(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20220726BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20220726BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20220726BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20220726BHJP
H05K 3/10 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
H01L23/30 R
H05K1/18 L
H05K3/10 E
(21)【出願番号】P 2017208586
(22)【出願日】2017-10-27
【審査請求日】2020-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】種子田 浩志
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-143305(JP,A)
【文献】特開2004-288959(JP,A)
【文献】特開平07-226421(JP,A)
【文献】国際公開第2016/139794(WO,A1)
【文献】特開2016-042536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60-21/607
H01L 23/28-23/31
H01L 23/34-23/40
H05K 1/18
H05K 3/10- 3/20
H05K 3/32- 3/34
H05K 3/40- 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、
前記配線基板の上面に実装された半導体チップと、
前記配線基板の上面と前記半導体チップの下面間に配置され、前記配線基板と前記半導体チップとを接着する接着樹脂層と、を有し、
前記接着樹脂層には、前記配線基板の上面に設けられた配線層の上面を露出する開口部が設けられ、
前記開口部の側壁はバリア層により被覆され、
前記半導体チップの下面に設けられた電極端子が前記開口部内に入り込み、前記バリア層と前記電極端子との間に導電性ペーストが充填され、
前記電極端子は銅ポストからなり、前記銅ポストが直接前記導電性ペーストと接している半導体装置。
【請求項2】
配線基板と、
前記配線基板の上面に実装された半導体チップと、
前記配線基板の上面と前記半導体チップの下面間に配置され、前記配線基板と前記半導体チップとを接着する接着樹脂層と、を有し、
前記接着樹脂層には、前記配線基板の上面に設けられた配線層の上面を露出する開口部が設けられ、
前記開口部の側壁はバリア層により被覆され、
前記半導体チップの下面に設けられた電極端子が前記開口部内に入り込み、前記バリア層と前記電極端子との間に導電性ペーストが充填され、
前記導電性ペーストは、前記電極端子
及び前記配線層と直接接している半導体装置。
【請求項3】
前記バリア層は、前記開口部の側壁と前記開口部内に露出する前記配線層の上面を連続的に被覆している請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記電極端子は銅ポストからなり、前記銅ポストが直接前記導電性ペーストと接している請求項
2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記バリア層は金属材料から形成されている請求項1乃至
4の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記バリア層は金属酸化物から形成されている請求項1
、2、又は4に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記導電性ペーストは、バインダーとなる樹脂と、前記樹脂に分散された金属粉末と、を含む請求項1乃至
6の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記バリア層は、前記金属粉末よりも硬度が高い材料からなる請求項
7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記バリア層の厚さは、30nm以上100nm以下である請求項1乃至
8の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記電極端子は、前記導電性ペーストを介して前記配線層と電気的に接続されている請求項1乃至
9の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
上面側に配線層を備えた配線基板上に、前記配線層を被覆する半硬化状態の接着樹脂層を配置する工程と、
前記接着樹脂層に、搭載する半導体チップの電極端子と対向すると共に前記配線層の上面を露出する開口部を形成する工程と、
前記開口部の側壁と前記開口部内に露出する前記配線層の上面とを連続的に被覆するバリア層を形成する工程と、
前記バリア層の前記配線層の上面を被覆する部分を除去する工程と、
前記バリア層が形成された前記開口部内に導電性ペーストを充填する工程と、
