(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】アミド系化合物の回収方法および装置
(51)【国際特許分類】
C07D 207/267 20060101AFI20220725BHJP
C08G 75/02 20160101ALI20220725BHJP
【FI】
C07D207/267
C08G75/02
(21)【出願番号】P 2020563487
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 KR2019012634
(87)【国際公開番号】W WO2020067797
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0116449
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0119141
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】サンファン・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ジン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ハンソル・キム
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-078197(JP,A)
【文献】特開平04-277001(JP,A)
【文献】特開平08-109167(JP,A)
【文献】特開昭48-025686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 207/267
C08G 75/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に分離壁が備えられ、内部が前記分離壁が位置しない塔頂領域および塔底領域と、前記分離壁を含む中間領域に区分され、前記中間領域は前記分離壁によって分けられる抽出領域と蒸留領域に区分される蒸留塔の抽出領域に、水とアミド系化合物を含む混合液および抽出溶媒を投入する段階(第1段階)、
前記蒸留塔の抽出領域で、アミド系化合物と抽出溶媒を前記抽出領域の上部流れに分離留出し、水は前記抽出領域の下部流れに分離されて前記蒸留塔の塔底領域で抽出領域側に配置されている第1留出ポートに分離留出する段階(第2段階)、および
前記抽出領域の上部流れおよび下部流れのうちの少なくとも一つ以上は前記蒸留塔の蒸留領域に流入され、抽出溶媒は前記蒸留領域の上部流れに分離されて前記蒸留塔の塔頂領域の第2留出ポートに分離留出し、水は前記蒸留領域の中間部流れに分離されて前記蒸留領域の第3留出ポートに分離留出し、アミド系化合物は前記蒸留領域の下部流れに分離されて前記蒸留塔の塔底領域で蒸留領域側に配置されている第4留出ポートに分離留出する段階(第3段階)、
を含
み、
前記混合液は、ポリアリーレンスルフィドの合成および洗浄工程で生成される廃液であり、
前記アミド系化合物は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N-メチル-ε-カプロラクタム、1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノン、テトラメチル尿素およびヘキサメチルリン酸トリアミドのうちの1つ以上であり、
前記抽出溶媒は、炭素数1~20の芳香族または脂肪族炭化水素化合物および前記炭化水素の水素一つ以上が塩素(Cl)などのハロゲン元素で置換された化合物からなる群より選択される1種以上である、アミド系化合物の回収方法。
【請求項2】
前記蒸留塔の塔頂領域は抽出領域の上部流れと蒸留領域の上部流れが共に存在し、前記蒸留塔の塔底領域は抽出領域の下部流れと蒸留領域の下部流れが共に存在することを特徴とする、請求項1に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項3】
前記蒸留塔の塔底領域で抽出領域側に配置されている第1留出ポートから留出される全体成分中の水の含量は90重量%以上であり、前記蒸留塔の塔頂領域の第2留出ポートから留出される全体成分中のアミド系化合物の含量は10重量%以下であり、前記蒸留塔の塔底領域で蒸留領域側に配置されている第4留出ポートから留出される全体成分中のアミド系化合物の含量は90重量%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項4】
前記アミド系化合物は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N-メチル-ε-カプロラクタム、1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノン、およびテトラメチル尿素からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項5】
前記抽出溶媒は、沸点が200℃以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項6】
前記抽出溶媒は、ベンゼン、クロロベンゼン、およびクロロホルムからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項7】
前記第1段階で、抽出溶媒は水とアミド系化合物を含む混合液の総重量100重量部を基準にして100重量部~300重量部の含量で投入することを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項8】
前記第2段階は、20℃~35℃条件下で抽出工程を行うことを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項9】
前記第2段階は、抽出段数が3段~10段になるようにして抽出工程を行うことを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項10】
前記蒸留塔で塔頂領域の温度を50℃~90℃に調節することを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項11】
前記蒸留塔で塔底領域の温度を180℃~220℃に調節することを特徴とする、請求項1から1
0のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項12】
前記蒸留塔の理論段数は9段~25段になるようにして蒸留工程を行うことを特徴とする、請求項1から1
1のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項13】
前記蒸留塔で塔頂領域の還流比を1.0以下に調節することを特徴とする、請求項1から1
2のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収方法。
【請求項14】
分離壁が備えられた蒸留塔を含み、
前記蒸留塔は内部が前記分離壁が位置しない塔頂領域および塔底領域と、前記分離壁を含む中間領域に区分され、前記中間領域は前記分離壁によって分けられる抽出領域と蒸留領域に区分され、
前記抽出領域は、水とアミド系化合物を含む混合液と抽出溶媒を流入する一つ以上の供給ポートと水を含む液/液分離液を排出する一つ以上の第1留出ポートを含み、
前記蒸留領域側の留出ポートは3個のストリームから構成され、抽出溶媒を含む上部流れの分離液を排出する一つ以上の第2留出ポート、水を含む中間流れの分離液を排出する一つ以上の第3留出ポート、およびアミド系化合物を含む下部流れの分離液を排出する一つ以上の第4留出ポートを含
み、
前記混合液は、ポリアリーレンスルフィドの合成および洗浄工程で生成される廃液であり、
前記アミド系化合物は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N-メチル-ε-カプロラクタム、1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノン、テトラメチル尿素およびヘキサメチルリン酸トリアミドのうちの1つ以上であり、
前記抽出溶媒は、炭素数1~20の芳香族または脂肪族炭化水素化合物および前記炭化水素の水素一つ以上が塩素(Cl)などのハロゲン元素で置換された化合物からなる群より選択される1種以上である、
アミド系化合物の回収装置。
【請求項15】
水とアミド系化合物を含む混合液および抽出溶媒が前記抽出領域の供給ポートに流入され、流入された前記混合液と抽出溶媒はアミド系化合物と抽出溶媒が前記抽出領域の上部流れに分離留出され、水は前記抽出領域の下部流れに分離されて前記蒸留塔の塔底領域で抽出領域側に配置されている第1留出ポートに分離留出されることを特徴とする、請求項1
4に記載のアミド系化合物の回収装置。
【請求項16】
前記抽出領域の上部流れおよび下部流れのうちの少なくとも一つ以上は前記蒸留塔の蒸留領域に流入され、抽出溶媒は前記蒸留領域の上部流れに分離されて前記蒸留塔の塔頂領域の第2留出ポートに分離留出され、水は前記蒸留領域の中間部流れに分離されて前記蒸留領域の第3留出ポートに分離留出され、アミド系化合物は前記蒸留領域の下部流れに分離されて前記蒸留塔の塔底領域で蒸留領域側に配置されている第4留出ポートに分離留出されることを特徴とする、請求項1
4または1
5に記載のアミド系化合物の回収装置。
【請求項17】
前記蒸留塔で、分離壁は蒸留塔の塔頂を基準にして算出された理論段数の20%~50%に位置することを特徴とする、請求項1
4から1
6のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収装置。
【請求項18】
前記蒸留塔で、抽出領域の供給ポートは蒸留塔の塔頂を基準にして算出された理論段数の2%~98%に位置することを特徴とする、請求項1
4から1
7のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収装置。
【請求項19】
前記蒸留塔で抽出領域の供給ポートは、水とアミド系化合物を含む混合液が投入される第1供給ポートと抽出溶媒が投入される第2供給ポートに区分されて2つ以上備えられることを特徴とする、請求項1
4から1
8のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収装置。
【請求項20】
前記水とアミド系化合物を含む混合液が投入される第1供給ポートは、蒸留塔の塔頂を基準にして算出された理論段数の20%以内に位置し、
