(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】水現像性フレキソ印刷版原版、フレキソ印刷版および感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/00 20060101AFI20220727BHJP
G03F 7/033 20060101ALI20220727BHJP
B41N 1/00 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
G03F7/00 502
G03F7/033
B41N1/00
(21)【出願番号】P 2020538317
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031578
(87)【国際公開番号】W WO2020039975
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2018156569
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘司
(72)【発明者】
【氏名】藤牧 一広
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-204139(JP,A)
【文献】特表平05-501457(JP,A)
【文献】特開2002-196479(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0051928(US,A1)
【文献】特開平05-112655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光層を有する水現像性フレキソ印刷版原版であって、
前記感光層が、水分散性粒子を含有し、
前記水分散性粒子が、ポリマーを含有するガラス転移温度が0℃以下のコアと、ポリマーを含有するガラス転移温度が10℃以上のシェルとを有
し、
前記シェルに含まれるポリマーが、炭素数が6以上の脂環式炭化水素基を有するアクリル酸エステル、炭素数が6以上の脂環式炭化水素基を有するメタクリル酸エステル、アクリルアミド類、および、メタクリルアミド類からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位を有する重合体である、水現像性フレキソ印刷版原版。
【請求項2】
前記シェルのガラス転移温度が40℃以上である、請求項1に記載の水現像性フレキソ印刷用原版。
【請求項3】
前記シェルに含まれるポリマーが、酸基含有モノマーに由来する構成単位を有し、前記酸基含有モノマーが有する酸基が、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、および、これらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の酸基である、請求項1または2に記載の水現像性フレキソ印刷用原版。
【請求項4】
感光層を有する水現像性フレキソ印刷版原版であって、
前記感光層が、水分散性粒子を含有し、
前記水分散性粒子が、ポリマーを含有するガラス転移温度が0℃以下のコアと、ポリマーを含有するガラス転移温度が10℃以上のシェルとを有し、
前記シェルに含まれるポリマーが、酸基含有モノマーに由来する構成単位を有し、前記酸基含有モノマーが有する酸基が、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、および、これらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の酸基であり、
前記シェルに含まれるポリマーが、前記酸基含有モノマーに由来する構成単位を2~12質量%含有する
、水現像性フレキソ印刷用原版。
【請求項5】
前記コアに含まれるポリマーが、炭素数2~12のアクリル酸エステル、炭素数6~14のメタクリル酸エステル、および、共役ジエン系炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位を有する重合体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の水現像性フレキソ印刷用原版。
【請求項6】
前記シェルの質量に対する前記コアの質量の比率が、1以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の水現像性フレキソ印刷用原版。
【請求項7】
前記シェルに含まれるポリマーが、炭素数が6以上の脂環式炭化水素基を有するアクリル酸エステル、
および、炭素数が6以上の脂環式炭化水素基を有するメタクリル酸エステ
ルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位を有する重合体である、請求項1~6のいずれか1項に記載の水現像性フレキソ印刷用原版。
【請求項8】
画像部と非画像部とを有するフレキソ印刷版であって、
前記画像部が、請求項1~7のいずれか1項に記載の水現像性フレキソ印刷用原版が有する感光層を画像様に露光し、現像することにより得られる画像部である、フレキソ印刷版。
【請求項9】
水分散性粒子、疎水性ポリマー、光重合性モノマー、および、光重合開始剤を含有し、
前記水分散性粒子が、ポリマーを含有するガラス転移温度が0℃以下のコアと、ポリマーを含有するガラス転移温度が10℃以上のシェルとを有する水分散性粒子であ
り、
前記シェルに含まれるポリマーが、炭素数が6以上の脂環式炭化水素基を有するアクリル酸エステル、炭素数が6以上の脂環式炭化水素基を有するメタクリル酸エステル、アクリルアミド類、および、メタクリルアミド類からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位を有する重合体である、感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記シェルのガラス転移温度が40℃以上である、請求項9に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記シェルに含まれるポリマーが、酸基含有モノマーに由来する構成単位を有し、前記酸基含有モノマーが有する酸基が、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、および、これらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の酸基である、請求項9または10に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
水分散性粒子、疎水性ポリマー、光重合性モノマー、および、光重合開始剤を含有し、
前記水分散性粒子が、ポリマーを含有するガラス転移温度が0℃以下のコアと、ポリマーを含有するガラス転移温度が10℃以上のシェルとを有する水分散性粒子であり、
前記シェルに含まれるポリマーが、酸基含有モノマーに由来する構成単位を有し、前記酸基含有モノマーが有する酸基が、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、および、これらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の酸基であり、
前記シェルに含まれるポリマーが、前記酸基含有モノマーに由来する構成単位を2~12質量%含有する
、感光性樹脂組成物。
