(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】樹脂組成物、膜、近赤外線カットフィルタ、近赤外線透過フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサ
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220727BHJP
C08K 5/34 20060101ALI20220727BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/34
G02B5/22
(21)【出願番号】P 2021509387
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2020012685
(87)【国際公開番号】W WO2020196394
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2019063502
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】北島 峻輔
(72)【発明者】
【氏名】松村 季彦
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 賢
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-028605(JP,A)
【文献】特開2019-011455(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230586(WO,A1)
【文献】特開2007-111940(JP,A)
【文献】国際公開第2007/029508(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
G02B 5/20-5/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(SQ
2)で表される近赤外線吸収色素と、
下記式(MC1)で表される金属錯体と、
樹脂と、
を含む樹脂組成物。
【化1】
(式(SQ2)中、L
41
~L
44
はそれぞれ独立に、アルキレン基、アルキニレン基、アリーレン基、複素環基、又は、これらを2以上結合した二価の基を表し、
Z
41
およびZ
42
はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-C(=O)-、-S-、-N(R
N1
)-、-S(=O)-、又は、-S(=O)
2
-を表し、
A
41
およびA
42
は、それぞれ独立して酸素原子または-N(R
N2
)-を表し、
R
N1
およびR
N2
は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、
Rs
141
およびRs
142
は、それぞれ独立して置換基を表し、
ns41およびns42はそれぞれ独立して0~5の整数を表し、
ns41が2以上の場合は、複数のRs
141
は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
141
のうち2個のRs
141
同士が結合して環を形成してもよく、
ns42が2以上の場合は、複数のRs
142
は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
142
のうち2個のRs
142
同士が結合して環を形成してもよい;
ただし、L
41
~L
44
がアルキレン基で、Z
41
およびZ
42
が単結合で、A
41
およびA
42
が-N(R
N2
)-の場合、ns41およびns42の少なくとも一方は1~5の整数である。)
【化2】
(式(MC1)中、環Z
mc1および環Z
mc2は、それぞれ独立に
含窒素芳香族複素環を表し、
R
mc1およびR
mc2はそれぞれ独立に単結合または-CR
Y1R
Y2-を表し、R
Y1およびR
Y2はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、
M
mc1は
Co、Ni、Cu、Rh、Ag、Ir、PtまたはAuを表す。
)
【請求項2】
前記式(MC1)で表される金属錯体を2種以上含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記式(SQ
2)で表される近赤外線吸収色素が、式(SQ3)で表される近赤外線吸収色素である、請求項1または2に記載の樹脂組成物;
【化3】
(式
(SQ3)中、Q
1、Q
4、Q
5、Q
8、Q
11、Q
14、Q
15およびQ
18は、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す;
Rs
1~Rs
5、Rs
11~Rs
15は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、スルホ基、-SO
3M
1又はハロゲン原子を表し、M
1は無機又は有機のカチオンを表し、Rs
2とRs
3、Rs
12とRs
13は互いに結合して環を形成してもよい;
Rs
21~Rs
28、Rs
31~Rs
38は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、-NR
X1R
X2、スルホ基、-SO
3M
2、-SO
2NR
X1R
X2、-COOR
X3、-CONR
X1R
X2、ニトロ基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、M
2は無機又は有機のカチオンを表し、R
X1~R
X3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基又は複素環基を表し、R
X1とR
X2は互いに結合して環を形成してもよく、Rs
21~Rs
28、Rs
31~Rs
38のうち、隣接する基同士は互いに結合して環を形成してもよい;
Q
1が窒素原子の場合、Rs
21は存在せず、Q
4が窒素原子の場合、Rs
24は存在せず、Q
5が窒素原子の場合、Rs
25は存在せず、Q
8が窒素原子の場合、Rs
28は存在せず、Q
11が窒素原子の場合、Rs
31は存在せず、Q
14が窒素原子の場合、Rs
34は存在せず、Q
15が窒素原子の場合、Rs
35は存在せず、Q
18が窒素原子の場合、Rs
38は存在しない。
)
【請求項4】
前記樹脂は、塩基性基を有する樹脂を含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂は、アルカリ可溶性樹脂を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
更に界面活性剤を含み、前記界面活性剤の含有量が前記樹脂組成物の全固形分中0.001~0.2質量%である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
更に重合性化合物および光重合開始剤を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
更に近赤外線を透過させて可視光を遮光する色材を含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて得られる膜。
【請求項10】
請求項
9に記載の膜を有する近赤外線カットフィルタ。
【請求項11】
請求項
9に記載の膜を有する近赤外線透過フィルタ。
【請求項12】
請求項
9に記載の膜を有する固体撮像素子。
【請求項13】
請求項
9に記載の膜を有する画像表示装置。
【請求項14】
請求項
9に記載の膜を有する赤外線センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクアリリウム化合物を含む樹脂組成物に関する。また、本発明は、スクアリリウム化合物を含む組成物を用いた膜、近赤外線カットフィルタ、近赤外線透過フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などには、カラー画像の固体撮像素子である、CCD(電荷結合素子)や、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)が用いられている。これら固体撮像素子は、その受光部において赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードを使用している。このため、近赤外線カットフィルタを設けて視感度補正を行うことがある。
【0003】
近赤外線カットフィルタは、近赤外線吸収色素を含む樹脂組成物を用いて製造されている。近赤外線吸収色素の一つとして、スクアリリウム化合物が知られている。また、特許文献1、2には、近赤外線吸収色素である特定の構造のスクアリリウム化合物が記載されている。
【0004】
一方、特許文献3には、波長500~1200nmに最大吸収波長を有する色素と所定の金属錯体とを含む光学フィルタ用組成物に関する発明が記載されている。特許文献3の段落番号0014には、特許文献3の光学フィルタ用組成物において、波長500~1200nmに最大吸収波長を有する色素は、得られる光学フィルタに所定の吸収特性を与える機能を有し、金属錯体は、組成物の状態で、あるいは、組成物を用いて得られる光学フィルタの状態で、波長500~1200nmに最大吸収波長を有する色素に耐光性を付与する機能を有する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/230486号
【文献】特開2019-011455号公報
【文献】特開2018-028605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者が、特許文献1、2に記載されたスクアリリウム化合物を含む樹脂組成物を用いて膜について検討を行ったところ、近赤外領域の分光特性について改善の余地があることが分かった。
【0007】
なお、特許文献3では、特許文献3に係る金属錯体を色素の耐光性を向上させることを目的で使用している。
【0008】
よって、本発明の目的は、近赤外領域の分光特性に優れた膜を形成できる樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、前述の樹脂組成物を用いた膜、近赤外線カットフィルタ、近赤外線透過フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素と樹脂とを含む樹脂組成物について鋭意検討を行ったところ、更に、式(MC1)で表される金属錯体を含有させることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下を提供する。
<1> 下記式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素と、
下記式(MC1)で表される金属錯体と、
樹脂と、
を含む樹脂組成物;
【化1】
式中、Rs
119およびRs
120はそれぞれ独立して置換基を表し、
A
1およびA
2は、それぞれ独立して、酸素原子または-N(Rs
125)-を表し、
Rs
121~Rs
125はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、
E
1およびE
2はそれぞれ独立に炭素原子、ホウ素原子または-C(=O)-を表し、
E
1が炭素原子の場合にはns32は2であり、ホウ素原子の場合にはns32は1であり、-C(=O)-の場合にはns32は0であり、
E
2が炭素原子の場合にはns33は2であり、ホウ素原子の場合にはns33は1であり、-C(=O)-の場合にはns33は0であり、
ns30およびns31はそれぞれ独立に0~5の整数を表し、
ns30が2以上の場合は、複数のRs
119は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
119のうち2個のRs
119同士が結合して環を形成してもよく、
ns31が2以上の場合は、複数のRs
120は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
120のうち2個のRs
120同士が結合して環を形成してもよく、
ns32が2の場合は、2個のRs
121は同一であっても異なっていてもよく、2個のRs
121同士が結合して環を形成してもよく、
ns33が2の場合は、2個のRs
122は同一であっても異なっていてもよく、2個のRs
122同士が結合して環を形成してもよく、
Ar
100はアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し、
ns100は0~2の整数を表す。
【化2】
式(MC1)中、環Z
mc1および環Z
mc2は、それぞれ独立に含窒素複素環を表し、
R
mc1およびR
mc2はそれぞれ独立に単結合または-CR
Y1R
Y2-を表し、R
Y1およびR
Y2はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、
M
mc1は1価~3価の遷移金属を表す。
<2> 式(MC1)で表される金属錯体を2種以上含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素が、式(SQ2)で表される近赤外線吸収色素である、<1>または<2>に記載の樹脂組成物;
【化3】
式中、L
41~L
44はそれぞれ独立に、アルキレン基、アルキニレン基、アリーレン基、複素環基、又は、これらを2以上結合した二価の基を表し、
Z
41およびZ
42はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-C(=O)-、-S-、-N(R
N1)-、-S(=O)-、又は、-S(=O)
2-を表し、
A
41およびA
42は、それぞれ独立して酸素原子または-N(R
N2)-を表し、
R
N1およびR
N2は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、
Rs
141およびRs
142は、それぞれ独立して置換基を表し、
ns41およびns42はそれぞれ独立して0~5の整数を表し、
ns41が2以上の場合は、複数のRs
141は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
141のうち2個のRs
141同士が結合して環を形成してもよく、
ns42が2以上の場合は、複数のRs
142は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
142のうち2個のRs
142同士が結合して環を形成してもよい;
ただし、L
41~L
44がアルキレン基で、Z
41およびZ
42が単結合で、A
41およびA
42が-N(R
N2)-の場合、ns41およびns42の少なくとも一方は1~5の整数である。
<4> 式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素が、式(SQ3)で表される近赤外線吸収色素である、<1>または<2>に記載の樹脂組成物;
【化4】
式中、Q
1、Q
4、Q
5、Q
8、Q
11、Q
14、Q
15およびQ
18は、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す;
Rs
1~Rs
5、Rs
11~Rs
15は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、スルホ基、-SO
3M
1又はハロゲン原子を表し、M
1は無機又は有機のカチオンを表し、Rs
2とRs
3、Rs
12とRs
13は互いに結合して環を形成してもよい;
Rs
21~Rs
28、Rs
31~Rs
38は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、-NR
X1R
X2、スルホ基、-SO
3M
2、-SO
2NR
X1R
X2、-COOR
X3、-CONR
X1R
X2、ニトロ基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、M
2は無機又は有機のカチオンを表し、R
X1~R
X3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基又は複素環基を表し、R
X1とR
X2は互いに結合して環を形成してもよく、Rs
21~Rs
28、Rs
31~Rs
38のうち、隣接する基同士は互いに結合して環を形成してもよい;
Q
1が窒素原子の場合、Rs
21は存在せず、Q
4が窒素原子の場合、Rs
24は存在せず、Q
5が窒素原子の場合、Rs
25は存在せず、Q
8が窒素原子の場合、Rs
28は存在せず、Q
11が窒素原子の場合、Rs
31は存在せず、Q
14が窒素原子の場合、Rs
34は存在せず、Q
15が窒素原子の場合、Rs
35は存在せず、Q
18が窒素原子の場合、Rs
38は存在しない。
<5> 上記樹脂は、塩基性基を有する樹脂を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6> 上記樹脂は、アルカリ可溶性樹脂を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7> 更に界面活性剤を含み、界面活性剤の含有量が樹脂組成物の全固形分中0.001~0.2質量%である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8> 更に重合性化合物および光重合開始剤を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9> 更に近赤外線を透過させて可視光を遮光する色材を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10> <1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を用いて得られる膜。
<11> <10>に記載の膜を有する近赤外線カットフィルタ。
<12> <10>に記載の膜を有する近赤外線透過フィルタ。
<13> <10>に記載の膜を有する固体撮像素子。
<14> <10>に記載の膜を有する画像表示装置。
<15> <10>に記載の膜を有する赤外線センサ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、近赤外領域の分光特性に優れた膜を形成できる樹脂組成物、膜、近赤外線カットフィルタ、近赤外線透過フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】赤外線センサの一実施形態を示す概略図である。
【
図2】ストリエーションの評価の際に選択したシリコンウエハ上の段差の位置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定でのポリスチレン換算値として定義される。
本明細書において、化学式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、近赤外線とは、波長700~2500nmの光(電磁波)をいう。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において、顔料とは、溶剤に対して溶解しにくい化合物を意味する。例えば、顔料は、23℃の水100gに対する溶解度および23℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに対する溶解度がいずれも0.1g未満であることが好ましく、0.01g以下であることがより好ましい。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0013】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素と、式(MC1)で表される金属錯体と、樹脂と、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の樹脂組成物を用いることで、近赤外領域の分光特性に優れた膜を形成することができる。このような効果が得られる詳細な理由は不明であるが、次によるものであると推測される。(SQ1)で表される近赤外線吸収色素を含む樹脂組成物を用いて得られる膜について、本発明者が鋭意検討をすすめたところ、この膜は近赤外領域の吸収スペクトルについて、吸収帯の分裂が生じやすく、近赤外線の遮蔽性、特に、より長波の近赤外線の遮蔽性が低下しやすいことが分かった。詳細な理由は不明であるが、(SQ1)で表される近赤外線吸収色素は四角酸に嵩高い置換基が結合した構造を有しているため、膜中で分子が斜めに互い違いならんだ会合状態を形成しやすいと推測される。このため、(SQ1)で表される近赤外線吸収色素は、膜中でH会合とJ会合とそれぞれ形成しやすく、その結果、近赤外領域の吸収スペクトルについて、吸収帯の分裂が生じてより長波長側の光の吸収が低下し、近赤外線の遮蔽性、特に、より長波の近赤外線の遮蔽性が低下しやすくなったものと推測される。本発明の樹脂組成物は、式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素の他に、更に、式(MC1)で表される金属錯体を含むので、製膜時に式(MC1)で表される金属錯体によって式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素同士のJ会合を形成しやすくなり、その結果、より長波長側の光の吸収の低下を抑制できると推測される。このため、本発明の樹脂組成物を用いることで、近赤外領域の分光特性に優れた膜を形成することができたと推測される。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、式(MC1)で表される金属錯体を2種以上含んでいることが好ましい。式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素を含む樹脂組成物中に式(MC1)で表される金属錯体を含有させることで、樹脂組成物の保存中に式(MC1)で表される金属錯体由来の凝集物などが析出することがあり、樹脂組成物の保存安定性が低下することがあるが、式(MC1)で表される金属錯体を2種以上配合することで、式(MC1)で表される金属錯体の結晶性などを低下させて樹脂組成物の保存中における式(MC1)で表される金属錯体由来の凝集物の析出などを抑制でき、樹脂組成物の保存安定性を向上できる。
