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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂製品の製造方法およびコア
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/36 20060101AFI20220726BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20220726BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20220726BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20220726BHJP
   B29C 70/46 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B29C43/36
B29C33/38
B29C43/34
B29C70/16
B29C70/46
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2021504897
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007384
(87)【国際公開番号】W WO2020184163
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2019042164
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】加地 暁
(72)【発明者】
【氏名】高野 恒男
(72)【発明者】
【氏名】本間 孝志
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/079824(WO,A1)
【文献】特開2008-238566(JP,A)
【文献】特表2009-542470(JP,A)
【文献】特表2017-537822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00-43/58
B29C 70/00-70/88
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可融部と該可融部を覆う外皮とからなるコアを準備するコア準備工程と、プリプレグ予備成形体を該コアと共に金型内に配置し、該金型内で加熱および加圧して硬化物とする成形工程と、該可融部の材料を該硬化物から除去するコア除去工程とを有し、該成形工程では、該プリプレグ予備成形体の少なくとも一部が該コアの膨張により加圧される、繊維強化樹脂製品の製造方法であって、前記可融部は有機物からなる第一可融部と、有機物からなり、かつ、該第一可融部よりも融解温度が高い第二可融部とからなり、前記コアにおいて前記第一可融部は前記第二可融部により完全に包囲されないように配置され、該第一可融部の材料と該第二可融部の材料は互いに相溶せず、かつ、前記成形工程において該第一可融部は一部または全部が融解し、該第二可融部は一部または全部が融解しないことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記成形工程では、前記プリプレグ予備成形体と前記コアに加えてプレートが前記金型内に配置され、該プレートは前記プリプレグ予備成形体の少なくとも一部と前記コアとの間に配置される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記成形工程における金型温度Tと前記第一可融部の融解温度Tm1の差T-Tm1が20℃以上である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記成形工程における金型温度Tが140~150℃であり、前記第一可融部の融解温度Tm1が120℃未満である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記成形工程における金型温度Tと前記第二可融部の融解温度Tm2の差T-Tm2が正である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第二可融部の融解温度Tm2と前記第一可融部の融解温度Tm1との差Tm2-Tm1が15℃以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記成形工程における金型温度Tと前記第二可融部の融解温度Tm2の差T-Tm2が5℃以下である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第二可融部の融解温度Tm2と前記第一可融部の融解温度Tm1との差Tm2-Tm1が20℃以上であり、前記成形工程における金型温度Tと前記第二可融部の融解温度Tm2の差T-Tm2が5℃より大きい、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第一可融部の融解温度Tm1が50℃以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記成形工程における成形時間が5分以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記コア準備工程では前記外皮をUV硬化型エラストマーであってもよいエラストマーで形成する、請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記コア除去工程では、前記可融部の材料を融解させて除去する、請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記コア除去工程では、前記第一可融部の材料が融解し前記第二可融部の材料が融解しない温度で前記第一可融部の材料を除去し、その後で、前記第二可融部の材料を除去する、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記コア除去工程の後、前記第一可融部の材料と前記第二可融部の材料を、その融解温度の差を利用して分離する、請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
