(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】静電チャック装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220726BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20220726BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20220726BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/31 B
H02N13/00 D
(21)【出願番号】P 2018159992
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】前田 佳祐
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/178229(WO,A1)
【文献】特開2015-035485(JP,A)
【文献】特開2005-159018(JP,A)
【文献】特開2009-054932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H01L 21/31
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス焼結体を形成材料とする静電チャック部と、
前記静電チャック部を冷却するベース部と、
前記静電チャック部と前記ベース部との間に設けられた接合部と、を有し、
前記接合部は、複数の凹部と、前記接合部の法線方向から見て前記凹部の周囲を囲む凸状部と、を有する接合層を含み、
前記複数の凹部は、前記接合層において、前記静電チャック部に面する第1面と、前記ベース部に面する第2面と、の両面の全面に設けられて
おり、
前記接合部は、前記静電チャック部と前記接合層との間に、第1接着剤を形成材料とする第1接着剤層を有し、
前記接合層と前記第1接着剤層とで囲まれた複数の空気層が、前記第1面の面内全面に形成される静電チャック装置。
【請求項2】
前記第1面において、前記
第1接着剤層と前記接合層との接触面積は、前記
第1接着剤層と前記接合層とで囲まれた空気層の前記
第1接着剤層に対する投影面積よりも大きい請求項1に記載の静電チャック装置。
【請求項3】
前記第1接着剤は、前記第1面に設けられた前記複数の凹部に充填されている請求項
1または2に記載の静電チャック装置。
【請求項4】
前記第1接着剤の熱伝導率は、前記接合層の形成材料の熱伝導率よりも大きい請求項
3に記載の静電チャック装置。
【請求項5】
前記接合層の厚みは、前記第1接着剤層の厚みよりも大きい請求項
3または
4に記載の静電チャック装置。
【請求項6】
前記接合部は、前記ベース部と前記接合層との間に、第2接着剤を形成材料とする第2接着剤層を有し、
前記接合層と前記第2接着剤層とで囲まれた複数の空気層が、前記第2面の面内全面に形成される請求項1から5のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【請求項7】
セラミックス焼結体を形成材料とする静電チャック部と、
前記静電チャック部を冷却するベース部と、
前記静電チャック部と前記ベース部との間に設けられた接合部と、を有し、
前記接合部は、複数の凹部と、前記接合部の法線方向から見て前記凹部の周囲を囲む凸状部と、を有する接合層を含み、
前記複数の凹部は、前記接合層において、前記静電チャック部に面する第1面と、前記ベース部に面する第2面と、の両面の全面に設けられており、
前記接合部は、前記ベース部と前記接合層との間に、第2接着剤を形成材料とする第2接着剤層を有し、
前記接合層と前記第2接着剤層とで囲まれた複数の空気層が、前記第2面の面内全面に形成される静電チャック装置。
【請求項8】
前記第2面において、前記
第2接着剤層と前記接合層との接触面積は、前記
第2接着剤層と前記接合層とで囲まれた空気層の前記
第2接着剤層に対する投影面積よりも大きい請求項
6または
7に記載の静電チャック装置。
【請求項9】
前記第2接着剤は、前記第2面に設けられた前記複数の凹部に充填されている請求項
6から8のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【請求項10】
前記第2接着剤の熱伝導率は、前記接合層の形成材料の熱伝導率よりも大きい請求項
9に記載の静電チャック装置。
【請求項11】
前記接合層の厚みは、前記第2接着剤層の厚みよりも大きい請求項
9または
10に記載の静電チャック装置。
【請求項12】
前記凹部の深さは、0.05μm以上1.0μm以下である請求項1から
11のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【請求項13】
前記複数の凹部は、規則的に配列されている請求項1から
12のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマエッチング装置、プラズマCVD装置等のプラズマを用いた半導体製造装置においては、載置面に簡単にウエハを取付け、固定するとともに、ウエハを所望の温度に維持する装置として静電チャック装置が使用されている。静電チャック装置としては、載置面を含む静電チャック部と、静電チャック部を冷却するベース部と、静電チャック部とベース部とを接合する接合部(接合膜)とを有する構成が知られている。
【0003】
近年、半導体を用いたデバイスは高集積化される傾向にある。そのため、デバイスの製造時には、配線の微細加工技術や三次元実装技術が必要とされている。このような加工技術を実施するにあたり、半導体製造装置には、ウエハの面内の温度分布(温度差)を低減させることが求められる。