【請求項13】
前記コアに含まれるポリマーが、炭素数2~12のアクリル酸エステル、炭素数6~14のメタクリル酸エステル、および、共役ジエン系炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位を有する重合体である、請求項9~12のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
前記シェルの質量に対する前記コアの質量の比率が、1以上である、請求項9~13のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項15】
前記シェルに含まれるポリマーが、炭素数が6以上の脂環式炭化水素基を有するアクリル酸エステル、炭素数が6以上の脂環式炭化水素基を有するメタクリル酸エステル、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリロニトリル、および、メタクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位を有する重合体である、請求項9~14のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水現像性フレキソ印刷版原版、フレキソ印刷版および感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、作業環境改善や地球環境の保全の観点から有機溶剤の使用を減らそうという動きが各種産業界から出ており、印刷に用いる感光性のフレキソ印刷版の製版工程においても水性現像可能な感光性樹脂版の使用が増えつつある状況にある。
【0003】
例えば、特許文献1には、「少なくとも(A)水分散ラテックスから得られる疎水性重合体、(B)親水性重合体、(C)エチレン性二重結合不飽和化合物及び(D)光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物において、(A)成分の水分散ラテックスから得られる疎水性重合体がポリブタジエン、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体及びメチルメタクリレート系共重合体の3種類からなることを特徴とするフレキソ印刷版用感光性樹脂組成物」が記載されており([請求項1])、これを用いて得られた感光性樹脂層と支持体とが積層されたフレキソ印刷用感光性樹脂原版が記載されている([請求項5])。
【0004】
また、特許文献2には、「少なくとも、(A)親水性共重合体、(B)エラストマー、(C)重合性不飽和単量体、(D)共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位を含み、かつ、少なくとも一種類の繰り返し単位中にカルボキシル基を有するポリマーを含む可塑剤、及び、(E)光重合開始材、を含有するフレキソ印刷用感光性樹脂組成物」が記載されており([請求項1])、これを用いたフレキソ印刷原版が記載されている([請求項8])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-256860号公報
【文献】特開2017-076059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特許文献1および2に記載された水現像性フレキソ印刷版原版について検討したところ、水性現像液を用いた画像再現性(以下、「水現像性」と略す。)が良好であることが分かったが、この水性現像液を1回以上の現像に用いた後においては、現像液として再利用すると、印刷版上に残存した現像液を水で洗浄(リンス)する際に、現像液中の分散物が印刷版上に付着して被印刷物に汚れが発生することがあり、また、使用済みの現像液として廃棄すると、排水系内の水により希釈される際に、現像液中の分散物が凝集し、排水管内を詰まらせる問題があることを明らかとした。
【0007】
そこで、本発明は、良好な水現像性を維持し、水現像液の繰り返し使用時および廃棄の際に、現像液中の分散物の付着および凝集を抑制することができる水現像性フレキソ印刷版原版、フレキソ印刷版および感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、ポリマーを含有するガラス転移温度が0℃以下のコアと、ポリマーを含有するガラス転移温度が10℃以上のシェルとを有する水分散性粒子を含有する感光層または感光性樹脂組成物を用いることにより、良好な水現像性を維持し、水現像液の繰り返し使用時および廃棄の際に、現像液中の分散物の付着および凝集を抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0009】
[1] 感光層を有する水現像性フレキソ印刷版原版であって、
感光層が、水分散性粒子を含有し、
水分散性粒子が、ポリマーを含有するガラス転移温度が0℃以下のコアと、ポリマーを含有するガラス転移温度が10℃以上のシェルとを有する、水現像性フレキソ印刷版原版。
[2] シェルのガラス転移温度が40℃以上である、[1]に記載の水現像性フレキソ印刷用原版。
[3] シェルに含まれるポリマーが、酸基含有モノマーに由来する構成単位を有し、酸基含有モノマーが有する酸基が、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、および、これらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の酸基である、[1]または[2]に記載の水現像性フレキソ印刷用原版。
[4] シェルに含まれるポリマーが、酸基含有モノマーに由来する構成単位を2~12質量%含有する、[3]に記載の水現像性フレキソ印刷用原版。
[5] コアに含まれるポリマーが、炭素数2~12のアクリル酸エステル、炭素数6~14のメタクリル酸エステル、および、共役ジエン系炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位を有する重合体である、[1]~[4]のいずれかに記載の水現像性フレキソ印刷用原版。
[6] シェルの質量に対するコアの質量の比率が、1以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の水現像性フレキソ印刷用原版。
[7] シェルに含まれるポリマーが、炭素数が6以上の脂環式炭化水素基を有するアクリル酸エステル、炭素数が6以上の脂環式炭化水素基を有するメタクリル酸エステル、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリロニトリル、および、メタクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位を有する重合体である、[1]~[6]のいずれかに記載の水現像性フレキソ印刷用原版。
【0010】
[8] 画像部と非画像部とを有するフレキソ印刷版であって、
画像部が、[1]~[7]のいずれかに記載の水現像性フレキソ印刷用原版が有する感光層を画像様に露光し、現像することにより得られる画像部である、フレキソ印刷版。
【0011】
[9] 水分散性粒子、疎水性ポリマー、光重合性モノマー、および、光重合開始剤を含有し、
水分散性粒子が、ポリマーを含有するガラス転移温度が0℃以下のコアと、ポリマーを含有するガラス転移温度が10℃以上のシェルとを有する水分散性粒子である、感光性樹脂組成物。
[10] シェルのガラス転移温度が40℃以上である、[9]に記載の感光性樹脂組成物。
