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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】酸化物材料をコーティングする方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20220727BHJP
   C01G 51/00 20060101ALI20220727BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20220727BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220727BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220727BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20220727BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20220727BHJP
   B05D 1/18 20060101ALI20220727BHJP
   B05D 1/38 20060101ALI20220727BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
C01G53/00 A
C01G51/00 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
B05D3/12 Z
B05D7/00 C
B05D1/18
B05D1/38
B05D3/10 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019548979
(86)(22)【出願日】2018-02-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2018054214
(87)【国際公開番号】W WO2018162232
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】17159830.3
(32)【優先日】2017-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】クライネ イェーガー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】リープシュ,ティルマン
(72)【発明者】
【氏名】シェーンヘル,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ガレラ,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】セチネル,ファティー
(72)【発明者】
【氏名】ゾンマー,ハイノ
(72)【発明者】
【氏名】アールフ,マライケ
(72)【発明者】
【氏名】レッフラー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲルザンク,レジーナ
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ,ジェイコブ
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0155590(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0351973(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0006420(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0236575(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0248516(US,A1)
【文献】国際公開第2016/083185(WO,A1)
【文献】LU MA et al.,Atomic Layer Deposition for Lithium-Based Batteries,Adv. Mater. Interfaces,2016年,3, 1600564
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00 - 47/00
C01G 49/10 - 99/00
H01M 4/00
B05D 1/00 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物材料をコーティングする方法であって、前記方法が、以下の工程、