【0004】
なお、本明細書においては、「載置面に載置したウエハの面内温度分布(温度差)の度合い」のことを「均熱性」と称することがある。「均熱性が高い」とは、ウエハの面内温度分布が小さいことを意味する。
【0005】
ウエハの面内温度分布を低減する方法として、接合膜の材料や構造を調整することで、静電チャック部からベース部への熱伝達を調整する方法が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-267256号公報
【文献】特開2017-143182号公報
【文献】特開2017-152469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~3に記載の構成では、ウエハの面内温度分布を所望の温度差にまで低減させることができないことがあり、改善が求められていた。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、均熱性が高い新規な静電チャック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、セラミックス焼結体を形成材料とする静電チャック部と、前記静電チャック部を冷却するベース部と、前記静電チャック部と前記ベース部との間に設けられた接合部と、を有し、前記接合部は、複数の凹部と、前記接合部の法線方向から見て前記凹部の周囲を囲む凸状部と、を有する接合層を含み、前記複数の凹部は、前記接合層において、前記静電チャック部に面する第1面と、前記ベース部に面する第2面と、の両面の全面に設けられている静電チャック装置を提供する。
【0010】
本発明の一態様においては、前記第1面において、前記接合層に対向する部材と前記接合層との接触面積は、前記部材と前記接合層とで囲まれた空気層の前記部材に対する投影面積よりも大きい構成としてもよい。
【0011】
本発明の一態様においては、前記第2面において、前記接合層に対向する部材と前記接合層との接触面積は、前記部材と前記接合層とで囲まれた空気層の前記部材に対する投影面積よりも大きい構成としてもよい。
【0012】
本発明の一態様においては、前記接合部は、前記静電チャック部と前記接合層との間に、第1接着剤を形成材料とする第1接着剤層を有し、前記第1接着剤は、前記第1面に設けられた前記複数の凹部に充填されている構成としてもよい。
【0013】
本発明の一態様においては、前記第1接着剤の熱伝導率は、前記接合層の形成材料の熱伝導率よりも大きい構成としてもよい。
【0014】
本発明の一態様においては、前記接合層の厚みは、前記第1接着剤層の厚みよりも大きい構成としてもよい。
【0015】
本発明の一態様においては、前記接合部は、前記静電チャック部と前記接合層との間に、第2接着剤を形成材料とする第2接着剤層を有し、前記第2接着剤は、前記第2面に設けられた前記複数の凹部に充填されている構成としてもよい。
【0016】
本発明の一態様においては、前記第2接着剤の熱伝導率は、前記接合層の形成材料の熱伝導率よりも大きい構成としてもよい。
【0017】
本発明の一態様においては、前記接合層の厚みは、前記第2接着剤層の厚みよりも大きい構成としてもよい。
【0018】
本発明の一態様においては、前記凹部の深さは、0.05μm以上1.0μm以下である構成としてもよい。
【0019】
本発明の一態様においては、前記複数の凹部は、規則的に配列されている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、均熱性が高い新規な静電チャック装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態の静電チャック装置1Aを示す断面図である。
【
図3】
図2の線分II-IIにおける矢視断面図である。
【
図4】第2面5b側の様子を示す概略断面図である。
【
図5】本実施形態の変形例に係る静電チャック装置1Bの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1~
図5を参照しながら、本実施形態に係る静電チャック装置について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0023】
図1は、本実施形態の静電チャック装置1Aを示す断面図である。静電チャック装置1Aは、円板状の静電チャック部2と、静電チャック部2の温度を調整する温度調整用ベース部(ベース部)3と、静電チャック部2とベース部3との間に設けられ、静電チャック部2とベース部3とを接合する接合部4と、静電チャック部2に給電する給電部8と、有する。
【0024】
(静電チャック部)
静電チャック部2は、載置板11と、支持板12と、内部電極13と、絶縁材層14と、給電用端子10と、を有している。
【0025】
載置板11は、上面が半導体ウエハ等の板状試料Wを載置する載置面11aとした板状部材である。
支持板12は、載置板11と一体化され載置板11を支持する板状部材である。
【0026】
載置板11および支持板12は、重ね合わせた面の形状を同じくする円形の部材である。載置板11および支持板12は、機械的な強度を有し、腐食性ガスおよび腐食性ガスのプラズマに対する耐久性を有する絶縁性のセラミックス焼結体(誘電体材料)を形成材料とする。
【0027】
載置板11および支持板12の形成材料としては、酸化アルミニウム-炭化ケイ素(Al2O3-SiC)複合焼結体、酸化アルミニウム(Al2O3)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体を挙げることができる。
