(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】マスク取付装置、成膜装置、マスク取付方法、成膜方法、電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20220729BHJP
C23C 14/12 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
C23C14/24 G
C23C14/12
(21)【出願番号】P 2020044094
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-224396(JP,A)
【文献】国際公開第2014/132831(WO,A1)
【文献】特開2005-256101(JP,A)
【文献】国際公開第2014/112512(WO,A1)
【文献】特開2014-177665(JP,A)
【文献】特開2019-059966(JP,A)
【文献】特開2002-075638(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0114293(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
C23C 16/00-16/56
H01L 21/67-21/683
H01L 51/50-51/56
H01L 27/32
H05B 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板キャリアを支持する基板キャリア支持手段と、
マスクを支持するマスク支持手段と、
前記基板キャリアが前記マスクから離隔している離隔状態と、前記基板キャリアが前記マスクの上に載っている取付状態と、を切り替えるように、前記基板キャリア支持手段と前記マスク支持手段の少なくとも一方を移動させる移動手段と、を備えるマスク取付装置であって、
基板キャリア支持手段は、
前記基板キャリアの第1方向に沿った第1の辺の周縁部を支持する第1の基板キャリア支持部と、
前記基板キャリアの前記第1方向に沿った第2の辺の周縁部を支持する第2の基板キャリア支持部と、を有し、
前記マスク支持手段は、
前記マスクの前記第1方向に沿った第1のマスク辺の周縁部を支持する第1のマスク支持部と、
前記マスクの前記第1方向に沿った第2のマスク辺の周縁部を支持する第2のマスク支持部と、を有し
前記離隔状態において、前記基板キャリアの撓み量dcが第1の撓み量となるように、前記第1の基板キャリア支持部及び前記第2の基板キャリア支持部が前記基板キャリアを支持し、
前記離隔状態において、前記マスクの撓み量dmが前記第1の撓み量より小さい第2の撓み量となるように、前記第1のマスク支持部及び前記第2のマスク支持部が前記マスクを支持する
ことを特徴とするマスク取付装置。
【請求項2】
前記基板キャリアの撓み量dcは、前記第1の辺の高さと、前記第1の辺及び前記第2の辺の間の中央部の高さとの差であり、
前記マスクの撓み量dmは、前記第1のマスク辺の高さと、前記第1のマスク辺及び前記第2のマスク辺の間の中央部の高さとの差である
ことを特徴とする請求項1に記載のマスク取付装置。
【請求項3】
前記基板キャリアの撓み量dcは、前記第1の辺又は前記第2の辺の高さと、前記基板キャリアの最も低い位置にある低部の高さとの差であり、
前記マスクの撓み量dmは、前記第1のマスク辺又は前記第2のマスク辺の高さと、前記マスクの最も低い位置にある低部の高さとの差である
ことを特徴とする請求項1に記載のマスク取付装置。
【請求項4】
前記離隔状態から前記取付状態へ切り替える際に、前記基板キャリアのうち、前記離隔状態において最も低い位置にある部分が、最初に前記マスクに接触する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のマスク取付装置。
【請求項5】
前記離隔状態から前記取付状態へ切り替える際に、前記基板キャリアの前記最も低い位置にある部分は、前記マスクのうち、前記離隔状態において最も低い位置にある部分に接触する
ことを特徴とする請求項4に記載のマスク取付装置。
【請求項6】
前記基板キャリアは、前記基板を保持する保持面の外側に設けられ、前記基板よりも前記マスクに向かって突出する着座部材を有し、
前記着座部材は、前記基板キャリアの前記最も低い位置にある部分に設けられている
ことを特徴とする請求項4または5に記載のマスク取付装置。
【請求項7】
前記基板キャリアは、前記基板を保持する保持面の外側に設けられ、前記基板よりも前記マスクに向かって突出する複数の着座部材を有する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のマスク取付装置。
【請求項8】
前記複数の着座部材のいずれか1つが前記マスクに接触してから、前記複数の着座部材の全部が前記マスクに接触するまでの間に、前記着座部材と前記マスクとの間に生じる摩擦力が、前記基板キャリアと前記第1の基板キャリア支持部及び前記第2の基板キャリア支持部との間に生じる摩擦力よりも大きくなる
ことを特徴とする請求項7に記載のマスク取付装置。
【請求項9】
前記複数の着座部材が前記マスクと接触する接触面積は、前記基板キャリアが前記第1の基板キャリア支持部及び前記第2の基板キャリア支持部と接触する接触面積よりも大きい
ことを特徴とする請求項7または8に記載のマスク取付装置。
【請求項10】
前記複数の着座部材と前記マスクとの間の摩擦係数は、前記基板キャリアと前記第1の基板キャリア支持部及び前記第2の基板キャリア支持部との間の摩擦係数よりも大きいことを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載のマスク取付装置。
【請求項11】
前記複数の着座部材の前記マスクとの接触部は、金属製の部材で構成されている
ことを特徴とする請求項7~10のいずれか1項に記載のマスク取付装置。
【請求項12】
前記複数の着座部材の前記マスクとの接触部は、研磨加工面または研削加工面で構成されている
ことを特徴とする請求項7~11のいずれか1項に記載のマスク取付装置。
【請求項13】
前記基板および前記マスクはそれぞれ矩形状である
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載のマスク取付装置。
【請求項14】
前記マスクは、枠状のマスクフレームと、前記マスクフレームに支持されたマスク箔と、を有し、
前記離隔状態から前記取付状態へ切り替える際に、前記基板キャリアは、最初に前記マスクフレームに接触する
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載のマスク取付装置。
【請求項15】
前記基板キャリアは、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の面板部材を含み、
前記マスクフレームは、鉄または鉄合金で構成されている
ことを特徴とする請求項14に記載のマスク取付装置。
【請求項16】
