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特許7112432組成物、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】組成物、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220727BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220727BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20220727BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220727BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/14 A
H05B33/02
H01L27/32
G09F9/00 313
G09F9/00 342
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019566499
(86)(22)【出願日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2019001242
(87)【国際公開番号】W WO2019142856
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2018005723
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 健太
(72)【発明者】
【氏名】金子 若彦
(72)【発明者】
【氏名】加茂 誠
【審査官】沖村 美由
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-164925(JP,A)
【文献】特開2001-066433(JP,A)
【文献】特開2000-327924(JP,A)
【文献】特開2009-251411(JP,A)
【文献】特開2016-006548(JP,A)
【文献】特開2003-066214(JP,A)
【文献】特開2007-199661(JP,A)
【文献】特開2007-009021(JP,A)
【文献】国際公開第2013/038932(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H01L 51/50
H05B 33/02
H01L 27/32
G09F 9/00
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソゲン基を有するポリマーとして、親水性基、架橋性基、および、メソゲン基を有するポリマーのみと、
重合性化合物と、を含む、
有機エレクトロルミネッセンス表示素子上に配置される位相差膜を形成するための組成物であって、
前記ポリマーが、前記架橋性基および前記メソゲン基を有する繰り返し単位を含み、
前記ポリマーが、前記親水性基を有する繰り返し単位を含み、
前記親水性基を有する繰り返し単位の含有量が、前記ポリマー中の全繰り返し単位の質量に対して、10~30質量%であり、
前記親水性基と前記架橋性基とが加熱によって反応可能であり、
前記親水性基が、カルボキシ基およびフェノール性水酸基からなる群から選択される基である、組成物。
【請求項2】
前記架橋性基が、オキセタニル基およびエポキシ基からなる群から選択される基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに、重合開始剤を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記重合性化合物が、重合性液晶化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物を用いて形成される有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜。
【請求項6】
λ/4板またはλ/2板である、請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜。
【請求項7】
逆波長分散性を示す、請求項5または6に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜。
【請求項8】
有機エレクトロルミネッセンス表示素子と、
有機エレクトロルミネッセンス表示素子上に配置された、請求項5~7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜と、を含む有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項9】
有機エレクトロルミネッセンス表示素子が配置された基板上に、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物を用いて、塗膜を形成する工程と、
前記塗膜中の前記メソゲン基を配向させる工程と、
前記塗膜の一部を露光する工程と、
露光された前記塗膜を現像し、前記有機エレクトロルミネッセンス表示素子上に有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜を形成する工程と、を有する、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜、および、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屈折率異方性を持つ位相差膜は、表示装置の反射防止膜、および、液晶表示装置の光学補償フィルムなど種々の用途に適用されている。特に、近年、外光反射による悪影響を抑制するために、位相差膜を含む円偏光板が有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置に使用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-127885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、位相差膜を含む有機EL表示装置を製造する際には、図1に示すように、マザー基板10上に有機発光層12および接続端子14を含む有機EL表示素子16を複数作製する。なお、有機EL表示素子16の構成に関しては、説明を簡素化するために、有機発光層および接続端子以外の他の部材(例えば、有機発光層を挟持する一対の電極、封止層など)は省略する。
次に、マザー基板を切断して、図2に示すような、基板20および有機EL表示素子16を含む積層体をそれぞれ作製する。さらに、図3に示すように、有機EL表示素子16の有機発光層12の上側に粘着層22を介して位相差膜24を貼り合わせる。通常、位相差膜24を貼り合わせる際、有機EL表示素子16のIC(集積回路)と接続するための接続端子14を覆わないように、位相差膜24を配置する。
【0005】
一方で、近年、有機EL表示装置の薄型化およびフレキシブル性の向上の点から、有機EL表示素子上に直接位相差膜を形成する態様が望まれている。その際、位相差膜形成用組成物を有機EL表示素子上に塗布して、位相差膜を形成する方法が考えられる。
しかしながら、従来の位相差膜形成用組成物を用いた場合、上述した有機EL表示装置の接続端子を覆う形で位相差膜が形成されてしまい、所望の位置のみに位相差膜を形成することができない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、有機EL表示素子上の所定の位置に位相差膜を形成可能で、かつ、位相差膜が適用された有機EL表示装置の表示性能に優れる、組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、有機EL表示素子用位相差膜、および、有機EL表示素子用位相差膜の製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、従来技術の問題点について鋭意検討した結果、所定の組成の組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