前記抽出溶媒が投入される第2供給ポートは、蒸留塔の塔頂を基準にして算出された理論段数の90%以上に位置することを特徴とする、請求項
19に記載のアミド系化合物の回収装置。
【請求項21】
前記蒸留塔で、
抽出領域側の第1留出ポートは、塔下部の塔底領域に固定されており、
蒸留領域側の第2留出ポートおよび第4留出ポートはそれぞれ塔上部の塔頂領域と塔下部の塔底領域は固定されており、第3留出ポートは蒸留塔の塔頂を基準にして算出された理論段数の40%~65%に位置することを特徴とする、請求項1
4から2
0のいずれか一項に記載のアミド系化合物の回収装置。
【請求項22】
アルカリ金属の水硫化物およびアルカリ金属の水酸化物を、水およびアミド系化合物の混合溶媒中で脱水反応(dehydration)を行って、アルカリ金属の硫化物、および水とアミド系化合物の混合溶媒を含む硫黄供給源を製造する段階;
前記硫黄供給源を含む反応器にジハロゲン化芳香族化合物およびアミド系化合物を添加し、重合反応させてポリアリーレンスルフィドを合成する段階;
前記ポリアリーレンスルフィドを含む重合反応生成物をアミド系化合物および水からなる群より選択された1種以上で洗浄する段階;
前記洗浄段階で得られた水とアミド系化合物を含む混合液および抽出溶媒を、内部に分離壁が備えられ、内部が前記分離壁が位置しない塔頂領域および塔底領域と、前記分離壁を含む中間領域に区分され、前記中間領域は前記分離壁によって分けられる抽出領域と蒸留領域に区分される蒸留塔の抽出領域に投入する段階;
前記蒸留塔の抽出領域で、アミド系化合物と抽出溶媒を前記抽出領域の上部流れに分離留出し、水は前記抽出領域の下部流れに分離されて前記蒸留塔の塔底領域で抽出領域側に配置されている第1留出ポートに分離留出する段階;および
前記抽出領域の上部流れおよび下部流れのうちの少なくとも一つ以上は前記蒸留塔の蒸留領域に流入され、抽出溶媒は前記蒸留領域の上部流れに分離されて前記蒸留塔の塔頂領域の第2留出ポートに分離留出し、水は前記蒸留領域の中間部流れに分離されて前記蒸留領域の第3留出ポートに分離留出し、アミド系化合物は前記蒸留領域の下部流れに分離されて前記蒸留塔の塔底領域で蒸留領域側に配置されている第4留出ポートに分離留出する段階;
を含
み、
前記混合液は、ポリアリーレンスルフィドの合成および洗浄工程で生成される廃液であり、
前記アミド系化合物は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N-メチル-ε-カプロラクタム、1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノン、テトラメチル尿素およびヘキサメチルリン酸トリアミドのうちの1つ以上であり、
前記抽出溶媒は、炭素数1~20の芳香族または脂肪族炭化水素化合物および前記炭化水素の水素一つ以上が塩素(Cl)などのハロゲン元素で置換された化合物からなる群より選択される1種以上である、ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2018年9月28日付韓国特許出願第10-2018-0116449号および2019年9月26日付韓国特許出願第10-2019-0119141号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物を含む水溶液からN-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物を効率的に回収する方法および回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ポリフェニレンスルフィド(Polyphenylene sulfide;PPS)に代表されるポリアリーレンスルフィド(Polyarylene sulfide、PAS)は優れた強度、耐熱性、難燃性および加工性によって自動車、電気・電子製品、機械類などで金属、特にアルミニウムや亜鉛のようなダイカスト(die casting)金属を代替する素材として幅広く使用されている。特に、PPS樹脂の場合、流動性が良いためガラス繊維などのフィラーや補強剤と混練してコンパウンドとして使用するのに有利である。
【0004】
一般にPAS重合工程でN-メチルピロリドン(NMP)などのアミド系化合物を溶媒として使用する方法が工業的に広く知られている。また、PASを重合した後にも、残留する未反応物質をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのアミド系化合物や水で洗浄して除去している。このように使用されたN-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物は通常の有機溶媒より高価であるだけでなく、水溶液として排出した場合に環境汚染の主原因になると知られていて、一般に回収精製して循環再利用されている。
【0005】
しかし、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物は有機物溶解性が高いので水との相溶性も優れていて水と無限大に混合し、またPAS製造工程からの留出液のように無機塩が多量溶解されている場合にはそのまま蒸留することも難しいため多様な回収方法が試みられてきた。
【0006】
特に、既存に知られた蒸留工程の場合に、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物を高純度に分離回収するためには蒸留塔の理論段数を高めるための装置費用が多くかかりエネルギー消費が多いという短所がある。また、PAS製造工程からの留出液のように無機塩が溶解されている場合には蒸留塔内の流動性を確保するために多くのアミド系化合物を残さなければならないので残留成分による損失が多くて処理費用が大きくなるという短所がある。このような蒸留工程の短所を克服するために、抽出工程やメンブレン工程の開発が試みられたが、抽出溶媒に不純物として含まれている無機塩が混入されて追加的に水で抽出しこの過程でアミド系化合物が逆抽出されることが発生するなど、いまだに分離効率性能が良くなくて当該技術が満了または廃棄されて広く使用されていない。
【0007】
これにより、全体工程のエネルギー消費を最小化し初期装置費用を減らすことができ、高純度の化合物を分離することができるアミド系化合物の回収工程に対する開発が持続的に要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物を含む水溶液からN-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物を効率的に回収する方法および装置を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の一実施形態によれば、内部に分離壁が備えられ、内部が前記分離壁が位置しない塔頂領域および塔底領域と、前記分離壁を含む中間領域に区分され、前記中間領域は前記分離壁によって分けられる抽出領域と蒸留領域に区分される蒸留塔の抽出領域に、水とアミド系化合物を含む混合液および抽出溶媒を投入する段階(第1段階);前記蒸留塔の抽出領域で、アミド系化合物と抽出溶媒を前記抽出領域の上部流れに分離留出し、水は前記抽出領域の下部流れに分離されて前記蒸留塔の塔底領域で抽出領域側に配置されている第1留出ポートに分離留出する段階(第2段階)、および
前記抽出領域の上部流れおよび下部流れのうちの少なくとも一つ以上は前記蒸留塔の蒸留領域に流入され、抽出溶媒は前記蒸留領域の上部流れに分離されて前記蒸留塔の塔頂領域の第2留出ポートに分離留出し、水は前記蒸留領域の中間部流れに分離されて前記蒸留領域の第3留出ポートに分離留出し、アミド系化合物は前記蒸留領域の下部流れに分離されて前記蒸留塔の塔底領域で蒸留領域側に配置されている第4留出ポートに分離留出する段階(第3段階)を含む、アミド系化合物の回収方法が提供される。
【0010】
また、発明の他の一実施形態によれば、前述のような方法に使用することができるアミド系化合物の回収装置が提供される。
【0011】
また、発明の他の一実施形態によれば、前述のようなアミド系化合物の回収段階を含む方法を含むポリアリーレンスルフィドの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
前述のように、本発明によれば、抽出工程と蒸留工程を同時に行い分離効率性能を向上させながら、全体工程のエネルギー消費を最小化し初期装置費用を減らすことができ、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物を含む水溶液から高純度のアミド系化合物を効率的に分離回収することができる優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態による分離壁型蒸留塔を含む回収装置と回収工程を例示的に示す模式図である。
【
図2】比較例1による従来の蒸留工程を用いた回収装置と回収工程を例示的に示す模式図である。
【
図3】比較例2による従来の抽出および蒸留工程を用いた回収装置と回収工程を例示的に示す模式図である。
【
図4】比較例3による既存の方式で別途の液/液抽出領域なく蒸留工程のみを行う分離壁型蒸留塔を含む回収装置と回収工程を例示的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、第1、第2、第3、第4などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。
【0015】
また、本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在するのを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0016】
本発明は多様な変更を加えることができ様々な形態を有することができるので、特定実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0017】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0018】
本発明は、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物を含む水溶液からN-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物を効率的に回収する方法および装置が提供される。
