(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】遮光性組成物、硬化膜、遮光膜、固体撮像素子
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20220722BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20220722BHJP
H01L 27/144 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
G02B5/20 101
H01L27/146 D
H01L27/144 K
(21)【出願番号】P 2020548209
(86)(22)【出願日】2019-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2019033357
(87)【国際公開番号】W WO2020066420
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2018178646
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018238143
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】浜田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大谷 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】加藤 亮祐
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-001538(JP,A)
【文献】特開2009-244736(JP,A)
【文献】国際公開第2007/061115(WO,A1)
【文献】特開2016-035564(JP,A)
【文献】特開2005-134439(JP,A)
【文献】特開2015-109384(JP,A)
【文献】国際公開第2010/001976(WO,A1)
【文献】特開2010-018653(JP,A)
【文献】特開2012-083571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
H01L 27/146
H01L 27/144
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色着色材、重合性化合物、光重合開始剤、及び、樹脂を含有する遮光性組成物であって、
前記樹脂が、重合性基と、
主鎖として一般式(1)で表される基とを含有し、
前記樹脂の数平均分子量が100~15000であり、
前記樹脂の含有量が、前記遮光性組成物の固形分の全質量に対して、2.0~15.0質量%である、遮光性組成物。
*-(SiR
1R
2-O)
na-* (1)
一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基を表す。
naは、
2~200の整数を表す。
*は、結合位置を表す。
【請求項2】
黒色着色材、重合性化合物、光重合開始剤、及び、樹脂を含有する遮光性組成物であって、
前記樹脂が、一般式(2)で表される化合物であり、
前記樹脂の数平均分子量が100~15000であり、
前記樹脂の含有量が、前記遮光性組成物の固形分の全質量に対して、2.0~15.0質量%である、遮光性組成物。
R
3
-(SiR
1
R
2
-O)
nb
-SiR
1
R
2
-R
3
(2)
一般式(2)中、R
1
及びR
2
は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基を表す。
R
3
は、エチレン性不飽和基を含有する基を表す。
nbは、3~200の整数を表す。
【請求項3】
前記R
3の少なくとも1つが酸基を有する、請求項2に記載の遮光性組成物。
【請求項4】
前記R
3の少なくとも1つが、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、及び、チオエーテル結合からなる群から選択される少なくとも1つを有する、請求項2又は3に記載の遮光性組成物。
【請求項5】
前記黒色着色材が、金属窒化物及び金属酸窒化物からなる群から選択される1種以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の遮光性組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の遮光性組成物を用いて得られる、硬化膜。
【請求項7】
前記硬化膜が、黒色層と、前記黒色層の表面上に配置された被覆層とを含有し、
前記被覆層の厚さが20~200nmであり、
前記被覆層が、前記樹脂の硬化物を含有する、請求項6に記載の硬化膜。
【請求項8】
遮光膜である、請求項6又は7に記載の硬化膜。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の硬化膜を含有する、固体撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光性組成物、硬化膜、遮光膜、及び、固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像装置等に適用される遮光膜として用いられる硬化膜の製造は、基板上に遮光性組成物層を形成した後に、これを硬化させる方法が一般的である。この際には、所定のマスクパターンを介して遮光性組成物層に光を照射し、その後、現像処理を行うのが典型的である。
【0003】
例えば、特許文献1には、「(a)樹脂、(b)色素材、(c)無機微粒子、(d)界面活性剤及びオイルから選ばれた少なくとも1種の成分を含有する塗膜であって、塗膜における(d)界面活性剤及びオイルから選ばれた少なくとも1種の成分の濃度が表層の方が下層よりも高いことを特徴とする遮光塗膜(請求項1)」が公開されており、上記オイルの例としては、ジメチルシリコーンオイルが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遮光膜としても使用される硬化膜に対しては、近年、遮光性の良好さの他にも、様々な要求が存在する。例えば、固体撮像装置の小型化、薄型化、及び、高感度化に伴い、硬化膜のより一層の低反射化が求められている。また、硬化膜が、長期間光にさらされた場合でも、優れた低反射性を維持できること(以下、このような特性を「硬化膜(又は遮光膜)が耐光性に優れる」ともいう)も求められている。
【0006】
そこで、本発明は、遮光性、低反射性、及び、耐光性に優れる硬化膜を形成できる遮光性組成物の提供を課題とする。また、硬化膜、遮光膜、及び、固体撮像素子の提供も課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
〔1〕
黒色着色材、重合性化合物、光重合開始剤、及び、樹脂を含有する遮光性組成物であって、
上記樹脂が、重合性基と、一般式(1)で表される基とを含有し、
上記樹脂の数平均分子量が100~15000であり、
上記樹脂の含有量が、上記遮光性組成物の固形分の全質量に対して、2.0~15.0質量%である、遮光性組成物。
*-(SiR1R2-O)na-* (1)
一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基を表す。
naは、1~200の整数を表す。
*は、結合位置を表す。
〔2〕
上記樹脂が、一般式(2)で表される化合物である、〔1〕に記載の遮光性組成物。
R3-(SiR1R2-O)nb-SiR1R2-R3 (2)
一般式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基を表す。
R3は、エチレン性不飽和基を含有する基を表す。
nbは、3~200の整数を表す。
〔3〕
前記R3の少なくとも1つが酸基を有する、〔2〕に記載の遮光性組成物。
〔4〕
前記R3の少なくとも1つが、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、及びチオエーテル結合からなる群から選択される少なくとも1つを有する、〔2〕又は〔3〕に記載の遮光性組成物。
〔5〕
前記黒色着色材が、金属窒化物及び金属酸窒化物からなる群から選択される1種以上である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の遮光性組成物。
〔6〕
〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の遮光性組成物を用いて得られる、硬化膜。
〔7〕
前記硬化膜が、黒色層と、前記黒色層の表面上に配置された被覆層とを含有し、
前記被覆層の厚さが20~200nmであり、
前記被覆層が、前記樹脂の硬化物を含有する、〔6〕に記載の硬化膜。
〔8〕
遮光膜である、〔6〕又は〔7〕に記載の硬化膜。
〔9〕
〔6〕~〔8〕のいずれかに記載の硬化膜を含有する、固体撮像素子。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、遮光性、低反射性、及び、耐光性に優れる硬化膜を形成できる遮光性組成物を提供できる。また、硬化膜、遮光膜、及び、固体撮像素子も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の硬化膜の好適実施態様の断面図を表す。
【
図2】固体撮像装置の構成例を示す概略断面図である。
【
図3】
図2の撮像部を拡大して示す概略断面図である。
【
図4】赤外線センサの構成例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に限定されない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含有する範囲を意味する。
【0012】
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、本発明の趣旨に反しない限り、置換基を含有しない基と共に置換基を含有する基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を含有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を含有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
【0013】
また、本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、遠紫外線、極紫外線(EUV:Extreme ultraviolet lithography)、X線、及び、電子線等を意味する。また本明細書において光とは、活性光線及び放射線を意味する。本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、遠紫外線、X線、及び、EUV光等による露光のみならず、電子線及びイオンビーム等の粒子線による描画も包含する。
【0014】
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタアクリレートを表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタアクリルを表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルを表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及びメタアクリルアミドを表す。また、本明細書中において、「単量体」と「モノマー」とは同義である。
【0015】
本明細書において重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲル浸透クロマトグラフィー)法によるポリスチレン換算値である。
本明細書においてGPC法は、HLC-8020GPC(東ソー社製)を用い、カラムとしてTSKgel SuperHZM-H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ2000(東ソー社製、4.6mmID×15cm)を、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる方法に基づく。
【0016】
[遮光性組成物]
本発明の遮光性組成物(以下、単に「組成物」ともいう)は、黒色着色材、重合性化合物、光重合開始剤、及び、樹脂を含有する。
上記樹脂は、重合性基と、後述する一般式(1)で表される基とを含有する、数平均分子量が100~15000の樹脂である(この樹脂を、以下「特定樹脂」ともいう)。
特定樹脂の含有量は、前記遮光性組成物の固形分の全質量に対して、2.0~15.0質量%である。
【0017】
上記のような構成をとる組成物で本発明の課題が解決されるメカニズムは必ずしも定かではないが、本発明者らは、以下のように推測している。
特定樹脂が含有する、一般式(1)で表される(ポリ)シロキサン基は低い表面自由エネルギーを示す。また、分子量が100~15000であるため、比較的自由に組成物中を移動できる。そのため、例えば、基板上に組成物を塗布して形成される組成物層においては、基板とは反対側の組成物層表面近傍に特定樹脂が濃縮して存在しやすい。結果として、
図1に示すように、基板16上の、組成物層を硬化して得られる硬化膜10は、黒色着色材を含有する黒色層(下側層)12と特定樹脂の硬化物を含有する被覆層(上側層)14との2層構造を有する。このような2層構造が形成されると、被覆層表面で反射される光と、被覆層と黒色層との界面で反射される光とが干渉により打ち消されて、低反射性が実現される。また、特定樹脂は重合性基を含有するため、硬化膜を形成する過程で現像処理がされても、硬化膜から被覆層が除去されることはなく、優れた低反射性が実現される。更に、特定樹脂が含有する(ポリ)シロキサン基は剛直な構造であるため、光を照射されても変質しにくいため耐光性も改善した、と推測している。
【0018】
まず、本発明の組成物の成分について説明する。
【0019】
〔黒色着色材〕
遮光性組成物は、黒色着色材を含有する。
組成物中の黒色着色材の含有量は、組成物の固形分の全質量に対して、10~90質量%が好ましく、30~80質量%がより好ましく、50~70質量%が更に好ましい。
なお、本発明の組成物から形成される硬化膜を遮光膜として用いた「遮光」とは、光を減衰させながら硬化膜(遮光膜)を通過させる光減衰をも含む概念である。このような機能を有する光減衰膜として硬化膜(遮光膜)を使用する場合、組成物中の黒色着色材の含有量は、上記好適範囲より少ないのも好ましい。
黒色着色材は1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
なお、本明細書において、組成物の固形分とは、組成物が溶剤(有機溶剤、水等)を含有する場合に、溶剤を除いたすべての成分を意図し、溶剤以外の成分であれば液状成分であっても固形分とみなす。
【0020】
黒色着色材としては、黒色顔料及び黒色染料からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
また、単独では黒色着色材として使用できない着色剤を複数組み合わせ、全体として黒色になるように調整して黒色着色材としてもよい。
例えば、単独で黒色を発現する顔料を黒色顔料とする他にも、単独では黒色以外の色を有する顔料を複数組み合わせて黒色顔料として使用してもよい。同様に、単独で黒色を発現する染料を黒色染料とする他にも、単独では黒色以外の色を有する染料を複数組み合わせて黒色染料として使用してもよい。
また、単独では黒色着色材として使用できない着色剤を用いることで、硬化膜の遮光特性を調整しやすい。例えば、硬化膜を光減衰膜として使用する場合に、広い波長成分を含有する光に対して、各波長を均等に減衰しやすい。
なお、黒色着色材とは、波長400~700nmの全ての範囲にわたって吸収がある色材をいう。
より具体的には、例えば、以下に説明する評価基準Zに適合する黒色着色材が好ましい。
まず、色材と、透明な樹脂マトリックス(アクリル樹脂等)と、溶剤とを含有し、全固形分に対する色材の含有量が60質量%である組成物を調製する。得られた組成物を、ガラス基板上に、乾燥後の塗膜の膜厚が1μmになるように塗布し、塗膜を形成する。乾燥後の塗膜の遮光性を、分光光度計(日立株式会社製UV-3600等)を用いて評価する。乾燥後の塗膜の波長400~700nmにおける透過率の最大値が10%未満であれば、上記色材は評価基準Zに適合する黒色着色材であると判断できる。
【0021】
(黒色顔料)
黒色着色材は、低反射性がより優れる硬化膜を得られる点から、金属窒化物及び/又は金属酸窒化物等の黒色顔料が好ましい。
黒色顔料は、各種公知の黒色顔料を使用できる。黒色顔料は、無機顔料であっても有機顔料であってもよい。
【0022】
黒色顔料としては、単独で黒色を発現する顔料が好ましい。
黒色顔料は、各種公知の黒色顔料を使用できる。黒色顔料は、無機顔料であっても有機顔料であってもよい。
黒色の無機顔料としては、例えば、金属窒化物、金属酸窒化物、及び、金属酸化物からなる群から選択される1種以上が好ましく、金属窒化物及び金属酸窒化物からなる群から選択される1種以上がより好ましい。
金属窒化物、金属酸窒化物、及び、金属酸化物として、より具体的には、例えば、チタン(Ti)及びジルコニウム(Zr)等の第4族の金属元素、バナジウム(V)及びニオブ(Nb)等の第5族の金属元素、コバルト(Co)、クロム(Cr)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、並びに、銀(Ag)からなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属元素を含有する、金属窒化物、金属酸窒化物、及び、金属酸化物等が挙げられる。
無機顔料には、表面修飾処理が施されていてもよい。例えば、シリコーン基とアルキル基を併せ持つ表面処理剤で表面修飾処理が施された無機粒子が挙げられ、「KTP-09」シリーズ(信越化学工業社製)等が挙げられる。また、金属窒化物、金属酸窒化物、及び、金属酸化物は、更に他の原子が混在した粒子として使用してもよい。例えば、更に周期表13~17族元素から選択される原子(好ましくは硫黄原子)を含有する、金属窒化物、金属酸窒化物、及び、金属酸化物として使用されてもよい。
黒色顔料としては、カーボンブラックも挙げられる。カーボンブラックとして、表面を樹脂で被覆したカーボンブラックを使用してもよい。黒色顔料としては、市販品である、C.I.ピグメントブラック 1、及び、Irgaphor Black S 0100 CF等の有機顔料、及び、C.I.ピグメントブラック 7等の無機顔料も挙げられる。
【0023】
なお、本明細書において、窒化チタンとは、TiNを意図し、製造上不可避な酸素原子(例えば、TiNの粒子の表面が意図せず酸化したもの、等)を含有してもよい。
本明細書において、窒化チタンとは、CuKα線をX線源とした場合の(200)面に由来するピークの回折角2θが42.5°~42.8°である化合物を意図する。
また、本明細書において、酸窒化チタンとは、CuKα線をX線源とした場合の(200)面に由来するピークの回折角2θが42.8°超の化合物を意図する。酸窒化チタンの上記回折角2θの上限値としては特に制限されないが、43.5°以下が好ましい。
酸窒化チタンとしては、例えば、チタンブラック等が挙げられ、より具体的には、例えば、TiO2、TinO2n-1(1≦n≦20)で表せる低次酸化チタン、及び/又は、TiNxOy(0<x<2.0,0.1<y<2.0)で表せる酸窒化チタンを含有する形態が挙げられる。以下の説明では、窒化チタン(上記回折角2θが42.5°~42.8°)、及び、酸窒化チタン(上記回折角2θが42.8°超)を併せてチタン窒化物といい、その形態について説明する。
また、チタン窒化物は、更に他の原子が混在した粒子として使用してもよい。例えば、チタン窒化物は、更に周期表13~17族元素から選択される原子(好ましくは、硫黄原子)を含有する、チタン窒化物含有粒子として使用されてもよい。なお、その他の金属窒化物においても同様で、窒化金属と酸窒化金属を併せていう金属窒化物は、更に他の原子が混在した粒子として使用してもよい。例えば、金属窒化物は、更に周期表13~17族元素から選択される原子(好ましくは、硫黄原子)を含有する、金属窒化物として使用されてもよい。
【0024】
CuKα線をX線源としてチタン窒化物のX線回折スペクトルを測定した場合において、最も強度の強いピークとしてTiNは(200)面に由来するピークが2θ=42.5°近傍に、TiOは(200)面に由来するピークが2θ=43.4°近傍に観測される。一方、最も強度の強いピークではないがアナターゼ型TiO2は(200)面に由来するピークは2θ=48.1°近傍に、ルチル型TiO2は(200)面に由来するピークは2θ=39.2°近傍に観測される。よって、酸窒化チタンが酸素原子を多く含有するほどピーク位置は42.5°に対して高角度側にシフトする。
【0025】
チタン窒化物が、酸化チタンTiO2を含有する場合、最も強度の強いピークとしてアナターゼ型TiO2(101)に由来するピークが2θ=25.3°近傍に、ルチル型TiO2(110)に由来するピークが2θ=27.4°近傍に見られる。しかし、TiO2は白色であり、組成物を硬化して得られる硬化膜の遮光性を低下させる要因となるため、ピークとして観察されない程度に低減されているのが好ましい。
【0026】
上記のX線回折スペクトルの測定により得られたピークの半値幅から、チタン窒化物を構成する結晶子サイズを求められる。結晶子サイズの算出はシェラーの式を用いて行える。
【0027】
チタン窒化物を構成する結晶子サイズとしては、50nm以下が好ましく、20nm以上が好ましい。結晶子サイズが20~50nmであると、組成物を用いて形成される硬化膜は、紫外線(特にi線(波長365nm))透過率がより高くなりやすく、より感光性が高い組成物が得られる。
【0028】
チタン窒化物の比表面積については特に制限されないが、BET(Brunauer,Emmett,Teller)法により求められる。チタン窒化物の比表面積は、5~100m2/gが好ましく、10~60m2/gがより好ましい。
【0029】
黒色顔料の製造方法としては特に制限されず、公知の製造方法を使用でき、例えば、気相反応法が挙げられる。気相反応法としては、電気炉法、及び、熱プラズマ法等が挙げられるが、不純物の混入が少なく、粒子径が揃いやすく、また、生産性が高い点で、熱プラズマ法が好ましい。
熱プラズマ法において、熱プラズマを発生させる方法としては、特に制限されず、直流アーク放電、多層アーク放電、高周波(RF)プラズマ、及び、ハイブリッドプラズマ等が挙げられ、電極からの不純物の混入が少ない高周波プラズマがより好ましい。
熱プラズマ法による黒色顔料の具体的な製造方法としては、特に制限されないが、例えば、チタン窒化物の製造方法として、プラズマ炎中で四塩化チタンとアンモニアガスを反応させる方法(特開平2-22110号公報)、チタン粉末を高周波熱プラズマにより蒸発させ窒素をキャリアーガスとして導入し冷却過程にて窒化させ合成する方法(特開昭61-11140号公報)、及び、プラズマの周縁部にアンモニアガスを吹き込む方法(特開昭63-85007号)等が挙げられる。
ただし、黒色顔料の製造方法としては、上記に制限されず、所望とする物性を有する黒色顔料が得られれば、製造方法は制限されない。
【0030】
黒色顔料は、その表面に、ケイ素を含有する化合物(以下「含ケイ素化合物」という。)の層を含有してもよい。すなわち、上記金属原子の(酸)窒化物を含ケイ素化合物で被覆し、黒色顔料としてもよい。
金属原子の(酸)窒化物を被覆する方法としては、特に制限されず、公知の方法を使用でき、例えば、特開昭53-33228号公報の2頁右下~4頁右上に記載された方法(チタン酸化物に代えて、金属原子の(酸)窒化物を用いる)、特開2008-69193の段落0015~0043に記載された方法(微粒子二酸化チタンに代えて、金属原子の(酸)窒化物を用いる)、特開2016-74870号公報の段落0020、及び、段落0124~0138に記載された方法(金属酸化物微粒子に代えて、金属原子の(酸)窒化物を用いる)が挙げられ、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0031】
更に、遮光性組成物がチタンブラックを含有する場合、チタンブラックを、チタンブラック及びSi原子を含む被分散体として含有することも好ましい。
この形態において、チタンブラックは、組成物中において被分散体として含有されるものであり、被分散体中のSi原子とTi原子との含有比(Si/Ti)が質量換算で0.05以上が好ましく、0.05~0.5がより好ましく、0.07~0.4が更に好ましい。
ここで、上記被分散体は、チタンブラックが一次粒子の状態であるもの、凝集体(二次粒子)の状態であるものの双方を包含する。
被分散体のSi/Tiを変更する(例えば、0.05以上とする)ためには、以下のような手段を用いることができる。
まず、酸化チタンとシリカ粒子とを分散機を用いて分散することにより分散物を得て、この分散物を高温(例えば、850~1000℃)にて還元処理することにより、チタンブラック粒子を主成分とし、SiとTiとを含有する被分散体を得ることができる。上記還元処理は、アンモニア等の還元性ガスの雰囲気下で行うこともできる。
酸化チタンとしては、TTO-51N(商品名:石原産業製)等が挙げられる。
シリカ粒子の市販品としては、AEROSIL(登録商標)90、130、150、200、255、300、380(商品名:エボニック製)等が挙げられる。
酸化チタンとシリカ粒子との分散は、分散剤を用いてもよい。分散剤としては、後述する分散剤として説明するものが挙げられる。
上記の分散は溶剤中で行ってもよい。溶剤としては、水、有機溶剤が挙げられる。後述する有機溶剤の欄で説明するものが挙げられる。
Si/Tiが、例えば、0.05以上等に調整されたチタンブラックは、例えば、特開2008-266045号公報の段落0005及び段落0016~0021に記載の方法により作製することができる。
【0032】
チタンブラック及びSi原子を含む被分散体中のSi原子とTi原子との含有比(Si/Ti)を好適な範囲(例えば0.05以上)に調整することで、この被分散体を含む組成物を用いて硬化膜を形成した際に、硬化膜の形成領域外における組成物由来の残渣物が低減される。なお、残渣物は、チタンブラック粒子、樹脂成分等の組成物に由来する成分を含むものである。
残渣物が低減される理由は未だ明確ではないが、上記のような被分散体は小粒径となる傾向があり(例えば、粒径が30nm以下)、更に、この被分散体のSi原子が含まれる成分が増すことにより、膜全体の下地との吸着性が低減され、これが、硬化膜の形成における未硬化の組成物(特に、チタンブラック)の現像除去性の向上に寄与すると推測している。
また、チタンブラックは、紫外光から赤外光までの広範囲にわたる波長領域の光に対する遮光性に優れることから、上記したチタンブラック及びSi原子を含む被分散体(好ましくはSi/Tiが質量換算で0.05以上であるもの)を用いて形成された硬化膜は優れた遮光性を発揮する。
なお、被分散体中のSi原子とTi原子との含有比(Si/Ti)は、例えば、特開2013-249417号公報の段落0033に記載の方法(1-1)又は方法(1-2)を用いて測定できる。