前記第1の基板キャリア支持部および前記第2の基板キャリア支持部は、無機材料、フッ素系コート、セラミック系コート、DLCコートのいずれかにより被膜されている
ことを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載のマスク取付装置。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載のマスク取付装置を有し、前記基板キャリアに前記マスクを取り付けるためのマスク取付室と、
前記マスクが取り付けられた前記基板キャリアに保持された基板の成膜面に対し、前記マスクを介して成膜を行うための成膜手段を有する成膜室と、
前記マスク取付室において前記マスクが取り付けられた前記基板キャリアを、前記成膜室内で、前記第1方向に沿って搬送する搬送手段と、を備える
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項18】
基板を保持する基板キャリアにマスクを取り付けるマスク取付方法であって、
前記基板キャリアが前記マスクから離隔している離隔状態で、前記基板キャリアの撓み量dcが第1の撓み量となるように、前記基板キャリアの第1方向に沿った第1の辺の周縁部と、前記基板キャリアの前記第1方向に沿った第2の辺の周縁部と、を支持する基板キャリア支持工程と、
前記離隔状態において、前記マスクの撓み量dmが前記第1の撓み量より小さい第2の撓み量となるように、前記マスクの前記第1方向に沿った第1のマスク辺の周縁部と、前記マスクの前記第1方向に沿った第2のマスク辺の周縁部と、を支持するマスク支持工程と、
基板キャリア支持工程によって支持された前記基板キャリアを、前記マスク支持工程によって支持された前記マスクに載置する載置工程と、を有する
ことを特徴とするマスク取付方法。
【請求項19】
前記基板キャリアの撓み量dcは、前記第1の辺の高さと、前記第1の辺及び前記第2の辺の間の中央部の高さとの差であり、
前記マスクの撓み量dmは、前記第1のマスク辺の高さと、前記第1のマスク辺及び前記第2のマスク辺の間の中央部の高さとの差である
ことを特徴とする請求項18に記載のマスク取付方法。
【請求項20】
前記基板キャリアの撓み量dcは、前記第1の辺又は前記第2の辺の高さと、前記基板キャリアの最も低い位置にある低部の高さとの差であり、
前記マスクの撓み量dmは、前記第1のマスク辺又は前記第2のマスク辺の高さと、前記マスクの最も低い位置にある低部の高さとの差である
ことを特徴とする請求項18に記載のマスク取付方法。
【請求項21】
前記載置工程において、前記基板キャリアのうち、前記離隔状態において最も低い位置にある部分が、最初に前記マスクに接触する
ことを特徴とする請求項18~20のいずれか1項に記載のマスク取付方法。
【請求項22】
前記載置工程において、前記基板キャリアの前記最も低い位置にある部分は、前記マスクのうち、前記離隔状態において最も低い位置にある部分に接触する
ことを特徴とする請求項21に記載のマスク取付方法。
【請求項23】
前記基板キャリアは、前記基板を保持する保持面の外側であって、前記基板キャリアの前記最も低い位置にある部分に設けられ、前記基板よりも前記マスクに向かって突出する着座部材を有し、
前記載置工程において、前記着座部材が最初に前記マスクに接触する
ことを特徴とする請求項21または22に記載のマスク取付方法。
【請求項24】
請求項18~
23のいずれか1項に記載のマスク取付方法によって、前記マスクが取り付けられた前記基板キャリアに保持された基板に対して成膜を行う
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項25】
請求項
24に記載の成膜方法を用いて、基板上に有機膜を形成する工程を有する
ことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク取付装置、成膜装置、マスク取付方法、成膜方法、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイを製造する方法として、所定のパターンで開口が形成されたマスクを介して基板上に成膜することで、所定のパターンの膜を形成するマスク成膜法が知られている。マスク成膜法では、マスクと基板を位置合わせした後に、マスクと基板を密着させて成膜を行う。マスク成膜法によって精度よく成膜するためには、マスクと基板の位置合わせを高い精度で行うことと、マスクと基板を密着させて膜ボケを抑制することが重要である。
【0003】
近年、有機ELディスプレイの大面積化や生産効率向上のために、大きなサイズの基板を用いて成膜を行うことが求められている。一般に、有機ELディスプレイの製造時には、ガラスや樹脂等の薄板が基板として用いられることが多く、基板のサイズが大きくなると基板を水平に保持した際の撓みが大きくなり、基板単独で搬送することが困難となる。
【0004】
特許文献1には、基板をチャックプレート(「基板キャリア」とも称する)に保持させ、チャックプレートごと基板を搬送することが記載されている。これにより、撓みの大きい大面積基板であっても搬送することが可能となる。そして、特許文献1には、チャックプレートにチャックされた状態の基板をアラインチャンバに搬入し、アラインチャンバ内でマスクと位置合わせし、マスクと基板を合着することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0067031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マスク成膜法においては、基板とほぼ同じ大きさのマスクを用いて成膜を行う。そのため、大面積の基板に成膜を行う際には大面積のマスクが使用されることになり、基板だけでなくマスクも撓みやすくなる。特許文献1ではチャックプレートに基板をチャックすることで基板の撓みを解消しているが、上述のように大面積の場合にはマスクにも撓みが生じている。この状態で基板をマスクに近づけて基板にマスクを密着させようとすると、接合面全体の均一的な密着が難しくなり、基板とマスク箔との間に形成される隙間のなかに許容のできない大きな隙間が生じてしまうことがある。基板をマスクに近づけた後に基板の背面(基板のマスクと対向する面とは反対側の面)に磁石を近づけてマスク箔を基板側に引き寄せることも考えられるが、基板とマスク箔との間の隙間が大きすぎると磁力でマスク箔を引き寄せて基板に密着させることができないこともある。
【0007】
このように、従来、基板キャリアに保持させた基板にマスクを装着させる際に基板とマスク箔との間に大きな隙間が生じ、基板とマスクとの密着が不十分となり、成膜精度が低下してしまうという課題があった。
【0008】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、基板キャリアに保持されて搬送される基板にマスクを装着させる際に、基板とマスクとの間の隙間を十分に小さくし、成膜精度
を向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のマスク取付装置は、
基板を保持する基板キャリアを支持する基板キャリア支持手段と、