【0019】
特に、本発明は、ポリアリーレンスルフィド(Polyarylene sulfide、PAS)製造工程から生成される多様な無機塩と不純物が含まれている廃液から高純度のアミド系化合物を効率的に分離することができるように、抽出工程と蒸留工程を同時に用いて分離効率性能を向上させながら、全体工程のエネルギー消費を最小化し初期装置費用も節減することができるようにすることを特徴とする。
【0020】
発明の一実施形態によれば、前記アミド系化合物の回収方法は、内部に分離壁が備えられ、内部が前記分離壁が位置しない塔頂領域および塔底領域と、前記分離壁を含む中間領域に区分され、前記中間領域は前記分離壁(
図1の107参照)によって分けられる抽出領域と蒸留領域に区分される蒸留塔の抽出領域に、水とアミド系化合物を含む混合液および抽出溶媒を投入する段階(第1段階、
図1のストリーム101および102参照);前記蒸留塔の抽出領域で、アミド系化合物と抽出溶媒を前記抽出領域の上部流れに分離留出し、水は前記抽出領域の下部流れに分離されて前記蒸留塔の塔底領域で抽出領域側に配置されている第1留出ポートに分離留出する段階(第2段階、
図1のストリーム106参照)、および前記抽出領域の上部流れおよび下部流れのうちの少なくとも一つ以上は前記蒸留塔の蒸留領域に流入され、抽出溶媒は前記蒸留領域の上部流れに分離されて前記蒸留塔の塔頂領域の第2留出ポートに分離留出し(
図1のストリーム103参照)、水は前記蒸留領域の中間部流れに分離されて前記蒸留領域の第3留出ポートに分離留出し(
図1のストリーム104参照)、アミド系化合物は前記蒸留領域の下部流れに分離されて前記蒸留塔の塔底領域で蒸留領域側に配置されている第4留出ポートに分離留出する段階(第3段階、
図1のストリーム105参照)を含む。
【0021】
前記アミド系化合物の回収方法は、アミド系化合物を含む水溶液に対して抽出溶媒を使用して液/液抽出する段階(第2段階)、および得られた抽出液の蒸留段階(第3段階)を一つの蒸留塔内で同時に行うことを特徴とする。
【0022】
具体的には、前記アミド系化合物の回収方法は、水とアミド系化合物を含む混合液および抽出溶媒を前記分離壁型蒸留塔の抽出領域に投入する段階(第1段階)を含む。
【0023】
特に、前記アミド系化合物の回収方法は、
図1に示したように、内部に分離壁が備えられ、内部が前記分離壁が位置しない塔頂領域および塔底領域と、前記分離壁を含む中間領域に区分され、前記中間領域は前記分離壁によって分けられる抽出領域と蒸留領域に区分される分離壁型蒸留塔を用いて行うことができる。
【0024】
但し、
図1は単に例示的なものであって、本発明のアミド系化合物の回収工程および装置の範囲が添付された図面に制限されるわけではない。
【0025】
本発明によるアミド系化合物の回収工程で使用することができる分離壁型蒸留塔の具体的な種類は特に制限されない。例えば、
図1に示されたような一般的な構造の分離壁型(dividing-wall)蒸留塔を使用するか、精製効率を考慮して蒸留塔内の分離壁の位置や形態が変更設計された蒸留塔の使用も可能である。また、場合によって、分離壁による抽出領域と蒸留領域を別途のカラムで構成し、分離壁が位置しない塔頂領域と塔底領域は前記抽出領域と蒸留領域を相互両方向にストリーム連結して熱力学的に同一空間を形成する形態に変更設計されたペトリューク(Petlyuk)蒸留塔などを使用することもできる。一例として、ペトリューク蒸留塔を分離壁型蒸留塔の代案として使用する場合、分離壁型蒸留塔の分離壁で区分される領域が別個の予備分留塔によって代替された蒸留塔形態を有し、この時予備分留塔からの上部生成物は(分離壁型蒸留塔でない)後続塔の上部部分に導入され、予備分留塔からの下部生成物は後続塔の底部部分に導入される形態になり得る。ここで、予備分留塔は分離壁と共に加熱器または凝縮器を備えないが、予備分留塔の後続塔の上部部分からの液体と後続塔の底部部分からの蒸気が予備分留塔に導入される形態であり得る。また、蒸留塔の段数および内径なども特に制限されず、例えば、精製しようとする混合液の組成を考慮した蒸留曲線から類推される理論段数などに基づいて設定することができる。
【0026】
具体的に、前記分離壁型蒸留塔は低沸点、中沸点、高沸点の3成分を含む原料の蒸留のために考案された装置であって、ペトリューク蒸留塔と熱力学的観点から互いに類似した装置であり、ペトリューク蒸留塔は分離壁型蒸留塔の対する代案として使用することができる。一例として、前記ペトリューク蒸留塔は低沸点および高沸点物質を一次的に抽出塔で抽出溶媒を入れて分離し抽出カラムの塔頂部分が蒸留領域の供給段に流入されて蒸留領域で低沸点、中沸点、そして高沸点物質をそれぞれ分離するように考案された。これに対し、分離壁型蒸留塔は塔内に分離壁を設置することによって抽出領域と蒸留領域を内部に統合させた形態である。抽出段階および分離壁型蒸留塔またはペトリューク蒸留塔などを使用した精製段階を含む本発明は、高純度のNMPおよび抽出溶媒を回収可能にする。本方法は、単純でありながらも経済的に非常に有利である。分離壁型蒸留塔またはペトリューク蒸留塔を使用することによって、蒸留塔の個数を減らすこと(蒸留塔ケーシング、加熱器、凝縮器または内部部品を減らすこと)が可能になり、これは蒸留工場の最初投資費と複雑性を緩和させる。また、エネルギー消費を顕著に節減することができる。
【0027】
特に、分離壁型蒸留塔の場合、ペトリューク蒸留塔とは異なり、設計が決められれば内部循環流れ量を調節できない構造的特性によって運転条件変動に対する柔軟性が落ちるので、蒸留塔の初期設計段階で多様な外乱(disturbance)に対する正確な模写と容易な制御が可能な制御構造の決定が必要であり、特に、蒸留しようとする対象化合物の性質によって蒸留塔の段数、供給段および留出段の位置などの設計構造および蒸留温度、圧力および還流比などの運転条件が特別に変更されなければならない。よって、本発明は前述のように、エネルギーを節減し設備費を減らすことができるように、ポリフェニレンスルフィド重合過程で使用される溶媒を高純度および高効率で分離するに適するように設計された分離壁型蒸留塔の運転条件を提供することができる。
【0028】
一つの例示で、本発明の分離壁型蒸留塔は、
図1のような構造を有することができる。
図1に示されているように、例示的な分離壁型蒸留塔は、内部が分離壁107によって分割されている。また、分離壁型蒸留塔の内部は、
図1で区画されているように、分離壁を含む中間領域と、前記分離壁を含まない上部領域および下部領域に区分できる。また、前記中間領域は、分離壁によって分けられる抽出領域および蒸留領域に区分できる。例えば、前記分離壁型蒸留塔は、低沸点流れが排出される塔頂領域、高沸点流れが排出される塔底領域、水とアミド系混合物を含む混合液を抽出溶媒と共に抽出分離する抽出領域および抽出溶媒を中間流れに分離留出する蒸留領域に区分できる。前記分離壁型蒸留塔の「塔頂」は前記分離壁型蒸留塔の塔の最も頂上部分を意味し、前述の分離壁型蒸留塔の上部領域に含まれ、前記分離壁型蒸留塔の「塔底」は前記分離壁型蒸留塔の塔の最も底部分を意味し、前述の分離壁型蒸留塔の下部領域に含まれ得る。この時、前記塔底領域は、分離壁の下方延長線を基準にして抽出領域に該当する側と蒸留領域側に該当する領域に追加的に区分できる。本明細書で特に異なって定義しない限り、上部領域は塔頂領域と同一な意味として使用され、下部領域は塔底領域と同一な意味として使用される。
【0029】
本発明で前記分離壁型蒸留塔は、前記抽出領域および蒸留領域が前記分離壁によって分離(separation)または孤立(isolation)されていてもよい。これにより、前記抽出領域内の流れと前記蒸留領域内の流れが互いに混合されるのを防止することができる。本明細書で用語「分離(separation)」または「孤立(isolation)」は、各領域での流れが分離壁によって分けられる領域で独立的に流れるか存在することを意味する。特に、このような抽出領域と蒸留領域を別途のカラムで構成し、前記抽出領域と蒸留領域の上部流れと下部流れを別途のストリームで互いに連結した形態に変更設計された方式で分離壁型蒸留塔が構成できる。一つの例示で、前記分離壁型蒸留塔の分離壁は、前記分離壁型蒸留塔の中間領域に含まれる。具体的に、前記分離壁は、前記分離壁型蒸留塔の理論段数を基準にして算出したとき、前記塔頂を基準にして算出された全体理論段数の約20%~約50%、あるいは約25%~約45%に配置することができる。ここで、「理論段数」は前記分離壁型蒸留塔で気相および液相のような2つの相が互いに平衡をなす仮想的な領域または段の数を意味する。前記分離壁が前記範囲で前記分離壁型蒸留塔の内部に含まれることによって、抽出領域内の流れと蒸留領域内の流れが混合されるのを効果的に遮断することができる。
【0030】
発明の一実施形態において、前記分離壁型蒸留塔は水とアミド系化合物を含む混合液および抽出溶媒が投入される供給ポートを含み、前記抽出領域の供給ポートは一つで構成され前記混合液と抽出溶媒が共に流入されてもよく、水とアミド系化合物を含む混合液が投入される第1供給ポートと抽出溶媒が投入される第2供給ポートに区分されて2つ以上で備えられてもよい。前記供給ポートを通じて水とアミド系化合物を含む混合液および抽出溶媒が前記分離型蒸留塔の抽出領域に投入される。
【0031】
この時、前記蒸留塔で、抽出領域の供給ポートは、蒸留塔の塔頂を基準にして算出された理論段数の2%~98%に配置することができる。また、前記抽出領域の供給ポートが、水とアミド系化合物を含む混合液が投入される第1供給ポートと、抽出溶媒が投入される第2供給ポートに区分されて2つ以上で備えられる場合、水とアミド系化合物を含む混合液が投入される第1供給ポート(
図1のストリーム101および101i参照)は蒸留塔の塔頂を基準にして算出された理論段数の20%以内または2%~20%、あるいは10%以内または2%~10%に位置し、抽出溶媒を投入する第2供給ポート(
図1のストリーム102および102i参照)は算出された理論段数の80%以上または80%~98%、あるいは90%以上または90%~98%に配置することができる。
【0032】
