(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/20 20060101AFI20220728BHJP
G03G 15/23 20060101ALI20220728BHJP
B65H 29/58 20060101ALI20220728BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220728BHJP
B65H 43/08 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
G03G21/20
G03G15/23
B65H29/58 B
G03G15/00 460
B65H43/08
(21)【出願番号】P 2018183250
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】田中 智也
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 昇治
(72)【発明者】
【氏名】正円 大雅
(72)【発明者】
【氏名】太田 佳秀
(72)【発明者】
【氏名】尾花 陽光
(72)【発明者】
【氏名】木倉 真
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-241934(JP,A)
【文献】特開2009-237221(JP,A)
【文献】特開2014-115368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/20
G03G 15/23
B65H 29/58
G03G 15/00
B65H 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの表面に形成された画像を加熱して定着する定着部と、
前記定着部を通過したシートが搬送されて当該画像形成装置の外部に排出口を介して排出される第1搬送経路と、
前記定着部を通過したシートが搬送されて、その搬送方向が反転された状態で搬送される第2搬送経路と、
前記定着部を通過したシートが前記第1搬送経路と前記第2搬送経路とのうちいずれか一方に搬送されるように切り替える切替部材と、
前記定着部に対して搬送方向下流側であって前記切替部材に対して搬送方向上流側に設置されて、その搬送位置におけるシートの有無を検知するシート検知センサと、
を備え、
当該画像形成装置の外部から内部に
第1の吸気口を介して取り入れた空気を、前記シート検知センサを含む前記定着部の搬送方向下流側の位置を通過させて、前記第1搬送経路と前記第2搬送経路とのうち少なくとも一方を通過させる
第1の通気経路
と、
当該画像形成装置の外部から内部に第2の吸気口を介して取り入れた空気を、前記第1の通気経路とは異なる経路を経由させた後に前記シート検知センサを含む前記定着部の搬送方向下流側の位置を通過させて、前記第1搬送経路と前記第2搬送経路とのうち少なくとも一方を通過させる第2の通気経路と、
を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の通気経路と前記第2の通気経路とは、
それぞれ、前記第1搬送経路の前記排出口を、当該画像形成装置の外部に空気を排気する排気口とすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2搬送経路は、前記定着部を通過して搬送されたシートの一部を当該画像形成装置の外部に露出させるための露出口を具備し、
前記第1の通気経路と前記第2の通気経路とは、
それぞれ、前記第2搬送経路の前記露出口を、当該画像形成装置の外部に空気を排気する排気口とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の吸気口には、第1の吸引ファンが設置され、
前記第2の吸気口には、前記第1の吸引ファンとは異なる第2の吸引ファンが設置されたことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の通気経路は、前記第1の吸気口から取り入れた空気を、前記シート検知センサの所定部分に向けて流動させるように構成され、
前記第2の通気経路は、前記第2の吸気口から取り入れた空気を、前記シート検知センサの前記所定部分とは異なる部分に向けて流動させるように構成されたことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1搬送経路と前記第2搬送経路とは、それぞれ、シートを案内する搬送ガイド部材を具備し、
前記第1搬送経路と前記第2搬送経路とのうち少なくとも一方の前記搬送ガイド部材に、
前記第1の通気経路と前記第2の通気経路とにおける空気が通過する開口部が形成されたことを特徴とする請求項1~
