(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】基板支持部、リソグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20220726BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
G03F7/20 501
H01L21/68 P
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020134533
(22)【出願日】2020-08-07
(62)【分割の表示】P 2018555244の分割
【原出願日】2017-03-21
【審査請求日】2020-08-07
(32)【優先日】2016-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】オンフリー、ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】デ グロート、アントニウス、フランシスクス、ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】サイメンス、ウィム
(72)【発明者】
【氏名】ヴレス、ダーフィット、フェルディナント
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-210766(JP,A)
【文献】特開2009-152597(JP,A)
【文献】特表2010-531541(JP,A)
【文献】特開2014-138004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持する基板支持部であって、
前記基板を支持する支持表面を備える本体と、
前記基板を前記支持表面にクランプするクランプ力を提供するように構成されている真空クランプシステムと、
前記基板を前記支持表面に装着するように構成され、及び/または、前記基板を前記支持表面から取り外すように構成されているハンドリングデバイスと、
震動デバイスと、を備え、
前記震動デバイスは、前記基板が前記支持表面から取り外される間に、前記クランプ力を震わせるように構成され
、
前記真空クランプシステムは、前記支持表面から真空源へと流れを伝える真空導管を備え、前記震動デバイスは、前記真空導管の断面を変化させるように構成されている基板支持部。
【請求項2】
前記震動デバイスは、圧力波を印加するように構成されている請求項
1に記載の基板支持部。
【請求項3】
基板を支持する基板支持部であって、
前記基板を支持する支持表面を備える本体と、
前記基板を前記支持表面にクランプするクランプ力を提供するように構成されている真空クランプシステムと、
前記基板を前記支持表面に装着するように構成され、及び/または、前記基板を前記支持表面から取り外すように構成されているハンドリングデバイスと、
震動デバイスと、を備え、
前記震動デバイスは、前記基板が前記支持表面から取り外される間に、前記クランプ力を震わせるように構成され、
前記震動デバイスは、圧力波を印加するように構成され、
前記圧力波は、前記真空クランプシステムの真空導管に生成され、及び/または、冷却システム回路または温度調整システムを通じて流れる流体に生成され
る基板支持部。
【請求項4】
前記真空クランプシステムは、前記支持表面から真空源へと流れを伝える真空導管を備え、前記震動デバイスは、前記真空導管の断面を変化させるように構成されている請求項
3に記載の基板支持部。
【請求項5】
前記震動デバイスは、前記圧力波を生成するように構成されているスピーカーシステムを備える請求項
2から4のいずれかに記載の基板支持部。
【請求項6】
前記スピーカーシステムは、前記基板を振動させるために前記圧力波が前記基板の上側に発せられるように前記基板の上方に配置され、及び/または、前記真空クランプシステムの真空導管に配置されている請求項
5に記載の基板支持部。
【請求項7】
前記震動デバイスは、前記基板が前記ハンドリングデバイスによって部分的に支持されるとともに前記支持表面によって部分的に支持されている間に、前記クランプ力を震わせるように構成され、及び/または、前記震動デバイスは、前記基板及び/または前記支持表面を振動させるように構成されている請求項1
から6のいずれかに記載の基板支持部。
【請求項8】
前記真空クランプシステムに空気を供給するように構成されている空気注入システムをさらに備える請求項1から7のいずれかに記載の基板支持部。
【請求項9】
前記震動デバイスは、前記クランプ力が最大クランプ力からゼロへと減少する期間において、前記クランプ力を震わせるように構成されている請求項1から8のいずれかに記載の基板支持部。
【請求項10】
前記支持表面は、前記本体上に構成された複数のバールによって画定されている請求項1から9のいずれかに記載の基板支持部。
【請求項11】
前記震動デバイスは、1kHzから1MHzの間の励起周波数で前記クランプ力を震わせるように構成されている請求項1から10のいずれかに記載の基板支持部。
【請求項12】
前記ハンドリングデバイスは、ローディングピンを備え、前記ローディングピンは、後退位置において前記ローディングピンの上端が前記支持表面より下方に配置され、前記ローディングピンは、伸長位置において前記上端が前記支持表面より上方に延在する請求項1から11のいずれかに記載の基板支持部。
【請求項13】
前記ハンドリングデバイスは、前記基板の上側から前記基板を支持するベルヌーイグリッパーを備える請求項1から12のいずれかに記載の基板支持部。
【請求項14】
請求項1から
13のいずれかに記載の基板支持部を備えるリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年4月20日に出願された欧州出願第16166176.4号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、基板支持部、リソグラフィ装置、およびローディング方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に、通常は基板の目標部分に与える機械である。リソグラフィ装置は例えば集積回路(IC)の製造に用いられる。この場合、マスクまたはレチクルとも称されるパターニングデバイスが、ICの個別の層に形成されるべき回路パターンを生成するために使用され得る。このパターンが基板(例えばシリコンウェーハ)の(例えばダイの一部、あるいは1つまたは複数のダイを含む)目標部分に転写される。パターン転写は典型的には基板に形成された放射感応性材料(レジスト)層への結像による。一般に一枚の基板には網状に隣接する一群の目標部分が含まれ、これらは連続的にパターン形成される。従来のリソグラフィ装置にはいわゆるステッパとスキャナとがある。ステッパにおいては、目標部分にパターン全体が一度に露光されるようにして各目標部分は照射を受ける。スキャナにおいては、所与の方向(スキャン方向)に放射ビームによりパターンを走査するとともに基板をこの方向と平行または逆平行に走査するようにして各目標部分は照射を受ける。パターニングデバイスから基板へのパターン転写は、基板にパターンをインプリントすることによっても可能である。
