖に結合したペンダントフッ素化疎水性基を含む、テレケリックポリマーを含む被覆組成物で被覆し、得られた被覆組成物層をin situ架橋結合させることによって製造される被覆層を有するフィルタである。
【0077】
テレケリックポリマーの末端基は、疎水性末端及び/又は親水性末端であることができる。一実施形態において、末端基は疎水性である。他の実施形態において、末端基は親水性である。
【0078】
テレケリックポリマーは、例えば、単位B及び単位Cからなる群より選択される少なくとも1種を有することが好ましく、更に、単位Aを有することがより好ましい。なお、単位A~Cは次式のものであり、
【化8】
式中、-S-Rで表される基は少なくともチオエーテル基を有する吸着性基である。
【0079】
Rとしては特に制限されないが、カルボキシアルキル基、スルホンアルキル基、及び、ヒドロキシアルキル基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0080】
テレケリックポリマーにおける単位A、及び、B(Cを有する場合には、A、B、及び、C)は、ブロック、又は、ランダムに配置されたブロックとして存在することができる。
【0081】
テレケリックポリマーの具体例としては、例えば、次式のものが挙げられる。
【0082】
【0083】
式中、n、m、及びxが各単位のモル比率を表す場合には、x及びmは、それぞれ独立にn+m+xの0~35モル%である。また、n、m、及びxが各単位の繰返し数を表す場合には、n+m+x=10~1000であり、n及びmは、それぞれ独立に10~1000である。Rは吸着性基である。
【0084】
テレケリックポリマーは、親水性末端基を有していてもよい。親水性末端基としては、例えば、ポリヒドロキシアルキルエーテル基等が挙げられる。
【0085】
テレケリックポリマーの具体例としては、例えば、次式のものが挙げられる。
【化10】
【0086】
式中、Rは、例えば、カルボキシアルキル基、スルホンアルキル基、及び、ヒドロキシアルキル基からなる群より選択されることが好ましく、nは10~1000が好ましく、但し、Pは重合開始可能な基(反応性置換基)である。なお、上記式中、n、m、xの定義は式(I)と同様である。-S-Rは、少なくともチオエーテル基を有する吸着性基である。
【0087】
テレケリックポリマーの具体例としては、例えば、次式のものであり、
【化11】
式中、n、m、及びxが各単位のモル比を表す場合には、x及びmは、独立してn+m+xの0~35モル%である。n、m、及びxが各単位の繰返し数を表す場合には、n+m+x=10~1000である。-S-Rは少なくともチオエーテル基を有する吸着性基である。
【0088】
テレケリックポリマーは、任意の適切な架橋剤、好ましくはバイチオール又はマルチチオールによって架橋結合させることができる。
【0089】
任意の適切な光開始剤、例えば、カンファーキノン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、ホスフィンオキシド及び誘導体、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルケタール、フェニルグリオキサルエステル及びその誘導体、二量体フェニルグリオキサルエステル、ペルエステル、ハロメチルトリアジン、ヘキサアリールビスイミダゾール/共開始剤系、フェロセニウム化合物、チタノセン、並びにその組み合わせから選択される光開始剤を用いることができる。
【0090】
被覆層の架橋結合は、被覆組成物層をUV放射に曝すことによって形成される。
【0091】
テレケリックポリマーの他の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【化12】
【0092】
式中、Pは重合開始可能な基(反応性置換基)である。n、m、及びxが各単位のモル比を表す場合には、x及びmはそれぞれ独立にn+m+xの0~35モル%である。n、m、及びxが各単位の繰返し数を表す場合には、n+m+x=10~1000である。-S-Rは少なくともチオエーテル基を有する吸着性基である。
【0093】
・フィルタA(第三実施形態)の作製方法
次に、上記被覆層を有するフィルタAの作製方法の典型例について説明する。フィルタAの作製方法としては、例えば、以下の工程を順に有する作製方法が挙げられる。
・ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材を準備する工程
・溶媒、架橋剤、光開始剤、及び、上記のテレケリックポリマーを含有する溶液(被覆形成組成物)で、上記多孔質基材を被覆して、被覆形成組成物層付き多孔質基材を得る工程
・被覆形成組成物層付き多孔質基材を乾燥させて、溶媒の少なくとも一部を取り除く工程
・被覆形成組成物層中のテレケリックポリマーを架橋結合させる工程
なお、以下では、第三実施形態に係るフィルタAの作製方法について説明するが、以下に説明のない内容については、既に説明した第一実施形態に係るフィルタAの作製方法と同様である。
【0094】
テレケリックポリマーの分子量としては特に制限されないが、例えば、数平均分子量(Mn)又は重量平均分子量(Mw)が、10000~1000000が好ましく、75000~500000がより好ましく、250000~500000が更に好ましい。
【0095】
上記テレケリックポリマーは、任意の適切な方法、例えば、1,5-シクロオクタジエン(COD)の開環メタセシス重合によって、調製することができる。一般に、カルベン配位子を含む遷移金属触媒がメタセシス反応を媒介する。
なお、テレケリックポリマーの調製方法としては、特開2016-194037号公報の0025~0046段落に記載された方法を参照でき、上記方法は本明細書に組み込まれる。
【0096】
(フィルタAの第四実施形態)
フィルタAの第四実施形態としては、ポリフルオロカーボン(典型的には、ポリテトラフルオロエチレン、以下、ポリテトラフルオロエチレンとして説明する)製の多孔質基材と、上記多孔質基材の少なくとも一部を覆うように配置された、以下のフッ素化ポリマーを含有する被覆層とを有するものが挙げられる。
【0097】
本実施形態に係るフッ素化ポリマーは、式R-S-Pで表される。式中、Rはフルオロカルビル基であり、Sはイオウであり、Pは、(i)ポリグリセロール;(ii)ポリ(アリルグリシジルエーテル)及び;(iii)1つ若しくは複数のアリル基を有する、グリシドールとアリルグリシジルエーテルとのコポリマー、又は(iv)ポリ(アリルグリシジルエーテル)若しくはグリシドールとアリルグリシジルエーテルとのコポリマーであって、アリル基の1つ若しくは複数が、1,2-ジヒドロキシプロピル基若しくは式-(CH2)a-S-(CH2)b-X(式中、aは3であり、bは1~3であり、Xは酸基、塩基基、カチオン、アニオン、双性イオン、ハロゲン、ヒドロキシル、アシル、アシルオキシ、アルキルチオ、アルコキシ、アルデヒド、アミド、カルバモイル、ウレイド、シアノ、ニトロ、エポキシ、式-C(H)(COOH)(NH2)の基、及び式-C(H)(COOH)(NHAc)の基、又はその塩から選択される)の基で置き換えられている、コポリマーである。
【0098】
Rのフルオロカルビル基としては特に制限されないが、例えば、フルオロアルキル基、フルオロアルケニル基、及び、フルオロシクロアルキル基等が挙げられる。フルオロアルキル基、及び、フルオロアルケニル基は、直鎖又は分枝であってもよい。
【0099】
フルオロカルビル基は、式CnF2n+1(CH2)m-(式中、n及びmは独立に、1~20が好ましい。nは4~12がより好ましく、8が特に好ましい。mは2~6がより好ましく、2が特に好ましい。)のフルオロアルキル基が好ましい。
【0100】
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20が好ましい。
【0101】
mは、1、2、3、4、5、又は6が好ましい。
【0102】
Pは、ポリグリセロール又はグリシドールのポリマーが好ましい。ポリグリセロールとしては、例えば、以下の繰り返し単位
【化13】
の1つ又は複数を有することが好ましい。
【0103】
ポリグリセロールとしては、以下の構造
【化14】
の1つ又は複数を含むことが好ましい。なお、式R-S-Pのイオウとの結合点が波線で示されている。
【0104】
Pは、1つ又は複数のアリル基を有することが好ましい。Pはグリシドールとアリルグリシジルエーテルとのコポリマーであることが好ましい。例えば、コポリマーであるPは、以下の構造
【化15】
を有することが好ましい。
【0105】
Pは、アリル基が官能基で置き換えられている、アリルグリシジルエーテルのポリマーであることが好ましい。例えば、Pは、以下の構造
【化16】
の1つを有することが好ましい。なお、式中、mは10~1000が好ましく、30~300がより好ましく、50~250が更に好ましい。
【0106】
Pは、アリル基の1つ又は複数が官能基で置き換えられている、グリシドールとアリルグリシジルエーテルとのコポリマーであることが好ましい。Pは、例えば、以下の構造
【化17】
を有することが好ましい。なお式中、Rは、アリル及び/又は-(CH
2)
b-Xである。
【0107】
ブロックコポリマーとしては、Xはアミノ基、ジメチルアミノ基、-CH2CH2SO3H、-CH2CH2CH2SO3H、-CH2CO2H、及び-CH2CH2N+(CH3)3、並びにそれらの組み合わせから選択されることが好ましい。
【0108】
よって、例えば、Pは、以下の構造
【化18】
【化19】
【化20】
からなる群より選択される少なくとも1種を有することが好ましい。
【0109】
また、フッ素化ポリマーは、
【化21】
を有することも好ましい。
【0110】
また、フッ素化ポリマーとしては、以下の構造、
【化22】
を有することも好ましい。
【0111】
上記フッ素化ポリマーは、公知の方法を用いて調製できる。フッ素化ポリマーの調製方法としては、例えば、特開2016-29146号公報の0022~0045段落に記載の方法が適用でき、上記方法は本明細書に組み込まれる。
【0112】
・フィルタA(第四実施形態)の作製方法
次に、上記被覆層を有するフィルタAの作製方法の典型例について説明する。フィルタAの作製方法としては、例えば、以下の工程を順に有する作製方法が挙げられる。
・ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材を準備する工程
・溶媒、及び、上記のフッ素化ポリマーを含有する溶液で、上記多孔質基材を被覆して、被覆層付き多孔質基材を得る工程
・被覆層付き多孔質基材を乾燥させて、溶媒の少なくとも一部を取り除く工程
なお、以下では、第四実施形態に係るフィルタAの作製方法について説明するが、以下に説明のない内容については、既に説明した第一実施形態に係るフィルタAの作製方法と同様である。
【0113】
溶媒としては、特に制限されないが、水、アルコール溶媒、例えば、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール、エステル溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、及び酢酸アミル、ケトン溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノン、アミド溶媒、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドン、環状エーテル、例えば、ジオキサン及びジオキソラン、並びにそれらの混合物から選択することができる。一実施形態では、溶媒は、50:50v/vの比率のメタノールと水との混合物である。
【0114】
フッ素化ポリマーは、溶液中に適切な濃度で存在することができ、例えば、0.01~5質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましく、0.25~1質量%が更に好ましい。
【0115】
被覆する前に、任意選択により、多孔質基材を、イソプロパノール、エタノール又はメタノールで予め湿潤させ、水ですすぐことができる。
【0116】
多孔質基材を、適切な長さの時間、例えば、1分~2時間、好ましくは10分~1時間、より好ましくは20~50分の間、被覆溶液に接触させることにより、被覆層が形成できる。
【0117】
多孔質基材と被覆溶液との接触は、任意の適切な方式によって行うことができ、例えば、多孔質基材を被覆溶液に浸漬させること、多孔質基材に真空を適用して若しくは適用せずに被覆溶液を多孔質基材に通すこと、メニスカスコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング、若しくはスピンコーティング、又はそれらの任意の組み合わせによって行うことができる。
【0118】
被覆層は乾燥させてもよい。乾燥温度としては特に制限されないが、40℃以上が好ましく、60~160℃がより好ましく、70~115℃が更に好ましく、80~110℃が特に好ましい。
【0119】
加熱時間としては特に制限されないが、一般に、1分~2時間が好ましく、10分~1時間がより好ましく、20~40分が更に好ましい。
【0120】
また、被覆層を、熱水、例えば80℃の熱水で、適切な期間(例えば、5分~2時間)洗浄して、遊離フッ素化ポリマー又は水溶性ポリマーをすべて除去し、その後、被覆層を80~110℃で、2~20分の間、乾燥させてもよい。
【0121】
被覆層のCWSTとしては特に制限されないが、72×10-5N/cmを超えることが好ましく、73~95×10-5N/cmがより好ましい。
なお膜のCWSTを測定するには、第1多孔性膜を白色光テーブルの上に置き、一定の表面張力の一滴の溶液を膜の表面に付け、その液滴が膜を貫通して透過し、光が膜を通り抜けたことを示す明るい白色になるのにかかった時間を記録する。液滴が膜を透過するのにかかる時間が10秒以下であるとき、瞬時の湿潤と考えられる。この時間が10秒より大きい場合、その溶液は孔性膜を部分的に湿潤すると考えられる。CWSTは、当技術分野で公知のように、更に例えば米国特許第5,152,905号、同第5,443,743号、同第5,472,621号、及び同第6,074,869号に開示されているように選択することができる。
【0122】
一般に、フィルタAの臨界湿潤表面張力(CWST)としては、27~60×10-5N/cmが好ましく、30~50N/cmがより好ましい。臨界湿潤表面張力が33~40×10-5N/cmの範囲内であると、より優れたメタル除去能を有する。
【0123】
本実施形態に係るフィルタAは、室温で、2%NaOH及び2000ppmのNaOClを含有する溶液に少なくとも7日間、5MのNaOH中に少なくとも7日間、又は5MのHCl中に少なくとも7日間曝露しても安定である。複数の実施形態において、フィルタAは、かかる曝露に室温で最長30日間安定である。
【0124】
本実施形態に係るフィルタAは、フィルタ自体の汚れに耐性がある。例えば、表流水で試験したとき、フィルタAは、高透過水量、例えば、少なくとも7.0mL/分/cm2を示し、高透過水量は、繰り返されるサイクル、例えば5サイクル以上にわたって維持される。
【0125】
(フィルタAの第五実施形態)
フィルタAの第五実施形態としては、ポリフルオロカーボン(典型的には、ポリテトラフルオロエチレン、以下、ポリテトラフルオロエチレンとして説明する)製の多孔質基材と、上記多孔質基材の少なくとも一部を覆うように配置された、以下の単位C、及び、単位Dを有するコポリマーを含有する被覆層とを有するものが挙げられる。
ここで、単位Cは、以下の式、
【化23】
からなる群より選択される少なくとも1種であり、単位Dは以下の式、
【化24】
で表される。なお、式中、n及びmは、1~1000が好ましく、nとmの合計が10以上である。
【0126】
n及びmが各モノマーの重合度を表す場合には、それぞれ独立して、10~1000が好ましく、20~50がより好ましい。
【0127】
他の実施形態において、n及びmが各モノマーのモル分率を表す場合には、コポリマーに存在するモノマーのモル分率を表し、n及びmは、それぞれ独立に、1~99モル%が好ましく、20~50モル%がより好ましい。
【0128】
各モノマーブロックは、任意の適切な質量%、例えば、各モノマーブロックの質量比として99:1~50:50(いずれも質量%)が好ましく、90:10~70:30がより好ましく、更に好ましくは75:25~で、ブロックコポリマーにおいて存在することができる。
【0129】
コポリマーは、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーであり得る。ブロックコポリマーは、ジブロックコポリマー(A-B)、トリブロックコポリマー(A-B-A若しくはB-A-B)、又はマルチブロックコポリマー((A-B)x)であり得る。また、コポリマーは、第3のセグメントC、例えば、A-B-Cなどの、トリブロックコポリマー又はランダムコポリマーを含むことができる。
【0130】
コポリマーの分子量としては特に制限されないが、一般に、数平均分子量又は重量平均分子量(Mn又はMw)が、10000~1000000が好ましく、75000~500000がより好ましく、250000~500000が更に好ましい。
【0131】
コポリマーの具体例としては、例えば以下の式の1つを含む。
【化25】
【0132】
コポリマーは、更に、1つ又は複数の、次式の繰り返し単位Cをさらに含んでもよい。
【化26】
【0133】
この場合、o/(m+n)比は、0モル%より大きく、0.25モル%以下が好ましく、0.05~0.25モル%がより好ましく、0.10~0.15モル%が更に好ましい。
【0134】
コポリマーの具体例としては、以下の式を含むものが挙げられる。
【化27】
【0135】
・フィルタAの第五実施形態の変形例
本実施形態に係るフィルタAは、ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材と、上記多孔質基材の少なくとも一部を覆うように配置された、ポリマーを含有する被覆層とを有するものが挙げられる。上記ポリマーは、主鎖に結合した、1つ又は複数のパーフルオロアルキルチオペンダント基を有する。ここで、上記ポリマーの繰り返し単位は次式のものである。
【化28】
ここで、*はパーフルオロアルキルチオペンダント基の結合点を示す。
【0136】
具体的には、上記ポリマーは次式のものが挙げられ、
【化29】
但し、p+q=m-1である。
【0137】
パーフルオロアルキルチオペンダント基は、ポリマーの繰り返し単位のいくつか又は全てにおいて存在することができる。したがって、例えば、パーフルオロアルキルチオペンダント基は、繰り返し単位の、0モル%より大きく、100モル%以下の量で存在することができ、実施形態において、繰り返し単位の、1~50モル%又は10~30モル%の量で存在することができる。パーフルオロアルキルチオペンダント基は、ポリマー主鎖において不規則に配置されている。
【0138】
本実施形態に係るコポリマー及びパーフルオロアルキルチオペンダント基を有するポリマーは、任意の適切な方法、例えば、環状モノマーの開環メタセシス重合(ROMP)によって、調製することができる。一般に、カルベン配位子を含む遷移金属触媒がメタセシス反応を媒介する。上記コポリマー及び上記ポリマーの調製方法は、例えば、特開2016-196625公報の0021~0048段落に記載された方法を用いることができ、上記記載は本明細書に組み込まれる。
【0139】
・フィルタA(第五実施形態)の作製方法
次に、上記被覆層を有するフィルタAの作製方法の典型例について説明する。フィルタAの作製方法としては、例えば、以下の工程を順に有する作製方法が挙げられる。
・ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材を準備する工程
・溶媒、及び、上記のコポリマー又は上記のパーフルオロアルキルチオペンダント基を有するポリマーを含有する溶液で、多孔質基材を被覆して、被覆層付き多孔質基材を得る工程
・被覆層を乾燥させて、上記コポリマー又は上記ポリマーを含有する溶液から、溶媒の少なくとも一部を取り除く工程
また、上記作製方法は、
・被覆層に存在するコポリマー又はポリマーを架橋結合させる工程
を、更に有していてもよい。
なお、以下では本実施形態に係るフィルタAの作製方法を説明するが、以下に説明のない内容については、既に説明した第一実施形態に係るフィルタAの作成方法と同様である。
【0140】
任意の適切な方法、例えば、光開始剤、及び、紫外線等の高エネルギ放射線を用いて、架橋結合を形成することができる。架橋結合は、膜に非常に安定なポリマー網目構造をもたらすことになると考えられる。
【0141】
光開始剤としては、カンファーキノン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、ホスフィンオキシド及び誘導体、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルケタール、フェニルグリオキサルエステル及びその誘導体、二量体フェニルグリオキサルエステル、ペルエステル、ハロメチルトリアジン、ヘキサアリールビスイミダゾール/共開始剤系、フェロセニウム化合物、チタノセン、並びにその組み合わせが挙げられる。
【0142】
架橋結合の形成は、以下のように実施することができる。被覆層付き多孔質基材をIPAで予め湿らせ、次いでシートを光開始剤が調製される溶媒で洗浄して、IPAと溶媒を交換する。その後、シートを、一定濃度の光開始剤溶液に一定時間浸漬し、次いでUV照射に曝す。光開始剤溶液中の浸漬時間は、1分~24時間の範囲が好ましい。UV照射時間は、30秒~24時間の範囲が好ましい。
【0143】
<フィルタBU>
フィルタBUは、フィルタAとは異なるフィルタであって、流通路上においてフィルタAの上流側に、フィルタAと直列に配置されたフィルタである。なお、本明細書において、フィルタAと異なるフィルタとは、フィルタAと材料、孔径、及び、細孔構造からなる群より選択される少なくとも1種が異なるフィルタを意味する。また、「上流側」とは、流通路上において流入部側を指す。
なかでもより優れた本発明の効果を有するろ過装置が得られる点で、フィルタBUはフィルタAと孔径、及び、材料からなる群より選択される少なくとも一方が異なることが好ましい。
【0144】
フィルタBUの孔径としては、特に制限されず、ろ過装置に使用されるフィルタとして任意の孔径を有していればよい。なかでもより優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる点で、フィルタBUは、フィルタAより大きい孔径を有することが好ましい。なかでも、フィルタBUの孔径は、200nm以下が好ましく、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましい。
本発明者らの検討によれば、流通路S1に上においてフィルタAの上流側に、孔径が20nm以上のフィルタBUを配置したろ過装置を用いた場合、フィルタAがより目詰まりしにくく、フィルタAの寿命をより長くすることができることを知見している。その結果として、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液を安定して提供できるろ過装置が得られる。