本発明は特に、ポリアリーレンスルフィド(Polyarylene sulfide、PAS)製造工程から生成される多様な無機塩と不純物が含まれている廃液から、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系化合物を効率的に分離しようとするものである。これにより、前記分離壁型蒸留塔の抽出領域に投入される混合液は、水とアミド系化合物と共にアルカリ金属の水硫化物、アルカリ金属の硫化物、アルカリ金属のハロゲン化物、ジハロゲン化芳香族化合物、およびポリアリーレンスルフィドからなる群より選択される1種以上を追加的に含むものであってもよい。具体的に、前記混合液は、水とアミド系化合物と共に塩化ナトリウム(NaCl)、o-ジクロロベンゼン(o-DCB)、m-ジクロロベンゼン(m-DCB)、p-ジクロロベンゼン(p-DCB)、硫化水素ナトリウム(NaSH)、硫化ナトリウム(Na2S)、およびポリフェニレンスルフィド(PPS)からなる群より選択される1種以上を追加的に含むものであってもよい。
【0033】
一例として、ポリアリーレンスルフィド(Polyarylene sulfide、PAS)製造工程で洗浄後廃液の組成はNMPなどのアミド系化合物を約20重量%~約70重量%、または約30重量%~約60重量%を含み、塩化ナトリウム(NaCl)が含まれているブラインの組成は約30重量%~約80重量%、または約40重量%~約70重量%を含むことができる。また、前記廃液には、p-DCB、NaSH、Na2Sおよび分散されたPPS微細粒子を含むその他の不純物を、前記溶液媒体の総重量に対して約10重量%以内、または約5重量%以内で追加的に含むことができる。その他の不純物には2-ピロリジノン(2-pyrrolidinone)、1-メチル-2,5-ピロリジノン(1-methyl-2,5-pyrrolidione)、そして3-クロロ-N-メチルアニリン(3-Chloro-N-Methylaniline)などがあり、これらのうちの一つ以上であってもよい。
【0034】
ここで、前記アミド系化合物の具体的な例としては、N,N-ジメチルホルムアミドまたはN,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド化合物;N-メチル-2-ピロリドン(NMP)またはN-シクロヘキシル-2-ピロリドンなどのピロリドン化合物;N-メチル-ε-カプロラクタムなどのカプロラクタム化合物;1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノンなどのイミダゾリジノン化合物;テトラメチル尿素などの尿素化合物;またはヘキサメチルリン酸トリアミドなどのリン酸アミド化合物などが挙げられ、これらのうちの一つ以上であってもよい。
【0035】
また、前記分離壁型蒸留塔の抽出領域に、水とアミド系化合物を含む混合液と共に投入されて抽出工程を行う抽出溶媒としては、水に溶解されず水よりは沸点が高くNMPなどのアミド系化合物よりは沸点が低い物質を使用することができる。具体的に、前記抽出溶媒は、沸点が約200℃以下または約55℃~約200℃、あるいは約180℃以下または約58℃~約180℃、あるいは約160℃以下または約60℃~約160℃であってもよい。前記抽出溶媒は、水溶液中でアミド系化合物を効果的に液/液抽出する側面から、水に溶解されずに、後段の蒸留工程で追加的にアミド系化合物と容易な分離のために沸点が約200℃以下になるのが好ましい。
【0036】
また、前記抽出溶媒としては、炭素数1~20の芳香族または脂肪族炭化水素化合物および前記炭化水素の水素一つ以上が塩素(Cl)などのハロゲン元素で置換された化合物からなる群より選択される1種以上であってもよい。前記抽出溶媒の具体的な一例としては、ベンゼン(C6H6)、クロロベンゼン(C6H5Cl)およびクロロホルム(CHCl3)などが挙げられ、これらのうちの一つ以上であってもよい。
【0037】
前記抽出溶媒は、水とアミド系化合物を含む混合液の総重量100重量部を基準にして約100重量部~300重量部、または約110重量部~280重量部、または約120重量部~250重量部の含量で投入することができる。
【0038】
本発明は、蒸留塔内の前段領域で前述のような抽出溶媒を使用し、分離された抽出液を同一な蒸留塔内の後段領域で蒸留してアミド系化合物を全体エネルギー消費を最小化し高純度に分離することができる。
【0039】
一例として、前記第1段階で、水とアミド系化合物を含む混合液と抽出溶媒は、常温および常圧条件下で蒸留塔に投入できる。ここで、常温とは室温(room temperature)を意味し約20℃~約30℃であり、常圧とは大気圧(atmospheric pressure)を意味し約0.8~1.2kgf/cm2であり得る。
【0040】
発明の一実施形態で、前記分離壁型蒸留塔の抽出領域に水とアミド系化合物を含む混合液および抽出溶媒を投入した後に、抽出工程を通じてアミド化合物と抽出溶媒が前記抽出領域の上部流れに分離留出され、水が前記抽出領域の下部流れに分離されて前記蒸留塔の塔底領域で抽出領域側に配置されている第1留出ポート(
図1のストリーム106および留出ポート106o参照)に分離留出される(第2段階)。
【0041】
この時、前記第2段階で、抽出工程は約3段~約10段で構成でき、好ましくは約4段~約7段、または約5段~約6段で構成することができる。前記抽出工程の平衡段数は所望の溶質の抽出程度によって決定され、与えられた混合液に対する抽出溶媒(solvent-to-feed)流量比から導出される平衡段数に基づいて設定することができる。また、前記抽出工程は大気圧条件下で約20~30℃で運転することができる。但し、前記抽出工程に関連する具体的な工程条件は水とアミド系化合物の組成および流量や流速(flow rate)、抽出溶媒の種類と投入量によって異にして適用することができる。
【0042】
一方、抽出領域で液/液分離を通じて下部流れに分離された水は、前記蒸留塔の塔底領域で抽出領域側に配置されている第1留出ポート(
図1の106o参照)から分離留出されて蒸留塔の外部に吐出されるか、前記第1段階の混合液に再循環され得る。この時、前記蒸留塔の塔底領域で抽出領域側に配置されている第1留出ポートから留出される全体成分中の水の含量は、約90重量%以上または約90重量%~約99.9重量%、あるいは約95重量%以上または約95重量%~約99.9重量%であってもよい。ここで、前記蒸留塔の塔底領域で抽出領域側に配置されている第1留出ポートから留出される全体成分中の水以外の残り残量はアミド系化合物であり得る。
【0043】
前記蒸留塔の塔底領域で抽出領域側に配置されている第1留出ポートは一つまたは2つ以上で備えられ、下部流れに含まれている水の含量によって外部に吐出されるか前記第1段階の混合液に再循環される用途に細分化することができる。
【0044】
また、本発明では、抽出領域の抽出段数と蒸留領域の理論段数を最適化して構成し、蒸留領域で蒸留温度と還流比などの工程条件を最適化して、前記抽出領域で液/液分離された水は塔底領域で抽出領域側に配置されている第1留出ポート(
図1で106o参照)を通じて分離壁で構成された分離領域、即ち、蒸留領域や抽出領域でない外部に可能な限り分離排出されるように構成することもできる。この時、前記抽出領域の下部流れ(
図1で106参照)は純粋な水であって、蒸留領域とぶつからず外部に吐出され得る。
【0045】
一方、発明の一実施形態で、前記抽出領域の上部流れおよび下部流れのうちの少なくとも一つ以上は前記蒸留塔の蒸留領域に流入され、抽出溶媒は前記蒸留領域の上部流れに分離されて前記蒸留塔の塔頂領域の第2留出ポート(
図1のストリーム103および留出ポート103o参照)に分離留出し、水は前記蒸留領域の中間部流れに分離されて前記蒸留領域の第3留出ポート(
図1のストリーム104および留出ポート104o参照)に分離留出し、アミド系化合物は前記蒸留領域の下部流れに分離されて前記蒸留塔の塔底領域で蒸留領域側に配置されている第4留出ポート(
図1のストリーム105および留出ポート105o参照)に分離留出される(第3段階)。
【0046】
前記第3段階で、蒸留工程の理論段数は、約9段~約25段、または約12段~約20段、または約14段~約16段で構成できる。前記蒸留領域の理論段数は、原料組成を考慮した蒸留曲線から類推される理論段数などに基づいて設定することができる。
【0047】
前記蒸留領域で、主に抽出溶媒を含む蒸留液を留出する第2留出ポート(
図1の103o参照)は塔頂領域に位置し、主にアミド系化合物を含む蒸留液を留出する第4留出ポート(
図1の105o参照)は塔底領域に位置し、蒸留塔の中間領域で主に水を含む蒸留液を留出する第3留出ポート(
図1の104o参照)は前記蒸留塔の塔頂を基準にして算出された理論段数の約40%~約65%、または約45%~約60%に配置することができる。ここで、前記塔頂の第2留出ポート(
図1の103o参照)から留出される主に抽出溶媒を含む蒸留液は別途に外部に吐出されるか抽出領域に再循環され、この時、前記第2留出ポートから排出されるストリームの一部が凝縮器(
図1の108参照)を経て再循環用追加供給ポート(
図1の103i参照)を通じて分離壁型蒸留塔の塔頂領域に投入され得る。また、蒸留塔の中間領域で蒸留領域の第3留出ポート(
図1の104o参照)に留出される主に水を含む蒸留液は、別途に外部に吐出されるか前記第1段階の混合液に再循環され得る。また、前記塔底の第4留出ポート(
図1の105o参照)から留出される主にアミド系化合物を含む蒸留液は別途に外部に吐出されるか蒸留領域に再循環され、この時、前記第4留出ポートから排出されるストリームの一部が再沸器(
図1の109参照)を経て再循環用追加供給ポート(
図1の105i参照)を通じて分離壁型蒸留塔の塔底領域に投入され得る。
【0048】
このような蒸留工程を経ると、前記蒸留塔の塔頂領域の第2留出ポートから留出される全体成分中のアミド系化合物の含量は、約10重量%以下または約0.1重量%~約10重量%、あるいは約5重量%以下または約0.1重量%~約5重量%であり得る。ここで、前記蒸留塔の塔頂領域の第2留出ポートから留出される全体成分中のアミド系化合物以外の残り残量は、抽出溶媒であるか、または抽出溶媒と水の混合液であり得る。このような塔頂留出ポートから留出される蒸留液は、別途に外部に吐出されるか、抽出領域や蒸留領域に再循環され得る。また、前記蒸留塔の塔底領域で蒸留領域側に配置されている第4留出ポートから留出される全体成分中のアミド系化合物の含量は、約90重量%以上または約90重量%~約99.9重量%、あるいは約95重量%以上または約95重量%~約99.9重量%であり得る。ここで、前記蒸留塔の塔底領域で抽出領域側に配置されている第1留出ポートから留出される全体成分中のアミド系化合物以外の残り残量は水であり得る。
【0049】
前記蒸留塔の蒸留領域で塔頂領域、塔底領域、中間領域に配置されている留出ポートはそれぞれ一つまたは2つ以上で備えられ、該当蒸留液の組成によって外部に吐出されるか抽出領域や蒸留領域に再循環される用途に細分化することができる。
