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特許7110777金属薄板検査装置および金属薄板の検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】金属薄板検査装置および金属薄板の検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20220726BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
G01N21/84 D
G01N21/892 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018134084
(22)【出願日】2018-07-17
(65)【公開番号】P2019020416
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2017140724
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 学
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敏明
(72)【発明者】
【氏名】松岡 昌二
(72)【発明者】
【氏名】植田 誠二
【審査官】今浦 陽恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2001/0030744(US,A1)
【文献】特開2000-241362(JP,A)
【文献】特開2006-003372(JP,A)
【文献】特開2002-150934(JP,A)
【文献】特開2002-202113(JP,A)
【文献】特開平11-311510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 ー 21/892
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属薄板を検査するための金属薄板検査装置において、
水平状態から所定の角度で傾斜可能である、金属薄板を載置するための検査台と、
前記検査台上に縞状光を照射する第一光源部と、
前記縞状光とは異なる方向から、前記検査台に向けて相関色温度4000K以下の光を照射する第二光源と、を有する金属薄板検査装置。
【請求項2】
前記第一光源部は、
前記検査台に向けて光を照射する第一光源と、
前記第一光源と前記検査台との間に配置され、前記第一光源からの光により検査台上に縞模様を照射する縞模様形成部材と、を備える請求項1に記載の金属薄板検査緒装置
【請求項3】
前記第二光源は前記第一光源部よりも前記検査台に近い位置にあることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属薄板検査装置。
【請求項4】
請求項1から請求項の何れかに記載の検査装置を用いる金属薄板の検査方法において、
前記検査台に検査用の金属薄板を載置し、前記金属薄板に前記第一光源部からの縞状光を照射し、照射された縞模様の形態から前記金属薄板を検査する第一欠陥検査工程と、
前記第二光源から光を前記金属薄板に照射し、前記金属薄板を検査する第二欠陥検査工程と、を備えることを特徴とする、金属薄板の検査方法。
【請求項5】
前記金属薄板は、厚さが1mm以下であり、表面粗さが、Ra≦0.2μm、Rz≦2.0μmであることを特徴とする、請求項に記載の金属薄板の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属薄板の形状欠陥や表面欠陥等を検査することができる金属薄板検査装置と、その金属薄板検査装置を用いた金属薄板の検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属材を圧延することで作製される金属薄板(以降、単に薄板とも記載する。)には、圧延時や研磨時や裁断時に線状疵等の表面欠陥や、過大な耳波、中伸び、圧延痕等の形状欠陥が発生する。この欠陥の有無を確認し、表面を検査する方法として、薄板表面に光を照射して、反射光の変化から表面欠陥を検査する方法が知られている。例えば特許文献1では、金属等の加工上においてその表面に発生する微細傷等を迅速かつ確実に識別して、高精度の表面検査を行うために、圧延もしくは絞り加工された金属等の表面の凹凸状態を検査する光学的表面検査方法において、検査する金属等の表面に明るい部分と暗い部分とを交互に等間隔で配列した縞模様を有する光を照射する照明装置を使用し、前記縞模様の配列方向と圧延もしくは絞り加工する方向とが同じになるように設定する、金属等の光学的表面検査方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-202113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年顧客からの品質向上の要求により、許容される薄板表面上の欠陥のサイズおよび個数は減少傾向にある。