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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】細骨材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 14/02 20060101AFI20220726BHJP
   C04B 14/06 20060101ALI20220726BHJP
   C04B 14/30 20060101ALI20220726BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20220726BHJP
   C04B 14/36 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
C04B14/02 Z
C04B14/06 Z
C04B14/30
C04B18/14 Z
C04B14/36
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017246875
(22)【出願日】2017-12-22
(65)【公開番号】P2019112260
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】香川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】川西 政雄
(72)【発明者】
【氏名】片岡 淳司
(72)【発明者】
【氏名】塩見 広司
(72)【発明者】
【氏名】高津 明郎
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-070439(JP,A)
【文献】特開2009-280427(JP,A)
【文献】特開2016-223114(JP,A)
【文献】特開2000-290049(JP,A)
【文献】特開昭52-142832(JP,A)
【文献】特開2017-015737(JP,A)
【文献】特開2013-189335(JP,A)
【文献】特開2016-057934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00-32/02, C04B40/00-40/06, C04B103/00-111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅スラグを細骨材の一部として含有する細骨材を製造する方法であって、
細骨材材料としての、海砂と、砕砂と、石灰と、銅スラグとを、前記細骨材中の銅スラグ混合率(%)が所定の割合となるように、それぞれを秤量する秤量工程と、
前記細骨材材料を順次混合して細骨材を得る基礎混合工程と、を有し、
前記基礎混合工程では、
最初に、前記銅スラグの全量と、該銅スラグの全量に対して±10%の範囲の重量である前記海砂、前記砕砂、及び前記石灰から選ばれる1種とを混合し、その後、残余の前記細骨材材料を順次混合する
細骨材の製造方法。
【請求項2】
前記基礎混合工程では、混合対象の細骨材材料を掻き上げて混合する混合操作を1回としたとき、前記銅スラグに対して該銅スラグ以外の前記細骨材材料のいずれか1種を添加して混合する毎に、該混合操作を複数回行って混合する
請求項1に記載の細骨材の製造方法。
【請求項3】
前記基礎混合工程では、前記銅スラグに対して最後に前記石灰を添加し混合する
請求項1又は2に記載の細骨材の製造方法。
【請求項4】
前記基礎混合工程を経て得られた前記細骨材の山をさらに混合する粗混合工程を有する
請求項1乃至のいずれかに記載の細骨材の製造方法。
【請求項5】
前記粗混合工程では、混合対象である前記細骨材を掻き上げて混合する混合操作を複数回行う
請求項に記載の細骨材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細骨材の製造方法に関するものであり、細骨材の一部として銅スラグを所定の割合で混合させた細骨材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、その経済性や施工性、強度、耐久性等から土木建築物の主要材料として広く用いられている。コンクリートは、粗骨材、細骨材、セメント、水を主原料とし、これらをよく混合して泥しょう状態とした生コンクリートを型枠の中に流し込み、硬化させたものである。一般に、コンクリートの原料として、粗骨材としては粒径が約50mm以下の砂利が、細骨材は粒径が約5mm以下の砕砂や砂が用いられている。
