IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立金属株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ケーブル 図1
  • 特許-ケーブル 図2
  • 特許-ケーブル 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/04 20060101AFI20220729BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
H01B7/04
H01B7/18 B
H01B7/18 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019168908
(22)【出願日】2019-09-18
(62)【分割の表示】P 2016132287の分割
【原出願日】2016-07-04
(65)【公開番号】P2019216117
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2019-09-18
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 得天
(72)【発明者】
【氏名】滝 毅義
(72)【発明者】
【氏名】福里 宏史
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】小田 浩
【審判官】松永 稔
(56)【参考文献】
【文献】特許第5943171(JP,B1)
【文献】実開平4-133316(JP,U)
【文献】特開平11-7837(JP,A)
【文献】特開2016-119245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と前記導体の側周を囲うように設けられた絶縁層とを有するコアを複数本撚り合わせてなる集合コアと、
前記集合コアの側周を囲うように設けられたシースと、を有し、
前記絶縁層は、フッ素系樹脂からなり、
前記集合コアは、表面よりも裏面が高い滑り性を有するテープによって押さえ巻きされており、
前記シースは、前記集合コアの側周に前記テープを介して充填されて設けられ、かつ前記テープの前記表面と密着されており、
前記テープ及び前記シースが前記集合コアにおける複数の前記コアの間の谷間に入り込んでおり、
前記集合コアと前記テープの前記裏面との間にタルク粉からなる滑材層が設けられ、前記集合コアが前記テープの前記裏面との間で滑るように構成されている
ケーブル。
【請求項2】
前記シースは、前記絶縁層よりも高い弾力性を有している
請求項に記載のケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンや搬送台車等の各種運搬設備の配線に用いられるケーブル(フレキシブルケーブル)は、一般的に、導体および導体の側周を囲うように設けられた絶縁層を有するコアを複数本撚り合わせてなる集合コアと、集合コアの側周を囲うように設けられたシースと、を有している。上述のケーブルでは、絶縁層をEPゴム等で形成し、ケーブルの最外層を構成するシースを、機械的強度に優れ、弾力性を有するゴム材料で形成することがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-084449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のケーブルでは、絶縁層をEPゴム等の薄肉形成しにくい材料で形成しているため、ケーブル外径が太くなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、ケーブルの耐屈曲性を維持しながら、ケーブルを細径化することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
導体と前記導体の側周を囲うように設けられた絶縁層とを有するコアを複数本撚り合わせてなる集合コアと、
前記集合コアの側周を囲うように設けられたシースと、を有し、
前記絶縁層は、フッ素系樹脂からなり、
前記シースは、前記集合コアに食い込むように設けられており、
