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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20220728BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
H02G3/16
B60R16/02 610B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019065396
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020167818
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】小藪 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】河角 修平
(72)【発明者】
【氏名】上江 寛
(72)【発明者】
【氏名】栗林 昴宏
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-125117(JP,A)
【文献】特開2002-315141(JP,A)
【文献】特開2010-220366(JP,A)
【文献】特開2012-120318(JP,A)
【文献】特開2017-28760(JP,A)
【文献】特開平10-42425(JP,A)
【文献】特開2010-124562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
H02G 3/14
H02G 3/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスを固定するハーネス固定部が筐体本体に設けられた電気接続箱であって、
前記ハーネス固定部は、
前記筐体本体の外周面から前記筐体本体の外部に向かって延出され、前記ワイヤーハーネスを固定するハーネス固定面と、該ハーネス固定面から立設する壁部とで構成され、
前記壁部が、
前記ハーネス固定面の延出方向に向かうに伴い、互いに距離が離れる一対の内壁部と、
前記外周面から前記延出方向に向けて延設するとともに、前記内壁部と連結する一対の外壁部とで構成された
電気接続箱。
【請求項2】
一対の前記内壁部における前記延出方向の反対側の端部が、互いに所定の間隔を隔てるとともに、前記筐体本体と連結した
請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記外壁部が前記ハーネス固定面から立設する方向を立設方向とし、前記外壁部の前記立設方向側の端部よりも前記ハーネス固定面側において、前記外周面から前記延出方向に向けて突出する突出部が設けられ、
該突出部は、
前記ハーネス固定面における前記延出方向の反対側の端部及び、
前記内壁部における前記延出方向の反対側の端部と連結している
請求項1又は請求項2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記突出部の前記立設方向側と反対側の端面に、前記立設方向側に窪ませた凹部が形成され、
前記凹部には、前記延出方向に沿った補強リブが設けられた
請求項3に記載の電気接続箱。
【請求項5】
前記ハーネス固定面は、
前記延出方向に向かうに伴い、前記壁部が立設する方向に向けて傾斜する
請求項1乃至請求項4のうちのいずれか一項に記載の電気接続箱。
【請求項6】
前記外壁部が互いに平行に構成された
請求項1乃至請求項5のうちのいずれか一項に記載の電気接続箱。
【請求項7】
前記ハーネス固定面から前記壁部が立設する方向を立設方向とし、
前記内壁部と前記外壁部における前記立設方向の端面が、面一に形成された
請求項1乃至請求項6のうちのいずれか一項に記載の電気接続箱。
【請求項8】
前記ハーネス固定面には、板厚方向に沿って挿通する挿通孔が形成され、
前記内壁部と前記外壁部との当接部位が、前記挿通孔よりも前記延出方向の反対側に配置された
請求項1乃至請求項7のうちのいずれか一項に記載の電気接続箱。
【請求項9】
前記壁部は、
前記ハーネス固定面の外側の端部から立設するとともに、前記外壁部又は前記内壁部における外側の端部と連結する外端壁部を有する
請求項1乃至請求項8のうちのいずれか一項に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、ワイヤーハーネスを固定するハーネス固定部を有する電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された電気機器類とワイヤーハーネスを介して電気的に接続された電気接続箱は、例えば、インストルメントパネルの運転席側やエンジンルームの奥まった位置など、車室内外の狭隙部分に配設されることがある。