同一温度において前記第一可融部の融解物と前記第二可融部の融解物の間に比重差がある、請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記コア除去工程において、または、前記コア除去工程の後、前記比重差を利用して前記第一可融部の材料と前記第二可融部の材料を分離する、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記第一可融部と前記第二可融部がそれぞれワックスからなる、請求項1~16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記第一可融部と前記第二可融部の一方が、極性基を有する化合物を主成分とするワックスからなり、他方が、炭化水素を主成分とするワックスからなる、請求項1~16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記第一可融部と前記第二可融部の一方が、ヒドロキシ脂肪酸アミド、脂肪酸アミドおよび脂肪酸エステルから選ばれる一種以上の化合物を含有するワックスからなり、他方が炭化水素を主成分とするワックスからなる、請求項1~16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記第一可融部が、炭化水素を主成分とするワックスからなる、請求項18または19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記炭化水素を主成分とするワックスがポリエチレンワックスからなる、請求項1820のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項22】
前記繊維強化樹脂製品が、中空部、筒状部、断面U字形部およびアンダーカット部の少なくともいずれかに該当する構造を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項23】
前記繊維強化樹脂製品が、輸送機器の部品またはその一部である、請求項1~22のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項24】
繊維と熱硬化性樹脂とからなる複合体を金型内で加熱および加圧して硬化させるときに該金型内に配置され、該複合体の少なくとも一部を加圧するために用いられるコアであって、可融部と該可融部を覆う外皮とからなり、該可融部は有機物からなる第一可融部と、有機物からなり、かつ、該第一可融部よりも融解温度が高い第二可融部とからなり、前記第一可融部は前記第二可融部により完全に包囲されないように配置され、該第一可融部の材料と該第二可融部の材料が互いに相溶しないことを特徴とするコア。
【請求項25】
前記第一可融部の融解温度が50℃以上である、請求項24に記載のコア。
【請求項26】
前記第二可融部の融解温度Tm2と前記第一可融部の融解温度Tm1との差Tm2-Tm1が15℃以上である、請求項24または25に記載のコア。
【請求項27】
前記第一可融部の融解温度が120℃未満である、請求項2426のいずれか一項に記載のコア。
【請求項28】
前記第二可融部の融解温度が135℃以上である、請求項2427のいずれか一項に記載のコア。
【請求項29】
同一温度において前記第一可融部の融解物と前記第二可融部の融解物の間に比重差がある、請求項2428のいずれか一項に記載のコア。
【請求項30】
前記第一可融部と前記第二可融部がそれぞれワックスからなる、請求項2429のいずれか一項に記載のコア。
【請求項31】
前記第一可融部と前記第二可融部の一方が、極性基を有する化合物を主成分とするワックスからなり、他方が、炭化水素を主成分とするワックスからなる、請求項2429のいずれか一項に記載のコア。
【請求項32】
前記第一可融部と前記第二可融部の一方が、ヒドロキシ脂肪酸アミド、脂肪酸アミドおよび脂肪酸エステルから選ばれる一種以上の化合物を含有するワックスからなり、他方が炭化水素を主成分とするワックスからなる、請求項2429のいずれか一項に記載のコア。
【請求項33】
前記第一可融部が、炭化水素を主成分とするワックスからなる、請求項31または32に記載のコア。
【請求項34】
前記外皮がエラストマーからなる、請求項2433のいずれか一項に記載のコア。
【請求項35】
前記外皮がUV硬化されたエラストマーからなる、請求項2433のいずれか一項に記載のコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂製品の製造方法およびコアに関する。
本願は、2019年3月8日に、日本に出願された特願2019-042164号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
中空部、筒状部、断面U字形部、アンダーカット部などを有する繊維強化樹脂(FRP; Fiber Reinforced Plastic)製品が、自動車用の補強部材(reinforcement)を含む様々な用途で使用されている。
中空部や断面U字形部を有するFRP製品の製造方法として、プリプレグ予備成形体(prepreg preform)をワックスからなるコアと共に金型内に配置し、該金型内で該コアを膨張させることにより、加圧しながら硬化させる方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/079824号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、可融部を有するコアを加圧手段に用いてプリプレグ予備成形体を加圧しながら硬化させることを含む繊維強化樹脂製品の製造方法に関する、有益な改良を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は以下を含むが、これらに限定されるものではない。
[1] 可融部と該可融部を覆う外皮とからなるコアを準備するコア準備工程と、プリプレグ予備成形体を該コアと共に金型内に配置し、該金型内で加熱および加圧して硬化物とする成形工程と、該可融部の材料を該硬化物から除去するコア除去工程とを有し、該成形工程では、該プリプレグ予備成形体の少なくとも一部が該コアの膨張により加圧される、繊維強化樹脂製品の製造方法であって、前記可融部は第一可融部と該第一可融部よりも融解温度が高い第二可融部とからなり、該第一可融部の材料と該第二可融部の材料は互いに相溶せず、かつ、前記成形工程において該第一可融部は一部または全部が融解し、該第二可融部は一部または全部が融解しないことを特徴とする製造方法。