(a)一般式Li[NiCoAl]O2+rによるリチウム化ニッケル-コバルトアルミニウムオキシド、一般式Li1+x(CoMn 1-xによるリチウム化コバルト-マンガンオキシド、及び一般式Li(1+x)[NiCoMn 1-xによるリチウム化層状ニッケル-コバルト-マンガンオキシドから選択された粒子材料を供給する工程と、
(式中、MがMg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Mo、V及びFeから選択され、
0≦x≦0.2、
0.1≦a≦0.8、
0≦b≦0.5、
0.1≦c≦0.6、
0≦d≦0.1、及び
a+b+c+d=1、
eが0.2~0.8の範囲にあり、
fが0.2~0.8の範囲にあり、及び
e+f+d=1、
hが0.8~0.90の範囲にあり、
iが0.15~0.19の範囲にあり、
jが0.01~0.05の範囲にあり、
rが0~0.4の範囲にある)
(b)金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物で、工程(a)で供給された粒子材料を処理する工程と、
(c)湿気で、工程(b)で得られた材料を処理する工程と、
任意に、一連の工程(b)及び(c)を繰り返す工程とを含み、
工程(b)及び(c)が、前記粒子材料に混合エネルギーを機械的に導入するミキサーで、又は移動床又は固定床により行われ、
工程(b)及び(c)が、1atmより5ミリバール~1バール高い範囲の圧力で行われる、方法。
【請求項2】
ミキサーが強制ミキサー及び自由落下ミキサーから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルキル金属化合物又は金属アルコキシド又は金属アミドがそれぞれ、M(R、M(R、M(R4-y、M(OR、M(OR、M(OR、M[N 、及びメチルアルモキサン
(式中、Rが、同一又は異なり、直鎖又は分岐状のC~C-アルキルから選択され、
が、同一又は異なり、直鎖又は分岐状のC~C-アルキルから選択され、
がMg及びZnから選択され、
がAl及びBから選択され、
がSi、Sn、Ti、Zr及びHfから選択され、
変数yが、0~4から選択される)
から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)が、1atmより10~150ミリバール高い圧力で行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)及び(c)が、バッフルを備える回転容器内で行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
1atmより高い圧力で、排気ガスを水で処理する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1atmより5ミリバール~1バール高い範囲の圧力で、前記排気ガスを水で処理する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
リチウム化ニッケル-コバルトアルミニウムオキシド又はリチウム化層状ニッケル-コバルト-マンガンオキシドの粒子がそれぞれ、凝集性である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)が、15~350℃の範囲の温度で行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)と(c)の間に、不活性ガスで反応器をフラッシュする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
空気対流により、コーティングされた材料をそれぞれ容器(単数又は複数)から取り出す工程を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化物材料をコーティングする方法に関し、前記方法が、以下の工程、
(a)リチウム化ニッケル-コバルトアルミニウムオキシド、リチウム化コバルト-マンガンオキシド、及びリチウム化層状ニッケル-コバルト-マンガンオキシドから選択された粒子材料を供給する工程と、
(b)金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物で、前記カソード活物質を処理する工程と、
(c)湿気で、工程(b)で得られた材料を処理する工程と、
任意に、一連の工程(b)及び(c)を繰り返す工程とを含み、
ここで、工程(b)及び(c)が、粒子材料に混合エネルギーを機械的に導入するミキサーで、又は移動床又は固定床により行われ、