【0145】
フィルタBUの細孔構造としては特に制限されない。本明細書において、フィルタの細孔構造とは、細孔径分布、フィルタ中の細孔の位置的な分布、及び、細孔の形状等を意味し、典型的には、フィルタの製造方法により制御可能である。
例えば、樹脂等の粉末を焼結して形成すれば多孔質膜が得られ、及び、エレクトロスピニング、エレクトロブローイング、及び、メルトブローイング等の方法により形成すれば繊維膜が得られる。これらは、それぞれ細孔構造が異なる。
【0146】
「多孔質膜」とは、ゲル、粒子、コロイド、細胞、及び、ポリオリゴマー等の被精製液中の成分を保持するが、細孔よりも実質的に小さい成分は、細孔を通過する膜を意味する。多孔質膜による被精製液中の成分の保持は、動作条件、例えば、面速度、界面活性剤の使用、pH、及び、これらの組み合わせに依存することがあり、かつ、多孔質膜の孔径、構造、及び、除去されるべき粒子のサイズ、及び、構造(硬質粒子か、又は、ゲルか等)に依存し得る。
【0147】
UPE(超高分子量ポリエチレン)フィルタは、典型的には、ふるい膜である。ふるい膜は、主にふるい保持機構を介して粒子を捕捉する膜、又は、ふるい保持機構を介して粒子を捕捉するために最適化された膜を意味する。
ふるい膜の典型的な例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜とUPE膜が含まれるが、これらに制限されない。
なお、「ふるい保持機構」とは、除去対象粒子が多孔質膜の細孔径よりも大きいことによって保持されることを指す。ふるい保持力は、フィルタケーキ(膜の表面での除去対象となる粒子の凝集)を形成することによって向上させることができる。フィルタケーキは、2次フィルタの機能を効果的に果たす。
【0148】
多孔質膜(例えば、UPE、及び、PTFE等を含む多孔質膜)の細孔構造としては特に制限されないが、細孔の形状としては例えば、レース状、ストリング状、及び、ノード状等が挙げられる。
多孔質膜における細孔の大きさの分布とその膜中における位置の分布は、特に制限されない。大きさの分布がより小さく、かつ、その膜中における分布位置が対称であってもよい。また、大きさの分布がより大きく、かつ、その膜中における分布位置が非対称であってもよい(上記の膜を「非対称多孔質膜」ともいう。)。非対称多孔質膜では、孔の大きさは膜中で変化し、典型的には、膜一方の表面から膜の他方の表面に向かって孔径が大きくなる。このとき、孔径が大きい細孔が多い側の表面を「オープン側」といい、孔径が小さい細孔が多い側の表面を「タイト側」ともいう。
また、非対称多孔質膜としては、例えば、細孔の大きさが膜の厚さ内のある位置において最小となるもの(これを「砂時計形状」ともいう。)が挙げられる。
【0149】
非対称多孔質膜を用いて、一次側(流通路の上流側)をより大きいサイズの孔とすると、言い換えれば、一次側をオープン側とすると、前ろ過効果を生じさせることができる。
【0150】
多孔質膜は、PESU(ポリエーテルスルホン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン、四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシアルカンとの共重合体)、ポリアミド、及び、ポリオレフィン等の熱可塑性ポリマーを含んでもよいし、ポリテトラフルオロエチレン等を含んでもよい。
なかでも、多孔質膜の材料としては、超高分子量ポリエチレンが好ましい。超高分子量ポリエチレンは、極めて長い鎖を有する熱可塑性ポリエチレンを意味し、分子量が百万以上、典型的には、200~600万が好ましい。
【0151】
例えば、被精製液に有機化合物を含有する粒子が不純物として含有されている場合、このような粒子は負に帯電している場合が多く、そのような粒子の除去には、ポリアミド製のフィルタが非ふるい膜の機能を果たす。典型的な非ふるい膜には、ナイロン-6膜及びナイロン-6,6膜等のナイロン膜が含まれるが、これらに制限されない。
なお、本明細書で使用される「非ふるい」による保持機構は、フィルタの圧力降下、又は、細孔径に関連しない、妨害、拡散及び吸着などの機構によって生じる保持を指す。
【0152】
非ふるい保持は、フィルタの圧力降下又はフィルタの細孔径に関係なく、被精製液中の除去対象粒子を除去する、妨害、拡散及び吸着等の保持機構を含む。フィルタ表面への粒子の吸着は、例えば、分子間のファンデルワールス力及び静電力等によって媒介され得る。蛇行状のパスを有する非ふるい膜層中を移動する粒子が、非ふるい膜と接触しないように十分に速く方向を変えることができない場合に、妨害効果が生じる。拡散による粒子輸送は、粒子がろ過材と衝突する一定の確率を作り出す、主に、小さな粒子のランダム運動またはブラウン運動から生じる。粒子とフィルタの間に反発力が存在しない場合、非ふるい保持機構は活発になり得る。
【0153】
繊維膜の材質は、繊維膜を形成可能なポリマーであれば特に制限されない。ポリマーとしては、例えば、ポリアミド等が挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、及び、ナイロン6,6等が挙げられる。繊維膜を形成するポリマーとしては、ポリ(エーテルスルホン)であってもよい。繊維膜が多孔質膜の一次側にある場合、繊維膜の表面エネルギは、二次側(流通路の下流側)にある多孔質膜の材質であるポリマーより高いことが好ましい。そのような組み合わせとしては、例えば、繊維膜の材料がナイロンで、多孔質膜がポリエチレン(UPE)である場合が挙げられる。
【0154】
繊維膜の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。繊維膜の製造方法としては、例えば、エレクトロスピニング、エレクトロブローイング、及び、メルトブローイング等が挙げられる。
【0155】
図2のろ過装置はフィルタBUを1つ有しているが、本実施形態に係るろ過装置としては複数のフィルタBUを有していてもよい。その場合、複数あるフィルタBUの孔径の関係としては特に制限されないが、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい点で、流通路上において最も上流に配置されたフィルタBUの孔径が最大となることが好ましい。このようにすることで、最上流のフィルタBUの下流に配置されたフィルタ(フィルタAを含む)の寿命をより長くすることができ、結果として、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液を安定して提供できるろ過装置が得られる。
【0156】
フィルタBUの材料としては特に制限されず、無機材料(金属、ガラス、及び、ケイソウ土等)、及び、有機材料等を任意に含有していてもよい。フィルタBUの材料は、上述したフィルタAと同様であってもよい(材料が同様であるならば、フィルタBはフィルタAと孔径、及び/又は、細孔構造が異なる)し、後述するフィルタBDと同様であってもよい。
なかでも、より優れた本発明の効果を有するろ過装置が得られる点で、フィルタBUは、イオン除去が可能な材料からなることが好ましい。この場合、フィルタBUは、イオン交換基を有する樹脂を材料成分(構成成分)として含有することが好ましい。
イオン交換基としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有するろ過装置が得られる点で、酸基、塩基基、アミド基、及び、イミド基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
フィルタBUは、ポリフルオロカーボン、及び、ポリオレフィン等の基材に、イオン交換基を導入した材料がより好ましい。
【0157】
〔第二実施形態〕
図2は、本発明の第二実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
ろ過装置200は、流入部101と流出部102の間に、フィルタAであるフィルタ103と、上記フィルタ103とは異なるフィルタ201(フィルタBD)とが配管202を介して直列に配置されたろ過装置である。
流入部101、フィルタ103、配管202、フィルタ104、及び、流出部102は、それぞれの内部に被精製液を流通できるよう構成されており、上記部材が連結されて、流通路S2(被精製液が流れる経路)が形成されている。
【0158】
なお、ろ過装置200において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0159】
<フィルタBD>
フィルタBDは、フィルタAとは異なるフィルタであって、流通路上においてフィルタAの下流側に、フィルタAと直列に配置されたフィルタである。なお、「下流側」とは、流通路上において流出部側を指す。なかでもより優れた本発明の効果を有するろ過装置が得られる点で、フィルタAとフィルタBDとは、少なくとも孔径が異なることが好ましく、孔径と材料とが異なることがより好ましい。
【0160】
本実施形態に係るフィルタBDの孔径としては、フィルタAの孔径より小さければ特に制限されず、被精製液のろ過用として通常使用される孔径のフィルタが使用できる。なかでも、フィルタの孔径は、200nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、10nm以下が更に好ましく、5nm以下が特に好ましく、3nm以下が最も好ましい。下限値としては特に制限されないが、一般に1nm以上が、生産性の観点から好ましい。
フィルタAを用いて被精製液をろ過したとき、フィルタAに起因する微粒子が発生すると、被精製液に混入してしまう場合があるが、本実施形態に係るろ過装置は、流通路上においてフィルタAの下流にフィルタBDを有しているため、フィルタAに起因する微粒子が発生した際にも被精製液からこれをろ別することができ、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい。
【0161】
なお、
図1のろ過装置はフィルタBDを1つ有しているが、本実施形態に係るろ過装置としては複数のフィルタBDを有していてもよい。その場合、複数あるフィルタBDの孔径の関係としては特に制限されないが、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい点で、流通路上において最も下流側に配置されたフィルタBDの孔径が最小となることが好ましい。
【0162】
フィルタBDの材料としては特に制限されず、フィルタAと同様であってもよいし、異なってもよい。なかでも、より優れた本発明の効果を有するろ過装置が得られる点で、フィルタAの材料とは異なることが好ましい。
フィルタBDの材料としては特に制限されず、フィルタの材料として公知のものが使用できる。具体的には、樹脂である場合、材料成分として6-ナイロン、及び、6,6-ナイロン等のポリアミド;ポリエチレン、及び、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリスチレン;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリ(メタ)アクリレート;ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン-クロロトリフロオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、及び、ポリフッ化ビニル等のポリフルオロカーボン;ポリビニルアルコール;ポリエステル;セルロース;セルロースアセテート等を含有することが好ましい。なかでも、より優れた耐溶剤性を有し、得られる薬液がより優れた欠陥抑制性能を有する点で、ナイロン(なかでも、6,6-ナイロンが好ましい)、ポリオレフィン(なかでも、ポリエチレンが好ましい)、ポリ(メタ)アクリレート、及び、ポリフルオロカーボン(なかでも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)が好ましい。)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。これらの重合体は単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
また、樹脂以外にも、ケイソウ土、及び、ガラス等であってもよい。
【0163】
また、フィルタは表面処理されたものであってもよい。表面処理の方法としては特に制限されず、公知の方法が使用できる。表面処理の方法としては、例えば、化学修飾処理、プラズマ処理、疎水処理、コーティング、ガス処理、及び、焼結等が挙げられる。
【0164】
プラズマ処理は、フィルタの表面が親水化されるために好ましい。プラズマ処理して親水化されたろ過材の表面における水接触角としては特に制限されないが、接触角計で測定した25℃における静的接触角が、60°以下が好ましく、50°以下がより好ましく、30°以下が更に好ましい。
【0165】
化学修飾処理としては、基材にイオン交換基を導入する方法が好ましい。
すなわち、フィルタとしては、上記で挙げた各成分を含有する材料を基材として、上記基材にイオン交換基を導入したものが好ましい。典型的には、上記基材の表面にイオン交換基を有する基材を含む層を含むフィルタが好ましい。表面修飾された基材としては特に制限されず、製造がより容易な点で、上記重合体にイオン交換基を導入したものが好ましい。
【0166】
イオン交換基としては、カチオン交換基として、スルホン酸基、カルボキシ基、及び、リン酸基等が挙げられ、アニオン交換基として、4級アンモニウム基等が挙げられる。イオン交換基を重合体に導入する方法としては特に制限されないが、イオン交換基と重合性基とを有する化合物を重合体と反応させ典型的にはグラフト化する方法が挙げられる。
【0167】
イオン交換基の導入方法としては特に制限されないが、上記の樹脂の繊維に電離放射線(α線、β線、γ線、X線、及び、電子線等)を照射して樹脂中に活性部分(ラジカル)を生成させる。この照射後の樹脂をモノマー含有溶液に浸漬してモノマーを基材にグラフト重合させる。その結果、このモノマーがポリオレフィン繊維にグラフト重合側鎖として結合したものが生成する。この生成されたポリマーを側鎖として有する樹脂をアニオン交換基又はカチオン交換基を有する化合物と接触反応させることにより、グラフト重合された側鎖のポリマーにイオン交換基が導入されて最終生成物が得られる。
【0168】
また、フィルタは、放射線グラフト重合法によりイオン交換基を形成した織布、又は、不織布と、従来のガラスウール、織布、又は、不織布のろ過材とを組み合わせた構成でもよい。
【0169】
なかでも、より優れた本発明の効果を有するろ過装置が得られる点で、フィルタBDの成分(材料成分)としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフルオロカーボン、ポリスチレン、ポリスルホン、及び、ポリエーテルスルホンからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、ポリオレフィン、ポリアミド、及び、ポリフルオロカーボンからなる群より選択される少なくとも1種からなることがより好ましい。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、及び、ポリプロピレン等が挙げられ、中でも、超高分子量ポリエチレンが好ましい。ポリアミドとしては、6-ナイロン、及び、6,6-ナイロン等が挙げられる。ポリフルオロカーボンとしてはポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、及び、ポリフッ化ビニル等が挙げられ、なかでも、ポリエチレン、及び、ナイロンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、別の形態では、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
【0170】
また、フィルタBDは、親水性基を有する第2の樹脂を含有することも好ましい。親水性基としては特に制限されないが、例えば、水酸基、エーテル基、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン基、カルボン酸基、エステル基、炭酸エステル基、チオール基、チオエーテル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミド基、及び、イミド基等が挙げられ、中でも、フィルタAが有する親水性基とは異なる親水性気が好ましく、水酸基、カルボン酸基、エステル基、炭酸エステル基、チオール基、チオエーテル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミド基、及び、イミド基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
第2の樹脂としては特に制限されないが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフルオロカーボン、ポリスチレン、ポリスルホン、及び、ポリエーテルスルホンからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂が好ましい。また、別の形態としては、ポリエーテル、ノボラック、シクロオレフィンポリマー、及び、ポリ乳酸等も好ましい。
【0171】
フィルタBDの細孔構造としては特に制限されず、被精製液の成分に応じて適宜選択すればよい。
【0172】
〔第二実施形態に係るろ過装置の変形例〕
図3は、本発明の第二実施形態に係るろ過装置の変形例を表すろ過装置の模式図である。ろ過装置300は、流入部101と流出部102との間に、フィルタAであるフィルタ103と、フィルタBUであるフィルタ104と、フィルタBDであるフィルタ201とを有し、フィルタ104と、フィルタ103と、フィルタ201が配管301、及び、配管302を介して直列に配置されたろ過装置である。
【0173】
なお、ろ過装置300において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0174】
流入部101、フィルタ104、配管301、フィルタ103、配管302、及び、フィルタ201はそれぞれの内部に被精製液を流通できるよう構成されており、上記部材が連結されて流通路S3(被精製液が流れる経路)が形成されている。配管、及び、各フィルタの構成としては既に説明したとおりである。
ろ過装置300は、流通路上においてフィルタAの上流側にフィルタBUを有するため、フィルタAはより長寿命となり、流通路上においてフィルタAの下流側にフィルタBDを有するため、フィルタAに起因して被精製液に混入する微粒子が効率よく除去でき、結果として更に優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい。
【0175】
〔第三実施形態〕
図4は本発明の第四実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
ろ過装置400は、流入部101と流出部102との間であって、流通路S4上においてフィルタ104(フィルタBU)の上流側に、フィルタAと直列に配置されたタンク401を更に有するろ過装置である。タンク401と、フィルタ104(フィルタBU)と、フィルタ103(フィルタA)とは、配管402及び配管105を介して直列に配置されている。タンク401は上記のフィルタ及び配管等とともに、流通路S4を構成している。
【0176】
なお、ろ過装置400において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0177】
本実施形態に係るろ過装置は、フィルタ104の上流側にタンクを有しているため、フィルタ104に流通させるための被精製液を滞留させ、均質化することができ、結果としてより優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる。特に、後述する循環ろ過を行う場合、流通路S4においてフィルタ104(フィルタBU)及びフィルタ103(フィルタA)からなる群より選択される少なくとも1種のフィルタからなる第1基準フィルタの下流側から、流通路S4において上記第1基準フィルタの上流側へと被精製液を返送する際に、返送された被精製液を受入れるのにタンク401が使用できる。このようにすると、返送された被精製液を滞留させ、均質化してから、再度後段のフィルタに通液できるため、更に優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる。
なお、タンク401の材料は特に制限されないが、既に説明したハウジングの材料と同様の材料が使用でき、その接液部の少なくとも一部(好ましくは接液部の表面積の90%以上、より好ましくは99%以上)は後述する耐腐食材料からなることが好ましい。
【0178】
(第三実施形態に係るろ過装置の変形例)
図5は本発明の第三実施形態に係るろ過装置の変形例を表す模式図である。
ろ過装置500は、流入部101と流出部102との間であって、流通路S5上においてフィルタ104(フィルタBU)の下流側に、直列に配置されたタンク401を更に有するろ過装置である。フィルタ104(フィルタBU)と、タンク401と、フィルタ103(フィルタA)とは、配管501及び配管502を介して直列に配置されている。タンク401は上記のフィルタ及び配管等とともに、流通路S5を構成している。
【0179】
なお、ろ過装置500において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0180】
本実施形態に係るろ過装置は、フィルタBUの下流側にタンクを有しているため、フィルタBUによってろ過された被精製液を滞留させることができる。特に、後述する循環ろ過を行う場合、流通路S4に対してフィルタ103(フィルタA)の下流側から、流通路S4に対してフィルタ103の上流側へと被精製液を返送する際に、返送する被精製液を滞留させるためにタンク401が使用できる。このようにすると、返送する被精製液を滞留させ、均質化してから、再度フィルタ103に通液できるため、更に優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる。
【0181】
なお、本実施形態に係るろ過装置500では、タンク401は、流通路S5上においてフィルタ103(フィルタA)の上流側に配置されているが、本実施形態に係るろ過装置としては、流通路S5上においてフィルタ103の下流側に配置されていてもよい。
【0182】
既に説明したとおり、タンク401は、循環ろ過の際、返送する被精製液を滞留させるのに使用できる。言い換えれば、循環ろ過の基点にすることができ、その場合、流通路S5上において、タンク401の下流側のフィルタ(ろ過装置500では、フィルタ103)又は上流側のフィルタ(ろ過装置500では、フィルタ104)のいずれかが、循環ろ過の対象となることが多い。なお、循環ろ過の基点とは、上記タンクが返送流通路を構成している場合、及び、上記タンクの上流側、又は、下流側の配管が返送流通路を構成している場合のいずれをも含む。
