(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】光吸収層用前駆体、これを用いた有機-無機複合太陽電池の製造方法および有機-無機複合太陽電池
(51)【国際特許分類】
H01L 51/44 20060101AFI20220726BHJP
H01L 51/46 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
H01L31/04 112Z
H01L31/04 162
(21)【出願番号】P 2020530574
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(86)【国際出願番号】 KR2018015607
(87)【国際公開番号】W WO2019132318
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】10-2017-0179568
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0156846
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨンナム
(72)【発明者】
【氏名】ハム、ユン ヘ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョン ソク
(72)【発明者】
【氏名】パク、サン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、セイヨン
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0084399(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1746335(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42-51/48
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト前駆体;および
前記ペロブスカイト前駆体対比0.005wt%~0.5wt%のフッ素系界面活性剤
を含み、
前記フッ素系界面活性剤の主鎖は、パーフルオロアルキル基を含むものである、
光吸収層用前駆体。
【請求項2】
前記ペロブスカイト前駆体は、有機ハロゲン化物および金属ハロゲン化物を含むものである、
請求項1に記載の光吸収層用前駆体。
【請求項3】
前記有機ハロゲン化物は、下記化学式1~3のうちのいずれか1つで表されるものである、
請求項2に記載の光吸収層用前駆体:
[化学式1]
R1X1
[化学式2]
R2
aR3
(1-a)X2
eX3
(1-e)
[化学式3]
R4
bR5
cR6
dX4
e'X5
(1-e')
前記化学式1~3において、
R2およびR3は、互いに異なり、
R4、R5およびR6は、互いに異なり、
R1~R6は、それぞれC
nH
2n+1NH
3
+、NH
4
+、HC(NH
2)
2
+、Cs
+、NF
4
+、NCl
4
+、PF
4
+、PCl
4
+、CH
3PH
3
+、CH
3AsH
3
+、CH
3SbH
3
+、PH
4
+、AsH
4
+、およびSbH
4
+から選択される1価の陽イオンであり、
X1は、ハロゲンイオンであり、
X2およびX3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲンイオンであり、
X4およびX5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲンイオンであり、
nは、1~9の整数であり、
aは、0<a<1の実数であり、
bは、0<b<1の実数であり、
cは、0<c<1の実数であり、
dは、0<d<1の実数であり、
b+c+dは、1であり、
eは、0<e<1の実数であり、
e'は、0<e'<1の実数である。
【請求項4】
前記金属ハロゲン化物は、下記化学式4で表されるものである、
請求項2に記載の光吸収層用前駆体:
[化学式4]
M1X6
2
前記化学式4において、
M1は、Cu
2+、Ni
2+、Co
2+、Fe
2+、Mn
2+、Cr
2+、Pd
2+、Cd
2+、Ge
2+、Sn
2+、Pb
2+、およびYb
2+から選択される2価の金属イオンであり、
X6は、ハロゲンイオンである。
【請求項5】
第1電極を用意するステップと、
前記第1電極上に第1共通層を形成するステップと、
前記第1共通層上に請求項1~4のいずれか1項に記載の光吸収層用前駆体をコーティングして光吸収層を形成するステップと、
前記光吸収層上に第2共通層を形成するステップと、
前記第2共通層上に第2電極を形成するステップと
を含む
有機-無機複合太陽電池の製造方法。
【請求項6】
第1電極と、
前記第1電極上に備えられた第1共通層と、
前記第1共通層上に備えられた光吸収層と、
前記光吸収層上に備えられた第2共通層と、
前記第2共通層上に備えられた第2電極とを含む有機-無機複合太陽電池において、
前記光吸収層は、ペロブスカイト構造の化合物;およびフッ素系界面活性剤を含み、
前記フッ素系界面活性剤は、光吸収層の質量対比0.005wt%~0.5wt%含まれ、
前記フッ素系界面活性剤の主鎖は、パーフルオロアルキル基を含むものである、
有機-無機複合太陽電池。
【請求項7】
前記ペロブスカイト構造の化合物は、下記化学式5~7のうちのいずれか1つで表されるものである、
請求項
6に記載の有機-無機複合太陽電池:
[化学式5]
R1M1X1
3
[化学式6]
R2
aR3
(1-a)M2X2
zX3
(3-z)
[化学式7]
R4
bR5
cR6
dM3X4
z'X5
(3-z')
前記化学式5~7において、
R2およびR3は、互いに異なり、
R4、R5およびR6は、互いに異なり、
R1~R6は、それぞれC
nH
2n+1NH
3
+、NH
4
+、HC(NH
2)
2
+、Cs
+、NF
4