工程(b)及び(c)が、常圧より5ミリバール~1バール高い範囲の圧力で行われる。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、エネルギーを貯蔵するための最新の装置である。携帯電話及びラップトップコンピューターなどの小型の装置からカーバッテリー及び他のE-モビリティ(e-mobility)用バッテリーまで、多くの応用分野が考えられてきた。電解質、電極材料及びセパレーターなどの様々な電池の構成要素は、電池の性能に関して重要な役割を有する。カソード材料には特に注目されている。いくつかの材料、例えばリチウム鉄ホスフェート、リチウムコバルトオキシド、及びリチウムニッケルコバルトマンガンオキシドが提案されてきた。広範な研究調査が行われてきているが、これまでに見出された解決策は未だに改善の余地がある。
【0003】
リチウムイオン電池の1つの問題は、カソード活物質の表面での望ましくない反応にある。このような反応は、電解質又は溶媒又はその両方の分解であり得る。したがって、充電及び放電中のリチウム交換を妨げることなく、表面を保護することが試みられた。例は、例えばアルミニウムオキシド又はカルシウムオキシドでカソード活物質をコーティングする試みである(例えば、US 8,993,051参照)。
【0004】
しかしながら、方法の効率は未だに改善される可能性がある。特に粒子が凝集する傾向がある実施態様において、効率は時に、反応時間と被覆粒子の割合、及び粒子の被覆の割合との両方に関して改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】US 8,993,051
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、過度に長い反応時間なしに粒子材料をコーティングすることができる方法を提供することを目的とし、ここで、このような粒子材料が凝集体を形成する傾向がある。さらに、本発明は、このような方法を行うための反応器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、以下に本発明の方法又は(本)発明による方法とも称される、冒頭で定義された方法が見出された。本発明の方法は、粒子材料をコーティングする方法である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で得られるコーティングされた材料は、粒子材料のバッチの粒子の少なくとも80%がコーティングされたこと、及びそれぞれの粒子表面の少なくとも75%、例えば75~99.99%、好ましくは80~90%がコーティングされたことを指す。
【0009】
このようなコーティングの厚さは、非常に薄く、例えば0.1~5nmであり得る。別の実施態様において、厚さは6~15nmの範囲であり得る。さらなる実施態様において、このようなコーティングの厚さは16~50nmの範囲である。本発明における厚さは、1つの粒子表面当たりの厚さの量を計算し、かつ、100%の変換を仮定することにより数学的に決定された平均厚さを指す。
【0010】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、粒子の特定の化学的性質、例えばヒドロキシル基、化学的制約(chemical constraint)を有する酸化物部分(これらに限定するものではない)などの化学的反応性基の密度、又は吸着水が原因で、粒子のコーティングされていない部分が反応しないと考えられる。
【0011】
本発明の一実施態様において、粒子材料は3~20μm、好ましくは5~16μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。平均粒径は、例えば光散乱又はレーザー回折によって決定することができる。粒子は通常、一次粒子からの凝集体から構成されるが、上記の粒径は二次粒子の粒径を指す。
【0012】
本発明の一実施態様において、粒子材料は0.1~1m/gの範囲のBET表面積を有する。BET表面積は、DIN ISO 9277:2010に従って、200℃で30分以上、及びこれを超えてサンプルをガス放出した後の窒素吸着によって決定することができる。
【0013】
本発明の方法は、本発明において工程(a)、工程(b)及び工程(c)とも称される3つの工程(a)、(b)及び(c)を含む。
【0014】
工程(a)は、リチウム化ニッケル-コバルトアルミニウムオキシド及びリチウム化コバルト-マンガンオキシドから選択された粒子材料を供給することを含む。リチウム化層状コバルト-マンガンオキシドの例はLi1+x(CoMn 1-xである。層状ニッケル-コバルト-マンガンオキシドの例は、一般式Li1+x(NiCoMn 1-x(式中、MがMg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Mo、V及びFeから選択され、さらなる変数が以下のように定義される:
0≦x≦0.2、
0.1≦a≦0.8、
0≦b≦0.5、
0.1≦c≦0.6、
0≦d≦0.1、及びa+b+c+d=1)の化合物である。
【0015】
好ましい実施態様において、一般式(I)

Li(1+x)[NiaCobMncM4 d](1-x)O2 (I)