(1) 親水性基、架橋性基、および、メソゲン基を有するポリマーと、
重合性化合物と、を含む、
有機エレクトロルミネッセンス表示素子上に配置される位相差膜を形成するための組成物。
(2) ポリマーが、架橋性基およびメソゲン基を有する繰り返し単位を含む、(1)に記載の組成物。
(3) 親水性基と架橋性基とが加熱によって反応可能である、(1)または(2)に記載の組成物。
(4) 架橋性基が、オキセタニル基およびエポキシ基からなる群から選択される基である、(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
(5) 親水性基が、カルボキシ基およびフェノール性水酸基からなる群から選択される基である、(1)~(4)のいずれかに記載の組成物。
(6) さらに、重合開始剤を含む、(1)~(5)のいずれかに記載の組成物。
(7) 重合性化合物が、重合性液晶化合物である、(1)~(6)のいずれかに記載の組成物。
(8) (1)~(7)のいずれかに記載の組成物を用いて形成される有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜。
(9) λ/4板またはλ/2板である、(8)に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜。
(10) 逆波長分散性を示す、(8)または(9)に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜。
(11) 有機エレクトロルミネッセンス表示素子と、
有機エレクトロルミネッセンス表示素子上に配置された、(8)~(10)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜と、を含む有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
(12) 有機エレクトロルミネッセンス表示素子が配置された基板上に、(1)~(7)のいずれかに記載の組成物を用いて、塗膜を形成する工程と、
塗膜中のメソゲン基を配向させる工程と、
塗膜の一部を露光する工程と、
露光された塗膜を現像し、有機エレクトロルミネッセンス表示素子上に有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜を形成する工程と、を有する、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用位相差膜の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、有機EL表示素子上の所定の位置に位相差膜を形成可能で、かつ、位相差膜が適用された有機EL表示装置の表示性能に優れる、組成物を提供できる。
また、本発明によれば、有機EL表示素子用位相差膜、および、有機EL表示素子用位相差膜の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】従来技術の有機EL表示装置の作製プロセスを表す図である。
図2】従来技術の有機EL表示装置の作製プロセスを表す図である。
図3】従来技術の有機EL表示装置の作製プロセスを表す図である。
図4】工程1の手順を説明するための図である。
図5】工程3の手順を説明するための図である。
図6】工程4の手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。まず、本明細書で用いられる用語について説明する。
【0012】
本発明において、Re(λ)およびRth(λ)は、それぞれ波長λにおける面内のレタデーションおよび厚み方向のレタデーションを表す。特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。
本発明において、Re(λ)およびRth(λ)はAxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)において、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScan OPMF-1で算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0013】
本明細書において、屈折率nx、nyおよびnzは、アッベ屈折率(NAR-4T、アタゴ(株)製)を使用し、光源にナトリウムランプ(λ=589nm)を用いて測定する。また、波長依存性を測定する場合は、多波長アッベ屈折計DR-M2(アタゴ(株)製)にて、干渉フィルタとの組み合わせで測定できる。
また、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用できる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)。
また、本明細書において、Nzファクターとは、Nz=(nx-nz)/(nx-ny)で与えられる値である。
【0014】
なお、本明細書では、「可視光」とは、波長が380~780nmの光のことをいう。
また、本明細書において、角度(例えば「90°」などの角度)、および、その関係(例えば「直交」、「平行」、および「45°で交差」など)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
【0015】
本明細書において、偏光子の「吸収軸」は、吸光度の最も高い方向を意味する。「透過軸」は、「吸収軸」と90°の角度をなす方向を意味する。
【0016】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示素子上に配置される位相差膜を形成するための組成物(有機エレクトロルミネッセンス用位相差膜形成用組成物)(以後、単に「本発明の組成物」ともいう)の特徴点の一つとしては、親水性基、架橋性基、および、メソゲン基を有するポリマーを使用する点が挙げられる。
ポリマーが親水性基を有することにより、後段で詳述する塗膜に対して現像性が付与される。なお、ポリマーが架橋性基を有することにより、ポリマー同士、および/または、ポリマーと重合性化合物との間の相分離を抑制でき、結果として有機EL表示装置の表示性能が優れる。また、ポリマーがメソゲン基を有することにより、位相差を発現できる。更に、本発明の組成物が重合性液晶化合物を含む場合、ポリマーがメソゲン基を有することにより、ポリマーと重合性液晶化合物との相溶性が優れ、現像液による塗膜の除去が効率的に進行する。
【0017】
本発明の組成物は、親水性基、架橋性基、および、メソゲン基を有するポリマーと、重合性化合物とを含む。
以下、本発明の組成物に含まれる各成分について詳述する。
【0018】
<親水性基、架橋性基、および、メソゲン基を有するポリマー>
ポリマーは、親水性基を有する。
親水性基としては、例えば、カルボキシ基、水酸基、スルホ基、および、アミノ基が挙げられる。なかでも、後述する架橋性基との反応性がより優れる点で、カルボキシ基、または、フェノール性水酸基が好ましく、カルボキシ基がより好ましい。
なお、フェノール性水酸基とは、芳香族炭化水素環基に直接結合する水酸基を意図する。
【0019】
ポリマーは、親水性基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。各繰り返し単位中における親水性基の数は特に制限されず、1つであってもよく、複数(2つ以上)であってもよい。
また、親水性基は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