前記半導体チップを、前記電極端子が前記導電性ペーストと接するように前記配線基板上に配置し、前記電極端子が前記開口部内に入り込み、前記バリア層と前記電極端子との間に導電性ペーストが充填されるように、前記半導体チップを前記配線基板側に押圧する工程と、
前記接着樹脂層及び前記導電性ペーストを硬化させ、前記配線基板と前記半導体チップの対向する面間を前記接着樹脂層で接着する工程と、を有し、
前記導電性ペーストが前記電極端子と直接接する半導体装置の製造方法。
【請求項12】
上面側に配線層を備えた配線基板上に、前記配線層を被覆する半硬化状態の接着樹脂層を配置する工程と、
前記接着樹脂層に、搭載する半導体チップの電極端子と対向すると共に前記配線層の上面を露出する開口部を形成する工程と、
前記開口部の側壁と前記開口部内に露出する前記配線層の上面とを連続的に被覆するバリア層を形成する工程と、
前記バリア層が形成された前記開口部内に導電性ペーストを充填する工程と、
前記半導体チップを、前記電極端子が前記導電性ペーストと接するように前記配線基板上に配置し、前記電極端子が前記開口部内に入り込み、前記バリア層と前記電極端子との間に導電性ペーストが充填されるように、前記半導体チップを前記配線基板側に押圧する工程と、
前記接着樹脂層及び前記導電性ペーストを硬化させ、前記配線基板と前記半導体チップの対向する面間を前記接着樹脂層で接着する工程と、を有し、
前記電極端子は銅ポストからなり、前記銅ポストが直接前記導電性ペーストと接する半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記開口部を形成する工程より前に、前記接着樹脂層上に保護フィルムを設ける工程を有し、
前記開口部を形成する工程では、前記接着樹脂層及び前記保護フィルムを貫通し前記配線層の上面を露出する開口部を形成し、
前記バリア層を形成する工程では、前記保護フィルムの上面と前記開口部の側壁と前記開口部内に露出する前記配線層の上面とを連続的に被覆するバリア層を形成し、
前記導電性ペーストを充填する工程の後、前記保護フィルムと前記保護フィルムに接して形成されていた前記バリア層を除去する請求項
12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記バリア層を金属材料から形成する請求項
12又は13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記バリア層を金属酸化物から形成する請求項
11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記電極端子は銅ポストからなり、前記銅ポストが直接前記導電性ペーストと接する請求項
11又15に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板上に半導体チップを実装した半導体装置が知られている。半導体チップは、例えば、接着樹脂層を介して、配線基板上に接着される。
【0003】
具体例としては、一方の面に電極端子を有する半導体チップと配線基板とが、開口部を有する接着樹脂層で接着され、かつ半導体チップの接続端子と配線基板に設けられた配線層とが開口部内の導電性ペーストにより接続された構成の半導体装置を挙げることができる。
【0004】
上記の半導体装置では、半導体チップを実装する際に、例えば、配線基板上に開口部を有する接着樹脂層を設け、開口部内に導電性ペーストを充填し、半導体チップの電極端子を導電性ペースト内に押し込むように半導体チップを配線基板側に押圧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の半導体装置では、半導体チップを実装する際に、導電性ペーストが開口部の側壁を突き破って接着樹脂層内に入り込む場合があり、電極端子間の絶縁性を低下させていた。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、電極端子間の絶縁性を向上した半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本半導体装置は、配線基板と、前記配線基板の上面に実装された半導体チップと、前記配線基板の上面と前記半導体チップの下面間に配置され、前記配線基板と前記半導体チップとを接着する接着樹脂層と、を有し、前記接着樹脂層には、前記配線基板の上面に設けられた配線層の上面を露出する開口部が設けられ、前記開口部の側壁はバリア層により被覆され、前記半導体チップの下面に設けられた電極端子が前記開口部内に入り込み、前記バリア層と前記電極端子との間に導電性ペーストが充填され、前記電極端子は銅ポストからなり、前記銅ポストが直接前記導電性ペーストと接していることを要件とする。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、電極端子間の絶縁性を向上した半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態に係る半導体装置を例示する図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その1)である。
【
