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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】流体デバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20220726BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220726BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
B01J19/00 B
B01J19/00 321
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019559427
(86)(22)【出願日】2017-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2017044332
(87)【国際公開番号】W WO2019116422
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小林 遼
(72)【発明者】
【氏名】上野 太郎
(72)【発明者】
【氏名】石澤 直也
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/153006(WO,A1)
【文献】特開2007-225438(JP,A)
【文献】特表2004-533605(JP,A)
【文献】特開2013-007592(JP,A)
【文献】特開2007-108075(JP,A)
【文献】特開2009-019890(JP,A)
【文献】米国特許第05922604(US,A)
【文献】国際公開第2016/002847(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/08
G01N 37/00
B01J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に積層された一対の基板を有する基材を備え、
前記基材には、前記一対の基板のうち一方の基板に設けられた溝部を他方の基板により覆うことで構成された流路が設けられ、
前記流路は、合流部と、前記合流部から放射状に延びる第1移送流路、排出流路および分岐流路と、を含み、
前記合流部と前記排出流路との間には、排出バルブが設けられ、
前記合流部と前記分岐流路との間には、分岐バルブが設けられ、
前記合流部には、前記分岐バルブを閉塞した状態で前記第1移送流路から前記排出流路に向かって溶液を流すことで、前記溶液が満たされ、
前記合流部は、前記排出バルブに隣接する領域の厚さ方向の寸法が、前記第1移送流路に隣接する領域の厚さ方向の寸法および前記分岐バルブに隣接する領域の厚さ方向の寸法より小さく、前記第1移送流路から前記排出流路に向かうに従って厚さ方向の距離を短くする階段状の複数の段差部と、前記排出バルブまたは前記分岐バルブの何れか1つに隣接する領域において、前記合流部から前記排出バルブまたは前記分岐バルブに向かうに従って厚さ方向の距離を連続的に短くする傾斜部と、を有する、
流体デバイス。
【請求項2】
前記合流部は、前記排出バルブに隣接する領域と前記第1移送流路に隣接する領域および前記分岐バルブに隣接する領域との間に位置する段差部を有する、
請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項3】
前記合流部は、前記分岐バルブに隣接する領域の厚さ方向の寸法が、前記第1移送流路に隣接する領域の厚さ方向の寸法より、小さい、
請求項1又は2に記載の流体デバイス。
【請求項4】
前記合流部は、前記分岐バルブに隣接する領域と前記第1移送流路に隣接する領域との間に位置する段差部を有する、
請求項3に記載の流体デバイス。
【請求項5】
前記合流部は、前記基板の厚さ方向から見て、前記第1移送流路と前記排出バルブおよび前記排出バルブと前記分岐バルブを、それぞれ直線的に繋ぐ側壁面を有する、
請求項1~4の何れか一項に記載の流体デバイス。
【請求項6】
前記流路は、前記分岐流路としての第1分岐流路と第2分岐流路とを含み、
前記合流部と前記第1分岐流路との間には、前記分岐バルブとしての第1分岐バルブが設けられ、
前記合流部と前記第2分岐流路との間には、前記分岐バルブとしての第2分岐バルブが設けられる、
請求項1~5の何れか一項に記載の流体デバイス。
【請求項7】
前記第1分岐バルブと前記第2分岐バルブとは、前記合流部を中心とする周方向に沿って隣り合って配置され、
前記合流部は、厚さ方向から見て、前記第1分岐バルブと前記第2分岐バルブとを直線的に繋ぐ側壁面を有する、
請求項6に記載の流体デバイス。
【請求項8】
前記第1分岐バルブは、前記排出バルブと前記合流部を中心とする周方向に沿って隣り合って配置され、
前記第2分岐バルブは、前記第1移送流路と前記合流部を中心とする周方向に沿って隣り合って配置され、
前記合流部は、前記第1分岐バルブに隣接する領域の厚さ方向の寸法が、前記第2分岐バルブに隣接する領域の厚さ方向の寸法より、小さい、
請求項7に記載の流体デバイス。
【請求項9】
前記合流部の厚さ方向の寸法は、前記排出バルブに隣接する領域において最も小さくなっている、
請求項1~の何れか一項に記載の流体デバイス。
【請求項10】
前記流路は、流入部と、前記流入部から放射状に延びる導入流路、第2移送流路および第3分岐流路と、をさらに含み、
前記第2移送流路と前記第3分岐流路とは、前記流入部を挟んで対向し、
前記流入部と前記第3分岐流路との間には、前記分岐バルブが設けられ、
前記流入部には、前記分岐バルブを閉塞した状態で前記導入流路から前記第2移送流路に向かって前記溶液を流すことで、前記溶液が満たされ、
前記流入部は、前記導入流路と対向する対向壁面を有し、
前記導入流路と前記対向壁面との距離は、前記導入流路と前記分岐バルブとの距離より大きく、
前記分岐流路は、前記流入部の一部であり、前記第3分岐流路は前記合流部の一部である、
請求項1~9の何れか一項に記載の流体デバイス。
【請求項11】
前記流路は、2つの前記導入流路を含み、
2つの前記導入流路は、前記第3分岐流路と前記第2移送流路とを結ぶ仮想線に対して、互いに対称に配置され、
2つの前記導入流路のうち一方の前記導入流路は、他方の前記導入流路と対向する前記対向壁面に位置する、
請求項10に記載の流体デバイス。
【請求項12】
前記流入部は、厚さ方向から見て、前記第2移送流路と前記第3分岐流路とを結ぶ仮想線を中心に略対称に形成されている、
請求項10又は11に記載の流体デバイス。
【請求項13】
前記流入部と前記導入流路との間には、導入バルブが設けられる、
請求項10~12の何れか一項に記載の流体デバイス。
【請求項14】
前記第1移送流路及び前記第2移送流路は、互いに接続されてループ状の循環流路を形成し、
前記循環流路の内側領域に前記排出流路と接続する廃液槽が配置される、