【0003】
そのため、電気接続箱に接続されているワイヤーハーネスが他の部材と干渉したりして、ワイヤーハーネスが電気接続箱から離脱することを防止するために、ワイヤーハーネスを電気接続箱に固定することがある。
【0004】
例えば、特許文献1に開示している電気接続箱は、筐体本体の底面に形成された溝部にワイヤーハーネスをはめ込むとともに、前記筐体本体をはさむように外周側面から前記ワイヤーハーネスの配索方向に沿って突出するハーネス固定部に前記ワイヤーハーネスを固定することで、前記ワイヤーハーネスを支持固定できるとされている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている電気接続箱は、前記外周面の外向きに働く外力が前記ワイヤーハーネスに作用した場合などに、前記ハーネス固定部が割れたり、曲がったりするおそれがあった。これにより、前記ワイヤーハーネスが前記筐体本体から離脱したり、他の部材と干渉したりするおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-125117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上述の問題に鑑み、ワイヤーハーネスを固定するハーネス固定部の強度を向上させることができる電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、ワイヤーハーネスを固定するハーネス固定部が筐体本体に設けられた電気接続箱であって、前記ハーネス固定部は、前記筐体本体の外周面から前記筐体本体の外部に向かって延出され、前記ワイヤーハーネスを固定するハーネス固定面と、該ハーネス固定面から立設する壁部とで構成され、前記壁部が、前記ハーネス固定面の延出方向に向かうに伴い、互いに距離が離れる一対の内壁部と、前記外周面から前記延出方向に向けて延設するとともに、前記内壁部と連結する一対の外壁部とで構成されたことを特徴とする。
【0009】
前記内壁部及び前記外壁部は、一対の前記外壁部が平行に構成され、一対の前記内壁部が前記外壁部に対して交差するように構成された場合や、前記内壁部及び前記外壁部が互いに傾斜して構成された場合を含む。
一対の前記内壁部は、内側の端部同士が所定の間隔を隔てて設けられている場合や、内側の端部同士が互いに当接している場合、前記内壁部同士が交差している場合を含む。
【0010】
前記壁部は、前記ハーネス固定面の外周縁から立設している場合や、外周縁よりも内側から立設している場合を含む他、前記壁部が前記ハーネス固定面の両主面から立設している場合も含む。
【0011】
なお、前記壁部が前記ハーネス固定面において前記ワイヤーハーネスを固定する側の主面に立設されている場合や、前記壁部が前記ハーネス固定面の主面の両主面に立設している場合には、前記内壁部の内側の端部同士を所定の間隔を隔てて配置し、その間に前記ワイヤーハーネスを挿通させてもよい。
【0012】
この発明により、前記ワイヤーハーネスを固定する前記ハーネス固定部の強度を向上させることができる。
詳述すると、前記ハーネス固定面に対して立設する壁部を設けるとともに、前記外周面から延出する一対の前記外壁部と前記内壁部とが互いに当接していることから、前記外周面と前記内壁部と前記外壁部とで略三角柱状に形成された筒状体を複数形成することができるため、前記ハーネス固定部の強度を向上させることができる。
【0013】
また、一対の前記内壁部における前記延出方向の端部が互いに距離が離れるように構成されていることから、前記ハーネス固定部における前記延出方向には前記内壁部が配置されないため、前記ハーネス固定部に前記ワイヤーハーネスを固定するための作業スペースを確保することができる。
【0014】
この発明の態様として、一対の前記内壁部における前記延出方向の反対側の端部が、互いに所定の間隔を隔てるとともに、前記筐体本体と連結していてもよい。
この発明によると、前記内壁部における前記延出方向の反対側の端部同士の間にスペースを形成することができるため、前記ワイヤーハーネスを前記ハーネス固定部に固定するための作業スペースを確実に確保でき、ハーネス固定部にワイヤーハーネスを固定する固定作業の作業効率を向上させることができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記外壁部が前記ハーネス固定面から立設する方向を立設方向とし、前記外壁部の前記立設方向側の端部よりも前記ハーネス固定面側において、前記外周面から前記延出方向に向けて突出する突出部が設けられ、該突出部は、前記ハーネス固定面における前記延出方向の反対側の端部と連結するとともに、前記内壁部における前記延出方向の反対側の端部と連結していてもよい。
【0016】