また、組成物を硬化して得られた硬化膜に含有される被分散体について、その被分散体中のSi原子とTi原子との含有比(Si/Ti)が0.05以上か否かを判断するには、特開2013-249417号公報の段落0035に記載の方法(2)を用いる。
【0033】
チタンブラック及びSi原子を含む被分散体において、チタンブラックは、上記したものを使用できる。
以下、被分散体にSi原子を導入する際に用いられる材料について述べる。被分散体にSi原子を導入する際には、シリカ等のSi含有物質を用いればよい。
用いうるシリカとしては、沈降シリカ、フュームドシリカ、コロイダルシリカ、合成シリカ等を挙げることができ、これらを適宜選択して使用すればよい。
更に、シリカ粒子の粒径が硬化膜を形成した際に膜厚よりも小さい粒径であると遮光性がより優れるため、シリカ粒子として微粒子タイプのシリカを用いることが好ましい。なお、微粒子タイプのシリカの例としては、例えば、特開2013-249417号公報の段落0039に記載のシリカが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
窒化ジルコニウム、酸窒化ジルコニウムを用いることも好ましい。窒化ジルコニウム、酸窒化ジルコニウムは無機化合物で被覆されていることが好ましい。無機化合物で被覆することでこの表面被覆により遮光顔料の遮光性を損なうことなく遮光顔料の光触媒活性を抑制し、遮光性組成物の劣化を防止し易くなる。無機化合物の具体例は二酸化チタン、ジルコニア、シリカ、アルミナ等があるが、シリカ、アルミナが好ましい。チタンブラックと窒化ジルコニウム、チタンブラックと酸窒化ジルコニウム、チタンブラックとシリカ被覆窒化ジルコニウム、チタンブラックとアルミナ被覆窒化ジルコニウムのように併用することも好ましい。
【0034】
更に、上述したように、単独では黒色以外の色を有する顔料を複数組み合わせて黒色顔料として使用してもよい。
このように単独では黒色以外の色を有する顔料は、無機顔料であっても有機顔料であってもよい。単独では黒色以外の色を有する顔料としては、例えば、R(レッド)、G(グリーン)、及び、B(ブルー)等の有彩色系の顔料(有彩色顔料)も使用できる。
【0035】
単独では黒色以外の色を有する無機顔料としては、特に制限されず、公知の無機顔料を使用できる。
上記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、鉛丹、酸化鉄赤、黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)ジルコングレー、プラセオジムイエロー、クロムチタンイエロー、クロムグリーン、ピーコック、ビクトリアグリーン、紺青(プルシアンブルーとは無関係)、バナジウムジルコニウム青、クロム錫ピンク、陶試紅、並びに、サーモンピンク等から選択できる。
上記無機顔料は表面修飾処理がなされていてもよい。例えば、シリコーン基とアルキル基を併せ持つ表面処理剤で表面修飾処理が施された無機顔料が挙げられ、「KTP-09」シリーズ(信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0036】
単独では黒色以外の色を有する有機顔料としては、例えば、下記有機顔料から選択される。
カラーインデックス(C.I.)ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等、
C.I.ピグメントオレンジ 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等、
C.I.ピグメントレッド 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279,294(キサンテン系、Organo Ultamarine,Bluish Red)等;
C.I.ピグメントグリーン 7,10,36,37,58,59等;
C.I.ピグメントバイオレット 1,19,23,27,32,37,42等;
C.I.ピグメントブルー 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,29,60,64,66,79,80,87(モノアゾ系),88(メチン/ポリメチン系)等;
【0037】
顔料は、後述する染料と併用してもよい。
色味を調整するため、及び、所望の波長領域の遮光性を高めるため、例えば、単独で黒色を発現する顔料、及び/又は、単独では黒色以外の色を有する顔料等に、赤色、緑色、黄色、オレンジ色、紫色、及び、ブルー等の有彩色顔料若しくは後述する染料を混ぜてもよい。
また、赤外線を吸収し、かつ、単独で黒色を発現する顔料に、赤色顔料若しくは染料、又は、紫色顔料若しくは染料を混合するのも好ましく、赤色顔料を混合するのがより好ましい。
更に、後述する赤外線吸収剤を加えてもよい。
【0038】
また、単独では黒色以外の色を有する顔料であって、赤外線を吸収する顔料として、タングステン化合物、及び、金属ホウ化物等も使用できる。中でも、赤外領域の波長における遮光性に優れる点からは、タングステン化合物が好ましい。タングステン化合物は、露光による硬化効率に関わるオキシム系重合開始剤の光吸収波長領域と、可視光領域の透光性に優れる。
【0039】
ハンドリング性を考慮すると、黒色顔料の平均一次粒子径は、0.01~0.1μmが好ましく、0.01~0.05μmがより好ましい。黒色顔料が複数種類の顔料の組み合わせからなる場合、黒色顔料を構成する顔料の1種以上が上記範囲内にあるのが好ましく、黒色顔料を構成する顔料の全種が上記範囲内にあるのがより好ましい。
【0040】
なお、顔料の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)を用いて測定できる。透過型電子顕微鏡としては、例えば、日立ハイテクノロジーズ社製の透過型電子顕微鏡HT7700を使用できる。
透過型電子顕微鏡を用いて得た粒子像の最大長(Dmax:粒子画像の輪郭上の2点における最大長さ)、及び最大長垂直長(DV-max:最大長に平行な2本の直線で画像を挟んだ時、2直線間を垂直に結ぶ最短の長さ)を測長し、その相乗平均値(Dmax×DV-max)1/2を粒子径とする。この方法で100個の粒子の粒子径を測定し、その算術平均値を平均粒子径として、顔料の平均一次粒子径とする。
【0041】
(黒色染料)
黒色染料としては、単独で黒色を発現する染料を使用できる。更に、上述の通り、単独では黒色以外の色を有する染料を複数組み合わせて黒色染料として使用してもよい。
このような着色染料としては、例えば、R(レッド)、G(グリーン)、及び、B(ブルー)等の有彩色系の染料(有彩色染料)の他、特開2014-42375の段落0027~0200に記載の着色剤も使用できる。
【0042】
また、染料としては、例えば、特開昭64-90403号公報、特開昭64-91102号公報、特開平1-94301号公報、特開平6-11614号公報、特登2592207号、米国特許4808501号明細書、米国特許5667920号明細書、米国特許505950号明細書、特開平5-333207号公報、特開平6-35183号公報、特開平6-51115号公報、及び、特開平6-194828号公報等に開示されている色素を使用できる。化学構造として区分すると、ピラゾールアゾ化合物、ピロメテン化合物、アニリノアゾ化合物、トリフェニルメタン化合物、アントラキノン化合物、ベンジリデン化合物、オキソノール化合物、ピラゾロトリアゾールアゾ化合物、ピリドンアゾ化合物、シアニン化合物、フェノチアジン化合物、又は、ピロロピラゾールアゾメチン化合物等を使用できる。また、染料としては色素多量体を用いてもよい。色素多量体としては、特開2011-213925号公報、及び、特開2013-041097号公報に記載されている化合物が挙げられる。また、分子内に重合性を有する重合性染料を用いてもよく、市販品としては、例えば、和光純薬工業社製RDWシリーズが挙げられる。
【0043】
(赤外線吸収剤)
組成物は、更に、単独では黒色以外の色を有する色材として、赤外線吸収剤を含有してもよい。
赤外線吸収剤は、赤外領域(好ましくは、波長650~1300nm)の波長領域に吸収を有する化合物を意味する。赤外線吸収剤としては、波長675~900nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物が好ましい。
このような分光特性を有する着色剤としては、例えば、ピロロピロール化合物、銅化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、イミニウム化合物、チオール錯体系化合物、遷移金属酸化物系化合物、スクアリリウム化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、ジチオール金属錯体系化合物、及び、クロコニウム化合物等が挙げられる。
フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、イミニウム化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、及び、クロコニウム化合物は、特開2010-111750号公報の段落0010~0081に開示の化合物を使用してもよく、この内容は本明細書に組み込まれる。シアニン化合物は、例えば、「機能性色素、大河原信/松岡賢/北尾悌次郎/平嶋恒亮・著、講談社サイエンティフィック」を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0044】
上記分光特性を有する着色剤として、特開平07-164729号公報の段落0004~0016に開示の化合物及び/又は特開2002-146254号公報の段落0027~0062に開示の化合物、特開2011-164583号公報の段落0034~0067に開示のCu及び/又はPを含む酸化物の結晶子からなり数平均凝集粒子径が5~200nmである近赤外線吸収粒子を使用することもできる。
【0045】
波長675~900nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物としては、シアニン化合物、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、及び、ナフタロシアニン化合物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
また、赤外線吸収剤は、25℃の水に1質量%以上溶解する化合物であるのが好ましく、25℃の水に10質量%以上溶解する化合物がより好ましい。このような化合物を用いることで、耐溶剤性が良化する。
ピロロピロール化合物は、特開2010-222557号公報の段落0049~0062を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。シアニン化合物及びスクアリリウム化合物は、国際公開2014/088063号公報の段落0022~0063、国際公開2014/030628号公報の段落0053~0118、特開2014-59550号公報の段落0028~0074、国際公開2012/169447号公報の段落0013~0091、特開2015-176046号公報の段落0019~0033、特開2014-63144号公報の段落0053~0099、特開2014-52431号公報の段落0085~0150、特開2014-44301号公報の段落0076~0124、特開2012-8532号公報の段落0045~0078、特開2015-172102号公報の段落0027~0067、特開2015-172004号公報の段落0029~0067、特開2015-40895号公報の段落0029~0085、特開2014-126642号公報の段落0022~0036、特開2014-148567号公報の段落0011~0017、特開2015-157893号公報の段落0010~0025、特開2014-095007号公報の段落0013~0026、特開2014-80487号公報の段落0013~0047、及び、特開2013-227403号公報の段落0007~0028等を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0046】
〔樹脂(特定樹脂)〕
本発明の樹脂は、特定樹脂を含有する。
組成物中における特定樹脂の含有量は、組成物の全固形分に対して、2.0~15.0質量%であり、形成される硬化膜の遮光性と低反射性がよりバランス良く優れる点から2.0~10.0質量%がより好ましい。
また、組成物が、特定樹脂として後述する主鎖型特定樹脂を含有する場合、主鎖型特定樹脂の含有量は、組成物の全固形分に対して、2.0~6.0質量%が更に好ましい。
組成物が、特定樹脂として後述する側鎖型特定樹脂を含有する場合、側鎖型特定樹脂の含有量は、組成物の全固形分に対して、3.0超10以下が更に好ましい。
2種以上の特定樹脂を使用する場合には、合計含有量が上記範囲内であるのが好ましい。
組成物中における、黒色着色剤に対する特定樹脂の含有量の質量比は0.02~0.9が好ましく、0.02~0.3がより好ましく、0.02~0.2が更に好ましく、0.02~0.1が特に好ましい。なお、上記含有量の質量比は、組成物中における、(特定樹脂の含有量)/(黒色着色剤の含有量)を表す。
【0047】
特定樹脂は、重合性基を含有する。重合性基としては、エチレン性不飽和基(エチレン性不飽和結合を含有する基であり、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、及び、スチリル基等)、及び、環状エーテル基(例えば、エポキシ基、及び、オキセタニル基等)等が挙げられるが、これらに制限されない。
中でも、ラジカル反応で重合制御が可能な点で、重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0048】
特定樹脂の数平均分子量は、100~15000である。なかでも、200~15000が好ましい。
特定樹脂の重量平均分子量は、500~40000が好ましい。
【0049】
特定樹脂は、一般式(1)で表される基を含有する。
*-(SiR1R2-O)na-* (1)
【0050】
一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基を表す。
R1が複数存在する場合、複数存在するR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R2が複数存在する場合、複数存在するR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
上記アルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、へキシル基、及び、オクチル基等が挙げられる。中でもメチル基が好ましい。
上記シクロアルキル基は、単環でも、多環でもよい。単環としては、炭素数3~8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、及び、シクロオクチル基等が挙げられる。多環としては、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネン基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、及び、アンドロスタニル基等が挙げられる。
上記アリール基は、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及び、アントリル基等が挙げられる。
【0051】
一般式(1)中、naは1~200の整数を表し、5~100が好ましく、5~70がより好ましい。
*は、結合位置を表す。
【0052】
特定樹脂中において一般式(1)で表される基が存在する形態について制限はなく、一般式(1)で表される基が特定樹脂における主鎖として存在してもよく、一般式(1)で表される基が特定樹脂における側鎖として存在してもよい。
なお、特定樹脂において最も長い鎖を主鎖とし、主鎖に結合している鎖を側鎖とする。
【0053】
<一般式(1)で表される基が主鎖として存在する特定樹脂(主鎖型特定樹脂)>
一般式(1)で表される基が主鎖として存在する特定樹脂(以下、「主鎖型特定樹脂」ともいう)においては、一般式(1)で表される基は、1つだけ存在していてもよく、2つ以上存在していてもよい。主鎖型特定樹脂において、一般式(1)で表される基が複数存在する場合、例えば、複数存在する一般式(1)で表される基の間に、一般式(1)で表される基以外の基が連結基として存在する。
主鎖型特定樹脂が含有する、一般式(1)で表される基の数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1が更に好ましい。
主鎖型特定樹脂は分岐鎖状でも直鎖状でもよく、直鎖状であるのが好ましい。
また、主鎖型特定樹脂はその少なくとも1つ(好ましくは2つ以上)の末端に重合性基(好ましくはエチレン性不飽和基)を含有する基を含有するのが好ましい。中でも、主鎖型特定樹脂が直鎖状で、その両末端に重合性基(好ましくはエチレン性不飽和基)を含有する基を含有するのが好ましい。
また、主鎖型特定樹脂の末端の基の1つ以上は、カルボン酸基、スルホン酸基、及び/又は、ホスホン酸基のような酸基を含有してもよい。主鎖型特定樹脂の末端の基の1つ以上は、酸基と重合性基(好ましくはエチレン性不飽和基)との両方を含有していてもよい。
主鎖型特定樹脂の重量平均分子量は、500~20000が好ましく、500~10000がより好ましく、600~10000が更に好ましい。
主鎖型特定樹脂の数平均分子量は、200~10000が好ましく、300~7500がより好ましく、350~7500が更に好ましい。
主鎖型特定樹脂の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、8以下が好ましく、4以下がより好ましい。分散度の下限は通常1以上である。
【0054】
主鎖型特定樹脂は、例えば、一般式(2)で表される化合物であるのが好ましい。
R3-(SiR1R2-O)nb-SiR1R2-R3 (2)
【0055】
一般式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基を表す。一般式(2)中のR1及びR2は、一般式(1)中のR1及びR2とそれぞれ同様である。
【0056】
一般式(2)中、R3は、エチレン性不飽和基を含有する基を表す。
複数存在するR3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
R3はエチレン性不飽和基を一部分に含んでいてもよく、R3がエチレン性不飽和基そのものであってもよい。
エチレン性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、及び、スチリル基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
R3の構造は、エチレン性不飽和基を含有すれば特に制限はないが、R3の炭素数は、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。R3の炭素数の下限は通常2以上である。
R3が有するエチレン性不飽和基の数は、1~5が好ましく、1~2がより好ましい。
少なくとも1つのR3が、ヘテロ原子(酸素原子、硫黄原子、及び/又は、窒素原子等)を含有していてもよく、例えば、(メタ)アクリロイル基が、酸素原子と共に(メタ)アクリロイルオキシ基を形成していてもよい。また、少なくとも1つのR3が、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、及び、チオエーテル結合うちの少なくとも1つを含有していていることが好ましく、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、及び、チオエーテル結合のうちの少なくとも1つを含有していることがより好ましい。
また、少なくとも1つのR3が、更に、カルボン酸基、スルホン酸基、及び/又は、ホスホン酸基のような酸基を含有していてもよく、カルボン酸基を含有することが好ましい。
主鎖型特定樹脂が酸価を有する場合、酸価は100mgKOH/g以下が好ましく、10~50mgKOH/gがより好ましい。この範囲であると、露光時に固定化されなかった主鎖型特定樹脂が現像時に硬化膜から除去されやすくなる。なお、酸価は、試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの質量[mg]であり、本明細書においては、単位をmgKOH/gと記載する。
また、主鎖型特定樹脂は、樹脂全質量に対するエチレン性不飽和基含有量が、0.001~10.0mmol/gであるのが好ましく、0.1~6.0mmol/gであるのがより好ましい。
【0057】
一般式(2)中、nbは、5~200の整数を表し、5~100が好ましく、5~70がより好ましい。
【0058】
<一般式(1)で表される基が側鎖として存在する特定樹脂(側鎖型特定樹脂)>
一般式(1)で表される基が側鎖として存在する特定樹脂(以下「側鎖型特定樹脂」ともいう)の重量平均分子量は、500~40000がより好ましく、500~20000がより好ましく、500~10000が更に好ましい。
側鎖型特定樹脂の数平均分子量は、500~15000が好ましく、500~8000がより好ましい。
側鎖型特定樹脂の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、8以下が好ましく、4以下がより好ましい。分散度の下限は通常1以上である。
【0059】
側鎖型特定樹脂は、例えば、一般式(3)で表される基を含有するのが好ましい。
*-(SiR1R2-O)nc-SiR1R2-R4 (3)
【0060】
一般式(3)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基を表す。一般式(3)中のR1及びR2は、一般式(1)中のR1及びR2とそれぞれ同様である。
【0061】
一般式(3)中、R4は、水素原子又は炭素数1~10の有機基を表す。R4が有機基である場合、ヘテロ原子(酸素原子、硫黄原子、及び/又は、窒素原子等)を含有していてもよい。中でも、R4は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
【0062】
一般式(3)中、ncは、1~200の整数を表し、2~100が好ましい。
【0063】
側鎖型特定樹脂は、アルカリ可溶性基等の酸基を含有する側鎖を更に含有するのが好ましい。これにより、露光時に硬化されなかった側鎖型特定樹脂が現像時に除去されやすくなる。なお、側鎖型特定樹脂は、2種以上の酸基を含有する側鎖を含有してもよい。
【0064】
側鎖型特定樹脂が含有する酸基としては、特に限定されないが、カルボン酸基、フェノール性水酸基、及び、スルホン酸基等が好ましい。
【0065】
側鎖型特定樹脂は、酸価が100mgKOH/g以下が好ましく、10~50mgKOH/gがより好ましい。この範囲であると、露光時に固定化されなかった側鎖型特定樹脂が現像時に硬化膜から除去されやすくなる。
【0066】
酸基を含有する側鎖は、重合反応によって直接形成しても、重合反応後の化学変換によって形成してもよい。
【0067】
側鎖型特定樹脂は、例えば、一般式(1)で表される基(好ましくは一般式(3)で表される基)を含有する単量体、反応性基を含有する単量体、必要に応じて、酸基を含有する単量体及び/又はその他の単量体を共重合させて得られる共重合体と、反応性基に対して結合し得る官能基と重合性基(好ましくはエチレン性不飽和基)とを含有する化合物とを反応させて合成できる。
【0068】
側鎖型特定樹脂の合成に供される一般式(1)で表される基を含有する単量体は、一般式(4)で表される単量体が好ましい。
CH2=CRs-COO-Z-(SiR1R2-O)nc-SiR1R2-R4 (4)
【0069】
一般式(4)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基を表す。R4は、水素原子又は炭素数1~10の有機基を表す。
一般式(4)中のR1、R2、及び、R4は、一般式(3)中のR1、R2、及び、R4とそれぞれ同様である。
一般式(4)中、Rsは、水素原子又はメチル基を表す。
一般式(4)中、Zは、単結合又は炭素数が1~6の2価の有機基を表す。Zは、炭素数1~6の2価の炭化水素基であるのが好ましく、例えば、-CH2-、-CH2CH2-、-CH(CH3)-、-CH2CH2CH2-、-C(CH3)2-、-CH(CH2CH3)-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH(CH2CH2CH3)-、-CH2(CH2)3CH2-、及び、-CH(CH2CH(CH3)2)-が挙げられる。
【0070】
反応性基を含有する単量体としては、特に限定されないが、例えば、水酸基を含有する単量体、エチレン性二重結合を含有する酸無水物、カルボン酸基を含有する単量体、及び、エポキシ基を含有する単量体が挙げられ、2種以上使用してもよい。なお、反応性基を含有する単量体は、一般式(1)で表される基を含有しないのが好ましい。
【0071】
水酸基を含有する単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、及び、N,N-ビス(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0072】
更に、水酸基を含有する単量体は、末端が水酸基であるポリオキシアルキレン基を含有してもよい。このような水酸基を含有する単量体としては、例えば、CH2=CHOCH2C6H10CH2O(CH2CH2O)kH、CH2=CHOC4H8O(CH2CH2O)kH、CH2=CHCOOCH2CH2O(CH2CH2O)kH、CH2=C(CH3)COOCH2CH2O(CH2CH2O)kH、CH2=CHCOOCH2CH2O(CH2CH2O)m(C3H6O)jH、CH2=C(CH3)COOC2H4O(CH2CH2O)m(C3H6O)jH(kは、1~100の整数であり、mは、0~100の整数であり、jは、1~100の整数であり、m+jは、1~100である。)等が挙げられる。なお、上記C6H10は、シクロヘキシレン基であり、C4H8は、n-ブチレン基であり、C3H6は、2-プロピレン基である。
【0073】
エチレン性二重結合を含有する酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物、cis-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、及び、2-ブテン-1-イルサクシニックアンハイドライド等が挙げられる。
【0074】
カルボン酸基を含有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、及び、これらの塩等が挙げられる。
【0075】
エポキシ基を含有する単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、及び、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート等が挙げられる。
【0076】
