(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、およびそれを用いてなる粘着剤及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 133/00 20060101AFI20220726BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220726BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20220726BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220726BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J11/06
C09J175/04
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2018185951
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】三ツ谷 直也
(72)【発明者】
【氏名】松本 梨沙
【審査官】山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-122054(JP,A)
【文献】特開2017-058422(JP,A)
【文献】特開2004-217838(JP,A)
【文献】特開2017-145333(JP,A)
【文献】特開2012-227384(JP,A)
【文献】特開2012-097161(JP,A)
【文献】特開2012-097162(JP,A)
【文献】特開2012-246444(JP,A)
【文献】国際公開第2013/187216(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
G02B 5/30
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂(A)、カルボジイミド化合物(B)、及び脂肪族イソアネート系架橋剤及び脂環式イソシアネート系架橋剤から選ばれる少なくとも1つのイソシアネート系架橋剤(C)を含有し
、アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が100万~250万であることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
カルボジイミド化合物(B)の含有量がアクリル系樹脂(A)100重量部に対して0.1~30重量部であることを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
カルボジイミド化合物(B)がポリマー型カルボジイミド化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
カルボジイミド化合物(B)のカルボジイミド基当量が1000g/mol以下であることを特徴とする請求項1~3いずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
アクリル系樹脂(A)が、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位が1重量%以下であるアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1~4いずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の粘着剤組成物が架橋されてなることを特徴とする粘着剤。
【請求項7】
加水分解性を示すプラスチックフィルムに用いることを特徴とする請求項6記載の粘着剤。
【請求項8】
偏光板に用いることを特徴とする請求項6又は7に記載の粘着剤。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載の粘着剤を含む粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物に関し、更に詳しくは、高温高湿環境下においても、基材および/または被着体に用いられるプラスチックフィルムの加水分解を抑制し、更には粘着剤層の凹凸発生を抑制できる粘着剤を形成するための粘着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリエステル系樹脂やトリアセチルセルロース系樹脂、ポリエーテル系樹脂等のフィルムや板が粘着シートやテープの基材、被着体等の用途に使用されている。
【0003】
また、アクリル系樹脂を主成分としたアクリル系粘着剤が、養生シート用粘着剤、表面保護用粘着剤、半導体工程用粘着剤、光学部材貼り合わせ用粘着剤、タッチパネルセンサー用粘着剤等の様々な用途で使用されている。
【0004】
更には、上記プラスチックフィルムを基材や被着体としたアクリル系粘着剤を用いたテープや積層体が広く用いられている。
【0005】
例えば、トリアセチルセルロース(TAC)系フィルムやポリエステル系フィルムを保護フィルムとした偏光板にアクリル系樹脂からなる粘着剤が積層された粘着剤層付偏光板が液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等に使用されている。
【0006】
このような中、特許文献1には、ポリエステル系フィルムの加水分解を抑制し、基材密着性を向上させる目的で、カルボキシル基を多く含むアクリル系樹脂にカルボジイミド化合物を使用した粘着剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された粘着剤ではアクリル系樹脂のカルボキシル基量に対してカルボジイミド化合物が少ないため、粘着剤層とした際にカルボジイミド化合物が消費されてしまい、プラスチックフィルムからなる基材や被着体の加水分解を充分に抑制できず、高温高湿度条件下に曝されると加水分解によって劣化したり、TAC系フィルム等を用いた場合ではフィルム中の成分が析出し粘着剤層中で結晶化してしまうという問題があった。
また、加水分解を更に抑制しようとこの粘着剤においてカルボジイミド化合物の配合量を増やした場合、粘着剤層を高温高湿環境下に暴露すると、塗膜中に凹凸が発生してしまい外観を著しく損なうという問題もあった。
そこで、本発明ではこのような背景下において、高温高湿度環境下で使用した際にも、プラスチックフィルムからなる基材や被着体における加水分解に対して優れた加水分解抑制性能を有し結晶化を抑制し、更に粘着剤層に凹凸が発生しにくく、種々の用途に適用できる粘着剤、とりわけ加水分解を受けやすい基材や被着体に適用した場合であっても好適に用いることができる粘着剤、例えば偏光板用粘着剤として好適な粘着剤を得ることができる粘着剤組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
しかるに、本発明者等は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、アクリル系樹脂を含む粘着剤組成物において、カルボジイミド化合物と、脂肪族イソシアネート系架橋剤及び脂環式イソシアネート系架橋剤から選ばれる少なくとも1つのイソシアネート系架橋剤を含有させることにより、高温高湿環境下であっても加水分解抑制に優れ結晶化を抑制し、更に粘着剤層の凹凸発生を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、アクリル系樹脂(A)、カルボジイミド化合物(B)、及び脂肪族イソアネート系架橋剤及び脂環式イソシアネート系架橋剤から選ばれる少なくとも1つのイソシアネート系架橋剤(C)を含有してなる粘着剤組成物に関するものである。
【0011】
更には、本発明は、上記粘着剤組成物を用いてなる粘着剤及び粘着シートに関するものである。
【0012】
カルボジイミド化合物は、イソシアネート化合物を触媒によって脱炭酸を伴いながらカルボジイミド化することにより得られる。
アクリル系樹脂にカルボジイミド化合物とイソシアネート系架橋剤を使用した場合、カルボジイミド化合物中に残留するカルボジイミド化触媒がイソシアネート化合物をカルボジイミド化してしまい脱炭酸等の反応により粘着剤層に凹凸が発生するのではないかと考えられるところ、脂肪族系イソシアネートや脂環式イソシアネートを用いた場合においては、カルボジイミド化が起こらず粘着剤層に凹凸が発生しないものであることを見出した。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粘着剤組成物は、高温高湿度環境下で使用した際にも、とりわけ基材や被着体を構成するプラスチックフィルムにおける加水分解に対して優れた加水分解抑制性能を有し結晶化を抑制し、更には粘着剤層における凹凸発生を抑制でき、種々の用途に適用できる粘着剤、特に加水分解を受けやすいプラスチックフィルムの基材や被着体に適用した場合であっても好適に用いることができる粘着剤、例えば偏光板用粘着剤として好適な粘着剤を得ることができ、非常に有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。また、アクリル系樹脂とは、少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマーを含む重合成分を重合して得られる樹脂である。
また、本発明でいう粘着剤とは25℃(室温)でタックを有し、手で押しつける程度の軽い圧力で被着体と接着するものである。
【0015】
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)、カルボジイミド化合物(B)、及び脂肪族イソアネート系架橋剤及び脂環式イソシアネート系架橋剤から選ばれる少なくとも1つのイソシアネート系架橋剤(C)を含有してなるものである。
【0016】
<アクリル系樹脂(A)>
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート系モノマーを(さらにはその他の共重合性モノマー)を重合成分とするアクリル系樹脂をあげることができる。
