(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】給水システム、および、給水システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
E03B 11/16 20060101AFI20220725BHJP
E03B 5/02 20060101ALI20220725BHJP
F17D 1/14 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
E03B11/16
E03B5/02
F17D1/14
(21)【出願番号】P 2018177379
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】関口 孝志
(72)【発明者】
【氏名】駒井 正和
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰雅
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 裕太
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-010405(JP,A)
【文献】特開2017-101515(JP,A)
【文献】特開2012-180834(JP,A)
【文献】特開2012-225349(JP,A)
【文献】特開2010-174523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 11/16
E03B 5/02
F17D 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の給水装置によって建物内の給水対象に給水する給水システムにおいて、
第1の給水装置と、
前記第1の給水装置の吐出側に設けられた第2の給水装置と、を備え、
前記第1の給水装置は、第1のポンプと、前記第1のポンプの運転を制御する第1の制御部と、を有し、
前記第2の給水装置は、第2のポンプと、前記第2のポンプの運転を制御する第2の制御部と、を有し、
前記複数の給水装置は、前記建物の電力線を通信回線として利用する電力線通信により互いに通信可能であり、
前記第2の制御部は、第1始動速度で前記第2のポンプを始動し、
前記第2の制御部は、前記電力線通信の異常を検出した場合、前記第1始動速度よりも緩やかな第2始動速度で前記第2のポンプを始動する、
給水システム。
【請求項2】
前記第2の制御部は、
前記給水システムの電源が起動されてから所定期間内に前記電力線通信の異常を検出した場合、前記第2始動速度で前記第2のポンプを始動する、
請求項1に記載の給水システム。
【請求項3】
前記第2の制御部は、
前記第2のポンプの吐出し圧力が所定の始動圧力以下に低下したら前記第2始動速度で前記第2のポンプを始動する、
請求項1に記載の給水システム。
【請求項4】
前記第2の制御部は、前記給水システムが起動されてから所定期間以内であって前記第1の制御部と前記電力線通信が確立されていない場合、前記給水システムが起動されたときに前記第2のポンプの吐出し圧力が所定の閾値未満であれば、前記第1の制御部と前記電力線通信が確立されるまで前記第2のポンプを停止させた状態とする、請求項1から3の何れか1項に記載の給水システム。
【請求項5】
第1の給水装置と、
前記第1の給水装置の吐出側に設けられた第2の給水装置と、を備えた給水システムにおいて、
前記第1の給水装置は、第1のポンプと、前記第1のポンプの運転を制御する第1の制御部と、を有し、
前記第2の給水装置は、第2のポンプと、前記第2のポンプの運転を制御する第2の制御部と、を有し、
前記第1の制御部と前記第2の制御部とは、電力線を通信回線として利用する電力線通信により互いに通信可能であり、
前記第2の制御部は、前記第2のポンプが所定の回転速度以上で運転されているときに、前記電力線通信の異常を検出しても前記第2のポンプの吐出し圧力と吸込圧力との少なくとも一方に基づいて前記第2のポンプの運転を継続させる、
給水システム。
【請求項6】
前記第2の制御部は、前記第2のポンプが前記所定の回転速度以上で運転されているときに前記電力線通信の異常を検出したら、前記第2のポンプの回転速度を低下させる、請求項5に記載の給水システム。
【請求項7】
前記第2の給水装置は、前記第2のポンプの駆動源としての第2のモータと、前記第2のモータに電力を供給する第2のインバータ装置と、を備え、
前記第2の制御部は、前記第2のポンプが前記所定の回転速度以上で運転されているときに前記電力線通信の異常を検出したら、前記第2のインバータ装置のキャリア周波数を低下させる、
請求項5又は6に記載の給水システム。
【請求項8】
前記第1の制御部は、前記電力線通信が正常に行われているときに、前記第1のポンプの吐出し圧力が所定の第1の始動圧力より低下したとき、及び前記第2のポンプの吐出し圧力が所定の第2の始動圧力より低下したときに、前記第1のポンプを始動させ、
前記第1の制御部は、前記電力線通信の異常を検出したときには、前記第1のポンプの吐出し圧力が前記第1の始動圧力より低下したときに前記第1のポンプを始動させる、
請求項1から7の何れか1項に記載の給水システム。
【請求項9】
前記第1の制御部は、前記電力線通信が正常に行われているときには前記第2のポンプの吸込圧力に基づいて前記第1のポンプの運転を制御し、前記電力線通信の異常を検出したときには前記第1の
ポンプの吐出し圧力に基づいて前記第1のポンプの運転を制御する、請求項1から8の何れか1項に記載の給水システム。
【請求項10】
前記第1の制御部は、前記電力線通信が正常に行われているときには、前記第2のポンプが停止した後に前記第1のポンプを停止させる、請求項1から9の何れか1項に記載の給水システム。
【請求項11】
前記第2の制御部は、前記第2のポンプの吸込圧力が所定の閾値以下で所定時間経過したときには前記第2のポンプを停止させる、請求項1から10の何れか1項に記載の給水システム。
【請求項12】
前記第1の給水装置は水道管に連結され、
前記第2の給水装置は前記第1の給水装置の吐出側に直列に連結される、
請求項1から11の何れか1項に記載の給水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水システム、および、給水システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルまたはマンションなどの建物に水(水道水)を供給するための装置として給水装置が広く使用されている。給水装置は、一般に、水を圧送するためのポンプと、このポンプの運転を制御する制御部と、を備えている。ポンプの吸込み口は水道管(水道本管)に接続されており、水道管からポンプに吸い込まれた水は、ポンプによって昇圧された後、建物内部に設けられた配水管を介して各給水栓(給水対象)に供給される。このような水道管に直結された給水装置は、一般に直結式給水装置と呼ばれている。
【0003】
また、従来、水道管に直結される第1の給水装置と、第1の給水装置の吐出側に連結される第2の給水装置と、を備えた給水システムが提案されている。こうした給水システムは例えば高層建築物への給水に使用され、第1の給水装置が水道管からの水を昇圧して低層階に供給し、第2の給水装置が第1の給水装置からの水を更に昇圧して高層階に供給する。
【0004】
