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特許7113687信号処理装置、信号処理システム及び探索方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】信号処理装置、信号処理システム及び探索方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20220729BHJP
   G10L 21/0264 20130101ALI20220729BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
H04R3/00 320
G10L21/0264 A
G01H17/00 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018132962
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020014041
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】松田 道昭
(72)【発明者】
【氏名】大垣 冬季
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-138638(JP,A)
【文献】特開2013-167555(JP,A)
【文献】特開平05-147481(JP,A)
【文献】特開平07-134064(JP,A)
【文献】特開2017-142124(JP,A)
【文献】特開2007-143630(JP,A)
【文献】特開平11-083618(JP,A)
【文献】特開昭56-154630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
G10L 21/0264
G01H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の音を電気信号に変換する集音部から入力された音響信号と、振動を電気信号に変換する少なくとも一つの振動検知部から入力された少なくとも一つの振動信号とが入力される信号処理装置であって、
前記音響信号をフーリエ変換する第1のフーリエ変換部と、
前記振動信号をフーリエ変換する第2のフーリエ変換部と、
前記第1のフーリエ変換部による変換後の第1の変換値と、前記第2のフーリエ変換部による変換後の第2の変換値とを用いて、予め設定された周波数毎に、前記音響信号と前記振動信号との間で、位相がどれだけ揃っているかを示す相関度を決定する相関度決定部と、
前記相関度決定部によって周波数毎に決定された相関度が高いほど当該周波数の前記音響信号が相対的に大きくなるように、当該周波数毎に前記音響信号の強度を調節する調節部と、
を備える信号処理装置。
【請求項2】
前記相関度は、コヒーレンスであり、
前記相関度決定部は、前記第1のフーリエ変換部による変換後の第1の変換値と、前記第2のフーリエ変換部による変換後の第2の変換値とを用いて、予め設定された周波数毎に、コヒーレンスを算出し、
前記調節部は、前記算出された周波数毎のコヒーレンスに応じて、当該周波数毎に前記音響信号の強度を調節する
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記調節部は、
前記第1のフーリエ変換部による変換後の振幅スペクトルに対して、予め設定された周波数毎に、当該周波数に対応する前記相関度によって重み付けする重み付け部と、
重み付け後の音響信号の振幅スペクトルと重み付けされていない音響信号の位相スペクトルを用いて、逆フーリエ変換する逆フーリエ変換部と、
を有する請求項1または2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記調節部は、前記音響信号を周波数毎の強度を変更するフィルタを有し、
前記予め設定された周波数毎に、当該周波数に対応する前記相関度によって前記フィルタの係数が変更される
請求項1または2に記載の信号処理装置。
【請求項5】
操作者の操作に応じて、前記調節部によって調整後の音響信号を出力するか、前記入力された音響信号をそのまま出力するかを切り替えるスイッチを備える請求項1から4のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項6】
周囲の音を電気信号に変換して音響信号を出力する集音部と、
振動を電気信号に変換し、少なくとも一つの振動信号を出力する少なくとも一つの振動検知部と、
前記音響信号と前記少なくとも一つの振動信号が入力され、調整後の音響信号を出力する請求項1から5のいずれか一項に記載の信号処理装置と、
前記信号処理装置から出力された調整後の音響信号を人間が感知可能な態様に変換して出力する出力器と、
を備える信号処理システム。
【請求項7】
前記振動検知部は複数あり、それぞれの前記振動検知部は振動センサを有しており、
複数の前記振動センサは、一つの機器の互いに異なる箇所に設置されており、
前記複数の振動センサから入力された複数の振動信号を切り替えて出力する切替器を備え、
前記信号処理装置に、前記切替器から出力された振動信号が入力される請求項6に記載の信号処理システム。
【請求項8】
前記振動検知部は複数あり、それぞれの前記振動検知部は振動センサを有しており、
複数の前記振動センサは、別々の機器に設置されており、
前記複数の振動センサから入力された複数の振動信号を切り替えて一つの振動信号を出力する切替器を備え、
前記信号処理装置には、前記切替器から出力された前記一つの振動信号が入力される請求項6に記載の信号処理システム。
【請求項9】
前記振動検知部は複数あり、
前記集音部から音響信号が入力され、複数の前記振動検知部からそれぞれ振動信号が入力され、当該音響信号及び複数の当該振動信号を送信する第1の通信機と、
前記音響信号及び複数の前記振動信号を受信する第2の通信機と、
前記第2の通信機によって受信された複数の前記振動信号を切り替えて出力する切替器と、
を更に備え、
前記信号処理装置に、前記切替器から出力された振動信号が入力される請求項6に記載の信号処理システム。
【請求項10】
前記振動検知部は複数あり、
複数の前記振動検知部から入力される複数の前記振動信号を切り替えて出力する切替器と、
前記集音部から音響信号が入力され、前記切替器から出力された振動信号が入力され、
当該音響信号と当該振動信号とを送信する第1の通信機と、
前記音響信号と前記振動信号とを受信する第2の通信機と、
前記切替器による切り替えの指示を受け付ける切替指示器と、
を備え、
前記第2の通信機は、前記切替指示器が受け付けた指示を送信し、
前記第1の通信機は、前記指示を受信し、
前記切替器は、前記第1の通信機が受信した指示に基づいて、出力する振動信号を切り替え、
前記信号処理装置に、前記音響信号と前記切替器から出力された振動信号とが前記第1の通信機及び前記第2の通信機を介して入力される請求項6に記載の信号処理システム。
【請求項11】
前記信号処理装置は、操作者の操作に応じて、前記調整後の音響信号を出力するか、前記入力された音響信号をそのまま出力するかを切り替えるスイッチを有し、
前記信号処理装置は、前記集音部から音響信号が入力され、前記振動検知部から振動信号が入力され、前記調整後の音響信号と前記集音部から入力された音響信号を切り替えて出力し、
前記信号処理装置から出力された調整後の音響信号または前記入力された音響信号を送信する第1の通信機と、
前記送信された調整後の音響信号または前記入力された音響信号を受信する第2の通信機と、
前記スイッチによる切り替えの指示を受け付けるスイッチ操作部と、
を備え、
前記第2の通信機は、前記スイッチ操作部が受け付けた指示を送信し、
前記第1の通信機は、前記指示を受信し、
前記スイッチは、前記第1の通信機が受信した指示に基づいて、出力する信号を切り替える請求項6に記載の信号処理システム。
【請求項12】
前記振動検知部は複数あり、
複数の前記振動検知部から入力される複数の前記振動信号を切り替えて前記信号処理装置に出力する切替器と、
前記信号処理装置から出力された信号を送信する第1の通信機と、
前記第1の通信機から送信された信号を受信する第2の通信機と、
前記切替器による切り替えの指示を操作者から受け付ける切替指示器と、
を備え、
前記第2の通信機は、前記切替指示器が受け付けた指示を送信し、
前記第1の通信機は、前記指示を受信し、
前記切替器は、前記第1の通信機が受信した指示に基づいて、出力する振動信号を切り替える請求項6または11に記載の信号処理システム。
【請求項13】
異常音を出力している機器または箇所を探索する探索方法であって、
探索者が、前記異常音を含む周囲の音を聞く工程と、
集音部が、前記周囲の音を電気信号に変換して音響信号を出力し、並行して、対象とする機器または箇所に設置された少なくとも一つの振動検知部が振動を電気信号に変換し、
少なくとも一つの振動信号を出力する工程と、
請求項1から5のいずれか一項に記載の信号処理装置が、前記音響信号と前記少なくとも一つの振動信号を用いて、前記音響信号を調整し、調整後の音響信号を出力する工程と

出力器が、前記調整後の音響信号を人間が感知可能な態様に変換して出力する工程と、
前記出力器による出力を前記探索者が感知して、前記聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、前記対象とする機器または箇所が前記異常音を出力していると判定する工程と、
を有する探索方法。
【請求項14】
特定の環境の音を電気信号に変換する集音部から入力された音響信号が入力される信号処理装置であって、
前記特定の環境の過去の音響信号と当該過去において振動センサが設けられた箇所または機器の振動が電気信号に変換された振動信号との間で予め決定された周波数毎の過去の異常音発生時の相関度を記憶する記録装置から、対象とする機器または箇所の周波数毎の過去の異常音発生時の相関度を読み出し、前記周波数毎の相関度が高いほど当該周波数の前記音響信号が相対的に大きくなるように、入力された前記音響信号の強度を当該周波数毎に調節する調節部を備える信号処理装置。
【請求項15】
前記記録装置には、前記過去の異常音の発生時における前記音響信号を記憶されており、
操作者の操作に応じて、前記過去の異常音の発生時における前記音響信号と、前記調節部による調整後の音響信号のいずれかを出力信号として出力するか切り替えるスイッチ
を更に備える請求項14に記載の信号処理装置。
【請求項16】
前記記録装置には、過去の異常音の発生時における前記音響信号の強度を前記周波数毎の相関度を用いて当該周波数毎に調節した調節後の音響信号が記憶されており、
前記記録装置から読み出される前記過去の異常音の発生時における前記調節後の音響信号と、入力された音響信号が前記調節部によって調節された後の音響信号のいずれかを出力するか切り替えるスイッチ
を更に備える請求項14に記載の信号処理装置。
【請求項17】
周囲の音を電気信号に変換して音響信号を出力する集音部と、
前記特定の環境の過去の音響信号と当該過去において特定の箇所または特定の機器の振動が電気信号に変換された振動信号との間で予め決定された周波数毎の相関度を記憶する記録装置と、