【0016】
本発明の樹脂組成物は、更に界面活性剤を含み、界面活性剤の含有量が樹脂組成物の全固形分中0.001~0.2質量%であることが好ましい。この態様によれば、樹脂組成物の塗布性をより向上でき、樹脂組成物を凹凸などの段差を有する面に塗布した場合であっても、ストリエーションといわれる放射状のスジの発生を抑制できる。更には、樹脂組成物の保存安定性も向上できる。特に、式(MC1)で表される金属錯体を2種以上配合した場合において、ストリエーションが発生しやすい傾向にあったが、界面活性剤を上記の割合で配合することで、ストリエーションの発生を効果的に抑制することができる。したがって、樹脂組成物が式(MC1)で表される金属錯体を2種以上含有する場合において特に顕著な効果が得られる。
【0017】
<<式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素>>
本発明の樹脂組成物は、式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素を含む。式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素は顔料であることが好ましい。
【化5】
式中、Rs
119およびRs
120はそれぞれ独立して置換基を表し、
A
1およびA
2は、それぞれ独立して、酸素原子または-N(Rs
125)-を表し、
Rs
121~Rs
125はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、
E
1およびE
2はそれぞれ独立に炭素原子、ホウ素原子または-C(=O)-を表し、
E
1が炭素原子の場合にはns32は2であり、ホウ素原子の場合にはns32は1であり、-C(=O)-の場合にはns32は0であり、
E
2が炭素原子の場合にはns33は2であり、ホウ素原子の場合にはns33は1であり、-C(=O)-の場合にはns33は0であり、
ns30およびns31はそれぞれ独立に0~5の整数を表し、
ns30が2以上の場合は、複数のRs
119は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
119のうち2個のRs
119同士が結合して環を形成してもよく、
ns31が2以上の場合は、複数のRs
120は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
120のうち2個のRs
120同士が結合して環を形成してもよく、
ns32が2の場合は、2個のRs
121は同一であっても異なっていてもよく、2個のRs
121同士が結合して環を形成してもよく、
ns33が2の場合は、2個のRs
122は同一であっても異なっていてもよく、2個のRs
122同士が結合して環を形成してもよく、
Ar
100はアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し、
ns100は0~2の整数を表す。
【0018】
Rs119およびRs120が表す置換基としては、置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられ、ハロゲン原子、アルキル基、スルホ基および-SO3Mが好ましい。Mは無機又は有機のカチオンを表す。Mが表す無機又は有機のカチオンとしては、公知のものが制限なく採用できる。例えば、アルカリ金属イオン(Li+、Na+、K+など)、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましく、1~5がより一層好ましく、1~3が特に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0019】
A1およびA2は、それぞれ独立して、酸素原子または-N(Rs125)-を表し、-N(Rs125)-であることが好ましい。
【0020】
Rs121~Rs125が表す置換基としては、後述する置換基Tで説明する基が挙げられる。Rs123~Rs125は、水素原子、アルキル基、又は、アリール基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。また、Rs121~Rs125はそれぞれ独立して置換基であることが好ましい。
【0021】
E1およびE2はそれぞれ独立に炭素原子、ホウ素原子または-C(=O)-を表し、炭素原子を表すことが好ましい。また、E1が炭素原子で、かつ、2個のRs121同士が結合して環を形成しており、E2が炭素原子で、かつ、2個のRs122同士が結合して環を形成していることがより好ましい。Rs121同士が結合して形成される環、および、Rs122同士が結合して形成される環としては、炭化水素環であってもよく、複素環であってもよい。また、炭化水素環および複素環は、芳香族環であってもよく、非芳香族環であってもよい。また、炭化水素環および複素環は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。Rs121同士が結合して形成される環、および、Rs122同士が結合して形成される環としては、縮合環であることが好ましく、3環以上の縮合環であることがより好ましい。また、Rs121同士が結合して形成される環、および、Rs122同士が結合して形成される環は、さらに置換基を有していてもよい。置換基としては、後述する置換基Tで説明する基が挙げられる。
【0022】
ns30およびns31はそれぞれ独立に0~5の整数を表し、0~4が好ましく、0~3がより好ましく、0~2が更に好ましく、0または1がより一層好ましい。ns30が2以上の場合は、複数のRs119は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs119のうち2個のRs119同士が結合して環を形成してもよく、ns31が2以上の場合は、複数のRs120は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs120のうち2個のRs120同士が結合して環を形成してもよい。Rs119同士が結合して形成される環、および、Rs120同士が結合して形成される環は、炭化水素環であってもよく、複素環であってもよい。また、炭化水素環および複素環は、芳香族環であってもよく、非芳香族環であってもよい。また、炭化水素環および複素環は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。Rs119同士が結合して形成される環、および、Rs120同士が結合して形成される環は、5員環若しくは6員環の炭化水素環または複素環であることが好ましく、5員環若しくは6員環の炭化水素環であることがより好ましい。
【0023】
Ar
100はアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表す。アリーレン基およびヘテロアリーレン基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。アリーレン基およびヘテロアリーレン基としては、下記式(Ar-1)~(Ar-7)のいずれかで表される基であることが好ましい。
【化6】
式中、Xa
1~Xa
8はそれぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子またはNRx
aを表し、Rx
aは水素原子または置換基を表し、*は結合手を表す。Rx
aが表す置換基としては、後述する置換基Tで説明する基が挙げられる。
【0024】
ns100は0~2の整数を表し、0または1が好ましく、0がより好ましい。
【0025】
式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素は、式(SQ2)で表される近赤外線吸収色素であることが好ましい。
【化7】
式中、L
41~L
44はそれぞれ独立に、アルキレン基、アルキニレン基、アリーレン基、複素環基、又は、これらを2以上結合した二価の基を表し、
Z
41およびZ
42はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-C(=O)-、-S-、-N(R
N1)-、-S(=O)-、又は、-S(=O)
2-を表し、
A
41およびA
42は、それぞれ独立して酸素原子または-N(R
N2)-を表し、
R
N1およびR
N2は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、
Rs
141およびRs
142は、それぞれ独立して置換基を表し、
ns41およびns42はそれぞれ独立して0~5の整数を表し、
ns41が2以上の場合は、複数のRs
141は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
141のうち2個のRs
141同士が結合して環を形成してもよく、
ns42が2以上の場合は、複数のRs
142は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
142のうち2個のRs
142同士が結合して環を形成してもよい;
ただし、L
41~L
44がアルキレン基で、Z
41およびZ
42が単結合で、A
41およびA
42が-N(R
N2)-の場合、ns41およびns42の少なくとも一方は1~5の整数である。
【0026】
L41~L44はそれぞれ独立に、アルキレン基、アルキニレン基、アリーレン基、複素環基、又は、これらを2以上結合した二価の基を表す。アルキレン基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましく、1~5がより一層好ましく、1~3が特に好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。アルキレン基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。アルキニレン基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がより好ましく、2~8が特に好ましい。アルキニレン基は直鎖、分岐のいずれでもよい。アルキニレン基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。アリーレン基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。アリーレン基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。複素環基は、単環の複素環基または縮合数が2~8の縮合環の複素環基が好ましく、単環の複素環基または縮合数が2~4の縮合環の複素環基がより好ましく、単環の複素環基が更に好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましく、窒素原子がより好ましい。複素環基は、5員環または6員環が好ましい。複素環基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。複素環基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0027】
L41~L44はそれぞれ独立に、アリーレン基または複素環基であることが好ましく、アリーレン基であることがより好ましい。
【0028】
Z41およびZ42はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-C(=O)-、-S-、-N(RN1)-、-S(=O)-、又は、-S(=O)2-を表し、単結合であることが好ましい。
【0029】
A41およびA42は、それぞれ独立して酸素原子または-N(RN2)-を表し、-N(RN2)-であることが好ましい。RN2は水素原子であることが好ましい。
【0030】
RN1およびRN2が表すアルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましく、1~5がより一層好ましく、1~3が特に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。RN1およびRN2が表すアリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。アリール基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0031】
Rs141およびRs142が表す置換基としては、置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられ、ハロゲン原子、アルキル基、スルホ基および-SO3Mが好ましい。Mは無機又は有機のカチオンを表す。Mが表す無機又は有機のカチオンとしては、公知のものが制限なく採用できる。例えば、アルカリ金属イオン(Li+、Na+、K+など)、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましく、1~5がより一層好ましく、1~3が特に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0032】
ns41およびns42はそれぞれ独立して0~5の整数を表し、0~4が好ましく、0~3がより好ましく、0~2が更に好ましく、0または1がより一層好ましい。ns41が2以上の場合は、複数のRs141は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs141のうち2個のRs141同士が結合して環を形成してもよく、ns42が2以上の場合は、複数のRs142は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs142のうち2個のRs142同士が結合して環を形成してもよい。Rs141同士が結合して形成される環、および、Rs142同士が結合して形成される環は、炭化水素環であってもよく、複素環であってもよい。また、炭化水素環および複素環は、芳香族環であってもよく、非芳香族環であってもよい。また、炭化水素環および複素環は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。Rs141同士が結合して形成される環、および、Rs142同士が結合して形成される環は、5員環若しくは6員環の炭化水素環または複素環であることが好ましく、5員環若しくは6員環の炭化水素環であることがより好ましい。
【0033】
式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素は、式(SQ3)で表される近赤外線吸収色素であることが好ましい。
【化8】
式中、Q
1、Q
4、Q
5、Q
8、Q
11、Q
14、Q
15およびQ
18は、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す;
Rs
1~Rs
5、Rs
11~Rs
15は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、スルホ基、-SO
3M
1又はハロゲン原子を表し、M
1は無機又は有機のカチオンを表し、Rs
2とRs
3、Rs
12とRs
13は互いに結合して環を形成してもよい;
Rs
21~Rs
28、Rs
31~Rs
38は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、-NR
X1R
X2、スルホ基、-SO
3M
2、-SO
2NR
X1R
X2、-COOR
X3、-CONR
X1R
X2、ニトロ基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、M
2は無機又は有機のカチオンを表し、R
X1~R
X3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基又は複素環基を表し、R
X1とR
X2は互いに結合して環を形成してもよく、Rs
21~Rs
28、Rs
31~Rs
38のうち、隣接する基同士は互いに結合して環を形成してもよい;
Q
1が窒素原子の場合、Rs
21は存在せず、Q
4が窒素原子の場合、Rs
24は存在せず、Q
5が窒素原子の場合、Rs
25は存在せず、Q
8が窒素原子の場合、Rs
28は存在せず、Q
11が窒素原子の場合、Rs
31は存在せず、Q
14が窒素原子の場合、Rs
34は存在せず、Q
15が窒素原子の場合、Rs
35は存在せず、Q
18が窒素原子の場合、Rs
38は存在しない。
【0034】
Q1、Q4、Q5、Q8、Q11、Q14、Q15およびQ18は、炭素原子であることが、耐熱性や耐光性などの各種耐性の観点で好ましい。
【0035】
Rs1~Rs5、Rs11~Rs15が表すアルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましく、1~5がより一層好ましく、1~3が特に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0036】
Rs1~Rs5、Rs11~Rs15が表す-SO3M1において、M1の無機又は有機のカチオンとしては、公知のものが制限なく採用できる。例えば、アルカリ金属イオン(Li+、Na+、K+など)、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0037】
Rs1~Rs5、Rs11~Rs15が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0038】
Rs2とRs3、Rs12とRs13は互いに結合して環を形成してもよい。形成される環は、炭化水素環であってもよく、複素環であってもよい。また、炭化水素環および複素環は、芳香族環であってもよく、非芳香族環であってもよい。また、炭化水素環および複素環は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。形成される環は、5員環若しくは6員環の炭化水素環または複素環であることが好ましく、5員環若しくは6員環の炭化水素環であることがより好ましい。
【0039】
Rs1~Rs5は、耐性付与の観点から、Rs1~Rs5が水素原子であるか、または、Rs1~Rs5のうち4つが水素原子で、1つがスルホ基、-SO3M1もしくはハロゲン原子であることが好ましい。これらの中でも、Rs1~Rs5が水素原子であるか、または、Rs1~Rs5のうち4つが水素原子であり、1つがスルホ基もしくはハロゲン原子であることが特に好ましい。また、Rs11~Rs15は、耐性付与の観点から、Rs11~Rs15が水素原子であるか、または、Rs11~Rs15のうち4つが水素原子で、1つがスルホ基、-SO3M1もしくはハロゲン原子であることが好ましい。これらの中でも、Rs11~Rs15が水素原子であるか、または、Rs11~Rs15のうち4つが水素原子であり、1つがスルホ基もしくはハロゲン原子であることが特に好ましい。
【0040】
Rs21~Rs28、Rs31~Rs38が表すアルキル基およびアルコキシ基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましく、1~5がより一層好ましく、1~3が特に好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0041】
Rs21~Rs28、Rs31~Rs38が表すアルケニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がより好ましく、2~8が特に好ましい。アルケニル基は直鎖、分岐のいずれでもよく、直鎖が好ましい。アルケニル基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0042】
Rs21~Rs28、Rs31~Rs38が表すアリール基およびアリールオキシ基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。アリール基およびアリールオキシ基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0043】
Rs21~Rs28、Rs31~Rs38が表すアラルキル基の炭素数は、7~40が好ましく、7~30がより好ましく、7~25が更に好ましい。
【0044】
