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特許7112829レーダ装置、レーダ装置の制御方法、および、レーダシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】レーダ装置、レーダ装置の制御方法、および、レーダシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/22 20060101AFI20220728BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20220728BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20220728BHJP
【FI】
G01S13/22
G01S7/02 212
G01S13/931
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017013714
(22)【出願日】2017-01-27
(65)【公開番号】P2018119934
(43)【公開日】2018-08-02
【審査請求日】2019-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100130247
【弁理士】
【氏名又は名称】江村 美彦
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隼
(72)【発明者】
【氏名】矢野 寛裕
(72)【発明者】
【氏名】石田 祥之
(72)【発明者】
【氏名】田島 秀一
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/178131(WO,A1)
【文献】特開昭60-100775(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0278727(US,A1)
【文献】特開2007-003228(JP,A)
【文献】特開2016-156754(JP,A)
【文献】特表平10-509507(JP,A)
【文献】特開昭63-206679(JP,A)
【文献】特開昭61-149879(JP,A)
【文献】特開平07-229965(JP,A)
【文献】特開2001-126194(JP,A)
【文献】国際公開第2006/013615(WO,A1)
【文献】特開平04-074988(JP,A)
【文献】特開昭60-039577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/64,
G01S 13/00-13/95,
G01S 15/00-15/96,
G01S 17/00-17/95,
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、パルス信号を送信して物標を検出するレーダ装置において、
前記パルス信号を送信する送信手段と、
前記送信手段による前記パルス信号の送信タイミングを調整する調整手段と、
前記パルス信号の異なる間隔のパルス周期を設定するスタガ方式に基づく送信タイミングを示すタイミング情報であって、送信タイミング同士が相互に重複しない複数の前記タイミング情報を格納する格納手段と、
自車両に搭載されている他のレーダ装置と重複しない前記タイミング情報を選択し、前記調整手段に設定する設定手段と、
前記送信手段から送信され、前記物標によって反射された前記パルス信号を受信する受信手段と、
前記他のレーダ装置との間で情報を授受するための通信手段と、
を有し、
前記受信手段によって受信される前記パルス信号を積算して得られる信号の強度に基づいて前記物標を検出し、
記設定手段は、前記車両のエンジンが始動されるたびに、前記通信手段を介して授受された情報に基づいて、前記他のレーダ装置と重複しない前記タイミング情報を前記格納手段から選択して前記調整手段に設定する、ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記格納手段に複数格納されている前記タイミング情報の1つは固定のパルス周期であり、それ以外の前記タイミング情報は前記固定のパルス周期を任意の時間ずらした前記異なる間隔のパルス周期であることを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記格納手段に複数格納されている前記タイミング情報の1つは固定のパルス周期であり、それ以外の前記タイミング情報は前記固定のパルス周期を任意の時間ずらすための時間のずれを示す情報であることを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
操作者の操作に応じた情報を入力する入力手段を有し、
前記設定手段は、前記入力手段から入力された情報に対応する前記タイミング情報を前記格納手段から取得して前記調整手段に設定する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項5】
車両に搭載され、パルス信号を送信して物標を検出するレーダ装置の制御方法において、
前記パルス信号を送信する送信ステップと、