前記集合コアは、前記シースとの間で滑るように構成されているケーブルが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ケーブルの耐屈曲性を維持しながら、ケーブルを細径化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態にかかるケーブルの径方向における概略断面図の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態にかかるケーブルの概略構成図の一例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態にかかるケーブルの部分拡大断面図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明の一実施形態>
(1)ケーブルの構成
以下に、本発明の一実施形態にかかるケーブルの構成について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態にかかるケーブル1は、複数本(例えば24本)のコア2が撚られてなる集合コア3を有している。例えば、集合コア3は、ケーブル1の中心とコア2の中心との間の最短距離(層心径)がr1となるように配置された9本のコア2aからなる第1の層(内層)2Fと、上記最短距離がr1より長いr2となるように配置された15本のコア2bからなる第2の層(外層)2Sと、を有している。
【0011】
コア2は、例えば、導体21と、導体21の外周を囲うように、すなわち導体21の外周側面を被覆するように設けられた絶縁層22と、を有している。
【0012】
導体21としては、例えば銅線や銅合金線の素線を複数本撚り合せてなる撚線導体を用いることができる。銅線は銅合金線よりも導電率が高い点で好ましく、銅合金線は銅線よりも高い引張強度を有する点で好ましい。
【0013】
絶縁層22は、絶縁性(絶縁耐圧)が高く、機械強度に優れ、薄肉形成が可能な材料で形成されていることが好ましい。このような材料として、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)やポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂を用いることができる。このようなフッ素系樹脂で形成された絶縁層22は、滑りやすいという特性も有する。集合コア3を構成する全てのコア2が有する絶縁層22は、同一の材料で形成されていることが好ましい。
【0014】
絶縁層22の厚さは、導体21(撚線導体)を構成する素線の径(1本の素線の外径)の例えば1~1.5倍であることが好ましい。絶縁層22の厚さが素線の外径の1倍未満であると、絶縁層22の厚さが薄すぎ、機械的強度が不足し、繰り返し屈曲を行うと割れが発生して低寿命となることがある。絶縁層22の厚さを素線の外径の1倍以上にすることで、必要十分な機械的強度が得られ、さらには所望の絶縁耐圧にすることができ、所望の絶縁性(電気絶縁性能)を得ることができる。例えば600V以上の大電圧を印加した場合であっても、絶縁破壊が生じることを抑制できる。しかしながら、絶縁層22の厚さが素線の外径の1.5倍を超えると、絶縁層22の厚さが厚くなり、1本あたりのコア2の径が大きくなることがある。絶縁層22の厚さを素線の外径の1.5倍以下にすることで、1本あたりのコア2を必要十分な機械的強度(耐屈曲特性)を維持しながら、細径にできる。例えば、1本あたりのコア2の径を、エチレンプロピレン(EP)ゴムで形成した絶縁層を有するコアよりも小さくできる。
【0015】
ケーブル1の真円化を図るため、集合コア3の中心部に、必要に応じて絶縁性を有する介在物(フィラー、絶縁紐、絶縁スペーサ等、例えば麻紐)4を配設してもよい。すなわち、コア2は、介在物4の側周を囲うように(介在物4が中心になるように)配置されていることが好ましい。なお、介在物4を集合コア3に含めて考えてもよい。
【0016】
集合コア3を構成する複数本のコア2は、例えばテープ(バインドテープ、押さえ巻きテープ)5等により押さえ巻き(縦添えまたは横巻きによる一括被覆)されていてもよい。テープ5は、複数本のコア2を束ねるためのものである。テープ5としては、例えばスフ糸等のレーヨン繊維や、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、綿繊維、ポリプロピレン繊維等で形成された織布や不織布等からなる基材(基布、生地)を有するテープを用いることができる。また、テープ5は、その表裏面で異なる滑り性を有していることが好ましい。この点については、後述する。