Rs21~Rs28、Rs31~Rs38が表す-SO3M2において、M2の無機又は有機のカチオンとしては、公知のものが制限なく採用できる。例えば、アルカリ金属イオン(Li+、Na+、K+など)、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0045】
Rs21~Rs28、Rs31~Rs38が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0046】
Rs21~Rs28、Rs31~Rs38が表す、-NRX1RX2、-SO2NRX1RX2、-COORX3及び-CONRX1RX2において、RX1~RX3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基又は複素環基を表す。
【0047】
RX1~RX3が表すアルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましく、1~5がより一層好ましく、1~3が特に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0048】
RX1~RX3が表すアリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。アリール基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0049】
RX1~RX3が表す複素環基は、単環の複素環基または縮合数が2~8の縮合環の複素環基が好ましく、単環の複素環基または縮合数が2~4の縮合環の複素環基がより好ましく、単環の複素環基が更に好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましく、窒素原子がより好ましい。複素環基は、5員環または6員環が好ましい。複素環基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。複素環基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。複素環基の具体例としては、ピリジニル基などが挙げられる。ピリジニル基は置換基を有していてもよい。
【0050】
RX1~RX3が表すアシル基としては、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基が挙げられる。アルキルカルボニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~15がより好ましく、2~8が更に好ましい。アリールカルボニル基の炭素数は、7~30が好ましく、7~20がより好ましく、7~12が更に好ましい。アルキルカルボニル基のアルキル部位、および、アリールカルボニル基のアリール部位は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0051】
-NRX1RX2、-SO2NRX1RX2及び-CONRX1RX2において、RX1とRX2は互いに結合して環を形成してもよい。形成される環は、5員環または6員環であることが好ましい。
【0052】
Rs21~Rs28、Rs31~Rs38のうち、隣接する基同士は互いに結合して環を形成してもよい。形成される環は、炭化水素環であってもよく、複素環であってもよい。また、炭化水素環および複素環は、芳香族環であってもよく、非芳香族環であってもよい。また、炭化水素環および複素環は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。形成される環は、5員環若しくは6員環の炭化水素環または複素環であることが好ましく、5員環若しくは6員環の炭化水素環であることがより好ましい。
【0053】
Rs21~Rs28、Rs31~Rs38は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、-NRX1RX2、スルホ基、-SO3M2、-COORX3、ニトロ基又はハロゲン原子であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0054】
(置換基T)
置換基Tとしては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、-ORt1、-CORt1、-COORt1、-OCORt1、-NRt1Rt2、-NHCORt1、-CONRt1Rt2、-NHCONRt1Rt2、-NHCOORt1、-SRt1、-SO2Rt1、-SO2ORt1、-NHSO2Rt1、-SO2NRt1Rt2および-SO3Mt1が挙げられる。Rt1およびRt2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rt1とRt2が結合して環を形成してもよい。Mt1は無機又は有機のカチオンを表す。
【0055】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐および環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
アルケニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がより好ましく、2~8が特に好ましい。アルケニル基は直鎖および分岐のいずれでもよい。
アルキニル基の炭素数は、2~40が好ましく、2~30がより好ましく、2~25が特に好ましい。アルキニル基は直鎖および分岐のいずれでもよい。
アリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。
複素環基は、単環の複素環基または縮合数が2~8の縮合環の複素環基が好ましく、単環の複素環基または縮合数が2~4の縮合環の複素環基がより好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。複素環基は、5員環または6員環が好ましい。複素環基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基および複素環基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した置換基が挙げられる。
Mt1が表す無機又は有機のカチオンとしては、アルカリ金属イオン(Li+、Na+、K+など)、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0056】
なお、式(SQ1)においてカチオンは、非局在化して存在している。例えば、下記構造の化合物において、カチオンは以下のように非局在化して存在している。
【化9】
【0057】
式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素は、波長700~1300nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることが好ましく、波長700~1000nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることがより好ましい。
【0058】
式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素の具体例としては、下記構造の化合物、特開2019-011455号公報の段落番号0224~0341に記載の化合物、国際公開第2018/230486号の段落番号0221~0377に記載の化合物が挙げられる。
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【0059】
式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素の含有量は、本発明の樹脂組成物の全固形分中1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。また、式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素の含有量の上限は、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。樹脂組成物は式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0060】
<<式(MC1)で表される金属錯体>>
本発明の樹脂組成物は、式(MC1)で表される金属錯体を含有する。
【化21】
式(MC1)中、環Z
mc1および環Z
mc2は、それぞれ独立に含窒素複素環を表し、
R
mc1およびR
mc2はそれぞれ独立に単結合または-CR
Y1R
Y2-を表し、R
Y1およびR
Y2はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、
M
mc1は1価~3価の遷移金属を表す。
【0061】
環Zmc1および環Zmc2が表す含窒素複素環は、5員環または6員環であることが好ましい。また、環Zmc1および環Zmc2が表す含窒素複素環は、芳香族環および非芳香族環のいずれでもよいが、芳香族環であることが好ましい。環Zmc1および環Zmc2は、それぞれ独立して5員環または6員環の含窒素芳香族複素環であることが特に好ましい。環Zmc1および環Zmc2が表す含窒素複素環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~15(好ましくは炭素数1~8)のアルキル基、炭素数6~21のアリール基、炭素数7~21のアラルキル基、炭素数1~15(好ましくは炭素数1~8)のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、-COOR100、-OCOR100、-NR100COR101、-CONR100R101、-NR100CONR101R102、-SO2R100、-NR100SO2R101および-SO2NR101SO2R102などが挙げられる。R100~R102はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~6のアルキル基である。上記のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、R100~R102が表すアルキル基は、水素原子の一部がハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)で置換されていてもよい。
【0062】
Rmc1およびRmc2はそれぞれ独立に単結合または-CRY1RY2-を表し、RY1およびRY2はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。RY1およびRY2が表す置換基としては、上述した環Zmc1および環Zmc2が有してもよい置換基の例として説明したものが挙げられ、アルキル基およびハロゲン原子が好ましい。RY1およびRY2は水素原子であることが好ましい。Rmc1およびRmc2は単結合であることが好ましい。
【0063】
Mmc1は1価~3価の遷移金属を表す。Mmc1が表す遷移金属としては、Co、Ni、Cu、Rh、Ag、Ir、PtおよびAuが挙げられ、Cu、NiおよびCoが好ましく、NiまたはCuが好ましく、Cuがより好ましい。
【0064】
式(MC1)で表される金属錯体は、波長430~480nmの光におけるモル吸光係数(ε)が100L/(mol・cm)以下であることが好ましく、50L/(mol・cm)以下であることがより好ましく、20L/(mol・cm)以下であることが更に好ましく、10L/(mol・cm)以下であることが特に好ましい。
【0065】
式(MC1)で表される金属錯体が有する2個の配位子は同一でもよく異なってもよい。式(MC1)で表される金属錯体は、例えば、M
mc1の塩と、式(L1)で表される化合物と、式(L2)で表される化合物とを溶剤中に添加して溶解させ、当量の塩基を添加することにより製造できる。なお、式(MC1)で表される金属錯体において2個の配位子が同じ場合は、式(L1)で表される化合物と、式(L2)で表される化合物は同じ化合物である。
【化22】
式(L1)において、環Z
mc1は含窒素複素環を表し、R
mc1は単結合または-CR
Y1R
Y2-を表し、R
Y1およびR
Y2はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。式(L2)において、環Z
mc2は含窒素複素環を表し、R
mc2は単結合または-CR
Y1R
Y2-を表し、R
Y1およびR
Y2はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
【0066】
式(MC1)で表される金属錯体は、下記式(MC2)で表される構造であることが好ましい。
【化23】
【0067】
式(MC2)中、Rmc11~Rmc18はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Mmc1は1価~3価の遷移金属を表す。
【0068】
式(MC2)のMmc1は、式(MC1)のMmc1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0069】
Rmc11~Rmc18が表す置換基としては、上述した環Zmc1および環Zmc2が有してもよい置換基の例として説明したものが挙げられる。
【0070】
式(MC2)において、Rmc11~Rmc18の少なくとも一つは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~15(好ましくは炭素数1~8)のアルキル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~15(好ましくは炭素数1~8)のアルコキシ基が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。Rmc1~Rmc18の少なくとも一つは、CF3基またはメトキシ基であることが好ましく、CF3基が特に好ましい。
【0071】
また、Rmc11~Rmc14の少なくとも一つと、Rmc15~Rmc18の少なくとも一つとがそれぞれ上記の置換基であることが好ましく、Rmc14と、Rmc18がそれぞれ上記の置換基で、残りが水素原子であることが更に好ましい。
【0072】
式(MC1)で表される金属錯体の具体例としては、下記構造の化合物、特開2018-028605号公報の段落番号0095、0096に記載された化合物、後述する実施例に記載の化合物などが挙げられる。
【化24】
【0073】
本発明の樹脂組成物は、式(MC1)で表される金属錯体を2種以上含んでいることが好ましい。この態様によれば、樹脂組成物の保存安定性を向上できる。
【0074】
式(MC1)で表される金属錯体の含有量は、式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素の100質量部に対して10~150質量部であることが好ましい。下限は、15質量部以上であることが好ましい。上限は100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることが更に好ましい。樹脂組成物が式(MC1)で表される金属錯体を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0075】
<<樹脂>>
本発明の樹脂組成物は、樹脂を含有する。樹脂は、例えば、顔料などの粒子を樹脂組成物中で分散させる用途やバインダーの用途で配合される。なお、主に顔料などの粒子を分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で樹脂を使用することもできる。
【0076】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2000~2000000が好ましい。上限は、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましい。下限は、3000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。
【0077】
樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。環状オレフィン樹脂としては、耐熱性向上の観点からノルボルネン樹脂が好ましい。ノルボルネン樹脂の市販品としては、例えば、JSR(株)製のARTONシリーズ(例えば、ARTON F4520)などが挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えばフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。また、エポキシ樹脂は、マープルーフG-0150M、G-0105SA、G-0130SP、G-0250SP、G-1005S、G-1005SA、G-1010S、G-2050M、G-01100、G-01758(日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)などを用いることもできる。また、樹脂は、国際公開第2016/088645号の実施例に記載の樹脂を用いることもできる。また、樹脂が側鎖にエチレン性不飽和結合含有基、特に(メタ)アクリロイル基を有する場合、主鎖とエチレン性不飽和結合含有基とが脂環構造を有する2価の連結基を介して結合していることも好ましい。
【0078】
本発明の樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。本発明の樹脂組成物がアルカリ可溶性樹脂を含むことにより、樹脂組成物の現像性が向上し、本発明の樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィ法でパターン形成した際においては、現像残渣の発生などを効果的に抑制できる。アルカリ可溶性樹脂としては、酸基を有する樹脂が挙げられる。酸基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。アルカリ可溶性樹脂が有する酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。なお、アルカリ可溶性樹脂は、分散剤として用いることもできる。
【0079】
アルカリ可溶性樹脂は、酸基を側鎖に有する繰り返し単位を含むことが好ましく、酸基を側鎖に有する繰り返し単位を樹脂の全繰り返し単位中5~70モル%含むことがより好ましい。酸基を側鎖に有する繰り返し単位の含有量の上限は、50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。酸基を側鎖に有する繰り返し単位の含有量の下限は、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。
【0080】
アルカリ可溶性樹脂は、重合性基を有するアルカリ可溶性樹脂であることも好ましい。重合性基としては、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。重合性基を有するアルカリ可溶性樹脂は、側鎖に重合性基を有する繰り返し単位と、側鎖に酸基を有する繰り返し単位とを含む樹脂であることが好ましい。
【0081】
アルカリ可溶性樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含むことも好ましい。
【0082】
【0083】
式(ED1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【化26】
式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1~30の有機基を表す。式(ED2)の詳細については、特開2010-168539号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0084】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013-029760号公報の段落番号0317の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0085】
アルカリ可溶性樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する繰り返し単位を含むことも好ましい。
【化27】
式(X)中、R
1は、水素原子またはメチル基を表し、R
2は炭素数2~10のアルキレン基を表し、R
3は、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。nは1~15の整数を表す。
【0086】
アルカリ可溶性樹脂については、特開2012-208494号公報の段落番号0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685~0700)の記載、特開2012-198408号公報の段落番号0076~0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0087】
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、30~500mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、400mgKOH/g以下が好ましく、300mgKOH/g以下がより好ましく、200mgKOH/g以下が更に好ましい。