【0028】
載置板11の載置面には、直径が板状試料の厚みより小さい突起部が複数個形成され、これらの突起部が板状試料Wを支える構成になっていてもよい。
【0029】
内部電極13は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料を固定する、すなわち静電吸着用の静電チャック用電極として用いられる。内部電極13は、載置板11と支持板12との間に設けられている。内部電極13は、形状や、大きさを適宜調整することができる。
【0030】
内部電極13は、酸化アルミニウム-炭化タンタル(Al2O3-Ta4C5)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム-タングステン(Al2O3-W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム-炭化ケイ素(Al2O3-SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム-タングステン(AlN-W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム-タンタル(AlN-Ta)導電性複合焼結体等の導電性セラミックス、またはタングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属を形成材料とする。なお、上記複合焼結体については、所望の導電性が得られるように組成、製造条件等を調節して得られた焼結体を用いる。
【0031】
内部電極13の厚みは、特に限定されるものではないが、0.1μm以上かつ100μm以下が好ましく、5μm以上かつ20μm以下がより好ましい。内部電極13の厚みが0.1μmを上回ると、充分な導電性を確保することができる。内部電極13の厚みが100μm以下であると、載置板11と支持板12との接合界面において、載置板11および支持板12と内部電極13との熱膨張率差に起因したクラックが入り難い。
【0032】
内部電極13は、スパッタ法や蒸着法等の成膜法、またはスクリーン印刷法等の塗工法により容易に形成することができる。
【0033】
絶縁材層14は、載置面11aの法線方向から見て、内部電極13の周囲を取り囲む。絶縁材層14は、腐食性ガスおよび腐食ガスのプラズマから内部電極13を保護するとともに、載置板11と支持板12との境界部、すなわち内部電極13以外の外周部領域を接合一体化する。
【0034】
絶縁材層14は、載置板11および支持板12を構成する材料と同一組成の絶縁材料、または載置板11および支持板12を構成する材料と主成分が同一の絶縁材料を形成材料としている。
【0035】
給電用端子10は、支持板12を貫通するようにして設けられ、支持板12と接合一体化している。また、給電用端子10は、内部電極13に電気的に接続している。給電用端子10の形成材料は、耐熱性に優れた材料であれば特に制限されないが、熱膨張係数が支持板12の形成材料の熱膨張係数、および内部電極13の形成材料の熱膨張係数に近似した材料が好ましい。このような材料として、例えば、Al2O3-TaCなどの導電性セラミック材料を挙げることができる。
【0036】
なお、静電チャック部2には、内部または支持板12側の下面に、ヒータ電極を設けることとしてもよい。ヒータ電極を有する静電チャック部2においては、ヒータ電極に通電して加熱し、載置面の温度調節に利用することができる。
【0037】
(温度調整用ベース部(ベース部))
ベース部3は、静電チャック部2を所望の温度に調整するための部材である。ベース部3は、静電チャック部2と同様に、載置面11aの法線方向から見て円形を呈する。ベース部3は、内部に冷媒を循環させる流路3Aが形成された構成を採用することができ、流路3Aを形成可能な程度の厚みを有することが好ましい。
【0038】
ベース部3の形成材料としては、熱伝導性、導電性に優れ、加工しやすい金属、またはこのような金属を含む複合材であれば特に制限がない。ベース部3の形成材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS)等が好適に用いられる。ベース部3において、少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、アルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。
【0039】
(接合部)
接合部4は、静電チャック部2とベース部3との間に配置され、静電チャック部2とベース部3とを接合する。接合部4が、接合層5と、第1接着剤層6と、第2接着剤層7とを有する。
【0040】
(接合層)
接合層5は、静電チャック部2とベース部3との間を絶縁する機能を有する。
【0041】
図2,3は、接合層5を示す説明図である。
図2は、接合層5の平面図、すなわち接合層5の法線方向から見た図である。
図3は、
図2の線分II-IIにおける矢視断面図である。
【0042】
図に示すように、接合層5は、複数の凹部51と、接合層5の法線方向から見て凹部51の周囲を囲む凸状部52と、有する。また、複数の凹部51と凸状部52とは、静電チャック部2に面する第1面5aと、ベース部3に面する第2面5bとの両面全面に設けられている。
【0043】
接合層5は、耐熱性および絶縁性を有する樹脂を形成材料とすることができる。接合層5の形成材料としては、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0044】
また、接合層5は、シリコン樹脂と熱硬化性樹脂との混合物を用いることもできる。このような混合物において、シリコン樹脂の含有量は、5体積%以上90体積%以下である。接合層5のショアA硬度は、静電チャック部2とベース部3との温度差により生じる応力を緩和しやすいため、20から80であることが好ましい。
