IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

特許7109544硬化性組成物、膜、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置、赤外線センサ及びカメラモジュール
<>
  • 特許-硬化性組成物、膜、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置、赤外線センサ及びカメラモジュール 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】硬化性組成物、膜、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置、赤外線センサ及びカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20220722BHJP
   C08K 5/34 20060101ALI20220722BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20220722BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20220722BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20220722BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/34
C08F20/00
C08F2/44 Z
C08F2/50
G02B5/22
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020528834
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2019025810
(87)【国際公開番号】W WO2020009015
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2018128804
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】松村 季彦
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 賢
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04175956(US,A)
【文献】国際公開第2008/035533(WO,A1)
【文献】特表平06-506492(JP,A)
【文献】特開2017-159947(JP,A)
【文献】特開2017-132891(JP,A)
【文献】特開2018-092923(JP,A)
【文献】特開2004-319309(JP,A)
【文献】特開2000-345059(JP,A)
【文献】特開2008-074922(JP,A)
【文献】特開2003-301009(JP,A)
【文献】特開2015-068945(JP,A)
【文献】Y. PROSTOTA et al.,New unsymmetrical squaraine dyes derived from imidazo[1,5-α]pyridine,Dyes and Pigments,英国,2012年10月17日,Vol.96,Pages 554-562
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08F 6/00-246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)又は下記式(2)で表される化合物と、
硬化性化合物と、
溶剤と、
を含む硬化性組成物;
【化1】
式(1)中、XおよびXはそれぞれ独立して、O、Sまたはジシアノメチレン基を表し、RおよびRは、それぞれ独立してアリール基、複素環基、式(R1)で表される基、式(R2-11)で表される基、式(R2-12)で表される基、式(R2-13)で表される基、または、式(R2-14)で表される基を表し、RおよびRの少なくとも一方が式(R2-11)~(R2-14)のいずれかで表される基である
式(2)中、X~Xはそれぞれ独立して、O、S、またはジシアノメチレン基を表し、RおよびRは、それぞれ独立してアリール基、複素環基、式(R1)で表される基、式(R2-11)で表される基、式(R2-12)で表される基、式(R2-13)で表される基、または、式(R2-14)で表される基を表し、RおよびRの少なくとも一方が式(R2-11)~(R2-14)のいずれかで表される基である
【化2】
式(R1)中、*は結合手を表し、
Rs~Rsは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、
Asは複素環基を表し、
s1は、0以上の整数を表し、
RsとRsは、互いに結合して環を形成してもよく、
RsとAsは、互いに結合して環を形成してもよく、
RsとRsは、互いに結合して環を形成してもよく、
s1が2以上の場合、複数のRsおよびRsはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい;
【化3】
Rt 13 ~Rt 20 はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、
Rt 31 、Rt 32 はそれぞれ独立して置換基を表し、
は、O、S、C(=O)、S(=O)またはSO を表し、
は、O、S、NR z1 またはCR z2 z3 を表し、R z1 ~R z3 はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、
t31は0~4の整数を表し、
t32は0~6の整数を表し、
t31が2以上の場合、複数のRt 31 はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt 31 のうち2つのRt 31 同士が結合して環を形成していてもよく、
t32が2以上の場合、複数のRt 32 はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt 32 のうち2つのRt 32 同士が結合して環を形成していてもよく、
n1は0~4の整数を表し、
n2およびn3はそれぞれ独立して1~3の整数を表す;ただし、n2+n3は2~4の整数である。
【請求項2】
前記式(1)又は式(2)で表される化合物は、クロロホルム溶液中において波長600~1300nmの範囲に極大吸収波長を有する、請求項に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記硬化性組成物を用いて厚さ1.0μmの膜を形成した際に、前記膜は、前記硬化性組成物に含まれる前記式(1)又は式(2)で表される化合物のクロロホルム溶液中での極大吸収波長よりも長波長側に極大吸収波長を有する、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記硬化性組成物を用いて厚さ1.0μmの膜を形成した際に、前記膜の極大吸収波長は700~1400nmの範囲にある、請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性組成物から得られる膜。
【請求項6】
下記式(1)又は下記式(2)で表される化合物と、硬化性化合物と、溶剤と、を含む硬化性組成物から得られる膜を有する、近赤外線カットフィルタ
【化4】
式(1)中、X およびX はそれぞれ独立して、O、Sまたはジシアノメチレン基を表し、R およびR は、それぞれ独立してアリール基、複素環基、式(R1)で表される基、または式(R2)で表される基を表し、R およびR の少なくとも一方が式(R2)で表される基である;
式(2)中、X ~X はそれぞれ独立して、O、S、またはジシアノメチレン基を表し、R およびR は、それぞれ独立してアリール基、複素環基、式(R1)で表される基、または式(R2)で表される基を表し、R およびR の少なくとも一方が式(R2)で表される基である;
【化5】
式(R1)中、*は結合手を表し、
Rs ~Rs は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、
As は複素環基を表し、
s1 は、0以上の整数を表し、
Rs とRs は、互いに結合して環を形成してもよく、
Rs とAs は、互いに結合して環を形成してもよく、
Rs とRs は、互いに結合して環を形成してもよく、
s1 が2以上の場合、複数のRs およびRs はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい;
【化6】
式(R2)中、*は結合手を表し、
Rt およびRt は、それぞれ独立して置換基を表し、
A1は4~9員の含窒素複素環を表し、
B2は単環または縮合環の芳香族環を表し、
t1およびt2はそれぞれ独立して0以上の整数を表し、
t1が2以上の場合、複数のRt はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt のうち2つのRt 同士が結合して環を形成していてもよく、
t2が2以上の場合、複数のRt はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt のうち2つのRt 同士が結合して環を形成していてもよい。
【請求項7】
下記式(1)又は下記式(2)で表される化合物と、硬化性化合物と、溶剤と、を含む硬化性組成物から得られる膜を有する、固体撮像素子;
【化7】
式(1)中、X およびX はそれぞれ独立して、O、Sまたはジシアノメチレン基を表し、R およびR は、それぞれ独立してアリール基、複素環基、式(R1)で表される基、または式(R2)で表される基を表し、R およびR の少なくとも一方が式(R2)で表される基である;
式(2)中、X ~X はそれぞれ独立して、O、S、またはジシアノメチレン基を表し、R およびR は、それぞれ独立してアリール基、複素環基、式(R1)で表される基、または式(R2)で表される基を表し、R およびR の少なくとも一方が式(R2)で表される基である;
【化8】
式(R1)中、*は結合手を表し、
Rs ~Rs は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、
As は複素環基を表し、
s1 は、0以上の整数を表し、
Rs とRs は、互いに結合して環を形成してもよく、
Rs とAs は、互いに結合して環を形成してもよく、
Rs とRs は、互いに結合して環を形成してもよく、
s1 が2以上の場合、複数のRs およびRs はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい;
【化9】
式(R2)中、*は結合手を表し、
Rt およびRt は、それぞれ独立して置換基を表し、
A1は4~9員の含窒素複素環を表し、
B2は単環または縮合環の芳香族環を表し、
t1およびt2はそれぞれ独立して0以上の整数を表し、
t1が2以上の場合、複数のRt はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt のうち2つのRt 同士が結合して環を形成していてもよく、
t2が2以上の場合、複数のRt はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt のうち2つのRt 同士が結合して環を形成していてもよい。
【請求項8】
請求項に記載の膜を有する、画像表示装置。
【請求項9】
下記式(1)又は下記式(2)で表される化合物と、硬化性化合物と、溶剤と、を含む硬化性組成物から得られる膜を有する、赤外線センサ;
【化10】
式(1)中、X およびX はそれぞれ独立して、O、Sまたはジシアノメチレン基を表し、R およびR は、それぞれ独立してアリール基、複素環基、式(R1)で表される基、または式(R2)で表される基を表し、R およびR の少なくとも一方が式(R2)で表される基である;
式(2)中、X ~X はそれぞれ独立して、O、S、またはジシアノメチレン基を表し、R およびR は、それぞれ独立してアリール基、複素環基、式(R1)で表される基、または式(R2)で表される基を表し、R およびR の少なくとも一方が式(R2)で表される基である;
【化11】
式(R1)中、*は結合手を表し、
Rs ~Rs は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、
As は複素環基を表し、
s1 は、0以上の整数を表し、
Rs とRs は、互いに結合して環を形成してもよく、
Rs とAs は、互いに結合して環を形成してもよく、
Rs とRs は、互いに結合して環を形成してもよく、
s1 が2以上の場合、複数のRs およびRs はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい;
【化12】
式(R2)中、*は結合手を表し、
Rt およびRt は、それぞれ独立して置換基を表し、
A1は4~9員の含窒素複素環を表し、
B2は単環または縮合環の芳香族環を表し、
t1およびt2はそれぞれ独立して0以上の整数を表し、
t1が2以上の場合、複数のRt はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt のうち2つのRt 同士が結合して環を形成していてもよく、
t2が2以上の場合、複数のRt はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt のうち2つのRt 同士が結合して環を形成していてもよい。
【請求項10】
固体撮像素子と、請求項に記載の近赤外線カットフィルタとを有する、カメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクアリリウム化合物やクロコニウム化合物を含む硬化性組成物に関する。また、本発明は、膜、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置、赤外線センサ及びカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などには、カラー画像の固体撮像素子である、CCD(電荷結合素子)や、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)が用いられている。これら固体撮像素子は、その受光部において赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードを使用しているために、視感度補正を行うことが必要であり、それには近赤外線カットフィルタを用いることが多い。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、スクアリリウム化合物やクロコニウム化合物を含む硬化性組成物を用いて近赤外線カットフィルタなどを製造することが記載されている。
【0004】
一方、非特許文献1は、スクアリリウム化合物の物性値と太陽電池特性との関係について記載された文献であって、下記構造の化合物についての太陽電池特性が記載されている。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/186050号
【文献】特開2016-074649号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】J.Phys.chem.1984,88,934-950
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者が、スクアリリウム化合物やクロコニウム化合物を含む硬化性組成物を用いて得られる膜について種々検討を行ったところ、耐光性および耐湿性についてさらなる改善の余地があることが分かった。
【0008】
なお、非特許文献1は、スクアリリウム化合物の物性値と太陽電池特性との関係について記載された文献である。非特許文献1では、酸化アルミニウム上に色素蒸着膜を形成して太陽電池特性を評価している。しかしながら、非特許文献1には、スクアリリウム化合物を、溶剤と硬化性化合物とを含む硬化性組成物中に配合して用いる記載や、それを示唆する記載もない。
【0009】
よって、本発明の目的は、耐光性および耐湿性に優れた膜を形成できる硬化性組成物を提供することにある。また、膜、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置、赤外線センサ及びカメラモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、種々検討した結果、後述する所定の構造を有する化合物を含む硬化性組成物を用いることで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、以下を提供する。
<1> 下記式(1)又は下記式(2)で表される化合物と、
硬化性化合物と、
溶剤と、
を含む硬化性組成物;
【化2】
式(1)中、XおよびXはそれぞれ独立して、O、Sまたはジシアノメチレン基を表し、RおよびRは、それぞれ独立してアリール基、複素環基、式(R1)で表される基、または式(R2)で表される基を表し、RおよびRの少なくとも一方が式(R2)で表される基である;
式(2)中、X~Xはそれぞれ独立して、O、S、またはジシアノメチレン基を表し、RおよびRは、それぞれ独立してアリール基、複素環基、式(R1)で表される基、または式(R2)で表される基を表し、RおよびRの少なくとも一方が式(R2)で表される基である;
【化3】
式(R1)中、*は結合手を表し、
Rs~Rsは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、
Asは複素環基を表し、
s1は、0以上の整数を表し、
RsとRsは、互いに結合して環を形成してもよく、
RsとAsは、互いに結合して環を形成してもよく、
RsとRsは、互いに結合して環を形成してもよく、
s1が2以上の場合、複数のRsおよびRsはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい;
【化4】
式(R2)中、*は結合手を表し、
RtおよびRtは、それぞれ独立して置換基を表し、
A1は4~9員の含窒素複素環を表し、
B2は単環または縮合環の芳香族環を表し、
t1およびt2はそれぞれ独立して0以上の整数を表し、
t1が2以上の場合、複数のRtはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRtのうち2つのRt同士が結合して環を形成していてもよく、
t2が2以上の場合、複数のRtはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRtのうち2つのRt同士が結合して環を形成していてもよい。
<2> 式(R2)で表される基が下記式(R2-1)~(R2-4)のいずれかで表される基である、<1>に記載の硬化性組成物;
【化5】
式中、Rt、Rt11、Rt12はそれぞれ独立して置換基を表し、
Rt13~Rt20はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、
は、O、S、C(=O)、S(=O)またはSOを表し、
B2は単環または縮合環の芳香族環を表し、
t2は0以上の整数を表し、
t2が2以上の場合、複数のRtはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRtのうち2つのRt同士が結合して環を形成していてもよく、
t11およびt12はそれぞれ独立して0~4の整数を表し、
t11が2以上の場合、複数のRt11はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt11のうち2つのRt11同士が結合して環を形成していてもよく、
t12が2以上の場合、複数のRt12はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt12のうち2つのRt12同士が結合して環を形成していてもよく、
n1は0~4の整数を表し、
n2およびn3はそれぞれ独立して1~3の整数を表す;ただし、n2+n3は2~4の整数である。
<3> 式(R2)のB2が表す単環または縮合環の芳香族環は、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環またはこれらの環を1種以上含む縮合環である、<1>または<2>に記載の硬化性組成物。
<4> 式(R2)で表される基が下記式(R2-11)~(R2-14)のいずれかで表される基である、<1>に記載の硬化性組成物;
【化6】
Rt13~Rt20はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、
Rt31、Rt32はそれぞれ独立して置換基を表し、
は、O、S、C(=O)、S(=O)またはSOを表し、
は、O、S、NRz1またはCRz2z3を表し、Rz1~Rz3はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、
t31は0~4の整数を表し、
t32は0~6の整数を表し、
t31が2以上の場合、複数のRt31はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt31のうち2つのRt31同士が結合して環を形成していてもよく、
t32が2以上の場合、複数のRt32はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt32のうち2つのRt32同士が結合して環を形成していてもよく、
n1は0~4の整数を表し、
n2およびn3はそれぞれ独立して1~3の整数を表す;ただし、n2+n3は2~4の整数である。