+、NCl
4
+、PF
4
+、PCl
4
+、CH
3PH
3
+、CH
3AsH
3
+、CH
3SbH
3
+、PH
4
+、AsH
4
+、およびSbH
4
+から選択される1価の陽イオンであり、
M1~M3は、
それぞれ、Cu
2+、Ni
2+、Co
2+、Fe
2+、Mn
2+、Cr
2+、Pd
2+、Cd
2+、Ge
2+、Sn
2+、Bi
2+、Pb
2+、およびYb
2+から選択される2価の金属イオンであり、
X1は、ハロゲンイオンであり、
X2およびX3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲンイオンであり、
X4およびX5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲンイオンであり、
nは、1~9の整数であり、
aは、0<a<1の実数であり、
bは、0<b<1の実数であり、
cは、0<c<1の実数であり、
dは、0<d<1の実数であり、
b+c+dは、1であり、
zは、0<z<3の実数であり、
z'は、0<z'<3の実数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月26日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2017-0179568号、および2018年12月7日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2018-0156846号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、光吸収層用前駆体、これを用いた有機-無機複合太陽電池の製造方法および有機-無機複合太陽電池に関する。
【背景技術】
【0003】
化石エネルギーの枯渇とその使用による地球環境的な問題を解決するために、太陽エネルギー、風力、水力といった、再生可能で、クリーンな代替エネルギー源に関する研究が活発に進められている。このうち、太陽光から直接電気的エネルギーを変化させる太陽電池に対する関心が大きく増加している。ここで、太陽電池とは、太陽光から光エネルギーを吸収して電子と正孔を発生する光起電効果を利用して電流-電圧を生成する電池を意味する。
【0004】
有機-無機複合ペロブスカイト物質は、吸光係数が高く、溶液工程により容易に合成可能な特性のため、最近、有機-無機複合太陽電池の光吸収物質として注目されている。
【0005】
しかし、既存のペロブスカイト物質を適用した有機-無機複合太陽電池の場合、高い効率にもかかわらず、大面積(5cm2以上)素子の製造時、光吸収層の欠陥および抵抗増加などの問題によって、素子の大きさに比べて効率が減少する問題点があった。また、耐水分性が弱く、長期安定性を確保するために別途の封止技術を進行させなければならない問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書は、工程が簡便でありながらも、光吸収層への適用時、コーティング均一度を向上させることができる光吸収層用前駆体およびこれを用いた有機-無機複合太陽電池を提供する。
【0007】
また、本明細書は、安定性およびエネルギー変換効率に優れた有機-無機複合太陽電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書の一実施態様は、ペロブスカイト前駆体;および
前記ペロブスカイト前駆体対比0.005wt%~0.5wt%のフッ素系有機化合物を含むものである光吸収層用前駆体を提供する。
【0009】
本明細書の他の実施態様は、第1電極を用意するステップと、
前記第1電極上に第1共通層を形成するステップと、
前記第1共通層上に前記光吸収層用前駆体をコーティングして光吸収層を形成するステップと、
前記光吸収層上に第2共通層を形成するステップと、
前記第2共通層上に第2電極を形成するステップとを含む有機-無機複合太陽電池の製造方法を提供する。
【0010】
本明細書のさらに他の実施態様は、前記製造方法で製造された有機-無機複合太陽電池を提供する。
【0011】
本明細書のさらに他の実施態様は、第1電極と、
前記第1電極上に備えられた第1共通層と、
前記第1共通層上に備えられた光吸収層と、
前記光吸収層上に備えられた第2共通層と、
前記第2共通層上に備えられた第2電極とを含む有機-無機複合太陽電池において、
前記光吸収層は、ペロブスカイト構造の化合物;およびフッ素系有機化合物を含み、
前記フッ素系有機化合物は、光吸収層の質量対比0.005wt%~5wt%含まれるものである有機-無機複合太陽電池を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本明細書の一実施態様に係る光吸収層用前駆体は、フッ素系有機化合物を含むことにより、光吸収層を大面積に形成してもコーティングの均一度が増加する効果がある。
【0013】
また、本明細書の一実施態様に係る有機-無機複合太陽電池の製造方法は、光吸収層の界面特性が向上して電流密度およびエネルギー変換効率が向上した有機-無機複合太陽電池を製造できるという利点がある。
【0014】
さらに、本明細書の一実施態様に係る有機-無機複合太陽電池の製造方法は、広い光スペクトルを吸収して光エネルギーの損失が低減され、長期安定性およびエネルギー変換効率が向上した有機-無機複合太陽電池を製造できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本明細書の実施態様に係る有機-無機複合太陽電池の構造を例示する図である。
【
図2】実施例1で製造された有機-無機複合太陽電池の断面の走査電子顕微鏡(SEM)イメージを示す図である。
【
図3】比較例1で製造された有機-無機複合太陽電池の断面の走査電子顕微鏡(SEM)イメージを示す図である。
【
図4】本明細書の一実施態様に係る有機-無機複合太陽電池の電圧に応じた電流密度の測定結果を示す図である。
【