【0045】
上記混合物において、シリコン樹脂ゴムと混合する熱硬化性樹脂としては、アクリル系、メタクリル系、エポキシ系、ウレタン系、イミド系樹脂等があげられるが、これら1種もしくは2種以上使用してもよいし、これ以外の樹脂を用いてもよい。
【0046】
接合層5の平均厚みは、10μm以上500μm以下であり、30μm以上500μm以下であると好ましい。接合層5の平均厚みが10μm以上であれば、静電チャック部2とベース部3との間で良好に熱を伝達することができる。また、接合層5の平均厚みが10μm以上であれば、静電チャック部2が加熱され膨張したとしても、十分に内部応力を緩和することができる。接合層5の平均厚みが500μm以下であれば、熱伝導性を確保できる。
【0047】
なお、「接合層5の厚み」は、接合層5の第1面5a側に形成された凸状部52と、第2面5b側に形成された凸状部52と、が平面的に重なる位置で測定される厚みであり、第1面5a側に形成された凸状部52の頂部から、第2面5b側に形成された凸状部52の頂部までの最短距離を指す。
【0048】
「接合層5の平均厚み」は、接合層5の複数点(例えば10点)で上述の接合層5の厚みを測定し、算術平均値を求めて得られた値を指す。
【0049】
接合層5の厚みのばらつきは10μm以下であり、好ましくは5μm以下である。接合層5の厚みばらつきが10μmより小さいと、接合層5において載置面11aの面方向に熱が拡散しにくく、載置面11aの温度分布のばらつきを小さくしやすくなる。また、接合層5の厚みばらつきが10μmより小さいと、厚みの大小により温度分布に高低の差が生じにくく、接合層5の厚み調整による温度制御に悪影響を及ぼしにくい。
【0050】
「接合層5の厚みのばらつき」は、複数点(例えば10点)で測定した接合層5の厚みの最大値と、接合層5の厚みの最小値との差を指す。
【0051】
第1面5aおよび第2面5bにおいて、複数の凹部51は、規則的に配列していると好ましい。「規則的に配列」とは、例えば、第1面5aの中心または第2面5bの中心から放射状や、らせん状に配列していることを含む。
【0052】
第1面5aに設けられた複数の凹部51と、第2面5bに設けられた複数の凹部51とは、平面視で重なっていてもよく、重なっていなくてもよい。
【0053】
図に示す接合層5において、複数の凹部51は、第1面5aおよび第2面5bにて、規則的に格子状に配列している。詳しくは、複数の凹部51は、一方向に設定された第1配列軸5xに沿って配列し、第1配列軸5xに交差する方向に設定された第2配列軸に沿って配列している。
【0054】
凹部51の平面視形状は、特に制限がなく、円形、楕円形、多角形などとすることができる。複数の凹部51は、平面視形状が互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。図では、凹部51の平面視形状を正方形としている。これにより、凸状部52の平面視形状は、格子状となっている。
【0055】
凹部51の深さ方向の形状は、特に制限がなく、上記平面視形状を一面とする柱状、錘状、錘台状とすることができる。また、凹部51は、椀状であってもよい。
【0056】
凹部51の深さは、0.05μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.8μm以下であることがより好ましい。
【0057】
複数の凹部51は、同じ平面視形状および同じ深さであると好ましい。
【0058】
接合層5は、第1面5aおよび第2面5bの算術平均高さSaが0.05以上1.0以下であると好ましい。算術平均高さSaは、各測定面の平均面に対する各点の高さを求めるとき、各点の高さの差の絶対値についての平均値として求められる。
【0059】
なお、本実施形態において、接合層5の算術平均高さSaは、非接触レーザー顕微鏡(OLS5000、オリンパス株式会社製)を用いて、接合層5の表面を測定し、得られた値を採用する。
【0060】
(第1接着剤層、第2接着剤層)
第1接着剤層6は、接合層5を静電チャック部2に固定するジェル状、シート状またはフィルム状の接着材である。第1接着剤層6は、静電チャック部2と接合層5との間に配置され、静電チャック部2と接合層5とを接着している。
【0061】
第1接着剤層6は、耐熱性および絶縁性を有する接着剤(第1接着剤)を形成材料とすることが好ましい。第1接着剤は、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等からなる接着剤、またはこれらの樹脂に絶縁性の窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3)等の熱伝導性フイラーを添加した複合樹脂等からなる接着剤が好ましい。
【0062】
特に、シリコン樹脂を成分とする接着剤は、200℃までの耐熱性を有し、他の耐熱性接着剤であるエポキシ樹脂やポリイミド樹脂を成分とする接着剤と比較して伸びが大きい。第1接着剤層6がこのようなシリコン樹脂を成分とする場合、静電チャック部2とベース部3との間の応力を緩和することができ、しかも熱伝導率が高いため、好ましい。
【0063】
第2接着剤層7は、接合層5をベース部3に固定するジェル状、シート状またはフィルム状の接着材である。第2接着剤層7は、ベース部3と接合層5との間に配置され、ベース部3と接合層5とを接着している。
【0064】
第2接着剤層7は、耐熱性および絶縁性を有する接着剤(第2接着剤)を形成材料とすることが好ましい。第2接着剤は、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等からなる接着剤が好ましい。