前記送信ステップにおける前記パルス信号の送信タイミングを調整する調整ステップと、
前記パルス信号の異なる間隔のパルス周期を設定するスタガ方式に基づく送信タイミングを示すタイミング情報であって、送信タイミング同士が相互に重複しない複数の前記タイミング情報を記憶媒体に格納する格納ステップと、
自車両に搭載されている他のレーダ装置と重複しない前記タイミング情報を選択し、前記調整ステップに設定する設定ステップと、
前記送信ステップで送信され、前記物標によって反射された前記パルス信号を受信する受信ステップと、
を有し、
前記受信ステップで受信される前記パルス信号を積算して得られる信号の強度に基づいて前記物標を検出し、
前記設定ステップでは、前記車両のエンジンが始動されるたびに、前記他のレーダ装置との間で情報を授受するための通信手段を介して授受された情報に基づいて、前記他のレーダ装置と重複しない前記タイミング情報を前記記憶媒体から選択して前記調整ステップに設定する、ことを特徴とするレーダ装置の制御方法。
【請求項6】
車両に搭載され、パルス信号を送信して物標を検出するレーダ装置を複数有するレーダシステムにおいて、
各レーダ装置は、
前記パルス信号を送信する送信手段と、
前記送信手段による前記パルス信号の送信タイミングを調整する調整手段と、
前記パルス信号の異なる間隔のパルス周期を設定するスタガ方式に基づく送信タイミングを示すタイミング情報であって、送信タイミング同士が相互に重複しない複数の前記タイミング情報を格納する格納手段と、
自車両に搭載されている他のレーダ装置と重複しない前記タイミング情報を選択し、前記調整手段に設定する設定手段と、
前記送信手段から送信され、前記物標によって反射された前記パルス信号を受信する受信手段と、
前記他のレーダ装置との間で情報を授受するための通信手段と、
を有し、
前記受信手段によって受信される前記パルス信号を積算して得られる信号の強度に基づいて前記物標を検出し、
記設定手段は、前記車両のエンジンが始動されるたびに、前記通信手段を介して授受された情報に基づいて、前記他のレーダ装置と重複しない前記タイミング情報を前記格納手段から選択して前記調整手段に設定することを特徴とするレーダシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置、レーダ装置の制御方法、および、レーダシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、隣接した複数のビームを形成するアンテナと、それぞれのアンテナへのレーダ信号の送信手段と、それぞれのアンテナからのレーダ信号の受信手段と、送受切換器と、受信手段出力の振幅値がしきい値を越える信号の振幅値とその信号の受信時刻から車間距離を求める強度距離計測手段と、隣接するビームでの信号の利得を調整する利得調整手段と、距離ごとに利得調整手段出力から隣接するビームでの信号の強度を比較し2輪車か4輪車かを判定する車両判定手段と、車両判定手段出力を表示する表示器と、を備えたことを特徴とするレーダシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-162397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示す技術では、複数のアンテナから電波を送信することから、アンテナから送信された電波同士が干渉し、場合によっては偽像が検出されるという問題点がある。
【0005】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、偽像が検出されることを防止できるレーダ装置、レーダ装置の制御方法、および、レーダシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、車両に搭載され、パルス信号を送信して物標を検出するレーダ装置において、前記パルス信号を送信する送信手段と、前記送信手段による前記パルス信号の送信タイミングを調整する調整手段と、前記パルス信号の繰り返し周期を不等間隔に設定するスタガ方式に基づく送信タイミングを示すタイミング情報であって、送信タイミング同士が相互に重複しない複数の前記タイミング情報を格納する格納手段と、自車両に搭載されている他のレーダ装置と重複しない前記タイミング情報を選択し、前記調整手段に設定する設定手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、偽像が検出されることを防止できる。
【0007】
また、本発明は、前記格納手段に複数格納されている前記タイミング情報の1つは前記繰り返し周期であり、それ以外の前記タイミング情報は前記繰り返し周期を任意の時間ずらした非固定の前記繰り返し周期であることを特徴とする。
このような構成によれば、タイミング情報を簡単に生成することができる。
【0008】
また、本発明は、前記他のレーダ装置との間で情報を授受するための通信手段を有し、前記設定手段は、前記通信手段を介して授受された情報に基づいて、前記他のレーダ装置と重複しない前記タイミング情報を前記格納手段から選択して前記調整手段に設定する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、レーダ装置同士が通信によって適切なタイミング情報を自動的に設定することができる。