【0088】
アルカリ可溶性樹脂の具体例としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表す。
【化28】
【0089】
本発明の樹脂組成物は、塩基性基を有する樹脂を含むことも好ましい。塩基性基としては、アミノ基、アンモニウム塩基などが挙げられる。塩基性基を有する樹脂は塩基性基の他に酸基を更に有していてもよい。塩基性基を有する樹脂は式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素の分散剤として好ましく用いられる。なお、塩基性基を有する樹脂が更に酸基を有する場合、このような樹脂はアルカリ可溶性樹脂でもある。
【0090】
塩基性基を有する樹脂としては、3級アミノ基と4級アンモニウム塩基とを有する樹脂が挙げられる。3級アミノ基と4級アンモニウム塩基とを有する樹脂は式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素の分散剤として好ましく用いられる。3級アミノ基と4級アンモニウム塩基とを有する樹脂は、3級アミノ基を有する繰り返し単位と4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位とを有する樹脂であることが好ましい。また、3級アミノ基と4級アンモニウム塩基とを有する樹脂はさらに酸基を有する繰り返し単位を有していてもよい。3級アミノ基と4級アンモニウム塩基とを有する樹脂は、ブロック構造を有していることも好ましい。3級アミノ基と4級アンモニウム塩基とを有する樹脂は、そのアミン価が、10~250mgKOH/g、且つ4級アンモニウム塩価が10~90mgKOH/gであるものが好ましく、アミン価が50~200mgKOH/g、且つ4級アンモニウム塩価が10~50mgKOH/gであるものがより好ましい。3級アミノ基と4級アンモニウム塩基とを有する樹脂の重量平均分子量(Mw)は3000~300000であることが好ましく、5000~30000であることがより好ましい。3級アミノ基と4級アンモニウム塩基を有する樹脂は、3級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体、4級アンモニウム塩基を有するエチレン性不飽和単量体、及び必要に応じてその他エチレン性不飽和単量体を共重合して製造できる。3級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体、4級アンモニウム塩基を有するエチレン性不飽和単量体については、国際公開第2018/230486号の段落番号0150~0170に記載されたものが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0091】
また、塩基性基を有する樹脂としては、主鎖に窒素原子を含む樹脂であることも好ましい。この樹脂も式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素の分散剤として好ましく用いられる。主鎖に窒素原子を含む樹脂(以下、オリゴイミン系樹脂ともいう)は、ポリ低級アルキレンイミン系繰り返し単位、ポリアリルアミン系繰り返し単位、ポリジアリルアミン系繰り返し単位、メタキシレンジアミン-エピクロロヒドリン重縮合物系繰り返し単位、及びポリビニルアミン系繰り返し単位から選択される少なくとも1種の窒素原子を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。また、オリゴイミン系樹脂としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造Xを有する繰り返し単位と、原子数40~10000のオリゴマー鎖又はポリマー鎖Yを含む側鎖を有する繰り返し単位とを有する樹脂であることが好ましい。オリゴイミン系樹脂はさらに酸基を有する繰り返し単位を有していてもよい。オリゴイミン系樹脂については、特開2012-255128号公報の段落番号0102~0166の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0092】
本発明の樹脂組成物は、分散剤としての樹脂を含むこともでき、分散剤としての樹脂を含むことが好ましい。分散剤は、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。分散剤としては、塩基性基を有する樹脂であることが好ましく、塩基性分散剤であることがより好ましい。
【0093】
分散剤として用いる樹脂としては、上述した、3級アミノ基と4級アンモニウム塩基とを有する樹脂、オリゴイミン系樹脂などが挙げられる。また、分散剤として用いる樹脂は、グラフト樹脂であることも好ましい。グラフト樹脂としては、グラフト鎖を有する繰り返し単位を有する樹脂が挙げられる。グラフト樹脂はさらに酸基を有する繰り返し単位を有していてもよい。グラフト樹脂の詳細は、特開2012-255128号公報の段落番号0025~0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、分散剤として用いる樹脂は、酸基を有する繰り返し単位を含む樹脂であることも好ましい。また、分散剤として用いる樹脂は、コア部に複数個のポリマー鎖が結合した構造の樹脂であることも好ましい。このような樹脂としては、例えばデンドリマー(星型ポリマーを含む)が挙げられる。また、デンドリマーの具体例としては、特開2013-043962号公報の段落番号0196~0209に記載された高分子化合物C-1~C-31などが挙げられる。また、上述したアルカリ可溶性樹脂を分散剤として用いることもできる。
【0094】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、Disperbyk-111(BYKChemie社製)、ソルスパース76500(日本ルーブリゾール(株)製)などが挙げられる。また、特開2014-130338号公報の段落番号0041~0130に記載された分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0095】
樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分中1~50質量%が好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。上限は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0096】
また、本発明の樹脂組成物が塩基性基を有する樹脂を含有する場合、塩基性基を有する樹脂の含有量は、式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素100質量部に対して、1~100質量部が好ましい。上限は、80質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましい。下限は、2.5質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、樹脂組成物に含まれる樹脂中における塩基性基を有する樹脂の含有量は、10~70質量%であることが好ましく、20~65質量%であることがより好ましく、25~60質量%であることが更に好ましい。
【0097】
また、本発明の樹脂組成物がアルカリ可溶性樹脂を含有する場合、アルカリ可溶性樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分中1~50質量%が好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。上限は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。また、樹脂組成物に含まれる樹脂中におけるアルカリ可溶性樹脂の含有量は、1~100質量%であることが好ましく、3~100質量%であることがより好ましく、5~100質量%であることが更に好ましい。
【0098】
また、本発明の樹脂組成物が分散剤としての樹脂を含有する場合、分散剤としての樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分中0.1~40質量%が好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。また、分散剤としての樹脂の含有量は、式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素100質量部に対して、1~100質量部が好ましい。上限は、80質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましい。下限は、2.5質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。
【0099】
本発明の樹脂組成物は樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0100】
<<他の近赤外線吸収剤>>
本発明の樹脂組成物は、式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素以外の他の近赤外線吸収剤を含有することができる。他の近赤外線吸収剤としては、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、メロシアニン化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物、イミニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物、ジベンゾフラノン化合物、ジチオレン金属錯体、金属酸化物、金属ホウ化物等が挙げられる。
【0101】
他の近赤外線吸収剤の含有量は、式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素100質量部に対して50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく30質量部以下であることが更に好ましい。また、式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素と他の近赤外線吸収剤との合計の含有量は、本発明の樹脂組成物の全固形分中1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。上記合計の含有量の上限は、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。近赤外線吸収層は他の近赤外線吸収剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0102】
また、本発明の樹脂組成物は他の近赤外線吸収剤を実質的に含有しないことも好ましい。他の近赤外線吸収剤を実質的に含有しないとは、樹脂組成物の全固形分中における他の近赤外線吸収剤の含有量が0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることが更に好ましく、他の近赤外線吸収剤を含有しないことが特に好ましい。
【0103】
<<色素誘導体>>
本発明の樹脂組成物は、色素誘導体を含有することができる。色素誘導体は、酸性色素誘導体及び塩基性色素誘導体のいずれでもよいが、式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素の分散性の観点から酸性色素誘導体が好ましい。
【0104】
酸性色素誘導体としては、色素骨格に、酸基が結合した化合物が挙げられる。酸基としては、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、ボロン酸基、スルホンイミド基、スルホンアミド基及びこれらの塩が挙げられる。塩を構成する原子または原子団としては、アルカリ金属イオン(Li+、Na+、K+など)、アルカリ土類金属イオン(Ca2+、Mg2+など)、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。酸性色素誘導体の酸基としては、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、ボロン酸基、スルホンイミド基、スルホンアミド基及びこれらの塩が好ましく、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、スルホンイミド基、スルホンアミド基及びこれらの塩がより好ましく、スルホ基、カルボキシル基、及びこれらの塩が更に好ましく、スルホ基が特に好ましい。
【0105】
塩基性色素誘導体としては、色素骨格に、塩基性基が結合した化合物が挙げられる。塩基性基としては、アミノ基、ピリジニル基およびその塩、アンモニウム基の塩、並びにフタルイミドメチル基が挙げられる。塩を構成する原子または原子団としては、水酸化物イオン、ハロゲンイオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、フェノキシドイオンなどが挙げられる。塩基性基としては、アミノ基、ピリジニル基およびその塩、アンモニウム基の塩、並びにフタルイミドメチル基が好ましく、アミノ基、フタルイミドメチル基がより好ましく、アミノ基が更に好ましい。
【0106】
色素誘導体としては、式(B1)で表される化合物であることが好ましい。また、酸性色素誘導体は式(B1)のXが酸基で表される化合物であることが好ましい。また、塩基性色素誘導体は式(B1)のXが塩基性基で表される化合物であることが好ましい。
【0107】
【化29】
式(B1)中、Pは色素骨格を表し、Lは単結合または連結基を表し、Xは酸基または塩基性を表し、mは1以上の整数を表し、nは1以上の整数を表し、mが2以上の場合は複数のLおよびXは互いに異なっていてもよく、nが2以上の場合は複数のXは互いに異なっていてもよい。
【0108】
式(B1)のPが表す色素骨格としては、スクアリリウム色素骨格、ピロロピロール色素骨格、ジケトピロロピロール色素骨格、キナクリドン色素骨格、アントラキノン色素骨格、ジアントラキノン色素骨格、ベンゾイソインドール色素骨格、チアジンインジゴ色素骨格、アゾ色素骨格、キノフタロン色素骨格、フタロシアニン色素骨格、ナフタロシアニン色素骨格、ジオキサジン色素骨格、ペリレン色素骨格、ペリノン色素骨格、ベンゾイミダゾロン色素骨格、ベンゾチアゾール色素骨格、ベンゾイミダゾール色素骨格およびベンゾオキサゾール色素骨格が挙げられ、スクアリリウム色素骨格、ピロロピロール色素骨格、ジケトピロロピロール色素骨格、フタロシアニン色素骨格、キナクリドン色素骨格、ベンゾイミダゾロン色素骨格から選ばれる少なくとも1種が好ましく、スクアリリウム色素骨格がより好ましい。
【0109】
式(B1)のLが表す連結基としては、1~100個の炭素原子、0~10個の窒素原子、0~50個の酸素原子、1~200個の水素原子、および0~20個の硫黄原子から成り立つ基が挙げられる。例えば、炭化水素基、複素環基、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO2-、-NRL-、-NRLCO-、-CONRL-、-NRLSO2-、-SO2NRL-およびこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。RLは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。炭化水素基は脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基、またはこれらの基から水素原子を1個以上除いた基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アリーレン基の炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましく、6~10がさらに好ましい。複素環基は、単環または縮合数が2~4の縮合環が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。複素環基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。炭化水素基および複素環基は置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した置換基Tで挙げた基が挙げられる。また、RLが表すアルキル基の炭素数は1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。RLが表すアルキル基はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。RLが表すアリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。RLが表すアリール基はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。
【0110】
Xは酸基または塩基性を表し、酸基を表すことが好ましい。
【0111】
色素誘導体は、波長700~1200nmの範囲に極大吸収波長を化合物であることも好ましく、波長700~1100nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることも好ましく、波長700~1000nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることも好ましい。上記波長の範囲に極大吸収波長を有する色素誘導体は、π平面の広がりが式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素と近づけやすくでき、式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素の吸着性が向上し、より優れた分散安定性が得られやすい。また、色素誘導体は、式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素に含まれるπ共役平面と同一の構造のπ共役平面を有する化合物であることも好ましい。また、顔料誘導体のπ共役平面に含まれるπ電子の数は8~100個であることが好ましい。上限は、90個以下であることが好ましく、80個以下であることがより好ましい。下限は10個以上であることが好ましく、12個以上であることがより好ましい。また、色素誘導体は、下記式(SQ-a)で表される部分構造を含むπ共役平面を有するか、または、下記式(CR-a)で表される部分構造を含むπ共役平面を有する化合物であることも好ましく、下記式(SQ-a)で表される部分構造を含むπ共役平面を有する化合物であることがより好ましい。
【化30】
上記式中、波線は結合手を表す。
【0112】
色素誘導体は、下記式(Syn1)で表される化合物および下記式(Syn2)で表わされる化合物から選ばれる少なくとも1種であることも好ましく、下記式(Syn1)で表される化合物であることがより好ましい。
【化31】
【0113】
式(Syn1)中、Rsy1およびRsy2はそれぞれ独立して有機基を表し、L1は単結合またはp1+1価の基を表し、A1は酸基または塩基性を表し、p1およびq1はそれぞれ独立して1以上の整数を表す。p1が2以上の場合、複数のA1は同一であってもよく、異なっていてもよい。q1が2以上の場合、複数のL1およびA1は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0114】
式(Syn2)中、Rsy3およびRsy4はそれぞれ独立して有機基を表し、L2は単結合またはp2+1価の基を表し、A2は酸基または塩基性を表し、p2およびq2はそれぞれ独立して1以上の整数を表す。p2が2以上の場合、複数のA2は同一であってもよく、異なっていてもよい。q2が2以上の場合、複数のL2およびA2は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0115】
式(Syn1)のRsy
1およびRsy
2が表す有機基、並びに、式(Syn2)のRsy
3およびRsy
4が表す有機基としては、アリール基、ヘテロアリール基、下記式(R1)~(R7)で表される基が挙げられる。
【化32】
【0116】
式(R1)中、R1~R3は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、As3はヘテロアリール基を表し、nr1は、0以上の整数を表し、R1とR2は、互いに結合して環を形成してもよく、R1とAs3は、互いに結合して環を形成してもよく、R2とR3は、互いに結合して環を形成してもよく、nr1が2以上の場合、複数のR2およびR3はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、*は結合手を表す。
【0117】
式(R2)中、環Z1は1つまたは複数の置換基を有していてもよい、芳香族複素環または芳香族複素環を含む縮合環を表し、環Z2は1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、環Z1および環Z2が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、*は結合手を表す。
【0118】