請求項10~13の何れか一項に記載の流体デバイス。
【請求項15】
前記合流部は、厚さ方向において互いに対向する天面と底面とを有し、
前記段差部は、前記天面に形成され、
前記傾斜部は、前記底面に形成される、
請求項1~13の何れか一項に記載の流体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、体外診断分野における試験の高速化、高効率化、および集積化、又は、検査機器の超小型化を目指したμ-TAS(Micro-Total Analysis Systems)の開発などが注目を浴びており、世界的に活発な研究が進められている。
【0003】
μ-TASは、少量の試料で測定、分析が可能なこと、持ち運びが可能となること、低コストで使い捨て可能なこと等、従来の検査機器に比べて優れている。
更に、高価な試薬を使用する場合や少量多検体を検査する場合において、有用性が高い方法として注目されている。
【0004】
μ-TASの構成要素として、流路と、該流路上に配置されるポンプとを備えたデバイスが報告されている(非特許文献1)。このようなデバイスでは、該流路へ複数の溶液を注入し、ポンプを作動させることで、複数の溶液を流路内で混合する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Jong Wook Hong, Vincent Studer, Giao Hang, W French Anderson and Stephen R Quake,Nature Biotechnology 22, 435 - 439 (2004)
【発明の概要】
【0006】
第1の実施態様に従えば、厚さ方向に積層された一対の基板を有する基材を備え、前記基材には、前記一対の基板のうち一方の基板に設けられた溝部を他方の基板により覆うことで構成された流路が設けられ、前記流路は、合流部と、前記合流部から放射状に延びる第1移送流路、排出流路および分岐流路と、を含み、前記合流部と前記排出流路との間には、排出バルブが設けられ、前記合流部と前記分岐流路との間には、分岐バルブが設けられ、前記合流部には、前記分岐バルブを閉塞した状態で前記第1移送流路から前記排出流路に向かって溶液を流すことで、前記溶液が満たされ、前記合流部は、前記排出バルブに隣接する領域の厚さ方向の寸法が、前記第1移送流路に隣接する領域の厚さ方向の寸法および前記分岐バルブに隣接する領域の厚さ方向の寸法より小さく、前記第1移送流路から前記排出流路に向かうに従って厚さ方向の距離を短くする階段状の複数の段差部と、前記排出バルブまたは前記分岐バルブの何れか1つに隣接する領域において、前記合流部から前記排出バルブまたは前記第1分岐バルブに向かうに従って厚さ方向の距離を連続的に短くする傾斜部と、を有する、流体デバイスが提供される。
【0007】
第1の実施態様において、前記流路は、流入部と、前記流入部から放射状に延びる導入流路、第2移送流路および第3分岐流路と、を含み、前記第2移送流路と前記第3分岐流路とは、前記流入部を挟んで対向し、前記流入部と前記第3分岐流路との間には、前記分岐バルブが設けられ、前記流入部には、前記分岐バルブを閉塞した状態で前記導入流路から前記第2移送流路に向かって溶液を流すことで、前記溶液が満たされ、前記流入部は、前記導入流路と対向する対向壁面を有し、前記導入流路と前記対向壁面との距離は、前記導入流路と前記第3分岐流路との距離より大きく、前記分岐流路は、前記流入部の一部であり、前記第3分岐流路は前記合流部の一部である、構成を採用してもよい
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の流体デバイスを模式的に示す断面図である。
図2図2は、一実施形態の流体デバイスを模式的に示す平面図である。
図3図3は、一実施形態の流体デバイスの流入部の拡大図である。
図4図4は、一実施形態の流体デバイスの合流部の拡大図である。
図5図5は、一実施形態の流体デバイスの合流部の斜視図である。
図6図6は、一実施形態の流体デバイスにおいて合流部と分岐バルブとの接続部の断面図である。
図7図7は、変形例の流入部の拡大図である。
図8図8は、変形例の合流部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、流体デバイス、リザーバー供給システムおよび流路供給システムの実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限られない。
【0010】
(流体デバイス)
図1は、本実施形態の流体デバイス1の断面模式図である。図2は、流体デバイス1を模式的に示した平面図である。なお、図2においては、透明な上板6について、下側に配置された各部を透過させた状態で図示する。
【0011】
本実施形態の流体デバイス1は、検体試料に含まれる検出対象である試料物質を免疫反応および酵素反応などにより検出するデバイスを含む。試料物質は、例えば、核酸、DNA、RNA、ペプチド、タンパク質、細胞外小胞体などの生体分子である。
【0012】
図2に示すように、流体デバイス1は、基材5と複数のバルブV、Vi、Voと、を備える。また、図1に示すように、基材5は、厚さ方向に積層された3つの基板(上板6、基板9および下板8)を有する。本実施形態の上板6、下板8および基板9は、樹脂材料から構成される。上板6、下板8および基板9を構成する樹脂材料としては、ポリプロピレン、ポリカーボネイト等が例示される。また、本実施形態において、上板6および下板8は、透明な材料から構成される。なお、上板6、下板8および基板9を構成する材料は、限定されない。
【0013】
以下の説明においては、上板(例、第1の基板(基板)、蓋部、流路の上部又は下部、流路の上面又は底面)6、下板(例、第3の基板(基板)、蓋部、流路の上部又は下部、流路の上面又は底面)8および基板(第2の基板)9は水平面に沿って配置され、上板6は基板9の上側に配置され、下板8は基板9の下側に配置されるものとして説明する。ただし、これは、説明の便宜のために水平方向および上下方向を定義したに過ぎず、本実施形態に係る流体デバイス1の使用時の向きを限定しない。
【0014】
上板6、基板9および下板8は、水平方向に沿って延びる板材である。上板6、基板9および下板8は、上下方向に沿ってこの順で積層されている。すなわち、基板9は、上板6の下側において上板6に積層される。また、下板8は、上板6と反対側の面(下面9a)において基板9に積層される。
なお、以下の説明において、上板6、基板9および下板8を積層させる方向を単に積層方向と呼ぶ。本実施形態において、積層方向は、上下方向である。また、本実施形態において、積層方向は、基板(上板6、基板9および下板8)の厚さ方向である。
【0015】
上板6は、上面6bと下面6aと、を有する。基板9は、上面9bと下面9aとを有する。同様に、下板8は、上面8bと下面8aと、を有する。
【0016】
