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特許7110483基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20220725BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021508397
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2019012283
(87)【国際公開番号】W WO2020194415
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】白子 賢治
(72)【発明者】
【氏名】谷山 智志
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-163252(JP,A)
【文献】特開平10-256341(JP,A)
【文献】特開2009-088349(JP,A)
【文献】特開平06-283502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持するスロットを複数有するボートと、
前記ボートに保持された前記基板を処理する処理炉と、
前記ボートを昇降させるボートエレベータと、
前記基板が格納されるキャリアと前記ボートとの間で前記基板を移載する移載機と、
前記ボートエレベータと前記移載機とを制御可能に構成されたコントローラとを有し、
前記コントローラは、前記移載機が前記基板を移載するための複数のポジションを前記ボートエレベータに設定し、前記移載機が複数の前記キャリアから前記処理炉に装填可能な状態にまで前記ボートに前記基板を搬入する動作、及び前記移載機が前記処理炉で処理された前記基板を前記ボートから複数の前記キャリアに搬出する動作のそれぞれにおいて、前記ボートエレベータの前記複数のポジションの間の遷移の回数もしくは遷移に要する時間の合計が最小となるように選択するよう構成され
前記ボートには、前記移載機が静止した前記ボートに対して前記基板を移載可能な範囲よりも広い範囲にわたって前記スロットが設けられており、
前記複数のポジションは、第1ポジション及び第2ポジションを有し、
前記ポジションの選択は、前記第1ポジション及び前記第2ポジションのいずれによっても移載可能な前記スロットに関する、前記基板を搬入する動作及び搬出する動作において適用される基板処理装置。
【請求項2】
請求項において、
前記ボートが昇降される装填室と前記移載機が設置される移載室とを隔てる隔壁と、
前記隔壁に設けられ、前記第1ポジションまたは前記第2ポジションをとる前記ボートエレベータに搭載された前記ボートの複数の前記スロットの一部に対して開口するゲートドアとを有し、
前記移載可能な範囲は、前記移載機の可動範囲もしくは前記ゲートドアの開口によって制限される基板処理装置。
【請求項3】
請求項において、
前記ボートには複数の種別の前記基板が保持され、
前記コントローラは、前記基板の種別毎に、前記ボートの複数の前記スロットに上から下の順で前記基板を載置するとともに、前記ボートの複数の前記スロットから下から上の順で前記基板を取り出すように、前記移載機を制御可能に構成され、
前記基板の複数の種別の少なくとも1つは、前記ボートの上端側と下端側の前記スロットに偏在して配置されるダミー基板である基板処理装置。
【請求項4】
請求項において、
前記ボートの複数の前記スロットに載置される前記基板の種別を含む基板配置パラメータを記憶する記憶部を有し、
前記コントローラは、前記基板配置パラメータの定義にしたがって、前記ボートの複数の前記スロットに載置される前記基板の搬入/搬出元となるキャリア及び当該キャリアにおける前記基板の保持領域及び前記基板の搬入/搬出順序を設定する基板移載情報を決定し、前記基板移載情報に基づいて、前記移載機及び前記ボートエレベータを協調制御する移載動作データを作成可能に構成され、
前記移載動作データは、前記基板の搬入/搬出において前記ボートエレベータのポジション遷移の回数が最小となるように設定される基板処理装置。
【請求項5】
請求項において、
前記コントローラは、前記移載機が前記基板を移載するために設定されたポジション以外の位置に前記ボートエレベータがあるときには、前記移載機の移載動作を禁止するように構成される基板処理装置。
【請求項6】
請求項において、
それぞれが前記処理炉及び前記ボートが昇降される装填室を有する複数の処理モジュールと、
前記複数の処理モジュールに対して共通に設けられ、前記移載機が設置される移載室と、
前記移載室に接続され、前記キャリアを前記移載機に対してアクセス可能に開口させて保持する複数のロードポートとを有し、
前記複数の処理モジュールは、前記移載室を通じて前記キャリアとの間で前記基板を出し入れ可能とされる基板処理装置。
【請求項7】
請求項において、
前記装填室と前記移載室とを隔てる隔壁に設けられるゲートドアを有し、
前記複数の処理モジュールは水平方向に配置され、
前記ゲートドアは、前記複数の処理モジュールに対応して水平方向に配列して複数設けられ、少なくとも1つのゲートドアは、上下にスライドして開閉し、
前記装填室は、少なくとも前記上下にスライドするゲートドアの高さの2倍の高さを有する基板処理装置。
【請求項8】
請求項において、
前記第2ポジションでは前記移載機は前記ボートの最下段の前記スロットに移載可能であり、かつ前記処理炉の炉口シャッタは、前記ボートに干渉せずに閉まることができる基板処理装置。
【請求項9】
請求項において、
前記第2ポジションでは、前記移載機は前記ボートの最下段の前記スロットに移載可能であり、かつ前記処理炉の炉口シャッタは、前記ボートに干渉して閉まることができないあるいは前記炉口シャッタの閉鎖が禁止されており、
前記コントローラは、複数の前記基板の一連の移載中において前記第2ポジションから前記第1ポジションに遷移し、再度前記第2ポジションに遷移するまでの維持時間が所定時間よりも短い場合、前記維持時間の間、前記炉口シャッタを開放したままに制御可能に構成されている基板処理装置。