この発明により、前記突出部から前記ハーネス固定面の外端までの距離を、前記外周面から前記ハーネス固定面の外端までの距離よりも短くすることができるため、前記ハーネス固定部の強度をより向上させることができる。また、前記突出部よりも前記立設方向側において、前記内壁部の内側の端部が前記外周面と当接しているため、前記内壁部と前記外壁部と前記外周面とで、前記ハーネス固定部の内側眼部において三角柱状のリブを形成することができるため、前記ハーネス固定部に対して前記立設方向又は前記立設方向の反対側に作用する外力に対する前記ハーネス固定部の強度を向上させることができる。
【0017】
これにより、例えば、前記ワイヤーハーネスを前記ハーネス固定部に固定するために、前記ハーネス固定部に前記ワイヤーハーネスを押しつける方向に外力を作用させた場合であっても、前記ハーネス固定部が損傷することを防止できる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記突出部の前記立設方向側と反対側の端面に、前記立設方向側に窪ませた凹部が形成され、前記凹部には、前記延出方向に沿った補強リブが設けられてもよい。
【0019】
この発明により、前記突出部の強度を保ったまま、軽量化を図ることができる。すなわち、前記突出部に連結している前記ハーネス固定部を確実に補強するとともに、前記電気接続箱の軽量化を図ることができる。
なお、前記凹部の中央に、前記配索方向に沿った一本の補強リブを設けてもよいし、前記凹部に前記配索方向に沿った複数本の補強リブを設けてもよい。
【0020】
またこの発明の態様として、前記ハーネス固定面は、前記延出方向に向かうに伴い、前記壁部が立設する方向に向けて傾斜してもよい。
なお、前記外壁部の端面は、前記ハーネス固定面から立設する立設方向に対して直交する直交平面と平行となるように構成された場合や、前記直交平面に対して交差するように構成された場合を含む。
【0021】
この発明により、前記ハーネス固定部の強度をより向上させることができるとともに、前記ハーネス固定部に沿って傾斜するように配索された前記ワイヤーハーネスの取り付け作業をより効率的に行うことができる。
【0022】
例えば、前記ハーネス固定面を前記外周面に対して傾斜させた場合、前記ハーネス固定部に対して前記ワイヤーハーネスを固定するスペースが狭くなり、前記ワイヤーハーネスの取り付け作業が困難となる。一方で、前記ハーネス固定面を前記外方に向けて長くした場合、外力が作用することで前記ハーネス固定部が損傷する可能性がある。
【0023】
これに対して、本発明は、前記壁部が前記筐体本体の外側に向かうに伴い互いに隔離する一対の内壁部と、前記外周面から前記延出方向に向けて延出するとともに、前記内壁部における前記延出方向の端部と当接する一対の外壁部とで構成されているため、前記ハーネス固定部の強度が向上させることができる。
【0024】
このため、前記ハーネス固定面を前記延出方向に沿って長くすることができ、前記ワイヤーハーネスを固定するための作業スペースを確実に確保できる。したがって、前記ワイヤーハーネスを前記ハーネス固定部に確実に固定しつつ、所望の方向に配索することができる。
【0025】
また、前記外周面に対して垂直となるように前記外壁部を前記ハーネス固定面から立設させた場合に、前記ハーネス固定部を最もコンパクトにした状態で、前記外壁部及び前記内壁部の内側の端部と前記外周面とが接触する面積を最大値とすることができる。すなわち、前記ハーネス固定部の強度を向上させつつ、コンパクト化を図ることができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記外壁部が互いに平行に構成されてもよい。
この発明により、前記外壁部が前記配索方向に沿って直線状に構成されるため、前記外壁部と前記内壁部との当接部分に応力が集中することを防止でき、前記ハーネス固定部が損傷するおそれを軽減できる。
【0027】
また、前記外周面から延設する前記外壁部の外側にスペースを確保することができるため、前記電気接続箱の小型化を図ることができる。特に前記電気接続箱が配置されることが多い狭隙部分において、前記電気接続箱が他の部材と干渉することを抑制することができるため、より前記電気接続箱の設置作業を効率的に行うことができる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記ハーネス固定面から前記壁部が立設する方向を立設方向とし、前記内壁部と前記外壁部における前記立設方向の端面が、面一に形成されてもよい。
この発明により、前記外壁部と前記内壁部との間に段差が生じないため、応力が集中することを防止でき、前記壁部が損傷することをより確実に防止できる。
【0029】