請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記シート検知センサは、その検知結果から前記第1搬送経路において前記排出口からシートが排出されたか否かを判断するためのものであるとともに、その検知結果から前記第2搬送経路においてシートを反転させるタイミングを判断するためのものであることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記シート検知センサの検知結果に基づいて前記切替部材の切替動作を制御することを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第2搬送経路によって搬送方向が反転された状態のシートが搬送されて、そのシートを画像形成部に向けて搬送する両面搬送経路を備え、
前記両面搬送経路は、シートを案内するとともに、前記
第1の通気経路における空気が通過する開口部が形成された搬送ガイド部材を具備したことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタ等の画像形成装置では、定着部で発生した熱を装置外に排出することなどを目的として、空気を定着部の下流側を通過させた後に装置外に排出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
詳しくは、特許文献1の画像形成装置は、定着部の上流側の搬送経路や両面搬送部から取り込んだ空気を、吸気ダクトを介して定着部の下流側に流動させている。そして、その空気は、定着部の下流側の搬送経路を横切るように通過した後に、搬送経路の上方に設置された排気ダクト及び排気ファンによって装置外に排出される。
また、特許文献1の画像形成装置は、定着部の下流側の搬送経路から、排出セパレータ(切替部材)の位置で、排出経路(第1搬送経路)と反転経路(第2搬送経路)とに分岐している。そして、定着工程後の用紙(シート)は、排出セパレータによって、排出経路に導かれてそのまま装置外に排出されたり、反転経路に導かれて反転された後に両面搬送部に搬送されたりすることになる。
また、特許文献1の画像形成装置は、排出経路(第1搬送経路)における排出セパレータ(切替部材)の下流側の位置に、排出経路内の用紙を検知する用紙センサが設置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の画像形成装置は、定着部の下流側を通過した空気を装置外に排出させるために排気ダクトや排気ファンなどが設けられているため、装置が大型化、高コスト化してしまっていた。
また、定着部の下流側で分岐する2つの搬送経路(第1、第2搬送経路)におけるシートの安定した搬送性を確保するために、それぞれの搬送経路におけるシートの有無を検知するシート検知センサを設置してしまうと、装置がさらに大型化、高コスト化してしまうことになる。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、装置が大型化、高コスト化することなく、取り込んだ空気を定着部の下流側を通過させた後に装置外に排出することができて、定着部の下流側で分岐する2つの搬送経路においてそれぞれシートが安定して搬送される、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明における画像形成装置は、シートの表面に形成された画像を加熱して定着する定着部と、前記定着部を通過したシートが搬送されて当該画像形成装置の外部に排出口を介して排出される第1搬送経路と、前記定着部を通過したシートが搬送されて、その搬送方向が反転された状態で搬送される第2搬送経路と、前記定着部を通過したシートが前記第1搬送経路と前記第2搬送経路とのうちいずれか一方に搬送されるように切り替える切替部材と、前記定着部に対して搬送方向下流側であって前記切替部材に対して搬送方向上流側に設置されて、その搬送位置におけるシートの有無を検知するシート検知センサと、を備え、当該画像形成装置の外部から内部に第1の吸気口を介して取り入れた空気を、前記シート検知センサを含む前記定着部の搬送方向下流側の位置を通過させて、前記第1搬送経路と前記第2搬送経路とのうち少なくとも一方を通過させる第1の通気経路と、当該画像形成装置の外部から内部に第2の吸気口を介して取り入れた空気を、前記第1の通気経路とは異なる経路を経由させた後に前記シート検知センサを含む前記定着部の搬送方向下流側の位置を通過させて、前記第1搬送経路と前記第2搬送経路とのうち少なくとも一方を通過させる第2の通気経路と、を設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、装置が大型化、高コスト化することなく、取り込んだ空気を定着部の下流側を通過させた後に装置外に排出することができて、定着部の下流側で分岐する2つの搬送経路においてそれぞれシートが安定して搬送される、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す斜視図である。