酸基を含有する単量体としては、例えば、カルボン酸基を含有する単量体、フェノール性水酸基を含有する単量体、及び、スルホン酸基を含有する単量体等が挙げられ、2種以上使用してもよい。なお、酸基を含有する単量体として、カルボン酸基を含有する単量体を用い、反応性基を含有する単量体としてもカルボン酸基を含有する単量体を用いるときは、最終的にエチレン性二重結合が導入されず、カルボン酸基として残るものを酸基を含有する単量体とみなす。
【0077】
フェノール性水酸基を含有する単量体としては、例えば、o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、及び、これらのベンゼン環の1個以上の水素原子が、メチル基、エチル基、n-ブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基等のアルコキシ基、ハロゲン原子、1個以上のハロゲン原子を含有するハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、及び/又は、アミド基等に置換された化合物等が挙げられる。
【0078】
スルホン酸基を含有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アリルオキシプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸2-スルホエチル、(メタ)アクリル酸2-スルホプロピル、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、及び、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0079】
その他の単量体としては、例えば、炭化水素系オレフィン類、ビニルエーテル類、イソプロペニルエーテル類、アリルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル化合物、クロロオレフィン類、及び、共役ジエン類等が挙げられ、硬化膜の耐熱性を考慮すると、(メタ)アクリル酸エステル類、又は(メタ)アクリルアミド類が好ましい。なお、これらの化合物は、カルボニル基、アルコキシ基等の官能基を含有していてもよい。
【0080】
共重合させる単量体の総質量に対する、一般式(1)で表される基を含有する単量体の質量の割合は、20~80質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。上記質量の範囲内であれば、硬化膜の低反射性と硬化膜と基板との密着性のバランスとが良好である。
【0081】
共重合させる単量体の総質量に対する反応性基を含有する単量体の質量の割合は、20~70質量%が好ましく、30~50質量%がより好ましい。この範囲であると、側鎖型特定樹脂の固定化及び現像性が良好となる。
【0082】
共重合させる単量体の総質量に対する酸基を含有する単量体の質量の割合は、2~20%が好ましく、4~12%がより好ましい。この範囲であると露光時に硬化されなかった側鎖型特定樹脂の現像時性が良好になる。
【0083】
共重合させる単量体の総質量に対するその他の単量体の質量の割合は、現像性が優れる点から、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0084】
一般式(1)で表される基を含有する側鎖と反応性基を含有する側鎖、必要に応じて、酸基を含有する側鎖を含有する共重合体は、一般式(1)で表される基を含有する単量体、反応性基を含有する単量体、必要に応じて、酸基を含有する単量体及び/又はその他の単量体を溶剤に溶解させて加熱し、重合開始剤を加えて共重合させて合成できる。なお、共重合させる際には、必要に応じて、連鎖移動剤を添加するのが好ましい。また、単量体、重合開始剤、溶剤、及び、連鎖移動剤を連続して添加してもよい。
【0085】
重合開始剤、溶剤及び連鎖移動剤としては、国際公開第2007/69703号の段落0053~0056に記載されたもの使用できる。
【0086】
反応性基に対する、反応性基と結合し得る官能基と重合性基(好ましくはエチレン性不飽和基)とを含有する化合物との組み合わせとして、例えば以下の組み合わせが挙げられる。
(1)水酸基に対し、エチレン性不飽和基を含有する酸無水物、
(2)水酸基に対し、イソシアネート基とエチレン性不飽和基を含有する化合物、
(3)水酸基に対し、塩化アシル基とエチレン性不飽和基を含有する化合物、
(4)酸無水物に対し、水酸基とエチレン性不飽和基を含有する化合物、
(5)カルボン酸基に対し、エポキシ基とエチレン性不飽和基を含有する化合物、
(6)エポキシ基に対し、カルボン酸基とエチレン性不飽和基を含有する化合物。
【0087】
イソシアネート基とエチレン性不飽和基を含有する化合物としては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、及び、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。中でも、エチレン性不飽和基を2個以上有する側鎖を含有する側鎖型特定樹脂は硬化膜の上面近傍に固定化されやすい点から、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートが好ましい。
塩化アシル基とエチレン性不飽和基を含有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルクロライド等が挙げられる。
エチレン性不飽和基を含有する酸無水物としては、例えば、前述の反応性基を含有する単量体で例示した化合物を使用できる。
水酸基とエチレン性不飽和基を含有する化合物としては、例えば、前述の水酸基を含有する単量体で例示した化合物を使用できる。
エポキシ基とエチレン性不飽和基を含有する化合物としては、例えば、前述のエポキシ基を含有する単量体で例示した化合物を使用できる。
カルボン酸基とエチレン性不飽和基を含有する化合物としては、例えば、前述のカルボン酸基を含有する単量体で例示した化合物を使用できる。
【0088】
なお、一般式(1)で表される基を含有する側鎖と反応性基を含有する側鎖、及び、必要に応じて、酸基を含有する側鎖を含有する共重合体と、反応性基に対して結合し得る官能基、及び、重合性基(好ましくはエチレン性不飽和基)を含有する化合物とを反応させる際には、上記共重合体の反応性基に対する上記化合物の官能基の当量比は、硬化膜の外観と低反射性とのバランスが優れる点から、0.5~2.0が好ましく、0.8~1.5がより好ましい。
【0089】
側鎖型特定樹脂は、一般式(1)で表される基を含有する側鎖、反応性基を含有する側鎖、必要に応じて、酸基を含有する側鎖を含有する共重合体と、反応性基に対して結合し得る官能基、及び、エチレン性不飽和基を含有する化合物とを溶剤に溶解させて反応させて合成できる。
【0090】
なお、上述のように側鎖型特定樹脂における酸基を含有する側鎖は、重合反応後の化学変換によっても形成できる。たとえば、一般式(1)で表される基を含有する側鎖、及び、反応性基を含有する側鎖を含有する共重合体と、反応性基に対して結合し得る官能基、及び、エチレン性不飽和基を含有する化合物とを反応させた後に、酸基を形成してもよい。具体的には、上述の(6)の組み合わせを採用した場合において、エポキシ基及びカルボン酸基と反応で生じたヒドロキシル基と、多塩基酸無水物(無水マレイン酸等)とを反応させ、側鎖型特定樹脂中にカルボン酸基を導入してもよい。
【0091】
側鎖型特定樹脂の樹脂全質量に対する重合性基(好ましくはエチレン性不飽和基)の含有量は制限されない。
中でも、側鎖型特定樹脂は、樹脂全質量に対するエチレン性不飽和基含有量が、0.001~10.0mmol/gであるのが好ましく、0.1~2mmol/gであるのがより好ましい。
【0092】
本明細書において、エチレン性不飽和基含有量を「C=C価」という場合がある。
本明細書において、エチレン性不飽和基含有量(C=C価)は、以下の方法により測定される値を意図する。なお、エチレン性不飽和基を含有する樹脂を合成する場合、原料の仕込み量から計算して、測定に代えてよい。
また、組成物が複数種類の樹脂を含有しており、かつ、各樹脂のC=C価が明らかである場合、各樹脂の配合比から、組成物が含有する樹脂全質量としてのC=C価を計算して求めてもよい。
【0093】
樹脂のエチレン性不飽和基含有量を測定する方法としては、エチレン性不飽和基が(メタ)アクリロイル基である場合、以下の方法により測定する。
まず、遠心分離法によって組成物中の固体成分(黒色顔料等)を沈殿させて残った液体成分を分取する。更に、得られた液体成分から、GPC法で重量平均分子量が所定の範囲である成分を分取し、これを測定対象の樹脂とする。
次に、測定対象となる樹脂0.25mgをTHF(tetrahydrofuran)50mLに溶解させ、更にメタノール15mLを添加し、溶液を作製する。
作製した溶液に、4N 水酸化ナトリウム水溶液を10mL加え、混合液を得る。次に、上記混合液を液温40℃で2時間撹拌する。更に、混合液に4N メタンスルホン酸水溶液を10.2mL添加し、撹拌する。更に、混合液に脱塩水を5mL添加し、続けてメタノール2mLを添加し、測定溶液を調製する。
測定溶液中の(メタ)アクリル酸の含有量を、HPLC(high performance liquid chromatography)法(絶対検量線法)により測定し、エチレン性不飽和基含有量を計算する。
HPLC測定条件カラム:Phenomenex製Synergi 4μ Polar-RP 80A(4.6mm×250mm)
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
検出器波長:210nm
溶離液:THF(テトラヒドロフラン、HPLC用)55/バッファー水 45*バッファー水…0.2%-リン酸、0.2%-トリエチルアミン水溶液
注入量:5μL
【0094】
樹脂のエチレン性不飽和基含有量を測定する方法としては、エチレン性不飽和基が(メタ)アクリロイル基以外、又は、(メタ)アクリロイル基と、(メタ)アクリロイル基以外の基との併用である場合、上述の方法で分取した測定対象の樹脂について臭素化を測定する方法が挙げられる。臭素価は、JIS K2605:1996に準拠して測定する。
なお、ここで、エチレン性不飽和基含有量は、上記臭素価で得られた測定する樹脂100gに対して付加した臭素(Br2)のグラム数(gBr2/100g)から、樹脂1g当たりの付加した臭素(Br2)のモル数に変換した値である。
【0095】
〔重合性化合物〕
本発明の組成物は、重合性化合物を含有するのが好ましい。
本明細書において重合性化合物とは、後述する重合開始剤の作用を受けて重合する化合物を意図し、後述の、分散剤及びアルカリ可溶性樹脂とは異なる成分を意図する。
また、重合性化合物は、後述のエポキシ基を含有する化合物とは異なる成分を意図する。
【0096】
組成物中における重合性化合物の含有量としては特に制限されないが、組成物の全固形分に対して、1~35質量%が好ましく、4~25質量%がより好ましく、10~20質量%が更に好ましい。重合性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。2種以上の重合性化合物を使用する場合には、合計含有量が上記範囲内であるのが好ましい。
組成物中における、重合性化合物に対する特定樹脂の含有量の質量比は0.1~50が好ましく、0.1~20がより好ましく、0.1~2が更に好ましく、0.2~2が特に好ましく、0.2~1が最も好ましい。上記含有量の質量比は、組成物中における、(特定樹脂の含有量)/(重合性化合物の含有量)を表す。
重合性化合物は低分子化合物が好ましい。ここで言う低分子化合物とは分子量2000以下の化合物が好ましい。
重合性化合物は、一般式(1)で表される繰り返し単位を含有しないのが好ましく、(ポリ)シロキサン構造を含有しないのがより好ましい。
【0097】
重合性化合物は、エチレン性不飽和基を含有する化合物が好ましい。
つまり本発明の組成物は、エチレン性不飽和基を含有する低分子化合物を、重合性化合物として含有するのが好ましい。
重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を1個以上含有する化合物が好ましく、2個以上含有する化合物がより好ましく、3個以上含有する化合物が更に好ましく、5個以上含有する化合物が特に好ましい。上限は、例えば、15個以下である。エチレン性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、及び、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0098】
重合性化合物としては、例えば、特開2008-260927号公報の段落0050、及び、特開2015-68893号公報の段落0040に記載されている化合物を使用でき、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0099】
重合性化合物は、例えば、モノマー、プレポリマー、オリゴマー、及び、これらの混合物、並びに、これらの多量体等の化学的形態のいずれであってもよい。
重合性化合物は、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であるのが好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であるのがより好ましい。
【0100】
重合性化合物は、エチレン性不飽和基を1個以上含有する、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。例えば、特開2013-29760号公報の段落0227、特開2008-292970号公報の段落0254~0257に記載の化合物を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0101】
重合性化合物は、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬社製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬社製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬社製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬社製、A-DPH-12E;新中村化学社製)、及び、これらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を介している構造(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。また、NKエステルA-TMMT(ペンタエリスリトールテトラアクリレート、新中村化学社製)、KAYARAD RP-1040、KAYARAD DPEA-12LT、KAYARAD DPHA LT、KAYARAD RP-3060、KAYARAD DPEA-12(日本化薬社製)及び、ビスコート#802(大阪有機工業社製)等を使用してもよい。
以下に好ましい重合性化合物の態様を示す。
【0102】
重合性化合物は、カルボン酸基、スルホン酸基、及び、リン酸基等の酸基を有していてもよい。酸基を含有する重合性化合物としては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが好ましく、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応の水酸基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた重合性化合物がより好ましく、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールである化合物が更に好ましい。市販品としては、例えば、東亞合成社製の、アロニックスTO-2349、M-305、M-510、及び、M-520等が挙げられる。
【0103】
酸基を含有する重合性化合物の酸価としては、0.1~40mgKOH/gが好ましく、5~30mgKOH/gがより好ましい。重合性化合物の酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、現像溶解特性が良好であり、40mgKOH/g以下であれば、製造及び/又は取扱い上、有利である。更には、光重合性能が良好で、硬化性に優れる。
【0104】
重合性化合物は、カプロラクトン構造を含有する化合物も好ましい態様である。
カプロラクトン構造を含有する化合物としては、分子内にカプロラクトン構造を含有する限り特に限定されないが、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール、又は、トリメチロールメラミン等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸及びε-カプロラクトンとをエステル化して得られる、ε-カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。中でも下記式(Z-1)で表されるカプロラクトン構造を含有する化合物が好ましい。
【0105】
【0106】
式(Z-1)中、6個のRは全てが下記式(Z-2)で表される基であるか、又は6個のRのうち1~5個が下記式(Z-2)で表される基であり、残余が下記式(Z-3)で表される基である。
【0107】
【0108】
式(Z-2)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、mは1又は2の数を示し、「*」は結合手を示す。
【0109】
【0110】
式(Z-3)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、「*」は結合手を示す。
【0111】
カプロラクトン構造を含有する重合性化合物は、例えば、日本化薬からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA-20(上記式(Z-1)~(Z-3)においてm=1、式(Z-2)で表される基の数=2、R1が全て水素原子である化合物)、DPCA-30(同式、m=1、式(Z-2)で表される基の数=3、R1が全て水素原子である化合物)、DPCA-60(同式、m=1、式(Z-2)で表される基の数=6、R1が全て水素原子である化合物)、及び、DPCA-120(同式においてm=2、式(Z-2)で表される基の数=6、R1が全て水素原子である化合物)等が挙げられる。
【0112】
重合性化合物は、下記式(Z-6)で表される化合物も使用できる。
【0113】
【0114】
式(Z-6)中、Eは、それぞれ独立に、-((CH2)yCH2O)-、又は((CH2)yCH(CH3)O)-を表し、yは、それぞれ独立に0~10の整数を表し、Xは、それぞれ独立に、(メタ)アクリロイル基、水素原子、又はカルボン酸基を表す。
式(Z-6)中、pはそれぞれ独立に0~10の整数を表し、qは0~3の整数を表す。
式(Z-6)中、(メタ)アクリロイル基の合計が(3+2t)個又は(4+2t)個なのが好ましい。
式(Z-6)中、各pの合計が0~(40+20t)であるのが好ましい。
pは、0~6の整数が好ましく、0~4の整数がより好ましい。
各pの合計は、0~(16+8t)が好ましく、0~(12+6t)がより好ましい。
【0115】
また、式(Z-6)中の-((CH2)yCH2O)-又は((CH2)yCH(CH3)O)-は、酸素原子側の末端がXに結合する形態が好ましい。
【0116】
式(Z-6)で表される化合物は1種単独で使用してもよいし、2種以上使用してもよい。特に、t=1である場合において、6個のX全てがアクリロイル基である化合物と、6個のXのうち、少なくとも1個が水素原子である化合物との混合物である態様が好ましい。このような構成をとることで、現像性をより向上できる。
また、tの値がそれぞれ異なる式(Z-6)で表される化合物の混合物を使用するのも好ましい。このような混合物としては、t=1の化合物、t=2の化合物、t=3の化合物のそれぞれの含有量が、順に、それぞれ、5~35質量%、30~75質量%、3~35質量%であるのが好ましい。
【0117】
また、式(Z-6)で表される化合物の重合性化合物中における全含有量としては、20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
式(Z-6)で表される化合物の中でも、ペンタエリスリトール誘導体、ジペンタエリスリトール誘導体、トリペンタエリスリトール誘導体、及び/又は、テトラペンタエリスリトール誘導体がより好ましい。
【0118】
また、重合性化合物は、カルド骨格を含有してもよい。
カルド骨格を含有する重合性化合物としては、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を含有する重合性化合物が好ましい。
カルド骨格を含有する重合性化合物としては、限定されないが、例えば、オンコートEXシリーズ(長瀬産業社製)及びオグソール(大阪ガスケミカル社製)等が挙げられる。
重合性化合物は、イソシアヌル酸骨格を中心核として含有する化合物も好ましい。このような重合性化合物の例としては、例えば、NKエステルA-9300(新中村化学社製)が挙げられる。
重合性化合物のエチレン性不飽和基の含有量(重合性化合物中のエチレン性不飽和基の数を、重合性化合物の分子量(g/mol)で除した値を意図する)は5.0mmol/g以上であるのが好ましい。上限は特に制限されないが、一般に、20.0mmol/g以下である。
なお、組成物中が、複数種類の重合性化合物を含有し、それぞれの二重結合当量が同一ではない場合は、全重合性化合物中における各重合性化合物の質量比と、各重合性化合物の二重結合当量との積を、それぞれ合計した値が、上記範囲内にあるのが好ましい。
【0119】
〔光重合開始剤〕
上記組成物は光重合開始剤を含有する。
光重合開始剤としては、重合性化合物の重合を開始できれば特に制限されず、公知の光重合開始剤を使用できる。光重合開始剤としては、例えば、紫外線領域から可視光領域に対して感光性を有する光重合開始剤が好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、重合性化合物の種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
光重合開始剤は、低反射性がより優れる硬化膜を得られる点から、光重合開始剤をアセトニトリルに0.001質量%溶解させた溶液の、光路長10mmでの波長340nmにおける吸光度が0.45以上になるのが好ましい。
なお、本明細書において、上記光重合開始剤の溶液の吸光度は、紫外可視近赤外分光光度計U-4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定する。
【0120】
組成物中における光重合開始剤の含有量としては特に制限されないが、組成物の全固形分に対して、0.5~20質量%が好ましく、1.0~10質量%がより好ましく、1.5~8質量%が更に好ましい。光重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。2種以上の光重合開始剤を使用する場合には、合計含有量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0121】
光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を含有する化合物、オキサジアゾール骨格を含有する化合物、等)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、アミノアセトフェノン化合物、及び、ヒドロキシアセトフェノン等が挙げられる。
光重合開始剤の具体例としては、例えば、特開2013-29760号公報の段落0265~0268を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0122】
光重合開始剤としては、より具体的には、例えば、特開平10-291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、及び、特許第4225898号公報に記載のアシルホスフィン系開始剤も使用できる。
ヒドロキシアセトフェノン化合物としては、例えば、IRGACURE-184、DAROCUR-1173、IRGACURE-500、IRGACURE-2959、及び、IRGACURE-127(商品名:いずれもBASF社製)を使用できる。
アミノアセトフェノン化合物としては、例えば、市販品であるIRGACURE-907、IRGACURE-369、及び、IRGACURE-379EG(商品名:いずれもBASF社製)を使用できる。アミノアセトフェノン化合物としては、波長365nm又は波長405nm等の長波光源に吸収波長がマッチングされた特開2009-191179公報に記載の化合物も使用できる。
アシルホスフィン化合物としては、市販品であるIRGACURE-819、及び、IRGACURE-TPO(商品名:いずれもBASF社製)を使用できる。
【0123】
(オキシム化合物)
光重合開始剤として、オキシムエステル系重合開始剤(オキシム化合物)がより好ましい。特にオキシム化合物は高感度で重合効率が高く、組成物中における黒色着色剤の含有量を高く設計しやすいため好ましい。
オキシム化合物の具体例としては、特開2001-233842号公報記載の化合物、特開2000-80068号公報記載の化合物、又は、特開2006-342166号公報記載の化合物を使用できる。
オキシム化合物としては、例えば、3-ベンゾイロキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイロキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び、2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン等が挙げられる。
また、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.1653-1660、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.156-162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年)pp.202-232、特開2000-66385号公報記載の化合物、特開2000-80068号公報、特表2004-534797号公報、及び、特開2006-342166号公報の各公報に記載の化合物等も挙げられる。
市販品ではIRGACURE-OXE01(BASF社製)、IRGACURE-OXE02(BASF社製)、IRGACURE-OXE03(BASF社製)、又は、IRGACURE-OXE04(BASF社製)も好ましい。また、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI-831、アデカアークルズNCI-930(ADEKA社製)、又は、N-1919(カルバゾール・オキシムエステル骨格含有光開始剤(ADEKA社製)も使用できる。
【0124】