[11] シェルに含まれるポリマーが、酸基含有モノマーに由来する構成単位を有し、酸基含有モノマーが有する酸基が、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、および、これらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の酸基である、[9]または[10]に記載の感光性樹脂組成物。
[12] シェルに含まれるポリマーが、酸基含有モノマーに由来する構成単位を2~12質量%含有する、[11]に記載の感光性樹脂組成物。
[13] コアに含まれるポリマーが、炭素数2~12のアクリル酸エステル、炭素数6~14のメタクリル酸エステル、および、共役ジエン系炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位を有する重合体である、[9]~[12]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[14] シェルの質量に対するコアの質量の比率が、1以上である、[9]~[13]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[15] シェルに含まれるポリマーが、炭素数が6以上の脂環式炭化水素基を有するアクリル酸エステル、炭素数が6以上の脂環式炭化水素基を有するメタクリル酸エステル、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリロニトリル、および、メタクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位を有する重合体である、[9]~[14]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、良好な水現像性を維持し、水現像液の繰り返し使用時および廃棄の際に、現像液中の分散物の付着および凝集を抑制することができる水現像性フレキソ印刷版原版、フレキソ印刷版および感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を表す表記であり、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を表す表記であり、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」または「メタクリロイル」を表す表記である。
【0014】
[水現像性フレキソ印刷版原版]
本発明の水現像性フレキソ印刷版原版(以下、「本発明の印刷版原版」とも略す。)は、水分散性粒子を含有する感光層を有する水現像性フレキソ印刷版原版である。
また、水分散性粒子は、ポリマーを含有するガラス転移温度が0℃以下のコアと、ポリマーを含有するガラス転移温度が10℃以上のシェルとを有するコアシェル粒子である。
【0015】
本発明においては、上述した通り、ポリマーを含有するガラス転移温度が0℃以下のコアと、ポリマーを含有するガラス転移温度が10℃以上のシェルとを有する水分散性粒子を含有する感光層を用いることにより、良好な水現像性を維持し、水現像液の繰り返し使用時および廃棄の際に、現像液中の分散物の付着および凝集を抑制することができる。
これは、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
まず、水性現像液は、通常、2回以上の現像に繰り返して用いられるが、例えば、2回目の現像に用いる現像液には、1回目の現像によりフレキソ印刷版原版から除去された版材、すなわち、未露光部(未硬化)の版材が分散物として存在することになる。
そして、後述する比較例に示す通り、ポリマーを含有するガラス転移温度が0℃以下のコアと、ポリマーを含有するガラス転移温度が10℃未満のシェルとを有する水分散性粒子を含有させた場合、水現像性に劣り、現像液中の分散物の付着および凝集を抑制できないことが分かる。
そのため、本発明においては、ポリマーを含有するガラス転移温度が0℃以下のコアと、ポリマーを含有するガラス転移温度が10℃以上のシェルとを有する水分散性粒子が、現像液中に存在する分散物にも含まれることにより、分散物に対する外力(例えば、希釈、撹拌など)を緩和し、分散物の変形や凝集を抑制することができたためであると考えられる。
以下に、本発明の印刷版原版が有する感光層について詳細に説明する。
【0016】
〔感光層〕
本発明の印刷版原版が有する感光層は、上述したように、ポリマーを含有するガラス転移温度が0℃以下のコアと、ポリマーを含有するガラス転移温度が10℃以上のシェルとを有する水分散性粒子を含有する。
ここで、ガラス転移温度の測定方法は、示差走査熱量計[セイコーインスツルメンツ(株)製 製品名「DSC-6200」]を用いて、JIS K 7121(1987)(プラスチックの転移温度の測定方法)に準じた方法により求める。
具体的には、コアまたはシェルに含まれる材料を回収した3mgの粉末サンプルを、窒素雰囲気下(ガスの流量;80ml/分)で昇温(加熱速度;10℃/分)させて2回測定し、2回目のデータを採用した。
なお、コアに含まれる材料とシェルに含まれる材料とを分離することが困難な場合は、水分散性粒子を回収した3mgの粉末サンプルを用いて上記方法でガラス転移温度を測定し、観察される2つのガラス転移温度の中間の温度にて、水分散性粒子を含む水分散液を乾燥させた後に、粒子の融着により連続膜になるか、粒子が融着せず連続膜にならないか(粉末状になる)によって、コアおよびシェルのガラス転移温度を特定することができる。例えば、-20℃と50℃がガラス転移温度として観察された場合、20℃で水分散性粒子を含む水分散液を乾燥させた後に、連続膜になれば-20℃がシェルのガラス転移温度であり、50℃がコアのガラス転移温度であると判断でき、粉末状になればシェルのガラス転移温度が50℃であり、コアのガラス転移温度が-20℃であると判断することができる。
【0017】
<水分散性粒子>
感光層に含まれる水分散性粒子は、上述したように、ポリマーを含有するガラス転移温度が0℃以下のコアと、ポリマーを含有するガラス転移温度が10℃以上のシェルとを有するコアシェル粒子である。
ここで、シェルは、コアの表面の全面を覆うものに限らず、コアの表面の少なくとも一部を覆うものであってもよく、コアの表面を覆う中間層の表面の少なくとも一部を覆うものであってもよい。
【0018】
本発明において、水分散性粒子の含有量は、感光層の全固形分質量に対して、10~70質量%であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましく、30~50質量%であることが更に好ましい。
【0019】
また、本発明において、水分散性粒子の平均粒子径は、均一なサイズの粒子を合成しやすい等の理由から、5~500nmであることが好ましく、30~300nmであることがより好ましい。
ここで、平均粒子径は、水分散性粒子を含む水分散液を用い、動的光散乱法(Dynamic light scattering)により測定した値をいう。
【0020】
(コア)
本発明においては、得られる感光層の膜弾性率の観点から、水分散性粒子のコアのガラス転移温度が-20℃以下であることが好ましく、-40℃以下であることがより好ましい。
【0021】
また、本発明においては、得られる感光層の水性インキ耐性が良好となり、膜弾性率も向上する理由から、コアに含まれるポリマーが、疎水性のポリマーであることが好ましい。