【0017】
上記アルキル(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、アルキル基の炭素数が通常1~24、好ましくは1~18、特に好ましくは1~12、更に好ましくは1~8の(メタ)アクリレート系モノマーが挙げられ、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0018】
これらの中でも、汎用性、粘着物性の点でメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0019】
アルキル(メタ)アクリレート系モノマーの含有割合は、重合成分全体に対して、40重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは40~99.9重量%、更に好ましくは50~99.5重量%、殊に好ましくは60~99重量%である。アルキル(メタ)アクリレート系モノマーの含有割合が少なすぎると粘着物性が低下する傾向にある。なお、多すぎると後述する架橋剤との反応点が少なくなり耐久性が低下する傾向にある。
【0020】
重合成分は、さらに、その他の重合成分(共重合性モノマー)を含んでいてもよい。このような重合成分としては、特に限定されないが、例えば、官能基含有モノマー(例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、窒素含有モノマー等)、アルコキシ基含有モノマー、芳香族モノマー、脂環構造含有モノマーやその他のエチレン性不飽和基含有モノマーが挙げられる。
本発明においては、アクリル系樹脂(A)が共重合性モノマーとして官能基含有モノマーを用いたものであることが、アクリル系樹脂(A)の架橋点となり、凝集力を向上し、基材や被着体との密着性を上昇させる点、耐湿熱白化性(湿熱白化:恒温恒湿環境下に曝した後に粘着剤が白化する現象)の点で好ましく、特には耐湿熱白化性の点から水酸基含有モノマーを用いることが好ましい。
【0021】
上記水酸基含有モノマーとしては、例えば、
ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー[例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー]、
ラクトン変性モノマー[例えば、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー(例えば、カプロラクトン変性(メタ)アクリル系モノマー)]、
オキシアルキレン変性モノマー[例えば、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性(メタ)アクリル系モノマー(例えば、オキシアルキレン変性(メタ)アクリレートモノマー)]、
2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等のモノマー(水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー)が挙げられる。
なお、モノマー(水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー)において、水酸基は第1~3級のいずれであってもよい。
1級水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性(メタ)アクリレートモノマー、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の1級水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー等が挙げられる。
2級水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー等が挙げられる。
3級水酸基含有モノマーとしては、例えば、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記水酸基含有モノマーの中でも、架橋剤、特には後述の窒素含有架橋剤との反応性に優れる点、および耐湿熱白化性が向上する点で、1級水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、更に好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを使用することが、ジ(メタ)アクリレート等の不純物が少なく、製造しやすい点で好ましい。
また、酸の不純分が少なく基材の加水分解を抑制する点で4-ヒドロキシブチルアクリレートが最も好ましい。
【0023】
なお、本発明で使用する水酸基含有モノマーとしては、不純物であるジ(メタ)アクリレートの含有割合が、0.5%以下のものを用いることも好ましく、特には0.2%以下、更には0.1%以下のものを使用することが好ましい。
【0024】
上記水酸基含有モノマーの含有割合は、重合成分全体に対して(又は全重合成分中に、以下同じ)、例えば、0.1~50重量%であることが好ましく、特に好ましくは1~30重量%であり、更に好ましくは5~25重量%である。
かかる含有割合が少なすぎると、耐湿熱白化性が低下する傾向があり、多すぎると粘着剤とした際の保存安定性が低下したり、リワーク性(リワーク性:粘着シートを基材から剥離する際に糊残りなく、また被着体を傷めない事)が低下したりする傾向にある。
【0025】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のダイマー酸等が挙げられ、中でも耐湿熱白化性の点、重合時の安定性の点で(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0026】
カルボキシル基含有モノマーの含有割合は、重合成分全体に対して、1重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.2重量%以下であり、更に好ましくは0.1重量%以下である。
かかる含有割合が多すぎると、基材の加水分解を促進したり、カルボジイミド化合物(B)と副反応を起こし耐久性が低下したりする傾向がある。
【0027】
上記窒素含有モノマーとしては、アミノ基含有モノマーやアミド基含有モノマー等が挙げられる。
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート等の1級アミノ基含有(メタ)アクリレート系モノマー;t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の2級アミノ基含有(メタ)アクリレート系モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の3級アミノ基含有(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。
【0028】
また、アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド;メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;等が挙げられる。
【0029】
その他の窒素含有モノマーとしては、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール等の環状構造を有する窒素含有モノマーが挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記窒素含有モノマーの中でも、基材や被着体の加水分解を抑制できる点でジアルキルアクリルアミドが好ましく、重合性やアミド基濃度が高くより加水分解を抑制できる点でジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミドが好ましい。
【0031】
窒素含有モノマーの含有割合は、重合成分全体に対して10重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは8重量%以下であり、更に好ましくは5量%以下である。かかる含有割合が多すぎると、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度が高くなり、リワーク性が低下したりジッピングが起こりやすくなったりする傾向がある。
【0032】
上記アルコキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
上記脂環構造含有モノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2-アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記芳香族モノマーとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート等の芳香環を一つ有する(メタ)アクリレート;フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート等の芳香環を二つ有する(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明において、アクリル系樹脂(A)の複屈折を正側に調整する場合は、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)エチルアクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0036】
上記アクリル系樹脂(A)の重合方法としては、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等の従来公知の方法を用いることができ、例えば、有機溶媒中に、適宜選択してなる重合成分、重合開始剤を混合あるいは滴下し所定の重合条件にて重合する方法等があり、なかでも、溶液ラジカル重合、塊状重合が好ましく、特に好ましくは安定にアクリル系樹脂(A)が得られる点で溶液ラジカル重合である。