【0050】
また、前記のように水とアミド系化合物を含む混合液から前述のように塔頂領域および塔底領域で特定含量範囲でアミド系化合物を留出させるために、蒸留塔内部の温度および圧力条件は特定範囲に制御できる。
【0051】
前記分離壁型蒸留塔の塔頂領域の温度は、約50℃~約90℃、または約50℃~約80℃、または約50℃~約65℃に調節することができる。また、前記分離壁型蒸留塔の塔底領域の温度は、約180℃~220℃、または約185℃~215℃、または約190℃~210℃に調節することができる。
【0052】
この時、前記第3段階は、蒸留工程は別途の減圧や加圧条件なく大気圧条件下で行うことができる。
【0053】
前記分離壁型蒸留塔の塔頂流れの中の前記分離壁型蒸留塔の塔頂領域に還流される塔頂流れの還流比は、約1.0以下または約0.1~約1.0、あるいは約0.8以下または約0.15~約0.8、あるいは約0.6以下または約0.2~約0.6であってもよい。ここで、「還流比」は前記蒸留塔から留出される留出流量(kg/hr)に対して還流される流量(kg/hr)の比を意味する。
【0054】
一例として、前記第2段階の抽出工程と第3段階の蒸留工程は一つの蒸留塔で行うことであって、蒸留塔の塔頂および塔底領域に適用する温度、圧力、還流比を同一に適用される。
【0055】
一方、発明の他の一実施形態によれば、前述のような方法に使用することができるアミド系化合物の回収装置が提供される。
【0056】
前記アミド系化合物の回収装置は分離壁が備えられた蒸留塔を含み;前記蒸留塔は内部が前記分離壁が位置しない塔頂領域および塔底領域と、前記分離壁を含む中間領域に区分され、前記中間領域は前記分離壁によって分けられる抽出領域と蒸留領域に区分され;前記抽出領域は水とアミド系化合物を含む混合液と抽出溶媒を流入する一つ以上の供給ポート(
図1の101iおよび102i参照)と水を含む液/液分離液を排出する一つ以上の第1留出ポート(
図1の106o参照)を含み;前記蒸留領域側の留出ポートは3つのストリームで構成され、抽出溶媒を含む上部流れの分離液を排出する一つ以上の第2留出ポート(
図1の103o参照)、水を含む中間流れの分離液を排出する一つ以上の第3留出ポート(
図1の104o参照)、およびアミド系化合物を含む下部流れの分離液を排出する一つ以上の第4留出ポート(
図1の105o参照)を含むことを特徴とする。
【0057】
具体的に、前記アミド系化合物の回収装置は、水とアミド系化合物を含む混合液および抽出溶媒が前記抽出領域の供給ポートに流入され、流入された前記混合液と抽出溶媒はアミド系化合物と抽出溶媒が前記抽出領域の上部流れに分離留出され、水は前記抽出領域の下部流れに分離されて前記蒸留塔の塔底領域で抽出領域側に配置されている第1留出ポートに分離留出されることを特徴とする。また、前記アミド系化合物の回収装置は、前記抽出領域の上部流れおよび下部流れのうちの少なくとも一つ以上は前記蒸留塔の蒸留領域に流入され、抽出溶媒は前記蒸留領域の上部流れに分離されて前記蒸留塔の塔頂領域の第2留出ポートに分離留出され、水は前記蒸留領域の中間部流れに分離されて前記蒸留領域の第3留出ポートに分離留出され、アミド系化合物は前記蒸留領域の下部流れに分離されて前記蒸留塔の塔底領域で蒸留領域側に配置されている第4留出ポートに分離留出されることを特徴とする。
【0058】
特に、本発明によるアミド系化合物の回収装置は抽出領域と蒸留領域を含む蒸留塔から構成され、精製工程で使用される蒸留塔の個数(蒸留塔ケーシング、加熱器、凝縮器または内部部品など)を最小化し精製工程を単純化させエネルギー消費を最小化して全体工程効率を極大化することができる。これにより、蒸留工程の最初投資費と複雑性を緩和させ、またエネルギー消費を顕著に節減することができる。
【0059】
本発明の他の一実施形態で、前記分離壁型蒸留塔の構成および分離壁、供給ポート、留出ポートなどと水とアミド系化合物、抽出溶媒に関する特徴は前述の通りであり、具体的な説明は省略する。
【0060】
前記アミド系化合物の回収装置は、凝縮器、再沸器などを追加的に含むことができる。前記「凝縮器」は蒸留塔と別途に設置された装置であって、前記本体から留出された物質を外部から流入された冷却水と接触させるなどの方式で冷却させるための装置を意味することができる。例えば、
図1に例示したアミド系化合物の回収装置で、凝縮器108は前記分離壁型蒸留塔の塔頂領域から留出される塔頂流れ103を凝縮させる装置であり得る。また、前記「再沸器」は蒸留塔の外部に設置された加熱装置であり、沸点の高い流れを再び加熱および蒸発させるための装置を意味することができる。例えば、
図1に例示したアミド系化合物の回収装置で、再沸器109は前記分離壁型蒸留塔の塔底領域で蒸留領域側に配置された留出ポートに留出される塔底流れ105を加熱する装置であり得る。
【0061】
前記アミド系化合物の回収装置は、抽出装置や蒸留装置に使用可能であると知られた通常変更可能な装置を付加的に備えて変更できる。
【0062】
一方、発明の他の一実施形態によれば、前述のようなアミド系化合物の回収工程を含むポリアリーレンスルフィドの製造方法が提供される。
【0063】
前記ポリアリーレンスルフィドの製造方法は、アルカリ金属の水硫化物およびアルカリ金属の水酸化物を、水およびアミド系化合物の混合溶媒中で脱水反応(dehydration)を行って、アルカリ金属の硫化物、および水とアミド系化合物の混合溶媒を含む硫黄供給源を製造する段階(製造工程の第1段階);前記硫黄供給源を含む反応器にジハロゲン化芳香族化合物およびアミド系化合物を添加し、重合反応させてポリアリーレンスルフィドを合成する段階(製造工程の第2段階);前記ポリアリーレンスルフィドを含む重合反応生成物をアミド系化合物および水からなる群より選択された1種以上で洗浄する段階(製造工程の第3段階);前記洗浄段階で得られた水とアミド系化合物を含む混合液および抽出溶媒を、内部に分離壁が備えられ、内部が前記分離壁が位置しない塔頂領域および塔底領域と、前記分離壁を含む中間領域に区分され、前記中間領域は前記分離壁によって分けられる抽出領域と蒸留領域に区分される蒸留塔の抽出領域に投入する段階(製造工程の第4段階);前記蒸留塔の抽出領域で、アミド系化合物と抽出溶媒を前記抽出領域の上部流れに分離留出し、水は前記抽出領域の下部流れに分離されて前記蒸留塔の塔底領域で抽出領域側に配置されている第1留出ポートに分離留出する段階(製造工程の第5段階);および前記抽出領域の上部流れおよび下部流れのうちの少なくとも一つ以上は前記蒸留塔の蒸留領域に流入され、抽出溶媒は前記蒸留領域の上部流れに分離されて前記蒸留塔の塔頂領域の第2留出ポートに分離留出し、水は前記蒸留領域の中間部流れに分離されて前記蒸留領域の第3留出ポートに分離留出し、アミド系化合物は前記蒸留領域の下部流れに分離されて前記蒸留塔の塔底領域で蒸留領域側に配置されている第4留出ポートに分離留出する段階(製造工程の第6段階);を含むことを特徴とする。
【0064】
本発明の他の一実施形態による前記ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、各段階別に説明する。
【0065】
前述の製造工程の第1段階は、硫黄供給源を準備する段階である。
【0066】
前記硫黄供給源は、アルカリ金属の水硫化物、アルカリ金属の水酸化物を、水およびアミド系化合物の混合溶媒中で脱水反応(dehydration)を行って製造されたものである。したがって、前記硫黄供給源は、アルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物の反応によって生成されたアルカリ金属の硫化物と共に、脱水反応後残留する水、アミド系化合物の混合溶媒を含むことができる。
【0067】
前記アルカリ金属の硫化物は反応時使用されるアルカリ金属の水硫化物の種類によって決定でき、具体的な例としては硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウムまたは硫化セシウムなどが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が含まれ得る。
【0068】
前記アルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物の反応による硫黄供給源の製造時、使用可能なアルカリ金属の水硫化物は、具体的な例としては、硫化水素リチウム、硫化水素ナトリウム、硫化水素カリウム、硫化水素ルビジウムまたは硫化水素セシウムなどが挙げられる。これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用でき、これらの無水物または水和物も使用可能である。
【0069】
また、前記アルカリ金属の水酸化物の具体的な例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、または水酸化セシウムなどが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。前記アルカリ金属の水酸化物は、アルカリ金属の水硫化物1当量に対して0.90~2.0の当量比、より具体的には1.0~1.5の当量比、よりさらに具体的には1.0~1.2の当量比で使用できる。
【0070】
一方、本発明において、当量はモル当量(eq/mol)を意味する。
【0071】
また、前記アルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物の反応による硫黄供給源の製造時、重合助剤として重合反応を促進させて短時間内にポリアリーレンスルフィドの重合度を高めることができるアルカリ金属の有機酸塩が投入できる。前記アルカリ金属の有機酸塩は具体的に、酢酸リチウム、または酢酸ナトリウムなどであってもよく、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。前記アルカリ金属の有機酸塩は、アルカリ金属の水硫化物1当量に対して0.01~1.0、より具体的には0.01~0.8、よりさらに具体的には0.05~0.5の当量比で使用できる。
【0072】