前記音響信号が入力され、対象とする機器または箇所に対応する周波数毎の相関度を前記記録装置から読み出し、前記周波数毎の相関度を用いて、入力された前記音響信号の強度を当該周波数毎に調節する請求項14から16のいずれか一項に記載の信号処理装置と、
前記信号処理装置から出力された調整後の音響信号を人間が感知可能な態様に変換して出力する出力器と、
を備える信号処理システム。
【請求項18】
特定の環境において異常音を出力している機器または機器の箇所を探索する探索方法であって、
探索者が、前記特定の環境の音を聞く工程と、
集音部が、前記特定の環境の音を電気信号に変換して音響信号を出力する工程と、
請求項14から16のいずれか一項に記載の信号処理装置が、対象とする機器または箇所に対応する周波数毎の相関度を前記記録装置から読み出し、前記周波数毎の相関度を用いて、入力された前記音響信号の強度を当該周波数毎に調節する工程と、
出力器が、前記信号処理装置から出力された調整後の音響信号を人間が感知可能な態様に変換して出力する工程と、
前記出力器による出力を前記探索者が感知して、前記聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、前記対象とする機器または箇所が前記異常音を出力していると判定する工程と、
を有する探索方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置、信号処理システム及び探索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
振動をセンサで電気信号に変換し、増幅して音として聞くシステムが市販されている。漏水探知機、デジタル聴振計、電子聴診器などで異常発生箇所の近くの振動を計測し、それを音として聴取できる。そのため、特定の箇所の異常を検知するために有効な技術である。機械設備点検の現場で使用される聴音棒は、信号処理や増幅などを用いず、振動を直接音として聴取するものである。
【0003】
また、振動と相関のある騒音を低減するため、計測した振動から2次音源を生成して、能動的に騒音を低減する装置が考案されている。例えば、特許文献1には、騒音が振動に起因して発生しているため、両者の相関が高いことを利用して、振動を計測して、制御音を演算により生成し、騒音を低減する装置が開示されている。また、振動と音の相関によって雑音を除去する装置(例えば、特許文献2、特許文献3参照)が考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-224680号公報
【文献】国際公開第2012/140818号公報
【文献】特開2006-138638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
異常音がどこから、何が原因で発生しているのか、調べたいときに、振動を計測することは多いが、その多くは、振動の大きさで評価するものである。また、従来技術のように振動音を聞くこともある。しかし、これらは、異常音の音を評価しているのではないので、実際にその振動が異常音の原因かどうか不確かな場合もある。
【0006】
すなわち、これらの装置では特定点の振動を音として聞くものであるが、実際の機械音は機械の1点から放射されるのではなく、広い面から放射されるか、複数の箇所から発生した音の合成である。また、発生する音の周波数特性は、機械の材質や形状や大きさなどに影響され、音質、すなわち周波数特性や減衰特性(継続時間、残響時間)が変化する。以上のことから、従来技術で聴取できる音は、通常機械の音として聞く音とは音質が異なる。そのため異常音(異音)の原因箇所探査に、従来の振動音聴取装置を使用した場合、異常音と同じ音を聞くことはできないため、うまく探査できない可能性がある。
【0007】
特許文献1~3の技術は、騒音や雑音を除去する機能により音の情報の一部が失われてしまうため、異常音の発生箇所を探査する目的に使用する場合、効果が不十分である。更にセンサ類が固定式で、移動しづらいので、探査には不向きである。
【0008】
このように、振動を音として聞いても本来の機器の異常音ではなく、音の聴取で異常発生箇所を特定することが難しい。一方、音は様々な箇所から発生して合成されるので、振動のように特定の箇所に起因した信号だけに分離することが難しい。そのため雑音が多く、振動に比べて診断に利用しにくいという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、異常音の発生箇所を探査することを容易にすることを可能とする信号処理装置、信号処理システム及び探索方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係る信号処理装置は、周囲の音を電気信号に変換する集音部から入力された音響信号と、振動を電気信号に変換する少なくとも一つの振動検知部から入力された少なくとも一つの振動信号とが入力される信号処理装置であって、前記音響信号をフーリエ変換する第1のフーリエ変換部と、前記振動信号をフーリエ変換する第2のフーリエ変換部と、前記第1のフーリエ変換部による変換後の第1の変換値と、前記第2のフーリエ変換部による変換後の第2の変換値とを用いて、予め設定された周波数毎に、前記音響信号と前記振動信号との間で、位相がどれだけ揃っているかを示す相関度を決定する相関度決定部と、前記相関度決定部によって決定された周波数毎の相関度に応じて、当該周波数毎に前記音響信号の強度を調節する調節部と、を備える。
【0011】
この構成によれば、周波数毎に、相関度が高いほど、当該周波数における音響信号の強度を強調することができる。従って、探索者が調整後の音響信号から、当該探索者が異常音を含む周囲の音から直接聞いた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、振動検知部が設置された機器または振動検知部が設置された箇所が異常音を出力していると判定することができる。これにより、異常音の発生箇所を探査することを容易にすることができる。
【0012】
本発明の第2の態様に係る信号処理装置は、第1の態様に係る信号処理装置であって、前記相関度は、コヒーレンスであり、前記相関度決定部は、前記第1のフーリエ変換部による変換後の第1の変換値と、前記第2のフーリエ変換部による変換後の第2の変換値とを用いて、予め設定された周波数毎に、コヒーレンスを算出し、前記調節部は、前記算出された周波数毎のコヒーレンスに応じて、当該周波数毎に前記音響信号の強度を調節する。
【0013】
この構成によれば、周波数毎に、コヒーレンスが高いほど、当該周波数における音響信号の強度を強調することができる。
【0014】
本発明の第3の態様に係る信号処理装置は、第1または2の態様に係る信号処理装置であって、前記調節部は、前記第1のフーリエ変換部による変換後の振幅スペクトルに対して、予め設定された周波数毎に、当該周波数に対応する前記相関度によって重み付けする重み付け部と、重み付け後の音響信号の振幅スペクトルと重み付けされていない音響信号の位相スペクトルを用いて、逆フーリエ変換する逆フーリエ変換部と、を有する。
【0015】
この構成によれば、逆フーリエ変換することによって、もともとの音響信号に対して、振動信号との相関が高い周波数の成分が強調された音声信号を出力することができる。
【0016】
本発明の第4の態様に係る信号処理装置は、第1または2の態様に係る信号処理装置であって、前記調節部は、前記音響信号を周波数毎の強度を変更するフィルタを有し、前記予め設定された周波数毎に、当該周波数に対応する前記相関度によって前記フィルタの係数が変更される。
【0017】
この構成によれば、周波数毎に、相関度が高いほど、当該周波数における音響信号の強度を強調することができる。
【0018】
本発明の第5の態様に係る信号処理装置は、第1から4のいずれかの態様に係る信号処理装置であって、操作者の操作に応じて、前記調節部によって調整後の音響信号を出力するか、前記入力された音響信号をそのまま出力するかを切り替えるスイッチを備える。
【0019】
この構成によれば、集音部から入力された音響信号と、調節部によって調整後の音響信号とを切り替えて聞くことができる。このため、操作者は、調整後の音響信号から、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、特定の機器または振動検知部が設置された箇所が異常音を出力していると判定することができる。
【0020】
本発明の第6の態様に係る信号処理システムは、周囲の音を電気信号に変換して音響信号を出力する集音部と、振動を電気信号に変換し、少なくとも一つの振動信号を出力する少なくとも一つの振動検知部と、前記音響信号と前記少なくとも一つの振動信号が入力され、調整後の音響信号を出力する第1から5のいずれかの態様に係る信号処理装置と、前記信号処理装置から出力された調整後の音響信号を人間が感知可能な態様に変換して出力する出力器と、を備える。
【0021】
この構成によれば、周波数毎に、相関度が高いほど、当該周波数における音響信号の強度を強調することができる。従って、探索者が調整後の音響信号から、当該探索者が異常音を含む周囲の音から直接聞いた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、振動検知部が設置された機器または振動検知部が設置された箇所が異常音を出力していると判定することができる。
【0022】
本発明の第7の態様に係る信号処理システムは、第6の態様に係る信号処理システムであって、前記振動検知部は複数あり、それぞれの前記振動検知部は振動センサを有しており、複数の前記振動センサは、一つの機器の互いに異なる箇所に設置されており、前記複数の振動センサから入力された複数の振動信号を切り替えて出力する切替器を備え、前記信号処理部に、前記切替器から出力された振動信号が入力される。
【0023】
この構成によれば、それぞれの振動信号について、周波数毎に相関度が高いほど、当該周波数における音響信号の強度を強調することができる。従って、探索者が、切替器の切り替え毎に調整後の音響信号を聞いて、調整後の音響信号から、当該探索者が異常音を含む周囲の音を聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、当該切替器から出力された振動信号を検知した振動センサが設置された箇所が異常音を出力していると判定することができる。
【0024】
本発明の第8の態様に係る信号処理システムは、第6の態様に係る信号処理装置であって、前記振動検知部は複数あり、それぞれの前記振動検知部は振動センサを有しており、複数の前記振動センサは、別々の機器に設置されており、前記複数の振動センサから入力された複数の振動信号を切り替えて一つの振動信号を出力する切替器を備え、前記信号処理装置には、前記切替器から出力された前記一つの振動信号が入力される。
【0025】
この構成によれば、探索者が、切替器の切り替え毎に調整後の音響信号を聞いて、調整後の音響信号から、当該探索者が異常音を含む周囲の音を聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、当該切替器から出力された振動信号を検知した振動センサが設置された機器が異常音を出力していると判定することができる。