【請求項10】
請求項において、
前記コントローラは、前記ボートから前記基板を搬出する前に、前記基板移載情報に基づき、前記ボート上の前記基板に対してボートマッピングを実施し、前記ボートマッピングを実施するときの前記ボートエレベータのポジションは前記基板の搬出を行う際のポジションにより実行可能に構成される基板処理装置。
【請求項11】
スロットを複数有するボートに保持され、半導体装置が形成される基板を処理する処理炉と、前記ボートを昇降させるボートエレベータと、前記基板が格納されるキャリアと前記ボートとの間で前記基板を移載する移載機と、前記ボートエレベータと前記移載機とを制御可能に構成されたコントローラとを有する基板処理装置を用いて半導体装置を製造する方法であって、
前記コントローラが、前記ボートの複数の前記スロットに載置される前記基板の搬入/搬出元となるキャリア及び当該キャリアにおける前記基板の保持領域及び前記基板の搬入/搬出順序を含む基板移載情報に基づいて、前記移載機及び前記ボートエレベータを協調制御する移載動作データを作成する工程と、
前記移載機及び前記ボートエレベータが、前記移載動作データに基づき、前記ボートに前記基板を搬入し、前記ボートエレベータが、前記基板が搬入された前記ボートを前記処理炉に挿入する工程と、
前記処理炉が前記基板に対して所定の処理を行い、前記ボートエレベータが、前記所定の処理が終了した前記基板が保持された前記ボートを前記処理炉から引き出す工程と、
前記移載機及び前記ボートエレベータが、前記移載動作データに基づき、前記ボートから前記基板を搬出する工程とを有し、
前記ボートには、前記移載機が静止した前記ボートに対して前記基板を移載可能な範囲よりも広い範囲にわたって前記スロットが設けられており、前記移載機と第1ポジションまたは第2ポジションに遷移した前記ボートエレベータとの間で、前記基板の搬入/搬出が行われ、
前記移載動作データは、前記第1ポジション及び前記第2ポジションのいずれによっても移載可能な前記スロットに関して前記基板の搬入/搬出を行う前記ボートエレベータのポジションは、前記基板の搬入/搬出において前記ボートエレベータのポジション遷移の回数もしくは遷移に要する時間の合計が最小となるように設定されている半導体装置の製造方法。
【請求項12】
ボートの複数のスロットに載置される基板の搬入/搬出元となるキャリア及び当該キャリアにおける前記基板の保持領域及び前記基板の搬入/搬出順序を含む基板移載情報に基づいて、移載機及びボートエレベータを協調制御する移載動作データを作成する手順と、
前記移載機及び前記ボートエレベータが、前記移載動作データに基づき、前記ボートに前記基板を搬入し、前記ボートエレベータが、前記基板が搬入された前記ボートを、前記基板を処理する処理炉に挿入する手順と、
前記処理炉が前記基板に対して所定の処理を行い、前記ボートエレベータが、前記所定の処理が終了した前記基板が保持された前記ボートを前記処理炉から引き出す手順と、
前記移載機及び前記ボートエレベータが、前記移載動作データに基づき、前記ボートから前記基板を搬出する手順と、
前記作成する手順において、前記ボートには、前記移載機が静止した前記ボートに対して前記基板を移載可能な範囲よりも広い範囲にわたって前記スロットが設けられており、前記移載機と第1ポジションまたは第2ポジションに遷移した前記ボートエレベータとの間で、前記基板の搬入/搬出が行われるものであって、前記第1ポジション及び前記第2ポジションのいずれによっても移載可能な前記スロットに関して前記基板の搬入/搬出を行う前記ボートエレベータのポジションは、前記基板の搬入/搬出において前記ボートエレベータのポジション遷移の回数もしくは遷移に要する時間の合計が最小となるように設定するよう、前記移載動作データを設定する手順とをコンピュータにより基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数枚のウエハをボートで保持した状態で処理するプロセスチューブと、プロセスチューブの真下でボートを搬入搬出するロードロック室と、ロードロック室の待機部に設置されボートを昇降させるボートエレベータと、ロードロック室に連設されゲートバルブで開閉される真空予備室と、ロードロック室の設置部に設置されボートと真空予備室との間でウエハを移載するウエハ移載装置とを備えており、ウエハ移載装置の上下方向のストロークL1がボートのウエハ保持範囲L2よりも小さく設定され、ストロークの不足分L3がボートエレベータのストロークによって補われるように構成された基板処理装置が開示されている。このように、ウエハ移載装置のストロークの不足分がボートエレベータのストロークによって補われることにより、ウエハ移載装置のストロークを短く設定することができ、ウエハ移載装置が設置される気密室の容積を抑制することができ、ひいては真空引き時間を短縮し、スループットが向上される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-163252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、かかる場合において、ウエハのボートへの搬入搬出を効率的に行うことが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の基板処理装置は、基板を保持するスロットを複数有するボートと、前記ボートに保持された前記基板を処理する処理炉と、前記ボートを昇降させるボートエレベータと、前記基板が格納されるキャリアと前記ボートとの間で前記基板を移載する移載機と、前記ボートエレベータと前記移載機とを制御可能に構成されたコントローラとを有し、前記コントローラは、前記移載機が前記基板を移載するための複数のポジションを前記ボートエレベータに設定し、前記移載機が複数の前記キャリアから前記処理炉に装填可能な状態にまで前記ボートに前記基板を搬入する動作、及び前記移載機が前記処理炉で処理された前記基板を前記ボートから複数の前記キャリアに搬出する動作のそれぞれにおいて、前記ボートエレベータの前記複数のポジションの間の遷移の回数もしくは遷移に要する時間の合計が最小となるように選択するよう構成され、前記ボートには、前記移載機が静止した前記ボートに対して前記基板を移載可能な範囲よりも広い範囲にわたって前記スロットが設けられており、前記複数のポジションは、第1ポジション及び第2ポジションを有し、前記ポジションの選択は、前記第1ポジション及び前記第2ポジションのいずれによっても移載可能な前記スロットに関する、前記基板を搬入する動作及び搬出する動作において適用される