による化合物において、MはCa、Mg、Al及びBaから選択され、さらなる変数は上記のように定義される。
【0016】
Li1+x(CoMn 1-xにおいて、eは0.2~0.8の範囲にあり、fは0.2~0.8の範囲にあり、変数M及びd及びxは上記のように定義され、e+f+d=1である。
【0017】
リチウム化ニッケル-コバルトアルミニウムオキシドの例は、一般式Li[NiCoAl]O2+rの化合物である。r、h、i及びjの典型的な値は以下である:
hが0.8~0.90の範囲にあり、
iが0.05~0.19の範囲にあり、
jが0.01~0.05の範囲にあり、
rが0~0.4の範囲にある。
【0018】
Li(1+x)[Ni0.33Co0.33Mn0.33(1-x)、Li(1+x)[Ni0.5Co0.2Mn0.3(1-x)、Li(1+x)[Ni0.6Co0.2Mn0.2(1-x)、Li(1+x)[Ni0.7Co0.2Mn0.1(1-x)及びLi(1+x)[Ni0.8Co0.1Mn0.1(1-x)(式中、それぞれのxが上記のように定義される)が特に好ましい。
【0019】
好ましくは、前記粒子材料は、導電性カーボン又はバインダーなどの任意の添加剤を含まず、自由流動性の粉末として供給される。
【0020】
本発明の一実施態様において、リチウム化ニッケル-コバルトアルミニウムオキシド又は層状リチウム遷移金属オキシドなどの粒子材料の粒子はそれぞれ、凝集性(cohesive)である。すなわち、Geldart分類により、粒子材料は流動化するのが困難であり、従ってGeldart C領域に該当することを意味する。しかしながら、本発明の過程において、機械的攪拌は、全ての実施態様で必要とされない。
【0021】
凝集性の製品のさらなる例は、Jenikeによる流動性係数ff≦7、好ましくは1<ff≦7(ff=σ/σ;σ-最大主応力(major principle stress)、σ-一軸降伏強度(unconfined yield strength))を有するもの、又はHausner比f≧1.1、好ましくは1.6≧f≧1.1(f=ρtap/ρbulk;ρtap-揺動体積計で1250ストローク後に測定されたタップ密度、ρbulk-DIN EN ISO 60によるかさ密度)を有するものである。
【0022】
本発明の方法の工程(b)において、工程(a)で供給された粒子材料は、金属アルコキシド又は金属アミド又はアルカリ金属化合物で処理される。該処理は、以下でより詳細に記載される。
【0023】
本発明の方法の工程(b)及び(c)は、容器、又は少なくとも2個の容器のカスケード中で行われ、前記容器又はカスケード(該当する場合)は、本発明において反応器とも称される。好ましくは、工程(b)及び(c)は同一の容器中で行われる。
【0024】
本発明の方法の一実施態様において、工程(b)は、15~1000℃、好ましくは15~500℃、より好ましくは20~350℃、さらにより好ましくは150~200℃の範囲の温度で行われる。工程(b)において、場合によって、金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物が気相にある温度を選択することが好ましい。
【0025】
工程(b)は常圧より高い圧力で行われる。したがって、工程(b)は、常圧より5ミリバール~1バール高い範囲、好ましくは常圧より10~150ミリバール高い範囲、より好ましくは常圧より10~560ミリバール高い範囲の圧力で行われる。本発明において、常圧は1atm又は1013ミリバールである。
【0026】
本発明の好ましい実施態様において、アルキル金属化合物又は金属アルコキシド又は金属アミドはそれぞれ、M(R、M(R、M(R4-y、M(OR、M(OR、M(OR、M[N 及びメチルアルモキサンから選択され、ここで、
が、同一又は異なり、直鎖又は分岐状のC~C-アルキルから選択され、
が、同一又は異なり、直鎖又は分岐状のC~C-アルキルから選択され、
がMg及びZnから選択され、
がAl及びBから選択され、
がSi、Sn、Ti、Zr及びHfから選択され、Sn及びTiが好ましく、
変数yが、0~4から選択され、特に0及び1である。


【0027】
金属アルコキシドは、アルカリ金属、好ましくはナトリウム及びカリウム、アルカリ土類金属、好ましくはマグネシウム及びカルシウム、アルミニウム、シリコン、及び遷移金属のC~C-アルコキシドから選択されてもよい。好ましい遷移金属はチタン及びジルコニウムである。アルコキシドの例として、以下にメトキシドとも称されるメタノラート、以下にエトキシドとも称されるエタノラート、以下にプロポキシドとも称されるプロパノラート、及び以下にブトキシドとも称されるブタノラートが挙げられる。プロポキシドの特定の例は、n-プロポキシド及びイソ-プロポキシドである。ブトキシドの特定の例は、n-ブトキシド、イソ-ブトキシド、sec.-ブトキシド及びtert.-ブトキシドである。アルコキシドの組合せも使用可能である。
【0028】