【0017】
集合コア3の側周上(上述のテープ5が設けられている場合にはテープ5上)には、集合コア3の外周側面を被覆するように外被(シース)6が設けられている。シース6はケーブル1の最外層を構成する層である。シース6は、ケーブル1の耐摩耗性能や耐衝撃性能等を高めたり、ケーブル1をしごきやすくしたりする観点から、テープ5を介してコア3(例えば第2の層を構成する複数の導電線2b)がシース6に食い込むように充実成形されている。
【0018】
シース6は、上述の絶縁層22よりも高い弾力性、すなわち高い耐傷性を有していることが好ましい。本明細書では、高い弾力性を有するとは、弾性係数が高いことを意味する。シース6は、高い弾力性を有するとともに、機械的強度に優れる材料で形成されていることが好ましい。このような材料として、クロロプレン(CR)等のゴム材料を用いることができる。これにより、例えば、ケーブル1が港湾等の屋外で用いられ、台風の接近や通過に伴って強風が吹き、ケーブル1が風にあおられてケーブル1同士やケーブル1とケーブルリール等の周辺機器とが衝突した際や、ケーブル1をケーブルリールに巻き取ったり、ケーブルリールから引き出したり等する際に、ケーブル1に摩擦、衝撃、しごき等の外部ストレスが加わった場合であっても、シース6にヒビが入る(シース6が割れる)ことを抑制できる。
【0019】
シース6の厚さは、1本あたりのコア2の外径(コア2が有する絶縁層22の外径)の例えば0.8~1.2倍であることが好ましい。シース6の厚さがコア2の外径の0.8倍未満であると、シース6が薄すぎ、シース6の弾力性が絶縁層22の弾力性よりも低くなることがある。シース6の厚さをコア2の外径の0.8倍以上にすることで、シース6の弾力性を絶縁層22の弾力性よりも高くすることができる。すなわち、シース6の耐傷性を高めることができ、さらにシース6が高い機械的強度を有するようになる。しかしながら、シース6の厚さがコア2の外径の1.2倍を超え、シース6の厚さが厚くなると、ケーブル1の外径が大きくなってしまう。シース6の厚さをコア2の外径の1.2倍以下にすることで、所望の耐傷性および所望の機械的強度を維持しつつ、ケーブル1を細径、軽量にできる。
【0020】
ケーブル1は、集合コア3とシース6との間に滑りが発生するように、集合コア3とシース6との間に後述の滑材(滑材層)7が設けられている。滑材(滑材層)7を設けることによって、集合コア3とシース6との間は滑り性が高くなる。滑り性が高いとは、摩擦係数が低く、滑りやすいことを意味する。より具体的には、滑材(滑材層)7を設けない場合に比べて、静摩擦係数または動摩擦係数の少なくとも一方が低くなることを意味する。
【0021】
集合コア3とシース6との間の滑り性を高くするために、例えば図2に示すように、集合コア3とシース6との間に滑材7を塗布することが好ましい。また、コア2の外周面に滑材7を塗布してもよいし、コア2を構成する絶縁層22の形成材料中に滑材7を配合してもよい。滑材7としては、例えばフッ素オイル、シリコーンオイル、タルク粉を用いることができる。
【0022】
テープ5は、テープ5の表面5aが外側(ケーブル1の外周側)になり、テープ5の裏面5bが集合コア3(コア2)側になるように、集合コア3に巻き付けられている。このように複数本のコア2をテープ5で一括被覆する場合、集合コア3とテープ5との間に滑りが発生するように構成し、テープ5とシース6との間に滑りが発生しないように構成すればよい。例えば、テープ5の表面5aを滑り性が低い(粘着性が高い)面とし、裏面5bを滑り性が高い(粘着性が低い)面とすることが好ましい。具体的には、例えば図3に示すように、テープ5のシース6と接触する面(テープ5の表面5a)がシース6と密着し、テープ5の集合コア3と接触する面(テープ5の裏面5b)に滑り性を持たせることが好ましい。このように、テープ5は、その表裏面で異なる滑り性(粘着性)を有していることが好ましい。なお、各コア2に滑材7を塗布してもよいし、集合コア3としてから、この外周面に滑材7を塗布してもよい。
【0023】
上述のようにテープ5の裏面5bにのみ滑り性を持たせるために、すなわちテープ5の裏面5bとコア3とを密着させない(図3)ために、テープ5の(基布の)裏面5bにのみ上述の滑材7を塗布することが好ましい。
【0024】