【0183】
ろ過装置500では、タンク401はフィルタ103(フィルタA)の上流側に配置されている。タンク401をフィルタ103(フィルタA)の上流側に配置した場合、循環ろ過の際、流通路S5のうち、タンク401以降を繰り返すと、フィルタBU(例えば、イオン交換基を有するフィルタ)によりろ過された被精製液に対して、最後に、粒子性の不純物をフィルタ103(フィルタA)で除去するフローが採用できる。
【0184】
なお、本実施形態に係るろ過装置としては、フィルタAとフィルタBDがこの順に直列に配置された形態(例えば第二実施形態)、及び、フィルタBU、フィルタA、及び、フィルタBDがこの順に直列に配置された形態(例えば第二実施形態の変形例)において、フィルタAの上流側又は下流側にタンク401を更に有する形態であってもよい。
【0185】
〔第四実施形態〕
図6は本発明の第四実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
ろ過装置600は、流入部101と流出部102の間に、フィルタCであるフィルタ601と、タンク401と、フィルタBUであるフィルタ104と、フィルタAであるフィルタ103とが配管602、配管402、及び、配管105を介して直列に配置されたろ過装置である。
ろ過装置600では、流入部101、フィルタ601、配管602、タンク401、配管402、フィルタ104、配管105、フィルタ103、及び、流出部102が、流通路S6を形成している。
【0186】
なお、ろ過装置600において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0187】
フィルタ601(フィルタC)は、流通路S6においてタンク401の上流側に配置された、孔径20nm以上のフィルタである。本実施形態に係るろ過装置は、流通路S6においてタンク401の上流側に所定の孔径を有するフィルタを配置しているので、流入部101からろ過装置内へと流入した被精製液に含有される不純物等を、予めフィルタ601を用いて取り除くことができる。このため、配管602以降の流通路に混入する不純物の量をより少なくすることができるため、後段のフィルタBU、及び、フィルタA(また、フィルタBDが配置されていればフィルタBD)の寿命をより長くすることができる。その結果、上記ろ過装置によれば、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液を安定的に製造できる。
【0188】
フィルタCの形態としては特に制限されず、既に説明したフィルタAと同一のフィルタであってもよいし、異なるフィルタ(フィルタB)であってもよい。なかでも、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい点で、フィルタBであることが好ましい。なかでも、材料及び細孔構造としてはフィルタBDの材料及び細孔構造として説明したものが好ましい。また、孔径は20nm以上であればよく、50nm以上が好ましく、上限としては特に制限されないが、一般に250nm以下が好ましい。
なお、本実施形態に係るろ過装置としては、流通路上にフィルタAとフィルタBDがこの順に直列に配置された形態(例えば第二実施形態)、及び、流通路上にフィルタBU、フィルタA,及び、フィルタBDがこの順に直列に配置された形態(例えば第二実施形態の変形例)において、フィルタAの下流側にタンクを更に有し、上記タンクの上流側にフィルタCを有する形態であってもよい。
【0189】
〔第五実施形態〕
図7は本発明の第五実施形態に係るろ過装置の模式図である。ろ過装置700は、流入部101と、流出部102と、フィルタBUであるフィルタ104と、フィルタAであるフィルタ103とを有し、フィルタ104とフィルタ103とが、流入部101と流出部102との間に直列に配置され、流入部101から流出部102にいたる流通路S7が形成されたろ過装置である。
ろ過装置700では、流入部101と、フィルタ104と、配管105と、フィルタ103と、流出部102とが、流通路S7を形成している。
【0190】
なお、ろ過装置700において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0191】
ろ過装置700は、流通路S7においてフィルタ104(及びフィルタ103)の下流側から、流通路S7においてフィルタ104の上流側へと被精製液を返送可能な返送流通路R7が形成されている。具体的には、ろ過装置700は、返送用の配管701を有し、この配管701によって、返送流通路R7が形成されている。配管701は、一端がフィルタ104(及びフィルタ103)の下流側で流通路S7と接続し、他端がフィルタ104の上流側で流通路S7と接続している。なお、返送流通路R7上には、図示しないポンプ、ダンパ、及び、弁等が配置されていてもよい。特に、
図7に示した接続部J1及びJ2には弁を配置し、被精製液が意図せず返送流通路を流通しないよう、制御することが好ましい。
【0192】
返送流通路R7を流通して、フィルタ104の(流通路S7における)上流側に返送された被精製液は、再度流通路S7を流通する過程でフィルタ104、及び、フィルタ103によってろ過される。これを循環ろ過といい、ろ過装置700は循環ろ過が実施でき、結果として、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい。
【0193】
なお、
図7では、流通路S7上において、フィルタ103(フィルタA)の下流側からフィルタ104(フィルタBU)の上流側へと被精製液を返送できるよう配管701が配置されている。つまり、フィルタ104を第1基準フィルタとし、第1基準フィルタの下流側から、第1基準フィルタの上流側へと、被精製液を返送できるような返送流通路を有している。本実施形態に係るろ過装置としては、上記に制限されず、フィルタ103(フィルタA)を第1基準フィルタとし、フィルタ103の下流側から、フィルタ104の下流側であって、フィルタ103の上流側へと、被精製液を返送できるような返送流通路を有していてもよい。
また、
図7では、返送流通路R7が配管のみから形成されているが、既に説明した1つ又は複数のタンク及び配管から形成されていてもよい。
【0194】
図8は、本発明の第五実施形態に係るろ過装置の変形例を表す模式図である。
ろ過装置800は、流入部101と、タンク401(a)、401(b)、流出部102とフィルタAであるフィルタ103と、フィルタBUであるフィルタ104とを有し、タンク401(a)、フィルタ104、フィルタ103、及び、401(b)とが、流入部101と流出部102との間に直列に配置され、流入部101と、タンク401(a)、配管802、フィルタ104、配管803、フィルタ103、配管804、タンク401(b)、及び、流出部102とが、流通路S8を形成している。
【0195】
なお、ろ過装置800において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0196】
ろ過装置800は、流通路S8上においてフィルタ103の下流側に配置されたタンク401(b)の下流側から、流通路S8上においてフィルタ103の上流側に配置されたタンク401(a)の上流側へと被精製液を返送可能な返送流通路R8が形成されている。配管801は、一端がタンク401(b)の下流側で流通路S8と接続し、他端がタンク401(a)の上流側で流通路S8と接続している。なお、返送流通路R8には、図示しないポンプ、ダンパ、及び、弁等が配置されていてもよい。
【0197】
なお、本実施形態に係るろ過装置は、返送流通路R8の基点が、流通路上においてタンク401(b)の下流側に配置され、終点が、流通路上においてタンク401(a)の上流側に配置されている。このようにすることで、循環ろ過の際に、被精製液を滞留させてから返送し、返送後も、滞留させてから再度流通させることができ、結果としてより優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる。なお、本実施形態に係るろ過装置としては、タンク401(b)と配管801とが直接接続する形態であってもよく、タンク401(a)と配管801とが直接接続する形態であってもよく、その両方を備える形態であってもよい。
【0198】
〔第六実施形態〕
図9は本発明の第五実施形態に係るろ過装置の模式図である。ろ過装置900は、流入部101と、流出部102と、フィルタBUであるフィルタ104と、フィルタAであるフィルタ103とを有し、フィルタ104とフィルタ103とが、流入部101と流出部102との間に直列に配置され、流入部101から流出部102にいたる流通路S9が形成されたろ過装置である。
ろ過装置900では、流入部101と、フィルタ104と、配管105と、フィルタ103と、流出部102とが、流通路S9を形成している。
【0199】
なお、ろ過装置900において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0200】
ろ過装置900は、流通路S9上においてフィルタ103の下流側から、流通路S9上においてフィルタ104の下流側であってフィルタ103の上流側へと被精製液を返送可能な返送流通路R9が形成されている。配管901は、一端がフィルタ103の下流側で流通路S9と接続し、他端がフィルタ103の上流側かつフィルタ104の下流側で流通路S9と接続している。具体的には、ろ過装置900は、返送用の配管901を有し、この配管901によって、返送流通路R9が形成されている。なお、返送流通路R9上には図示しないポンプ、ダンパ、及び、弁等が配置されていてもよい。
【0201】
返送流通路R9を流通して、フィルタ104の下流側であって、フィルタ103の上流側に返送された被精製液は、再度流通路S9を流通する過程でフィルタ103によってろ過される。特にフィルタ104がイオン交換基を有する樹脂を材料成分として含有するフィルタである場合、フィルタ104によってろ過された被精製物から、粒子状の不純物を、フィルタ103による循環ろ過で除去することができ、結果として、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい。
【0202】
なお、
図9では、流通路S9上においてフィルタ103(フィルタA:第1基準フィルタ)の下流側から、流通路S9上においてフィルタBUの下流側であって、かつ、フィルタAの上流側へと被精製液を返送できるよう配管901が配置されているが、本実施形態に係るろ過装置としては、流通路上にフィルタAとフィルタBDがこの順に直列に配置されている場合に、フィルタBD(第2基準フィルタ)の下流側から、流通路上において、フィルタBDの上流側、又は、フィルタAの上流側に被精製液を返送できるよう、流通路が形成されていてもよい。
【0203】
図10は、本実施形態に係るろ過装置の変形例を示した模式図である。ろ過装置1000は、流入部101と、流出部102と、フィルタBUであるフィルタ104-1と、フィルタBUであるフィルタ104-2(第1基準フィルタ)と、フィルタ103とを有し、フィルタ104-1、フィルタ104-2、及び、フィルタ103が、流入部101と流出部102との間に直列に配置され、流入部101から流出部102にいたる流通路S10を有するろ過装置である。
ろ過装置1000では、流入部101と、フィルタ104-1と、配管1001と、フィルタ104-2と、配管1002と、フィルタ103と、流出部102とが、流通路S10を形成している。
【0204】
なお、ろ過装置1000において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0205】
ろ過装置1000は、流通路S10上においてフィルタ104-2(第1基準フィルタ)の下流から、流通路S10に対してフィルタ104-1の下流であってフィルタ104-2(第1基準フィルタ)の上流へと被精製液を返送可能な返送流通路R10が形成されている。配管1003は、一端がフィルタ103の上流側かつフィルタ104-2の下流側で流通路S10と接続し、他端がフィルタ104-1の下流側かつフィルタ104-2の上流側で流通路S10と接続している。具体的には、ろ過装置1000は、返送用の配管1003を有し、この配管1003によって、返送流通路R10が形成されている。なお、返送流通路R10には、図示しないポンプ、ダンパ、及び、弁等が配置されていてもよい。
【0206】
返送流通路R10によって、流通路S10上におけるフィルタ104-1の下流側であって、フィルタ104-2の上流側に返送された被精製液は、再度流通路S10を流通する過程でフィルタ104-2によってろ過される。ろ過装置1000によれば、循環ろ過が実施でき、結果として、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい。
【0207】
なお、
図10のろ過装置では、流通路S10上におけるフィルタ104-2の下流側、すなわち、フィルタ103の上流側から、フィルタ104-2の上流側へと被精製液を返送可能な返送流通路R10が形成されているが、本実施形態に係るろ過装置としては上記に制限されず、フィルタ104-2の下流側から、フィルタ104-1の上流側へと被精製液を返送可能な返送流通路が形成されているろ過装置等であってもよい。
また、流通路上にフィルタA、フィルタBD(フィルタBD-1とする)、及び、フィルタBD(フィルタBD-2とする)がこの順に直列に配置されたろ過装置において、フィルタBD-1(第2基準フィルタ)の下流側(フィルタBD-2の上流側、及び、フィルタBD-2の下流側のいずれであってもよい)から、フィルタBD-1の上流側(フィルタBD-2の上流側であって、フィルタAの下流側、又は、フィルタAの上流側のいずれであってもよい)へと被精製液を返送する返送流通路を有する形態であってもよい。
【0208】
[薬液の製造方法(第一実施形態)]
本発明の実施形態に係る薬液の製造方法は、被精製液を精製して薬液を得る、薬液の製造方法であって、既に説明したろ過装置を用いて被精製液をろ過して、薬液を得るろ過工程を有する。
【0209】
〔被精製液〕
本発明の実施形態に係る薬液の製造方法が適用できる被精製液としては特に制限されないが、溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては有機溶剤、及び、水等が挙げられ、有機溶剤を含有することが好ましい。以下では、被精製液中に含有される溶剤の全質量に対して、有機溶剤の含有量(複数の有機溶剤を含有する場合にはその合計含有量)が50質量%を超える有機溶剤系被精製液と、被精製液中に含有される溶剤の全質量に対して、水の含有量が50質量%を超える水系被精製液とに分けて説明する。
【0210】
<有機溶剤系被精製液>
(有機溶剤)
有機溶剤系被精製液は、有機溶剤を含有し、被精製液に含有される溶媒の全質量に対して有機溶剤の含有量が50質量%超である。
有機溶剤系被精製液中における有機溶剤の含有量としては特に制限されないが、一般に、有機溶剤系被精製液の全質量に対して、99.0質量%以上が好ましい。上限値としては特に制限されないが、一般に、99.99999質量%以下が好ましい。
有機溶剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の有機溶剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0211】
なお、本明細書において、有機溶剤とは、上記被精製液の全質量に対して、1成分あたり10000質量ppmを超えた含有量で含有される液状の有機化合物を意図する。つまり、本明細書においては、上記被精製液の全質量に対して10000質量ppmを超えて含有される液状の有機化合物は、有機溶剤に該当するものとする。
なお、本明細書において液状とは、25℃、大気圧下において、液体であることを意図する。
【0212】
上記有機溶剤の種類としては特に制限されず、公知の有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及び、ピルビン酸アルキル等が挙げられる。
また、有機溶剤としては、例えば、特開2016-57614号公報、特開2014-219664号公報、特開2016-138219号公報、及び、特開2015-135379号公報に記載のものを用いてもよい。
【0213】
有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMM)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGMP)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチル(EL)、メトキシプロピオン酸メチル(MPM)、シクロペンタノン(CyPn)、シクロヘキサノン(CyHe)、γ-ブチロラクトン(γBL)、ジイソアミルエーテル(DIAE)、酢酸ブチル(nBA)、酢酸イソアミル(iAA)、イソプロパノール(IPA)、4-メチル-2-ペンタノール(MIBC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジエチレングリコール(DEG)、エチレングリコール(EG)、ジプロピレングリコール(DPG)、プロピレングリコール(PG)、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、スルホラン、シクロヘプタノン、及び、2-ヘプタノン(MAK)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0214】
なお、被精製液中における有機溶剤の種類及び含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定できる。
【0215】
(その他の成分)
被精製液は、上記以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、無機物(金属イオン、金属粒子、及び、金属酸化物粒子等)、樹脂、樹脂以外の有機物、及び、水等が挙げられる。
【0216】
・無機物
被精製液は、無機物を含有してもよい。無機物としては特に制限されず、金属イオン、及び、金属含有粒子等が挙げられる。
【0217】
金属含有粒子は金属原子を含有していればよく、その形態は特に制限されない。例えば、金属原子の単体か、金属原子を含有する化合物(以下「金属化合物」ともいう。)、並びに、これらの複合体等が挙げられる。また、金属含有粒子は複数の金属原子を含有してもよい。
【0218】
複合体としては特に制限されないが、金属原子の単体と、上記金属原子の単体の少なくとも一部を覆う金属化合物と、を有するいわゆるコア-シェル型の粒子、金属原子と他の原子とを含む固溶体粒子、金属原子と他の原子とを含む共晶体粒子、金属原子の単体と金属化合物との凝集体粒子、種類の異なる金属化合物の凝集体粒子、及び、粒子表面から中心に向かって連続的又は断続的に組成が変化する金属化合物等が挙げられる。
【0219】
金属化合物が含有する金属原子以外の原子としては特に制限されないが、例えば、炭素原子、酸素原子、窒素原子、水素原子、硫黄原子、及び、燐原子等が挙げられ、中でも、酸素原子が好ましい。
【0220】
金属原子としては特に制限されないが、Fe原子、Al原子、Cr原子、Ni原子、Pb原子、Zn原子、及び、Ti原子等が挙げられる。なお、金属含有粒子は、上記金属原子の1種を単独で含有しても、2種以上を併せて含有してもよい。
【0221】
金属含有粒子の粒子径は特に制限されないが、一般に、1~100nmであることが多い。
【0222】
無機物は、被精製液に添加されてもよいし、製造工程において意図せず被精製液に混合されてもよい。薬液の製造工程において意図せずに混合される場合としては例えば、無機物が、薬液の製造に用いる原料(例えば、有機溶剤)に含有されている場合、及び、薬液の製造工程で混合する(例えば、コンタミネーション)等が挙げられるが、上記に制限されない。
【0223】
(樹脂)
被精製液は樹脂を含有してもよい。樹脂としては、酸の作用により分解して極性基を生じる基を有する樹脂Pが好ましい。上記樹脂としては、酸の作用により有機溶剤を主成分とする現像液に対する溶解性が減少する樹脂である、後述する式(AI)で表される繰り返し単位を有する樹脂がより好ましい。後述する式(AI)で表される繰り返し単位を有する樹脂は、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する。
極性基としては、アルカリ可溶性基が挙げられる。アルカリ可溶性基としては、例えば、カルボキシ基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、フェノール性水酸基、及びスルホ基が挙げられる。
【0224】
酸分解性基において極性基は酸で脱離する基(酸脱離性基)によって保護されている。酸脱離性基としては、例えば、-C(R36)(R37)(R38)、-C(R36)(R37)(OR39)、及び、-C(R01)(R02)(OR39)等が挙げられる。
【0225】
式中、R36~R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
【0226】
R01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
【0227】
以下、酸の作用により有機溶剤を主成分とする現像液に対する溶解性が減少する樹脂Pについて詳述する。
【0228】
(式(AI):酸分解性基を有する繰り返し単位)
樹脂Pは、式(AI)で表される繰り返し単位を含有することが好ましい。
【0229】
【0230】
式(AI)に於いて、
Xa1は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Ra1~Ra3は、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状又は分岐鎖状)又はシクロアルキル基(単環又は多環)を表す。
Ra1~Ra3の2つが結合して、シクロアルキル基(単環又は多環)を形成してもよい。
【0231】
Xa1により表される、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、及び-CH2-R11で表される基が挙げられる。R11は、ハロゲン原子(フッ素原子等)、水酸基、又は1価の有機基を表す。
Xa1は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基が好ましい。
【0232】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、-COO-Rt-基、及び、-O-Rt-基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は-COO-Rt-基が好ましい。Rtは、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、-CH2-基、-(CH2)2-基、又は、-(CH2)3-基がより好ましい。