【0003】
近年、環境保護を目的とした規制により、海や川からの砂利や砂の入手が難しくなり、代替材が求められるようになっている。代替材としては、例えば、銅スラグ、高炉スラグ、フライアッシュ焼成物等が挙げられる。その中でも、銅スラグは、アルカリ骨材反応が起きないことや、塩分を含有しないこと等、天然の砕砂や砂より優れた特性を有しており、広く使用されている。ここで、銅スラグとは、銅製錬業で産出される製品であり、鉄、珪素、カルシウム、酸素を主成分とする非晶質無機化合物である。
【0004】
コンクリート製造工場では、セメント、水、粗骨材、細骨材、混和剤等を、その要求性能や気候等に応じて調合してコンクリートを製造している。
【0005】
中でも細骨材は、種類毎に特性が異なることから、良質のコンクリートを製造するためには複数種類の細骨材を混合するのが一般的である。このため、例えば、細骨材の種類毎に貯蔵設備や切り出し設備を用意して、複数種類の細骨材を混合したり、複数種類の細骨材が混合された混合済細骨材が流通され用いられている。
【0006】
さて、コンクリートの製造において、天然砕砂や天然砂だけで構成されている細骨材を用いた場合、得られるコンクリートは、乾燥収縮が大きくなりひび割れる可能性があることが知られている。そこで、例えば特許文献1では、天然砕砂等と銅スラグとを混合してなる細骨材を用いて、コンクリートの乾燥収縮率を所望とする範囲に低減させるべく調製する方法が開示されている。
【0007】
一方で、コンクリートの製造において、銅スラグだけで構成されている細骨材を用いた場合であって、その銅スラグの中に微量に含まれている不純物(鉛、砒素、カドミウム)の含有量が適切に制御された組成物となっていない場合等では、得られるコンクリートの環境負荷が天然石や土壌の環境負荷を超えるおそれがある。そのため、JIS A5011-3:2016(非特許文献1)では、コンクリート用細骨材に占める銅スラグの混合割合に上限が示されている。
【0008】
このように、銅スラグを含む細骨材を用いて良質のコンクリートを得るためには、細骨材の構成やその比率を適切に調整する必要が生じる。また、銅スラグを含む複数種類の材料を混合して細骨材を製造する場合、すべての材料が均一に分散するように混合することが重要となる。
【0009】
通常、細骨材の製造にあたっては、細骨材を構成する複数の材料を、ショベルローダーやホイールローダー等の重機等を用いて機械的に混合して、混合材料からなる細骨材としている。しかしながら、生産性の観点からそれら材料の混合量は数トン~十数トンの単位となり、特に、細骨材中の重量割合として15%~30%程度の割合で銅スラグを混合させて細骨材を製造するうえでは、銅スラグが均一に分散した状態となるように混合することは容易ではない。
【0010】
銅スラグを含む複数の材料を混合して製造される細骨材においては、その均一混合に関する信頼性の確保が重要となり、高い生産性でもって銅スラグを含む複数の材料が均一に分散した状態の細骨材を製造する方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2014-094860号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】JIS A5011-3:2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、銅スラグを細骨材の一部として含有する細骨材を製造するに際して、高い生産性でもって、少なくともその銅スラグが均一に分散している細骨材を製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明の第1の発明は、銅スラグを細骨材の一部として含有する細骨材を製造する方法であって、細骨材材料としての、海砂と、砕砂と、石灰と、銅スラグとを、前記細骨材中の銅スラグ混合率(%)が所定の割合となるように、それぞれを秤量する秤量工程と、前記細骨材材料を順次混合して細骨材を得る基礎混合工程と、を有し、前記基礎混合工程では、最初に、前記銅スラグの全量と、前記海砂、前記砕砂、及び前記石灰から選ばれる1種の該銅スラグの量と同量とを混合し、その後、残余の前記細骨材材料を順次混合する、細骨材の製造方法である。