マスクを支持するマスク支持手段と、
前記基板キャリアが前記マスクから離隔している離隔状態と、前記基板キャリアが前記マスクの上に載っている取付状態と、を切り替えるように、前記基板キャリア支持手段と前記マスク支持手段の少なくとも一方を移動させる移動手段と、を備えるマスク取付装置であって、
基板キャリア支持手段は、
前記基板キャリアの第1方向に沿った第1の辺の周縁部を支持する第1の基板キャリア支持部と、
前記基板キャリアの前記第1方向に沿った第2の辺の周縁部を支持する第2の基板キャリア支持部と、を有し、
前記マスク支持手段は、
前記マスクの前記第1方向に沿った第1のマスク辺の周縁部を支持する第1のマスク支持部と、
前記マスクの前記第1方向に沿った第2のマスク辺の周縁部を支持する第2のマスク支持部と、を有し
前記離隔状態において、前記基板キャリアの撓み量dcが第1の撓み量となるように、前記第1の基板キャリア支持部及び前記第2の基板キャリア支持部が前記基板キャリアを支持し、
前記離隔状態において、前記マスクの撓み量dmが前記第1の撓み量より小さい第2の撓み量となるように、前記第1のマスク支持部及び前記第2のマスク支持部が前記マスクを支持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
発明によれば、蒸着装置において基板キャリアとマスクをアライメントする際に、基板をマスクに正確に位置合わせし、かつ基板とマスクの隙間を密着させて成膜ムラを低減する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の蒸着装置の構成を示す模式的な断面図
【
図2】実施形態のマスク保持部及び基板の下部からの斜視図
【
図4】実施形態の基板およびキャリア保持部の拡大図
【
図6】基板およびキャリアをローラ搬送している状態の図
【
図7】基板および基板キャリアに隙間が生じた状態の図
【
図8】キャリアを着座ブロックを介して接触させる際の、着座ブロックとキャリア受け爪における接触面の状態を示す図
【
図10】基板およびマスクの保持の様子を示す平面図とマークの拡大図
【
図11】実施形態における処理の各工程を示すフローチャート
【
図12】実施形態の有機ELパネルのインライン製造システムの模式的な構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態1]
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
図1~
図11を参照して、本発明の実施形態に係るマスク取付装置、成膜装置、マスク取付方法、成膜方法、及び電子デバイスの製造方法について説明する。以下の説明におい
ては、電子デバイスを製造するための装置に備えられるマスク装着装置等を例にして説明する。また、電子デバイスを製造するための成膜方法として、真空蒸着法を採用した場合を例にして説明する。ただし、本発明は、成膜方法としてスパッタリング法を採用する場合にも適用可能である。また、本発明のマスク装着装置等は、成膜工程に用いられる装置以外においても、基板にマスクを装着する必要のある各種装置にも応用可能であり、特に大型基板が処理対象となる装置に好ましく適用できる。なお、本発明に適用される基板の材料としては、ガラスの他、半導体(例えば、シリコン)、高分子材料のフィルム、金属などの任意の材料を選ぶことができる。また、基板として、例えば、シリコンウエハ、又はガラス基板上にポリイミドなどのフィルムが積層された基板を採用することもできる。なお、基板上に複数の層を形成する場合においては、一つ前の工程までに既に形成されている層も含めて「基板」と称するものとする。また、以下で説明する各種装置等の同一図面内に同一もしくは対応する部材を複数有する場合には、図面中にa、bなどの添え字を付与して示す場合があるが、説明文において区別する必要がない場合には、a、bなどの添え字を省略して記述する場合がある。
【0014】
(装置構成)
図1は、本実施形態のインライン蒸着装置のアライメント機構部における全体構成を示すための模式的な断面図である。
図1(a)は、蒸着装置のアライメント機構が有する各部位の配置、構成および関係を説明する図である。
図1(b)はガラス基板を保持搬送するためのキャリア機構部とマスクの搭載状態を拡大した図である。
図2は、本実施形態の蒸着装置におけるマスク保持部及び基板を斜め下方からみた斜視図である。
【0015】
蒸着装置は概略、チャンバ4と、マスク取付装置として、基板キャリア部9において保持された基板5およびマスク6を保持して相対位置合わせを行うアライメント装置1を備えている。チャンバ4は、真空ポンプや室圧計を備えた室圧制御部(不図示)により室圧を調整可能であるとともに、チャンバ4の内部には蒸着材料(成膜材料)を収納した蒸発源7(成膜源)を配置可能であり、これにより、チャンバ内部に減圧された成膜空間2が形成される。成膜空間2においては、蒸発源7から基板5に向けて蒸着材料が飛翔し、基板上に膜が形成される。なお、本実施形態では、
図2に示すように、マスク6は枠状のマスクフレーム6aに数μm~数十μm程度の厚さのマスク箔6bが溶接固定された構造を有する。マスクフレーム6aは、マスク箔6bが撓まないように、マスク箔6bをその面方向(後述するX方向およびY方向)に引っ張った状態で支持する。マスク箔6bには、所望の成膜パターンに応じた開口が形成されている。基板5としてガラス基板またはガラス基板上にポリイミド等の樹脂製のフィルムが形成された基板を用いる場合、マスクフレーム6aおよびマスク箔6bの主要な材料としては、鉄合金を用いることができ、ニッケルを含む鉄合金を用いることが好ましい。ニッケルを含む鉄合金の具体例としては、34質量%以上38質量%以下のニッケルを含むインバー材、30質量%以上34質量%以下のニッケルに加えてさらにコバルトを含むスーパーインバー材、38質量%以上54質量%以下のニッケルを含む低熱膨張Fe-Ni系めっき合金などを挙げることができる。
【0016】
図示例では成膜時に基板の成膜面が重力方向下方を向いた状態で成膜されるデポアップの構成について説明する。しかし、成膜時に基板の成膜面が重力方向上方を向いた状態で成膜されるデポダウンの構成でもよい。また、基板が垂直に立てられて成膜面が重力方向と略平行な状態で成膜が行われる、サイドデポの構成でもよい。すなわち本発明は、キャリアに保持された基板とマスクを相対的に接近させるときに、該基板キャリアとマスクの少なくともいずれかの部材に発生する垂下や撓みが発生した状態において高精度で位置合わせすることが求められる際に、好適に利用できる。
【0017】
チャンバ4は上部隔壁4a(天板)、側壁4b、底壁4cを有している。チャンバ内部は、上述した減圧雰囲気の他、真空雰囲気や、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持さ
れていても良い。なお、本明細書における「真空」とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間内の状態をいい、典型的には、1atm(1013hPa)より低い圧力の気体で満たされた空間内の状態をいう。