またこの発明の態様として、前記ハーネス固定面には、板厚方向に沿って挿通する挿通孔が形成され、前記内壁部と前記外壁部との当接部位が、前記挿通孔よりも前記延出方向の反対側に配置されてもよい。
この発明により、前記ワイヤーハーネスを固定するクランプを前記挿通孔に挿通させるためのスペースを確実に確保することができる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記壁部は、前記ハーネス固定面の外側の端部から立設するとともに、前記外壁部又は前記内壁部における外側の端部と連結する外端壁部を有してもよい。
この発明により、前記外端壁部と前記外周面と、前記外壁部又は前記内壁部とで矩形状のリブを形成するとともに、前記壁部に前記内壁部を設けることで、前記壁部を前記ハーネス固定面の内側から補強することができ、前記ハーネス固定部の強度をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0031】
この発明により、ワイヤーハーネスを固定するハーネス固定部の強度を向上させることができる電気接続箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】ワイヤーハーネスを取り付けた電気接続箱を下方からみた概略斜視図。
図2】電気接続箱を上方から視た概略斜視図。
図3】電気接続箱の平面図。
図4】電気接続箱におけるハーネス固定部の断面図。
図5】電気接続箱におけるハーネス固定部の断面図。
図6】ワイヤーハーネス束を固定した状態のハーネス固定部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
この発明の一実施態を、以下図面とともに説明する。
図1は車両本体に設置された状態での電気接続箱1の概略斜視図を示し、図2は電気接続箱1を上方から視た概略斜視図を示し、図3は電気接続箱1の平面図を示し、図4及び図5は先端側ハーネス固定部30の断面図を示す。
【0034】
ここで、図2における上下方向を上下方向Hとし、上方を+H側、下方を-H側とする。また、上下方向Hに直交するとともに、電気接続箱1の長手方向を長手方向Lとし、図2中の長手方向Lに沿って右側を+L側(先端側)とし、左側を-L側(基端側)とする。また、上下方向H及び長手方向Lに直交する方向を幅方向Wとし、図2中の幅方向Wに沿って右側を+W側、左側を-W側とする。
【0035】
すなわち、図2は上方(+H側)かつ+L側、-W側から電気接続箱1を視た場合の概略斜視図を示す。なお、図1では、電気接続箱1を下方(-H側)かつ+L側、-W側から電気接続箱1を視た場合の概略斜視図を示す。
【0036】
図2乃至図5について詳述すると、図2(a)は電気接続箱1の全体概略斜視図を示し、図2(b)は先端側ハーネス固定部30の拡大斜視図を示し、図3(a)は電気接続箱1の平面図を示し、図3(b)は電気接続箱1に設けられた先端側ハーネス固定部30の拡大平面図を示す。
【0037】
図4図3(b)におけるA-A矢視断面図を示し、図5図3(b)におけるB-B矢視断面図を示す。
図6は、ワイヤーハーネス束100を固定した状態の先端側ハーネス固定部30の断面図であって、A-A矢視断面図に対応する断面図を示す。
【0038】
例えば、車両に搭載された様々な電気機器類(図示省略)に接続されているワイヤーハーネス110は、図1に示すように、それぞれのワイヤーハーネス110の一端側に連結されたコネクタ120を介して、電気機器類との結合や分岐などを行う端子や電子部品などが内蔵された電気接続箱1と電気的に接続されている。
【0039】
これらの複数のワイヤーハーネス110をクランプ500で束ねて構成されたワイヤーハーネス束100は、電気接続箱1に沿って配索されるとともに、クランプ500のクランプ固定部510を介して電気接続箱1に固定されている。
【0040】
ワイヤーハーネス110と電気的に接続される電気接続箱1は、上述のように端子や電子部品などが内蔵された中空状の筐体であり、図2(a)に示すように、筐体本体2と筐体本体2に設けられた先端側ハーネス固定部30及び基端側ハーネス固定部40とで構成されている。
【0041】
端子や電子部品などが内蔵された筐体本体2は、上面側を構成するアッパーカバー10と、底面側を構成するロアカバー20とで構成されている。
アッパーカバー10は、下方(-H側)が開口した中空状の逆凹状体であり、図2(a)及び図3(a)に示すように、外周面にロアカバー20と係止可能な係止部11が設けられ、上面には図示しないコネクタを接続する複数の上方コネクタ接続口12が設けられている。
【0042】
ロアカバー20は、上下方向Hに沿った高さがアッパーカバー10に比べて高くなるように構成された中空状の凹状体であり、上方が開口している。このロアカバー20は、底面を構成する底面部21と、底面部21の外縁部から上方(+H側)に立設する外周面22とで構成されている。