また上記記載以外のオキシム化合物として、カルバゾールN位にオキシムが連結した特表2009-519904号公報に記載の化合物;ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許第7626957号公報に記載の化合物;色素部位にニトロ基が導入された特開2010-15025号公報及び米国特許公開2009-292039号記載の化合物;国際公開第2009-131189号に記載のケトオキシム化合物;及び、トリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含有する米国特許7556910号公報に記載の化合物;405nmに吸収極大を有しg線光源に対して良好な感度を有する特開2009-221114号公報記載の化合物;等を用いてもよい。
例えば、特開2013-29760号公報の段落0274~0275を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
具体的には、オキシム化合物としては、下記式(OX-1)で表される化合物が好ましい。なお、オキシム化合物のN-O結合が(E)体のオキシム化合物であっても、(Z)体のオキシム化合物であっても、(E)体と(Z)体との混合物であってもよい。
【0125】
【0126】
式(OX-1)中、R及びBはそれぞれ独立に1価の置換基を表し、Aは2価の有機基を表し、Arはアリール基を表す。
式(OX-1)中、Rで表される1価の置換基としては、1価の非金属原子団であるのが好ましい。
1価の非金属原子団としては、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環基、アルキルチオカルボニル基、及び、アリールチオカルボニル基等が挙げられる。また、これらの基は、1以上の置換基を有していてもよい。また、前述した置換基は、更に他の置換基で置換されていてもよい。
置換基としてはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、アルキル基、及び、アリール基等が挙げられる。
式(OX-1)中、Bで表される1価の置換基としては、アリール基、複素環基、アリールカルボニル基、又は、複素環カルボニル基が好ましく、アリール基、又は、複素環基が好ましい。これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。
式(OX-1)中、Aで表される2価の有機基としては、炭素数1~12のアルキレン基、シクロアルキレン基、又は、アルキニレン基が好ましい。これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。
【0127】
光重合開始剤として、フッ素原子を含有するオキシム化合物も使用できる。フッ素原子を含有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報記載の化合物;特表2014-500852号公報記載の化合物24、36~40;及び、特開2013-164471号公報記載の化合物(C-3);等が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0128】
光重合開始剤として、下記一般式(1)~(4)で表される化合物も使用できる。
【0129】
【0130】
【0131】
式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20の脂環式炭化水素基、炭素数6~30のアリール基、又は、炭素数7~30のアリールアルキル基を表し、R1及びR2がフェニル基の場合、フェニル基同士が結合してフルオレン基を形成してもよく、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基又は炭素数4~20の複素環基を表し、Xは、直接結合又はカルボニル基を示す。
【0132】
式(2)において、R1、R2、R3、及び、R4は、式(1)におけるR1、R2、R3、及び、R4と同義であり、R5は、-R6、-OR6、-SR6、-COR6、-CONR6R6、-NR6COR6、-OCOR6、-COOR6、-SCOR6、-OCSR6、-COSR6、-CSOR6、-CN、ハロゲン原子、又は、水酸基を表し、R6は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基、又は、炭素数4~20の複素環基を表し、Xは、直接結合又はカルボニル基を表し、aは0~4の整数を表す。
【0133】
式(3)において、R1は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20の脂環式炭化水素基、炭素数6~30のアリール基、又は、炭素数7~30のアリールアルキル基を表し、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基、又は、炭素数4~20の複素環基を表し、Xは、直接結合又はカルボニル基を示す。
【0134】
式(4)において、R1、R3、及び、R4は、式(3)におけるR1、R3、及び、R4と同義であり、R5は、-R6、-OR6、-SR6、-COR6、-CONR6R6、-NR6COR6、-OCOR6、-COOR6、-SCOR6、-OCSR6、-COSR6、-CSOR6、-CN、ハロゲン原子、又は、水酸基を表し、R6は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基、又は、炭素数4~20の複素環基を表し、Xは、直接結合又はカルボニル基を表し、aは0~4の整数を表す。
【0135】
上記式(1)及び(2)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロヘキシル基、又は、フェニル基が好ましい。R3はメチル基、エチル基、フェニル基、トリル基、又は、キシリル基が好ましい。
R4は炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基が好ましい。R5はメチル基、エチル基、フェニル基、トリル基、又は、ナフチル基が好ましい。Xは直接結合が好ましい。
また、上記式(3)及び(4)において、R1は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロヘキシル基、又は、フェニル基が好ましい。R3はメチル基、エチル基、フェニル基、トリル基、又は、キシリル基が好ましい。R4は炭素数1~6のアルキル基、又は、フェニル基が好ましい。R5はメチル基、エチル基、フェニル基、トリル基、又は、ナフチル基が好ましい。Xは直接結合が好ましい。
式(1)及び式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、特開2014-137466号公報の段落0076~0079に記載された化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0136】
上記組成物に好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示す。以下に示すオキシム化合物の中でも、一般式(C-13)で表されるオキシム化合物がより好ましい。
また、オキシム化合物としては、国際公開第2015-036910号のTable1に記載の化合物も使用でき、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0137】
【0138】
オキシム化合物は、350~500nmの波長領域に極大吸収波長を有するのが好ましく、360~480nmの波長領域に極大吸収波長を有するのがより好ましく、365nm及び405nmの波長の吸光度が高いのが更に好ましい。
オキシム化合物の365nm又は405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、1,000~300,000であるのが好ましく、2,000~300,000であるのがより好ましく、5,000~200,000であるのが更に好ましい。
化合物のモル吸光係数は、公知の方法を使用できるが、例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spctrophotometer)にて、酢酸エチルを用い、0.01g/Lの濃度で測定するのが好ましい。
光重合開始剤は、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0139】
また、光重合開始剤としては、特開第2008-260927号公報の段落0052、特開第201097210号公報の段落0033~0037、特開第2015-68893号公報の段落0044に記載の化合物も使用でき、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0140】
〔その他の樹脂〕
本発明の組成物は、上述の特定樹脂以外の、その他の樹脂を含有してもよい。
その他の樹脂は、一般式(1)で表される繰り返し単位を含有しないのが好ましく、(ポリ)シロキサン構造を含有しないのがより好ましい。
その他の樹脂としては例えば、分散剤及びアルカリ可溶性樹脂等が挙げられる。
組成物中におけるその他の樹脂の含有量としては特に制限されないが、組成物の全固形分に対して、3~60質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、15~35質量%が更に好ましい。その他の樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。例えば、その他の樹脂として後述の分散剤と後述のアルカリ可溶性樹脂とを使用してもよい。2種以上のその他の樹脂を使用する場合には、合計含有量が上記範囲内であるのが好ましい。
その他の樹脂は、組成物中に溶解している物質であって分子量2000超であるのが好ましい。なお、その他の樹脂の分子量が多分散である場合、重量平均分子量が2000超であるのが好ましい。
【0141】
<分散剤>
組成物は分散剤を含有するのが好ましい。なお、本明細書において、分散剤とは、後述するアルカリ可溶性樹脂とは異なる化合物を意図する。
組成物中における分散剤の含有量としては特に制限されないが、組成物の全固形分に対して3~40質量%が好ましく、5~35質量%がより好ましく、10~30質量%が更に好ましい。
分散剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。2種以上の分散剤を使用する場合には、合計含有量が上記範囲内であるのが好ましい。
また、組成物における、顔料の含有量に対する、分散剤(好ましくはグラフト型高分子)の含有量の質量比(分散剤の含有量/顔料の含有量)は、0.05~1.00が好ましく、0.05~0.35がより好ましく、0.20~0.35が更に好ましい。
【0142】
分散剤としては、例えば、公知の分散剤を適宜選択して使用できる。中でも、高分子化合物が好ましい。
分散剤としては、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、及び、顔料誘導体等を挙げられる。
高分子化合物は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、及び、ブロック型高分子に分類できる。
【0143】
・高分子化合物
高分子化合物は、黒色顔料及び所望により併用するその他の顔料(以下黒色顔料及びその他の顔料を総称して、単に「顔料」ともいう)等の被分散体の表面に吸着し、被分散体の再凝集を防止するように作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を含有する、末端変性型高分子、グラフト型(高分子鎖を含有する)高分子、又は、ブロック型高分子が好ましい。
【0144】
上記高分子化合物は硬化性基を含有してもよい。
硬化性基としては、例えば、エチレン性不飽和基(例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、及び、スチリル基等)、及び、環状エーテル基(例えば、エポキシ基、オキセタニル基等)等が挙げられるが、これらに制限されない。
中でも、ラジカル反応で重合制御が可能な点で、硬化性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0145】
硬化性基を含有する樹脂(その他の樹脂)は、ポリエステル構造、及び、ポリエーテル構造からなる群から選択される少なくとも1種を含有するのが好ましい。この場合、主鎖にポリエステル構造、及び/又は、ポリエーテル構造を含有していてもよいし、後述するように、上記樹脂がグラフト鎖を含有する構造単位を含有する場合には、上記高分子鎖がポリエステル構造、及び/又は、ポリエーテル構造を含有していてもよい。
上記樹脂(その他の樹脂)としては、上記高分子鎖がポリエステル構造を含有するのがより好ましい。
【0146】
高分子化合物は、グラフト鎖を含有する構造単位を含有するのが好ましい。なお、本明細書において、「構造単位」とは「繰り返し単位」と同義である。
このようなグラフト鎖を含有する構造単位を含有する高分子化合物は、グラフト鎖によって溶剤との親和性を有するために、顔料等の分散性、及び、経時後の分散安定性(経時安定性)に優れる。また、グラフト鎖の存在により、グラフト鎖を含有する構造単位を含有する高分子化合物は重合性化合物又はその他の併用可能な樹脂(特定樹脂等)等との親和性を有する。結果として、アルカリ現像で残渣を生じにくくなる。
グラフト鎖が長くなると立体反発効果が高くなり顔料等の分散性は向上する。一方、グラフト鎖が長すぎると顔料等への吸着力が低下して、顔料等の分散性は低下する傾向となる。このため、グラフト鎖は、水素原子を除いた原子数が40~10000であるのが好ましく、水素原子を除いた原子数が50~2000であるのがより好ましく、水素原子を除いた原子数が60~500であるのが更に好ましい。
ここで、グラフト鎖とは、共重合体の主鎖の根元(主鎖から枝分かれしている基において主鎖に結合する原子)から、主鎖から枝分かれしている基の末端までを示す。
【0147】
グラフト鎖は、ポリマー構造を含有するのが好ましく、このようなポリマー構造としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート構造(例えば、ポリ(メタ)アクリル構造)、ポリエステル構造、ポリウレタン構造、ポリウレア構造、ポリアミド構造、及び、ポリエーテル構造等を挙げられる。
グラフト鎖と溶剤との相互作用性を向上させ、それにより顔料等の分散性を高めるために、グラフト鎖は、ポリエステル構造、ポリエーテル構造、及び、ポリ(メタ)アクリレート構造からなる群から選ばれた少なくとも1種を含有するグラフト鎖であるのが好ましく、ポリエステル構造及びポリエーテル構造の少なくともいずれかを含有するグラフト鎖であるのがより好ましい。
【0148】
このようなグラフト鎖を含有するマクロモノマー(ポリマー構造を有し、共重合体の主鎖に結合してグラフト鎖を構成するモノマー)としては、特に限定されないが、反応性二重結合性基を含有するマクロモノマーを好適に使用できる。
【0149】
高分子化合物が含有するグラフト鎖を含有する構造単位に対応し、高分子化合物の合成に好適に用いられる市販のマクロモノマーとしては、AA-6(商品名、東亞合成社製)、AA-10(商品名、東亞合成社製)、AB-6(商品名、東亞合成社製)、AS-6(商品名、東亞合成社製)、AN-6(商品名、東亞合成社製)、AW-6(商品名、東亞合成社製)、AA-714(商品名、東亞合成社製)、AY-707(商品名、東亞合成社製)、AY-714(商品名、東亞合成社製)、AK-5(商品名、東亞合成社製)、AK-30(商品名、東亞合成社製)、AK-32(商品名、東亞合成社製)、ブレンマーPP-100(商品名、日油社製)、ブレンマーPP-500(商品名、日油社製)、ブレンマーPP-800(商品名、日油社製)、ブレンマーPP-1000(商品名、日油社製)、ブレンマー55-PET-800(商品名、日油社製)、ブレンマーPME-4000(商品名、日油社製)、ブレンマーPSE-400(商品名、日油社製)、ブレンマーPSE-1300(商品名、日油社製)、又は、ブレンマー43PAPE-600B(商品名、日油社製)等が用いられる。この中でも、AA-6(商品名、東亞合成社製)、AA-10(商品名、東亞合成社製)、AB-6(商品名、東亞合成社製)、AS-6(商品名、東亞合成社製)、AN-6(商品名、東亞合成社製)、又は、ブレンマーPME-4000(商品名、日油社製)が好ましい。
【0150】
上記分散剤は、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、及び、環状又は鎖状のポリエステルからなる群より選択される少なくとも1種の構造を含有するのが好ましく、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、及び、鎖状のポリエステルからなる群より選択される少なくとも1種の構造を含有するのがより好ましく、ポリアクリル酸メチル構造、ポリメタクリル酸メチル構造、ポリカプロラクトン構造、及び、ポリバレロラクトン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含有するのが更に好ましい。分散剤は、一の分散剤中に上記構造を単独で含有する分散剤であってもよいし、一の分散剤中にこれらの構造を複数含有する分散剤であってもよい。
ここで、ポリカプロラクトン構造とは、ε-カプロラクトンを開環した構造を繰り返し単位として含有する構造をいう。ポリバレロラクトン構造とは、δ-バレロラクトンを開環した構造を繰り返し単位として含有する構造をいう。
ポリカプロラクトン構造を含有する分散剤の具体例としては、下記式(1)及び下記式(2)におけるj及びkが5である分散剤が挙げられる。また、ポリバレロラクトン構造を含有する分散剤の具体例としては、下記式(1)及び下記式(2)におけるj及びkが4である分散剤が挙げられる。
ポリアクリル酸メチル構造を含有する分散剤の具体例としては、下記式(4)におけるX5が水素原子であり、R4がメチル基である分散剤が挙げられる。また、ポリメタクリル酸メチル構造を含有する分散剤の具体例としては、下記式(4)におけるX5がメチル基であり、R4がメチル基である分散剤が挙げられる。
【0151】
・グラフト鎖を含有する構造単位
高分子化合物は、グラフト鎖を含有する構造単位として、下記式(1)~式(4)のいずれかで表される構造単位を含有するのが好ましく、下記式(1A)、下記式(2A)、下記式(3A)、下記式(3B)、及び、下記(4)のいずれかで表される構造単位を含有するのがより好ましい。
【0152】
【0153】
式(1)~(4)において、W1、W2、W3、及び、W4はそれぞれ独立に酸素原子又はNHを表す。W1、W2、W3、及び、W4は酸素原子であるのが好ましい。
式(1)~(4)において、X1、X2、X3、X4、及び、X5は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。X1、X2、X3、X4、及び、X5としては、合成上の制約の観点からは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数(炭素原子数)1~12のアルキル基であるのが好ましく、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であるのがより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0154】
式(1)~(4)において、Y1、Y2、Y3、及び、Y4は、それぞれ独立に、2価の連結基を表し、連結基は特に構造上制約されない。Y1、Y2、Y3、及び、Y4で表される2価の連結基として、具体的には、下記の(Y-1)~(Y-21)の連結基等が例として挙げられる。下記に示した構造において、A、Bはそれぞれ、式(1)~(4)における左末端基、右末端基との結合部位を意味する。下記に示した構造のうち、合成の簡便性から、(Y-2)又は(Y-13)であるのがより好ましい。
【0155】
【0156】
式(1)~(4)において、Z1、Z2、Z3、及び、Z4は、それぞれ独立に1価の有機基を表す。有機基の構造は、特に限定されないが、具体的には、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基、及び、アミノ基等が挙げられる。これらの中でも、Z1、Z2、Z3、及び、Z4で表される有機基としては、特に分散性向上の観点から、立体反発効果を含有する基が好ましく、それぞれ独立に炭素数5~24のアルキル基又はアルコキシ基がより好ましく、その中でも、特にそれぞれ独立に炭素数5~24の分岐アルキル基、炭素数5~24の環状アルキル基、又は、炭素数5~24のアルコキシ基が更に好ましい。なお、アルコキシ基中に含まれるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び、環状のいずれでもよい。
【0157】
式(1)~(4)において、n、m、p、及び、qは、それぞれ独立に、1~500の整数である。
また、式(1)及び(2)において、j及びkは、それぞれ独立に、2~8の整数を表す。式(1)及び(2)におけるj及びkは、組成物の経時安定性及び現像性の観点から、4~6の整数が好ましく、5がより好ましい。
また、式(1)及び(2)において、n、及び、mは、10以上の整数が好ましく、20以上の整数がより好ましい。また、分散剤が、ポリカプロラクトン構造、及び、ポリバレロラクトン構造を含有する場合、ポリカプロラクトン構造の繰り返し数と、ポリバレロラクトンの繰返し数の和としては、10以上の整数が好ましく、20以上の整数がより好ましい。
【0158】
式(3)中、R3は分岐鎖状又は直鎖状のアルキレン基を表し、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基がより好ましい。pが2~500のとき、複数存在するR3は互いに同じであっても異なっていてもよい。
式(4)中、R4は水素原子又は1価の有機基を表し、この1価の有機基としては特に構造上限定はされない。R4としては、水素原子、アルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基が好ましく、水素原子又はアルキル基がより好ましい。R4がアルキル基である場合、アルキル基としては、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐鎖状アルキル基、又は、炭素数5~20の環状アルキル基が好ましく、炭素数1~20の直鎖状アルキル基がより好ましく、炭素数1~6の直鎖状アルキル基が更に好ましい。式(4)において、qが2~500のとき、グラフト共重合体中に複数存在するX5及びR4は互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0159】
また、高分子化合物は、2種以上の構造が異なる、グラフト鎖を含有する構造単位を含有できる。即ち、高分子化合物の分子中に、互いに構造の異なる式(1)~(4)で示される構造単位を含んでいてもよく、また、式(1)~(4)においてn、m、p、及び、qがそれぞれ2以上の整数を表す場合、式(1)及び(2)においては、側鎖中にj及びkが互いに異なる構造を含んでいてもよく、式(3)及び(4)においては、分子内に複数存在するR3、R4、及び、X5は互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0160】
式(1)で表される構造単位としては、組成物の経時安定性及び現像性の観点から、下記式(1A)で表される構造単位であるのがより好ましい。
また、式(2)で表される構造単位としては、組成物の経時安定性及び現像性の観点から、下記式(2A)で表される構造単位であるのがより好ましい。
【0161】
【0162】
式(1A)中、X1、Y1、Z1、及び、nは、式(1)におけるX1、Y1、Z1、及び、nと同義であり、好ましい範囲も同様である。式(2A)中、X2、Y2、Z2、及び、mは、式(2)におけるX2、Y2、Z2、及び、mと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0163】
また、式(3)で表される構造単位としては、組成物の経時安定性及び現像性の観点から、下記式(3A)又は式(3B)で表される構造単位であるのがより好ましい。
【0164】
【0165】
式(3A)又は(3B)中、X3、Y3、Z3、及び、pは、式(3)におけるX3、Y3、Z3、及び、pと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0166】
高分子化合物は、グラフト鎖を含有する構造単位として、式(1A)で表される構造単位を含有するのがより好ましい。
【0167】
高分子化合物において、グラフト鎖を含有する構造単位(例えば、上記式(1)~(4)で表される構造単位)は、質量換算で、高分子化合物の総質量に対し2~90質量%の範囲で含まれるのが好ましく、5~30質量%の範囲で含まれるのがより好ましい。グラフト鎖を含有する構造単位がこの範囲内で含まれると、顔料の分散性が高く、硬化膜を形成する際の現像性が良好である。
【0168】
・疎水性構造単位
また、高分子化合物は、グラフト鎖を含有する構造単位とは異なる(すなわち、グラフト鎖を含有する構造単位には相当しない)疎水性構造単位を含有するのが好ましい。ただし、本明細書において、疎水性構造単位は、酸基(例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等)を有さない構造単位である。
【0169】
疎水性構造単位は、ClogP値が1.2以上の化合物(モノマー)に由来する(対応する)構造単位であるのが好ましく、ClogP値が1.2~8の化合物に由来する構造単位であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果をより確実に発現できる。
【0170】
ClogP値は、Daylight Chemical Information System, Inc.から入手できるプログラム“CLOGP”で計算された値である。このプログラムは、Hansch, Leoのフラグメントアプローチ(下記文献参照)により算出される“計算logP”の値を提供する。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、化学構造を部分構造(フラグメント)に分割し、そのフラグメントに対して割り当てられたlogP寄与分を合計して化合物のlogP値を推算している。その詳細は以下の文献に記載されている。本明細書では、プログラムCLOGP v4.82により計算したClogP値を用いる。
A. J. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C. Hansch, P. G. Sammnens, J. B. Taylor and C. A. Ramsden, Eds., p.295, Pergamon Press, 1990 C. Hansch & A. J. Leo. SUbstituent Constants For Correlation Analysis in Chemistry and Biology. John Wiley & Sons. A.J. Leo. Calculating logPoct from structure. Chem. Rev., 93, 1281-1306, 1993.