ここで、ポリマーの疎水性は、得られる感光層の水性インキ耐性の観点から、ハンセン溶解度パラメータ(以下、単に「HSP値」とも略す。)が8~12であることが好ましく、8.5~11であることがより好ましく、8.5~10.5であることが更に好ましい。
また、HSP値の詳細については、Hansen,Charles(2007).Hansen Solubility Parameters: A user’s handbook,Second Edition. Boca Raton,Fla:CRC Press.ISBN 9780849372483に説明がある。
また、HSP値は、以下のソフトウェアに化合物の構造式を入力することにより算出され、より詳細にはδtotalに該当する値である。ソフトウェアとしては、HSPiP(Hansen Solubility Parameters in Practice) ver4.1.07が用いられる。
【0022】
コアに含まれるポリマーとしては、例えば、炭素数2~12のアクリル酸エステル、炭素数6~14のメタクリル酸エステル、および、共役ジエン系炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位を有する重合体が好適に挙げられる。
炭素数2~12のアクリル酸エステルとしては、具体的には、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ドデシルなどが挙げられる。
炭素数6~14のメタクリル酸エステルとしては、具体的には、例えば、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ドデシルなどが挙げられる。
共役ジエン系炭化水素としては、具体的には、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。
また、上述したモノマー以外に、上述したモノマーと共重合させるモノマーとして、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタアクリルアミド、メタアクリルアミド酢酸ビニル、上述した炭素数2~12のアクリル酸エステル以外のアクリル酸エステル、上述した炭素数6~14のメタクリル酸エステル以外のメタアクリル酸エステルなどを用いることができる。
【0023】
(シェル)
本発明においては、水現像液の繰り返し使用時および廃棄の際に、現像液中の分散物の付着および凝集をより抑制することができる理由から、水分散性粒子のシェルのガラス転移温度が40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。
【0024】
また、本発明においては、得られる感光層の水現像性がより良好となる理由から、シェルに含まれるポリマーが、酸基含有モノマーに由来する構成単位を有するポリマーであることが好ましい。
酸基としては、水現像性がより良好となり、水現像液の繰り返し使用時および廃棄の際に、現像液中の分散物の付着および凝集をより抑制することができる理由から、カルボン酸基(カルボキシ基)、スルホン酸(スルホ基)、リン酸基が好適に挙げられ、なかでも、カルボキシ基またはスルホ基であることが好ましい。
また、酸基は、塩の形態であってもよく、塩としては、具体的には、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;などが挙げられる。
酸基含有モノマーとしては、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
このようなポリマーは、得られる感光層の水性インキ耐性が良好となり、また、水現像性もより良好となる理由から、酸基含有モノマーに由来する構成単位を2~12質量%含有していることが好ましく、4~11質量%含有していることがより好ましく、5~10質量%含有していることが更に好ましい。
【0025】
本発明においては、シェルに含まれるポリマーとしては、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物に由来する構成単位を有するポリマーであることが好ましい。
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、上述した酸基含有モノマー以外に、例えば、N-ビニル化合物、アクリルアミド、メタクリルアミド等の含窒素ラジカル重合性化合物;アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、マレイン酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルおよびこれらの塩;エチレン性不飽和基を有する無水物;アクリロニトリル;スチレン;不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ポリウレタン等のマクロモノマー;などが挙げられる。
【0026】
本発明においては、水現像液の繰り返し使用時および廃棄の際に、現像液中の分散物の付着および凝集をより抑制することができる理由から、シェルに含まれるポリマーが、炭素数が6以上の脂環式炭化水素基を有するアクリル酸エステル、炭素数が6以上の脂環式炭化水素基を有するメタクリル酸エステル、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリロニトリル、および、メタクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位を有する重合体であることが好ましい。
ここで、炭素数が6以上の脂環式炭化水素基としては、具体的には、例えば、シクロヘキシル基、2-デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、1-メチルアダマンチル基、2-メチルアダマンチル基、2-エチルアダマンチル基、2-ノルボルニル基、5,6-ジメチル-ノルボルニル基、3-メチル-2-ノルボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基などが挙げられる。
【0027】
炭素数が6以上の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸2-メチル-2-アダマンチルなどが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類としては、具体的には、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジイソプロピルアクリルアミド、N,N-ジブチルアクリルアミド、モルホリルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0028】
本発明においては、水分散性粒子のシェルは、溶剤インキに対する耐性の観点から、架橋していてもよい。そのため、シェルに含まれるポリマーは、光重合性モノマーや架橋剤と反応できるように、または、ポリマー同士で反応できるようにエチレン性不飽和基を分子末端あるいは分子内側鎖に含有していてもよい。
【0029】
本発明においては、得られる感光層の水性インキ耐性が良好となり、膜弾性率も向上する理由から、シェルの質量に対するコアの質量の比率(コア/シェル)が、1以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましく、2.0以上であることが更に好ましい。
【0030】