<5> 式(1)又は式(2)で表される化合物は、クロロホルム溶液中において波長600~1300nmの範囲に極大吸収波長を有する、<1>~<4>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<6> 上記硬化性組成物を用いて厚さ1.0μmの膜を形成した際に、この膜は、上記硬化性組成物に含まれる式(1)又は式(2)で表される化合物のクロロホルム溶液中での極大吸収波長よりも長波長側に極大吸収波長を有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<7> 上記硬化性組成物を用いて厚さ1.0μmの膜を形成した際に、この膜の極大吸収波長は700~1400nmの範囲にある、<1>~<6>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<8> <1>~<7>のいずれか1つに記載の硬化性組成物から得られる膜。
<9> <8>に記載の膜を有する、近赤外線カットフィルタ。
<10> <8>に記載の膜を有する、固体撮像素子。
<11> <8>に記載の膜を有する、画像表示装置。
<12> <8>に記載の膜を有する、赤外線センサ。
<13> 固体撮像素子と、<9>に記載の近赤外線カットフィルタとを有する、カメラモジュール。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐光性および耐湿性に優れた膜を形成できる硬化性組成物を提供することができる。また、膜、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置、赤外線センサ及びカメラモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】赤外線センサの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定でのポリスチレン換算値として定義される。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TOSOH TSKgel Super HZM-HとTOSOH TSKgel Super HZ4000とTOSOH TSKgel Super HZ2000とを連結したカラムを用い、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いることによって求めることができる。
本明細書において、化学式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、近赤外線とは、波長700~2500nmの光(電磁波)をいう。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0014】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、後述する式(1)又は式(2)で表される化合物と、硬化性化合物と、溶剤と、を含むことを特徴とする。以下、式(1)で表される化合物を化合物(1)ともいう。また、式(2)で表される化合物を化合物(2)ともいう。また、化合物(1)と化合物(2)とをあわせて化合物Aともいう。
【0015】
本発明の硬化性組成物を用いることにより、耐光性および耐湿性に優れた膜を形成することができる。このような効果が得られるメカニズムとしては以下によるものであると推測される。
【0016】
化合物Aは、後述する式(R2)で表される基を有することにより、化合物(1)の下記式(1-a)で表される部分構造の近傍や、化合物(2)の下記式(2-a)で表される部分構造の近傍の立体障害が高くなると推測される。その結果、化合物Aが加水分解されにくくなり、優れた耐湿性が得られたと推測される。
【化7】
【0017】
また、化合物Aは、色素平面(化合物(1)における式(1-a)の部位や、化合物(2)における式(2-a)の部位)に対して、式(R2)で表される基が張り出したような構造をなしている。このため、製膜時において、化合物A同士は立体障害を避けるようにずれて重なり合いやすく、膜中での化合物AのJ会合配列が安定すると推測される。このため、優れた耐光性が得られたと推測される。
【0018】
また、膜中での化合物AのJ会合配列が安定することにより、極大吸収波長をより長波長側にシフトしてより長波長側に吸収を持たせることができる。このため、硬化性化合物中に化合物Aを含有させることにより、分光特性に優れた膜(例えば、近赤外線遮蔽性および可視透明性に優れた分光特性を有する膜など)を形成することができる。また、化合物Aは、立体障害の高い基である式(R2)で表される基を有しているので、製膜時における化合物A同士の凝集による粒子の粗大化も抑制でき、その結果、より優れた可視透明性を有する膜を形成することもできる。
【0019】
なお、特許文献2の実施例には、下記構造の化合物などが記載されているが、本発明者の検討によれば、特許文献2に記載された化合物を用いた場合では、十分な耐光性は得られにくいと推測される。特許文献2に記載された化合物は、下記構造式中の破線で囲った部位で水素結合が形成されやすいと推測される。そして、化合物がこのような水素結合部位を有することにより、硬化性組成物中の溶剤や硬化性化合物と相互作用し易くなって、製膜時に化合物の会合形成が阻害されて、J会合体が形成されにくくなるためであると推測される。
【化8】
【0020】
以下、本発明の硬化性組成物の各成分について説明する。
【0021】
<<化合物A>>
本発明の硬化性組成物は、下記式(1)又は下記式(2)で表される化合物(化合物A)を含む。化合物Aは、近赤外線吸収剤として好ましく用いられる。
【化9】
式(1)中、XおよびXはそれぞれ独立して、O、Sまたはジシアノメチレン基を表し、RおよびRは、それぞれ独立してアリール基、複素環基、式(R1)で表される基、または式(R2)で表される基を表し、RおよびRの少なくとも一方が式(R2)で表される基である;
式(2)中、X~Xはそれぞれ独立して、O、S、またはジシアノメチレン基を表し、RおよびRは、それぞれ独立してアリール基、複素環基、式(R1)で表される基、または式(R2)で表される基を表し、RおよびRの少なくとも一方が式(R2)で表される基である;
【化10】
式(R1)中、*は結合手を表し、
Rs~Rsは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、
Asは複素環基を表し、
s1は、0以上の整数を表し、
RsとRsは、互いに結合して環を形成してもよく、
RsとAsは、互いに結合して環を形成してもよく、
RsとRsは、互いに結合して環を形成してもよく、
s1が2以上の場合、複数のRsおよびRsはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい;
【化11】
式(R2)中、*は結合手を表し、
RtおよびRtは、それぞれ独立して置換基を表し、
A1は4~9員の含窒素複素環を表し、
B2は単環または縮合環の芳香族環を表し、
t1およびt2はそれぞれ独立して0以上の整数を表し、
t1が2以上の場合、複数のRtはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRtのうち2つのRt同士が結合して環を形成していてもよく、
t2が2以上の場合、複数のRtはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRtのうち2つのRt同士が結合して環を形成していてもよい。
【0022】
化合物A(上記式(1)又は式(2)で表される化合物)は、クロロホルム溶液中において波長600~1300nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることが好ましく、波長650~1200nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることがより好ましく、波長700~1100nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることがさらに好ましい。なお、化合物Aのクロロホルム溶液中での極大吸収波長は、化合物Aのクロロホルム溶液を調製し、このクロロホルム溶液の吸光度を測定することによって算出することができる。
【0023】
なお、式(1)においてカチオンは、以下のように非局在化して存在している。
【化12】
【0024】
例えば、化合物I-1では、カチオンは以下のように非局在化して存在している。
【化13】
【0025】
また、式(2)においてカチオンは、以下のように非局在化して存在している。
【化14】
【0026】
まず、化合物(1)(式(1)で表される化合物)について説明する。
【0027】
式(1)中、XおよびXはそれぞれ独立して、O、Sまたはジシアノメチレン基を表し、Oであることが好ましい。
【0028】
式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立してアリール基、複素環基、式(R1)で表される基、または式(R2)で表される基を表し、RおよびRの少なくとも一方が式(R2)で表される基であり、本発明の効果がより顕著に得られやすいという理由からRおよびRの両方が式(R2)で表される基であることが好ましい。
【0029】
およびRが表わすアリール基の炭素数は、6~48が好ましく、6~22がより好ましく、6~12が特に好ましい。RおよびRが表わす複素環基は、5員環または6員環の複素環基が好ましい。また、複素環基は、単環の複素環基または縮合数が2~8の縮合環の複素環基が好ましく、単環の複素環基または縮合数が2~4の縮合環の複素環基がより好ましく、単環の複素環基または縮合数が2または3の縮合環の複素環基がより好ましく、単環の複素環基または縮合数が2の縮合環の複素環基が特に好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が例示され、窒素原子、硫黄原子が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子の数は、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。
【0030】
式(R1)におけるRs~Rsは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表す。Rs~Rsが表わすアルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。Rs~Rsは水素原子であることが好ましい。式(R1)におけるAsは複素環基を表す。Asが表す複素環基は、RおよびRの項で説明した複素環基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0031】
式(R1)におけるns1は、0以上の整数を表す。ns1は0~2の整数が好ましく、0または1がより好ましく、0が更に好ましい。
【0032】
式(R1)において、RsとRsは、互いに結合して環を形成してもよく、RsとAsは、互いに結合して環を形成してもよく、RsとRsは、互いに結合して環を形成してもよい。上記の環を形成する場合の連結基としては、-CO-、-O-、-NH-、炭素数1~10のアルキレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基が好ましい。連結基としてのアルキレン基は無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基Tや後述する可溶化基が挙げられる。
【0033】
式(R1)において、ns1が2以上の場合、複数のRsおよびRsはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0034】
次に、式(R2)について説明する。
式(R2)におけるRtおよびRtは、それぞれ独立して置換基を表す。置換基としては後述する置換基Tや後述する可溶化基が挙げられる。
【0035】
式(R2)において、t1およびt2はそれぞれ独立して0以上の整数を表す。t1が2以上の場合、複数のRtはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRtのうち2つのRt同士が結合して環を形成していてもよく、t2が2以上の場合、複数のRtはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRtのうち2つのRt同士が結合して環を形成していてもよい。上記の環を形成する場合の連結基としては、-CO-、-O-、-NH-、炭素数1~10のアルキレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基が好ましい。連結基としてのアルキレン基は無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基Tや後述する可溶化基が挙げられる。
【0036】
式(R2)において、A1が表す含窒素複素環は、5~7員環であることが好ましく、5または6員環であることがより好ましい。
【0037】
式(R2)において、B2は単環または縮合環の芳香族環を表し、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環またはこれらの環を1種以上含む縮合環であることが好ましい。上記の縮合環としては、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環およびピラジン環から選ばれる1種以上の環と、ベンゼン環またはナフタレン環との縮合環;イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環およびピラジン環から選ばれる2種以上の環の縮合環などが挙げられる。縮合環の縮合数は、より優れた分光特性が得られやすいという理由から2~6が好ましく、2~4がより好ましい。
【0038】
本発明において、式(R2)で表される基は、下記式(R2-1)~(R2-4)のいずれかで表される基であることが好ましく、耐光性に優れるという理由から式(R2-3)または式(R2-4)で表される基であることがより好ましく、耐光性及び耐湿性に優れるという理由から式(R2-3)で表される基であることが更に好ましい。
【化15】
式中、Rt、Rt11、Rt12はそれぞれ独立して置換基を表し、
Rt13~Rt20はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、
は、O、S、C(=O)、S(=O)またはSOを表し、
B2は単環または縮合環の芳香族環を表し、
t2は0以上の整数を表し、
t2が2以上の場合、複数のRtはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRtのうち2つのRt同士が結合して環を形成していてもよく、
t11およびt12はそれぞれ独立して0~4の整数を表し、
t11が2以上の場合、複数のRt11はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt11のうち2つのRt11同士が結合して環を形成していてもよく、
t12が2以上の場合、複数のRt12はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt12のうち2つのRt12同士が結合して環を形成していてもよく、
n1は0~4の整数を表し、
n2およびn3はそれぞれ独立して1~3の整数を表す;ただし、n2+n3は2~4の整数である。
【0039】
上記式におけるRt、Rt11~Rt20が表す置換基としては後述する置換基Tや後述する可溶化基が挙げられる。Rt13~Rt20が表す置換基はアルキル基であることが好ましい。
【0040】
上記式におけるYは、O、S、C(=O)、S(=O)またはSOを表し、O、C(=O)であることが好ましい。
【0041】
上記式におけるB2は単環または縮合環の芳香族環を表す。B2については、式(R2)のB2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0042】
上記式におけるt2は0以上の整数を表し、t2が2以上の場合、複数のRtはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRtのうち2つのRt同士が結合して環を形成していてもよい。上記の環を形成する場合の連結基としては、-CO-、-O-、-NH-、炭素数1~10のアルキレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基が好ましい。連結基としてのアルキレン基は無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基Tや後述する可溶化基が挙げられる。
【0043】
上記式におけるt11およびt12はそれぞれ独立して0~4の整数を表し、0~3の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0または1であることが更に好ましい。t11が2以上の場合、複数のRt11はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt11のうち2つのRt11同士が結合して環を形成していてもよく、t12が2以上の場合、複数のRt12はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt12のうち2つのRt12同士が結合して環を形成していてもよい。上記の環を形成する場合の連結基としては、-CO-、-O-、-NH-、炭素数1~10のアルキレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基が好ましい。連結基としてのアルキレン基は無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基Tや後述する可溶化基が挙げられる。
【0044】
上記式におけるn1は0~4の整数を表し、n2およびn3はそれぞれ独立して1~3の整数を表す;ただし、n2+n3は2~4の整数である。n1は1~4の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましく、1または2が更に好ましい。n2およびn3はそれぞれ独立して1~3の整数を表し、1または2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0045】
本発明において、式(R2)で表される基は、下記式(R2-11)~(R2-14)のいずれかで表される基であることがより好ましい。下記式(R2-11)または(R2-13)のいずれかで表される基であることがより好ましい。この態様によれば耐湿性に優れるという効果が期待できる。また、下記式(R2-11)の基の場合は、耐光性に優れるという効果も期待できる。また、下記式(R2-13)の基の場合は、分光特性に優れるという効果も期待できる。
【化16】
Rt13~Rt20はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、
Rt31、Rt32はそれぞれ独立して置換基を表し、
は、O、S、C(=O)、S(=O)またはSOを表し、
は、O、S、NRz1またはCRz2z3を表し、Rz1~Rz3はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、
t31は0~4の整数を表し、
t32は0~6の整数を表し、
t31が2以上の場合、複数のRt31はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt31のうち2つのRt31同士が結合して環を形成していてもよく、
t32が2以上の場合、複数のRt32はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt32のうち2つのRt32同士が結合して環を形成していてもよく、
n1は0~4の整数を表し、
n2およびn3はそれぞれ独立して1~3の整数を表す;ただし、n2+n3は2~4の整数である。
【0046】
上記式におけるRt13~Rt20、Rt31、Rt32が表す置換基としては後述する置換基Tや後述する可溶化基が挙げられる。Rt13~Rt20が表す置換基はアルキル基であることが好ましい。
【0047】
上記式におけるYは、O、S、C(=O)、S(=O)またはSOを表し、O、C(=O)であることが好ましい。
【0048】
は、O、S、NRz1またはCRz2z3を表し、Rz1~Rz3はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。Zは、O、SまたはNRz1であることが好ましく、より優れた耐光性が得られやすいという理由からOまたはSであることがより好ましい。Rz1~Rz3が表す置換基としては、置換基Tや後述する可溶化基が挙げられる。Rz1~Rz3は、水素原子、アルキル基または後述する可溶化基であることが好ましい。
【0049】
t31は0~4の整数を表し、0~3の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましく、0または1が更に好ましい。t32は0~6の整数を表し、0~5の整数が好ましく、0~4の整数がより好ましく、0~3の整数が更に好ましく、0~2の整数がより一層好ましく、0または1が特に好ましい。t31が2以上の場合、複数のRt31はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt31のうち2つのRt31同士が結合して環を形成していてもよく、t32が2以上の場合、複数のRt32はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のRt32のうち2つのRt32同士が結合して環を形成していてもよい。上記の環を形成する場合の連結基としては、-CO-、-O-、-NH-、炭素数1~10のアルキレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基が好ましい。連結基としてのアルキレン基は無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基Tや後述する可溶化基が挙げられる。
【0050】
(置換基T)