例えば圧延時に圧延ロールのパターンが薄板表面に転写される欠陥であるロールマークにおいては、要求品質によっては例えば大きさ0.5mmφ以下といった非常に小さい欠陥においても検出する必要がある。そのため検査員による目視では、熟練者でも長時間かつ複数回観察する必要があり、さらなる作業能率の改善や検査精度の向上が要求されている。特許文献1は表面の凹凸欠陥を容易に検査することができる優れた発明であるが、微小な欠陥や、凹凸が非常に小さい欠陥に対しては、検出できない可能性があり、さらなる改良の余地が残されている。また光学センサ等を用いた高精度な検査装置を導入することも考えられるが、装置の導入・設置には高額な費用がかかるため、好ましくない。
そこで本発明の目的は、金属薄板の形状欠陥や表面欠陥等が微小なものであっても簡易に検出することができる、金属薄板検査装置および金属薄板の検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、金属薄板を検査するための金属薄板検査装置において、
金属薄板を載置するための検査台と、
前記検査台上に縞状光を照射する第一光源部と、
前記縞状光とは異なる方向から、前記検査台に向けて光を照射する第二光源と、を有する金属薄板検査装置である。
好ましくは、前記第一光源部は、前記検査台に向けて光を照射する第一光源と、
前記第一光源と前記検査台との間に配置され、前記第一光源からの光により検査台上に縞模様を照射する、縞模様形成部材と、を備える。
好ましくは前記検査台は、水平状態から所定の角度で傾斜可能である。
好ましくは前記第二光源は前記第一光源部よりも前記検査台に近い位置にある。
【0006】
本発明の他の一態様は、上記した検査装置を用いる金属薄板の検査方法において、
前記検査台に検査用の金属薄板を載置し、前記金属薄板に前記第一光源部からの縞状光を照射し、照射された縞模様の形態から前記金属薄板を検査する第一欠陥検査工程と、
前記第二光源から光を前記金属薄板に照射し、前記金属薄板を検査する第二欠陥検査工程と、を備えることを特徴とする、金属薄板の検査方法である。
好ましくは、前記金属薄板は、厚さが1mm以下であり、表面粗さが、Ra≦0.2μm、Rz≦2.0μmである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な装置構成で金属薄板の表面状態を検査することができる。例えば、微小な欠陥の検出精度を大幅に向上させることが可能であり、不良の流出を大幅に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の検査装置の一例を示す図である。
図2図1のx方向から見た本発明の検査装置の配置構成を示す模式図である。
図3】本発明の検査装置に用いる縞模様形成部材の一例を示す図である。
図4】本発明の検査装置に用いる縞模様形成部材の他の例を示す図である。
図5】本発明の第一欠陥検査工程実施時の、金属薄板の表面写真である。
図6】本発明の第二欠陥検査工程実施時の、金属薄板の表面写真である。
図7】別の本発明の第一欠陥検査工程実施時の、金属薄板の表面写真である。
図8図7のB部拡大部分を示す、金属薄板の表面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。まず、本発明の検査装置について説明する。本実施形態の検査装置の概略図を図1図2に示す。本実施形態の検査装置は、図1に示すように第一光源1、縞模様形成部材4から構成される第一光源部20、第二光源2、検査台3を有し、第二光源2、検査台3、縞模様形成部材4は枠体5に取り付けられている。枠体5は例えばパイプを組み合わせることで作製されている。ここで用いるパイプは、樹脂が被覆された鋼鉄パイプ等を用いることが可能である。なお目視検査の場合、検査員は第二光源と対する位置から、金属薄板を検査することができる。画像検査を行う場合は、CCDカメラ等の画像撮影装置を、第一光源及び第二光源から金属薄板に照射した光が反射する方向に設置し、観察すればよい。ここで「金属薄板」とは、厚さ1mm以下のものであることが好ましい。さらに好ましくは0.7mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下である。なお本発明におけるz方向とは、第一光源1、縞模様形成部材4、検査台3の配列方向を示す。本実施形態である図1図2において、上記の部材は垂直方向に配列しているため、z方向は垂直方向となる。