【0026】
本発明の第9の態様に係る信号処理システムは、第6の態様に係る信号処理システムであって、前記振動検知部は複数あり、前記集音部から音響信号が入力され、複数の前記振動検知部からそれぞれ振動信号が入力され、当該音響信号及び複数の当該振動信号を送信する第1の通信機と、前記音響信号及び複数の前記振動信号を受信する第2の通信機と、前記第2の通信機によって受信された複数の前記振動信号を切り替えて出力する切替器と、を更に備え、前記信号処理装置に、前記切替器から出力された振動信号が入力される。
【0027】
この構成によれば、機器が設けられた機械室とは別の部屋にいる操作者は、切替器の切り替え毎に調整後の音響信号を聞いて、調整後の音響信号から、集音部から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、当該切替器から出力された振動信号を検知した振動センサが設置された機器が異常音を出力していると判定することができる。
【0028】
本発明の第10の態様に係る信号処理システムは、第6の態様に係る信号処理システムであって、前記振動検知部は複数あり、複数の前記振動検知部から入力される複数の前記振動信号を切り替えて出力する切替器と、前記集音部から音響信号が入力され、前記切替器から出力された振動信号が入力され、当該音響信号と当該振動信号とを送信する第1の通信機と、前記音響信号と前記振動信号とを受信する第2の通信機と、前記切替器による切り替えの指示を受け付ける切替指示器と、を備え、前記第2の通信機は、前記切替指示器が受け付けた指示を送信し、前記第1の通信機は、前記指示を受信し、前記切替器は、前記第1の通信機が受信した指示に基づいて、出力する振動信号を切り替え、前記信号処理装置に、前記音響信号と前記切替器から出力された振動信号とが前記第1の通信機及び前記第2の通信機を介して入力される。
【0029】
この構成によれば、機器が設けられた機械室とは別の部屋にいる操作者は、切替指示器を操作して切替器が出力する振動信号を切り替える毎に、調整後の音響信号から、集音部から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、当該切替器から出力された振動信号を検知した振動センサが設置された機器が異常音を出力していると判定することができる。
【0030】
本発明の第11の態様に係る信号処理システムは、第6の態様に係る信号処理システムであって、前記信号処理装置は、操作者の操作に応じて、前記調整後の音響信号を出力するか、前記入力された音響信号をそのまま出力するかを切り替えるスイッチを有し、前記信号処理装置は、前記集音部から音響信号が入力され、前記振動検知部から振動信号が入力され、前記調整後の音響信号と前記集音部から入力された音響信号を切り替えて出力し、前記信号処理装置から出力された調整後の音響信号または前記入力された音響信号を送信する第1の通信機と、前記送信された調整後の音響信号または前記入力された音響信号を受信する第2の通信機と、前記スイッチによる切り替えの指示を受け付けるスイッチ操作部と、を備え、前記第2の通信機は、前記スイッチ操作部が受け付けた指示を送信し、前記第1の通信機は、前記指示を受信し、前記スイッチは、前記第1の通信機が受信した指示に基づいて、出力する信号を切り替える。
【0031】
この構成によれば、機器が設けられた機械室とは別の部屋にいる操作者は、スイッチ操作部を操作して集音部から入力された音響信号の音をそのまま聞き、その後に、調整後の音響信号から、集音部から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、振動センサが設置された機器が異常音を出力していると判定することができる。
【0032】
本発明の第12の態様に係る信号処理システムは、第6または11の態様に係る信号処理システムであって、前記振動検知部は複数あり、複数の前記振動検知部から入力される複数の前記振動信号を切り替えて前記信号処理装置に出力する切替器と、前記信号処理装置から出力された信号を送信する第1の通信機と、前記第1の通信機から送信された信号を受信する第2の通信機と、前記切替器による切り替えの指示を操作者から受け付ける切替指示器と、を備え、前記第2の通信機は、前記切替指示器が受け付けた指示を送信し、前記第1の通信機は、前記指示を受信し、前記切替器は、前記第1の通信機が受信した指示に基づいて、出力する振動信号を切り替える。
【0033】
この構成によれば、機器が設けられた機械室とは別の部屋にいる操作者は、切替指示器を操作して切替器が出力する振動信号を切り替える毎に、調整後の音響信号から、集音部から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、当該切替器から出力された振動信号を検知した振動センサが設置された機器が異常音を出力していると判定することができる。
【0034】
本発明の第13の態様に係る探索方法は、異常音を出力している機器または箇所を探索する探索方法であって、探索者が、前記異常音を含む周囲の音を聞く工程と、集音部が、前記周囲の音を電気信号に変換して音響信号を出力し、並行して、対象とする機器または箇所に設置された少なくとも一つの振動検知部が振動を電気信号に変換し、少なくとも一つの振動信号を出力する工程と、第1から5のいずれかの態様に係る記載の信号処理装置が、前記音響信号と前記少なくとも一つの振動信号を用いて、前記音響信号を調整し、調整後の音響信号を出力する工程と、出力器が、前記調整後の音響信号を人間が感知可能な態様に変換して出力する工程と、前記出力器による出力を前記探索者が感知して、前記聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、前記対象とする機器または箇所が前記異常音を出力していると判定する工程と、を有する。
【0035】
この構成によれば、機器の運転音には、様々な箇所で発生した音が伝わり、様々な周波数の成分が含まれているが、特定の箇所の振動と相関度の高い騒音の周波数成分を強調することができる。このため、振動センサの位置をいろいろと変えてみて、異常と感じる音が強調して聞こえるようになったときの振動センサが設置された機器または箇所を、異常音の発生箇所と判定することができる。
【0036】
本発明の第14の態様に係る信号処理装置は、特定の環境の音を電気信号に変換する集音部から入力された音響信号が入力される信号処理装置であって、前記特定の環境の過去の音響信号と当該過去において振動センサが設けられた箇所または機器の振動が電気信号に変換された振動信号との間で予め決定された周波数毎の過去の異常音発生時の相関度を記憶する記録装置から、対象とする機器または箇所の周波数毎の過去の異常音発生時の相関度を読み出し、前記周波数毎の相関度を用いて、入力された前記音響信号の強度を当該周波数毎に調節する調節部を備える。
【0037】
この構成によれば、振動センサの設置箇所を移動して、移動する毎に相関度の演算をするという一連の工程がなくなるので、より迅速に診断を行うことができる。
【0038】
本発明の第15の態様に係る信号処理装置は、第14の態様に係る信号処理装置であって、前記記録装置には、前記過去の異常音の発生時における前記音響信号を記憶されており、操作者の操作に応じて、前記過去の異常音の発生時における前記音響信号と、前記調節部による調整後の音響信号のいずれかを出力信号として出力するか切り替えるスイッチを更に備える。
【0039】
この構成によれば、操作者は、異常音の発生時における音響信号を聞くことができる。そして、当該操作者は、この調整後の音響信号から、異常音の発生時における音響信号の音の周波数成分が強調して聞こえる場合、振動検知部が設置された機器または振動検知部が設置された箇所が異常音を出力していると判定することができる。
【0040】
本発明の第16の態様に係る信号処理装置は、第14の態様に係る信号処理装置であって、前記記録装置には、過去の異常音の発生時における前記音響信号の強度を前記周波数毎の相関度を用いて当該周波数毎に調節した調節後の音響信号が記憶されており、前記記録装置から読み出される前記過去の異常音の発生時における前記調節後の音響信号と、入力された音響信号が前記調節部によって調節された後の音響信号のいずれかを出力するか切り替えるスイッチを更に備える。
【0041】
この構成によれば、操作者は、異常音の発生時における調整された過去の音響信号を聞くことができる。そして、当該操作者は、現在の調整後の音響信号から、過去の異常音の発生時における音響信号の音の周波数成分が強調して聞こえる場合、振動検知部が設置された機器または振動検知部が設置された箇所が異常音を出力していると判定することができる。
【0042】
本発明の第17の態様に係る信号処理システムは、周囲の音を電気信号に変換して音響信号を出力する集音部と、前記特定の環境の過去の音響信号と当該過去において特定の箇所または特定の機器の振動が電気信号に変換された振動信号との間で予め決定された周波数毎の相関度を記憶する記録装置と、前記音響信号が入力され、対象とする機器または箇所に対応する周波数毎の相関度を前記記録装置から読み出し、前記周波数毎の相関度を用いて、入力された前記音響信号の強度を当該周波数毎に調節する第14から16のいずれかの態様に係る信号処理装置一項に記載の信号処理装置と、前記信号処理装置から出力された調整後の音響信号を人間が感知可能な態様に変換して出力する出力器と、を備える。
【0043】
この構成によれば、探索者が調整後の音響信号から、当該探索者が異常音を含む周囲の音から直接聞いた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、対象とする機器または箇所が異常音を出力していると判定することができる。
【0044】
本発明の第18の態様に係る探索方法は、特定の環境において異常音を出力している機器または機器の箇所を探索する探索方法であって、探索者が、前記特定の環境の音を聞く工程と、集音部が、前記特定の環境の音を電気信号に変換して音響信号を出力する工程と、第14から16のいずれかの態様に係る信号処理装置が、対象とする機器または箇所に対応する周波数毎の相関度を前記記録装置から読み出し、前記周波数毎の相関度を用いて、入力された前記音響信号の強度を当該周波数毎に調節する工程と、出力器が、前記信号処理装置から出力された調整後の音響信号を人間が感知可能な態様に変換して出力する工程と、前記出力器による出力を前記探索者が感知して、前記聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、前記対象とする機器または箇所が前記異常音を出力していると判定する工程と、を有する。
【0045】