本発明のフレキソ印刷版原版は、使用時に、感光層の上にネガフィルム(すでに画像が形成されているもの)を密着させる、いわゆるアナログ方式の印刷版原版であってもよいし、予め感光層の上に赤外線アブレーション層が密着している、いわゆるCTP(Computer to plate)方式に含まれるLAM(Laser ablation mask)方式の印刷版原版であってもよい。
【0031】
アナログ方式の印刷版原版は、基板上に、基板と感光層とを接着する接着剤などからなる接着層と、後述する本発明の感光性樹脂組成物からなる感光層と、感光層表面が粘着しないようにするための粘着防止層と、使用前において感光性樹脂組成物の傷を防止する保護フィルムと、がこの順で積層されたものからなる。
上記基板としては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどのプラスチックフィルムもしくはプラスチックシート;ステンレス、アルミニウムなどの金属シート;ブタジエンゴムなどのゴムシート;等を挙げることができる。
なお、アナログ方式の印刷版原版は、使用時には、保護フィルムを剥がし、露出された粘着防止層の上に、予め画像が形成されているネガフィルムが密着される。
【0032】
アナログ方式の印刷版原版は、例えば、基板の片面に予め接着剤を塗布し、保護フィルムの片面に予め粘着防止剤を塗布し、後述する本発明の感光性樹脂組成物を、予め接着剤を塗布した基板と予め粘着防止剤を塗布した保護フィルムとの間に挟み、感光性樹脂組成物の厚みが所定の厚みになるようにプレスすることにより、製造できる。
【0033】
LAM方式の印刷版原版は、アナログ方式の印刷版原版と比較して、感光層と保護フィルムとの間に赤外線アブレーション層を有する点が異なり、その他の構成についてはアナログ方式の印刷版原版と同様の構成である。すなわち、基板上に、接着層と、感光層と、赤外線アブレーション層と、保護フィルムと、がこの順で積層されたものからなる。LAM方式の印刷版原版は、使用時には、保護フィルムを剥がし、赤外線アブレーション層が露出される。
【0034】
赤外線アブレーション層は、赤外線レーザにより照射された部分を除去することが可能な層であり、それ自体は実用上のレベルで紫外線の透過を遮蔽できる機能を併せ持つ層であって、それに画像を形成することによりネガもしくはポジとしての役割をすることができるものである。
【0035】
赤外線アブレーション層は、主に、バインダーである樹脂やゴム、赤外線吸収物質、紫外線吸収物質、可塑剤などで構成されている。赤外線アブレーション層は、例えば、上記材料を溶剤に溶かし、これを基材に塗布した後、乾燥させ溶剤を除去することにより製造できる。
【0036】
LAM方式の印刷版原版は、例えば、基板の片面に予め接着剤を塗布し、保護フィルムの片面に予め赤外線アブレーション層を塗布し、本発明に係る感光性樹脂組成物を、予め接着剤を塗布した基板と予め赤外線アブレーション層を塗布した保護フィルムとの間に挟み、感光性樹脂組成物の厚みが所定の厚みになるようにプレスすることにより、製造できる。
【0037】
いずれの印刷版原版においても、感光層の厚みは、0.01~10mmの範囲内であることが好ましい。感光層の厚みが0.01mm以上であれば、レリーフ深度を十分に確保できる。一方、感光層の厚みが10mm以下であれば、印刷版原版の重さを抑えることができ、実用上、印刷版として使用することができる。
【0038】
[フレキソ印刷版]
本発明のフレキソ印刷版は、画像部と非画像部とを有するフレキソ印刷版である。
また、本発明のフレキソ印刷版が有する画像部は、上述した本発明の印刷版原版が有する感光層を画像様に露光し、現像することにより得られる画像部である。
【0039】
印刷版原版の感光層にレリーフ像を形成するには、まず、印刷版原版の基板側から紫外線照射を行う(裏露光)。
【0040】
アナログ方式の印刷版原版を用いる場合、保護フィルムを剥がし、露出された粘着防止層の上に、予め画像が形成されているネガフィルムを密着させる。一方、LAM方式の印刷版原版を用いる場合、保護フィルムを剥がし、露出された赤外線アブレーション層に赤外線レーザを照射するなどして所望の画像を形成する。
【0041】
次いで、ネガフィルムあるいは赤外線アブレーション層の上から紫外線を照射することにより、感光層を硬化させる(主露光)。紫外線は、通常、300~400nmの波長の光を照射できる高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯などにより照射できる。感光層は、紫外線照射により、照射された部分が硬化する。ネガフィルムあるいは赤外線アブレーション層で覆われた感光層には、紫外線が照射された硬化部分と、紫外線が照射されていない未硬化部分とが生じる。
【0042】
次いで、現像液中で感光層の未硬化部分を除去することにより、レリーフ像を形成する。現像液には、水系の現像液を用いる。水系の現像液は、水に、必要に応じて界面活性剤やpH調整剤などを添加したものからなる。感光層の未硬化部分の除去は、例えばスプレー式現像装置やブラシ式洗い出し機などを用いて未硬化部分を洗い出すことにより行うことができる。
【0043】
次いで、現像液から印刷版材を取り出してこれを乾燥させる。次いで、必要に応じて乾燥させた印刷版材全体に紫外線を照射する(後露光)。これにより、フレキソ印刷版が得られる。
【0044】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、水分散性粒子(A)、疎水性ポリマー(B)、光重合性モノマー(C)、および、光重合開始剤(D)を含有する樹脂組成物である。
また、本発明の感光性樹脂組成物においては、水分散性粒子(A)が、ポリマーを含有するガラス転移温度が0℃以下のコアと、ポリマーを含有するガラス転移温度が10℃以上のシェルとを有する水分散性粒子である。
以下に、本発明の感光性樹脂組成物が含有する水分散性粒子(A)、疎水性ポリマー(B)、光重合性モノマー(C)および光重合開始剤(D)、ならびに、任意成分について詳細に説明する。
【0045】
〔水分散性粒子(A)〕
本発明の感光性樹脂組成物が含有する水分散性粒子(A)は、ポリマーを含有するガラス転移温度が0℃以下のコアと、ポリマーを含有するガラス転移温度が10℃以上のシェルとを有する水分散性粒子である。
ここで、水分散性粒子は、上述した本発明の印刷版原版において説明したものと同様である。
また、水分散性粒子(A)は、水分散液に含まれる態様であってもよく、その場合の水分散性粒子(A)の含有量(固形分濃度)は、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、15~30質量%であることが更に好ましい。
【0046】
〔疎水性ポリマー(B)〕
本発明の感光性樹脂組成物が含有する疎水性ポリマー(B)は、特に限定されず、例えば、熱可塑性ポリマーなどを用いることができる。
上記熱可塑性ポリマーは、熱可塑性を示すポリマーであれば特に限定されず、その具体例としては、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
これらのうち、柔軟で可撓性を有する膜が形成されやすくなる理由から、ゴム、熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0047】