【0004】
リソグラフィ装置のある公知の実施例においては、基板の下側で基板を保持するロボットによって、基板支持部の支持表面に基板が装着される。実質的に水平な支持表面への基板のローディングを可能とするために、eピンとも呼ばれる3本のローディングピンが基板テーブルに設けられている。ローディングピンは、ローディングピンの上端が基板テーブルの上方へと伸長する伸長位置と、ローディングピンの上端が基板テーブル内へと後退する後退位置との間を移動可能である。
【0005】
基板テーブルへの基板のローディングの間に、ロボットは、伸長位置にある3本のローディングピンに基板を装着する。基板は支持表面より上方に伸長しているローディングピンに受け取られるから、ロボットは、基板をローディングピンに残したまま退出することができる。
【0006】
そして、ローディングピンは、支持表面に基板を載置すべく後退位置へと移動することができる。支持表面は、基板テーブルの本体に設けられ本体から延びる多数のバールの上端によって画定されている。
【0007】
ローディングシーケンスの間の基板の形状は、とりわけ、ローディングピンに支持されるときの基板の重力たわみと、例えば先行するプロセス工程に起因する等、ゆがみうる基板それ自体の形状とによって定まる。支持表面に一度装着されると、最終的な基板形状を操作する自由度は制限される。
【0008】
その結果、ローディングの間にはふつう、基板の様々な部位が様々な時点で支持表面のバールに接触することになる。基板が1以上のバールと最初に接触してからバールによって完全に支持されるまでの時間において、基板の形状は、基板が重力のもとで3本のローディングピンのみによって支持されることに起因する初期形状から、多数のバールによって支持されるときの最終形状へと変化する。典型的には、この時間の最中に、基板の部位、とくに外縁部は、基板が支持表面上で最適に平坦化された形状をとるべく配置されるようにバール上を滑り動くべきである。
【0009】
また、基板が少なくとも部分的に支持表面に支持されているとき、基板は、例えば真空クランプまたは静電クランプによって、支持表面にクランプされてもよい。真空力または静電力は、非平坦にゆがんでいる基板を支持表面上で平坦化しつつバールへと引き寄せる。このような基板の支持表面への引き寄せもまた、基板が支持表面上で最適に平坦化された形状をとるべく実質的に配置されることを可能とするように、支持表面のバール上での基板の滑動をもたらすべきである。
【0010】
バール上での基板の滑りを促進するために、バールの摩擦をできるだけ小さくすることが有利であろう。しかしながら、これにより、パターン形成されたビームの基板への投影中に(とくに、基板支持部および支持された基板は投影プロセスの間に大きい加速度および減速度にさらされるから)、基板支持部上で基板が比較的容易に滑ることとなりうる。したがって、基板支持部、とくにバールの摩擦を、バール上での基板の滑りを促進するために低下させることは、望ましくない。
【0011】
バールの上端によって画定される支持表面への基板のローディングが、例えば基板とバールの間の摩擦が大きいことに起因して、バール上での基板の滑りをもたらさない場合には、基板が支持部によって保持されるとき基板に内部的な応力または力が生じうる。こうした内部応力は望まれない。なぜならこうした内部応力はパターン形成されたビームの基板への投影中における基板の位置及び/または形状に影響を及ぼしうるからである。この位置及び/または形状は同じ基板への異なる投影ごとに異なりうるから、内部応力はリソグラフィ装置のオーバレイ性能に悪影響を与えうる。
【発明の概要】
【0012】
基板装着グリッド変形に起因するオーバレイ誤差を低減するために基板支持部上での基板の改善された位置決めを提供する基板支持部を提供することが望ましい。また、支持表面及び/または基板の摩耗低減をもたらす支持表面への基板のローディング及び/またはアンローディングを可能にする基板支持部を提供することが望ましい。
【0013】
本発明のある実施の形態によると、基板を支持する基板支持部であって、本体と、クランプデバイスと、震動デバイスと、を備え、前記本体は、前記基板を支持する支持表面を備え、前記クランプデバイスは、前記基板を前記支持表面にクランプするクランプ力を提供するように構成され、前記震動デバイスは、前記クランプ力を震わせるように構成されている基板支持部が提供される。
【0014】
本発明のある実施の形態によると、前述の請求項の一つに記載の基板支持部と、放射ビームを調整するように構成された照明システムと、前記放射ビームの断面にパターンを付与し、パターン形成された放射ビームを形成可能なパターニングデバイスを支持するように構成された支持部と、前記パターン形成された放射ビームを前記基板の目標部分に投影するように構成された投影システムと、を備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0015】
本発明のある実施の形態によると、基板をハンドリングデバイスから支持表面に移送することと、前記基板を前記支持表面にクランプするクランプ力を提供することと、前記基板を前記ハンドリングデバイスで部分的に支持するとともに前記支持表面で部分的に支持する間において前記クランプ力を震わせることと、を備えるローディング方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明のいくつかの実施の形態が例示のみを目的として付属の概略図を参照して説明される。図面において対応する符号は対応する部分を指し示す。
【
図1】本発明のある実施の形態に係る基板ステージを備えるリソグラフィ装置を概略的に示す。
【
図2】本発明のある実施の形態に係る基板支持部の第1の実施の形態を示す。
【
図3】本発明のある実施の形態に係る基板支持部の第2の実施の形態を示す。
【
図4】本発明のある実施の形態に係る基板支持部の第3の実施の形態を示す。
【
図5】本発明のある実施の形態に係る基板支持部の第4の実施の形態を示す。
【
図6】本発明のある実施の形態に係る基板支持部の第5の実施の形態を示す。
【