親水性基を有する繰り返し単位としては、式(1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0020】
【化1】
【0021】
1は、水素原子またはアルキル基を表す。
1は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては特に制限されないが、例えば、-O-、-CO-、-NRA-、および、2価の炭化水素基からなる群より選ばれるいずれか1種または2種以上を組み合わせた基が挙げられる。RAは、水素原子またはアルキル基を表す。
上記2価の炭化水素基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基(例:-CH=CH-)、アルキニレン基(例:-C≡C-)、および、アリーレン基(例:フェニレン基)が挙げられる。上記アルキレン基としては、直鎖状、分岐鎖状、および、環状のいずれであってもよい。また、その炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましい。
【0022】
Xは、親水性基を表す。親水性基の定義は、上述した通りである。
【0023】
なお、上述したように、ポリマーは、カルボキシ基またはフェノール性水酸基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。
カルボキシ基を有する繰り返し単位としては、不飽和カルボン酸由来の繰り返し単位が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、不飽和モノカルボン酸、および、不飽和多価カルボン酸が挙げられる。
不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α-クロロアクリル酸、けい皮酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-コハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、および、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-フタル酸が挙げられる。
また、不飽和多価カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、および、メサコン酸が挙げられる。
また、不飽和多価カルボン酸は、その酸無水物であってもよい。具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、および、無水シトラコン酸が挙げられる。
また、不飽和多価カルボン酸は、多価カルボン酸のモノ(2-メタクリロイロキシアルキル)エステルであってもよく、例えば、コハク酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)、コハク酸モノ(2-メタクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)、および、フタル酸モノ(2-メタクリロイロキシエチル)が挙げられる。
さらに、不飽和多価カルボン酸は、その両末端ジカルボキシポリマーのモノ(メタ)アクリレートであってもよく、例えば、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、および、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノメタクリレートが挙げられる。
また、不飽和カルボン酸としては、アクリル酸-2-カルボキシエチルエステル、メタクリル酸-2-カルボキシエチルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、および、4-カルボキシスチレンも挙げられる。
【0024】
カルボキシ基を有する繰り返し単位の具体例としては、以下が挙げられる。
【0025】
【化2】
【0026】
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位としては、式(1-1)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0027】
【化3】
【0028】
11は、水素原子またはアルキル基を表す。
11は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基の定義は、上述したL1で表される2価の連結基の定義を同じである。
12は、ハロゲン原子、または、炭素数1~5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。
aは1~5の整数を表し、bは0~4の整数を表し、a+bは5以下である。
なお、R12が2以上存在する場合、これらのR12は相互に異なっていてもよいし同じでもよい。
【0029】
ポリマー中における親水性基を有する繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、所定の位置に位相差膜をより形成しやすい点、および、位相差膜が適用された有機EL表示装置の表示性能がより優れる点の少なくとも一方が得られる点(以後、単に「本発明の効果がより優れる点」ともいう)で、ポリマー中の全繰り返し単位の質量(100質量%)に対して、5~40質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。
親水性基を有する繰り返し単位は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0030】
ポリマーは、架橋性基を有する。なお、架橋性基は、親水性基とは異なる基である。
架橋性基としては、例えば、オキセタニル基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、チオール基、ハロゲン化ベンジル基、無水カルボン酸基、シアネートエステル基、イソシアネート基、アルデヒド基、アジリジン基、および、アルコキシシリル基が挙げられる。
なお、親水性基および架橋性基の組み合わせとしては、位相差膜の薬品耐性がより優れる点で、親水性基と架橋性基とが加熱によって反応可能であることが好ましい。このような親水性基と架橋性基との組み合わせとしては、例えば、カルボキシ基とオキセタニル基との組み合わせ、カルボキシ基とエポキシ基との組み合わせ、フェノール性水酸基とオキセタニルとの組み合わせ、および、フェノール性水酸基とエポキシ基との組み合わせが挙げられる。
【0031】
ポリマーは、架橋性基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。
架橋性基を有する繰り返し単位としては、式(2)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0032】
【化4】
【0033】
2は、水素原子またはアルキル基を表す。
2は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基の定義は、上述したL1で表される2価の連結基の定義を同じである。
なお、後段で詳述するように、架橋性基を有する繰り返し単位は、メソゲン基を合わせて有していてもよく、例えば、L2にメソゲン基が含まれていてもよい。
【0034】
Yは、架橋性基を表す。架橋性基の定義は、上述した通りである。
【0035】
ポリマー中における架橋性基を有する繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、ポリマー中の全繰り返し単位の質量に対して、5~85質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましい。
架橋性基を有する繰り返し単位は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0036】
ポリマーは、メソゲン基を有する。