このような直列に連結された2つの給水装置を備える給水システムでは、第1の給水装置が停止している状態で第2の給水装置が運転されると、第1の給水装置と第2給水装置とを連結する配水管の圧力が低下して負圧が形成されることがある。この状態で、排水管に連通する給水栓が開かれると、その給水栓から空気が吸い込まれてしまう。このため、特許文献1に記載の給水装置では、第1の給水装置の吐出側の圧力、第2の給水装置の吸込み側の圧力、または、第2の給水装置の吐出側の圧力がそれぞれの始動圧力に達したときに、第1の給水装置におけるポンプを始動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したような給水システムでは、第1の給水装置と第2の給水装置とが通信によって互いの運転状態をやりとりする。そして、それぞれの給水装置は互いの給水装置の運転状態に応じて自己の運転制御を行い、例えば上記したように2つの給水装置を連結する配管の圧力が意図しない低圧となることを防止している。このため、第1の給水装置と第2の給水装置との通信に不具合が生じた場合などには、給水システムの運転制御を適正に行うことが困難になる。しかしながら、給水対象への給水はライフラインであり、断水を極力避けるために可能な限り給水装置の運転は継続されることが好ましい。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、複数の給水装置を備える給水システムであって互いに通信可能な給水装置を備える給水システムにおいて、各給水装置を適切に制御することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態によれば、複数の給水装置によって建物内の給水対象に給水する給水システムが提案され、前記給水システムは、第1の給水装置と、前記第1の給水装置の吐出側に設けられた第2の給水装置と、を備え、前記第1の給水装置は、第1のポンプと、前
記第1のポンプの運転を制御する第1の制御部と、を有し、前記第2の給水装置は、第2のポンプと、前記第2のポンプの運転を制御する第2の制御部と、を有し、前記複数の給水装置は、前記建物の電力線を通信回線として利用する電力線通信により互いに通信可能であり、前記第2の制御部は、第1始動速度で前記第2のポンプを始動し、前記第2の制御部は、前記電力線通信の異常を検出した場合、前記第1始動速度よりも緩やかな第2始動速度で前記第2のポンプを始動する。
かかる形態によれば、電力線通信に異常が検出された場合に、第2のポンプを緩やかに始動して給水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る給水システムの概略構成を示す図である。
【
図1A】本実施形態における電力線通信を説明するための図である。
【
図4】第2のポンプの出力と第1のポンプの追従性との関係の一例を示す図である。
【
図5】第2のポンプの出力と第1のポンプの追従性との関係の別の一例を示す図である。
【
図6】第2のポンプの出力と第1のポンプの追従性との関係の別の一例を示す図である。
【
図7】第2のポンプの出力と第1のポンプの追従性との関係の別の一例を示す図である。
【
図8】第2の給水装置の他の構成例を示す模式図である。
【
図9】第1の給水装置の他の構成例を示す模式図である。
【
図10】第2の給水装置の制御部により実行される給水システム起動時制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】第2給水装置の制御部により実行される通信異常時制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】別の一実施形態に係る給水システムの概略構成を示す図である。
【
図13】更に別の一実施形態に係る給水システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る給水システムの概略構成を示す図である。以下では、給水システムの一例として、高層建築物(例えば16階以上の建物)である建物16に水を供給するためのシステムを説明するが、これには限られない。
図1に示すように、給水システム20は、水道管(水道本管)12に連結された第1の給水装置BP1と、第1の給水装置BP1の吐出側に直列に連結された第2の給水装置BP2と、を備えている。本実施形態では、第1の給水装置BP1は、地面または地下に設置されており、第2の給水装置BP1は、建物16の中間層階に設置されている。
【0012】
第1の給水装置BP1の吸込口は、導入管13を介して水道管12に接続されている。第1の給水装置BP1の吐出口と第2の給水装置BP2の吸込口とは第1の配水管14aによって連結されており、この第1の配水管14aは、建物16の低階層の各給水栓(第1の給水対象)18aに枝管17aを介して連結されている。また、第2の給水装置BP2の吐出口には、第2の配水管14bが接続されており、この第2の配水管14bは、建物の高層階の各給水栓(第2の給水対象)18bに枝管17bを介して連結されている。こうした構成により、第1の給水装置BP1は、水道管12からの水を昇圧して建物16
の低階層の各給水栓18aに水を供給するようになっている。そして、第2の給水装置BP2は、第1の給水装置BP1からの水を更に昇圧して建物16の高階層の各給水栓18bに水を供給するようになっている。
【0013】
図2は、第1の給水装置BP1を示す模式図である。
図2に示すように、第1の給水装置BP1は、導入管13を介して水道管12に連結されるポンプ(第1のポンプ)P1を備えている。本実施形態では、ポンプP1は、駆動源としてのモータ(第1のモータ)M1と、モータM1の回転速度を可変制御するインバータ装置(第1のインバータ装置)INV1と、を含むものとして説明する。また、第1の給水装置BP1は、ポンプP1の吐出側に配置された逆止弁CV1と、逆止弁CV1の吐出側に配置されたフロースイッチSW1、圧力センサPS1、及び圧力タンクPT1と、を備えている。これらの構成要素は、キャビネットCB1内に収容されている。
【0014】
逆止弁CV1は、ポンプP1の吐出口に接続された吐出管L1に設けられており、ポンプP1が停止したときの水の逆流を防止するための弁である。フロースイッチSW1は吐出管L1を流れる水の流量が所定の値にまで低下したこと(小水量)を検知する流量検知器である。圧力センサPS1は、ポンプP1の吐出し圧力を測定するための水圧測定器である。圧力タンクPT1は、ポンプP1が停止している間の吐出し圧力を保持するための圧力保持器である。吐出管L1は第1の配水管14aに接続されている。
【0015】
ポンプP1には、ポンプP1の回転数(周波数、回転速度)を検出する回転数センサRS1、モータM1に流れる電流値を計測する電流計AS1、ポンプP1で消費される電力量を計測する電力計ES1、及びポンプP1の温度を計測する温度計TS1が備えられていている。ここで、回転数センサRS1は、ポンプP1の図示しないインペラの回転数を直接に計測するものでもよいし、モータM1の回転数を計測するものでもよい。また、ポンプP1の回転数は、回転数センサRS1を設けずにインバータ装置INV1の出力周波数から推定してもよい。なお、本実施形態では、ポンプP1のインペラとモータM1とは同期しており、インペラの回転数とモータM1の回転数とは同一である。ポンプP1のインペラとモータM1とに変速器が介在する場合には、変速器の変速比(可変である場合には現在の変速比)とモータM1の回転数とに基づいて、ポンプP1の回転数を取得してもよい。また、電流計AS1または電力計ES1は、モータM1に流れる電流値または電力量を計測してもよいし、インバータ装置INV1に流れる電流値または電力量を計測してもよい。さらに、ポンプP1の電力量は、ポンプP1の電流値などに基づいて算出されてもよい。また、モータM1に流れる電流およびポンプP1の消費電力に代えて、給水装置BP1に流れる電流および消費電力が計測されてもよい。さらに、温度計TS1は、モータM1の温度を測定してもよいし、インバータ装置INV1の温度を測定してもよい。
【0016】
ポンプP1の吸込口には逆流防止器21が接続されている。この逆流防止器21は、水道管12への水の逆流を防止するために設置されている。なお、本実施形態では、逆流防止器21として、逃し弁が配置された中間室を2つの逆止弁が挟むように配置された構成を有する減圧式逆流防止器が用いられている。
【0017】