図7】本発明のある実施の形態に係る基板支持部の第6の実施の形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、放射ビームB(例えば、UV放射、または、他の適する放射)を調整するよう構成されている照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構成され、いくつかのパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするよう構成されている第1位置決め装置PMに接続されているマスク支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、を含む。また、この装置は、基板(例えば、レジストで被覆されたウェーハ)Wを保持するよう構成され、いくつかのパラメータに従って基板を正確に位置決めするよう構成されている第2位置決め装置PWに接続されている基板支持部(例えばウェーハテーブル)WTまたは「基板テーブル」を含む。さらに、この装置は、パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば1つ以上のダイを含む)目標部分Cに投影するよう構成されている投影システム(例えば、屈折投影レンズ系)PSを含む。
【0018】
照明システムILは、放射の方向や形状の調整、または放射の制御のために、各種の光学素子、例えば屈折光学素子、反射光学素子、磁気的光学素子、電磁気的光学素子、静電的光学素子、またはその他の形式の光学素子、若しくはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0019】
マスク支持構造MTは、パターニングデバイスMAを支持する(すなわち、パターニングデバイスの重量を支える)。支持構造は、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、および例えばパターニングデバイスが真空環境下で保持されるか否か等その他の条件に応じた方式でパターニングデバイスMAを保持する。マスク支持構造は、機械式クランプ、真空クランプ、静電クランプ、またはパターニングデバイスを保持するその他のクランプ技術を用いることができる。マスク支持構造は例えばフレームまたはテーブルであってよく、固定されていてもよいし必要に応じて移動可能であってもよい。マスク支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムに対して所望の位置にあることを保証してもよい。本書において「レチクル」または「マスク」という用語を用いた場合には、より一般的な用語である「パターニングデバイス」に同義であるとみなされるものとする。
【0020】
本書で使用される「パターニングデバイス」という用語は、基板Wの目標部分にパターンを形成すべく放射ビームの断面にパターンを付与するために使用可能ないかなるデバイスをも指し示すよう広く解釈されるべきである。例えばパターンが位相シフトフィーチャあるいはいわゆるアシストフィーチャを含む場合のように、放射ビームに与えられるパターンは、基板の目標部分に所望されるパターンと厳密に一致していなくてもよい。一般には、放射ビームに付与されるパターンは、集積回路など、目標部分に形成されるデバイスにおける特定の機能層に対応する。
【0021】
パターニングデバイスは透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスクやプログラマブルミラーアレイ、プログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィの分野では周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、更に各種のハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例としては、小型のミラーがマトリックス状に配列され、各ミラーが入射してくる放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾斜可能であるというものがある。これらの傾斜ミラーにより、マトリックス状ミラーで反射された放射ビームにパターンが付与されることになる。
【0022】
本書で使用される「投影システム」という用語は、使用される露光放射に関して又は液浸液の使用または真空の使用等の他の要因に関して適切とされるいかなる投影システムをも包含するよう広く解釈されるべきであり、屈折光学系、反射光学系、反射屈折光学系、磁気的光学系、電磁気的光学系、静電的光学系、またはそれらの任意の組み合わせを含む。本書における「投影レンズ」との用語の使用はいかなる場合も、より一般的な用語である「投影システム」と同義とみなされうる。
【0023】
本書に使用される「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外(UV)放射(例えば約365nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長を有する)及び極紫外(EUV)放射(例えば5から20nmの範囲の波長を有する)含むあらゆる種類の電磁放射、さらにはイオンビームまたは電子ビーム等の粒子ビームを包含する。
【0024】
図示されるように、本装置は、(例えば透過型マスクを用いる)透過型である。これに代えて、本装置は、(例えば、上述の形式のプログラマブルミラーアレイ、または反射型マスクを用いる)反射型であってもよい。
【0025】
リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)又はそれより多くの基板テーブルまたは「基板支持部」(及び/または2つ以上のマスクテーブルまたは「マスク支持部」)を有する形式のものであってもよい。このような多重ステージ型の装置においては、追加されたテーブルまたは支持部は並行して使用されるか、あるいは1以上のテーブルまたは支持部が露光のために使用されている間に1以上の他のテーブルまたは支持部で準備工程が実行されてもよい。1以上の基板支持部に加えて、リソグラフィ装置は、基板支持部の性質、または投影システムを出射する放射ビームの性質を計測する少なくとも1つのセンサを備える計測ステージを有してもよい。計測ステージは、基板を保持しないように構成されていてもよい。
【0026】