【0065】
特に、シリコン樹脂を成分とする接着剤は、200℃までの耐熱性を有し、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂を成分とする接着剤と比較して伸びが大きい。第2接着剤層7がこのようなシリコン樹脂を成分とする場合、静電チャック部2とベース部3との間の応力を緩和することができ、しかも熱伝達が高いため、好ましい。
【0066】
第1接着剤の熱伝導率は、接合層5の形成材料の熱伝導率よりも大きいことが好ましい。第1接着剤層6を構成する第1接着剤の熱伝導率が、接合層5の形成材料の熱伝導率よりも大きいことにより、接合層5、第1接着剤層6を含む接合部4の熱伝導率のばらつきが小さくなる。
【0067】
また、第2接着剤の熱伝導率は、接合層5の形成材料の熱伝導率よりも大きいことが好ましい。第2接着剤層7を構成する第2接着剤の熱伝導率が、接合層5の形成材料の熱伝導率よりも大きいことにより、接合層5、第2接着剤層7を含む接合部4の熱伝導率のばらつきが小さくなる。
【0068】
これらにより、静電チャック部2とベース部3との間の熱伝達が均一となり、静電チャック部2の載置面11aにおける温度分布を容易に小さくすることができる。
【0069】
第1接着剤層6が、シート状またはフィルム状の接着剤により構成される場合、第1接着剤層6の厚みを精度良くかつ容易に制御することが可能となる。
【0070】
また、第1接着剤層6がジェル状の接着剤により構成される場合、第1接着剤層6がシート状またはフィルム状の接着剤である場合と比べ、第1接着剤層6の厚みを薄くすることができる。
【0071】
さらに、第2接着剤層7がシート状またはフィルム状の接着剤により構成される場合、ジェル状の接着剤により構成される場合にも、同様の効果が得られる。
【0072】
第1接着剤層6および第2接着剤層7の材料として適切な性質の接着剤を選択することにより、静電チャック部2とベース部3との間の熱伝達をさらに精度良くかつ容易に制御することが可能となる。その結果、静電チャック部2の載置面11aにおける温度差をさらに小さくすることが可能となる。
【0073】
第1接着剤層6および第2接着剤層7の厚みは、それぞれ接合層5よりも小さいことが好ましい。第1接着剤層6および第2接着剤層7の厚みは、それぞれ2μm以上50μm以下であり、3μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0074】
第1接着剤層6の厚みが2μm以上であれば、静電チャック部2と接合層5との接着力を強く保てることができる。第1接着剤層6の厚みが50μm以下であれば、載置面11aの面内の温度差を小さくすることができる。
【0075】
第2接着剤層7の厚みが2μm以上であれば、ベース部3と接合層5との接着力を強く保てることができる。第2接着剤層7の厚みが50μm以下であれば、載置面11aの面内の温度差を小さくすることができる。
【0076】
第1接着剤層6および第2接着剤層7の厚みが上述の範囲内であることにより、載置面11aの温度差を小さくすることが可能となる。第1接着剤層6および第2接着剤層7の厚みについて、最大値と最小値とは任意に組み合わせることができる。
【0077】
第1接着剤層6の厚みと第2接着剤層7の厚みとは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0078】
図1に示すように、第1接着剤層6は、第1接着剤層6の厚みに応じて、接合層5の第1面5aに設けられた複数の凹部51に充填されていることとしてもよい。
同様に、第2接着剤層7は、第2接着剤層7の厚みに応じて、接合層5の第2面5bに設けられた複数の凹部51に充填されていることとしてもよい。
【0079】
ここで、「凹部51に充填」とは、第1接着剤層6や第2接着剤層7を構成する接着剤が、接合層5の凸状部52の頂部を含む仮想面を超えて凹部51内に侵入することを指す。
【0080】
この意味において、「凹部51に充填」とは、
図1に示すように凹部51が完全に第1接着剤層6や第2接着剤層7で埋まっている状態であってもよい。
【0081】
また、「凹部51に充填」とは、凹部51の一部に第1接着剤層6や第2接着剤層7が侵入する状態であってもよい。
図4は、第2面5b側の様子を示す概略断面図である。図に示すように、第2面5b側の第2接着剤層7の一部が第2面5bの凹部51内に侵入し、さらに凹部51内には第2接着剤層7と接合層5とで囲まれた空気層Aが残存している。
【0082】
第1面5a側においても同様に、第1面5aの凹部51に第1接着剤の一部が侵入し凹部51内に第1接着剤層6と接合層5とで囲まれた空気層が残存していてもよい。
【0083】
上述のように、本実施形態の静電チャック装置1Aでは、接合層5が複数の凹部51を有しているため、第1接着剤層6および第2接着剤層7を用いて接着する際、凹部に空気層Aが形成されることがある。接合層5においては、凹部51が第1面5aと第2面5bとの両面全面に形成されている。そのため、第1面5aまたは第2面5bにおいて空気層Aは、面内全面に均一に形成されると考えられる。
【0084】
このように、静電チャック装置1Aにおいて、空気層Aが接合層5の面内全面に形成されると、空気層Aが面内で局在化する場合と比べ、面方向の熱伝導のばらつきを小さくすることができる。その結果、静電チャック部2の載置面の温度差を小さくすることが可能となる。
【0085】
静電チャック装置1Aが空気層Aを有する場合、第1面5aにおいて、接合層5に対向する部材である第1接着剤層6と接合層5との接触面積は、第1接着剤層6に対する空気層Aの投影面積よりも大きいことが好ましい。