また、テープ5の表面5aとシース6とを密着させるために、テープ5の(基布の)表面5aにのみ、滑り性の低い生ゴム等のゴム材料を塗布することが好ましい。ゴム材料は、上述のテープ5の基布の編み目に浸透させるように塗布することが好ましい。また、テープ5の表面5aとシース6とを密着させる場合、テープ5の表面5aとシース6との密着力をより高める観点から、テープ5の表面5aにシース6の形成材料と同じゴム材料を塗布することがより好ましい。
【0025】
上述のような表裏面で異なる滑り性を有するテープ5として、例えば、テープ5の基布の一方の主面に、滑材7を塗布し、基布の他方の主面に、生ゴムを塗布して形成したゴム引布テープを用いることができる。生ゴムは、シース6を被覆形成する際の熱で軟化するので、シース6との良好な密着性を得ることができる。
【0026】
(2)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0027】
(a)集合コア3とシース6との間が滑るように構成することで、ケーブル1が屈曲した際、ケーブル1(シース6)内で、集合コア3を構成する各コア2が個別に(バラバラに)動くことなく、集合コア3全体が1つの塊として動くようになる。また、シース6と集合コア3全体とが異なる動きをする、すなわち集合コア3全体がシース6の動きに関係なく、独立して動くようになる。また、ケーブル1同士やケーブル1とケーブルリール等の周辺機器とが衝突した際、あるいは、ケーブル1をケーブルリールに巻き取ったり、ケーブルリールから引き出したりする場合に、ケーブル1に摩擦、しごき、衝撃等の外部ストレスが加わった際にも、集合コア3は上述と同様の動きをする。
【0028】
これらにより、ケーブル1が屈曲したり、ケーブル1に外部ストレスが加わったりした際(以下、「ケーブル1が屈曲等した際」ともいう)、コア2がキンク(kink)して、折れたり、断線したりしてしまうことを抑制できる。コア2がキンクするとは、コア2がねじれ、よじれ、よれ、こぶ、折れ、潰れ等が発生した状態になることをいう。このように集合コア3のうねりを抑制することで、ケーブル1の耐屈曲性を向上させることができる。また、ケーブル1全体の屈曲性(可撓性)を向上させることもできる。
【0029】
これに対し、ケーブルが屈曲等した際に、集合コアが1つの塊として動かず、各コアが個別に動いてしまうと、特定のコアの位置がずれることがある。例えば、ケーブルが屈曲した際、屈曲箇所の内側で、特定のコアがケーブルの外側(外周側)に向かって飛び出ることがある。コアの外周には、テープ、シース等の構造物が設けられているため、飛び出たコアが上述の構造物によって押さえつけられてしまう。このため、コアがキンクしやすくなる。
【0030】
つまり、集合コア3とシース6との間が滑るように構成することで、ケーブル1全体の耐屈曲性を高い水準に維持することができる。
しかも、絶縁層22をフッ素系樹脂で形成することで、例えばEPゴムで形成した絶縁層と同程度の絶縁性、機械的強度を維持しつつ、EPゴムで形成した絶縁層よりも絶縁層22の厚さを薄くすることができる。これにより、導体21の(径方向における)断面積を減らすことなく、1本あたりの導電線2の径を細くすることができる。このため、複数本のコア2を撚り合せてなる集合コア3を細径にできる。また、上述のようにシース6の厚さは、1本あたりのコア2の径によって決まる。このため、1本あたりのコア2の径が小さくなると、シース6の厚さも薄くなる。これらの結果、ケーブル1を細径にできる。また、ケーブル1が細径になることで、ケーブル1を軽量にすることもできる。
【0031】
例えば、外径が0.26mmである素線を65本撚り合せて(集合撚りして)形成した断面積が3.5SQ相当の導体を形成する。この導体の外周側面上に、厚さが0.32mm(素線径の1.23倍)になるようにETFEで被覆して絶縁層を形成し、外径が3.06mmのコアを形成し、コア外周面には滑材としてのタルクを塗布する。このコアを24本と中心介在(フィラー)とを用意し、24本のコアを撚り合せて集合コアを形成する。このとき、集合コアが、9本のコアからなる内層および15本のコアからなる外層の2層を有するように各コアを配置する。そして、集合コア(複数のコア)を上述のゴム引布テープで押さえ巻きする。そして、このテープの外周側面上に、厚さが2.6mm(コアの外径の0.85倍)になるように、CRで被覆(充実被覆)してシースを形成し、ケーブルを形成した。このケーブルは、その外径が24mmであり、重さが1180kg/kmであった。