【0018】
蒸発源7は例えば、蒸着材料を収容する坩堝などの材料収容部と、蒸着材料を加熱するシースヒータなどの加熱手段を備えるものであっても良い。さらに、基板キャリア部9およびマスク6と略平行な平面内で材料収容部を移動させる機構や蒸発源7全体を移動させる機構を備えることで、蒸着材料を射出する射出口の位置をチャンバ4内で基板に対して相対的に変位させ、基板上への成膜を均一化しても良い。
【0019】
アライメント装置1は、概略、チャンバ4の上部隔壁4aの上に搭載されて基板キャリア9を駆動して、基板キャリア9に保持された基板5とマスク6との位置を相対的に合わせる位置合わせ機構60(位置合わせ手段)が含まれる。アライメント装置1は、基板キャリア9を保持するキャリア支持部8(基板キャリア支持手段)と、マスク6を保持するマスク受け台16(マスク支持手段)と、を有している。
【0020】
位置合わせ機構60は、チャンバ4の外側に設けられており、基板キャリア支持部およびマスク支持部の少なくとも一方を移動させ、基板キャリア9とマスク6の相対的な位置関係を変化させる。本実施形態では、位置合わせ機構60は、基板キャリア支持部であるキャリア支持部8を移動させる。位置合わせ機構60は、概略、回転並進機構11(面内移動手段)と、Z昇降ベース13と、Z昇降スライダ10を含んでいる。
【0021】
回転並進機構11は、チャンバ4の上部隔壁4aに接続され、Z昇降ベース13をX方向、Y方向、およびθ方向(これらをまとめてXYθ方向とも称する)に駆動する。Z昇降ベース13は、回転並進機構11に接続され、基板キャリア9がZ方向に移動するときのベースとなる。Z昇降スライダ10は、Zガイド18に沿ってZ方向に移動可能な部材である。Z昇降スライダ10は、基板保持シャフト12を介して基板キャリア支持部8に接続されている。
【0022】
かかる構成において、回転並進機構11による基板キャリア9およびマスク6に略平行な面内でのXYθ駆動(XYθ方向への駆動)の際には、Z昇降ベース13、Z昇降スライダ10および基板保持シャフト12が一体として移動し、キャリア支持部8に駆動力を伝達する。そして、基板キャリア9によって保持された基板5を、基板5およびマスク6と略平行な平面内において移動させる。なお、マスク6および基板5は後述するように重力によって撓んでいるが、ここでいう基板5およびマスク6と略平行な平面とは、撓みが生じていない理想的な状態の基板5およびマスク6と略平行な平面を指す。例えば、デポアップやデポダウンなど、基板5とマスク6を水平に配置する構成においては、回転並進機構11は基板5を水平面内で移動させる。また、Zガイド18によってZ昇降スライダ10がZ昇降ベース13に対してZ方向に駆動する際には、駆動力が基板保持シャフト12(本実施例では、4本の基板保持シャフト12a、12b、12c、12dを備える。なお、
図2では、シャフト12dが基板5及びマスク6に隠れていて不図示である。)を介してキャリア支持部8に伝達される。そして、基板5のマスク6に対する距離を変化(離隔または接近)させる。すなわち、Z昇降ベース13、Z昇降ベース13およびZガイド18は位置合わせ手段の距離変化手段として機能する。
【0023】
図示例のように、可動部を多く含む位置合わせ機構60を成膜空間の外に配置することで、成膜空間内あるいはアライメントを行う空間内での発塵を抑制することができる。これにより、発塵によってマスクや基板が汚染されて成膜精度が低下してしまうことを抑制することができる。なお、本実施形態では位置合わせ機構60が基板5をXYθ方向およびZ方向に移動させる構成について説明したが、これに限定はされず、位置合わせ機構6
0はマスク6を移動させてもよいし、基板5およびマスク6の両方を移動させてもよい。すなわち、位置合わせ機構60は基板5およびマスク6の少なくとも一方を移動させる機構であり、これにより、基板5とマスク6の相対的な位置を合わせることができる。
【0024】
図1(b)は基板キャリア9およびマスクフレーム6aを拡大した図である。また
図3は基板キャリア9および基板5を裏面から見た図を示しており、これらを用いてキャリア構成を説明する。
【0025】
基板キャリア9は、キャリア面板30(面板部材)と、着座ブロック31(着座部材)と、チャック部材32と、を有する。
【0026】
キャリア面板30は、金属等で構成された板状部材であり、基板5を保持する保持面を構成する部材である。キャリア面板30はある程度の剛性(少なくとも基板5よりも高い剛性)を有しており、基板5を保持面に沿って保持することで、基板5の撓みを抑制することができる。
【0027】
着座ブロック31は、キャリア面板30の保持面の基板保持エリアの外側に、保持面から突出して複数配置されている。着座ブロック31は基板5が基板キャリア9に保持された状態で、基板5よりもマスク6側に突出するように設けられている。基板キャリア9は着座ブロック31を介してマスクフレーム6aの外周フレーム上に、アライメント動作を経て着座する。
【0028】
チャック部材32は、基板5をキャリア面板30によって構成される保持面に沿って保持するための部材である。本実施形態ではチャック部材32は、
図3に示すようにキャリア面板30に設けられた複数の穴の内部に複数配置されている。チャック部材32の基板5に面する部分には粘着性の部材が配置されており、粘着力によって基板5を保持することができる。チャック部材32は粘着パッドと呼ぶこともできる。なお、チャック部材32は、マスク6の形状に応じて配置されていることが好ましく、マスク6の桟の部分に対応して配置されていることがより好ましい。これにより、チャック部材32が基板5と接触することによる基板5の成膜エリアの温度分布への影響を抑制することができる。なお、本実施形態ではチャック部材32として粘着力によって基板5を保持する部材を用いているが、本発明はこれに限定はされず、チャック部材32として静電気力によって基板5を保持する部材(静電チャック)を用いることもできる。
【0029】
基板キャリア9は、さらに、保持した基板5を介してマスク6を磁気吸着するための磁気吸着手段(不図示)を有する。磁気吸着手段としては永久磁石や電磁石、永電磁石を備えた磁石プレートを用いることができる。また、磁気吸着手段はキャリア面板30に対して相対移動可能に設けられていてもよい。より具体的には、磁気吸着手段は、キャリア面板30との間の距離を変更可能に設けられてもよい。
【0030】
図4はマスクおよびキャリア保持部を拡大して示した図であり、これを用いて詳細部分を説明する。なお、
図1、4、6、7の各断面図は、搬送手段である搬送ローラ15の搬送方向に垂直で、かつ、枠状のマスクフレーム6aの一辺を構成する部分を通る面における断面図である。
【0031】
基板5を保持した基板キャリア9と、マスク6とは、それぞれ搬送ローラ15によって別々の搬送経路を辿って搬送され、アライメント装置1が配されたチャンバ(蒸着装置)に異なるタイミングで合流する。具体的には、基板キャリア9が先にチャンバ内に搬入され、搬送ローラ15からキャリア支持部8に受け渡され、搬送経路の上方に退避させた状態にする。その後、マスク6がチャンバ内に搬入され、搬送ローラ15からマスク受け台