置換基Tとしては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、-ORt、-CORt、-COORt、-OCORt、-NRtRt、-NHCORt、-CONRtRt、-NHCONRtRt、-NHCOORt、-SRt、-SORt、-SOORt、-NHSORtまたは-SONRtRtが挙げられる。RtおよびRtは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。RtとRtが結合して環を形成してもよい。
【0051】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
アルケニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がより好ましく、2~8が特に好ましい。アルケニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
アルキニル基の炭素数は、2~40が好ましく、2~30がより好ましく、2~25が特に好ましい。アルキニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
アリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。
ヘテロアリール基は、単環のヘテロアリール基または縮合数が2~8の縮合環のヘテロアリール基が好ましく、単環のヘテロアリール基または縮合数が2~4の縮合環のヘテロアリール基がより好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した置換基が挙げられる。
【0052】
(可溶化基)
可溶化基としては、以下の式(W)で表される基が挙げられる。
-S100-L100-T100 ・・・(W)
【0053】
式(W)において、S100は、単結合、アリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し、単結合が好ましい。アリーレン基は、単環であっても多環であってもよい。単環が好ましい。アリーレン基の炭素数は、6~20が好ましく、6~12がより好ましい。ヘテロアリーレン基は、単環であっても多環であってもよい。単環が好ましい。ヘテロアリーレン基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリーレン基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子またはセレン原子が好ましい。ヘテロアリーレン基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましい。
【0054】
式(W)において、L100は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NRL1-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONRL1-、-NRL1CO-、-SO-、-ORL2-、または、これらを組み合わせてなる基を表し、RL1は、水素原子またはアルキル基を表し、RL2は、アルキレン基を表す。L100は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NRL1-、-COO-、-OCO-、-CONRL1-、-SO-、-ORL2-または、これらを組み合わせてなる基であることが好ましく、柔軟性および溶剤溶解性の観点から、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、-ORL2-または、これらを組み合わせてなる基であることがより好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、-O-または-ORL2-であることが更に好ましく、アルキレン基、-O-、または-ORL2-であることが特に好ましい。
【0055】
100が表すアルキレン基の炭素数は、1~40が好ましい。下限は、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、10以上が一層好ましく、13以上が特に好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。アルキレン基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐のアルキレン基が好ましく、分岐のアルキレン基が特に好ましい。アルキレン基の分岐数は、例えば、2~10が好ましく、2~8がより好ましい。分岐数が上記範囲であれば、溶剤溶解性が良好である。L100が表すアルケニレン基およびアルキニレン基の炭素数は、2~40が好ましい。下限は、例えば、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、8以上が一層好ましく、10以上が特に好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。アルケニレン基およびアルキニレン基は直鎖、分岐のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましく、分岐が特に好ましい。分岐数は、2~10が好ましく、2~8がより好ましい。分岐数が上記範囲であれば、溶剤溶解性が良好である。
【0056】
L1は、水素原子またはアルキル基を表し、水素原子が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~4が更に好ましく、1~2が特に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐のいずれでもよい。
【0057】
L2は、アルキレン基を表す。RL2が表すアルキレン基は、L100で説明したアルキレン基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0058】
式(W)において、T100は、アルキル基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、アリール基、ヘテロアリール基、トリアルキルシリル基またはトリアルコキシシリル基を表す。アルキル基、トリアルキルシリル基が有するアルキル基およびトリアルコキシシリル基が有するアルキル基の炭素数は、1~40が好ましい。下限は、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、10以上が一層好ましく、13以上が特に好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。アリール基およびヘテロアリール基は、Rで説明したアリール基およびヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0059】
式(W)において、S100が単結合で、L100がアルキレン基で、T100がアルキル基の場合は、L100とT100に含まれる炭素数の総和は、3以上であることが好ましく、溶剤溶解性の観点から6以上がより好ましく、8以上が更に好ましい。上限は、例えば40以下が好ましく、35以下がより好ましい。また、S100がアリーレン基またはヘテロアリーレン基の場合は、L100とT100に含まれる炭素数の総和は、3以上が好ましく、溶剤溶解性の観点から6以上がより好ましく、8以上が更に好ましい。上限は、例えば40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
-L100-T100部分の炭素数が3以上であれば、溶剤溶解性が良好であり、不溶物等に由来する欠陥の発生を抑制でき、均一で、膜質の良好な膜を製造できる。更には-L100-T100部分の炭素数を3以上とすることで、結晶性を抑制できる。一般に、化合物の結晶性が高いと、膜を加熱するときに化合物の結晶化が進んで、膜の吸収特性が変化することがあるが、本発明においては加熱時における化合物の結晶化を抑制でき、加熱後の膜の吸収特性の変動を抑制できる。
【0060】
式(W)の好ましい態様としては、S100が単結合であり、L100がアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NRL1-、-COO-、-OCO-、-CONRL1-、-SO-、-ORL2-または、これらを組み合わせてなる基であり、T100がアルキル基またはトリアルキルシリル基である組み合わせが挙げられる。L100は、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、-ORL2-または、これらを組み合わせてなる基がより好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、-O-または-ORL2-が更に好ましく、アルキレン基、-O-、または-ORL2-が特に好ましい。T100はアルキル基がより好ましい。
【0061】
式(W)において、-L100-T100部分は、分岐アルキル構造を含むことも好ましい。具体的には、-L100-T100部分は、分岐のアルキル基または分岐のアルコキシ基であることが特に好ましい。-L100-T100部分の分岐数は、2~10が好ましく、2~8がより好ましい。-L100-T100部分の炭素数は、3以上が好ましく、6以上がより好ましく、8以上が更に好ましい。上限は、例えば40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
【0062】
式(W)において、-L100-T100部分は、不斉炭素を含むことも好ましい。この態様によれば、化合物Aが複数の光学異性体を含むことができ、その結果、化合物Aの溶剤溶解性を更に向上できる。不斉炭素の数は1個以上が好ましい。不斉炭素の上限は特に限定はないが、例えば4以下が好ましい。
【0063】
化合物(1)の具体例としては、下記構造の化合物が挙げられる。
【化17】
【化18】
【化19】
【0064】
次に、化合物(2)(式(2)で表される化合物)について説明する。
【0065】
式(2)中、X~Xはそれぞれ独立して、O、S、またはジシアノメチレン基を表し、Oであることが好ましい。
【0066】
式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立してアリール基、複素環基、式(R1)で表される基、または式(R2)で表される基を表し、RおよびRの少なくとも一方が式(R2)で表される基であり、本発明の効果がより顕著に得られやすいという理由からRおよびRの両方が式(R2)で表される基であることが好ましい。
【0067】
およびRが表わすアリール基、複素環基、式(R1)で表される基および式(R2)で表される基については、式(1)のRおよびRが表わすアリール基、複素環基、式(R1)で表される基および式(R2)で表される基の項で説明した範囲と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0068】
化合物(2)の具体例としては、下記構造の化合物が挙げられる。
【化20】
【0069】
本発明の硬化性組成物において、化合物Aの含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して0.1~70質量%であることが好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。本発明の硬化性組成物が、化合物Aを2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0070】
<<他の近赤外線吸収剤>>
本発明の硬化性組成物は、上述した化合物A以外の近赤外線吸収剤(他の近赤外線吸収剤)を含有することができる。他の近赤外線吸収剤としては、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、メロシアニン化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物、イミニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物、ジベンゾフラノン化合物、金属酸化物、金属ホウ化物等が挙げられ、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物およびジイモニウム化合物がより好ましく、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物およびクロコニウム化合物がより好ましい。ピロロピロール化合物としては、特開2009-263614号公報の段落番号0016~0058に記載の化合物、特開2011-068731号公報の段落番号0037~0052に記載の化合物、国際公開第2015/166873号の段落番号0010~0033に記載の化合物などが挙げられる。スクアリリウム化合物としては、特開2011-208101号公報の段落番号0044~0049に記載の化合物、特許第6065169号公報の段落番号0060~0061に記載の化合物、国際公開第2016/181987号の段落番号0040に記載の化合物、特開2015-176046号公報に記載の化合物、国際公開第2016/190162号の段落番号0072に記載の化合物、特開2016-074649号公報の段落番号0196~0228に記載の化合物、特開2017-067963号公報の段落番号0124に記載の化合物、国際公開第2017/135359号に記載の化合物、特開2017-114956号公報に記載の化合物、特許6197940号公報に記載の化合物、国際公開第2016/120166号に記載の化合物などが挙げられる。シアニン化合物としては、特開2009-108267号公報の段落番号0044~0045に記載の化合物、特開2002-194040号公報の段落番号0026~0030に記載の化合物、特開2015-172004号公報に記載の化合物、特開2015-172102号公報に記載の化合物、特開2008-088426号公報に記載の化合物、国際公開第2016/190162号の段落番号0090に記載の化合物などが挙げられる。クロコニウム化合物としては、特開2017-082029号公報に記載の化合物が挙げられる。イミニウム化合物としては、例えば、特表2008-528706号公報に記載の化合物、特開2012-012399号公報に記載の化合物、特開2007-092060号公報に記載の化合物、国際公開第2018/043564号の段落番号0048~0063に記載の化合物が挙げられる。フタロシアニン化合物としては、特開2012-077153号公報の段落番号0093に記載の化合物、特開2006-343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニン、特開2013-195480号公報の段落番号0013~0029に記載の化合物が挙げられる。ナフタロシアニン化合物としては、特開2012-077153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、酸化亜鉛、Alドープ酸化亜鉛、フッ素ドープ二酸化スズ、ニオブドープ二酸化チタン、酸化タングステンなどが挙げられる。酸化タングステンの詳細については、特開2016-006476号公報の段落番号0080を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。金属ホウ化物としては、ホウ化ランタンなどが挙げられる。ホウ化ランタンの市販品としては、LaB-F(日本新金属(株)製)などが挙げられる。また、金属ホウ化物としては、国際公開第2017/119394号に記載の化合物を用いることもできる。酸化インジウムスズの市販品としては、F-ITO(DOWAハイテック(株)製)などが挙げられる。
【0071】
また、近赤外線吸収剤としては、また、特開2017-197437号公報に記載のスクアリリウム化合物、国際公開第2017/213047号の段落番号0090~0107に記載のスクアリリウム化合物、特開2018-054760号公報の段落番号0019~0075に記載のピロール環含有化合物、特開2018-040955号公報の段落番号0078~0082に記載のピロール環含有化合物、特開2018-002773号公報の段落番号0043~0069に記載のピロール環含有化合物、特開2018-041047号公報の段落番号0024~0086に記載のアミドα位に芳香環を有するスクアリリウム化合物、特開2017-179131号公報に記載のアミド連結型スクアリリウム化合物、特開2017-141215号公報に記載のピロールビス型スクアリリウム骨格又はクロコニウム骨格を有する化合物、特開2017-082029号公報に記載されたジヒドロカルバゾールビス型のスクアリリウム化合物、特開2017-068120号公報の段落番号0027~0114に記載の非対称型の化合物、特開2017-067963号公報に記載されたピロール環含有化合物(カルバゾール型)、特許第6251530号公報に記載されたフタロシアニン化合物などを用いることもできる。
【0072】
本発明の硬化性組成物が他の近赤外線吸収剤を含有する場合、他の近赤外線吸収剤の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して0.1~70質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
また、他の近赤外線吸収剤と化合物Aとの合計量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して0.1~70質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。本発明の硬化性組成物が、他の近赤外線吸収剤を2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
また、本発明の硬化性組成物は、他の近赤外線吸収剤を実質的に含まない態様とすることもできる。本発明の硬化性組成物が、他の近赤外線吸収剤を実質的に含まないとは、他の近赤外線吸収剤の含有量が硬化性組成物の全固形分に対して0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、他の近赤外線吸収剤を含有しないことがさらに好ましい。
【0073】
<<有彩色着色剤>>
本発明の硬化性組成物は、有彩色着色剤を含有することができる。本発明において、有彩色着色剤とは、白色着色剤および黒色着色剤以外の着色剤を意味する。有彩色着色剤としては、例えば、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、赤色着色剤、緑色着色剤、紫色着色剤、青色着色剤などが挙げられる。有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。好ましくは顔料である。顔料は、有機顔料であることが好ましく、以下のものを挙げることができる。但し本発明は、これらに限定されるものではない。
【0074】
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214,231等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59,62,63等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80等(以上、青色顔料)。
【0075】
また、緑色顔料として、1分子中のハロゲン原子数が平均10~14個であり、臭素原子数が平均8~12個であり、塩素原子数が平均2~5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/118720号に記載の化合物が挙げられる。また、緑色顔料としてCN106909027Aに記載の化合物、リン酸エステルを配位子として有するフタロシアニン化合物などを用いることもできる。
【0076】
また、青色顔料として、リン原子を有するアルミニウムフタロシアニン化合物を用いることもできる。このような化合物としては、配位子がリン酸エステルであるアルミニウムフタロシアニン化合物などが挙げられる。リン原子を有するアルミニウムフタロシアニン化合物の具体例としては、特開2012-247591号公報の段落0022~0030、特開2011-157478号公報の段落0047に記載の化合物が挙げられる。
【0077】
また、黄色顔料として、特開2017-201003号公報に記載されている顔料、特開2017-197719号公報に記載されている顔料を用いることができる。また、黄色顔料として、下記式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、2種以上の金属イオンと、メラミン化合物とを含む金属アゾ顔料を用いることもできる。
【化21】
式中、RおよびRはそれぞれ独立して、-OHまたは-NRであり、RおよびRはそれぞれ独立して、=Oまたは=NRであり、R~Rはそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。R~Rが表すアルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐および環状のいずれであってもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基およびアミノ基が好ましい。
【0078】
上記の金属アゾ顔料については、特開2017-171912号公報の段落番号0011~0062、0137~0276、特開2017-171913号公報の段落番号0010~0062、0138~0295、特開2017-171914号公報の段落番号0011~0062、0139~0190、特開2017-171915号公報の段落番号0010~0065、0142~0222の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0079】
赤色顔料として、特開2017-201384号公報に記載の構造中に少なくとも1つ臭素原子が置換したジケトピロロピロール系顔料、特許第6248838号の段落番号0016~0022に記載のジケトピロロピロール系顔料などを用いることもできる。