前記アルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物の反応は、水とアミド系化合物の混合溶媒中で行われ、この時、前記アミド系化合物の具体的な例としてはN,N-ジメチルホルムアミドまたはN,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド化合物;N-メチル-2-ピロリドン(NMP)またはN-シクロヘキシル-2-ピロリドンなどのピロリドン化合物;N-メチル-ε-カプロラクタムなどのカプロラクタム化合物;1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノンなどのイミダゾリジノン化合物;テトラメチル尿素などの尿素化合物;またはヘキサメチルリン酸トリアミドなどのリン酸アミド化合物などが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。この中でも、反応効率およびポリアリーレンスルフィド製造のための重合時重合溶媒としての共溶媒効果を考慮する時、前記アミド系化合物はより具体的にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)であり得る。
【0073】
また、前記水はアミド系化合物1当量に対して約1~8の当量比で使用でき、より具体的には約1.5~5、よりさらに具体的には約2.5~5の当量比で使用できる。
【0074】
一方、前記第1段階で、アルカリ金属の水硫化物およびアルカリ金属の水酸化物などを含む反応物は脱水反応(dehydration)を通じてアルカリ金属の硫化物を生成させることができる。この時、前記脱水反応は、約130~205℃の温度範囲で、約100~500rpmの速度で攪拌して行うことができる。より具体的には、約175~200℃の温度範囲で約100~300rpmの速度で攪拌して行うことができる。この時、前記脱水反応の時間は、約30分から6時間以内、または約1時間から3時間以内で行うことができる。
【0075】
このような脱水工程中に反応物中の水などの溶媒が蒸留などを通じて除去でき、水と共にアミド系化合物の一部が排出され、また硫黄供給源内に含まれている一部硫黄が脱水工程中の熱によって水と反応して硫化水素気体として揮散できる。
【0076】
一方、前記のようなアルカリ金属の水硫化物、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ金属塩の反応結果として、アルカリ金属の硫化物が水とアミド系化合物の混合溶媒中に固体相で析出される。これにより、本発明によるポリアリーレンスルフィド製造時に硫黄供給源として、前記アルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物を反応させて製造した硫黄供給源が使用される場合、硫黄供給源のモル比は反応時に投入したアルカリ金属の水硫化物のモル比とする。
【0077】
次いで、前記反応結果として生成されたアルカリ金属の硫化物を含む反応生成物中の水などの溶媒を除去するために、脱水工程が行われる。前記脱水工程はこの分野でよく知られた方法によって行うことができるので、その条件が大きく制限されず、具体的な工程条件は前述の通りである。
【0078】
また、前記脱水工程中に硫黄供給源内に含まれている硫黄が水と反応して硫化水素とアルカリ金属水酸化物が生成され、生成された硫化水素は揮散されるため、脱水工程中に系外に揮散する硫化水素によって脱水工程後に系内に残存する硫黄供給源中の硫黄の量は減少できる。一例として、アルカリ金属水硫化物を主成分とする硫黄供給源を使用する場合、脱水工程後に系内に残存する硫黄の量は、投入した硫黄供給源内の硫黄のモル量から系外に揮散した硫化水素のモル量を引いた値と同一である。これにより、系外に揮散した硫化水素の量から脱水工程後に系内に残存する硫黄供給源中に含まれている有効硫黄の量を定量することが必要である。具体的に、前記脱水工程は、有効硫黄1モルに対して水が1~5のモル比、より具体的には1.5~4、よりさらに具体的には1.75~3.5のモル比になるまで行うことができる。前記脱水工程によって硫黄供給源内水分量が過度に減少する場合には、重合工程に先立ち水を添加して水分量を調節することができる。
【0079】
これにより、前記のようなアルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物の反応および脱水によって製造された硫黄供給源は、アルカリ金属の硫化物と共に、水およびアミド系化合物の混合溶媒を含むことができ、前記水は硫黄供給源内に含まれている硫黄1モルに対して具体的に1.75~3.5のモル比で含まれ得る。また、前記硫黄供給源は、硫黄と水の反応によって生成されたアルカリ金属の水酸化物をさらに含むことができる。
【0080】
一方、本発明の一実施形態により、前記製造工程の第2段階は、前記硫黄供給源をジハロゲン化芳香族化合物と重合反応させてポリアリーレンスルフィドを製造する段階である。
【0081】
前記ポリアリーレンスルフィドの製造のために使用可能なジハロゲン化芳香族化合物は、芳香族環での二つの水素がハロゲン原子で置換された化合物であって、具体的な例としてはo-ジハロベンゼン、m-ジハロベンゼン、p-ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシドまたはジハロジフェニルケトンなどが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。前記ジハロゲン化芳香族化合物において、ハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素であってもよい。この中でも、ポリアリーレンスルフィド製造時反応性および副反応生成減少効果などを考慮する時、p-ジクロロベンゼン(p-DCB)が使用できる。
【0082】
前記ジハロゲン化芳香族化合物は、硫黄供給源1当量を基準にして約0.8~1.2の当量で投入できる。前記含量範囲内で投入される場合、製造されるポリアリーレンスルフィドの溶融粘度低下およびポリアリーレンスルフィド内に存在するクロリン含量の増加に対する恐れなく、優れた物性的特徴を有するポリアリーレンスルフィドを製造することができる。硫黄供給源とジハロゲン化芳香族化合物の添加量制御による改善効果の優れているのを考慮する時、より具体的にはジハロゲン化芳香族化合物は約0.9~1.1の当量で投入できる。
【0083】
また、前記製造工程の第2段階を行う前に、ジハロゲン化芳香族化合物の気化を防止するために前記硫黄供給源を含む反応器の温度を約150~200℃の温度に低下させる段階をさらに含むことができる。
【0084】
また、前記硫黄供給源とジハロゲン化芳香族化合物の重合反応は、非プロトン性極性有機溶媒として、高温でアルカリに対して安定的なアミド系化合物の溶媒中で行うことができる。
【0085】
前記アミド系化合物の具体的な例は前述の通りであり、例示された化合物中でも、反応効率などを考慮する時、より具体的に前記アミド系化合物はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)またはN-シクロヘキシル-2-ピロリドンなどのピロリドン化合物であり得る。
【0086】
前記第1段階での硫黄供給源中に含まれているアミド系化合物が共溶媒として作用できるので、前記製造工程の第2段階で添加されるアミド系化合物は重合反応系内に存在するアミド系化合物に対する水(H2O)のモル比(水/アミド系化合物のモル比)が約0.85以上になるようにする量で添加できる。
【0087】
また、前記重合反応時、分子量調節剤、架橋剤など重合反応や分子量を調節するためのその他の添加剤が最終製造されるポリアリーレンスルフィドの物性および製造収率を低下させない範囲内の含量でさらに添加されてもよい。
【0088】
前記硫黄供給源とジハロゲン化芳香族化合物の重合反応は、約200~300℃で行うことができる。または、前記温度範囲内で温度を変化させながら多段階で行われてもよい。具体的には、約200℃以上約250℃未満での1次重合反応後、連続して1次重合反応時の温度より高い温度で、具体的には約250℃~300℃で2次重合反応が行われ得る。
【0089】
一方、本発明の一実施形態により、前記製造工程の第3段階は、前記重合反応の結果として生成された反応生成物のうちの重合後に生成されるオリゴマー(oligomer)などや塩化ナトリウム(NaCl)などのアルカリ金属ハロゲン化物などの不純物の除去のためにアミド系化合物および水のうちから1種以上を使用して洗浄する段階である。
【0090】
前記アミド系化合物の具体的な例は前述の通りであり、例示された化合物の中でも、洗浄効率などを考慮する時、より具体的に前記アミド系化合物はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)であり得る。
【0091】
このようにアミド系化合物や水を使用した洗浄工程はこの分野でよく知られた方法によって行うことができるので、その条件が大きく制限されない。
【0092】
また、前記洗浄工程を通じて得られた混合液は後述の蒸留塔に投入するのに先立ち、オリゴマー(oligomer)などや塩化ナトリウム(NaCl)などのアルカリ金属ハロゲン化物、または微粉の分散されたポリアリーレンスルフィド粒子などを除去するためにフィルタリング段階を追加的に行うことができる。このようなフィルタリング工程はこの分野でよく知られた方法によって行うことができるので、その条件が大きく制限されない。
【0093】
一方、本発明の一実施形態により、前記製造工程の第4段階~第6段階は、前記洗浄工程などで得られた水とアミド系化合物の混合液からアミド系化合物を分離回収する段階である。
【0094】
本発明の他の一実施形態で、水とアミド系化合物の混合液からアミド系化合物を分離回収する工程に関する特徴は前述の通りであり、具体的な説明は省略する。
【0095】
前記ポリアリーレンスルフィドの具体的な製造方法および前記アミド系化合物の具体的な分離回収方法は後述の実施例を参照することができる。しかし、ポリアリーレンスルフィドの製造方法やアミド系化合物の分離回収方法が本明細書に記述した内容に限定されるのではなく、前記製造方法および分離回収方法は本発明の属する技術分野における通常採用する段階を追加的に採用することができ、前記製造方法および分離回収方法の段階は通常変更可能な段階によって変更できる。
【0096】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、これによって本発明の内容が限定されるのではない。
【実施例】
【0097】
<ポリフェニレンスルフィドの製造>
製造例1