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、ウエハのボートへの搬入搬出を効率的に行うことが可能な技術を提供できる。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】基板処理装置の横断面図の一例である。
図2】基板処理装置の縦断面図の一例である。
図3】コントローラのブロック図である。
図4】ボートエレベータのポジションHOME1,HOME2における、ウエハ移載機構とボートとの位置関係を示す模式図である。
図5】第1ポジションHOME1、第2ポジションHOME2でのウエハ搬送領域を示す図である。
図6】ジョブ登録フローを示す図である。
図7】基板移載情報の例である。
図8】本実施例における搬送順序の例である。
図9】比較例における搬送順序の例である。
図10】ジョブ実行フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(基板処理装置の概要)
本開示の実施形態を図1図2に基づいて説明する。本開示の実施形態において、基板処理装置は、一例として、半導体装置(IC)の製造における処理を実施する基板処理装置である。以下の説明では、基板処理装置として、基板(ウエハ)に酸化、拡散処理やCVD処理などを行う縦型の装置(以下、単に処理装置ともいう)の例について述べる。
【0010】
図1図2に示すように、基板処理装置は隣接する2つの処理モジュール(Process Module)3A、3Bを備えている。処理モジュール3A、3Bは、上側に複数のウエハ(基板)200を一括して処理する縦型の処理炉202A、202Bをそれぞれ備える。例えば、1つの処理炉は、5枚~250枚(好ましくは、25枚~75枚)程度のウエハ200を処理可能である。
【0011】
処理モジュールPM3A、3Bは、処理炉202A、202Bの下方に配置された準備室としての装填室(ローディングエリア)6A、6Bをそれぞれ備える。装填室6A、6Bの正面側には、ウエハ200を移載する移載機としてのウエハ移載機構125を有する移載室(例えば、EFEM:Equipment Front End Module)8が、装填室6A、6Bに隣接して配置されている。
【0012】
移載室8の正面側には、ウエハ200を複数枚収容する収容容器(キャリア)としてのポッド(FOUP:Front Opening Unified Pod)110を収納する収納室(ストッカー)9が設けられている。収納室9の前面にはI/Oポートとしてのロードポート22が設置され、ロードポート22を介して処理装置内外にポッド110が搬入出される。ポッド110には、ウエハ200を載置する保持部(以後、スロットともいう)が、25個設けられている。
【0013】
装填室6A、6Bと移載室8との境界壁(隣接面)には、隔離部としてのゲートドア90A、90Bが設置される。移載室8内および装填室6A、6B内には圧力検知器がそれぞれに設置されており、移載室8内の圧力は、装填室6A、6B内の圧力よりも低くなるように設定されている。また、移載室8内および装填室6A、6B内には酸素濃度検知器がそれぞれに設置されており、移載室8A内および装填室6A、6B内の酸素濃度は大気中における酸素濃度よりも低く維持されている。好ましくは、30ppm以下に維持されている。
【0014】
移載室8の天井部には、移載室8内に清浄雰囲気を供給するクリーンユニット10が設置されており、移載室8内に清浄雰囲気として、例えば、不活性ガスを循環させるように構成されている。移載室8内を陽圧の不活性ガスにて循環パージすることにより、移載室8内に装填室6A、6Bのパーティクル等が処理炉202に混入することを抑制することができ、移載室8内および装填室6A、6B内でウエハ200上に自然酸化膜等が形成されることを抑制することができる。
【0015】
収納室9の後方、収納室9と移載室8との境界壁には、ポッド110の蓋を開閉するポッドオープナ(例えば、FIMS:Front-opening Interface Mechanical Standard)21が複数台、例えば、3台配置されている。ポッドオープナ21がポッド110の蓋を開けることにより、ポッド110内のウエハ200が移載室8内外に搬入出される。
【0016】
図2に示されているように、基板処理装置本体の筐体111は、処理モジュール3A、3B、移載室8、収納室9を囲むように設けられる。サブ筐体119は、筐体111内で、移載室8を画成する。なお筐体111の正面は収納室9側である。
【0017】
収納室9の面側にはポッド搬入搬出口が筐体111の内外を連通するように開設されている。ポッド搬入搬出口はフロントシャッタ(図示せず)によって開閉されるように構成されていてもよい。
【0018】
ポッド搬入搬出口には、搬入搬出部として用いられるロードポート22が設置されており、ロードポート22はポッド110が載置されて位置合わせするように構成されている。ポッド110はロードポート22上に工程内搬送装置によって搬入され、また、ロードポート22上から搬出されるようになっている。
【0019】
収納室9の正面寄り及び移載室8の上方には、上下左右にわたってマトリクス状にポッド棚(収納棚)105が設置されている。ポッド棚105は、ポッド110をそれぞれ載置する複数の載置部(トレー)140と、ポッド110が収納される保存位置とポッド110を受渡しする受渡し位置との間で載置部140を個別に水平移動させる水平移動機構(収容棚水平移動機構)とにより構成される。横方向に一列に並ぶ複数の独立した載置部140によってポッド棚105の一段が構成され、該一段のポッド棚が垂直方向に複数段設置されている。各載置部140は独立して水平移動させることが可能である。そして、ポッド搬送装置130は、ロードポート22、ポッド棚105、ポッドオープナ21との間で、ポッド110を搬送するように構成されている。