図5】実施例1で製造された有機-無機複合太陽電池の電圧に応じた電流密度を繰り返し測定した結果を示す図である。
【
図6】比較例1で製造された有機-無機複合太陽電池の電圧に応じた電流密度を繰り返し測定した結果を示す図である。
【0016】
10:第1電極
20:第1共通層
30:光吸収層
40:第2共通層
50:第2電極
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本明細書を詳細に説明する。
【0018】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0019】
本明細書において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0020】
本明細書の一実施態様に係る光吸収層用前駆体は、ペロブスカイト前駆体;および
【0021】
前記ペロブスカイト前駆体対比0.005wt%~0.5wt%のフッ素系有機化合物を含む。
【0022】
本明細書の一実施態様は、前記フッ素系有機化合物を0.005wt%~0.5wt%含むことにより、光吸収層の形成時、電気的特性の低下なく素子の駆動安定性が向上する効果を示すことができる。
【0023】
より具体的には、前記光吸収層用前駆体は、ペロブスカイト前駆体;および前記ペロブスカイト前駆体対比0.01wt%~0.2wt%のフッ素系有機化合物を含む。
【0024】
本明細書において、「有機化合物」は、炭化水素を基本骨格として含む化合物で、炭素-炭素と炭素-水素の共有結合で構成された骨格構造を有する化合物を意味する。この時、前記骨格構造は、他の元素で置換されていてもよい。
【0025】
本明細書において、前記「フッ素系有機化合物」は、有機化合物の主鎖内にフッ素を含むものを意味する。
【0026】
本明細書の一実施態様において、前記フッ素系有機化合物は、当業界で用いられる物質であれば制限なく使用可能であり、具体的には、主鎖がフルオロ(fluoro)基およびパーフルオロアルキル(perfluoro alkyl)基のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0027】
本明細書の一実施態様において、前記フッ素系有機化合物は、フッ素系界面活性剤を含む。
【0028】
本明細書において、「界面活性剤」は、分子内に親水性および疎水性部分を同時に有する物質を意味する。
【0029】
本明細書の一実施態様において、前記フッ素系界面活性剤は、当業界で用いられる物質であれば制限なく使用可能であり、具体的には、主鎖が親水性基、親油性基、フルオロ(fluoro)基およびパーフルオロアルキル(perfluoro alkyl)基の組み合わせからなるものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0030】
本明細書の一実施態様において、前記フッ素系界面活性剤は、下記化学式Aで表されてもよい。
【0031】
【0032】
前記化学式Aにおいて、xおよびyは、それぞれ1~10の整数である。
【0033】
具体的には、前記フッ素系有機化合物として、Dupont社のFS-31、Zonyl社のFS-300、DIC社のRS-72-K、または3M社のFC-4430が使用できる。
【0034】
本明細書の一実施態様において、前記ペロブスカイト前駆体は、有機ハロゲン化物および金属ハロゲン化物を含む。
【0035】
本明細書の一実施態様において、前記フッ素系有機化合物は、フッ素系界面活性剤である。
【0036】
本明細書において、「前駆体」は、ある物質代謝や反応で特定の物質になる前の段階の物質を意味する。例えば、ペロブスカイト前駆体とは、ペロブスカイト物質になる前の段階の物質を意味し、光吸収層用前駆体とは、光吸収層を形成するための前駆体物質を意味する。
【0037】
本明細書の一実施態様において、前記有機ハロゲン化物は、下記化学式1~3のうちのいずれか1つで表される。
【0038】
[化学式1]
R1X1
【0039】
[化学式2]
R2aR3(1-a)X2eX3(1-e)
【0040】
[化学式3]
【0041】
R4bR5cR6dX4e'X5(1-e')
前記化学式1~3において、
R2およびR3は、互いに異なり、
R4、R5およびR6は、互いに異なり、
R1~R6は、それぞれCnH2n+1NH3
+、NH4
+、HC(NH2)2
+、Cs+、NF4
+、NCl4
+、PF4
+、PCl4
+、CH3PH3
+、CH3AsH3
+、CH3SbH3
+、PH4
+、AsH4
+、およびSbH4
+から選択される1価の陽イオンであり、
X1~X5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲンイオンであり、
nは、1~9の整数であり、
aは、0<a<1の実数であり、
bは、0<b<1の実数であり、
cは、0<c<1の実数であり、
dは、0<d<1の実数であり、
b+c+dは、1であり、
eは、0<e<1の実数であり、
e'は、0<e'<1の実数である。
【0042】
本明細書の一実施態様において、前記R1~R6は、それぞれCnH2n+1NH3
+、NH4
+、HC(NH2)2
+、Cs+、NF4
+、NCl4
+、PF4
+、PCl4
+、CH3PH3
+、CH3AsH3
+、PH4
+、およびAsH4
+から選択される1価の陽イオンである。より具体的には、前記R1~R6は、それぞれCnH2n+1NH3
+、HC(NH2)2
+、およびCs+から選択される1価の陽イオンである。
【0043】
本明細書の一実施態様において、前記有機ハロゲン化物は、CH3NH3I、HC(NH2)2I、CH3NH3Br、HC(NH2)2Br、(CH3NH3)a(HC(NH2)2)(1-a)IeBr(1-e)、または(HC(NH2)2)b(CH3NH3)cCsdIeBr(1-e)であり、aは、0<a<1の実数、bは、0<b<1の実数、cは、0<c<1の実数、dは、0<d<1の実数、b+c+dは、1、eは、0<e<1の実数である。