上板6の下面6aは、基板9の上面9bと積層方向に対向し接触する。上板6の下面6aと基板9の上面9bとは、接着等の接合手段により互いに接合されている。上板6の下面6aと基板9の上面9bとは、第1境界面(第1接合面)61を構成する。すなわち、上板6と基板9とは、第1境界面61で接合される。
同様に、下板8の上面8bは、基板9の下面9aと積層方向に対向し接触する。下板8の上面8bと基板9の下面9aとは、接着等の接合手段により互いに接合されている。下板8の上面8bと基板9の下面9aとは、第2境界面(第2接合面)62を構成する。すなわち、基板9と下板8とは、第2境界面62で接合される。
【0017】
基材5には、注入孔32と、リザーバー29と、流路11と、廃液槽7と、空気孔35と、供給孔39と、が設けられている。
【0018】
注入孔32は、上板6および基板9を貫通する。注入孔32は、基板9と下板8との境界部に位置するリザーバー29に繋がる。注入孔32は、リザーバー29を外部に繋げる。溶液は、注入孔32を介してリザーバー29に充填される。注入孔32は、1つのリザーバー29に対して1つ設けられる。なお、図2において、注入孔32の図示は、省略されている。
【0019】
リザーバー29は、基板9の下面9aに設けられた溝部21の内壁面と下板8とによって囲まれたチューブ状、あるいは筒状に形成された空間である。すなわち、リザーバー29は、第2境界面62に位置する。本実施形態の基材5には、複数のリザーバー29が設けられる。リザーバー29には、溶液が収容される。複数のリザーバー29は、互いに独立して溶液を収容する。リザーバー29は、収容した溶液を流路11に供給する。本実施形態のリザーバー29は、流路型のリザーバーである。リザーバー29の長さ方向の一端は、注入孔32に接続される。また、リザーバー29の長さ方向の他端は、供給孔39が接続される。
【0020】
なお、本実施形態では、基板9に溝部21が設けられ下板8によって溝部21の開口を覆うことでリザーバー29が構成される場合について説明した。しかしながら、リザーバー29は、下板8に設けられた溝部の開口を基板9により覆うことで構成されていてもよい。
【0021】
流路11は、基板9の上面9bに設けられた溝部14の内壁面と上板6とによって囲まれたチューブ状、あるいは筒状に形成された空間である。すなわち、流路11は、第1境界面61に位置する。流路11には、リザーバー29から溶液が供給される。溶液は、流路11内を流れる。
【0022】
なお、本実施形態では、基板9に溝部14が設けられ上板6によって溝部14の開口を覆うことで流路11が構成される場合について説明した。しかしながら、流路11は、上板6に設けられた溝部の開口を基板9により覆うことで構成されていてもよい。すなわち、基材5が、厚さ方向に積層された一対の基板を有し、流路11は、一対の基板のうち一方の基板に設けられた溝部を他方の基板により覆うことで構成されていればよい。
流路11の各部に関しては、図2を基にして後段において詳細に説明する。
【0023】
供給孔39は、基板9に設けられている。供給孔39は、基板9を板厚方向に貫通する。供給孔39は、リザーバー29と流路11とを繋ぐ。リザーバー29に貯留された溶液は、供給孔39を介して流路11に供給される。すなわち、リザーバー29は、供給孔39を介して流路11と接続される。
【0024】
廃液槽7は、流路11中の溶液を廃棄する為に基材5に設けられる。廃液槽7は、流路11に接続される。図2に示すように、廃液槽7は、循環流路10の内側領域に配置されている。これにより、流体デバイス1の小型化を図ることができる。また、図1に示すように、廃液槽7は、基板9の上面9b側に設けられた凹部7aの内壁面と、凹部7aの上側を向く開口を覆う上板6に囲まれた空間に構成される。
【0025】
空気孔35は、上板6に設けられる。空気孔35は、廃液槽7の直上に位置する。空気孔35は、廃液槽7を外部に繋げる。すなわち、廃液槽7は、空気孔(装置接続孔)35を介して外部に開放される。
【0026】
次に、流路11について、より具体的に説明する。
図2に示すように、流路11は、循環流路10と、複数(図2の例では3つ)の導入流路12と、複数(図2の例では3つ)の排出流路13と、を含む。流路11には、リザーバー29(図1参照)から溶液が導入される。
【0027】
循環流路10は、積層方向から見て、ループ状に構成される。循環流路10の経路中には、ポンプPが配置されている。ポンプPは、流路中に並んで配置された3つの要素ポンプPeから構成されている。要素ポンプPeは、いわゆるバルブポンプである。ポンプPは、3つの要素ポンプPeを順次開閉することにより、循環流路内において液体を搬送することができる。ポンプPを構成する要素ポンプPeの数は、4以上であってもよい。
【0028】
循環流路10の経路中には、複数(図2の例では3つ)の定量バルブ(分岐バルブ)Vが設けられる。複数の定量バルブVは、循環流路10を複数の定量区画18に区画する。複数の定量バルブVは、それぞれの定量区画18が所定の体積となるように配置されている。本実施形態において、3つの定量区画18のうち、1つの定量区画には、蛇行部18aが設けられている。蛇行部18aは、左右に蛇行して形成された流路である。蛇行部18aは、1つの定量区画18を所望の容量とするために設けられる。
【0029】
定量区画18は、それぞれ流路状に延びる。複数の定量区画18は、それぞれ、流路状の移送流路80と、移送流路80の一方の端部に位置する流入部81と、移送流路80の他方の端部に設けられる合流部85と、を有する。したがって、それぞれの定量区画18において、移送流路80は、流入部81と、合流部85と、の間に位置する。
【0030】
1つの定量区画18の流入部81は、他の定量区画18の合流部85と、定量バルブVを介して繋がる。また、流入部81には、導入バルブViを介して、導入流路12が繋がる。
同様に、1つの定量区画18の合流部85は、他の定量区画18の流入部81と、定量バルブVを介して繋がる。また、合流部85には、排出バルブVoを介して、排出流路13が繋がる。
流入部81および合流部85の詳細については、後段において説明する。
【0031】
導入流路12は、循環流路10の定量区画18に溶液を導入するための流路である。導入流路12は、循環流路10の定量区画18毎に設けられる。導入流路12は、一端側において供給孔39に接続される。また、導入流路12は、他端側において、循環流路10の流入部81に接続される。
【0032】
排出流路13は、循環流路10の定量区画18の溶液を廃液槽7に排出するための流路である。排出流路13は、循環流路10の定量区画18毎に設けられる。排出流路13は、一端側において廃液槽7に接続される。また、排出流路13は、他端側において、循環流路10の合流部85に接続される。
【0033】
(リザーバーから流路に溶液を供給する手順)
次に、流体デバイス1においてリザーバー29から流路11に溶液Sを供給する手順について説明する。
