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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】バリスタ形成用樹脂組成物及びバリスタ
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20220728BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220728BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20220728BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20220728BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20220728BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20220728BHJP
   C08K 5/1539 20060101ALI20220728BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20220728BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/04
C08K7/06
C08K5/17
C08K5/13
C08K5/09
C08K5/1539
C08K5/3445
C08G59/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017237661
(22)【出願日】2017-12-12
(65)【公開番号】P2019104816
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2019-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 義隆
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-521058(JP,A)
【文献】特開2014-177539(JP,A)
【文献】特開2010-095702(JP,A)
【文献】特開2010-206202(JP,A)
【文献】特表2013-504684(JP,A)
【文献】特表2012-504870(JP,A)
【文献】国際公開第2015/082498(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106009029(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08G 59/00 - 59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、
(C)カーボンナノチューブ、及び
(D)分散剤
を含み、
(A)エポキシ樹脂100重量部に対して、(C)カーボンナノチューブを0.05重量部以上1.14重量部以下含み、(D)分散剤を0.17~5.70重量部含み、
(D)分散剤は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、炭化水素系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ポリカルボン酸、ポリエーテル系カルボン酸、ポリカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン塩、芳香族高分子、有機導電性高分子、ポリアルキルオキサイド系界面活性剤、無機塩、有機酸塩、及び脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1つを含む、バリスタ形成用樹脂組成物。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、
(C)カーボンナノチューブ、及び
(D)分散剤
を含み、
(A)エポキシ樹脂100重量部に対して、(C)カーボンナノチューブを0.05重量部以上1.14重量部以下含み、(D)分散剤を0.17~5.70重量部含み、
(D)分散剤は、界面活性剤を含む、バリスタ形成用樹脂組成物。
【請求項3】
(A)エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、エーテル系エポキシ樹脂、ポリエーテル系エポキシ樹脂、及びシリコーンエポキシコポリマー樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載のバリスタ形成用樹脂組成物。
【請求項4】
(B)硬化剤は、アミン化合物、フェノール、酸無水物、及びイミダゾール化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載のバリスタ形成用樹脂組成物。
【請求項5】
(C)カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、またはこれらの両方を含む、請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載のバリスタ形成用樹脂組成物。
【請求項6】
(C)カーボンナノチューブは、単離された単層の半導体型カーボンナノチューブを含む、請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載のバリスタ形成用樹脂組成物。
【請求項7】
(D)分散剤は、ポリアルキルオキサイド系界面活性剤を含み、