【0020】
サブ筐体119の正面壁119aには、ウエハ200をサブ筐体119内に対して搬入搬出するためのウエハ搬入搬出口が水平方向に左右3つ並べられて開設されており、該ウエハ搬入搬出口にはポッドオープナ21がそれぞれ設置されている。ポッドオープナ21はポッド110を載置する載置台122と、密閉部材として用いられるポッド110のキャップを着脱するキャップ着脱機構123とを備えている。ポッドオープナ21は載置台122に載置されたポッド110のキャップをキャップ着脱機構123によって着脱することにより、ポッド110のウエハ出し入れ口を開閉するように構成されている。なお、載置台122を複数の載置部140の1つとみなす場合がある。
【0021】
サブ筐体119はポッドが搬送される収納室9から流体的に隔絶された移載室8を構成している。移載室8に設置されたウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に移動させる移載アーム125a、移載アーム125aを昇降させるためのウエハ移載エレベータ125bと、移載アーム125aの先端に設けられウエハ200を保持するエンドエフェクタ(基板保持体)125cとで構成されている。これら移載エレベータ125b及び移載アーム125aの連続動作により、ボート217に対してゲートドア90を介してウエハ200を搬入(チャージング)及び搬出(ディスチャージング)するように構成されている。
【0022】
移載室8の後側領域には、処理炉202から降ろされたボート217を収容して待機させる装填室6が構成されている。移載室8の背面もしくは装填室6の前面に設けられたゲートドア90は上下にスライドすることにより開閉し、装填室6は、少なくとも上下にスライドするゲートドアの高さの2倍の高さを有している。装填室6の上方には、処理室を内部に構成する処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部は、ボート217がおろされている間、炉口シャッタ147により閉塞されるように構成されている。
【0023】
ボート217はボートエレベータ(図示せず)によって昇降され処理炉内へ導入される。ボートエレベータの昇降台に連結された連結具(図示せず)には蓋体としてのシールキャップ219が水平に据え付けられており、蓋体219はボート217を垂直に支持し、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。ボート217は複数本の補強部材を備えており、複数枚のウエハ200をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持するように構成されている。
【0024】
次に、基板処理装置の動作について説明する。上述の基板処理装置を用い、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板処理を行う例について説明する。本実施形態においては、シーケンスレシピが実行されると、コントローラ121は、基板処理装置を構成する各部の動作を制御して基板処理を開始する。
【0025】
ポッド110がロードポート22に供給されると、ロードポート22の上のポッド110はポッド搬入装置によって筐体111の内部へポッド搬入搬出口から搬入される。搬入されたポッド110はポッド棚105の指定された載置部140へポッド搬送装置130によって自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、ポッド棚105から一方のポッドオープナ21に搬送されて受け渡され、載置台122に移載されるか、もしくは直接ポッドオープナ21に搬送されて載置台122に移載される。
【0026】
載置台122に載置されたポッド110はその開口側端面がサブ筐体119の正面壁119aにおけるウエハ搬入搬出口の開口縁辺部に押し付けられるとともに、そのキャップがキャップ着脱機構123によって取り外され、ウエハ出し入れ口を開放される。ポッド110がポッドオープナ21によって開放されると、ウエハ200はポッド110からエンドエフェクタ125cによってウエハ出し入れ口を通じて保持され、移載室8の後方にある装填室6へゲートドア90を介して搬入され、ボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡した移載アーム125aはポッド110に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0027】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、引き続き前処理が実行され、前処理が終了すると、本処理(ここでは、プロセスレシピ)が実行される。このプロセスレシピが開始されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部が、炉口シャッタ147によって開放される。続いて、ウエハ200群を保持したボート217はシールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより、処理炉202内へ搬入(ローディング)されて行く。
【0028】
ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に任意の処理が実施される。処理後は、概ね上述の逆の手順で、ウエハ200及びポッド110は筐体の外部へ搬出される。
【0029】
(コントローラ構成)
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、実行部としてのCPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶部としての記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されているRAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された操作部としての入出力装置150が接続されている。