【0009】
また、本発明は、操作者の操作に応じた情報を入力する入力手段を有し、前記設定手段は、前記入力手段から入力された情報に対応する前記タイミング情報を前記格納手段から取得して前記調整手段に設定する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、操作者の操作に応じた適切なタイミング情報を設定することができる。
【0010】
また、本発明は、車両に搭載され、パルス信号を送信して物標を検出するレーダ装置の制御方法において、前記パルス信号を送信する送信ステップと、前記送信ステップにおける前記パルス信号の送信タイミングを調整する調整ステップと、前記パルス信号の繰り返し周期を不等間隔に設定するスタガ方式に基づく送信タイミングを示すタイミング情報であって、送信タイミング同士が相互に重複しない複数の前記タイミング情報を記憶媒体に格納する格納ステップと、自車両に搭載されている他のレーダ装置と重複しない前記タイミング情報を選択し、前記調整ステップに設定する設定ステップと、を有することを特徴とする。
このような方法によれば、偽像が検出されることを防止できる。
【0011】
また、本発明は、車両に搭載され、パルス信号を送信して物標を検出するレーダ装置を複数有するレーダシステムにおいて、各レーダ装置は、前記パルス信号を送信する送信手段と、前記送信手段による前記パルス信号の送信タイミングを調整する調整手段と、前記パルス信号の繰り返し周期を不等間隔に設定するスタガ方式に基づく送信タイミングを示すタイミング情報であって、送信タイミング同士が相互に重複しない複数の前記タイミング情報を格納する格納手段と、自車両に搭載されている他のレーダ装置と重複しない前記タイミング情報を選択し、前記調整手段に設定する設定手段と、を有する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、偽像が検出されることを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、偽像が検出されることを防止できるレーダ装置、レーダ装置の制御方法、および、レーダシステムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るレーダシステムの実装例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るレーダシステムの構成例を示す図である。
図3図2に示すレーダ装置の詳細な構成例を示すブロック図である。
図4図3に示す制御・処理部の詳細な構成例を示すブロック図である。
図5】従来例の動作を説明するための図である。
図6図1に示す実施形態の動作を説明するための図である。
図7図1に示す実施形態の動作を説明するための図である。
図8図7に示す繰り返し周期の詳細を説明するための図である。
図9図1に示す実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
(A)実施形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係るレーダシステムの実装例を示す図である。この図に示すように、本発明の実施形態に係るレーダシステムを構成するレーダ装置10-1,10-2は、車両Cの後部の左右にそれぞれ配置されている。これらのレーダ装置10-1,10-2は、車両Cの後方に検出領域を有し、検出領域に検出物標としての物標(例えば、他の車両、自転車、人等)が存在し、かつ、物標が自車両に接触または衝突する可能性がある場合には、警報を発する。
【0016】
図2は、レーダシステムの構成例を示す図である。本実施形態に係るレーダシステムは、ECU(Electric Control Unit)30、レーダ装置10-1,10-2を有し、これらECU30およびレーダ装置10-1,10-2が通信線41,42によって接続されて構成される。なお、図2では、ECU30を例に挙げているが、ネットワークにおける自己のID(Identification)を認識でき、かつ、通信線41,42を介して他の装置を制御できる機能を有する装置であれば、ECU以外の装置を用いるようにしてもよい。
【0017】
ここで、ECU30は、車両の各部を制御するとともに、レーダ装置10-1,10-2から通信線41,42を介して供給される情報に基づいて物標を検出し、必要に応じて警告等を行う。
【0018】
レーダ装置10-1,10-2は、検出対象である物標に対してパルス信号を照射し、反射信号に基づいて物標を検出し、通信線41,42を介してECU30に伝える。また、レーダ装置10-1,10-2は、通信線41,42によって接続され、一方がマスタとして動作し、他方がスレーブとして動作する。
【0019】
図3は、図2に示すレーダ装置10-1,10-2の構成例を示す図である。なお、レーダ装置10-1,10-2は同様の構成とされているので、以下では、これらをレーダ装置10として説明する。
【0020】
図3に示すように、レーダ装置10は、局部発振部11、送信部12、制御・処理部15、受信部16、および、A/D(Analog to Digital)変換部21を主要な構成要素としている。
【0021】