図1に示すように、リザーバー29には、予め溶液Sが充填されている。流体デバイス1を用いた測定では、まず、リザーバー29内の溶液Sを流路11に移動させる。より具体的には、循環流路10のそれぞれの定量区画18にリザーバー29から溶液Sを順番に導入する。ここでは、1つの定量区画18に溶液Sを導入する手順を説明するが、他の定量区画18についても、同様の手順を行うことで、溶液Sが導入される。
【0034】
定量区画18に溶液Sを導入する際のバルブV、Vi、Voの開閉について図2を基に説明する。まず、溶液Sを導入する定量区画18の長さ方向両側に位置する一対の定量バルブVを閉じる。さらに、該当する定量区画18に繋がる排出流路13の排出バルブVoを開くと共に、他の排出流路13の排出バルブVoを閉じる。また、該当する定量区画18に繋がる導入流路12の導入バルブViを開く。
【0035】
リザーバー29から流路11に溶液を移動させる手順について図1を基に説明する。図示略の吸引装置を用いて、空気孔35から廃液槽7内を負圧吸引する。これにより、リザーバー29内の溶液Sは、供給孔39を介して流路11側に移動する。また、リザーバー29の溶液Sの後方には、注入孔32を通過した空気が導入される。これにより、流路供給システム4は、リザーバー29に収容された溶液Sを供給孔39、導入流路12を介して、循環流路10の定量区画18に導入する。
【0036】
(流路内の溶液を混合する手順)
次に、流体デバイス1の流路に供給された溶液を混合する手順について図2を基に説明する。まず、上述したように循環流路10のそれぞれの定量区画18に溶液を導入した状態で、排出バルブVoおよび導入バルブViを閉じ、定量バルブVを開く。さらに、ポンプPを用いて循環流路10内の溶液を送液して循環させる。循環流路10を循環する溶液は、流路内の流路壁面と溶液の相互作用(摩擦)により、壁面周辺の流速は遅く、流路中央の流速は速くなる。その結果、溶液の流速に分布ができるため、溶液の混合および反応が促進される。
【0037】
(流入部)
図3は、流路11に設けられた流入部81の拡大図である。
なお、以下の説明において、流入部81に定量バルブVを介して接続される他の定量区画18を分岐流路91と呼ぶものとする。また、定量バルブを分岐バルブVと呼ぶものとする。
【0038】
流入部81には、導入流路12と、移送流路80と、分岐流路91と、が接続される。すなわち、流路11は、流入部81と、導入流路12と、移送流路80と、分岐流路91と、を含む。導入流路12、移送流路80および分岐流路91は、流入部81から放射状に延びる。
【0039】
流入部81と分岐流路91との間には、分岐バルブVが設けられ、流入部81と導入流路12との間には、導入バルブViが設けられる。一方で、流入部81と移送流路80との間には、バルブが設けられていない。
【0040】
移送流路80と分岐流路91とは、流入部81を挟んで対向する。また、導入流路12は、移送流路80と分岐流路91とを結ぶ第1仮想線VL1に対して、直交する方向に延びる。
【0041】
流入部81は、積層方向から見て、移送流路80から分岐流路91側に向かうに従って幅が広がった後に再度幅が狭くなる。流入部81は、積層方向から見て、第1仮想線VL1を中心として略対称に形成されている。流入部81は、積層方向から見て、第1壁面(対向壁面)81aと、第2壁面81bと、を有する。
【0042】
第1壁面81aは、移送流路80の壁面と繋がる。また、第1壁面81aは、分岐バルブVに繋がる。第1壁面81aは、第1仮想線VL1を挟んで導入流路12と対向する。第1壁面81aは、移送流路80側から第1仮想線VL1を挟んで分岐バルブVの反対側の領域に達するまで、徐々に第1仮想線VL1から離れる。また、第1壁面81aは、第1仮想線VL1を挟んで分岐バルブVの反対側の領域から分岐バルブVに達するまで、徐々に第1仮想線VL1に近づく。
【0043】
第2壁面81bは、移送流路80の壁面と繋がる。第2壁面81bは、分岐バルブVに繋がる。また、第2壁面81bには、導入バルブViが位置する。第2壁面81bは、第1仮想線VL1を挟んで第1壁面81aと対向する。第1壁面81aと第2壁面81bとは、第1仮想線VL1を中心に略対称に形成されている。第2壁面81bは、移送流路80側から導入バルブViに達するまで、徐々に第1仮想線VL1から離れる。また、第2壁面81bは、導入バルブVi側から分岐バルブV側に向かうに従い、第1仮想線VL1に近づくように直線的に延びる。
【0044】
流入部81には、分岐バルブVを閉塞した状態で導入流路12から移送流路80に向かって溶液を流すことで、溶液が満たされる。このとき、導入バルブViは、開放されている。溶液は、導入流路12から流入部81に流入することで、図3に示す第1液面LS1、第2液面LS2、第3液面LS3および第4液面LS4の順で液面位置を変化させる。
【0045】
本実施形態によれば、溶液の液面は、導入流路12から流入部81に流入することで、略円弧状に拡がる。溶液の液面は、まず、第1液面LS1として示すように、第2壁面81bを伝って広がっていく。次いで、溶液の液面は、第2液面LS2として示すように、分岐バルブVに達する。さらに、溶液の液面は、第3液面LS3として示すように、第1壁面81aと第2壁面81bとを伝って広がっていく。最後に、溶液の液面は、第4液面LS4として示すように、移送流路80に達する。
【0046】
本実施形態によれば、流入部81において、導入流路12と第1壁面81aとの距離は、導入流路12と分岐バルブVとの距離より大きい。これにより、流入部81において、溶液は、液面位置が第1壁面81aに達する前に、分岐バルブVの近傍の領域を満たす。したがって、溶液が流入部81に充填される過程で、流入部81内に気泡が溜ることを抑制できる。すなわち、本実施形態によれば、流路11の定量区画18(図2参照)に溶液に気泡なく充填することができ、溶液の正確な定量を行うことができる。
【0047】
本実施形態によれば、流入部81は、積層方向から見て、移送流路80と分岐流路91とを結ぶ第1仮想線VL1を中心に略対称に形成されている。このため、分岐流路91から溶液を導入して流入部81を満たす場合であっても、溶液の液面は、第1仮想線VL1を中心に略対称となるように広がり移送流路80に達する。したがって、分岐流路91から流入部81に溶液を満たす場合であっても、流入部81内に気泡が生じることを抑制することができる。
【0048】
(合流部)
図4は、流路11に設けられた合流部85の拡大図である。また、図5は、合流部85の斜視図である。
なお、以下の説明において、合流部85に定量バルブVを介して接続される他の定量区画18を分岐流路95と呼ぶものとする。また、定量バルブを分岐バルブVと呼ぶものとする。
【0049】
図4に示すように、合流部85には、移送流路80と、排出流路13と、分岐流路95と、が接続される。すなわち、流路11は、導入流路12と、排出流路13と、移送流路80と、分岐流路95と、を含む。移送流路80、排出流路13および分岐流路95は、合流部85から放射状に延びる。
【0050】