【0015】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記基礎混合工程では、混合対象の細骨材材料を挟んで正対するように2台の重機を配置させ、該重機により該細骨材材料を掻き上げて混合する混合操作を1回としたとき、前記銅スラグに対して該銅スラグ以外の前記細骨材材料のいずれか1種を添加して混合する毎に、該混合操作を複数回行って混合する、細骨材の製造方法である。
【0016】
(3)本発明の第3の発明は、第2の発明において、前記重機として、ショベルローダー又はホイールローダーを用いる、細骨材の製造方法である。
【0017】
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記基礎混合工程では、前記銅スラグに対して最後に前記石灰を添加し混合する、細骨材の製造方法である。
【0018】
(5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記基礎混合工程を経て得られた前記細骨材の山をさらに混合する粗混合工程を有する、細骨材の製造方法である。
【0019】
(6)本発明の第6の発明は、第5の発明において、前記粗混合工程では、混合対象である前記細骨材の山を挟んで正対するように2台の重機を配置させ、該重機により該細骨材を掻き上げて混合する混合操作を複数回行う、細骨材の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高い生産性でもって、少なくともその銅スラグが均一に分散している細骨材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】細骨材の製造方法の流れを示す工程図である。
図2】実施例における混合の均一性の評価に際して行ったサンプリング方法を説明するための図であり、サンプル区画の箇所を示す模式図である。
図3】実施例2における混合の均一性の評価結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の整数)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
【0023】
本実施の形態に係る細骨材の製造方法は、コンクリートの構成材料となる細骨材の製造方法であって、銅スラグ(CUS)を細骨材の一部として所定の割合で含有する細骨材を製造する方法である。細骨材は、例えば、天然砕砂や海砂等の天然材料と共に、銅製錬操業の副産物として産出される銅スラグが所定の割合で混合されて製造される。その銅スラグの混合割合(細骨材中における混合重量割合、CUS混合率)は、30%以下程度であり、例えば15%~30%程度の範囲である。
【0024】
図1は、本実施の形態に係る細骨材の製造方法の流れを示す工程図である。具体的に、この細骨材の製造方法は、細骨材材料としての、海砂と、砕砂と、石灰と、銅スラグとをそれぞれ秤量する秤量工程S1と、秤量したそれら細骨材材料を順次混合して細骨材を得る基礎混合工程S2と、を有する。また、基礎混合工程S2にて混合して得られた細骨材の山をさらに混合する粗混合工程S3を有する。
【0025】
[秤量工程]
秤量工程S1では、細骨材材料である、海砂と、砕砂と、石灰と、銅スラグとを、製造する細骨材中の銅スラグ混合率(%)が所定の割合となるように、それぞれを秤量する。銅スラグ混合率(%)とは、細骨材中における銅スラグの混合重量割合の百分率であり、特に限定されずコンクリートの用途や適用場所等に応じて適宜決定することができ、例えば、15%~30%程度の範囲であり、好ましくは20%~25%程度の範囲である。
【0026】
ここで、細骨材を構成する材料(以下、「細骨材材料」ともいう)としては、上述のように、海砂と、砕砂と、石灰と、そして銅スラグとを用いる。
【0027】
(海砂)
海砂は、天然砂であって、原石が地中で受ける様々な物理化学的な作用、特に水流によって表面が丸みを帯びた外観形状の珪砂である。海砂としては、その大きさは特に限定されず、例えば粒子径が0.1mm~5.0mm程度のものを用いることができる。また、その産地についても特に限定されない。なお、産地により形状や組成等が異なることがあるが、いずれのものであっても使用することができ、所望とするコンクリートの性状によって適宜選択できる。海砂は、一般的には、薄い茶色の色を呈している。