また、第1の給水装置BP1は、給水動作を制御する制御部(コントローラ、第1の制御部)CN1を備えている。制御部CN1には、インバータ装置INV1、フロースイッチSW1、圧力センサPS1、回転数センサRS1、電流計AS1、電力計ES1、及び温度計TS1が信号線を介して接続されている。
【0018】
ポンプP1の停止中に吐出し圧力(吐出管L1内の水圧)が所定の始動圧力まで低下すると、制御部CN1はポンプP1の運転を開始するようインバータ装置INV1に指令を出す。ポンプP1の運転中は、設定された圧力(設定圧)により推定末端圧力一定制御ま
たは目標圧力一定制御などの制御が行われる。具体的には推定末端圧力一定制御の場合は、ポンプP1の回転数と目標圧力制御カーブとを用いてポンプP1の吐出圧力に対する目標圧力(SV)を設定し、目標圧力一定制御の場合は、設定圧をそのまま目標圧力(SV)とする。また、圧力センサPS1によって検出された吐出し圧力を現在圧(PV)とする。そして、SVとPVの偏差にて比例ゲインGp、及び、積分ゲインGiを用いたPI演算、もしくは、比例ゲインGp、積分ゲインGi、及び、微分ゲインGdを用いたPID演算を行い、ポンプP1の指令回転数が設定される。なお、制御部CN1は、ポンプP1の吸込圧力(流入圧力)に基づいて目標圧力制御カーブを補正してもよい。具体的には目標圧力制御カーブを吸込圧力だけ加算し、目標圧(SV)を算出すればよい。
【0019】
ポンプP1の運転中に建物での水の使用が少なくなると、フロースイッチSW1は、過少水量を検出し、その検出信号を制御部CN1に送る。制御部CN1はこの検出信号を受け、ポンプP1に指令を出して吐出し圧力が所定の運転停止圧力に達するまでポンプP1の回転数を増加させ、圧力タンクPT1に蓄圧した後ポンプP1を停止(小水量停止)させる。ポンプP1が小水量停止した後に、再び建物内で水が使用されると吐出し圧力が始動圧力以下まで低下しポンプP1が始動する。なお、小水量を検知する方法としては、フロースイッチSW1を用いずに、モータ部の電流値による低負荷や締切圧力等その他の手段を用いてもよい。
【0020】
図3は、第2の給水装置BP2を示す模式図である。第2の給水装置BP2の基本的な構成および動作は、上述した第1の給水装置BP1と同様であり、同一の構成要素には対応する符号が付されている。この第2の給水装置BP2は、逆流防止器を備えていない点で第1の給水装置BP1と相違する。ただし、第2の給水装置BP2は、第1の給水装置BP1と同様に逆流防止器を備えていてもよい。
【0021】
本実施形態では、第1の給水装置BP1の制御部CN1および第2の給水装置BP2の制御部CN2は、電力線22を通信回線としたいわゆるPLC(Power Line Communication (電力線通信))によって互いに運転情報を通信するように構成されている。
図1Aは、本実施形態における電力線通信を説明するための図である。図示するように、給水装置BP1、BP2のそれぞれには、分電盤23から電力線22が接続され、図示しない商用電源(系統電源100)からの電力が供給される。系統電源100からの電力は、電力線22を介して、各給水装置BP1、BP2のモータM1、M2及びポンプP1、P2に供給される。また、
図1Aに示す例では、各給水装置BP1、BP2は、制御部CN1、CN2と通信可能なPLCユニットPLC1,PLC2を備え、このPLCユニットPLC1,PLC2に分電盤23からの電力線22が接続される。そして、各PLCユニットPLC1,PLC2は、電力線22を通じて電力線通信を行うことができるように構成され(破線参照)、制御部CN1、CN2がPLCユニットPLC1,PLC2と通信を行うことにより、制御部CN1、CN2における互いの情報のやりとりが行われる。
【0022】
ポンプP1,P2の運転・停止、圧力センサPS1,PS2の測定値(吐出し圧力)、回転数センサRS1,RS2の測定値、電流計AS1,AS2の測定値、電力計ES1,PS2の測定値、温度計TS1,TS2の測定値、給水装置BP1,BP2の故障情報、および、ポンプP1,P2に対する運転指令などを含む運転情報は、電力線22を通じて制御部CN1と制御部CN2との間で双方向に伝送される。このような通信機能は、第1の給水装置BP1と第2の給水装置BP2の連携運転を可能とする。
【0023】
第1の給水装置BP1が停止している状態でポンプP2のみが運転していると、第1の配水管14a内に負圧が形成されることがある。この状態で低層階の給水栓18aが開かれると、その給水栓18aから空気が吸い込まれるおそれがある。そこで、このような空気の吸い込みを防止するために、ポンプP1を始動させてからポンプP2を始動させる。
【0024】
上記したように、ポンプP1,P2は、それぞれの吐出し圧力が所定の始動圧力にまで低下したときに始動される。したがって、制御部CN1,CN2には、ポンプP1,P2を始動させるトリガーとなる始動圧力S1,S3がそれぞれ設定されている。さらに、制御部CN1には、ポンプP1を始動させるための第2の始動圧力S2が設定されている。この第2の始動圧力S2は第2の給水装置BP2の吐出し圧力(圧力センサPS2の測定値)に基づく始動のための第2のしきい値である。第2の始動圧力S2は、ポンプP2の始動圧力(第2ポンプ始動圧力)S3よりも大きく設定されている(S2>S3)。これは、上述したように、ポンプP2が始動される前にポンプP1を始動させるためである。
【0025】
制御部CN1は、圧力センサPS1の測定値が第1の始動圧力S1にまで低下したとき、および圧力センサPS2の第2の始動圧力S2にまで低下したときの2つのトリガーに基づきポンプP1を始動させる。ポンプP2の吐出し圧力が低下すると、圧力センサPS2は、始動圧力S3よりも先に始動圧力S2を検出する。制御部CN1は、電力線22を通じて送られてくる圧力センサPS2の測定値(すなわち、ポンプP2の吐出し圧力)が始動圧力S2に達したときに、ポンプP1を始動させる。
【0026】
ポンプP1が停止している状態で、低層階で水が使用されると、ポンプP1の吐出し圧力が低下する。そして、この吐出し圧力が始動圧力S1にまで低下すると、ポンプP1が始動される。このように、ポンプP1は、2つの圧力センサPS1,PS2の測定値に基づいて始動される。
【0027】
制御部CN2は、ポンプP1が始動されたことを確認した後にポンプP2を始動させることが好ましい。制御部CN2は、例えば、ポンプP1の回転数が所定回転数(例えば、定格回転数の30%、40%など)を超えたこと、モータM1の電流値または消費電力量が所定のしきい値を超えたこと、および、モータM1の温度が所定温度を超えたこと、の少なくとも1つに基づいて、ポンプP1が始動したか否かを判断してもよい。
【0028】
ポンプP2が運転している間は、ポンプP1の運転が維持される。ここで、ポンプP1の運転中においても、例えばポンプP2の吐出流量が急に大きくなるなど第2の給水装置の運転状態によって、ポンプP1,P2を連結する第1の配水管14a内に負圧が形成されるおそれがある。このため、第1の給水装置BP1の制御部CN1は、第2の給水装置BP2のポンプP2の出力に応じて、第1のポンプP1の追従性を変化させる。つまり、制御部CN1は、ポンプP2が第1出力で運転しているときには、第1の追従性でのポンプP1の吐出し圧力が目標圧力に至るようにポンプP1の回転数(周波数)を設定してポンプP1の運転を制御する。また、制御部CN1は、ポンプP2が第1出力より大きい第2出力で運転しているときには、第1の追従性より高い第2の追従性でポンプP1の吐出し圧力が目標圧力に至るようにポンプP1の回転数を設定してポンプP1の運転を制御する。
【0029】
本実施形態では、制御部CN1は、ポンプP2の出力が大きいほど高い追従性でポンプP1の吐出し圧力が目標圧力に至るようにポンプP1の運転を制御する。ここで、制御部CN1は、ポンプP2の回転数に基づいてポンプP2の出力の大きさを判断してもよい。つまり、制御部CN1は、ポンプP2の回転数が大きいほど高い追従性でポンプP1の吐出し圧力が目標圧力に至るようにポンプP1の運転を制御する。具体的には、制御部CN1は、ポンプP2の回転数が大きいほど、ポンプP1の目標回転数(指令周波数)を設定するためのPI制御またはPID制御の比例ゲインGpを大きくしてもよい。このときには、予め実験等によりポンプP2の回転数Np2(出力)と比例ゲインGpとの関係を定めたマップまたは関係式を用いて、制御部CN1がポンプP2の回転数に基づいて比例ゲインGpを定めることが考えられる。ここで、比例ゲインGpは、