ここで、局部発振部11は、所定の周波数のCW(Continuous Wave)信号を生成して、送信部12と受信部16に供給する。
【0022】
送信部12は、変調部13および送信アンテナ14を有し、局部発振部11から供給されるCW信号を、変調部13によってパルス変調し、送信アンテナ14を介して物標に対して送信する。
【0023】
送信部12の変調部13は、制御・処理部15によって制御され、局部発振部11から供給されるCW信号をパルス変調してパルス信号を生成して出力する。送信アンテナ14は、変調部13から供給されるパルス信号を、物標に向けて送信する。
【0024】
制御・処理部15は、変調部13、利得可変増幅部19、および、アンテナ切換部18を制御するとともに、A/D変換部21から供給される受信データに対して演算処理を実行することで、物標を検出する。
【0025】
図4は、図3に示す制御・処理部15の詳細な構成例を示すブロック図である。図4に示すように、制御・処理部15は、制御部15a、処理部15b、通信部15c、および、設定部15dを有している。ここで、制御部15aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等によって構成され、ROMおよびRAMに記憶されているデータに基づいて装置の各部を制御する。処理部15bは、例えば、DSP(Digital Signal Processor)等によって構成され、A/D変換部21から供給されるデジタル信号に対する処理を実行し、物標を検出する。通信部15cは、通信線41,42を介して他のレーダ装置との間で情報を授受する。設定部15dは、後述するようにパルス信号の繰り返し周期を設定する。
【0026】
図3に戻る。受信部16は、受信アンテナ17、アンテナ切換部18、利得可変増幅部19、および、復調部20を有し、送信アンテナ14から送信され、物標によって反射された信号を受信して復調処理を施した後、A/D変換部21に出力する。
【0027】
受信部16の受信アンテナ17は、複数のアンテナ(例えば、4つのアンテナ)によって構成され、送信アンテナ14から送信され、物標によって反射された信号を受信し、アンテナ切換部18に供給する。アンテナ切換部18は、制御・処理部15の制御部15aによって制御され、受信アンテナ17のいずれか1つを選択して、受信信号を利得可変増幅部19に供給する。利得可変増幅部19は、制御・処理部15の制御部15aによって利得が制御され、アンテナ切換部18から供給される受信信号を所定の利得で増幅して復調部20に出力する。復調部20は、利得可変増幅部19から供給される受信信号を、局部発振部11から供給されるCW信号を用いて復調して出力する。
【0028】
A/D変換部21は、復調部20から供給される受信信号を所定の周期でサンプリングし、デジタル信号に変換して制御・処理部15に供給する。
【0029】
(B)実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の実施形態の動作を説明する。本発明の実施形態では、車両のエンジンが始動されるたびに以下の動作が実行され、レーダ装置10-1,10-2が干渉しないように設定される。
【0030】
すなわち、本実施形態では、エンジンを始動するためにイグニッションキーをオンの状態にすると、図2に示すECU30およびレーダ装置10-1,10-2に対して電源電力の供給が開始される。
【0031】
電源電力の供給が開始されると、レーダ装置10-1の制御部15aは、例えば、車両から特定の信号を受け取ることで自身がマスタであると認識する。そして、レーダ装置10-1の設定部15dは、マスタ用のタイミング情報を、図示しない格納部(例えば、半導体メモリ)から取得し、制御部15aに設定する。制御部15aは、設定部15dによって設定されたマスタ用のタイミング情報に基づいて、変調部13を制御し、パルス信号を送信する。
【0032】
一方、レーダ装置10-2の制御部15aは、例えば、車両から特定の信号を受け取らないことから、自身はスレーブであると認識する。そして、レーダ装置10-2の設定部15dは、スレーブ用のタイミング情報を、図示しない格納部から取得し、制御部15aに設定する。制御部15aは、設定部15dによって設定されたスレーブ用のタイミング情報に基づいて、変調部13を制御し、パルス信号を送信する。
【0033】
ここで、レーダ装置10-1およびレーダ装置10-2から送信されるパルス信号は、スタガ方式に基づいて送信タイミングが不等間隔に異なるように設定される。
【0034】
図5は、レーダ装置10-1,10-2がスタガ方式を用いないで、固定の繰り返し周期でパルス信号を送信した場合の信号の状態を示す図である。より詳細には、図5(A)は、スタガ方式を用いない場合に、レーダ装置10-1から送信されるパルス信号を示し、図5(B)は同じ場合にレーダ装置10-2から送信されるパルス信号を示している。なお、図5(A),(B)において横軸は時間を示し、縦軸は信号強度を示している。
【0035】
図5(A)に示すように、レーダ装置10-1から送信されるパルス信号は、固定の繰り返し周期で送信される。また、図5(B)に示すように、レーダ装置10-2から送信されるパルス信号は、レーダ装置10-1よりも任意の時間τだけ遅れて送信され、レーダ装置10-1と同じ固定の繰り返し周期で送信される。