この構成によれば、探索者が調整後の音響信号から、当該探索者が異常音を含む周囲の音から直接聞いた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、対象とする機器または箇所が異常音を出力していると判定することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明の一態様によれば、周波数毎に、相関度が高いほど、当該周波数における音響信号の強度を強調することができる。従って、探索者が調整後の音響信号から、当該探索者が異常音を含む周囲の音から直接聞いた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、振動検知部が設置された機器または振動検知部が設置された箇所が異常音を出力していると判定することができる。これにより、異常音の発生箇所を探査することを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】第1の実施形態に係る信号処理システムの概略構成図である。
図2】第1の実施形態に係る信号処理装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】異常音を出力している機械または箇所を探索する探索方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】第1の実施形態の第1の実施例に係る信号処理システムの概略構成図である。
図5】第1の実施形態の第2の実施例に係る信号処理システムの概略構成図である。
図6】第2の実施形態に係る信号処理システムの概略構成図である。
図7】第2の実施形態の第1の実施例に係る信号処理システムの概略構成図である。
図8】第2の実施形態の第2の実施例に係る信号処理システムの概略構成図である。
図9】第3の実施形態に係る信号処理システムの概略構成図である。
図10】第3の実施形態に係る信号処理装置の概略構成を示すブロック図である。
図11】第3の実施形態の実施例に係る信号処理システムの概略構成図である。
図12】第4の実施形態に係る信号処理システムの概略構成図である。
図13】第1の変形例に係る信号処理装置の概略構成図である。
図14】相関度をイコライザの帯域毎に区切って相対レベルを設定することを説明するための図である。
図15】第1の変形例に係る信号処理装置のフィルタ343の構成の一例を示す構成図である。
図16】第5の実施形態に係る信号処理システムの概略構成図である。
図17】第5の実施形態に係る信号処理装置の概略構成図である。
図18】第5の実施形態の変形例に係る信号処理装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0049】
本実施形態に係る信号処理システムは、機械から発生する異常音の原因となる箇所を特定するため、機械の振動を用いて、機械の振動と相関が高い騒音を信号処理により強調する。
【0050】
<第1の実施形態>
図1は第1の実施形態に係る信号処理システムの概略構成図である。図1に示すように、信号処理システムS1は、集音部1、振動検知部2、入力が集音部1の出力及び振動検知部2の出力が接続された信号処理装置3、入力が信号処理装置3の出力に接続されたアンプ4、及びアンプ4の出力が接続された出力器5を備える。
【0051】
集音部1は、機器Dの騒音を計測するマイクロホン11と、マイクロホン11に接続され計測された信号を増幅するアンプ12とを有する。アンプ12で増幅後の音響信号が信号処理装置3に入力される。
振動検知部2は、機器Dの振動を計測する振動センサ21と、振動センサ21に接続され計測された信号を増幅するアンプ22とを有する。アンプ22で増幅後の振動信号が信号処理装置3に入力される。
【0052】
信号処理装置3は、集音部1から入力される音響信号及び振動検知部2から入力される振動信号を信号処理する。音響信号及び振動信号は、時系列信号である。
アンプ4は、信号処理装置3で信号処理した信号を増幅する。
出力器5は、アンプ4で増幅された信号を音波に変換して出力する。出力器5は、例えば、ヘッドホンである。なお、出力器5は、耳に装着するイヤホンまたはスピーカであってもよい。ここでヘッドホンまたはイヤホンは、電気信号を、耳(鼓膜)に近接した発音体(スピーカーなど)を用いて音波(可聴音)に変換する装置である。機械室等の実際の音に聴取が邪魔されないようにするためには、出力器5は、イヤホンやヘッドホンとすることが望ましい。
【0053】
(配置)
集音部1、振動検知部2は、移動可能なハンディタイプであってもよいし、固定されていてもよい。
マイクロホン11も振動センサ21も任意の位置に移動可能で、マイクロホン11は異常音が聴取できる箇所に設置される。マイクロホン11は診断の基準となる調整前の異常音が変化しないように、スタンド等に取り付けて固定することが望ましい。
【0054】
図2は、信号処理装置の概略構成を示すブロック図である。図2に示すように、信号処理装置3は、第1のフーリエ変換部31、第2のフーリエ変換部32、相関度決定部33、調節部34、スイッチ35を備える。調節部34は、重み付け部341と、逆フーリエ変換部342とを備える。
スイッチ35は、操作者の操作に応じて、入力された音響信号をそのままアンプ4へ出力するか、入力された音響信号を第1のフーリエ変換部31に出力するかを切り替える。すなわち、スイッチ35は、操作者の操作に応じて、調節部34によって調整後の音響信号を出力するか、入力された音響信号をそのまま出力するかを切り替える。
【0055】
第1のフーリエ変換部31は、集音部1が出力した音響信号に対してフーリエ変換(例えば、高速フーリエ変換:FFT)を行う。
第2のフーリエ変換部32は、振動検知部2が出力した振動信号に対してフーリエ変換(例えば、高速フーリエ変換:FFT)を行う。
【0056】
相関度決定部33は、第1のフーリエ変換部31と第2のフーリエ変換部32のフーリエ変換結果を用いて騒音と振動の相関度を計算する。相関度は、例えばコヒーレンスである。コヒーレンスは、2つの信号の相関度を表す指標として用いられ、0以上、1以下の値となる。大きいほど、両者の相関が高いことを示す。信号をフーリエ変換すると、振幅スペクトルと位相スペクトルが得られる。コヒーレンスは、次の式で表される。
【0057】
【数1】
【0058】
ここで、
【数2】
は、音響信号x(t)(但し、tは時間)のパワースペクトルの平均である。
【数3】
は、振動信号y(t)のパワースペクトルの平均である。
【数4】
はクロススペクトルの平均である。COH(f)はコヒーレンスである(但し、fは周波数)。
【0059】
このように、相関度決定部33は、第1のフーリエ変換部による変換後の第1の変換値と、前記第2のフーリエ変換部による変換後の第2の変換値とを用いて、予め設定された周波数毎に、音響信号と振動信号との間で、位相がどれだけ揃っているかを示す相関度を決定する。本実施形態では、その一例として、相関度決定部33は、前記第1のフーリエ変換部による変換後の第1の変換値と、前記第2のフーリエ変換部による変換後の第2の変換値とを用いて、予め設定された周波数毎に、コヒーレンスを算出する。
【0060】
第1のフーリエ変換部31、第2のフーリエ変換部32は、時間波形をAD変換器で離散化して、間隔hでサンプリングしたサンプル数N個のデータ列f(nh)についてフーリエ変換する。求められたフーリエ係数ak、bkから、振幅と位相が算出される。ak、bkは基本角周波数ωの第k次高調波のフーリエ係数を表す。
【0061】
【数5】
【0062】
【数6】
【0063】
重み付け部341は、この振幅rに、音の信号と振動の信号のコヒーレンスCOH(f)を重みづけとして乗ずる。すなわち、位相はそのままで、振幅だけ重みづけをする。
【0064】
r’=COH(f)×r
【0065】
逆フーリエ変換部342は、振幅だけ重みづけされた関数を逆フーリエ変換することで、重みづけされた時間波形となる。コヒーレンスCOH(f)は、0~1の値を示すので、そのまま調節したい信号に乗ずれば0~100%の範囲で振幅を調節できる。コヒーレンスでそのまま重みづけをするのではなく、相関度による調節の強弱を任意に変化させてもよい。例えば、1-k{1-COH(ω)}(kは調節したい割合:0~1)を信号に乗ずれば、(1-k)/100~100%の範囲で調節できる。
【0066】
このように、重み付け部341は、このうち各周波数の大きさを表す振幅スペクトルに騒音と振動のコヒーレンスを掛ける。これにより、両者の相関度に比例した重みづけをすることができる。このように、重み付け部341は、第1のフーリエ変換部31による変換後の振幅スペクトルに対して、予め設定された周波数毎に、当該周波数に対応する前記相関度によって重み付けする。これにより、周波数毎に、コヒーレンスが高いほど、当該周波数における音響信号の強度を強調することができる。
【0067】
逆フーリエ変換部342は、この重み付け後の音響信号の振幅スペクトルと重み付けされていない音響信号の位相スペクトルを用いて、逆フーリエ変換(例えば、高速逆フーリエ変換:IFFT)を行い、時間信号を算出する。これにより、逆フーリエ変換することによって、もともとの音響信号に対して、振動信号との相関が高い周波数の成分が強調された音声信号を出力することができる。この時間信号はアンプ4によって増幅され、増幅された時間信号が出力器5から出力される。
【0068】
このように、調節部34は、相関度決定部33によって決定された周波数毎の相関度に応じて、当該周波数毎に音響信号の強度を調節する。例えば、調節部34は、算出された周波数毎のコヒーレンスに応じて、当該周波数毎に音響信号の強度を調節する。
【0069】
続いて、信号処理装置3を用いて異常音を出力している機器または箇所を探索する探索方法について、図3を用いて説明する。
【0070】
図3は、異常音を出力している機械または箇所を探索する探索方法の流れの一例を示すフローチャートである。
(ステップS101)探索者が、異常音を含む周囲の音を聞く。
(ステップS102)集音部1が、周囲の音を電気信号に変換して音響信号を出力し、並行して、対象の機器または箇所に設置された振動検知部2が振動を電気信号に変換し、振動信号を出力する。
(ステップS103)信号処理装置3が、音響信号と振動信号を用いて、音響信号を調整し、調整後の音響信号を出力する。
(ステップS104)出力器5は、調整後の音響信号を人間が感知可能な信号(ここでは一例として音波)に変換して出力する。
(ステップS105)探索者が調整後の音響信号の音から、ステップS101において周囲の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、前記対象の機器または箇所が異常音を出力していると判定する。
【0071】
これにより、機器の運転音には、様々な箇所で発生した音が伝わり、様々な周波数の成分が含まれているが、本実施形態によれば、対象の機器または箇所の振動と相関度の高い騒音の周波数成分を強調することができる。このため、振動センサの位置をいろいろと変えてみて、異常と感じる音が強調して聞こえる(例えば、一番大きく聞こえる)ようになったときの振動センサが設置された機器または箇所を、異常音の発生箇所と判定することができる。
【0072】
以上、第1の実施形態に係る信号処理システムS1は、周囲の音を電気信号に変換して音響信号を出力する集音部1と、振動を電気信号に変換し、少なくとも一つの振動信号を出力する少なくとも一つの振動検知部2と、音響信号と少なくとも一つの振動信号が入力され、調整後の音響信号を出力する信号処理装置3と、信号処理装置3から出力された調整後の音響信号を人間が感知可能な態様(ここでは一例として音波)に変換して出力する出力器5と、を備える。