図4に示すように、ポ
ンプP2の回転数Np2(出力)に対して比例して大きくなるものとしてもよい。また、
図5に示すようにポンプP2の回転数Np2(出力)が大きくなるほど大きな変化量で比例ゲインGpが大きくなるものとしてもよいし、
図6に示すようにポンプP2の回転数Np2(出力)が大きくなるほど小さな変化量で比例ゲインGpが大きくなるものとしてもよい。さらに、
図7に示すようにポンプP2の出力が所定回転数より小さいときにはポンプP2の出力が大きくなるほど大きな変化量で比例ゲインGpが大きくなり、ポンプP2の出力が所定回転数より大きいときにはポンプP2の出力が大きくなるほど小さな変化量で比例ゲインGpが大きくなるものとしてもよい。こうした制御により、第2の給水装置BP2のポンプP2が大きな出力で運転しているときには、高い追従性でポンプP1の回転数が変化する。これにより、ポンプP2の運転状態の変化に応じて迅速にポンプP1の出力を変更させることができ、第1の配水管14a内が意図しない低圧となることを防止できる。また、ポンプP2が小さな出力で運転しているときには、低い追従性でポンプP1の回転数が変化する。これにより、ポンプP1の回転数を緩やかに変化させて、給水システム20のエネルギ効率の向上を図ることができる。
【0030】
また、比例ゲインGpを変化させるものに代えて、制御部CN1は、ポンプP2の回転数Np2(出力)が大きいほど、現在のポンプP1の回転数と目標回転数(指令周波数)との差が大きくなるように、ポンプP1の目標回転数を補正するものとしてもよい。たとえば、制御部CN1は、ポンプP1の吐出し圧力(PV)と目標圧力(SV)とに基づいて仮の目標回転数を設定する。続いて、設定した仮の目標回転数から現在のポンプP1の回転数を減じてポンプP1の回転数変化量を算出する。そして、算出したポンプP1の回転数変化量にポンプP2の回転数Np2(出力)が大きいほど大きくなる補正係数Kpを乗じることにより、ポンプP1の回転数変化量を補正する。そして、制御部CN1は、現在のポンプP1の回転数に対して、補正した回転数変化量を加えることにより、ポンプP1の目標回転数(指令周波数)を設定する。ここで、補正係数Kpについては、比例ゲインGpにおいて
図4~7を用いて説明したのと同様に、ポンプP2の回転数Np2に対して予め実験等によりマップまたは関係式などが定められればよい。こうした制御においても、上記した比例ゲインGpを変更する場合と同様の効果を奏することができる。
【0031】
さらに、制御部CN1は、ポンプP2のモータM2に流れる電流値A2に基づいてポンプP2の出力の大きさを判断してもよい。つまり、制御部CN1は、モータM2に流れる電流値が大きいほど高い追従性でポンプP1の吐出し圧力が目標圧力に至るようにポンプP1の運転を制御する。この場合には、一例として電流値A2と比例ゲインGpまたは補正係数Kpとの関係を示すマップまたは関係式を実験等により予め定めることにより(
図4~7参照)、上記したポンプP2の回転数Np2を用いた場合と同様にポンプP1の運転を制御することができる。なお、制御部CN1は、モータM2に流れる電流値A2に代えて、第2の給水装置BP2に流れる電流値を用いて、ポンプP2の出力の大きさを判断してもよい。
【0032】
また、制御部CN1は、ポンプP2が消費する電力量E2に基づいてポンプP2の出力の大きさを判断してもよい。つまり、制御部CN1は、ポンプP2の消費する電力量E2が大きいほど高い追従性でポンプP1の吐出し圧力が目標圧力に至るようにポンプP1の運転を制御する。この場合には、一例として電力量E2と比例ゲインGpまたは補正係数Kpとの関係を示すマップまたは関係式を実験等により予め定めることにより(
図4~
図7参照)、上記したポンプP2の回転数Np2などを用いた場合と同様にポンプP1の運転を制御することができる。なお、制御部CN1は、ポンプP2が消費する電力量E2に代えて、第2の給水装置BP2が消費する電力量を用いて、ポンプP2の出力の大きさを判断してもよい。
【0033】
また、制御部CN1は、ポンプP2の温度T2に基づいてポンプP2の出力の大きさを
判断してもよい。つまり、制御部CN1は、ポンプP2の温度T2が高いほど高い追従性でポンプP1の吐出し圧力が目標圧力に至るようにポンプP1の運転を制御する。この場合には、一例として温度T2と比例ゲインGpまたは補正係数Kpとの関係を示すマップまたは関係式を実験等により予め定めることにより(
図4~
図7参照)、上記したポンプP2の回転数Np2などを用いた場合と同様にポンプP1の運転を制御することができる。
【0034】
なお、
図4~
図7に示す例では、比例ゲインGpまたは補正係数Kpは、ポンプP2の出力が大きいほど大きくなる傾向に滑らかに変化するものとした。しかし、これに限らず、比例ゲインGpまたは補正係数Kpは、ポンプP2の出力に応じて、2段階以上で段階的に変化するものとしてもよい。
【0035】
そして、ポンプP1とポンプP2の両方が運転している状態から給水動作を停止させるときは、ポンプP2を停止させた後に、ポンプP1が停止される。これらの連携動作は、制御部CN1,CN2間で伝達される運転情報に基づいて行われる。制御部CN1は、例えば、ポンプP2の回転数が所定回転数(例えば、定格回転数の30%、40%など)未満であること、モータM2の電流または電力が所定のしきい値未満であること、および、モータM2の温度が所定温度未満であること、の少なくとも1つに基づいて、ポンプP2が停止したか否かを判断してもよい。このような連携動作により、ポンプP2が停止する前にポンプP1が停止することを防止でき、第1の配水管14a内に負圧が形成されることを防止できる。
【0036】
なお、本実施形態の給水システム20では、2つの給水装置BP1,BP2を備えるものとしたが、3段以上の給水装置を直列に繋げた場合も、同様に、階層の低い順からポンプが始動され、階層の高い順からポンプが停止されればよい。
【0037】
第1の給水装置BP1が故障したときに、第2の給水装置BP2のポンプP2のみが運転されると、上述した空気吸い込みの問題が起こりうる。そこで、第1の給水装置BP1が故障したときは、制御部CN1はその故障情報を制御部CN2に送信し、制御部CN2はポンプP2の運転を停止させる。この場合、仮に高層階で水が使用されていても、ポンプP2は強制的に停止される。
【0038】
第2の給水装置BP2が故障すると、高層階では断水が起こる。第1の給水装置BP1の給水能力に余裕がある場合は、第1の給水装置BP1の給水圧力を最大値に引き上げることが好ましい。すなわち、第2の給水装置BP2が故障したときは、制御部CN2はその故障情報を制御部CN1に送信し、制御部CN1はポンプP1をその最大給水能力で運転させる。第1の給水装置BP1によって高層階のすべての給水栓18bに水を供給できるとは限らないが、第1の給水装置BP1は少なくとも高層階の一部に水を供給することはできるので、高層階全体での断水を避けることができる。
【0039】
図8は、第2の給水装置BP2の他の構成例を示す模式図である。
図8に示すように、ポンプP2の上流側には、ポンプP2の吸込圧力を測定する圧力センサ(吸込圧力センサ)30が設置されている。第2の給水装置BP2のその他の構成は、
図3に示す構成と同様である。圧力センサ30は、制御部CN2に信号線を介して接続されている。圧力センサ30の測定値(すなわち、吸込圧力)は、運転情報として電力線22を介して第1の給水装置BP1に送られる。
【0040】
第1の給水装置BP1の制御部CN1は、第2の給水装置BP2から送られてくる圧力センサ30の測定値に基づき、低層階の給水栓18aの給水圧力(末端圧力)が所定の目標値となるようにフィードバック制御する。つまり、第1の給水装置BP1は、第2の給