また、上記と同じ断面積が3.5SQの導体を用い、この導体の外周側面上に、厚さが0.8mmとなるようにEPゴムで被覆して絶縁層を形成して外径が4.02mmのコアを形成し、このコアを24本と中心介在(フィラー)とを撚り合わせて集合コアを形成し、集合コアをテープで押さえ巻きした後、テープの外周側面上に、厚さが3.4mm(コアの外径の0.85倍)になるように、CRで被覆してシースを形成し、ケーブルを形成した。このケーブル、すなわちEPゴムで形成した絶縁層を有するコアを用いて形成したケーブルは、その外径が31mmであり、重さが1530kg/kmであった。このように、絶縁層をETFEで形成することで、絶縁層をEPゴムで形成する場合よりも、ケーブルを細径にできるとともに、ケーブルを軽量にできることを、本願発明者は確認済みである。
【0032】
以上のように、集合コア3とシース6との間が滑るように構成し、しかも絶縁層22をフッ素系樹脂で形成することで、ケーブルの耐屈曲性を維持しながら、ケーブルを細径化することができる。
【0033】
(b)また、集合コア3とシース6との間に滑りが発生するように構成することで、本実施形態のように、集合コア3がコア2からなる層を2層(第1の層2Fおよび第2の層2S)有していたり、絶縁層22をETFE等の摩擦係数が低く滑りやすい材料で形成したりする場合であっても、ケーブル1が屈曲等した際に、各コア2が個別に動く前に、集合コア3全体が1つの塊として動くこととなる。その結果、コア2がキンクすることを抑制できる。
【0034】
(c)集合コア3とシース6との間に滑材7を塗布する(滑材層を設ける)ことで、ケーブル1が屈曲等した際、集合コア3全体が1つの塊として動きやすくなる。これにより、コア2のキンクの発生を確実に抑制できる。しかも、滑材7を塗布すればよいので、滑材層を容易に設けることができる。また、滑材7としてタルク材を用いて滑材層を構成すれば、集合コア3とシース6との間を確実に滑らすように構成することができ、しかもタルク材の入手性等が優れていることからケーブル1の製造コストの抑制が図れるようにもなる。
【0035】
(d)複数本のコア2をテープ5で一括被覆している場合、テープ5のシース6と接触する面(テープ5の表面5a)とシース6とを密着させることで、ケーブル1が屈曲等した際、シース6の内側で、集合コア3(ケーブル1)の軸方向にテープ5が動くことを抑制できる。これらにより、ケーブル1が屈曲を繰り返したり、ケーブル1に繰り返し外部ストレスが加わったり場合であっても、シース6の内側でテープ5に皺がよることを抑制でき、その結果、シース6が割れたり、シース6にクラックが入ったりすることを抑制できる。
【0036】
これに対し、テープがシースと密着していないと、ケーブルが屈曲した際、シースの内側で集合コアの軸方向にテープが動くことがある。そのため、ケーブルが屈曲を繰り返すことで、シース内でテープがよれてくる(寄ってくる、たるんだりする)ことがある。その結果、テープのよれ(皺)がシースの表面に現れ、そこからシースが割れたり、シースにクラックが入ったりすることがある。
【0037】
(e)テープ5の裏面5bに滑材7(滑材層)を配して滑り性を持たせることで、テープ5を設けている場合であっても、ケーブル1が屈曲等した際、シース6内で集合コア3全体を1つの塊に維持することができる。テープ5の裏面5bに滑り性を持たせた場合、ケーブル1が屈曲すると、集合コア3全体が1つの塊となって動き、テープ5はシース6と一緒に動くこととなる。これにより、ケーブル1の耐屈曲性を向上させることができる。すなわち、テープ5を設けている場合であっても、少なくとも上記(a)の効果を得ることができる。
【0038】
これに対し、テープの表面および裏面のいずれにも滑り性を持たせていないと、すなわち、テープがシースとも集合コアとも密着していると、ケーブルが屈曲した際、シース内で集合コア全体を1つの塊として動かすことができない。
【0039】
(f)テープ5の表面5aとシース6とを密着させる場合、テープ5の表面5aにシース6の形成材料と同じゴム材料を塗布することで、テープ5とシース6とを一体化させることができる。これにより、テープ5の表面5aとシース6との密着力をより高めることができる。これにより上記(d)の効果をより確実に得ることができる。
【0040】
(g)それぞれのコア2が有する絶縁層22の外周側面に滑材7を塗布することで、コア2間の滑り性を高めることができる。これにより、コア2がキンクすることをより確実に抑制できる。