図3】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その2)である。
【
図4】第2の実施の形態に係る半導体装置を例示する図である。
【
図5】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
〈第1の実施の形態〉
[第1の実施の形態に係る半導体装置の構造]
まず、第1の実施の形態に係る半導体装置の構造について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る半導体装置を例示する断面図であり、
図1(a)は全体図、
図1(b)は
図1(a)のA部の部分拡大断面図である。
【0013】
図1を参照するに、第1の実施の形態に係る半導体装置1は、配線基板10と、接着樹脂層20と、バリア層30と、導電性ペースト40と、半導体チップ50と、封止樹脂層60とを有している。配線基板10は、絶縁層11と、配線層12と、配線層13と、貫通配線14と、ソルダーレジスト層15とを有している。
【0014】
なお、本実施の形態では、便宜上、半導体装置1の半導体チップ50側を上側又は一方の側、ソルダーレジスト層15側を下側又は他方の側とする。又、各部位の半導体チップ50側の面を一方の面又は上面、ソルダーレジスト層15側の面を他方の面又は下面とする。但し、半導体装置1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。又、平面視とは対象物を絶縁層11の一方の面の法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を絶縁層11の一方の面の法線方向から視た形状を指すものとする。
【0015】
配線基板10において、絶縁層11は、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、液晶ポリマー等の可撓性を有する絶縁材料から形成することができる。又、絶縁層11として、例えば、ガラスクロスにエポキシ系樹脂等の熱硬化性の絶縁性樹脂を含浸させた所謂ガラスエポキシ基板等のリジットな材料を用いてもよい。又、絶縁層11として、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の織布や不織布にエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等の熱硬化性の絶縁性樹脂を含浸させた基板等のリジットな材料を用いてもよい。絶縁層11は、シリカ(SiO2)等のフィラーを含有しても構わない。絶縁層11の厚さは、例えば、50~500μm程度とすることができる。
【0016】
配線層12は、絶縁層11の上面(一方の面)に設けられている。配線層13は、絶縁層11の下面(他方の面)に設けられている。配線層12と配線層13とは、絶縁層11を貫通する貫通配線14を介して電気的に接続されている。貫通配線14の平面形状は、例えば、円形とすることができる。
【0017】
配線層12及び13の材料としては、例えば、銅(Cu)等を用いることができる。配線層12及び13の各々の厚さは、例えば、2~30μm程度とすることができる。貫通配線14の材料としては、例えば、銅(Cu)等を用いることができる。なお、配線層12と貫通配線14、又は配線層13と貫通配線14は、一体構造であってもよい。
【0018】
ソルダーレジスト層15は、絶縁層11の下面に、配線層13を被覆するように形成されている。ソルダーレジスト層15は開口部15xを有し、開口部15xの底部には配線層13の下面の一部が露出している。開口部15xの底部に露出する配線層13は、他の配線基板や半導体パッケージ、半導体チップ等と電気的に接続されるパッドとして機能する。ソルダーレジスト層15の材料としては、例えば、感光性のエポキシ系絶縁性樹脂やアクリル系絶縁性樹脂等を用いることができる。ソルダーレジスト層15の厚さは、例えば、10~30μm程度とすることができる。
【0019】
半導体チップ50は、シリコン等から形成された本体51と、本体51から突起する電極端子52とを有している。電極端子52は、例えば、銅ポスト等の金属ポストであり、例えば、円柱状に形成されている。電極端子52は、半導体チップ50の回路形成面側に設けられ、回路形成面からの電極端子52の突起量は、例えば、10~30μm程度とすることができる。半導体チップ50は、電極端子52が設けられた回路形成面側を配線層12側に向けて、配線基板10上にフリップチップ実装されている。
【0020】
配線基板10と半導体チップ50の対向する面間には、配線基板10と半導体チップ50とを接着する接着樹脂層20が配置されている。接着樹脂層20は、配線基板10の上面の全体に設けてもよいが、少なくとも配線基板10と半導体チップ50の対向する面間を充填するように設ければよい。接着樹脂層20の材料は、絶縁層11及び半導体チップ50との接着性や、絶縁層11と半導体チップ50との熱膨張係数差等を考慮して適宜選択できるが、例えば、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等を用いることができる。接着樹脂層20の厚さは、例えば、20~40μm程度とすることができる。
【0021】