【0028】
(砕砂)
砕砂は、天然の岩石等を所定の大きさに粉砕することによって得られる砂である。また、人工的な粉砕に限られず、岩石等が自然に粉砕して得られた砂も含まれる。砕砂としては、その大きさは特に限定されず、例えば粒子径が0.1mm~5.0mm程度のものを用いることができる。また、砕砂のもとである岩石の産地についても特に限定されない。なお、岩石の産地は、得られる砕砂の形状や組成等に影響することがあるが、いずれのものであっても使用することができ、所望とするコンクリートの性状によって適宜選択できる。砕砂は、一般的には、薄い茶色の色を呈している。
【0029】
(石灰)
石灰とは、酸化カルシウム(生石灰)と水酸化カルシウム(消石灰)の両方の概念を含む。細骨材材料として用いられる石灰としては、酸化カルシウム、水酸化カルシウムのいずれか1種でもよく、両方を含むものであってもよい。また、石灰としては、その大きさは特に限定されず、例えば粒子径が0.1mm~5.0mm程度のものを用いることができる。詳しくは後述するが、石灰は、白色又は乳白色を呈するものであるため、黒色に近い色を呈する銅スラグを混合したのちに、その混合物に石灰を混合することで、その混合の均一性を可視化することができる。
【0030】
(銅スラグ)
銅スラグは、上述したように、銅鉱石に対する銅製錬操業に伴って副産物として産出されるものであり、鉄、珪素、カルシウム、酸素を主成分とする非晶質無機化合物である。例えば特許文献1に示されるように、銅スラグを吸水率が低く、その銅スラグを細骨材材料の一部として細骨材を調製し、これを用いて得られるコンクリートでは、コンクリート中に持ち込まれる水分量が減少し、乾燥収縮率が有効に低減する。
【0031】
銅スラグとしては、その大きさは特に限定されないが、最大粒子径が0.3mm~5.0mm程度のものを用いることができ、好ましくは最大1.2mm~2.5mmのものを用いる。なお、例えば2.5mmの銅スラグ(CUS2.5)とは、粒の大きさが2.5mm以下の銅スラグをいい、2.5mmの目開きの篩により篩分けして分別できる。
【0032】
また、銅スラグは、黒色に近い濃い色を呈しており、上述した他の細骨材材料と比べても明度が低い。
【0033】
上述したそれぞれの細骨材材料の混合量、混合割合は、特に限定されず、細骨材中の銅スラグ混合率が所定の割合、例えば20%~25%程度の範囲となるように、それぞれを調整すればよい。また、その混合量や混合割合は、細骨材の組成、その細骨材を用いて製造するコンクリートの所望とする性能等に応じて適宜調整することができる。具体的に、銅スラグ混合率を20%とした細骨材を調製する場合、例えば、海砂を13トン、砕砂を6.5トン、石灰を6.5トン、銅スラグを6.5トン、の重量でそれぞれを秤量する。
【0034】
なお、それぞれの細骨材材料の重量がこれに限定されないことは言うまでもなく、製造される細骨材中の銅スラグ混合率が所定の割合となるように、また製造される細骨材を用いたコンクリートの用途等に応じて、それぞれの重量を設定すればよい。そのため、上述の例のように、必ずしもすべての細骨材材料の重量がほぼ同量、あるいは等倍の関係にある量でなくてもよい。
【0035】
それぞれの細骨材材料の秤量方法は、特に限定されず、各材料が積み上げられた山から、次の基礎混合工程S2での混合に用いるショベルローダーやホイールローダー等の重機を用いて行うことができる。例えば、上述した例のように砕砂を6.5トン秤量する場合には、容量が約6.5トンのバケット(ショベル)を備えたショベルローダー等を用いる。このように、次工程の混合に用いる重機により細骨材材料の秤量を行うことで、工程間の流れをスムーズにして処理することができ、効率性を高めることができる。
【0036】
なお、銅スラグ混合率は、誤差として±2%程度の範囲であれば許容される。
【0037】
[基礎混合工程]
基礎混合工程S2では、秤量工程S1にて所定量を秤量したそれぞれの細骨材材料を順次混合して、銅スラグを所定の割合で混合した細骨材を得る。この基礎混合工程S2では、それぞれの細骨材材料の混合順序が重要となる。