16に受け渡される。これにより、基板キャリア9とマスク6とが、上下方向に重なる配置で、それぞれ別々に支持された状態となる。そして、キャリア支持部8を前後左右の位置を調整しながら下降させることで、基板キャリア9をマスク6に対して位置合わせすることが可能である。
【0032】
キャリア支持部8は、キャリア受け爪42を有する。キャリア受け爪42は、基板キャリア9の搬送経路の両側に配置されている(キャリア受け爪42a、42b)。各キャリア受け爪42の上面であるキャリア受け面41(第1の支持部としてのキャリア受け面41a、第2の支持部としてのキャリア受け面41b)上に基板キャリア9の一対の周縁領域が載置されることで基板キャリア9が支持される。
【0033】
マスクフレーム6aは、マスク受け面33を介してマスク受け台16によって支持されている。マスク受け面33は、マスク6の搬送経路の両側に配置されている(第3の支持部としてのマスク受け面33a、第4の支持部としてのマスク受け面33b)。
図5に示すようにマスク受け台16はマスク台ベース19上に載置された昇降台案内34に案内されつつ昇降される。マスク受け台16の昇降は、昇降台案内34の内部または外部に配置された不図示のマスク受け台昇降機構によって行われる。また、マスク6長辺下部には搬送ローラ15が配置されており、マスク6はマスク受け台16が下降することによって搬送ローラ15に受け渡される。
【0034】
このように、本実施形態では、矩形状の基板キャリア9と矩形状のマスク6が、キャリア支持部8とマスク支持部(マスク受け台16)によって搬送ローラ15の搬送方向に沿ってそれぞれ支持されている。すなわち、基板キャリア9は対向する2組の辺のうちの一方の組の辺(ここでは長辺)が搬送ローラ15の搬送方向と略平行に配置され、その1組の辺(ここでは長辺)に対応する基板キャリア9の周縁部を、これに対向して配置されたキャリア支持部8が支持している。また、マスク6は対向する2組の辺のうちの一方の組の辺(ここでは長辺)が搬送ローラ15の搬送方向と略平行に配置され、その1組の辺(ここでは長辺)に対応するマスク6の周縁部を、これに対向して配置されたマスク支持部が支持している。なお、ここでは基板キャリア9とマスク6の長辺を支持する構成について説明したが、これに限定はされず、短辺側を支持してもよい。また、基板キャリア9とマスク6が正方形である場合にも、2組の辺のうちの一方の組の辺の周縁部を支持する構成であればよい。なお、ここでいう搬送方向は、搬送ローラ15が、マスク6単体または基板キャリア9が搭載されたマスク6を搬送する方向を指す。
【0035】
図6は基板キャリア9がアライメント完了後マスクフレーム6a上に搭載され、かつマスク6が搬送ローラ15に受け渡された状態である。搬送ローラ15は紙面奥行方向に複数台が配置されており、マスク6を紙面奥行方向に搬送することで、マスク6上に搭載された基板キャリア9を搬送する。マスク6、基板キャリア9、基板5が一体となって搬送ローラ15によって搬送されながら、紙面奥行方向に配置される蒸着源7上を通過することで、基板5のマスク箔6bに遮られた部分以外の領域は有機材料の成膜が施されることになる。
【0036】
ここで、キャリア支持部8によって支持された基板キャリア9と、マスク支持部によって支持されたマスク6の撓みについて検討する。上述のように、キャリア支持部8によって支持された基板キャリア9(基板5を保持)は、搬送ローラ15の搬送方向に垂直な断面において重力方向下向きに凸な放物線状に撓んだ形状となる。また、マスク支持部によって支持されたマスク6も、搬送ローラ15の搬送方向に垂直な断面において重力方向下向きに凸な放物線状に撓んだ形状となる。本明細書では、この基板キャリア9の撓みの程度とマスク6の撓みの程度を定量的に取り扱うための量として、キャリア自重撓み量dcとマスク自重撓み量dmを、下記のように定義する。
【0037】
本明細書において、キャリア自重撓み量dcは、キャリア支持部8によって基板キャリア9をある平面(仮想平面)に沿って支持しようとしたときに、その平面に沿った高さ(該仮想平面の高さ)を基準として、基準高さと自重によって撓んだ部分の高さとの差分(絶対値)を指す。例えば、キャリア支持部8によって基板キャリア9を水平に支持しようとしたときには、キャリア受け面41の高さを基準として、基準高さと、基板キャリア9のうち最も大きく撓んだ部分(仮想平面の高さからの高さの変化が最も大きい部分)の基板キャリア9の下面の高さ(典型的には対向配置されたキャリア支持部8の間の中間部分に対応する基板キャリア9の下面の高さ)との差分(絶対値)が、キャリア自重撓み量dcとなる。すなわち、
図1(b)に示すように、キャリア支持部8に支持された基板キャリア9の下面において、キャリア受け面41と当接する部分の高さを上記仮想平面の高さとし、この仮想平面の高さから、高さの変化が最も大きい部分の高さまでの差分(絶対値)を、キャリア自重撓み量dcとしている。なお、基板キャリア9の下面ではなく、上面を基準にしてキャリア自重撓み量dcを規定してもよい。この場合、上記仮想平面の高さは、キャリア受け面41の高さと基板キャリア9の厚み(高さ)を基に、取得するようにしてもよい。すなわち、基板キャリア9のキャリア受け面41と当接する部分に着目し、キャリア受け面41の高さに基板キャリア9の厚さを加えた値を、上記仮想平面の高さとしてもよい。
【0038】
また、本明細書において、マスク自重撓み量dmは、マスク支持部によってマスク6をある平面(仮想平面)に沿って支持しようとしたときに、その平面に沿った高さ(該仮想平面の高さ)を基準として、基準高さと自重によって撓んだ部分の高さとの差分(絶対値)を指す。例えば、マスク支持部によってマスク6を水平に支持しようとしたときには、マスク6のマスク受け面33に当接している部分の上面の高さを基準として、基準高さと、マスク6のうち最も大きく撓んだ部分(仮想平面の高さからの高さの変化が最も大きい部分)のマスク6の上面の高さ(典型的には対向配置されたマスク支持部の間の中間部分に対応するマスク6の上面の高さ)との差分(絶対値)が、マスク自重撓み量dmとなる。すなわち、
図1(b)に示すように、マスク支持部に支持されたマスク6の上面において、高さの変化が最も少ない端部の部分の高さを上記仮想平面の高さとし、この仮想平面の高さから、高さの変化が最も大きい部分の高さまでの差分(絶対値)を、マスク自重撓み量dmとしている。なお、上記仮想平面の高さは、マスク受け面33の高さとマスク6の厚み(高さ)を基に、取得するようにしてもよい。すなわち、マスク6のマスク受け面33と当接する部分に着目し、マスク受け面33の高さにマスク6の厚さ(例えば、マスクフレーム6aの厚さとマスク箔6bの厚さの合計)を加えた値を、上記仮想平面としてもよい。なお、マスク6の上面ではなく、下面を基準にしてマスク自重撓み量dmを規定してもよく、この場合、マスク受け面33の高さを基準高さとしてよい。
【0039】