メソゲン基とは、剛直かつ配向性を有する官能基である。メソゲン基の構造としては、例えば、芳香環基(芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基)および脂環基からなる群から選択される基が、複数個、直接または2価の連結基(例えば、-CO-、-O-、-NRA-(RAは、水素原子、または、アルキル基を表す)、または、これらを組み合わせた基)を介して連なった構造が挙げられる。
より具体的には、メソゲン基としては、式(A)で表される基が挙げられる。
式(A) -(La-Lbn
aは、2価の芳香環基、または、2価の脂環基を表す。
2価の芳香環基としては、2価の芳香族炭化水素環基(例えば、フェニレン基)、または、2価の芳香族複素環基が挙げられる。
2価の脂環基としては、シクロへキシレン基が挙げられる。
bは、単結合、-CO-、-O-、-NRA-、または、これらを組み合わせた基(例えば、-CO-O-)を表す。RAは、水素原子またはアルキル基を表す。
nは、2以上の整数を表す。なかでも、2~5が好ましく、2~3がより好ましい。
【0037】
ポリマーは、メソゲン基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。
ポリマー中におけるメソゲン基を有する繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、ポリマー中の全繰り返し単位の質量に対して、5~85質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましい。
メソゲン基を有する繰り返し単位は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0038】
ポリマー中において、親水性基、架橋性基、および、メソゲン基からなる群から選択される2つ以上は同一の繰り返し単位に含まれていてもよい。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、ポリマーは、架橋性基およびメソゲン基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。架橋性基およびメソゲン基を有する繰り返し単位としては、式(3)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0039】
【化5】
【0040】
a、Lb、および、nの定義は、式(A)で説明した通りである。
3は、水素原子またはアルキル基を表す。
3およびL4は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基の定義は、上述したL1で表される2価の連結基の定義を同じである。
なお、L3およびL4で表される2価の連結基としては、例えば、-CO-O-、-CO-O-アルキレン基、-CO-O-アルキレン基-O-、-O-アルキレン基-O-、-(O-アルキレン基)m-、および、-CO-O-(アルキレン基-O)m-が挙げられる。mは、2以上の整数を表し、上限は特に制限されないが5以下が好ましい。
Zは、架橋性基を表す。架橋性基の定義は、上述した通りである。
【0041】
ポリマー中における架橋性基およびメソゲン基を有する繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、ポリマー中の全繰り返し単位の質量に対して、50~95質量%が好ましく、60~90質量%がより好ましい。
架橋性基およびメソゲン基を有する繰り返し単位は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0042】
重合により式(3)で表される繰り返し単位を構成するモノマーとしては、以下が挙げられる。なお、以下のモノマー中の1つのアクリロイル基が重合して、式(3)で表される繰り返し単位が構成される。
【0043】
【化6】
【0044】
ポリマーは、上述した繰り返し単位(親水性基を有する繰り返し単位、架橋性基を有する繰り返し単位、メソゲン基を有する繰り返し単位、並びに、架橋性基およびメソゲン基を有する繰り返し単位)以外の他の繰り返し単位を含んでいてもよい。
他の繰り返し単位を構成しえるモノマーとしては、例えば、スチレン類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、ビシクロ不飽和化合物、マレイミド化合物、不飽和芳香族化合物、共役ジエン系化合物、および、その他の不飽和化合物が挙げられる。
【0045】
ポリマーの重量平均分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、1000~200000が好ましく、2000~50000がより好ましい。
また、数平均分子量と重量平均分子量との比(分散度)は、1.0~5.0が好ましく、1.0~3.5がより好ましい。
GPC(Gel Permeation Chromatography)法による測定においては、例えば、HLC-8120(東ソー株式会社製)を用い、カラムとしてTSKgel Multipore HXL-M(東ソー株式会社製、7.8mmID×30.0cm)を、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いることができる。
【0046】
ポリマーの酸価は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、20~300mgKOH/mgが好ましく、50~250mgKOH/mgがより好ましい。
【0047】
ポリマーの合成方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。例えば、親水性基を有するラジカル重合性モノマー、架橋性基を有するラジカル重合性モノマー、および、メソゲン基を有するラジカル重合性モノマーを含む混合物を有機溶媒中、ラジカル重合開始剤を用いて重合する方法がある。
【0048】
本発明の組成物中におけるポリマーの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、組成物中の全固形分に対して、10~95質量%が好ましく、20~90質量%がより好ましく、20~80質量%がさらに好ましい。
固形分とは、位相差膜を形成しえる成分を意図し、溶媒は含まれない。なお、位相差膜を形成し得る成分が液体状であっても、固形分として取り扱う。
【0049】
<重合性化合物>
重合性化合物は、重合性基を有する化合物である。
重合性基の種類は特に制限されないが、ラジカル重合またはカチオン重合が可能な重合性基が好ましい。
ラジカル重合性基としては、公知のラジカル重合性基を用いることができ、アクリロイル基またはメタクリロイル基が好ましい。
カチオン重合性基としては、公知のカチオン重合性基を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、および、ビニルオキシ基が挙げられる。
【0050】
重合性化合物中における重合性基の数は特に制限されないが、6つ以下が好ましい。
また、重合性化合物が、ラジカル重合性基とカチオン重合性基との両方を有することも好ましい。
【0051】
重合性化合物としては、例えば、多官能性ラジカル重合性化合物が挙げられる。具体的には、特開2002-296423号公報中の段落[0018]~[0020]に記載のものが挙げられる。
【0052】
重合性化合物としては、重合性液晶化合物が好ましい。重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、液晶性を示す化合物である。
重合性液晶化合物の種類は特に制限されないが、その形状から、棒状タイプ(棒状液晶化合物)と円盤状タイプ(円盤状液晶化合物。ディスコティック液晶化合物)とに分類できる。さらにそれぞれ低分子タイプと高分子タイプとがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。なお、2種以上の棒状液晶化合物、2種以上の円盤状液晶化合物、または、棒状液晶化合物と円盤状液晶化合物との混合物を用いてもよい。