【0037】
上記重合反応に用いられる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等があげられる。
【0038】
これらの有機溶媒の中でも、重合反応のしやすさや連鎖移動の効果や粘着剤組成物塗工時の乾燥のしやすさ、安全上から、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、トルエン、メチルイソブチルケトンが好ましく、特に好ましくは、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトンである。
【0039】
また、かかるラジカル重合に用いられる重合開始剤としては、例えば、通常のラジカル重合開始剤である2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(メチルプロピオン酸)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロリルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられ、使用するモノマーに合わせて適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0040】
かくして本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)が得られる。
【0041】
上記アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、20万~250万であることが好ましく、特に好ましくは40万~200万、更に好ましくは60万~180万であり、殊に好ましくは100万~160万である。かかる重量平均分子量が小さすぎると加水分解を受けたプラスチック基材中の成分の移行が速くなり、結晶が析出しやすくなる傾向があり、大きすぎると溶液粘度が高くなりすぎて塗工する際に溶剤が大量に必要となり乾燥時のエネルギーが大きくなる傾向がある。
【0042】
また、アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、15以下であることが好ましく、特に好ましくは10以下、更に好ましくは6以下である。かかる分散度が高すぎると凝集力が低下し耐久性が低下したりリワーク性が低下したりする傾向がある。なお、分散度の下限は通常1である。
【0043】
なお、上記のアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法で測定することができる。また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。
【0044】
上記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、-100~25℃であることが好ましく、特に好ましくは-60~0℃、更に好ましくは-55~-10℃である。かかるガラス転移温度が高すぎるとタックが低下して貼り合わせし難くなったり、離型フィルムや被着体からリワークする際にジッピングが発生したりする傾向があり、低すぎると耐熱性が低下する傾向がある。
【0045】
なお、ガラス転移温度は下記のFoxの式より算出されるものである。
【0046】
【数1】
Tg:共重合体のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wa:モノマーAの重量分率
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wb:モノマーBの重量分率
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wn:モノマーNの重量分率
(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
【0047】
即ち、アクリル系樹脂を構成するそれぞれのモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度および重量分率をFoxの式に当てはめて算出した値である。
なお、アクリル系樹脂を構成するモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものであり、JIS K7121-1987や、JIS K 6240に準拠した方法で測定することができる。
【0048】
<カルボジイミド化合物(B)>
カルボジイミド化合物(B)は、カルボジイミド基[-N=C=N-]を1つ以上有する化合物であればよく、例えば、カルボジイミド基を1つ有する単官能カルボジイミド化合物(モノカルボジイミド化合物、モノマー型カルボジイミド化合物という)、カルボジイミド基を2つ以上有する多官能カルボジイミド化合物(ポリカルボジイミド化合物という)等が挙げられる。ポリカルボジイミド化合物は、カルボジイミド基の繰り返し構造を有するポリマー型カルボジイミド化合物等であってもよい。
これらの中でも、粘着剤としたときにブリードしたりせず耐久性が低下しにくい傾向がある点でポリマー型カルボジイミド化合物が好ましい。
【0049】
カルボジイミド化合物(B)(カルボジイミド化合物におけるカルボジイミド基以外の部分の骨格又は構造)は、特に限定されず、例えば、脂肪族構造(脂肪族骨格、例えば、アルキレン骨格など)、脂環族構造(脂環族骨格、例えば、シクロアルキレン骨格)、芳香族構造(芳香族骨格、例えば、アリーレン骨格)などのいずれの骨格を有していてもよく、これらを組み合わせて有していてもよい(例えば、アレーンジアルキレン骨格、シクロアルカンジアルキレン骨格等)。
【0050】
ポリカルボジイミド化合物は、前記のように、2つ以上のカルボジイミド基を有するものであり、代表的にはカルボジイミド基の繰り返し構造を有するポリマー型カルボジイミド化合物が挙げられる。
【0051】
このようなカルボジイミド化合物は、例えば、下記式で表される構造を有していてもよい。
-(N=C=N-R)n-
(式中、Rはカルボジイミド構造の残基、nは2以上の整数を示す。)
Rとしては、例えば、脂肪族構造(脂肪族骨格、例えば、アルキレン骨格など)、脂環族構造(脂環族骨格、例えば、シクロアルキレン骨格)、芳香族構造(芳香族骨格、例えば、アリーレン骨格)、これらを組み合わせて有する構造(例えば、アレーンジアルキレン骨格、シクロアルカンジアルキレン骨格等)などが挙げられる。
なお、Rは、nの数によって同一であってもよく、異なっていてもよい。すなわち、上記式で表される構造を有するカルボジイミド化合物は、同一の又は異なるRを有していてもよい。
また、上記式中、nは2以上であればよく、中でも2~30が好ましく、より好ましくは3~20、より好ましくは5~15である。
【0052】
カルボジイミド化合物(B)は、オキシアルキレン構造(オキシアルキレン骨格)を有していてもよい。
オキシアルキレン構造としては、例えば、メトキシ基やエトキシ基等のアルコキシアルキル基(アルコキシアルキル構造)、ポリオキシエチレン構造、ポリオキシプロピレン構造、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン構造などのポリオキシアルキレン(ポリオキシアルキレンオキサイド)構造が挙げられる。
カルボジイミド化合物(B)は、これらのオキシアルキレン構造を単独で又は2種以上を組み合わせて有していてもよい。
これらの中でも高温高湿度に暴露した時でも、白化が起こりにくい点でポリオキシアルキレン構造(特にポリオキシエチレン構造)が好ましい。
ポリオキシアルキレン構造の繰り返し数としては、例えば、2~50が好ましく、5~20が特に好ましい。
上記範囲であれば、アクリル系樹脂(A)との相溶性が良好となったり、高温高湿度条件下に暴露した際の粘着剤層の白化を抑制できる傾向がある。
【0053】
なお、オキシアルキレン構造を有するカルボジイミド化合物は、オキシアルキレン構造を有する限り、その位置(結合形態)は、特に限定されない。例えば、オキシアルキレン構造は、カルボジイミド基以外の部分の骨格又は構造が有していてもよく、カルボジイミド化合物の末端に位置してもよく、ポリカルボジイミド化合物の主鎖に位置してもよく、これらを組み合わせた態様で存在してもよい。
【0054】
主鎖に位置する場合、オキシアルキレン構造は、繰り返し単位に隣接(結合)してもよく、カルボジイミド基とともに繰り返し単位を構成してもよい。
【0055】
オキシアルキレン構造を有するカルボジイミド化合物は、代表的には、少なくとも繰り返し単位に、オキシアルキレン構造が隣接して存在してもよい。このようなカルボジイミド化合物は、例えば、下記式で表される構造単位を有していてもよい。
-N=C=N-R-X-
(式中、Xはオキシアルキレン構造を示し、Rは前記と同じ。)
【0056】
特に、オキシアルキレン構造を有するポリカルボジイミド化合物は、例えば、下記式で表される構造単位を有していてもよい。
-(N=C=N-R)n-X-
(式中、n、R及びXは前記と同じ。)
【0057】