【0086】
また、静電チャック装置1Aが空気層Aを有する場合、第2面5bにおいて、接合層5に対向する部材である第2接着剤層7と接合層5との接触面積は、第2接着剤層7に対する空気層Aの投影面積よりも大きいことが好ましい。
【0087】
接合層5と各接着剤層との接触面積と、空気層Aの投影面積との大小関係が上述のような関係であると、第1面5aまたは第2面5bにおける接着強度を十分に確保し、第1面5aまたは第2面5bにおいて剥離しにくくなる。
【0088】
接合層5と各接着剤層との接触面積は、接合層5の凸状部52の頂部の面積、凹部51内に侵入する各接着剤の形成材料、接合層5の形成材料、を調整することにより、適宜調整可能である。
【0089】
接合層5の凸状部52の頂部の面積を広げると、接合層5と各接着剤層との接触面積が拡大する傾向にある。
【0090】
各接着剤の形成材料として、溶融粘度が低いものを選択すると、静電チャック装置1Aの製造時に接着剤が流動し凹部51内に侵入しやすくなり、接合層5と各接着剤層との接触面積が拡大する傾向にある。
【0091】
接合層5の形成材料として、静電チャック装置1Aの製造時の加工条件で熱変形しやすいものを選択すると、静電チャック装置1Aの製造時に接合層5が変形して凹部51がつぶれやすくなり、接合層5と各接着剤層との接触面積が拡大する傾向にある。
【0092】
(給電部)
給電部8は、給電用端子10を介して、内部電極13に直流電圧を印加するために設けられた給電用部材である。給電部8は、棒状の給電用電極9と、給電用電極9の周囲を囲む筒状の碍子9aとを有する。碍子9aは、給電用電極9とベース部3とを絶縁している。
【0093】
給電部8は、ベース部3、接合部4を厚み方向に貫通する貫通孔16の内部に挿入されている。
【0094】
給電用電極9の形成材料は、耐熱性に優れた導電性材料であれば特に制限されるものではない。給電用電極9の形成材料としては、熱膨張係数が支持板12の形成材料の熱膨張係数、および内部電極13の形成材料の熱膨張係数に近似した材料が好ましい。
【0095】
このような材料として、例えば、内部電極13を構成している導電性セラミックスと同じ材料、またはタングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、コバール合金等の金属材料が好適に用いられる。
【0096】
(フォーカスリング)
静電チャック装置1は、フォーカスリング19を有することが好ましい。
フォーカスリング19は、ベース部3の周縁部に載置される平面視円環状の部材である。フォーカスリング19は、例えば、載置面に載置されるウエハと同等の電気伝導性を有する材料を形成材料としている。このようなフォーカスリング19を配置することにより、ウエハの周縁部においては、プラズマに対する電気的な環境をウエハと略一致させることができ、ウエハの中央部と周縁部とでプラズマ処理の差や偏りを生じにくくすることができる。
【0097】
静電チャック部2の下面側には、ヒータエレメントが設けられていてもよい。ヒータエレメントは、一例として、厚みが0.2mm以下、好ましくは0.1mm程度の一定の厚みを有する非磁性金属薄板、例えばチタン(Ti)薄板、タングステン(W)薄板、モリブデン(Mo)薄板等をフォトリソグラフィー法やレーザー加工により所望のヒータ形状、例えば帯状の導電薄板を蛇行させた形状の全体輪郭を円環状に加工することで得られる。
静電チャック装置1Aは、以上のような構成となっている。
【0098】
(静電チャック装置の製造方法)
次に、静電チャック装置1Aの製造方法の一例について説明する。以下の説明では、載置板11および支持板12の形成材料が酸化アルミニウム-炭化ケイ素(Al2O3-SiC)複合焼結体であることとする。
まず、Al2O3-SiC複合焼結体により板状の載置板11および支持板12を作製する。この場合、炭化ケイ素粉末および酸化アルミニウム粉末を含む混合粉末を所望の形状に成形し、その後、例えば1600℃~2000℃の温度、非酸化性雰囲気、好ましくは不活性雰囲気下にて所定時間、焼成することにより、載置板11および支持板12を得ることができる。
【0099】
得られた支持板12の一面に、導電性セラミックスなどの導電材料の分散液を塗布し、導電材料の塗膜を形成する。また、上記導電材料の塗膜を形成した領域以外に載置板11および支持板12と同一組成または主成分が同一の粉末材料を含む分散液を塗布し、塗膜を形成する。
【0100】
次いで、支持板12上の塗膜および絶縁材層の上に載置板11を重ね合わせ、高温、高圧下にてホットプレスして一体化する。このホットプレスにおける雰囲気は、真空、あるいはAr、He、N2等の不活性雰囲気が好ましい。また、圧力は5MPa~10MPaが好ましく、温度は1600℃~1850℃が好ましい。
【0101】
このホットプレスにより、塗膜は焼成されて内部電極13となる。同時に、支持板12および載置板11は、絶縁材層14を介して接合一体化される。
【0102】
その他、給電用端子10やガス穴などを、通常知られた方法で適宜加工して設け、静電チャック部2とする。
【0103】
一方、所望の凹部51を有する接合層5を用意する。一例としては、接合層5は、作製する接合層5の凹部51と相補的な複数の凸部が形成された樹脂シート(例えば、PETシート)に、接合層5の形成材料の前駆体である液状組成物を塗布し、硬化させることで形成することができる。得られる接合層5には、樹脂シートと接する面に、樹脂シートが有する凸部の形状が転写される。その結果、複数の凹部51を有する接合層5が形成される。
【0104】
接合層5の凹部51の形状、大きさ、配列は、上記樹脂シートに形成された凸部の形状、大きさ、配列を調整することで制御可能である。
【0105】