【0053】
本発明の組成物中における重合性化合物の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、組成物中の全固形分に対して、5~85質量%が好ましく、20~70質量%がより好ましい。
【0054】
<その他>
本発明の組成物は、上述したポリマーおよび重合性化合物以外の他の成分を含んでいてもよい。
例えば、本発明の組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。使用される重合開始剤は、重合反応の形式に応じて選択され、例えば、熱重合開始剤、および、光重合開始剤が挙げられる。例えば、光重合開始剤としては、例えば、α-カルボニル化合物、アシロインエーテル、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物、多核キノン化合物、および、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせが挙げられる。
本発明の組成物中における重合開始剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。
【0055】
また、本発明の組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、フッ素系化合物が好ましい。例えば、特開2001-330725号公報中の段落[0028]~[0056]に記載の化合物、および、特願2003-295212号明細書中の段落[0069]~[0126]に記載の化合物が挙げられる。
【0056】
また、本発明の組成物は、架橋性基と反応可能な反応性基を有する硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤中の反応性基の数は特に制限されないが、2つ以上が好ましく、2~6つがより好ましい。
反応性基の種類は特に制限されず、架橋性基の種類に応じて最適な基が選択される。例えば、架橋性基がオキセタニル基である場合、反応性基としてはカルボキシ基が挙げられる。
【0057】
また、本発明の組成物は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、アミド(例:N,N-ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例:ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例:ピリジン)、炭化水素(例:ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例:クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例:アセトン、メチルエチルケトン)、および、エーテル(例:テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン)が挙げられる。なお、2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0058】
また、組成物は、垂直配向剤、および、水平配向剤などの各種配向制御剤を含んでいてもよい。これらの配向制御剤は、界面側において重合性液晶化合物を水平または垂直に配向制御可能な化合物である。また、組成物にカイラル剤を含んでいてもよく、この場合、ツイストネマチック相またはコレステリック相を発現させることができる。
さらに、組成物は、上記成分以外に、密着改良剤、色素、および、可塑剤などを含んでいてもよい。
【0059】
<位相差膜の製造方法>
本発明の組成物は、有機EL表示素子上に配置される位相差膜を形成するために用いられる。上述したように、本発明の組成物を用いることにより、所定の位置に位相差膜を形成できる。
本発明の有機EL表示素子用位相差膜の形成方法は、以下の工程1~4を有する。
工程1:有機EL表示素子が配置された基板上に、本発明の組成物を接触させて、塗膜を形成する工程
工程2:塗膜中のメソゲン基を配向させる工程
工程3:塗膜の一部を露光する工程
工程4:露光された塗膜を現像し、有機EL表示素子上に位相差膜を形成する工程
以下、各工程の手順について詳述する。
【0060】
(工程1)
工程1は、有機EL表示素子が配置された基板上に、本発明の組成物を用いて、塗膜を形成する工程である。本工程を実施することにより、図4に示すように、基板30と、有機発光層を含む有機EL表示素子32と、塗膜34とを含む積層体が得られる。
【0061】
有機EL表示素子を支持する基板の種類は特に制限されず、例えば、ガラス基板、金属基板、セラミック基板、半導体基板、および、樹脂基板が挙げられる。
有機EL表示素子の構成は特に制限されないが、通常、一対の電極(陰極および陽極)と、電極間に配置された有機発光層とを少なくとも含む。
また、有機EL表示素子は、通常、有機発光層と共に、ICと接続するための接続端子を含む。さらに、有機EL表示素子は、他の部材を含んでいてもよく、例えば、有機発光層を覆う封止層を含んでいてもよい。
また、基板上には、図1のように、複数の有機EL表示素子が配置されていてもよい。
【0062】
本発明の組成物を用いた塗膜の形成方法は特に制限されず、例えば、本発明の組成物を上記基板上に塗布する方法が挙げられる。塗布方法としては、例えば、カーテンコーティング法、スピンコーティング法、スリットコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、および、ワイヤーバー法が挙げられる。
【0063】
なお、必要に応じて、本発明の組成物を用いて塗膜を形成する前に、有機EL表示素子が配置された基板上に、配向層を形成してもよい。配向層は、少なくとも有機EL表示素子中の有機発光層の上側(基板とは反対側)に配置されていればよく、接続端子上には配置されていないことが好ましい。
配向層は、一般的には、ポリマーを主成分とする。配向層用ポリマーとしては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。利用されるポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリイミド、または、その誘導体が好ましい。
なお、配向層としては、公知のラビング処理が施された層が好ましい。また、配向層としては、光配向層を用いてもよい。
特に、位相差膜の面内に配向方向の異なる領域を形成する場合、光配向処理における偏光照射の偏光軸を調整することによりパターニングが容易に実現できる点で、光配向層を用いることが好ましい。
【0064】
光配向層としては公知の材料を用いることができるが、光硬化性の光配向層を用いると、基板に熱をかけることなく、また、ラビング屑および剥離の際に生じる膜片に起因する面上故障を伴うことなく高品質の配向層を形成できるため好ましい。
このような材料としては、例えば、光配向性基を有するポリマーと、重合性モノマーと、光重合開始剤とを含む光配向層形成用組成物を用いることができる。具体的には、特表2014-533376号公報の段落0241、特表2015-527615号公報の段落0087、特表2016-535158号公報の段落0134に記載の組成物が挙げられる。
【0065】
配向層の厚みは、0.01~10μmが好ましい。
なお、配向層は、後述する工程4の際に合わせて除去されてもよい。
また、上述した光硬化性の配向膜であれば、配線接続部など、後述の工程4で塗膜を除去されることになる領域に対し、光を遮蔽するなどで光硬化しないようにした上で、後述する工程2に先立って基板を適切な溶剤または現像液などでリンスすることにより、予め配向膜を除いておくこともできる。こうすることにより、工程4で位相差膜を取り除けば、基板上の当該領域を露出した状態が実現される。
