(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】即席麺製造用の麺線及び即席麺の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20220726BHJP
A23L 7/113 20160101ALI20220726BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L7/113
(21)【出願番号】P 2017238519
(22)【出願日】2017-12-13
【審査請求日】2020-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北野 翔
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 紀和
【審査官】緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0105232(KR,A)
【文献】特開昭63-017668(JP,A)
【文献】特開2011-097919(JP,A)
【文献】特開2015-050954(JP,A)
【文献】特開2009-011300(JP,A)
【文献】特開2006-274100(JP,A)
【文献】特開昭64-047358(JP,A)
【文献】特開昭64-027447(JP,A)
【文献】特許第3404464(JP,B2)
【文献】特開2005-021152(JP,A)
【文献】特開2006-141234(JP,A)
【文献】特開2004-313183(JP,A)
【文献】特許第4271383(JP,B2)
【文献】国際公開第2010/107019(WO,A1)
【文献】特開2004-008180(JP,A)
【文献】特開2001-095515(JP,A)
【文献】特開平11-032712(JP,A)
【文献】特開2015-167517(JP,A)
【文献】新・即席麺入門,1998年,pp.66-67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109
A23L 7/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺線を製造する工程(A)と、麺線を100℃以上で乾燥する乾燥工程(B)とを含む即席麺の製造方法であって、
前記麺線を製造する工程(A)が、着味工程(a)を含み、
且つ着味工程(a)において
塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、および還元糖を含む着味液に浸漬することで麺線に還元糖が添加され、
前記麺線が
グルテンを含む原料粉、
塩化ナトリウム、塩化マグネシウム
0.05~0.54重量%、及び還元糖としてグルコース又はフルクトース0.05~1.50重量%とを含有することを特徴とする即席麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席麺製造用の麺線及び即席麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、麺の製造においては、小麦粉等の原料粉から麺線を製造する際に食塩(塩化ナトリウム)が添加されることが多い。これは、麺線に含まれるグルテンに塩化ナトリウムを作用させて、麺線の弾性や伸展性を強化し、製麺性や食感を改善するためである。
【0003】
ところが、近年、高血圧予防のため、塩化ナトリウム含量を低減した、いわゆる減塩商品が多数上市されている。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」2010年度版では、一日の食塩摂取目標値が成人男性で9g未満、成人女性で7.5g未満であったのに対し、2015年度版では、一日の食塩摂取目標値が成人男性で8g未満、成人女性で7g未満とそれぞれ一日の食塩摂取目標値が減少していることからも、今後もさらに減塩志向が高まっていくと考えられる。
【0004】
塩化ナトリウムの添加量を抑制しつつ充分な弾性や伸展性を実現する技術としては、キサンタンガム、ローストビーンガム等の増粘剤、アルギニンを添加する方法が開示されている(特許文献1及び2)。また、塩化ナトリウム添加量を減らしても、湯戻りが良く、湯伸びを抑制する技術としては、グリセリン有機酸脂肪酸エステルを添加する方法が開示されている(特許文献3)。しかしながら、これらの素材には塩味が無いため、塩味を補うものにはなりえなかった。
【0005】