【0041】
(h)滑り性を滑材7により実現することで、滑り性を維持できるようになる。というのも、ケーブル1が屈曲等した際、滑材7はシース6内(テープ5内)を移動し、滑材7がシース6内(テープ5内)全体を万遍なく循環するようになる。これにより、シース6(テープ5)と集合コア3との間の滑り性を常に確保できる。その結果、少なくとも上記(a)の効果を長期にわたって維持することができる。
【0042】
(i)集合コア3を構成する全てのコア2の絶縁層22を同一の材料で形成することで、すなわち、コア2間の摩擦係数を等しくすることで、ケーブル1が屈曲等した際、集合コア3が有する全てのコア2の挙動(動き)を揃えることができる。これにより、ケーブル1が屈曲等した際、各コア2が個別に動くことを確実に抑制でき、特定のコア2の位置がずれることを確実に抑制できる。その結果、コア2がキンクすることをより確実に抑制できる。
【0043】
(j)ケーブル1が細径になることで、ケーブル1が例えば屋外配線用のケーブルとして用いられた場合、ケーブル1が風を受ける面積が小さくなる。これにより、ケーブル1が屋外に配線された状態で強風が吹いた場合であっても、ケーブル1が風にあおられにくくなる。このため、ケーブル1が落下したり、構造物に当たって断線する等の事故を防ぐことができる。その結果、ケーブル寿命が延びることとなる。
【0044】
(k)また、1本あたりのコア2の径を細くすることで、複数本のコア2を撚り合せてなる集合コア3において、コア2間に形成される隙間(の容積)を小さくすることができる。その結果、ケーブル1の比重を増やすことができる。ケーブル1の比重が増えることで、ケーブル1が風によりあおられにくくなる。これにより、上記(k)の効果を確実に得ることができる。
【0045】
(l)また、1本あたりのコア2が細径になることで、ケーブル1全体での屈曲性(可撓性)をさらに高めることができる。これにより、コア2がキンクすることをさらに確実に抑制できる。
【0046】
(m)ケーブル1が軽量になることで、ケーブル1が屈曲する際にケーブル1自体に加わる荷重負荷を低減できる。これにより、ケーブル1が屈曲した際にケーブル1に加わる上述の外部ストレスが緩和される。その結果、ケーブル寿命の低下を抑制できる。
【0047】
(n)また、ケーブル1を細径、軽量にすることで、ケーブル1をクレーンや搬送台車等の各種運搬設備の配線に好適に用いることができ、各種運搬設備の高機能化や、ケーブルリール等を含む各種設備の小型化等を実現できる。また、ケーブル1置場の省スペース化、輸送費削減等の効果も得られる。
【0048】
(o)また、ケーブル1を接続する際、ケーブル1の端部のシース6を剥く作業が行われることがある。このとき、集合コア3とシース6との間の滑り性を高くし、コア3とシース6とを密着させないことで、シース6を剥きやすくなるため、ケーブル1の接続作業性を向上させることができる。
【0049】
(p)本実施形態にかかるケーブル1は、屋外に配線され、台風などの接近、通過により強風が吹く可能性がある環境下で好適に使用することができる。また、本実施形態にかかるケーブル1は、繰り返し屈曲したり、プーリやリールでのしごき、摩擦等を繰り返し受ける厳しい環境下で好適に用いることができる。具体的には、本実施形態にかかるケーブル1は、港湾で使用されたり、鉄鋼などの産業分野で使用されたりする各種運搬設備の配線に用いる場合に特に有効である。
【0050】
例えば、本実施形態にかかるケーブル1は、港湾クレーンや鉄鋼プラント等で使用される大型クレーンにおいて、ケーブルが一定の長さで固定された状態で繰り返し屈曲する横行移動用カーテン配線に好適に用いることができる。
【0051】
また例えば、本実施形態にかかるケーブル1は、上記大型クレーンにおいて、一定長さのケーブルがコイル状に巻き取られたり、コイル状に巻き取られたケーブルを直線状に引き出したりする挙動を繰り返す昇降移動用スプレッダの配線に好適に用いることができる。
【0052】
また例えば、本実施形態にかかるケーブル1は、上記大型クレーンにおいて、一定長さのケーブルが巻き取りや送出しの挙動を繰り返す走行移動用リールを用いた配線に好適に用いることができる。
【0053】
ここで、参考までに、EPゴムで形成された絶縁層を有するコアを用いた従来のケーブルについて説明する。EPゴムで形成された絶縁層は、フッ素系樹脂で形成された絶縁層よりも、摩擦係数が高く、滑りにくい。また、EPゴムで形成された絶縁層は、CR等のゴム材料で形成されたシースと密着する。