式(R3)中、R11~R14はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、R11~R14のうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよく、R20はアリール基またはヘテロアリール基を表し、R21は置換基を表し、X10はCOまたはSO2を表す。
【0119】
式(R4)中、R22およびR23は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、R22とR23は、互いに結合して環を形成してもよく、X20は、酸素原子、硫黄原子、NR24、セレン原子またはテルル原子を表し、R24は水素原子または置換基を表し、X20がNR24である場合、R24とR22は互いに結合して環を形成してもよく、nr2は、0~5の整数を表し、nr2が2以上の場合、複数のR22は同一であってもよく、異なっていてもよく、複数のR22のうち2個のR22同士が結合して環を形成してもよく、*は結合手を表す。
【0120】
式(R5)中、R35~R38はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、R35とR36、R36とR37、R37とR38は、互いに結合して環を形成してもよく、*は結合手を表す。
【0121】
式(R6)中、R39~R45は互いに独立して、水素原子または置換基を表し、R39とR45、R40とR41、R40とR42、R42とR43、R43とR44、R44とR45は、互いに結合して環を形成してもよく、*は結合手を表す。
式(R7)中、X21は環構造を表し、R46~R50は互いに独立して、水素原子または置換基を表し、R47とR48は、互いに結合して環を形成してもよく、*は結合手を表す。
【0122】
式(Syn1)のL1が表すp1+1価の基、および、式(Syn2)のL2が表すp2+1価の基としては、上述した式(B1)のLが表す連結基として説明した基が挙げられる。
【0123】
色素誘導体の具体例としては、例えば下記構造の化合物が挙げられる。また、以下の構造式中、Phはフェニル基である。また、色素誘導体の具体例としては、特開昭56-118462号公報、特開昭63-264674号公報、特開平01-217077号公報、特開平03-009961号公報、特開平03-026767号公報、特開平03-153780号公報、特開平03-045662号公報、特開平04-285669号公報、特開平06-145546号公報、特開平06-212088号公報、特開平06-240158号公報、特開平10-030063号公報、特開平10-195326号公報、国際公開第2011/024896号の段落番号0086~0098、国際公開第2012/102399号の段落番号0063~0094に記載の化合物も挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0124】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【0125】
色素誘導体の含有量は、式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素100質量部に対し、1~50質量部が好ましい。下限値は、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限値は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。色素誘導体の含有量が上記範囲であれば、式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素の分散性を高めて、樹脂組成物の保存安定性を向上できる。顔料誘導体は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0126】
<<有彩色着色剤>>
本発明の樹脂組成物は、有彩色着色剤を含有することができる。本発明において、有彩色着色剤とは、白色着色剤および黒色着色剤以外の着色剤を意味する。有彩色着色剤は、波長400nm以上650nm未満の範囲に吸収を有する着色剤が好ましい。
【0127】
有彩色着色剤としては、赤色着色剤、緑色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤およびオレンジ色着色剤が挙げられる。有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。顔料と染料とを併用してもよい。また、顔料は、無機顔料、有機顔料のいずれでもよい。また、顔料には、無機顔料または有機-無機顔料の一部を有機発色団で置換した材料を用いることもできる。無機顔料や有機-無機顔料を有機発色団で置換することで、色相設計をしやすくできる。
【0128】
顔料の平均一次粒子径は、1~200nmが好ましい。下限は5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。上限は、180nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。顔料の平均一次粒子径が上記範囲であれば、樹脂組成物中における顔料の分散安定性が良好である。なお、本発明において、顔料の一次粒子径は、顔料の一次粒子を透過型電子顕微鏡により観察し、得られた画像写真から求めることができる。具体的には、顔料の一次粒子の投影面積を求め、それに対応する円相当径を顔料の一次粒子径として算出する。また、本発明における平均一次粒子径は、400個の顔料の一次粒子についての一次粒子径の算術平均値とする。また、顔料の一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
【0129】
有彩色着色剤は、顔料を含むものであることが好ましい。有彩色着色剤中における顔料の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。顔料としては以下に示すものが挙げられる。
【0130】
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214,215,228,231,232(メチン系),233(キノリン系)等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279,294(キサンテン系、Organo Ultramarine、Bluish Red),295(アゾ系),296(アゾ系)等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59,62,63等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42,60(トリアリールメタン系),61(キサンテン系)等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,29,60,64,66,79,80,87(モノアゾ系),88(メチン系)等(以上、青色顔料)。
【0131】
また、緑色顔料として、1分子中のハロゲン原子数が平均10~14個であり、臭素原子数が平均8~12個であり、塩素原子数が平均2~5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/118720号に記載の化合物が挙げられる。また、緑色顔料として中国特許出願第106909027号明細書に記載の化合物、国際公開第2012/102395号に記載のリン酸エステルを配位子として有するフタロシアニン化合物などを用いることもできる。
【0132】
また、青色顔料として、リン原子を有するアルミニウムフタロシアニン化合物を用いることもできる。具体例としては、特開2012-247591号公報の段落番号0022~0030、特開2011-157478号公報の段落番号0047に記載の化合物が挙げられる。
【0133】
また、黄色顔料として、特開2008-074985号公報に記載されている顔料、特開2008-074987号公報に記載されている化合物、特開2013-061622号公報に記載されているキノフタロン化合物、特開2013-181015号公報に記載されているキノフタロン化合物、特開2014-085565号公報に記載されている着色剤、特開2016-145282号公報に記載されている顔料、特開2017-201003号公報に記載されている顔料、特開2017-197719号公報に記載されている顔料、特開2017-171912号公報の段落番号0011~0062、0137~0276に記載されている顔料、特開2017-171913号公報の段落番号0010~0062、0138~0295に記載されている顔料、特開2017-171914号公報の段落番号0011~0062、0139~0190に記載されている顔料、特開2017-171915号公報の段落番号0010~0065、0142~0222に記載されている顔料、特開2017-197640号公報に記載されているキノフタロン化合物、特開2018-040835号公報に記載されているキノフタロン系顔料、特開2018-203798号公報に記載されている顔料、特開2018-062578号公報に記載されている顔料、特開2018-155881号公報に記載されているキノフタロン系黄色顔料、特開2018-062644号公報に記載されている化合物、特許6432077号公報に記載されているキノフタロン化合物、特許6443711号公報に記載されている顔料を用いることもできる。
【0134】
また、黄色顔料として、特開2018-062644号公報に記載の化合物を用いることもできる。この化合物は顔料誘導体としても使用可能である。
【0135】
赤色顔料として、特開2017-201384号公報に記載の構造中に少なくとも1つ臭素原子が置換したジケトピロロピロール化合物、特許第6248838号の段落番号0016~0022に記載のジケトピロロピロール化合物、国際公開第2012/102399号に記載のジケトピロロピロール化合物、国際公開第2012/117965号に記載のジケトピロロピロール化合物、特開2012-229344号公報に記載のナフトールアゾ化合物などを用いることもできる。また、赤色顔料として、芳香族環に対して、酸素原子、硫黄原子または窒素原子が結合した基が導入された芳香族環基がジケトピロロピロール骨格に結合した構造を有する化合物を用いることもできる。
【0136】
本発明において、色材には染料を用いることもできる。染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。例えば、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が挙げられる。また、特開2012-158649号公報に記載のチアゾール化合物、特開2011-184493号公報に記載のアゾ化合物、特開2011-145540号公報に記載のアゾ化合物も好ましく用いることができる。また、黄色染料として、特開2013-054339号公報の段落番号0011~0034に記載のキノフタロン化合物、特開2014-026228号公報の段落番号0013~0058に記載のキノフタロン化合物などを用いることもできる。
【0137】
本発明の樹脂組成物が、有彩色着色剤を含有する場合、有彩色着色剤の含有量は、本発明の樹脂組成物の全固形分中1~50質量%が好ましい。本発明の樹脂組成物が、有彩色着色剤を2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0138】
<<近赤外線を透過させて可視光を遮光する色材>>
本発明の樹脂組成物は、近赤外線(近赤外領域の波長の光)を透過させて可視光(可視領域の波長の光)を遮光する色材(以下、可視光を遮光する色材ともいう)を含有することもできる。可視光を遮光する色材を含む樹脂組成物は、近赤外線透過フィルタ形成用の樹脂組成物として好ましく用いられる。
【0139】
本発明において、可視光を遮光する色材は、紫色から赤色の波長領域の光を吸収する色材であることが好ましい。また、本発明において、可視光を遮光する色材は、波長450~650nmの波長領域の光を遮光する色材であることが好ましい。また、可視光を遮光する色材は、波長900~1300nmの光を透過する色材であることが好ましい。本発明において、可視光を遮光する色材は、以下の(A)および(B)の少なくとも一方の要件を満たすことが好ましい。
(A):2種類以上の有彩色着色剤を含み、2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成している。
(B):有機系黒色着色剤を含む。
【0140】
有彩色着色剤としては、上述したものが挙げられる。有機系黒色着色剤としては、例えば、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物などが挙げられ、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物が好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010-534726号公報、特表2012-515233号公報、特表2012-515234号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、特開2017-226821号公報の段落番号0016~0020に記載の化合物、C.I.Pigment Black 31、32などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平01-170601号公報、特開平02-034664号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。
【0141】
2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成する場合の、有彩色着色剤の組み合わせとしては、例えば以下が挙げられる。
(1)黄色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(2)黄色着色剤、青色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(3)黄色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(4)黄色着色剤および紫色着色剤を含有する態様。
(5)緑色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(6)紫色着色剤およびオレンジ色着色剤を含有する態様。
(7)緑色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(8)緑色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
【0142】
本発明の樹脂組成物が、可視光を遮光する色材を含有する場合、可視光を遮光する色材の含有量は、樹脂組成物の全固形分中1~50質量%が好ましい。
【0143】
<<重合性化合物>>
本発明の樹脂組成物は、重合性化合物を含有することが好ましい。重合性化合物としては、ラジカルの作用により重合可能な化合物が好ましい。すなわち、重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。重合性化合物は、エチレン性不飽和結合含有基を1個以上有する化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和結合含有基を2個以上有する化合物であることがより好ましく、エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する化合物であることがさらに好ましい。エチレン性不飽和結合含有基の個数の上限は、たとえば、15個以下が好ましく、6個以下がより好ましい。エチレン性不飽和結合含有基としては、ビニル基、スチレン基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。重合性化合物は、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。重合性化合物の具体例としては、特開2009-288705号公報の段落番号0095~0108、特開2013-029760号公報の段落0227、特開2008-292970号公報の段落番号0254~0257、特開2013-253224号公報の段落番号0034~0038、特開2012-208494号公報の段落番号0477、特開2017-048367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報、特開2017-194662号公報に記載されている化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0144】
重合性化合物は、モノマー、ポリマーのいずれの形態であってもよいがモノマーが好ましい。モノマータイプの重合性化合物は、分子量が100~3000であることが好ましい。上限は、2000以下が好ましく、1500以下がより好ましい。下限は、150以上が好ましく、250以上がより好ましい。また、重合性化合物は、分子量分布を実質的に有さない化合物であることも好ましい。ここで、分子量分布を実質的に有さない化合物としては、化合物の分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が、1.0~1.5である化合物が好ましく、1.0~1.3がより好ましい。
【0145】
重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、NKエステルA-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)が好ましい。また、重合性化合物としては、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としてはM-460;東亞合成製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルA-TMMT)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)、RP-1040(日本化薬(株)製)、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)、NKオリゴUA-7200(新中村化学工業(株)製)、8UH-1006、8UH-1012(大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB-A0(共栄社化学(株)製)などを用いることもできる。
【0146】
また、重合性化合物として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート化合物を用いることも好ましい。3官能の(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、アロニックスM-309、M-310、M-321、M-350、M-360、M-313、M-315、M-306、M-305、M-303、M-452、M-450(東亞合成(株)製)、NKエステル A9300、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-TMPT、TMPT(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD GPO-303、TMPTA、THE-330、TPA-330、PET-30(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0147】
重合性化合物は、酸基を有する化合物を用いることもできる。酸基を有する重合性化合物を用いることで、現像時に未露光部の重合性化合物が除去されやすく、現像残渣の発生を抑制できる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸基を有する重合性化合物の市販品としては、アロニックスM-305、M-510、M-520、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)等が挙げられる。酸基を有する重合性化合物の酸価は、0.1~40mgKOH/gであることが好ましく、5~30mgKOH/gであることがより好ましい。
【0148】
重合性化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物を用いることもできる。カプロラクトン構造を有する重合性化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120等が挙げられる。
【0149】
重合性化合物は、アルキレンオキシ基を有する重合性化合物を用いることもできる。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物は、エチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基を有する重合性化合物が好ましく、エチレンオキシ基を有する重合性化合物がより好ましく、エチレンオキシ基を4~20個有する3~6官能(メタ)アクリレート化合物がさらに好ましい。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR-494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA-330などが挙げられる。