【0038】
具体的に、本実施の形態に係る細骨材の製造方法では、最初に、銅スラグの全量と、海砂、砕砂、及び石灰から選ばれる1種のその銅スラグ量と同量と、を混合する。そしてその後、混合して得られた混合物(混合材料)に対し、残余の細骨材材料を順次混合する。
【0039】
(基礎混合の一例)
より具体的な態様を示して説明する。例えば、銅スラグ混合率を20%とした細骨材を製造する例において、先ず、秤量工程S1において、海砂を13トン、砕砂を6.5トン、石灰を6.5トン、銅スラグを6.5トン、の重量でそれぞれを秤量する。なお、秤量は、ショベルローダー又はホイールローダーにより行うものとする。次に、基礎混合工程S2では、最初に、銅スラグ6.5トン(全量)と、海砂6.5トン(銅スラグの重量と同量)とを混合する。これにより、銅スラグと海砂とからなる合計13トンの混合材料Aが得られる。そしてその後、残余の細骨材材料である、砕砂、海砂、及び石灰のいずれか1種ずつを順次混合していく。例えば、銅スラグと海砂とを混合して得られた混合材料A(重量13トン)に、砕砂6.5トンを混合する。これにより、さらに砕砂を含む合計19.5トンの混合材料Bが得られる。続いて、得られた混合材料B(重量19.5トン)に、海砂6.5トンを混合する。これにより、さらに海砂を混合させた合計26トンの混合材料Cが得られる。最後に、得られた混合材料C(重量26トン)に、石灰6.5トンを混合する。これにより、合計32.5トンの混合材料Dが得られる。
【0040】
以下に、上述した基礎混合工程S2における基礎混合の一例の流れを簡易に示す。なお、[1]~[4]を基礎混合における「混合段階」という。
[1]銅スラグ6.5トン+海砂6.5トン →混合材料A
[2]混合材料A+砕砂6.5トン →混合材料B
[3]混合材料B+海砂6.5トン →混合材料C
[4]混合材料C+石灰6.5トン →混合材料D(合計重量:32.5トン)
【0041】
この例において、混合材料Dが、基礎混合工程S2にてそれぞれの細骨材材料を基礎混合したのちの混合物(細骨材)となる。混合材料D(細骨材)の合計重量は32.5トンであり、そのうち銅スラグが6.5トン混合されていることから、基礎混合後の細骨材中における銅スラグの重量割合(銅スラグ混合率)としては20%となる。
【0042】
(混合の順序について)
このように基礎混合工程S2では、それぞれの細骨材材料を秤量したのち、最初に、銅スラグと、海砂、砕砂、及び石灰から選ばれる1種と、を混合する。種々の有意な性能を有する銅スラグを含む細骨材を製造するにあたっては、その銅スラグを均一に混合させることが重要である。その点において、複数の細骨材材料の中でも銅スラグを最初の混合対象とすることで、その銅スラグをベースとして、他の細骨材材料が順次混合されることになり、また他の細骨材材料は一気にではなく順次に混合されることから、最初に混合させた銅スラグの混合回数が最も多くなる。これらのことから、銅スラグを、基礎混合後に得られる混合材料中において均一に分散させることができる。
【0043】
またそのとき、銅スラグの全量を一気に混合させることが好ましく、その銅スラグとの混合相手の重量も銅スラグ(の全量)と同量とする。これにより、より均一に銅スラグを分散させることができる。銅スラグの混合相手の重量を銅スラグの量よりも少なくすると、得られる混合材料(上記例の混合材料A)において銅スラグの偏在が生じやすくなる。一方で、銅スラグの混合相手の重量を銅スラグの量よりも多くすると、銅スラグとの最初の混合においてその銅スラグが均一に分散されない可能性がある。
【0044】
なお、「同量」とは、全く同一の重量であることに限られず、±10%程度の範囲で異なっていても、その同量との意味に含まれるものとする。
【0045】
また、細骨材材料のうち石灰については、基礎混合工程S2における基礎混合の処理の最後に混合させる材料とすることが好ましい。すなわち、石灰を、上記例のように[4]の混合段階にて混合させる材料とすることが好ましい。石灰は、白色又は乳白色の色を呈するものであり、他の細骨材材料と比べても明度が高い。特に、黒色に近い銅スラグをベースに混合されたときには、目視にて明確に石灰の混合を確認することができる。したがって、混合の最後の細骨材材料を石灰とすることで、混合の度合いを視覚的に確認することができる。
【0046】