【0073】
ここで第1の実施形態に係る信号処理装置3は、周囲の音を電気信号に変換する集音部1から入力された音響信号と、振動を電気信号に変換する少なくとも一つの振動検知部2から入力された少なくとも一つの振動信号とが入力される信号処理装置である。信号処理装置3は、音響信号をフーリエ変換する第1のフーリエ変換部31と、振動信号をフーリエ変換する第2のフーリエ変換部32と、第1のフーリエ変換部31による変換後の第1の変換値と、第2のフーリエ変換部32による変換後の第2の変換値とを用いて、予め設定された周波数毎に、音響信号と振動信号との間で、位相がどれだけ揃っているかを示す相関度を決定する相関度決定部33と、相関度決定部33によって決定された周波数毎の相関度に応じて、当該周波数毎に音響信号の強度を調節する調節部34と、を備える。
【0074】
この構成により、周波数毎に、相関度が高いほど、当該周波数における音響信号の強度を強調することができる。従って、探索者が調整後の音響信号から、当該探索者が異常音を含む周囲の音から直接聞いた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、振動検知部2が設置された機器または振動検知部2が設置された箇所が異常音を出力していると判定することができる。
【0075】
<第1の実施形態の第1の実施例>
続いて第1の実施形態の第1の実施例について説明する。図4は、第1の実施例に係る信号処理システムの概略構成図である。第1の実施例における信号数は、音響信号が1で、振動信号が複数(ここでは一例として三つ)である。図4に示すように、一例として、振動センサ21は三つあり、それぞれ、機器Dの評価対象箇所に固定されている。図4に示すように、第1の実施例に係る信号処理システムS11は、図1の第1の実施形態に係る信号処理システムS1と比べて、振動検知部2-1、2-2、2-3の三つに増え、切替器6が更に設けられた構成になっている。図1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
振動検知部2-1、2-2、2-3それぞれは、振動センサ21と、アンプ22とを備える。切替器6は、評価対象の箇所の振動信号を切り替える。マイクロホン11は、異常音聴取箇所にスタンド等で固定される。マイクロホン11は、異常音聴取箇所にスタンド等で固定させる方が、調整前の原音が変化しないので好ましい。出力器5の音の出力はスピーカでも良いが、周囲の音の影響を考慮してヘッドホンまたはイヤホンが好ましい。
【0077】
図4に示すように、信号処理システムS11は、複数(ここでは一例として三つ)の振動センサを有し、複数の振動センサ21は、一つの機器の互いに異なる箇所に設置されている。切替器6は、複数の振動センサ21から入力された複数の振動信号を切り替えて出力する。信号処理装置には、切替器6から出力された振動信号が入力される。
【0078】
以下、異常音を出力している機器または箇所を探索する工程の流れの一例について説明する。まず、操作者が集音部1から入力された音響信号の音をそのまま出力器5を介して聞く。あるいは、操作者が、異常音を含む周囲の音(すなわち空気を伝わって伝搬する音)を出力器5を介さずに聞く。前者の方が後者よりも、周囲からの音の影響を受けにくい点、及び調整後の音響信号と同じ位置の音を聞けることで比較に適している点から、好ましい。
次に、操作者は、信号処理装置3によって調整後の音響信号の音を聞く。このとき例えば、切替器6は振動検知部2-1が検知した振動信号を出力しているものとする。操作者は、調整後の音響信号を聞いて、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、振動検知部2-1の振動センサ21が設置された箇所が異常音を出力していると判定する。次に、操作者は切替器6を操作して、切替器6が出力する振動信号を例えば振動検知部2-2が検知した振動信号に切り替え、調整後の音響信号を聞く。次に、操作者は、調整後の音響信号の音から、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、振動検知部2-2の振動センサ21が設置された箇所が異常音を出力していると判定する。次に、操作者は切替器6を操作して、切替器6が出力する振動信号を例えば振動検知部2-3が検知した振動信号に切り替え、調整後の音響信号を聞く。次に、操作者は、調整後の音響信号の音から、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、振動検知部2-3の振動センサ21が設置された箇所が異常音を出力していると判定する。
【0079】
この構成により、それぞれの振動信号について、周波数毎に相関度が高いほど、当該周波数における音響信号の強度を強調することができる。従って、探索者が、切替器6の切り替え毎に調整後の音響信号を聞いて、調整後の音響信号から、当該探索者が異常音を含む周囲の音を聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、当該切替器6から出力された振動信号を検知した振動センサが設置された箇所が異常音を出力していると判定することができる。
【0080】
<第1の実施形態の第2の実施例>
続いて第1の実施形態の第2の実施例について説明する。図5は、第2の実施例に係る信号処理システムの概略構成図である。第2の実施例に係る信号処理システムS12は、複数の機器が設置された機械室内で異常音の原因機器を探索する場合などに使用する。第2の実施例における信号数は、音響信号が1で、振動信号が複数(ここでは一例として三つ)である。第2の実施例では、第1の実施例とは異なり、評価をしたい機器D1、D2、D3毎に振動センサ21が設置される。
【0081】
図5に示すように、第2の実施例に係る信号処理システムS12は、図4の第1の実施例に係る信号処理システムS11と比べて、振動センサ21が機器D1、D2、D3毎に設置されている点が異なる。図4と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。切替器6は、評価対象の機器の振動信号を切り替える。
【0082】
マイクロホン11は騒音を評価する箇所に設置される。マイクロホン11は、異常音聴取箇所にスタンド等で固定させる方が、調整前の原音が変化しないので好ましい。出力器5の音の出力はスピーカでも良いが、周囲の音の影響を考慮してヘッドホンまたはイヤホンが好ましい。
【0083】
図5に示すように、信号処理システムS12は複数の振動センサ21を有し、複数の振動センサ21は、別々の機器に設置されている。切替器6は、複数の振動センサ21から入力された複数の振動信号を切り替えて一つの振動信号を出力する。信号処理装置3には、切替器6から出力された一つの振動信号が入力される。
【0084】
以下、異常音を出力している機器または箇所を探索する工程の流れの一例について説明する。まず、操作者が集音部1から入力された音響信号の音をそのまま出力器5を介して聞く。あるいは、操作者が、異常音を含む周囲の音(すなわち空気を伝わって伝搬する音)を出力器5を介さずに聞く。前者の方が後者よりも、周囲からの音の影響を受けにくい点、及び調整後の音響信号と同じ位置の音を聞けることで比較に適している点から、好ましい。
次に、操作者は、信号処理装置3によって調整後の音響信号の音を聞く。このとき例えば、切替器6は機器D1の振動信号を出力しているものとする。操作者は、調整後の音響信号を聞いて、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、機器D1が異常音を出力していると判定する。次に、操作者は切替器6を操作して、切替器6が出力する振動信号を例えば機器D2の振動信号に切り替え、調整後の音響信号を聞く。次に、操作者は、調整後の音響信号の音から、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、機器D2が異常音を出力していると判定する。次に、操作者は切替器6を操作して、切替器6が出力する振動信号を例えば機器D3の振動信号に切り替え、調整後の音響信号を聞く。次に、操作者は、調整後の音響信号の音から、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、機器D3が異常音を出力していると判定する。
【0085】
この構成により、探索者が、切替器6の切り替え毎に調整後の音響信号を聞いて、調整後の音響信号から、当該探索者が異常音を含む周囲の音を聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、当該切替器6から出力された振動信号を検知した振動センサが設置された機器が異常音を出力していると判定することができる。
【0086】
<第2の実施形態>
続いて第2の実施形態について説明する。図6は、第2の実施形態に係る信号処理システムの概略構成図である。第2の実施形態に係る信号処理システムS2は、機械室とは別の部屋(例えば、制御ルーム、または遠隔地など)で、機械室内の異常音の原因機器を探索する場合などに使用する。図6に示すように、第2の実施形態に係る信号処理システムS2は、図1の第1の実施形態に係る信号処理システムS1と比べて、通信機(第1の通信機ともいう)7及び通信機(第2の通信機ともいう)8が設けられている点が異なる。図1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。機械室には機器Dが設けられており、この機器Dに振動センサ21が固定されている。
【0087】
通信機8、信号処理装置3b、アンプ4、出力器5は、機械室とは別の部屋に設けられている。
通信機7は、集音部1から音響信号が入力され、振動センサ21から振動信号が入力され、音響信号及び振動信号を送信する。
機械室とは別の部屋に設けられた通信機8は、通信機7によって送信された音響信号及び振動信号を受信し、受信した音響信号及び振動信号を信号処理装置3bに出力する。通信機7及び通信機8の通信は、無線であっても有線であってもよく、パケットに含んで伝送してもよいし、シリアル信号またはパラレル信号としてそのまま伝送してもよい。
【0088】
機械室とは別の部屋に設けられた信号処理装置3bは、音響信号と振動信号の周波数毎の相関度に応じて、この音響信号を、周波数毎に重みづけされた音響信号に変換することができる。これにより、機械室とは別の部屋において、探索者は、振動信号を用いて重みづけされた音響信号を聴取することができる。
【0089】
以下、図6の実施形態に係る信号処理装置を用いて、異常音を出力している機器または箇所を探索する工程の流れについて説明する。まず、機械室とは別の部屋において、操作者がスイッチ35を操作することによって、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く。次に、操作者がスイッチ35を操作することによって、調節部34によって調整後の音響信号の音を聞く。操作者は、調整後の音響信号を聞いて、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、機器Dまたは振動センサ21が設置された箇所が異常音を出力していると判定する。