PPSポリマーを作るために70%硫化水素ナトリウム(NaSH)と水酸化ナトリウム(NaOH)を1:1.05比率で混合して硫化ナトリウムを製造する。この時、0.33当量の酢酸ナトリウム(CH3COONa)粉末および1.65当量のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、4.72当量の脱イオン水(DI water)を反応器に添加した。ここで、当量はモル当量(eq/mol)を意味する。この時、固体試薬を先に入れ、NMP、DI water順に投入した。その後、反応器を約150rpmで攪拌し、約215℃まで加熱して脱水させた。その後、硫化水素ナトリウムより1.04倍多い当量のパラ-ジクロロベンゼン(p-DCB)と1.65当量のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を反応器に添加した。その後、反応混合物は、前段反応では約230℃まで加熱して約2時間反応させ、再び後段反応で約255℃まで加熱して約2時間反応させた後に蒸留水を添加して2時間以上攪拌し、その反応生成物であるPPSポリマーを得た。
【0098】
前記重合工程を終えた後、反応生成物は残留する未反応物質や副産物を除去するために約90℃のDI waterとNMPを用いてそれぞれ一回ずつ洗浄した後にろ過させた。このような洗浄とろ過過程を二回さらに反復実施し、最終生成物である線状ポリフェニレンスルフィド(PPS)と洗浄後廃液としてNMPを含む水性媒体を回収した。
【0099】
この時、前記洗浄後廃液にはNMP含有の水性媒体であるブライン(NaCl水溶液)が含まれており、ここで、NMP組成が約20~70重量%であり、NaClが含まれているブラインの組成が約30~80重量%になった。また、前記廃液にはNMPとブラインの溶媒総重量に対してp-DCB、NaSH、Na2S、微粉PPS、および2-ピロリジノン(2-pyrrolidinone)などの微細粒子を含むその他の不純物を約10重量%以内を含んでいた。
【0100】
<N-メチル-2-ピロリドンの分離回収>
実施例1
製造例1のPPS重合後洗浄工程から得られた廃液に対してろ過(filter)などの前処理過程を通じてNaClおよびPPSなどの微粉を除去し、NMP20重量%および水80重量%を含む組成の混合液を、
図1に示したように分離壁が備えられた分離壁型蒸留塔に導入して、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行った。
【0101】
まず、水とNMPを含む混合液である前記廃液と抽出溶媒を、前記分離壁型蒸留塔の前段にある抽出領域に備えられたそれぞれの供給ポートに投入して、前記抽出領域で抽出工程を行った。ここで、前記混合液は700kg/hrの流量で分離壁型蒸留塔で分離壁(
図1の107)を中心にして前段に配置された抽出領域最上段に投入し(
図1のストリーム101)、抽出溶媒であるクロロホルム(CHCl
3)は1300kg/hrの速度で抽出領域最下段に投入した(
図1のストリーム102)。前記混合液と抽出溶媒の温度は25℃であった。また、前記抽出溶媒は、前記混合液の総重量100重量部を基準にして約185重量部の含量で投入した。前記混合液と抽出溶媒は分離壁型蒸留塔の前段に導入されて液/液抽出を行った。
【0102】
前記抽出領域で抽出工程は5段から構成され、大気圧条件で約20~30℃で運転した。具体的に抽出領域の塔頂温度は24.57℃であり、塔底温度は31.74℃であった。前記抽出工程が行われ、前記抽出領域の上部流れに低沸点と中沸点混合物、即ち、水と抽出溶媒が分離されて塔上部に移動し、前記抽出領域の下部流れに高沸点と中沸点混合物、即ち、NMPと抽出溶媒が分離されて塔下部に移動し、前記分離壁型蒸留塔の後段にある蒸留領域に流入された。この時、前記抽出領域で液/液抽出で分離された水は、塔底領域で抽出領域側に配置されている留出ポートを通じて外部に排出した(
図1のストリーム106)。
【0103】
前記分離壁型蒸留塔の蒸留領域で、蒸留工程は大気圧条件下で行った。理論段数が15段である分離壁型蒸留塔の後段に配置されている蒸留領域に、前段の抽出領域で液/液分離されたアミド系化合物と抽出溶媒の混合液を流入して蒸留工程を行った。一方、前記分離壁型蒸留塔の塔頂領域の運転温度は54.36℃になるように調節し、塔底領域の運転温度は202.12℃に調節した。前記分離壁型蒸留塔の塔頂領域の還流比は0.4、Bottom rateは140kg/hr(
図1のストリーム105)であった。
【0104】
前記蒸留工程が行われて、主に抽出溶媒は前記蒸留領域の上部流れに分離されて前記蒸留塔の塔頂領域の第2留出ポートに留出して分離され(
図1のストリーム103)、抽出段階に再循環される。また、前記蒸留領域の中間部流れは主に水を含む蒸留液からなり(
図1のストリーム104)、前記分離壁型蒸留塔の8段に位置する蒸留領域の留出ポートに排出され、以後に原料投入として再循環され得る。NMPは前記蒸留領域の下部流れに分離されて前記蒸留塔の塔底領域で蒸留領域側に配置されている留出ポートに留出して(
図1のストリーム105)分離して貯蔵した。この時、前記塔頂流れ(
図1のストリーム103)内のNMPの含量は前記塔頂流れに含まれる全体成分に対して0.1重量%以内であり、前記塔下部に排出される下部流れ(
図1のストリーム105)内のNMPの含量は前記塔底流れに含まれる全体成分に対して99.26重量%の純粋(99%以上)NMPであるのを確認した。
【0105】
実施例1によってN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行うことにおいて、
図1に示した各ストリームによる組成(単位:重量%)および温度、総流量は下記表1に示した通りである。
【0106】
【0107】
比較例1
製造例1のPPS重合後洗浄工程から得られた廃液に対してろ過(filter)などの前処理過程を通じてNaClおよびPPSなどの微粉を除去し、NMP19.12重量%および水80.88重量%を含む組成の混合液を、
図2に示したような既存の蒸留塔を用いてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行った。
【0108】
まず、水とNMPを含む前記混合液(
図2のストリーム201)を別途の抽出溶媒なく633kg/hrの流量で理論段数が15段である既存の蒸留塔の8段に位置する混合液供給ポートに流入して分離工程を行った。この時、蒸留工程は塔上部温度を100.02℃とし、塔下部温度を173.88℃条件で行った。
【0109】
前記塔頂流れ(
図2のストリーム202)内のNMPの含量は前記塔頂流れに含まれる全体成分に対して1重量%であり、前記塔底流れ(
図2のストリーム203)内のNMPの含量は前記塔底流れに含まれる全体成分に対して98重量%であることを確認した。
【0110】
比較例1によって別途の抽出工程なく蒸留工程のみを行ってN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行うことにおいて、
図2に示した各ストリームによる組成(単位:重量%)および温度、総流量は下記表2に示した通りである。
【0111】
【0112】
比較例2
製造例1のPPS重合後洗浄工程から得られた廃液に対してろ過(filter)などの前処理過程を通じてNaClおよびPPSなどの微粉を除去し、NMP20重量%および水80重量%を含む組成の混合液を、
図3に示したように抽出溶媒を投入して抽出工程を行った後に別途蒸留装置を用いてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行った。
【0113】
まず、水とNMPを含む前記混合液(
図3のストリーム301)と抽出溶媒としてクロロホルム(
図3のストリーム302)を共に抽出塔に投入して、約25℃の大気圧条件で抽出工程を行った。この時、前記抽出溶媒は、前記混合液の総重量100重量部を基準にして185重量部の含量で投入した。このような抽出工程を通じて液/液分離が終わり、抽出塔の上部に留出されるNMP、水、抽出溶媒を含む抽出液(
図3のストリーム304)は総流量1439kg/hrで理論段数が15段である既存の蒸留塔の8段に位置する抽出液供給ポートに流入して蒸留工程を追加的に行った。この時、蒸留工程は約203℃で大気圧条件で行った。
【0114】
一方、前記抽出工程の塔下部に99重量%以上の水を含む留出液(
図3のストリーム303)が吐出された。蒸留塔に導入されたNMP、抽出溶媒、そして水は蒸留塔で分離されて、蒸留塔上部の流れ(
図3のストリーム305)に99%以上の抽出溶媒が排出されて抽出段階に再循環され、蒸留塔下部の流れ(
図3のストリーム306)に純粋なNMPが99%濃度で排出された。
【0115】
比較例2によって抽出溶媒を投入して抽出工程を行った後に別途蒸留装置を用いてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行うことにおいて、
図3に示した各ストリームによる組成(単位:重量%)および温度、総流量は下記表3に示した通りである。
【0116】
【0117】
比較例3
図4に示したように分離壁が備えられた分離壁型蒸留塔を使用するが、既存の方式のように前段領域で液/液抽出工程を行う抽出領域なく、分離壁の前段および後段両方ともで蒸留工程のみを行ったことを除いては、実施例1と同様な条件および方法でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行った。
【0118】
具体的に、水とNMPを含む混合液である前記廃液と抽出溶媒を分離壁型蒸留塔の前段に備えられたそれぞれ供給ポートに投入し(
図4のストリーム401および402)別途の液/液抽出なく実施例1と同様な条件で蒸留工程を行って、塔頂領域の上部流れに主に水と抽出溶媒が共に排出され(
図4のストリーム403)、主に抽出溶媒を含む蒸留液は中間流れに排出され(
図4のストリーム404)、塔底領域の下部流れには主にNMPと一部の水が共に排出された(
図4のストリーム405)。この時、前記塔頂流れ(
図4のストリーム403)内のNMPの含量は前記塔頂流れに含まれる全体成分に対して1重量%以内であって実施例1と類似した程度であったが、前記塔下部に排出される下部流れ(
図4のストリーム405)内のNMPの含量は前記塔底流れに含まれる全体成分に対して82.1重量%に過ぎないことが確認された。
【0119】
比較例3によってN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行うことにおいて、
図4に示した各ストリームによる組成(単位:重量%)および温度、総流量は下記表4に示した通りである。
【0120】
【0121】
<試験例1>