【0036】
図5(C)は、レーダ装置10-1において受信される信号を積算した結果を示している。レーダ装置10-1が送信するパルス信号は、図5(A)に示すように固定の繰り返し周期であるので、例えば、物標によって反射された受信信号を積算すると、これらの信号が累積加算された信号(図5(C)の左側の信号)を得る。ところで、レーダ装置10-1は、自身が送信したパルス信号だけでなく、レーダ装置10-2が送信し、物標によって反射された信号を受信するとともに、レーダ装置10-2が送信した信号も直接受信する。レーダ装置10-2が送信するパルス信号は、図5(B)に示すように固定の繰り返し周期を有しているので、図5(C)に示すように、時間τだけ送れた位置に、干渉信号(図5(C)の右側の信号)が現れる。このため、レーダ装置10-1は、干渉信号を物標として誤検出してしまうことから、これが偽像となる。
【0037】
図6は、レーダ装置10-1,10-2がスタガ方式を用いてパルス信号を送信した場合の信号の状態を示す図である。より詳細には、図6(A)は、スタガ方式を用いた場合に、レーダ装置10-1から送信されるパルス信号を示し、図6(B)は同じ場合にレーダ装置10-2から送信されるパルス信号を示している。なお、図6(A),(B)において横軸は時間を示し、縦軸は信号強度を示している。
【0038】
図6(A)に示すように、レーダ装置10-1から送信されるパルス信号は、図5(A)と同様に、固定の繰り返し周期で送信される。一方、図6(B)に示すように、レーダ装置10-2から送信されるパルス信号は、レーダ装置10-1よりも任意の時間τだけ遅れて送信されるが、破線で示す固定の繰り返し周期のタイミングに比較すると、パルス毎に送信のタイミングがずれを有している。
【0039】
図6(C)は、レーダ装置10-1において受信される信号を積算した結果を示している。レーダ装置10-1が送信するパルス信号は、図6(A)に示すように固定の繰り返し周期であるので、例えば、物標によって反射された受信信号を積算すると、これらの信号が累積加算された信号(図6(C)の左側の信号)を得る。前述のように、レーダ装置10-1は、自身が送信したパルス信号だけでなく、レーダ装置10-2が送信し、物標によって反射された信号も受信するとともに、レーダ装置10-2が送信した信号も直接受信する。レーダ装置10-2が送信するパルス信号は、図6(B)に示すように非固定の繰り返し周期を有しているので、これらの信号を累積すると、図6(C)に示すように、干渉信号は平均化されて、図5(C)よりもピークが低い干渉信号(図6(C)の右側の信号)となる。このため、レーダ装置10-1は、干渉信号を物標として誤検出することを防止できる。
【0040】
図7は、より詳細な繰り返し周期の設定例を示している。図7においてRx1~Rx4は、図3に示す受信アンテナ17が4つである場合に、4つのそれぞれのアンテナを示している。この図7に示すように、本実施形態では、4つのアンテナのそれぞれにおけるパルス送信間隔が一致しないように、レーダ装置10-1およびレーダ装置10-2の繰り返し周期およびスタガ方式に基づく設定を行っている。
【0041】
以上の動作により、レーダ装置10-1,10-2が起動されるたびに、マスタ用およびスレーブ用の異なるタイミング情報を設定する。これにより、レーダ装置10-1およびレーダ装置10-2から送信されるパルス信号は、スタガ方式に基づいて送信タイミングが不等間隔に異なるように設定されることから、一方のレーダ装置が他方のレーダ装置から送信されるパルス信号を干渉信号として検出することによる誤検出を防止できる。
【0042】
つぎに、図8を参照して、本発明の実施形態において実行される処理の一例について説明する。なお、図8に示す処理は、例えば、レーダ装置10-1,10-2に電源が供給されて起動された際に実行される。図8に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0043】
ステップS10では、制御・処理部15の制御部15aは、通信部15cを制御して、接続状態を検出させる。
【0044】
ステップS11では、制御部15aは、ステップS10における検出結果により、自身がECU30に直接接続されているか否かを判定し、直接接続されていると判定した場合(ステップS11:Y)にはステップS12に進み、それ以外の場合(ステップS11:N)にはステップS14に進む。例えば、図2に示すレーダ装置10-1の場合には、ECU30に直接接続されているのでYと判定してステップS12に進み、レーダ装置10-2の場合には、ECU30に直接接続されていないのでNと判定してステップS14に進む。
【0045】
ステップS12では、設定部15dは、図示しない格納部からタイミング情報の第1パターンを読み出す。なお、第1パターンとしては、図6(A)に示す固定の繰り返し周期のパターンを用いることができる。すなわち、第1パターンとしては、図6(A)に示す固定の繰り返し周期のそれぞれの送信タイミングを示す情報を用いることができる。
【0046】
ステップS13では、設定部15dは、ステップS12で読み出した第1パターンを繰り返し周期として制御部15aに供給する。この結果、制御部15aは、第1パターンを繰り返し周期として設定し制御を行う。