【0171】
logPは、分配係数P(Partition Coefficient)の常用対数を意味し、ある有機化合物が油(一般的には1-オクタノール)と水の2相系の平衡でどのように分配されるかを定量的な数値として表す物性値であり、以下の式で示される。
logP=log(Coil/Cwater)
式中、Coilは油相中の化合物のモル濃度を、Cwaterは水相中の化合物のモル濃度を表す。
logPの値が0をはさんでプラスに大きくなると油溶性が増し、マイナスで絶対値が大きくなると水溶性が増し、有機化合物の水溶性と負の相関があり、有機化合物の親疎水性を見積るパラメータとして広く利用されている。
【0172】
高分子化合物は、疎水性構造単位として、下記式(i)~(iii)で表される単量体に由来の構造単位から選択された1種以上の構造単位を含有するのが好ましい。
【0173】
【0174】
上記式(i)~(iii)中、R1、R2、及び、R3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、及び、臭素原子等)、又は、炭素数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、及び、プロピル基等)を表す。
R1、R2、及び、R3は、水素原子又は炭素数が1~3のアルキル基であるのが好ましく、水素原子又はメチル基であるのがより好ましい。R2及びR3は、水素原子であるのが更に好ましい。
Xは、酸素原子(-O-)又はイミノ基(-NH-)を表し、酸素原子であるのが好ましい。
【0175】
Lは、単結合又は2価の連結基である。2価の連結基としては、2価の脂肪族基(例えば、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(例えば、アリーレン基、置換アリーレン基)、2価の複素環基、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、イミノ基(-NH-)、置換イミノ基(-NR31-、ここでR31は脂肪族基、芳香族基又は複素環基)、カルボニル基(-CO-)、及び、これらの組合せ等が挙げられる。
【0176】
2価の脂肪族基は、環状構造又は分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましい。脂肪族基は不飽和脂肪族基であっても飽和脂肪族基であってもよいが、飽和脂肪族基であるのが好ましい。また、脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、芳香族基、及び、複素環基等が挙げられる。
【0177】
2価の芳香族基の炭素数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10が更に好ましい。また、芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、及び、複素環基等が挙げられる。
【0178】
2価の複素環基は、複素環として5員環又は6員環を含有するのが好ましい。複素環に他の複素環、脂肪族環、又は、芳香族環が縮合していてもよい。また、複素環基は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N-R32、ここでR32は脂肪族基、芳香族基、又は、複素環基)、脂肪族基、芳香族基、及び、複素環基が挙げられる。
【0179】
Lは、単結合、アルキレン基又はオキシアルキレン構造を含有する2価の連結基であるのが好ましい。オキシアルキレン構造は、オキシエチレン構造又はオキシプロピレン構造であるのがより好ましい。また、Lは、オキシアルキレン構造を2以上繰り返して含有するポリオキシアルキレン構造を含んでいてもよい。ポリオキシアルキレン構造としては、ポリオキシエチレン構造又はポリオキシプロピレン構造が好ましい。ポリオキシエチレン構造は、-(OCH2CH2)n-で表され、nは、2以上の整数が好ましく、2~10の整数であるのがより好ましい。
【0180】
Zとしては、脂肪族基(例えば、アルキル基、置換アルキル基、不飽和アルキル基、置換不飽和アルキル基、)、芳香族基(例えば、アリール基、置換アリール基、アリーレン基、置換アリーレン基)、複素環基、及び、これらの組み合わせが挙げられる。これらの基には、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、イミノ基(-NH-)、置換イミノ基(-NR31-、ここでR31は脂肪族基、芳香族基又は複素環基)、又は、カルボニル基(-CO-)が含まれていてもよい。
【0181】
脂肪族基は、環状構造又は分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましい。脂肪族基には、更に環集合炭化水素基、架橋環式炭化水素基が含まれ、環集合炭化水素基の例としては、ビシクロヘキシル基、パーヒドロナフタレニル基、ビフェニル基、及び、4-シクロヘキシルフェニル基等が含まれる。架橋環式炭化水素環として、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナン、ビシクロオクタン環(ビシクロ[2.2.2]オクタン環、及び、ビシクロ[3.2.1]オクタン環等)等の2環式炭化水素環、ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、及び、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン環等の3環式炭化水素環、並びに、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、及び、パーヒドロ-1,4-メタノ-5,8-メタノナフタレン環等の4環式炭化水素環等が挙げられる。また、架橋環式炭化水素環には、縮合環式炭化水素環、例えば、パーヒドロナフタレン(デカリン)、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロアセナフテン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロインデン、及び、パーヒドロフェナレン環等の5~8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環も含まれる。
脂肪族基は不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。また、脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、芳香族基及び複素環基が挙げられる。ただし、脂肪族基は、置換基として酸基を有さない。
【0182】
芳香族基の炭素数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10が更に好ましい。また、芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基及び複素環基が挙げられる。ただし、芳香族基は、置換基として酸基を有さない。
【0183】
複素環基は、複素環として5員環又は6員環を含有するのが好ましい。複素環に他の複素環、脂肪族環又は芳香族環が縮合していてもよい。また、複素環基は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N-R32、ここでR32は脂肪族基、芳香族基又は複素環基)、脂肪族基、芳香族基、及び、複素環基が挙げられる。ただし、複素環基は、置換基として酸基を有さない。
【0184】
上記式(iii)中、R4、R5、及び、R6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、炭素数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、Z、又は、L-Zを表す。ここでL及びZは、上記における基と同義である。R4、R5、及び、R6としては、水素原子、又は、炭素数が1~3のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0185】
上記式(i)で表される単量体として、R1、R2、及び、R3が水素原子、又は、メチル基であって、Lが単結合又はアルキレン基若しくはオキシアルキレン構造を含有する2価の連結基であって、Xが酸素原子又はイミノ基であって、Zが脂肪族基、複素環基、又は、芳香族基である化合物が好ましい。
また、上記式(ii)で表される単量体として、R1が水素原子又はメチル基であって、Lがアルキレン基であって、Zが脂肪族基、複素環基、又は、芳香族基である化合物が好ましい。また、上記式(iii)で表される単量体として、R4、R5、及び、R6が水素原子又はメチル基であって、Zが脂肪族基、複素環基、又は、芳香族基である化合物が好ましい。
【0186】
式(i)~(iii)で表される代表的な化合物の例としては、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、及び、スチレン類等から選ばれるラジカル重合性化合物が挙げられる。
なお、式(i)~(iii)で表される代表的な化合物の例としては、特開2013-249417号公報の段落0089~0093に記載の化合物を参照でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0187】
高分子化合物において、疎水性構造単位は、質量換算で、高分子化合物の総質量に対し10~90%の範囲で含まれるのが好ましく、20~80%の範囲で含まれるのがより好ましい。含有量が上記範囲において十分なパターン形成が得られる。
【0188】
・顔料等と相互作用を形成しうる官能基
高分子化合物は、顔料等(例えば、黒色顔料)と相互作用を形成しうる官能基を導入できる。ここで、高分子化合物は、顔料等と相互作用を形成しうる官能基を含有する構造単位を更に含有するのが好ましい。
この顔料等と相互作用を形成しうる官能基としては、例えば、酸基、塩基性基、配位性基、及び、反応性を有する官能基等が挙げられる。
高分子化合物が、酸基、塩基性基、配位性基、又は、反応性を有する官能基を含有する場合、それぞれ、酸基を含有する構造単位、塩基性基を含有する構造単位、配位性基を含有する構造単位、又は、反応性を有する構造単位を含有するのが好ましい。
特に、高分子化合物が、更に、酸基として、カルボン酸基等のアルカリ可溶性基を含有すれば、高分子化合物に、アルカリ現像によるパターン形成のための現像性を付与できる。
すなわち、高分子化合物にアルカリ可溶性基を導入すれば、上記組成物は、顔料等の分散に寄与する分散剤としての高分子化合物がアルカリ可溶性を含有することになる。このような高分子化合物を含有する組成物は、露光して形成される硬化膜の遮光性に優れ、かつ、未露光部のアルカリ現像性が向上される。
また、高分子化合物が酸基を含有する構造単位を含有すれば、高分子化合物が溶剤となじみやすくなり、塗布性も向上する傾向となる。
これは、酸基を含有する構造単位における酸基が顔料等と相互作用しやすく、高分子化合物が顔料等を安定的に分散すると共に、顔料等を分散する高分子化合物の粘度が低くなっており、高分子化合物自体も安定的に分散されやすいためであると推測される。
【0189】
ただし、酸基としてのアルカリ可溶性基を含有する構造単位は、上記のグラフト鎖を含有する構造単位と同一の構造単位であっても、異なる構造単位であってもよいが、酸基としてのアルカリ可溶性基を含有する構造単位は、上記の疎水性構造単位とは異なる構造単位である(すなわち、上記の疎水性構造単位には相当しない)。
【0190】
顔料等と相互作用を形成しうる官能基である酸基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及び、フェノール性水酸基等があり、カルボン酸基、スルホン酸基、及び、リン酸基のうち少なくとも1種であるのが好ましく、カルボン酸基がより好ましい。カルボン酸基は、顔料等への吸着力が良好で、かつ、分散性が高い。
すなわち、高分子化合物は、カルボン酸基、スルホン酸基、及び、リン酸基のうち少なくとも1種を含有する構造単位を更に含有するのが好ましい。
【0191】
高分子化合物は、酸基を含有する構造単位を1種又は2種以上有してもよい。
高分子化合物は、酸基を含有する構造単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、酸基を含有する構造単位の含有量は、質量換算で、高分子化合物の総質量に対して、5~80質量%であるのが好ましく、アルカリ現像による画像強度のダメージ抑制という観点から、10~60質量%がより好ましい。
【0192】
顔料等と相互作用を形成しうる官能基である塩基性基としては、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、N原子を含有するヘテロ環、及び、アミド基等があり、好ましい塩基性基は、顔料等への吸着力が良好で、かつ、分散性が高い点で、第3級アミノ基である。高分子化合物は、これらの塩基性基を1種又は2種以上、含有できる。
高分子化合物は、塩基性基を含有する構造単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、塩基性基を含有する構造単位の含有量は、質量換算で、高分子化合物の総質量に対して、0.01~50質量%が好ましく、現像性阻害抑制という観点から、0.01~30質量%がより好ましい。
【0193】
顔料等と相互作用を形成しうる官能基である配位性基、及び、反応性を有する官能基としては、例えば、アセチルアセトキシ基、トリアルコキシシリル基、イソシアネート基、酸無水物、及び、酸塩化物等が挙げられる。好ましい官能基は、顔料等への吸着力が良好で、顔料等の分散性が高い点で、アセチルアセトキシ基である。高分子化合物は、これらの基を1種又は2種以上有してもよい。
高分子化合物は、配位性基を含有する構造単位、又は、反応性を有する官能基を含有する構造単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、これらの構造単位の含有量は、質量換算で、高分子化合物の総質量に対して、10~80質量%が好ましく、現像性阻害抑制という観点から、20~60質量%がより好ましい。
【0194】
上記高分子化合物が、グラフト鎖以外に、顔料等と相互作用を形成しうる官能基を含有する場合、上記の各種の顔料等と相互作用を形成しうる官能基を含有していればよく、これらの官能基がどのように導入されているかは特に限定はされないが、高分子化合物は、下記式(iv)~(vi)で表される単量体に由来の構造単位から選択された1種以上の構造単位を含有するのが好ましい。
【0195】
【0196】
式(iv)~(vi)中、R11、R12、及び、R13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、又は炭素数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)を表す。
式(iv)~(vi)中、R11、R12、及び、R13は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数が1~3のアルキル基であるのが好ましく、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であるのがより好ましい。一般式(iv)中、R12及びR13は、それぞれ水素原子であるのが更に好ましい。
【0197】
式(iv)中のX1は、酸素原子(-O-)又はイミノ基(-NH-)を表し、酸素原子であるのが好ましい。
また、式(v)中のYは、メチン基又は窒素原子を表す。
【0198】
また、式(iv)~(v)中のL1は、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基の定義は、上述した式(i)中のLで表される2価の連結基の定義と同じである。
【0199】
L1は、単結合、アルキレン基又はオキシアルキレン構造を含有する2価の連結基であるのが好ましい。オキシアルキレン構造は、オキシエチレン構造又はオキシプロピレン構造であるのがより好ましい。また、L1は、オキシアルキレン構造を2以上繰り返して含有するポリオキシアルキレン構造を含んでいてもよい。ポリオキシアルキレン構造としては、ポリオキシエチレン構造又はポリオキシプロピレン構造が好ましい。ポリオキシエチレン構造は、-(OCH2CH2)n-で表され、nは、2以上の整数が好ましく、2~10の整数であるのがより好ましい。
【0200】
式(iv)~(vi)中、Z1は、グラフト鎖以外に顔料等と相互作用を形成しうる官能基を表し、カルボン酸基、又は、第3級アミノ基であるのが好ましく、カルボン酸基であるのがより好ましい。
【0201】
式(vi)中、R14、R15、及び、R16は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、及び、臭素原子等)、炭素数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、及び、プロピル基等)、-Z1、又はL1-Z1を表す。ここでL1及びZ1は、上記におけるL1及びZ1と同義であり、好ましい例も同様である。R14、R15、及び、R16としては、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数が1~3のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0202】
式(iv)で表される単量体として、R11、R12、及び、R13がそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であって、L1がアルキレン基又はオキシアルキレン構造を含有する2価の連結基であって、X1が酸素原子又はイミノ基であって、Z1がカルボン酸基である化合物が好ましい。
また、式(v)で表される単量体として、R11が水素原子又はメチル基であって、L1がアルキレン基であって、Z1がカルボン酸基であって、Yがメチン基である化合物が好ましい。
更に、式(vi)で表される単量体として、R14、R15、及び、R16がそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であって、L1が単結合又はアルキレン基であって、Z1がカルボン酸基である化合物が好ましい。
【0203】
以下に、式(iv)~(vi)で表される単量体(化合物)の代表的な例を示す。
単量体の例としては、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、分子内に付加重合性二重結合及び水酸基を含有する化合物(例えば、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)とコハク酸無水物との反応物、分子内に付加重合性二重結合及び水酸基を含有する化合物とフタル酸無水物との反応物、分子内に付加重合性二重結合及び水酸基を含有する化合物とテトラヒドロキシフタル酸無水物との反応物、分子内に付加重合性二重結合及び水酸基を含有する化合物と無水トリメリット酸との反応物、分子内に付加重合性二重結合及び水酸基を含有する化合物とピロメリット酸無水物との反応物、アクリル酸、アクリル酸ダイマー、アクリル酸オリゴマー、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、4-ビニル安息香酸、ビニルフェノール、及び、4-ヒドロキシフェニルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0204】
顔料等と相互作用を形成しうる官能基を含有する構造単位の含有量は、顔料等との相互作用、経時安定性、及び、現像液への浸透性の観点から、高分子化合物の全質量に対して、0.05~90質量%が好ましく、1.0~80質量%がより好ましく、10~70質量%が更に好ましい。
【0205】
・その他の構造単位
更に、高分子化合物は、画像強度等の諸性能を向上する目的で、本発明の効果を損なわない限りにおいて、グラフト鎖を含有する構造単位、疎水性構造単位、及び、顔料等と相互作用を形成しうる官能基を含有する構造単位とは異なる、種々の機能を有する他の構造単位(例えば、後述する溶剤との親和性を有する官能基等を含有する構造単位)を更に有していてもよい。
このような、他の構造単位としては、例えば、アクリロニトリル類、及び、メタクリロニトリル類等から選ばれるラジカル重合性化合物に由来の構造単位が挙げられる。
高分子化合物は、これらの他の構造単位を1種又は2種以上使用でき、その含有量は、質量換算で、高分子化合物の総質量に対して、0~80質量%が好ましく、10~60質量%がより好ましい。含有量が上記範囲において、十分なパターン形成性が維持される。
【0206】
・高分子化合物の物性
高分子化合物の酸価は、0~250mgKOH/gが好ましく、10~200mgKOH/gがより好ましく、30~180mgKOH/gが更に好ましく、70~120mgKOH/gの範囲が特に好ましい。
高分子化合物の酸価が160mgKOH/g以下であれば、硬化膜を形成する際の現像時におけるパターン剥離がより効果的に抑えられる。また、高分子化合物の酸価が10mgKOH/g以上であればアルカリ現像性がより良好となる。また、高分子化合物の酸価が20mgKOH/g以上であれば、顔料等の沈降をより抑制でき、粗大粒子数をより少なくでき、組成物の経時安定性をより向上できる。
【0207】
本明細書において酸価は、例えば、化合物中における酸基の平均含有量から算出できる。また、樹脂(その他の樹脂等)の構成成分である酸基を含有する構造単位の含有量を変化させれば所望の酸価を有する樹脂を得られる。
【0208】
高分子化合物の重量平均分子量は、4,000~300,000であるのが好ましく、5,000~200,000であるのがより好ましく、6,000~100,000であるのが更に好ましく、10,000~50,000であるのが特に好ましい。
高分子化合物は、公知の方法に基づいて合成できる。
【0209】
高分子化合物の具体例としては、楠本化成社製「DA-7301」、BYKChemie社製「Disperbyk-101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110(酸基を含有する共重合体)、111(リン酸系分散剤)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、167、170、190(高分子共重合体)」、「BYK-P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)」、EFKA社製「EFKA4047、4050~4010~4165(ポリウレタン系)、EFKA4330~4340(ブロック共重合体)、4400~4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)、6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821、PB822、PB880、PB881」、共栄社化学社製「フローレンTG-710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成社製「ディスパロンKS-860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA-703-50、DA-705、DA-725」、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN-B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL-18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、日本ルーブリゾール製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、12000、17000、20000、27000(末端部に機能部を含有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト共重合体)」、日光ケミカルズ社製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)、MYS-IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」、川研ファインケミカル製 ヒノアクトT-8000E等、信越化学工業製、オルガノシロキサンポリマーKP-341、裕商製「W001:カチオン系界面活性剤」、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、「W004、W005、W017」等のアニオン系界面活性剤、森下産業製「EFKA-46、EFKA-47、EFKA-47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450」、サンノプコ製「ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100」等の高分子分散剤、ADEKA製「アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P-123」、及び、三洋化成製「イオネット(商品名)S-20」等が挙げられる。また、アクリベースFFS-6752、及び、アクリベースFFS-187も使用できる。
【0210】
また、酸基及び塩基性基を含有する両性樹脂を使用するのも好ましい。両性樹脂は、酸価が5mgKOH/g以上で、かつ、アミン価が5mgKOH/g以上である樹脂が好ましい。
両性樹脂の市販品としては、例えば、ビックケミー社製のDISPERBYK-130、DISPERBYK-140、DISPERBYK-142、DISPERBYK-145、DISPERBYK-180、DISPERBYK-187、DISPERBYK-191、DISPERBYK-2001、DISPERBYK-2010、DISPERBYK-2012、DISPERBYK-2025、BYK-9076、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPB821、アジスパーPB822、及び、アジスパーPB881等が挙げられる。
これらの高分子化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0211】
なお、高分子化合物の具体例の例としては、特開2013-249417号公報の段落0127~0129に記載の高分子化合物を参照でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0212】
また、分散剤としては、上記の高分子化合物以外に、特開2010-106268号公報の段落0037~0115(対応するUS2011/0124824の段落0075~0133欄)のグラフト共重合体が使用でき、これらの内容は援用でき、本明細書に組み込まれる。
また、上記以外にも、特開2011-153283号公報の段落0028~0084(対応するUS2011/0279759の段落0075~0133欄)の酸基が連結基を介して結合してなる側鎖構造を含有する構成成分を含有する高分子化合物が使用でき、これらの内容は援用でき、本明細書に組み込まれる。
【0213】
また、分散剤としては、特開2016-109763号公報の段落0033~0049に記載された樹脂も使用でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0214】
<アルカリ可溶性樹脂>
組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含有してもよい。本明細書において、アルカリ可溶性樹脂とは、アルカリ可溶性を促進する基(アルカリ可溶性基。例えばカルボン酸基等の酸基)を含有する樹脂を意図し、既に説明した分散剤とは異なる樹脂を意図する。
組成物中におけるアルカリ可溶性樹脂の含有量としては特に制限されないが、組成物の全固形分に対して、1~30質量%が好ましく、2~20質量%がより好ましく、5~15質量%が更に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂は1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。2種以上のアルカリ可溶性樹脂を使用する場合には、合計含有量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0215】
アルカリ可溶性樹脂の酸価としては、特に制限されないが、一般に、30~500mgKOH/gが好ましく、50~200mgKOH/g以上がより好ましい。
【0216】
アルカリ可溶性樹脂としては、分子中に少なくとも1個のアルカリ可溶性基を含有する樹脂が挙げられ、例えば、ポリヒドロキシスチレン樹脂、特定樹脂以外のポリシロキサン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、(メタ)アクリル/(メタ)アクリルアミド共重合樹脂、エポキシ系樹脂、及び、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0217】