【0066】
(工程2)
工程2は、塗膜中のメソゲン基を配向させる工程である。なお、塗膜中に重合性液晶化合物が含まれる場合は、工程2では、メソゲン基および重合性液晶化合物の両方が配向される。
工程2の具体的な処理方法(配向処理)としては、塗膜を加熱する方法、および、室温により塗膜を乾燥させる方法が挙げられる。配向処理で形成される液晶相は、サーモトロピック性液晶化合物の場合、一般に温度の変化により転移させることができる。リオトロピック性液晶化合物の場合には、溶媒量などの組成比によっても転移させることができる。
なお、塗膜を加熱する場合の条件は特に制限されないが、加熱温度としては50~150℃が好ましく、加熱時間としては10秒間~5分間が好ましい。
【0067】
(工程3)
工程3は、塗膜の一部を露光する工程である。本工程では、図5に示すように、塗膜34の一部の領域を露光する。露光部36においては重合性化合物の重合が進行し、後述する工程4で用いられる現像液に対して不溶となる。一方、未露光部38においては、重合性化合物の重合は進行せず、工程4で用いられる現像液に対して可溶のままである。
なお、有機EL表示素子中の有機発光層の上側に位相差膜を形成するためには、有機発光層の上側に位置する塗膜の領域を露光することが好ましい。図5において、塗膜の露光部は、有機発光層の上側に位置する塗膜の領域と一致する。また、有機EL表示素子に含まれる接続端子上には位相差膜を形成しないようにするためには、接続端子上の塗膜を露光しないようにすることが好ましい。つまり、本工程においては、有機EL表示素子中の有機発光層の上側に位置する塗膜の領域を少なくとも露光し、有機EL表示素子中の接続端子の上側に位置する塗膜の領域は露光しないことが好ましい。
【0068】
露光の際の光の種類は特に制限されないが、紫外光が好ましい。
露光の方法は特に制限されず、例えば、所定の開口部を有するマスクを介して塗膜を露光する方法が挙げられる。
露光の際の照射量は特に制限されず、10mJ/cm2~50J/cm2が好ましく、20mJ/cm2~5J/cm2がより好ましい。また、重合反応を促進するため、加熱条件下で実施してもよい。
【0069】
なお、架橋性基の種類によっては、工程3を実施することにより架橋性基が反応する場合がある。例えば、架橋性基がアクリロイル基またはメタクリロイル基であり、露光によりラジカル重合反応が進行する場合、架橋性基の反応も進行する。
【0070】
(工程4)
工程4は、露光された塗膜を現像し、有機EL表示素子上に位相差膜を形成する工程である。本工程を実施することにより、図6に示すように、露光された領域のみが残存し、特に、有機EL表示素子32中の図示しない有機発光層の上側に位相差膜40(有機EL表示素子用位相差膜)が形成されることが好ましい。
なお、上述したように、有機EL表示素子中の接続端子上に位置する塗膜の領域を未露光とすることにより、本工程においてその領域の塗膜を除去でき、接続端子上に位相差膜を形成しないようにすることができる。
【0071】
現像に用いられる現像液の種類は特に減されず、塗膜の種類に応じて最適な現像液(例えば、アルカリ現像液、および、有機溶媒含有現像液)が選択される。中でも、塗膜の除去性がより優れる点で、アルカリ現像液が好ましい。
アルカリ現像液としては、アルカリを含む水溶液が挙げられる。アルカリ現像液としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩、無機アルカリ、1級アミン、2級アミン、3級アミン、アルコールアミン、または、環状アミンを含むアルカリ水溶液が挙げられる。なかでも、アルカリ現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)に代表される4級アンモニウム塩の水溶液が好ましい。アルカリ現像液には、アルコール類および/または界面活性剤を適当量添加してもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、0.1~20質量%が好ましい。また、アルカリ現像液のpHは、10.0~15.0が好ましい。
【0072】
現像処理の方法は特に制限されず、露光された塗膜と現像液とが接触できればよく、例えば、塗膜上に現像液を付与する方法、および、現像液中に塗膜を有する積層体を浸漬する方法が挙げられる。
【0073】
なお、必要に応じて、現像後に、リンス液を用いてリンス処理を実施してもよい。リンス液としては、純水が挙げられる。
【0074】
また、必要に応じて、現像処理が施された塗膜に対して加熱処理を施してもよい。加熱処理(ポストベーク処理)を実施することにより、架橋性基を反応させて、位相差膜の薬品耐性を高めることができる。なお、上述したように、架橋性基と親水性基とが加熱によって反応可能である場合、本処理を実施することにより両者が反応する。
加熱処理の温度は特に制限されず、70~250℃が好ましく、80~200℃がより好ましい。加熱処理の時間は特に制限されず、5~180分が好ましく、10~120分がより好ましい。
【0075】
上記方法により、有機EL表示素子の所定の位置に、有機EL表示素子用位相差膜を形成できる。
本発明の組成物を用いて形成された有機EL表示素子用位相差膜の面内レタデーションは特に制限されず、使用される用途に応じて最適な値が選択される。なかでも、後述する円偏光板の位相差膜として使用する点からは、位相差膜はλ/4板またはλ/2板であることが好ましい。
λ/4板(λ/4機能を有する板)とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板である。より具体的には、所定の波長λnmにおける面内レタデーションがλ/4(または、この奇数倍)を示す板である。
なかでも、円偏光板としての機能がより優れる点で、波長550nmにおける面内レタデーションRe(550)は、100~200nmが好ましく、120~160nmがより好ましい。
また、λ/2板とは、特定の波長λnmにおける面内レタデーションRe(λ)がRe(λ)≒λ/2を満たす光学異方性層のことをいう。なかでも、波長550nmにおける面内レタデーションRe(550)は、210~300nmが好ましい。
【0076】
本発明の組成物を用いて形成された有機EL表示素子用位相差膜は、逆波長分散性(面内レタデーションが、測定波長が大きくなるにつれて大きくなる特性。)を示すことが好ましい。
【0077】
なお、上記方法を複数回実施して、複数の有機EL表示素子用位相差膜を積層してもよい。つまり、本発明の組成物を用いて、有機EL表示素子の所定の位置に位相差膜を1層のみ形成してもよいし、2層以上形成してもよい。2層以上形成する場合は、例えば、波長分散特性が順波長分散性を示すλ/2板と波長分散特性が順波長分散性を示すλ/4板との積層、および、逆波長分散性を示すλ/4板とポジティブCプレートとの積層が挙げられる。
【0078】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本発明の組成物に色素などの添加物を添加することにより、その他の機能を有する位相差膜を形成できる。
例えば、位相差膜として、ツイストネマチック相またはコレステリック相を呈する位相差膜を設けてもよい。このような位相差膜は、例えば、旋光層として偏光軸を回転させる機能を付与する、または、波長選択反射膜として輝度向上もしくは色再現性の向上を図るといった効果を与える。このような位相差膜は、本発明の組成物に公知のカイラル剤を添加することで得ることができる。また、コレステリック相を示す位相差膜は特定波長の光に対してCプレート(nx≒ny<nz、あるいはnx≒ny>nz)として利用することもできる。
また、位相差膜が種々の色素を含むことで、色再現性の向上、または、視覚効果を付与し表示性能を向上させることができる。このような色素含有位相差膜は、本発明の組成物に色素を添加することで得られる。例えば、波長480~520nm、または、波長580~620nmに吸収ピークを有する色素は、色再現域拡大に有用である。