【0233】
Ra1~Ra3のアルキル基としては、炭素数1~4のものが好ましい。
【0234】
Ra1~Ra3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、若しくはシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、若しくはアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Ra1~Ra3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、若しくはシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、若しくはアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
【0235】
Ra1~Ra3の2つが結合して形成される上記シクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又はカルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
【0236】
式(AI)で表される繰り返し単位は、例えば、Ra1がメチル基又はエチル基であり、Ra2とRa3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0237】
上記各基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシ基、及びアルコキシカルボニル基(炭素数2~6)等が挙げられ、炭素数8以下が好ましい。
【0238】
式(AI)で表される繰り返し単位の含有量は、樹脂P中の全繰り返し単位に対して、20~90モル%が好ましく、25~85モル%がより好ましく、30~80モル%が更に好ましい。
【0239】
(ラクトン構造を有する繰り返し単位)
また、樹脂Pは、ラクトン構造を有する繰り返し単位Qを含有することが好ましい。
【0240】
ラクトン構造を有する繰り返し単位Qは、ラクトン構造を側鎖に有していることが好ましく、(メタ)アクリル酸誘導体モノマーに由来する繰り返し単位であることがより好ましい。
ラクトン構造を有する繰り返し単位Qは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用していてもよいが、1種単独で用いることが好ましい。
ラクトン構造を有する繰り返し単位Qの含有量は、樹脂P中の全繰り返し単位に対して、3~80モル%が好ましく、3~60モル%がより好ましい。
【0241】
ラクトン構造としては、5~7員環のラクトン構造が好ましく、5~7員環のラクトン構造にビシクロ構造又はスピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環している構造がより好ましい。
ラクトン構造としては、下記式(LC1-1)~(LC1-17)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を有することが好ましい。ラクトン構造としては式(LC1-1)、式(LC1-4)、式(LC1-5)、又は式(LC1-8)で表されるラクトン構造がより好ましく、式(LC1-4)で表されるラクトン構造が更に好ましい。
【0242】
【0243】
ラクトン構造部分は、置換基(Rb2)を有していてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数2~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、及び酸分解性基等が挙げられる。n2は、0~4の整数を表す。n2が2以上のとき、複数存在する置換基(Rb2)は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb2)同士が結合して環を形成してもよい。
【0244】
(フェノール性水酸基を有する繰り返し単位)
また、樹脂Pは、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位を含有していてもよい。
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(I)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0245】
【0246】
式中、
R41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はAr4と結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
【0247】
X4は、単結合、-COO-、又は-CONR64-を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
L4は、単結合又はアルキレン基を表す。
Ar4は、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
【0248】
一般式(I)におけるR41、R42及びR43のアルキル基としては、置換基を有していてもよい、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基及びドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が好ましく、炭素数8以下のアルキル基がより好ましく、炭素数3以下のアルキル基が更に好ましい。
【0249】
一般式(I)におけるR41、R42及びR43のシクロアルキル基としては、単環型でも、多環型でもよい。シクロアルキル基としては、置換基を有していてもよい、シクロプロピル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基などの炭素数3~8で単環型のシクロアルキル基が好ましい。
【0250】
一般式(I)におけるR41、R42及びR43のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0251】
一般式(I)におけるR41、R42及びR43のアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R41、R42及びR43におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0252】
上記各基における置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、及び、ニトロ基等が挙げられ、置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0253】
Ar4は、(n+1)価の芳香環基を表す。nが1である場合における2価の芳香環基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基及びアントラセニレン基などの炭素数6~18のアリーレン基、並びに、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール及びチアゾール等のヘテロ環を含む芳香環基が挙げられる。
【0254】
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香環基の具体例としては、2価の芳香環基の上記した具体例から、(n-1)個の任意の水素原子を除してなる基が挙げられる。
(n+1)価の芳香環基は、更に置換基を有していてもよい。
【0255】
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルキレン基及び(n+1)価の芳香環基が有し得る置換基としては、例えば、一般式(I)におけるR41、R42及びR43で挙げたアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基及びブトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0256】
X4により表わされる-CONR64-(R64は、水素原子又はアルキル基を表す)におけるR64のアルキル基としては、置換基を有していてもよい、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基及びドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、炭素数8以下のアルキル基がより好ましい。
【0257】
X4としては、単結合、-COO-又は-CONH-が好ましく、単結合又は-COO-がより好ましい。
【0258】
L4におけるアルキレン基としては、置換基を有していてもよい、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基及びオクチレン基等の炭素数1~8のアルキレン基が好ましい。
【0259】
Ar4としては、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香環基が好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基又はビフェニレン環基がより好ましい。
【0260】
一般式(I)で表される繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン構造を備えていることが好ましい。即ち、Ar4は、ベンゼン環基であることが好ましい。
【0261】
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂P中の全繰り返し単位に対して、0~50モル%が好ましく、0~45モル%がより好ましく、0~40モル%が更に好ましい。
【0262】
(極性基を有する有機基を含有する繰り返し単位)
樹脂Pは、極性基を有する有機基を含有する繰り返し単位、特に、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位を更に含有していてもよい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。
極性基で置換された脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアダマンチル基又はノルボルナン基が好ましい。極性基としては、水酸基又はシアノ基が好ましい。
【0263】
樹脂Pが、極性基を有する有機基を含有する繰り返し単位を含有する場合、その含有量は、樹脂P中の全繰り返し単位に対して、1~50モル%が好ましく、1~30モル%がより好ましく、5~25モル%が更に好ましく、5~20モル%が特に好ましい。
【0264】
(一般式(VI)で表される繰り返し単位)
樹脂Pは、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位を含有していてもよい。
【0265】
【0266】
一般式(VI)中、
R61、R62及びR63は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R62はAr6と結合して環を形成していてもよく、その場合のR62は単結合又はアルキレン基を表す。
X6は、単結合、-COO-、又は-CONR64-を表す。R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
L6は、単結合又はアルキレン基を表す。
Ar6は、(n+1)価の芳香環基を表し、R62と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
Y2は、n≧2の場合には各々独立に、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。但し、Y2の少なくとも1つは、酸の作用により脱離する基を表す。
nは、1~4の整数を表す。
【0267】
酸の作用により脱離する基Y2としては、下記一般式(VI-A)で表される構造が好ましい。
【0268】
【0269】
L1及びL2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアルキレン基とアリール基とを組み合わせた基を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、アルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基又はアルデヒド基を表す。
Q、M、L1の少なくとも2つが結合して環(好ましくは、5員若しくは6員環)を形成してもよい。
【0270】
上記一般式(VI)で表される繰り返し単位は、下記一般式(3)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0271】
【0272】
一般式(3)において、
Ar3は、芳香環基を表す。
R3は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基又はヘテロ環基を表す。
M3は、単結合又は2価の連結基を表す。
Q3は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。
Q3、M3及びR3の少なくとも二つが結合して環を形成してもよい。
【0273】
Ar3が表す芳香環基は、上記一般式(VI)におけるnが1である場合の、上記一般式(VI)におけるAr6と同様であり、フェニレン基又はナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
【0274】
(側鎖に珪素原子を有する繰り返し単位)
樹脂Pは、更に、側鎖に珪素原子を有する繰り返し単位を含有していてもよい。側鎖に珪素原子を有する繰り返し単位としては、例えば、珪素原子を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位、及び、珪素原子を有するビニル系繰り返し単位などが挙げられる。側鎖に珪素原子を有する繰り返し単位は、典型的には、側鎖に珪素原子を有する基を有する繰り返し単位であり、珪素原子を有する基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリストリメチルシロキシシリル基、トリストリメチルシリルシリル基、メチルビストリメチルシリルシリル基、メチルビストリメチルシロキシシリル基、ジメチルトリメチルシリルシリル基、ジメチルトリメチルシロキシシリル基、及び、下記のような環状もしくは直鎖状ポリシロキサン、又はカゴ型あるいははしご型もしくはランダム型シルセスキオキサン構造などが挙げられる。式中、R、及び、R1は各々独立に、1価の置換基を表す。*は、結合手を表す。
【0275】
【0276】
上記の基を有する繰り返し単位としては、例えば、上記の基を有するアクリレート化合物又はメタクリレート化合物に由来する繰り返し単位、又は、上記の基とビニル基とを有する化合物に由来する繰り返し単位が好ましい。
【0277】
樹脂Pが、上記側鎖に珪素原子を有する繰り返し単位を有する場合、その含有量は、樹脂P中の全繰り返し単位に対して、1~30モル%が好ましく、5~25モル%がより好ましくは、5~20モル%が更に好ましい。
【0278】
樹脂Pの重量平均分子量は、GPC(Gel permeation chromatography)法によりポリスチレン換算値として、1,000~200,000が好ましく、3,000~20,000がより好ましく、5,000~15,000が更に好ましい。重量平均分子量を、1,000~200,000とすることにより、耐熱性及びドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化したりすることを防ぐことができる。
【0279】
分散度(分子量分布)は、通常1~5であり、1~3が好ましく、1.2~3.0がより好ましく、1.2~2.0が更に好ましい。
【0280】
薬液中に含まれるその他の成分(例えば酸発生剤、塩基性化合物、クエンチャー、疎水性樹脂、界面活性剤、及び溶剤等)についてはいずれも公知のものを使用できる。
【0281】
<水系被精製液>
水系被精製液は、水系被精製液が含有する溶剤の全質量に対して、水を50質量%超含有し、51~95質量%が好ましい。
上記水は、特に限定されないが、半導体製造に使用される超純水を用いることが好ましく、その超純水を更に精製し、無機陰イオン及び金属イオン等を低減させた水を用いることがより好ましい。精製方法は特に限定されないが、ろ過膜又はイオン交換膜を用いた精製、並びに、蒸留による精製が好ましい。また、例えば、特開2007―254168号公報に記載されている方法により精製を行うことが好ましい。
【0282】
(酸化剤)
水系被精製液は、酸化剤を含有してもよい、酸化剤としては特に制限されず、公知の酸化剤が使用できる。酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化物、硝酸、硝酸塩、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、過硫酸塩、重クロム酸塩、過マンガン酸塩、オゾン水、銀(II)塩、及び鉄(III)塩等が挙げられる。
【0283】
酸化剤の含有量としては特に制限されないが、水系被精製液の全質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、99質量%以下が好ましい。なお、酸化剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の酸化剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0284】
(無機酸)
水系被精製液は無機酸を含有してもよい。無機酸としては特に制限されず、公知の無機酸を用いることができる。無機酸としては例えば、硫酸、リン酸、及び、塩酸等が挙げられる。なお、無機酸は上述した酸化剤には含まれない。
水系被精製液中の無機酸の含有量としては特に制限されないが、水系被精製液の全質量に対して0.01質量%以上が好ましく、99質量%以下が好ましい。
無機酸は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の無機酸を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0285】
(防食剤)
水系被精製液は、防食剤を含有してもよい。防食剤としては特に制限されず、公知の防食剤が使用できる。防食剤としては例えば、1,2,4-トリアゾール(TAZ)、5-アミノテトラゾール(ATA)、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、3-アミノ-1H-1,2,4トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、トリルトリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、1-アミノ-1,2,4-トリアゾール、1-アミノ-1,2,3-トリアゾール、1-アミノ-5-メチル-1,2,3-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-イソプロピル-1,2,4-トリアゾール、ナフトトリアゾール、1H-テトラゾール-5-酢酸、2-メルカプトベンゾチアゾール(2-MBT)、1-フェニル-2-テトラゾリン-5-チオン、2-メルカプトベンゾイミダゾール(2-MBI)、4-メチル-2-フェニルイミダゾール、2-メルカプトチアゾリン、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン、チアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアジン、メチルテトラゾール、ビスムチオールI、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,5-ペンタメチレンテトラゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、ジアミノメチルトリアジン、イミダゾリンチオン、4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-チオール、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、ベンゾチアゾール、リン酸トリトリル、インダゾール、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ホスフェート阻害剤、アミン類、ピラゾール類、プロパンチオール、シラン類、第2級アミン類、ベンゾヒドロキサム酸類、複素環式窒素阻害剤、アスコルビン酸、チオ尿素、1,1,3,3-テトラメチル尿素、尿素、尿素誘導体類、尿酸、エチルキサントゲン酸カリウム、グリシン、ドデシルホスホン酸、イミノ二酢酸、ホウ酸、マロン酸、コハク酸、ニトリロ三酢酸、スルホラン、2,3,5-トリメチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、キノキサリン、アセチルピロール、ピリダジン、ヒスタジン(histadine)、ピラジン、グルタチオン(還元型)、システイン、シスチン、チオフェン、メルカプトピリジンN-オキシド、チアミンHCl、テトラエチルチウラムジスルフィド、2,5-ジメルカプト-1,3-チアジアゾールアスコルビン酸、カテコール、t-ブチルカテコール、フェノール、及びピロガロールが挙げられる。
【0286】
上記防食剤としては、ドデカン酸、パルミチン酸、2-エチルヘキサン酸、及びシクロヘキサン酸等の脂肪族カルボン酸;クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、イタコン酸、マレイン酸、グリコール酸、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、サリチル酸、スルフォサリチル酸、アントラニル酸、N-メチルアントラニル酸、3-アミノ-2-ナフトエ酸、1-アミノ-2-ナフトエ酸、2-アミノ-1-ナフトエ酸、1-アミノアントラキノン-2-カルボン酸、タンニン酸、及び没食子酸等のキレート能を有するカルボン酸;等を用いることもできる。
【0287】