【0090】
この構成により、機器が設けられた機械室とは別の部屋にいる操作者が、集音部1から入力された音響信号と、調節部34によって調整後の音響信号とを切り替えて聞くことができる。このため、機器が設けられた機械室とは別の部屋にいる操作者は、調整後の音響信号から、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、特定の機器または振動検知部2が設置された箇所が異常音を出力していると判定することができる。
【0091】
<第2の実施形態の第1の実施例>
続いて第2の実施形態の第1の実施例について説明する。図7は、第2の実施形態の第1の実施例に係る信号処理システムの概略構成図である。第2の実施形態の第1の実施例に係る信号処理システムS21は、機械室とは別の部屋(例えば、制御ルーム、または遠隔地など)で、機械室内の異常音の原因機器を探索する場合などに使用する。第2の実施形態の第1の実施例では、第1の実施形態の第2の実施例とは異なり、音響信号と各振動信号を伝送し、離れた場所(例えば、遠隔地)で受信する。第2の実施形態の第1の実施例における信号数は、音響信号が1で、振動信号が複数(ここでは一例として三つ)である。第2の実施形態の第1の実施例では、第1の実施形態の第2の実施例と同様に、評価をしたい機器D1、D2、D3毎に振動センサ21が設置される。
【0092】
図7に示すように、第2の実施形態の第1の実施例に係る信号処理システムS21は、図5の第1の実施形態の第2の実施例に係る信号処理システムS12と比べて、通信機(第1の通信機ともいう)7及び通信機(第2の通信機ともいう)8が設けられており、切替器6は、受信側の通信機8に接続されている点が異なる。図5と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0093】
通信機7は、集音部1から音響信号が入力され、複数(ここでは三つ)の振動センサ21からそれぞれ振動信号が入力され、音響信号及び複数(ここでは三つ)の振動信号を送信する。
通信機8は、通信機7によって送信された音響信号及び複数(ここでは三つ)の振動信号を受信し、受信した音響信号を信号処理装置3に出力し、受信した三つの振動信号を切替器6に出力する。これにより、切替器6は、通信機8によって受信された複数(ここでは三つ)の振動信号を切り替えて出力する。これにより、信号処理装置3に、切替器6から出力された振動信号が入力される。信号処理装置3は、順次、それぞれの振動信号と音響信号とを用いて、周波数毎に音響信号の強度を調節する。
【0094】
以下、異常音を出力している機器または箇所を探索する工程の流れの一例について説明する。まず、機械室とは別の部屋において、操作者がスイッチ35を操作することによって、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く。次に、操作者がスイッチ35を操作することによって、信号処理装置3によって調整後の音響信号の音を聞く。このとき例えば、切替器6は機器D1の振動信号を出力しているものとする。操作者は、調整後の音響信号を聞いて、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、機器D1が異常音を出力していると判定する。次に、操作者は切替器6を操作して、切替器6が出力する振動信号を例えば機器D2の振動信号に切り替え、調整後の音響信号を聞く。次に、操作者は、調整後の音響信号の音から、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、機器D2が異常音を出力していると判定する。次に、操作者は切替器6を操作して、切替器6が出力する振動信号を例えば機器D3の振動信号に切り替え、調整後の音響信号を聞く。次に、操作者は、調整後の音響信号の音から、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、機器D3が異常音を出力していると判定する。
【0095】
この構成により、機器が設けられた機械室とは別の部屋にいる操作者は、切替器6の切り替え毎に調整後の音響信号を聞いて、調整後の音響信号から、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、当該切替器6から出力された振動信号を検知した振動センサが設置された機器が異常音を出力していると判定することができる。
【0096】
<第2の実施形態の第2の実施例>
続いて第2の実施形態の第2の実施例について説明する。図8は、第2の実施形態の第2の実施例に係る信号処理システムの概略構成図である。第2の実施形態の第2の実施例に係る信号処理システムS22は、機械室とは別の部屋(例えば、制御ルーム、または遠隔地など)で、機械室内の異常音の原因機器を探索する場合などに使用する。
【0097】
図8に示すように、第2の実施形態の第2の実施例に係る信号処理システムS22は、図7の第2の実施形態の第1の実施例に係る信号処理システムS21と比べて、切替器6が機械室側に設けられ、切替指示器9が機械室とは別の部屋に追加された点が異なる。図8と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0098】
切替指示器9は、送信側の切替器6を遠隔で切り替え、振動信号を切り替える。
切替器6は、アンプ22それぞれに接続されており、複数の振動センサから入力される複数の振動信号を切り替えて通信機7へ出力する。
通信機7は、集音部1から音響信号が入力され、切替器6から出力された振動信号が入力され、当該音響信号と当該振動信号とを送信する。
通信機8は、この音響信号とこの振動信号とを受信する。
切替指示器9は、切替器6による切り替えの指示を操作者から受け付ける。
通信機8は、切替指示器9が受け付けた指示を送信し、通信機7は、この指示を受信する。
切替器6は、通信機7が受信した指示に基づいて、出力する振動信号を切り替える。
信号処理装置3bに、音響信号と切替器6から出力された振動信号とが通信機7及び通信機8を介して入力される。
【0099】
以下、異常音を出力している機器または箇所を探索する工程の流れについて説明する。まず、機械室とは別の部屋において、操作者がスイッチ35を操作することによって、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま出力器5を介して聞く。次に、操作者がスイッチ35を操作することによって、調整後の音響信号の音を聞く。このとき例えば、切替器6は機器D1の振動信号を出力しているものとする。操作者は、調整後の音響信号を聞いて、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、機器D1が異常音を出力していると判定する。次に、操作者は切替指示器9を操作して、切替器6が出力する振動信号を例えば機器D2の振動信号に切り替え、調整後の音響信号を聞く。次に、操作者は、調整後の音響信号の音から、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、機器D2が異常音を出力していると判定する。次に、操作者は切替指示器9を操作して、切替器6が出力する振動信号を例えば機器D3の振動信号に切り替え、調整後の音響信号を聞く。次に、操作者は、調整後の音響信号の音から、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、機器D3が異常音を出力していると判定する。
【0100】
この構成により、機器が設けられた機械室とは別の部屋にいる操作者は、切替指示器9を操作して切替器6が出力する振動信号を切り替える毎に、調整後の音響信号から、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、当該切替器6から出力された振動信号を検知した振動センサが設置された機器が異常音を出力していると判定することができる。
【0101】
<第3の実施形態>
続いて第3の実施形態について説明する。図9は、第3の実施形態に係る信号処理システムの概略構成図である。第3の実施形態に係る信号処理システムS3は、第2の実施形態と同様に、機械室とは別の部屋(例えば、制御ルーム、または遠隔地など)で、機械室内の異常音の原因機器を探索する場合などに使用する。図9に示すように、第3の実施形態に係る信号処理システムS3は、図6の第2の実施形態に係る信号処理システムS2と比べて、信号処理装置3が変更された信号処理装置3bが機械室側に移動され、スイッチ操作部10が別の部屋側に追加された点が異なる。図6と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。機械室には機器Dが設けられており、この機器Dに振動センサ21が固定されている。
【0102】
信号処理装置3bは、第1の入力が集音部1の出力に接続され、第2の入力が振動検知部2の出力に接続されており、出力が通信機7の入力に接続されている。信号処理装置3bは、集音部1から音響信号が入力され、振動検知部2から振動信号が入力され、調整後の音響信号と入力された音響信号を切り替えて通信機7へ出力する。この切り替えはスイッチ35により行われる。スイッチ操作部10は、スイッチ35による切り替えの指示を受け付ける。これにより、スイッチ35による切り替えは、スイッチ操作部10が受け付けた指示によって操作される。
【0103】
通信機7は、信号処理装置3bから出力された調整後の音響信号または前記入力された音響信号を送信する。
通信機8は、送信された調整後の音響信号または前記入力された音響信号を受信する。
また通信機8は、スイッチ操作部10が受け付けた指示を送信し、通信機7は、この指示を受信する。
【0104】
図10は、第3の実施形態に係る信号処理装置の概略構成を示すブロック図である。図10において図2と同様の構成については同一の符号が付されている。図10に示すように、第3の実施形態に係る信号処理装置3bは、図2の信号処理装置3と比べて、スイッチ35が、通信機7が受信した指示に基づいて、出力する信号を切り替える点が異なっている。その他の構成は、図2と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0105】
以下、異常音を出力している機器または箇所を探索する工程の流れの一例について図9を用いて説明する。まず、機械室とは別の部屋において、操作者がスイッチ操作部10を操作することによって、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま出力器5を介して聞く。次に、操作者がスイッチ操作部10を操作することによって、信号処理装置3bによって調整後の音響信号の音を聞く。操作者は、調整後の音響信号を聞いて、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、機器Dまたは振動センサ21が設置された箇所が異常音を出力していると判定する。