また、リソグラフィ装置は、基板Wの少なくとも一部が例えば水などの比較的高い屈折率を有する液体で投影システムPSと基板Wとの間の空間を満たすよう覆われうる形式のものであってもよい。液浸液は、例えばパターニングデバイスMAと投影システムPSとの間などのリソグラフィ装置の他の空間に適用されてもよい。液浸技術は投影システムの開口数を増大させるために使用することができる。本書で使用される「液浸」との用語は、基板等の構造体が液体に浸されなければならないことを意味するのではなく、液体が投影システムと基板との間に露光中に配置されることを意味するにすぎない。
【0027】
図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。例えば放射源がエキシマレーザである場合には、放射源とリソグラフィ装置とは別体であってもよい。この場合、放射源SOはリソグラフィ装置の一部を構成しているとはみなされなく、放射ビームは、適当な方向変更用のミラー及び/またはビームエキスパンダを例えば含むビーム搬送系BDを介して放射源SOからイルミネータILへと受け渡される。放射源SOが例えば水銀ランプである等の他の場合には、放射源SOはリソグラフィ装置と一体の部分であってもよい。放射源SOとイルミネータILとは、またビーム搬送系BDが必要とされる場合にはこれも合わせて、放射システムと総称されてもよい。
【0028】
イルミネータILは放射ビームの角強度分布を調整するよう構成されているアジャスタADを含んでもよい。一般には、イルミネータILの瞳面における強度分布の少なくとも外側及び/又は内側半径範囲(通常それぞれ「シグマ-アウタ(σ-outer)」、「シグマ-インナ(σ-inner)」と呼ばれる)を調整することができる。加えてイルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCO等その他の各種構成要素を含んでもよい。イルミネータはビーム断面における所望の均一性及び強度分布を得るべく放射ビームを調整するために使用されてもよい。
【0029】
放射ビームBは、マスク支持構造MTに保持されるパターニングデバイスMAに入射して、パターニングデバイスMAによりパターン形成される。パターニングデバイスMAを横切った放射ビームBは投影システムPSを通過する。投影システムPSはビームを基板Wの目標部分Cに合焦する。第2位置決め装置PWと位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、または静電容量センサ)により、例えば放射ビームBの経路に異なる目標部分Cを位置決めするように、基板テーブルWTを正確に移動させることができる。同様に、第1位置決め装置PMと他の位置センサ(
図1には明示せず)は、例えばマスクライブラリの機械的な取り出し後または走査中に、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めするために使用することができる。一般にマスク支持構造MTの移動は、第1位置決め装置PMの一部を構成するロングストロークモジュール(粗い位置決め用)及びショートストロークモジュール(精細な位置決め用)により実現されうる。同様に、基板支持部WTの移動は、第2位置決め装置PWの一部を構成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールにより実現されうる。ステッパでは(スキャナとは異なり)、マスク支持構造MTはショートストロークのアクチュエータにのみ接続されているか、あるいは固定されていてもよい。パターニングデバイスMAと基板Wとは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いてアライメントされてもよい。図においては基板アライメントマークが専用の目標部分を占拠しているが、アライメントマークは目標部分間のスペースに配置されてもよい(これはスクライブライン・アライメントマークとして公知である)。同様に、パターニングデバイスMAに複数のダイが設けられる場合にはマスクアライメントマークがダイ間に配置されてもよい。
【0030】
図示の装置は例えば次のうち少なくとも1つのモードで使用され得る。
1.ステップモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンの全体が1回で目標部分Cに投影される間、マスク支持構造MT及び基板支持部WTは実質的に静止状態とされる(すなわち単一静的露光)。そして基板支持部WTがX方向及び/またはY方向に移動されて、異なる目標部分Cが露光される。ステップモードでは露光フィールドの最大サイズが単一静的露光で結像される目標部分Cのサイズを制限することになる。
2.スキャンモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、マスク支持構造MT及び基板支持部WTまたは「基板テーブル」は同期して走査される(すなわち単一動的露光)。マスク支持構造MTに対する基板支持部WTまたは「基板テーブル」の速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)特性及び像反転特性により定められうる。スキャンモードでは露光フィールドの最大サイズが単一動的露光での目標部分の(非走査方向の)幅を制限し、走査移動距離が目標部分の(走査方向の)長さを決定する。
3.別のモードにおいては、マスク支持構造MTがプログラマブルパターニングデバイスを保持して実質的に静止状態とし、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、基板支持部WTまたは「基板テーブル」が移動または走査される。このモードではパルス放射源が通常用いられ、プログラマブルパターニングデバイスは、基板支持部WTの毎回の移動後、または走査中の連続放射パルス間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上述の形式のプログラマブルミラーアレイ等のプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0031】
上記で記載した使用モードを組み合わせて動作させてもよいし、各モードに変更を加えて動作させてもよいし、さらに全く別の使用モードが用いられてもよい。
【0032】
リソグラフィ装置は、基板支持部WTを備える。基板支持部WTの上部は、
図2において断面により、より詳細に示されている。
【0033】
基板支持部WTは、本体MBと、支持表面Sを画定するように本体MBから支持高さへと延在する複数のバールBとを備える。支持表面Sは、基板支持部WTに基板Wを支持するように構成されている。基板支持部WTの製造において、バールBは、平坦かつ水平な支持表面Sを得るべく高精度に機械加工され研磨される。バールBは、基板支持部WTと基板Wの接触表面積を制限し、それにより、基板Wが支持表面Sに支持されるとき基板Wに影響する基板支持部WTまたは基板W底部の汚染を防ぐ。