【0030】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、また、記憶装置121cには、このプロセスレシピを含むシーケンスレシピが実行されることにより、装置を構成する各部品を動作させて生じる装置データが格納されている。これら装置データには、コントローラ121のタイムスタンプ機能により時刻データが付加されている。
【0031】
また、記憶装置121cには、本実施形態における制御プログラム等が格納されている。CPU121aは、入出力装置150からの操作コマンドの入力等に応じて、これらのプログラムを実行するように構成されている。また、記憶装置121cには、本実施形態における基板処理シーケンスやジョブ等の各種フローチャートを実現するプログラムが格納されており、これらのプログラム実行に使用される各種設定パラメータ、各種設定画面ファイルを含む画面ファイルが格納されている。
【0032】
なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。
【0033】
I/Oポート121dは、基板処理装置の有する各機構151、各種センサ152に接続されている。
【0034】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラム等を読み出して実行するとともに、入出力装置150からの操作入力に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、例えばマスフローコントローラによる処理炉202への各種ガスの流量調整動作、圧力センサに基づくバルブ等の開閉動作による処理炉202内の圧力調整動作、温度センサに基づく処理炉202の温度調整動作、ボート回転機構によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータによるボート217の昇降動作等をI/Oポート121dを介して制御するように構成されている。
【0035】
(2ポジション搬送)
以下、ウエハ移載機構125とボート217との間のウエハ搬送方法について説明する。 図4は、ボートエレベータのポジションHOME1,HOME2における、ウエハ移載機構125とボート217との位置関係を示す模式図である。本実施例の基板処理装置は、特許文献1開示と同様、ウエハ移載機構125の鉛直方向のストローク(エンドエフェクタ125cが基板を移載するために鉛直方向に移動可能な範囲)Lとボート217のウエハ保持範囲LとはL<Lの関係にある。このため、ウエハ移載機構125がボート217にウエハを搬入搬出するとき、ボートエレベータは複数のポジションをとるように設定される。例えば、2つのポジション、第1ポジション(HOME1)、第2ポジション(HOME2)をとるものとする。第1ポジションでは、上側領域A1Uが搬送可能領域であり、下側領域A1Lが搬送不可領域である。また、第2ポジションでは、上側領域A2Uが搬送不可領域であり、下側領域A2Lが搬送可能領域である。搬送可能/不可を分ける領域の境界は、ゲートドア90及びウエハ移載機構125のストロークによって決定される。このように、いずれのポジションにおいても、ボート217の上端部もしくは下端部においてウエハの搬送不可領域が存在することになる。このため、ボート217にウエハを搬入するにあたり、ボートエレベータを第1ポジションと第2ポジションとの間で移動させる必要が生じるが、この移動回数を少なくできるほど、ウエハ移載機構125とボート217との間のウエハ搬送時間を短縮することができ、装置のスループットを向上させることができる。
【0036】
このため、本実施例においては、第1ポジション、第2ポジションでのウエハ搬送領域を図5に示すように設定する。この例では、ボート217は53枚のウエハを搭載できるようスロットが設けられており、スロットは下から順に1~53まで振られた番号(ボートスロット番号ともいう)によって特定されている。ボートエレベータが第1ポジションに位置する場合にウエハ移載機構125がウエハを搬送可能なボート217のスロットを第1ポジション搬送領域A、ボートエレベータが第2ポジションに位置する場合にウエハ移載機構125がウエハを搬送可能なボート217のスロットを第2ポジション搬送領域Aと呼ぶものとする。搬送領域A,Aはそれぞれ、図4に示した搬送不可領域を含まない限り、任意に設定可能であるが、ボートエレベータが第1ポジションに位置していても、第2ポジションHOME2に位置していても、ウエハ移載機構125がウエハを搬送可能な領域(複数ポジション搬送可能領域A12)を有するように設定することが望ましい。図5の例では、第1ポジション搬送禁止領域を下側領域A1L(ボートスロット番号1~10)と一致させ、第2ポジション搬送禁止領域を上側領域A2U(ボートスロット番号44~53)と一致させ、上側領域A1Uと下側領域A2Lとの共通部分(ボートスロット番号11~43)が複数ポジション搬送可能領域A12となるように、第1ポジション搬送領域Aと第2ポジション搬送領域Aとを設定した例を示している。なお、ボートエレベータが第2ポジションに位置するときであっても、炉口シャッタ147はボート217に干渉することなく閉じられることが好ましい。
【0037】
(ボートティーチング)