【0150】
重合性化合物は、フルオレン骨格を有する重合性化合物を用いることもできる。フルオレン骨格を有する重合性化合物の市販品としては、オグソールEA-0200、EA-0300(大阪ガスケミカル(株)製、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートモノマー)などが挙げられる。
【0151】
重合性化合物としては、トルエンなどの環境規制物質を実質的に含まない化合物を用いることも好ましい。このような化合物の市販品としては、KAYARAD DPHA LT、KAYARAD DPEA-12 LT(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0152】
重合性化合物としては、特公昭48-041708号公報、特開昭51-037193号公報、特公平02-032293号公報、特公平02-016765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-049860号公報、特公昭56-017654号公報、特公昭62-039417号公報、特公昭62-039418号公報に記載されたエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物も好適である。また、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平01-105238号公報に記載された分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する重合性化合物を用いることも好ましい。また、重合性化合物は、UA-7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600、LINC-202UA(共栄社化学(株)製)などの市販品を用いることもできる。
【0153】
重合性化合物の含有量は、樹脂組成物の全固形分中、0.1~40質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。樹脂組成物は重合性化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0154】
<<光重合開始剤>>
本発明の樹脂組成物が重合性化合物を含む場合、本発明の樹脂組成物は更に光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する化合物が好ましい。光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0155】
光重合開始剤としては、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物および3-アリール置換クマリン化合物であることが好ましく、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、および、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物であることがより好ましく、オキシム化合物であることが更に好ましい。光重合開始剤としては、特開2014-130173号公報の段落0065~0111、特許第6301489号公報に記載された化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0156】
α-ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、Omnirad184、Omnirad1173、Omnirad2959、Omnirad127(以上、IGM Resins B.V.社製)などが挙げられる。α-アミノケトン化合物の市販品としては、Omnirad907、Omnirad369、Omnirad369E、及び、Omnirad379EG(以上、IGM Resins B.V.社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、Omnirad819、OmniradTPO(以上、IGM Resins B.V.社製)などが挙げられる。
【0157】
オキシム化合物としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-066385号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-019766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物、特開2017-198865号公報に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0038に記載の化合物、国際公開第2013/167515号に記載の化合物などが挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。市販品としては、IRGACURE-OXE01、IRGACURE-OXE02、IRGACURE-OXE03、IRGACURE-OXE04(以上、BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられる。また、オキシム化合物としては、着色性が無い化合物や、透明性が高く変色し難い化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI-730、NCI-831、NCI-930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0158】
本発明において、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0159】
また、光重合開始剤として、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。そのようなオキシム化合物の具体例としては、国際公開第2013/083505号に記載の化合物が挙げられる。
【0160】
本発明において、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。
【0161】
本発明において、光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落番号0031~0047、特開2014-137466号公報の段落番号0008~0012、0070~0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007~0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0162】
本発明において、光重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/036910号に記載されるOE-01~OE-75が挙げられる。
【0163】
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0164】
【0165】
オキシム化合物は、波長350~500nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360~480nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物の波長365nm又は波長405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、高いことが好ましく、1000~300000であることがより好ましく、2000~300000であることが更に好ましく、5000~200000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0166】
光重合開始剤としては、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。そのような光ラジカル重合開始剤を用いることにより、光ラジカル重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカルが発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、樹脂組成物の経時安定性を向上させることができる。2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開第2015/004565号、特表2016-532675号公報の段落番号0407~0412、国際公開第2017/033680号の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開第2016/034963号に記載されているCmpd1~7、特表2017-523465号公報の段落番号0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017-167399号公報の段落番号0020~0033に記載されている光開始剤、特開2017-151342号公報の段落番号0017~0026に記載されている光重合開始剤(A)などが挙げられる。
【0167】
光重合開始剤は、オキシム化合物とα-アミノケトン化合物とを含むことも好ましい。両者を併用することで、現像性が向上し、矩形性に優れたパターンを形成しやすい。オキシム化合物とα-アミノケトン化合物とを併用する場合、オキシム化合物100質量部に対して、α-アミノケトン化合物が50~600質量部が好ましく、150~400質量部がより好ましい。
【0168】
光重合開始剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分中0.1~40質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、1~20質量%が更に好ましい。樹脂組成物は光重合開始剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0169】
<<エポキシ化合物>>
本発明の樹脂組成物は、エポキシ基を有する化合物(以下、エポキシ化合物ともいう)を含有することができる。エポキシ化合物としては、単官能または多官能グリシジルエーテル化合物、多官能脂肪族グリシジルエーテル化合物、脂環式エポキシ基を有する化合物などが挙げられる。エポキシ化合物は、エポキシ基を1分子に1~100個有する化合物であることが好ましい。エポキシ基の上限は、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。下限は、2個以上が好ましい。エポキシ化合物は、低分子化合物(例えば、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)でもよい。エポキシ化合物の重量平均分子量は、2000~100000が好ましい。重量平均分子量の上限は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、3000以下が更に好ましい。
【0170】
エポキシ化合物の市販品としては、EHPE3150((株)ダイセル製)、EPICLON N-695(DIC(株)製)、アデカグリシロール ED-505((株)ADEKA製)などが挙げられる。また、エポキシ化合物としては、特開2013-011869号公報の段落番号0034~0036、特開2014-043556号公報の段落番号0147~0156、特開2014-089408号公報の段落番号0085~0092に記載された化合物を用いることもできる。
【0171】
エポキシ化合物の含有量は、樹脂組成物の全固形分中、0.1~40質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。また、樹脂組成物が、重合性化合物とエポキシ化合物とを含む場合、両者の質量比は、重合性化合物:エポキシ化合物=100:1~100:400が好ましく、100:1~100:100がより好ましい。樹脂組成物はエポキシ化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0172】
<<エポキシ硬化剤>>
本発明の樹脂組成物がエポキシ化合物を含む場合、本発明の樹脂組成物は更にエポキシ硬化剤を含むことが好ましい。エポキシ硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、多価カルボン酸、チオール化合物などが挙げられる。エポキシ硬化剤としては耐熱性、硬化物の透明性という観点から多価カルボン酸が好ましく、分子内に二つ以上のカルボン酸無水物基を有する化合物が最も好ましい。エポキシ硬化剤の具体例としては、ブタン二酸などが挙げられる。エポキシ硬化剤は、特開2016-075720号公報の段落番号0072~0078に記載の化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。エポキシ硬化剤の含有量は、エポキシ化合物の100質量部に対し、0.01~20質量部が好ましく、0.01~10質量部がより好ましく、0.1~6.0質量部がさらに好ましい。樹脂組成物はエポキシ硬化剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0173】
<<溶剤>>
本発明の樹脂組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤などが挙げられる。これらの詳細については、国際公開第2015/166779号の段落番号0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤も好ましく用いることもできる。有機溶剤の具体例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジクロロメタン、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。ただし有機溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)
【0174】
本発明においては、金属含有量の少ない有機溶剤を用いることが好ましく、有機溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの有機溶剤を用いてもよく、そのような有機溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
【0175】
有機溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
【0176】
有機溶剤は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0177】
有機溶剤中の過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0178】
溶剤の含有量は、樹脂組成物の全量に対し、10~97質量%であることが好ましい。下限は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上であることがより一層好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。上限は、96質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。樹脂組成物は溶剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0179】
<<重合禁止剤>>
本発明の樹脂組成物は重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられ、p-メトキシフェノールが好ましい。重合禁止剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分中、0.0001~5質量%が好ましい。樹脂組成物は重合禁止剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0180】
<<シランカップリング剤>>
本発明の樹脂組成物はシランカップリング剤を含有することができる。本発明において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応および縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基としては、例えば、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基、フェニル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基が好ましい。シランカップリング剤は、特開2009-288703号公報の段落番号0018~0036に記載の化合物、特開2009-242604号公報の段落番号0056~0066に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。シランカップリング剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分中0.01~15.0質量%が好ましく、0.05~10.0質量%がより好ましい。樹脂組成物はシランカップリング剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0181】
<<界面活性剤>>
本発明の樹脂組成物は界面活性剤を含有することが好ましい。この態様によれば、樹脂組成物の塗布時におけるストリエーションの発生を抑制することができる。更には、樹脂組成物の保存安定性も向上できる。
【0182】
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。界面活性剤については、国際公開第2015/166779号の段落番号0238~0245に記載された界面活性剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。界面活性剤は、フッ素系界面活性剤であることが好ましい。樹脂組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで上記効果がより顕著に得られる。
【0183】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好適であり、より好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは7~25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
【0184】
フッ素系界面活性剤としては、特開2014-041318号公報の段落番号0060~0064(対応する国際公開第2014/017669号の段落番号0060~0064)等に記載の界面活性剤、特開2011-132503号公報の段落番号0117~0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780、EXP、MFS-330(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0185】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報(2016年2月22日)、日経産業新聞(2016年2月23日))、例えばメガファックDS-21が挙げられる。
【0186】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。このようなフッ素系界面活性剤は、特開2016-216602号公報に記載されたフッ素系界面活性剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0187】
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。また、特開2010-032698号公報の段落番号0016~0037に記載されたフッ素含有界面活性剤や、下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化42】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3000~50000であり、例えば、14000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【0188】
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和結合含有基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落番号0050~0090および段落番号0289~0295に記載された化合物、DIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K等が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落番号0015~0158に記載の化合物を用いることもできる。