水装置BP2の吸込圧力をポンプP1の吐出し圧力としてポンプP1の運転を制御する。具体的には、制御部CN1は、圧力センサ30の測定値を現在圧(PV)として所定の目標圧(SV)を維持するようにポンプP1の運転を制御する。低層階の末端圧力は、第2の給水装置BP2の吸込圧力に実質的に等しいので、圧力センサ30の測定値は低層階の給水栓18aの給水圧力(末端圧力)を示していると考えることができる。したがって、圧力センサ30の測定値から、低層階の実際の末端圧力を監視することができる。
【0041】
このような運転制御方法によれば、実際の末端圧力に基づいてポンプP1の運転が制御されるので、配水管内の摩擦抵抗に起因する圧力降下の影響を受けない末端圧力一定制御が実現される。したがって、所望の末端圧力での給水が可能となる。なお、第2の給水装置BP2の圧力センサ30は、第1の給水装置BP1の圧力センサPS1の代用として用いることができるので、圧力センサPS1を省略してもよい。
【0042】
なお、上記したように、ポンプP1が停止している状態でポンプP2のみが運転している場合や、ポンプP1が運転されていてもポンプP2が運転状態によっては、ポンプP1、P2を連結する第1の配水管14a内の圧力が意図しない低圧となるおそれがある。このため、
図8に示す構成例においては、第2の給水装置BP2の制御部CN2は、ポンプP2の吸込圧力が所定の閾値以下で所定時間(例えば数秒など)経過した時には、ポンプP2の流入圧低下として停止させるとよい。
【0043】
上述した第1の給水装置BP1および第2の給水装置BP2は、いずれも1台のポンプのみを有しているが、
図9に示すように複数のポンプを有してもよい。
図9は、複数のポンプを備えた第1の給水装置BP1を示す模式図である。図示しないが、第2の給水装置BP2も、同様の配置に従って複数のポンプを備えることができる。複数のポンプを備えることにより、ローテーションおよび台数制御を伴う複数台運転を行ったり、運転中にあるポンプまたはインバータ装置の異常が検知された場合に、他の正常なポンプやインバータ装置に運転を切り替えて給水を継続することができる。
【0044】
第2の給水装置BP2が複数のポンプP2を備える場合には、第1の給水装置BP1の制御部CN1は、複数のポンプP2の合計出力に基づいて、ポンプP1の運転を制御してもよい。つまり、制御部CN1は、複数のポンプP2の合計出力が大きいほど高い追従性でポンプP1の吐出し圧力が目標圧力に至るようにポンプP1の回転数を設定してポンプP1の運転を制御してもよい。一例として、制御部CN1は、複数のポンプP2のそれぞれの最大回転数の合計に対する複数のポンプP2のそれぞれの現在の回転数の合計の割合が大きいほど、第1の給水装置BP1における比例ゲインGpまたは補正係数Kpを大きく設定してもよい。また、制御部CN1は、複数のポンプP2の平均回転数が大きいほど、第1の給水装置BP1における比例ゲインGpまたは補正係数Kpを大きく設定してもよい。さらに、複数のポンプP2の回転数に代えて、複数のポンプP2のモータM2に流れる電流値、複数のポンプP2で消費される電力量、または、複数のポンプP2の温度に基づいて、複数のポンプP2の回転数を用いる場合と同様に第1の給水装置BP1における比例ゲインGpまたは補正係数Kpを設定してポンプP1を制御してもよい。
【0045】
上記した実施形態では、第1の給水装置BP1の制御部CN1は、第2の制御装置BP2のポンプP2の回転数、電流値、電力量、または、温度に基づいて、ポンプP2の出力を判断するものとした。しかし、制御部CN1は、これらのうち2つ以上のパラメータを用いてポンプP2の出力を判断してもよい。一例として、複数のパラメータに対するポンプP2の出力の大きさを示すマップまたは関係式を実験等により予め定めて制御部CN1に記憶しておいてもよい。または、制御部CN1は、それぞれのパラメータに基づいて推定されるポンプP2の出力のうち最も大きいものに基づいて、ポンプP1の運転を制御してもよい。こうすれば、第1の配水管14aが負圧になることをより確実に防止すること
ができる。
【0046】
次に、第1の給水装置PB1の制御部CN1と、第2の給水装置BP2の制御部CN2との通信に異常が生じた際の給水システム20の動作の一例について説明する。第1の給水装置PB1と第2の給水装置PB2とが電力線を通信回線とした電力線通信によって互いに運転情報を通信するように構成されている場合には、電力の使用状況等によって一時的に通信異常が生じる場合がある。そのため、原因が推測できる一時的な通信異常では、給水システム20にて給水を継続する。
【0047】
まず、上記したように、
図8に示す構成例において、第1の給水装置PB1の制御部CN1は、第2の給水装置BP2の制御部CN2と正常に通信が行われているときには、ポンプP2の吸込圧力に基づいてポンプP1の運転を制御する。具体的には、所定の設定圧に基づく圧力一定制御(末端圧一定制御)を行う。一方、制御部CN1、CN2の通信に異常が生じているときには、制御部CN1は、ポンプP1の吐出し圧力に基づいてポンプP1の運転を制御するとよい。具体的には、制御部CN1は、ポンプP1の吐出し圧力が所定の目標圧力となるように吐出し圧力一定制御を実行してもよいし、ポンプP1の回転数と吐出し圧力とに基づいてポンプP2の推定吸込圧力が所定の目標圧力となるように推定末端圧力一定制御を実行してもよい。このように制御部CN1、CN2の通信に異常が生じている場合にも、第1の給水装置PB1の制御部CN1はポンプP1の吐出し圧力に基づいてポンプP1の運転を制御することができる。なお、ポンプP1の吐出し圧力に基づく推定末端圧力一定制御を実行する際には、ポンプ2の吸込圧力の推定誤差によって第1の配水管14aにおける水圧が不足しないように、ポンプP1の出力にマージンが設けられるとよい。ただし、ポンプP1の出力にマージンが設けられることによりエネルギ効率が低下するため、制御部CN1、CN2の通信が正常である場合には、制御部CN1は、ポンプP2の吐出し圧力に基づいてポンプP1の運転を末端圧一定制御することが好ましい。
【0048】
また、上記した実施形態では、制御部CN1、CN2の通信が正常である場合、第1の給水装置PB1の制御部CN1は、第1の給水装置BP1(ポンプP1)の吐出し圧力が始動圧力S3より低下したとき、または、第2の給水装置BP2の吐出し圧力が第2の始動圧力S2より低下したときに、ポンプP1を始動させるものとした。しかしながら、制御部CN1、CN2の通信に異常が生じている場合には、制御部CN1は、第2の給水装置BP2の吐出し圧力を取得できなくなるため、ポンプP1の吐出し圧力が始動圧力S3より低下したときにポンプP1始動させるとよい。
【0049】
本実施形態の給水システム20では、制御部CN1、CN2は建物16の電力線22を通信回線としたいわゆる電力線通信によって互いに運転情報を通信している。ここで、給水システム20の設置時、メンテナンス終了時、または停電後など、給水システム20の電源を起動させたときには、突入電流、又はコンデンサ若しくはUPS(Uninterruptible Power Supply)等への充電のために電力線22にノイズが乗り、電力線通信に異常が生じることが想定される。こうした電力線通信の異常は、給水システム20の異常によるものではなく、時間の経過によって解消されるものである。一方、給水システム20はライフラインに関するものであり、電源起動後に建物16内で水の使用があれば、できるだけ早くポンプP1、P2を始動させて運転させることが好ましい。このため、本実施形態では、給水システム20の起動時に以下の制御を行うものとする。
【0050】
図10は、第2の給水装置BP2の制御部CN2により実行される給水システム起動時制御処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、給水システム20の起動時として、特に制御部CN2が起動されたときに開始される。なお、第1の給水装置BP1が停電、異常停止または停止ボタン等にて強制停止されている場合は、ポンプP2が流入圧