具体的なカルボジイミド化合物としては、例えば、脂肪族モノカルボジイミド化合物{例えば、ジアルキルカルボジイミド[例えば、1,3-ジメチルカルボジイミド、1,3-ジイソプロピルカルボジイミド等のジC1-20アルキルカルボジイミド)等]等}、脂環族モノカルボジイミド化合物{例えば、ジシクロアルキルカルボジイミド[例えば、1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド等のジC4-10シクロアルキルカルボジイミド等]等}、芳香族モノカルボジイミド化合物{例えば、ジアリールカルボジイミド[例えば、ジフェニルカルボジイミド、ジトリルカルボジイミド、ビス(2,6-ジメチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6-ジエチルフェニル)カルボジイミド、N-フェニル-N’-トリルカルボジイミド等のジC6-15アリールカルボジイミド]、ベンジルイソプロピルカルボジイミド等}、これらにオキシアルキレン構造を隣接して有する化合物等のモノカルボジイミド化合物;脂肪族ポリカルボジイミド化合物{例えば、ポリアルキレンカルボジイミド[例えば、ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリ(3-メチルヘキサメチレンカルボジイミド)などのポリ(C2-20アルキレンカルボジイミド)等]等}、脂環族ポリカルボジイミド化合物{例えば、ポリジシクロアルキルアルカンカルボジイミド[例えば、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等のポリ(ジC4-10シクロアルキル-C1-10アルカンカルボジイミド)など]など}、芳香族ポリカルボジイミド化合物{例えば、ポリアリーレンカルボジイミド[例えば、ポリフェニレンカルボジイミド、ポリトリレンカルボジイミド、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等のポリ(C6-15アリーレンカルボジイミド)等]、ポリジアリールアルカンカルボジイミド[例えば、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)等のポリ(ジC6-15アリール-C1-10アルカンカルボジイミド)等]等}、これらにオキシアルキレン構造を隣接して有する化合物等のポリカルボジイミド化合物(例えば、ポリマー型ポリカルボジイミド化合物等)等が挙げられる。
【0058】
カルボジイミド化合物(B)は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0059】
これらの中でも、粘着剤とした時にブリードしたりせず耐久性が低下しにくい傾向がある点でポリマー型カルボジイミド化合物が好ましい。なお、ポリマー型カルボジイミド化合物において、カルボジイミド構造の繰り返し数は、前記式におけるnと同様の範囲であってもよく、例えば、2~30が好ましく、より好ましくは3~20、より好ましくは5~15である。
繰り返し数が少なすぎると、カルボジイミド化合物が高温や低温で析出しやすい傾向にあり、多すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下する傾向にある。
【0060】
カルボジイミド化合物(B)のカルボジイミド基当量は、1000g/mol以下であることが好ましく、特には800g/mol以下、更には500g/mol以下であることが好ましい。カルボジイミド基当量が高すぎるとアクリル系樹脂(A)に対して配合量が増えるため、可塑効果が大きくなり耐久性が低下する傾向にある。なお、カルボジイミド基当量の下限は、通常70g/molである。
【0061】
カルボジイミド化合物(B)の分子量は特に限定されないが、例えば、ポリマー型カルボジイミド化合物(オキシアルキレン構造を有するポリマー型カルボジイミド化合物等)の重量平均分子量は、300~100,000であることが好ましく、特には500~50,000であることが好ましく、更に10,00~20,000であることが好ましい。かかる重量平均分子量が低すぎると基材から発生した酸と反応した際に結晶構造を取りやすく結晶が析出する傾向があり、高すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下する傾向にある。
【0062】
カルボジイミド化合物(B)(例えば、ポリマー型カルボジイミド化合物)は疎水性であることが好ましく、水への溶解性が10重量%以下が好ましく、特には5重量%以下、更には1重量%以下であることが好ましい。水への溶解性が高すぎると、湿熱環境下で徐々に粘着剤層から拡散してしまい加水分解に伴う結晶析出抑制効果が低下する傾向にある。
なお、本発明において、溶解とは濁りがなく分離していない状態のものをいう。なお、溶解性の下限値は、通常水への溶解性が0.00001重量%である。
【0063】
本発明で用いられるポリマー型カルボジイミド化合物としては、例えば、市販品の日清紡ケミカル社製「V-02B」、「V-04K」、「V-09GB」等が挙げられる。
【0064】
カルボジイミド化合物(B)は、イソシアネート基(残存イソシアネート基)が10%以下であることが好ましく、特には5%以下、更には1%以下、殊には0.2%以下であることが好ましい。特に、本発明では、イソシアネート基を含まない(実質的に含まない)カルボジイミド化合物を好適に使用できる。
かかるイソシアネート基が多すぎると、粘着剤層の物性が安定しにくい傾向にある。
【0065】
カルボジイミド化合物(B)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、通常、0.1~30重量部であり、好ましくは0.5~25重量部であり、特に好ましくは1~20重量部、更に好ましくは2~15重量部、殊に好ましくは3~15重量部である。少なすぎると加水分解抑制性能が低下する傾向にあり、多すぎると粘着剤層として使用した際に被着体から剥がれやすくなる傾向にある。
【0066】
特に、カルボジイミド化合物(B)のカルボジイミド基量(mmol)がアクリル系樹脂(A)のカルボキシル基量(mmol)以上であることが好ましい。言い換えれば、アクリル系樹脂(A)のカルボキシル基量をXmmol、カルボジイミド化合物(B)のカルボジイミド基量をYmmolとした時に、Y-X(mmol)が0以上(Y-X≧0)であることが好ましい。
Y-Xの値としては、0.05~1000mmolが特に好ましく、0.10~100mmolが更に好ましく、0.15~70mmolが好ましく、0.20~50mmolが更に好ましい。
カルボジイミド基含有量がアクリル系樹脂(A)のカルボキシル基含有量に対して少なすぎると常温で徐々に反応が進行してしまったり、高温高湿度条件下で基材の加水分解より先に、カルボジイミド基が全て反応してしまい加水分解抑制効果が低下する傾向にある。
【0067】
<イソシアネート系架橋剤(C)>
イソシアネート系架橋剤(C)は、脂肪族イソアネート系架橋剤及び脂環式イソシアネート系架橋剤から選ばれる少なくとも1つである。
脂肪族イソシアネート系架橋剤としては、例えば、アルキレンポリイソシアネート{例えば、C1-20アルキレンポリイソシアネート(例えば、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のC1-20アルキレンジイソシアネート等)等};及びこれらのアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。
脂環式(脂環族)イソシアネート系架橋剤としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロアルカンジイソシアネート(例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ジイソシアナトメチルシクロヘキサン等のC4-20シクロアルカンジイソシアネート等)、ジシクロアルキルアルカンジイソシアネート(例えば、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4’-ジイソシアネート等のジC4-20シクロアルキル―C1-10アルカンジイソシアネート等)、キシリレンジイソシアネートの水素添加物、トリレンジイソシアネートの水素添加物(例えば、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等)、架橋環式ジイソシアネート(例えば、ノルボルナンジイソシアネート等);及びこれらのアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。
【0068】
これらのイソシアネート系架橋剤の中でも、高温高湿度環境下に曝された際に粘着剤層に凹凸が発生しにくい等の点で、脂肪族イソシアネート系架橋剤{例えば、C1-20アルキレンジイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等)、そのアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等}が好ましく、脂肪族イソシアネート(例えば、C1-20アルキレンジイソシアネート)のアダクト体、ビュレット体、ヌレート体(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等)が特に好ましい。
【0069】
イソシアネート系架橋剤(C)の含有割合としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01~15重量部が好ましく、0.05~10重量部がより好ましく、0.1~5重量部が特に好ましい。
上記範囲であれば粘着剤層が十分架橋し粘着物性に優れ、更には架橋剤がアクリル系樹脂と優先的に反応するため粘着剤層の凹凸発生抑制性能がより良好となる傾向にある。
【0070】
上記イソシアネート系架橋剤(C)は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
本発明では、上記イソシアネート系架橋剤(C)以外の他の架橋剤を含んでいてもよい。
他の架橋剤としては、例えば、上記イソシアネート系架橋剤(C)以外のイソシアネート系架橋剤(他のイソシアネート系架橋剤)、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられるが、これらの中でも基材との接着性を向上させる点やアクリル系樹脂(A)との反応性に優れる点で、他のイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が好ましい。
【0072】
上記他のイソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系架橋剤、1,3-キシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系架橋剤、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート等のジフェニルメタン系架橋剤、1,5-ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンジイソシアネート系架橋剤等の芳香族イソシアネート系架橋剤;及び上記イソシアネート系化合物のアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。