合流部85と分岐流路95との間には、分岐バルブVが設けられ、合流部85と排出流路13との間には、排出バルブVoが設けられる。一方で、合流部85と移送流路80との間には、バルブが設けられていない。
【0051】
移送流路80と分岐流路95とは、合流部85を挟んで対向する。また、排出流路13は、移送流路80と分岐流路95とを結ぶ第2仮想線VL2に対して、直交する方向に延びる。
【0052】
合流部85は、積層方向から見て、略直角二等辺三角形状に形成されている。排出流路13は、直角二等辺三角形の90°の角部において合流部85に接続されている。また、移送流路80および分岐流路95は、それぞれ直角二等辺三角形の45°の角部において合流部85に接続されている。
【0053】
合流部85は、積層方向から見て、第1壁面(側壁面)85aと、第2壁面(側壁面)85bと、第3壁面(側壁面)85cと、を有する。第1壁面85aは、直角二等辺三角形状の90°の角部と対向する壁面である。
【0054】
第1壁面85aは、移送流路80の壁面と繋がる。また、第1壁面85aは、分岐バルブVに繋がる。第1壁面85aは、第2仮想線VL2を挟んで排出流路13と対向する。第1壁面85aは、移送流路80の壁面に沿って直線的に延びる。また、第1壁面85aは、分岐バルブVの近傍において、分岐バルブV側に向かうに従い第2仮想線VL2側に近づくように傾斜する傾斜面85aaを有する。傾斜面85aaは、合流部85内の溶液を分岐バルブV側にスムーズに導くために設けられる。
【0055】
第2壁面85bは、移送流路80の壁面と繋がる。また、第2壁面85bは、導入バルブViに繋がる。第2壁面85bは、第2仮想線VL2を挟んで第1壁面85aと対向する。第2壁面85bは、移送流路80側から導入バルブViに達するまで、徐々に第2仮想線VL2から離れるように直線的に延びる。すなわち、合流部85は、積層方向から見て、移送流路80と排出バルブVoを直線的に繋ぐ第2壁面85bを有する。
【0056】
第3壁面85cは、排出バルブVoと分岐バルブVとを繋ぐ。第3壁面85cは、第2仮想線VL2を挟んで第1壁面85aと対向する。第3壁面85cは、排出バルブVo側から分岐バルブVに達するまで、徐々に第2仮想線VL2に近づくように直線的に延びる。すなわち、合流部85は、積層方向から見て、排出バルブVoと分岐バルブVを直線的に繋ぐ第3壁面85cを有する。
【0057】
図5に示すように、合流部85は、天面85pと底面85qとの間の積層方向に拡がる空間である。合流部85の天面85pには、複数の段差部(第1段差部S1、第2段差部S2、第3段差部S3、第4段差部S4、第5段差部S5、第6段差部S6および第7段差部S7)が設けられる。第1~第7段差部S1~S7は、積層方向から見て、それぞれ直線状に延びる。合流部85の天面85pと底面85qとの積層方向の距離は、それぞれの第1~第7段差部S1~S7を境界として急激に変化する。
【0058】
第1段差部S1は、移送流路80と合流部85との境界に位置する。第1段差部S1は、移送流路80の積層方向の寸法に対して、合流部85の積層方向の寸法を小さくする。
第2~第5段差部S2~S5は、第2壁面85bから第1壁面85aに向かって延びる。第2~第5段差部S2~S5は、移送流路80から分岐バルブVに向かってこの順で並んで配置される。第2~第5段差部S2~S5は、移送流路80側から分岐バルブV側に向かうに従いこの順で合流部85の積層方向の寸法を小さくする。
第6および第7段差部S6、S7は、第2壁面85bから第3壁面85cに向かって延びる。第6および第7段差部S6、S7は、分岐バルブVから排出バルブVoに向かってこの順で並んで配置される。第6および第7段差部S6、S7は、分岐バルブV側から排出バルブVo側に向かうに従いこの順で合流部85の積層方向の寸法を小さくする。
【0059】
合流部85には、分岐バルブVを閉塞した状態で移送流路80から排出流路13に向かって溶液を流すことで、溶液が満たされる。このとき、排出バルブVoは、開放されている。
【0060】
合流部85には、移送流路80に隣接する第1領域A1と、分岐バルブVに隣接する第2領域A2と、排出バルブVoに隣接する第3領域A3と、が設けられる。
第1領域A1は、第1段差部S1と第2段差部S2との間に位置する。
第2領域A2は、第5段差部S5と第6段差部S6との間に位置する。また、合流部85は、第2領域A2において分岐バルブVに接続される。
第3領域A3は、第7段差部S7と排出バルブVoとの間に位置する。したがって、合流部85は、第3領域A3において排出バルブVoに接続される。
【0061】
第3領域A3の積層方向の寸法は、第1領域A1の積層方向の寸法および第2領域A2の積層方向の寸法より、小さい。特に、第3領域A3の積層方向の寸法は、合流部85内において、最も積層方向の寸法が小さい領域である。また、第2領域A2の積層方向の寸法は、第1領域A1の積層方向の寸法より、小さい。
【0062】
一般的に、流体が流れる流路は、流路断面積を小さくすることで流路抵抗が大きくなる。また、流体は、流路抵抗が小さい方向に優先的に流れやすい。
【0063】
本実施形態によれば、第3領域A3の積層方向の寸法が、第1領域A1および第2領域A2の積層方向の寸法より小さいため、第1領域A1および第2領域A2と比較して、第3領域A3には溶液が流れ込みにくい。このため、移送流路80から合流部85に流入した溶液は、第1領域A1および第2領域A2を満たした後に、第3領域A3に達する。合流部85に溶液が流入する過程において、合流部85と流路(移送流路80および分岐流路95)との接続部分には、気泡が生じやすい。本実施形態によれば、合流部85において、第3領域A3より先に第1領域A1および第2領域A2に溶液が満たされやすい。これにより、移送流路80から排出流路13に向かって溶液を流す過程で、合流部85と流路(移送流路80および分岐流路95)との接続部分に気泡が生じることが抑制される。
【0064】
また、本実施形態によれば、合流部85の積層方向の寸法は、第3領域A3において最も小さくなっている。したがって、合流部85は、第3領域A3において流路抵抗が最も大きくなる。このため、合流部85全体において、第3領域A3が最も溶液が流れ込みにくい領域となる。結果的に、移送流路80から合流部85に流入した溶液は、第3領域A3に最後に流れ込むこととなり、合流部85内に気泡が生じることを抑制できる。すなわち、本実施形態によれば、流路11の定量区画18に溶液に気泡なく充填することができ、溶液の正確な定量を行うことができる。
【0065】
本実施形態によれば、分岐バルブVに隣接する第2領域A2の積層方向の寸法が、第1領域A1の積層方向の寸法より小さいため、第1領域A1と比較して、第2領域A2には溶液が流れ込みにくい。このため、移送流路80から合流部85に流入した溶液は、第1領域A1を満たした後に、第2領域A2に達する。本実施形態によれば、合流部85において、移送流路80と隣接する第1領域A1に、第2領域A2より先に溶液が満たされやすい。これにより、移送流路80から排出流路13に向かって溶液を流す過程で、移送流路80との接続部分に気泡が生じることが抑制される。