【0044】
本明細書の一実施態様において、前記X2およびX3は、互いに異なる。
【0045】
本明細書の一実施態様において、前記X4およびX5は、互いに異なる。
【0046】
本明細書の一実施態様において、前記X1~X5は、それぞれ独立して、IまたはBrである。
【0047】
本明細書の一実施態様において、前記金属ハロゲン化物は、下記化学式4で表される。
【0048】
[化学式4]
M1X62
【0049】
前記化学式4において、
【0050】
M1は、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、およびYb2+から選択される2価の金属イオンであり、
X6は、ハロゲンイオンである。
【0051】
本明細書の一実施態様において、前記M1は、Pb2+である。
【0052】
本明細書の一実施態様において、前記X6は、IまたはBrである。
【0053】
本明細書の一実施態様において、前記金属ハロゲン化物は、PbI2またはPbBr2である。
【0054】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層用前駆体は、溶液状態であってもよい。例えば、溶媒に前記フッ素系有機化合物、有機ハロゲン化物、および金属ハロゲン化物が溶解した状態であってもよい。
【0055】
本明細書の一実施態様において、前記溶媒は、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol、IPA)、ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide、DMSO)、ガムマブチロラクトン(γ-butyrolactone、GBL)、n-メチルピロリドン(n-methylpyrrolidone、NMP)、プロピレングリコールメチルエーテル(propylene glycol methyl ether、PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(propylene glycol monomethyl ether acetate、PGMEA)、およびジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMac)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0056】
本明細書の一実施態様は、第1電極を用意するステップと、
前記第1電極上に第1共通層を形成するステップと、
前記第1共通層上に前記光吸収層用前駆体をコーティングして光吸収層を形成するステップと、
前記光吸収層上に第2共通層を形成するステップと、
前記第2共通層上に第2電極を形成するステップとを含む有機-無機複合太陽電池の製造方法を提供する。
【0057】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層用前駆体をコーティングするステップは、前記第1共通層上に光吸収層用前駆体をコーティングするステップと、前記コーティングされた光吸収層用前駆体を乾燥(drying)、ベーキング(baking)、またはアニーリング(annealing)するステップとを含む。
【0058】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層用前駆体をコーティングするステップは、スピンコーティング、スリットコーティング、ディップコーティング、インクジェットプリンティング、グラビアプリンティング、スプレーコーティング、ドクターブレード、バーコーティング、ブラシペインティング、または熱蒸着方法を利用することができる。具体的には、スピンコーティングを進行させることができる。
【0059】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層用前駆体を乾燥(drying)、ベーキング(baking)、またはアニーリング(annealing)するステップは、80℃~150℃の温度で10分~60分間行われる。
【0060】
具体的には、前記光吸収層用前駆体をコーティングするステップは、前記第1共通層上に前記光吸収層用前駆体溶液をスピンコーティングした後、100℃の温度で30分間アニーリングする過程であってもよい。
【0061】
本明細書の一実施態様は、前記有機-無機複合太陽電池の製造方法で製造された有機-無機複合太陽電池を提供する。
【0062】
本明細書の一実施態様は、第1電極と、
前記第1電極上に備えられた第1共通層と、
前記第1共通層上に備えられた光吸収層と、
前記光吸収層上に備えられた第2共通層と、
前記第2共通層上に備えられた第2電極とを含む有機-無機複合太陽電池において、
前記光吸収層は、ペロブスカイト構造の化合物;およびフッ素系有機化合物を含み、
前記フッ素系有機化合物は、光吸収層の質量対比0.005wt%~5wt%含まれるものである有機-無機複合太陽電池を提供する。
【0063】
前記有機-無機複合太陽電池において、フッ素系有機化合物は、製造方法で前述したものと同じである。
【0064】
図1には、本明細書の一実施態様に係る有機-無機複合太陽電池の構造を示した。具体的には、
図1には、第1電極10、第1共通層20、光吸収層30、第2共通層40、および第2電極50が順次に積層された有機-無機複合太陽電池を示した。
【0065】
本明細書に係る有機-無機複合太陽電池は、
図1の積層構造に限定されず、追加の部材がさらに含まれてもよい。
【0066】
本明細書の一実施態様において、前記ペロブスカイト構造の化合物は、下記化学式5~7のうちのいずれか1つで表される。
【0067】
[化学式5]
R1M1X13
【0068】
[化学式6]
R2aR3(1-a)M2X2zX3(3-z)
【0069】
[化学式7]
R4bR5cR6dM3X4z'X5(3-z')
【0070】
前記化学式5~7において、
R2およびR3は、互いに異なり、
R4、R5およびR6は、互いに異なり、