[2] 前記成形工程では、前記プリプレグ予備成形体と前記コアに加えてプレートが前記金型内に配置され、該プレートは前記プリプレグ予備成形体の少なくとも一部と前記コアとの間に配置される、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記成形工程における金型温度Tと前記第一可融部の融解温度Tm1の差T-Tm1が20℃以上である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4] 前記成形工程における金型温度Tが140~150℃であり、前記第一可融部の融解温度Tm1が120℃未満である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[5] 前記成形工程における金型温度Tと前記第二可融部の融解温度Tm2の差T-Tm2が正である、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記第二可融部の融解温度Tm2と前記第一可融部の融解温度Tm1との差Tm2-Tm1が15℃以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 前記成形工程における金型温度Tと前記第二可融部の融解温度Tm2の差T-Tm2が5℃以下である、[6]に記載の製造方法。
[8] 前記第二可融部の融解温度Tm2と前記第一可融部の融解温度Tm1との差Tm2-Tm1が20℃以上であり、前記成形工程における金型温度Tと前記第二可融部の融解温度Tm2の差T-Tm2が5℃より大きい、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[9] 前記第一可融部の融解温度Tm1が50℃以上である、[1]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10] 前記成形工程における成形時間が5分以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11] 前記コア準備工程では前記外皮をUV硬化型エラストマーであってもよいエラストマーで形成する、[1]~[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12] 前記コア除去工程では、前記可融部の材料を融解させて除去する、[1]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13] 前記コア除去工程では、前記第一可融部の材料が融解し前記第二可融部の材料が融解しない温度で前記第一可融部の材料を除去し、その後で、前記第二可融部の材料を除去する、[12]に記載の製造方法。
[14] 前記コア除去工程の後、前記第一可融部の材料と前記第二可融部の材料を、その融解温度の差を利用して分離する、[12]に記載の製造方法。
[15] 同一温度において前記第一可融部の融解物と前記第二可融部の融解物の間に比重差がある、[1]~[12]のいずれかに記載の製造方法。
[16] 前記コア除去工程において、または、前記コア除去工程の後、前記比重差を利用して前記第一可融部の材料と前記第二可融部の材料を分離する、[15]に記載の製造方法。
[17] 前記第一可融部と前記第二可融部の少なくとも一方が有機物からなる、[1]~[16]のいずれかに記載の製造方法。
[18] 前記第一可融部と前記第二可融部がそれぞれ有機物からなる、[1]~[16]のいずれかに記載の製造方法。
[19] 前記第一可融部と前記第二可融部がそれぞれワックスからなる、[1]~[16]のいずれかに記載の製造方法。
[20] 前記第一可融部と前記第二可融部の一方が、極性基を有する化合物を主成分とするワックスからなり、他方が、炭化水素を主成分とするワックスからなる、[1]~[16]のいずれかに記載の製造方法。
[21] 前記第一可融部と前記第二可融部の一方が、ヒドロキシ脂肪酸アミド、脂肪酸アミドおよび脂肪酸エステルから選ばれる一種以上の化合物を含有するワックスからなり、他方が炭化水素を主成分とするワックスからなる、[1]~[16]のいずれかに記載の製造方法。
[22] 前記第一可融部が、炭化水素を主成分とするワックスからなる、[20]または[21]に記載の製造方法。
[23] 前記炭化水素を主成分とするワックスがポリエチレンワックスからなる、[20]~[22]のいずれかに記載の製造方法。
[24] プリプレグ予備成形体を、可融部と該可融部を覆う外皮とからなるコアと共に金型内に配置し、該金型内で加熱および加圧して硬化物とする工程を有し、該可融部は、極性基を有する化合物を主成分とするワックスと、炭化水素を主成分とするワックスとからなる、繊維強化樹脂製品の製造方法。
[25] プリプレグ予備成形体を、可融部と該可融部を覆う外皮とからなるコアと共に金型内に配置し、該金型内で加熱および加圧して硬化物とする工程を有し、該可融部は、ヒドロキシ脂肪酸アミド、脂肪酸アミドおよび脂肪酸エステルから選ばれる一種以上の化合物を含有するワックスと、炭化水素を主成分とするワックスとからなる、繊維強化樹脂製品の製造方法。
[26] 前記炭化水素を主成分とするワックスがポリエチレンワックスからなる、[24]または[25]に記載の製造方法。
[27] 前記繊維強化樹脂製品が、中空部、筒状部、断面U字形部およびアンダーカット部の少なくともいずれかに該当する構造を有する、[1]~[26]のいずれかに記載の製造方法。
[28] 前記繊維強化樹脂製品が、輸送機器の部品またはその一部である、[1]~[27]のいずれかに記載の製造方法。
[29] 繊維と熱硬化性樹脂とからなる複合体を金型内で加熱および加圧して硬化させるときに該金型内に配置され、該複合体の少なくとも一部を加圧するために用いられるコアであって、可融部と該可融部を覆う外皮とからなり、該可融部は第一可融部と該第一可融部よりも融解温度が高い第二可融部とからなり、該第一可融部の材料と該第二可融部の材料が互いに相溶しないことを特徴とするコア。
[30] 前記第一可融部の融解温度が50℃以上である、[29]に記載のコア。
[31] 前記第二可融部の融解温度Tm2と前記第一可融部の融解温度Tm1との差Tm2-Tm1が15℃以上である、[29]または[30]に記載のコア。
[32] 前記第一可融部の融解温度が120℃未満である、[29]~[31]のいずれかに記載のコア。
[33] 前記第二可融部の融解温度が135℃以上である、[29]~[32]のいずれかに記載のコア。
[34] 同一温度において前記第一可融部の融解物と前記第二可融部の融解物の間に比重差がある、[29]~[33]のいずれかに記載のコア。
[35] 前記第一可融部と前記第二可融部の少なくとも一方が有機物からなる、[29]~[34]のいずれかに記載のコア。
[36] 前記第一可融部と前記第二可融部がそれぞれ有機物からなる、[29]~[34]のいずれかに記載のコア。