低下で停止となる。よって、ポンプP2が流入圧低下の場合は
図10のフローチャートは実行されない。
【0051】
給水システム20が起動されると、制御部CN2は、まず電力線22を介した制御部CN1との通信に異常があるか否かを判定する(S12)。この判定は、通常の電力線通信における通信異常の判定にしたがって行われればよい。制御部CN2は、通信に異常が生じていない場合には(S12:No)、電力線通信によって制御部CN1から運転情報を得ることができるため、通常時どおりにポンプP2の運転制御を行う(S14)。そして、電力線通信が正常である場合には、給水システム20が起動されてからの経過時間tmが所定時間tm1に至るまで待って(S26)、本処理を終了する。ここで、所定時間tm1は、給水システム20の起動が安定すると考えられる予め定めた時間を用いればよい。また、この所定時間tm1は、外部入力などによって設定できるものとしてもよい。
【0052】
通信に異常がある場合には(S12:Yes)、制御部CN2は、ポンプP2が停止中であるか否か確認する(S16)。ここで、このS16の処理は、後述する本処理においてポンプP2が始動されたか否かを判定する処理であり、いまは、ポンプP2は停止していると判断される(S16:Yes)。なお、瞬停による起動時などでポンプP2が既に運転中である場合には、S16でポンプP2が運転されていると判断されてもよい。
【0053】
ポンプP2が停止しているときには(S16:Yes)、制御部CN2は、本処理が開始されたときのポンプP2の吐出し圧力Pm2(起動時Pm2)が所定のしきい値P3nより大きいか否かを判定する(S18)。しきい値P3nは、始動圧力P3以上且つポンプP2の停止圧力以下であるとよい。つまり、制御部CN2は、本処理が開始されるときに、ポンプP2の吐出し圧力Pm2を起動時Pm2として記憶しておき、記憶した起動時Pm2をしきい値P3nと比較する。そして、起動時Pm2がしきい値P3n以下であるときには(S18:No)、制御部CN2は、ポンプ(第2のポンプ)P2を始動すると不具合が生じるおそれがあると判断して、ポンプP2を停止した状態とする(S24)。これは、以下の理由に基づく。起動時Pm2がしきい値P3nより大きいときには、給水装置BP2の直前の運転は小水量停止して停止圧力P3となるまで圧力タンクPT2に蓄圧されていた場合など、圧力タンクPT2に貯められている水量が比較的多い状態である。そのため始動時には圧力変動が少ない。更には、圧力タンクPT2は時間の経過とともに蓄圧された圧力が低下していくので、ポンプP2が停止されていた時間は短いと想定される。一方、起動時Pm2がしきい値P3n以下であるときには圧力タンクPT2が蓄圧されていないため、始動時の圧力変動が大きくなる。つまり、起動時Pm2が始動圧力P3以下であるときには、給水装置BP1と通信を確立することなくポンプP2を始動すると、第1の配水管14aが意図しない低圧となる可能性があることに基づく。
【0054】
そして、S24にてポンプP2を停止した後、給水システム20が起動されてからの経過時間tmが所定時間tm1に至っていないときには(S26:No)、制御部CN2は再びS12の処理に戻る。ここで、S18の処理において、起動時Pm2は処理開始時の数値であってその後変化しないため、S12以降の処理では、電力線通信の異常が解消されない限り(S12)、ポンプP2が停止されていると共に起動時Pm2がしきい値P3n以下であると判定され(S16:Yes、S18:No)、ポンプP2の停止が維持される(S24)。なお、経過時間tmが所定時間tm1に至るまでに電力線通信の異常が解消されたときには(S12:No)、制御部CN1からの情報に基づいて制御部CN2は通常通りポンプP2を制御することになる(S14)。
【0055】
そして、経過時間tm1が所定時間tm1に至ると(S26:Yes)、制御部CN2は本処理を終了する。なお、S26がNoの間は電力線通信の異常を報知せず、S26がYesとなり本処理が終了されても電力線通信の異常が解消されていないときには、制御
部CN2は異常を報知するとよい。報知としては、一例として、図示しない表示部における表示、図示しないブザーによる警報の発報、または、外部へ所定の信号を送信することにより行われるとよい。
【0056】
電力線通信が確立しておらずS18において起動時Pm2がしきい値P3nより大きいと判断されるときには(S18:Yes)、制御部CN2は、現在のポンプP2の吐出し圧力Pm2(現在Pm2)を始動圧力P3と比較する(S20)。現在の吐出し圧力Pm2が始動圧力P3より大きいときには(S20:No)、制御部CN2は、ポンプP2を始動しなくてもよいと判断し、ポンプP2を停止した状態とする(S24)。ここで、現在のポンプP2の吐出し圧力Pm2は、圧力センサPS2の測定値を用いればよい。そして、経過時間tm1が所定時間tm1に至っていないときには(S26:No)、制御部CN2は再びS12の処理に戻る。
【0057】
そして、起動時Pm2がしきい値P3nより大きく(S18:Yes)、且つ起動後の水の使用などによって給水装置BP2の吐出し圧力Pm2が始動圧力P3以下に至ったときには(S20:Yes)、制御部CN2は、ポンプP2を始動させる(S22)。ここで、いまは、制御部CN1、CN2との通信に異常が生じているときを考えており、制御部CN2は、通常時(通信に異常が生じていないとき)に比してポンプP2を緩やかに始動させることが好ましい。つまり、制御部CN2は、通常時には第1始動速度でポンプP2を始動させ、S22の処理では第1始動速度よりも緩やかな第2始動速度でポンプP2を始動させるとよい。具体的には、制御部CN2は、インバータINV2の加速時間を長くする、目標圧を所定の割合で徐々に上げる、ポンプP2の回転速度を所定の割合で徐々に上げる、および/またはPID演算の比例ゲインGpを調整する等して、S14の通常時処理よりも緩やかにポンプP2を始動させる。ポンプP2が始動されると、ポンプP2の吸込側に設けられているポンプP1の吐出し圧力が始動圧力P1以下に低下して、制御部CN1はポンプP1を始動する。ここで、ポンプP2が緩やかに始動されるのに伴って、ポンプP1の吐出し圧力も緩やかに低下するので、制御部CN1、CN2の通信が確立されていない状態であっても、ポンプP1が始動して給水するまでの間に第1の配水管14a内の圧力が意図しない低圧となることを抑制できる。
【0058】
そして、S22におけるポンプP2の緩やかな始動が終了し、給水システム20が起動されてからの経過時間tmが所定時間tm1に至る前(S26:No)であり、電力線通信が異常(S12:Yes)であれば、制御部CN2は、S16においてポンプP2が運転中であると判定し(S16:No)、ポンプP2を通常時と同様に運転制御する(S14)。このように、給水システム20の電源が起動されて所定期間tm1内に電力線通信の異常を検出する等電力線通信が安定していないときにも、ポンプP2を緩やかに始動することで高層階への給水を行うことができる。ただし、電力線通信が異常の場合には、例えば通常時よりも出力が小さくなる所定の安全運転モードでポンプP2を運転してもよい。そして、経過時間tmが所定時間tm1に至ると(S26:Yes)、制御部CN2は本処理を終了する。なお、本処理が終了されても電力線通信の異常が解消されていないときには、制御部CN2は異常を報知するとよい。また、このときには、運転中のポンプP2を停止させてもよい。
【0059】
次に、ポンプP1、P2の回転速度が高いときに生じる電力線通信の異常について説明する。本実施形態では、ポンプP1、P2は、インバータ装置INV1、INV2を介してモータM1、M2が駆動されることにより運転される。ここで、ポンプP1、P2の回転速度が高くなると、インバータ装置INV1、INV2のスイッチングノイズの影響が大きくなり、電力線22にノイズが乗って制御部CN1、CN2の電力線通信が確立できなくなるおそれがある。こうした電力線通信の異常は、給水システム20の異常によるものではないため、本実施形態では、電力線通信の異常が生じたときに、ポンプP2の回転