R1~R6は、それぞれCnH2n+1NH3
+、NH4
+、HC(NH2)2
+、Cs+、NF4
+、NCl4
+、PF4
+、PCl4
+、CH3PH3
+、CH3AsH3
+、CH3SbH3
+、PH4
+、AsH4
+、およびSbH4
+から選択される1価の陽イオンであり、
M1~M3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Ge2+、Sn2+、Bi2+、Pb2+、およびYb2+から選択される2価の金属イオンであり、
X1~X5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲンイオンであり、
nは、1~9の整数であり、
aは、0<a<1の実数であり、
bは、0<b<1の実数であり、
cは、0<c<1の実数であり、
dは、0<d<1の実数であり、
b+c+dは、1であり、
zは、0<z<3の実数であり、
z'は、0<z'<3の実数である。
【0071】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層のペロブスカイト構造の化合物は、単一の陽イオンを含むことができる。本明細書において、単一の陽イオンとは、1種類の1価の陽イオンを用いたものを意味する。すなわち、化学式5において、R1として1種類の1価の陽イオンのみ選択されたものを意味する。例えば、前記化学式5のR1は、CnH2n+1NH3
+であり、nは、1~9の整数であってもよい。
【0072】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層のペロブスカイト構造の化合物は、複合陽イオンを含むことができる。本明細書において、複合陽イオンとは、2種類以上の1価の陽イオンを用いたものを意味する。すなわち、化学式6において、R2およびR3がそれぞれ互いに異なる1価の陽イオンが選択され、化学式7において、R4~R6がそれぞれ互いに異なる1価の陽イオンが選択されたものを意味する。例えば、前記化学式6のR2は、CnH2n+1NH3
+、R3は、HC(NH2)2
+であってもよい。また、前記化学式7のR4は、CnH2n+1NH3
+、R5は、HC(NH2)2
+、R6は、Cs+であってもよい。
【0073】
本明細書の一実施態様において、前記ペロブスカイト構造の化合物は、化学式5で表される。
【0074】
本明細書の一実施態様において、前記ペロブスカイト構造の化合物は、化学式6で表される。
【0075】
本明細書の一実施態様において、前記ペロブスカイト構造の化合物は、化学式7で表される。
【0076】
本明細書の一実施態様において、前記R1~R6は、それぞれCnH2n+1NH3
+、HC(NH2)2
+、またはCs+である。この時、R2とR3は、互いに異なり、R4~R6は、互いに異なる。
【0077】
本明細書の一実施態様において、前記R1は、CH3NH3
+、HC(NH2)2
+、またはCs+である。
【0078】
本明細書の一実施態様において、前記R2およびR4は、それぞれCH3NH3
+である。
【0079】
本明細書の一実施態様において、前記R3およびR5は、それぞれHC(NH2)2
+である。
【0080】
本明細書の一実施態様において、前記R6は、Cs+である。
【0081】
本明細書の一実施態様において、前記M1~M3は、それぞれPb2+である。
【0082】
本明細書の一実施態様において、前記X2およびX3は、互いに異なる。
【0083】
本明細書の一実施態様において、前記X4およびX5は、互いに異なる。
【0084】
本明細書の一実施態様において、前記X1~X5は、それぞれFまたはBrである。
【0085】
本明細書の一実施態様において、前記R2およびR3の合計が1となるために、aは、0<a<1の実数である。また、前記X2およびX3の合計が3となるために、zは、0<z<3の実数である。
【0086】
本明細書の一実施態様において、前記R4、R5およびR6の合計が1となるために、bは、0<b<1の実数であり、cは、0<c<1の実数であり、dは、0<d<1の実数であり、b+c+dは、1である。また、前記X4およびX5の合計が3となるために、z'は、0<z'<3の実数である。
【0087】
本明細書の一実施態様において、前記ペロブスカイト構造の化合物は、CH3NH3PbI3、HC(NH2)2PbI3、CH3NH3PbBr3、HC(NH2)2PbBr3、(CH3NH3)a(HC(NH2)2)(1-a)PbIzBr(3-z)、または(HC(NH2)2)b(CH3NH3)cCsdPbIz'Br(3-z')であり、aは、0<a<1の実数、bは、0<b<1の実数、cは、0<c<1の実数、dは、0<d<1の実数、b+c+dは、1、zは、0<z<3の実数、z'は、0<z'<3の実数である。
【0088】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層は、フッ素系有機化合物を光吸収層の質量対比0.005wt%~5wt%含む。具体的には、前記光吸収層は、フッ素系有機化合物を光吸収層の質量対比0.005wt%~3wt%含む。より具体的には、前記光吸収層は、フッ素系有機化合物を光吸収層の質量対比0.005wt%~1wt%含む。より具体的には、前記光吸収層は、フッ素系有機化合物を光吸収層の質量対比0.005wt%~0.5wt%含む。
【0089】
前記光吸収層の質量対比のフッ素系有機化合物の含有量範囲は、光吸収層用前駆体において有機化合物を前述した範囲で使用することにより生成される含有量範囲である。すなわち、光吸収層用前駆体にペロブスカイト前駆体対比0.005wt%~0.5wt%のフッ素系有機化合物が含まれる場合、前記光吸収層用前駆体を用いて形成された光吸収層での有機化合物は、光吸収層の質量対比0.005wt%~5wt%含まれる。