また、塩化ナトリウムに代えて、塩化マグネシウムを多く含有するにがりを練り込んだ麺製品が開発されている(特許文献4、5)。しかしながら、塩化マグネシウムを加えた場合には、メイラード反応が抑制されるため即席麺が褐変せず、調理感が弱くなる傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-84772号公報
【文献】特開2015-213434号公報
【文献】特開2016-067293号公報
【文献】WO2005/077206
【文献】WO2012/176882
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、塩化ナトリウムの使用量を抑えつつも、調理感が良好で、外観(色相)も同品質の即席麺を製造するために用いられる麺線、及び当該麺線を用いた即席麺の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、麺線に塩化ナトリウムに代えて塩化マグネシウムを加え、更に還元糖を加えることにより、その後の即席麺の製造工程で好適な調理感や外観が付与されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、原料粉、塩化マグネシウム及び還元糖を含むことを特徴とする即席麺製造用の麺線に関するものである。
【0010】
さらに、本発明は、麺線を製造する工程(A)と、麺線を100℃以上で乾燥する乾燥工程(B)とを含む即席麺の製造方法であって、麺線が原料粉、塩化マグネシウム及び還元糖を含有し、且つ麺線全量中の塩化マグネシウム含有量が0.05~1.50重量%、還元糖含有量が0.05~1.50重量%であることを特徴とする即席麺の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、塩化ナトリウムの使用量を抑えつつも、調理感が良好で、外観(色相)が同品質の即席麺を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、具体的に説明する。なお、本発明においては即席麺の種類に特に限定はなく、当該技術分野で知られているものであればよい。具体的には、うどん、蕎麦、中華麺、パスタ、フォー等が挙げられる。
【0013】
1.原料
本発明における即席麺は、原料粉、塩化マグネシウム及び還元糖を含むことが必要である。以下、原料の詳細を説明する。
【0014】
1-1.原料粉
本発明における原料粉としては、小麦粉、米粉、ライ麦粉、大麦粉、はとむぎ粉、ひえ粉、あわ粉、トウモロコシ粉、小豆粉、大豆粉、ソバ粉及びキヌア粉等の穀粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉及びコーンスターチ等の澱粉、並びにアセチル化澱粉、エーテル化澱粉及び架橋デンプン等の加工澱粉などを使用することができる。
【0015】
本発明では、原料粉がタンパク質を含むことが好ましい。原料粉がタンパク質を含むことにより、メイラード反応が起こり、好ましい調理感や外観を実現し易くなる。なお、原料粉がタンパク質を含まない場合には、調理感の付与や外観の最適化をカラメル反応に頼らざる得ないため、好適な調理感や外観を実現しにくくなる。
【0016】
さらに、本発明では、原料粉がタンパク質の一種であるグルテンを含むことが好ましい。原料粉がグルテンを含むことにより、好適な調理感や外観が実現されると共に、製麺性が向上する。なお、本発明におけるグルテンとは、より詳細にはグルテニンとグリアジン又はグルテンである。グルテリンの一種であるグルテニンと、プロラミンの一種であるグリアジンを水分の介在下で反応させると互いに結合させるとグルテンとなる。したがって、グルテニンとグリアジンの組み合せも、グルテンと同じように取り扱う。
【0017】
本発明に用いる原料粉としては小麦粉が好ましい。小麦粉はグルテニンとグリアジンを含有するため、水を加えて麺生地に練り上げるだけでグルテンを得ることができる。小麦粉は、タンパク含有量の違いから薄力粉、中力粉、強力粉及びデュラム粉等に分類されるが、いずれも好適に用いることができる。
【0018】
小麦粉以外の米粉、大麦粉、タピオカ澱粉等のグルテンを含まない原料粉を使用する場合には、別途、グルテンを加えることが好ましい。グルテンを含まない原料粉を使用する場合であっても、別途グルテンを加えることで、小麦粉と同じような製麺性や調理感を得ることが可能になる。
【0019】
原料粉は、即席麺の主たる成分であり、本発明に用いる全原料に対して50重量%以上を占めることが好ましい。原料粉が50重量%未満の場合には、製麺性が低く、好ましい調理感や外観も得られにくい。
【0020】