【0034】
また、バールB間の真空空間VSは、封止リングSRによって範囲が定められている。この真空空間VSは、支持表面Sに、とくにバールBの上端に、基板Wをクランプする負圧を生成するために使用されてもよい。封止リングSRによって範囲を定められたバール間の真空空間VSは、真空導管VCを介して真空源VSOへと接続されている。
【0035】
基板支持部WTに基板Wを装着し、または基板支持部WTから基板Wを取り外すために、基板支持部WTは、基板Wを受け取って支持するように構成された一群のローディングピンLPを備える。
【0036】
図示された例においては、一群のローディングピンLPは、実質的に鉛直に延在する3本のピン(2つのみが図示されている)を備える。各ローディングピンLPは、後退位置と伸長位置との間を移動可能である。後退位置においては、ローディングピンLPの上端は、支持表面Sより下方に配置される。伸長位置においては、ローディングピンLPの上端は、支持表面Sより上方に配置される。
図2に示されるローディングピンLPは伸長位置にあり、基板WがローディングピンLPによって支持されている。例えば、基板Wは、ローディングロボットなどのローディングデバイスによってローディングピンLPに装着される。
【0037】
基板Wを支持表面Sに装着するとき、ローディングピンLPは基板支持部WTの本体MB内へと高さを下げ、それにより、基板WはバールB上で静止する。基板Wはふつう、完全には平坦でない。例えば、先行するプロセス工程は基板Wにゆがみをもたらしうる。さらに、重力によって、基板Wの形状は基板WがローディングピンLPに支持されるとき影響を受けうる。
【0038】
基板Wの非平坦性の結果として、基板Wは支持表面Sへと降下されるとき平坦ではない。そのため、基板Wは、支持表面Sの平坦化された形状に適合するようにバールB上で滑動するかもしれない。支持表面Sに基板Wをクランプするために、真空クランプシステムは、真空空間VSに負圧を生成することによって基板Wにクランプ力を作用させる。このようにクランプすることによって、支持表面Sでの基板Wの更なる平坦化が、滑動の結果としてもたらされうる。真空クランプシステムは、真空空間VS、封止リングSR、および真空導管VCを備えてもよい。
【0039】
真空クランプシステムは、基板Wを支持表面Sにクランプするクランプ力を提供するように構成されたクランプデバイスの一例である。震動デバイスDDは、クランプ力を震わせるように構成されている。クランプ力は、真空クランプシステムによって提供される真空力を備えてもよい。震動デバイスDDは、真空力を震わせるように構成されていてもよい。
【0040】
支持表面Sに支持されクランプされた基板Wにおける内部応力を避け、オーバレイ性能を向上させるために、バールBの頂端と基板Wとの間の摩擦は、ローディングの間において、とくに支持表面Sに基板Wがクランプされている間において、基板Wが平坦化されるとき基板WがバールB上を容易に滑ることができるように小さいことが望ましい。
【0041】
同時に、実際のリソグラフィプロセス、すなわちパターン形成された放射ビームを基板Wの目標部分Cに投影する間においては、基板支持部WTの加速中及び/または減速中に支持表面Sに対して基板Wが変位することを避けるためにバールBの頂端と基板Wとの間に大きな摩擦が存在することが望ましい。
【0042】
よって、ローディングの間においてはバールBと基板Wとの間に低摩擦が望まれるのに対し、実際のリソグラフィプロセスの間においてはバールBと基板Wとの間に高摩擦が望まれる。
【0043】
図2に示される基板支持部WTにおいては、バールBの摩擦は、得られる摩擦が、実際のリソグラフィプロセスの間において、とくに基板支持部WTの加速中及び/または減速中において、基板Wに対して固定された位置に基板Wが保持されることを保証するのに十分な大きさとなるように、選択される。
【0044】
また、震動デバイスDDは、支持表面Sと基板Wとの間の摩擦を低減するために、支持表面Sへの基板Wのローディング及び/またはアンローディングの間において基板Wを振動させるように構成され、設けられている。この低減された摩擦は、このローディング及び/またはアンローディングの間においてバールB上での基板Wの滑りを促進する。
【0045】
図2の実施の形態の震動デバイスDDは、基板Wを振動させるように基板Wに圧力波を印加するように構成されている。この圧力波は、真空クランプシステムの真空導管VCに配置されたスピーカーシステムSSYによって生成される。
【0046】
スピーカーシステムSSYは、チャンバーCHに設置され、真空導管VCへと圧力波を発するようにスピーカーシステムSSYに信号を提供する増幅器AMに接続されている。圧力波は、圧力波が基板Wへの振動作用をもたらす場所である真空空間VSへと伝わる。圧力波を伝えるために、空気など、少なくともいくらかのガスが、真空導管VCにある。
【0047】
この振動作用は、バールBと基板Wとの間の摩擦を低減する。その結果、基板WはバールB上で、より容易に滑動し、基板Wの内部応力は回避されまたは少なくとも実質的に低減され、基板Wは所望の平坦化される位置へと、より容易に移動する。その結果、リソグラフィ装置のオーバレイ性能を向上することができる。すなわち、基板支持部WTへの基板Wのローディングの間における基板の変形が小さくなり、より良好なオーバレイ性能がもたらされる。
【0048】
バールBと基板Wとの間の摩擦を低減することには、バールB上での基板Wの滑りによるバールB及び/または基板Wの摩耗を実質的に低減することができるという更なる有利な効果があることが理解される。
【0049】
また、真空導管VCが基板Wにクランプ力すなわち真空力を作用させるための真空空間VSにおける負圧を生成するために使用されるから、真空導管VCおよび真空空間VSにおける圧力が低ければ、圧力波の伝達に悪影響がある。真空導管VCおよび真空空間VSを通じた圧力波の伝達を向上させるために、真空クランプシステム、とくにスピーカーシステムSSYの前方のチャンバーCHに空気を供給する空気注入システムAINを設けることが望まれうる。
【0050】
さらに、スピーカーシステムSSYは、好ましくは、圧力波が真空空間VSに高速に到達するように真空空間VSに近接して配置される。スピーカーシステムSSYは、支持表面Sに支持された基板Wを効果的に振動させるように異なる場所に配置された多数のスピーカーを備えてもよい。
【0051】
スピーカーシステムSSYによって発せられる圧力波は、いかなる適切な励起周波数を有してもよく、例えば1kHzから1MHzの間であってもよい。
【0052】