上記ゴムとしては、具体的には、例えば、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、スチレンイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレン-プロピレン共重合体、塩素化ポリエチレンなどが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのゴム材料のうち、水現像性がより良好となる理由、また、乾燥性および画像再現性の観点から、ブタジエンゴム(BR)およびニトリルゴム(NBR)からなる群から選択される少なくとも1種のゴムであることが好ましい。
【0048】
上記熱可塑性エラストマーとしては、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマーが挙げられる。具体的には、例えば、SB(ポリスチレン-ポリブタジエン)、SBS(ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン-ポリエチレン/ポリブチレン-ポリスチレン)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体)、ACM(アクリル酸エステルゴム)、ACS(アクリロニトリル塩素化ポリエチレンスチレン共重合体)、アクリロニトリルスチレン共重合体、シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン、ポリメタクリル酸メチル-ポリアクリル酸ブチル-ポリメタクリル酸メチルなどが挙げられる。これらのうち、水現像性がより良好となる理由、また、乾燥性および画像再現性の観点から、SBS、SISが特に好ましい。
【0049】
また、疎水性ポリマー(B)の疎水性は、HSP値が8~12であることが好ましく、8.5~11であることがより好ましく、8.5~10.5であることが更に好ましい。
【0050】
疎水性ポリマー(B)の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分の全質量に対して5~60質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。
【0051】
〔光重合性モノマー(C)〕
本発明の感光性樹脂組成物が含有する光重合性モノマー(C)は特に限定されず、従来公知のフレキソ印刷版に用いられている光重合性モノマーを用いることができる。
光重合性モノマー(C)としては、例えば、エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。
上記エチレン性不飽和化合物としては、単官能エチレン性不飽和化合物であっても、多官能エチレン性不飽和化合物であってもよいが、多官能エチレン性不飽和化合物であることが好ましい。
【0052】
多官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、末端エチレン性不飽和基を2~20個有する化合物が好適に挙げられ、具体的には、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,12-ドデカンジオールジアクリレート、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート等のアルカンジオール(メタ)アクリレート化合物;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のグリコールジ(メタ)アクリレート化合物;
エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物;
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート等のビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート化合物;
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレートなどの3価以上のアルコールのエステル化合物、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物;
ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン;
等が挙げられる。なお、POはプロピレンオキシド、EOはエチレンオキシドを示す。
【0053】
光重合性モノマー(C)の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分の全質量に対して0.1~30質量%であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましい。
【0054】
〔光重合開始剤(D)〕
本発明の感光性樹脂組成物が含有する光重合開始剤(D)は、上述した光重合性モノマーの光重合を開始させるものであれば特に限定されず、例えば、アルキルフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アントラキノン類、ベンジル類、ビアセチル類等の光重合開始剤を挙げることができる。
具体的には、例えば、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどを挙げることができる。
【0055】
光重合開始剤(D)の含有量は、感度などの観点から、感光性樹脂組成物の固形分の全質量に対して0.3~15質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましい。
【0056】
〔可塑剤(E)〕
本発明の感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物に柔軟性を付与する観点から、可塑剤(E)を含有することが好ましい。
【0057】
可塑剤(E)としては、具体的には、液状ゴム、オイル、ポリエステル、リン酸系化合物などが挙げられる。
液状ゴムとしては、具体的には、例えば、液状のポリブタジエン、液状のポリイソプレン、または、これらをマレイン酸やエポキシ基により変性したものなどが挙げられる。
オイルとしては、具体的には、例えば、パラフィン、ナフテン、アロマなどが挙げられる。
ポリエステルとしては、具体的には、例えば、アジピン酸系ポリエステルなどが挙げられる。
リン酸系化合物としては、具体的には、例えば、リン酸エステルなどが挙げられる。
【0058】
本発明においては、可塑剤(E)を含有する場合の含有量は、柔軟性の観点から、感光性樹脂組成物の固形分の全質量に対して0.1~40質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。
【0059】
〔界面活性剤(F)〕
本発明の感光性樹脂組成物は、水現像性をより向上させる観点から、界面活性剤(F)を含有していることが好ましい。
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を挙げることができる。なかでも、アニオン性界面活性剤が好ましい。
【0060】
アニオン性界面活性剤としては、具体的には、例えば、
ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪族カルボン酸塩;
ラウリル硫酸エステルナトリウム、セチル硫酸エステルナトリウム、オレイル硫酸エステルナトリウム等の高級アルコール硫酸エステル塩;
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸エステル塩;
アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩;
アルキルジスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリルスルホン酸塩;
ラウリルリン酸モノエステルジナトリウム、ラウリルリン酸ジエステルナトリウム等の高級アルコールリン酸エステル塩;
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸モノエステルジナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ジエステルナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;
等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
これらのうち、感光性樹脂組成物の水現像性が更に良好となる理由から、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などのスルホン酸系界面活性剤が好ましい。
【0062】
本発明においては、界面活性剤(F)を含有する場合の含有量は、現像性や現像後の乾燥性の観点から、感光性樹脂組成物の固形分の全質量に対して0.1~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。
【0063】
〔重合禁止剤〕
本発明の樹脂組成物は、混練時の熱安定性を高める、貯蔵安定性を高めるなどの観点から、熱重合禁止剤(安定剤)を添加することができる。
熱重合禁止剤としては、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類のものなどを挙げることができる。
感光性樹脂組成物中における熱重合禁止剤の含有量は、0.001~5質量%の範囲内が一般的である。
【0064】
〔他の添加剤〕
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、種々の特性向上を目的として、さらに紫外線吸収剤、染料、顔料、消泡剤、香料などの他の添加剤を適宜添加することができる。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0066】
〔合成例1〕
フラスコに、蒸留水193.8gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム30%水溶液3gとを入れ、窒素ガス下に80℃に加熱した。
次いで、109.4gの2-エチルヘキシルアクリレート、1.12gのアリルメタクリレート、および、1.12gの1,4-ブタンジオールジアクリレートの混合物の12.5%を一度に添加した。
次いで、1.5mlのリン酸ナトリウム7%水溶液と、1.5mlの過硫酸アンモニウム5%水溶液とを添加した。モノマー混合物の残りは、温度を83~88℃に保ちながら90分間かけて添加した。
次いで、添加後反応混合物を80~85℃で更に2時間加熱した後、ろ過し、粒子径90nmのコアを含むコアエマルジョンを得た。
次いで、フラスコに、得られたコアエマルジョン200gと過硫酸カリウム0.048gとを添加した。30分かけて蒸留水130.3gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム30%水溶液1.59gとを添加し、窒素ガス下に60℃に加熱した。
次いで、メチルメタクリレート16.7gとイソボルニルメタクリレート4.8gとメタクリル酸2.4gとの混合物を80℃で60分かけて添加した。
添加後、反応混合物を80℃で90分加熱し、コアの表面にシェルが形成された平均粒子径100nmの水分散性粒子A-1を含むエマルジョンを得た。
なお、得られた水分散性粒子A-1における、コアの質量に対するシェルの質量の比率(以下、「コア/シェル比」)は、3/1であった。
また、シェルに含まれるポリマーは、酸基含有モノマーに由来する構成単位を10質量%含有していることが分かった。
【0067】
〔合成例2〕
撹拌機付きオートクレーブに、蒸留水170g、1,3-ブタジエン100g、t-ドデシルメルカプタン0.5g、過硫酸カリウム0.3g、ロジン酸ナトリウム2.5g、および、水酸化ナトリウム0.1gを仕込み、70℃で15時間反応させた後、冷却して反応を終了させた。
得られた共役ジエン系共重合体ラテックスにつき、水蒸気蒸留にて未反応モノマーを除去し、数平均粒子径90nmのコア(共役ジエン系共重合体)を含むコアエマルジョンを得た。
次いで、フラスコに、コアエマルジョン200gと過硫酸カリウム0.047gとを添加した。30分かけて蒸留水127gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム30%水溶液1.55gを添加し、窒素ガス下に60℃に加熱した。
次いで、メチルメタクリレート16.3gとイソボルニルメタクリレート4.7gとメタクリル酸2.3gとの混合物を80℃で60分かけて添加した。
添加後、反応混合物を80℃で90分加熱し、コアの表面にシェルが形成された平均粒子径100nmの水分散性粒子A-2を含むエマルジョンを得た。
なお、得られた水分散性粒子A-2における、コアの質量に対するシェルの質量の比率(以下、「コア/シェル比」)は、3/1であった。
また、シェルに含まれるポリマーは、酸基含有モノマーに由来する構成単位を10質量%含有していることが分かった。
【0068】
〔合成例3~29〕
下記表1および表2のコア組成、シェル組成に従って、合成例1または合成例2に準じ、水分散性粒子A-3~A-29を含むエマルジョンを合成した。
なお、得られた各水分散性粒子の平均粒子径は100nmであり、各水分散性粒子における、シェルの質量に対するコアの質量の比率(以下、「コア/シェル比」)は、下記表1および表2に示す通りである。
また、下記表1および表2中で使用している略語は、以下の通りである。
<略語>
・MMA:メチルメタクリレート
・DMA:ドデシルメタクリレート
・BMA:n-ブチルメタクリレート
・EA:エチルアクリレート
・BA:n-ブチルアクリレート
・i-BA:イソブチルアクリレート
・IBMA:イソボルニルメタクリレート
・DCPMA:ジシクロペンタニルメタクリレート
・ADMA:アダマンチルメタクリレート
・AAm:アクリルアミド
・AN:アクリロニトリル
・MCN:メタクリロニトリル
・DVB:ジビニルベンゼン
・MAA:メタクリル酸
・MAA-Na:メタクリル酸ナトリウム
・AA:アクリル酸
・pSS-Na:スチレンスルホン酸ナトリウム
・AMPS:2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸
・AMPS-Na:2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム
【0069】
【0070】
[実施例1]
〔赤外線アブレーション層/保護フィルム積層体の作製〕
カーボンブラック(三菱化学株式会社製、MA8)28.8gと、アクリル樹脂(根上工業株式会社製、ハイパールM4501)28.8gと、可塑剤(富士フイルム和光純薬株式会社製、O-アセチルクエン酸トリブチル)4.5gと、をメチルイソブチルケトン105.2gに加え、羽攪拌にて混合した。得られた混合液を三本ロールミルを用いて分散させ、固形分が15質量%となるようにさらにメチルイソブチルケトンを加えて塗料を得た。次いで、厚さ100μmのPETフィルムに、乾燥後の塗膜の厚さが2μmとなるように、バーコータで塗料を塗布し、120℃で5分乾燥させることにより、赤外線アブレーション層/保護フィルム積層体を得た。