【0080】
染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。染料は、有彩色染料であってもよく、近赤外線吸収染料であってもよい。有彩色染料としては、ピラゾールアゾ化合物、アニリノアゾ化合物、トリアリールメタン化合物、アントラキノン化合物、アントラピリドン化合物、ベンジリデン化合物、オキソノール化合物、ピラゾロトリアゾールアゾ化合物、ピリドンアゾ化合物、シアニン化合物、フェノチアジン化合物、ピロロピラゾールアゾメチン化合物、キサンテン化合物、フタロシアニン化合物、ベンゾピラン化合物、インジゴ化合物、ピロメテン化合物が挙げられる。また、特開2012-158649号公報に記載のチアゾール化合物、特開2011-184493号公報に記載のアゾ化合物、特開2011-145540号公報に記載のアゾ化合物を用いることもできる。また、黄色染料として、特開2013-054339号公報の段落番号0011~0034に記載のキノフタロン化合物、特開2014-026228号公報の段落番号0013~0058に記載のキノフタロン化合物などを用いることもできる。
【0081】
本発明の硬化性組成物が有彩色着色剤を含有する場合、有彩色着色剤の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して0.1~70質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
有彩色着色剤の含有量は、化合物Aの100質量部に対し、10~1000質量部が好ましく、50~800質量部がより好ましい。
また、有彩色着色剤と化合物Aと上述した他の近赤外線吸収剤との合計量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して1~80質量%が好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上限は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。本発明の硬化性組成物が、有彩色着色剤を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0082】
また、本発明の硬化性組成物は、有彩色着色剤を実質的に含有しないことも好ましい。有彩色着色剤を実質的に含有しないとは、有彩色着色剤の含有量が、硬化性組成物の全固形分に対して0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、有彩色着色剤を含有しないことがさらに好ましい。
【0083】
<<赤外線を透過させて可視光を遮光する色材>>
本発明の硬化性組成物は、赤外線を透過させて可視光を遮光する色材(以下、可視光を遮光する色材ともいう)を含有することもできる。
本発明において、可視光を遮光する色材は、紫色から赤色の波長領域の光を吸収する色材であることが好ましい。また、本発明において、可視光を遮光する色材は、波長450~650nmの波長領域の光を遮光する色材であることが好ましい。また、可視光を遮光する色材は、波長900~1300nmの光を透過する色材であることが好ましい。
本発明において、可視光を遮光する色材は、以下の(A)および(B)の少なくとも一方の要件を満たすことが好ましい。
(A):2種以上の有彩色着色剤を含み、2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成している。
(B):有機系黒色着色剤を含む。
【0084】
有彩色着色剤としては、上述したものが挙げられる。有機系黒色着色剤としては、例えば、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物などが挙げられ、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物が好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010-534726号公報、特表2012-515233号公報、特表2012-515234号公報、国際公開第2014/208348号、特表2015-525260号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、特開2017-226821号公報の段落番号0016~0020に記載の化合物、C.I.Pigment Black 31、32、Lumogen Black FK4280などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平01-170601号公報、特開平02-034664号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。
【0085】
2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成する場合の、有彩色着色剤の組み合わせとしては、例えば以下が挙げられる。
(1)黄色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(2)黄色着色剤、青色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(3)黄色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(4)黄色着色剤および紫色着色剤を含有する態様。
(5)緑色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(6)紫色着色剤およびオレンジ色着色剤を含有する態様。
(7)緑色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(8)緑色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
【0086】
本発明の硬化性組成物が、可視光を遮光する色材を含有する場合、可視光を遮光する色材の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下がより一層好ましく、15質量%以下が特に好ましい。下限は、例えば、0.1質量%以上とすることができ、0.5質量%以上とすることもできる。
また、本発明の硬化性組成物は、可視光を遮光する色材を実質的に含有しないことも好ましい。可視光を遮光する色材を実質的に含有しないとは、可視光を遮光する色材の含有量が、硬化性組成物の全固形分に対して0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、可視光を遮光する色材を含有しないことがさらに好ましい。
【0087】
<<顔料誘導体>>
本発明の硬化性組成物が顔料を含む場合、更に顔料誘導体を含有することが好ましい。顔料誘導体としては、顔料の一部分を、酸性基、塩基性基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。顔料誘導体は、分散性及び分散安定性の観点から、酸性基又は塩基性基を有する顔料誘導体を含有することが好ましい。本発明の硬化性組成物が顔料誘導体を含有する場合、顔料誘導体の含有量は、顔料100質量部に対し、1~50質量部が好ましい。下限値は、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限値は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。顔料誘導体の含有量が上記範囲であれば、顔料の分散性を高めて、顔料の凝集を効率よく抑制できる。顔料誘導体は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0088】
<<硬化性化合物>>
本発明の硬化性組成物は硬化性化合物を含有する。硬化性化合物としては、架橋性化合物、樹脂等が挙げられる。樹脂は、非架橋性の樹脂(架橋性基を有さない樹脂)であってもよく、架橋性の樹脂(架橋性基を有する樹脂)であってもよい。架橋性基としては、エチレン性不飽和結合基、環状エーテル基、メチロール基、アルコキシメチル基、アルコキシシリル基、クロロシリル基等が挙げられ、エチレン性不飽和結合基、環状エーテル基が好ましく、エチレン性不飽和結合基がより好ましい。エチレン性不飽和結合基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられ、エポキシ基が好ましい。アルコキシシリル基としては、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が挙げられ、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が好ましい。また、アルコキシシリル基におけるアルコキシ基の炭素数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1または2が特に好ましい。クロロシリル基としては、モノクロロシリル基、ジクロロシリル基、トリクロロシリル基が挙げられ、ジクロロシリル基、トリクロロシリル基が好ましく、トリクロロシリル基がより好ましい。
【0089】
本発明において、硬化性化合物としては、樹脂を少なくとも含むものを用いることが好ましく、樹脂とモノマータイプの架橋性化合物とを用いることがより好ましく、樹脂と、エチレン性不飽和結合基を含むモノマータイプの架橋性化合物とを用いることが更に好ましい。
【0090】
硬化性化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1~80質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましく、40質量%以下が特に好ましい。本発明の硬化性組成物は、硬化性化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。硬化性化合物を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0091】
(架橋性化合物)
架橋性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を含む化合物、環状エーテル基を有する化合物、メチロール基を有する化合物、アルコキシメチル基を有する化合物、アルコキシシリル基を有する化合物、クロロシリル基を有する化合物等が挙げられる。架橋性化合物は、モノマーであってもよく、樹脂であってもよい。エチレン性不飽和結合基を含む化合物(好ましくはエチレン性不飽和結合基を含むモノマータイプの架橋性化合物)は、ラジカル重合性化合物として好ましく用いることができる。また、環状エーテル基を有する化合物、メチロール基を有する化合物、アルコキシメチル基を有する化合物は、カチオン重合性化合物として好ましく用いることができる。
【0092】
モノマータイプの架橋性化合物(架橋性モノマー)の分子量は、2000未満であることが好ましく、100以上2000未満であることがより好ましく、200以上2000未満であることがさらに好ましい。上限は、例えば1500以下であることが好ましい。樹脂タイプ(ポリマータイプ)の架橋性化合物の重量平均分子量(Mw)は、2000~2000000であることが好ましい。上限は、1000000以下であることが好ましく、500000以下であることがより好ましい。下限は、3000以上であることが好ましく、5000以上であることがより好ましい。
【0093】
樹脂タイプの架橋性化合物としては、エポキシ樹脂や、架橋性基を有する繰り返し単位を含む樹脂などが挙げられる。架橋性基を有する繰り返し単位としては、下記(A2-1)~(A2-4)などが挙げられる。
【化22】
【0094】
は、水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1~5が好ましく、1~3がさらに好ましく、1が特に好ましい。Rは、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0095】
51は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO-、-NR10-(R10は水素原子あるいはアルキル基を表し、水素原子が好ましい)、または、これらの組み合わせからなる基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましい。アルキレン基は、置換基を有していてもよいが、無置換が好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アリーレン基の炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましく、6~10がさらに好ましい。
【0096】
は、架橋性基を表す。架橋性基としては、エチレン性不飽和結合基、環状エーテル基、メチロール基、アルコキシメチル基、アルコキシシリル基、クロロシリル基などが挙げられる。
【0097】
モノマータイプの架橋性化合物としてのエチレン性不飽和結合基を含む化合物は、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。具体例としては、特開2009-288705号公報の段落番号0095~0108、特開2013-029760号公報の段落0227、特開2008-292970号公報の段落番号0254~0257、特開2013-253224号公報の段落番号0034~0038、特開2012-208494号公報の段落番号0477、特開2017-048367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報に記載されている化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0098】
エチレン性不飽和結合基を含む化合物としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、NKエステルA-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの化合物の(メタ)アクリロイル基がエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)などが挙げられる。また、エチレン性不飽和結合基を含む化合物としては、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としてはM-460;東亞合成製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルA-TMMT)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)、RP-1040(日本化薬(株)製)、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)、NKオリゴUA-7200(新中村化学工業(株)製)、8UH-1006、8UH-1012(大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB-A0(共栄社化学(株)製)などを用いることもできる。
【0099】
また、エチレン性不飽和結合基を含む化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート化合物を用いることも好ましい。3官能の(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、アロニックスM-309、M-310、M-321、M-350、M-360、M-313、M-315、M-306、M-305、M-303、M-452、M-450(東亞合成(株)製)、NKエステル A9300、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-TMPT、TMPT(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD GPO-303、TMPTA、THE-330、TPA-330、PET-30(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0100】
エチレン性不飽和結合基を含む化合物は、更に、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等の酸基を有していてもよい。このような化合物の市販品としては、アロニックスM-510、M-520、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)等が挙げられる。
【0101】
エチレン性不飽和結合基を含む化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物であることも好ましい。カプロラクトン構造を有する化合物については、特開2013-253224号公報の段落0042~0045の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。カプロラクトン構造を有する化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されている、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120等が挙げられる。
【0102】
エチレン性不飽和結合基を含む化合物は、エチレン性不飽和結合基とアルキレンオキシ基を有する化合物を用いることもできる。このような化合物は、エチレン性不飽和結合基と、エチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基とを有する化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和結合基とエチレンオキシ基とを有する化合物であることがより好ましく、エチレンオキシ基を4~20個有する3~6官能(メタ)アクリレート化合物であることがさらに好ましい。市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR-494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA-330などが挙げられる。
【0103】
エチレン性不飽和結合基を含む化合物は、フルオレン骨格を有する重合性化合物を用いることもできる。市販品としては、オグソールEA-0200、EA-0300(大阪ガスケミカル(株)製、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートモノマー)などが挙げられる。
【0104】
エチレン性不飽和結合基を含む化合物は、トルエンなどの環境規制物質を実質的に含まない化合物を用いることも好ましい。このような化合物の市販品としては、KAYARAD DPHA LT、KAYARAD DPEA-12 LT(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0105】
また、エチレン性不飽和結合基を含む化合物は、UA-7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600、LINC-202UA(共栄社化学(株)製)、8UH-1006、8UH-1012(以上、大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB-A0(共栄社化学(株)製)などを用いることも好ましい。
【0106】
本発明の硬化性組成物がエチレン性不飽和結合基を含む化合物を含有する場合、エチレン性不飽和結合基を含む化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1~50質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
また、モノマータイプのエチレン性不飽和結合基を含む化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1~50質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0107】
環状エーテル基を有する化合物としては、エポキシ基を有する化合物、オキセタニル基を有する化合物などが挙げられ、エポキシ基を有する化合物であることが好ましい。エポキシ基を有する化合物としては、1分子内にエポキシ基を1~100個有する化合物が挙げられる。エポキシ基の上限は、例えば、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。エポキシ基の下限は、2個以上が好ましい。エポキシ基を有する化合物としては、特開2013-011869号公報の段落番号0034~0036、特開2014-043556号公報の段落番号0147~0156、特開2014-089408号公報の段落番号0085~0092に記載された化合物、特開2017-179172号公報に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。
【0108】
エポキシ基を有する化合物は、低分子化合物(例えば、分子量2000未満、さらには、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)のいずれでもよい。エポキシ基を有する化合物の重量平均分子量は、200~100000が好ましく、500~50000がより好ましい。重量平均分子量の上限は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、3000以下が更に好ましい。
【0109】
環状エーテル基を有する化合物の市販品としては、例えば、EHPE3150((株)ダイセル製)、EPICLON N-695(DIC(株)製)、マープルーフG-0150M、G-0105SA、G-0130SP、G-0250SP、G-1005S、G-1005SA、G-1010S、G-2050M、G-01100、G-01758(以上、日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)等が挙げられる。