ここで、基板キャリア9は基板5の撓みを抑制して搬送を容易にするためのものであるから、その目的からすると、基板キャリア9の剛性を高くしてできるだけ撓まないようにすることが好ましい。一方、マスク6は上述のようにマスク箔6aが撓まないように剛性の高いマスクフレーム6bを用いているため、基板5と比較すると撓みにくい。従来は基板5およびマスク6の一辺の長さが高々1.5m程度であったためにマスク6の撓みは無視できる程度であった。しかし、第8世代や第10世代などの一辺の長さが2mを大きく超えるような基板5およびマスク6を用いる場合にはマスク6の撓みも無視できなくなってくる。また、本実施形態のように、矩形状のマスク6および基板キャリア9を4辺全てではなく対向する一対の辺でしか支持しないように、部分的に支持する場合には、マスク6の撓みはますます大きくなる。すなわち、従来の思想通りに基板キャリア9を設計すると、マスク6のほうが基板キャリア9よりも撓みやすくなっていた。
【0040】
本発明者らが鋭意検討した結果、このような場合に、従来の思想通りに基板キャリア9
の剛性をできるだけ高くして撓まないようにすると、いくつかの不都合が生じることがわかった。以下、基板キャリア9の剛性をできるだけ高くして、キャリア自重撓み量dcがマスク自重撓み量dmよりも小さくなった場合(すなわち、dc<dmとなった場合)に生じる不都合について説明する。
【0041】
dc<dmである場合、まず第1に、基板キャリア9とマスク6とを接触させ、マスク6の上に基板キャリア9を載置して基板5にマスク6を装着するときに、マスク6の撓みが基板キャリア9の撓みより大きすぎるとマスク箔6aと基板5との間に大きな隙間が生じてしまう。マスク6と基板5との間に大きな隙間が生じた状態を
図7に示す。マスク箔6aと基板5との間に大きな隙間が生じると、基板5および基板キャリア9を挟んで裏側から磁石等の磁気吸着手段によってマスク6を吸着して基板5にマスク箔6aを密着させようとしても隙間が残ってしまう場合がある。このように、基板キャリア9に保持された基板5とマスク6の間に隙間dsが空く状態となり、この状態で搬送されて成膜された場合、成膜時に成膜材料がマスク箔6aと基板5との間の隙間を通って回り込み、膜ボケが発生する状態となる。この結果、成膜ムラが発生することとなり、ディスプレイの輝度ムラによる品質低下を招く恐れがある。
【0042】
dc<dmである場合、第2に、基板キャリア9とマスク6とを接触させる際に、それぞれの支持部(キャリア支持部、マスク支持部)によって支持された部分である長辺に沿って延びる領域から接触が始まる。基板キャリア9の長辺は全て同じ高さになるようにキャリア受け爪42によって支持され、また、マスク6の長辺は全て同じ高さになるようにマスク支持部によって支持されているため、接触の開始は辺同士(長辺同士または長辺に沿って延びる領域同士)で生じることになる。辺同士が接触する際には、接触する2つの辺が同じ形状で、かつ2辺が平行を保ったまま接近して接触するような理想的な状態であれば辺全体が一度に接触することになるが、実際には、様々な外乱の影響によって辺の中の一部から接触が始まることになる。そしてこの場合、その接触の開始箇所は様々な外乱の影響を受けて毎回変わり、1箇所に定まることがなく、接触の開始箇所がランダムに決まることになる。この結果、基板キャリア9とマスク6の着座時の再現性が低下する。例えば、アライメント時のZ昇降スライダ10はZガイド18によって案内されて下降するが、Zガイドの真直度や姿勢の再現性によって基板キャリア9が下降する過程の経路や姿勢が異なるので、接触開始箇所を一定にすることは困難となる。このため接触開始箇所が変わると基板キャリア9がマスクフレーム6aから受ける反力が変わるため、基板キャリア9(または牙キャリア9に保持された基板5)とマスク6とのアライメントが完了した後、基板キャリア9をマスク6に着座させる時のズレ方が都度大きく異なりばらつく懸念がある。なお、dc=dmの場合も、dc<dmの場合と同様、着座時の振る舞い方が安定しないため、好ましくない。
【0043】
そこで、本発明者らは、基板キャリア9の剛性を敢えて高くしすぎないようにし、基板キャリア9の撓み量とマスク6の撓み量を調整することによって、上述の課題を解決した。本実施形態では、キャリア自重撓み量dcがマスク自重撓み量dmよりも大きくなるように(すなわち、dc>dmとなるように)、基板キャリア9の剛性とマスク6の剛性を調整している。dc>dmとすることで、
図1(b)に示すように、マスク6をマスク支持部で支持し、基板キャリア9をキャリア支持部で支持したときにマスク6よりも基板キャリア9のほうが大きく撓むようになる。なお、基板5は基板キャリア9の保持面に沿って基板キャリアに保持されているため、基板5の撓み量もキャリア自重撓み量dcと同等と見なせる。
【0044】
この状態で基板キャリア9をマスク6に載置すると、基板キャリア9が、より撓み量の小さいマスク6に倣うように変形しながら載置されていくため、載置後は
図6のように基板キャリア9とマスク6の撓みが揃うことになる。そのため、マスク箔6aと基板5との
間の隙間を十分に小さくすることができ、成膜時の膜ボケを抑制することができるようになる。
【0045】
また、dc>dmとすることで、基板キャリア9に保持された基板5をマスク6に接触させる際には、基板5の短辺側の最も撓んだ部分から接触が始まるようになる。本実施形態では、基板キャリア9の基板5を保持しているエリアの外側に着座ブロック31が複数配置されており、着座ブロック31は基板5よりも突出するように設けられている。また、本実施形態では、複数の着座ブロック31のうちの一部は、基板キャリア9の短辺側の中央、すなわち、最も撓む部分に配置されている。より具体的には、本実施形態では、基板キャリア9の2つの短辺のそれぞれの中央に、着座ブロック31がそれぞれ配置されている。そのため、本実施形態では、基板キャリア9をマスク6に接触させる際には基板キャリア9の短辺側の中央に配置された着座ブロック31から接触が始まるようにすることができるため、着座の再現性を高めることができる。また、最初に接触する着座ブロック31を位置合わせの基準とすることができ、着座による位置の再現性も高めることができるようになる。
【0046】
キャリア自重撓み量dcとマスク撓み量dmがdm<dcとする方法としては、例えばキャリア面板30の材質をアルミニウムまたはアルミニウム合金とし、マスクフレーム6aの材質を鉄または鉄合金として、剛性に差を与えるようなことが考えられる。また、熱膨張の差によるプロセス上の影響を低減するためにキャリア面板30とマスクフレーム6aの材質を同じにするという制約がある場合には、マスクフレーム6aの断面2次モーメントをキャリア面板30の断面2次モーメントよりも大きくする方法でもよい。すなわち、キャリア自重撓み量dcとマスク撓み量dmの関係としてdm<dcを実現する方法は、特定の方法に限定されるものでなく、既知の手法を適宜適用してよい。
【0047】