[37] 前記第一可融部と前記第二可融部がそれぞれワックスからなる、[29]~[34]のいずれかに記載のコア。
[38] 前記第一可融部と前記第二可融部の一方が、極性基を有する化合物を主成分とするワックスからなり、他方が、炭化水素を主成分とするワックスからなる、[29]~[34]のいずれか一項に記載のコア。
[39] 前記第一可融部と前記第二可融部の一方が、ヒドロキシ脂肪酸アミド、脂肪酸アミドおよび脂肪酸エステルから選ばれる一種以上の化合物を含有するワックスからなり、他方が炭化水素を主成分とするワックスからなる、[29]~[34]のいずれかに記載のコア。
[40] 前記第一可融部が、炭化水素を主成分とするワックスからなる、[38]または[39]に記載のコア。
[41] 繊維と熱硬化性樹脂とからなる複合体を金型内で加熱および加圧して硬化させるときに該金型内に配置され、該複合体の少なくとも一部を加圧するために用いられるコアであって、可融部と該可融部を覆う外皮とからなり、該可融部は極性基を有する化合物を主成分とするワックスと、炭化水素を主成分とするワックスとからなることを特徴とするコア。
[42] 繊維と熱硬化性樹脂とからなる複合体を金型内で加熱および加圧して硬化させるときに該金型内に配置され、該複合体の少なくとも一部を加圧するために用いられるコアであって、可融部と該可融部を覆う外皮とからなり、該可融部はヒドロキシ脂肪酸アミド、脂肪酸アミドおよび脂肪酸エステルから選ばれる一種以上の化合物を含有するワックスと、炭化水素を主成分とするワックスとからなることを特徴とするコア。
[43] 前記炭化水素を主成分とするワックスがポリエチレンワックスからなる、[38]~[42]のいずれかに記載のコア。
[44] 前記外皮がエラストマーからなる、[29] ~[43]のいずれかに記載のコア。
[45] 前記外皮がUV硬化されたエラストマーからなる、[29]~[43]のいずれかに記載のコア。
【発明の効果】
【0006】
可融部を有するコアを加圧手段に用いてプリプレグ予備成形体を加圧しながら硬化させることを含む繊維強化樹脂製品の製造方法に関する、有益な改良が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の実施形態に係るFRP製品製造方法を示すフロー図である。
図2図2(a)~(c)は、それぞれ、コア準備工程で準備されるコアの構造例を示す模式断面図である。
図3図3(a)および(b)は、それぞれ、ほぼ正味形状を有するプリプレグ予備成形体がコアの周りを囲むように配置されたところを示す模式断面図である。
図4図4は、プリプレグ予備成形体を、コアと共に金型のキャビティ内に配置したところを示す模式断面図である。
図5図5(a)は、プリプレグシートの端部間の突き合わせ接合部を示す模式断面図であり、図5(b)は、プリプレグシートの端部間のオーバーラップ接合部を示す模式断面図である。
図6図6は、断面U字形のプリプレグ予備成形体を、コアと共に金型内に配置したところを示す模式断面図である。
図7図7は、中心軸方向の中央部がくびれた円筒形のFRP製品を作るために、ほぼ正味形状に賦形したプリプレグ予備成形体をコアと共に金型内に配置したところを示す模式断面図である。
図8図8は、中空(または筒状)部と断面U字形部を部分的に有するFRP製品を示す模式断面図である。
図9図9は、実験で試作した、底面と2つの側面からなる断面U字形のFRP物品の外観を模式的に示す斜視図である。
図10】成形工程において金型内の圧力が時間と共に変化する様子を示すグラフである(実験1)。
図11】成形工程において金型内の圧力が時間と共に変化する様子を示すグラフである(実験2)。
図12】成形工程において金型内の圧力が時間と共に変化する様子を示すグラフである(実験3)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
当業者にはよく知られているように、プリプレグ(prepreg: pre-impregnated composite material)は、FRP製品の製造で中間材料として使用される、繊維と熱硬化性樹脂とからなる複合体である。FRP製品は、プリプレグを予備成形したうえ、金型内で硬化させることにより製造される。
プリプレグにおける繊維の形態は、長繊維、織物、不織布、ノンクリンプファブリック、短繊維など様々である。ひとつの平面内で一方向に引き揃えた長繊維を樹脂で含浸させたものは一方向プリプレグ(UDプリプレグ)と呼ばれ、織物を樹脂で含浸させたものはクロスプリプレグと呼ばれる。チョップされた短繊維からなるマットを樹脂で含浸させたプリプレグはSMC(sheet molding compound)と呼ばれる。単一の長繊維束を樹脂で含浸させたプリプレグは、トウプリプレグと呼ばれる。
プリプレグに使用される繊維は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維である。2種以上の繊維が併用されることもある。
【0009】
プリプレグに用いられる熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、フェノール樹脂である。2種以上の熱硬化性樹脂の混合物が用いられることもある。
【0010】
プリプレグにおける熱硬化性樹脂の含有量は、多くの場合15~50質量%である。該含有量は、15~20質量%、20~25質量%、25~40質量%、40~45質量%または45~50質量%であり得る。
【0011】
プリプレグには、様々な添加剤が添加され得る。例えば、難燃剤、消泡剤、脱泡剤、離型剤、粒子状充填剤、着色剤、シランカップリング剤等である。
【0012】
1.FRP製品の製造方法
本発明の一態様はFRP製品の製造方法に関する。
本発明の実施形態に係るFRP製品製造方法は、図1にフローを示すように、少なくとも次の3つの工程を有する。
(i)可融部と該可融部を覆う外皮とからなるコアを準備するコア準備工程。
(ii)プリプレグ予備成形体を前記コアと共に金型内に配置し、該金型内で加熱および加圧して硬化物(FRP製品)とする成形工程。
(iii)前記可融部の材料を前記硬化物から除去するコア除去工程。
【0013】
以下、FRP製品として中空の直方体物品を製造する場合を例に、図面を参照しつつ、上記(i)~(iii)の各工程を詳細に説明する。
【0014】
(1)コア準備工程
図2は、コア準備工程で準備されるコアの構造を示す断面図である。
コア10は可融部11と該可融部を覆う外皮12とからなり、可融部11は、更に、第一可融部11aと第二可融部11bとからなる。
第一可融部11aと第二可融部11bは融解温度が互いに異なっており、第一可融部11aの融解温度よりも第二可融部11bの融解温度の方が高い。