【
図3】画像形成装置においてシートが第2搬送経路と両面搬送経路とを通過するルートを示す図である。
【
図6】搬送ガイド部材を違う角度からそれぞれ示す斜視図である。
【
図8】変形例1としての、画像形成装置を示す斜視図である。
【
図10】
図9の画像形成装置に形成される通気経路を示す図である。
【
図11】変形例2としての、画像形成装置に形成される通気経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
まず、
図1~
図3を用いて、画像形成装置100における全体の構成・動作について説明する。
図1は、本実施の形態における画像形成装置1を示す概略斜視図であり、
図2、
図3は、その概略断面図である。
本実施の形態における画像形成装置100は、モノクロレーザプリンタである。
【0011】
図2に示すように、画像形成装置100には、ブラックのトナー(現像剤)によって画像を形成するためのプロセスカートリッジ1が着脱可能(交換可能)に設置されている。
プロセスカートリッジ1は、その表面に画像(トナー像)を担持する像担持体としての感光体2(感光体ドラム)と、感光体2の表面を帯電させる帯電ローラ3(帯電部)と、感光体2上にトナー(現像剤)を供給して画像を形成する現像部4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング部8と、感光体2の表面を除電する除電部6と、が一体化されたユニットである。
また、画像形成装置100において、プロセスカートリッジ1の感光体2の上方には露光部7が設けられている。露光部7は、パソコンなどから画像形成装置100に入力された画像データに基づいて、
図2の時計方向に回転する感光体2の表面に露光光(レーザ光)を主走査方向にわたって照射して、感光体2上に画像データに対応した静電潜像を形成するものである。
また、プロセスカートリッジ1の感光体2の下方には転写ローラ14(転写部)が設けられている。転写ローラ14は、感光体2に当接して転写ニップ(画像形成部)を形成していて、転写ニップに搬送されるシートP上に感光体2上の画像を転写するものである。
これらのプロセスカートリッジ1、露光部7、転写ローラ14などが、作像部として機能することになる。
【0012】
一方、画像形成装置100の下部には、給紙トレイ15に収納された用紙などのシートPを給送する給送ローラ16が配置されている。また、この給送ローラ16の搬送方向下流側(シートPが搬送される方向の下流側である。)であって、転写ニップ(画像形成部)の搬送方向上流側には、給送ローラ16によって給送されたシートPを一旦停止させてから所定のタイミングで搬送するタイミングローラ17が配置されている。
また、転写ニップ(画像形成部)よりも搬送方向下流側には、シートPの表面に形成(転写)された画像を加熱して定着する定着部12が配置されている。定着部12には、ハロゲンヒータ等の加熱源を内包する定着ローラ18や、この定着ローラ18に対して所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ19などが設けられている。
【0013】
以下、
図2を用いて、本実施の形態における画像形成装置1の基本動作について説明する。
まず、制御部からの給紙信号によって給送ローラ16が回転すると、給紙トレイ15に積載されたシートPの最上位のシートPのみが分離されてシート搬送経路へ送り出される。給紙トレイ15から給送されたシートPは、
図2の一点鎖線で示す矢印方向に搬送されて、その先端がタイミングローラ17のニップ部に到達すると、感光体2に形成された画像(トナー像)とタイミング(同期)をとるとともに、シートPの先端スキューを補正するため、シートPにたるみを形成した状態で待機する。
【0014】
一方、作像部では、駆動機構によって感光体2が
図2の時計方向に回転して、その表面の感光層が帯電ローラ3により一様な高電位に帯電される。そして、帯電された感光体2の表面は、露光部7により画像データに基づいて選択的に露光され、この露光により電位の減衰した低電位部と初期化による高電位部とからなる静電潜像が形成される。次いで、その静電潜像が形成された感光体2の表面が、現像部4の現像ローラ5との対向位置に達すると、その表面にトナー薄層を形成した現像ローラ5からトナーが転移されてトナー像が形成(現像)される。
【0015】
その後、トナー像が形成された感光体2の表面が転写ニップ(画像形成部)に達すると、タイミングローラ17の位置で待機していたシートPが、タイミングローラ17の回転によってタイミング(同期)をとって転写ニップに向けて搬送される。そして、転写ローラ14よって、転写ニップに送られたシートPに感光体2上のトナー像が転写される。なお、シートPに転写しきれなかった感光体2上の残留トナーは、クリーニング部8の位置で、感光体2に当接するクリーニングブレードによってクリーニングされる。そして、クリーニングされた感光体2の表面は、除電部6の位置で表面電位がクリアにされて、次のトナー像の形成に備えられる。