底面部21には、コネクタ120を接続することができる下方コネクタ接続口23が複数設けられている(図1参照)。
【0043】
外周面22は、ロアカバー20の内部と外部とを区分けする境界であり、底面部21の外周縁から底面部21を囲繞するように立設され、上下方向Hに沿って所定の高さを有する。この外周面22のうち、長手方向Lに沿って形成される面を第1外周面22a,22aとし、幅方向Wに沿った外周面22のうち、+L側に形成されている面を第2外周面22bとし、+L側に形成されている面を第3外周面22cとする。
【0044】
第1外周面22a,22aには係止部11を係止可能な被係止部24が設けられている。
第2外周面22bは、幅方向Wの中央部分に被係止部24が設けられるとともに、-W側の端部に+L側に突出する突出部25が設けられている。また、突出部25に対応する位置には、+L側に延出する先端側ハーネス固定部30が設けられている。
【0045】
突出部25は、図4及び図5に示すように、外周面22の-W側の下端部分が電気接続箱1の外側(+L側)に向けて突出するように形成されている。すなわち、外周面22及び突出部25は、側面視において段差状に形成されている(図4参照)。
【0046】
この突出部25の下端面には上下方向Hに沿って窪ませた凹部26が形成されており(図5参照)、突出部25の幅方向Wの中央部分には、外周面22と突出部25の内面とを連結するリブ27が長手方向Lに沿って設けられている(図4参照)。
【0047】
第2外周面22bから突出している先端側ハーネス固定部30は、図3(b)に示すように、上方が開口した平面視略矩形状をしており、ワイヤーハーネス束100を固定するハーネス固定面31と、ハーネス固定面31の幅方向Wの外端に立設された外壁部32,32と、ハーネス固定面31の主面から立設する内壁部33,33と、ハーネス固定面31の先端に立設された先端壁部34とで一体構成されている。なお、外壁部32,32及び内壁部33,33の基端は外周面22と連結している。
【0048】
ハーネス固定面31は、長手方向Lに沿って先端側に向かうに伴い、上方に向けて延設する略長方形状の平板であり、基端が突出部25と連結している。すなわち、ハーネス固定面31は、外周面22に対して傾いて設けられている。また、ハーネス固定面31の先端側にはハーネス固定面31の板厚方向に沿って貫通する挿通孔311が設けられている。
【0049】
挿通孔311は、ハーネス固定面31の長手方向Lの中央よりも先端側であって、かつ、ハーネス固定面31の幅方向Wの中央部分に形成された貫通孔であり、ワイヤーハーネス束100を束ねているクランプ500のクランプ固定部510を挿通し、ワイヤーハーネス束100を先端側ハーネス固定部30に固定することができる(図6参照)。
【0050】
外壁部32,32は、ハーネス固定面31の幅方向Wの両端から上方(+H側)に向けて延出しており、基端における上方部分が外周面22と、下方部分が突出部25と連結している。また、外壁部32,32の上端面は、上下方向Hと直交する面に沿うように形成されている。
【0051】
すなわち、外壁部32,32は先端側に向かうに伴い、ハーネス固定面31に対する高さが低くなるような側面視略直角三角形状で構成されている。なお、一対で構成された外壁部32,32は互いに平行となるように構成されている(図4参照)。
【0052】
内壁部33,33は、平面視において、ハーネス固定面31の幅方向Wの内側から、外壁部32,32と交差するように立設している。換言すると、内壁部33,33は先端側(+L側)に向かうに伴い、ハーネス固定面31の幅方向Wの外側に向かうような平面視『ハの字』状に構成されている(図3(b)参照)。
【0053】
このように平面視において、長手方向Lに沿って先端側(+L側)に向かうに伴い互いに離れるように形成されている内壁部33,33の基端側は、ハーネス固定面31の幅方向Wの中央よりもわずかに外側に配置されている。すなわち、内壁部33,33は基端が幅方向Wに沿って所定の間隔を隔てて形成されているとともに、先端が外壁部32,32における長手方向Lの中央よりも基端側で連結している。
【0054】
また、内壁部33,33の基端における上方側は外周面22と連結しており、下方側(-H側)が突出部25と連結している。一方、内壁部33,33の先端側は、挿通孔311の基端側端部よりも基端側(-L側)で外壁部32と連結している。
【0055】
先端壁部34は、ハーネス固定面31の先端から上方(+H側)に向けてわずかに突出しており、幅方向Wの両端が外壁部32,32の先端と連結している。なお、先端壁部34と外壁部32,32との連結部分が湾曲するように角取りしている。
【0056】