麺線中のグルテン量は、製造しようとする麺の種類によって変更する。例えば、うどんを製造する場合にはグルテン形成能の比較的低い中力粉を使用し、中華麺やパスタを製造する場合にはグルテン形成能が比較的高い強力粉を使用する。
【0021】
本発明では、麺線全量中、グルテンを2~30重量%含有することが好ましい。グルテンを2~30重量%含有している場合には、麺の弾性や伸展性のバランスが良く、麺の食感が良好である。また、適度にメイラード反応が起こるため調理感や外観が良好である。
【0022】
1-2.塩化マグネシウム
塩化マグネシウムとしては、純度の高い塩化マグネシウムに限らず、苦汁(にがり)等の塩化マグネシウムを主成分とする添加物を用いることができる。
【0023】
塩化マグネシウムは苦味が強い物質であるが、本発明では、塩化マグネシウムを麺に練り込み又は浸漬させて使用するため、スープに使用する場合と比べて味覚に対する影響が小さい。また、還元糖や原料粉に含まれる澱粉によって異味がマスキングされるため、後述する適正な添加量を守ることで、異味を抑えつつ、塩味を強化することができる。
【0024】
一方、塩化マグネシウムを加えると褐変が抑制され、調理感が低下する傾向がある。これは、塩化ナトリウムを塩化マグネシウムに変更したことでメイラード反応が抑制され、メイラード反応に伴う香気成分の発生や色相の変化が抑制されるためだと推察される。この課題については、後述する還元糖の追加によって解決することができる。
【0025】
塩化マグネシウムの添加量としては、麺線全量中、0.05~1.50重量%配合することが必要である。塩化マグネシウムが0.05重量%未満の場合には、塩化マグネシウムを加えた効果が発現せず、塩味や食感の増強が期待できない。また、塩化マグネシウムが1.50重量%を超える場合には、塩化マグネシウムの苦味を抑えることができない。
【0026】
1-3.還元糖
本発明においては、塩化マグネシウムを加えた影響を緩和するために還元糖を加える必要がある。還元糖とは、塩基性溶液中でアルデヒド基またはケトン基を形成する糖をいい、具体的にはグルコース、フルクトース等の単糖、ラクト―ス、マルトース等の二糖、オリゴ糖、及びデキストロース当量が10以上のマルトデキストリンや粉あめ等が挙げられる。
【0027】
麺の製造過程では、原料粉に含まれる澱粉とグルテンの間でメイラード反応が起こるが、上述の通り、塩化ナトリウムを塩化マグネシウムに置き換えると、メイラード反応が起こりにくくなり、香気成分の発生や色相の変化が抑制されてしまう。このため、本発明では、還元糖を加えてグルテンとメイラード反応させることで、塩化マグネシウムを加えたことによる影響を緩和させている。
【0028】
本発明に用いる還元糖としては、メイラード反応が進みやすい単糖が好ましい。なお、味に影響を与えないという観点では、相対的に甘味度が低いグルコースが好ましく、麺の色相を調整するという観点では、メイラード反応が進みやすいフルクトース(果糖)が好ましい。
【0029】
還元糖の添加量としては、麺線全量中、0.05~1.50重量%配合することが必要である。還元糖の添加量が0.05重量%以下の場合、塩化マグネシウムの添加による影響(メイラード反応の抑制)を緩和できない。また、還元糖の添加量が1.50重量%以上の場合、甘味が強くなりすぎる。なお、還元糖の添加量としては0.10~1.00重量%がより好ましい。
【0030】
1-4.塩化ナトリウム
本発明では、一定量の塩化ナトリウムを添加してもよい。塩化ナトリウムを過剰に摂取すると高血圧症や心疾患等のリスクが高まるといわれているが、塩味を誘起する最も一般的な物質であり、代替物のみでは異味が強くなりすぎる。また、上述の通り、塩化ナトリウムは、グルテンに作用して麺線の弾性や伸展性を強化し、製麺性や食感を改善する。このため、本発明においても塩化ナトリウムを一定量添加することが好ましい。
【0031】
本発明においては、原料粉100重量部に対して、塩化ナトリウムを0.5~3重量部添加することが好ましい。塩化ナトリウムの添加量が0.5重量部未満の場合には、麺線の弾性や伸展性が充分に向上しない。一方、塩化ナトリウムの添加量が3重量部を超える場合には、塩化ナトリウムに由来する塩味が充分に強いため、塩化マグネシウムを加えて塩味を補う必要性がない。
【0032】
1-5.かんすい
本発明では、必要に応じてかんすいを加えても良い。かんすいとは、中華麺の製造に用いるアルカリ塩のことを指し、具体的には、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩、ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸等のピロリン酸塩、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム等のポリリン酸塩、メタ燐酸カリウム、メタ燐酸ナトリウム等のメタリン酸塩、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム等のリン酸塩などが挙げられる。