【0189】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0190】
シリコン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP-341、KF-6001、KF-6002(以上、信越シリコーン株式会社製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0191】
界面活性剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分中0.001~1質量%が好ましく、0.001~0.5質量%がより好ましく、樹脂組成物の塗布時におけるストリエーションの発生をより効果的に抑制できるという理由から0.001~0.2質量%が更に好ましい。樹脂組成物は界面活性剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0192】
<<紫外線吸収剤>>
樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、共役ジエン化合物、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物などが挙げられる。このような化合物の具体例としては、特開2009-217221号公報の段落番号0038~0052、特開2012-208374号公報の段落番号0052~0072、特開2013-068814号公報の段落番号0317~0334、特開2016-162946号公報の段落番号0061~0080に記載された化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、UV-503(大東化学(株)製)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としては、ミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)が挙げられる。また、紫外線吸収剤は、特許第6268967号公報の段落番号0049~0059に記載された化合物を用いることもできる。紫外線吸収剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分中0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。樹脂組成物は紫外線吸収剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0193】
<<酸化防止剤>>
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。フェノール性ヒドロキシ基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。前述の置換基としては炭素数1~22の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。また、酸化防止剤は、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2-[(4,6,9,11-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-2-イル)オキシ]エチル]アミン、亜リン酸エチルビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)などが挙げられる。酸化防止剤の市販品としては、例えば、アデカスタブ AO-20、アデカスタブ AO-30、アデカスタブ AO-40、アデカスタブ AO-50、アデカスタブ AO-50F、アデカスタブ AO-60、アデカスタブ AO-60G、アデカスタブ AO-80、アデカスタブ AO-330(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。また、酸化防止剤は、特許第6268967号公報の段落番号0023~0048に記載された化合物、国際公開第2017/006600号に記載された化合物、国際公開第2017/164024号に記載された化合物を使用することもできる。酸化防止剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分中0.01~20質量%であることが好ましく、0.3~15質量%であることがより好ましい。樹脂組成物は酸化防止剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0194】
<<その他成分>>
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、増感剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含有してもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落番号0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落番号0237)の記載、特開2008-250074号公報の段落番号0101~0104、0107~0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、潜在酸化防止剤を含有してもよい。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開第2014/021023号、国際公開第2017/030005号、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤の市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0195】
本発明の樹脂組成物の粘度(23℃)は、例えば、塗布により膜を形成する場合、1~100mPa・sであることが好ましい。下限は、2mPa・s以上がより好ましく、3mPa・s以上が更に好ましい。上限は、50mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下が更に好ましく、15mPa・s以下が特に好ましい。
【0196】
<収容容器>
本発明の樹脂組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や樹脂組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては、例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。また、容器内壁は、容器内壁からの金属溶出を防ぎ、樹脂組成物の保存安定性を高めたり、成分変質を抑制するなど目的で、ガラス製やステンレス製などにすることも好ましい。
【0197】
<樹脂組成物の用途>
本発明の樹脂組成物は、近赤外線カットフィルタや近赤外線透過フィルタ形成用の樹脂組成物として好ましく用いることができる。本発明の樹脂組成物を近赤外線透過フィルタ形成用の樹脂組成物とする場合、本発明の樹脂組成物は、更に可視光を遮光する色材を含有することが好ましい。このような樹脂組成物を用いることで、可視光を遮光し、特定の波長以上の近赤外線のみを透過可能な近赤外線透過フィルタを形成することができる。また、本発明の樹脂組成物は、熱線カット材料用途、光熱変換材料用途、レーザー溶着用材料用途などに用いることもできる。
【0198】
<樹脂組成物の調製方法>
本発明の樹脂組成物は、前述の成分を混合して調製できる。樹脂組成物の調製に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解または分散して樹脂組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜配合した2つ以上の溶液または分散液をあらかじめ調製し、使用時(塗布時)にこれらを混合して組成物として調製してもよい。
【0199】
また、式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素が顔料である場合においては、樹脂組成物の調製に際して、顔料を分散させるプロセスを含むことが好ましい。顔料を分散させるプロセスにおいて、顔料の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、顔料を分散させるプロセスおよび分散機は、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015-157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を好適に使用出来る。また顔料を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて粒子の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015-194521号公報、特開2012-046629号公報の記載を参酌できる。
【0200】
樹脂組成物の調製方法の好ましい態様としては、以下の態様1、態様2が挙げられ、保存安定性の観点から以下の態様2が好ましい。
【0201】
態様1:式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素と、式(MC1)で表される金属錯体と、樹脂と、溶剤とを混合および分散して分散液を調製し、この分散液と、必要に応じて樹脂や溶剤などの他の成分とを更に混合して樹脂組成物を調製する態様。
態様2:式(SQ1)で表される近赤外線吸収色素と、樹脂と、溶剤とを混合および分散して分散液を調製し、この分散液と、式(MC1)で表される金属錯体と、必要に応じて樹脂や溶剤などの他の成分とを更に混合して樹脂組成物を調製する態様。
【0202】
樹脂組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、樹脂組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
【0203】
フィルタの孔径は、0.01~7.0μmが好ましく、0.01~3.0μmがより好ましく、0.05~0.5μmが更に好ましい。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物をより確実に除去できる。フィルタの孔径値については、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。フィルタは、日本ポール株式会社(DFA4201NIEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)および株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタを用いることができる。
【0204】
また、フィルタとしてファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。市販品としては、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)が挙げられる。
【0205】
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
【0206】
<膜>
次に、本発明の膜について説明する。本発明の膜は、上述した本発明の樹脂組成物から得られるものである。本発明の膜は、近赤外線カットフィルタや近赤外線透過フィルタとして好ましく用いることができる。また、本発明の膜は、熱線遮蔽フィルタとして用いることもできる。本発明の膜は、パターンを有していてもよく、パターンを有さない膜(平坦膜)であってもよい。また、本発明の膜は、支持体上に積層して用いてもよく、本発明の膜を支持体から剥離して用いてもよい。支持体としては、シリコン基板などの半導体基材や、透明基材が挙げられる。
【0207】
支持体として用いられる半導体基材上には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、半導体基材上には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されていてもよい。また、半導体基材上には、必要により、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。
【0208】
支持体として用いられる透明基材は、少なくとも可視光を透過できる材料で構成されたものであれば特に限定されない。例えば、ガラス、樹脂などの材質で構成された基材が挙げられる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。ガラスとしては、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、銅を含有するガラスなどが挙げられる。銅を含有するガラスとしては、銅を含有する燐酸塩ガラス、銅を含有する弗燐酸塩ガラスなどが挙げられる。銅を含有するガラスは、市販品を用いることもできる。銅を含有するガラスの市販品としては、NF-50(AGCテクノグラス(株)製)等が挙げられる。
【0209】
本発明の膜の厚さは、目的に応じて適宜調整できる。膜の厚さは20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜の厚さの下限は0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましい。
【0210】
本発明の膜を近赤外線カットフィルタとして用いる場合、本発明の膜は、波長700~1800nm(好ましくは波長700~1300nm、より好ましくは波長700~1000nm)の範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。また、波長400~600nmの光の平均透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、85%以上であることが特に好ましい。また、波長400~600nmの全ての範囲での透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。また、本発明の膜は、波長700~1800nm(好ましくは波長700~1300nm、より好ましくは波長700~1000nm)の範囲の少なくとも1点での透過率が15%以下であることが好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。また、本発明の膜は、波長400~600nmの範囲における吸光度の最大値A1と、極大吸収波長における吸光度A2との比であるA1/A2が0.30以下であることが好ましく、0.20以下であることがより好ましく、0.15以下であることが更に好ましく、0.10以下であることが特に好ましい。
【0211】
本発明の膜を近赤外線透過フィルタとして用いる場合、本発明の膜は、波長400~830nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1100~1300nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であることが好ましい。近赤外線透過フィルタとして用いられる本発明の膜は、以下の(1)または(2)のいずれかの分光特性を満たしていることが好ましい。
(1):波長400~830nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1000~1300nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である。
(2):波長400~950nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1100~1300nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である。
【0212】
本発明の膜は、有彩色着色剤を含むカラーフィルタと組み合わせて用いることもできる。カラーフィルタは、有彩色着色剤を含む着色組成物を用いて製造できる。有彩色着色剤としては、本発明の樹脂組成物に含んでもよいものとして挙げた有彩色着色剤が挙げられる。また、本発明の膜に有彩色着色剤を含有させて、近赤外線カットフィルタとカラーフィルタとしての機能を備えたフィルタとしてもよい。
【0213】
本発明の膜を近赤外線カットフィルタとして用い、かつ、本発明の膜とカラーフィルタと組み合わせて用いる場合、本発明の膜の光路上にカラーフィルタが配置されていることが好ましい。例えば、本発明の膜とカラーフィルタとを積層して積層体として用いることが好ましい。積層体においては、本発明の膜とカラーフィルタとは、両者が厚み方向で隣接していてもよく、隣接していなくてもよい。本発明の膜とカラーフィルタとが厚み方向で隣接していない場合は、カラーフィルタが形成された支持体とは別の支持体上に、本発明の膜が形成されていてもよく、本発明の膜とカラーフィルタとの間に、固体撮像素子を構成する他の部材(例えば、マイクロレンズ、平坦化層など)が介在していてもよい。
【0214】
本発明の膜は、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。
【0215】
<膜の製造方法>
本発明の膜は、本発明の樹脂組成物を塗布する工程を経て製造できる。
【0216】
支持体としては、上述したものが挙げられる。樹脂組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(例えば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。
【0217】
樹脂組成物を塗布して形成した樹脂組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下がさらに好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク時間は、10秒~3000秒が好ましく、40~2500秒がより好ましく、80~220秒がさらに好ましい。乾燥は、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0218】
膜の製造方法においては、更にパターンを形成する工程を含んでいてもよい。パターン形成方法としては、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法や、ドライエッチング法を用いたパターン形成方法が挙げられ、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法が好ましい。なお、本発明の膜を平坦膜として用いる場合には、パターンを形成する工程を行わなくてもよい。以下、パターンを形成する工程について詳細に説明する。
【0219】
(フォトリソグラフィ法でパターン形成する場合)
フォトリソグラフィ法でのパターン形成方法は、本発明の樹脂組成物を塗布して形成した樹脂組成物層に対しパターン状に露光する工程(露光工程)と、未露光部の樹脂組成物層を現像除去してパターンを形成する工程(現像工程)と、を含むことが好ましい。必要に応じて、現像されたパターンをベークする工程(ポストベーク工程)を設けてもよい。以下、各工程について説明する。
【0220】
<<露光工程>>
露光工程では樹脂組成物層をパターン状に露光する。例えば、樹脂組成物層に対し、ステッパー露光機やスキャナ露光機などを用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン状に露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。
【0221】
露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等が挙げられる。また、波長300nm以下の光(好ましくは波長180~300nmの光)を用いることもできる。波長300nm以下の光としては、KrF線(波長248nm)、ArF線(波長193nm)などが挙げられ、KrF線(波長248nm)が好ましい。また、300nm以上の長波な光源も利用できる。
【0222】
また、露光に際して、光を連続的に照射して露光してもよく、パルス的に照射して露光(パルス露光)してもよい。なお、パルス露光とは、短時間(例えば、ミリ秒レベル以下)のサイクルで光の照射と休止を繰り返して露光する方式の露光方法のことである。パルス露光の場合、パルス幅は、100ナノ秒(ns)以下であることが好ましく、50ナノ秒以下であることがより好ましく、30ナノ秒以下であることが更に好ましい。パルス幅の下限は、特に限定はないが、1フェムト秒(fs)以上とすることができ、10フェムト秒以上とすることもできる。周波数は、1kHz以上であることが好ましく、2kHz以上であることがより好ましく、4kHz以上であることが更に好ましい。周波数の上限は50kHz以下であることが好ましく、20kHz以下であることがより好ましく、10kHz以下であることが更に好ましい。最大瞬間照度は、50000000W/m2以上であることが好ましく、100000000W/m2以上であることがより好ましく、200000000W/m2以上であることが更に好ましい。また、最大瞬間照度の上限は、1000000000W/m2以下であることが好ましく、800000000W/m2以下であることがより好ましく、500000000W/m2以下であることが更に好ましい。なお、パルス幅とは、パルス周期における光が照射されている時間のことである。また、周波数とは、1秒あたりのパルス周期の回数のことである。また、最大瞬間照度とは、パルス周期における光が照射されている時間内での平均照度のことである。また、パルス周期とは、パルス露光における光の照射と休止を1サイクルとする周期のことである。