【0016】
一方、転写ニップ(画像形成部)でトナー像が転写されたシートPは、さらに破線矢印方向に搬送されて、定着部12の位置に達する。そして、定着部12に搬送されたシートPは、定着ローラ18と加圧ローラ19とによって挟まれて、その表面に担持された画像(未定着トナー像)が加熱・加圧されて定着される(定着工程である)。そして、画像が定着されたシートPは、定着部12から送り出されることになる。
その後、定着部12を通過した定着工程後のシートPは、
図2の一点鎖線矢印で示すように、シート検知センサ23の位置を通過した後に、第1搬送経路24(排出経路)を経て、排出反転ローラ20によって排出口Aから画像形成装置1の外部に排出されて、排紙トレイ21上にスタックされることになる。このとき、切替部材22(分岐ガイド部材)は、
図2に示すように、第1搬送経路24に隣接する第2搬送経路25(反転経路)を閉鎖して、第1搬送経路24を開放する位置に回動している。
【0017】
なお、このように定着工程後のシートPが第1搬送経路24(排出経路)を搬送されて画像形成装置1の外部に排出されるルートは、片面プリント時や、両面プリントにおけるウラ面プリント時のものである。
これに対して、両面プリントにおけるオモテ面プリント時において、オモテ面に対する定着工程が終了した後のシートPは、第1搬送経路24(排出経路)に搬送されることなく、
図3に示すように、ウラ面へのプリントに備えて第2搬送経路25(反経路)に搬送されることになる。
【0018】
以下、
図3を用いて、両面プリント時の画像形成装置1の動作について説明する。
図3に示すように、両面プリントにおけるオモテ面(第1面)への画像形成がおこなわれる場合、切替部材22(分岐ガイド部材)は、第1搬送経路24(排出経路)を閉鎖して、第2搬送経路25(反転経路)を開放する位置に回動している。
切替部材22は、タイミングローラ17の位置で待機していたシートPが転写ニップに搬送開始されてから所定時間が経過するタイミングで、両面プリントのためシートPの反転(搬送方向の反転である。)が必要な場合には
図3の位置に回動して、シートPの反転が不要な場合には
図2の位置に回動するものである。
【0019】
そして、両面プリント時おいてオモテ面への定着工程が終了したシートPは、シート検知センサ23の位置を通過した後に、
図3の位置に回動した切替部材22によって第2搬送経路25(反転経路)に導かれる。そして、第2搬送経路25に搬送されたシートPは、排出反転ローラ20の位置に達する。そして、シートPの後端が切替え部材22の位置を通過して、シートP全体が第2搬送経路25に搬入された状態になった後に、正回転していた排出反転ローラ20が逆回転に切り替わり、シートPの搬送方向が反転されることになる。このとき、切替部材22は
図2の位置に戻るように回動して、第2搬送経路25からみて両面搬送経路26が開放された状態になる。そして、第2搬送経路25で搬送方向が反転された状態で搬送されたシートPは、第2搬送経路25に繋がる両面搬送経路26に向けて搬送されることになる。
【0020】
なお、排出反転ローラ20は、定着部12に対して搬送方向下流側であって、切替部材22に対して搬送方向上流側(反転される前のシートPの搬送方向の上流側である。)に配置されたシート検知センサ23によって、反転タイミング(回転方向を逆転させるタイミングである。)が制御される。具体的に、シートPの後端がシート検知センサ23の位置を通過したタイミングから所定時間(シート検知センサ23の位置から切替部材22の位置までの搬送時間に余裕度分を加算した時間である。)が経過した後に、正回転していた排出反転ローラ20が逆回転される。
ここで、第2搬送経路25には、定着部12を通過して搬送されたシートPの一部(先端側である。)を画像形成装置100の外部に露出させるための露出口Bが、排出反転ローラ20の近傍に設けられている。すなわち、排出反転ローラ20の近傍は、第1搬送経路24の終端に加えて第2搬送経路25の終端が露呈するように開口している(排出口Aと露出口Bとが形成されている)。そのため、搬送方向サイズが長いシートPが第2搬送経路25に収まりきらないような場合であっても、その収まらないシート部分を露出口Bから外部に露出するように(飛び出すように)搬送することで、紙詰りすることなくシートPの反転搬送が可能になる。
【0021】
その後、第2搬送経路25から両面搬送経路26に搬送されたシートP(オモテ面への定着工程が終了して第2搬送経路25によって搬送方向が反転された状態のシートPである。)は、
図3の一点鎖線矢印で示すように、両面搬送経路26を経由して画像形成部(転写ニップ)に向けて搬送されることになる。そして、転写ニップに導かれたシートPは、転写ニップの位置で先に説明したものと同様の作像プロセス(画像形成動作)によってシートPのウラ面への画像形成がおこなわれ、その後に定着部12での定着工程を経て、第1搬送経路24を経由して、画像形成装置100から排出される。こうして、両面プリントされたシートPが排紙トレイ21上にスタックされることになる。