また、上記防食剤としては、やし脂肪酸塩、ヒマシ硫酸化油塩、ラウリルサルフェート塩、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルサルフェート塩、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート塩、イソプロピルホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェート塩等のアニオン界面活性剤;オレイルアミン酢酸塩、ラウリルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤;ヤシアルキルジメチルアミンオキサイド、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、アミドベタイン型活性剤、アラニン型活性剤、ラウリルイミノジプロピオン酸等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル等、ポリオキシアルキレン一級アルキルエーテル又はポリオキシアルキレン二級アルキルエーテルのノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン化硬化ヒマシ油、ソルビタンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド等のその他のポリオキアルキレン系のノニオン界面活性剤;オクチルステアレート、トリメチロールプロパントリデカノエート等の脂肪酸アルキルエステル;ポリオキシアルキレンブチルエーテル、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル、トリメチロールプロパントリス(ポリオキシアルキレン)エーテル等のポリエーテルポリオールを用いることもできる。
上記の市販品としては、例えばニューカルゲンFS-3PG(竹本油脂社製)、及びホステンHLP-1(日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0288】
また、防食剤としては、親水性ポリマーを用いることもできる。
親水性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール等のポリグリコール類、ポリグリコール類のアルキルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸等の多糖類、ポリメタクリル酸、及びポリアクリル酸等のカルボン酸含有ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、及びポリエチレンイミン等が挙げられる。そのような親水性ポリマーの具体例としては、特開2009-88243号公報0042~0044段落、特開2007-194261号公報0026段落に記載されている水溶性ポリマーが挙げられる。
【0289】
また、防食剤としては、セリウム塩を用いることもできる。
セリウム塩としては特に制限されず、公知のセリウム塩を用いることができる。
セリウム塩としては、例えば、3価のセリウム塩として、酢酸セリウム、硝酸セリウム、塩化セリウム、炭酸セリウム、シュウ酸セリウム、及び硫酸セリウム等が挙げられる。また、4価のセリウム塩として、硫酸セリウム、硫酸セリウムアンモニウム、硝酸セリウムアンモニウム、硝酸二アンモニウムセリウム、及び水酸化セリウム等が挙げられる。
【0290】
防食剤は、置換、又は無置換のベンゾトリアゾールを含んでもよい。好適な置換型ベンゾトリアゾールには、これらに限定されないが、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、又は水酸基で置換されたベンゾトリアゾールが含まれる。置換型ベンゾトリアゾールには、1以上のアリール(例えば、フェニル)又はヘテロアリール基で融合されたものも含まれる。
【0291】
水系被精製液中の防食剤の含有量は、薬液の全質量に対して、0.01~5質量%となるよう、調整されることが好ましく、0.05~5質量%となるよう調整されることがより好ましく、0.1~3質量%となるよう調整されることが更に好ましい。
防食剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の防食剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0292】
(有機溶剤)
水系被精製液は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては特に制限されないが、有機溶剤系被精製液が含有する有機溶剤として既に説明したとおりである。有機溶剤を含有する場合、水系被精製液が含有する溶媒の全質量に対して、有機溶剤の含有量は5~35質量%が好ましい。
【0293】
<被精製液とろ過装置との関係>
被精製液とろ過装置(フィルタの配置)の関係としては特に制限されないが、被精製液の溶解パラメータ(SP値)との関係では、SP値が20(MPa)1/2以下である場合、ろ過装置は、既に説明したフィルタBU、及び、フィルタAを有することが好ましく、上記フィルタBUは、イオン交換基を有する樹脂を材料成分として含有することがより好ましい。なお、SP値の下限としては特に制限されないが、一般に14(MPa)1/2以上が好ましい。
【0294】
本発明者らの検討によれば、被精製液のSP値が20(MPa)1/2以下である場合、イオン交換基を有する樹脂を材料成分として含有するフィルタBUに被精製液を通液すると、詳細なメカニズムは明らかとなっていないが、フィルタBUの膨潤等によって、フィルタBUから微小なゲル状物質を含む粒子状の不純物が被精製液に移行することがあることを知見している。
この場合、フィルタBUは被精製液中のイオン性成分(典型的には、金属イオン等の不純物)と相互作用が大きく、これらの不純物を非精製液中から除去することが可能である。一方、上記のとおり、被精製液のSP値が所定の範囲以下であると、被精製液中に微量の不純物(ゲル状物質を含む)が混入する場合があった。
【0295】
従来、このようなゲル状物質を被精製液から除去する方法の一つとして、ナイロン製のフィルタによる吸着が用いられてきた。しかしながら、ナイロン製のフィルタは、被精製液のSP値が20(MPa)1/2以下であるような場合、耐久性が不十分であり、場合によっては新たな欠陥発生源となることもあった。
【0296】
一方、上記実施形態に係るろ過装置においては、フィルタBUの後段にフィルタAを配置することで、ゲル状物質を含む上記粒子状の不純物が除去可能であり好ましい。
フィルタAは、SP値が20(MPa)1/2以下の被精製液に対しても十分な耐久性を有し、かつ、表面が親水化されているため、被精製液を通液すると、膜表面に親水性の液体による被膜が形成されると推測され、この被膜により被精製液中のゲル状の不純物等が効率的に除去できるものと推測される。
【0297】
なお、本明細書において、SP値とは、「溶解度パラメータの値」を意味する。本発明でいうSP値とは、ハンセン溶解度パラメータ:A User’s Handbook, Second Edition, C.M.Hansen (2007), Taylor and Francis Group, LLC (HSPiPマニュアル)で解説された式によるハンセン溶解度パラメータであり、「実践ハンセン溶解度パラメータHSPiP第3版」(ソフトウエアーバージョン4.0.05)を用いて、下記式にてSP値を算出した値を用いている。
(SP値)2=(δHd)2+(δHp)2+(δHh)2
Hd :分散項
Hp :分極項(極性項)
Hh :水素結合項
【0298】
なお、被精製液が2種以上の溶剤の混合物である場合、被精製液のSP値は、上記各溶剤の単体のSP値と、各溶剤の体積分率との積の総和によって求められる。すなわち、以下の式で表される。
(被精製液のSP値)=Σ{(各溶剤のSP値)×(各溶剤の体積分率)}
例えば、被精製液が含有する溶剤が、PGMEAとPGMEの7:3(体積基準)の混合液である場合、そのSP値は、17.8×0.7+23.05×0.3により計算され、19.375(MPa)1/2と求められる。なお、本明細書における上記SP値は、(MPa)1/2の単位で表わした際に小数点以下第2位を四捨五入した値として求めるものとし、上記の場合、上記被精製液のSP値は下記実施例の表に記載したとおり、19.4(MPa)1/2とする。
【0299】
〔ろ過工程〕
本実施形態に係る薬液の製造方法は、既に説明したろ過装置を用いて、上記被精製液をろ過して、薬液を得るろ過工程を有する。
上記ろ過装置は、フィルタAとフィルタBとが直列に配置されて形成された流通路を有する。各フィルタに対する被精製液の供給圧力としては特に制限されないが、一般に、0.00010~1.0MPaが好ましい。
なかでも、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる点で、供給圧力P2は、0.00050~0.090MPaが好ましく、0.0010~0.050MPaがより好ましく、0.0050~0.040MPaが更に好ましい。
また、ろ過圧力はろ過精度に影響を与えることから、ろ過時における圧力の脈動は可能な限り少ない方が好ましい。
【0300】
ろ過速度は特に限定されないが、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい点で、1.0L/分/m2以上が好ましく、0.75L/分/m2以上がより好ましく、0.6L/分/m2以上が更に好ましい。
フィルタにはフィルタ性能(フィルタが壊れない)を保障する耐差圧が設定されており、この値が大きい場合にはろ過圧力を高めることでろ過速度を高めることができる。つまり、上記ろ過速度上限は、通常、フィルタの耐差圧に依存するが、通常、10.0L/分/m2以下が好ましい。
【0301】
被精製液をフィルタに通す際の温度としては特に制限されないが、一般に、室温未満が好ましい。
【0302】
なお、ろ過工程は、クリーンな環境下で実施することが好ましい。具体的には米国連邦規格(Fed.Std.209E)のClass1000(ISO14644-1:2015では、Class6)を満たすクリーンルームで実施することが好ましく、Class100(ISO14644-1:2015では、Class5)を満たすクリーンルームがより好ましく、Class10(ISO14644-1:2015では、Class4)を満たすクリーンルームが更に好ましく、Class1(ISO14644-1:2015では、Class3)又はそれ以上の清浄度(クラス2、又は、クラス1)を有するクリーンルームが特に好ましい。
なお、後述する各工程も、上記クリーン環境下にて実施することが好ましい。
【0303】
また、ろ過装置が返送流通路を有している場合、ろ過工程は循環ろ過工程であってもよい。循環ろ過工程とは、被精製液を少なくともフィルタAでろ過し、フィルタAでろ過した後の被精製液を流通路に対してフィルタAの上流に返送し、再度フィルタAでろ過する工程である。
循環ろ過の回数としては特に制限されないが、一般に2~10回が好ましい。なお、循環ろ過はフィルタAによるろ過を繰り返すよう、被精製液をフィルタAの上流に返送すればよいが、この際、フィルタAに加えて少なくとも1のフィルタBによるろ過も合わせ繰り返すよう、返送流通路を調整してもよい。
【0304】
〔その他の工程〕
本実施形態に係る薬液の製造方法は、上記以外の工程を有していてもよい。上記以外の工程としては、例えば、フィルタ洗浄工程、装置洗浄工程、除電工程、及び、被精製液準備工程等が挙げられる。以下では、各工程について詳述する。
【0305】
<フィルタ洗浄工程>
フィルタ洗浄工程は、ろ過工程の前にフィルタA及びフィルタBを洗浄する工程である。フィルタを洗浄する方法としては特に制限されないが、例えば、フィルタを浸漬液に浸漬する方法、フィルタに洗浄液を通液して洗浄する方法、及び、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0306】
(フィルタを浸漬液に浸漬する方法)
フィルタを浸漬液に浸漬する方法としては、例えば、浸漬用容器を浸漬液で満たし、上記浸漬液にフィルタを浸漬する方法が挙げられる。
【0307】
・浸漬液
浸漬液としては特に制限されず、公知の浸漬液を使用できる。なかでもより優れた本発明の効果が得られる点で、浸漬液としては、水又は有機溶剤を主成分として含有することが好ましく、有機溶剤を主成分として含有することがより好ましい。本明細書において主成分とは、浸漬液の全質量に対して99.9質量%以上含有される成分を意味し、99.99質量%以上含有することが好ましい。
【0308】
上記有機溶剤としては特に制限されず、被精製液が含有する有機溶剤として既に説明した有機溶剤が使用できる。なかでもより優れた本発明の効果が得られる点で、洗浄液としてはエステル系溶剤、及び、ケトン系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有することが好ましい。またこれらを組み合わせて使用してもよい。
【0309】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、乳酸メチル、及び、乳酸ブチル等が挙げられるが上記に制限されない。
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、2-ヘプタノン(MAK)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、及び、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等が挙げられるが上記に制限されない。
【0310】
浸漬液にフィルタを浸漬する時間としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果が得られる点で、7日~1年が好ましい。
浸漬液の温度としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果が得られる点で、20℃以上が好ましい。
【0311】
浸漬用容器としては、既に説明したろ過装置において、フィルタが収納されるハウジングも使用できる。すなわち、ろ過装置が有するハウジングにフィルタ(典型的にはフィルタカートリッジ)を収納した状態で、ハウジング内に浸漬液を満たし、その状態で静置する方法が挙げられる。
また、上記以外にも、浸漬用容器を精製装置が有するハウジングとは別途準備し(すなわち、精製装置外において浸漬用容器を準備し)、別途準備した浸漬用容器に浸漬液を満たし、フィルタを浸漬する方法も挙げられる。
なかでも、フィルタから溶出した不純物がろ過装置内に混入しない点で、ろ過装置外に準備した浸漬用容器に浸漬液を満たし、上記浸漬液にフィルタを浸漬する方法が好ましい。
【0312】
浸漬用容器の形状及び大きさ等は、浸漬するフィルタの数及び大きさ等によって適宜選択でき特に制限されない。
浸漬用容器の材料としては、特に制限されないが、少なくとも接液部が、既に説明した耐腐食材料で形成されていることが好ましい。
また、浸漬用容器は、ポリフルオロカーボン(PTFE、PFA:パーフルオロアルコキシアルカン、及び、PCTFE:ポリクロロトリフルオロエチレン等)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、POM(ポリオキシメチレン)、並びに、ポリオレフィン(PP、及び、PE等)からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、ポリフルオロカーボン、PPS、及び、POMからなる群から選択される少なくとも1種を含有することがより好ましく、ポリフルオロカーボンを含有することが更に好ましく、PTFE、PFA、及び、PCTFEからなる群から選択される少なくとも1種を含有することが特に好ましく、PTFEを材料成分として含有することが最も好ましい。
また、浸漬用容器は、使用前に洗浄することが好ましく、洗浄の際には浸漬液を使用して洗浄(いわゆる共洗い)することが好ましい。
【0313】
(フィルタに洗浄液を通液して洗浄する方法)
フィルタに洗浄液を通液して洗浄する方法としては特に制限されないが、例えば、既に説明したろ過装置のフィルタユニットのフィルタハウジングに、フィルタ(典型的にはフィルタカートリッジ)を収納し、上記フィルタハウジングに洗浄液を導入することで、フィルタに洗浄液を通液する方法が挙げられる。
【0314】
洗浄の際、フィルタに付着した不純物は、洗浄液に移行(典型的には、溶解)し、洗浄液中の不純物含有量が増加していく。従って、1度フィルタに通液させた洗浄液は、再度洗浄には使用せず、ろ過装置外に排出することが好ましい。言い換えれば循環洗浄しないことが好ましい。
【0315】
フィルタに洗浄液を通液して洗浄する方法の他の形態として、洗浄装置を用いてフィルタを洗浄する方法が挙げられる。本明細書において、洗浄装置とは、ろ過装置外に設けられたろ過装置とは異なる装置を意味する。洗浄装置の形態としては特に制限されないが、ろ過装置と同様の構成の装置が使用できる。
【0316】
・洗浄液
フィルタに洗浄液を通液して洗浄する場合における洗浄液としては特に制限されず、公知の洗浄液が使用できる。なかでも、より優れた本発明の効果が得られる点で、洗浄液の形態としては、既に説明した浸漬液と同様であることが好ましい。
【0317】
<装置洗浄工程>
装置洗浄工程は、ろ過工程の前に、ろ過装置の接液部を洗浄する工程である。ろ過工程の前にろ過装置の接液部を洗浄する方法としては特に制限されない。以下では、フィルタがカートリッジフィルタであり、上記カートリッジフィルタが、流通路上に配置されたハウジング内に収納されるろ過装置を例として説明する。
【0318】
装置洗浄工程は、ハウジングからカートリッジフィルタが取り除かれた状態で洗浄液を用いてろ過装置の接液部を洗浄する工程A、及び、工程Aの後に、カートリッジフィルタをハウジングに収納し、更に洗浄液を用いてろ過装置の接液部を洗浄する工程Bを有することが好ましい。
【0319】
・工程A
工程Aは、ハウジングからカートリッジフィルタが取り除かれた状態で、洗浄液を用いてろ過装置の接液部を洗浄する工程である。ハウジングからフィルタが取り除かれた状態で、とは、ハウジングからフィルタカートリッジを取り除くか、ハウジングにフィルタカートリッジを収納する前に、洗浄液を用いてろ過装置の接液部を洗浄することを意味する。
ハウジングからフィルタが取り除かれた状態における(以下「フィルタ未収納の」ともいう。)ろ過装置の接液部を、洗浄液を用いて洗浄する方法としては特に制限されない。流入部から洗浄液を導入し、流出部から回収する方法が挙げられる。
【0320】
なかでも、より優れた本発明の効果が得られる点で、洗浄液を用いてフィルタ未収納のろ過装置の接液部を洗浄する方法としては、フィルタ未収納のろ過装置の内部を洗浄液で満たす方法が挙げられる。フィルタ未収納のろ過装置の内部を洗浄液で満たすことにより、フィルタ未収納のろ過装置の接液部が洗浄液と接触する。これにより、ろ過装置の接液部に付着している不純物が洗浄液へと移行(典型的には溶出)する。そして、洗浄後の洗浄液はろ過装置外に排出すればよい(典型的には流出部から排出すればよい)。
【0321】
・洗浄液
洗浄液としては特に制限されず、公知の洗浄液を使用できる。なかでもより優れた本発明の効果が得られる点で、洗浄液としては、水又は有機溶剤を主成分として含有することが好ましく、有機溶剤を主成分として含有することがより好ましい。本明細書において主成分とは、洗浄液の全質量に対して99.9質量%以上含有される成分を意味し、99.99質量%以上含有することが好ましい。
【0322】
上記有機溶剤としては特に制限されず、薬液が含有する有機溶剤として既に説明した水、有機溶剤が使用できる。有機溶剤としては、より優れた本発明の効果が得られる点で、PGMEA、シクロヘキサノン、乳酸エチル、酢酸ブチル、MIBC、MMP(3-メチルメトキシプロピオネート)、MAK、酢酸n-ペンチル、エチレングリコール、酢酸イソペンチル、PGME、MEK(メチルエチルケトン)、1-ヘキサノール、及び、デカンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0323】
・工程B
工程Bは、ハウジングにフィルタが収納された状態で、洗浄液を用いてろ過装置を洗浄する方法である。
洗浄液を用いてろ過装置を洗浄する方法としては、既に説明した工程Aにおける洗浄方法のほか、ろ過装置に洗浄液を通液する方法も使用できる。ろ過装置に洗浄液を通液する方法としては特に制限されないが、流入部から洗浄液を導入し、流出部から排出すればよい。なお、本工程で使用できる洗浄液としては特に制限されず、工程Aで説明した洗浄液を使用できる。
【0324】
<除電工程>
除電工程は、被精製液を除電することで、被精製液の帯電電位を低減させる工程である。除電方法としては特に制限されず、公知の除電方法を用いることができる。除電方法としては、例えば、被精製液を導電性材料に接触させる方法が挙げられる。
被精製液を導電性材料に接触させる接触時間は、0.001~60秒が好ましく、0.001~1秒がより好ましく、0.01~0.1秒が更に好ましい。導電性材料としては、ステンレス鋼、金、白金、ダイヤモンド、及びグラッシーカーボン等が挙げられる。
被精製液を導電性材料に接触させる方法としては、例えば、導電性材料からなる接地されたメッシュを、流通路を横切るように配置し、ここに被精製液を流通させる方法等が挙げられる。
【0325】
<被精製液準備工程>
被精製液準備工程は、ろ過装置の流入部から流入させる被精製液を準備する工程である。被精製液を準備する方法としては特に制限されない。典型的には、市販品(例えば、「高純度グレード品」と呼ばれるもの等)を購入する方法、1種又は2種以上の原料を反応させて得る方法、及び、各成分を溶剤に溶解する方法等が挙げられる。
【0326】
原料を反応させて被精製液(典型的には、有機溶剤を含有する被精製液)を得る方法として特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、触媒の存在下において、1つ又は2つ以上の原料を反応させて、有機溶剤を含有する被精製液を得る方法が挙げられる。
より具体的には、例えば、酢酸とn-ブタノールとを硫酸の存在下で反応させ、酢酸ブチルを得る方法;エチレン、酸素、及び、水をAl(C2H5)3の存在下で反応させ、1-ヘキサノールを得る方法;シス-4-メチル-2-ペンテンをIpc2BH(Diisopinocampheylborane)の存在下で反応させ、4-メチル-2-ペンタノールを得る方法;プロピレンオキシド、メタノール、及び、酢酸を硫酸の存在下で反応させ、PGMEA(プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート)を得る方法;アセトン、及び、水素を酸化銅-酸化亜鉛-酸化アルミニウムの存在下で反応させて、IPA(isopropyl alcohol)を得る方法;乳酸、及び、エタノールを反応させて、乳酸エチルを得る方法;等が挙げられる。
【0327】
また、本工程は、被精製液をろ過装置に流入させる前に、予め精製する予備精製工程を有していてもよい。予備精製工程としては特に制限されないが、蒸留装置を用いて、被精製液を精製する方法が挙げられる。
【0328】
予備精製工程において、蒸留装置を用いて被精製液を精製する方法としては特に制限されず、例えば、ろ過装置と別に準備した蒸留装置を用いて予め被精製液を精製して蒸留済み被精製液を得て、これを可搬型タンクに貯留して、ろ過装置まで運搬して導入する方法、及び、後述する精製装置を用いる方法が挙げられる。