アルカリ可溶性樹脂の具体例としては、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物の共重合体が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては特に制限されないが、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、及び、ビニル酢酸等のモノカルボン酸類;イタコン酸、マレイン酸、及び、フマル酸等のジカルボン酸、又は、その酸無水物;並びに、フタル酸モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)等の多価カルボン酸モノエステル類;等が挙げられる。
【0218】
共重合可能なエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル等が挙げられる。また、特開2010-97210号公報の段落0027、及び、特開2015-68893号公報の段落0036~0037に記載の化合物も使用でき、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0219】
また、共重合可能なエチレン性不飽和化合物であって、側鎖にエチレン性不飽和基を含有する化合物を組み合わせて用いてもよい。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリル酸基が好ましい。側鎖にエチレン性不飽和基を含有するアクリル樹脂は、例えば、カルボン酸基を含有するアクリル樹脂のカルボン酸基に、グリシジル基又は脂環式エポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物を付加反応させて得られる。
【0220】
アルカリ可溶性樹脂としては、硬化性基を含有するアルカリ可溶性樹脂も好ましい。
上記硬化性基としては、上述の高分子化合物が含有してもよい硬化性基が同様に挙げられ、好ましい範囲も同様である。
硬化性基を含有するアルカリ可溶性樹脂としては、硬化性基を側鎖に有するアルカリ可溶性樹脂等が好ましい。硬化性基を含有するアルカリ可溶性樹脂としては、ダイヤナールNRシリーズ(三菱レイヨン社製)、Photomer6173(COOH含有 polyurethane acrylic oligomer.Diamond Shamrock Co.,Ltd.製)、ビスコートR-264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業社製)、サイクロマーPシリーズ(例えば、ACA230AA)、プラクセル CF200シリーズ(いずれもダイセル社製)、Ebecryl3800(ダイセル・オルネクス社製)、及び、アクリキュアRD-F8(日本触媒社製)等が挙げられる。
【0221】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、特開昭59-44615号公報、特公昭54-34327号公報、特公昭58-12577号公報、特公昭54-25957号公報、特開昭54-92723号公報、特開昭59-53836号公報、及び、特開昭59-71048号公報に記載されている側鎖にカルボン酸基を含有するラジカル重合体;欧州特許第993966号、欧州特許第1204000号、及び、特開2001-318463号公報等の各公報に記載されているアルカリ可溶性基を含有するアセタール変性ポリビニルアルコール系バインダー樹脂;ポリビニルピロリドン;ポリエチレンオキサイド;アルコール可溶性ナイロン、及び、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパンとエピクロロヒドリンとの反応物であるポリエーテル等;並びに、国際公開第2008/123097号に記載のポリイミド樹脂;等を使用できる。
【0222】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、特開2016-75845号公報の段落0225~0245に記載の化合物も使用でき、上記内容は本明細書に組み込まれる。
【0223】
アルカリ可溶性樹脂としては、〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体、及び、〔アリル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体は、膜強度、感度、及び、現像性のバランスに優れており、好適である。
上記その他の付加重合性ビニルモノマーには、1種単独でも2種以上でもよい。
上記共重合体は硬化性基(好ましくは(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和基)を有するのも好ましい。例えば、上記その他の付加重合性ビニルモノマーとして硬化性基を有するモノマーを使用して共重合体に硬化性基が導入されていてもよい。また、共重合体中の(メタ)アクリル酸に由来する単位及び/又は上記その他の付加重合性ビニルモノマーに由来する単位の1種以上の、一部又は全部に、硬化性基(好ましくは(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和基)が導入されていてもよい。
上記その他の付加重合性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、スチレン系単量体(ヒドロキシスチレン等)、及び、エーテルダイマーが挙げられる。
上記エーテルダイマーは、例えば、下記一般式(ED1)で表される化合物、及び、下記一般式(ED2)で表される化合物が挙げられる。
【0224】
【0225】
一般式(ED1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【0226】
【0227】
一般式(ED2)中、Rは、水素原子又は炭素数1~30の有機基を表す。一般式(ED2)の具体例としては、特開2010-168539号公報の記載を参酌できる。
【0228】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013-29760号公報の段落0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0229】
アルカリ可溶性樹脂としては、ポリイミド前駆体も使用できる。ポリイミド前駆体は、酸無水物基を含有する化合物とジアミン化合物とを40~100℃下において付加重合反応して得られる樹脂を意図する。
ポリイミド前駆体としては、例えば、式(1)で表される繰り返し単位を含有する樹脂が挙げられる。ポリイミド前駆体の構造としては、例えば、下記式(2)で示されるアミック酸構造と、アミック酸構造が一部イミド閉環してなる下記式(3)、及び、全てイミド閉環した下記式(4)で示されるイミド構造を含有するポリイミド前駆体が挙げられる。
なお、本明細書において、アミック酸構造を有するポリイミド前駆体をポリアミック酸という場合がある。
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
上記式(1)~(4)において、R1は炭素数2~22の4価の有機基を表し、R2は炭素数1~22の2価の有機基を表し、nは1又は2を表す。
【0235】
上記ポリイミド前駆体の具体例としては、例えば、特開2008-106250号公報の段落0011~0031に記載の化合物、特開2016-122101号公報の段落0022~0039に記載の化合物、及び、特開2016-68401号公報の段落0061~0092に記載の化合物等が挙げられ、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0236】
アルカリ可溶性樹脂は、組成物を用いて得られるパターン状の硬化膜のパターン形状がより優れる点で、ポリイミド樹脂、及び、ポリイミド前駆体からなる群から選択される少なくとも1種を含有するのも好ましい。
アルカリ可溶性基を含有するポリイミド樹脂としては、特に制限されず、公知のアルカリ可溶性基を含有するポリイミド樹脂を使用できる。上記ポリイミド樹脂としては、例えば、特開2014-137523号公報の段落0050に記載された樹脂、特開2015-187676号公報の段落0058に記載された樹脂、及び、特開2014-106326号公報の段落0012~0013に記載された樹脂等が挙げられ、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0237】
(エチレン性不飽和基を含有する樹脂)
得られる硬化膜の断面形状の矩形性がより優れる点から、本発明の組成物は、特定樹脂以外でも、エチレン性不飽和基を含有するその他の樹脂を含有してもよい。エチレン性不飽和基を含有するその他の樹脂は、分散剤であってもよくアルカリ可溶性樹脂であってもよい。また、分散剤又はアルカリ可溶性樹脂以外の樹脂であってもよい。
組成物中のエチレン性不飽和基を含有するその他の樹脂の含有量の下限は、組成物が含有するその他の樹脂の全質量に対して、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、65質量%以上が更に好ましく、85質量%以上が特に好ましい。
組成物中のエチレン性不飽和基を含有するその他の樹脂の含有量の上限は、組成物が含有するその他の樹脂の全質量に対して、100質量%以下が好ましい。
エチレン性不飽和基を含有するその他の樹脂は1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよく、2種以上を使用する場合は、その合計含有量が、上記範囲内であるのが好ましい。
なお、エチレン性不飽和基を含有するその他の樹脂とは、1分子の中にエチレン性不飽和基を1個以上含有するその他の樹脂をいう。
【0238】
エチレン性不飽和基を含有するその他の樹脂の含有量は原料の仕込み量から計算してもよい。
【0239】
また、その他の樹脂全質量に対する、エチレン性不飽和基の含有量としては、特に制限されないが、0.001~5.00mmol/gが好ましく、0.10~3.00mmol/gがより好ましく、0.26~2.50mmol/gが更に好ましい。エチレン性不飽和基含有量が、0.10~3.00mmol/gの範囲内であると、組成物を用いて得られる硬化膜の断面形状の矩形性がより優れる。
なお、上記その他の樹脂全質量とは、組成物に含まれるその他の樹脂の合計質量を意図し、例えば、エチレン性不飽和基を含有するその他の樹脂とエチレン性不飽和基を含有しないその他の樹脂とを組成物が含有する場合、両者の合計質量が上記その他の樹脂の合計質量に該当する。
したがって、上記エチレン性不飽和基の含有量は、その他の樹脂全質量に対する、エチレン性不飽和基を含有するその他の樹脂中のエチレン性不飽和基の含有量を表す。
【0240】
また、特定樹脂及びその他の樹脂の両方を含めた、組成物中の樹脂の全質量に対する、エチレン性不飽和基の含有量としては、特に制限されないが、0.001~5.00mmol/gが好ましく、0.10~4.00mmol/gがより好ましい。
また、特定樹脂及びその他の樹脂の両方を含めた、組成物中の樹脂全体としての酸価は、特に制限されないが、一般に、30~500mgKOH/gが好ましく、50~200mgKOH/g以下が更に好ましい。
【0241】
エチレン性不飽和基の含有量の測定方法は、特定樹脂の説明において解説したエチレン性不飽和基含有量(C=C価)の測定方法が同様に挙げられる。
【0242】
〔重合禁止剤〕
組成物は、重合禁止剤を含有してもよい。
重合禁止剤としては特に制限されず、公知の重合禁止剤を使用できる。重合禁止剤としては、例えば、フェノール系重合禁止剤(例えば、p-メトキシフェノール、2,5-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジtert-ブチル-4-メチルフェノール、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4-メトキシナフトール等);ハイドロキノン系重合禁止剤(例えば、ハイドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチルハイドロキノン等);キノン系重合禁止剤(例えば、ベンゾキノン等);フリーラジカル系重合禁止剤(例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルフリーラジカル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルフリーラジカル等);ニトロベンゼン系重合禁止剤(例えば、ニトロベンゼン、4-ニトロトルエン等);及び、フェノチアジン系重合禁止剤(例えば、フェノチアジン、2-メトキシフェノチアジン等);等が挙げられる。
中でも、遮光性組成物がより優れた効果を有する点で、フェノール系重合禁止剤、又は、フリーラジカル系重合禁止剤が好ましい。
【0243】
重合禁止剤は、硬化性基を含有する樹脂と共に用いる場合にその効果が顕著である。
遮光性組成物中における重合禁止剤の含有量としては特に制限されないが、組成物の全固形分に対して、0.0001~0.5質量%が好ましく、0.001~0.2質量%がより好ましく、0.008~0.05質量%が更に好ましい。重合禁止剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。2種以上の重合禁止剤を使用する場合には、合計含有量が上記範囲内であるのが好ましい。
組成物中における、特定樹脂に対する重合禁止剤の含有量の質量比は0~0.006が好ましく、0.001~0.005がより好ましく、0.002~0.005が更に好ましい。上記含有量の質量比は、組成物中における、(重合禁止剤の含有量)/(特定樹脂の含有量)を表す。
【0244】
〔エポキシ基を含有する化合物〕
本発明の組成物は、エポキシ基を含有する化合物を用いてもよい。
エポキシ基を含有する化合物は、1分子内にエポキシ基を1個以上有する化合物が挙げられ、1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物が好ましい。エポキシ基は1分子内に1~100個有するのが好ましい。上限は、例えば、10個以下でもよく、5個以下でもよい。下限は、2個以上が好ましい。
なお、エポキシ基を含有する化合物は、上述の、特定樹脂、分散剤、アルカリ可溶性樹脂、及び、重合性化合物とは異なる成分を意図する。
【0245】
エポキシ基を含有する化合物は、エポキシ当量(=エポキシ基を含有する化合物の分子量/エポキシ基の数)が500g/当量以下であるのが好ましく、100~400g/当量であるのがより好ましく、100~300g/当量であるのが更に好ましい。
【0246】
エポキシ基を含有する化合物は、低分子化合物(例えば、分子量2000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量2000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が2000以上)のいずれでもよい。エポキシ基を含有する化合物の重量平均分子量は、200~100000が好ましく、500~50000がより好ましい。重量平均分子量の上限は、10000以下がより好ましく、5000以下が更に好ましく、3000以下が特に好ましい。
【0247】
エポキシ基を含有する化合物は、市販品を用いてもよい。例えば、EHPE3150(ダイセル製)、及び、EPICLON N-695(DIC製)等が挙げられる。また、エポキシ基を含有する化合物は、特開2013-011869号公報の段落0034~0036、特開2014-043556号公報の段落0147~0156、及び、特開2014-089408号公報の段落0085~0092に記載された化合物を用いてもよい。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。
【0248】
上記組成物中におけるエポキシ基を含有する化合物の含有量は、組成物中の全固形分に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.5~8質量%がより好ましく、1.0~6質量%が更に好ましい。
エポキシ基を含有する化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。上記組成物が、エポキシ基を含有する化合物を2種類以上含有する場合、その合計含有量が上記範囲となるのが好ましい。
【0249】
〔紫外線吸収剤〕
組成物は、紫外線吸収剤を含有してもよい。これにより、硬化膜のパターンの形状をより優れた(精細な)形状にできる。
紫外線吸収剤としては、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、及び、トリアジン系の紫外線吸収剤を使用できる。これらの具体例としては、特開2012-068418号公報の段落0137~0142(対応するUS2012/0068292の段落0251~0254)の化合物が使用でき、これらの内容が援用でき、本明細書に組み込まれる。
他にジエチルアミノ-フェニルスルホニル系紫外線吸収剤(大東化学社製、商品名:UV-503)等も好適に用いられる。
紫外線吸収剤としては、特開2012-32556号公報の段落0134~0148に例示される化合物が挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.001~15質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましく、0.1~5質量%が更に好ましい。
【0250】
〔シランカップリング剤(密着剤)〕
組成物はシランカップリング剤を含有してもよい。
シランカップリング剤は、基板上に硬化膜を形成する際に、基板と硬化膜間の密着性を向上させる密着剤として機能する。
シランカップリング剤とは、分子中に加水分解性基とそれ以外の官能基とを含有する化合物である。なお、アルコキシ基等の加水分解性基は、珪素原子に結合している。
加水分解性基とは、珪素原子に直結し、加水分解反応及び/又は縮合反応によってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、及び、アルケニルオキシ基が挙げられる。加水分解性基が炭素原子を含有する場合、その炭素数は6以下であるのが好ましく、4以下であるのがより好ましい。特に、炭素数4以下のアルコキシ基又は炭素数4以下のアルケニルオキシ基が好ましい。
また、基板上に硬化膜を形成する場合に、シランカップリング剤は基板と硬化膜間の密着性を向上させるため、フッ素原子及び珪素原子(ただし、加水分解性基が結合した珪素原子は除く)を含まないのが好ましく、フッ素原子、珪素原子(ただし、加水分解性基が結合した珪素原子は除く)、珪素原子で置換されたアルキレン基、炭素数8以上の直鎖状アルキル基、及び、炭素数3以上の分岐鎖状アルキル基は含まないのが望ましい。
シランカップリング剤は、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和基を含有してもよい。エチレン性不飽和基を含有する場合、その数は1~10個が好ましく、4~8個がより好ましい。なお、エチレン性不飽和基を含有するシランカップリング剤(例えば、加水分解性基とエチレン性不飽和基とを含有する、分子量2000以下の化合物)は、上述の重合性化合物に該当しない。
【0251】
上記組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、組成物中の全固形分に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.5~8質量%がより好ましく、1.0~6質量%が更に好ましい。
上記組成物は、シランカップリング剤を1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。組成物がシランカップリング剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲内であればよい。
【0252】
シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、及び、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0253】
〔界面活性剤〕
組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、組成物の塗布性向上に寄与する。
上記組成物が、界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量としては、組成物の全固形分に対して、0.001~2.0質量%が好ましく、0.005~0.5質量%がより好ましく、0.01~0.1質量%が更に好ましい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。界面活性剤を2種以上使用する場合は、合計量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0254】
界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、及び、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
【0255】
例えば、組成物がフッ素系界面活性剤を含有すれば、組成物の液特性(特に、流動性)がより向上する。即ち、フッ素系界面活性剤を含有する組成物を用いて膜形成する場合においては、被塗布面と塗布液との界面張力を低下させて、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚さムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行える点で有効である。
【0256】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましく、7~25質量%が更に好ましい。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性及び/又は省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
【0257】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、及び、同F780(以上、DIC(株)製);フロラードFC430、同FC431、及び、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製);サーフロンS-382、同SC-101、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC-1068、同SC-381、同SC-383、同S-393、及び、同KH-40(以上、旭硝子(株)製);並びに、PF636、PF656、PF6320、PF6520、及び、PF7002(OMNOVA社製)等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としてブロックポリマーも使用でき、具体例としては、例えば特開第2011-89090号公報に記載されたが化合物が挙げられる。
【0258】
〔溶剤〕
組成物は、溶剤を含有するのが好ましい。
溶剤としては特に制限されず公知の溶剤を使用できる。
組成物中における溶剤の含有量としては特に制限されないが、組成物の固形分が10~90質量%となる量が好ましく、10~40質量%となる量がより好ましく、15~35質量%となる量が更に好ましい。
溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。2種以上の溶剤を使用する場合には、組成物の全固形分が上記範囲内となるように調整されるのが好ましい。
【0259】
溶剤としては、例えば、水、及び、有機溶剤が挙げられる。
【0260】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3-メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、酢酸ブチル、乳酸メチル、N-メチル-2-ピロリドン、及び、乳酸エチル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0261】
(水)
組成物が、水を含有する場合、その含有量は、組成物の全質量に対して、0.001~5.0質量%が好ましく、0.01~3.0質量%がより好ましく、0.1~1.0質量%が更に好ましい。
中でも、水の含有量が、組成物の全質量に対して、3.0質量%以下(より好ましくは1.0質量%以下)であれば、組成物中の成分の加水分解等による経時粘度安定性の劣化を抑制しやすく、0.01質量%以上(好ましくは0.1質量%以上)であれば、経時沈降安定性を改善しやすい。
【0262】
〔その他の任意成分〕
組成物は、上述した成分以外のその他の任意成分を更に含有してもよい。例えば、増感剤、共増感剤、架橋剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、可塑剤、希釈剤、及び、感脂化剤等が挙げられ、更に、基板表面への密着促進剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、及び、連鎖移動剤等)等の公知の添加剤を必要に応じて加えてもよい。
これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落0183~0228(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落0237~0309)、特開2008-250074号公報の段落0101~0102、段落0103~0104、段落0107~0109、及び、特開2013-195480号公報の段落0159~0184等の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0263】
組成物は、フィラーとして、無機粒子を含有することが好ましく、シリカ粒子を含有することがより好ましい。シリカ粒子は、中実シリカ、中空シリカ、及び、多孔質シリカのいずれであってもよい。
組成物中におけるシリカ粒子の含有量は、特に制限されないが、低反射性が優れる点から、組成物の全固形分に対して、1~15質量%が好ましく、4~10質量%がより好ましい。
シリカ粒子の平均一次粒子径は、特に制限されないが、40nm以上100未満が好ましい。シリカ粒子の平均一次粒子径は、顔料の平均一次粒子径と同様に、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定できる。
【0264】
シリカ粒子は、表面が改質されていてもよく、表面が官能基により修飾されているシリカ粒子が好ましい。シリカ粒子の表面を修飾する官能基としては、例えば、炭化水素基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、含フッ素基、シロキサン結合を含む基、ヒドロキシル基、酸基、及び、塩基性基が挙げられる。
表面修飾されたシリカ粒子の合成方法(シリカ粒子の表面修飾方法)は、特に制限されず、表面修飾剤を用いる公知の方法が使用できる。例えば、分子中に加水分解性基と上記の官能基とを含有するシランカップリング剤を用いてシリカ粒子の表面を修飾する方法、並びに、エチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリロイル基及びビニル基)を表面に有するシリカ粒子とエチレン性不飽和基及び上記の官能基を有する化合物とを重合開始剤の存在下で反応させる方法が挙げられる。
表面修飾されたシリカ粒子の合成方法における表面修飾剤の使用量は、特に制限されないが、シリカ粒子の組成物の全固形分に対する表面修飾剤の含有量が、1~70質量%となる量が好ましく、5~50質量%となる量がより好ましい。なお、表面修飾剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0265】
〔組成物の製造方法〕
組成物は、まず、黒色着色剤を分散させた分散組成物を製造し、得られた分散組成物を更にその他の成分と混合して組成物とするのが好ましい。
分散組成物は、黒色着色材、樹脂(特定樹脂でも、その他の樹脂でもよく、分散剤が好ましい)、及び、溶剤を混合して調製するのが好ましい。また、分散組成物に重合禁止剤を含有させるのも好ましい。
【0266】
上記分散組成物は、上記の各成分を公知の混合方法(例えば、撹拌機、ホモジナイザー、高圧乳化装置、湿式粉砕機、又は、湿式分散機等を用いた混合方法)により混合して調製できる。
【0267】
組成物の調製に際しては、各成分を一括配合してもよいし、各成分をそれぞれ、溶剤に溶解又は分散した後に逐次配合してもよい。また、配合する際の投入順序及び作業条件は特に制限されない。
【0268】
組成物は、異物の除去及び欠陥の低減等の目的で、フィルタで濾過するのが好ましい。
フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されずに使用できる。例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、並びに、ポリエチレン及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂(高密度、超高分子量を含む)等によるフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)、ナイロンが好ましい。
フィルタの孔径は、0.1~7.0μmが好ましく、0.2~2.5μmがより好ましく、0.2~1.5μmが更に好ましく、0.3~0.7μmが特に好ましい。この範囲とすれば、顔料のろ過詰まりを抑えつつ、顔料に含まれる不純物及び凝集物等、微細な異物を確実に除去できるようになる。