また、最後の混合段階(上記例の[4]段階)で混合される細骨材材料は、他の材料と比べて混合回数が少なくなり、また、他の細骨材材料を混合した後の総量の多い状態で混合されるため、1回の混合による細骨材材料全体の均質化が進む度合いは比較的遅くなる。その点においても、最後の混合段階にて混合させる細骨材材料を、視覚的に混合を確認できる材料である石灰とすることで、混合不足を防ぐことができ、適宜混合回数の調整等の混合調整を行うこともできる。
【0047】
(混合の方法について)
基礎混合工程S2における各混合段階の混合について、具体的な方法は特に限定されず、複数の細骨材材料を均一にかつ効率的に混合できる方法であればよい。例えば、上記例のように、それぞれの細骨材材料の混合量が数トン~十数トンの単位となる場合には、秤量工程S1での秤量に用いたショベルローダー等の重機を用いて行うことができる。一方で、実験操作レベルを含めて混合量が比較的少ないような場合には、混合作業場にてショベルやスコップ等の操作者の手動で操作できる器具を用いて行うことができる。
【0048】
ここで、上記例のように、それぞれの細骨材材料の混合量が数トン~十数トンの単位となるときの混合方法について具体的に説明する。上述したように、細骨材材料の混合量が多くなるような場合には、ショベルローダー等の重機を用いて混合操作を行うことができる。例えば、細骨材材料を混合するのに十分な領域の混合場を確保し、そこに、銅スラグと、例えば海砂とを載置して混合を開始する。
【0049】
具体的には、銅スラグと海砂とを載置させて得られた山を挟んで正対するように(向かい合うように)2台のショベルローダー等を設置する。そして、その2台のショベルローダー等により挟むようにして、それぞれのショベルローダー等で、山となった細骨材材料を、掻き上げ、その後落下させる(掻き上げ+落下)、という操作を行う。掻き上げにおいては、ショベルローダー等のバケット(ショベル)の容量以上の量が掬い上げられるようにし、落下においては、そのバケットで掬い上げた全量が混合場に落ちるようにする。
【0050】
そして、この「掻き上げ+落下」を混合操作“1回”としてカウントしたとき、各混合段階(上記例での[1]~[4]段階のそれぞれ)において複数回の混合操作を行う。つまり、例えば上記例において、[1]段階目での銅スラグと海砂との混合操作を10回、[2]段階目での混合材料Aと砕砂との混合操作を10回、[3]段階目での混合材料Bと海砂との混合操作を10回、[4]段階目での混合材料Cと石灰との混合操作を10回、といったように、細骨材材料のいずれか1種を順次添加して混合する毎に、「掻き上げ+落下」の混合操作を複数回行う。
【0051】
各混合段階にて行う混合操作の回数は、特に限定されず処理量等に応じて適宜設定できるが、3回~15回程度とすることが好ましく、5回~12回程度とすることがより好ましく、10回程度とすることが特に好ましい。また、各混合段階における混合回数は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。なお、混合操作の回数とは、2台のショベルローダー等の重機で行う混合操作の回数であって、それぞれの重機で例えば10回の「掻き上げ+落下」の混合操作を行うことになる(したがって、重機単位での回数に換算すると倍の回数(例えば20回)となる)。
【0052】
このように、各混合段階において2台のショベルローダー等の重機を用いた混合操作を複数回行うようにして細骨材材料に対する混合を行うことで、複数の細骨材材料をより均一に混合することができる。また、その細骨材材料のそれぞれの混合量が数トン~十数トンのレベルであったとしても、混合のムラ等の不具合を防ぐことができる。
【0053】
なお、混合操作に用いる重機としては、ショベルローダーに限られず、例えばバックホー等の重機を用いるようにしてもよいが、ショベルローダー又はホイールローダーであれば上述した混合操作をスムーズに行うことができ、しかもその処理量を比較的多くすることができる。
【0054】
[粗混合工程]
本実施の形態に係る細骨材の製造方法においては、基礎混合工程S2を経て得られた細骨材をさらに混合する工程(粗混合工程S3)を有していてもよい。
【0055】