【0329】
まず、
図11を用いて、ろ過装置と別に準備した蒸留装置を用いて予め被精製液を精製する方法(予備精製工程)について説明する。
図11は蒸留器で予め精製された蒸留済み被精製液を使用して薬液を製造する場合の各装置の関係を表す模式図である。
図11において、ろ過装置400の形態は、既に説明した本発明の第三実施形態に係るろ過装置と同様のため説明は省略する。
【0330】
薬液の製造場1100には、ろ過装置400と蒸留装置1101が配置されている。蒸留装置1101は、タンク401(a)と、蒸留器1102と、可搬型タンク1103とを有し、それぞれが配管1104、及び、配管1105で接続され、タンク401(a)、配管1104、蒸留器1102、配管1105、可搬型タンク1103により、流通路S11が形成されている。
タンク401(a)及び各配管の形態は特に制限されず、本発明の実施形態に係るろ過装置が有するタンク及び配管として説明したものと同様の形態のタンク及び配管が使用できる。蒸留器1102の形態は、本発明の実施形態に係る精製装置が有する蒸留器と同様の蒸留器を使用でき、その形態は後述する。
【0331】
蒸留装置1101において、タンク401(a)に導入された被精製液は、蒸留器1102で蒸留され、得られた蒸留済み被精製液は、可搬型タンク1103に貯留される。可搬型タンクの形態としては特に制限されないが、接液部の少なくとも一部(好ましくは接液部の表面積の90%以上、より好ましくは接液部の表面積の99%以上)が後述する耐腐食材料からなることが好ましい。
【0332】
可搬型タンク1103に貯留された蒸留済み被精製液は、運搬手段1106によって運搬され(
図11中のF1のフロー)、その後蒸留済み被精製液は、ろ過装置の流入部101から、ろ過装置400へと導入される。
【0333】
なお、
図11では、同一の製造場内に蒸留装置とろ過装置が配置されている形態を説明したが、蒸留装置とろ過装置は別の製造場に配置されていてもよい。
【0334】
次に、蒸留器とろ過装置とを有する精製装置を用いる予備精製工程について説明する。まずは、本工程で使用する精製装置について説明する。
(精製装置)
本工程で使用する精製装置は、既に説明したろ過装置を有する精製装置である。本発明の実施形態に係る精製装置は、既に説明したろ過装置と、第2の流入部と、第2の流出部と、第2の流入部と第2の流出部との間に配置された少なくとも1つの蒸留器と、を有し、上記第2の流出部と既に説明したろ過装置が有する流入部とが接続され、上記第2の流入部から、上記ろ過装置が有する流出部にいたる流通路が形成された精製装置である。以下では、上記精製装置について、図面を示しながら説明する。
なお、下記の説明において、ろ過装置の構成に関する内容は、既に説明した内容と同様であり説明を省略する。
【0335】
・精製装置の第一実施形態
図12は本発明の精製装置の第一実施形態を表す模式図である。精製装置1200は、第2の流入部1201と、第2の流出部1202と、第2の流入部1201と第2の流出部1202との間に配置された蒸留器1203と、を有し、第2の流出部1202が、ろ過装置が有する流入部101と接続されている。これにより精製装置1200においては、第2の流入部1201、蒸留器1203、第2の流出部1202、流入部101、フィルタ104(フィルタBU)、配管105、フィルタ103(フィルタA)、及び、流出部102により流通路S12が形成されている。
すなわち、蒸留器1203が、ろ過装置100の流入部101に接続されている。
【0336】
第2の流入部1201から精製装置1200内に流入した被精製液は、蒸留器1203において蒸留された後、第2の流出部1202を経て、流入部101から、ろ過装置100へと導入される。本精製装置を用いて予備精製工程を行うと、蒸留済み被精製液を装置外に出さずに次の工程(ろ過工程)が実施できるため、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる。
【0337】
なお、蒸留器1203の形態は特に制限されず、公知の蒸留器(例えば蒸留塔)を使用できる。なお、蒸留器1203の材料としてはすでに説明したハウジングと同様の材料を使用でき、特に、蒸留器1203の接液部の少なくとも一部が、後述する耐腐食材料からなることが好ましく、接液部の面積の90%以上が耐腐食材料からなることが好ましく、接液部の面積の99%が耐腐食材料からなることがより好ましい。
【0338】
蒸留器としては特に制限されず、公知の蒸留器が使用できる。蒸留器としては、回分式であっても連続式であってもよいが、連続式が好ましい。また、蒸留器は内部に充填物を有していてもよい。充填物の形態としては特に制限されないが、接液部の少なくとも一部が、後述する耐腐食材料からなることが好ましく、接液部の面積の90%以上が耐腐食材料からなることが好ましく、接液部の面積の99%が耐腐食材料からなることがより好ましい。
【0339】
なお、
図12において、精製装置1200として、流入部と流出部の間に、フィルタBUと、フィルタAがこの順に直列に配置された形態(例えばろ過装置の第一実施形態)のろ過装置を有しているが、これに代えて、流入部と流出部の間にフィルタAとフィルタBDがこの順に直列に配置された形態(例えば第二実施形態)のろ過装置、及び、流入部と流出部の間にフィルタBU、フィルタA,及び、フィルタBDがこの順に直列に配置された形態(例えば第二実施形態の変形例)のろ過装置を有していてもよい。
【0340】
また、精製装置は、第2の流入部1201、蒸留器1203、第2の流出部1202、流入部101、フィルタ104、配管105、フィルタ103、流出部102で形成される流通路S12上において、フィルタ103(フィルタA)の下流側から、流通路S12上においてフィルタ103(フィルタA)の上流へと、被精製液を返送可能な返送流通路が形成されていてもよい。なお、返送流通路の形態としては特に制限されないが、ろ過装置の第五実施形態において説明したのと同様である。また、返送流通路の形態としては、ろ過装置の第六実施形態において説明したのと同様であってもよい。
【0341】
また、本実施形態に係る精製装置は、流通路S12上におけるフィルタ103の上流側、及び/又は、下流側にタンクを有していてもよい。タンクの形態としては特に制限されず、既に説明したのと同様のタンクが使用できる。
【0342】
・精製装置の第二実施形態
図13は精製装置の第二実施形態を表す模式図である。精製装置1300は、第2の流入部1301と、第2の流出部1302と、第2の流入部1301と第2の流出部1302との間に直列に配置された蒸留器1303及び蒸留器1304と、を有し、第2の流出部1302が、ろ過装置が有する流入部101と接続されている。これにより精製装置1300においては、第2の流入部1301、蒸留器1303、配管1305、蒸留器1304、第2の流出部1302、流入部101、フィルタ104(フィルタBU)、配管105、フィルタ103(フィルタA)、及び、流出部102により流通路S13が形成されている。
すなわち、本実施形態に係る精製装置は直列に接続された複数の蒸留器を含む。なお、直列に接続された蒸留器を3つ以上含む場合は、最後段の蒸留器がろ過装置と接続される。
【0343】
精製装置1300においては、第2の流入部1301から流入した被精製液は蒸留器1303で蒸留され、配管1305を流通して蒸留器1304に導入される。なお、
図13では、蒸留器1303と蒸留器1304とが配管1305によって接続された形態を表わしているが、本実施形態に係る精製装置としては上記に制限されず、蒸留器1304の凝縮液を再度、蒸留器1303に返送可能な配管を別途有していてもよい。
【0344】
本実施形態に係る精製装置は、蒸留器を2つ有するため、2つの蒸留器の運転条件等を適宜制御することにより、被精製液が沸点の異なる2種以上の化合物を含有している場合であっても、目的の化合物(薬液)をより高純度に精製可能である。
【0345】
〔耐腐食材料〕
次に、耐腐食材料について説明する。これまで説明した本発明の実施形態に係るろ過装置、及び、精製装置は、その接液部の少なくとも一部が耐腐食材料で形成されていることが好ましく、接液部の90%以上が耐腐食材料で形成されていることがより好ましく、接液部の99%以上が耐腐食材料で形成されていることが更に好ましい。
【0346】
接液部が耐腐食材料で形成されている状態としては特に制限されないが、典型的には各部材(例えば、これまで説明したタンク等)が耐腐食材料で形成されているもの、及び、各部材が、基材と、基材上に配置された被覆層とを有し、上記被覆層が耐腐食材料で形成されているもの等が挙げられる。
【0347】
耐腐食材料は、非金属材料、及び、電解研磨された金属材料である。上記非金属材料としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン-ポリプロピレン樹脂、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合樹脂、四フッ化エチレン-エチレン共重合樹脂、三フッ化塩化エチレン-エチレン共重合樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、三フッ化塩化エチレン共重合樹脂、及び、フッ化ビニル樹脂等が挙げられるが、これに制限されない。
【0348】
上記金属材料としては、特に制限されないが、例えば、Cr及びNiの含有量の合計が金属材料全質量に対して25質量%超である金属材料が挙げられ、なかでも、30質量%以上がより好ましい。金属材料におけるCr及びNiの含有量の合計の上限値としては特に制限されないが、一般に90質量%以下が好ましい。
金属材料としては例えば、ステンレス鋼、及びNi-Cr合金等が挙げられる。
【0349】
ステンレス鋼としては、特に制限されず、公知のステンレス鋼が使用できる。なかでも、Niを8質量%以上含有する合金が好ましく、Niを8質量%以上含有するオーステナイト系ステンレス鋼がより好ましい。オーステナイト系ステンレス鋼としては、例えばSUS(Steel Use Stainless)304(Ni含有量8質量%、Cr含有量18質量%)、SUS304L(Ni含有量9質量%、Cr含有量18質量%)、SUS316(Ni含有量10質量%、Cr含有量16質量%)、及びSUS316L(Ni含有量12質量%、Cr含有量16質量%)等が挙げられる。
【0350】
Ni-Cr合金としては、特に制限されず、公知のNi-Cr合金が使用できる。なかでも、Ni含有量が40~75質量%、Cr含有量が1~30質量%のNiCr合金が好ましい。
Ni-Cr合金としては、例えば、ハステロイ(商品名、以下同じ。)、モネル(商品名、以下同じ)、及びインコネル(商品名、以下同じ)等が挙げられる。より具体的には、ハステロイC-276(Ni含有量63質量%、Cr含有量16質量%)、ハステロイ-C(Ni含有量60質量%、Cr含有量17質量%)、ハステロイC-22(Ni含有量61質量%、Cr含有量22質量%)等が挙げられる。
また、Ni-Cr合金は、必要に応じて、上記した合金の他に、更に、B、Si、W、Mo、Cu、及び、Co等を含有していてもよい。
【0351】
金属材料を電解研磨する方法としては特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、特開2015-227501号公報の0011~0014段落、及び、特開2008-264929号公報の0036~0042段落等に記載された方法が使用できる。
【0352】
金属材料は、電解研磨されることにより表面の不動態層におけるCrの含有量が、母相のCrの含有量よりも多くなっているものと推測される。そのため、接液部が電解研磨された金属材料から形成された精製装置を用いると、被精製液中に金属原子を含有する金属不純物が流出しにくいものと推測される。
なお、金属材料はバフ研磨されていてもよい。バフ研磨の方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。バフ研磨の仕上げに用いられる研磨砥粒のサイズは特に制限されないが、金属材料の表面の凹凸がより小さくなりやすい点で、#400以下が好ましい。なお、バフ研磨は、電解研磨の前に行われることが好ましい。
【0353】
[薬液の製造方法(第二実施形態)]
本発明の第二の実施形態に係る薬液の製造方法は、被精製液を精製して薬液を得る、薬液の製造方法であって、被精製液を、ポリフルオロカーボン製の多孔質基材と、基材を覆うように配置された吸着性基を有する樹脂を含有する被覆層とを有するフィルタA、並びに、フィルタAとは異なるフィルタB、を用いてろ過して薬液を得る工程を有する、薬液の製造方法である。
【0354】
以下では第二実施形態に係る薬液の製造方法について説明するが、以下に説明のない材料、方法、及び、条件等については、第一実施形態に係る薬液の製造方法と同様である。
本実施形態に係る薬液の製造方法は、被精製液をフィルタA及びフィルタAとは異なるフィルタBを用いてろ過する。被精製液をろ過する際、フィルタA、フィルタBの順に通液してもよいし、フィルタB、フィルタAの順に通液してもよい。
なお、本実施形態に係る薬液の製造方法としては、フィルタA及びフィルタBを用いていれば特に制限されず、複数のフィルタA、及び/又は、複数のフィルタBを順番に用いて被精製液をろ過してもよい。
【0355】
フィルタB、フィルタAの順に用いる場合、フィルタBの形態としては特に制限されないが、フィルタBUとして説明したフィルタを用いることが好ましい。また、フィルタA、フィルタBの順に用いる場合、フィルタBの形態としては特に制限されないが、フィルタBDとして説明したフィルタを用いることが好ましい。
【0356】
[薬液]
上記ろ過装置を用いて製造される薬液は半導体基板の製造に用いられることが好ましい。特に、ノード10nm以下の微細パターンを形成するため(例えば、極紫外線を用いたパターン形成を含む工程)に用いられることがより好ましい。
言い換えれば、上記ろ過装置は、半導体基板の製造用の薬液の製造に用いられることが好ましく、具体的には、リソグラフィー工程、エッチング工程、イオン注入工程、及び、剥離工程等を含有する半導体デバイスの製造工程において、各工程の終了後、又は、次の工程に移る前に、無機物、及び/又は、有機物を処理するために使用される薬液の製造用に用いられることが好ましい。
上記ろ過装置は、具体的には現像液、リンス液、ウェハ洗浄液、ライン洗浄液、プリウェット液、ウェハリンス液、レジスト液、下層膜形成用液、上層膜形成用液、及び、ハードコート形成用液からなる群より選択される少なくとも1種(有機系被精製液を精製して得られる薬液)であることが好ましく、他の形態としては、水系水性現像液、水性リンス液、剥離液、リムーバー、エッチング液、酸性洗浄液、及び、リン酸、リン酸-過酸化水素水混合液(SPM:Sulfuric acid-Hydrogen Peroxide Mixture)からなる群より選択される少なくとも1種(水系被精製液を精製して得られる薬液)の製造に用いられることが好ましい。
【0357】
また、上記ろ過装置は、レジスト塗布前後の半導体基板のエッジラインのリンスに用いられる薬液の製造にも使用ができる。
また、上記ろ過装置は、レジスト液に含有される樹脂の希釈液、レジスト液に含有される溶剤の製造にも使用できる。
【0358】
また、上記ろ過装置は、半導体基板の製造用以外の、他の用途に用いられる薬液の製造にも用いることができ、ポリイミド、センサー用レジスト、レンズ用レジスト等の現像液、及び、リンス液等の製造用としても使用できる。
また、上記ろ過装置は、医療用途又は洗浄用途の溶媒の製造にも使用できる。特に、容器、配管、及び、基板(例えば、ウェハ、及び、ガラス等)等の洗浄に用いる薬液の製造に使用できる。
なかでも、上記ろ過装置は、EUV(極紫外線)を用いたパターン形成における、プリウェット液、現像液、及び、リンス液からなる群より選択される少なくとも1種の製造に使用することが好ましい。
【0359】
[薬液収容体]
上記ろ過装置により製造された薬液は、容器に収容されて使用時まで保管されてもよい。このような容器と、容器に収容された薬液とをあわせて薬液収容体という。保管された薬液収容体からは、薬液が取り出され使用される。
【0360】
上記薬液を保管する容器としては、半導体基板製造用に、容器内のクリーン度が高く、薬液を保管中に、薬液に対して不純物の溶出しにくいものが好ましい。
使用可能な容器としては、特に制限されないが、例えば、アイセロ化学(株)製の「クリーンボトル」シリーズ、及び、コダマ樹脂工業製の「ピュアボトル」等が挙げられるが、これらに制限されない。
【0361】
容器としては、薬液への不純物混入(コンタミ)防止を目的として、容器内壁を6種の樹脂による6層構造とした多層ボトル、又は、6種の樹脂による7層構造とした多層ボトルを使用することも好ましい。これらの容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0362】
この容器の接液部の少なくとも一部は、既に説明した耐腐食材料からなることが好ましい。より優れた本発明の効果が得られる点で、接液部の面積の90%以上が上記材料からなることが好ましい。
【実施例】
【0363】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0364】
また、実施例及び比較例の薬液の調製にあたって、容器の取り扱い、薬液の調製、充填、保管及び分析測定は、全てISOクラス2又は1を満たすレベルのクリーンルームで行った。測定精度向上のため、有機不純物の含有量の測定、及び、金属原子の含有量の測定においては、通常の測定で検出限界以下のものの測定を行う際には、薬液を体積換算で100分の1に濃縮して測定を行い、濃縮前の溶液の濃度に換算して含有量を算出した。なお、精製に仕様した装置やフィルタ、容器などの器具は、薬液接液面を、同様の手法で精製しておいた薬液で十分に洗浄してから用いた。
【0365】
[試験例1:有機溶剤系被精製液の精製、及び、薬液の性能評価]
【0366】
〔薬液1の製造〕
図14に記載した精製装置を使用して、薬液1を製造した。
図14の精製装置は、流入部と流出部の間に、フィルタBU-1、タンクTU-1、フィルタBU-2、フィルタF-A、フィルタBD-1、タンクTD-1、及び、フィルタBD-2が、直列に接続されたろ過装置と、上記ろ過装置の前段に接続された蒸留器(D1及びD2の2連の蒸留器、下記表中では「2連式」と記載した。)とを有する。各ユニットは配管と共に流通路S-14を形成するとともに、流通路S-14においてフィルタF-A(フィルタF-Aは既に説明したフィルタAに該当する)の下流側(タンクTD-1)からフィルタF-Aの上流側へと、被精製液を返送可能な返送流通路R-14が形成されている。
なお、薬液1の製造に用いた各フィルタが含有する材料成分、及び、孔径は表に示した。なお各フィルタは、PGMEAに1日浸漬した後に使用した。
【0367】
表における各フィルタの材料成分に関する略号は以下のとおりである。
【0368】
・PTFE-1
「PTFE-1」は、以下の方法により製造されたフィルタを意味する。
撹拌子を備えた50ml丸底フラスコで、第二世代グラブス触媒(3.0mg、0.004mmol)、2-ブテン-1,4-ジオール(10.0mg、0.12mmol)、及び1,5-シクロオクタジエン(490mg、4.54mmol)を混合させて、アルゴンで5分間脱気し、40℃のオイルバスへ移した。この混合物を1時間加熱し続け、残りの1,5-シクロオクタジエン(4.5mg、4.2mmol)のDCM5ml溶液を混合物へ添加し、さらに6時間加熱し続けた。ヒドロキシル末端ポリマー(P-COD)を、メタノール中の沈殿によって、単離した。1H-NMR(300MHz,CDCl3):δ(ppm)5.3~5.5(s,広幅,1H)、1.75~2.5(s,広幅)。
【0369】
上記のP-CODホモポリマーを、紫外線照射の下、光開始剤の存在下で、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデカンチオールで後官能化させて、フッ素化P-CODを得た。
PTFE多孔質膜を、上記フッ素化P-COD(1~10質量%濃度)THF溶液、光開始剤(Irgacure、1~15質量%)、3-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム塩(1~15質量%、均一なTHF溶液を得るまで、THFと希塩酸(1規定)の水溶液で中和させる)を含有する溶液に浸漬することによって、チオールエン反応を介して改質された、フッ素化P-CODで被覆された膜を得た。次いで、膜を、UV照射(300~480nm、150~250ミリワット、60秒~180秒)することにより、上記溶液の混合物と共に架橋結合した。次いで、膜をDI水で洗浄し、100℃で10分間乾燥させた。
【0370】
上記の方法により得られたPTFE-1は、PTFE製の多孔質基材に、上記多孔質基材を覆うように配置された、P-CODを主鎖として、吸着性基としてチオエーテル基を有する基(-SCH2CH2(CF2)7CF3)を有するコポリマーによる被覆層を有していた。
【0371】
・PTFE-2
「PTFE-2」は、以下の方法により製造されたフィルタを意味する。
特開2017-002273号公報の0018~0032段落の記載を参照して、メルカプト酢酸とアリル基とのチオールエン反応によりカルボン酸基を側鎖に導入した被覆性樹脂を得た。更に、PTFE多孔質膜上に特開2017-002273号公報の0070~0071段落の記載を参照して上記樹脂による被覆層を形成した。
【0372】
上記の方法により得られたPTFE-2は、PTFE製の多孔質基材に、上記多孔質基材を覆うように配置された、式(I)のコポリマーであって、吸着性基としてチオエーテル基、及び、カルボン酸基を有する基(-SCH2COOH)を有するコポリマーによる被覆層を有していた。
【0373】
・PTFE-3
「PTFE-3」は、以下の方法により製造されたフィルタを意味する。
特開2017-002273号公報の0018~0032段落の記載を参照して、メルカプトエチルジエチルアミンとアリル基とのチオールエン反応によりアミノエチル基を導入後、臭化エチルによる4級化反応により4級アンモニウム基を側鎖に導入した被覆性樹脂を得た。更に、PTFE多孔質膜上に特開2017-002273号公報の0070~0071段落の記載を参照して上記樹脂による被覆層を形成した。
【0374】
上記の方法により得られたPTFE-3は、PTFE製の多孔質基材に、上記多孔質基材を覆うように配置された、式(I)のコポリマーであって、吸着性基としてチオエーテル基、及び、4級アンモニウム基を有する基を有するコポリマーによる被覆層を有していた。
【0375】
・PTFE-4
「PTFE-4」は、以下の方法により製造されたフィルタを意味する。
特開2017-002273号公報の0018~0032段落の記載を参照して、2エチルヘキシルチオプロピルメルカプタンとアリル基とのチオールエン反応によりチオエーテル基を導入した被覆性樹脂を得た。PTFE多孔質膜上に特開2017-002273号公報の0070~0071段落の記載を参照して上記樹脂による被覆層を形成した。
【0376】