また、本実施形態の特徴として着座ブロック31とキャリア受け面41の摩擦に関して説明する。基板キャリア9の自重による撓み量をdc、マスクフレーム6aの自重撓み量をdmとし、dm<dcであれば中央の着座ブロック31から接触が始まるが、接触開始後位置ズレを抑制して安定して着座させるためには、接触開始後に横方向に発生する力の関係が重要となる。すなわち、基板キャリア9とマスク6の接触が始まる箇所(接触開始箇所)となる中央の着座ブロック31とマスクフレーム6aとが接触する部分において水平方向に発生する摩擦力F1と、キャリア受け面41と基板キャリア9とが接触する部分において水平方向に発生する摩擦力F2との関係が、F1>F2となっていれば、中央の着座ブロック31の付近では基板キャリア9はマスク6に対して相対的に移動せず、キャリア受け面41の付近に置いて基板キャリア9がマスク6に対して想定的に滑って移動することになる。これにより、最初に接触する中央の着座ブロック31が着座における位置の基準となり、着座の過程においてその位置が不変となるため、着座の過程における位置ズレのバラつきを低減する効果がある。
【0048】
また、基板キャリア9とマスク6の接触時の状態を、
図8を用いて説明する。
図8は基板キャリア9を着座ブロック31を介してマスクフレーム6a上に着座させる際の、中央の着座ブロック31における接触状態を斜線部(a)で示している。またキャリア受け面41における基板キャリア9の接触状態を斜線部(b)で示している。基板キャリア9は撓んだ状態で複数のキャリア受け面41に載置されている。実際には大型の基板キャリア9が自重撓みによって中央部分が重力方向下方に引き込まれ、反対に、基板キャリア9の外周は反りあがる状態となる。すなわちキャリア受け面41の接触状態は
図8に示す斜線部(b)のように線接触状態となる。一方、中心の着座ブロック31の接触状態は基板キャリア9の垂直荷重を受けるため、ほぼ着座ブロック31の接触面(下面)の略全面で受ける斜線部(a)のような接触状態である。
【0049】
これら接触部である斜線部(a)における摩擦係数をμ1、斜線部(b)における摩擦係数をμ2とする。各接触部に均等に基板キャリア9の荷重がかかったとして、着座時における横方向の摩擦力で考えれば水平方向に発生する着座ブロック31の接触部における摩擦係数μ1がキャリア受け面41の摩擦係数μ2よりも大きくなるようにすることで着座ブロック31とマスクフレーム6aとが接触する部分において発生する摩擦力F1と、キャリア受け面41と基板キャリア9とが接触する部分において発生する摩擦力F2との関係が、着座動作の過程において初期から、F1>F2のままに維持される。これにより、基板キャリア9をマスク6上に載置する際に生じうる基板キャリア9のマスク6に対する位置ズレを抑制することができる。
【0050】
中央の着座ブロック31とマスクフレーム6aの接触部は、例えば金属同士の接触で、研削研磨加工された表面性状であってもよい。接触する環境は真空環境であり、一般的には真空状態において、金属表面の水分子は揮発することにより潤滑効果が低下することで摩擦係数は1.0に近づく傾向があり、この現象を活用し中央の着座ブロック31とマスクフレーム6の接触部の摩擦係数μ1を最大化することもできる。
【0051】
キャリア受け面41上における基板キャリア9との接触部は、例えば、無機材料、フッ素、DLC、無機セラミックが母材のコーティング(無機材料コート、フッ素系コート、セラミック系コート、DLCコート)を施すことにより、低摩擦処理が施されていてもよい。一般的に固体潤滑に適用できるコーティングは真空環境における摩擦係数は0.1~0.4であり、キャリア受け面41と基板キャリア9の接触部の摩擦係数μ2を最小化することもできる。これにより、上記の摩擦力の関係としてF1>F2とすることが可能となる。
【0052】
なお、基板キャリア9とマスク6との間の滑りやすさと、基板キャリア9と基板キャリア支持部8(キャリア受け面41)との間の滑りやすさと、の間に差を設ける手法は、技術的に複雑な内容であり、特定の手法に限定されるものではなく、装置構成等に応じて種々の手法が採用され得る。すなわち、摩擦力(摩擦係数)の制御(設定)は、接触面(摩擦面)の性状や材質の組合せ、荷重や力の加わり方、装置構成全体における接触部の位置関係等々、種々の要因が関係すると考えられている。発明者らは、本実施形態の装置構成においては、
図8に示すように、着座ブロック31とマスクフレーム6aとの接触面積を大きく、キャリア受け面41と基板キャリア9との接触面積を小さくすること、すなわち、各接触部における接触面積に差を設けることが、各接触部における摩擦係数に差を持たせることに対する寄与の割合が大きいことを、経験的な知見として得ている。
【0053】
基板保持シャフト12は、チャンバ4の上部隔壁4aに設けられた貫通孔を通って、チャンバ4の外部と内部にわたって設けられている。成膜空間内では、基板保持シャフト12の下部にキャリア支持部8が設けられ、基板キャリア9を介して被成膜物である基板5を保持可能となっている。
【0054】
基板保持シャフト12と上部隔壁4aとが干渉することのないよう、貫通孔は基板保持シャフト12の外径に対して十分に大きく設計される。また、基板保持シャフト12のうち上部隔壁4の貫通孔からZ昇降スライダ10への固定部分までの区間(貫通孔より上方の部分)は、Z昇降スライダ10と上部隔壁4aとに固定されたベローズ40によって覆われる。これにより、基板保持シャフト12がチャンバ4と連通する閉じられた空間によって覆われるため、基板保持シャフト12全体を成膜空間2と同じ状態(例えば、真空状態)に保つことができる。ベローズ40には、Z方向およびXY方向にも柔軟性を持つものを用いるとよい。これにより、アライメント装置1の稼働によってベローズ40が変位した際に発生する抵抗力を十分に小さくすることができ、位置調整時の負荷を低減することができる。
【0055】
アライメント装置1による各種の動作(回転並進機構によるアライメント、距離変化手段によるZ昇降スライダ10の昇降、キャリア支持部8による基板保持、蒸発源7による蒸着など)は、制御部70によって制御される。制御部70は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、I/Oなどを有するコンピュータにより構成可能である。この場合、制御部70の機能は、メモリ又はストレージに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピュータとしては、汎用のパーソナルコンピュータを用いてもよいし、組込型のコンピュータ又はPLC(programmable logic controller)を用いてもよい。あるいは、制御部70の機能の一部又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。なお、蒸着装置ごとに制御部70が設けられていてもよいし、1つの制御部70が複数の蒸着装置を制御してもよい。
【0056】
次にアライメント装置1の位置合わせ機構60の詳細について、
図5を参照して説明する。
図5は、アライメント機構の一形態を示す斜視図である。Z昇降スライダ10を鉛直Z方向に案内するガイドは、複数本(ここでは4本)のZガイド18a~18dを含んでおり、Z昇降ベース13の側面に固定されている。Z昇降スライダ中央には駆動力を伝達するためのボールネジ27が配設され、Z昇降ベース13に固定されたモータ26から伝達される動力が、ボールネジ27を介してZ昇降スライダ10に伝えられる。
【0057】