【0022】
以下、本実施の形態における画像形成装置1において、特徴的な構成・動作について詳述する。
先に
図2、
図3等を用いて説明したように、本実施の形態における画像形成装置100には、定着部12、第1搬送経路24(排出経路)、第2搬送経路(反転経路)、両面搬送経路(第3搬送経路)、切替部材22、シート検知センサ23(検知手段)、などが設置されている。
【0023】
定着部12は、シートPの表面に形成された画像(未定着のトナー像)を加熱して定着するものである。
第1搬送経路24は、定着部12を通過したシートPが搬送されて、そのシートPが画像形成装置100の外部に排出口Aを介して排出される搬送経路である。第1搬送経路24は、シートPを案内する搬送ガイド部材(対向する2つのガイド板である。)によって形成されている。
第2搬送経路25は、定着部12を通過したシートPが搬送されて、その搬送方向が反転された状態で搬送される搬送経路である。第2搬送経路25は、シートPを案内する搬送ガイド部材(対向する2つのガイド板である。)によって形成されている。また、第2搬送経路25は、その一部が第1搬送経路に隣接するように形成されていて、その部分の搬送ガイド部材が第1搬送経路24のものと供用されている。
【0024】
両面搬送経路26は、第2搬送経路25によって搬送方向が反転された状態のシートPが搬送されて、そのシートPを画像形成部(転写ニップ)に向けて搬送する搬送経路である。両面搬送経路26は、第2搬送経路25との合流部から、給紙トレイ15からタイミングローラ17に至る搬送経路との合流部まで形成されている。両面搬送経路26は、シートPを案内する搬送ガイド部材(対向する2つのガイド板である。)によって形成されている。
【0025】
切替部材22は、定着部12を通過したシートが第1搬送経路24と第2搬送経路25とのうちいずれか一方に搬送されるように切り替えるための部材である。切替部材22は、第1搬送経路24と第2搬送経路25との分岐部分に配置されていて、
図2、
図3の紙面垂直方向に延びる支軸を中心にして正逆両方向に回動可能に構成されている。
【0026】
シート検知センサ23は、定着部12に対して搬送方向下流側であって、切替部材22に対して搬送方向上流側に設置されている。シート検知センサ23は、その検知面が搬送経路に対向するように配置された反射型フォトセンサ(発光素子と受光素子とを備えている。)であって、その搬送位置におけるシートの有無を光学的に検知する。
具体的に、シート検知センサ23の出力がオンであるときにシートPがあるものと判別されて、シート検知センサ23の出力がオフであるときにシートPがないものと判別される。したがって、シート検知センサ23の出力がオフからオンに変化するタイミングでシートPの先端が検知され、シート検知センサ23の出力がオンからオフに変化するタイミングでシートPの後端が検知されることになる。
なお、シート検知センサ23としては、搬送ガイド板に光透過部を設けて、搬送ガイド板の裏側に設置したシート検知センサ23の発光素子から受光素子に至る反射光路を確保する構成のものを用いることができる。さらには、シート検知センサ23として、搬送ガイド板に切欠き部を設けて、搬送ガイド板の裏側に設置したシート検知センサ23の発光素子と受光素子との間に配置されたフィラーの先端部を切欠き部を介して搬送経路に突出させた構成のものを用いることもできる。
【0027】
ここで、本実施の形態におけるシート検知センサ23は、定着部12から切替部材22に至る搬送経路中に配置されていて、排紙検知センサとして機能するとともに反転開始センサとしても機能することになる。
すなわち、シート検知センサ23は、その検知結果から第1搬送経路24において排出口AからシートPが排出されたか否かを判断するためのものであるとともに、その検知結果から第2搬送経路25においてシートPを反転させるタイミングを判断するためのものである。さらに、シート検知センサ23の検知結果に基づいて切替部材22の切替動作(回動方向や切替タイミングである。)を制御している。
【0028】
具体的に、片面プリント時(制御部に片面プリントの指令が入力されているときである。)には、シート検知センサ23によって、第1搬送経路24にシートPが搬送不良などなく正常に搬送されたか(第1搬送経路24からシートPが排出されているか)、が検知されることになる。このとき、切替部材22は、
図2の回動位置に回動されたままになる。
また、両面プリント時(制御部に両面プリントの指令が入力されているときである。)には、シート検知センサ23によって、第2搬送経路25又は第1搬送経路24にシートPが搬送不良などなく正常に搬送されたかが検知されるとともに、第2搬送経路25に搬送されるシートPの後端を検知して、排出反転ローラ20を正回転から逆回転に切り替えるタイミングと、切替部材22を