第一可融部11aと第二可融部11bがそれぞれ有すべき好ましい融解温度については後述する。
第一可融部11aの材料と第二可融部11bの材料は互いに相溶しない。そのため、第一可融部11aの融解物が第二可融部11bを溶解させることはなく、また、第一可融部11aの融解物と第二可融部11bの融解物をひとつの容器に入れたとき、両者は二相に分離する。
【0015】
第一可融部11aと第二可融部11bの配置は、第一可融部11aが第二可融部11bにより完全に包囲されない配置であればよい。
例えば、図2(a)に示すように、第一可融部11aで第二可融部11bの周りを囲んでもよいし、図2(b)に示すように、第一可融部11aと第二可融部11bを互いに隣接させてもよい。
図2(c)に示すように、第一可融部11aは複数の部分に分かれていてもよい。
第二可融部11bも、必ずしもひとつの塊であることが求められるものではなく、複数のピースからなっていてもよい。
第一可融部11aと第二可融部11bは互いに接していれば十分であり、強固に結合している必要はない。
【0016】
第一可融部11aと第二可融部11bは、それぞれ有機物からなることが好ましく、特にワックスからなることが好ましい。ワックスのような有機物は、切断、切削、研磨のような機械加工とモールドのどちらでも賦形できるし、モールドで賦形した後に機械加工で形状を容易に修正できる。有機物を用いて形成することは、可融部11を軽量化するうえでも有利である。
熱伝導性が低いという有機物の性質も、可融部11の材料として利点となる。
可融部11の材料として使用し得るワックスに限定はなく、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスのような石油ワックス、フィッシャー・トロプシュ・ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、脂肪酸アミドワックス、ヒドロキシ脂肪酸アミドワックス、脂肪酸エステルワックスのような合成ワックス、石油ワックスや合成ワックスを化学的に変成させてなる酸化パラフィンワックスや酸化ポリオレフィンワックスのようなワックス、これらのワックスに合成樹脂をブレンドしてなるワックス、異種ワックスをブレンドしてなるワックスなどが例示される。
【0017】
本発明者等による検討によれば、極性基を有する化合物を主成分とするワックスである、ヒドロキシ脂肪酸アミドワックス、脂肪酸アミドワックスおよび脂肪酸エステルワックスは、ポリエチレンワックスと相溶性を示さなかったが、ヒドロキシ脂肪酸アミドワックスと脂肪酸アミドワックスは相溶した。
このことから、第一可融部11aと第二可融部11bの両方をワックスで形成する場合、いずれか一方はヒドロキシ脂肪酸アミド、脂肪酸アミドおよび脂肪酸エステルから選ばれる一種以上の化合物を含有するワックスで形成し、他方はポリエチレンワックス、石油ワックス、フィッシャー・トロプシュ・ワックスおよびポリプロピレンワックスのような炭化水素を主成分とするワックス、とりわけポリエチレンワックスで形成することが好ましい。
【0018】
第一可融部11aと第二可融部11bは、一方を有機物で形成し、他方をウッド合金、ローズ合金、リポヴィッツ合金、ニュートン合金等のような易融合金で形成することもできる。
【0019】
後の成形工程でコア10が膨張するときに外皮12が破断しないために、外皮12の材料は伸び変形が可能でなくてはならない。この伸び変形は、弾性的であっても、塑性的であっても、その両方の性質を有してもよい。
従って、外皮12の好ましい材料は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーンのような合成ポリマーであり、より好ましくは、これらのポリマーからなるエラストマーである。
【0020】
コア10を製造するときは、例えば、第一可融部11a用に準備した第一のワックス片と、第二可融部11b用に準備した第二のワックス片を、外皮12用に準備したポリマーフィルムで包み、接着または融着により密封する。ここで、第一のワックス片と第二のワックス片は、作製すべきコアと後の工程で作製するプリプレグ予備成形体との間にできるだけ空隙が生じないよう、事前に成形される。
外皮12は、上記ポリマーからなるシュリンクチューブを用いて形成することもできる。可融部用のワックス片を入れたシュリンクチューブを熱収縮させ、更に該シュリンクチューブの両端をヒートシールすればよい。
外皮は、上記ポリマーからなる低温硬化型の液状ゴムを用いて形成することもできる。可融部用のワックスの表面に液状ゴムを塗布し、該ワックスが融解しない温度で硬化させればよい。変形法では、液状ゴムを可融部用のワックスの表面に塗布した後、塗布面に補強材として合成樹脂製の伸び変形可能な不織布を貼り付け、さらにその上に液状ゴムを塗布したうえで、液状ゴムを硬化させてもよい。
外皮12は、UV硬化型エラストマーで形成することもできる。UV硬化型エラストマーは、硬化物がゴムのような弾性体となるUV硬化型樹脂であり、その一例はUV硬化型シリコーンゴムやUV硬化型ウレタンアクリレートである。UV硬化型エラストマーは、室温でも短時間で硬化させることができる点で、外皮12の材料に好適である。
【0021】
(2)成形工程
成形工程では、まず、1枚または2枚以上のプリプレグシートから、ほぼ正味形状(near net shape)を有するプリプレグ予備成形体20を作製し、これを図3(a)に示すように、コア10の周囲に配置する。一例では、プリプレグ予備成形体20を作製してからコア10と組み合わせるのではなく、最初からコア10を内包した状態、すなわち図3(a)に示す状態となるように、プリプレグ予備成形体20を作製してもよい。
図3(b)に示すように、コア10とプリプレグ予備成形体20の間にプレート40を介在させることもできる。プレート40は製造すべきFRP製品の形状に合わせて折り曲げられているが、それに代えて、平たいプレートを組み合わせて用いてもよい。プレート40は、成形工程で実質的に変形しないことが必要なため、金属(合金を含む)、セラミックスまたは耐熱性硬質樹脂で形成され、好ましくは金属で形成される。好適な金属として、限定するものではないが、ステンレスとアルミニウムが例示される。
プリプレグ予備成形体20の作製後、図4に示すように、プリプレグ予備成形体20をコア10と共に、下型31と上型32とからなる金型30のキャビティ内に配置する。このとき、金型30は予備加熱されていることが好ましい。
次いで、金型30を型締めすると共に加熱し、プリプレグ予備成形体20を硬化させる。金型30の温度は、好ましくは110℃以上であるが、限定するものではない。
【0022】