接着樹脂層20には、配線層12の上面を露出する開口部20xが設けられている。例えば、電極端子52が円柱状の凸部であれば、開口部20xは電極端子52よりも大径の円柱状の凹部とすることができる。この場合、例えば、電極端子52の直径が90μmであれば、開口部20xの直径は100μmとすることができる。
【0022】
バリア層30は、開口部20xの側壁と開口部20x内に露出する配線層12の上面を連続的に被覆している。バリア層30は、導電性ペースト40に分散する金属粉末(後述)よりも硬度の高い金属材料、例えば、チタン銅合金(TiCu)、クロム(Cr)、NiCu/Cu、タングステン(W)、銅(Cu)等から形成することができる。なお、NiCu/Cuとは、ニッケル銅合金層の上に銅層が積層された積層膜である。バリア層30を積層膜とすることは、バリア層30をより強固な膜にできる点で好適である。バリア層30の厚さは、例えば、30~100nm程度とすることができる。
【0023】
半導体チップ50の電極端子52が開口部20x内に入り込み、開口部20xの側壁及び開口部20x内に露出する配線層12の上面に形成されたバリア層30と、電極端子52の底面及び側面と、半導体チップ50の回路形成面との間に熱硬化性の導電性ペースト40が充填されている。半導体チップ50の電極端子52は、バリア層30及び導電性ペースト40を介して、配線層12と電気的に接続されている。
【0024】
導電性ペースト40としては、例えば、銅ペーストを好適に用いることができるが、銀ペーストや金ペースト等の銅ペースト以外の導電性ペーストを用いてもよい。ここで、導電性ペーストとは、導電フィラーとバインダーからなるものを指し、導電フィラーとなる金属粉末をバインダーとなる樹脂の中に分散させたものである。金属粉末としては、銅、銀、金等を好適に用いることができるが、2種以上の金属を合金化した金属粉末や、2種以上の金属粉末の混合物等を用いてもよい。バインダーとなる樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等を用いることができる。又、導電性ペーストは、硬化処理後も導電フィラーが元の形状を保ったままバインダー内に分散した状態となる。よって、導電性ペーストには、硬化処理後に元の粒子が溶融して一体となるはんだ及びはんだペーストは含まれない。
【0025】
封止樹脂層60は、接着樹脂層20上に、半導体チップ50を被覆するように設けられている。放熱性を向上するために、半導体チップ50の上面を封止樹脂層60から露出させてもよい。封止樹脂層60としては、例えば、エポキシ系樹脂にフィラーを含有させた所謂モールド樹脂等を用いることができる。
【0026】
[第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法]
次に、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
図2及び
図3は、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図である。配線基板10は、半導体装置1となる複数の領域が設けられた多数個取りの基板の状態で製造される。そして、配線基板10上に半導体チップ50の実装等が行われ、最終的に個片化されて個々の半導体装置1となる。以下では、便宜上、個片化される1つの領域のみを図示する。
【0027】
まず、
図2(a)に示す工程では、絶縁層11を用意する。絶縁層11の材料や厚さは、前述の通りである。そして、レーザ加工法等により絶縁層11を貫通する貫通孔を形成し、ディスペンサー等を用いて貫通孔に導電性ペーストを充填後硬化させて貫通配線14を形成する。導電性ペーストとしては、例えば、銅ペースト、金ペースト、銀ペースト等を用いることができる。貫通配線14は、めっきにより形成してもよい。
【0028】
次に、絶縁層11の上面に配線層12を、下面に配線層13を形成する。配線層12と配線層13とは、貫通配線14を介して電気的に接続される。配線層12及び13は、例えば、セミアディティブ法により形成することができる。配線層12及び13の各々の材料や厚さは、前述の通りである。
【0029】
次に、
図2(b)に示す工程では、絶縁層11の下面に配線層13を被覆するソルダーレジスト層15を形成する。ソルダーレジスト層15は、例えば、液状又はペースト状の感光性のエポキシ系絶縁性樹脂やアクリル系絶縁性樹脂等を、配線層13を被覆するように絶縁層11の下面にスクリーン印刷法、ロールコート法、又は、スピンコート法等で塗布することにより形成できる。或いは、例えば、フィルム状の感光性のエポキシ系絶縁性樹脂やアクリル系絶縁性樹脂等を、配線層13を被覆するように絶縁層11の下面にラミネートすることにより形成してもよい。
【0030】
そして、塗布又はラミネートした絶縁性樹脂を露光及び現像することで開口部15xを形成する(フォトリソグラフィ法)。これにより、開口部15xを有するソルダーレジスト層15が形成され、開口部15x内に配線層13の下面の一部が露出する。なお、予め開口部15xを形成したフィルム状の絶縁性樹脂を、配線層13を被覆するように絶縁層11の下面にラミネートしても構わない。
【0031】
次に、