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第1のフィルタでのフィルタリングは、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。異なるフィルタを組み合わせて2回以上フィルタリングを行う場合は1回目のフィルタリングの孔径より2回目以降の孔径が同じ、又は、大きい方が好ましい。また、上述した範囲内で異なる孔径の第1のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照できる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)、及び、株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択できる。
第2のフィルタは、上述した第1のフィルタと同様の材料等で形成されたフィルタを使用できる。第2のフィルタの孔径は、0.2~10.0μmが好ましく、0.2~7.0μmがより好ましく、0.3~6.0μmが更に好ましい。
組成物は、金属、ハロゲンを含有する金属塩、酸、アルカリ等の不純物を含まないのが好ましい。これら材料に含まれる不純物の含有量としては、1質量ppm以下が好ましく、1質量ppb以下がより好ましく、100質量ppt以下が更に好ましく、10質量ppt以下が特に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が最も好ましい。
なお、上記不純物は、誘導結合プラズマ質量分析装置(横河アナリティカルシステムズ製、Agilent 7500cs型)により測定できる。
【0269】
〔硬化膜の製造方法〕
上記組成物を用いて形成された組成物層を硬化して、硬化膜(パターン状の硬化膜を含む)を得られる。
硬化膜の製造方法としては特に制限されないが、以下の工程を含有するが好ましい。
・組成物層形成工程
・露光工程
・現像工程
以下、各工程について説明する。
【0270】
<組成物層形成工程>
組成物層形成工程においては、露光に先立ち、支持体等の上に、組成物を付与して組成物の層(組成物層)を形成する。支持体としては、例えば、基板(例えば、シリコン基板)上にCCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子(受光素子)が設けられた固体撮像素子用基板を使用できる。また、支持体上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止及び基板表面の平坦化等のために下塗り層を設けてもよい。
【0271】
支持体上への組成物の適用方法としては、スリット塗布法、インクジェット法、回転塗布法、流延塗布法、ロール塗布法、及び、スクリーン印刷法等の各種の塗布方法を適用できる。組成物層の膜厚としては、0.1~10μmが好ましく、0.2~5μmがより好ましく、0.2~3μmが更に好ましい。支持体上に塗布された組成物層の乾燥(プリベーク)は、ホットプレート、オーブン等で50~140℃の温度で10~300秒で行える。
【0272】
〔露光工程〕
露光工程では、組成物層形成工程において形成された組成物層に活性光線又は放射線を照射して露光し、光照射された組成物層を硬化させる。
光照射の方法としては特に制限されないが、パターン状の開口部を有するフォトマスクを介して光照射するのが好ましい。
露光は放射線の照射により行うのが好ましく、露光に際して使用できる放射線としては、特に、g線、h線、及び、i線等の紫外線が好ましく、光源としては高圧水銀灯が好まれる。照射強度は5~1500mJ/cm2が好ましく、10~1000mJ/cm2がより好ましい。
なお、組成物が、熱重合開始剤を含有する場合、上記露光工程において、組成物層を加熱してもよい。加熱の温度として特に制限されないが、80~250℃が好ましい。また、加熱の時間としては特に制限されないが、30~300秒が好ましい。
なお、露光工程において、組成物層を加熱する場合、後述する後加熱工程を兼ねてもよい。言い換えれば、露光工程において、組成物層を加熱する場合、ポストベークをしなくてもよい。
【0273】
〔現像工程〕
現像工程は、露光後の上記組成物層を現像して硬化膜を形成する工程である。本工程により、露光工程における光未照射部分の組成物層が溶出し、光硬化した部分だけが残り、パターン状の硬化膜が得られる。
現像工程で使用される現像液の種類は特に制限されないが、下地の撮像素子及び回路等にダメージを起さない、アルカリ現像液が望ましい。
現像温度としては、例えば、20~30℃である。
現像時間は、例えば、20~90秒である。より残渣を除去するため、近年では120~180秒実施する場合もある。更には、より残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、更に新たに現像液を供給する工程を数回繰り返す場合もある。
【0274】
アルカリ現像液としては、アルカリ性化合物を濃度が0.001~10質量%(好ましくは0.01~5質量%)となるように水に溶解して調製されたアルカリ性水溶液が好ましい。
アルカリ性化合物は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム,硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシ、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、及び、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等が挙げられる(このうち、有機アルカリが好ましい。)。
なお、アルカリ現像液として用いた場合は、一般に現像後に水で洗浄処理が施される。
【0275】
〔ポストベーク〕
露光工程の後、加熱処理(ポストベーク)を行うのが好ましい。ポストベークは、硬化を完全にするための現像後の加熱処理である。その加熱温度は、240℃以下が好ましく、220℃以下がより好ましい。下限は特にないが、効率的かつ効果的な処理を考慮すると、50℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
ポストベークは、ホットプレート、コンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、又は、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式又はバッチ式で行える。
【0276】
上記のポストベークは、低酸素濃度の雰囲気下で行ってもよい。その酸素濃度は、例えば、19体積%以下であるのが好ましく、15体積%以下であるのがより好ましく、10体積%以下であるのが更に好ましく、7体積%以下であるのが特に好ましく、3体積%以下であるのが最も好ましい。下限は特にないが、10体積ppm以上が実際的である。
【0277】
また、上記の加熱によるポストベークに変え、UV(紫外線)照射によって硬化を完全にしてもよい。
この場合、上述した組成物は、更にUV硬化剤を含有するのが好ましい。UV硬化剤は、通常のi線露光によるリソグラフィー工程のために添加する重合開始剤の露光波長である365nmより短波の波長で硬化できるUV硬化剤が好ましい。UV硬化剤としては、例えば、チバ イルガキュア 2959(商品名)が挙げられる。UV照射を行う場合においては、組成物層が波長340nm以下で硬化する材料であるのが好ましい。波長の下限値は特にないが、220nm以上であるのが一般的である。またUV照射の露光量は100~5000mJが好ましく、300~4000mJがより好ましく、800~3500mJが更に好ましい。このUV硬化工程は、リソグラフィー工程の後に行うのが、低温硬化をより効果的に行うために、好ましい。露光光源はオゾンレス水銀ランプを使用するのが好ましい。
【0278】
[硬化膜の物性、及び、硬化膜の用途]
〔硬化膜の物性〕
【0279】
形成される硬化膜は、上述した
図1にて説明したように、黒色着色材を含む黒色層(下側層)と特定樹脂から形成される(特定樹脂の硬化物を含有する)被覆層(上側層)との2層構造であるのが典型的である。なお、通常、被覆層は、基板上に配置される硬化膜中の基板とは反対側(空気側)に配置される層である。
黒色層には、上述した黒色着色材が主に含有される。
被覆層は、組成物を塗布して得られる塗膜の表面付近に偏在した特定樹脂が硬化してなる層である。なお、被覆層においては、未反応の特定樹脂が含有されていてもよい。
また、被覆層は、特定樹脂に由来する成分(特定樹脂の硬化物及び未反応の特定樹脂等)以外の成分も含有していてよい。ただし、被覆層は、黒色着色材を実質的に含有しないのが好ましい。具体的には、被覆層における黒色着色材の含有量は、被覆層の全質量に対して、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
被覆層の屈折率は、黒色層の屈折率よりも低いのが好ましい。
硬化膜の膜厚は、例えば、0.1~4.0μmが好ましく、1.0~2.5μmがより好ましい。また、硬化膜は、用途にあわせてこの範囲よりも薄膜としてもよいし、厚膜としてもよい。
また、硬化膜を光減衰膜として使用する場合、上記範囲よりも薄膜(例えば、0.1~0.5μm)として遮光性を調整するのも好ましい。
被覆層の膜厚は、硬化膜全体の膜厚にもよるが、例えば、5~300nmが好ましく、10~200nmがより好ましく、20~200nmが更に好ましく、20以上175nm未満が特に好ましい。
硬化膜及び被覆層の膜厚は硬化膜の断面SEM(Scanning Electron Microscope)画像により測定できる。
【0280】
本発明の組成物を用いて得られる硬化膜は、優れた遮光性を有する点で、400~1200nmの波長領域における膜厚1.0μmあたりの光学濃度(OD:Optical Density)が、2.0以上が好ましく、3.0以上がより好ましい。なお、上限値は特に制限されないが、一般に10以下が好ましい。上記硬化膜は、遮光膜として好ましく使用できる。
また、硬化膜(遮光膜)を、光減衰膜として使用する場合は、400~1200nmの波長領域における膜厚1.0μmあたりの光学濃度は、例えば、0.1~1.5が好ましく、0.2~1.0がより好ましい。また、本明細書において、400~1200nmの波長領域における膜厚1.0μmあたりの光学濃度が、3.0以上とは、波長400~1200nmの全域において、膜厚1.0μmあたりの光学濃度が3.0以上であることを意図する。
なお、本明細書において、硬化膜の光学濃度の測定方法としては、まず、ガラス基板上硬化膜を形成して、透過濃度計(X-rite 361T(visual)densitometer)を用いて測定し、測定箇所の膜厚も測定し、所定の膜厚あたりの光学濃度を算出する。
【0281】
また、上記硬化膜は、表面凹凸構造を有するのも好ましい。そうすれば、硬化膜を遮光膜とした場合における、硬化膜の反射率を低減できる。硬化膜そのものの表面に凹凸構造を有しても、硬化膜上に別の層を設けて凹凸構造を付与してもよい。表面凹凸構造の形状は特に限定されないが、表面粗さが0.55μm以上1.5μm以下の範囲であるのが好ましい。
硬化膜の反射率は、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下が更に好ましい。
表面凹凸構造を作製する方法は特に限定されないが、硬化膜若しくはそれ以外の層に、有機フィラー及び/又は無機フィラーを含有する方法、露光現像を利用したリソグラフィー法、又は、エッチング法、スパッタ法及びナノインプリント法等で硬化膜若しくはそれ以外の層の表面を粗面化する方法であってもよい。
また、上記硬化膜の反射率をさげる方法としては、上記以外に、硬化膜上に低屈折率層を設ける方法、更に屈折率の異なる層(例えば、高屈折率層)を複数設ける方法、及び、特開2015-1654号公報に記載の、低光学濃度層と高光学濃度層とを形成する方法等が挙げられる。
【0282】
また、上記硬化膜は、パーソナルコンピュータ、タブレット、携帯電話、スマートフォン、及び、デジタルカメラ等のポータブル機器;プリンタ複合機、及び、スキャナ等のOA(Office Automation)機器;監視カメラ、バーコードリーダ、現金自動預け払い機(ATM:automated teller machine)、ハイスピードカメラ、及び、顔画像認証を使用した本人認証機能を有する機器等の産業用機器;車載用カメラ機器;内視鏡、カプセル内視鏡、及び、カテーテル等の医療用カメラ機器;並びに、生体センサ、バイオセンサー、軍事偵察用カメラ、立体地図用カメラ、気象及び海洋観測カメラ、陸地資源探査カメラ、及び、宇宙の天文及び深宇宙ターゲット用の探査カメラ等の宇宙用機器;等に使用される光学フィルタ及びモジュールの遮光部材及び遮光膜、更には反射防止部材及び反射防止膜に好適である。
【0283】
上記硬化膜は、マイクロLED(Light Emitting Diode)及びマイクロOLED(Organic Light Emitting Diode)等の用途にも使用できる。上記硬化膜は、マイクロLED及びマイクロOLEDに使用される光学フィルタ及び光学フィルムのほか、遮光機能又は反射防止機能を付与する部材に対して好適である。
マイクロLED及びマイクロOLEDの例としては、特表2015-500562号公報及び特表2014-533890号公報に記載された例が挙げられる。
【0284】
上記硬化膜は、量子ドットセンサー及び量子ドット固体撮像素子に使用される光学フィルタ及び光学フィルムとしても好適である。また、遮光機能及び反射防止機能を付与する部材として好適である。量子ドットセンサー及び量子ドット固体撮像素子の例としては、米国特許出願公開第2012/37789号及び国際公開第2008/131313号に記載された例等が挙げられる。
【0285】
〔遮光膜、並びに、固体撮像素子及び固体撮像装置〕
本発明の遮光膜は、固体撮像素子に使用するのも好ましい。
なお、遮光膜は、本発明の硬化膜における好ましい用途の1つであって、本発明の遮光膜の製造は、上述の硬化膜の製造方法として説明した方法で同様に行える。具体的には、基板に組成物を塗布して、組成物層を形成し、露光、及び、現像して遮光膜を製造できる。
また、本発明の固体撮像素子は、上述した本発明硬化膜(遮光膜)を含有する、上記硬化膜(遮光膜)を有する固体撮像素子である。
上述の通り、本発明に係る、固体撮像素子は、上記硬化膜(遮光膜)を含有する。固体撮像素子が硬化膜(遮光膜)を含有する形態としては特に制限されず、例えば、基板上に、固体撮像素子(CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオード及びポリシリコン等からなる受光素子を有し、支持体の受光素子形成面側(例えば、受光部以外の部分及び/又は色調整用画素等)又は形成面の反対側に硬化膜を有する形態が挙げられる。
また、硬化膜(遮光膜)を光減衰膜として使用する場合、例えば、一部の光が光減衰膜を通過した上で受光素子に入射するように、光減衰膜を配置すれば、固体撮像素子のダイナミックレンジを改善できる。
固体撮像装置は、上記固体撮像素子を含有する。
【0286】
固体撮像装置、及び、固体撮像素子の構成例を
図2~3を参照して説明する。なお、
図2~3では、各部を明確にするため、相互の厚み及び/又は幅の比率は無視して一部誇張して表示している。
図2に示すように、固体撮像装置100は、矩形状の固体撮像素子101と、固体撮像素子101の上方に保持され、この固体撮像素子101を封止する透明なカバーガラス103とを備えている。更に、このカバーガラス103上には、スペーサー104を介してレンズ層111が重ねて設けられている。レンズ層111は、支持体113とレンズ材112とで構成されている。レンズ層111は、支持体113とレンズ材112とが一体成形された構成でもよい。レンズ層111の周縁領域に迷光が入射すると光の拡散によりレンズ材112での集光の効果が弱くなり、撮像部102に届く光が低減する。また、迷光によるノイズの発生も生じる。そのため、このレンズ層111の周縁領域は、遮光膜114が設けられて遮光されている。本発明の硬化膜は上記遮光膜114としても使用できる。
【0287】
固体撮像素子101は、その受光面となる撮像部102で結像した光学像を光電変換して、画像信号として出力する。この固体撮像素子101は、2枚の基板を積層した積層基板105を備えている。積層基板105は、同サイズの矩形状のチップ基板106及び回路基板107からなり、チップ基板106の裏面に回路基板107が積層されている。
【0288】
チップ基板106として用いられる基板の材料としては特に制限されず、公知の材料を使用できる。
【0289】
チップ基板106の表面中央部には、撮像部102が設けられている。また、撮像部102の周縁領域に迷光が入射すると、この周縁領域内の回路から暗電流(ノイズ)が発生するため、この周縁領域は、遮光膜115が設けられて遮光されている。本発明の硬化膜は遮光膜115として用いるのが好ましい。
【0290】
チップ基板106の表面縁部には、複数の電極パッド108が設けられている。電極パッド108は、チップ基板106の表面に設けられた図示しない信号線(ボンディングワイヤでも可)を介して、撮像部102に電気的に接続されている。
【0291】
回路基板107の裏面には、各電極パッド108の略下方位置にそれぞれ外部接続端子109が設けられている。各外部接続端子109は、積層基板105を垂直に貫通する貫通電極110を介して、それぞれ電極パッド108に接続されている。また、各外部接続端子109は、図示しない配線を介して、固体撮像素子101の駆動を制御する制御回路、及び、固体撮像素子101から出力される撮像信号に画像処理を施す画像処理回路等に接続されている。
【0292】
図3に示すように、撮像部102は、受光素子201、カラーフィルタ202、マイクロレンズ203等の基板204上に設けられた各部から構成される。カラーフィルタ202は、青色画素205b、赤色画素205r、緑色画素205g、及び、ブラックマトリクス205bmを有している。本発明の硬化膜は、ブラックマトリクス205bmとして用いてもよい。
【0293】
基板204の材料としては、前述のチップ基板106と同様の材料を使用できる。基板204の表層にはpウェル層206が形成されている。このpウェル層206内には、n型層からなり光電変換により信号電荷を生成して蓄積する受光素子201が正方格子状に配列形成されている。
【0294】
受光素子201の一方の側方には、pウェル層206の表層の読み出しゲート部207を介して、n型層からなる垂直転送路208が形成されている。また、受光素子201の他方の側方には、p型層からなる素子分離領域209を介して、隣接画素に属する垂直転送路208が形成されている。読み出しゲート部207は、受光素子201に蓄積された信号電荷を垂直転送路208に読み出すためのチャネル領域である。
【0295】
基板204の表面上には、ONO(Oxide-Nitride-Oxide)膜からなるゲート絶縁膜210が形成されている。このゲート絶縁膜210上には、垂直転送路208、読み出しゲート部207、及び、素子分離領域209の略直上を覆うように、ポリシリコン又はアモルファスシリコンからなる垂直転送電極211が形成されている。垂直転送電極211は、垂直転送路208を駆動して電荷転送を行わせる駆動電極と、読み出しゲート部207を駆動して信号電荷読み出しを行わせる読み出し電極として機能する。信号電荷は、垂直転送路208から図示しない水平転送路及び出力部(フローティングディフュージョンアンプ)に順に転送された後、電圧信号として出力される。
【0296】
垂直転送電極211上には、その表面を覆うように遮光膜212が形成されている。遮光膜212は、受光素子201の直上位置に開口部を有し、それ以外の領域を遮光している。本発明の硬化膜は、遮光膜212として用いてもよい。
遮光膜212上には、BPSG(borophospho silicate glass)からなる絶縁膜213、P-SiNからなる絶縁膜(パシベーション膜)214、透明樹脂等からなる平坦化膜215からなる透明な中間層が設けられている。カラーフィルタ202は、中間層上に形成されている。
【0297】
〔画像表示装置〕
本発明の硬化膜は画像表示装置にも適用できる。
画像表示装置が硬化膜を有する形態としては、例えば、硬化膜がブラックマトリクスに含有され、このようなブラックマトリクスを含有するカラーフィルタが、画像表示装置に使用される形態が挙げられる。
次に、ブラックマトリクス及びブラックマトリクスを含有するカラーフィルタについて説明し、更に、画像表示装置の具体例として、このようなカラーフィルタを含有する液晶表示装置について説明する。
【0298】
<ブラックマトリクス>
本発明の硬化膜は、ブラックマトリクスに含有されるのも好ましい。ブラックマトリクスは、カラーフィルタ、固体撮像素子、及び、液晶表示装置等の画像表示装置に含有される場合がある。
ブラックマトリクスとしては、上記で既に説明したもの;液晶表示装置等の画像表示装置の周縁部に設けられた黒色の縁;赤、青、及び、緑の画素間の格子状、及び/又は、ストライプ状の黒色の部分;TFT(thin film transistor)遮光のためのドット状、及び/又は、線状の黒色パターン;等が挙げられる。このブラックマトリクスの定義については、例えば、菅野泰平著、「液晶ディスプレイ製造装置用語辞典」、第2版、日刊工業新聞社、1996年、p.64に記載がある。
ブラックマトリクスは表示コントラストを向上させるため、また薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリックス駆動方式の液晶表示装置の場合には光の電流リークによる画質低下を防止するため、高い遮光性(光学濃度ODで3以上)を有するのが好ましい。
【0299】
ブラックマトリクスの製造方法としては特に制限されないが、上記の硬化膜の製造方法と同様の方法により製造できる。具体的には、基板に組成物を塗布して、組成物層を形成し、露光、及び、現像してパターン状の硬化膜(ブラックマトリクス)を製造できる。なお、ブラックマトリクスとして用いられる硬化膜の膜厚としては、0.1~4.0μmが好ましい。
【0300】
上記基板の材料としては、特に制限されないが、可視光(波長400~800nm)に対して80%以上の透過率を有するのが好ましい。このような材料としては、具体的には、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、及び、ホウケイ酸ガラス等のガラス;ポリエステル系樹脂、及び、ポリオレフィン系樹脂等のプラスチック;等が挙げられ、耐薬品性、及び、耐熱性の観点から、無アルカリガラス、又は、石英ガラス等が好ましい。
【0301】
<カラーフィルタ>
本発明の硬化膜は、カラーフィルタに含有されるのも好ましい。
カラーフィルタが硬化膜を含有する形態としては、特に制限されないが、基板と、上記ブラックマトリクスと、を備えるカラーフィルタが挙げられる。すなわち、基板上に形成された上記ブラックマトリクスの開口部に形成された赤色、緑色、及び、青色の着色画素と、を備えるカラーフィルタが例示できる。
【0302】
ブラックマトリクス(硬化膜)を含有するカラーフィルタは、例えば、以下の方法により製造できる。
まず、基板上に形成されたパターン状のブラックマトリクスの開口部に、カラーフィルタの各着色画素に対応する顔料を含有した組成物の塗膜(組成物層)を形成する。なお、各色用組成物としては特に制限されず、公知の組成物を使用できるが、本明細書で説明した組成物において、黒色着色剤を、各画素に対応した着色剤に置き換えた組成物を使用するのが好ましい。
次に、組成物層に対して、ブラックマトリクスの開口部に対応したパターンを有するフォトマスクを介して露光する。次いで、現像処理により未露光部を除去した後、ベークしてブラックマトリクスの開口部に着色画素を形成できる。一連の操作を、例えば、赤色、緑色、及び、青色顔料を含有した各色用組成物を用いて行えば、赤色、緑色、及び、青色画素を有するカラーフィルタを製造できる。
【0303】
<液晶表示装置>
本発明の硬化膜は、液晶表示装置に含有されるのも好ましい。液晶表示装置が硬化膜を含有する形態としては特に制限されないが、すでに説明したブラックマトリクス(硬化膜)を含有するカラーフィルタを含有する形態が挙げられる。
【0304】
本実施形態に係る液晶表示装置としては、例えば、対向して配置された一対の基板と、それらの基板の間に封入されている液晶化合物とを備える形態が挙げられる。上記基板としては、ブラックマトリクス用の基板として既に説明したとおりである。
【0305】
上記液晶表示装置の具体的な形態としては、例えば、使用者側から、偏光板/基板/カラーフィルタ/透明電極層/配向膜/液晶層/配向膜/透明電極層/TFT(Thin Film Transistor)素子/基板/偏光板/バックライトユニットをこの順に含有する積層体が挙げられる。
【0306】
なお、液晶表示装置としては、上記に制限されず、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」等に記載されている液晶表示装置が挙げられる。また、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている液晶表示装置が挙げられる。
【0307】
〔赤外線センサ〕
本発明の硬化膜は、赤外線センサに含有されるのも好ましい。
上記実施態様に係る赤外線センサについて、
図4を用いて説明する。
図4に示す赤外線センサ300において、図番310は、固体撮像素子である。
固体撮像素子310上に設けられている撮像領域は、赤外線吸収フィルタ311と本発明の実施形態に係るカラーフィルタ312とを組み合せて構成されている。
赤外線吸収フィルタ311は、可視光領域の光(例えば、波長400~700nmの光)を透過し、赤外領域の光(例えば、波長800~1300nmの光、好ましくは波長900~1200nmの光、より好ましくは波長900~1000nmの光)を遮蔽する膜であり、着色剤として赤外線吸収剤(赤外線吸収剤の形態としては既に説明したとおりである。)を含有する硬化膜を使用できる。
カラーフィルタ312は、可視光領域における特定波長の光を透過及び吸収する画素が形成されたカラーフィルタであって、例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画素が形成されたカラーフィルタ等が用いられ、その形態は既に説明したとおりである。
赤外線透過フィルタ313と固体撮像素子310との間には、赤外線透過フィルタ313を透過した波長の光を透過させられる樹脂膜314(例えば、透明樹脂膜等)が配置されている。
赤外線透過フィルタ313は、可視光遮蔽性を有し、かつ、特定波長の赤外線を透過させるフィルタであって、可視光領域の光を吸収する着色剤(例えば、ペリレン化合物、及び/又は、ビスベンゾフラノン化合物等)と、赤外線吸収剤(例えば、ピロロピロール化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、及び、ポリメチン化合物等)と、を含有する、本発明の硬化膜を使用できる。赤外線透過フィルタ313は、例えば、波長400~830nmの光を遮光し、波長900~1300nmの光を透過させるのが好ましい。
カラーフィルタ312及び赤外線透過フィルタ313の入射光hν側には、マイクロレンズ315が配置されている。マイクロレンズ315を覆うように平坦化膜316が形成されている。
図4に示す形態では、樹脂膜314が配置されているが、樹脂膜314に代えて赤外線透過フィルタ313を形成してもよい。すなわち、固体撮像素子310上に、赤外線透過フィルタ313を形成してもよい。
また、
図4に示す形態では、カラーフィルタ312の膜厚と、赤外線透過フィルタ313の膜厚が同一であるが、両者の膜厚は異なっていてもよい。
また、
図4に示す形態では、カラーフィルタ312が、赤外線吸収フィルタ311よりも入射光hν側に設けられているが、赤外線吸収フィルタ311と、カラーフィルタ312との順序を入れ替えて、赤外線吸収フィルタ311を、カラーフィルタ312よりも入射光hν側に設けてもよい。
また、
図4に示す形態では、赤外線吸収フィルタ311とカラーフィルタ312は隣接して積層しているが、両フィルタは必ずしも隣接している必要はなく、間に他の層が設けられていてもよい。本発明の硬化膜は、赤外線吸収フィルタ311の表面の端部及び/又は側面等の遮光膜として使用できるほか、赤外線センサの装置内壁に用いれば、内部反射及び/又は受光部への意図しない光の入射を防ぎ、感度を向上させられる。
この赤外線センサによれば、画像情報を同時に取り込めるため、動きを検知する対象を認識したモーションセンシング等が可能である。更には、距離情報を取得できるため、3D情報を含んだ画像の撮影等も可能である。
【0308】
次に、上記赤外線センサを適用した固体撮像装置について説明する。
上記固体撮像装置は、レンズ光学系と、固体撮像素子と、赤外発光ダイオード等を含有する。なお、固体撮像装置の各構成については、特開2011-233983号公報の段落0032~0036を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0309】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
【0310】
[遮光性組成物の調製]
表4に示すように、各成分を各質量部で混合して組成物1~41を調製した。
〔分散組成物の準備〕
遮光性組成物(以下、単に「組成物」ともいう)の調製のために、まず、分散組成物を調製した。