【0090】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層内に含まれる有機化合物の含有量は、当業界で用いられる方法で測定可能である。例えば、LCMS(Liquid Chromatography coupled to Mass Spectrometry)またはGCMS(Gas Chromatography coupled to Mass Spectrometry)などの質量分析方法;HPLC(High-performance liquid chromatography);およびNMR(nuclear magnetic resonance)などを利用して測定可能である。
【0091】
本明細書において、第1共通層および第2共通層は、それぞれ電子輸送層または正孔輸送層を意味する。この時、第1共通層と第2共通層は、互いに同一の層ではなく、例えば、前記第1共通層が電子輸送層の場合、前記第2共通層は、正孔輸送層であり、前記第1共通層が正孔輸送層の場合、前記第2共通層は、電子輸送層である。
【0092】
本明細書の一実施態様において、前記有機-無機複合太陽電池は、第1電極の下部に基板を追加的に含んでもよい。
【0093】
本明細書の一実施態様において、前記基板は、透明性、表面平滑性、取扱容易性、および防水性に優れた基板を用いることができる。具体的には、ガラス基板、薄膜ガラス基板、またはプラスチック基板を用いることができる。前記プラスチック基板は、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリエチレンナフタレート(polyehtylene naphthalate、PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(polyether ether ketone)、およびポリイミド(polyimide)などのフレキシブルフィルムが単層または複層の形態で含まれる。ただし、前記基板はこれに限定されず、有機-無機複合太陽電池に通常用いられる基板を用いることができる。
【0094】
本明細書において、前記第1電極は、アノードであり、前記第2電極は、カソードであってもよい。また、前記第1電極は、カソードであり、前記第2電極は、アノードであってもよい。
【0095】
本明細書の一実施態様において、前記第1電極は、透明電極であり、前記有機-無機複合太陽電池は、前記第1電極を経由して光を吸収するものであってもよい。
【0096】
本明細書の一実施態様において、前記第1電極が透明電極の場合、前記第1電極は、ガラスおよび石英板のほか、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthelate、PEN)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、ポリイミド(polyimide、PI)、ポリカーボネート(polycarbornate、PC)、ポリスチレン(polystylene、PS)、ポリオキシエチレン(polyoxyethlene、POM)、AS樹脂(acrylonitrile styrene copolymer)、ABS樹脂(acrylonitrile butadiene styrene copolymer)、トリアセチルセルロース(Triacetyl cellulose、TAC)、およびポリアリーレート(polyarylate、PAR)などを含むプラスチックのような柔軟で透明な物質上に導電性を有する物質がドーピングされたものが使用できる。具体的には、前記第1電極は、酸化スズインジウム(indium tin oxide、ITO)、フッ素含有酸化スズ(fluorine doped tin oxide;FTO)、アルミニウムドーピングされたジンクオキサイド(aluminium doped zink oxide、AZO)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO-Ga2O3、ZnOAl2O3、およびATO(antimony tin oxide)などになってもよいし、より具体的には、前記第1電極は、ITOであってもよい。
【0097】
本明細書の一実施態様において、前記第1電極は、半透明電極であってもよい。前記第1電極が半透明電極の場合、銀(Ag)、金(Au)、マグネシウム(Mg)、またはこれらの合金のような金属で製造できる。
【0098】
本明細書の一実施態様において、前記第2電極は、金属電極であってもよい。具体的には、前記金属電極は、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、タングステン(W)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、金(Au)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)、カルシウム(Ca)、およびサマリウム(Sm)からなる群より選択される1種または2種以上を含むことができる。
【0099】
本明細書の一実施態様において、前記有機-無機複合太陽電池がn-i-p構造であってもよい。本明細書に係る有機-無機複合太陽電池がn-i-p構造の場合、前記第2電極は、金属電極、酸化物/金属複合体電極、または炭素電極であってもよい。具体的には、第2金属は、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、MoO3/Au、MoO3/Ag、MoO3/Al、V2O5/Au、V2O5/Ag、V2O5/Al、WO3/Au、WO3/Ag、またはWO3/Alを含むことができる。
【0100】
本明細書において、n-i-p構造は、第1電極、電子輸送層、光吸収層、正孔輸送層、および第2電極が順次に積層された構造を意味する。
【0101】
本明細書の一実施態様において、前記有機-無機複合太陽電池がp-i-n構造であってもよい。本明細書に係る有機-無機複合太陽電池がp-i-n構造の場合、前記第2電極は、金属電極であってもよい。
【0102】