また、特に、色素として二色性色素を用い、本発明の組成物の液晶化合物の配向を利用して二色性色素を配向させることにより、光吸収特性の異方性(面内方向または斜視方向)を付与し表示性能を向上させることができる。
【0079】
<有機EL表示装置>
上述した方法によって、有機EL表示素子と、有機EL表示素子上に配置された上記有機EL表示素子用位相差膜と、を含む有機EL表示装置が作製される。なお、有機EL表示素子用位相差膜は、有機EL表示素子に直接接するように配置されることが好ましい。
有機EL表示装置は、有機EL表示素子用位相差膜上にさらに偏光子を含むことが好ましい。例えば、有機EL表示素子用位相差膜がλ/4板として機能する場合は、偏光子と有機EL表示素子用位相差膜とが組み合わされて、円偏光板として機能する。なお、λ/4板である有機EL表示素子用位相差膜と偏光子とを積層する際には、有機EL表示素子用位相差膜の面内遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角が45±10°となるように調整されることが好ましい。
有機EL表示素子上に円偏光板が配置されることにより、外光反射が防止される。
【0080】
偏光子は、光を特定の直線偏光に変換する機能を有する部材(直線偏光子)であればよく、例えば、吸収型偏光子が挙げられる。
吸収型偏光子としては、例えば、ヨウ素系偏光子、二色性染料を利用した染料系偏光子、および、ポリエン系偏光子が挙げられる。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子には、塗布型偏光子と延伸型偏光子とがあり、いずれも適用できる。なかでも、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を吸着させ、延伸して作製される偏光子が好ましい。
また、基材上にポリビニルアルコール層を形成した積層フィルムの状態で延伸および染色を施すことで偏光子を得る方法として、特許第5048120号公報、特許第5143918号公報、特許第5048120号公報、特許第4691205号公報、特許第4751481号公報、および、特許第4751486号公報に記載の方法が挙げられ、これらの偏光子に関する公知の技術も好ましく利用できる。
なかでも、取り扱い性の点から、偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂(-CH-CHOH-を繰り返し単位として含むポリマー、特に、ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。)を含む偏光子であることが好ましい。
【0081】
偏光子の厚みは特に制限されないが、取り扱い性に優れると共に、光学特性にも優れる点より、35μm以下が好ましく、3~25μmがより好ましい。
【実施例
【0082】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、および、処理手順は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0083】
<合成例1:ポリマー1>
フラスコにメチルエチルケトンを入れて、窒素雰囲気下において70℃に昇温した。フラスコ内に、液晶モノマー1、アクリル酸、アクリル酸エチルエステル、および、V-65(和光純薬工業(株)製)を所定量混合した溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間撹拌した。それにより、ポリマー1を得た。
ポリマー1中の各繰り返し単位の全繰り返し単位に対する含有量に関しては、液晶モノマー1由来の繰り返し単位が70質量%、アクリル酸由来の繰り返し単位が13質量%、および、アクリル酸エチルエステル由来の繰り返し単位が17質量%であった。また、ポリマー1の重量平均分子量は15000であった。また、ポリマー1の酸価は、101mgKOH/mgであった。
なお、液晶モノマー1は、特表平11-513019号公報(WO97/00600)を参照して合成した。
【0084】
【化7】
【0085】
<合成例2:ポリマー2>
液晶モノマー1を液晶モノマー2に変更した以外は、合成例1と同様の手順に従って、ポリマー2を合成した。
なお、液晶モノマー1由来の繰り返し単位が液晶モノマー2由来の繰り返し単位にかわった以外は、ポリマー2中の各繰り返し単位の含有量、重量平均分子量、および、酸価は、それぞれポリマー1中の各繰り返し単位の含有量、重量平均分子量、および、酸価と同じであった。
また、液晶モノマー2は、特表平11-513019号公報(WO97/00600)を参照して合成した。
【0086】
【化8】
【0087】
<合成例3:ポリマー3>
液晶モノマー1を液晶モノマー3に変更した以外は、合成例1と同様の手順に従って、ポリマー3を合成した。ポリマー3には、架橋性基としてアクリロイル基が含まれていた。
なお、液晶モノマー1由来の繰り返し単位が液晶モノマー3由来の繰り返し単位にかわった以外は、ポリマー3中の各繰り返し単位の含有量、重量平均分子量、および、酸価は、それぞれポリマー1中の各繰り返し単位の含有量、重量平均分子量、および、酸価と同じであった。
また、液晶モノマー3は、特表平11-513019号公報(WO97/00600)を参照して合成した。
【0088】
【化9】
【0089】
<合成例4:ポリマーC1>
液晶モノマー1を以下のモノマーC1に変更した以外は、合成例1と同様の手順に従って、ポリマーC1を合成した。
なお、液晶モノマー1由来の繰り返し単位がモノマーC1由来の繰り返し単位にかわった以外は、ポリマーC1中の各繰り返し単位の含有量、重量平均分子量、および、酸価は、それぞれポリマー1中の各繰り返し単位の含有量、重量平均分子量、および、酸価と同じであった。
【0090】
【化10】
【0091】
<合成例5:ポリマーC2>
アクリル酸を用いなかった以外は、合成例1と同様の手順に従って、ポリマーC2を合成した。
ポリマーC2中の各繰り返し単位の全繰り返し単位に対する含有量に関しては、液晶モノマー1由来の繰り返し単位が70質量%、および、アクリル酸エチルエステル由来の繰り返し単位が30質量%であった。また、ポリマーC2の重量平均分子量は15000であった。
【0092】
<合成例6:ポリマーC3>
液晶モノマー1をグリシジルメタクリレートに変更した以外は、合成例1と同様の手順に従って、ポリマーC3を合成した。
なお、液晶モノマー1由来の繰り返し単位がグリシジルメタクリレート由来の繰り返し単位にかわった以外は、ポリマーC3中の各繰り返し単位の含有量、重量平均分子量、および、酸価は、それぞれポリマー1中の各繰り返し単位の含有量、重量平均分子量、および、酸価と同じであった。
【0093】
<実施例1>
下記の成分を、メチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度が25質量%となるよう調整し、組成物を得た。
なお、液晶モノマーの構造式中の数値「83%」、「15%」および「2%」は、液晶モノマー全質量に対する各モノマーの含有量(質量%)を表す。
【0094】
ポリマー1 50質量部
液晶モノマー 100質量部
多官能性モノマー 8質量部
IRG907(IRGACURE 907(BASF製)) 6質量部
Fポリマー1 0.25質量部
Fポリマー2 0.1質量部
【0095】
【化11】
【0096】
<実施例2~4、比較例1~3>
ポリマー1の代わりに、ポリマーの種類および使用量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、組成物を得た。
【0097】
<評価>
(表示性能評価)
有機EL表示素子(有機EL表示パネル)搭載のSAMSUNG社製GALAXY S4を分解し、円偏光板を剥離した。