図3の回動位置から
図2の位置回動に戻すタイミングと、を判断する。このとき、切替部材22は、タイミングローラ17の位置で待機していたシートPが転写ニップに搬送開始されてから所定時間が経過するタイミングで、オモテ面(第1面)の定着工程後のシートPが搬送されるときには
図3の回動位置に回動して、ウラ面(第2面)の定着工程後のシートPが搬送されるときには
図2の回動位置に回動するように制御される。
【0029】
このように、本実施の形態では、シート検知センサ23を、定着部12の下流側であって、切替部材22の上流側に配置しているため、切替部材22の下流側となる第1、第2搬送経路24、25にそれぞれシート検知センサを設置する場合に比べて、装置を低コスト化、小型化(省スペース化)することができる。また、そのような位置に配置されたシート検知センサ23は、排紙検知センサや反転開始センサなどの複数のセンサとしての機能を有するため、定着部12の下流側で分岐する第1、第2搬送経路24、25におけるシートPの安定した搬送性を確保することができる。
さらに、定着部12の近傍であって定着部12の下流側に配置したシート検知センサ23によって、定着部12において定着ローラ18(又は、加圧ローラ19)にシートPが巻き付いてジャムする不具合をいち早く検知して、シート搬送を停止することが可能になる。そのため、そのように定着ローラ18などに巻き付くシートPの程度も比較的軽くなり、その後のジャム処理をおこないやすくなる。
【0030】
その反面、本実施の形態のように、シート検知センサ23を、定着部12の下流側であって切替部材22の上流側に配置すると、切替部材22の下流側となる第1、第2搬送経路24、25にシート検知センサを設置する場合に比べて、電子部品であるシート検知センサ23が、熱源となる定着部12で生じる熱の影響を受けて故障(素子の誤動作や、フィラーの熱変形などである。)しやすくなる。
特に、本実施の形態における画像形成装置1のように、卓上に設置されるような小型の装置の場合、定着部12から切替部材22に至る搬送経路が短くなってしまい、シート検知センサ23が定着部12に近づいてしまうため、このような問題が顕著になる。
【0031】
このような不具合を防止するために、本実施の形態における画像形成装置100には、
図4、
図7等に示すような、冷却用の通気経路Xが設けられている。
詳しくは、
図4、
図7に示すように、画像形成装置100には、画像形成装置100の外部から内部に取り入れた空気を、シート検知センサ23を含む定着部12の搬送方向下流側の位置(範囲)を通過させて、第1搬送経路24と第2搬送経路25とのうち少なくとも一方(本実施の形態では双方の搬送経路24、25である。)を通過させる通気経路Xを設けている。
そして、通気経路Xは、第1搬送経路24の排出口Aを、画像形成装置100の外部に空気を排気する排気口としている。さらに、通気経路Xは、第2搬送経路25の露出口Bをも、画像形成装置100の外部に空気を排気する排気口としている。
すなわち、画像形成装置100には、
図4、
図7において黒矢印で示す方向に空気が流れる通気経路Xが形成されている。
【0032】
これにより、上述したようにシート検知センサ23が定着部12の近くに配置された場合であっても、外部から取り込んだ空気によってシート検知センサ23が冷却されることになるため、熱によるシート検知センサ23の故障を防止することができる。
また、本実施の形態における通気経路Xは、定着部12の下流側を通過するものであるため、定着部12から送出された定着工程後の高温のシートPも冷却されて、排紙直後のシートPを手に取るユーザーが熱く感じにくくなるとともに、定着部12の下流側に生じる熱も装置外に排熱されて、装置内部が過昇温しにくくなる。
さらに、本実施の形態では、定着部12の下流側を通過した空気を装置外に排出させるために排気ダクトや排気ファンなどを専用に設けることなく、既設のシート搬送用の第1、第2搬送経路24、25を排気経路として用いているため、装置の大型化、高コスト化を防止することができる。
【0033】
以下、さらに通気経路Xの詳細について説明する。
図4、
図7を参照して、本実施の形態における画像形成装置100において、両面搬送経路26の下方には、電源基板32を冷却するための吸引ファン31(冷却ファン)が設置されている。この吸引ファン31は、電源基板32が高温になるのを防ぐために、外気を取り込むファンであり、装置100の側面に設けられた吸気口100a(
図1参照)から装置内に外気を流し込んでいる。
また、
図5をも参照して、電源基板32に異物が入ると故障の原因となるため、電源基板32の上部には、異物混入を防止するための保護カバー33が設置されている。この保護カバー33には、