圧力波の励起周波数および励起振幅は、バールBと基板Wの間の摩擦を効果的に低減するように選択される。圧力波によって生じる振動によって支持表面Sから基板Wが完全に解放されることは避けるべきである。また、圧力波の励起周波数および励起振幅は、基板Wが全体として、リソグラフィプロセスにとって望まれない位置へと支持表面S上で実質的に変位しないように選択されるべきである。
【0053】
好ましくは、圧力波の励起周波数および励起振幅は、基板Wがすべての個々のバールBと接触を保持するように選択されるが、振動により基板WがいくつかのバールBから一時的に解放されることが可能でありうる。
【0054】
真空導管VCは、支持表面Sから真空源VSOへと流れを伝えるように構成されている。流れは、支持表面Sを包囲する環境空気またはいかなる他の種類のガスの流れであってもよい。震動デバイスDDは、真空導管VCの断面を変化させるように構成されていてもよい。断面を変化させることによって、流れが乱される。流れの乱れは真空導管VCにおける圧力に変化を生じさせる。その結果、真空空間VSにおける圧力が変化する。真空空間VSにおいて変化する圧力は、真空力に変化を生じさせる。よって、断面を変化させることによって、震動デバイスDDは、真空力を震わせることができる。震動デバイスDDは、真空導管VCに接続されたバルブを備えてもよい。バルブは、バルブの断面を制御するピエゾ素子を有してもよい。
【0055】
位置測定システムPMSが支持表面S上での基板Wの位置を測定するために設けられてもよいことが理解される。こうした位置測定システムPMSは、例えば基板W上のマーカーを読み取ることによって支持表面Sに対して基板Wの位置を決定することができるものであってもよく、基板Wが全体として、リソグラフィプロセスにとって望まれない位置へと支持表面S上で実質的に変位されていないことを確認するために使用されてもよい。
【0056】
支持表面Sへの基板Wのローディングの間における基板Wの振動による摩擦低減作用を最適に使用するために、震動デバイスDDは、真空クランプシステムがクランプ力をゼロから最大クランプ力まで増加させるように構成されている期間において基板Wを振動させるように構成されていてもよい。また、震動デバイスDDは、ローディングピンLPを後退位置へと降下させることによって基板Wが支持表面Sに載置される期間において効果的に使用されてもよい。この期間は、実際には、クランプ力がゼロから最大クランプ力まで増加する期間と少なくとも部分的に重なりうる。
【0057】
また、基板Wが基板支持部WTから取り外されるとき、震動デバイスDDは、基板WとバールBの間の摩擦を低減させるように効果的に使用されてもよい。例えば、真空クランプシステムがクランプ力を最大クランプ力からゼロまで減少させるように構成されている期間において、震動デバイスDDは、バールBと基板Wとの間の摩擦を低減させるように基板Wを振動させてもよい。また、震動デバイスDDは、ローディングピンLPによって支持表面Sから基板Wが持ち上げられるときに効果的に使用されてもよい。アンローディング中にバールBと基板Wとの間の摩擦を低減させることは、バールB及び/または基板Wの摩耗を低減するためにとくに有用でありうる。
【0058】
スピーカーシステムを有する震動デバイスDDの代替的な実施の形態においては、スピーカーシステムは、いかなる他の適切な場所に配置されてもよいことが理解される。例えば、スピーカーシステムは、基板Wを振動させるために圧力波が基板Wの上側に発せられるように、基板Wの上方に配置されてもよい。
【0059】
支持表面S及び/または基板Wを振動させることによって支持表面SとくにバールBと基板Wとの間の摩擦を低減させることの上述の利点は、震動デバイスDDの代替的な実施の形態によっても得られうる。いくつかのこうした代替的な実施の形態を以下に述べる。
【0060】
図3は、本発明に係る震動デバイスDDの第2の実施の形態を示す。この第2の実施の形態の震動デバイスDDは、バールBと基板Wとの間の摩擦についての摩擦低減作用を得るために、基板支持部WTの本体を少なくとも部分的に振動させるように構成されている。
【0061】
図3の実施の形態の震動デバイスDDは、
図3において両矢印で示されるように、支持表面Sに実質的に平行な方向に基板支持部WTの本体MBに振動力を作用させるように構成されている多数のピエゾ素子PEを備える。その結果生じる本体MBの振動は、バールBと基板Wとの間の接触について所望の摩擦低減作用を有する。ピエゾ素子PEは、バールBと基板Wとの間の摩擦を効果的に低減させるように適切な励起周波数において適切な励起振幅で増幅器AMによって駆動される。
【0062】
図4は、第3の実施の形態を示し、ここでは、
図3の第2の実施の形態と同様に、バールBを基板Wに対して振動させるべく基板支持部WTの本体MBを少なくとも部分的に振動させるためにピエゾ素子PEが使用される。
【0063】
図3の実施の形態との主な違いは、
図4の実施の形態においては本体MBの励起の方向が
図4において両矢印で示されるように支持表面Sに実質的に垂直な方向にあることである。支持表面Sに実質的に垂直な方向における本体MBの振動もまた、基板WとバールBとの間の接触について摩擦低減作用を有する。
【0064】
増幅器AMは、とくに基板Wのローディングおよびアンローディングの間において、基板WとバールBとの間に所望の摩擦低減作用を得るように適切な励起周波数および励起振幅で、ピエゾ素子PEを駆動するために設けられている。
【0065】
図3および
図4の実施の形態においては適切な周波数および振幅で本体MBを少なくとも部分的に振動させるのに適切ないかなる他の種類のアクチュエータが適用されてもよいことが理解される。とくに、基準物体に対して基板支持部WTを移動させるように構成されたアクチュエータが摩擦低減作用を得るように本体MBを少なくとも部分的に振動させるために使用されてもよい。基板支持部WTを移動させるこれらのアクチュエータは例えば、
図1に関して述べたロングストロークモジュールのロングストロークアクチュエータまたはショートストロークモジュールのショートアクチュエータ、または基板支持部を移動させるように構成されたいかなる他のアクチュエータであってもよい。
【0066】
また、例えばピエゾアクチュエータなどのアクチュエータは、支持表面Sに平行な方向および基板Wに垂直な方向の両方に本体MBに振動力を作用させるために使用されてもよく、いかなる他の適切な方向、または組み合わせた方向に使用されてもよいことが理解される。
【0067】
図5は、本発明に係る震動デバイスDDの第4の実施の形態を示す。この実施の形態においては、真空クランプシステムに代えて、静電クランプESCが基板Wを静電クランプ力で支持表面Sにクランプするために設けられている。この実施の形態においては封止リングSRが存在しないが、それは真空クランプシステムのための真空空間VSが生成される必要がないからである。