【0223】
照射量(露光量)は、例えば、0.03~2.5J/cm2が好ましく、0.05~1.0J/cm2がより好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、または、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、または、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m2~100000W/m2(例えば、5000W/m2、15000W/m2、または、35000W/m2)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20000W/m2などとすることができる。
【0224】
<<現像工程>>
次に、露光後の樹脂組成物層における未露光部の樹脂組成物層を現像除去してパターンを形成する。未露光部の樹脂組成物層の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の樹脂組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが支持体上に残る。現像液の温度は、例えば、20~30℃が好ましい。現像時間は、20~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0225】
現像液は、有機溶剤、アルカリ現像液などが挙げられ、アルカリ現像液が好ましく用いられる。アルカリ現像液としては、アルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液(アルカリ現像液)が好ましい。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ剤は、分子量が大きい化合物の方が環境面および安全面で好ましい。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。また、現像液は、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5~100倍の範囲に設定することができる。また、現像後純水で洗浄(リンス)することも好ましい。また、リンスは、現像後の組成物層が形成された支持体を回転させつつ、現像後の組成物層へリンス液を供給して行うことが好ましい。また、リンス液を吐出させるノズルを支持体の中心部から支持体の周縁部に移動させて行うことも好ましい。この際、ノズルの支持体中心部から周縁部へ移動させるにあたり、ノズルの移動速度を徐々に低下させながら移動させてもよい。このようにしてリンスを行うことで、リンスの面内ばらつきを抑制できる。また、ノズルを支持体中心部から周縁部へ移動させつつ、支持体の回転速度を徐々に低下させても同様の効果が得られる。
【0226】
現像後、乾燥を施した後に追加露光処理や加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。追加露光処理やポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の硬化処理である。ポストベークにおける加熱温度は、例えば100~240℃が好ましく、200~240℃がより好ましい。ポストベークは、現像後の膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。追加露光処理を行う場合、露光に用いられる光は、波長400nm以下の光であることが好ましい。また、追加露光処理は、韓国公開特許第10-2017-0122130号公報に記載された方法で行ってもよい。
【0227】
(ドライエッチング法でパターン形成する場合)
ドライエッチング法でのパターン形成は、上記樹脂組成物を支持体上に塗布して形成した樹脂組成物層を硬化して硬化物層を形成し、次いで、この硬化物層上にパターニングされたフォトレジスト層を形成し、次いで、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングするなどの方法で行うことができる。フォトレジスト層の形成においては、プリベーク処理を施すことが好ましい。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013-064993号公報の段落番号0010~0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0228】
<近赤外線カットフィルタ>
本発明の近赤外線カットフィルタは、上述した本発明の膜を有する。本発明の近赤外線カットフィルタは、波長400~600nmの光の平均透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。また、波長400~600nmの全ての範囲での透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、近赤外線カットフィルタの近赤外線遮蔽性の好ましい範囲は用途によって異なるが、波長700~1800nm(好ましくは波長700~1300nm、より好ましくは波長700~1000nm)の範囲の少なくとも1点での透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
【0229】
本発明の近赤外線カットフィルタは、上述した本発明の膜の他に、更に、銅を含有する層、誘電体多層膜、紫外線吸収層などを有していてもよい。紫外線吸収層としては、例えば、国際公開第2015/099060号の段落番号0040~0070、0119~0145に記載された吸収層が挙げられる。誘電体多層膜としては、特開2014-041318号公報の段落番号0255~0259に記載された誘電体多層膜が挙げられる。銅を含有する層としては、銅を含有するガラスで構成されたガラス基板(銅含有ガラス基板)や、銅錯体を含む層(銅錯体含有層)を用いることもできる。銅含有ガラス基板としては、銅を含有する燐酸塩ガラス、銅を含有する弗燐酸塩ガラスなどが挙げられる。銅含有ガラスの市販品としては、NF-50(AGCテクノグラス(株)製)、BG-60、BG-61(以上、ショット社製)、CD5000(HOYA(株)製)等が挙げられる。
【0230】
<近赤外線透過フィルタ>
本発明の近赤外線透過フィルタは、上述した本発明の膜を有する。本発明の近赤外線透過フィルタは、波長400~830nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1100~1300nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であることが好ましい。本発明の近赤外線透過フィルタは、以下の(1)または(2)のいずれかの分光特性を満たしていることが好ましい。
(1):波長400~830nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1000~1300nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である。
(2):波長400~950nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1100~1300nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である。
【0231】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の膜を含む。固体撮像素子の構成としては、本発明の膜を有する構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はない。例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0232】
支持体上に、固体撮像素子の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、本発明の膜を有する構成である。さらに、デバイス保護膜上であって、本発明の膜の下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、本発明の膜上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各画素を形成する膜が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各画素よりも低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012-227478号公報、特開2014-179577号公報に記載された装置が挙げられる。
【0233】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の膜を含む。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木昭夫著、(株)工業調査会、1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、(株)工業調査会、1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003-045676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線-高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集-」、技術情報協会、326~328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430~485nm)、緑色領域(530~580nm)及び黄色領域(580~620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加え更に赤色領域(650~700nm)に極大発光ピークを有するものがより好ましい。
【0234】
<赤外線センサ>
本発明の赤外線センサは、上述した本発明の膜を含む。赤外線センサの構成としては、赤外線センサとして機能する構成であれば特に限定はない。以下、本発明の赤外線センサの一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0235】
図1において、符号110は、固体撮像素子である。固体撮像素子110の撮像領域上には、近赤外線カットフィルタ111と、近赤外線透過フィルタ114とが配置されている。また、近赤外線カットフィルタ111上には、カラーフィルタ112が配置されている。カラーフィルタ112および近赤外線透過フィルタ114の入射光hν側には、マイクロレンズ115が配置されている。マイクロレンズ115を覆うように平坦化層116が形成されている。
【0236】
近赤外線カットフィルタ111は本発明の樹脂組成物を用いて形成することができる。近赤外線カットフィルタ111の分光特性は、使用する赤外発光ダイオード(赤外LED)の発光波長に応じて選択される。カラーフィルタ112は、可視領域における特定波長の光を透過及び吸収する画素が形成されたカラーフィルタであって、特に限定はなく、従来公知の画素形成用のカラーフィルタを用いることができる。例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画素が形成されたカラーフィルタなどが用いられる。例えば、特開2014-043556号公報の段落番号0214~0263の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。近赤外線透過フィルタ114は、使用する赤外LEDの発光波長に応じてその特性が選択される。
【0237】
図1に示す赤外線センサにおいて、平坦化層116上には、近赤外線カットフィルタ111とは別の近赤外線カットフィルタ(他の近赤外線カットフィルタ)がさらに配置されていてもよい。他の近赤外線カットフィルタとしては、銅を含有する層および/または誘電体多層膜を有するものなどが挙げられる。これらの詳細については、上述したものが挙げられる。また、他の近赤外線カットフィルタとしては、デュアルバンドパスフィルタを用いてもよい。
【実施例】
【0238】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。また、構造式中におけるMeはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【0239】
<IR分散液の調製>
(IR分散液1~26)
下記組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製))で、2時間、混合して、各分散液を調製した。下記表に記載の数値は質量部である。
【表1】
【0240】
上記表に記載の原料は以下の通りである。
【0241】
(近赤外線吸収色素)
IR色素1~16:下記構造の化合物IR-1~IR-16
【化43】
【化44】
【化45】
【0242】
(色素誘導体)
誘導体1:下記構造の化合物(酸性色素誘導体)
【化46】
誘導体2:下記構造の化合物(塩基性色素誘導体)
【化47】
誘導体3:下記構造の化合物(酸性色素誘導体)
【化48】
誘導体4:下記構造の化合物(酸性色素誘導体)
【化49】
誘導体5:下記構造の化合物(酸性色素誘導体)
【化50】
【0243】
(分散剤)
分散剤1:下記構造のブロック型樹脂(アミン価=90mgKOH/g、4級アンモニウム塩価=30mgKOH/g、重量平均分子量=9800)。主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比を表す。
【化51】
分散剤2:ソルスパース36000(日本ルーブリゾール(株)製)
【0244】
(有機溶剤)
溶剤1:プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)
溶剤2:シクロヘキサノン
【0245】
(金属錯体)
金属錯体1:下記構造の化合物
【化52】
金属錯体2:下記構造の化合物
【化53】
【0246】
<樹脂組成物の調製>
下記の表に示す原料を、下記の表に示す割合(質量部)で混合および撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、樹脂組成物を調製した。下記表に記載の数値は質量部である。樹脂組成物に含まれる金属錯体と近赤外線吸収色素との質量比(金属錯体/近赤外線吸収色素(IR色素))を併せて記す。
【表2】
【表3】
【表4】
【0247】
上記表に記載の原料は以下の通りである。
【0248】
(分散液)
IR分散液1~26:上記で調整した分散液
【0249】
(樹脂)
樹脂1:下記構造の樹脂(重量平均分子量41400、主鎖の繰り返し単位に付記した数値はモル比である。)
【化54】
【0250】
(重合性化合物)
重合性化合物1:NKエステルA-TMMT(新中村化学工業(株)製)
重合性化合物2:NKエステルA-DPH-12E (新中村化学工業(株)製)
【0251】
(光重合開始剤)
光重合開始剤1:IRGACURE-OXE01(BASF社製)
【0252】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤1:UV-503(大東化学(株)製)
【0253】
(酸化防止剤)
酸化防止剤1:Neo Heliopan357(Symrise製)
【0254】
(金属錯体)
金属錯体1、2:上述した構造の化合物
金属錯体3:下記構造の化合物
【化55】
金属錯体4:下記構造の化合物
【化56】
【0255】
(重合禁止剤)
重合禁止剤1:p-メトキシフェノール
【0256】
(界面活性剤)
界面活性剤1:下記構造の化合物(Mw=14000、下記の式中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。)
【化57】
【0257】
(溶剤)
溶剤1:PGMEA
【0258】
<近赤外領域の分光特性の評価>
8インチ(20.32cm)のガラスウエハ上に、樹脂組成物を製膜後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用い、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を用い、1000mJ/cm2の露光量で露光し、次いで、200℃で5分間加熱して膜(近赤外線カットフィルタ)を形成した。得られた膜について、紫外可視近赤外分光光度計(U-4100、(株)株式会社日立ハイテクノロジーズ(製))を用いて、波長400~1300nmの範囲の吸光度を測定して、以下に示すODL(吸光度)およびODS(吸光度)をそれぞれ求め、ODLに対するODSの比率(ODS/ODL)を算出して、以下の基準で近赤外領域の分光特性を評価した。ODS/ODLの値が小さいほど近赤外遮光性が良好で、近赤外領域の分光特性が良好であることを意味する。
【0259】
波長600~1300nm範囲に極大吸収波長が2以上存在する場合は最も長波側の極大吸収波長λ1での吸光度をODLとし、極大吸収波長λ1よりも短波側であって、極大吸収波長λ1に最も近い極大吸収波長λ2での吸光度をODSとする。
波長600~1300nm範囲に極大吸収波長が1つしか存在しない場合は、極大吸収波長での吸光度をODLとし、波長600~1300nm範囲における吸収スペクトルの変曲点を示す波長のうち、極大吸収波長よりも短波側であって、極大吸収波長に最も近い波長における吸光度をODSとする。
【0260】
近赤外領域の分光特性の評価基準は以下の通りである。
A:ODS/ODL≦0.9
B:0.9<ODS/ODL≦1.1
C:1.1<ODS/ODL
【0261】
<保存安定性の評価>
8インチ(20.32cm)のガラスウエハ上に、製造直後の樹脂組成物を製膜後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用い、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を用い、1000mJ/cm2の露光量で露光し、次いで、200℃で5分間加熱して膜(近赤外線カットフィルタ)を形成した。得られた膜について、紫外可視近赤外分光光度計(U-4100、(株)株式会社日立ハイテクノロジーズ(製))を用いて、波長700~1300nmの範囲の透過率を測定した。
次いで、製造直後の樹脂組成物を23℃の恒温槽に2ヶ月放置した。放置後の樹脂組成物を用いて上記と同様にして膜を形成し、得られた膜について、紫外可視近赤外分光光度計(U-4100、(株)株式会社日立ハイテクノロジーズ(製))を用いて、波長700~1300nmの範囲の透過率を測定した。
恒温槽に放置前後の樹脂組成物を用いて得られた膜の、波長700~1300nmの範囲の透過率の変動が最も大きい波長における透過率変化(ΔT%)を測定し、以下の基準で保存安定性を評価した。ΔT%の値が小さいほうが保存安定性が良好である。
A:ΔT<2%
B:2%≦ΔT%<5%
C:5%≦ΔT%
【0262】
<ストリエーションの評価>
エッチング法を用いて、大きさ3000μm×4000μm、深さ1.5μmの段差(凹部)パターンを8インチ(20.32cm)のシリコンウエハの全面に碁盤目状に形成した。段差と段差の間隔は100μmとした。段差パターンを形成したシリコンウエハ上に、樹脂組成物をスピンコート法で塗布し、ホットプレートを用いて100℃で120秒加熱した。その後、さらにホットプレートを用いて200℃で300秒加熱した。
図2に示す1~28の箇所に位置する段差を選択し、この段差の角部を光学顕微鏡(50倍)で観察した。段差の角部は、4箇所ある角部のうち、シリコンウエハの中心から最も離れた部分の角部を観察し、以下の基準でストリエーションを評価した。
(ストリエーションの評価)
A:
図2における1~28のいずれの部位においてもストリエーションが観察されなかった。
B:
図2における1~28のいずれかの部位において2つ以下のストリエーションが観察された。
C:
図2における1~28のいずれかの部位において3つ以上のストリエーションが観察された。
【0263】
【0264】
上記表に示すように、実施例は、近赤外領域の分光特性が良好であった。実施例2において、光重合開始剤1をIRGACURE-OXE02(BASF社製)に置き換えて同様に評価した結果、同様の結果であった。実施例2において、光重合開始剤1をOmnirad907(IGM Resins B.V.製)に置き換えて同様に評価した結果、同様の結果であった。実施例2において、重合禁止剤1を除いて同様に評価した結果、同様の結果であった。本発明の実施例に記載の樹脂組成物を用いて得られる膜を用いた、近赤外線カットフィルタ、近赤外線透過フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサは良好な性能を有していた。
【符号の説明】
【0265】
110:固体撮像素子、111:近赤外線カットフィルタ、112:カラーフィルタ、114:近赤外線透過フィルタ、115:マイクロレンズ、116:平坦化層