加熱されることによりコア10は膨張し、プリプレグ予備成形体20は金型30の内面に押し付けられる。換言すれば、金型30の型締め力に抗してコア10の体積が増加しようとするために内圧が発生し、プリプレグ予備成形体20に印加される。
加熱され始めてから暫くの間、コア10の体積は熱膨張により緩やかに増加するだけなので、プリプレグ予備成形体20に加わる圧力は弱いが、コア10の表面近傍の温度が第一可融部11aの融解温度に達し、第一可融部11aが融解し始めると、プリプレグ予備成形体20に加わる圧力は急激に上昇する。融解に伴う体積増加は大きいからである。
コア10とプリプレグ予備成形体20が金型30内に配置された時点で存在し得た、コア10とプリプレグ予備成形体20の間の空隙およびプリプレグ予備成形体20と金型30の間の空隙は、コア10が膨張することにより消失する。
コア10の中心部分をなす可融部11が有機物からなるとき、その熱伝導性の低さのために、金型30から伝わる熱はコア10の表面近傍に溜まり易い。このことは、第一可融部11aの融解促進という好ましい結果を与える。
【0023】
コア10の膨張には方向性が無いので、プリプレグ予備成形体20は、その全ての部分がコア10と金型30の間で十分に加圧される。
コア10として、図2(b)または(c)に示すものを用いた場合でも、図2(a)のコア10を用いたときと同様の結果が得られる。なぜなら、第一可融部11aの融解物は流動して、第二可融部11bと外皮12の間に入り込んでいくからである。
図3(b)の例のように、コア10とプリプレグ予備成形体20の間にプレート40を介在させると、プリプレグ予備成形体20が均一に加圧されるため、硬化物の厚さや品質の均一性が良好となる。
【0024】
第一可融部11aの融解によるコア10の大きな膨張を利用してプリプレグ予備成形体20を加圧するには、第一可融部11aの融解温度Tm1(第一可融部を成す可融材料の融解温度)が、成形時の金型30の温度Tよりも低いことが必要である。
第一可融部11aを早く融解させて成形時間を短縮するために、成形時の金型温度Tと第一可融部11aの融解温度Tm1の差T-Tm1は、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、60℃以上や70℃以上であってもよい。
例えば、金型30の温度を140~150℃という比較的高い温度として成形時間を5分以下に抑える場合、第一可融部11aの融解温度Tm1は、好ましくは120℃未満、より好ましくは110℃未満、更に好ましくは90℃未満である。
コア10の第一可融部11aの融解温度Tm1は、室温(通常は25℃)より高ければよく、好ましくは50℃以上である。
【0025】
コア10の第二可融部11bは、成形工程で全部が融解することはなく、全く融解しなくてもよい。
成形工程でコア10の第二可融部11bが実質的に融解しないとき、同工程におけるコア10の膨張の規模は、第一可融部11aの体積により決定付けられる。つまり、第二可融部11bを実質的に融解させなければ、プリプレグ予備成形体20に加える圧力を、第一可融部11aの体積を調節することによって制御できる。
成形工程で第二可融部11bを実質的に融解させないために有効なのは、成形時の金型30の温度Tと第二可融部11bの融解温度Tm2との差T-Tm2を小さくすること(差T-Tm2は負であってもよい)、および、第二可融部11bの融解温度Tm2と第一可融部11aの融解温度Tm1との差Tm2-Tm1を大きくすることである。
例えば、第二可融部11bの融解温度Tm2と第一可融部11aの融解温度Tm1との差Tm2-Tm1が十分に大きいとき、第二可融部11bの融解温度Tm2が金型温度Tより低くても(すなわち、T-Tm2が正でも)、成形工程において第二可融部11bの実質的な融解は抑えられ得るので、第二可融部11bの材料に関する選択の幅が広がる。
本発明者等が行った実験(後述)から判明したところでは、第二可融部11bの融解温度と第一可融部11aの融解温度との差Tm2-Tm1が17℃以上あれば、成形時の金型30の温度Tと第二可融部11bの融解温度Tm2との差T-Tm2が5℃以下のとき、実験で採用した5分間という成形時間内に第二可融部11bは殆ど融解しない。
従って、第二可融部11bの融解温度Tm2と第一可融部11aの融解温度Tm1との差Tm2-Tm1は、好ましくは15℃以上、より好ましくは25℃以上、更に好ましくは35℃以上であり、45℃以上であってもよい。
第二可融部11bの融解温度と第一可融部11aの融解温度との差Tm2-Tm1が20℃以上のとき、成形時の金型30の温度と第二可融部11bの融解温度Tm2との差T-Tm2は5℃より大きくてもよい。
【0026】
プリプレグ予備成形体20は、1枚または2枚以上のプリプレグシートから作られているため、図5(a)に示すようなプリプレグシート21の端部間の突き合わせ接合部、および、図5(b)に示すようなプリプレグシート21の端部間のオーバーラップ接合部の、少なくともいずれかを有している。
成形工程では、このような接合部にあるプリプレグシート21の端部間の隙間が、コア10の外皮12によりシールされることによって、コア10の可融部11の融解物がかかる隙間を通してプリプレグ予備成形体20と金型30の間に入り込むことが防止される。外皮12がこのようにシールとして働き得るのは、柔軟で変形可能な材料からなるためである。
図3(b)に示す例のように、コア10とプリプレグ予備成形体20の間にプレート40を介在させる態様では、プレート40同士の間の隙間、または、プリプレグ予備成形体20とプレート40の間の隙間が、コアの外皮12によりシールされる。
【0027】
(3)コア除去工程
成形工程の完了後、プリプレグ予備成形体20の硬化により得られたFRP製品を金型30から取り出し、内部の空洞を満たしているコア10の材料を除去する。
除去するのは、主として可融部11の材料である。外皮12は、FRP製品の内面に固着していてFRP製品の機能と外観に影響しなければ、除去する必要はない。
コア10の可融部11は、例えばオーブン中で加熱することにより融解させ、予めドリルやホールソーを用いてFRP製品に設けた排出孔から排出させることができる。加熱は、FRP製品の温度が熱変形温度以上とならないように行う。
この方法でコア10の可融部11を速やかに除去できるためには、第二可融部11bの融解温度がFRP製品の熱変形温度(荷重たわみ温度)より20℃以上低いことが好ましい。
排出孔に加えてエアブロー孔をFRP製品に設け、エアブローを行うことにより、排出を促進してもよい。
他の実施形態において、中空でなく、かつアンダーカットを有さないFRP製品を製造するときには、コアを除去するのに必ずしも可融部を融解させなくてもよい。