【0010】
本実施形態の検査装置は、検査対象である金属薄板を載置するための検査台3を有する。この検査台上に載置した金属薄板に後述する第一光源または第二光源からの光を照射し、金属薄板の表面状態、例えば形状欠陥や表面欠陥を観察する。この検査台3は、検査対象の金属薄板を平らな状態に載置可能な載置面を有し、水平状態から±30°の範囲で傾斜させることができるように構成されていることが好ましい。この傾斜する機構により、特に後述する第二光源2による観察を行う際、金属薄板に対する第二光源2からの光の入射角度を変更することができるため、金属薄板表面の反射特性を変更させ、微小な表面欠陥を捕捉し易くすることができる。ここで、本実施形態における検査台3の+側傾斜角度は、水平状態の検査台上面を基準として、第二光源設置側の検査台上面が基準よりも上側に位置している(例:図2における3aの位置)際の傾斜角度(図2におけるθ1)とする。また検査台3の-側傾斜角度とは、第二光源設置側の検査台上面が基準よりも下側に位置している(例:図2における3bの位置)際の傾斜角度(図におけるθ2)を示す。また検査台3は、視野範囲の調整等を行うために、y方向からみて右側が下がる、または左側が下がるように斜めに動かしても良い。
【0011】
本実施形態の検査装置における第一光源部20は、検査台3の略垂直方向上方に設置された第一光源1と、第一光源1の下部に設置された縞模様形成部材4とから構成されている。この第一光源1からの光が縞模様形成部材4を透過することで、検査台上に縞模様を照射し、特に金属薄板上のうねりや打痕といった形状欠陥を検出することができる。第一光源1の明るさは検査対象である金属薄板の材質や表面状態によって適宜変更することができるが、過剰に明るいと縞模様が観察できない可能性がある。そのため、第一光源1からの光が検査台に照射された際の照度を1100lx(ルクス)以下に調整することが好ましい。なお検査台上が暗すぎても縞模様が確認できないため、第一光源1からの光により検査台上の照度の下限は、700lxと設定することができる。より好ましい照度の上限は1000lxであり、より好ましい照度の下限は900lxである。なお本実施形態における第一光源は、直管蛍光灯を使用している。
【0012】
本実施形態の縞模様形成部材4は、光を透過する透明部材上に、光遮断部10を形成することで作製することができる。この光遮断部10の幅、光遮断部10の設置間隔は、測定対象の材質や測定環境に合わせて、適宜調整することができる。透明部材は例えばガラスやアクリル等を選択すればよく、光遮断部は黒色のビニールテープや、透明シートの上に黒色パターンを印刷したものなどでもよい。また変形例として、光を透過しない板状部材に所望のサイズと間隔で部材を除去して光透過部を形成することにより、縞模様形成部材を作成することができる。縞模様形成部材4の光遮断部10の幅L1および光遮断部10の間隔L2は、図3に示すように縞模様形成部材全域において同じ幅、同じ間隔で形成してもよく、図4に示すように位置によって光遮断部の幅、間隔を変更して形成してもよい。本実施形態では例えば、光遮断部の幅L1を13~25mmに、光遮断部の間隔L2を5~13mmに設定することができる。好ましい光遮断部の幅L1は15~23mm、好ましい光遮断部の間隔L2は7~11mmである。図4の縞模様形成部材を使用すれば、材質や表面状態によって欠陥を捕捉しやすい縞模様を選択することができるため、より効率よく金属薄板を検査することができる。第一光源1と縞模様形成部材4との距離は、所望の照度を得るために適宜調節してもよい。距離が空き過ぎると検査台上に照射される縞模様が明確に確認できなくなる可能性があるため、100mm以下と設定することができる。下限は特に設定せず、光源と縞模様形成部材とを密着させてもよい。また所望の照度を得るために検査台3と第一光源1との距離を調整してもよく、例えば本実施形態では、500~1000mmの範囲内で設定することができる。なお、本実施形態では図2に示すように縞模様形成部材4を水平に設置しているが、縞模様の照射具合を変更するために、わずかに傾斜させて設置してもよい。具体的には、水平に設置した検査台を基準とした場合、傾斜角度γが5°以下の範囲内で傾斜させることが好ましい。より好ましくは3°以下である。ここで第一光源1の設置箇所である、「検査台の略垂直方向」とは、図に示すように水平状態の検査台と、第一光源1の中心と検査台3の中心とを結ぶ線とがなす角度(第一光源角度)αが85~95°であることを示す。なお本実施形態においては、検査台上に縞状光を照射するために縞模様形成部材を使用したが、第一光源のみで縞状光を照射できる場合は、縞模様形成部材を設置しなくてもよい。このような縞模様形成部材が不要な第一光源の例として、小型LEDチップを等間隔に設置したものが挙げられる。