アルカリ金属アルコキシドの例は、NaOCH、NaOC、NaO-イソ-C、KOCH、KO-イソ-C及びK-O-C(CHである。
【0029】
金属C~C-アルコキシドの好ましい例は、Si(OCH、Si(OC、Si(O-n-C、Si(O-イソ-C、Si(O-n-C、Ti[OCH(CH、Ti(OC、Zn(OC、Zr(OC、Zr(OC、Al(OCH、Al(OC、Al(O-n-C、Al(O-イソ-C、Al(O-sec.-C、及びAl(OC)(O-sec.-Cである。
【0030】
リチウム、ナトリウム及びカリウムから選択されたアルカリ金属の金属アルキル化合物の例において、アルキルリチウム化合物、例えばメチルリチウム、n-ブチルリチウム及びn-ヘキシルリチウムが特に好ましい。アルカリ土類金属のアルキル化合物の例は、ジ-n-ブチルマグネシウム及びn-ブチル-n-オクチルマグネシウム(「BOMAG」)である。アルキル亜鉛化合物の例は、ジメチル亜鉛及び亜鉛ジエチルである。
【0031】
アルミニウムアルキル化合物の例は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、及びメチルアルモキサンである。
【0032】
金属アミドは時に、金属イミドとも称される。金属アミドの例は、Na[N(CH]、Li[N(CH]、及びTi[N(CHである。
【0033】
特に好ましい化合物は、金属C~C-アルコキシド及び金属アルキル化合物から選択され、トリメチルアルミニウムがさらにより好ましい。
【0034】
本発明の一実施態様において、金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物の量は、1kgの特定の材料当たり0.1~1gの範囲にある。
【0035】
好ましくは、金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物の量はそれぞれ、1つのサイクル当たり特定の材料上の単分子層の80~200%の量として計算される。
【0036】
本発明の好ましい実施態様において、工程(b)の持続時間は、1秒~2時間、好ましくは1秒~10分の範囲にある。
【0037】
本発明において工程(c)とも称される第3の任意の工程では、工程(b)で得られた材料は湿気で処理される。
【0038】
本発明の一実施態様において、工程(c)は50~250℃の範囲の温度で行われる。
【0039】
工程(c)は常圧より高い圧力で行われる。したがって、工程(c)は、常圧より5ミリバール~1バール高い範囲、好ましくは常圧より10~50ミリバール高い範囲の圧力で行われる。本発明において、常圧は1atm又は1013ミリバールである。
【0040】
工程(b)及び(c)は、同一の圧力で又は異なる圧力で行われてもよく、同一の圧力が好ましい。
【0041】
例えば、工程(b)に従って得られた材料を水分飽和の不活性ガスで、例えば水分飽和の窒素、又は水分飽和の希ガス、例えばアルゴンで処理することによって、前記湿気を導入してもよい。工程(c)において、飽和は通常の条件又は反応条件を指すものである。
【0042】
前記工程(c)が150℃~600℃、好ましくは250℃~450℃の範囲の温度での熱処理に置き換えられてもよいが、上記のように前記工程を行うことが好ましい。
【0043】
本発明の一実施態様において、工程(c)は、10秒~2時間、好ましくは1秒~10分の範囲の持続時間を有する。
【0044】
一実施態様において、一連の工程(b)及び(c)は1回のみ行われる。好ましい実施態様において、一連の工程(b)及び(c)は、例えば1回又は2回又は40回以下繰り返される。一連の工程(b)及び(c)を2回~6回行うことが好ましい。
【0045】
本発明の方法の工程(b)及び(c)は、連続的に又はバッチ式で行われてもよい。
【0046】
本発明の一実施態様において、工程(b)と(c)の間に、本発明の方法を行う反応器は、不活性ガスで、例えば乾燥窒素で又は乾燥アルゴンでフラッシュ又はパージされる。好適なフラッシュ又はパージの時間は、1秒~30分、好ましくは1分~10分である。不活性ガスの量は1~15倍の反応器の含有物を交換することに十分であることが好ましい。このようなフラッシュ又はパージにより、金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物の水とのそれぞれの反応生成物の別個の粒子などの副生成物の生成を避けることができる。トリメチルアルミニウムと水との組合せの場合、そのような副生成物は、メタン及びアルミナ、又は粒子材料上に堆積していないトリメチルアルミニウムであり、後者は望ましくない副生成物である。
【0047】