このように構成された、外壁部32,32及び内壁部33,33、先端壁部34は、ハーネス固定面31から立設される壁部35を構成している。この壁部35の上端面は、上下方向Hに対して直交する平面に対して平行となるように構成されている。換言すると、ハーネス固定面31の外周縁から立設する外壁部32,32と内壁部33,33と先端壁部34とは、先端側に向かうに伴い高さが低くなる壁部で形成されている。
【0057】
第3外周面22cは、第2外周面22bと互いに平行となるように構成されており、幅方向Wの中央部分には図示しない被係止部24が設けられているとともに、-W側の下端には-L側に向けて延出する基端側ハーネス固定部40が設けられている。
【0058】
この基端側ハーネス固定部40は、基端側底面41と、基端側底面41の外周縁から立設する基端側壁部42とで構成されている。
基端側底面41は、上下方向Hに対して直交する面と平行に形成された平板であり、幅方向W及び長手方向Lの中央部分に、板厚に沿って貫通させた基端側挿通孔(図示省略)が設けられており、ワイヤーハーネス110を束ねるクランプ500のクランプ固定部510を挿通させてワイヤーハーネス束100を固定することができる。なお、基端側ハーネス固定部40は、内壁部33,33に対応する構成を有さない。
【0059】
このように構成された電気接続箱1は、ワイヤーハーネス束100を固定する先端側ハーネス固定部30が筐体本体2に設けられ、先端側ハーネス固定部30は、筐体本体2の外周面22(第2外周面22b)から、筐体本体2の外部に向かって長手方向Lに沿うように延出され、すなわち、筐体本体2に沿って配索されるワイヤーハーネス束100の配索方向に沿って延出され、ワイヤーハーネス束100を固定するハーネス固定面31と、ハーネス固定面31から立設する壁部35とで構成されており、壁部35が、ハーネス固定面31が延出する方向(長手方向Lにおける+L側)に向かうに伴い、互いに距離が離れる一対の内壁部33,33と、外周面22(第2外周面22b)から長手方向Lの外側(+L側)に向けて延設するとともに、内壁部33,33の外側の端部と連結する一対の外壁部32,32とで構成されたことにより、ワイヤーハーネス束100を固定する先端側ハーネス固定部30の強度を向上させることができる。
【0060】
詳述すると、ハーネス固定面31に対して立設する壁部35を設けるとともに、外周面22(第2外周面22b)から延設する一対の外壁部32,32と内壁部33,33とが互いに当接しているため、内壁部33,33と外壁部32,32とで略三角柱状の筒状体を複数形成することができる。これにより、先端側ハーネス固定部30の強度を向上させることができる。
【0061】
また、一対の内壁部33,33における先端側端部が互いに隔離していることから、先端側ハーネス固定部30における先端側(+L側)に内壁部33,33が配置されないこととなる。このため、先端側ハーネス固定部30にワイヤーハーネス束100を固定するための作業スペースを確保することができる。
【0062】
また、一対の内壁部33,33における基端側端部が、互いに所定の間隔を隔てるとともに、筐体本体2と連結することにより、内壁部33,33における基端側(-L側)端部同士の間にスペースを形成することができる。これにより、先端側ハーネス固定部30にワイヤーハーネス束100を固定するための作業スペースを確実に確保することができ、先端側ハーネス固定部30にワイヤーハーネス束100を固定する固定作業の作業効率を向上させることができる。
【0063】
また、外壁部32,32の上下方向Hの上端面よりもハーネス固定面側において、外周面22(第2外周面22b)から長手方向Lの外側(+L側)に向けて突出する突出部25が設けられ、突出部25は、ハーネス固定面31における長手方向Lの基端側端部と連結するとともに、内壁部33,33における長手方向Lの基端側端部と連結していることにより、外周面22(第2外周面22b)からハーネス固定面31の外端までの距離を短くすることができ、先端側ハーネス固定部30の強度をより向上させることができる。
【0064】
また、外壁部32,32及び内壁部33,33の基端側端部の下方側が突出部25と連結する突出部25よりも+H側において、外壁部32,32及び内壁部33,33の基端側端部が外周面22(第2外周面22b)と当接させることができるため、外壁部32,32と内壁部33,33と外周面22(第2外周面22b)又は突出部25とで、先端側ハーネス固定部30の基端側に三角柱状のリブを形成することができる。これにより、先端側ハーネス固定部30に対して上方(+H側)又は下方(―H側)に作用する外力に対する先端側ハーネス固定部30の強度をさらに向上させることができる。
【0065】