【0066】
本実施形態によれば、移送流路80と合流部85との間には、第1段差部S1が設けられる。移送流路80から合流部85に向かって流れる溶液は、第1段差部S1に達した段階で表面張力によって濡れ広がりが抑制される。このため、溶液は、第1段差部S1の全幅に溶液が達した後に、第1段差部から溢れ出て合流部85に流入する。すなわち、第1段差部S1は、移送流路80と合流部85との間のゲートとして機能する。このような機能は、他の段差部(第2~第7段差部S2~S7)も有する機能である。本実施形態によれば、移送流路80と合流部85との間に第1段差部S1が設けられることで、移送流路80内に溶液が充填された後に、合流部85に溶液が流入するため、結果的に、移送流路80内に気泡が生じることを抑制できる。
【0067】
本実施形態によれば、合流部85は、第1領域A1と第2領域A2との間に位置する段差部(第2~第4段差部S2~S4)を有する。第2~第4段差部S2~S4は、上述したように、ゲートとして機能する。第1領域A1から第2領域A2に向かって流れる溶液は、第1段差部S1と第2段差部S2との間の領域を満たした後に第2段差部S2と第3段差部S3との間の領域に達する。次いで、溶液は、第2段差部S2と第3段差部S3との間の領域、第3段差部S3と第4段差部S4との間の領域および第4段差部S4と第5段差部S5との間の領域を順番に満たしていく。さらに、溶液は、第2領域A2が設けられた第5段差部S5と第6段差部S6との間の領域に達する。
すなわち本実施形態によれば、溶液は、第1領域A1と第2領域A2との間で各段差部の間の領域を順次満たしてくため、第1領域A1と第2領域A2との間において、合流部85内に気泡が生じることを抑制できる。
【0068】
また、本実施形態によれば、合流部85は、第1領域A1および第2領域A2と、第3領域A3と、の間に位置する段差部(第6段差部S6および第7段差部S7)を有する。溶液は、第2領域A2が設けられた第5段差部S5と第6段差部S6との間の領域を満たした後に、第6段差部S6と第7段差部S7との間に達する。さらに、溶液は、第6段差部S6と第7段差部S7との間の領域を満たした後に、第7段差部S7と排出バルブVoとの間に達し、開放された排出バルブVoを介して排出流路13に流入する。
すなわち本実施形態によれば、溶液は、第2領域A2と第3領域A3との間で各段差部の間の領域を順次満たしてくため、第2領域A2と第3領域A3との間において、合流部85内に気泡が生じることを抑制できる。
【0069】
なお、本実施形態において、合流部85の天面85p側に段差部が設けられる場合について例示した。しかしながら、段差部は、合流部85の積層方向の寸法を急激に変化させることができればよい。段差部は、例えば、天面85pおよび底面85qの両方に設けられていてもよく、また、底面85qのみに設けられていてもよい。
【0070】
本実施形態によれば、移送流路80と排出バルブVoとを繋ぐ第2壁面85bおよび排出バルブVoと分岐バルブVとを繋ぐ第3壁面85cが、積層方向から見て直線状である。このため、合流部85に角部が形成されることが抑制され、合流部85に溶液が満たされる過程で気泡が発生することを抑制できる。
【0071】
次に、合流部85と分岐バルブVとの接続部に採用可能な構造について、図6を基に説明する。
なお、ここでは、合流部85と分岐バルブVとの接続部の構造を代表して示すが、合流部85と排出バルブVoの接続部、流入部81と分岐バルブVの接続部および流入部81と導入バルブViとの接続部についても、同様の傾斜部SLを備えた構造を採用できる。
【0072】
まず、分岐バルブVの構造について説明する。
上板6には、分岐バルブVを保持するバルブ保持孔34が設けられる。分岐バルブVは、バルブ保持孔34において、上板6に保持される。分岐バルブVは、弾性材料から構成される。分岐バルブVに採用可能な弾性材料としては、ゴム、エラストマー樹脂などが例示される。分岐バルブVの直下の流路11には、半球状の窪み40が設けられる。図6に示すように、分岐バルブVは、下側に向かって弾性変形して窪み40に当接することで流路11を閉塞する。また、分岐バルブVは、窪み40から離間することで流路11を開放する(図6の仮想線(二点鎖線))。
なお、このようなバルブ構造は、他のバルブ(導入バルブViおよび排出バルブVo)についても同様である。
【0073】
合流部85の底面85qには、分岐バルブVと合流部85の境界に位置し、分岐バルブVに向かうに従い天面85pとの距離を小さくする傾斜部SLが設けられている。傾斜部SLを設けられることによって、合流部85内に溶液が充填される際に、合流部85の分岐バルブVまで溶液をスムーズに行き渡らせることができる。特に、分岐バルブVと合流部85の境界に角部が設けられる場合と比較して、傾斜部SLが設けられることで合流部85内に気泡が生じることを効果的に抑制できる。
【0074】
本実施形態では、合流部85の底面85qに傾斜部SLが設けられる場合について説明した。しかしながら、合流部85が、分岐バルブVに隣接する領域(第2領域A2)において、分岐バルブV側に向かうに従い積層方向の寸法を小さくする傾斜部SLを有していればよい。すなわち、傾斜部SLは、天面85pおよび底面85qの両方に設けられていてもよく、天面85pにのみ設けられていてもよい。
【0075】
また、合流部85は、排出バルブVoおよび分岐バルブVのうち少なくとも1つのバルブに隣接する領域において、傾斜部SLを有していれば、当該領域における気泡の発生を抑制できる。同様に、流入部81は、導入バルブViおよび分岐バルブVのうち少なくとも1つのバルブに隣接する領域において、傾斜部SLを有していれば、当該領域において気泡の発生を抑制できる。
【0076】
(流入部の変形例)
上述の実施形態に採用可能な変形例の流入部181について、図7を基に説明する。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
図7は、変形例の流入部181の拡大図である。図7に示すように、流入部181には、第1導入流路(導入流路)12と、第2導入流路(導入流路)112と、移送流路80と、分岐流路91と、が接続される。すなわち、流路11は、流入部181と、2つの導入流路(第1導入流路12および第2導入流路112)と、移送流路80と、分岐流路91と、を含む。第1導入流路12、第2導入流路112、移送流路80および分岐流路91は、流入部181から放射状に延びる。
【0078】
流入部181と分岐流路91との間には、分岐バルブVが設けられる。流入部181と第1導入流路12との間および流入部181と第2導入流路112との間には、導入バルブViが設けられる。一方で、流入部181と移送流路80との間には、バルブが設けられていない。
【0079】