【0073】
これら他のイソシアネート系架橋剤のなかでも、トリレンジイソシアネート系架橋剤がポットライフと耐久性の点で好ましく、キシリレンジイソシアネート系架橋剤またはイソシアヌレート骨格含有イソシアネート系架橋剤がエージング時間短縮の点で好ましい。
【0074】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0075】
上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0076】
上記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0077】
上記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0078】
上記アミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
【0079】
上記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物等が挙げられる。
【0080】
上記他の架橋剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
上記他の架橋剤の含有割合は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、例えば、0.01~20重量部、0.05~15重量部、0.1~10重量部などであってよい。
【0082】
<イオン性化合物(D)>
本発明の粘着剤組成物においては、帯電防止性能の点でイオン性化合物(D)を含有することも好ましい。
【0083】
本発明において、イオン性化合物(D)とはカチオンとアニオンからなる塩である。
上記カチオンとしては、無機カチオン及び有機カチオンから選ばれるカチオンであればよい。
【0084】
無機カチオンとしては、例えば、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン等の非金属無機カチオンや、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、カリウムカチオン等の金属無機カチオンが挙げられる。
【0085】
有機カチオンとしては、例えば、4級アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン等の窒素原子を有するカチオン等が挙げられる。
【0086】
これらの中でも、帯電防止性能に優れる点、耐湿熱白化性に優れる点では金属カチオン、特にはアルカリ金属カチオンが好ましく、腐食防止に優れる点、リワーク性に優れる点、粘着力のばらつきが小さい点で、有機カチオン等の非金属カチオンが好ましく、なかでも、4級アンモニウムカチオン、特には非環状4級アンモニウム系カチオン、イミダゾリウム系カチオン、ピリジニウム系カチオン、ピペリジニウム系カチオン、ピリミジニウム系カチオン、ピラゾリウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン等の窒素原子含有カチオン、更には4級アンモニウムカチオンの窒素原子含有カチオンが好ましい。
【0087】
上記アルカリ金属カチオンとしては、リチウムカチオン、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン等が挙げられ、これらの中でも、粘着剤とした時の耐久性や帯電防止性能、耐湿熱白化性に優れる点でリチウムカチオンが好ましい。
【0088】
4級アンモニウム系カチオンとして、具体的には、例えば、
テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラペンチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、テトラヘプチルアンモニウムカチオン等のアルキル基のアルキル鎖長が全て等しいテトラアルキルアンモニウムカチオン;
トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルメチルアンモニウムカチオン、トリメチルプロピルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-プロピルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ブチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ノニルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N,N-ジプロピルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-プロピル-N-ブチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-ブチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-ブチル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-ペンチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N,N-ジヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N-メチル-N-エチルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N-ブチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N,N-ジヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジブチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジブチル-N-メチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、N-メチル-N-エチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムカチオン等のアルキル鎖長が異なるアルキル基を有するテトラアルキルアンモニウムカチオン;
その他、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、ベンチルトリブチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムカチオン等の芳香環を有する置換基やエーテル結合を有する置換基を持つアンモニウムカチオンが挙げられる。
【0089】
イミダゾリウム系カチオンとして、具体的には、例えば、
1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-へキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-テトラデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-へキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン等が挙げられる。
【0090】
ピリジニウム系カチオンとしては、具体的には、例えば、
1-オクチル-2-メチルピリジニウムカチオン、1-オクチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-オクチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-オクチルピリジニウムカチオン、2-エチルヘキシルピリジニウムカチオン、1-エチルピリジニウムカチオン、1-ブチルピリジニウムカチオン、1-へキシルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-へキシル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3,4-ジメチルピリジニウムカチオン、1,1-ジメチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-メチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン等が挙げられる。
【0091】
ピペリジニウム系カチオンとしては、具体的には、例えば、
1-メチル-1-エチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1-ブチル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1-オクル-1-オクチルピペリジニウムカチオン、1-ブチル-1-オクチルピペリジニウムカチオン等が挙げられる。
【0092】
ピリミジニウム系カチオンとしては、具体的には、例えば、
1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,3-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3-ジメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン等が挙げられる。
【0093】
ピラゾリウム系カチオンとしては、具体的には、例えば、
1-メチルピラゾリウムカチオン、3-メチルピラゾリウムカチオン、1-エチル-2-メチルピラゾリニウムカチオン等が挙げられる。
【0094】