【0106】
この構成により、機器が設けられた機械室とは別の部屋にいる操作者は、スイッチ操作部10を操作して集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞き、その後に、調整後の音響信号から、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、振動センサが設置された機器が異常音を出力していると判定することができる。更に、通信機7は、集音部1から入力された音響信号、及び調整後の音響信号のみを送信し、振動信号を送信しなくてよいので、第2の実施形態と比べて、通信量を低減することができる。
【0107】
<第3の実施形態の実施例>
続いて第3の実施形態の実施例について説明する。図11は、第3の実施形態の実施例に係る信号処理システムの概略構成図である。第3の実施形態の実施例に係る信号処理システムS31は、機械室とは別の部屋(例えば、制御ルーム、または遠隔地など)で、機械室内の異常音の原因機器を探索する場合などに使用する。第3の実施形態の実施例における信号数は、音響信号が1で、振動信号が複数(ここでは一例として三つ)である。第3の実施形態の実施例では、第2の実施形態の第2の実施例と同様に、評価をしたい機器D1、D2、D3毎に振動センサ21が設置される。
【0108】
図11に示すように、第3の実施形態の実施例に係る信号処理システムS31は、図8の第2の実施形態の第2の実施例に係る信号処理システムS22と比べて、信号処理装置3bが機械室側に移動され、スイッチ操作部10が別の部屋側に追加された点が異なる。この相違点に係る信号処理装置3bとスイッチ操作部10の構成は図9と同様である。図8図9と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0109】
切替器6は、第1の入力が振動検知部2-1の出力に接続され、第2の入力が振動検知部2-2の出力に接続され、第3の入力が振動検知部2-3の出力に接続されており、出力が信号処理装置3bの第2の入力に接続されている。切替器6は、複数(ここでは三つ)の振動センサ21から入力される複数の振動信号を切り替えて信号処理装置3bに出力する。
【0110】
信号処理装置3bは、第1の入力が集音部1の出力に接続され、第2の入力が切替器6の出力に接続されている。信号処理装置3bは、集音部1から音響信号が入力され、切替器6から振動信号が入力され、調整後の音響信号と集音部1から入力された音響信号を切り替えて通信機7へ出力する。
【0111】
通信機7は、信号処理装置3bから出力された信号、すなわち調整後の音響信号または前記集音部1から入力された音響信号のいずれか、を送信する。
通信部8は、通信機7から送信された信号を受信する。
【0112】
切替指示器9は、切替器6による切り替えの指示を操作者から受け付ける。
通信機8は、切替指示器9が受け付けた指示を送信し、通信機7は、この指示を受信する。切替器6は、通信機7が受信した指示に基づいて、出力する振動信号を切り替える。これにより、信号処理装置3bに入力される振動信号が、切替指示器9で指示された機器から検知された振動信号に切り替わる。
【0113】
以下、異常音を出力している機器または箇所を探索する工程の流れについて説明する。
まず、機械室とは別の部屋において、操作者がスイッチ操作部10を操作することによって、スイッチ35を遠隔に操作して、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く。次に、操作者がスイッチ35を操作することによって、調整後の音響信号の音を聞く。このとき例えば、切替器6は機器D1の振動信号を出力しているものとする。操作者は、調整後の音響信号を聞いて、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、機器D1が異常音を出力していると判定する。次に、操作者は切替指示器9を操作して、切替器6が出力する振動信号を例えば機器D2の振動信号に切り替え、調整後の音響信号を聞く。次に、操作者は、調整後の音響信号の音から、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、機器D2が異常音を出力していると判定する。次に、操作者は切替指示器9を操作して、切替器6が出力する振動信号を例えば機器D3の振動信号に切り替え、調整後の音響信号を聞く。次に、操作者は、調整後の音響信号の音から、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、機器D3が異常音を出力していると判定する。
【0114】
この構成により、機器が設けられた機械室とは別の部屋にいる操作者は、切替指示器9を操作して切替器6が出力する振動信号を切り替える毎に、調整後の音響信号から、集音部1から入力された音響信号の音をそのまま聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、当該切替器6から出力された振動信号を検知した振動センサが設置された機器が異常音を出力していると判定することができる。
【0115】
<第4の実施形態>
続いて第4の実施形態について説明する。図12は、第4の実施形態に係る信号処理システムの概略構成図である。図12に示すように、第4の実施形態に係る信号処理システムS4は、図1の第1の実施形態に係る信号処理システムS1と比べて、出力器5が出力器5bに変更されたものである。出力器5bは、アンプ4で増幅された信号を運動に変換して出力する。ここで運動は、人間が感知可能な態様の一例である。出力器5bは、例えば、アクチュエータである。出力器5bは、調整した音響信号でアクチュエータを駆動し、骨伝導として音を聴取してもよい。なお、本実施形態と同様に、他の実施形態における出力器5bが、アクチュエータであってもよい。
【0116】
<変形例>
続いて、信号処理装置3の変形例について説明する。信号処理装置3の構成は、図13に示す信号処理装置3cであってもよい。図13は、第1の変形例に係る信号処理装置の概略構成図である。図13に示すように、第1の変形例に係る信号処理装置3cは、信号処理装置3に比べて、調節部34が調節部34cに変更されており、調節部34cは、フィルタ343を備える。フィルタ343の入力は、信号処理装置3cの第1の入力に接続されており、音響信号が入力される。図2と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0117】
フィルタ343は、デジタルフィルタの係数を相関度(例えば、コヒーレンス)に応じて調整することで、重みづけをする。デジタルフィルタは、一つの方法としてローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタなどを組み合わせで構成される。これらの各フィルタの係数を調整して、コヒーレンスの表す相関度と同じ周波数特性を持ったフィルタを構成できる。このフィルタに騒音の時間波形信号を通すことで、振動と相関を持った周波数成分が強調された騒音の時間波形信号を出力できる。この時間信号は、もともとの音の信号に対して、振動との相関が高い周波数の成分が強調された音声信号となる。
【0118】
図14を用いて、第1の変形例に係る信号処理装置3cの処理の流れを説明する。図14は、相関度をイコライザの帯域毎に区切って相対レベルを設定することを説明するための図である。図14(a)は、相関度と周波数fとの関係を示すグラフである。図14(b)は、相対レベルと周波数fとの関係を示すグラフである。
【0119】
まず、第1のフーリエ変換部31は、集音部1が出力した音響信号に対してフーリエ変換(例えば、FFT)を行う。
第2のフーリエ変換部32は、振動検知部2が出力した振動信号に対してフーリエ変換(例えば、FFT)を行う。
【0120】
相関度決定部33は、第1のフーリエ変換部31と第2のフーリエ変換部32のフーリエ変換結果を用いて騒音と振動の相関度を計算する。相関度は、例えばコヒーレンスで、0以上1以下の値を示す。
【0121】
フィルタ343は、コヒーレンスの値に応じて重みづけするようにフィルタの係数を変更する。フィルタは、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタなどを組み合わせたデジタルフィルタを示す。このフィルタは、グラフィックイコライザのような特定の帯域に設定されたバンドパスフィルタの総体であってもよい。その場合、相関度決定部33は、図14に示すように、相関度に比例して各帯域のレベル配分を決める。具体的には相関度決定部33は、相関度をイコライザの帯域ごとに区切り、帯域毎に相対レベルを設定する。ここで相対レベルは、例えば帯域内の相関度の平均値である。
【0122】
フィルタ343は、相関度で重みづけされたフィルタに、時間波形信号である音響信号を通して、音響の時間波形を振動との相関度で重みづけする。重みづけされた騒音の信号は、アンプ4で増幅されて出力器5から音波として出力される。
【0123】
図15は、第1の変形例に係る信号処理装置のフィルタ343の構成の一例を示す構成図である。図15に示すように、フィルタ343は、オクターブ平均処理部41と、制御信号出力部42と、フィルタ回路43とを有する。
相関度決定部33は、音と振動のコヒーレンスを算出する。例えば相関度決定部33は、FFTの周波数分解能に応じた周波数ごとの数値を算出する。
【0124】
オクターブ平均処理部41は、グラフィックイコライザの周波数バンドごとに、その周波数範囲でコヒーレンスを平均する。これにより、グラフィックイコライザの周波数バンドごとの数値が算出される。
【0125】
制御信号出力部42は、オクターブ平均処理部41で算出された数値を、フィルタ回路43の後述するデジタルポテンショメータVR1、VR2、VR3を制御するための制御信号に変換し、変換後の制御信号をフィルタ回路43の後述するデジタルポテンショメータVR1、VR2、VR3へ出力する。これにより、対応するデジタルポテンショメータの変換機能に応じて、パルス信号などが出力される。
【0126】
コヒーレンスCOH(f)は、0~1の値を示すので、そのまま調節したい信号に乗ずれば0~100%の範囲で調節できる。相関度による調節の強弱を変化させることができるのは、信号処理装置3の説明と同様に可能である。
【0127】
フィルタ回路43のデジタルポテンショメータVR1、VR2、VR3は、制御信号に応じて抵抗値を調節する。デジタルポテンショメータVR1、VR2、VR3は、DA変換機能と可変抵抗機能を有し、オクターブ平均処理部41で算出された数値に応じて決められた制御信号によって抵抗値が調節される。
【0128】