【0110】
本発明の硬化性組成物が環状エーテル基を有する化合物を含有する場合、環状エーテル基を有する化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1~50質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0111】
メチロール基を有する化合物(以下、メチロール化合物ともいう)としては、メチロール基が、窒素原子または芳香族環を形成する炭素原子に結合している化合物が挙げられる。また、アルコキシメチル基を有する化合物(以下、アルコキシメチル化合物ともいう)としては、アルコキシメチル基が、窒素原子または芳香族環を形成する炭素原子に結合している化合物が挙げられる。アルコキシメチル基またはメチロール基が、窒素原子に結合している化合物としては、アルコキシメチル化メラミン、メチロール化メラミン、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン、メチロール化ベンゾグアナミン、アルコキシメチル化グリコールウリル、メチロール化グリコールウリル、アルコキシメチル化尿素およびメチロール化尿素等が好ましい。また、特開2004-295116号公報の段落0134~0147、特開2014-089408号公報の段落0095~0126に記載された化合物を用いることもできる。本発明の硬化性組成物がメチロール化合物を含有する場合、メチロール化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1~50質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。また、本発明の硬化性組成物がアルコキシメチル化合物を含有する場合、アルコキシメチル化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1~50質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0112】
アルコキシシリル基を有する化合物およびクロロシリル基を有する化合物としては、国際公開第2017/104283号の段落番号0123~0125に記載された化合物が挙げられる。本発明の硬化性組成物がアルコキシシリル基を有する化合物を含有する場合アルコキシシリル基を有する化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1~50質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。また、本発明の硬化性組成物がクロロシリル基を有する化合物を含有する場合、クロロシリル基を有する化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1~50質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0113】
(樹脂)
本発明の硬化性組成物は、硬化性化合物として樹脂を用いることができる。硬化性化合物は、樹脂を少なくとも含むものを用いることが好ましい。樹脂は分散剤として用いることもできる。なお、顔料などを分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で樹脂を使用することもできる。なお、架橋性基を有する樹脂は、架橋性化合物にも該当する。
【0114】
樹脂としては、繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、シロキサン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。環状オレフィン樹脂としては、耐熱性向上の観点からノルボルネン樹脂が好ましく用いることができる。ノルボルネン樹脂の市販品としては、例えば、JSR(株)製のARTONシリーズ(例えば、ARTON F4520)などが挙げられる。ポリイミド樹脂の市販品としては、三菱ガス化学(株)製のネオプリム(登録商標)シリーズ(例えば、C3450)などが挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えばフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。また、エポキシ樹脂としては、マープルーフG-0150M、G-0105SA、G-0130SP、G-0250SP、G-1005S、G-1005SA、G-1010S、G-2050M、G-01100、G-01758(日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)などを用いることもできる。ウレタン樹脂としては、8UH-1006、8UH-1012(大成ファインケミカル(株)製)が挙げられる。また、樹脂は、国際公開第2016/088645号の実施例に記載された樹脂、特開2017-057265号公報に記載された樹脂、特開2017-032685号公報に記載された樹脂、特開2017-075248号公報に記載された樹脂、特開2017-066240号公報に記載された樹脂、特開2017-167513号公報に記載された樹脂、特開2017-206689号公報の段落番号0041~0060に記載の樹脂、特開2018-010856号公報の段落番号0022~007に記載の樹脂を用いることもできる。また、樹脂は、フルオレン骨格を有する樹脂を好ましく用いることもできる。フルオレン骨格を有する樹脂としては、下記構造の樹脂が挙げられる。以下の構造式中、Aは、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物から選択されるカルボン酸二無水物の残基であり、Mはフェニル基またはベンジル基である。フルオレン骨格を有する樹脂については、米国特許出願公開第2017/0102610号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【化23】
【0115】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2000~2000000が好ましい。上限は、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましい。下限は、3000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。
【0116】
本発明で用いる樹脂は、酸基を有していてもよい。酸基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。酸基を有する樹脂はアルカリ可溶性樹脂として用いることもできる。酸基を有する樹脂は、側鎖にカルボキシル基を有する繰り返し単位を含む樹脂であることが好ましい。
【0117】
酸基を有する樹脂は、更に架橋性基を有する繰り返し単位を含有していてもよい。酸基を有する樹脂が、更に架橋性基を有する繰り返し単位を含有する場合、全繰り返し単位中における架橋性基を有する繰り返し単位の含有量は、10~90モル%であることが好ましく、20~90モル%であることがより好ましく、20~85モル%であることがさらに好ましい。また、全繰り返し単位中における酸基を有する繰り返し単位の含有量は、1~50モル%であることが好ましく、5~40モル%であることがより好ましく、5~30モル%であることがさらに好ましい。
【0118】
酸基を有する樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含むことも好ましい。
【0119】
【化24】
【0120】
式(ED1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【化25】
式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1~30の有機基を表す。式(ED2)の具体例としては、特開2010-168539号公報の記載を参酌できる。
【0121】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013-029760号公報の段落番号0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0122】
酸基を有する樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する繰り返し単位を含むことも好ましい。
【化26】
式(X)において、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数2~10のアルキレン基を表し、Rは、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。nは1~15の整数を表す。
【0123】
酸基を有する樹脂については、特開2012-208494号公報の段落番号0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685~0700)の記載、特開2012-198408号公報の段落番号0076~0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸基を有する樹脂は市販品を用いることもできる。例えば、アクリベースFF-426(藤倉化成(株)製)などが挙げられる。
【0124】
酸基を有する樹脂の酸価は、30~200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。
【0125】
酸基を有する樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表す。
【化27】
【0126】
本発明の硬化性組成物は、分散剤としての樹脂を含むこともできる。分散剤は、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、30~500mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、400mgKOH/g以下が好ましく、300mgKOH/g以下がより好ましく、200mgKOH/g以下が更に好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。
【0127】
分散剤として用いる樹脂は、グラフト共重合体であることも好ましい。グラフト共重合体は、グラフト鎖によって溶剤との親和性を有するために、顔料の分散性、及び、経時後の分散安定性に優れる。グラフト共重合体の詳細は、特開2012-255128号公報の段落番号0025~0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0128】
分散剤として用いる樹脂は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むポリイミン系分散剤であることも好ましい。ポリイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造を有する主鎖と、原子数40~10000の側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子とは、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。ポリイミン系分散剤については、特開2012-255128号公報の段落番号0102~0166の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0129】
分散剤として用いる樹脂は、コア部に複数個のポリマー鎖が結合した構造の樹脂であることも好ましい。このような樹脂としては、例えばデンドリマー(星型ポリマーを含む)が挙げられる。また、デンドリマーの具体例としては、特開2013-043962号公報の段落番号0196~0209に記載された高分子化合物C-1~C-31などが挙げられる。
【0130】
また、分散剤として用いる樹脂は、エチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位を含む樹脂であることも好ましい。エチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位の含有量は、樹脂の全繰り返し単位中10モル%以上であることが好ましく、10~80モル%であることがより好ましく、20~70モル%であることが更に好ましい。
【0131】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、BYKChemie社製のDISPERBYKシリーズ(例えば、DISPERBYK-111、161など)、日本ルーブリゾール(株)製のソルスパースシリーズ(例えば、ソルスパース76500など)などが挙げられる。また、特開2014-130338号公報の段落番号0041~0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、上述した酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)などを分散剤として用いることもできる。
【0132】
本発明の硬化性組成物が樹脂を含有する場合、樹脂の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して1~80質量%であることが好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、20質量%以上が特に好ましい。上限は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましく、40質量%以下が特に好ましい。また、酸基を含有する樹脂の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1~50質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましく、3質量%以上が特に好ましい。上限は、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。また、樹脂として分散剤を含有する場合、分散剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1~40質量%が好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。また、分散剤の含有量は、顔料100質量部に対して、1~100質量部が好ましい。上限は、80質量部以下が好ましく、75質量部以下がより好ましい。下限は、2.5質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。
本発明の硬化性組成物は、樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。樹脂を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0133】
<<光重合開始剤>>
本発明の硬化性組成物は、光重合開始剤を含有することができる。本発明の硬化性組成物が硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を含有する場合においては、本発明の硬化性組成物は更に光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0134】
光重合開始剤としては、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物および3-アリール置換クマリン化合物であることが好ましく、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、および、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物であることがより好ましく、オキシム化合物であることが更に好ましい。光重合開始剤については、特開2014-130173号公報の段落0065~0111の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0135】
α-ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-184、DAROCUR-1173、IRGACURE-500、IRGACURE-2959、IRGACURE-127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α-アミノケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-907、IRGACURE-369、IRGACURE-379、及び、IRGACURE-379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、IRGACURE-819、DAROCUR-TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0136】
オキシム化合物としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-66385号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-019766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物、特開2017-198865号公報に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0038に記載の化合物などが挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。市販品としては、IRGACURE-OXE01、IRGACURE-OXE02、IRGACURE-OXE03、IRGACURE-OXE04(以上、BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられる。また、オキシム化合物としては、着色性が無い化合物や、透明性が高く変色し難い化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI-730、NCI-831、NCI-930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0137】
本発明において、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0138】
本発明において、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0139】
本発明において、光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落番号0031~0047、特開2014-137466号公報の段落番号0008~0012、0070~0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007~0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0140】
本発明において、光重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/036910号に記載されているOE-01~OE-75が挙げられる。
【0141】
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0142】
【化28】
【化29】
【0143】
オキシム化合物は、波長350~500nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360~480nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物の波長365nm又は波長405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、高いことが好ましく、1,000~300,000であることがより好ましく、2,000~300,000であることが更に好ましく、5,000~200,000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0144】
本発明は、光重合開始剤として、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。そのような光ラジカル重合開始剤を用いることにより、光ラジカル重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカルが発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、組成物の経時安定性を向上させることができる。2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開第2015/004565号、特表2016-532675号公報の段落番号0407~0412、国際公開第2017/033680号の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開第2016/034963号に記載されているCmpd1~7、特表2017-523465号公報の段落番号0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017-167399号公報の段落番号0020~0033に記載されている光開始剤、特開2017-151342号公報の段落番号0017~0026に記載されている光重合開始剤(A)などが挙げられる。