【0033】
かんすいは、中華麺に必須の成分であり、以下のような効果が得られる。
(1)かんすいが有機物に作用し、ピロリジンやトリメチルアミン等のアルカリ臭が生じる。
(2)かんすい加えることで、小麦に含まれるグルテンが収斂し、コシや滑らかさが向上する。
(3)かんすいが小麦に含まれるフラボノイド系色素に作用し、中華麺特有の淡黄色に呈色する。
【0034】
1-6.その他原料(以下「副原料」と称する)
本発明では、必要に応じて、その他原料を添加することができる。例えば、塩化ナトリウムの塩味代替物として広く使用されている塩化カリウム、麺の食感を調整するために使用されるキサンタンガム、ペクチン等の増粘多糖類、麺の色相を調整するために使用される全卵(中華麺)やほうれん草(翡翠麺)、麺の風味を調整するために添加される香料等、麺の生産性を高めるための油脂等を使用できる。
【0035】
2.製法
本発明は、麺線を製造する工程(A)と、麺線を100℃以上で乾燥する乾燥工程(B)とを含むことを特徴とする製造方法であり、具体的には以下のような工程1~工程6を含むものである。なお、麺線を製造する工程(A)としては下記の工程1~5が該当し、乾燥工程(B)としては工程6が該当する。
【0036】
(工程1)麺生地(ドウ)の製造工程(混捏)
原料粉に、かんすい、塩化ナトリウム等を含有する練水を給水し、これを混捏してドウを製造する。混捏時間には特に限定はないが、5~30分混捏するのが一般的である。また、混捏に使用するミキサーの種類には特に限定はなく、バッチ型ミキサーやフロージェットミキサー等を適宜使用できる。また、練水には、必須成分である還元糖や、増粘多糖類及びかんすい等の副原料を添加しても良い。
【0037】
(工程2)生麺線の製造工程
生麺線の製造方法としては、(ア)工程1で得られたドウを複合・圧延して所定の厚さの麺帯を製造し、切刃等を用いて切出す方法(切出麺)、(イ)ドウを所定のサイズの穴から押し出す方法(押出麺)、(ウ)ドウによりをかけながら延ばして麺状に成型する方法(手延麺)等が挙げられる。なお、切出麺としては中華麺、うどん等、押出麺としてはスパゲティー等、手延麺としては素麺等が例示できる。また、これらの方法を組み合わせても良く、例えば、押出によって麺帯を製造し、切出す方法(製法(ア)と製法(イ)の組合せ)等が利用できる。
【0038】
(工程3)蒸煮及び/又はボイル工程
本発明では、必要に応じて生麺線を蒸煮及び/又はボイルによってα化させる。小麦粉等に含まれる澱粉は、生澱粉と呼ばれ分子構造が緻密で消化が悪いが、水を加えて加熱すれば分子構造が崩れてα化澱粉となり消化しやすくなる。処理温度には特に制限はなく、常圧の水蒸気で蒸煮する場合やボイルする場合の処理温度は95~100℃、過熱水蒸気を用いる場合には100~350℃で処理するのが一般的である。
【0039】
なお、予めα化された原料粉(α化小麦粉やα化澱粉)を用いる場合には、蒸煮及び/又はボイル工程を実施する必要はない。
【0040】
(工程4)着味工程
本発明では、必要に応じて着味工程を設ける。着味方法には特に限定はないが、麺線を着味液に浸漬させる浸漬方式や、着味液を麺線に吹付けるシャワー方式等を適宜用いることができる。なお、着味後、自然乾燥等で水分調整しても良い。なお、着味工程において、本発明の必須成分である塩化マグネシウム及び還元糖を添加しても良い。
【0041】
(工程5)切出・型詰工程
切出麺の場合、麺線は着味工程までは連続してコンベヤ上を運ばれるのが通常であり、切出工程において一食分にとりまとめるために切断される。そして、切断された麺線はリテーナー(金属製型枠)に自動的に型詰される。なお、押出麺や手延麺の場合は切出・型詰工程を経ずに乾燥工程に移行するのが一般的である。
【0042】
(工程6)乾燥工程
麺線を100℃以上で乾燥することによってメイラード反応が進行し、好ましい調理感や外観を実現できる。したがって、本発明では100℃以上で乾燥させる工程を設けることが好ましい。なお、乾燥温度としては100~200℃がより好ましい。
【0043】
以下乾燥工程について詳細に説明する。乾燥工程を経る前の麺線は水分を25~65重量%含有するため、即席麺の保存性を高めるために、水分が1~15重量%になるまで乾燥する必要がある。代表的な乾燥方法としては、瞬間油熱乾燥法と熱風乾燥法が挙げられる。