数Np2に基づいて異なる制御を行うものとする。
【0060】
図11は、第1給水装置BP1の制御部CN1並びに第2給水装置BP2の制御部CN2により実行されるポンプ運転中の処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、ポンプP1、ポンプP2の運転中に繰り返し実行される。以下説明を容易にするため、第2給水装置BP2にて説明する。電力線通信の異常を検出していないとき(S30:No)、まず制御部CN2は、
図10のS14と同様に通常時処理(S14)を実行する。電力線通信の異常(S30:Yes)で、まず制御部CN2は、ポンプP2の回転数Np2を所定の回転速度(閾値)Nrefと比較する(S32)。閾値Nrefは、インバータ装置INV2の最高周波数Nmaxや規定周波数等の性能などに基づいて予め定められた値が用いられるとよい。例えば、閾値Nrefは、インバータ装置INV2の最高周波数Nmaxの70パーセント以上の値を用いるとよい。なお、この閾値Nrefは、外部入力などによって設定できるものとしてもよい。また、ポンプは一般的に回転速度と水量およびインバータ装置に流れる電流とが比例するため、S32では、回転速度Np2とその閾値Nrefに代えて/または加えて、INV2の電流値と所定の閾値を用いてもよい。
【0061】
ポンプP2の回転速度Np2が閾値Nrefより小さいときには(S32:No)、制御部CN2は、電力線通信の異常はポンプP2の回転速度Np2が高いことに起因して生じているものではないと判断し、所定の通信異常時処理を実行して(S34)、本処理を終了する。通信異常時処理としては、例えば制御部CN2は異常を報知するとよい。また、制御部CN2は、ポンプP2を通常時よりも出力が小さくなる所定の安全運転モードで運転してもよいし、ポンプP2を停止させてもよい。
【0062】
一方、ポンプP2の回転速度Np2が閾値Nref以上であるときには(S32:Yes)、制御部CN2は、電力線通信の異常が給水システム20の異常によるものではなく、ポンプP2の回転速度Np2が高いことに起因して生じていると判断し、ポンプP2の運転を継続させて(S36)、本処理を終了する。このときには、高層階における水の使用が落ち着くなどしてポンプP2の回転速度Np2が低下することにより、電力線通信の異常が解消して電力線通信を利用した通常時の制御に戻ると考えられる。なお、S36の処理においては、制御部CN2は、電力線通信の異常を解消するための制御を実行してもよい。具体的には、制御部CN2は、ポンプP2の回転速度Np2を低下させるとよい。この場合、制御部CN2は、例えば電力線通信の異常が解消するまで徐々にポンプP2の回転速度Np2を徐々に低下させてもよいし、所定の回転速度N2aを回転速度指令としてもよい。また、制御部CN2は、ポンプP2の回転速度Np2を低下させるのに代えてまたは加えて、インバータ装置INV2のキャリア周波数を低下させてもよい。この場合、制御部CN2は、例えば電力線通信の異常が解消するまで徐々にインバータ装置INV2のキャリア周波数を徐々に低下させてもよいし、所定のキャリア周波数を使用するものとしてもよい。キャリア周波数を低くすることでスイッチングノイズを低減させることができ電力線22のノイズを減らすことができる。なお、回転速度の低下、及びキャリア周波数の変更については、外部入力によって設定できるものとしてもよい。
【0063】
なお、上記したように、給水システム20の起動時やポンプP1、P2の回転数が大きいために電力線通信に異常が生じていると想定される場合には、通常時に比して、電力線通信の通信リトライ回数を多くしてもよい。これにより、給水システム20に異常が生じておらず、給水システム20の起動または運転状態によって電力線通信に異常が生じているときに、通信リトライを多く実行して通信の確立を促すことができる。
【0064】
(変形例)
上記した実施形態では、給水システム20に2つの給水装置BP1、BP2が設けられ
るものとした。しかしながら、こうした例に限定されず、給水システム20は、3つ以上の給水装置を備えてもよい。
図12は、別の一実施形態に係る給水システムの概略構成を示す図である。
図12に示す給水システム20Aは、3つの給水装置BP1~BP3を備えている。第1の給水装置BP1は、
図1に示す給水システム20と同様に、導入管13を介して水道管12に接続されている。第2の給水装置BP2は、第1の給水装置BP1の吐出側に設けられ、第1の配水管14aを介して第1の給水装置BP1に接続されている。また、第3の給水装置BP3は、第2の給水装置BP2の吐出側に設けられ、第2の配水管14bを介して第2の給水装置BP2に接続されている。そして、第1の給水装置BP1は、水道管12からの水を昇圧し、第1の配水管14aに接続された建物16の低層階の各給水栓18aに水を供給するようになっている。また、第2の給水装置BP2は、第1の給水装置BP1からの水を更に昇圧し、第2の配水管14bに接続された建物の中層階の各給水栓18bに水を供給するようになっている。さらに、第3の給水装置BP3は、第2の給水装置BP2からの水を更に昇圧し、第3の配水管14cに接続された建物の高層階の各給水栓18cに水を供給するようになっている。
【0065】
第1および第2の給水装置BP1、BP2は、上記した給水システム10における第1および第2の給水装置BP1、BP2と同様に構成されるとよい(
図2、
図3参照)。また、第3の給水装置は、上記した給水システム10における第2の給水システムBP2と同様に構成されるとよい(
図3参照)。そして、第1~第3の給水装置BP1~BP3のそれぞれは、建物16の電力線22を通じた電力線通信により互いに通信できるように構成されている。
【0066】
こうした給水システム10Aにおいても、上記した給水システム10と同様の制御を実行することができる。つまり、第1の給水装置BP1と第2の給水装置BP2とについては、上記した給水システム10における第1の給水装置BP1と第2の給水装置BP2と同様の制御を行うことで、第1の配水管14aが意図しない低圧となることを防止して各給水装置BP1,BP2を適切に制御することができる。また、第2の給水装置BP2と第3の給水装置BP3とについても、上記した給水システム10における第1の給水装置BP1と第2の給水装置BP2と同様の制御を行うことで、第2の配水管14bが意図しない低圧となることを防止して各給水装置BP2,BP3を適切に制御することができる。換言すれば、一次側(上流側)の給水装置を「第1の給水装置」とし、二次側(下流側)の給水装置を「第2の給水装置」として、上記した給水システム10における第1の給水装置BP1、第2の給水装置BP2と同様に制御を行うことで、実施形態の給水システム10と同様の効果を奏することができる。
【0067】
また、上記した実施形態の給水システム10では、第1の給水装置BP1は、導入管13を介して水道管12に接続される直結給水方式であり、第2の給水装置BP2は、第1の配水管14aを介して第1の給水装置BP1に直接に接続されるものとした。しかしながら、こうした例に限定されず、給水システムにおける複数の給水装置の少なくとも一部は、吸込み側に受水槽が接続される受水槽方式であってもよい。
【0068】
図13は、更に別の一実施形態に係る給水システム20Bの概略構成を示す図である。
図13に示す給水システム20Bは、各給水装置BP1、BP2が受水槽方式であることを除いて、上記した実施形態の給水システム20と同様である。給水システム20Bでは、水道管12からの水が受水槽112Aに貯められ、給水装置BP1の一次側(吸込側)が、導入管13を介して受水槽112Aに接続されている。また、給水装置BP1からの水が建物16内に設けられた受水槽112Bに貯められ、給水装置BP2の一次側(吸込側)が、第2導入管13bを介して受水槽112Bに接続されている。導入管13、13bには、受水槽112A、112Bへの流路を遮蔽可能な流入弁(例えば電磁弁)15a,15bが設けられている。なお、流入弁15a,15bの開閉は、給水装置BP1、B