次に、有機EL表示素子上に、PVA203((株)クラレ製)の3質量%溶液(溶媒比率:水/メタノール=75/25)をスピンコート塗布した後、得られた塗膜を有する有機EL表示素子をホットプレート上にて100℃で2分間プリベークして、塗膜中の溶媒を揮発させ、膜厚0.5μmのPVA層を形成した。
尚、上記PVA層を形成する際、有機EL表示素子の駆動素子と接続する金属電極を覆うようにテープを貼り付けて、上記処理を行い、プリベーク後にテープを剥離した。この処理により、PVA層は、金属電極上には形成されなかった。
PVA層の長手方向にラビング処理を施した。
次に、ラビングを施したPVA層に対して、実施例および比較例の各組成物を厚みが1.0μmとなるようにスピンコート塗布し、ホットプレートを用いて90℃で120秒間加熱処理した。続いて、90℃にて100mJ/cm(照度:20mW/cm2、i線)にて塗膜の一部を露光した。その際、駆動素子と接続する金属電極(接続端子)の部分については、フォトマスクを用いて光が照射されないようにした。
続いて、アルカリ現像液(2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液)を用いて、23℃にて60秒間現像処理を塗膜に施した後、超純水で1分間リンスすることで、光が照射されなかった金属電極の上部に位置する塗膜を除去し、リンス後に、ポストベーク処理として、オーブンにて150℃で30分加熱処理を行い、有機EL表示素子の有機発光層の上部に位相差膜を形成した。なお、各実施例で形成された位相差膜の波長550nmにおける面内レタデーションは、125nmであった。
得られた位相差膜上に、上記位相差膜の面内遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角が45°となるように偏光子を張り合わせて、有機EL表示装置を作製した。
作製した有機EL表示装置について、照度200ルクスの明室内にて視認性を評価した。有機EL表示装置に画像表示(黒表示)をさせて、正面から蛍光灯を映し込んだときの画像鮮明度および白濁り度合いを観察し、以下の基準に沿って評価した。結果を表1に示す。実用上、「A」または「B」であることが必要である。
A:白濁りが全く視認されず、画像鮮明。
B:部分的に白濁りがわずかに視認され、画像一部やや不鮮明。
C:白濁りが全体にわずかに視認され、画像やや不鮮明。
D:白濁りが全体にはっきりと視認され、画像不鮮明。
【0098】
(薬品耐性評価)
ガラス基板(10cm×10cm×0.5mm、コーニング製、Eagle XG)に、PVA203((株)クラレ製)の3質量%溶液(溶媒比率:水/メタノール=75/25)をスピンコート塗布した後、得られた塗膜を有するガラス基板をホットプレート上にて100℃で2分間プリベークして、塗膜中の溶媒を揮発させ、膜厚0.5μmのPVA層を形成した。
PVA層の長手方向にラビング処理を施した。
次に、ラビングを施したPVA層に対して、実施例および比較例の各組成物を厚みが1.0μmとなるようにスピンコート塗布し、ホットプレートを用いて90℃で120秒間加熱処理した。続いて、90℃にて100mJ/cm(照度:20mW/cm2、i線)にて塗膜を全面露光し、その後、この基板をオーブンにて150℃で30分加熱して位相差膜を得た。
得られた位相差膜の膜厚(T1)を測定した。そして、この位相差膜が形成された基板を60℃のジメチルスルホキシド:モノエタノールアミン=7:3溶液中に10分間浸漬させた後、浸漬後の位相差膜の膜厚(t1)を測定し、浸漬による膜厚変化率{|t1-T1|/T1}×100〔%〕を算出し、以下の基準に沿って評価した。結果を表1に示す。算出した数値は、小さいほど好ましく、AおよびBが実用上問題のないレベルである。
A:4%未満
B:4%以上8%未満
C:8%以上12%未満
D:12%以上
【0099】
表1中の「親水性基」欄は、ポリマーが親水性基を有する場合は「A」、親水性基を有さない場合は「B」に該当する。
表1中の「架橋性基」欄は、ポリマーが架橋性基を有する場合は「A」、架橋性基を有さない場合は「B」に該当する。
表1中の「メソゲン基」欄は、ポリマーがメソゲン基を有する場合は「A」、メソゲン基を有さない場合は「B」に該当する。
また、表1中の「表示性能」欄、および、「薬品耐性」欄の「-」とは、使用した組成物が現像性を有していなかったため、所定の位置に位相差膜を形成できないため、評価を不実施としたことを意図する。
【0100】
【表1】
【0101】
表1に示すように、本発明の組成物を用いると、所定の位置に位相差膜を形成できることが確認された。
実施例1~3の比較より、架橋性基と親水性基とが反応できる場合(実施例1および2)、薬品耐性がより向上することが確認された。
【0102】
<実施例5>
有機EL表示素子(有機EL表示パネル)搭載のSAMSUNG社製GALAXY S4を分解し、円偏光板を剥離した。
次に、有機EL表示素子上に、下記の光配向膜形成用組成物を、乾燥膜厚が約100nmになるよう塗布し、80℃で2分間乾燥した。次に、得られた塗膜に対して、偏光UV(紫外光)(100mW/cm)を、100mW/cmの強度で照射した。なお、UV露光に際し、有機EL表示素子の駆動素子と接続する金属電極領域には光が照射されないようマスクを通して露光を行った。
【0103】
(光配向膜形成用組成物)
下記の光配向性ポリマー 30質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 10質量部
光重合開始剤(イルガキュア907、BASF社製) 5質量部
トルエン 2250質量部
【0104】
・光配向ポリマー(ポリ[4-メトキシ-シンナメート-5-ノルボルネン]、Mw=150、000)
【0105】
【化12】
【0106】
さらに、溶剤により未硬化部の除去を行った。この処理により、塗膜は、金属電極上には形成されなかった。
【0107】
以降は、実施例1と同様に、組成物を適用して有機EL表示装置を作製した。作製された位相差膜の波長550nmにおける面内レタデーションは、125nmであった。また、得られた位相差膜は、実施例1と同様の薬品耐性を示した。
なお、金属電極上には塗膜は残存していなかった。
【0108】
<実施例6>
実施例5において、配向処理として、2mm幅のストライブ状に、隣接する領域が互いに偏光方向が45°異なる偏光が出射されるように設計した偏光マスクを通して偏光UV露光を行った以外は、実施例5と同様に有機EL表示装置を作製した。なお、偏光子は、その吸収軸が、位相差膜の異なる2つの配向領域のうち一方の遅相軸方向と45°をなすように貼合した。
得られた位相差膜の薬品耐性は、実施例5と同様に、「A」であった。
また、作製した有機EL表示装置について、照度200ルクスの明室内にて有機EL表示装置を黒表示とし、正面から蛍光灯を映し込んだところ、2mm幅のストライプ状に明暗パターンが観察され、明部で入射した光が淡く反射していた。すなわち、位相差膜に所定の位相差パターニングができていることを示していた。
なお、金属電極上には塗膜は残存していなかった。
【0109】
この実施例では単純なストライプ状のパターンにて具体例を示したが、例えばストライプ状のパターンに代えて視認補助効果のある意匠を施せば、使用者の体感に基づく表示性能を向上させうることは明白である。
【0110】
<実施例7>
実施例1の組成物に、さらにカイラル剤を加えて実施例1と同様に有機EL表示装置を作製した。得られた位相差膜の薬品耐性は、実施例1と同様に「A」であった。
得られた位相差層は、正面で青色の反射色を呈した。最初に剥離した円偏光板を、元の向きにて貼合しなおした上で、暗室下にて青色表示時の輝度を測定したところ、元の輝度に対して10%の輝度向上効果を認めた。
なお、金属電極上には塗膜は残存していなかった。
【符号の説明】
【0111】
10 マザー基板
12 有機発光層
14 接続端子
16,32 有機EL表示素子
20,30 基板
22 粘着層
24,40 位相差膜
34 塗膜
36 露光部
38 未露光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6