具体的には、ワイヤーハーネス束100を先端側ハーネス固定部30に固定するため、先端側ハーネス固定部30にワイヤーハーネス束100を押しつけるように外力を作用させた場合であっても、先端側ハーネス固定部30が損傷することを防止でき、また先端側ハーネス固定部30に固定されたワイヤーハーネス束100の自重により、先端側ハーネス固定部30が損傷することも防止できる。
る。
【0066】
さらにまた、突出部25の上下方向H側と反対側に、上下方向H側に窪ませた凹部26が形成され、凹部26には、長手方向Lに沿ったリブ27が設けられることにより、突出部25の強度を保ったまま、軽量化を図ることができ、突出部25に連結しているハーネス固定面31及び内壁部33,33を確実に補強することができる。
【0067】
また、ハーネス固定面31は、先端側(+L側)に向かうに伴い、ハーネス固定面31に対して壁部35が立設する方向(+H側)に向けて傾斜することにより、先端側ハーネス固定部30に沿って傾斜するように配索されたワイヤーハーネス束100の取り付け作業をより効率的に行うことができる。
【0068】
詳述すると、ハーネス固定面31を外周面22に対して傾斜させた場合、先端側ハーネス固定部30に対してワイヤーハーネス束100を固定するスペースが狭くなり、ワイヤーハーネス束100を電気接続箱1に取り付ける取り付け作業が困難となる。一方で、ハーネス固定面31を先端側(+L側)に向けて長くした場合、強度が低下するため、先端側ハーネス固定部30に作用する外力により先端側ハーネス固定部30が損傷する可能性がある。
【0069】
これに対して、壁部35が、筐体本体2の外側(先端側)に向かうに伴い互いに隔離する一対の内壁部33,33と、外周面22(第2外周面22b)から外側に向けて延出するとともに、内壁部33,33の先端側(+L側)端部と当接する一対の外壁部32,32とで構成されていることにより、先端側ハーネス固定部30の強度を向上させることができる。
【0070】
これにより、ハーネス固定面31を長手方向L方向に沿って長くすることができ、ワイヤーハーネス束100を先端側ハーネス固定部30に固定するための作業スペースを確実に確保できる。したがって、先端側ハーネス固定部30に沿って傾斜するように配索されたワイヤーハーネス束100の取り付け作業をより効率的に行うことができ、先端側ハーネス固定部30に確実に固定できるとともに、ワイヤーハーネス束100を所望の方向に配索させることができる。
【0071】
また、ハーネス固定面31の外側の端部から外周面22(第2外周面22b)に対して垂直となるように外壁部32,32を形成することにより、前記ハーネス固定部を最もコンパクトとすることができるとともに、外壁部32,32及び内壁部33,33の基端側端部と外周面22とが接触する面積を最大値とすることができる。すなわち、先端側ハーネス固定部30の強度を向上させつつ、コンパクト化を図ることができる。
【0072】
また、外壁部32,32が互いに平行に構成されていることにより、外壁部32,32が長手方向Lに沿って直線状に構成されるため、外壁部32,32と内壁部33,33との当接部分に応力が集中することを防止でき、先端側ハーネス固定部30が損傷するおそれを軽減できる。
【0073】
さらにまた、外周面22(第2外周面22b)における外壁部32,32の幅方向Wの外側にスペースを確保することができるため、電気接続箱1の小型化を図ることができる。特に電気接続箱1は狭隙部分に配置されることが多いため、電気接続箱1が他の部材と干渉するおそれを軽減でき、電気接続箱1の設置作業を効率的に行うことができる。
【0074】
また、ハーネス固定面31から壁部35が立設する方向を上下方向Hとし、内壁部33,33と外壁部32,32における端面が、面一に形成されることにより、外壁部32,32と内壁部33,33との間に段差が生じないため、応力が集中することを防止でき、壁部35が損傷することをより確実に防止できる。
【0075】
さらにまた、ハーネス固定面31には、板厚方向に沿って挿通する挿通孔311が形成され、内壁部33,33と外壁部32,32との当接部位が、挿通孔311よりも長手方向Lの内側に配置されていることにより、ワイヤーハーネス束100を固定するクランプを挿通孔311に挿通させるためのスペースを確実に確保することができる。これにより、より確実にワイヤーハーネス束100を先端側ハーネス固定部30に固定することができる。
【0076】
なお、外壁部32,32と内壁部33,33との当接部分は、外壁部32,32における長手方向L方向に沿った長さに対して3分の1までの位置と、挿通孔311の長手方向Lの中央部分よりも基端側の間であることが好ましく、外壁部32,32における長手方向L方向に沿った長さに対して3分の1までの位置と挿通孔311の基端側端部に対応する位置よりも基端側であることがより好ましい。
【0077】