P2の制御部CN1、CN2によって制御されるものとしてもよいし、図示しない外部の制御部によって制御されるものとしてもよい。
【0069】
こうした給水システム20Bにおいても、第2の給水装置BP2の制御部CN2は、第1の給水装置BP1の制御部CN1との電力線通信の異常を検出した場合、通常時の第1始動速度よりも緩やかな第2始動速度でポンプP2を始動させるとよい(
図10:S22参照)。また、
図11に示す処理において説明したのと同様に、電力線通信に異常を検出したときにポンプP1、P2の回転数が所定の閾値よりも高いときには、ポンプP1、P2の運転を継続させるとよい。こうした制御により、受水槽方式による給水システム20Bにおいても、上記した直結給水方式による給水システムと同様の効果を奏することができる。
【0070】
また、上記した実施形態の給水システム10では、第1の給水装置BP1は、地面または地下に設置されており、第2の給水装置BP1は、建物16の中間層階に設置されるものとした。しかしながら、給水システムは、このように第2の給水装置BP2が第1の給水装置BP1よりも高い位置に配置されるものに限定されず、第2の給水装置BP2が第1の給水装置BP1と同じ高さに配置されてもよいし、第2の給水装置BP2が第1の給水装置BP1よりも低い位置に配置されてもよい。
【0071】
以上説明した本実施形態は、以下の形態としても記載することができる。
[形態1]形態1によれば、複数の給水装置によって建物内の給水対象に給水する給水システムが提案され、前記給水システムは、第1の給水装置と、前記第1の給水装置の吐出側に設けられた第2の給水装置と、を備え、前記第1の給水装置は、第1のポンプと、前記第1のポンプの運転を制御する第1の制御部と、を有し、前記第2の給水装置は、第2のポンプと、前記第2のポンプの運転を制御する第2の制御部と、を有し、前記複数の給水装置は、前記建物の電力線を通信回線として利用する電力線通信により互いに通信可能であり、前記第2の制御部は、第1始動速度で前記第2のポンプを始動し、前記第2の制御部は、前記電力線通信の異常を検出した場合、前記第1始動速度よりも緩やかな第2始動速度で前記第2のポンプを始動する。
形態1によれば、電力線通信に異常が検出された場合に、第2のポンプを緩やかに始動して給水することができる。
【0072】
[形態2]形態2によれば、形態1の給水システムにおいて、前記第2の制御部は、前記給水システムの電源が起動されてから所定期間内に前記電力線通信の異常を検出した場合、前記第2始動速度で前記第2のポンプを始動する。
【0073】
[形態3]形態3によれば、形態1に記載の給水システムにおいて、前記第2の制御部は、前記第2のポンプの吐出し圧力が所定の始動圧力以下に低下したら前記第2始動速度で前記第2のポンプを始動する。
【0074】
[形態4]形態4によれば、形態1から3の給水システムにおいて、前記第2の制御部は、前記給水システムが起動されてから所定期間以内であって前記第1の制御部と前記電力線通信が確立されていない場合、前記給水システムが起動されたときに前記第2のポンプの吐出し圧力が所定の閾値未満であれば、前記第1の制御部と前記電力線通信が確立されるまで前記第2のポンプを停止させた状態とする。
形態4によれば、電力線を通じた通信が確立されていないときに、第1の給水装置と第2の給水装置との接続管が負圧となることを抑制できる。
【0075】
[形態5]形態5によれば、第1の給水装置と、前記第1の給水装置の吐出側に設けられた第2の給水装置と、を備えた給水システムにおいて、前記第1の給水装置は、第1のポ
ンプと、前記第1のポンプの運転を制御する第1の制御部と、を有し、前記第2の給水装置は、第2のポンプと、前記第2のポンプの運転を制御する第2の制御部と、を有し、前記第1の制御部と前記第2の制御部とは、電力線を通信回線として利用する電力線通信により互いに通信可能であり、前記第2の制御部は、前記第2のポンプが所定の回転速度以上で運転されているときに、前記電力線通信の異常を検出しても前記第2のポンプの吐出し圧力と吸込圧力との少なくとも一方に基づいて前記第2のポンプの運転を継続させる。
形態5によれば、第2のポンプの回転速度が大きいときに電力線通信に異常が生じた場合に、第2のポンプの運転を継続させて給水することができる。
【0076】
[形態6]形態6によれば、形態5の給水システムにおいて、前記第2の制御部は、前記第2のポンプが前記所定の回転速度以上で運転されているときに前記電力線通信を検出したら、前記第2のポンプの回転速度を低下させる。
形態6によれば、電力線通信の異常の解消を図ることができる。
【0077】
[形態7]形態7によれば、形態5又は6の給水システムにおいて、前記第2の給水装置は、前記第2のポンプの駆動源としての第2のモータと、前記第2のモータに電力を供給する第2のインバータ装置と、を備え、前記第2の制御部は、前記第2のポンプが前記所定の回転速度以上で運転されているときに前記電力線通信の異常を検出したら、前記第2のインバータ装置のキャリア周波数を低下させる。
形態7によれば、電力線通信の異常の解消を図ることができる。
【0078】
[形態8]形態8によれば、形態1から7の給水システムにおいて、前記第1の制御部は、前記電力線通信が正常に行われているときに、前記第1のポンプの吐出し圧力が所定の第1の始動圧力より低下したとき、及び前記第2のポンプの吐出し圧力が所定の第2の始動圧力より低下したときに、前記第1のポンプを始動させ、前記第1の制御部は、前記電力線通信を検出したときには、前記第1のポンプの吐出し圧力が前記第1の始動圧力より低下したときに前記第1のポンプを始動させる。
形態8によれば、第1のポンプを適正に始動することができる。
【0079】
[形態9]形態9によれば、形態1から8の給水システムにおいて、前記第1の制御部は、前記電力線通信が正常に行われているときには前記第2のポンプの吸込圧力に基づいて前記第1のポンプの運転を制御し、前記電力線通信に異常を検出したときには前記第1の吐出し圧力に基づいて前記第1のポンプの運転を制御する。
形態9によれば、電力線通信の正常/異常に応じて、第1のポンプの運転を適性に制御することができる。
【0080】
[形態10]形態10によれば、形態1から9の給水システムにおいて、前記第1の制御部は、前記電力線通信が正常に行われているときには、前記第2のポンプが停止した後に前記第1のポンプを停止させる。
形態10によれば、第1の給水装置と第2の給水装置との接続管が負圧となることを抑制できる。
【0081】
[形態11]形態11によれば、形態1から10の給水システムにおいて、前記第2の制御部は、前記第2のポンプの吸込圧力が所定の閾値以下で所定時間経過したときには前記第2のポンプを停止させる。
【0082】
[形態12]形態12によれば、形態1から11の給水システムにおいて、前記第1の給水装置は水道管に連結され、前記第2の給水装置は前記第1の給水装置の吐出側に直列に連結される。
【0083】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0084】
12…水道管
13…導入管
14a…第1の配水管
14b…第2の配水管
15a…流入弁
16…建物
17a,17b,17c…枝管
18a,18b,18c…給水栓
20…給水システム
21…逆流防止器
22…電力線
23…分電盤
30…圧力センサ
BP1,BP2,BP3…給水装置
P1,P2…ポンプ
CN1,CN2…制御部
CV1,CV2…逆止弁
L1,L2…吐出管
M1,M2…モータ
INV1,INV2…インバータ装置
SW1,SW2…フロースイッチ
PS1,PS2…圧力センサ
CN1,CN2…制御部
PLC1,PLC2…PLCユニット
AS1,AS2…電流計
ES1,ES2…電力計
RS1…回転数センサ
TS1,TS2…温度計