【0068】
静電クランプESCは、信号生成部SGEによって提供される静電クランプ信号によって駆動される。摩擦低減作用を得るために、信号生成部SGEは、基板支持部WTへの基板Wのローディング及び/または基板支持部WTからの基板Wのアンローディングの間において、変動する振動信号を通常の静電クランプ信号に重ね合わせて、基板Wに変動するクランプ力を印加するように構成されている。震動デバイスDDは、信号生成部SGEを備えてもよく、そのため、震動デバイスDDは、変動する振動信号を生成するように構成されていてもよい。静電クランプESCは、変動する振動信号に基づいて静電力を提供する。
【0069】
この変動するクランプ力は、支持表面Sに基板Wをクランプするだけでなく、基板Wのローディング及び/またはアンローディングの間において所望の摩擦低減作用を得るために、基板WがクランプされているバールBに対する基板Wの振動を生成する。
【0070】
図6は、本発明に係る震動デバイスDDの第5の実施の形態を示す。
図6の実施の形態においては、震動デバイスDDは、圧力波を生成するために使用されるスピーカーシステムSSYを備える。スピーカーシステムSSYは、基板支持部WTの本体MBにおける冷却システム回路CSCを通じて流れる冷却流体に圧力波を生成するように配置されている。ある実施の形態においては、冷却システム回路CSCに代えて、温度調整システムが使用されてもよい。温度調整システムは、冷却、加熱、または、冷却および加熱の両方によって基板支持部WTの温度を調整するように構成されていてもよい。温度調整システムは、流体を含む回路を有してもよい。スピーカーシステムSSYは、回路における流体に圧力波を生成するように配置されてもよい。
【0071】
震動デバイスDDは、所望の励起周波数および励起振幅でスピーカーシステムSSYを駆動する増幅器AMを備える。圧力波は、冷却流体を伝わり、この圧力波の結果として少なくともバールBが振動するように本体MBを振動させるために使用される。バールBの振動は、上述のように摩擦低減作用を生成する。
【0072】
上述の実施の形態においては、ローディングピンLPが本体MBに配置されている。これに代えて、本体MBは、貫通穴を備える。ローディングピンLPは、貫通穴を通じて延在してもよい。ローディングピンLPは、前記本体とは別の本体に配置されてもよい。
【0073】
ある実施の形態においては、基板支持部WTは、基板Wを支持するためにある。基板支持部WTは、本体MB、クランプデバイス、および震動デバイスDDを備える。本体MBは、基板Wを支持するための支持表面Sを備える。クランプデバイスは、基板Wを支持表面Sにクランプするクランプ力を提供するように構成されている。震動デバイスDDは、クランプ力を震わせるように構成されている。震動デバイスDDは、基板Wが支持表面Sに装着される間にクランプ力を震わせるように構成されてもよい。
【0074】
クランプデバイスは、真空クランプシステムを備えてもよい。クランプ力は、真空クランプシステムによって提供される真空力を備えてもよい。震動デバイスDDは、真空力を震わせるように構成されている。真空クランプは、支持表面Sから真空源VSOへと流れを伝える真空導管VCを備えてもよい。震動デバイスDDは、真空導管VCの断面を変化させるように構成されていてもよい。震動デバイスDDは、ピエゾ素子を備えてもよい。
【0075】
クランプデバイスは、静電クランプESCを備えてもよい。クランプ力は、静電クランプESCによって提供される静電力を備えてもよい。震動デバイスDDは、静電力を震わせるように構成されていてもよい。震動デバイスDDは、変動する振動信号など、信号を生成するように構成されていてもよい。静電クランプESCは、信号に基づいて静電力を提供してもよい。
【0076】
震動デバイスDDは、クランプ力がゼロから最大クランプ力へと増加する期間においてクランプ力を震わせるように構成されていてもよい。震動デバイスDDは、クランプ力が最大クランプ力からゼロへと減少する期間においてクランプ力を震わせるように構成されていてもよい。支持表面Sは、本体MB上に構成された複数のバールによって形成されていてもよい。震動デバイスDDは、1kHzから1MHzの間の励起周波数でクランプ力を震わせるように構成されていてもよい。
【0077】
ある実施の形態においては、上述の実施の形態の一つである基板支持部WTと、照明システムILと、支持部MTと、投影システムPSとを備えるリソグラフィ装置が提供される。照明システムILは、放射ビームを調整するように構成されている。支持部MTは、パターニングデバイスMAを支持するように構成されている。パターニングデバイスMAは、放射ビームの断面にパターンを付与し、パターン形成された放射ビームを形成可能である。投影システムPSは、パターン形成された放射ビームを基板Wの目標部分Cに投影するように構成されている。
【0078】
リソグラフィ装置は、ハンドリングデバイスを備えてもよい。ハンドリングデバイスは、基板Wを支持表面Sに装着するように構成され、及び/または、基板Wを支持表面Sから取り外すように構成されている。震動デバイスDDは、基板Wがハンドリングデバイスによって部分的に支持されるとともに支持表面Sによって部分的に支持されている間に、クランプ力を震わせるように構成されている。ハンドリングデバイスは、ローディングピンLPを備えてもよい。ハンドリングデバイスは、ローディングデバイス、例えばローディングロボットを備えてもよい。ハンドリングデバイスは、基板Wの下側または基板Wの上側に接触することによって基板Wをハンドリングしてもよい。例えば、ハンドリングデバイスは、基板Wの上側から基板Wを支持するベルヌーイグリッパーを備える。ベルヌーイグリッパーは、ハンドリングデバイスに基板Wをクランプする真空力を提供してもよい。ベルヌーイグリッパーは、ハンドリングデバイスと基板Wとの間の物理的接触を妨げるようにハンドリングデバイスと基板Wとの間にガスフィルムを提供してもよい。
【0079】
ある実施の形態においては、i)基板Wをハンドリングデバイスから支持表面Sに移送することと、ii)基板Wを支持表面Sにクランプするクランプ力を提供することと、iii)基板Wをハンドリングデバイスで部分的に支持するとともに支持表面Sで部分的に支持する間においてクランプ力を震わせることと、を備えるローディング方法が提供される。ローディング方法は、クランプ力がゼロから最大クランプ力へと増加する間においてクランプ力を震わせることをさらに備えてもよい。
【0080】
更なる実施の形態が
図7に示されている。