【0028】
第一可融部11aの材料と第二可融部11bの材料は互いに非相溶であるため、融解温度の差を利用して分離させ、再利用することができる。
分離は、第一可融部11aと第二可融部11bの材料をFRP製品から除去した後に行い得る。
一例では、最初に、第一可融部11aの材料だけが融解する温度に加熱して、第一可融部11aの材料をFRP製品から排出させ、次いで、第二可融部11bの融解温度以上に加熱し、第二可融部11bの材料を融解させてFRP製品から排出させてもよい。
第一可融部11aの融解物と第二可融部11bの融解物の比重が同一温度において異なる場合は、比重差を利用して第一可融部11aの材料と第二可融部11bの材料を分離させることもできる。
【0029】
以上、FRP製品として中空の直方体を製造する場合を例に、実施形態に係るFRP製品の製造方法の各工程を説明したが、本製造方法は中空の直方体だけでなく、様々な形態のFRP製品の製造に使用できる。
例えば、図2(a)~(c)のいずれかに示すコアの周囲に、角筒形状に賦形したプリプレグ予備成形体を配置して硬化させれば、FRP製の角筒を作ることができる。
あるいは、図2(a)~(c)のいずれかに示すコアの周囲に、断面U字形に賦形したプリプレグ予備成形体を配置して硬化させれば、U字形断面を有するFRP製品を作ることができる。
図6は、一例として、断面U字形のプリプレグ予備成形体20を金型30内に配置したところを示している。成形工程では、コア10の外皮12がシールとして働き、コア10の可融部11の融解物がプリプレグ予備成形体20と金型30の間に入り込むことが防止される。
実施形態に係る製造方法は、アンダーカット部を有するFRP製品の製造にも好ましく適用できる。図7は、一例として、中心軸方向の中央部がくびれた円筒形のFRP製品を作るために、ほぼ正味形状に賦形したプリプレグ予備成形体20をコア10と共に金型30内に配置したところを示している。
その他、本発明に係る製造方法は、図8に例示するような、中空(または筒状)部51や断面U字形部52を部分的に有するFRP製品50の製造にも適用できる。
【0030】
2.コア
本発明の一態様は、FRP製品の製造に用いられるコアに関する。
本発明が提供するコアは、熱硬化性樹脂と繊維とからなる複合体を金型内で加熱および加圧して硬化させるときに該金型内に配置され、該複合体の少なくとも一部を加圧するために用いられるコアであり、可融部と該可融部を覆う外皮とからなり、該可融部が第一可融部と該第一可融部よりも融解温度が高い第二可融部とからなること、および、該第一可融部の材料と該第二可融部の材料が互いに相溶しないことを特徴とする。
【0031】
実施形態に係るコアは、例えば、前記1.項で説明したFRP製品の製造方法に好ましく用いることができる。前記1.項で例示されたコアは、いずれも本発明に係るコアの実施形態に該当する。
実施形態に係るコアは、RTM(resin transfer molding)法によるFRP製品の製造にも使用し得る。
RTM法ではプリプレグ予備成形体ではなく、熱硬化性樹脂で含浸されていないドライ繊維基材(ファブリックまたは不織布)の予備成形体を金型内に配置し、該金型内で該予備成形体を熱硬化性樹脂で含浸させ、次いで加熱および圧縮することにより、硬化物(FRP製品)を得る。
RTM法では、実施形態に係るコアが、繊維基材の予備成形体と共に金型内に配置された後、含浸と硬化の工程が行われる。
RTM法では、プリプレグを用いた成形方法に比べ、硬化時間が長く設定される。そのため、該第二可融部の融解温度が低過ぎると、成形中にコアの第二可融部が全部融解する。そのため、第二可融部の融解温度は、硬化温度よりも高いことが好ましい。
実施形態に係るコアは、樹脂と繊維基材の積層体を中間材料に用いたFRP製品の成形にも使用し得る。
【0032】
3.実験結果
次に記すのは、本発明者等が行った実験の結果である。
【0033】
3.1.実験1
図9に示すように、長方形の底面61と、底面61の長手方向に沿って両側に設けられた、底面61に垂直な側面62、62からなる、長さL、幅W、高さHを有する断面U字形のFRP物品60を試作した。
(1)コアの準備
それぞれワックスからなる第一可融部と第二可融部からなる可融部を、外皮で包んで密封した構造を有するコアを作製した。
第一可融部用のワックス(以下「第一ワックス」という)には、Freeman Manufacturing & Supply Company製Ferris File-A-Wax Green(融点117℃)を用いた。特表2015-511333号公報によれば、この製品はポリエチレンを主成分とするワックスである。
第二可融部用のワックス(以下「第二ワックス」という)には、伊藤製油株式会社製ITOHWAXJ-630(融点135℃)を用いた。伊藤製油株式会社のウェブサイト(http://www.itoh-oilchem.co.jp/product/pdct02.html)によれば、この製品はN,N´-ヘキサメチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリルアミドを主成分とするヒドロキシ脂肪酸アミドワックスである。
外皮には融点204℃のナイロン6製で、厚さ50μmのフィルムを用いた。
第一可融部は、第一ワックスを用いて注型成形により作製した、295mm×88mm×4mmの板2枚と295mm×29mm×4mmの板2枚を用いて構成した。
第二可融部は、第二ワックスを用いて注型により295mm(長さ)×88mm(幅)×21mm(高さ)の直方体に成形した。
第一ワックスで作った4枚の板のうち、2枚は第二可融部を両側から挟むように、他の2枚は第二可融部を上と下から挟むように配置することで、長さ方向に垂直な断面において、図2(a)のように、第一可融部が第二可融部を取り囲むようにした。
外皮による可融部の密封は、ナイロン6フィルムを熱融着することにより行った。
完成したコアは概ね295mm(長さ)×96mm(幅)×29mm(高さ)の直方体であった。
【0034】
(2)成形
厚さ0.2mmのクロスプリプレグを5プライ重ね、室温下で賦形することにより、ほぼ正味形状を有する295mm(長さ)×98mm(幅)×30mm(高さ)のプリプレグ予備成形体を作製した。使用したクロスプリプレグは、三菱ケミカル株式会社製 TR3110 360GMP(樹脂含有率40wt%)で、炭素繊維からなる織物をエポキシ樹脂で含浸させたものである。