【0311】
<チタンブラック分散液A(分散液A)の調製>
下記原料を、シンマルエンタープライゼス製のNPM Pilotを使用して分散処理を行い、チタンブラック分散液Aを得た。
【0312】
・チタンブラック(T-1)(詳細は後述する) ; 25質量部
・樹脂(X-1)(詳細は後述する)のPGMEA30質量%溶液(顔料分散剤) ; 25質量部
・PGMEA ; 23質量部
・酢酸ブチル ; 27質量部
【0313】
なお、PGMEAはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを意味する。
また、樹脂(X-1)のPGMEA30質量%溶液とは、樹脂(X-1)の含有量が溶液の全質量に対して30質量%になるように、PGMEAに樹脂(X-1)を溶解させた溶液を意図する。以下、「(物質名)の(溶剤名)(数字)質量%溶液」という記載をする場合は、同様の意図に基づく。
【0314】
(チタンブラック(T-1)の作製)
平均粒径15nmの酸化チタンMT-150A(商品名:テイカ製)(100g)、BET表面積300m2/gのシリカ粒子AEROGIL(登録商標)300/30(エボニック製)(25g)、及び、分散剤DISPERBYK-190(商品名:BYK社製)(100g)秤量し、イオン電気交換水(71g)を加えてKURABO製MAZERSTAR KK-400Wを使用して、公転回転数1360rpm、自転回転数1047rpmにて20分間処理することにより均一な混合物水溶液を得た。この水溶液を石英容器に充填し、小型ロータリーキルン(株式会社モトヤマ製)を用いて酸素雰囲気中で920℃に加熱した後、窒素で雰囲気を置換し、同温度でアンモニアガスを100mL/minで5時間流すことにより窒化還元処理を実施した。終了後回収した粉末を乳鉢で粉砕し、Si原子を含み、粉末状の比表面積73m2/gのチタンブラック(T-1)を得た。
【0315】
(樹脂(X-1)の作製)
下記モノマーAに由来する繰り返し単位と、下記モノマーBに由来する繰り返し単位とを、それぞれ、樹脂の全繰り返し単位に対して、15質量%、85質量%含有する樹脂Pを合成した。得られた樹脂Pに対して、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルを用いて、エチレン性不飽和基を導入した樹脂X-1を作製した。
得られた樹脂X-1の重量平均分子量は15000、酸価は70mgKOH/mg、C=C価は1.1mmol/gであった。
【0316】
・モノマーA(マクロモノマーであり、重量平均分子量は3000、繰り返し単位に付した9の値は、各モノマーの平均値である)
【0317】
【0318】
・モノマーB(アロニックスM5300(東亜合成社製))
CH2=CHCOO-(C5H10COO)n-Hω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート
【0319】
<チタンブラック分散液B(分散液B)の調製>
樹脂(X-1)のPGMEA30質量%溶液(顔料分散剤)を、樹脂(X-2)のPGMEA30質量%溶液(顔料分散剤)に変更した以外は分散液Aと同様にして分散液Bを作製した。
樹脂(X-2)の構造は以下のとおりである。重量平均分子量は33000、酸価は60mgKOH/mg、C=C価は0mmol/gであった。
また、各繰り返し単位に付した数字は、各ユニットのモル比を示す。
【0320】
【0321】
<カーボンブラック(CB)分散液C(分散液C)の調製>
下記原料を混合して得られた分散物を、更に攪拌機により十分に攪拌し、プレミキシングを行った。更に、分散物に対し、寿工業製のウルトラアペックスミルUAM015を使用して後述の分散条件にて分散処理を行い、分散液を得た。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離して、分散液Cを得た。
【0322】
・被覆カーボンブラック(詳細は後述する) ; 20質量部
・DISPERBYK-167(顔料分散剤、BYK社製、固形分52質量%) ; 8.7質量部
・ソルスパース12000(顔料誘導体、ルーブリゾール社製) ; 1質量部
・PGMEA ; 分散液Cの固形分が35質量%になる量
【0323】
(分散条件)
ビーズ径:φ0.05mm
ビーズ充填率:65体積%
ミル周速:10m/sec
セパレーター周速:11m/s
分散処理する混合液量:15.0g
循環流量(ポンプ供給量):60kg/hour
処理液温度:20~25℃
冷却水:水道水 5℃
ビーズミル環状通路内容積:2.2L
パス回数:84パス
【0324】
(被覆カーボンブラックの作製)
通常のオイルファーネス法で、カーボンブラックを製造した。ただし、原料油としては、Na分量、Ca分量、及び、S分量の少ないエチレンボトム油を用い、ガス燃料を用いて燃焼を行った。更に、反応停止水としては、イオン交換樹脂で処理した純水を用いた。
ホモミキサーを用いて、得られたカーボンブラック(540g)を純水(14500g)と共に5,000~6,000rpmで30分撹拌し、スラリーを得た。このスラリーをスクリュー型撹拌機付容器に移して、約1,000rpmで混合しながらエポキシ樹脂「エピコート828」(ジャパンエポキシレジン製)(60g)を溶解したトルエン(600g)を少量ずつ添加した。約15分で、水に分散していたカーボンブラックは全量トルエン側に移行し、約1mmの粒となった。
次に、60メッシュ金網で水切りを行った後、分離された粒を真空乾燥機に入れ、70℃で7時間乾燥し、トルエン及び水を除去した。得られた被覆カーボンブラックの樹脂被覆量は、カーボンブラックと樹脂の合計量に対して10質量%であった。
【0325】
<黒色分散液D(分散液D)の調製>
被覆カーボンブラックを、Irgaphor Black S 0100 CF(BASF社製)に変更した以外は分散液Cと同様にして分散液Dを作製した。
【0326】
<黒色分散液E(分散液E)の調製>
下記に示す、Red顔料分散液R1とBlue顔料分散液B1とを、1:1(質量比)
で混合して、分散液Eとした。
【0327】
(Red顔料分散液R1)
下記原料を、シンマルエンタープライゼス製のNPM Pilotを使用して分散処理を行い、Red顔料分散液R1を得た。
【0328】
・Pigment Red254 ; 8.3質量部
・Pigment Yellow139 ; 3.7質量部
・DISPERBYK-161(分散剤、BYK社製、固形分30質量%) ; 16.0質量部
・PGMEA ; 72.0質量部
【0329】
(Blue顔料分散液B1)
下記原料を、シンマルエンタープライゼス製のNPM Pilotを使用して分散処理を行い、Blue顔料分散液B1を得た。
【0330】
・Pigment Blue15:6 ; 9.5質量部
・Pigment Violet23 ; 2.4質量部
・DISPERBYK-161(分散剤、BYK社製、固形分30質量%) ; 18.7質量部
・PGMEA ; 69.4質量部
【0331】
〔組成物の原料〕
以下に、組成物の調製に使用した原料を示す。
【0332】
<分散組成物>
上述の分散液A~Eを分散組成物として使用した。
【0333】
<樹脂>
・A-1:次に示す方法で合成した重合体。
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、MEK(2-ブタノン)(420.0g)、X-22-174DX(信越化学工業(株)製、片末端にメタクリル基含有基を含有する、直鎖状ジメチルポリシロキサン)(5.4g)、MAA(メタクリル酸)(18.0g)、2-HEMA(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(99.0g)、IBMA(イソボルニルメタクリレート)(57.6g)、及び、重合開始剤V-70(和光純薬社製、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル))(2.0g)を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、30℃で24時間重合させ、粗共重合体を合成した。得られた粗共重合体の溶液にヘプタンを加えて再沈精製した後、真空乾燥し、共重合体1(149.2g)を得た。共重合体1は、数平均分子量が17100、重量平均分子量が50500であった。
温度計、撹拌機、加熱装置を備えた内容量300mLのガラス製フラスコに、共重合体1(40.0g)、BEI(カレンズBEI、昭和電工社製、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート)(42.0g)、DBTDL(ジブチル錫ジラウレート)(0.17g)、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)(2.1g)、及び、MEK(115.4g)を仕込み、撹拌しながら、40℃で48時間反応させ、粗重合体を合成した。得られた粗重合体の溶液にヘプタンを加えて再沈精製した後、真空乾燥し、樹脂(A-1)(66.0g)を得た。樹脂(A-1)は、数平均分子量が42300、重量平均分子量が119990であった。
【0334】
・A-2:X-22-164B(信越化学工業(株)製、両末端にメタクリル基含有基を含有する、直鎖状ジメチルポリシロキサン)
・A-3:X-22-2445(信越化学工業(株)製、両末端にアクリル基含有基を含有する、直鎖状ジメチルポリシロキサン)
・A-4:KF-6001(信越化学工業(株)製、両末端に水酸基含有基を含有する、直鎖状ジメチルポリシロキサン)
・A-5:X-22-164(信越化学工業(株)製、両末端にメタクリル基含有基を含有する、直鎖状ジメチルポリシロキサン)
・A-6:X-22-164AS(信越化学工業(株)製、両末端にメタクリル基含有基を含有する、直鎖状ジメチルポリシロキサン)
・A-7:X-22-164A(信越化学工業(株)製、両末端にメタクリル基含有基を含有する、直鎖状ジメチルポリシロキサン)
・A-8:X-22-164C(信越化学工業(株)製、両末端にメタクリル基含有基を含有する、直鎖状ジメチルポリシロキサン)
・A-9:X-22-164E(信越化学工業(株)製、両末端にメタクリル基含有基を含有する、直鎖状ジメチルポリシロキサン)
【0335】
・A-10:次に示す方法で合成した樹脂。
【0336】
【0337】
1口ナスフラスコにKF-6001(A-4)(20.78g)、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工(株)製カレンズBEI)(8.13g)、PGMEA(96.4g)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(広栄化学工業(株)製)(16.3mg)、及び、ビスマストリス(2-エチルへキサノエート)(日東化成(株)製ネオスタンU‐600)(16.3mg)を入れ、90℃に昇温し、72時間撹拌し、シロキサン樹脂XX-1の30%PGMEA溶液を得た。
得られた上記溶液にチオリンゴ酸(東京化成工業(株)製)(2.55g)、エタノール(41.6g)を入れ、室温で撹拌したところに、トリエチルアミン(172mg)を滴下し、室温で24時間撹拌した。次いで上記溶液に酢酸エチル(150g)を添加し、更に、溶液に、0.1NHCl水溶液(150g)及び蒸留水(150g)を加えて混合してから、溶液中の有機相を抽出した。得られた有機相に硫酸ナトリウムを添加し、10分間撹拌し、硫酸ナトリウムを濾過し、得られたろ液を減圧下で留去することでXX-2(28.5g)を得た。得られたXX-2を、樹脂A-10とした。
【0338】
・A-11~A-15:次に示す方法で合成した樹脂。
3口ナスフラスコにPGMEA(62.9g)(更に、必要に応じて連鎖移動剤2-メルカプトエタノール(Yg))を入れ、窒素雰囲気下75℃に昇温した。このフラスコに、X-22-2404(信越化学工業(株)製、片末端にメタクリル基含有基を含有する、直鎖状ジメチルポリシロキサン)(60.0g)、HO-MS(共栄社化学製、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸)(29.8g)、PGMEA(146.7g)、及び、開始剤V-601(和光純薬(株)製、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル)(Xg)を混合した溶液を2時間かけて滴下した。
滴下後、上記フラスコを、75℃で更に2時間撹拌した後、V-601(0.75g)及びPGMEA(23.8g)を添加した。更に、上記フラスコを90℃に昇温し3時間撹拌した。得られた溶液を空気置換し、フラスコ中の大気の酸素濃度が18質量%以上になったことを確認した後、GMA(東京化成工業(株)製、メタクリル酸グリシジル)(10.2g)、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル)(0.11g)、及び、ジメチルドデシルアミン(4.4g)を添加し、90℃で48時間撹拌し、樹脂を含有するポリマー溶液を得た。
上記V-601の量X(g)と2-メルカプトエタノールY(g)の値と下記表1に示す量として樹脂A-11~A-15を合成した。なお、得られた樹脂A-11~A-15は、樹脂A-11~A-15の固形分30%のPGMEA溶液の形態として組成物の調製に供した。
【0339】
【0340】
樹脂A-1~A-15の、分子量(数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw))、酸価、及び、C=C価を以下に示す。
【0341】
【0342】
なお、上述の樹脂のうち、A-2、A-3、A-5~A-15が特定樹脂である。その中の、A-2、A-3、A-5~A-10が主鎖型特定樹脂であり、A-11~A-15が側鎖型特定樹脂である。
【0343】
<重合開始剤>
・I-1:下記化合物
・I-2:下記化合物
・I-3:下記化合物
・I-4:下記化合物
重合開始剤I-1~I-4は、いずれもオキシム化合物である。
なお、上記重合開始剤のうち、I-1~I-3は、アセトニトリルに0.001質量%溶解させた場合において、得られた溶液の光路長10mmでの波長340nmにおける吸光度は0.45以上であった。一方で、I-4を用いて同様に試験した場合、得られた溶液の波長340nmにおける吸光度は0.45未満であった。
【0344】
【0345】
<重合性化合物>
・M-1:NKエステル A-TMMT(新中村化学社製、下記構造で示される化合物)
【0346】
【0347】
・M-2:KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製、下記構造で示される化合物の混合物)
【0348】
【0349】
・M-3:ビスコート#802(大阪有機化学工業株式会社製、下記構造で示される化合物)
【0350】
【0351】
<重合禁止剤>
・PI-1:p-メトキシフェノール
【0352】
<溶剤>
・PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0353】
上述の成分を混合して、下記表3に示す組成物を調製した。
【0354】
<シリカ粒子分散液>
(シリカ粒子PS-1の合成)
中空シリカ粒子の分散液(日揮触媒化成(株)製「スルーリア4110」、固形分濃度:20質量%、分散媒:イソプロピルアルコール、平均一次粒子径:60nm)100gに、KBM-503(信越化学工業(株)製、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)4g、10%蟻酸水溶液0.5g、及び、水1gを混合し、60℃で3時間撹拌した。ロータリーエバポレータを用いて、分散媒を1-メトキシ-2-プロパノールに置換した後、1-メトキシ-2-プロパノールの添加により固形分濃度を調整して、固形分濃度が20質量%であるシリカ粒子PS-1(表面処理された中空シリカ)の分散液を得た。
【0355】
(修飾シリカ分散液S-1の調製)
3口フラスコに、シリカ粒子PS-1の分散液(固形分20質量%、30.0g)、表面修飾剤MA-1(信越化学工業(株)製、商品名「X-22-2404」、片末端メタクリル変性シリコーンオイル)(1.8g)、及び、PGMEA(28.2g)を入れ、窒素雰囲気下、80℃に昇温した。このフラスコに重合開始剤V-601(富士フイルム和光純薬(株)製)0.01gを添加し、3時間撹拌した。このフラスコにV-601(0.02g)を更に添加し、2時間撹拌した後、分散液の精密濾過を行った。得られた濾過物に1-メトキシ-2-プロパノールを添加して、表面修飾されたシリカ粒子を含有し、固形分濃度が20質量%である修飾シリカ分散液S-1(31.3g)を得た。
【0356】
(修飾シリカ分散液S-2~S-14の調製)
表3に記載したシリカ粒子及び表面修飾剤をそれぞれ使用すること以外は上述の修飾シリカ分散液S-1の調製方法に従って、修飾シリカ分散液S-2~S-14を調製した。
以下に、各修飾シリカ分散液の調製に使用したシリカ粒子及び表面修飾剤を示す。
【0357】
-シリカ粒子-
・PS-2:表面処理された中実シリカ粒子のゲル(日産化学(株)製「PGM-AC-4130Y」、固形分濃度:32質量%、分散媒:1-メトキシ-2-プロパノール、平均一次粒子径:45nm)
・PS-3:中空シリカ粒子の分散液(日揮触媒化成(株)製「スルーリア4320」、固形分濃度:20質量%、分散媒:メチルイソブチルケトン、平均一次粒子径:60nm)
なお、シリカ粒子PS-2は、1-メトキシ-2-プロパノールを添加して固形分濃度が20質量%の分散液としてから、修飾シリカ分散液の調製に使用した。
【0358】
-表面修飾剤-
・MA-2:X-22-174ASX(信越化学工業(株)製、片末端メタクリル変性シリコーンオイル)
・MA-3:X-22-174BX(信越化学工業(株)製、片末端メタクリル変性シリコーンオイル)
・MA-4:iBMA(東京化成工業(株)製、メタクリル酸イソブチル)
・MA-5:MAC6F13(東京化成工業(株)製、メタクリル酸1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル)
・MA-6:HEMA(東京化成工業(株)製、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)
・MA-7:HO-MS(共栄社化学(株)製、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸)
【0359】
【0360】
[評価]
〔試験〕
上述した各組成物を用いて以下の試験を行った。
【0361】
<遮光性の評価>
組成物をそれぞれ、ガラス基板上にスピンコート法で塗布し、その後、ホットプレート上で100℃にて2分間加熱して組成物層を得た。次に、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon製)を使用して、2cm四方の角パターンを有するマスクを介して、得られた組成物層に対して200mJ/cm2で露光した。露光された組成物層を、現像液「CD-2060」(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)で60秒間パドル現像してからスピン乾燥した。その後、ホットプレート上で220℃にて5分間加熱して、膜厚1.5μmの遮光膜(硬化膜)を得た。得られた遮光膜を、UV-3600(日立株式会社製:分光光度計)を使用して、下記評価基準に従って、遮光性を評価した。A,Bを許容内とした。
【0362】
「A」:波長400~700nmにおける最大透過率が0.5%以下
「B」:波長400~700nmにおける最大透過率が0.5%より高く2%以下
「C」:波長400~700nmにおける透過率が2%より高い
【0363】
<現像前反射率の評価(現像前低反射性の評価)>
組成物をそれぞれ、ガラス基板上にスピンコート法で塗布し、その後、ホットプレート上で100℃にて2分間加熱して組成物層を得た。次に、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon製)を使用して、2cm四方の角パターンを有するマスクを介して、得られた組成物層に対して200mJ/cm2で露光した。その後、ホットプレート上で220℃にて5分間加熱して膜厚1.5μmの遮光膜(硬化膜)を得た。
得られた遮光膜付き基板に対し、入射角度8°で400~700nmの光を入射し、その反射率を、日本分光株式会社製分光器V7200(商品名)を使用して測定した。得られた測定値を下記評価基準で区分して、現像前反射率(現像前低反射性)を評価した。A,Bを許容内とした。
「A」:波長400~700nmにおける最大反射率が2%以下
「B」:波長400~700nmにおける最大反射率が2%より高く5%以下
「C」:波長400~700nmにおける最大反射率が5%より高い
【0364】
<現像後反射率の評価(現像後低反射性の評価)>
上述の「現像前反射率の評価」の手順において、組成物層を露光した後、露光された組成物層を、現像液「CD-2060」(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)で60秒間パドル現像してからスピン乾燥した。その後、ホットプレート上で220℃にて5分間加熱して遮光膜(硬化膜)を得た。
以降は同様の手法及び基準で、反射率の測定及び評価を実施して、現像後反射率(現像後低反射性)の評価とした。
現像前反射率(現像前低反射性)と現像後反射率(現像後低反射性)が、共に、A又はBである場合、遮光膜の低反射性が優れると判断する。
【0365】
<耐光性の評価>
上述の「現像前反射率の評価」で作成した遮光膜付き基板にスーパーキセノンフェーズメーター(スガ試験機社製)を用いて、照度50mW/cm2にて、7.5kWキセノンランプの波長300nm以上の光を、積算露光量5000万Lux・hで照射する照射処理を行った。その後、その反射率を、日本分光株式会社製分光器V7200(商品名)を使用して測定し、照射処理前後での、各波長の光に対する反射率変動を計算し、下記基準に従って耐光性を評価した。
反射率変動は以下の式で計算される。
反射率変動(%)=|(照射処理の後の反射率(%)-照射処理の前の反射率(%))|
「A」:波長400~700nmにおける反射率変動の最大値が1%以下
「B」:波長400~700nmにおける反射率変動の最大値が1%より高く3%以下
「C」:波長400~700nmにおける反射率変動の最大値が3%より高い
【0366】
〔結果〕
試験に供した組成物の配合と、対応する組成物を用いて実施した試験の結果を下記表に示す。
表4中、各原料名の欄に対応するマスに記載された数字は、各組成物中における各原料の含有量(質量部)を示す。
例えば、組成物1は、分散液Aを、78.00質量部含有することを示す。
また、表において、固形分が100%ではない形態で組成物の調製に供した原料については、固形分以外の成分の質量も含めた添加量(質量部)を記載している。
例えば、組成物34は、より詳細には、樹脂A-11を30質量%含有する樹脂溶液を3.25質量部含有する。
「色材」の欄は、試験に供した組成物が含有する黒色着色材の種類を示す。「TB」はチタンブラック(T-1)を意味し、「CB」は被覆カーボンブラックを意味し、「IB」はIrgaphor Black S 0100 CFを意味し、「RB」はRed顔料とBlue顔料との混合顔料であることを示す。
「樹脂タイプ」の欄は、試験に供した組成物が含有する特定樹脂のタイプを示す。「主鎖」は主鎖型特定高分子を意味し、「側鎖」は側鎖型特定高分子を意味する。
「樹脂添加量」の欄は、試験に供した組成物が含有する樹脂の含有量を示す。樹脂の含有量は、組成物の全固形分に対する質量百分率(質量%)で示した。なお、ここでいう樹脂としては、上述の<樹脂>の欄で示した樹脂を意図する。例えば、組成物が含有する分散剤は、「樹脂添加量」を算出するための樹脂の含有量としては計上しない。
「開始剤吸光特性」の欄は、試験に供した組成物が含有する重合開始剤を、アセトニトリルに0.001質量%の濃度で溶解させた場合において、得られた溶液の波長340nmにおける吸光度は0.45以上になるか否かを示す。本要件を満たす場合はAと記載し、満たさない場合をBと記載した。
「被覆層膜厚」の欄は、遮光性の評価において作製した遮光膜における、被覆層の膜厚を示す。被覆層の膜厚は断面SEMによって測定した。なお、測定不可と記載した遮光膜では、被覆層が遮光膜の面状が荒れてしまったため、被覆層の膜厚を測定できなかった。
【0367】
【0368】
【0369】
【0370】
【0371】
【0372】
表に示すように、本発明の組成物を使用すれば、本発明の課題を解決できることが確認された。
【0373】
また、黒色着色材が、チタンブラック等の金属窒化物顔料である場合、得られる遮光膜の低反射性がより優れることが確認された(実施例6~10の比較等)。
実施例6において、チタンブラックを窒化バナジウム VN-O(日本新金属(株)製)、窒化ニオブ NbN-O(日本新金属(株)製)、特開2017-222559号公報の(実施例1)の方法で調製した窒化ジルコニウムにそれぞれ変更して同様に評価した結果、それぞれ実施例6と同様の結果であった。
実施例6において、チタンブラックをシリカ被覆窒化ジルコニウム(特開2015-117302号公報)に変更して同様に評価した結果、実施例6と同様の結果であった。
実施例6において、チタンブラックを、チタンブラック:窒化ジルコニウム=1:9、3:7、5:5、7:3、9:1に代えても同様の効果が得られた(比率は重量比)。また、チタンブラック:シリカ被覆窒化ジルコニウム=1:9、3:7、5:5、7:3、9:1に代えても同様の効果が得られた(比率は重量比)。
【0374】
特定樹脂が、主鎖型特定樹脂(一般式(2)で表される特定樹脂)である場合、得られる遮光膜の低反射性がより優れることが確認された(実施例1~2と、実施例6~7との比較等)。
また、実施例6において、A-10をXX-1と同様に合成した下記化合物(主鎖型特定樹脂、Mn3000、Mw5100、酸価0mgKOH/g、C=C価0.67mmol/g)に変更し、同様に評価した結果、実施例6と同じ結果であった。
【0375】
【0376】
特定樹脂が側鎖型特定樹脂である場合、側鎖型特定樹脂の含有量が、固形分の全質量に対して5.0質量%以上である場合、得られる遮光膜の現像後における低反射性がより優れることが確認された(実施例1と21との比較等)。
【0377】
特定樹脂が側鎖型特定樹脂である場合、側鎖型特定樹脂の含有量が、固形分の全質量に対して10.0質量%以下である場合、得られる遮光膜の現像後における低反射性がより優れることが確認された(実施例21と22との比較等)。
【0378】
組成物が含有する重合開始剤が、アセトニトリルに0.001質量%の濃度で溶解させた場合において、得られた溶液の、光路長10mm、波長340nmにおける吸光度が0.45以上になる重合開始剤である場合、得られる遮光膜の現像後における低反射性がより優れることが確認された(実施例14の結果等)。
実施例6において、重合開始剤I-1をIRGACURE 369(商品名、BASF社製)に変更して同様に評価した結果、遮光性と現像後低反射性がBであった以外は実施例6と同等であった。
【0379】
実施例1において、重合禁止剤を添加しない場合においても実施例1と同様の結果であった。また、実施例6において、重合禁止剤を添加しない場合においても実施例6と同様の結果であった。
【0380】
実施例6の遮光膜を用いて、国際公開WO2018/061644記載の方法に従い固体撮像素子を作製したところ良好な性能を有していた。
【0381】
組成物6に、上述の方法で調製したシリカ粒子分散液S-1(固形分20質量%)を13質量部添加し、次いで、PGMEAを添加して、固形分濃度が組成物6と同じである組成物101を調製した。組成物101中の表面修飾されたシリカ粒子の含有量は、組成物6中の固形分の含有量に対して8質量%であった。組成物6を組成物101に変更して実施例6と同様に評価した結果、実施例6と同等の評価が得られた。
シリカ粒子分散液S-1に代えてシリカ粒子分散液S-2~S-14(いずれも固形分20質量%)をそれぞれ用いること以外は上述の方法に従って、固形分濃度が組成物6と同じである組成物102~114をそれぞれ調製した。組成物6を組成物102~114に変更して実施例6と同様に評価した結果、いずれも実施例6と同等の評価が得られた。
【符号の説明】
【0382】
10・・・硬化膜
12・・・黒色層
14・・・被覆層
16・・・基板
100・・・固体撮像装置
101・・・固体撮像素子
102・・・撮像部
103・・・カバーガラス
104・・・スペーサー
105・・・積層基板
106・・・チップ基板
107・・・回路基板
108・・・電極パッド
109・・・外部接続端子
110・・・貫通電極
111・・・レンズ層
112・・・レンズ材
113・・・支持体
114、115・・・遮光膜
201・・・受光素子
202・・・カラーフィルタ
201・・・受光素子
202・・・カラーフィルタ
203・・・マイクロレンズ
204・・・基板
205b・・・青色画素
205r・・・赤色画素
205g・・・緑色画素
205bm・・・ブラックマトリクス
206・・・pウェル層
207・・・読み出しゲート部
208・・・垂直転送路
209・・・素子分離領域
210・・・ゲート絶縁膜
211・・・垂直転送電極
212・・・遮光膜
213、214・・・絶縁膜
215・・・平坦化膜
300・・・赤外線センサ
310・・・固体撮像素子
311・・・赤外線吸収フィルタ
312・・・カラーフィルタ
313・・・赤外線透過フィルタ
314・・・樹脂膜
315・・・マイクロレンズ
316・・・平坦化膜