【0047】
ステップS14では、設定部15dは、図示しない格納部からタイミング情報の第2パターンを読み出す。なお、第2パターンとしては、図6(B)に示すスタガを有する繰り返し周期のパターンを用いることができる。すなわち、第2パターンとしては、図6(B)に示すスタガを有する繰り返し周期のそれぞれの送信タイミングを示す情報を用いることができる。なお、固定周期からのずれを示す情報を第2パターンとしてもよい。
【0048】
ステップS15では、設定部15dは、ステップS14で読み出した第2パターンを繰り返し周期として制御部15aに供給する。この結果、制御部15aは、第2パターンを繰り返し周期として設定し制御を行う。
【0049】
ステップS16では、制御部15aは、ステップS13またはステップS15において設定された繰り返し周期で動作を開始する。
【0050】
ステップS17では、制御部15aは、物標を検出する処理を実行する。
【0051】
より詳細には、局部発振部11から供給される信号は、変調部13において、設定された繰り返し周期に基づくパルス信号に変換され、送信アンテナ14を介して送信される。物標によって反射されさたパルス信号は、受信アンテナ17によって受信される。なお、受信アンテナ17は、例えば、4つのアンテナによって構成され、アンテナ切換部18は、図7に示すRx1~Rx4の信号を切り換えて入力し、利得可変増幅部19に供給する。利得可変増幅部19は、アンテナ切換部18から供給される信号を増幅し、復調部20に供給する。復調部20は、利得可変増幅部19から供給される信号を局部発振部11から供給されるCW信号を用いて復調し、A/D変換部21に供給する。制御・処理部15の処理部15bは、A/D変換部21から供給されるデジタル信号に対する処理を実行し、物標を検出する。
【0052】
ステップS18では、制御部15aは、処理を終了するか否かを判定し、終了しないと判定した場合(ステップS18:N)にはステップS17に戻って処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS18:Y)には処理を終了する。
【0053】
以上の処理によれば、前述した実施形態の動作を実現することができる。
【0054】
(C)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態では、レーダ装置10-1,10-2がマスタかスレーブかによって、第1パターンおよび第2パターンを選択するようにしたが、例えば、マスタ/スレーブとは無関係に第1パターンおよび第2パターンを選択するようにしてもよい。例えば、最初に起動した方が第1パターンを選択し、つぎに起動した方が第2パターンを選択するようにしてもよい。
【0055】
また、以上の実施形態では、車両Cの後部に配置されたレーダ装置10-1,10-2の2台を用いる場合を例に挙げて説明したが、例えば、3台以上のレーダ装置を接続するようにしてもよい。その場合には、レーダ装置の台数に対応する第1~第nパターンの情報を準備しておき、ネットワークを介して相互に重複しないように選択することで、それぞれのレーダ装置が異なる繰り返し周期でパルス信号を送信することができる。
【0056】
また、以上の実施形態では、レーダ装置10-1,10-2が起動されるたびに通信を行ってパターンを選択するようにしたが、例えば、車両の組み立て工程において、レーダ装置10-1,10-2を車両に搭載する際にパターンを選択し、その後は同じパターンを継続して使用するようにしてもよい。
【0057】
また、以上の実施形態では、ネットワークを介して通信によってパターンを選択するようにしたが、レーダ装置10-1,10-2にディップスイッチを備え、例えば、車両の組み立て工程において、レーダ装置10-1,10-2が異なる設定になるように操作者がディップスイッチを操作し、ディップスイッチの設定に対応するパターンを選択するようにしてもよい。
【0058】
また、以上の実施形態では、図6に示すように、4つのパルス信号を積算するようにしたが、例えば、図9に示すように、16のパルス信号を積算するようにしてもよい。すなわち、図7に示すように、基本周期を同一にしている場合、各アンテナにおける積算値は、干渉源と同期してしまう。このため、レーダ性能に影響を与えないレンジまで周期を拡張すると、同期による干渉をより確実に抑えることができる。
【0059】
また、図8に示すフローチャートの処理は一例であって、本発明がこれらフローチャートの処理に限定されるものではないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0060】
10-1,10-2 レーダ装置
11 局部発振部
12 送信部
13 変調部(調整手段)
14 送信アンテナ(送信手段)
15 制御・処理部
15a 制御部
15b 処理部
15c 通信部(通信手段)
15d 設定部(格納手段、設定手段)
16 受信部
17 受信アンテナ
18 アンテナ切換部
19 利得可変増幅部
20 復調部
21 A/D変換部
30 ECU
41,42 通信線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9