ピロリジニウム系カチオンとしては、具体的には、例えば、
1-ジメチルピロリジニウム、1-メチル-1-エチルピロリジニウム、1-メチル-1-プロピルピロリジニウム、1-メチル-1-ブチルピロリジニウム、1-メチル-1-ペンチルピロリジニウム、1-メチル-1-ヘキシルピロリジニウム、1-メチル-1-へプチルピロリジニウム、1-エチル-1-プロピルピロリジニウム、1-エチル-1-ブチルピロリジニウム、1-エチル-1-ペンチルピロリジニウム、1-エチル-1-へキシルピロリジニウム、1-エチル-1-へプチルピロリジニウム、1,1-ジプロピルピロリジニウム、1-プロピル-1-ブチルピロリジニウム、1,1-ジブチルピロリジニウム等が挙げられる。
【0095】
また、窒素含有カチオンとして、その他1-エチル-2-フェニルインドールカチオン、1,2-ジメチルインドールカチオン、1-エチルカルバゾールカチオン、4-(2-エトキシエチル)-4-メチルモルホリニウムカチオン等が挙げられる。
【0096】
上記の窒素含有カチオンのなかでも、後述のアクリル系樹脂(A)との相溶性に優れ、耐久性が高い点で、少なくとも一つのアルキル基で置換された窒素原子を有する窒素含有カチオンが特に好ましい。
【0097】
上記のなかでも、帯電防止性能と耐加水分解性のバランスに優れる点から、イミダゾリウム系カチオン、ピリジニウムカチオン、アンモニウム系カチオンであることが好ましく、特にはアルキルアンモニウムカチオンが好ましく、更には4つの置換基がそれぞれアルキル基で置換されているテトラアルキルアンモニウムカチオンであることが好ましく、殊にはイオン性化合物の結晶性が低く、アクリル系樹脂(A)との相溶性に優れている点、低温時に粘着剤層から析出しにくい点で、アルキル鎖長が異なるアルキル基を有するテトラアルキルアンモニウムカチオンが好ましい。
【0098】
上記テトラアルキルアンモニウムカチオンの中でも、総炭素数が4~48のテトラアルキルアンモニウムカチオンが好ましく、特には総炭素数が8~32であるテトラアルキルアンモニウムカチオンが好ましく、更には炭素数が10~16であるテトラアルキルアンモニウムカチオンが好ましい。かかる総炭素数が多すぎても、少なすぎてもアクリル系樹脂との相溶性が低下する傾向がある。
【0099】
上記アニオンとしては、例えば、
テトラフルオロボレートアニオン〔BF4
-〕、
ヘキサフルオロホスフェートアニオン〔PF6
-〕、
ヘキサフルオロアーセネートアニオン〔AsF6
-〕、
ヘキサフルオロアンチモネートアニオン〔SbF6
-〕、
ヘキサフルオロニオベートアニオン〔NbF6
-〕、
ヘキサフルオロタンタレートアニオン〔TaF6
-〕、
等のフッ素含有無機アニオン;
N,N-ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン〔(SO2F)2N-〕
N,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CF3SO2)2N-〕、N,N-ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン〔(C2F5SO2)2N-〕、等のフッ素含有イミドアニオン
トリフルオロアセテートアニオン〔CF3COO-〕、
トリフルオロメタンスルホネートアニオン〔CF3SO3
-〕
パーフルオロブタンスルホネートアニオン〔C4F9SO3
-〕、
パーフルオロブタノエートアニオン〔C3F7COO-〕、
トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン〔(CF3SO2)3C-〕、
等が挙げられる。
【0100】
なかでも、帯電防止性能に優れる点、粘着剤の変質をより抑制できる点、融点が低くなりやすくハンドリングに優れる点で、フッ素含有イミドアニオンが好ましく、特に好ましくはN,N-ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドであり、具体的には、N,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドが好ましい。
【0101】
本発明に用いられるイオン性化合物(D)は、上記カチオン成分とアニオン成分の組合せから適宜選択することができるが、なかでも、帯電防止性能と基材の加水分解抑制効果のバランスに優れる点から、4級アンモニウムカチオンとフッ素含有イミドアニオンの組合せが好ましい。具体的には、例えば、トリブチルメチルアンモニウムN,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリオクチルメチルアンモニウムN,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0102】
さらに、本発明で用いられるイオン性化合物(D)の融点は、120℃以下であることが好ましく、特に好ましくは0~100℃、特に好ましくは10~80℃、更に好ましくは15~50℃である。かかる融点が高すぎると、低温でイオン性化合物が析出しやすい傾向がある。なお、融点が低すぎると、粘着剤層中で移動しやすく基材の加水分解を促進したり偏光板用に使用した際に湿熱環境下での偏光度の低下を起こしやすくなったりする傾向がある。
【0103】
イオン性化合物(D)の融点は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定され、各社のカタログ等に記載されている。
【0104】
イオン性化合物(D)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.5~30重量部であることが好ましく、特に好ましくは1~15重量部、更に好ましくは2~10重量部である。イオン性化合物(D)の含有量が少なすぎると、充分な帯電防止性能が得られない傾向があり、多すぎるとプラスチック基材や被着体の加水分解が起こりやすくなる傾向がある。
【0105】
<シランカップリング剤(E)>
本発明の粘着剤組成物には、金属やガラス等の被着体に使用した際に湿熱環境下での粘着力の低下を抑制できる点でシランカップリング剤(E)を含有することも好ましい。
【0106】
シランカップリング剤(E)は、構造中に反応性官能基と、ケイ素原子と結合したアルコキシ基をそれぞれ1つ以上含有する有機ケイ素化合物である。
上記反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イソシアネート基が挙げられ、これらの中でも、耐久性とリワーク性のバランスの点からメルカプト基、エポキシ基が好ましい。
【0107】
上記ケイ素原子と結合したアルコキシ基としては、耐久性と保存安定性の点から炭素数1~8のアルコキシ基を含有することが好ましく、特に好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。
【0108】
シランカップリング剤(E)のケイ素原子と結合したアルコキシ基の含有量は、5~80重量%であることが好ましく、特に好ましくは7~50重量%、更に好ましくは8~30重量%である。かかる含有量が少なすぎるとガラスと粘着剤との密着性が低下し、耐久性が低下する傾向があり、多すぎるとリワーク性が低下する傾向がある。
【0109】
また、シランカップリング剤(E)の反応性官能基当量は、50~1000g/molであることが好ましく、特に好ましくは100~850g/mol、更に好ましくは200~650g/molである。かかる反応性官能基当量が小さすぎるとリワーク性が低下する傾向にあり、大きすぎると耐湿熱条件下での耐久性が低下する傾向がある。
【0110】
なお、シランカップリング剤(E)は、反応性官能基及びケイ素原子と結合したアルコキシ基以外の置換基、例えば、アルキル基、フェニル基等を有していてもよい。
【0111】
シランカップリング剤(E)(オリゴマー型又はポリマー型シランカップリング剤等)の重量平均分子量は200以上であることが好ましく、特に好ましくは500~20,000、更に好ましくは2,000~15,000である。かかる重量平均分子量が小さすぎると、長期リワーク性が低下する傾向がある。なお、大きすぎると相溶性が低下してブリードしやすく、耐久性が低下する傾向がある。
【0112】
上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、下記の方法により測定したものである。
装置:ゲル浸透クロマトグラフィー
検出器:示差屈折率検出器RI(東ソー社製 RI-8020型、感度32)
カラム:東ソー社製 TSKguardcolumn HHR-H(1本)(φ6mm×4cm)、(TSKgelGMHHR-N(2本)(φ7.8mm×30cm)、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
カラム温度:23℃流速:1.0mL/min
【0113】
シランカップリング剤(E)としては、例えば、
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のシラン化合物であるモノマー型のエポキシ基含有シランカップリング剤や、上記シラン化合物の一部が加水分解縮重合したり、上記シラン化合物とメチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有シラン化合物が共縮合したシラン化合物であるオリゴマー型エポキシ基含有シランカップリング剤;
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物であるモノマー型のメルカプト基含有シランカップリング剤や、上記シラン化合物の一部が加水分解縮重合している、上記シラン化合物とメチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有シラン化合物が共縮合したシラン化合物であるオリゴマー型メルカプト基含有シランカップリング剤;
3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;