図5に示すように、一部に複数の開口部33aが設けられており、吸引ファン31から送り込まれた空気を上部に流すことが可能となっている。また、保護カバー33の上部には両面搬送経路26の搬送ガイド部材27(両面搬送ガイド部材)が配置されていて、
図6(A)、(B)に示すように、その搬送ガイド部材27にも通気用の開口部27aが設けられている。すなわち、両面搬送経路26には、シートPを案内するとともに、通気経路Xにおける空気が通過する開口部27aが形成された搬送ガイド部材27が設置されている。
このように保護カバー33や搬送ガイド部材27に開口部33a、27aを設けることで、吸引ファン31から流し込まれた外気は、
図7の黒矢印で示すように、保護カバー33の上部から搬送ガイド部材27へと流れて、さらに搬送ガイド部材27の開口部27aから両面搬送経路26へと流れることになる。そして、両面搬送経路26に流れた外気は、定着部12の下流側を通過して、シート検知センサ23などを冷却した後に、第1、第2搬送経路24、25を経て排出口Aや露出口Bから装置外に排気されることになる。
【0034】
このように、本実施の形態において、通気経路Xは、画像形成装置100の外部から内部に取り入れた空気を、画像形成装置100における定着部12とは異なる部分(本実施の形態では、電源基板32である。)を通過させた後に、シート検知センサ23を含む定着部12の搬送方向下流側の位置を通過させるように構成されている。
これにより、シート検知センサ23を含む定着部12の下流側を冷却するための吸引ファン(冷却ファン)や吸気ダクトを専用に設ける場合に比べて、装置が小型化(省スペース化)、低コスト化されることになる。
【0035】
なお、本実施の形態では、
図5、
図6に示すように、保護カバー33や搬送ガイド部材27(両面搬送ガイド部材)に開口部33a、27aを設けたが、通気経路Xを確保するために必要に応じて、第1搬送経路24と第2搬送経路25とのうち少なくとも一方の搬送ガイド部材に、通気経路Xにおける空気が通過する開口部を形成しても良い。
【0036】
<変形例1>
図8(A)、(B)は、変形例1としての画像形成装置100を違う角度からそれぞれ示す斜視図であって、本体カバーの一部が取り外された状態を示す図である。また、
図9は、その画像形成装置100を示す概略断面図であり、
図10は、その画像形成装置100に形成される通気経路X2を示す図である。
図8~
図10に示すように、変形例1における通気経路X2は、本実施の形態における通気経路Xと同様に、外部から内部にそれぞれ取り入れた空気を定着部12とは異なる部分を通過させた後に定着部12の下流側の位置を通過させるように構成されている。しかし、変形例1における通気経路X2は、プロセスカートリッジ1などの作像部を冷却するための吸気経路を用いて定着部12の下流側を冷却する通気経路X2を形成している点が、電源基板32を冷却するための吸気経路を用いて定着部12の下流側を冷却する通気経路Xを形成している本実施の形態のものと相違する。
【0037】
詳しくは、
図8に示すように、変形例1における画像形成装置100には、作像部を冷却する2つの吸引ファン41、42が設置されている。これらの吸引ファン41、42は、装置の高速化によって装置内が温度上昇したり、低融点トナーを用いたりすることにより、作像部で用いられるトナーが固着してしまうのを防止するなど、作像部を冷却するためのものである。吸引ファン41、42は、それぞれ、装置の側方に設けられた吸気口100b、100cから装置内に外気を取り込むファンである。
図9に示すように、作像部(プロセスカートリッジ1)の上部には、装置内を効率よく冷却するためのダクト43が設けられており、装置内に送り込んだ空気が拡散せず所望の場所に流動するように構成されている。このダクト43の排気側には連通口43aが設けられており、この開口部43aに別のダクト44の吸気側の連通口44aが接続されている。
本実施の形態における画像形成装置100は、定着部12と排紙トレイ21との距離が近くなっており、排紙トレイ21が定着部12で生じた熱によって熱くなってしまう可能性がある。これに対して、変形例1では、定着部12と排紙トレイ21との間にダクト44が設けられていて、その部分が冷却されることになるため、そのような不具合が生じにくくなる。
そして、変形例1では、
図10において白矢印で示すように、装置両側に配置された吸引ファン41、42から吸引された空気は、ダクト43、44を経由して定着部12の上方を流動した後に、定着部12の下流側に流動してシート検知センサ23などを冷却した後に、第1、第2搬送経路24、25を経由して排出口A、露出口Bから装置外に排気されることになる。
このように通気経路X2を構成した場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0038】
<変形例2>
図11は、変形例2としての画像形成装置100に形成される通気経路X1、X2を示す図である。