移送流路80と分岐流路91とは、流入部181を挟んで対向する。また、第1導入流路12および第2導入流路112は、移送流路80と分岐流路91とを結ぶ第1仮想線VL1に対して、それぞれ直交する方向に延びる。第1導入流路12と第2導入流路112とは、第1仮想線VL1を挟んで反対側に配置される。また、第1導入流路12と第2導入流路112とは、第1仮想線VL1に対して、互いに対称に配置される。
【0080】
流入部181は、積層方向から見て、移送流路80から分岐流路91側に向かうに従って幅が広がった後に再度幅が狭くなる。流入部181は、積層方向から見て、第1仮想線VL1を中心として略対称に形成されている。流入部181は、積層方向から見て、第1壁面(対向壁面)181aと、第2壁面(対向壁面)181bと、を有する。
【0081】
第1壁面181aは、移送流路80の壁面と繋がる。第1壁面181aは、分岐バルブVに繋がる。また、第1壁面181aには、第2導入流路112の導入バルブViが位置する。第1壁面181aは、第1仮想線VL1を挟んで第1導入流路12と対向する。第1壁面181aは、移送流路80側から導入バルブViに達するまで、徐々に第1仮想線VL1から離れる。また、第1壁面181aは、導入バルブVi側から分岐バルブV側に向かうに従い、第1仮想線VL1に近づくように直線的に延びる。
【0082】
第2壁面181bは、移送流路80の壁面と繋がる。第2壁面181bは、分岐バルブVに繋がる。また、第2壁面181bには、第1導入流路12の導入バルブViが位置する。第2壁面181bは、第1仮想線VL1を挟んで第1壁面181aと対向する。第1壁面181aと第2壁面181bとは、第1仮想線VL1を中心に略対称に形成されている。第2壁面181bは、移送流路80側から導入バルブViに達するまで、徐々に第1仮想線VL1から離れる。また、第2壁面181bは、導入バルブVi側から分岐バルブV側に向かうに従い、第1仮想線VL1に近づくように直線的に延びる。
【0083】
第1導入流路12は、第2導入流路112に対向する第2壁面181bに設けられる。また、第2導入流路112は、第1導入流路12に対向する第1壁面181aに設けられる。すなわち、本変形例の2つの導入流路(第1導入流路12および第2導入流路112)のうち一方の導入流路は、他方の導入流路と対向する前記対向壁面に位置する。
【0084】
流入部181には、第1導入流路12又は第2導入流路112から溶液が導入される。第1導入流路12から流入部181に溶液を導入する場合、分岐バルブVおよび第2導入流路112の導入バルブViを閉塞した状態で第1導入流路12から移送流路80に向かって溶液を流す。同様に、第2導入流路112から流入部181に溶液を導入する場合、分岐バルブVおよび第1導入流路12の導入バルブViを閉塞した状態で第2導入流路112から移送流路80に向かって溶液を流す。
【0085】
本変形例において、流入部181において、第1導入流路12と第1壁面181aとの距離は、第1導入流路12と分岐バルブVとの距離より大きい。このため、第1導入流路12から流入部181に溶液を導入する場合、溶液は、液面位置が第1壁面181aに達する前に分岐バルブVの近傍の領域を満たす。
同様に、流入部181において、第2導入流路112と第2壁面181bとの距離は、第2導入流路112と分岐バルブVとの距離より大きい。このため、第2導入流路112から流入部181に溶液を導入する場合、溶液は、液面位置が第2壁面181bに達する前に分岐バルブVの近傍の領域を満たす。
【0086】
すなわち、本変形によれば、流入部181に対して、第1導入流路12および第2導入流路112の何れから溶液を導入する場合であっても、流路11の定量区画18(図2参照)に溶液に気泡なく充填することができ、溶液の正確な定量を行うことができる。
加えて、本変形例によれば、流入部181は、積層方向から見て、第1仮想線VL1を中心に略対称に形成されている。このため、分岐流路91から溶液を導入して流入部181を満たす場合であっても、溶液の液面は、第1仮想線VL1を中心に略対称となるように広がり移送流路80に達する。したがって、分岐流路91から流入部181に溶液を満たす場合であっても、流入部181内に気泡が生じることを抑制することができる。
【0087】
(合流部の変形例)
上述の実施形態に採用可能な変形例の合流部185について、図8を基に説明する。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0088】
図8は、変形例の合流部185の拡大図である。図8に示すように、合流部185には、移送流路80と、排出流路13と、第1分岐流路(分岐流路)95と、第2分岐流路(分岐流路)195と、が接続される。すなわち、流路11は、導入流路12と、排出流路13と、移送流路80と、第1分岐流路95と、第2分岐流路195と、を含む。移送流路80、排出流路13、第1分岐流路95および第2分岐流路195は、合流部185から放射状に延びる。
【0089】
合流部185と第1分岐流路95との間には、第1分岐バルブ(分岐バルブ)V1が設けられる。合流部185と第2分岐流路195との間には、第2分岐バルブ(分岐バルブ)V2が設けられる。合流部185と排出流路13との間には、排出バルブVoが設けられる。一方で、合流部185と移送流路80との間には、バルブが設けられていない。
【0090】
移送流路80と第1分岐流路95とは、合流部185を挟んで対向する。また、排出流路13および第2分岐流路195は、移送流路80と第1分岐流路95とを結ぶ第2仮想線VL2に対して、直交する方向に延びる。排出流路13と第2分岐流路195とは、第2仮想線VL2を挟んで反対側に配置される。また、排出流路13と第2分岐流路195とは、第2仮想線VL2に対して、互いに対称に配置される。
【0091】
合流部185は、積層方向から見て、略正方形状に形成されている。移送流路80、排出流路13、第1分岐流路95および第2分岐流路195は、それぞれ正方形の角部において合流部185に接続されている。
【0092】
合流部185は、積層方向から見て、第1壁面(側壁面)185aと、第2壁面(側壁面)185bと、第3壁面(側壁面)185cと、第4壁面(側壁面)185dと、を有する。第1壁面185a、第2壁面185b、第3壁面185cおよび第4壁面185dは、それぞれ正方形の各辺を構成する。
【0093】
第1壁面185aは、移送流路80の壁面と繋がる。また、第1壁面185aは、第2分岐バルブV2に繋がる。第1壁面185aは、第2仮想線VL2を挟んで第2壁面185bと対向する。第1壁面185aは、移送流路80側から第2分岐バルブV2に達するまで、徐々に第2仮想線VL2から離れるように直線的に延びる。すなわち、合流部185は、積層方向から見て、移送流路80と第2分岐バルブV2を直線的に繋ぐ第1壁面185aを有する。
【0094】
第2壁面185bは、移送流路80の壁面と繋がる。また、第2壁面185bは、導入バルブViに繋がる。第2壁面185bは、第2仮想線VL2を挟んで第1壁面185aと対向する。第2壁面185bは、移送流路80側から導入バルブViに達するまで、徐々に第2仮想線VL2から離れるように直線的に延びる。すなわち、合流部185は、積層方向から見て、移送流路80と排出バルブVoを直線的に繋ぐ第2壁面185bを有する。