【0054】
しかしながら、絶縁層をEPゴムで形成した複数本のコアを用いたケーブルでは、ケーブルが屈曲した際に、コアが個別に動くことがある。特に、集合コアが、本実施形態のようにコアからなる層を2層有している場合、集合コアの外層を構成するコアは、絶縁層の少なくとも一部がシースと密着しているが、内層を構成するコアと外層を構成するコアとは密着していない。このため、ケーブルが屈曲等した際、外層を構成するコアと内層を構成するコアとの動きが異なることがあり、コアが個別に動くことがある。その結果、コアの位置ずれが発生することがある。また、EPゴム等のゴム材料は、ゴムの性質上、被覆厚さを小さくすることが難しい。このため、1本あたりのコアの径が大きくなり、その結果、ケーブルの径が大きくなってしまう。
【0055】
これに対し、本実施形態では、集合コアとシースとの間の滑り性を高くしている。これにより、コアが導電線からなる層を2層以上有していたり、絶縁層をEPゴムよりも滑りやすいETFEで形成したりした場合であっても、ケーブルが屈曲等した際にシース内で集合コア全体を1つの塊として動かすことができる。このため、コアがキンクすることを抑制できる。また、ETFE等のフッ素樹脂は薄肉形成し易いので、絶縁層をETFEで形成することで、1本あたりのコアを細径にでき、その結果、ケーブルを細径にできる。
【0056】
(本発明の他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0057】
上述の実施形態では、テープの裏面に滑材を塗布することで滑材層を構成する場合を例に説明したが、これに限定されない。すなわち、各コアの外周面または集合コアの外周面に滑材を塗布することで滑材層を構成してもよいし、コアの絶縁層の材料中にシリコーンオイル等を配合することで滑材層を構成してもよい。
【0058】
また例えば、集合コアはテープで一括被覆されていなくてもよく、このようなケーブルであっても、集合コアとシースとの間の滑り性を高くすれば、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0059】
また例えば、集合コアが第1の層と第2の層との2層を有する場合に限定されず、コアからなる層を3層以上有する集合コアであってもよく、コアからなる層が1層である集合コアであってもよい。
【0060】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0061】
[付記1]
本発明の一態様によれば、
導体と前記導体の側周を囲うように設けられた絶縁層とを有するコアを複数本撚り合わせてなる集合コアと、
前記集合コアの側周を囲うように設けられたシースと、を有し、
前記絶縁層は、フッ素系樹脂からなり、
前記シースは、前記集合コアに食い込むように設けられており、
前記集合コアは、前記シースとの間で滑るように構成されている
ケーブルが提供される。
【0062】
[付記2]
付記1のケーブルであって、好ましくは、
前記集合コアは、テープによって押さえ巻きされており、
前記テープの前記シースと接触する面が前記シースと密着している。
【0063】
[付記3]
付記1または2のケーブルであって、好ましくは、
前記集合コアと前記シースとの間の動摩擦係数が、前記コア間の動摩擦係数よりも低い。
【0064】
[付記4]
付記1~3のいずれか1つのケーブルであって、好ましくは、
前記集合コアと前記シースとの間には、前記滑材層が設けられている。
【0065】
[付記5]
付記1~4のいずれか1つのケーブルであって、好ましくは、
前記滑材層は、前記集合コアの外周面に塗布されたタルク材からなる。
【0066】
[付記6]
付記1~5のいずれか1つのケーブルであって、好ましくは、
前記集合コアを構成する全ての前記コアが有する前記絶縁層が同一の材料で形成されている。
【0067】
[付記7]
付記1~6のいずれか1つのケーブルであって、好ましくは、
前記シースは、前記絶縁層よりも高い弾力性を有している。
【0068】
[付記8]
付記1~7のいずれか1つのケーブルであって、好ましくは、
強風に曝される環境下で使用される。
【符号の説明】
【0069】
1 ケーブル
2 コア
2a 導体
2b 絶縁層
3 集合コア
6 シース
7 滑材(滑材層)
図1
図2
図3