図15に示すフィルタ回路43は、3バンドの場合のグラフィックイコライザの概略構成図である。フィルタ回路43は、一端がフィルタの入力に接続された抵抗R1と、一端が抵抗R1の他端に接続されたデジタルポテンショメータVR1、VR2、VR3と、を有する。更にフィルタ回路43は、一端がデジタルポテンショメータVR1、VR2、VR3の他端に接続された抵抗R2と、マイナス端子がデジタルポテンショメータVR1、VR2、VR3の他端に接続され且つプラス端子が抵抗R1の他端に接続されたオペアンプA1とを有する。更にフィルタ回路43は、一端がデジタルポテンショメータVR1に接続され且つ他端が接地に接続された直列共振回路Z1と、一端がデジタルポテンショメータVR2に接続され且つ他端が接地に接続された直列共振回路Z2と、一端がデジタルポテンショメータVR3に接続され且つ他端が接地に接続された直列共振回路Z3とを有する。デジタルポテンショメータVR1、VR2、VR3は可変抵抗の一例である。
【0129】
フィルタ回路43は、各バンドの周波数範囲ごとに、増幅または減衰する機能を持つ。
抵抗R1と抵抗R2により、入力から出力の回路全体の増幅率が決まる。f1~f3は、各バンドの中心周波数で、増幅または減衰する周波数範囲の中心を示す。Z1~Z3は、f1~f3の周波数で共振する直列共振回路を示す。増幅または減衰の度合いは、デジタルポテンショメータVR1~VR3の可変抵抗値によって調節する。デジタルポテンショメータVR1、VR2、VR3を用いて、重みづけ数値に応じた抵抗値に調節する。この重みづけ数値は、増幅あるいは減衰したい度合に合わせて相関度から換算する。
【0130】
以上、変形例に係る信号処理装置3cにおいて、調節部34cは、前記音響信号を周波数毎の強度を変更するフィルタ343を有し、予め設定された周波数毎に、当該周波数に対応する前記相関度によってフィルタ343の係数が変更される。
この構成により、周波数毎に、相関度が高いほど、当該周波数における音響信号の強度を強調することができる。従って、探索者が調整後の音響信号から、当該探索者が異常音を含む周囲の音から直接聞いた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、振動検知部2が設置された機器Dまたは振動センサ21が設置された箇所が異常音を出力していると判定することができる。
【0131】
なお、同様に、信号処理装置3bの構成は、図13に示す信号処理装置3cに、信号処理装置3、3bと同様のスイッチ35が設けられていてもよい。この場合、スイッチ35の入力が信号処理装置3cの入力に接続され、スイッチ35の第1の出力が調節部34cの入力に接続され、スイッチ35の第2の出力が信号処理装置3cの出力に接続されていてもよい。これにより、スイッチ35は、操作者の操作に応じて、調整後の音響信号を出力するか、集音部1から入力された音響信号をそのまま出力するかを切り替える。
【0132】
<第5の実施形態>
続いて第5の実施形態について説明する。図16は、第5の実施形態に係る信号処理システムの概略構成図である。図16に示すように、第5の実施形態に係る信号処理システムS5は、図1の第1の実施形態に係る信号処理システムS1と比べて、振動検知部2が記録装置101に変更されたものである。
【0133】
信号処理装置3dに記録装置101が接続され、信号処理装置3dの信号処理結果を記録する。機械の配置や運転状態が変化せず、異常音発生時の振動と騒音の相関度の変化も小さいと仮定すれば、振動センサの設置位置毎に、異常音発生時の周波数毎の相関度を記録装置101に予め記録しておく。これにより、次回以降の診断時には、重み付け部341は、振動センサの設置位置毎に、異常音発生時の周波数毎の相関度を読み出し、周波数毎の相関度で、対応する周波数の音響信号の振幅スペクトルを重み付けする。これにより、振動センサの設置箇所を移動して、移動する毎に相関度の演算をするという一連の工程がなくなるので、より迅速に診断を行うことができる。
【0134】
図17は、第5の実施形態に係る信号処理装置の概略構成図である。図17に示すように、信号処理装置3dは、第1のフーリエ変換部31と、調節部34dと、スイッチ36とを備える。調節部34dは、重み付け部341が重み付け部341dに変更されたものになっている。
【0135】
信号処理装置3dは、特定の環境の音を電気信号に変換する集音部1から入力された音響信号が入力される信号処理装置である。
記録装置101は、特定の環境の過去の音響信号と当該過去において振動センサが設けられた箇所または機器の振動が電気信号に変換された振動信号との間で予め決定された周波数毎の過去の異常音発生時の相関度を記憶する。この相関度は、振動センサが設けられた箇所または機器毎に記憶されている。
調節部34dの重み付け部341dは、対象とする機器または箇所の過去の異常音発生時の周波数毎の相関度を記録装置101から読み出し、前記周波数毎の相関度を用いて、入力された前記音響信号の強度を当該周波数毎に調節する。
【0136】
この構成により、振動センサの設置箇所を移動して、移動する毎に相関度の演算をするという一連の工程がなくなるので、より迅速に診断を行うことができる。
【0137】
記録装置101には、過去の異常音の発生時における音響信号を記憶されている。
スイッチ36は、操作者の操作に応じて、記録装置101から読み出される前記過去の異常音の発生時における音響信号(過去の異常音響信号)と、調節部34dによる調整後の音響信号(現在の調整後の音響信号)のいずれかを出力信号としてアンプ4へ出力するか切り替える。
【0138】
この構成により、操作者は、異常音の発生時における音響信号を聞くことができる。そして、当該操作者は、この調整後の音響信号から、異常音の発生時における音響信号の音の周波数成分が強調して聞こえる場合、振動センサ21が設置された機器または振動センサ21が設置された箇所が異常音を出力していると判定することができる。
【0139】
なお、記録装置101には、過去の異常音の発生時における音響信号の強度を周波数毎の相関度を用いて当該周波数毎に調節した調節後の音響信号が記憶されていてもよい。
この場合、スイッチ36は、記録装置101から読み出される前記過去の異常音の発生時における前記調節後の音響信号(過去の調整後の異常音響信号)と、入力された音響信号が調節部34dによって調節された後の音響信号(現在の調整後の音響信号)のいずれかを出力するか切り替えてもよい。
【0140】
この構成により、操作者は、異常音の発生時における調整された過去の音響信号を聞くことができる。そして、当該操作者は、現在の調整後の音響信号から、過去の異常音の発生時における音響信号の音の周波数成分が強調して聞こえる場合、振動センサ21が設置された機器または振動センサ21が設置された箇所が異常音を出力していると判定することができる。
【0141】
以下、特定の環境において異常音を出力している機器または機器の箇所を探索する探索方法の流れの一例を説明する。
まず、探索者が、異常音を含む周囲の音(すなわち空気を伝わって伝搬する音)を出力器5を介さずに聞く。
次に集音部1が、異常音を含む周囲の音を電気信号に変換して音響信号を出力する。
次に信号処理装置3dが、対象とする機器または箇所に対応する周波数毎の過去の異常音発生時の相関度を記録装置101から読み出し、前記周波数毎の相関度を用いて、入力された前記音響信号の強度を当該周波数毎に調節する。
次に出力器5が、信号処理装置3dから出力された調整後の音響信号を人間が感知可能な態様(ここでは一例として音波)に変換して出力する。出力器5による出力を探索者が感知して、前記聞く工程で聞こえた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、前記対象とする機器または箇所が前記異常音を出力していると判定する。
【0142】
この構成により、探索者が調整後の音響信号から、当該探索者が異常音を含む周囲の音から直接聞いた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、対象とする機器または箇所が異常音を出力していると判定することができる。
なお、信号処理装置3dは、信号処理装置3、3bのように、入力された音響信号をそのままアンプ4へ出力するか、入力された音響信号を第1のフーリエ変換部31に出力するかを切り替えるスイッチ35を更に有してもよい。この場合、操作者が集音部1から入力された音響信号の音をそのまま出力器5を介して聞いてもよい。これにより、周囲からの音の影響を受けにくく、調整後の音響信号と同じ位置の音を聞けることで比較に適している。
【0143】
以上、第5の実施形態に係る信号処理システムS5は、周囲の音を電気信号に変換して音響信号を出力する集音部1と、前記特定の環境の過去の音響信号と当該過去において特定の箇所または特定の機器の振動が電気信号に変換された振動信号との間で予め決定された周波数毎の相関度を記憶する記録装置101と、前記音響信号が入力され、対象とする機器または箇所に対応する周波数毎の相関度を前記記録装置101から読み出し、前記周波数毎の相関度を用いて、入力された前記音響信号の強度を当該周波数毎に調節する信号処理装置3dと、信号処理装置3dから出力された調整後の音響信号を人間が感知可能な態様(ここでは一例として音波)に変換して出力する出力器5と、を備える。
【0144】
ここで信号処理装置3dは、周囲の音を電気信号に変換する集音部から入力された音響信号が入力される信号処理装置である。信号処理装置3dは、前記特定の環境の過去の音響信号と当該過去において振動センサが設けられた箇所または機器の振動が電気信号に変換された振動信号との間で予め決定された周波数毎の相関度を記憶する記録装置から、対象とする機器または箇所の周波数毎の相関度を読み出し、前記周波数毎の相関度を用いて、入力された前記音響信号の強度を当該周波数毎に調節する調節部を備える。
【0145】
この構成により、探索者が調整後の音響信号から、当該探索者が異常音を含む周囲の音から直接聞いた異常音の周波数成分が強調して聞こえる場合、対象とする機器または箇所が異常音を出力していると判定することができる。
【0146】
なお、図17の信号処理装置3dは、図18に示す信号処理装置3eに置換されてもよい。図18は、第5の実施形態の変形例に係る信号処理装置の概略構成図である。図18に示すように、信号処理装置3eは、フィルタ343を有するようにして実現してもよい。
【0147】
以上、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0148】
1 集音部
11 マイクロホン
12 アンプ
2、2-1、2-2、2-3 振動検知部
21 振動センサ
22 アンプ
3、3b、3c、3d、3e 信号処理装置
31 第1のフーリエ変換部
32 第2のフーリエ変換部
33 相関度決定部
34、34c、34d 調節部
341、341d 重み付け部
342 逆フーリエ変換部
35、36 スイッチ
4 アンプ
41 オクターブ平均処理部
42 制御信号出力部
43 フィルタ回路
5、5b 出力器
6 切替器
7 通信機(第1の通信機)
8 通信機(第2の通信機)
9 切替指示器
10 スイッチ操作部
A1 オペアンプ
D、D1、D2、D3 機器
R1、R2 抵抗
S1、S11、S12、S2、S21、S22、S3、S31、S4、S5 信号処理システム
VR1、VR2、VR3 デジタルポテンショメータ
Z1、Z2、Z3 直列共振回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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