【0071】
〔印刷用原版の作製〕
合成例1で合成した水分散性粒子A-1を25g含むエマルジョン100gと光重合性モノマーC-1としての多官能モノマー(日油株式会社製、1,9-ノナンジオールジメタクリレート)15gとを混合し、120℃に加熱した乾燥機で2時間水分を蒸発させて、水分散性粒子と光重合性モノマーとの混合物を得た。この混合物と、疎水性ポリマーB-3としてのSBS(旭化成ケミカルズ株式会社製、タフプレン315)17gと、可塑剤E-4としての液状ポリブタジエン(日本曹達株式会社製、B3000)17gと、界面活性剤F-1としてのラウリル酸ナトリウム(花王株式会社製、エマール0)4gとをニーダー中で45分間混練した。その後、ニーダー中に、熱重合禁止剤G-1としての重合禁止剤〔精工化学株式会社製、MEHQ(ハイドロキノンモノメチルエーテル)〕0.1gと、光重合開始剤D-1としてのイルガキュア651(BASFジャパン株式会社製)1gと、紫外線吸収剤H-1としてのチヌビン326(BASFジャパン株式会社製)0.02gとを投入し、5分間混練して、感光性樹脂組成物を得た。このようにして得られた感光性樹脂組成物を、厚さ125μmのPETフィルムの片面に予め接着剤を塗布した基板と、厚さ100μmのPETフィルムの片面に粘着防止剤を塗布した保護フィルムを用い、この保護フィルムと基板との間に感光性樹脂組成物を挟んで、感光性樹脂組成物の厚みが1mmになるように120℃に加熱したプレス機でプレスすることにより、基板上に、接着剤層、感光性樹脂組成物よりなる感光層、粘着防止剤層、保護フィルムがこの順で積層された印刷用原版1を作製した。
【0072】
〔水現像性の評価〕
実施例1の印刷用原版1の保護フィルムを剥がした後、ノニオン系界面活性剤、炭酸ナトリウムを含有するpH10の現像液を入れたブラシ式洗い出し機により、液温40℃で15分間現像を行った。初期の版厚(1.14mm)から現像後の版厚の差が15分間の現像量(A)とした。この15分間の現像による洗い出し量を基に、0.6mmを現像する時間(X)を算出し、現像時間とした。現像時間(X)は、以下の式より求めた。
X(分)=(15(分)/A(mm))×0.6
なお、Xが20分以下をA(実用可)、30分以下をB(実用下限)、30分超をC(実用不可)とした。結果を下記表3に示す。
【0073】
〔付着性および凝集性の評価〕
上記水現像を、同じ配合の印刷用原版1での現像を繰り返し、固形分濃度が5%の現像廃液を得た。この現像廃液の0.5gをポリプロピレン製容器に採取し、水道水で50gに希釈した。その後、30秒撹拌した後、10分後のカス凝集状態を観察した。また、静置24時間後に、容器の壁へのカスの付着状況を観察した。カスの凝集物及び容器壁への付着が認められないものをA(実用可)とし、気液界面にのみわずかに白線状のものが認められるものをB(実用下限)とし、凝集物あるいは容器壁への付着が認められるものをC(実用不可)とした。結果を下記表3に示す。
【0074】
[実施例2~26および比較例1~4]
下記表3に記載の成分構成で実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。
次いで、調製した各感光性樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして印刷用原版を作製し、評価した。
なお、下記表3中で使用している略語は、以下の通りである。
<疎水性ポリマー>
・B-1:NBR(日本ゼオン株式会社製、ニポールDN401)
・B-2:BR(日本ゼオン株式会社製、ニポールBR1220)
・B-3:SBS(旭化成ケミカルズ株式会社製、タフプレン315)
・B-4:SIS(JSR株式会社製、SIS5250)
・B-5:ポリメタクリル酸メチル-ポリアクリル酸ブチル-ポリメタクリル酸メチル(株式会社クラレ製、クラリティLA2140)
<光重合性モノマー>
・C-1:多官能モノマー(日油株式会社製、1,9-ノナンジオールジメタクリレート)
・C-2:多官能モノマー(共栄社化学株式会社製、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート)
・C-3:単官能モノマー(共栄社化学株式会社製、ラウリルメタクリレート)
<光重合開始剤>
・D-1:BASFジャパン株式会社製、イルガキュア651
・D-2:BASFジャパン株式会社製、イルガキュア184
<可塑剤>
・E-1:アジピン酸ビス(2-ブトキシエチル)(株式会社ADEKA製、RS-540)
・E-2:流動パラフィン(エッソ石油株式会社製、クリストール70)
・E-3:液状ポリブタジエン(株式会社クラレ製、LBR-352)
・E-4:液状ポリブタジエン(日本曹達株式会社製、B3000)
・E-5:アクリル系液状ポリマー(株式会社クラレ製、LA1114)
<界面活性剤>
・F-1:ラウリル酸ナトリウム(花王株式会社製、エマール0)
・F-2:アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(日油株式会社製、ニューレックスR)
<その他成分>
・G-1:重合禁止剤〔精工化学株式会社製、MEHQ(ハイドロキノンモノメチルエーテル)〕
・H-1:紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製、チヌビン326)
【0075】
【0076】
上記表1~表3に示す通り、ポリマーを含有するガラス転移温度が0℃以下のコアと、ポリマーを含有するガラス転移温度が10℃未満のシェルとを有する水分散性粒子A-27~A-30を含有する感光層を有するフレキソ印刷版原版は、いずれも、水現像性に劣り、現像液中の分散物の付着および凝集を抑制できないことが分かった(比較例1~4)。
これに対し、ポリマーを含有するガラス転移温度が0℃以下のコアと、ポリマーを含有するガラス転移温度が10℃以上のシェルとを有する水分散性粒子A-1~A-26を含有する感光層を有するフレキソ印刷版原版は、いずれも水現像性が良好となり、また、繰り返し使用を想定した水性現像液中に含まれる分散物が、リンス工程を想定した水で希釈した際にも、付着性および凝集性を抑制できることが分かった(実施例1~26)。
特に、実施例4と実施例11との対比から、水分散性粒子のシェルに含まれるポリマーが、酸基含有モノマーに由来する構成単位を2~12質量%含有していると、水現像性がより良好となることが分かった。
また、実施例13~15の対比から、水分散性粒子のコアのガラス転移温度が-20℃以下であり、シェルのガラス転移温度が40℃以上であると、水現像性がより良好となることが分かった。
また、実施例18~20の対比から、水分散性粒子のシェルに含まれるポリマーが、炭素数が6以上の脂環式炭化水素基を有するアクリル酸エステル、炭素数が6以上の脂環式炭化水素基を有するメタクリル酸エステル、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリロニトリル、および、メタクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位を有していると、付着性および凝集性をより抑制できることが分かった。
また、実施例19と実施例25との対比から、シェルの質量に対するコアの質量の比率が、1以上であると、付着性および凝集性をより抑制できることが分かった。