ウエハ移載機構125は、フィードバックが無いか、不完全なロボットであるため、ボート217へのウエハの搬送が適切に行えるよう、基板処理装置ごと、あるいはボートごとの微妙な寸法差(機差)をウエハ移載機構125に教える必要がある。通常、装置の運用前に、ボートの位置や形状などを測定し、ウエハ移載機構125の座標系のキャリブレーションを行うティーチングが行われる。測定自体をプログラムに基づいてウエハ移載機構125自身に行わせるようにしてもよく、このようなものはオートティーチングなどと呼ばれる。本実施例の場合、ボートエレベータの停止位置にも機差があるため、ティーチングは第1ポジション(HOME1)と第2ポジション(HOME2)とのそれぞれにおいて、第1ポジション搬送領域A及び第2ポジション搬送領域Aに対して行うものとする。具体的には、ポジションまたはHOME2の搬送領域の上寄りと下寄りの2つのスロットに、位置検出用の冶具ウエハを搭載し、冶具ウエハの位置検出用突起を検出して、ボートの位置や形状の測定を行う。冶具ウエハを搭載するボートのスロットを「ティーチングポジション」という。ここで、第1ポジションでのティーチングポジションと第2ポジションでのティーチングポジションはそれぞれ任意に定めてよいが、1箇所のティーチングポジションを共通とすることができる。同じスロットに冶具ウエハを載せてボート217をボートエレベータにより昇降させて、すなわち、第1ポジション及び第2ポジションで計測した結果は、良くキャリブレーションされていれば高さ以外が一致するはずであり、測定異常判定を行うことができる。
【0038】
(ジョブ登録処理)
基板処理装置が実行する処理はジョブとして登録され、ジョブキューに登録されたジョブを実行することで、ウエハに対する処理がなされる。図6にジョブを登録するフローを示す。
【0039】
制御部121は、オペレータもしくは顧客ホストコンピュータから成膜処理要求を受け付け、1秒周期で図6に示すジョブ登録処理を開始する(S600)。なお、成膜処理要求で通知される情報は、成膜時に使用するシーケンスレシピ、該シーケンスレシピに対応したプロセスパラメータ、処理対象となる製品ウエハ及びモニタウエハを保持するキャリア110と該キャリア110内に設けられたウエハ200を載置する保持部(スロット)の番号等である。このキャリアスロット番号は、ボート217と同様に下から順番に付加されている。キャリア110内のウエハはキャリアスロット番号により、一意に特定される。制御部121は、他に指定がない限り、成膜処理要求で通知された情報の受付け順に優先順位を確定していく。また、同じキャリアに保持されたウエハはそのキャリアスロット番号に従って優先順位が決定されるものとする。
【0040】
制御部121は、プロセス仕様を確認する。具体的には、指定されたレシピが記憶部121cに格納され、該レシピで使用するパラメータの設定が正しいことを確認する(S601)。続いて、処理モジュール単位でプロセス仕様を整理する(S602)。具体的には、制御部121は、予め記憶部121cに格納されたレシピから今回指定されたレシピを選択して、所望のプロセス仕様を確定する。
【0041】
制御部121は、次に材料仕様を確認する(S603)。具体的には、処理済みでないキャリア110内のウエハ200があり、このキャリア110が他のジョブで処理を予約されていないかを確認する。
【0042】
続いて、全処理モジュールPMで処理可能なウエハ処理能力を確認する(S604)。具体的には、制御部121は、処理モジュールPMの処理ウエハ能力を事前に把握するために、記憶部121cに予め格納されている基板配置パラメータ(WAP)から、使用するウエハ種別ごとのウエハ枚数を事前に算出する。WAPはボート217上のウエハ配置指定を定義する装置パラメータである。
【0043】
制御部121は、今回の処理で使用する全ウエハ数を算出し、基板処理装置が処理する全ウエハ種別に対して、ボート217に搭載される基板配置に応じてウエハ種別ごとの枚数を算出する。
【0044】
制御部121は、S604で算出した各処理モジュールの処理ウエハ能力に基づいて材料仕様を確定する(S605)。具体的には、該ジョブをどの処理モジュールで実行するのか、2つの処理モジュールに振り分ける場合、どのキャリアに保持されたウエハをどちらの処理モジュールに振り分けるか等について決定する。
【0045】
制御部121は、ジョブ登録後、周期的(例えば1秒ごと)にジョブ実行指示の有無を監視し、上位コントローラまたは操作部からジョブ実行指示を受付けると、受け付けたジョブの実行を開始する。
【0046】
(ウエハ移載処理)
ジョブ実行処理にウエハ移載処理がある。制御部121は使用する処理モジュールPMのボート217へ基板処理を実行するウエハ200を搬送するため、ボート217上のウエハ200の配置を設定する。さらに決定された配置から、ウエハ200を搬送する順番を確定する。
【0047】
図7に制御部121が決定する基板移載情報の例を示す。欄701は搬送先情報であり、ボート217のボートスロット番号を示している。欄702及び欄703は搬送元情報であり、欄702はウエハ200が格納されているキャリア110の種別と項番を、欄703はキャリア110内でウエハ200が載置されているキャリアスロット番号を示している。欄704は、ウエハ移載機構125がボート217にウエハを搬入搬出するときの搬送順序であり、搬送順に1~53の値が登録される。
【0048】
なお、WAPによりボート217の各スロットに配置するウエハ種別は定義されている。また、一つのキャリアには同じウエハ種別のウエハが格納されている。この例は、ウエハ種別「Product」、「Monitor」、「Dummy」、「Fill Dummy」のウエハをボート217に配置することを指定する。「Product」は製品となるウエハ(製品ウエハ)である。「Monitor」は製品ウエハの処理結果を推定するために用いられるモニタウエハである。製膜品質の検査は、モニタウエハに対して行われる。「Dummy」はダミーウエハであり、「Fill Dummy」は一度に処理可能なウエハ枚数に対して投入枚数が少ない場合などに、空スロットを生じさせないために配置される充填ダミーウエハである。
【0049】
この例では、ボート217の全スロット(基板保持領域)の両端部(上端部及び下端部)では、所定の品質が維持できないので、製品ウエハの搭載を避け、ダミーウエハ(「Dummy」)を配置する。また、全スロットの中心部(ボートスロット番号27)と両端部との境界(ボートスロット番号52,2)の3か所にモニタウエハ(「Monitor」)を配置する。これら以外のスロットが製品ウエハの載置可能なスロットになる。
【0050】