【0145】
光重合開始剤は、オキシム化合物とα-アミノケトン化合物とを含むことも好ましい。両者を併用することで、現像性が向上し、矩形性に優れたパターンを形成しやすい。オキシム化合物とα-アミノケトン化合物とを併用する場合、オキシム化合物100質量部に対して、α-アミノケトン化合物が50~600質量部が好ましく、150~400質量部がより好ましい。
【0146】
光重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対し0.1~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、1~20質量%が更に好ましい。光重合開始剤の含有量が上記範囲であれば、より良好な感度とパターン形成性が得られる。本発明の硬化性組成物は、光重合開始剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。光重合開始剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0147】
<<酸発生剤>>
本発明の硬化性組成物は、酸発生剤を含有することができる。特に、本発明の硬化性化合物が環状エーテル基を有する化合物など、カチオン重合性化合物を含有する場合、酸発生剤を含有することが好ましい。酸発生剤は、光照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)が好ましい。酸発生剤としては、光照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o-ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などを挙げることができる。酸発生剤の種類、具体的化合物、および好ましい例としては、特開2008-013646号公報の段落番号0066~0122に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。また、本発明に使用しうる酸発生剤として好ましい化合物は、下記式(b1)、(b2)、(b3)で表される化合物を挙げることができる。
【化30】
【0148】
式(b1)において、R201、R202、及びR203は、各々独立に有機基を表す。Xは、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF 、PF およびSbF であり、より好ましくはBF 、PF およびSbF である。
【0149】
酸発生剤の市販品としては、WPAG-469(和光純薬(社)製)、CPI-100P(サンアプロ(株)製)などが挙げられる。
【0150】
酸発生剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対し0.1~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、0.5~20質量%が更に好ましい。本発明の硬化性組成物は、酸発生剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。酸発生剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0151】
<<架橋助剤>>
本発明の硬化性組成物は、架橋性化合物の反応を促進させることなどを目的として、架橋助剤を含むことが好ましい。架橋助剤としては、多官能チオール、アルコール、アミンおよびカルボン酸から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0152】
架橋助剤としての多官能チオールとしては、分子内に2個以上のチオール基を有する化合物が挙げられる。多官能チオールは、2級のアルカンチオール類であることが好ましく、特に下記式(T1)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
式(T1)
【化31】
(式(T1)中、nは2~4の整数を表し、Lは2~4価の連結基を表す。)
【0153】
式(T1)において、連結基Lは炭素数2~12の脂肪族基であることが好ましく、nが2であり、Lが炭素数2~12のアルキレン基であることが特に好ましい。多官能チオールの具体例としては、下記の構造式(T2)~(T4)で表される化合物が挙げられ、式(T2)で表される化合物が特に好ましい。多官能チオールは1種または複数種組み合わせて使用することが可能である。
【0154】
【化32】
【0155】
架橋助剤としてのアミンとしては、多価アミンが好ましく、ジアミンがより好ましい。例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
【0156】
架橋助剤としてのアルコールとしては、多価アルコールが好ましく、ジオールがより好ましい。例えば、ポリエーテルジオール化合物、ポリエステルジオール化合物、ポリカーボネートジオール化合物等が挙げられる。アルコールの具体例について、例えば、特開2013-253224号公報の段落番号0128~0163、0172の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0157】
架橋助剤としてのカルボン酸としては、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸(無水物)、マレイン酸、フタル酸、トリメリット酸などが挙げられる。また、特開2017-036379号公報に記載のカルボキシ基含有エポキシ硬化剤を用いることもできる。
【0158】
また、架橋助剤としては、特許第5765059号公報の段落番号0085~0092に記載された化合物を用いることもできる。
【0159】
架橋助剤の含有量は、架橋性化合物の100質量部に対し1~1000質量部が好ましく、より好ましくは1~500質量部であり、さらに好ましくは1~200質量部である。本発明の硬化性組成物は、架橋助剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。架橋助剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0160】
<<触媒>>
本発明の硬化性組成物は、触媒をさらに含有することができる。特に、硬化性化合物として、アルコキシシリル基や、クロロシリル基を有する化合物を用いた場合、触媒を含有させることが好ましい。この態様によれば、ゾルゲル反応が促進されて、より強固な膜が得られやすい。触媒としては、酸触媒、塩基触媒などが挙げられる。酸触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸等のカルボン酸、RCOOHで示される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、リン酸などが挙げられる。また、塩化アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトナート、塩化亜鉛、塩化スズ、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、ヨードトリメチルシランなどのルイス酸を用いてもよい。塩基触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基化合物、エチルアミンやアニリンなどの有機アミンなどが挙げられる。また、触媒は、特開2013-201007号公報の段落番号0070~0076に記載の触媒を用いることもできる。
触媒の含有量は、架橋性化合物の100質量部に対し0.1~100質量部が好ましく、より好ましくは0.1~50質量部であり、さらに好ましくは0.1~20質量部である。本発明の硬化性組成物は、触媒を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。触媒を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0161】
<<溶剤>>
本発明の硬化性組成物は、溶剤を含有する。溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤は、各成分の溶解性や硬化性組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はない。有機溶剤の例としては、例えば、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらの詳細については、国際公開第2015/166779号の段落番号0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤を好ましく用いることもできる。有機溶剤の具体例としては、ジクロロメタン、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。本発明において有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドも溶解性向上の観点から好ましい。ただし溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)。
【0162】
本発明においては、金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましく、溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
【0163】
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
【0164】
溶剤は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0165】
本発明において、有機溶剤は、過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0166】
溶剤の含有量は、本発明の硬化性組成物の全量に対し、10~90質量%であることが好ましい。下限は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、50質量%以上がより一層好ましく、60質量%以上が特に好ましい。
【0167】
また、本発明の硬化性組成物は、環境規制の観点から環境規制物質を実質的に含有しないことが好ましい。なお、本発明において、環境規制物質を実質的に含有しないとは、硬化性組成物中における環境規制物質の含有量が50質量ppm以下であることを意味し、30質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることが更に好ましく、1質量ppm以下であることが特に好ましい。環境規制物質は、例えばベンゼン;トルエン、キシレン等のアルキルベンゼン類;クロロベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類等が挙げられる。これらは、REACH(Registration Evaluation Authorization and Restriction of CHemicals)規則、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法、VOC(Volatile Organic Compounds)規制等のもとに環境規制物質として登録されており、使用量や取り扱い方法が厳しく規制されている。これらの化合物は、本発明の硬化性組成物に用いられる各成分などを製造する際に溶媒として用いられることがあり、残留溶媒として硬化性組成物中に混入することがある。人への安全性、環境への配慮の観点よりこれらの物質は可能な限り低減することが好ましい。環境規制物質を低減する方法としては、系中を加熱や減圧して環境規制物質の沸点以上にして系中から環境規制物質を留去して低減する方法が挙げられる。また、少量の環境規制物質を留去する場合においては、効率を上げる為に該当溶媒と同等の沸点を有する溶媒と共沸させることも有用である。また、ラジカル重合性を有する化合物を含有する場合、減圧留去中にラジカル重合反応が進行して分子間で架橋してしまうことを抑制するために重合禁止剤等を添加して減圧留去してもよい。これらの留去方法は、原料の段階、原料を反応させた生成物(例えば重合した後の樹脂溶液や多官能モノマー溶液)の段階、またはこれらの化合物を混ぜて作製した硬化性組成物の段階いずれの段階でも可能である。
【0168】
<<重合禁止剤>>
本発明の硬化性組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)等、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシルなどが挙げられる。重合禁止剤の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して、0.0001~5質量%が好ましい。本発明の硬化性組成物は、重合禁止剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。重合禁止剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0169】
<<界面活性剤>>
本発明の硬化性組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。界面活性剤については、国際公開第2015/166779号の段落番号0238~0245を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0170】
本発明において、界面活性剤はフッ素系界面活性剤であることが好ましい。硬化性組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで液特性(特に、流動性)がより向上し、省液性をより改善することができる。また、厚みムラの小さい膜を形成することもできる。
【0171】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好適であり、より好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは7~25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、硬化性組成物中における溶解性も良好である。
【0172】
フッ素系界面活性剤としては、特開2014-041318号公報の段落番号0060~0064(対応する国際公開第2014/017669号の段落番号0060~0064)等に記載の界面活性剤、特開2011-132503号公報の段落番号0117~0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780、EXP、MFS-330(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0173】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造のアクリル系化合物であって、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物を用いることができる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(例えばメガファックDS-21)が挙げられる。
【0174】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との共重合体を用いることができる。このようなフッ素系界面活性剤については、特開2016-216602号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0175】
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることができる。ブロックポリマーとしては、例えば特開2011-89090号公報に記載された化合物が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素共重合体を用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化33】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3000~50000であり、例えば、14000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【0176】
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する繰り返し単位を含む含フッ素共重合体を用いることができる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落番号0050~0090および段落番号0289~0295に記載された化合物、DIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K等が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落番号0015~0158に記載の化合物を用いることもできる。
【0177】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0178】
シリコン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP-341、KF-6001、KF-6002(以上、信越シリコーン株式会社製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0179】
界面活性剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.001質量%~5.0質量%が好ましく、0.005~3.0質量%がより好ましい。本発明の硬化性組成物は、界面活性剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。界面活性剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0180】
<<紫外線吸収剤>>
本発明の硬化性組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、共役ジエン化合物、アミノブタジエン化合物、メチルジベンゾイル化合物、クマリン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、アゾメチン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物などが挙げられる。これらの詳細については、特開2012-208374号公報の段落番号0052~0072、特開2013-068814号公報の段落番号0317~0334、特開2016-162946号公報の段落番号0061~0080の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、UV-503(大東化学(株)製)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としては、ミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)が挙げられる。
【0181】
紫外線吸収剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。本発明の硬化性組成物は、紫外線吸収剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。紫外線吸収剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0182】
<<その他添加剤>>
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、各種添加剤、例えば、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、潜在酸化防止剤、凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加剤としては、特開2004-295116号公報の段落番号0155~0156に記載の添加剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、酸化防止剤としては、例えばフェノール化合物、リン系化合物(例えば特開2011-090147号公報の段落番号0042に記載の化合物)、チオエーテル化合物などが挙げられる。また、国際公開第2017/164024号に記載された酸化防止剤を用いることもできる。酸化防止剤の市販品としては、例えば(株)ADEKA製のアデカスタブシリーズ(AO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-50F、AO-60、AO-60G、AO-80、AO-330など)が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開第2014/021023号、国際公開第2017/030005号、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤の市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0183】
また、本発明の硬化性組成物は、得られる膜の屈折率を調整するために金属酸化物を含有させてもよい。金属酸化物としては、TiO、ZrO、Al、SiO等が挙げられる。金属酸化物の一次粒子径は1~100nmが好ましく、3~70nmがより好ましく、5~50nmが最も好ましい。金属酸化物はコア-シェル構造を有していてもよく、この際、コア部が中空状であってもよい。
【0184】