図2(c)に示す工程では、絶縁層11の上面に配線層12を被覆する接着樹脂層20を形成する。具体的には、例えば、Bステージ状態(半硬化状態)の接着樹脂層20を、配線層12を被覆するように絶縁層11の上面にラミネートする。或いは、ペースト状の接着樹脂層20を、配線層12を被覆するように絶縁層11の上面に塗布する。接着樹脂層20の材料や厚さは、前述の通りである。
【0032】
接着樹脂層20を形成後、接着樹脂層20の上面に、接着樹脂層20を保護する保護フィルム25を設ける。保護フィルム25としては、例えば、厚さ数十μm程度のポリイミドフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることができる。なお、この工程では接着樹脂層20を硬化させないため、接着樹脂層20はBステージ状態(半硬化状態)のまま以降の工程に進む。
【0033】
次に、
図2(d)に示す工程では、接着樹脂層20及び保護フィルム25を貫通し、配線層12の上面を露出する開口部20xを形成する。開口部20xは、例えば、レーザ加工法により形成することができる。この場合、例えば、YAGレーザやエキシマレーザを用いることができる。
【0034】
次に、
図2(e)に示す工程では、保護フィルム25の上面と、開口部20xの側壁と、開口部20x内に露出する配線層12の上面とを連続的に被覆するバリア層30を、例えば、スパッタ法等により形成する。バリア層30の材料や厚さは、前述の通りである。
【0035】
次に、
図3(a)に示す工程では、ディスペンサー等を用いて、バリア層30が形成された開口部20x内に導電性ペースト40を充填する。なお、導電性ペースト40は、バリア層30のみと接し、配線層12、接着樹脂層20、及び保護フィルム25とは接しない。
【0036】
次に、
図3(b)に示す工程では、保護フィルム25を除去(剥離)する。保護フィルム25の剥離と共に、保護フィルム25に接して形成されていたバリア層30も除去される。保護フィルム25の除去により、導電性ペースト40の一部が接着樹脂層20の上面から突出する。又、保護フィルム25の除去により、バリア層30の端面が接着樹脂層20の上面から露出する。
【0037】
次に、
図3(c)に示す工程では、電極端子52を配線基板10側に向けて、半導体チップ50を配線基板10上に実装する。具体的には、電極端子52を備えた半導体チップ50を、電極端子52が導電性ペースト40と接するように配線基板10上に配置する。そして、電極端子52が開口部20x内に入り込み、バリア層30と電極端子52との間に導電性ペースト40が充填されるように、半導体チップ50を配線基板10側に押圧する。これにより、導電性ペースト40は、バリア層30と電極端子52と半導体チップ50の回路形成面とで囲まれた領域内に埋め込まれる。又、バリア層30の周囲に位置する接着樹脂層20の上面と半導体チップ50の回路形成面とが接する。
【0038】
なお、導電性ペースト40は低密度に形成されており、ほぼ厚さ方向のみに圧縮されるため、半導体チップ50を配線基板10側に押圧する際に、導電性ペースト40がバリア層30の周囲に位置する接着樹脂層20の上面にはみ出ることはない。
【0039】
次に、半導体チップ50を配線基板10側に押圧した状態で接着樹脂層20及び導電性ペースト40を硬化させ、配線基板10と半導体チップ50の対向する面間を接着樹脂層20で接着する。半導体チップ50の電極端子52は、バリア層30及び導電性ペースト40を介して、配線層12と電気的に接続される。
【0040】
なお、接着樹脂層20及び導電性ペースト40を硬化させる所定温度は、例えば、180℃程度である。これは、導電性ペースト40の代わりにはんだを用いる場合のはんだの溶融温度(例えば、220℃程度)よりも低いため、配線基板10に発生する反りを低減できる。
【0041】
次に、
図3(d)に示す工程では、接着樹脂層20上に、半導体チップ50を被覆する封止樹脂層60を形成する。放熱性を向上するために、半導体チップ50の上面を封止樹脂層60から露出させてもよい。封止樹脂層60としては、例えば、エポキシ系樹脂にフィラーを含有させた所謂モールド樹脂等を用いることができる。封止樹脂層60は、例えば、トランスファーモールド法やコンプレッションモールド法等により形成できる。
図3(d)に示す工程の後、個々の半導体装置1となる複数の領域に個片化することで、
図1に示す半導体装置1が完成する。
【0042】
このように、半導体装置1では、配線基板10と半導体チップ50との間に充填されて配線基板10と半導体チップ50とを接着する接着樹脂層20に開口部20xを設けている。そして、開口部20xの側壁と開口部20x内に露出する配線層12の上面にバリア層30を形成している。これにより、導電性ペースト40はバリア層30の内側に配置され、接着樹脂層20中に入り込むことがないため、隣接する電極端子52間の絶縁性を向上できる。
【0043】
なお、開口部20xの底部には配線層12が露出しているため、配線層12上にバリア層30が形成されていなくても、導電性ペースト40が開口部20xの底部側から接着樹脂層20中に入り込むことがない。そのため、バリア層30の配線層12の上面を被覆する部分を、例えば、レーザ加工法により除去してもよい。この場合には、金属材料からなるバリア層30が開口部20xの側壁のみに形成される。