ポリアルキルオキサイド系界面活性剤は、分子中にポリアルキルエーテル骨格をもつ、請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載のバリスタ形成用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載のバリスタ形成用樹脂組成物の硬化物を含む、バリスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリスタ形成用樹脂組成物及びバリスタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エポキシ樹脂、硬化剤、及びカーボンナノチューブを含有するアンダーフィル材料が記載されている。このアンダーフィル材料中に含まれるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブであることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2013-504684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バリスタとは、一対の電極をもつ電子部品であり、一対の電極間の電圧が低い場合には電気抵抗が高く、一対の電極間の電圧が所定以上になると急激に電気抵抗が低くなる性質を有する。一般的に、バリスタは、一対の電極の間に非直線性抵抗特性を有する材料を配置した構造を有する。非直線性抵抗特性を有する材料として、炭化珪素、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム等の半導体セラミックスが用いられる。バリスタは、(1)雷サージから電子機器を保護する、(2)異常な信号電圧からICを保護する、(3)人体由来の静電気破壊(ESD)から電子機器を保護する、などの用途に用いられる。
【0005】
従来のバリスタは、基板、IC、あるいは電子機器の設計の自由度が低くなるという問題があった。すなわち、一対の電極の間に非直線性抵抗特性を有する材料を配置したバリスタを基板、IC、あるいは電子機器に実装する場合、実装を考慮した設計が必要となるため、基板、IC、あるいは電子機器の設計の自由度が低くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、基板、IC、あるいは電子機器の設計の自由度を高めることのできるバリスタ形成用樹脂組成物及びバリスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するための手段は、以下の通りである。
(1) (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)カーボンナノチューブ、及び(D)分散剤を含む、バリスタ形成用樹脂組成物。
【0008】
(2) (A)エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、エーテル系エポキシ樹脂、ポリエーテル系エポキシ樹脂、及びシリコーンエポキシコポリマー樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含む、(1)に記載のバリスタ形成用樹脂組成物。
【0009】
(3) (B)硬化剤は、アミン化合物、フェノール、酸無水物、及びイミダゾール化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、(1)又は(2)に記載のバリスタ形成用樹脂組成物。
【0010】
(4) (C)カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、またはこれらの両方を含む、(1)から(3)のうちいずれかに記載のバリスタ形成用樹脂組成物。
【0011】
(5) (C)カーボンナノチューブは、単離された単層の半導体型カーボンナノチューブを含む、(1)から(3)のうちいずれかに記載のバリスタ形成用樹脂組成物。
【0012】
(6) (A)エポキシ樹脂100重量部に対して、(C)カーボンナノチューブを0.05~2重量部含む、(1)から(5)のうちいずれかに記載のバリスタ形成用樹脂組成物。
【0013】
(7) (D) 分散剤は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、炭化水素系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ポリカルボン酸、ポリエーテル系カルボン酸、ポリカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン塩、芳香族高分子、有機導電性高分子、ポリアルキルオキサイド系界面活性剤、無機塩、有機酸塩、及び脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1つを含む、(1)から(6)のうちいずれかに記載のバリスタ形成用樹脂組成物。
【0014】
(8) (D)分散剤は、ポリアルキルオキサイド系界面活性剤を含み、ポリアルキルオキサイド系界面活性剤は、分子中にポリアルキルエーテル骨格をもつ、(7)に記載のバリスタ形成用樹脂組成物。
【0015】
(9) (1)から(8)のうちいずれかに記載のバリスタ形成用樹脂組成物の硬化物を含む、バリスタ。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板、IC、あるいは電子機器の設計の自由度を高めることのできるバリスタ形成用樹脂組成物及びバリスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一対の電極の平面図である。
図2】バリスタの平面図である。
図3】一対の電極に印加した電圧の大きさと、時間との関係を示すグラフである。
図4】実施例1~4と、比較例1の電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。
図5】実施例1、5、6と、比較例1の電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。
図6】実施例1、7、8、9と、比較例1の電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。
図7】実施例10と、比較例2の電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。
図8】実施例1、11、12、13と、比較例1の電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。
図9】実施例1、14、15の電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。