上記の方法により得られたPTFE-4は、PTFE製の多孔質基材に、上記多孔質基材を覆うように配置された、式(I)のコポリマーであって、吸着性基としてチオエーテル基を有する基を有するコポリマーによる被覆層を有していた。
【0377】
・PTFE-5
「PTFE-5」は、以下の方法により製造されたフィルタを意味する。
特開2017-002273号公報の0018~0032段落の記載を参照して、トリプロピルオキシホスホリックオキシプロピルメルカプタンとアリル基とのチオールエン反応によりホスホリックオキシ基を導入した被覆性樹脂を得た。PTFE多孔質膜上に特開2017-002273号公報の0070~0071段落の記載を参照して上記樹脂による被覆層を形成した。
【0378】
上記の方法により得られたPTFE-4は、PTFE製の多孔質基材に、上記多孔質基材を覆うように配置された、式(I)のコポリマーであって、吸着性基としてチオエーテル基、及び、リン酸基を有する基を有するコポリマーによる被覆層を有していた。
【0379】
・PTFE-6
「PTFE-6」は以下の方法により作成されたフィルタを意味する。
特開2016-29146号公報の0068~0082段落の記載を参照して、ペルフルオロデカンチオールが結合されている、PFDT-PG-AGEにより被覆したPTFE多孔質体を得た
【0380】
上記の方法により得られたPTFE-5は、PTFE製の多孔質基材に、上記多孔質基材を覆うように配置された、「PFDT-PG-AGE」の構造を有するフッ素化ポリマーであって、吸着性基としてチオエーテル基を有する基を有するコポリマーによる被覆層を有していた。
【0381】
・PTFE-7
「PTFE-7」は以下の方法により製造されたフィルタを意味する。
特開2016-194040号公報の0085~0088段落の記載を参照して、ポリ(SZNB-b-NPF6)-2により被覆したPTFE多孔質膜を得た。
なお、上記の方法により得られたPTFE-7は、PTFE製の多孔質基材に、上記多孔質基材を覆うように配置された、「ポリ(SZNB-b-NPF6)-2」の構造を有するフッ素化ポリマーであって、吸着性基としてスルホン酸基、及び、4級アンモニウム基を有する基を有するコポリマーによる被覆層を有していた。
【0382】
・PTFE-8
「PTFE-8」は以下の方法により製造されたフィルタを意味する。
特開2016-196625号公報の0110~0112段落の記載を参照して、ポリ(C2二酸-r-NPF6)を合成し、同0109段落の記載を参照して、PTFE多孔質膜上に被覆層を形成した。
【0383】
なお、上記の方法により得られたPTFE-8は、PTFE製の多孔質基材に、上記多孔質基材を覆うように配置された、「ポリ(C2二酸-r-NPF6)」の構造を有し、吸着性基としてカルボン酸基、及び、オキシアルキレン基を有するコポリマーによる被覆層を有していた。
【0384】
・PTFE-9
「PTFE-9」は以下の方法により製造されたフィルタを意味する。
特開2016-196625号公報の0120~0124段落の記載を参照して、ポリ(C4-r-NPF6-r-NHS)を合成し、同0109段落の記載を参照して、PTFE多孔質膜上に被覆層を形成した。
1H-NMR(300MHz,CDCl3):δ(ppm)6(s 広幅)、5.9~5.0(m 広幅)、5.1~4.6(m 広幅)、4.6~4.1(m 広幅)、4.0~3.0(m 広幅)、3.0~2.4(m 広幅)、2.3~1.4(m 広幅)、1.25(s 広幅)。
【0385】
なお、上記の方法により得られたPTFE-9は、PTFE製の多孔質基材に、上記多孔質基材を覆うように配置された、「ポリ(C4-r-NPF6-r-NHS)」の構造を有し、吸着性基としてチオエーテル基、及び、ジエステル基を有する基を有するコポリマーによる被覆層を有していた。
【0386】
・PP:ポリプロピレン
・IEX:ポリエチレンの基材に、スルホン酸基からなるイオン交換基を導入して得られたフィルタ
・Nylon:ナイロン
・UPE:超高分子量ポリエチレン
・PTFE:ポリテトラフルオロエチレン
・HDPE:高密度ポリエチレン
【0387】
表1の被精製液に関する略号は以下のとおりである。
・CHN:シクロヘキサノン
・PGMEA/PGME(7:3):PGMEAとPGMEの7:3(体積基準)の混合物
・nBA:酢酸ブチル
・PC/PGMEA(1:9):PCとPGMEAの1:9(体積基準)の混合物
・EL:乳酸エチル
・MIBC:4-メチル-2-ペンタノール
・PGME:プロピレングリコールモノエチルエーテル
・PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
・PC:炭酸プロピレン
・iAA:酢酸イソアミル
・IPA:イソプロパノール
【0388】
被精製液には、市販の高純度グレードの「シクロヘキサノン」を購入し、上記精製装置を用いて精製した。精製の際には、返送流通路R-14を用いて、3回循環ろ過して薬液1を得た。
【0389】
〔薬液2~68の製造〕
表に記載した精製装置(又はろ過装置)を用いて、表に記載した各被精製物を精製して薬液を得た。なお、各精製装置(又はろ過装置)は、
図14~
図31に示した。フィルタF-A、フィルタBU-1~BU-3、フィルタBD-1~BD-2の材料成分及び孔径は表に示したとおりである。なお、被精製液の精製に際して、使用したろ過装置にR-(数字)で示した返送流通路が形成されているものであって、表中の「循環」欄に「有」とあるものは、それぞれの返送流通路について3回循環ろ過した。
また、表には、各被精製液のSP値もあわせて記載した。なお、表中、「-」はそのフィルタを使用しなかったことを意味し、本明細書における他の表についても同様である。
また、表中の「フィルタの事前洗浄」欄には、各フィルタの事前洗浄の条件を記載した。「PGMEA 1day浸漬」は、高純度グレードのPGMEAに1日浸漬した後にフィルタを使用したことを表わしている。なお、同欄の「-」は、フィルタの事前洗浄を行わなかったことを表わしている。
【0390】
〔評価1:薬液の残渣欠陥抑制性能、及び、シミ状欠陥抑制性能の評価〕
直径約300mmのシリコンウェハ(Bare-Si)上に、薬液1をスピン塗布し、薬液塗布済みウェハを得た。使用した装置は、Lithius ProZであり、塗布の条件は以下のとおりだった。
【0391】
・塗布に使用した薬液の量:各2ml
・塗布の際のシリコンウェハの回転数:2,200rpm、60sec
【0392】
次に、KLA-Tencor社製のウェハ検査装置「SP-5」とアプライドマテリアル社の全自動欠陥レビュー分類装置「SEMVision G6」を用いて、ウェハの全面に存在する19nm以上のサイズの欠陥数、及び、その組成を調べた。
SP-5にて計測された全欠陥数を残渣欠陥数として計上し、G6にて形状観測を行い、粒子状ではないもの(シミ状)の欠陥をシミ状欠陥として計上した。結果は以下の基準により評価し、表に示した。
なお、ウェハ上に存在する欠陥の数がより少ないほど、薬液はより優れた欠陥抑制性能を有する。なお、以下の評価において、「欠陥数」とは、それぞれ残渣欠陥数、及び、シミ状欠陥数を表す。上記と同様の方法により薬液2~68についても評価した。結果を表に示した。
【0393】
AA 欠陥数が30個/ウェハ以下だった。
A 欠陥数が30個/ウェハを超え、50個/ウェハ以下だった。
B 欠陥数が50個/ウェハを超え、100個/ウェハ以下だった。
C 欠陥数が100個/ウェハを超え、200個/ウェハ以下だった。
D 欠陥数が200個/ウェハを超え、500個/ウェハ以下だった。
E 欠陥数が500個/ウェハを超えた。
【0394】
〔評価2:ブリッジ欠陥抑制性能〕
薬液1をプリウェット液として用いて、薬液のブリッジ欠陥抑制性能を評価した。まず、使用したレジスト樹脂組成物について説明する。
【0395】
・レジスト樹脂組成物
レジスト樹脂組成物は、以下の各成分を混合して得た。
【0396】
酸分解性樹脂(下記式で表される樹脂(重量平均分子量(Mw)7500):各繰り返し単位に記載される数値はモル%を意味する。):100質量部
【0397】
【0398】
下記に示す光酸発生剤:8質量部
【0399】
【0400】
下記に示すクエンチャー:5質量部(質量比は、左から順に、0.1:0.3:0.3:0.2とした。)。なお、下記のクエンチャーのうち、ポリマータイプのものは、重量平均分子量(Mw)が5000である。また、各繰り返し単位に記載される数値はモル比を意味する。
【0401】
【0402】
下記に示す疎水性樹脂:4質量部(質量比は、(1):(2)=0.5:0.5とした。)なお、下記の疎水性樹脂のうち、(1)式の疎水性樹脂は、重量平均分子量(Mw)は7000であり、(2)式の疎水性樹脂の重量平均分子量(Mw)は8000である。なお、各疎水性樹脂において、各繰り返し単位に記載される数値はモル比を意味する。
【0403】
【0404】
溶剤:
PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート):3質量部
シクロヘキサノン:600質量部
γ-BL(γ-ブチロラクトン):100質量部
【0405】
・試験方法
次に試験方法について説明する。まず、約300mmのシリコンウェハを薬液1でプリウェットし、次に、上記レジスト樹脂組成物を上記プリウェット済みシリコンウェハに回転塗布した。その後、ホットプレート上で150℃にて90秒間加熱乾燥を行い、9μmの厚みのレジスト膜を形成した。
このレジスト膜に対し、縮小投影露光及び現像後に形成されるパターンのライン幅が30nm、スペース幅が30nmとなるような、ラインアンドスペースパターンを有するマスクを介して、ArFエキシマレーザースキャナー(ASML製、PAS5500/850C波長248nm)を用いて、NA=0.60、σ=0.75の露光条件でパターン露光した。照射後に120℃にて60秒間ベークして、その後、現像、及び、リンスし、110℃にて60秒ベークして、ライン幅が30nm、スペース幅が30nmのレジストパターンを形成した。
【0406】
上記レジストパターンについて、測長SEM(CG4600、Hitach-HighTech)にて、パターンを100ショット分取得し、パターン同士の架橋様の欠陥(ブリッジ欠陥)の数を計測し、単位面積当たりの欠陥数を求めた。結果は以下の基準により評価し、表に示した。なお、パターン同士の架橋様の欠陥数が少ないほど、薬液は、より優れたブリッジ欠陥抑制性能を有することを表す。
【0407】
なお、薬液2~68については、表の「評価方法」欄に「プリウェット」とあるものは、上記薬液1と同様にしてブリッジ欠陥抑制性能を評価した。表の「評価方法」の欄に「現像液」とあるものは、薬液1の評価手順に記載したプリウェットを行わず、現像液として表に記載の薬液を用いた以外は薬液1の評価と同様の手順でブリッジ欠陥抑制性能を評価した。表の「評価方法」の欄に「リンス」とあるものは、薬液1の評価手順に記載したプリウェットを行わず、リンス液として表に記載の薬液を用いた以外は薬液1の評価と同様の手順でブリッジ欠陥抑制性能を評価した。それぞれの結果を表に示した。
【0408】
AA ブリッジ欠陥数が1個/cm2未満だった。
A ブリッジ欠陥数が1個/cm2以上、2個/cm2未満だった。
B ブリッジ欠陥数が2個/cm2以上、5個/cm2未満だった。
C ブリッジ欠陥数が5個/cm2以上、10個/cm2未満だった。
D ブリッジ欠陥数が10個/cm2以上、15個/cm2未満だった。
E ブリッジ欠陥数が15個/cm2以上だった。
【0409】
〔評価3:パターン幅の均一性能〕
上記レジストパターンについて、測長SEM(CG4600, Hitach-HighTech)にて、パターンを100ショット分取得し、LWR(Line Width Roughness)の平均値と最大(又は最小)線幅との差の絶対値を求めた。結果は以下の基準により評価し、表に示した。なお、上記「差の絶対値」が小さいほど、薬液は、より優れたパターン幅の均一性能を有する。なお、「線幅の平均値と最大(最小)との差の絶対値」とは、LWRの平均値と最大線幅と、LWRの平均値と最小線幅の差のうち、絶対値がより大きい方で評価したことを意味する。
【0410】
AA 線幅の平均値と最大(最小)との差の絶対値が、平均値に対して2%未満だった。
A 線幅の平均値と最大(最小)との差の絶対値が、平均値に対して2%以上5%未満だった。
B 線幅の平均値と最大(最小)との差の絶対値が、平均値に対して5%以上10%未満だった。
C 線幅の平均値と最大(最小)との差の絶対値が、平均値に対して10%以上20%未満だった。
D 線幅の平均値と最大(最小)との差の絶対値が、平均値に対して20%以上だった。
E 線幅の測定ができないショットが含まれていた。
【0411】
〔評価4:フィルタの寿命の評価〕
表に記載した各精製装置(又はろ過装置)を用いて被精製液を連続して精製した。被精製液を通液して精製装置(又はろ過装置)の状態が安定した後、すぐに得られた薬液を試験用(初期サンプル)として回収し、その後、通液量10000kgごとに精製後に得られた薬液を試験用(経時サンプル)として回収した。試験用に回収した薬液は、「評価1」で説明した薬液の残渣欠陥抑制性能の評価法により評価し、単位面積当たりの欠陥数を初期サンプルと比較して、経時サンプルの欠陥数が2倍となったときの通液量をフィルタの「寿命」とした。
図24に記載したろ過装置を使用した場合の寿命を1とし、各装置のフィルタの寿命を比で評価した。結果は以下の基準により評価し、表に示した。なお、
図24の装置については評価結果に「基準」と表記した。
【0412】
AA 寿命が10倍以上だった。
A 寿命が5倍以上、10倍未満だった。
B 寿命が2倍以上、5倍未満だった。
C 寿命が1倍を超え、2倍未満だった。
D 寿命が1倍以下だった。
【0413】
[試験例2:水系被精製液の精製、及び、薬液の性能評価]
【0414】
〔薬液101、薬液102の製造〕
被精製液として、SPM(Sulfuric acid-Hydrogen Peroxide Mixture)、及び、リン酸水溶液(リン酸含有量85質量%)を購入して準備した。なお、SPMは硫酸と過酸化水素の4:1の混合液(体積基準)である。
次に、
図20に記載したろ過装置を使用して、薬液101、102を製造した。
図20のろ過装置は、流入部と流出部の間に、フィルタBU-1、タンクTU-1、フィルタBU-2、フィルタF-A、フィルタBD-1、タンクTD-1、及び、フィルタBD-2が、直列に接続され、流通路S-20が形成されたろ過装置である。また、
図20に記載したろ過装置には、フィルタBD-1の下流側(タンクTD-1)から、フィルタF-Aの上流側へ被精製液を返送可能な返送流通路R-20が形成されており、被精製液は3回循環ろ過した。
なお、
図20のろ過装置における各フィルタが含有する材料成分、及び、孔径は下記表に示した。
なお、表中におけるフィルタの材料成分に係る略号は、上記と同様であり、説明を省略する。
【0415】
〔薬液103、薬液104の製造〕
図20に記載したろ過装置に代えて、
図25に記載したろ過装置(フィルタF-Aを有し、流通路S-25が形成されている)を用いたこと以外は、薬液101及び薬液102と同様にして、薬液103及び薬液104を製造した。フィルタF-Aの材料成分等については、表に示した。なお、上記薬液の製造に際して循環ろ過は行っていない。
【0416】
〔評価1:薬液の欠陥抑制性能の評価(パーティクル欠陥、シミ状欠陥)〕
直径約300mmのベアシリコンウェハを準備し、ウェハを500rpmの条件で回転させながら、各薬液の100mlを5ml/sの吐出速度で、20秒かけて吐出した。その後、2000rpm、30秒間ウェハを回転させてスピンドライ処理を実施した。これを評価用ウェハとした。次に、KLA-Tencor社製のウェハ検査装置「SP-5」とアプライドマテリアル社の全自動欠陥レビュー分類装置「SEMVision G6」を用いて、ウェハの全面に存在する26nm以上のサイズの欠陥の数、及び、その組成を調べた。
計測された欠陥のうち、粒子状の異物をパーティクル欠陥、上記以外をシミ状欠陥として計数し、以下の基準により評価した。結果を表の「パーティクル欠陥抑制性能」及び「シミ状欠陥抑制性能」の欄に示した。なお、欠陥数とあるのは、それぞれ、パーティクル欠陥数、及び、シミ状欠陥数を表す。
【0417】
A 欠陥数が50個/ウェハ以下だった。
B 欠陥数が50個/ウェハを超え、300個/ウェハ以下だった。
C 欠陥数が300個/ウェハを超えた。
【0418】
〔評価2:フィルタの寿命の評価〕
表に記載した各ろ過装置を用いて被精製液を連続して精製した。被精製液を通液してろ過装置の状態が安定した後、すぐに得られた薬液を試験用(初期サンプル)として回収し、その後、通液量10000kgごとに精製後に得られた薬液を試験用(経時サンプル)として回収した。試験用に回収した薬液は、「評価1」で説明した薬液のパーティクル欠陥抑制性能の評価法により評価し、単位面積当たりの欠陥数を初期サンプルと比較して、経時サンプルの欠陥数が2倍となったときの通液量をフィルタの「寿命」とした。
図25に記載したろ過装置を使用した場合(薬液103)の寿命を1とし、各装置のフィルタの寿命を比で評価した。結果は以下の基準により評価し、表に示した。なお、
図25の装置(薬液103)については評価結果に「基準」と表記した。
【0419】
A 寿命が10倍以上だった。
B 寿命が5倍以上、10倍未満だった。
C 寿命が1倍を超え、5倍未満だった。
D 寿命が1倍以下だった。
【0420】
[試験例3:レジスト樹脂組成物である薬液の製造、及び、薬液の性能評価]
【0421】
〔薬液201の製造〕
被精製液として、以下の成分を含有するレジスト樹脂組成物2を準備した。
【0422】
・下記の方法により合成した樹脂A-2:0.79g
【0423】
<樹脂(A-2)>
樹脂(A-2)の合成
2Lフラスコにシクロヘキサノン600gを入れ、100mL/minの流量で一時間窒素置換した。その後、重合開始剤V-601(和光純薬工業(株)製)0.02molを加え、内温が80℃になるまで昇温した。次に、以下のモノマー1~3と重合開始剤V-601(和光純薬工業(株)製)0.02molとを、シクロヘキサノン200gに溶解し、モノマー溶液を調製した。モノマー溶液を上記80℃に加熱したフラスコ中に6時間かけて滴下した。滴下終了後、更に80℃で2時間反応させた。
モノマー1:0.3mol
モノマー2:0.6mol
モノマー3:0.1mol
【0424】
【0425】
反応溶液を室温まで冷却し、ヘキサン3L中に滴下しポリマーを沈殿させた。ろ過した固体をアセトン500mLに溶解し、再度ヘキサン3L中に滴下、ろ過した固体を減圧乾燥して、モノマー1~3の共重合体(A-2)を得た。
【0426】
反応容器中に上記で得られた重合体10g、メタノール40mL、1-メトキシ-2-プロパノール200mL、及び、濃塩酸1.5mLを加え、80℃に加熱して5時間攪拌した。反応溶液を室温まで放冷し、蒸留水3L中に滴下した。ろ過した固体をアセトン200mLに溶解し、再度蒸留水3L中に滴下、ろ過した固体を減圧乾燥して樹脂(A-2)(8.5g)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(溶媒:THF(tetrahydrofuran))による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は12300、分子量分散度(Mw/Mn)は1.51であった。
なお、樹脂の組成(モル比)は、1H-NMR(核磁気共鳴)測定により算出した。樹脂の重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)、分散度(Mw/Mn)はGPC(溶媒:THF)測定により算出した。
【0427】
【0428】
樹脂A-2の組成は、上記構成単位の左から順に、30/60/10(モル比)だった。重量平均分子量(Mw)は12300で、Mw/Mnは1.51だった。
【0429】
・以下に示す酸発生剤(B-2):0.18g
【化43】
【0430】
・以下に示す塩基性化合物(E-1):0.03g
【化44】
【0431】
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:45g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル:30g
【0432】
図26に記載したろ過装置を使用して、薬液201を製造した。
図26のろ過装置は、流入部と流出部の間に、フィルタBU-1、タンクTU-1、フィルタF-A、フィルタBD-1が、直列に接続されている。各ユニットは配管と共に流通路S-26を形成している。また、フィルタBD-1の下流側から、フィルタBU-1の下流側であってタンクTU-1の上流側に、被精製液を返送可能な返送流通路R-26が形成されている。被精製液返送流通路R-26によって返送され、3回循環ろ過された。
下記表には、精製に使用した各フィルタが含有する材料成分、及び、孔径を示した。
【0433】
〔薬液202、薬液203の製造〕
表に記載したろ過装置を使用したことを除いては、薬液201と同様にして薬液202及び薬液203を製造した。なお、薬液203の製造においては、循環ろ過を行わなかった。
【0434】
〔薬液204の製造〕
被精製液として、以下の成分を含有するレジスト樹脂組成物3を準備した。
【0435】
・下記の方法により合成した樹脂A-14:0.785g
【0436】
<樹脂(A-14)>
樹脂(A-14)の合成
用いるモノマーを変更した以外は、上記樹脂(A-2)の合成と同様の方法で、以下の構造を有する樹脂(A-14)を得た。
【化45】
【0437】
樹脂A-14の組成は、上記構成単位の左から順に、20/40/40(モル比)だった。重量平均分子量(Mw)は11000で、Mw/Mnは1.45だった。
【0438】
・以下に示す酸発生剤(B-9):0.18g
【化46】
【0439】
・以下に示す塩基性化合物(E-2):0.03g
【化47】
【0440】
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:45g
・シクロヘキサノン:30g
【0441】
・以下に示す疎水性樹脂(3b):0.005g
【化48】
【0442】
図26に記載したろ過装置を使用して、薬液204を製造した。
図26のろ過装置は、流入部と流出部の間に、フィルタBU-1、タンクTU-1、フィルタF-A、フィルタBD-1が、直列に接続されている。各ユニットは配管と共に流通路S-26を形成している。また、フィルタBD-1の下流側から、フィルタBU-1の下流側であってタンクTU-1の上流側に、被精製液を返送可能な返送流通路R-26が形成されている。被精製液返送流通路R-26によって返送され、3回循環ろ過された。
表には、精製に使用した各フィルタが含有する材料成分、及び、孔径を示した。
【0443】
〔薬液205、薬液206の製造〕
表に記載したろ過装置を使用したことを除いては、薬液204と同様にして薬液205及び薬液206を製造した。なお、薬液206の製造においては、循環ろ過を行わなかった。
【0444】
〔薬液207の製造〕