図7は、本体MBの断面の一部を示す。本体MBは、第1部分P1、第2部分P2、および第3部分P3を備える。バールBは、第3部分P3の上面に配置されている。第1部分P1と第2部分P2は接触表面CSUを介して互いに接続されている。ピエゾ層PZLが第2部分P2と第3部分P3との間に配置されている。ピエゾ層PZLの底面BSUは、第2部分P2に接続されている。ピエゾ層PZLの上面TSUは、第3部分P3に接続されている。
【0081】
ピエゾ層PZLは、圧電材料を有し、電荷が当該圧電材料に印加されるとき変形する。ピエゾ層PZLは、電荷が印加されるときz軸に沿って変形するように構成されていてもよい。例えば、ピエゾ層PZLの厚さは、異なる電荷を印加することによって変更されてもよい。ピエゾ層PZLは、x軸に沿って変形するように構成されていてもよい。この場合、ピエゾ層PZLは、上面TSUが底面BSUに対してx方向に沿って動くせん断ピエゾを形成する。ピエゾ層PZLは、上面TSUが底面BSUに対してxy平面内の方向に沿って動くせん断ピエゾを形成してもよい。
【0082】
電荷がピエゾ層PZLに印加されるとき、上面TSUは、底面BSUに対して動く。その結果、第3部分P3が第2部分P2に対して動く。第3部分P3の動きによってバールBが動く。
【0083】
バールBに振動を生じさせるように時間的に変動する電荷が印加されてもよい。例えば、電荷は、時間に対してサイン形状の関数で印加されてもよい。電荷は、電荷が複数の値に変化する一連のステップ関数として与えられてもよい。ピエゾ層PZLは、高周波数、例えば500Hz~5000Hzの周波数で、バールBを動かしてもよい。動きの振幅は、小さくてもよく、例えば10nm~100nmの範囲であってもよい。この動きは、震動と称しうる。ピエゾ層PZLは、震動デバイスDDとみなされうる。震動は、z方向に沿うものであってもよいし、xy平面に沿うものであってもよいし、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0084】
基板WがバールBに装着されるとき、ピエゾ層PZLは、バールBを震わせてもよい。基板WがバールBに接触するとき、震動は、基板WとバールBとの間の摩擦を、震動が無い場合の摩擦に比べて低減させる。その結果、基板Wは、バールB上でより容易に滑り、基板Wは、より小さい内部応力で装着されうる。震動は、バールBへの基板Wの装着後に、基板WがバールBによって完全に支持されているときに、適用されてもよい。震動は、バールBからの基板Wのアンロードの間に適用されてもよい。震動は、基板WとバールBとの間の摩擦を低減し、これはバールBの摩耗を低減するのに役立ちうる。
【0085】
ピエゾ層PZLは、定在波としてバールBを振動させる電荷によって駆動されてもよい。バールBが定在波として振動するとき、基板Wの内部応力は除去または低減されうる。あるいは、ピエゾ層PZLは、進行波としてバールBを振動させる電荷によって駆動されてもよい。
【0086】
ピエゾ層PZLは、本体MBと一体の部分を形成してもよい。ピエゾ層PZLは、接合により、または成膜により、またはその組み合わせにより、第2部分P2および第3部分P3に接続されてもよい。接合は、焼成プロセスにおいて行われてもよい。バールBの所望の平坦性を得るために、バールBは、ピエゾ層PZLが第2部分P2および第3部分P3に接続された後に生成され研磨されてもよい。
【0087】
ピエゾ層PZLは、圧電材料に電荷を印加する電極を備える。電極のレイアウトは、ピエゾ層PZLに所望される変形に依存する。電極のパターンは、リソグラフィプロセスを使用して製作されてもよい。また、ピエゾ層PZLは、連続層として与えられてもよい。これに代えて、ピエゾ層PZLは、複数の部分をもつ層として与えられてもよい。例えば、これら部分は、同心リングまたはくさびとして配置されてもよい。各部分に専用の電荷が印加されてもよいし、あるいは、共通の電荷が印加されてもよい。ピエゾ層PZLは、例えばローディングピンLPのための空間を提供するために、開口部を有してもよい。
【0088】
図7において、ピエゾ層PZLは、第2部分P2と第3部分P3の間に設けられている。あるいは、ピエゾ層PZLは、第1部分P1と第2部分P2との間の接触表面CSUに設けられる。あるいは、ピエゾ層PZLは、第1部分P1内または第1部分P1の下方に設けられる。ある実施の形態においては、多数のピエゾ層PZLが設けられる。
【0089】
本明細書ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に具体的に言及しているかもしれないが、本書に説明されたリソグラフィ装置は、集積光学システム、磁区メモリ用案内パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造など他の用途にも適用することが可能であるものと理解されたい。当業者であればこれらの他の適用に際して、本書における「ウェーハ」あるいは「ダイ」という用語がそれぞれ「基板」あるいは「目標部分」という、より一般的な用語と同義であるとみなされると理解することができるであろう。本書に言及される基板は、露光前または露光後において、例えばトラック(典型的にはレジスト層を基板に塗布し、露光後のレジストを現像する装置)、メトロロジツール、及び/またはインスペクションツールにより処理されてもよい。適用可能であれば、本書の開示はこれらのまたは他の基板処理装置にも適用され得る。また、基板は例えば多層ICを生成するために複数回処理されてもよく、その場合には本書における基板という用語は処理済みの多数の層を既に含む基板をも意味する。
【0090】
上記では光リソグラフィにおける本発明の実施の形態の使用に具体的に言及したかもしれないが、本発明は例えばインプリントリソグラフィなどの他の用途においても使用されうるものであり、文脈が許す場合、光リソグラフィに限られるものではないことは理解されよう。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスのトポグラフィによって、基板上に生成されるパターンが画定される。パターニングデバイスのトポグラフィを基板に供給されたレジストの層に押しつけ、その後に電磁放射、熱、圧力またはその組合せにより、レジストが硬化される。パターニングデバイスをレジストから離すと、レジストの硬化後にパターンが残される。
【0091】
以上では本発明の特定の実施形態を説明したが、本発明は、説明したものとは異なる方式で実施されうることが理解される。
【0092】
上述の説明は例示であり、限定を意図しない。よって、後述の特許請求の範囲から逸脱することなく既述の本発明に変更を加えることができるということは、関連技術の当業者には明らかなことである。