【0044】
<瞬間油熱乾燥法>
瞬間熱乾燥法とは、麺線を100~200℃の熱油に1~4分通過させることにより、麺線の水分を2~5重量%程度まで脱水乾燥させる方法である。なお、瞬間油熱乾燥法は切出麺は、型詰を要しない押出麺や手延麺には一般的には用いられない。
【0045】
<熱風乾燥法>
熱風乾燥法とは、麺線を50~170℃の熱風に10~180分晒すことにより、麺線の水分を8~15重量%程度まで乾燥させる方法である。熱風乾燥法では、麺線を型詰する必要が無いため、切出麺だけでなく押出麺や手延麺にも利用することができる。
【実施例】
【0046】
(比較例1)
小麦粉900g、タピオカアセチル化デンプン100部を紛体混合し、水345部、塩化ナトリウム15部、かんすい3部(炭酸カリウム:炭酸ナトリウム=3:2)からなる練り水を加え、バッチ型ミキサーで15分間ミキシングして麺生地(ドウ)を製造した。
【0047】
次に、ロールを用いて、ドウを複合、圧延して0.9mmの麺帯を製造し、切刃ロール(丸刃20番:溝巾1.5mm)で切断して麺線(切出麺)とした。さらに、麺線を270kg/hの飽和蒸気で2分間蒸煮してα化麺線1を製造した。
【0048】
α化麺線1を、水および塩化ナトリウム90部からなる着味液(1リットル)に20秒間浸漬し、約30cm(100g)に切断した後、リテーナに充填し、リテーナごとに麺線を150℃のパーム油で2分30秒乾燥(瞬間油熱乾燥法)し、水分量が2重量%の即席麺1(比較例1)を製造した。なお、リテーナに充填した麺線は100g、乾燥後の即席麺1の重量は66gである。
【0049】
(比較例2)
α化麺線1を、水、塩化ナトリウム70部および塩化マグネシウム20部からなる着味液(1000ml)に20秒間浸漬し、比較例1と同様の条件で乾燥させて水分2重量%の即席麺2(比較例2)を製造した。
【0050】
(実施例1)
α化麺線1を、水、塩化ナトリウム70部、塩化マグネシウム20部、グルコース5部からなる着味液(1000ml)に20秒間浸漬し、比較例1と同様の条件で乾燥させて水分2重量%の即席麺3(実施例1)を製造した。
【0051】
(実施例2~10)
着味液に加える材料を表1の通り変更して、即席麺4~12(実施例2~10)を製造した。なお、全ての着味液について、容量が1000mlになるように水分を調整した。
【0052】
乾燥前後の麺線に含まれる塩化マグネシウムの量、および乾燥前の麺線に含まれる還元糖(グルコース、フルクトース)の量は表1の通りである。なお、表1に示した数値は実測値ではなく、「材料の配合量」、「着味液の使用量(乾燥前の麺線100gに浸み込んでいる着味液23g、α化麺線77g)」及び「麺線の重量変化(麺線の乾燥前重量100g、乾燥後重量66g)」から算出した計算値である。
【0053】
【0054】
(評価)
【0055】
(色相:L*a*b*色空間の評価)
即席麺1~12について、色彩色差計(CR-410、コニカミノルタセンシング社製)を用いて、L*a*b*の測定を行った。なお、表2には、値の変化が顕著だったa*値のみを記載している。
【0056】
(塩味)
即席麺の「塩味」は、熟練したパネラー10名が比較例1を基準に以下の通り評価した。
5:“標準(比較例1)と同等”と評価したパネラーが9名以上
4:“標準と同等”と評価したパネラーが3~8名
3:“標準と同等”と評価したパネラーが1~2名
2:“標準と同等”と評価したパネラーは居ないが、喫食可能な程度の苦味
1:苦味が強く喫食が困難
【0057】
(その他)
塩味の評価の際、パネラー10名のうち9名以上が“標準”と比べて甘いと感じた場合には「甘味」、パネラー10名のうち9名以上が“標準”と比べて苦いと感じた場合には「苦味」と評価した。
【0058】
【0059】
(まとめ)
塩化マグネシウムを添加することによりメイラード反応が抑制されること(比較例1と2の比較)、及び還元糖を添加することでメイラード反応が促進されることが確認できた(比較例2、実施例1~10の比較)。本発明によれば、塩化マグネシウムを添加することの悪影響(メイラード反応の抑制)を、還元糖を添加することで調整可能である。
【0060】
なお、表中に記載は無いが、即席麺の調理感(ロースト感)は、色相の変化とほぼ連動していた。具体的には、パネラー10名が比較例1(ポジティブコントロール)と比較例2(ネガティブコントロール)を基準に評価すると、実施例1は比較例1と比較例2の中間の調理感と回答したものが9名以上、実施例2、3は比較例1と同程度の調理感と回答したものが9名以上、実施例4、5は比較例1以上の調理感(調理感が若干強すぎる)と回答したものが9名以上であった。