WAPの定義に従い、制御部121は基板移載情報の搬入元情報を決定する。この例では、上端側及び下端側に充填ダミーウエハ(「Fill Dummy」)が配置される(ボートスロット番号51~44,9~3)。残るスロットにキャリア1の製品ウエハ(「Product #1」:ボートスロット番号43~28,26~18)、キャリア2からの製品ウエハ(「Product #2」:ボートスロット番号17~10)が配置されるように搬入元情報が決定されている。製品ウエハは、配置される数が1つのキャリア110の収容数より多いため、複数のキャリア「Product #1」「Product #2」から搬入される。図7ではキャリアスロットが1から開始する例を示したが、実際にはダミーウエハ等は1つ以上のキャリア110に収容されたものが巡回的に使用されることがあり、その結果搬入元のキャリアが複数にまたがることがある。
【0051】
制御部121は、図7のようにボート217の各スロットに搬送するキャリアとキャリア内の載置位置が特定されると、ウエハ200を搬送する搬送順序を決定する。なお、ウエハをボート217に搬入する順番とウエハをボート217から搬出する順番とは異なるため、それぞれについて搬送順序を決定する。ウエハ200の搬送時のパーティクルの製品ウエハへの影響抑制のため、ウエハ種別に応じて搬送順序が決定される。この観点からは、搬入時にはボート217には、ダミーウエハ、充填ダミーウエハ、製品ウエハ、モニタウエハの順で搬送する必要がある。搬出時には、この逆順となり、モニタウエハ、製品ウエハ、充填ダミーウエハ、ダミーウエハの順で搬送する必要がある。
【0052】
このとき、ボート217は複数ポジション搬送可能領域A12を有しているため、制御部121は搬送時のボートエレベータのポジションが第1ポジションHOME1であるか、第2ポジションHOME2であるかについてもあわせて決定する必要がある。ここで、制御部121はボートエレベータのポジション遷移回数を最小とするよう搬送順序を決定する。遷移回数を少なくする程、ウエハ200とボート217との間の搬送時間を短くすることができるためである。
【0053】
キャリア110とボート217との間の搬送が図7に示した基板移載情報である場合に、制御部121が決定する搬送順序の例を図8に示す。表801には、ボート217のボートスロット番号(No.)、第1ポジション(HOME1)における該スロットへの搬送可否(H1)、第2ポジション(HOME2)における該スロットへの搬送可否(H2)、該スロットに搬送されるウエハのウエハ種別を示している。この場合、制御部121が決定するウエハ200をボート217に搬入する場合における搬送順序の例が表802であり、ボート217からウエハ200を搬出する場合における搬送順序の例が表803である。
【0054】
ウエハ200をボート217に搬入する場合における搬送順序について説明する。ウエハの搬入はダミーウエハ、充填ダミーウエハ、製品ウエハ、モニタウエハの順に搬入され、さらに同じウエハ種別において複数枚有する場合には、上側のスロットから(すなわち、ボートスロット番号の大きいスロットから)順に搬入される。この例では、ダミーウエハ、及び充填ダミーウエハが搬入されるスロットはそれぞれ、第1ポジションでしか搬入できないスロット、第2ポジションでしか搬入できないスロットとなっている。なお、基板処理装置の待機時には、ボートエレベータは第1ポジションにあるものとする。このため、ボートエレベータを動かすことなくボートスロット番号53にダミーウエハを搬入し、続いてボートエレベータを第2ポジションに遷移させてボートスロット番号1にダミーウエハを搬入する。このように、ダミーウエハの搬入のためボートエレベータの遷移動作が1回生じる。以下のような、ボート217へのウエハの搬送動作を表802に纏めている。「搬送順序」欄には搬入対象となるボートスロット番号に加え、ボートエレベータの遷移動作が生じる場合には、遷移動作のタイミングを矢印で示してある。また「動作回数」欄には各ウエハ種別のウエハを搬入するために必要なボートエレベータの遷移動作の回数を示している。
【0055】
ここで製品1ウエハ(「Product1」)が格納される領域は、複数ポジション搬送可能領域A12に含まれている。このため、製品1ウエハのボート217への搬入は、充填ダミーウエハの搬入終了時にボートエレベータが第2ポジションに位置しているため、そのまま製品1ウエハの搬入を継続する。さらに、製品2ウエハ(「Product2」)が格納される領域は、複数ポジション搬送可能領域A12と第1ポジション搬送禁止領域の双方が含まれている。しかしながら、製品2ウエハのボート217への搬入は、製品1ウエハの搬入終了時にボートエレベータが第2ポジションHOME2に位置しているため、そのまま製品2ウエハの搬入が継続でき、結果、製品ウエハの搬入のためにボートエレベータの遷移動作は生じていない。このように、複数ポジション搬送可能領域A12に移載するときには現在のポジションを維持する、言い換えれば遷移をできるだけ遅らせるという局所最適化によって、ウエハ搬入全体でのポジション遷移回数を最小化できることが理解される。なお、搬入元のポッド110がポッドオープナ21において準備できていない場合、移載の中断が生じうる。もし、その中断が複数ポジション搬送可能領域A12に移載中に発生した場合、中断中にポジション遷移を行ってもよい。
【0056】
基板処理装置での処理が終了すると、ボート217に搭載されているウエハをウエハ移載機構125のセンサで検知し、ウエハの存在や割れなどの異常の有無を確認する(ボートマッピング)。このとき、図7に示した基板移載情報と照合し、ウエハ種別ごとにウエハが搬出可能な状態であるかどうかを判定する。なお、ボートマッピングを実施するときのボートエレベータの第1ポジションと第2ポジションのそれぞれで行われ、マッピングの対象となるウエハは、そのポジションで搬出されるべきウエハと同じである。なお、ボートマッピングにおいても、第1ポジションと第2ポジションにおいて、少なくとも1つのスロットで重複させて検知を試行することができる。検知結果は同じになるはずであるが、もし異なる場合、障害の原因の切り分けに役立つことがある。
【0057】