ベース部3の上面を、例えばアセトンを用いて脱脂、洗浄し、この面上の所定位置において、例えばシート状の第2接着剤層7と、接合層5とを順次重ね合わせる。その際、接合層5は第2面5bに複数の凹部51が存在するため、第2面5bの摩擦力が小さくなる。そのため、第2接着剤層7と接合層5とを重ね合わせる際の位置合わせ(位置の調整)が容易となり、作業性が向上し、スループットが向上する。
【0106】
次いで、接合層5の上に、例えばシート状の第1接着剤層6と静電チャック部2とを順次重ね合わせる。その際、接合層5は第1面5aに複数の凹部51が存在するため、第1面5aの摩擦力が小さくなる。そのため、第1接着剤層6と接合層5とを重ね合わせる際の位置合わせ(位置の調整)が容易となり、作業性が向上し、スループットが向上する。
【0107】
重ね合わせた後、プレス加工にて任意の圧力のもと、120℃で接着する。このときの圧力は選択した接着層に合わせて変更する。圧力としては例えば0.3MPa以上5MPa以下が挙げられる。
【0108】
以上により、静電チャック部2およびベース部3は、接合部4(第1接着剤層6、接合層5および第2接着剤層7)を介して接合一体化され、本実施形態の静電チャック装置1Aが得られる。
【0109】
以上のような静電チャック装置1Aによれば、均熱性が高い新規な静電チャック装置を提供することができる。
【0110】
なお、本実施形態においては、接合部4には第1接着剤層6および第2接着剤層7を含むこととしたが、これに限らない。本発明においては、第1接着剤層6と第2接着剤層7とのいずれか一方または両方がない構成も採用することができる。
【0111】
図5は、本実施形態の変形例に係る静電チャック装置1Bの概略断面図であり、
図1に対応する図である。図に示す静電チャック装置1Bは、接合層5のみが接合部4を構成している。
【0112】
例えば、接合層5がタック性(粘着性)を有する場合、第1接着剤層6および第2接着剤層7を用いなくても、接合層5により静電チャック部2とベース部3とを接合することができる。この場合、接合層5の凹部51内を充填する樹脂(接着剤)が存在しないため、接合層5と静電チャック部2との界面、接合層5とベース部3との界面には、それぞれ面内に一様に空気層Aが形成される。
【0113】
空気層Aが接合層5の面内に一様に形成されることにより、静電チャック装置1Bにおいては、熱伝導率の面内の偏りが生じにくく、面内の温度差を小さくすることができる。
【0114】
静電チャック装置1Bは、接合層5の第1面5aにおいて、接合層5に対向する部材である静電チャック部2と接合層5との接触面積が、静電チャック部2に対する空気層Aの投影面積よりも大きいことが好ましい。
【0115】
また、静電チャック装置1Bは、第2面5bにおいて、接合層5に対向する部材であるベース部3と接合層5との接触面積が、ベース部3に対する空気層Aの投影面積よりも大きいことが好ましい。
【0116】
接合層5と静電チャック部2との接触面積または接合層5とベース部3との接触面積と、空気層Aの投影面積との大小関係が上述のような関係であると、第1面5aまたは第2面5bにおける接着強度を十分に確保し、第1面5aまたは第2面5bにおいて剥離しにくくなる。
【0117】
接合層5の凸状部52の頂部の面積を広げると、接合層5と静電チャック部2との接触面積または接合層5とベース部3との接触面積が拡大する傾向にある。
【0118】
接合層5の形成材料として、静電チャック装置1Bの製造時の加工条件で熱変形しやすいものを選択すると、静電チャック装置1Bの製造時に接合層5が変形して凹部51がつぶれやすくなる。これにより、接合層5と静電チャック部2との接触面積または接合層5とベース部3との接触面積が拡大する傾向にある。
【0119】
このような構成の静電チャック装置1Bにおいても、均熱性が高い新規な静電チャック装置を提供することができる。
【0120】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例】
【0121】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0122】
以下の方法で、各実施例および比較例の静電チャック装置を作製した。以下の説明においては、上述の実施形態で用いた符号を示し、各構成を説明することがある。
【0123】
(実施例1)
平均粒子径0.06μmの炭化ケイ素粒子をプラズマCVD法により気相合成した。得られた炭化ケイ素粒子と、平均粒子径0.15μmの酸化アルミニウム粉末とを、炭化ケイ素粒子/酸化アルミニウム粉末が質量比で9/91となるように秤量し、均一に混合した。
【0124】
得られた混合粉末を、粉末成形機を用いて円板状に成形し、アルゴン雰囲気中、1800℃の温度で4時間、40MPaに加圧しながら焼成し、直径320mm、厚み5mmの円板状の複合焼結体を2枚作製した。
【0125】
得られた2枚の複合焼結体のうち、一方複合焼結体の表面を中心線平均粗さRaが0.3μmとなるように研磨して平坦面とし、載置板11とした。Raは、JISB0601に準拠した方法で測定した値を採用した。
【0126】
得られた2枚の複合焼結体のうち、他方の複合焼結体を厚み4mmに加工した。また機械加工にて、給電用端子10を挿入する貫通孔を形成し、支持板12とした。
【0127】
この支持板12の中心から半径145mm内の領域に、スクリーン印刷法により導電性セラミックスの分散液を塗布し、導電材料の塗膜を形成した。
【0128】
また、支持板12の中心から半径145mm~149mmの領域に、スクリーン印刷法により酸化アルミニウム粉末を含むペーストを塗布し、塗膜を形成した。
【0129】
支持板12において塗膜を形成した面と、載置板11の研磨されていない面とを対向させて重ね合わせ、1700℃に加熱しながら10MPaに加圧し、接合体を得た。