図10】比較例3、4の電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係るバリスタ形成用樹脂組成物は、電子素子の一つであるバリスタの製造に用いられる。
【0019】
バリスタは、非直線性抵抗特性を有する電子素子であり、一対の電極を有する。一対の電極の間に印加する電圧Vと、一対の電極の間に流れる電流Iとの関係は、I=K・Vαによって近似される(Kは定数)。αは、非直線性係数と呼ばれる。通常のオーミックな抵抗体の場合はα=1であるが、バリスタの場合にはα>1となる。
【0020】
本実施形態に係るバリスタ形成用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)カーボンナノチューブ、及び(D)分散剤を含む。以下、これらの各成分について説明する。
【0021】
(A)エポキシ樹脂は、好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、エーテル系エポキシ樹脂、ポリエーテル系エポキシ樹脂、及びシリコーンエポキシコポリマー樹脂からなる群から選択される少なくとも一つを含む。より好ましくは、(A)エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及びアミノフェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0022】
(B)硬化剤は、好ましくは、アミン化合物、フェノール、酸無水物、及びイミダゾール化合物からなる群から選択される少なくとも一つを含む。より好ましくは、(B)硬化剤は、イミダゾール化合物を含む。
【0023】
イミダゾール化合物の例として、イミダゾール、及び、イミダゾール誘導体を挙げることができる。本実施形態のバリスタ形成用樹脂組成物がイミダゾール化合物を含む場合、高い非直線性係数αを有するバリスタを得ることができる。また、本実施形態のバリスタ形成用樹脂組成物がイミダゾール化合物とアミン化合物の両方を含む場合、より高い非直線性係数αを有するバリスタを得ることができる。
【0024】
アミン化合物の例として、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びジエチルトルエンジアミンを挙げることができる。好ましくは、アミン化合物は、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及び/又はジエチルトルエンジアミンである。3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンは、芳香族アミン系硬化剤であり、例えば「KAYAHARD A-A」(日本化薬株式会社製)として市販されている。ジエチルトルエンジアミンは、例えば「エタキュア」(アルベマール社製)として市販されている。
【0025】
本実施形態のバリスタ形成用樹脂組成物がイミダゾール化合物を含む場合、イミダゾール化合物の含有量は、1~20重量%であることが好ましく、より好ましくは2~15重量%であり、さらに好ましくは5~10重量%である。
【0026】
(C)カーボンナノチューブは、炭素によって作られる六員環ネットワークが同軸管状になった物質である。カーボンナノチューブは、単層及び多層のものが知られている。カーボンナノチューブは、電気的性質により、金属型カーボンナノチューブと、半導体型カーボンナノチューブに分類することができる。本実施形態のバリスタ形成用樹脂組成物に含まれる(C)カーボンナノチューブは、単層の半導体型カーボンナノチューブであることが好ましい。
【0027】
(C)カーボンナノチューブの含有量は、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して、0.05~2重量部であることが好ましく、0.1~1重量部であることがより好ましく、0.12~0.6重量部であることがさらに好ましい。
【0028】
(D)分散剤は、界面活性剤を含むことが好ましい。
例えば、(D)分散剤は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、炭化水素系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ポリカルボン酸、ポリエーテル系カルボン酸、ポリカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン塩、芳香族高分子、有機導電性高分子、ポリアルキルオキサイド系界面活性剤、無機塩、有機酸塩、及び脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0029】
(D)分散剤は、ポリアルキルオキサイド系界面活性剤を含むことが好ましい。
ポリアルキルオキサイド系界面活性剤の例として、EO・POブロック共重合型界面活性剤を挙げることができる。EO・POブロック共重合型界面活性剤は、ポリオキシエチレン(EO)-ポリオキシプロピレン(PO)縮合物を含む界面活性剤である。ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合物の構造式は、以下の式(1)の通りである。
【0030】
-(CO)-(CO)- ・・・(1)
【0031】
(D)分散剤は、分子中にポリアルキルエーテル骨格をもつ界面活性剤を含んでもよい。ポリアルキルエーテル骨格の構造式は、以下の式(2)の通りである。
【0032】
-(AO)a- ・・・(2)
AO: エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキルオキサイド
【0033】
本実施形態のバリスタ形成用樹脂組成物は、さらに、溶媒を含むことができる。溶媒として、例えば、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びそれらに対応する酢酸エステルのようなエステル類、並びにテルピネオール等が挙げられる。バリスタ形成用樹脂組成物に含まれる溶媒の含有量は、好ましくは、2~10重量%である。
【0034】