ウエハ200をボート217から搬出する場合における搬送順序について説明する。搬入順序の逆となる。すなわち、ウエハの搬出はモニタウエハ、製品ウエハ、充填ダミーウエハ、ダミーウエハの順に搬出され、さらに同じウエハ種別において複数枚有する場合には、下側のスロットから(すなわち、ボートスロット番号の小さいスロットから)順に搬入される。このため、ボートエレベータを第1ポジションから第2ポジションに遷移させてボートスロット番号2からモニタウエハを搬出し、続いてボートエレベータを第1ポジションに遷移させてボートスロット番号27,52の順にモニタウエハを搬入する。このように、モニタウエハの搬出のためボートエレベータの遷移動作が2回生じる。以下のような、ボート217からのウエハの搬出動作を表803に纏めている。
【0058】
本実施例では複数ポジション搬送可能領域A12を設けることで、キャリア110とボート217との間の搬送動作においてボートエレベータの遷移動作を削減することができている。図9に、比較例として、複数ポジション搬送可能領域A12を有さない場合における、制御部121が決定する搬送順序の例を示す。本比較例の場合も、搬送対象は図7に示した基板移載情報で示される。表901の第1ポジションにおける該スロットへの搬送可否(H1)欄、第2ポジションにおける該スロットへの搬送可否(H2)欄に示されるように、複数ポジション搬送可能領域A12が存在しない。このために、本実施例でのウエハ200をボート217に搬入する場合における搬送順序(表802)と比較例でのウエハ200をボート217に搬入する場合における搬送順序(表902)とを比較すると以下の点で異なっている。
【0059】
上述したように、本実施例では製品ウエハは搬入するにあたってボートエレベータの遷移動作は生じていない。これに対して比較例では、充填ダミーウエハの搬入終了時にボートエレベータが第2ポジションに位置しているため、製品1ウエハのボート217への搬入を行うためにボートエレベータを第1ポジションに遷移させなければならない。続いて製品2ウエハのボート217への搬入を行うが、スロット番号10は第2ポジションでしか搬入できないスロットとなっているため、スロット番号10への製品2ウエハの搬入にあたり、ボートエレベータを第2ポジションに遷移させなければならない。このようにボート217に同じ基板移載情報に基づきウエハを搬入する場合であっても、必要なボートエレベータの遷移回数が増加している。ウエハの搬出動作についても同様である。
【0060】
図10にジョブ実行処理のフローを纏める。上述の通り、ジョブ実行指示を受け付けると、ジョブの実行が開始される(S1000)。続いて、制御部121はジョブのプロセスレシピ、プロセスレシピに紐づけられた基板配置パラメータに基づき、基板移載情報(図7参照)を設定し(S1001)、搬送順序を決定する(S1002)。このとき、複数ポジション搬送可能領域A12を利用し、ボートエレベータの遷移回数が最小となるよう、ウエハ移載機構及びボートエレベータとを協調制御する移載動作データを作成する。
【0061】
移載動作データに従って、ウエハ移載機構125はウエハ200をボート217に搬入する(S1004)。このとき、制御部121は、ウエハ移載機構125とボート217との間でウエハの搬入または搬出を行う際、ボートエレベータが第1ポジションまたは第2ポジション以外のポジションに位置している場合(例えばポジション遷移中)には、ウエハ200の破損を避けるため、ウエハ移載機構125の移載動作を強制的に禁止するインターロックを行う。また、それらのポジションにあっても、搬送禁止領域のスロットへの移載はインターロックによっても禁止されうる。これにより基板移載情報に誤りがあっても破損を避けることができる。なお第2ポジションに位置するボート217の上端が炉口シャッタ147に衝突するおそれがある場合には、制御部121はボートエレベータとともに炉口シャッタ147を制御し、ボートエレベータを第2ポジションに遷移させるときは、炉口シャッタ147を開放するように構成してもよい。一方、ボートエレベータが第1ポジションに位置する場合には、処理炉202の温度変化を抑えるため、炉口シャッタ147は基本的には閉鎖しておくことが望ましいが、炉口シャッタ147の頻繁な開閉を避けるため、第2ポジションから第1ポジションに遷移し、所定時間よりも短い時間内に再度第2ポジションに再度遷移するような場合は、ボートエレベータが第1ポジションに位置している間も炉口シャッタ147を開放したままにしておいてもよい。
【0062】
ウエハ200を搭載したボート217が処理炉202に装填され(S1004)、ウエハに対してプロセスレシピに従った成膜処理が実行される(S1005)。その後処理炉202からボートを引き出し(S1006)、ウエハの冷却中にボートマッピングを行う(S1007)。その後、ボート217からウエハ200を搬出し(S1008)、ジョブを終了する(S1009)。
【0063】
〈本開示の好ましい態様〉
本開示の技術は、ボートエレベータに2つのポジションが設定されるものに限らず、3以上のポジションが設定される装置にも適用できる。その場合、あるポジションから他の複数のポジションへの遷移時間は異なりうるし、上昇と下降とで遷移時間が異なりうる。従って、最小化の対象は、3以上のポジションの間の遷移回数又は遷移に要する時間の合計とするか、3以上のポジションの内の注目する2つのポジション間の遷移回数又は合計時間とすることができる。
【符号の説明】
【0064】
6:装填室、8:移載室、9:収納室、21:ポッドオープナ、22:ロードポート、110:ポッド、90:ゲートドア、105:ポッド棚(収容棚)、111:筐体、119:サブ筐体、119a:サブ筐体の正面壁、121:制御部、121a:CPU、121b:RAM、121c:記憶装置、121d:I/Oポート、121e:内部バス、122:載置台、123:キャップ着脱機構、125:ウエハ移載機構、130:ポッド搬送装置、140:載置部、147:炉口シャッタ、150:入出力装置、151:機構、152:センサ、200:ウエハ、202:処理炉、217:ボート、219:シールキャップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10