本明細書において、p-i-n構造は、第1電極、正孔輸送層、光吸収層、電子輸送層、および第2電極が順次に積層された構造を意味する。
【0103】
本明細書において、前記正孔輸送層および/または電子輸送層物質は、電子と正孔を光吸収層に効率的に伝達させることにより、生成される電荷が電極に移動する確率を高める物質になってもよいが、特に制限はない。
【0104】
本明細書の一実施態様において、前記電子輸送層は、金属酸化物を含むことができる。金属酸化物は、具体的には、Ti酸化物、Zn酸化物、In酸化物、Sn酸化物、W酸化物、Nb酸化物、Mo酸化物、Mg酸化物、Zr酸化物、Sr酸化物、Yr酸化物、La酸化物、V酸化物、Al酸化物、Y酸化物、Sc酸化物、Sm酸化物、Ga酸化物、Ta酸化物、およびSrTi酸化物、およびこれらの複合物の中から1または2以上選択されたものが使用可能である。具体的には、TiO2であってもよいが、これのみに限定されるものではない。
【0105】
本明細書の一実施態様において、前記電子輸送層は、ドーピングを利用して電荷の特性を改善することができ、フラーレン誘導体などを用いて表面を改質することができる。
【0106】
本明細書の一実施態様において、前記電子輸送層は、スパッタリング、E-Beam、熱蒸着、スピンコーティング、スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、ドクターブレード、またはグラビアプリンティング法を用いて第1電極の一面に塗布されるか、フィルム形態にコーティングされることにより形成される。
【0107】
本明細書の一実施態様において、前記正孔輸送層は、アノードバッファ層であってもよい。
【0108】
本明細書の一実施態様において、正孔輸送層は、スピンコーティング、ディップコーティング、インクジェットプリンティング、グラビアプリンティング、スプレーコーティング、ドクターブレード、バーコーティング、グラビアコーティング、ブラシペインティング、熱蒸着などの方法により導入可能である。
【0109】
本明細書の一実施態様において、前記正孔輸送層は、ターシャリーブチルピリジン(tertiary butyl pyridine、tBP)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Lithium Bis(Trifluoro methanesulfonyl)Imide、LiTFSI)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、2,2',7,7'-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9'-スピロビフルオレン(2,2',7,7'-tetrakis(N,N-di-p-methoxyphenylamine)-9,9'-spirobifluorene、Spiro-OMeTAD)などを使用することができるが、これらのみに限定されるものではない。
【実施例】
【0110】
以下、本明細書を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本明細書に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本明細書の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【0111】
実施例1.
【0112】
酸化スズインジウム(ITO)がスパッタリングされた無アルカリガラス基板上に、2wt%の二酸化チタン(TiO2)がイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)に含まれた溶液を2,000rpmでスピンコーティングした後、150℃で30分間加熱した。その後、ペロブスカイト((HC(NH2)2)x(CH3NH3)yCs1-x-yPbIzBr3-z(0<x<1、0<y<1、0.8<x+y<1、0<z<3))前駆体と、ペロブスカイト前駆体対比0.05wt%のフッ素系有機化合物(3M社、FC-4430)とをジメチルホルムアミド(dimethylformamide)に溶かした溶液を5,000rpmでスピンコーティング後、100℃で30分間乾燥して光吸収層を形成した。この後、Spiro-OMeTADをクロロベンゼン(chlorobenzene)に溶かした後、ターシャリーブチルピリジン(tBP)およびリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を添加した溶液をスピンコーティングした後、Agを真空蒸着した。
【0113】
図2には、実施例1で製造された有機-無機複合太陽電池の断面の走査電子顕微鏡(SEM)イメージを示した。
図2から、本明細書の実施態様により製造された有機-無機複合太陽電池は、光吸収層に気孔がなく、光吸収層の表面が均一で結晶サイズが増加したことを確認することができる。
【0114】
比較例1.
【0115】
酸化スズインジウム(ITO)がスパッタリングされた無アルカリガラス基板上に、2wt%のTiO2がイソプロピルアルコールに含まれた溶液を2,000rpmでスピンコーティングした後、150℃で30分間加熱した。その後、ペロブスカイト((HC(NH2)2)x(CH3NH3)yCs1-x-yPbIzBr3-z(0<x<1、0<y<1、0.8<x+y<1、0<z<3))前駆体をジメチルホルムアミドに溶かした溶液を5,000rpmでスピンコーティング後、100℃で30分間乾燥して光吸収層を形成した。この後、Spiro-OMeTADをクロロベンゼンに溶かした後、tBPおよびLiTFSIを添加した溶液をスピンコーティングした後、Agを真空蒸着した。
【0116】
図3には、比較例1で製造された有機-無機複合太陽電池の断面の走査電子顕微鏡(SEM)イメージを示した。
図3から、比較例1で製造された有機-無機複合太陽電池の場合、実施例1に比べて光吸収層の断面に気孔が多く、光吸収層の表面が粗く、結晶サイズが小さいことを確認することができる。
【0117】
比較例2.