3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;などが挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0114】
これらのなかでも、エポキシ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤が好ましく用いられ、エポキシ基含有シランカップリング剤とメルカプト基含有シランカップリング剤を併用することも、湿熱耐久性の向上と粘着力が上がり過ぎない点で好ましい。
【0115】
また、シランカップリング剤(E)は、モノマー型のシランカップリング剤でも、一部が加水分解し重縮合したオリゴマー(ないしポリマー)型シランカップリング剤でもよいが、耐久性やリワーク性に優れる点や、粘着剤の塗工後の乾燥時に揮発しにくい点で、オリゴマー型シランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0116】
本発明で用いられるシランカップリング剤(E)としては、具体的には、市販品のいずれも信越化学工業株式会社製の、
「X-41-1059A」(重量平均分子量:2,270、含有官能基;エポキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;メトキシ基及びエトキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基量;42重量%、官能基当量;350g/mol)、
「X-41-1805」(重量平均分子量:3,450、含有官能基;メルカプト基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;メトキシ基及びエトキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基量;50重量%、官能基当量;800g/mol)、
「X-24-9579A」(重量平均分子量:2,370、含有官能基;メルカプト基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;メトキシ基、官能基当量;510g/mol)、
「X-24-9589」(重量平均分子量:4,700、含有官能基;エポキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;エトキシ基、官能基当量;680g/mol)、
「X-24-9590」(重量平均分子量:13,700、含有官能基;エポキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;メトキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基量;9.5重量%、官能基当量;592g/mol)、
「X-41-1818」(重量平均分子量:2,350、含有官能基;メルカプト基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;エトキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基量;60重量%、官能基当量;850g/mol)
等を用いればよい。これらの中でも耐久性とリワーク性のバランスの点で「X-41-1059A」、「X-41-1805」、「X-24-9579A」、「X-24-9590」が好ましい。
【0117】
シランカップリング剤(E)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.001~5重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.005~1重量部、更に好ましくは0.01~0.5重量部である。かかる含有量が少なすぎると耐久性が低下する傾向があり、多すぎるとシランカップリング剤がブリードして耐久性が低下する傾向がある。
【0118】
さらに、本発明の粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分として、アクリル系樹脂以外の樹脂成分、アクリルモノマーや、重合禁止剤、酸化防止剤、腐食防止剤、ラジカル発生剤、過酸化物、ラジカル捕捉剤等の各種添加剤、金属及び樹脂粒子等を配合することができる。また、上記の他にも、粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであってもよい。
【0119】
上記その他の成分の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して5重量部以下であることが好ましく、特に好ましくは1重量部以下、更に好ましくは0.5重量部以下である。かかる含有量が多すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下し、耐久性が低下する傾向がある。
【0120】
かくして本発明の粘着剤組成物を得ることができる。
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤(C)で架橋させることにより粘着剤とすることができ、更に、かかる粘着剤を含む粘着剤層をプラスチックフィルム等の基材に積層形成することにより、粘着シートを得ることができる。
上記粘着シートには、粘着剤層の基材フィルムとは逆の面に、さらに離型フィルムを設けることが好ましい。
【0121】
上記粘着シートの製造方法としては、
〔1〕基材フィルム上に、粘着剤組成物を塗布、乾燥した後、離型シートを貼合し、常温または加温状態でのエージングの少なくとも一方による処理を行なう方法、
〔2〕離型シート上に、粘着剤組成物を塗布、乾燥した後、基材フィルムを貼合し、常温または加温状態でのエージングの少なくとも一方による処理を行なう方法等がある。
これらの中でも、〔2〕の方法で、常温状態でエージングする方法が、熱により基材フィルムを痛めない点、基材フィルムと粘着剤層との密着性に優れる点で好ましい。
【0122】
かかるエージング処理は、粘着剤の化学架橋の反応時間として、粘着物性のバランスをとるために行なうものであり、エージングの条件としては、温度は通常室温(例えば20℃)~70℃、時間は通常1日~30日であり、具体的には、例えば23℃で1日~20日間、23℃で3~10日間、40℃で1日~7日間等の条件で行なえばよい。
【0123】
上記粘着剤組成物の塗布に際しては、この粘着剤組成物を溶剤で希釈して塗布することが好ましく、希釈濃度としては、加熱残分濃度として、好ましくは5~60重量%、特に好ましくは10~30重量%である。また、上記溶剤としては、粘着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されることなく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、メチルエチルケトンが好適に用いられる。
【0124】
また、上記粘着剤組成物の塗布に関しては、例えば、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なわれる。
【0125】
また、得られる粘着シートにおける粘着剤層の厚みは、5~100μmが好ましく、特には10~50μmが好ましく、更には10~30μmが好ましい。
かかる粘着剤層が薄すぎると、厚み精度が低下したり粘着力が低くなる傾向があり、厚すぎると粘着シートをロール状にした際に端からはみ出したりする傾向がある。
【0126】
上記方法により製造される粘着剤層のゲル分率については基材との密着性、リワーク性、保持力の点からから30%以上であることが好ましく、特に好ましくは40%以上であり、更に好ましくは60%以上である。尚ゲル分率の上限は通常100%、好ましくは95%である。ゲル分率が低すぎると凝集力が低くなりリワークする際に糊残りしたり、保持力が低くなる傾向にある。
【0127】
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材に粘着剤層が形成されてなる粘着シートから粘着剤をピッキングにより採取し、粘着剤を200メッシュのSUS製金網で包み酢酸エチル中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。
【0128】
上記方法により製造される粘着剤層は、指で触れたときに程好いタック感があった方が、実際に被着体に貼る際に濡れ性が良いため、作業性が上がる傾向があり好ましい。
タックはJIS Z0237(2009年)に規定された傾斜角30°の時のボールタックにより測定される。ボールタックは1以上が好ましく、3以上がより好ましい。かかるボールタックが低すぎると、粘着シートを被着体に貼り合わせる際に密着しにくくなる傾向にある。
【0129】
上記粘着剤層(例えば、イオン性化合物(D)を含有する粘着剤層)の表面抵抗値としては、1.0×1012Ω/cm2未満であることが好ましく、特に好ましくは1×1011Ω/cm2未満である。かかる表面抵抗値が高すぎると、離型フィルムを剥離した際や被着体から粘着シートを剥離した際に、帯電しやすく粘着剤層のほこり等が付着したり、粘着シートを液晶セルに使用した場合、液晶に影響がでて表示不良を起こしたりする傾向がある。
【0130】
本発明の粘着シートは、直接あるいは離型シートを有するものは離型シートを剥がした後、粘着剤層面を被着体表面に貼合して使用される。
【0131】
本発明の粘着剤組成物から得られる粘着剤は、高温高湿環境下においても粘着剤の変質を抑制できるものである。
更に、加水分解性を示すプラスチックフィルム(例えば、加水分解性を示すプラスチックフィルムからなる基材および/または被着体)に供する場合に、本発明の目的が顕著に発揮される。
【0132】
従って、表面保護フィルム、表示ラベル、養生テープ、光学フィルム、偏光板など、各種部材の粘着剤として好適に用いることができるが、光学部材の貼り合せに用いる光学部材用粘着剤として用いることが好ましく、特には、偏光板とガラスの貼り合せに好適であり、偏光板用粘着剤(偏光板に用いるための粘着剤)として用いることが好ましい。
【0133】