【0013】
本実施形態の検査装置において、上述した第一光源部20よりも下方(かつ検査台よりも上方)には、第二光源2が設置されている。この第二光源2における光源角度βは図2に示すように、第一光源の光源角度よりも小さい角度となるように設置する。つまり、第二光源からの光は、第一光源部からの縞状光とは異なる方向から検査台に照射される。好ましい光源角度の上限は50°であり、より好ましくは40°、さらに好ましくは35°に設定することができる。また好ましい光源角度の下限は0°であり、より好ましくは10°、さらに好ましくは20°に設定することができる。なお、第二光源2における光源角度βとは、第二光源の中心と検査台の中心との角度である。このように光源角度βを浅く設定して検査することで、疵深さがおよそ1μm以下と非常に浅い線状疵や筋疵等の微小な表面欠陥を検出することができる。この時、第二光源による検査台上の照度は、700~1000lxに調整することが好ましい。これにより表面欠陥を検出しやすくなる。好ましい照度の上限は950lxであり、好ましい照度の下限は800lxである。ここで本実施形態の第二光源の相関色温度は、4000K以下に設定することが好ましい。これにより第二光源の色相を進出色である暖色とすることができるため、一般的に用いられる昼白色の光源と比較して、微小な表面欠陥がより捕捉し易くなる傾向にある。好ましい相関色温度は、3500K以下である。なお下限は特に設定せず、例えば2500Kと設定してもよい。好ましくは、一般的な白熱電球の色温度である2700Kと設定してもよい。本実施形態では暖色のLED調光照明を第二光源に使用している。なおこの第二光源の水平方向(図1図2におけるy方向)位置は、後述する第一欠陥検査工程の障害にならない程度に装置中央側(図2における第一光源の中心と検査台とを結ぶ破線に向かう方向)に配置されても良く、その際に縞模様形成部材との水平方向位置が一部重複していてもよい。また図2に示すように第二光源と縞模様形成部材との水平方向位置が重複しないように設置してもよい。
【0014】
続いて、本発明の検査方法について説明する。本発明の検査方法は、第一光源部からの縞状光を検査台に載置した金属薄板に照射し、照射された縞模様の形態から金属薄板の形状欠陥を検査する第一欠陥検査工程と、前記第二光源から光を金属薄板に照射し、金属薄板の欠陥を検査する第二欠陥検査工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
<第一欠陥検査工程>
まず、用意した検査対象の金属薄板を検査台上に載置し、第二光源からの光が照射されていない状態で第一光源からの光を縞模様形成部材に透過させて、縞状光を金属薄板に照射し、照射された縞模様の形態から金属薄板の形状欠陥を検査する。この際に縞模様が金属薄板上で見難い場合、縞模様形成部材を±5°の範囲内で傾斜させることで、縞模様の映り具合を調整することができる。また第一欠陥検査工程時に、検査台を傾斜させても良い。この第一欠陥検査工程では、主に金属薄板のうねり、折れ、打痕、ロールマークといった形状欠陥を捕捉することができる。金属薄板上に上述したような形状欠陥が存在した場合、図5に示すように縞模様が歪むため、容易に形状欠陥を捕捉することができる。
【0016】
<第二欠陥検査工程>
本実施形態では続いて第一光源からの光が照射されていない状態で、第二光源からの光を金属薄板に照射し、金属薄板の欠陥を検査する。第一欠陥検査工程では、例えばキズの深さが1μm以下と非常に浅い表面欠陥を検出することは困難であるが、この第二欠陥検査工程により、正常部と欠陥部とで反射特性が変化するため、上述した微小な表面欠陥も捕捉することができる。この第二欠陥検査工程では、検査台の角度を±30°の範囲内で変化させながら金属薄板を観察することが好ましい。これにより金属薄板表面の反射特性を変更させ、微小な表面欠陥を捕捉し易くすることができる。なお本実施形態では第一欠陥検査工程、第二欠陥検査工程の順に行ったが、第二欠陥検査工程を先に実施してもよい。
【0017】
本実施形態の検査方法は、金属薄板の表面における算術平均粗さRaが0.2μm以下、最大高さRzが2.0μm以下である金属薄板に適用することが好ましい。この条件を満たす金属薄板を検査すれば、第一欠陥検査工程における縞模様の映り込みがより鮮明となるため、欠陥を捕捉する精度をさらに高めることが可能となる。本実施形態の検査対象となる金属薄板の表面光沢度は、85°光沢度において100以上であることが好ましく、105以上であることがより好ましい。これにより第一欠陥工程および第二欠陥工程における形状欠陥および表面欠陥検出精度をさらに向上させることができる。なお本発明の表面光沢度は、既存のグロスメーター等を使用して評価すればよい。