基礎混合工程S2では、複数の細骨材材料の所定量が混合(基礎混合)されて混合物(細骨材、上記例の混合材料D)が得られ、その細骨材は、銅スラグが均一に分散した状態となっている。このとき、さらに、得られた細骨材の山(混合山)に対して混合処理を施すことによって、混合の均一性をより一層に高めることができる。
【0056】
具体的に、粗混合工程S3での混合操作としては、例えば、混合対象である細骨材の山を挟んで正対するように2台の重機を配置させ、その重機により細骨材を掻き上げて混合する混合操作を複数回行う。なお、この操作は、基礎混合工程S2における各混合段階にて行われる混合操作と同様である。重機としては、例えば、ショベルローダー等を使用することができる。
【0057】
粗混合工程S3において、例えばこのような混合操作を行うときの回数は、特に限定されないが、5回以上とすることが好ましく、10回以上とすることが好ましい。なお、上限回数は特に設定されないが、例えば15回以下程度とすることが、操業の効率性等の観点から好ましい。
【0058】
[仕上げ混合工程]
また、図示していないが、基礎混合工程S2を経て得られた細骨材、あるいは、粗混合工程S3にて再度の混合操作を行った後の細骨材に対して、同様の製造方法を実行することで得られた別の細骨材のロットを混合する工程(仕上げ工程)を有していてもよい。すなわち、仕上げ工程は、一連の製造方法により製造される細骨材のロット内における均一性を高める処理を行う工程ではなく、ロット間における均一性のばらつきの抑えるための処理を行う工程である。
【0059】
具体的に、仕上げ工程では、一の製造方法により製造された細骨材(便宜的に、「ロットA」と称する)と、同様の方法であって他の製造プロセスにより製造された細骨材(便宜的に「ロットB」と称する)とを混合し、ロット間における均一性のばらつきを抑える。それぞれのロット(ロットA、ロットB)からは、所定の同量を秤量すればよい。
【0060】
混合操作についても、特に限定されず、基礎混合工程S2や粗混合工程S3にて実行した混合操作と同様の操作を行うことができる。
【実施例
【0061】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0062】
≪実施例1≫
[細骨材の製造]
細骨材材料として、海砂と、砕砂と、石灰と、そして銅スラグ(CUS2.5)とを用いて、それらを含有し、銅スラグ混合率を20%と設定して細骨材を製造した。
【0063】
(秤量工程)
先ず、それぞれの細骨材材料を秤量した。具体的には、海砂13.5トン、砕砂6.5トン、石灰6.5トン、銅スラグ6.5トンを、ショベルローダーを用いて秤量した。
【0064】
なお、ショベルローダーとしては、ショベルの容量が6.5トンであるものを用いた。また、細骨材材料の秤量値は、ショベルローダーに付帯された看量器により測定した。
【0065】
(基礎混合工程)
次に、秤量したそれぞれの細骨材材料を混合した。具体的には、第1の混合段階として、銅スラグ6.5トンと、海砂6.5トンとを、十分な広さを有する混合場に載置し、銅スラグと海砂とからなる混合前の山を挟んで正対するように2台のショベルローダーを配置し、その2台のショベルローダーのそれぞれで混合操作を行った。
【0066】
ここで、混合操作は、混合対象の細骨材材料を挟んで正対させた2台のショベルローダーにより細骨材材料を掻き上げて混合する混合操作を1回として、計10回行った。なお、ショベルローダー1台ずつで10回の混合操作を行った。
【0067】
この第1の混合段階における混合操作により、銅スラグ6.5トンと海砂6.5トンとを混合させた混合材料A(合計重量13トン)を得た。
【0068】
次に、第2の混合段階として、得られた混合材料A(重量13トン)に、砕砂6.5トンを混合した。混合においては、第1の混合段階における操作と同様に、2台のショベルローダーを用いて、計10回の混合操作を行った。この第2の混合段階における混合操作により、混合材料B(合計重量19.5トン)を得た。
【0069】
次に、第3の混合段階として、得られた混合材料B(重量19.5トン)に、海砂6.5トンを混合した。混合においては、第1~第2の混合段階における操作と同様に、2台のショベルローダーを用いて、計10回の混合操作を行った。この第3の混合段階における混合操作により、混合材料C(合計重量26トン)を得た。
【0070】