【0044】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、第1の実施の形態とは異なる材料によりバリア層を形成する例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0045】
図4は、第2の実施の形態に係る半導体装置を例示する断面図であり、
図4(a)は全体図、
図4(b)は
図4(a)のB部の部分拡大断面図である。
【0046】
図4を参照するに、第2の実施の形態に係る半導体装置1Aは、バリア層30がバリア層30Aに置換された点が第1の実施の形態と相違する。
【0047】
バリア層30Aは、開口部20xの側壁を被覆するように形成されているが、開口部20x内に露出する配線層12の上面には形成されていない。バリア層30Aは、導電性ペースト40に分散する金属粉末よりも硬度の高い無機材料、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化ランタン等の酸化物等から形成することができる。バリア層30Aの厚さは、例えば、30~100nm程度とすることができる。
【0048】
半導体チップ50の電極端子52が開口部20x内に入り込み、開口部20xの側壁に形成されたバリア層30Aと、開口部20x内に露出する配線層12の上面と、電極端子52の底面及び側面と、半導体チップ50の回路形成面との間に熱硬化性の導電性ペースト40が充填されている。半導体チップ50の電極端子52は、導電性ペースト40を介して、配線層12と電気的に接続されている。
【0049】
半導体装置1Aを作製するには、まず、第1の実施の形態の
図2(a)~
図2(e)と同様の工程を実行する。但し、
図2(e)に示す工程では、保護フィルム25の上面、開口部20xの側壁、及び開口部20x内に露出する配線層12の上面に、原子層堆積法(ALD :Atomic Layer Deposition)等により、無機材料を用いてバリア層30Aを連続的に形成する。バリア層30Aの厚さは、前述の通りである。
【0050】
次に、
図5(a)に示す工程では、バリア層30Aの配線層12の上面を被覆する部分を、例えば、レーザ加工法により除去する。この場合、例えば、YAGレーザやエキシマレーザを用いることができる。
【0051】
次に、
図5(b)に示す工程では、ディスペンサー等を用いて導電性ペースト40を開口部20x内に充填する。なお、導電性ペースト40は、開口部20xの側壁を被覆するバリア層30A、及び開口部20xの底部に露出する配線層12のみと接し、接着樹脂層20、及び保護フィルム25とは接しない。
【0052】
次に、
図5(c)に示す工程では、保護フィルム25を剥離する。保護フィルム25の剥離と共に、保護フィルム25に接して形成されていたバリア層30Aも除去される。保護フィルム25の除去により、導電性ペースト40の一部が接着樹脂層20の上面から突出する。又、保護フィルム25の除去により、バリア層30Aの端面が接着樹脂層20の上面から露出する。
【0053】
次に、
図5(d)及び
図5(e)に示す工程では、
図3(c)及び
図3(d)と同様の工程を実行することで、
図4に示す半導体装置1Aが完成する。
【0054】
このように、半導体装置1Aでは、配線基板10と半導体チップ50との間に充填されて配線基板10と半導体チップ50とを接着する接着樹脂層20に開口部20xを設けている。そして、開口部20xの側壁にバリア層30Aを形成している。これにより、導電性ペースト40はバリア層30Aの内側に配置され、接着樹脂層20中に入り込むことがないため、隣接する電極端子52間の絶縁性を向上できる。
【0055】
なお、バリア層30Aの成膜に用いるALD法は、マスクを用いずに成膜が可能である点と、膜厚の制御性が良好である点で好適である。又、ALD法は、スパッタ法に比べて、より広い範囲を一度で成膜できるため、製造時間を短縮できる点でも好適である。すなわち、ALD法を用いることにより、半導体装置1Aとなる複数の領域が設けられた多数個取りの基板に成膜する場合、より多くの領域に対して一度に成膜可能であるため、製造時間を短縮できる。
【0056】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0057】
例えば、上記の実施の形態に係る半導体装置では、2層の配線層を有する配線基板上に半導体チップを実装する例を示したが、これには限定されない。すなわち、3層以上の配線層を有する配線基板に半導体チップを実装する形態としても構わない。又、半導体チップを実装する配線基板の製造方法も特に限定されず、例えばビルドアップ工法により製造された配線基板に半導体チップを実装してもよいし、その他の工法により形成された配線基板に半導体チップを実装してもよい。又、ビルドアップ工法により製造された配線基板は、コア層を有していてもよいし、所謂コアレスであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1、1A 半導体装置
10 配線基板
11 絶縁層
12、13 配線層
14 貫通配線
15 ソルダーレジスト層
15x、20x 開口部
20 接着樹脂層
30、30A バリア層
40 導電性ペースト
50 半導体チップ
51 本体
52 電極端子
60 封止樹脂層