また、本発明の硬化性組成物は、耐光性改良剤を含んでもよい。耐光性改良剤としては、特開2017-198787号公報の段落番号0036~0037に記載の化合物、特開2017-146350号公報の段落番号0029~0034に記載の化合物、特開2017-129774号公報の段落番号0036~0037、0049~0052に記載の化合物、特開2017-129674号公報の段落番号0031~0034、0058~0059に記載の化合物、特開2017-122803号公報の段落番号0036~0037、0051~0054に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0039に記載の化合物、特開2017-186546号公報の段落番号0034~0047に記載の化合物、特開2015-025116号公報の段落番号0019~0041に記載の化合物、特開2012-145604号公報の段落番号0101~0125に記載の化合物、特開2012-103475号公報の段落番号0018~0021に記載の化合物、特開2011-257591号公報の段落番号0015~0018に記載の化合物、特開2011-191483号公報の段落番号0017~0021に記載の化合物、特開2011-145668号公報の段落番号0108~0116に記載の化合物、特開2011-253174号公報の段落番号0103~0153に記載の化合物などが挙げられる。
【0185】
本発明の硬化性組成物の粘度(23℃)は、例えば、塗布により膜を形成する場合、1~100mPa・sであることが好ましい。下限は、2mPa・s以上がより好ましく、3mPa・s以上がさらに好ましい。上限は、50mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下がさらに好ましく、15mPa・s以下が特に好ましい。
【0186】
本発明の硬化性組成物は、顔料などと結合または配位していない遊離の金属の含有量が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。この態様によれば、特開2012-153796号公報、特開2000-345085号公報、特開2005-200560号公報、特開平08-043620号公報、特開2004-145078号公報、特開2014-119487号公報、特開2010-083997号公報、特開2017-090930号公報、特開2018-025612号公報、特開2018-025797号公報、特開2017-155228号公報、特開2018-036521号公報などに記載された効果が得られる。上記の遊離の金属の種類としては、Na、K、Ca、Sc、Ti、Mn、Cu、Zn、Fe、Cr、Fe、Co、Mg、Al、Ti、Sn、Zn、Zr、Ga、Ge、Ag、Au、Pt、Cs、Bi等が挙げられる。また、本発明の硬化性組成物は、顔料などと結合または配位していない遊離のハロゲンの含有量が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。硬化性組成物中の遊離の金属やハロゲンの低減方法としては、イオン交換水による洗浄、ろ過、限外ろ過、イオン交換樹脂による精製等の方法が挙げられる。
【0187】
本発明の硬化性組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や硬化性組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。また、本発明の硬化性組成物の保存条件としては特に限定はなく、従来公知の方法を用いることができる。また、特開2016-180058号公報に記載された方法を用いることもできる。
【0188】
本発明の硬化性組成物を用いて厚さ1.0μmの膜を形成した際に、この膜は、硬化性組成物に含まれる化合物Aのクロロホルム溶液中での極大吸収波長よりも長波長側に極大吸収波長を有することが好ましく、10nm以上長波長側に極大吸収波長を有することがより好ましく、30nm以上長波長側に極大吸収波長を有することがさらに好ましい。
【0189】
また、本発明の硬化性組成物を用いて厚さ1.0μmの膜を形成した際に、この膜の極大吸収波長は700~1400nmの範囲にあることが好ましい。
【0190】
本発明の硬化性組成物は、上述した化合物Aを含むことにより、近赤外線遮蔽性および可視透明性に優れた膜を製造することもできる。近赤外線カットフィルタにおいては、近赤外線遮蔽性および可視透明性に優れることが望まれているため、本発明の硬化性組成物は近赤外線カットフィルタ形成用の組成物として特に好ましく用いることができる。また、本発明の硬化性組成物において、さらに、可視光を遮光する色材を含有させることで、特定の波長以上の近赤外線のみを透過可能な赤外線透過フィルタを形成することもできる。したがって、本発明の硬化性組成物は、赤外線透過フィルタ形成用の組成物として好ましく用いることもできる。
【0191】
<硬化性組成物の調製方法>
本発明の硬化性組成物は、前述の成分を混合して調製できる。硬化性組成物の調製に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解または分散して硬化性組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜配合した2つ以上の溶液または分散液をあらかじめ調製し、使用時(塗布時)にこれらを混合して硬化性組成物として調製してもよい。
【0192】
また、硬化性組成物の調製に際しては、顔料を分散させるプロセスを含むことが好ましい。顔料を分散させるプロセスにおいて、顔料の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスを実施するための手段の具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、顔料を分散させるプロセスおよび分散機については、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」、「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015-157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を使用することができる。また顔料を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて顔料を微細化処理してもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015-194521号公報、特開2012-046629号公報の記載を参酌できる。
【0193】
硬化性組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、硬化性組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
【0194】
フィルタの孔径は、0.01~7.0μmが好ましく、0.01~3.0μmがより好ましく、0.05~0.5μmが更に好ましい。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物をより確実に除去できる。フィルタの孔径値については、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。フィルタは、日本ポール株式会社(DFA4201NIEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)および株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタを用いることができる。
【0195】
また、フィルタとしてファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。市販品としては、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)が挙げられる。
【0196】
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
【0197】
<膜>
次に、本発明の膜について説明する。本発明の膜は、上述した本発明の硬化性組成物から得られるものである。本発明の膜は、近赤外線カットフィルタや赤外線透過フィルタなどに好ましく用いることができる。本発明の膜は、パターンを有していてもよく、パターンを有さない膜(平坦膜)であってもよい。
【0198】
本発明の膜は、支持体上に積層した状態で用いてもよく、支持体から剥離して用いてもよい。支持体としては、シリコンなどの半導体基材や、透明基材が挙げられる。透明基材は、少なくとも可視光を透過できる材料で構成されたものであれば特に限定されない。例えば、ガラス、結晶、樹脂などの材質で構成された基材が挙げられる。透明基材の材質としてはガラスが好ましい。すなわち、透明基材はガラス基材であることが好ましい。ガラスとしては、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、銅含有ガラスなどが挙げられる。銅含有ガラスとしては、銅を含有するリン酸塩ガラス、銅を含有するフツリン酸塩ガラスなどが挙げられる。銅を含有するガラスの市販品としては、NF-50(AGCテクノグラス(株)製)等が挙げられる。結晶としては、例えば、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイヤ等が挙げられる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。また、支持体と本発明の膜との密着性を高めるため、支持体の表面には下地層などが設けられていてもよい。
【0199】
本発明の膜を近赤外線カットフィルタとして用いる場合は、本発明の膜は700~1200nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。また、波長400~550nmの平均透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。また、波長400~550nmの全ての範囲での透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、波長700~1000nmの範囲の少なくとも1点での透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
【0200】
本発明の膜は、有彩色着色剤を含むカラーフィルタと組み合わせて用いることもできる。カラーフィルタは、有彩色着色剤を含む着色組成物を用いて製造できる。有彩色着色剤としては、上述した有彩色着色剤が挙げられる。着色組成物は、硬化性化合物、光重合開始剤、界面活性剤、溶剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤などをさらに含有することができる。これらの詳細については、上述した材料が挙げられ、これらを用いることができる。
【0201】
本発明の膜を近赤外線カットフィルタとして用い、かつ、本発明の膜をカラーフィルタと組み合わせて用いる場合、本発明の膜の光路上にカラーフィルタが配置されていることが好ましい。例えば、本発明の膜とカラーフィルタとを積層して積層体として用いることができる。積層体においては、本発明の膜とカラーフィルタとは、両者が厚み方向で隣接していてもよく、隣接していなくてもよい。本発明の膜とカラーフィルタとが厚み方向で隣接していない場合は、カラーフィルタが形成された支持体とは別の支持体に、本発明の膜が形成されていてもよく、本発明の膜とカラーフィルタとの間に、固体撮像素子を構成する他の部材(例えば、マイクロレンズ、平坦化層など)が介在していてもよい。
【0202】
本発明の膜の厚さは、目的に応じて適宜調整できる。膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
【0203】
なお、本発明において、近赤外線カットフィルタとは、可視領域の波長の光(可視光)を透過させ、近赤外領域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を遮光するフィルタを意味する。近赤外線カットフィルタは、可視領域の波長の光をすべて透過させるものであってもよく、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を透過させ、特定の波長領域の光を遮光するものであってもよい。また、本発明において、カラーフィルタとは、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を透過させ、特定の波長領域の光を遮光するフィルタを意味する。また、本発明において、赤外線透過フィルタとは、可視光を遮光し、近赤外線の少なくとも一部を透過させるフィルタを意味する。
【0204】
<膜の製造方法>
次に、本発明の膜の製造方法について説明する。本発明の膜は、本発明の硬化性組成物を塗布する工程を経て製造できる。
【0205】
硬化性組成物が塗布される支持体としては、特に限定は無く、シリコンなどの半導体基材や上述した透明基材が挙げられる。支持体には、有機膜や無機膜などが形成されていてもよい。有機膜の材料としては、例えば上述した樹脂が挙げられる。また、支持体には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、支持体には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。また、支持体には、必要により、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは支持体表面の平坦化のために下塗り層が設けられていてもよい。また、支持体としてガラス基材を用いる場合においては、ガラス基材の表面に無機膜を形成したり、ガラス基材を脱アルカリ処理して用いることが好ましい。
【0206】
硬化性組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。また、樹脂組成物の塗布方法については、国際公開第2017/030174号、国際公開第2017/018419号の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0207】
硬化性組成物を塗布して形成した組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベークを150℃以下で行うことにより、例えば、イメージセンサの光電変換膜を有機素材で構成した場合において、有機素材の特性をより効果的に維持することができる。プリベーク時間は、10~3000秒が好ましく、40~2500秒がより好ましく、80~220秒がさらに好ましい。プリベークは、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0208】
プリベーク後、更に加熱処理(ポストベーク)を行ってもよい。ポストベークを行う場合、ポストベーク温度としては、例えば100~240℃が好ましい。膜硬化の観点から、180~240℃がより好ましい。ポストベーク時間としては、2~10分が好ましく、4~8分がより好ましい。ポストベークは、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0209】
本発明の膜の製造方法においては、更にパターンを形成する工程を含んでいてもよい。パターン形成方法としては、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法や、ドライエッチング法を用いたパターン形成方法が挙げられる。なお、本発明の膜を平坦膜として用いる場合には、パターンを形成する工程を行わなくてもよい。以下、パターンを形成する工程について詳細に説明する。
【0210】
(フォトリソグラフィ法でパターン形成する場合)
フォトリソグラフィ法でのパターン形成方法は、本発明の硬化性組成物を支持体に塗布して形成した組成物層に対しパターン状に露光する工程(露光工程)と、未露光部の組成物層を現像除去してパターンを形成する工程(現像工程)と、を含むことが好ましい。
【0211】
<<露光工程>>
露光工程では組成物層をパターン状に露光する。例えば、組成物層に対し、ステッパー露光機やスキャナ露光機などを用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等が挙げられる。また、波長300nm以下の光(好ましくは波長180~300nmの光)を用いることもできる。波長300nm以下の光としては、KrF線(波長248nm)、ArF線(波長193nm)などが挙げられ、KrF線(波長248nm)が好ましい。
【0212】
また、露光に際して、光を連続的に照射して露光してもよく、パルス的に照射して露光(パルス露光)してもよい。なお、パルス露光とは、短時間(例えば、ミリ秒レベル以下)のサイクルで光の照射と休止を繰り返して露光する方式の露光方法のことである。パルス露光の場合、パルス幅は、100ナノ秒(ns)以下であることが好ましく、50ナノ秒以下であることがより好ましく、30ナノ秒以下であることが更に好ましい。パルス幅の下限は、特に限定はないが、1フェムト秒(fs)以上とすることができ、10フェムト秒以上とすることもできる。周波数は、1kHz以上であることが好ましく、2kHz以上であることがより好ましく、4kHz以上であることが更に好ましい。周波数の上限は50kHz以下であることが好ましく、20kHz以下であることがより好ましく、10kHz以下であることが更に好ましい。最大瞬間照度は、50000000W/m以上であることが好ましく、100000000W/m以上であることがより好ましく、200000000W/m以上であることが更に好ましい。また、最大瞬間照度の上限は、1000000000W/m以下であることが好ましく、800000000W/m以下であることがより好ましく、500000000W/m以下であることが更に好ましい。なお、パルス幅とは、パルス周期における光が照射されている時間のことである。また、周波数とは、1秒あたりのパルス周期の回数のことである。また、最大瞬間照度とは、パルス周期における光が照射されている時間内での平均照度のことである。また、パルス周期とは、パルス露光における光の照射と休止を1サイクルとする周期のことである。
【0213】
照射量(露光量)は、例えば、0.03~2.5J/cmが好ましく、0.05~1.0J/cmがより好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、または、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、または、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m~100000W/m(例えば、5000W/m、15000W/m、または、35000W/m)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m、酸素濃度35体積%で照度20000W/mなどとすることができる。
【0214】
<<現像工程>>
次に、組成物層の未露光部を現像除去してパターンを形成する。組成物層の未露光部の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。現像液の温度は、例えば、20~30℃が好ましい。現像時間は、20~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0215】
現像液は、有機溶剤、アルカリ現像液などが挙げられる。アルカリ現像液としては、アルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液が好ましい。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ剤は、分子量が大きい化合物の方が環境面および安全面で好ましい。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。また、現像液は、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、上述した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5~100倍の範囲に設定することができる。なお、アルカリ性水溶液を現像液として使用した場合には、現像後純水で洗浄(リンス)することが好ましい。また、リンスは、現像後の組成物層が形成された支持体を回転させつつ、現像後の組成物層へリンス液を供給して行うことが好ましい。また、リンス液を吐出させるノズルを支持体の中心部から支持体の周縁部に移動させて行うことも好ましい。この際、ノズルの支持体中心部から周縁部へ移動させるにあたり、ノズルの移動速度を徐々に低下させながら移動させてもよい。このようにしてリンスを行うことで、リンス液の供給量の面内ばらつきを抑制できる。また、ノズルの支持体中心部から周縁部へ移動させつつ、支持体の回転速度を徐々に低下させても同様の効果が得られる。
【0216】
現像後、乾燥を施した後に追加露光処理や加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。追加露光処理やポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理であり、加熱温度は、例えば100~240℃が好ましく、180~240℃がより好ましい。ポストベークは、現像後の膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。また、ポストベークは、特開2016-172828号公報に記載された方法で行うこともできる。追加露光処理を行う場合、露光に用いられる光は、波長400nm以下の光であることが好ましい。また、追加露光処理は、KR1020170122130Aに記載の方法で行ってもよい。
【0217】
(ドライエッチング法でパターン形成する場合)