本実施形態のバリスタ形成用樹脂組成物は、さらに、着色剤(無機顔料、有機顔料等)、イオントラップ剤、難燃剤、シランカップリング剤、レベリング剤、チキソトロピック剤、エラストマー、硬化促進剤、金属錯体、及び消泡剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を含んでもよい。
【0035】
本実施形態のバリスタ形成用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)カーボンナノチューブ、(D)分散剤、及びその他の任意成分(添加剤等)を混合して製造することができる。混合には、流星型撹拌機、ディソルバー、ビーズミル、ライカイ機、三本ロールミル、回転式混合機、二軸ミキサー等の公知の混合機を使用することができる。
【0036】
本実施形態のバリスタ形成用樹脂組成物は、例えば、スクリーン印刷や浸漬等によって基板に塗布することができる。
【0037】
本実施形態のバリスタ形成用樹脂組成物を基板に塗布した後、その基板を例えば100℃~200℃に加熱することで硬化物が得られる。この硬化物は、優れたバリスタ特性を有することが本発明者らによって発見された。特に、エポキシ樹脂にカーボンナノチューブ及び分散剤を混合することによって、優れたバリスタ特性を有する硬化物が得られる。
【0038】
本実施形態のバリスタの製造方法は、例えば、以下の工程を有する。
(1)基板の上に、一対の電極を形成する。
(2)1対の電極の間に、本実施形態のバリスタ形成用樹脂組成物をスクリーン印刷等によって塗布する。
(3)バリスタ形成用樹脂組成物が塗布された基板を、例えば100℃~200℃に加熱する。
【0039】
本実施形態のバリスタ形成用樹脂組成物を用いることによって、高い非直線性係数αを有するバリスタを製造することができる。
【0040】
本実施形態のバリスタ形成用樹脂組成物をスクリーン印刷等によって基板に塗布した後、塗布したバリスタ形成用樹脂組成物を加熱することでバリスタを形成できる。本実施形態のバリスタ形成用樹脂組成物を用いることによって、基板やICにバリスタを実装することが不要となるため、基板、IC、あるいは電子機器の設計の自由度を高めることができる。
【実施例
【0041】
以下、本発明の実施例について説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0042】
<バリスタ形成用樹脂組成物の調製>
以下の(A)~(D)成分を用いて、バリスタ形成用樹脂組成物を調製した。
【0043】
(A)エポキシ樹脂
以下の3種類のエポキシ樹脂(A1、A2、A3)を使用した。
(A1)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂60重量%と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂40重量%とを混合したエポキシ樹脂。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂として、新日鉄住金化学株式会社製「YDF-8170」を使用した。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂として、三菱ケミカル株式会社製「jER1001」を使用した。
(A2)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製「YDF-8170」)。
(A3)
アミノフェノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製「jER630」)。
【0044】
(B)硬化剤
以下の4種類の硬化剤(B1、B2、B3、B4)を使用した。
(B1)
アミン系硬化剤、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(日本化薬株式会社製「KAYAHARD A-A(HDAA)」)。
(B2)
イミダゾール系硬化剤(四国化成工業株式会社製「2P4MHZ-PW」)。
(B3)
フェノール(明和化成株式会社製「MEH-8005」)。
(B4)
酸無水物(三菱ケミカル株式会社製「YH307」)。
【0045】
(C)カーボンナノチューブ
以下の2種類のカーボンナノチューブ(C1、C2)を使用した。また、比較例として、カーボンブラック(C3)を使用した。
(C1)
単層カーボンナノチューブ(NANOLAB社製「PD1.5L15-S」)。
(C2)
多層カーボンナノチューブ(NANOLAB社製「PD15L1-5」)。
(C3)
カーボンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製「EC600JD」)。
【0046】
(D)分散剤
以下の4種類の分散剤(D1、D2、D3、D4)を使用した。
(D1)
ポリエーテル系カルボン酸(楠本化成株式会社製「HIPLAAD ED 350」)
(D2)
ポリエーテル系カルボン酸(楠本化成株式会社製「HIPLAAD ED 451」)
(D3)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(株式会社ADEKA製「アデカプルロニックL-44」)
(D4)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(株式会社ADEKA製「アデカプルロニックL-64」)
【0047】
上記(A)~(D)成分を、以下の表1~表3に示す割合で混合することにより、実施例1~15、及び、比較例1~4の樹脂組成物を調製した。なお、表1~表3に示す各成分の割合は、全て重量部で示しており、エポキシ樹脂の含有量を100重量部としている。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
<バリスタの製造>
図1に示す、櫛形の電極14a及び14bを有する基板12を用いた。基板12として、FR-4を材料とする銅箔付き多層プリント配線板を用いた。多層プリント配線板の銅箔をパターニングすることにより、電極14a及び14bを形成した。
【0052】