このプリプレグ予備成形体を、前記(1)で準備したコアとともに、予め140℃に加熱された金型内に設置した。金型キャビティのサイズは、300mm(長さ)×100mm(幅)×30mm(高さ)であった。次いで、金型を型締めし、金型内でプリプレグ予備成形体を加熱および加圧して硬化させた。成形中の金型温度は140℃となるように制御し、成形時間は5分とした。ここでいう成形時間は、型締めから型開きまでの時間である。得られたFRP物品は、幅Wが100mm、高さHが29mmで、金型に沿った形状を有しており、外観良好であった。
【0035】
図10は、成形工程において金型内の圧力が時間と共に変化する様子を、キャビティの側面に設置した圧電式圧力センサでモニターした結果である。グラフが示すように、金型内の圧力が4MPaを超えることはなかった。
成形工程の終了後に観察すると、第一ワックスには一部融解した形跡があったのに対し、第二ワックスが融解した形跡は殆ど認められなかった。
コアの可融部を完全に融解させると、第一ワックスと第二ワックスは互いに相溶せず、これら2つのワックスの融液は、相互間の比重差のせいで、界面を挟んで上下に分離した。
【0036】
[実験2]
第一ワックスを、三洋化成工業株式会社製サンワックス151P(融点107℃)に変更したこと以外は実験1と同様にして、断面U字形のFRP物品を試作した。三洋化成株式会社のウェブサイト(https://www.sanyo-chemical.co.jp/magazine/archives/262)によれば、サンワックス151Pは低分子量ポリエチレンを主成分とするポリエチレンワックスである。
得られたFRP物品の、外観は良好であった。
成形工程において金型内の圧力が時間と共に変化する様子を、実験1と同様にしてモニターした結果、図11に示すように、金型内の圧力が4MPaを超えることはなかった。
成形工程の終了後に観察すると、第一ワックスには一部融解した形跡があったのに対し、第二ワックスが融解した形跡は殆ど認められなかった。
【0037】
[実験3]
コアの可融部を、第一ワックスのみで形成したこと以外は実験1と同様にして、断面U字形のFRP物品を試作した。
図12は、成形工程において金型内の圧力が時間と共に変化する様子を、実験1と同様にしてモニターした結果である。グラフが示すように、金型内の圧力は約7MPaまで急激に上昇した後、緩やかな上昇に転じた。このように圧力上昇レートが突然変化したのは、コアが膨張し続けたことによって金型内の圧力が型締め力を超え、金型が開いたことによる。
得られたFRP物品の表面では、部分的に繊維の目が開いており、外観が良好とはいえなかった。
【0038】
4.その他の発明
当業者ならば、本明細書には更に次の発明も開示されていることを理解するであろう。
[A1] 可融部と該可融部を覆う外皮とからなるコアを準備するコア準備工程と、プリプレグ予備成形体を該コアと共に金型内に配置し、該金型内で加熱および加圧して硬化物とする成形工程と、該可融部の材料を該硬化物から除去するコア除去工程とを有し、前記成形工程では、プレートが前記プリプレグ予備成形体の少なくとも一部と前記コアとの間に配置され、かつ、前記プリプレグ予備成形体の少なくとも一部が前記コアの膨張により加圧される、繊維強化樹脂製品の製造方法。
[A2] 前記プレートが、金属、セラミックスまたは耐熱性硬質樹脂から選ばれる材料からなる、[A1]に記載の製造方法。
[A3] 前記プレートが金属からなる、[A1]に記載の製造方法。
[A4] 前記金属がステンレスまたはアルミニウムである、[A3]に記載の製造方法。
[A5] 前記可融部が有機物からなる、[A1]~[A4]のいずれかに記載の製造方法。
[A6] 前記可融部がワックスからなる、[A1]~[A4]のいずれかに記載の製造方法。
[A7] 前記成形工程では前記可融部の少なくとも一部が融解する、[A1]~[A6]のいずれかに記載の製造方法。
[A8] 前記成形工程では前記可融部の一部のみが融解する、[A7]のいずれかに記載の製造方法。
[A9] 前記外皮がエラストマーである、[A1]~[A8]のいずれかに記載の製造方法。
[A10] 前記コア準備工程では前記外皮をUV硬化型エラストマーで形成する、[A1]~[A9]のいずれかに記載の製造方法。
【0039】
[B1] 可融部と該可融部を覆う外皮とからなるコアを準備するコア準備工程と、プリプレグ予備成形体を該コアと共に金型内に配置し、該金型内で加熱および加圧して硬化物とする成形工程と、該可融部の材料を該硬化物から除去するコア除去工程とを有し、前記成形工程では前記プリプレグ予備成形体の少なくとも一部が前記コアの膨張により加圧される、繊維強化樹脂製品の製造方法であって、前記コア準備工程では前記外皮をUV硬化型エラストマーで形成することを特徴とする製造方法。
[B2] 前記可融部が有機物からなる、[B1]に記載の製造方法。
[B3] 前記可融部がワックスからなる、[B1]に記載の製造方法。
[B4] 前記成形工程では前記可融部の少なくとも一部が融解する、[B1]~[B3]のいずれかに記載の製造方法。
[B5] 前記成形工程では前記可融部の一部のみが融解する、[B4]に記載の製造方法。
[B6] 繊維と熱硬化性樹脂とからなる複合体を金型内で加熱および加圧して硬化させるときに該金型内に配置され、該複合体の少なくとも一部を加圧するために用いられるコアを製造する方法であって、該コアが可融部と該可融部を覆う外皮とからなり、該外皮をUV硬化型エラストマーで形成することを特徴とする製造方法。
[B7] 前記可融部が有機物からなる、[B6]に記載の製造方法。
[B8] 前記可融部がワックスからなる、[B6]に記載の製造方法。
【0040】
以上、本発明を具体的な実施形態に即して説明したが、各実施形態は例として提示されたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に記載された各実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、様々に変形することができ、かつ、実施可能な範囲内で、他の実施形態により説明された特徴と組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本明細書に開示された発明は、限定するものではないが、例えば、自動車、船舶、鉄道車両、航空機その他の輸送機器のための部品(構造部品を含む)や、自転車のフレーム、テニスラケットおよびゴルフシャフトを含む各種のスポーツ用品を、繊維強化樹脂で製造するときに好ましく用いられ得る。
【符号の説明】
【0042】
10 コア
11 可融部
11a 第一可融部
11b 第二可融部
12 外皮
20 プリプレグ予備成形体
21 プリプレグシート
30 金型
31 下型
32 上型
40 プレート
50 FRP製品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12