【0018】
本発明の検査装置および検査方法によれば、目視検査時の欠陥検査精度を向上させ、さらに欠陥を発見するまでに要する時間の大幅な短縮も期待できる。また本発明は目視検査のみではなく、CCDカメラ等の撮影装置を用いた画像検査にも適用することができる。
【実施例
【0019】
まず検査用の試料を準備した。用いた試料は、厚さ0.1mmのFe-Ni系合金薄板を、幅45mm×長さ100mmに切断したものを使用した。ここで「長さ」方向とは圧延方向であり、「幅」方向とは圧延直角方向のことを示す。この試料の表面粗さを事前に測定した結果、表面粗さRaは0.06~0.1μm程度であり、最大高さRzは0.6μm~1.2μm程度であることを確認した。またグロスメーターを用いて、試料表面のJISZ8741(1997)に基づく光沢度(Gs(85°))を事前に測定した結果、110~120の値を示すことも確認した。続いて準備した試料を、図1に示す検査装置を用いて検査した。まず検査台上に準備した試料を載置し、第一欠陥検査工程を実施した。実施例で使用した検査装置の各種設定条件を表1に示す。第一光源と縞模様形成部材との距離h1は最大垂直距離を示し、縞模様形成部材と検査台との距離h2は、検査台が水平に設置されているときの最大垂直距離を示す。第一光源点灯時および第二光源点灯時の照度は、検査台の中央における400mm×1000mmの範囲を、照度計を用いて測定した平均値である。なおこの平均値は、400mm×1000mmの測定領域の任意の五箇所の測定し、得られた測定値の平均を示す。また第二光源には暖色光源(相関色温度:2700K~3000K)を適用している。
【0020】
【表1】
【0021】
図5に第一欠陥検査工程実施時の、金属薄板の表面写真を示す。図5より、金属薄板の表面に縞模様が照射されており、破線で囲んだ箇所において縞模様の歪みが観察された。この歪みが生じた部分を詳細に観察した結果、深さ0.3mm程度の打痕であることが確認できた。このように従来目視で捕捉することが困難であった微小形状欠陥も、本発明の装置を用いることによって検出することが可能であった。なお写真には示していないが、0.3mmφ×高さ3μmのロールマークもこの第一欠陥検査工程で捕捉することができた。続いて第一光源を消灯した後、第二光源を点灯し、第二欠陥検査工程を実施した。第二欠陥検査工程の実施時には、手元の検査台を水平状態から±20°の範囲で変動させながら金属薄板を観察した。その結果、図6に示すように第一欠陥検査工程で検出できなかった表面欠陥(破線で囲んだ箇所)を検出することができた。
【0022】
さらに別の実施例として、薄板の材質をマルテンサイト系ステンレス(SUS420J2相当)に変更して、本発明の装置を用いて検査を行った。試料の厚さは0.1mmであり、幅約45mm×長さ100mmに切断したものを使用し、検査台にその試料を複数枚載置して、検査を行った。検査装置の設定項目は、実施例1と同等とした。なお事前に試料表面のJISZ8741(1997)に基づく光沢度(Gs(85°))を測定した結果、110~120の値を示すことも確認した。図7および図8に第一欠陥検査工程実施時の、金属薄板の表面写真を示す。なお、図7は、2つの試料を観察したものであり、間の黒い線状のところは、2つの試料の間隔部分である。また図8図7のB部の拡大写真である。図8に示すように、本実施形態の測定装置を使用することで、金属薄板のエッジに形成されるダレ部(微小R形状)16も、目視で観察することが可能となった。通常このようなダレ部は、板厚が薄くなればなるほど形成領域が小さくなるため、目視で観察することが困難であった。しかし本実施形態の測定装置および測定方法を適用することで、ダレ形成部の反射率変化が縞模様の陰影でより強調され、目視でも容易に形状変化を観測することができた。また、検査台に複数の試料を載置して検査を行うことにより、複数の製造ロットの検査を同時に行うことができ、効率よく、しかも精度良く検査することができた。
【符号の説明】
【0023】
1 第一光源
2 第二光源
3 検査台
4 縞模様形成部材
5 枠体
10 光遮断部
16 ダレ部
20 第一光源部
h1 第一光源と縞模様形成部材との距離
h2 縞模様形成部材と検査台との距離
L1 光遮断部の幅
L2 光遮断部の間隔
α 第一光源角度
β 第二光源角度
γ 縞模様形成部材の傾斜角度
θ1、θ2 検査台の傾斜角度

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8