次に、図2に示すように、基板12の表面に形成された櫛形の電極14a及び14bを覆うように、実施例及び比較例のバリスタ形成用樹脂組成物16をスクリーン印刷によって塗布した。塗布したバリスタ形成用樹脂組成物16を、ポリイミドフィルム(図示せず)によって被覆した。その後、バリスタ形成用樹脂組成物16が塗布された基板12を、165℃の温度で2時間加熱して、バリスタ10を製造した。バリスタ形成用樹脂組成物16が硬化した後の厚さは、90μmであった。
【0053】
<バリスタの電流-電圧特性の測定及び非直線性係数αの算出>
上述のようにして製造した実施例及び比較例のバリスタの電流-電圧特性を測定した。具体的には、バリスタの一対の電極(電極14a及び電極14b)に電圧を印加し、そのときに流れる電流値を測定した。
【0054】
図3は、一対の電極(電極14a及び電極14b)に印加した電圧の大きさと、時間との関係を示すグラフである。図3に示すように、バリスタの電流-電圧特性の測定では、一対の電極に印加する電圧を、0.1Vずつ段階的に大きくした(a=0.1V)。各電圧における印加時間は、110μsecに設定した(b=110μsec)。一対の電極の間に流れる電流の最大値は、0.12mAに設定した。
【0055】
次に、バリスタの電流-電圧特性のデータから、非直線性係数αを算出した。具体的には、バリスタの電流-電圧特性のデータをシミュレータによって解析し、カーブフィッティングにより、I=K・Vαに適合するK及びαの値を求めた。表1~表3に、各実施例及び比較例におけるαの算出結果を示す。
【0056】
表1~表3に示す結果から分かる通り、実施例1~15の樹脂組成物を加熱して得られたバリスタは、α>7.0であり、良好なバリスタ特性を有していた。これに対して、比較例1~4の樹脂組成物を加熱して得られたバリスタは、α<7.0であり、良好なバリスタ特性を有していなかった。
【0057】
図4は、実施例1~4と、比較例1の電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。図4から分かる通り、分子中にポリアルキルエーテル骨格をもつ分散剤を含む樹脂組成物を加熱して得られたバリスタは、分散剤を含まない樹脂組成物を加熱して得られたバリスタよりも、高いα値を有していた。この結果より、分子中にポリアルキルエーテル骨格をもつ分散剤を含む樹脂組成物を加熱して得られたバリスタは、良好な非線形性を有していることが分かる。
【0058】
図5は、実施例1、5、6と、比較例1の電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。図5から分かる通り、エポキシ樹脂100重量部に対して、分子中にポリアルキルエーテル骨格をもつ分散剤を0.17~1.70重量部含む樹脂組成物を加熱して得られたバリスタは、分散剤を含まない樹脂組成物を加熱して得られたバリスタよりも、高いα値を有していた。
【0059】
図6は、実施例1、7、8、9と、比較例1の電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。図6から分かる通り、分子中にポリアルキルエーテル骨格をもつ分散剤を含む樹脂組成物を加熱して得られたバリスタは、分散剤を含まない樹脂組成物を加熱して得られたバリスタよりも、高いα値を有していた。このような効果は、少なくとも、エポキシ樹脂100重量部に対して、カーボンナノチューブの含有量が0.07~1.14重量部の範囲で確認された。
【0060】
図7は、実施例10と、比較例2の電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。図7から分かる通り、分子中にポリアルキルエーテル骨格をもつ分散剤と、多層カーボンナノチューブとを含む樹脂組成物を加熱して得られたバリスタは、多層カーボンチューブを含み、かつ分散剤を含まない樹脂組成物を加熱して得られたバリスタよりも、高いα値を有していた。この結果より、分子中にポリアルキルエーテル骨格をもつ分散剤を含むバリスタ形成用樹脂組成物は、カーボンナノチューブが単層であるか多層であるかに関わらず、バリスタ形成用材料として優れた特性を有していることが分かる。
【0061】
図8は、実施例1、11、12、13と、比較例1の電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。図8から分かる通り、分子中にポリアルキルエーテル骨格をもつ分散剤を含む樹脂組成物を加熱して得られたバリスタは、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、フェノール、及び酸無水物のうちいずれの硬化剤を含む場合であっても、高いα値を有していた。この結果より、分子中にポリアルキルエーテル骨格をもつ分散剤を含むバリスタ形成用樹脂組成物は、硬化剤の種類に関わらず、バリスタ形成用材料として優れた特性を有していることが分かる。
【0062】
図9は、実施例1、14、15の電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。図9から分かる通り、分子中にポリアルキルエーテル骨格をもつ分散剤を含む樹脂組成物を加熱して得られたバリスタは、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びアミノフェノール型エポキシ樹脂のうちいずれのエポキシ樹脂を用いた場合であっても、高いα値を有していた。この結果より、分子中にポリアルキルエーテル骨格をもつ分散剤を含むバリスタ形成用樹脂組成物は、エポキシ樹脂の種類に関わらず、バリスタ形成用材料として優れた特性を有していることが分かる。
【0063】
図10は、比較例3、4の電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。図10から分かる通り、カーボンブラックを含む樹脂組成物を加熱して得られたバリスタは、高いα値を有していなかった。また、分子中にポリアルキルエーテル骨格をもつ分散剤と、カーボンブラックを含む樹脂組成物を加熱して得られたバリスタも、高いα値を有していなかった。この結果より、カーボンナノチューブの代わりにカーボンブラックを用いた場合であっても、非線形性は改善せず、本発明の効果が得られないことが分かる。
【符号の説明】
【0064】
10 バリスタ
12 基板
14a、14b 電極
16 バリスタ形成用樹脂組成物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10