最後に、第4の混合段階として、得られた混合材料C(重量26トン)に、石灰6.5トンを混合した。混合においては、第1~第3の混合段階における操作と同様に、2台のショベルローダーを用いて、計10回の混合操作を行った。この第4の混合段階における混合操作により、混合材料D(合計重量32.5トン)である細骨材を得た。
【0071】
基礎混合工程における混合により細骨材32.5トンが得られ、混合した銅スラグの重量が6.5トンであることから、細骨材中の銅スラグ混合率は20%となる。
【0072】
[評価(混合の均一性について)]
銅スラグを含む細骨材材料を混合することで得られた細骨材32.5トンにおいて、混合の均一性を評価するために、その細骨材をサンプリングし、各サンプルにおいて銅スラグ混合率を測定した。
【0073】
具体的には、得られた細骨材32.5トンの山を円形の煎餅状に均し、図2に示すように面積的に8等分に区画(区画1~区画8)した。そして、各区画からそれぞれ1kgのサンプルを採取し、蛍光X線分析装置を用いて各サンプルの銅スラグ混合率を測定した。下記表1に、各サンプルの銅スラグ混合率の測定結果を示す。なお、表中の各サンプルの銅スラグ混合率の単位は「%」である。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示されるように、銅スラグ混合率20%に設定して製造した細骨材において、8つのサンプルで測定した銅スラグ混合率の平均は19.31%となり、十分に均一に混合されていることが分かった。
【0076】
≪実施例2≫
[細骨材の製造]
細骨材材料として、海砂と、砕砂と、石灰と、そして銅スラグ(CUS2.5)とを用いて、それらを含有し、銅スラグ混合率を20%と設定して細骨材を製造した。
【0077】
(秤量工程、基礎混合工程)
実施例1と同様の条件にして、細骨材材料である海砂、砕砂、石灰、及び銅スラグを秤量し(秤量工程)、第1~第4の混合段階を経て基礎混合を行った(基礎混合工程)。これにより、重量32.5トンの細骨材(混合材料D)を得た。
【0078】
(粗混合工程)
続いて、実施例2では、得られた細骨材をさらに混合した。具体的には、得られた細骨材の山を挟んで正対するように2台のショベルローダーを配置し、その2台のショベルローダーのそれぞれで混合操作を行った。そして、その混合操作は、混合対象の細骨材を挟んで正対させた2台のショベルローダーにより、細骨材を掻き上げて混合する混合操作を1回として、合計で5回、10回、15回の3つのパターンを実行した。
【0079】
このような粗混合工程における混合を経て得られた細骨材(重量32.5トン)は、銅スラグの重量が6.5トンであることから、細骨材中の銅スラグ混合率は20%となる。
【0080】
[評価(混合の均一性について)]
得られた細骨材32.5トンにおいて、混合の均一性を評価するために、その細骨材をサンプリングし、各サンプルにおいて銅スラグ混合率を測定した。なお、サンプリングは、粗混合工程の混合回数(5回、10回、15回)毎に行った。
【0081】
具体的に、銅スラグ混合率の測定は、得られた細骨材32.5トンの山を円形の煎餅状に均し、図2に示すように面積的に8等分に区画(区画1~区画8)した。そして、各区画からそれぞれ1kgのサンプルを採取し、蛍光X線分析装置を用いて各サンプルの銅スラグ混合率を測定した。
【0082】
下記表2に、各サンプルの銅スラグ混合率の測定結果を示す。なお、下記表2において、混合回数0回とは、粗混合工程での処理を行わずに製造した細骨材であり、すなわち実施例1での例である。また、表中の各サンプルの銅スラグ混合率の単位は「%」である。また、図3は、その混合の均一性の評価結果のグラフ図である。
【0083】
【表2】
【0084】
表2及び図3に示されるように、粗混合工程の回数毎においていずれも銅スラグ混合率は19.5%程度となり、設定した20%の混合率と近似し、十分に均一に混合されていることが分かった。
【0085】
粗混合工程での処理の実行の評価に関しては、標準偏差のデータから、粗混合工程において基礎混合後の細骨材をさらに5回混合することで、各サンプルでの銅スラグ混合率のばらつきが小さくなり、安定的な均一性でもって混合できることが分かった。さらに、その粗混合工程における混合の回数を多くすることで、各サンプルでの銅スラグ混合率のばらつきがさらに小さくなり、より安定的な均一性でもって混合できることが分かった。
図1
図2
図3