【0095】
第3壁面185cは、排出バルブVoと第1分岐バルブV1とを繋ぐ。第3壁面185cは、第2仮想線VL2を挟んで第4壁面185dと対向する。第3壁面185cは、排出バルブVo側から第1分岐バルブV1に達するまで、徐々に第2仮想線VL2に近づくように直線的に延びる。すなわち、合流部185は、積層方向から見て、排出バルブVoと第1分岐バルブV1を直線的に繋ぐ第3壁面185cを有する。
【0096】
第4壁面185dは、第1分岐バルブV1と第2分岐バルブV2とを繋ぐ。第4壁面185dは、第2仮想線VL2を挟んで第3壁面185cと対向する。第4壁面185dは、第2分岐バルブV2側から第1分岐バルブV1に達するまで、徐々に第2仮想線VL2に近づくように直線的に延びる。すなわち、合流部185は、積層方向から見て、第1分岐バルブV1と第2分岐バルブV2とを直線的に繋ぐ第4壁面185dを有する。
【0097】
合流部185には、複数の段差部(第1段差部S1、第2段差部S2、第3段差部S3、第4段差部S4、第5段差部S5、第6段差部S6および第7段差部S7)が設けられる。第1~第7段差部S1~S7は、それぞれ直線状に延びる。
【0098】
第1段差部S1は、移送流路80と合流部185との境界に位置する。第1段差部S1は、移送流路80の積層方向の寸法に対して、合流部185の積層方向の寸法を小さくする。
第2段差部S2は、第2壁面185bから第1壁面185aに向かって延びる。第2段差部S2は、移送流路80側から第2分岐バルブV2側に向かうに従いこの順で合流部185の積層方向の寸法を小さくする。
第3~第5段差部S3~S5は、第2壁面185bから第1壁面185aに向かって延びる。第3~第5段差部S3~S5は、移送流路80から第1分岐バルブV1に向かってこの順で並んで配置される。第3~第5段差部S3~S5は、移送流路80側から第1分岐バルブV1側に向かうに従いこの順で合流部185の積層方向の寸法を小さくする。
第6および第7段差部S6、S7は、第2壁面185bから第3壁面185cに向かって延びる。第6および第7段差部S6、S7は、第1分岐バルブV1から排出バルブVoに向かってこの順で並んで配置される。第6および第7段差部S6、S7は、第1分岐バルブV1側から排出バルブVo側に向かうに従いこの順で合流部185の積層方向の寸法を小さくする。
【0099】
合流部185には、第1分岐バルブV1および第2分岐バルブV2を閉塞した状態で移送流路80から排出流路13に向かって溶液を流すことで、溶液が満たされる。このとき、排出バルブVoは、開放されている。
【0100】
合流部185には、移送流路80に隣接する第1領域B1と、第2分岐バルブV2に隣接する第2領域B2と、第1分岐バルブV1に隣接する第3領域B3と、排出バルブVoに隣接する第4領域B4と、が設けられる。
第1領域B1は、第1段差部S1と第2段差部S2との間に位置する。
第2領域B2は、第2段差部S2と第3段差部S3との間に位置する。また、合流部185は、第2領域B2において第2分岐バルブV2に接続される。
第3領域B3は、第5段差部S5と第6段差部S6との間に位置する。また、合流部185は、第3領域B3において第1分岐バルブV1に接続される。
第4領域B4は、第7段差部S7と排出バルブVoとの間に位置する。したがって、合流部185は、第4領域B4において排出バルブVoに接続される。
【0101】
本変形例において、合流部185の積層方向の寸法は、第1領域B1、第2領域B2、第3領域B3および第4領域B4の順に小さくなる。合流部185は、第1領域B1、第2領域B2、第3領域B3および第4領域B4の順で、流路抵抗が大きくなる。このため溶液は、合流部185において第1領域B1、第2領域B2、第3領域B3および第4領域B4の順で流れる。結果的に、合流部185内に気泡が生じることを抑制できる。
【0102】
加えて、本変形例によれば、第1領域B1、第2領域B2、第3領域B3および第4領域B4は、この順で積層方向の寸法を小さくするように、間にそれぞれ段差部が配置される。それぞれの段差部は、ゲートとして機能する。したがって、一対の段差部の間に挟まれた領域内に溶液が満たされた後に、後段の一対の段差部の間に挟まれた領域内に溶液が流入する。このように、合流部185に段差部を設けることで、合流部185の内部において液面位置を制御し、合流部185内に気泡が生じることを抑制できる。
【0103】
本変形例において、合流部185は、略正方形状であり、各流路は合流部の角部に接続される。すなわち、移送流路80と第2分岐バルブV2を繋ぐ側壁面(第1壁面185a)、移送流路80と排出バルブVoとを繋ぐ側壁面(第2壁面185b)、排出バルブVoと第1分岐バルブV1とを繋ぐ側壁面(第3壁面185c)および第1分岐バルブV1と第2分岐バルブV2とを繋ぐ側壁面(第4壁面185d)は、それぞれ積層方向から見て直線状である。このため、合流部185に角部が形成されることが抑制され、合流部185に溶液が満たされる過程で気泡が発生することを抑制できる。
【0104】
本変形例において、第1分岐バルブV1と第2分岐バルブV2とは、合流部185を中心とする周方向に沿って隣り合って配置される。第1分岐バルブV1は、排出バルブVoと合流部を中心とする周方向に沿って隣り合って配置される。第2分岐バルブV2は、移送流路80と合流部185を中心とする周方向に沿って隣り合って配置される。また、合流部185は、第3領域B3の積層方向の寸法が、第2領域B2の積層方向の寸法より、小さい。このため、移送流路80から合流部185に流入した溶液を、周方向に沿って第2領域B2、第3領域B3の順で充填させた後に、第4領域B4に到達させることができる。
【0105】
以上に、本発明の実施形態およびその変形例について説明したが、各実施形態およびその変形例における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0106】
1…流体デバイス、5…基材、9…基板、11…流路、12…導入流路(第1導入流路)、13…排出流路、14,21…溝部、80…移送流路、81,181…流入部、81a,181a…第1壁面(対向壁面)、81b,181b…第2壁面(対向壁面)、85,185…合流部、85a,185a…第1壁面(側壁面)、85b,185b…第2壁面(側壁面)、85c,185c…第3壁面(側壁面)、91…分岐流路、95…第1分岐流路(分岐流路)、112…第2導入流路(導入流路)、185d…第4壁面(側壁面)、195…第2分岐流路(分岐流路)、S…溶液、SL…傾斜部、V…分岐バルブ(定量バルブ)、V1…第1分岐バルブ(分岐バルブ)、V2…第2分岐バルブ(分岐バルブ)、Vi…導入バルブ、Vo…排出バルブ、VL1…第1仮想線(仮想線)、VL2…第2仮想線(仮想線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8