被精製液として、以下の成分を含有するレジスト樹脂組成物4を準備した。
【0445】
・下記の方法により合成した樹脂(A-1)-3:97質量%
【0446】
<樹脂(A-1)-3>
樹脂(A-1)-3は、特開2009-265609号公報の0131~0134段落の記載を参照して合成した。なお、樹脂(A-1)-3の有する繰り返し単位は、以下の式で表されるとおりであり、その組成(モル比)は、左側から順に50/40/10であった。また、重量平均分子量は20000であり、Mw/Mnで表される分散度は、1.57だった。
(A-1)-3
【化49】
【0447】
・以下に示す酸発生剤(B-35):2.5質量%
【化50】
【0448】
・C-1 ジシクロヘキシルメチルアミン:0.4質量%
【0449】
・D-1 フッ素系界面活性剤、メガファックF-176(大日本インキ化学工業(株)製):0.1質量%
ここで、上記(A-1)-3からD-1までの含有量はレジスト樹脂組成物4の固形分中における質量基準の含有量を示す。
【0450】
・溶剤
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:80質量%
プロピレングリコールモノメチルエーテル:20質量%なお、上記溶剤の含有量は、レジスト樹脂組成物4が含有する溶剤中における、各溶剤の含有量(溶剤の全質量を100質量%としたときのそれぞれの含有量)を示す。なお、レジスト樹脂組成物4の固形分は10質量%となるよう調整した。
【0451】
図26に記載したろ過装置を使用して、薬液207を製造した。
図26のろ過装置は、流入部と流出部の間に、フィルタBU-1、タンクTU-1、フィルタF-A、フィルタBD-1が、直列に接続されている。各ユニットは配管と共に流通路S-26を形成している。また、フィルタBD-1の下流側から、フィルタBU-1の下流側であってタンクTU-1の上流側に、被精製液を返送可能な返送流通路R-26が形成されている。被精製液返送流通路R-26によって返送され、3回循環ろ過された。
表には、精製に使用した各フィルタが含有する材料成分、及び、孔径を示した。
【0452】
〔薬液208、薬液209の製造〕
表に記載したろ過装置を使用したことを除いては、薬液207と同様にして薬液208及び薬液209を製造した。なお、薬液209の製造においては、循環ろ過を行わなかった。
【0453】
〔薬液の欠陥抑制性能の評価:EUV露光時の欠陥抑制性能〕
薬液201~薬液203を用いて、以下の操作により薬液の欠陥抑制性能(現像後欠陥抑制性能、及び、ブリッジ欠陥抑制性能を評価した。なお、EUV露光とはEUVを用いた露光によるパターン形成方法を表す。
【0454】
12インチシリコンウエハ上に、薬液201~薬液203をそれぞれ塗布し、120℃の条件で60秒間ベークし、膜厚40nmのレジスト膜を形成した。
【0455】
(現像後欠陥性能評価における露光条件)
上記で作製したウェハに、NA(レンズ開口数、Numerical Aperture)0.25、ダイポール照明(Dipole 60x、アウターシグマ0.81、インナーシグマ0.43)でEUV露光を行った。具体的には、ネガ型のレジストに対しては1mJ/cm2の露光量にてマスクを介さず全面露光を行った。
【0456】
(ブリッジ欠陥抑制性能評価における露光条件)
上記で作製したウェハに、NA(レンズ開口数、Numerical Aperture)0.25、Quasar照明(Quasar45、アウターシグマ0.81、インナーシグマ0.51)でEUV露光を行った。具体的には、ウェハ上寸法がピッチ60nm、ホールサイズ30nmのコンタクトホールパターンを形成する為のパターン(C/Hの抜け性評価用)、およびライン幅が22nm、ピッチが50nmのLS(ラインアンドスペース)パターンが含まれたマスクを介して、露光量を調整後にライン幅が22nmとなる露光量でウェハ全面にEUV露光を行った。
【0457】
(現像条件)
上記の条件で露光した後、ただちに、100℃の条件で60秒間ベークした。
その後、シャワー型現像装置(ACTES(株)製ADE3000S)を用いて、50回転(rpm)でウェハを回転しながら、現像液(23℃)を、200mL/分の流量で30秒間スプレー吐出することで、現像し、評価用試料を得た。
【0458】
(評価1:ブリッジ欠陥抑制性能の評価)
露光したLSパターンの解像状況を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製CG4600)を用いて倍率200kでn=300個の視野について観察し、観察した一視野内にてLSパターンのブリッジが起こった個数を評価し、LSパターンでのブリッジ欠陥数とした。この数値が小さいほど、薬液は優れたブリッジ欠陥抑制性能を有する。結果は以下の基準に従い評価し、表に示した。
A:欠陥数が10(個/視野)以下だった。
B:欠陥数が10(個/視野)を超え、30(個/視野)以下だった。
C:欠陥数が30(個/視野)を超え、100(個/視野)以下だった。
D:欠陥数が100(個/視野)を超え、300(個/視野)以下だった。
E:欠陥数が300(個/視野)を超えた。
【0459】
(評価2:現像後欠陥抑制性能の評価)
得られた試料について、KLA-Tencor社製のウェハ検査装置「SP-5」を用いて、ウェハの全面に存在する19nm以上のサイズの全欠陥数を求めた。結果は以下の基準に従い評価し、表に示した。
【0460】
A:欠陥数が200個/ウェハ以下だった。
B:欠陥数が200個/ウェハを超え、500個/ウェハ以下だった。
C:欠陥数が500個/ウェハを超え、1000個/ウェハ以下だった。
D:欠陥数が1000個/ウェハを超え、1500個/ウェハ以下だった。
E:欠陥数が1500個/ウェハを超えた。
【0461】
〔薬液の欠陥抑制性能の評価:ArF露光時の欠陥抑制性能〕
薬液204~薬液206を用いて、以下の操作により薬液の欠陥抑制性能(現像後欠陥抑制性能、及び、ブリッジ欠陥抑制性能を評価した。なお、ArF露光とは、ArFエキシマレーザを用いた露光によるパターン形成方法を表す。
【0462】
12インチシリコンウエハ上に、薬液204~薬液206をそれぞれ塗布し、90~120℃の条件で60秒間ベークし、膜厚40nmのレジスト膜を形成した。
なお、レジスト膜を塗布する前に、シリコンウェハ上に有機反射防止膜ARC29SR(Brewer社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークを行い膜厚86nmの反射防止膜を形成した。
【0463】
(現像後欠陥性能評価における露光条件)
上記で作製したウェハに、ArFエキシマレーザ液浸スキャナー(ASML社製XT1700i、NA1.20、Dipole、アウターシグマ0.900、インナーシグマ0.700、Y偏向)を用いて、ArF露光を行った。具体的には、ネガ型のレジストに対しては1mJ/cm2の露光量にてマスクを介さず全面露光を行った。
【0464】
(ブリッジ欠陥抑制性能評価における露光条件)
得られたウェハをArFエキシマレーザ液浸スキャナー(ASML社製XT1700i、NA1.20、Dipole、アウターシグマ0.900、インナーシグマ0.700、Y偏向)を用いて、パターン露光を行った。なお、レクチルとしては、ラインサイズ=50nmであり且つライン:スペース=1:1である6%ハーフトーンマスクを用いた。また、液浸液としては、超純水を用いた。
得られるパターンがピッチ100nm、スペース幅35nm、ライン幅65nmのラインアンドスペースパターンとなるよう条件を調整した。
【0465】
(現像条件)
100℃でベーク(Post Exposure Bake;PEB)した後、現像液で30秒間パドルして現像し、パターン形成したウェハを作成した。また、リンス処理を行う場合には現像液で30秒間パドルして現像した後に、ウェハが乾燥する前にリンス液でパドルしてリンスした後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させることにより、評価用試料を得た。
【0466】
(評価1:ブリッジ欠陥抑制性能の評価)
露光したLSパターンの解像状況を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製CG4600)を用いて倍率200kでn=300個の視野について観察し、観察した一視野内にてLSパターンのブリッジが起こった個数を評価し、LSパターンでのブリッジ欠陥数とした。この数値が小さいほど、薬液は優れたブリッジ欠陥抑制性能を有する。結果は以下の基準に従い評価し、表に示した。
A:欠陥数が10(個/視野)以下だった。
B:欠陥数が10(個/視野)を超え、30(個/視野)以下だった。
C:欠陥数が30(個/視野)を超え、100(個/視野)以下だった。
D:欠陥数が100(個/視野)を超え、300(個/視野)以下だった。
E:欠陥数が300(個/視野)を超えた。
【0467】
(評価2:現像後欠陥抑制性能の評価)
得られた試料について、上KLA-Tencor社製のウェハ検査装置「SP-5」を用いて、ウェハの全面に存在する19nm以上のサイズの全欠陥数を求めた。結果は以下の基準に従い評価し、表に示した。
【0468】
A:欠陥数が200個/ウェハ以下だった。
B:欠陥数が200個/ウェハを超え、500個/ウェハ以下だった。
C:欠陥数が500個/ウェハを超え、1000個/ウェハ以下だった。
D:欠陥数が1000個/ウェハを超え、1500個/ウェハ以下だった。
E:欠陥数が1500個/ウェハを超えた。
【0469】
〔薬液の欠陥抑制性能の評価:KrF露光時の欠陥抑制性能〕
薬液207~薬液209を用いて、以下の操作により薬液の欠陥抑制性能(現像後欠陥抑制性能、及び、ブリッジ欠陥抑制性能を評価した。なお、KrFとはKrFエキシマレーザを用いた露光によるパターン形成方法を表す。
【0470】
シリコンウェハにHMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理(110℃35秒間)を施し、薬液207~薬液209を用いて、レジスト膜を100nmの厚みとなるように製膜した。 なお、薬液を塗布する前に、シリコンウェハ上に酸化膜を100nm形成した。
【0471】
上記で作製したウェハに、KrFエキシマレーザースキャナー(ASML社製、PAS5500/850)(NA0.80)を用いて、KrF露光を行った。具体的には、ネガ型のレジストに対しては1mJ/cm2の露光量にてマスクを介さず全面露光を行った。
【0472】
(ブリッジ欠陥抑制性能評価における露光条件)
得られたウェハをKrFエキシマレーザースキャナー(ASML社製、PAS5500/850)(NA0.80)を用いて、パターン露光を行った。なお、レクチルとしては、ラインサイズ=175nm、スペースサイズ=263nmであるラインアンドスペースパターンのバイナリマスクを用いた。得られるパターンがピッチ438nm、スペース幅130nm、ライン幅308nmのラインアンドスペースパターンとなるよう調整した。
【0473】
(現像条件)
その後、100℃60秒の条件でベーク(Post Exposure Bake;PEB)した後、現像液で30秒間パドルして現像し、更にリンス処理を実施する際はリンス液でパドルしてリンスした後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させることにより、評価用試料を得た。
尚、現像液としては、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製のFHD-5を使用した。
【0474】
(評価1:ブリッジ欠陥抑制性能の評価)
露光したLSパターンの解像状況を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製CG4600)を用いて倍率200kでn=300個の視野について観察し、観察した一視野内にてLSパターンのブリッジが起こった個数を評価し、LSパターンでのブリッジ欠陥数とした。この数値が小さいほど、薬液は優れたブリッジ欠陥抑制性能を有する。結果は以下の基準に従い評価し、表に示した。
A:欠陥数が10(個/視野)以下だった。
B:欠陥数が10(個/視野)を超え、30(個/視野)以下だった。
C:欠陥数が30(個/視野)を超え、100(個/視野)以下だった。
D:欠陥数が100(個/視野)を超え、300(個/視野)以下だった。
E:欠陥数が300(個/視野)を超えた。
【0475】
(評価2:現像後欠陥抑制性能の評価)
得られた試料について、上KLA-Tencor社製のウェハ検査装置「SP-5」を用いて、ウェハの全面に存在する19nm以上のサイズの全欠陥数を求めた。結果は以下の基準に従い評価し、表に示した。
【0476】
A:欠陥数が200個/ウェハ以下だった。
B:欠陥数が200個/ウェハを超え、500個/ウェハ以下だった。
C:欠陥数が500個/ウェハを超え、1000個/ウェハ以下だった。
D:欠陥数が1000個/ウェハを超え、1500個/ウェハ以下だった。
E:欠陥数が1500個/ウェハを超えた。
【0477】
〔評価3:フィルタの寿命の評価〕
表に記載した各ろ過装置を用いて被精製液を連続して精製した。被精製液を通液してろ過装置の状態が安定した後、すぐに得られた薬液を試験用(初期サンプル)として回収し、その後、通液量10000kgごとに精製後に得られた薬液を試験用(経時サンプル)として回収した。試験用に回収した薬液は、「評価1」で説明した薬液のブリッジ欠陥抑制性能の評価法により評価し、単位面積当たりの欠陥数を初期サンプルと比較して、経時サンプルの欠陥数が2倍となったときの通液量をフィルタの「寿命」とした。
図25に記載したろ過装置を使用した場合の寿命(薬液201)を1とし、各装置のフィルタの寿命を比で評価した。結果は以下の基準により評価し、表に示した。なお、
図25の装置(薬液201)については評価結果に「基準」と表記した。
【0478】
AA 寿命が10倍以上だった。
A 寿命が5倍以上、10倍未満だった。
B 寿命が2倍以上、5倍未満だった。
C 寿命が1倍を超え、2倍未満だった。
D 寿命が1倍以下だった。
【0479】
【0480】
【0481】
【0482】
【0483】
【0484】
【0485】
【0486】
【0487】
【0488】
【0489】
【0490】
【0491】
【0492】
【0493】
【0494】
表1は、第1グループ:表1(1-1)~表1(1-5)、第2グループ:表1(2-1)~表1(2-5)、及び、第3グループ:表1(3-1)~表1(3-5)に分割されている。
表1には、各グループの5つの分割表の対応する行にわたって、各薬液の精製に用いたろ過装置(又は精製装置)が有するフィルタ等、及び、得られた薬液の評価結果が記載されている。
例えば、第1グループ:表1(1-1)~表1(1-5)のそれぞれの1行目には、薬液1について記載されている。
これは、薬液1が、
図14に記載した精製装置により製造されたことを示し、薬液1の製造に用いた被精製液は、CHN(シクロヘキサノン)を含有し、そのSP値は20.3であることを示している。また、薬液1の製造に用いた精製装置のフィルタは、「PGMEA 1day浸漬」の条件で事前に洗浄されたことを示している。また、精製装置は、2連式の蒸留器と、BU-1(流通路の最も上流側に配置されたUPEを含有する孔径50nmのフィルタ)、BU-2(BU-1の下流側に配置された孔径15nmのIEXフィルタ)、とを有し、フィルタA(F-A)の上流側にタンクTU-1を有し、F-A(フィルタA)としては、孔径10nmのPTFE-1フィルタを有し、フィルタF-Aの下流側には、BD-1(ナイロンを含有する孔径10nmのフィルタ)、BD-2(UPEを含有する孔径3nmフィルタ)を有し、更に、フィルタF-Aの下流側には、タンクTD-1を有することを示している。また、循環ろ過が「有」であったことを示している。
更に薬液1は「プリウェット」の方法で評価され、残渣欠陥抑制性能がAA、シミ状欠陥抑制性能がAA、ブリッジ欠陥抑制性能がAA、パターン幅の均一性能がAA、そして、精製装置のフィルタの寿命がAAであったことを示している。
薬液25~48については、同様に第2グループの各表に結果が記載されている。また、薬液49~68については、第3グループの各表に結果が記載されている。
【0495】
表に示した結果からフィルタAと上記フィルタAとは異なるフィルタBとを有するろ過装置(又は精製装置)を用いて精製した薬液1~33、及び、薬液35~68は、優れた欠陥抑制性能を有していた。一方で、フィルタBを有さないろ過装置で精製した薬液34は、本発明の所望の効果を有していなかった。
また、被精製液のSP値が20以下である場合、フィルタBUを有するろ過装置(精製装置)によって製造された薬液31及び薬液32は、フィルタBUを有さないろ過装置(精製装置)によって製造された薬液67及び68と比較して、より優れた欠陥抑制性能を有していた。言い換えれば、フィルタBUを有するろ過装置は、SP値が20以下である被精製液の精製に用いられることがより好ましいことがわかった。
また、被精製液のSP値が20以下である場合、フィルタBUを有しており、かつ、フィルタBUが、イオン交換基を有する樹脂を材料成分として含有するろ過装置(精製装置)によって製造された薬液31及び薬液32は、HDPEを材料成分として有する(イオン交換基を有しない樹脂である)フィルタBUを有するろ過装置(精製装置)によって製造された薬液65及び薬液66と比較して、更に優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られることがわかった。言い換えれば、フィルタBUを有し、かつ、フィルタBUがイオン交換基を有する樹脂を材料成分として含有するろ過装置は、SP値が20以下である被精製液の精製に用いられることが更に好ましいことがわかった。
【0496】
【0497】
【0498】
【0499】
表2は、表2(1-1)~表2(1-3)に分割されている。表2には、各分割表の対応する行にわたって、各薬液の精製に用いたろ過装置及び、得られた薬液の評価結果が記載されている。
例えば、各分割表のそれぞれの1行目には、薬液101について記載されている。
これは、薬液101が
図20に記載されたろ過装置により製造されたことを示し、薬液101の製造に用いた被精製液は、SPM(4:1)であることを示している。また、薬液101の製造に用いたろ過装置のフィルタは「PGMEA 1day浸漬」の条件で事前に洗浄されたことを示している。また、ろ過装置は、BU-1(PTFEを含有する孔径200nmのフィルタ)、BU-2(PTFEを含有する孔径20nmのフィルタ)を有し、更に、フィルタF-Aの上流側にはタンクTU-1を有し、F-A(フィルタA)としては、孔径15nmのPTFE-3フィルタを有し、その下流側には、BD-1(PTFEを含有する孔径10nmのフィルタ)、BD-2(PTFEを含有する孔径10nmのフィルタ)、更に、タンクTD-1を有することを示している。また、循環ろ過が「有」であったことを示している。
薬液101の評価は、パーティクル欠陥抑制性能がA、シミ状欠陥抑制性能がA、そしてろ過装置のフィルタの寿命がAであったことを示している。
薬液102~104については、同様に上記表中に結果が記載されている。
【0500】
表に示した結果からフィルタAと上記フィルタAとは異なるフィルタBとを有するろ過装置(又は精製装置)を用いて精製した薬液101、薬液102は、優れた欠陥抑制性能を有していた。一方で、フィルタBを有さないろ過装置で精製した薬液103、薬液104は、本発明の所望の効果を有していなかった。上記の結果から、本発明の実施形態に係るろ過装置は、水系被精製液の精製用としても優れた効果を有することがわかった。
【0501】
【0502】
【0503】
【0504】
表3は、表3(1-1)~表3(1-3)に分割されている。表3には、各分割表の対応する行にわたって、各薬液の精製に用いたろ過装置及び、得られた薬液の評価結果が記載されている。
例えば、各分割表のそれぞれの1行目には、薬液201について記載されている。
これは、薬液201が
図26に記載されたろ過装置により製造されたことを示し、薬液201の製造に用いた被精製液は、レジスト樹脂組成物2であることを示している。また、薬液201の製造に用いたろ過装置のフィルタは「PGMEA 1day浸漬」の条件で事前に洗浄されたことを示している。また、ろ過装置は、BU-1(Nylonを含有する孔径10nmのフィルタ)を有し、更に、フィルタF-Aの上流側にはタンクTU-1を有し、F-A(フィルタA)としては、孔径10nmのPTFE-3フィルタを有し、その下流側には、BD-1(UPEを含有する孔径1nmのフィルタ)を有することを示している。また、循環ろ過が「有」であったことを示している。
薬液201の評価は、ブリッジ欠陥抑制性能がA、現像後欠陥抑制性能がA、そしてろ過装置のフィルタの寿命がAであったことを示している。
薬液202~209については、同様に上記表中に結果が記載されている。
【0505】
表に示した結果からフィルタAと上記フィルタAとは異なるフィルタBとを有するろ過装置(又は精製装置)を用いて精製した薬液201~202、204~205、207~208は、優れた欠陥抑制性能を有していた。一方で、フィルタBを有さないろ過装置で精製した薬液203、薬液206、薬液209は、本発明の所望の効果を有していなかった。上記の結果から、本発明の実施形態に係るろ過装置は、被精製液がレジスト樹脂組成物である場合でも優れた効果を有することがわかった。
【0506】
薬液1~13、薬液15~28、薬液30~33、薬液35~56、薬液65~68、薬液101~102、薬液201~202、薬液204~205、及び、薬液207~208について、それぞれ、表中に記載したのと同じろ過装置(精製装置)を用いて薬液を作成した。この際、循環ろ過は行わなかった。得られた薬液について、各表中に記載した項目の評価を行ったところ、それぞれ、得られた薬液は、優れた欠陥抑制性能を有していた。また、フィルタの寿命も、同様に良好な結果となることを確認できた。
【0507】
一般に、生産性コストの観点からは、循環ろ過せずに精製することが好ましい。一方で本発明の実施形態に係るろ過装置が有するフィルタAは基材としてポリフルオロカーボン製の多孔質基材を用いているため、循環ろ過に起因してフィルタAから意図せず被精製物に混入してしまう不純物がより少ない。この点では、フィルタAとしてはPTFE製の多孔質基材がより好ましい。
【符号の説明】
【0508】
100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000 ろ過装置
101 流入部
102 流出部
103、104、201、601、104-1、104-2 フィルタ
105、202、301、302、402、501、502、602、701、801、802、803、804,901、1001、1002、1003、1104、1105、1305 配管
401、401(a)、401(b) タンク
1100 製造場
1101 蒸留装置
1102、1203、1303、1304 蒸留器
1103 可搬型タンク
1106 運搬手段
1200、1300 精製装置
1201、1301 第2の流入部
1202、1302 第2の流出部