実施例1および比較例1-2によるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程でエネルギー消費量と最終製品の純度は次のような方法で評価し、測定結果は下記表5に示した通りである。
【0122】
1)総エネルギー使用量(×106kJ/hr)
同等な原料投入量と最終回収された製品の純度を基準にして、実施例および比較例の精製工程に使用された総エネルギー使用量を時間単位で測定した。
【0123】
2)最終回収された製品の純度(%)
同等な原料投入量を基準にして最終回収された製品中でNMPおよび水の純度(%)を測定した。
【0124】
【0125】
上記表5に示したように、本発明による実施例1の精製工程で使用されたエネルギー総量は比較例1-2の蒸留装置を用いた精製工程で使用されたエネルギー総量に比べて総エネルギー消費量が顕著に減少したのを確認することができる。
【0126】
具体的に、本発明の実施例1による分離壁型蒸留塔を使用してNMPと水を分離する場合、比較例1によって既存の方式のとおり蒸留塔を用いた精製工程より総エネルギー使用量を約0.13×106kJ/hrを節減し、約12.6%のエネルギー節減効果を得ることができる。また、実施例1の精製工程によれば、比較例2によって抽出および蒸留工程を別途に稼動させた精製工程に比べても、総エネルギー使用量を約2.88×106kJ/hr節減し、約76.2%のエネルギー節減効果を得ることができる。
【0127】
実施例2
下記表6に示したような条件下で、分離壁型蒸留塔に原料投入(Feed)ストリームとして廃液であるNMP140kg/hr、水560kg/hrを45℃、3.5atmで投入し、抽出剤ストリームとしてクロロベンゼン(C6H5Cl、Chlorobenzene)4800kg/hrを55℃、3.5atmで投入したことを除いては、実施例1と同様な条件および方法でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行った。この時、分離壁型蒸留塔は抽出領域が5段、蒸留領域15段から構成され、還流比(reflux ratio)は0.2、bottoms rateは135kg/hrであった。
【0128】
実施例2によってN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行った結果、塔底領域で抽出領域側に配置されている留出ポートを通じて純度99.8mol%の水が552.6kg/hr回収された(
図1のストリーム106)。この時、水の回収率(%)は98.7%であり、前記水の回収率(%)は‘回収された水の量(kg)’を‘原料投入された水の量(kg)’で割った値である。また、前記塔頂流れ(
図1のストリーム103)内のNMPの含量は前記塔頂流れに含まれる全体成分に対して0.1重量%以内であり、前記塔下部に排出される塔底流れを通じて純度99.6mol%のNMPが134.4kg/hr回収された(
図1のストリーム105)。この時、NMPの回収率(%)は96%であり、前記水の回収率(%)は「回収された水の量(kg)」を「原料投入された水の量(kg)」で割った値である。
【0129】
実施例2によってN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程で使用された消費エネルギー量は1338.3kWであった。
【0130】
実施例3
下記表6に示したように、原料投入(Feed)ストリームとして廃液であるNMP280kg/hr、水420kg/hrで組成を異にして使用し、塔頂温度、塔底温度を異にしたことを除いては、実施例2と同様な方法でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行った。この時、bottoms rateは277kg/hrであった。
【0131】
実施例3によってN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行った結果、塔底領域で抽出領域側に配置されている留出ポートを通じて純度99.8mol%の水が406.74kg/hr回収された(
図1のストリーム106)。この時、水の回収率(%)は96.8%であった。また、前記塔頂流れ(
図1のストリーム103)内のNMPの含量は前記塔頂流れに含まれる全体成分に対して0.1重量%以内であり、前記塔下部に排出される塔底流れを通じて純度99.6mol%のNMPが275.8kg/hr回収された(
図1のストリーム105)。この時、NMPの回収率(%)は98.5%であった。
【0132】
実施例3によってN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程で使用された消費エネルギー量は392.9kWであった。
【0133】
実施例4
下記表6に示したように、原料投入(Feed)ストリームとして廃液であるNMP560kg/hr、水140kg/hrで組成を異にして使用し、塔頂温度、塔底温度を異にしたことを除いては、実施例2と同様な方法でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行った。この時、bottoms rateは555kg/hrであった。
【0134】
実施例4によってN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行った結果、塔底領域で抽出領域側に配置されている留出ポートを通じて純度99.8mol%の水が105.6kg/hr回収された(
図1のストリーム106)。この時、水の回収率(%)は96.8%であった。また、前記塔頂流れ(
図1のストリーム103)内のNMPの含量は前記塔頂流れに含まれる全体成分に対して0.1重量%以内であり、前記塔下部に排出される塔底流れを通じて純度99.9mol%のNMPが554.9kg/hr回収された(
図1のストリーム105)。この時、NMPの回収率(%)は98.5%であった。
【0135】
実施例4によってN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程で使用された消費エネルギー量は712.1kWであった。
【0136】
比較例4
下記表6に示したような条件下で、分離壁型蒸留塔に原料投入(Feed)ストリームとして廃液であるNMP140kg/hr、水560kg/hrを45℃、3.5atmで投入し、抽出剤ストリームとしてC6H5Cl4800kg/hrを55℃、3.5atmで投入したことを除いては、比較例3と同様な方法で液/液抽出工程なく分離壁型蒸留塔で蒸留工程のみを行い、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行った。この時、分離壁型蒸留塔は別途抽出領域なく蒸留領域のみ20段から構成、即ち、予備分離領域(prefractionator)5段と蒸留進行領域15段を含む20段から構成され、還流比(reflux ratio)は0.2、bottoms rateは135kg/hrであった。
【0137】
比較例4によってN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程を行った結果、純度98.6mol%の水が552.5kg/hr回収された(
図4のストリーム403)。この時、水の回収率(%)は98.7%であった。また、塔下部に排出される塔底流れを通じて純度94.2mol%のNMPが131kg/hr回収された(
図4のストリーム405)。この時、NMPの回収率(%)は94.2%であった。
【0138】
比較例4によってN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程で使用された消費エネルギー量は1802.5kWであった。
【0139】
<試験例2>
実施例2~4および比較例4によってN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程に対する主要工程条件および回収された水とNMPの純度と回収率、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の分離精製回収工程でエネルギー消費量は試験例1と前述したところと同様な方法で測定して評価し、その測定結果は下記表6に示した通りである。
【0140】
【0141】
上記表6に示したように、本発明による実施例2~4は抽出領域を通じて分離された水が下部ストリームに排出されて、比較例4に比べて水が再混合(back mixing)されず、回収されたアミド化合物と水、抽出溶媒などの純度が高く、回収された各成分の分離効率が優れているのが分かる。特に、実施例2~4の場合に同一な還流比で蒸留工程を行った比較例4に比べて回収された水とNMPの純度と回収率が全て高く示されるだけでなく、エネルギー消費量も顕著に減少したのが分かる。
【符号の説明】
【0142】
101:分離壁型蒸留塔の混合液投入ストリーム
101i:分離壁型蒸留塔の混合液投入用第1供給ポート
102:分離壁型蒸留塔の抽出溶媒投入ストリーム
102i:分離壁型蒸留塔の抽出溶媒投入用第2供給ポート
103:分離壁型蒸留塔の塔頂ストリーム
103i:分離壁型蒸留塔の塔頂ストリーム再循環用追加供給ポート
103o:分離壁型蒸留塔の塔頂Vapor留出ストリーム分離排出用第2留出ポート
104:分離壁型蒸留塔のサイドストリーム
104o:分離壁型蒸留塔のサイドストリーム分離排出用第3留出ポート
105:分離壁型蒸留塔の塔底ストリーム
105o:分離壁型蒸留塔の塔底ストリーム分離排出用第4留出ポート
105i:分離壁型蒸留塔の塔底ストリーム再循環用追加供給ポート
106:分離壁型蒸留塔の液/液分離排出ストリーム
106o:分離壁型蒸留塔の液/液分離ストリーム排出用第1留出ポート
107:分離壁型蒸留塔の分離壁
201:蒸留塔の混合液投入ストリーム
202:蒸留塔の塔頂ストリーム
203:蒸留塔の塔底ストリーム
301:抽出塔の混合液投入ストリーム
302:抽出塔の抽出溶媒投入ストリーム
303:抽出塔の塔底ストリーム
304:蒸留塔の抽出液投入ストリーム
305:蒸留塔の塔頂ストリーム
306:蒸留塔の塔底ストリーム
401:分離壁型蒸留塔の混合液投入ストリーム
402:分離壁型蒸留塔の抽出溶媒投入ストリーム
403:分離壁型蒸留塔の塔頂ストリーム
404:分離壁型蒸留塔のサイドストリーム
405:分離壁型蒸留塔の塔底ストリーム
407:分離壁型蒸留塔の分離壁
108、204、307、408:蒸留塔の凝縮器
109、205、308、409:蒸留塔の再沸器