本発明の方法の工程(b)及び(c)を行うために、反応器設計の様々な実施態様が可能である。工程(b)及び(c)は、粒子材料中に混合エネルギーを機械的に導入するミキサー、例えば強制ミキサー及び自由落下ミキサーで行われる。自由落下ミキサーは、粒子を動かすために重力を利用する一方で、強制ミキサーは、混合室に設置された移動、特に回転する混合要素で動作する。本発明において、混合室は反応器の内部である。強制ミキサーの例は、ドイツでLoedigeミキサーとも称されるプラウシェアミキサー、パドルミキサー及びシャベルミキサーである。プラウシェアミキサーが好ましい。プラウシェアミキサーは、垂直又は水平に設置されることが可能であり、ここで、垂直又は水平という用語はそれぞれ、混合要素が回転する軸を指すものである。水平設置が好ましい。好ましくは、本発明の方法は、投げつけと旋回原理(hurling and whirling principle)に従って、プラウシェアミキサーで行われる。
【0048】
本発明の他の実施態様において、本発明の方法は、自由落下ミキサーで行われてもよい。自由落下ミキサーは、重力を使用して混合を達成する。好ましい実施態様において、本発明の方法の工程(b)及び(c)は、その水平軸を中心に回転するドラム又はパイプ状の容器内で行われる。より好ましい実施態様において、本発明の方法の工程(b)及び(c)は、バッフルを備える回転容器内で行われる。
【0049】
本発明の一実施態様において、容器又は少なくともその一部が、1分ごとに5~500回転(「rpm」)の範囲の速度で回転し、5~60rpmが好ましい。自由落下ミキサーを利用する実施態様において、5~25rpmがより好ましく、5~10rpmがさらにより好ましい。プラウシェアミキサーを利用する実施態様において、50~400rpmが好ましく、100~250rpmがさらにより好ましい。
【0050】
本発明の他の実施態様において、工程(b)及び(c)は、移動床又は固定床によって行われる。固定床プロセスにおいて、工程(a)で供給された粒子材料を、多孔性エリア、例えば篩板上に放置する。これにより、工程(a)で供給された粒子材料は床を形成する。工程(b)において、媒質、特に金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物を含有する不活性ガスは床を通して上から下に流れ、工程(c)において、例えば湿り窒素又は湿り空気の形態での湿気は、床を通して下から上に、又は上から下に流れる。
【0051】
移動床プロセスにおいて、工程(a)で供給された粒子材料を管状反応器の頂部で導入し、それによって自動的に粒子床を形成する。金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物を含有するガス流は、粒子床を定常状態に維持することに十分ではないガス速度で、前記床を通して下から上に流れる。あるいは、粒子床は工程(b)におけるガス流と向流で移動する。したがって、工程(c)は、金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属の代わりに湿気で行われる。
【0052】
前記粒子材料の空気輸送を可能にする本発明の好ましいバージョンにおいて、4バール以下の圧力差を適用する。コーティングされた粒子は、反応器から吹き飛ばされるか、又は吸引によって取り出される。
【0053】
本発明の一実施態様において、入口圧力はより高いが、所望の反応器圧力に近い。ガス入口の、及び移動床又は固定床(該当する場合)における圧力降下を補償する必要がある。
【0054】
本発明の方法の過程中で、反応器の形状により強い剪断力が流動床に導入され、凝集体中の粒子は頻繁に交換され、これにより粒子表面全体にアクセス可能になる。本発明の方法によれば、粒子材料は短時間でコーティングすることができ、特に凝集性粒子は非常に均一にコーティングすることができる。
【0055】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の方法は、例えば20~100m/sの空気対流により、コーティングされた材料をそれぞれ容器(単数又は複数)から取り出す工程を含む。
【0056】
本発明の一実施態様において、排気ガスは、常圧より高い圧力で、さらにより好ましくは工程(b)及び(c)が行われる反応器より少し低い圧力で、例えば常圧より2ミリバール~1バール高い範囲、好ましくは常圧より4ミリバール~25ミリバール高い範囲の圧力で、湿気で処理される。高圧は、排気ラインの圧力損失を補償することに有利である。
【0057】
反応器及び排気ガス処理容器を環境から分離することに必要なシーリングは有利に、窒素フラッシングで装備されている。
【0058】
本発明の一実施態様において、ガス入口及び出口は、本発明の方法に使用される容器の反対側に位置する。
【0059】
本発明の方法によれば、粒子材料は短時間でコーティングすることができ、特に凝集性粒子は非常に均一にコーティングすることができる。本発明の方法は、あらゆる可燃性又はさらに爆発性の環境も容易に回避することができるため、良好な安全性を可能にする。
【0060】
本発明の方法の進行は、質量分析により制御することができる。