外壁部32,32と内壁部33,33との当接部分は、挿通孔311の長手方向Lの中央部分よりも先端側である場合には、先端側ハーネス固定部30の強度をより向上させることができるものの、ワイヤーハーネス束100を固定するスペースを確保することができない。一方で、外壁部32,32と内壁部33,33との当接部分が、外壁部32,32における長手方向L方向に沿った長さの3分の1よりも基端側である場合には、先端側ハーネス固定部30の強度を十分に向上させることができないおそれがある。
【0078】
これに対して、外壁部32,32と内壁部33,33との当接部分は、外壁部32,32における長手方向L方向に沿った長さに対して3分の1と、挿通孔311の長手方向Lの中央部分よりも基端側までの間であることにより、先端側ハーネス固定部30の強度を向上させながら、ワイヤーハーネス束100を固定するためのスペースを確実に確保できる。
【0079】
また、外壁部32,32における長手方向L方向に沿った長さに対して3分の1から挿通孔311の基端側端部に対応する位置までの間である場合には、より確実の強度を維持しつつ、ワイヤーハーネス束100を固定するためのスペースを確保できる。
【0080】
また、壁部35は、ハーネス固定面31の先端側端部から立設するとともに、外壁部32,32における先端側端部と連結する先端壁部34を有することにより、外壁部32,32と先端壁部34と外周面22(第2外周面22b)で矩形状のリブを形成するとともに、壁部35に内壁部33,33を設けることができる。これにより、外壁をハーネス固定面31の内側から補強することができ、先端側ハーネス固定部30の強度をより向上させることができる。
【0081】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
ワイヤーハーネスは、ワイヤーハーネス束100に対応し、同様に、
ハーネス固定部は、先端側ハーネス固定部30に対応し、
延出方向は、長手方向Lにおける+L側に対応し、
立設方向は、上下方向Hにおける+H側に対応し、
補強リブは、リブ27に対応し、
外端壁部は、先端壁部34に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0082】
なお、以下に記載において、本実施形態と同じ構成については同一の番号を付しその説明を省略する。また、以下に記載の内容は、それぞれの態様のみ実施できるものではなく、効果を奏する限り適宜組み合わせを変更することができる。
【0083】
例えば、本実施形態において、一対で構成された外壁部32,32同士が互いに平行となるように構成されているが、必ずしも平行である必要はなく、例えば外壁部32,32が外周面22(第2外周面22b)の法線方向に対して傾斜していてもよい。具体的には、外壁部32,32同士がともに幅方向Wの内側に向けて傾斜している場合や、幅方向Wの外側に向けて傾斜していてもよい。
【0084】
また、本実施形態において、一対の内壁部33,33は、基端側端部同士が所定の間隔を隔てているが、例えば基端側端部同士が互いに当接していたり、交差していたりしてもよい。
また、本実施形態において、ハーネス固定面31が長手方向Lに沿って先端側に向かうに伴い上方(+H側)に傾斜するように構成されているが、下方に向けて傾斜していてもよい。また、必ずしもハーネス固定面31は傾斜している必要はなく、上下方向Hに直交する面と平行となるように構成されていてもよい。
【0085】
さらにまた、基端側ハーネス固定部40には、内壁部33,33に対応する構成を有さないが、基端側ハーネス固定部40に備えてもよく、さらには基端側ハーネス固定部40が上方に傾斜していてもよい。
【0086】
また、本実施形態において、ハーネス固定面31から上方に向けて壁部35が立設しており、ハーネス固定面31の底面側にワイヤーハーネス束100を配索しているが、例えば、ハーネス固定面31から下方に向けて壁部35が立設していてもよいし、ハーネス固定面31に対して上方及び下方に向けて壁部35が立設されていてもよい。
【0087】
さらにまた、ワイヤーハーネス束100がハーネス固定面31における内壁部33,33が立設していない面に固定されているが、ワイヤーハーネス束100がハーネス固定面31における内壁部33,33が立設している面に固定する構成としてもよい。なお、ワイヤーハーネス束100がハーネス固定面31における内壁部33,33が立設している面に固定される場合、ワイヤーハーネス束100が内壁部33,33の間に配索する。
【符号の説明】
【0088】
1 電気接続箱
2 筐体本体
25 突出部
26 凹部
27 リブ
30 先端側ハーネス固定部
31 ハーネス固定面
311 挿通孔
33 内壁部
34 先端壁部
35 壁部
100 ワイヤーハーネス束
H 上下方向
L 長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6