偏光板を構成する保護フィルムとしては、トリアセチルセルロース系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、シクロオレフィン系フィルムなどがあげられ、本発明はいずれの保護フィルムを用いた偏光板に対しても好適に用いられるが、特には、トリアセチルセルロース系フィルム、ポリエステル系フィルムを積層された偏光板が本発明の効果が得られやすい点で好ましい。
【0134】
本発明の粘着剤層付偏光板は、例えば、本発明の粘着シートの粘着剤層を偏光板に転写積層することにより製造することができる。
【実施例】
【0135】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0136】
また、下記実施例中におけるアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量及び分散度は、前述の方法に従って測定した。
アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度については前述のFoxの式を用いて算出し、アクリル系樹脂(A)を構成するモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度は通常DSCにより測定されてなる文献値およびカタログ記載値を用いた。
【0137】
<アクリル樹脂(A)の調製>
[アクリル系樹脂(A-1)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコにノルマルブチルアクリレート(BA)92部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)8部、酢酸エチル63部、アセトン42部、重合開始剤として2、2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.012部を仕込み、沸点まで昇温し反応を開始した後、2,2-アゾビス2,4-ジメチルバレロニトリル(ADVN)0.012部と酢酸エチル30部の混合溶液を滴下しながら還流温度で3.25時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A-1)(重量平均分子量137万、分散度3.2、ガラス転移温度-54℃)溶液(固形分18.6%、粘度2810mPa・s/25℃)を得た。
【0138】
<カルボジイミド化合物(B)>
カルボジイミド化合物として以下のものを用意した。
【0139】
(B-1):ポリマー型カルボジイミド(日清紡ケミカル社製 カルボジライト「V-04K」、カルボジイミド基当量336g/mol、有効成分100%)
【0140】
(B-2):ポリマー型カルボジイミド(日清紡ケミカル社製 カルボジライト「V-09GB」、カルボジイミド基当量200g/mol、有効性成分70% MEK希釈品)
【0141】
<架橋剤(C)>
架橋剤として以下のものを用意した。
(C-1):ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体(東ソー株式会社製「コロネートHL」)
【0142】
(C-2):ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(東ソー株式会社製「コロネートHX」)
【0143】
(C’-1):トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体(東ソー株式会社製「コロネートL55E」)
【0144】
<イオン性化合物(D)>
イオン性化合物として以下のものを用意した。
(D-1):トリブチルメチルアンモニウム N,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(スリーエム社製「FC-4400」、分子量482、融点27.5℃)
【0145】
<シランカップリング剤(E)>
シランカップリング剤として、以下のものを用意した。
(E-1):エポキシ系オリゴマー型シランカップリング剤(信越化学社製、「X-41-1059A」)
【0146】
<実施例1~3、比較例1~3>
上記のようにして調製、準備した各配合成分を下記表1の通りに配合し、これを酢酸エチルにて固形分濃度を12.5%に調液し、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を用いて、以下の評価を行った。
【0147】
[粘着剤層付偏光板[I]の作製]
得られた粘着剤組成物を38μmポリエステル系離型フィルム(東レ社製「セラピールWZ」)に乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥したのち、ポリエステルフィルム(PETフィルム)と位相差機能付きトリアセチルセルロースフィルム(位相差TACフィルム)をそれぞれ積層した偏光板の一方の位相差TACフィルム表面に、セパレーターと反対側の粘着剤層面を貼り合わせ、23℃×50%RH環境下で7日間養生し粘着剤層付偏光板[I]を得た(層構成;離型フィルム/粘着剤層/位相差TACフィルム/偏光子/PETフィルム)。
【0148】
[粘着剤層付セパレーターフィルム[II]の作製]
得られた粘着剤組成物を38μmポリエステル系離型フィルム(東レ社製「セラピールWZ」)に乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥したのち、38μmポリエステル系離型フィルム(三井東セロ社製「SP0338BU」)を貼り合わせ、23℃×50%RH環境下で7日間養生し粘着剤層付セパレーターフィルム[II]を得た(層構成;軽剥離フィルム/粘着剤層/重剥離フィルム)。
【0149】
[結晶析出時間及び粘着剤層の塗膜状態の評価]
得られた粘着剤層付偏光板[I]を用いて、下記の通り、粘着剤の結晶析出抑制効果及び粘着剤層の塗膜状態について評価した。
上記粘着剤層付偏光板[I]を16cm×9.5cmにカットし、離型フィルムを剥離して粘着剤層面を無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」:厚み0.7mm)に押しつけ2kgローラーにて2往復して貼り合わせたのち、オートクレーブ処理(0.5Mpa×50℃×20分間)を行い、結晶析出抑制効果の試験用サンプルを作製した。
試験用サンプルを80℃、90%RH条件下にいれ、480時間経過後の結晶の析出の有無を評価した。
また、粘着剤層の塗膜状態については480時間経過後の粘着剤層を目視で観察し、以下の評価基準にて評価した。
○:凹凸なし
△:多少の凹凸が見られる
×:全面に凹凸が見られる
【0150】
[帯電防止性能評価]
上記で得られた粘着剤層付偏光板[I]を23℃×50%RH雰囲気下で24時間静置したのち、セパレーター離型フィルムを剥離し、表面抵抗率測定装置(三菱化学アナリテック株式会社製、装置名「Hiresta-UP MCP-HT450」)を用いて、粘着剤層の表面抵抗率を測定した。
【0151】
[粘着力]
上記で得られた粘着剤層付き偏光板[I]を25mm幅にカットし、セパレーター離型フィルムを外して、無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」:厚み1.1mm)に2kgローラーにて貼りあわせ、オートクレーブ処理(0.5Mpa×50℃×20分間)を行ったのち、23℃×50%RH環境下で(1)24時間(1日間)したものと、(2)480時間(20日間)静置したものとを180°に引きはがした時の粘着力を測定した。
【0152】
[ゲル分率]
上記で得られた粘着剤層付セパレーターフィルム[II]を用いてセパレーター上に形成された粘着剤層から粘着剤をピッキングにより採取し、粘着剤を200メッシュのSUS製金網で包み酢酸エチル中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率を測定する事によりゲル分率を求めた。
【0153】
上記実施例及び比較例の結果を下記表1に示す。なお、表中、各成分についての数字は特に断りの無い限り、「重量部」を示す。
【0154】
【0155】
上記結果より、アクリル系樹脂とカルボジイミド化合物と特定のイソシアネート系架橋剤を使用した実施例1~3は、基材の加水分解に起因する結晶析出も発生せず、更には高温高湿度条件下においても粘着剤層に凹凸が発生せず外観に優れることがわかる。
一方、アクリル系樹脂、カルボジイミド化合物及び芳香族イソシアネート系架橋剤を使用した比較例1~3は、基材の加水分解を抑制できているものの、高温高湿度条件下では粘着剤層に凹凸が発生し外観に劣る結果となった。
【0156】
カルボジイミド化合物はイソシアネート化合物を3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド等の触媒によって脱炭酸を伴いながらカルボジイミド化することにより得られる。
アクリル系樹脂にカルボジイミド化合物とイソシアネート系架橋剤を使用した場合、カルボジイミド化合物中に残留するカルボジイミド化触媒がイソシアネート化合物をカルボジイミド化してしまい脱炭酸等の反応により粘着剤層に凹凸が発生するのではないかと考えられる。
脂肪族系イソシアネートや脂環式イソシアネートはカルボジイミド化されづらく、使用したイソシアネート系架橋剤がアクリル系樹脂の官能基と優先的に反応し消費されてしまうためカルボジイミド化が起こらず粘着剤層に凹凸が発生しなかったのではないかと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤は、耐加水分解性や耐久性を有する粘着剤であり、更には高温高湿環境下での粘着剤層での結晶析出を抑制することができるものである。従って、かかる粘着剤は、表面保護フィルム、表示ラベル、養生テープ、光学フィルム、偏光板など、各種部材の粘着剤として好適に用いることができ、とりわけ、光学部材用粘着剤として好適に用いることができる。更にはトリアセチルセルロース系フィルムやポリエステル系フィルム等の加水分解を受けやすい保護フィルムを有する偏光板用の粘着剤としても特に有用である。