変形例2における通気経路X1、X2は、電源基板32を冷却するための吸気経路(本実施の形態における通気経路Xの吸気経路)と、作像部を冷却するための吸気経路(変形例1における通気経路X2の吸気経路)と、を用いて定着部12の下流側を冷却する通気経路X1、X2を形成している。
すなわち、変形例2における通気経路X1、X2は、複数の吸気口100a~100c(複数の吸引ファン31、41、42)を介して画像形成装置100の外部から内部にそれぞれ取り入れた空気を、それぞれシート検知センサ23を含む定着部12の搬送方向下流側の位置を通過させて、第1、第2搬送経路24、25を通過させるように構成されている。
変形例2において、シート検知センサ23は、電源基板32を冷却するための吸気経路(本実施の形態における通気経路Xの吸気経路)と、作像部を冷却するための吸気経路(変形例1における通気経路X2の吸気経路)と、が合流する合流部から切替部材22の位置までの搬送経路中に配置されていることになる。
このように通気経路X1、X2を構成した場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。特に、変形例2では、2つの吸気経路から吸気された空気によって、シート検知センサ23を含む定着部12の下流側が冷却されることになるため、その冷却効率がさらに向上することになる。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態における画像形成装置1は、定着部12を通過したシートPが第1搬送経路24(排出経路)と第2搬送経路25(反転経路)とのうちいずれか一方に搬送されるように切り替える切替部材22が設置され、シートPの有無を検知するシート検知センサ23が定着部12に対して搬送方向下流側であって切替部材22に対して搬送方向上流側に設置されている。さらに、画像形成装置100の外部から内部に取り入れた空気を、シート検知センサ23を含む定着部12の搬送方向下流側の位置を通過させて、第1搬送経路24と第2搬送経路25とのうち少なくとも一方を通過させる通気経路Xが設けられている。
これにより、画像形成装置100が大型化、高コスト化することなく、取り込んだ空気を定着部12の下流側を通過させた後に装置外に排出することができて、定着部12の下流側で分岐する2つの搬送経路24、25においてそれぞれシートPが安定して搬送されることになる。
【0040】
なお、本実施の形態では、画像形成装置100の外部から内部に取り入れた空気を、シート検知センサ23を含む定着部12の搬送方向下流側の位置を通過させて、第1搬送経路24と第2搬送経路25とを通過させるように通気経路Xを構成した。
これに対して、画像形成装置100の外部から内部に取り入れた空気を、シート検知センサ23を含む定着部12の搬送方向下流側の位置を通過させて、第2搬送経路25を通過させずに、第1搬送経路24を通過させるように通気経路Xを構成することもできる。また、画像形成装置100の外部から内部に取り入れた空気を、シート検知センサ23を含む定着部12の搬送方向下流側の位置を通過させて、第1搬送経路24を通過させずに、第2搬送経路25を通過させるように通気経路Xを構成することもできる。
そして、そのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0041】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0042】
なお、本願明細書等において、「画像形成装置」とは、画像を記録する記録媒体であるシートに現像剤としてのトナーやインクを付着させて画像形成をおこなう装置であるものと定義する。また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することをも意味するものと定義する。また、「シート」とは、紙(用紙)に限らず、OHPシート、布帛なども含み、現像剤を付着させることができる媒体又は原稿であるものと定義する。また、「用紙」とは、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等も含まれるものと定義する。
【符号の説明】
【0043】
1 プロセスカートリッジ(画像形成部)、
2 感光体、
12 定着部、
14 転写ローラ(画像形成部)、
20 排出反転ローラ、
22 切替部材、
23 シート検知センサ(検知手段)、
24 第1搬送経路(排出経路)、
25 第2搬送経路(反転経路)、
26 両面搬送経路、
27 搬送ガイド部材、
27a 開口部、
31 吸引ファン、
32 電源基板(定着部とは異なる部分)、
33 保護カバー、
33a 開口部、
41、42 吸引ファン、
43 第1ダクト、
44 第2ダクト、
100 画像形成装置、
A 排出口(排気口)、 B 露出口(排気口)、
P シート、
X、X1、X2 通気経路。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】