【0118】
酸化スズインジウム(ITO)がスパッタリングされた無アルカリガラス基板上に、2wt%のTiO2がイソプロピルアルコールに含まれた溶液を2,000rpmでスピンコーティングした後、150℃で30分間加熱した。その後、ペロブスカイト((HC(NH2)2)x(CH3NH3)yCs1-x-yPbIzBr3-z(0<x<1、0<y<1、0.8<x+y<1、0<z<3))前駆体と、ペロブスカイト前駆体対比0.55wt%のフッ素系有機化合物(3M社、FC-4430)とをジメチルホルムアミド(dimethylformamide)に溶かした溶液を5,000rpmでスピンコーティング後、100℃で30分間乾燥して光吸収層を形成した。この後、Spiro-OMeTADをクロロベンゼンに溶かした後、tBPおよびLiTFSIを添加した溶液をスピンコーティングした後、Agを真空蒸着した。
【0119】
比較例3.
【0120】
酸化スズインジウム(ITO)がスパッタリングされた無アルカリガラス基板上に、2wt%のTiO2がイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)に含まれた溶液を2,000rpmでスピンコーティングした後、150℃で30分間加熱した。その後、ペロブスカイト((HC(NH2)2)x(CH3NH3)yCs1-x-yPbIzBr3-z(0<x<1、0<y<1、0.8<x+y<1、0<z<3)前駆体と、ペロブスカイト前駆体対比0.05wt%のラウリル硫酸ナトリウムとをジメチルホルムアミド(dimethylformamide)に溶かした溶液を5,000rpmでスピンコーティング後、100℃で30分間乾燥して光吸収層を形成した。この後、Spiro-OMeTADをクロロベンゼンに溶かした後、tBPおよびLiTFSIを添加した溶液をスピンコーティングした後、Agを真空蒸着した。
【0121】
表1には、本明細書の実施態様に係る有機-無機複合太陽電池の性能を示した。
【0122】
【0123】
表1中、Vocは開放電圧を、Jscは短絡電流を、FFはフィルファクター(Fill factor)を、PCEはエネルギー変換効率を意味する。開放電圧と短絡電流は、それぞれ電圧-電流密度曲線の4つの象限におけるX軸およびY軸切片であり、この2つの値が高いほど、太陽電池の効率は好ましく高まる。また、フィルファクター(Fill factor)は、曲線の内部に描ける長方形の最大の広さを、短絡電流と開放電圧との積で割った値である。この3つの値を照射された光の強度で割るとエネルギー変換効率が求められ、高い値であるほど好ましい。
【0124】
前記表1から、フッ素系有機化合物を含まなかったり(比較例1)、フッ素系有機化合物を0.5wt%超過で含む場合(比較例2)、素子の性能が低下することを確認することができる。また、フッ素系有機化合物でない他の界面活性剤を用いる場合(比較例3)、正常な素子の作製が不可能であることを確認した。
【0125】
図4には、本明細書の一実施態様に係る有機-無機複合太陽電池の電圧に応じた電流密度の測定結果を示した。
【0126】
前記実施例1および比較例1で製造された有機-無機複合太陽電池をABET Sun 3000 solar simulatorを光源として、Keithley 2420ソースメータを用いて素子の安定性を測定した。1回の測定時、1.2Vから0Vまで、0.1秒あたり12mVずつ低下させながら電圧を印加した後に電流を測定し、10回連続測定時、測定間待機時間は、暗室状態で1分であった。
【0127】
図5には、実施例1で製造された有機-無機複合太陽電池の電圧に応じた電流密度を繰り返し測定した結果を示した。
図5にて、1st sweepは、最初の測定結果を示し、2ndから4thまでは、2回目の測定結果から4回目の測定結果まで順次に測定した結果である。
図5から、本明細書の実施態様により製造された有機-無機複合太陽電池は、4回繰り返し測定しても、素子の性能が維持されることを確認することができる。すなわち、光吸収層を形成するに際してフッ素系有機化合物を含む場合、製造された有機-無機複合太陽電池の安定性に優れていることを確認することができる。
【0128】
図6には、比較例1で製造された有機-無機複合太陽電池の電圧に応じた電流密度を繰り返し測定した結果を示した。
図6から、比較例で製造された有機-無機複合太陽電池の場合、2回のみ測定(
図6の2nd sweep)しても素子の性能が低下することを確認することができる。すなわち、光吸収層を形成するに際してフッ素系有機化合物を含まない場合、製造された有機-無機複合太陽電池の安定性が低下することを確認することができる。