ドライエッチング法でのパターン形成は、支持体上の組成物層を硬化して硬化物層を形成し、次いで、この硬化物層上にパターニングされたフォトレジスト層を形成し、次いで、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングするなどの方法で行うことができる。フォトレジスト層の形成においては、更にプリベーク処理を施すことが好ましい。特に、フォトレジスト層の形成プロセスとしては、露光後の加熱処理、現像後の加熱処理(ポストベーク処理)を実施する形態が望ましい。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013-064993号公報の段落番号0010~0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0218】
<近赤外線カットフィルタ>
本発明の近赤外線カットフィルタは、上述した本発明の膜を有する。本発明の近赤外線カットフィルタは、700~1200nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。また、波長400~550nmの平均透過率は70%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。また、波長400~550nmの全ての範囲での透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、波長700~1000nmの範囲の少なくとも1点での透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
【0219】
本発明の近赤外線カットフィルタは、本発明の膜の他に、さらに、誘電体多層膜、紫外線吸収層などを有していてもよい。本発明の近赤外線カットフィルタがさらに、誘電体多層膜を有する場合においては、視野角が広く、近赤外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。また、本発明の近赤外線カットフィルタがさらに紫外線吸収層を有する場合においては、紫外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。紫外線吸収層としては、例えば、国際公開第2015/099060号の段落番号0040~0070、0119~0145に記載の吸収層を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。誘電体多層膜としては、特開2014-041318号公報の段落番号0255~0259の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、本発明の近赤外線カットフィルタは、本発明の膜の表面に特開2017-151176号公報の段落番号0073~0092に記載の保護層が設けられていてもよい。
【0220】
<固体撮像素子、カメラモジュール>
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の膜を有する。また、本発明のカメラモジュールは、固体撮像素子と、本発明の近赤外線カットフィルタとを有する。本発明の固体撮像素子の構成としては、本発明の膜を有する構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はない。例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0221】
支持体上に、固体撮像素子の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、本発明の膜を有する構成である。さらに、デバイス保護膜上であって、本発明の膜の下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、本発明の膜上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各画素を形成する膜が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各画素よりも低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012-227478号公報、特開2014-179577号公報に記載の装置が挙げられる。
【0222】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の膜を有する。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003-045676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線-高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集-」、技術情報協会、326-328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430~485nm)、緑色領域(530~580nm)および黄色領域(580~620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加えさらに赤色領域(650~700nm)に極大発光ピークを有するものがより好ましい。
【0223】
<赤外線センサ>
本発明の赤外線センサは、上述した本発明の膜を有する。赤外線センサの構成としては、赤外線センサとして機能する構成であれば特に限定はない。以下、本発明の赤外線センサの一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0224】
図1において、符号110は、固体撮像素子である。固体撮像素子110上に設けられている撮像領域は、近赤外線カットフィルタ111と、赤外線透過フィルタ114とを有する。また、近赤外線カットフィルタ111上には、カラーフィルタ112が積層している。カラーフィルタ112および赤外線透過フィルタ114の入射光hν側には、マイクロレンズ115が配置されている。マイクロレンズ115を覆うように平坦化層116が形成されている。
【0225】
近赤外線カットフィルタ111は本発明の硬化性組成物を用いて形成することができる。近赤外線カットフィルタ111の分光特性は、使用する赤外発光ダイオード(赤外LED)の発光波長に応じて選択される。カラーフィルタ112は、可視領域における特定波長の光を透過および吸収する画素が形成されたカラーフィルタであって、特に限定はなく、従来公知の画素形成用のカラーフィルタを用いることができる。例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画素が形成されたカラーフィルタなどが用いられる。例えば、特開2014-043556号公報の段落番号0214~0263の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。赤外線透過フィルタ114は、使用する赤外LEDの発光波長に応じてその特性が選択される。赤外線透過フィルタ114は本発明の硬化性組成物を用いて形成することもできる。
【0226】
図1に示す赤外線センサにおいて、平坦化層116上には、近赤外線カットフィルタ111とは別の近赤外線カットフィルタ(他の近赤外線カットフィルタ)がさらに配置されていてもよい。他の近赤外線カットフィルタとしては、銅を含有する層および/または誘電体多層膜を有するものなどが挙げられる。また、他の近赤外線カットフィルタとしては、デュアルバンドパスフィルタを用いてもよい。また、図1に示す赤外線センサにおいて、近赤外線カットフィルタ111とカラーフィルタ112の位置が入れ替わっても良い。また、固体撮像素子110と近赤外線カットフィルタ111との間、および/または、固体撮像素子110と赤外線透過フィルタ114との間に他の層が配置されていてもよい。他の層としては、硬化性化合物を含む組成物を用いて形成された有機物層などが挙げられる。また、カラーフィルタ112上に平坦化層が形成されていてもよい。
【実施例
【0227】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は、質量基準である。
【0228】
(合成例1)化合物I-1の合成方法
以下の合成スキームに従って化合物I-1を合成した。
【化34】
【0229】
中間体M1の合成は、上記のスキームにしたがい、Journal of Medicinal Chemistry,1998,vol.41,p.130-142に記載の方法で2-アミノベンゼンチオールと5-ブロモバレリルクロリドを反応させて合成した。
中間体M1(1.0g、3.7mmol)とスクアリン酸(0.19g、1.67mmol)とピリジン(1.0g、12.6mmol)をn-ブタノール/トルエン(10cm/40cm)中で、共沸脱水しながら6時間加熱還流した。反応液を冷却後、メタノール50mlを加えて30分撹拌した。析出物を濾取し、粗体を得た。粗体をメタール/水(30cm/10cm)中で30分撹拌した後、吸引ろ過することによって目的化合物(化合物I-1)を得た。(0.4g、収率53%)。
化合物I-1の同定データ:
H-NMR(CDCl):
δ2.11(m,4H),δ3.15(t,4H),δ3.95(t,4H),
δ7.06(d,2H),7.14(t,2H),7.31(t,2H),7.47(d,2H)
MALDI TOF-MASS(飛行時間型質量分析法)
Calc. for [M+H]+:457.1 found:457.1
【0230】
(合成例2)化合物I-4の合成方法
化合物I-1と同様の合成方法で化合物I-4を合成した。
【0231】
(合成例3)化合物I-3の合成方法
以下の合成スキームに従って化合物I-3を合成した。
【化35】
【0232】
中間体M2の合成は、上記のスキームにしたがい、Chemistry of Heterocyclic Compound,1985,vol.21,#5 p.599-600に記載の方法で合成した。
中間体M2(7.11g、20mmol)とスクアリン酸(1.14g、10mmol)とピリジン(2.37g、30mmol)をn-ブタノール/トルエン(21cm/85cm)中で、共沸脱水しながら6時間加熱還流した。反応液を冷却後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム)により精製した。クロロホルムを減圧留去した後、固体をメタノール中で30分撹拌した後、固体を吸引ろ過することによって目的化合物(化合物I-3)を得た。
(0.45g、収率10%)。
化合物I-3の同定データ:
MALDI TOF-MASS(飛行時間型質量分析法)
Calc. for [M+H]+:445.2 found:445.2
【0233】
(合成例4)化合物II-1の合成方法
以下の合成スキームに従って化合物II-1を合成した。
【化36】
【0234】
中間体M1(1.50g、5.6mmol)とクロコン酸(0.39g、2.8mmol)をトリエチルアミン/ピリジン(1cm/25cm)中、室温下で12時間撹拌した。反応液にヘキサンを40ml加えて30分撹拌した。析出物を濾取し、粗体を得た。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/メタノール)により精製した。溶媒を減圧留去した後、メタール/水(10cm/40cm)中で30分撹拌した後、固体を吸引ろ過することによって目的化合物(化合物II-1)を得た。(0.3g、収率15%)。
化合物II-1の同定データ:
H-NMR(d-DMSO):
δ2.13(m,4H),δ3.29(t,4H),δ4.29(t,4H),
δ7.38(t,2H),7.53(t,2H),7.63(d,2H),7.99(d,2H)
MALDI TOF-MASS(飛行時間型質量分析法)
Calc. for [M+H]+:485.1 found:485.1
【0235】
(合成例5)化合物II-2の合成方法
以下の合成スキームに従って化合物II-2を合成した。
【化37】
【0236】
中間体M2(3.0g、8.4mmol)とクロコン酸(0.6g、4.2mmol)とトリエチルアミン(0.29g、8.4mmol)をn-ブタノール(11cm)中で3時間加熱還流した。反応液を冷却後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/メタノール)により精製した。溶媒を減圧留去した後、メタノール/水(10cm/40cm)中で30分撹拌した後、固体を吸引ろ過することによって目的化合物(化合物II-2)を得た。
(0.2g、収率10%)。
化合物II-2の同定データ:
MALDI TOF-MASS(飛行時間型質量分析法)
Calc. for [M+H]+:473.2 found:473.3
【0237】
<分散液の製造>
下記表に記載の色素化合物の13質量部と、樹脂6溶液の15質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)の109質量部との混合液に0.5mm径ジルコニアビーズを520質量部加え、ペイントシェーカーを用いて30分間分散処理を行った。その後、日本ポール製DFA4201NIEY(0.45μmナイロンフィルター)を用いてろ過を行い、ビーズをろ過で分離して分散液を製造した。
【0238】
(樹脂6溶液の製造方法)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、メチルメタクリレートの60質量部、n-ブチルメタクリレートの20質量部、テトラメチルエチレンジアミンの13.2質量部を仕込み、窒素を流しながら50℃で1時間撹拌し、系内を窒素置換した。次に、ブロモイソ酪酸エチルの9.3質量部、塩化第一銅の5.6質量部、PGMEAの133の質量部を仕込み、窒素気流下で、110℃まで昇温して第一ブロックの重合を開始した。4時間重合後、重合溶液をサンプリングして固形分測定を行い、不揮発分から換算して重合転化率が98%以上であることを確認した。
次に、この反応装置に、PGMEAの61質量部、第二ブロックモノマーとしてジメチルアミノエチルメタクリレートの20質量部(以下、DMという)を投入し、110℃・窒素雰囲気下を保持したまま撹拌し、反応を継続した。ジメチルアミノエチルメタクリレート投入から2時間後、重合溶液をサンプリングして固形分測定を行い、不揮発分から換算して第二ブロックの重合転化率が98%以上であることを確認し、反応溶液を室温まで冷却して重合を停止した。先に合成したブロック共重合体溶液に不揮発分が40質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加した。このようにして、固形分当たりのアミン価が71.4mgKOH/g、重量平均分子量9900(Mw)、不揮発分が40質量%のポリ(メタ)アクリレート骨格であり、3級アミノ基を有する樹脂6溶液を得た。
【0239】
【表1】
【0240】
上記表に記載の色素化合物は以下の通りである。
【化38】
【0241】
<硬化性組成物の製造>
下記の組成1~4に示す原料を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)を用いてろ過して、硬化性組成物を調製した。
【0242】
(組成1)
下記表に記載の分散液 ・・・60質量部
架橋性モノマー1 ・・・6質量部
樹脂1 ・・・4.45質量部
光重合開始剤1 ・・・1.99質量部
界面活性剤1 ・・・4.17質量部
重合禁止剤(p-メトキシフェノール) ・・・0.003質量部
PGMEA ・・・23.39質量部
【0243】
(組成2)
化合物I-4 ・・・2.3質量部
樹脂2 ・・・12.9質量部
架橋性モノマー1 ・・・12.9質量部
光重合開始剤1 ・・・2.5質量部
紫外線吸収剤1 ・・・0.5質量部
界面活性剤1 ・・・0.04質量部
重合禁止剤(p-メトキシフェノール) ・・・0.006質量部
シクロヘキサノン ・・・49.6質量部
PGMEA ・・・19.3質量部
【0244】
(組成3)
化合物I-4 ・・・2.3質量部
樹脂3 ・・・12.8質量部
紫外線吸収剤1 ・・・0.5質量部
界面活性剤1 ・・・0.04質量部
シクロヘキサノン ・・・84.36質量部
【0245】
(組成4)
化合物I-4 ・・・2.3質量部
樹脂4 ・・・12.8質量部
紫外線吸収剤1 ・・・0.5質量部
界面活性剤1 ・・・0.04質量部
シクロヘキサノン ・・・64.36質量部
N-メチルピロリドン ・・・20質量部
【0246】
各硬化性組成物に用いた原料は以下の通りである。
化合物I-4:下記構造の化合物
【化39】
樹脂1:サイクロマーP(ACA)230AA ((株)ダイセル製)
樹脂2:アリルメタクリレート(AMA)とメタクリル酸(MAA)との共重合体(組成比(質量比):(AMA/MAA)=(80/20)、Mw=15,000)
樹脂3:ARTON F4520(JSR(株)製)
樹脂4:ネオプリム(登録商標)C3450(三菱ガス化学(株)製)
架橋性モノマー1:KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)
光重合開始剤1:IRGACURE-OXE01(BASF社製)〔2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン〕
紫外線吸収剤1:UV-503(大東化学株式会社製)
界面活性剤1:下記構造の化合物(Mw=14000、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。)
【化40】
【0247】
【表2】
【0248】
<硬化膜の作製>
(作製例1)
(組成1、2の硬化性組成物を用いた硬化膜の作製方法)
各硬化性組成物を、ガラス基材(コーニング社製1737)上に、乾燥後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行った。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用して、500mJ/cm2で全面露光した。次いで現像機(CD-2060、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行い、次いで、純水でリンス処理し、次いで、スピン乾燥した。さらに、200℃のホットプレートを用いて300秒間加熱処理(ポストベーク)を行い、硬化膜を得た。
【0249】
(作製例2)
(組成3、4の硬化性組成物を用いた膜の作製方法)
各硬化性組成物を、ガラス基材(コーニング社製1737)上に、乾燥後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行った。次いで、200℃のホットプレートを用いて300秒間加熱処理(ポストベーク)を行い、膜を得た。
【0250】
<極大吸収波長の測定>
分光光度計UV-3100PC((株)島津製作所製)を用いて、得られた膜の吸収スペクトルを測定し、膜の極大吸収波長(λmax)を測定した。
また、硬化性化合物に用いた色素化合物の極大吸収波長(λmax)は、各硬化性化合物に用いた色素化合物のクロロホルム溶液を作製し、分光光度計UV-3100PC((株)島津製作所製)を用いて各色素化合物のクロロホルム溶液の吸収スペクトルを測定して、クロロホルム溶液中での色素化合物の極大吸収波長(λmax)を測定した。
【0251】
<耐光性>
得られた膜に対し、Xeランプにて紫外線カットフィルタを通して2万ルクスの光を10時間照射した後、色度計MCPD-1000(大塚電子(株)製)にて、耐光テスト前後の色差のΔEab値を測定した。ΔEab値の小さい方が耐光性が良好であることを示す。なお、ΔEab値は、CIE1976(L*,a*,b*)空間表色系による以下の色差公式から求められる値である(日本色彩学会編 新編色彩科学ハンドブック(昭和60年)p.266)。
ΔEab={(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2
<<判定基準>>
A:ΔEab値<2.5
B:2.5≦ΔEab値<5
C:5≦ΔEab値<10
D:10≦ΔEab値<15
E:15≦ΔEab値
【0252】
<耐湿性>
得られた膜を、85℃、相対湿度85%の高温高湿下で15時間放置して耐湿試験を行った。耐湿試験前後の膜のそれぞれについて、分光光度計(U-4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、波長650~1100nmにおける最大吸光度(Absλmax)と、波長400~650nmにおける最小吸光度(Absλmin)とを測定し、「Absλmax/Absλmin」で表される吸光度比を求めた。
|{(耐湿試験前の膜の吸光度比-耐湿試験後の膜の吸光度比)/耐湿試験前の膜の吸光度比}×100|(%)で表される吸光度比変化率を、以下の基準で評価した。結果を以下の表に示す。
A:吸光度比変化率≦2%
B:2%<吸光度比変化率≦4%
C:4%<吸光度比変化率≦7%
D:7%<吸光度比変化率≦10%
E:10%<吸光度比変化率
【0253】
(分光特性の評価)
分光光度計(U-4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて得られた膜の400~1100nmの波長範囲の吸収スペクトルを測定した。波長650~1100nmにおける最大吸光度(Absλmax)を測定し、最大の吸光度を1とした時の、「400~600nmの平均吸光度」について、下記基準で評価した。この吸光度を1としたときに、400~600nmの吸光度が小さいほど、急峻な分光形状を有しており、可視光領域の高い透明性と近赤外領域の高い遮蔽性を両立しているため、優れた分光特性であると言える。
A:0.05未満
B:0.05以上、0.1未満
C:0.1以上、0.2未満
D:0.2以上
【0254】
【表3】
【0255】
上記表に示すように、実施例の硬化性組成物は、耐光性および耐湿性に優れた膜を形成することができた。また、各実施例の硬化性組成物を用いて得られた膜は、近赤外領域に極大吸収波長を有し、かつ、近赤外線遮蔽性および可視透明性に優れており、優れた分光特性を有していた。
【符号の説明】
【0256】
110:固体撮像素子、111:近赤外線カットフィルタ、112:カラーフィルタ、114:赤外線透過フィルタ、115:マイクロレンズ、116:平坦化層
図1