【0130】
得られた接合体を、外周径が298mm、絶縁材層14の幅が0.8mm、載置板11の厚みが0.5mmとなるように機械加工した。さらに、載置板11の表面を、中心線平均粗さRaが0.05μmとなるように研磨して、静電チャック部2を得た。
【0131】
次いで、静電チャック部2の支持板12側に、シート状接着剤(第1接着剤層6)を貼り付けた。シート状接着剤として、エポキシ樹脂を形成材料とする厚み5μmの熱硬化型接着剤を用いた。
【0132】
ベース部3の上面にシート状接着剤(第2接着剤層7)を貼り付け、シート状接着剤の表面にシリコーンシート(接合層5)を配置した。第2接着剤層7に対応するシート状接着剤として、第1接着剤層6と同じ接着剤を用いた。
【0133】
シリコーンシートとしては、算術平均高さSa=0.78μmの凹凸を両面に有したものを作製して用いた。シリコーンシートは、シリコーンゴムの前駆体を一対のPETシートで挟持した積層体を形成し、積層体を140℃に加熱して前駆体を硬化させて作成した。シリコーンシートの厚みは100μmとなるように調整した。用いたPETシートにおいて前駆体と接する面には、算術平均高さSa=0.78μmの凹凸が設けられていた。シリコーンシートの表面にPETシートの凹凸を転写することで、表面に凹凸を有するシリコーンシートを作製した。
【0134】
なお、本実施例において、シリコーンシートの算術平均高さSaは、非接触レーザー顕微鏡(OLS5000、オリンパス株式会社製)を用いて、シリコーンシートの表面を測定し、得られた値を用いた。
【0135】
シリコーンシート上に、シート状接着剤を接着した静電チャック部2の接着剤側を重ねて配置し、2MPaに加圧しながら120℃に加熱し、加圧加熱状態を60分間保持することで静電チャック部2とベース部3とを接着して、実施例1の静電チャック装置を作製した。
【0136】
(実施例2)
算術平均高さSa=0.11μmのシリコーンシート(接合層5)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の静電チャック装置を作製した。
【0137】
(比較例1)
凹凸の無い(算術平均高さSa:測定不能)シリコーンシート(接合層5)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の静電チャック装置を作製した。なお、算術平均高さSaの値が「測定不能」とは、上述の非接触レーザー顕微鏡を用いたシリコーンシートの表面の測定において、接合層5の表面凹凸が、非接触レーザー顕微鏡の検出限界である0.01μm未満であることを意味する。この場合、シリコーンシートの表面凹凸の測定においてノイズに相当する測定結果が得られるのみであり、測定上、凹凸の存在が確認できない。
【0138】
得られた各静電チャック装置について、以下の測定で評価した。
【0139】
(温度測定方法)
静電チャック装置の載置板11の上面に直径300mmのシリコンウエハを載置し、内部電極13に通電しながらシリコンウエハを静電吸着させた。このときベース部3の流路3Aに30℃の冷却水を循環させ、表面温度の管理目標値を70℃とした。シリコンウエハの面内の温度分布をサーモグラフィTVS-200EX(日本アビオニクス社製)を用いて測定した。
【0140】
(耐電圧測定方法)
静電チャック装置にシリコンウエハを載せない状態で、内部電極13に2500Vの電位を印加し、さらに外部のRF電力を印加することで静電チャック装置の吸着面にプラズマを発生させた。プラズマを発生させた状態で2時間保持した。この際、静電チャック装置の温度は、ベース部3の流路3Aに30℃の冷却水を循環させ、表面温度の管理目標値を70℃とした。
【0141】
プラズマを発生させる雰囲気の条件は、以下のようなものとした。
混合ガス:CF4とH2との1:1混合ガス
混合ガス供給量:流量30sccm、ガス圧5Pa
(「sccm」は、1気圧(1013hPa)、25℃における1分間当たりの流量(cc、cm3)を示す)
PF投入電力:5KW
【0142】
上記条件にてプラズマ雰囲気を2時間保持した。
【0143】
次いで、上記プラズマ雰囲気下で、内部電極13への印加電圧を3000Vとし、同条件で10分保持した。この状態で、静電チャック装置の載置面における放電の有無を確認した。
【0144】
次いで、内部電極13への印加電圧を3500Vとし、同条件で10分間保持した。この状態で静電チャック装置の載置面における放電の有無を確認した。
【0145】
以後同様に、内部電極13への印加電圧を500V間隔で上げ、各印加電圧において10分間保持して、載置面における放電の有無を確認した。載置面での放電が生じるまで試験を実施した。なお、耐電圧の値は、放電が生じない印加電圧のうち最大値(最大電圧値)とした。
【0146】
測定結果を表1に示す。
【0147】
【0148】
表に示すように、実施例1,2の静電チャック装置は、面内の温度差が±2.1℃、±1.9℃と小さく良好であった。また、耐電圧も十分に確保されている結果となった。
【0149】
対して比較例1では、面内の温度差が±5.8℃と大きい結果となった。また、耐電圧も低くなる結果となった。
【0150】
以上の結果より、本発明が有用であることが分かった。
【符号の説明】
【0151】
1A,1B…静電チャック装置、2…静電チャック部、3…ベース部、3A…流路、4…接合部、5…接合層、5a…第1面、5b…第2面、6…第1接着剤層、7…第2接着剤層、8…給電部、9…給電用電極、9a…碍子、10…給電用端子、11…載置板、12…支持板、13…内部電極、14…絶縁材層、16…貫通孔、19…フォーカスリング、51…凹部、52…凸状部、A…空気層