モータ26は不図示の回転エンコーダを内蔵しており、エンコーダの回転数により間接的にZ昇降スライダ10のZ方向位置を計測できる。モータ26の駆動を外部コントローラで制御することにより、Z昇降スライダ10のZ方向の精密な位置決めが可能となっている。なお、Z昇降スライダ10の昇降機構は、ボールネジ27と回転エンコーダに限定されるものではなく、リニアモータとリニアエンコーダの組み合わせなど、任意の機構を採用することができる。
【0058】
図9の構成では、回転並進機構11は複数の駆動ユニット21a、21b、21c、21dを、ベースの四隅に有している。各駆動ユニット21a~21dは、駆動力を発生させる方向が四隅ごとに90度ずつ異なるように、Z軸周りに90度ずつ向きを回転させて配置されている。
【0059】
各駆動ユニット21は、駆動力を発生させる駆動ユニットモータ25を備えている。各駆動ユニット21は更に、駆動ユニットモータ25の力が駆動ユニットボールネジ46を介して伝達されることにより第1の方向にスライドする第1のガイド22と、XY平面において第1の方向と直交する第2の方向にスライドする第2のガイド23とを備えている。さらに、Z軸周りに回転可能な回転ベアリング24を備えている。例えば、駆動ユニット21dの場合は、X方向にスライドする第1のガイド22、X方向と直交するY方向にスライドする第2のガイド23、回転ベアリング24を有しており、駆動ユニットモータ25の力が駆動ユニットボールネジ46を介して第1のガイド22に伝達される。他の駆動ユニット21a、21b、21cも、配置する向きが互いに90度ずつ異なるだけで、それぞれ駆動ユニット21dと同様の構成を有している。
【0060】
駆動ユニットモータ25は不図示の回転エンコーダを内蔵しており、第1のガイド22の変位量を計測可能である。各駆動ユニット21において、駆動ユニットモータ25の駆動を制御部70で制御することにより、Z昇降ベース13のXYθz方向における位置を精密に制御することが可能となっている。
【0061】
例えば、Z昇降ベース13を+X方向へ移動させる場合は、駆動ユニット21aと駆動ユニット21dのそれぞれにおいて+X方向にスライドさせる力を駆動ユニットモータ25で発生させ、Z昇降ベース13にその力を伝えるとよい。また、+Y方向へ移動させる
場合には、駆動ユニット21bと駆動ユニット21cのそれぞれにおいて+Y方向にスライドさせる力を駆動ユニットモータ25で発生させ、Z昇降ベース13にその力を伝えるとよい。
【0062】
Z昇降ベース13をZ軸に平行な回転軸まわりに+θ回転(時計周りにθz回転)させる場合は、対角に配置された駆動ユニット21aと駆動ユニット21dとを用いて、Z軸周りに+θz回転させるために必要な力を発生させ、Z昇降ベース13にその力を伝えるとよい。あるいは、駆動ユニット21bと駆動ユニット21cとを用いて、Z昇降ベース13に回転に必要な力を伝えてもよい。
【0063】
次に、基板5とマスク6との位置を検出するために、それぞれのアライメントマークの位置を同時に計測するための撮像装置について説明する。
図1、
図5に示すように、上部隔壁4aの外側の面には、マスク6上のアライメントマーク(マスクマーク)および基板5上のアライメントマーク(基板マーク)の位置を取得するための位置取得手段である撮像装置14(14a、14b、14c、14d)が配設されている。上部隔壁4aには、撮像装置14によりチャンバ4の内部に配置されたアライメントマークの位置を計測できるよう、カメラ光軸上に撮像用貫通孔が設けられている。撮像用貫通孔には、チャンバ内部の気圧を維持するために窓ガラス17(17a、17b、17c、17d)等が設けられる。さらに、撮像装置14の内部または近傍に不図示の照明を設け、基板およびマスクのアライメントマーク近傍に光を照射することで、正確なマーク像の計測を可能としている。なお、
図1では、撮像装置14d、窓ガラス17c、17dが、他の部材に隠れていて不図示である。
【0064】
図10(a)~
図10(c)を参照して、撮像装置14を用いて基板マーク37とマスクマーク38の位置を計測する方法を説明する。
【0065】
図10(a)は、キャリア支持部8に保持されている状態のキャリア面板30上の基板5を上から見た図である。基板5上には撮像装置14で計測可能な基板マーク37a、37b、37c、37dが基板5の4隅に形成されている。この基板マーク37a~37dを4つの撮像装置14a~14dによって同時計測し、各基板マーク37a~37dのそれぞれの中心位置4点の位置関係から基板5の並進量、回転量を算出することにより、基板5の位置情報を取得することができる。なお、キャリア面板30には貫通孔が開いており、上部から撮像装置14によって基板マーク37の位置を計測することが可能となっている。
【0066】
図10(b)は、マスクフレーム6aを上面から見た図である。四隅には撮像装置で計測可能なマスクマーク38a、38b、38c、38dが形成されている。このマスクマーク38a~38dを4つの撮像装置14a、14b、14c、14dにより同時計測し、各マスクマーク38a~38dのそれぞれの中心位置4点の位置関係からマスク6の並進量、回転量などを算出して、マスク6の位置情報を取得することができる。
【0067】
図10(c)は、マスクマーク38および基板マーク37の4つの組の中の1組を、撮像装置14によって計測した際の、撮像画像の視野44を模式的に示した図である。この例では、撮像装置14の視野44内において、基板マーク37とマスクマーク38が同時に計測されているので、マーク中心同士の相対的な位置を測定することが可能である。マーク中心座標は、撮像装置14の計測によって得られた画像に基づいて、不図示の画像処理装置を用いて求めることができる。なお、マスクマーク38および基板マーク37として四角形や丸形状のものを示したが、マークの形状はこれに限られるわけではない。例えば、×印や十字形などのように中心位置を算出しやすく対称性を有する形状を用いることが好ましい。
【0068】
精度の高いアライメントが求められる場合、撮像装置14として数μmのオーダーの高解像度を有する高倍率CCDカメラが用いられる。このような高倍率CCDカメラは、視野の径が数mmと狭いため、基板キャリア9をキャリア受け爪42に載置した際の位置ズレが大きいと、基板マーク37が視野から外れてしまい、計測不可能となる。そこで、撮像装置14として、高倍率CCDカメラと併せて広い視野をもつ低倍率CCDカメラを併設するのが好ましい。その場合、マスクマーク38と基板マーク37が同時に高倍率CCDカメラの視野に収まるよう、低倍率CCDカメラを用いて大まかなアライメント(ラフアライメント)を行った後、高倍率CCDカメラを用いてマスクマーク38と基板マーク37の位置計測を行い、高精度なアライメント(ファインアライメント)を行う。
【0069】
撮像装置14として高倍率CCDカメラを用いることにより、マスクフレーム6aと基板5の相対位置を誤差数μm内の精度で調整することができる。ただし、撮像装置14はCCDカメラに限られるわけではなく、例えばCMOSセンサを撮像素子として備えるデジタルカメラでもよい。また、高倍率カメラと低倍率カメラを別個に併設しなくとも、高倍率レンズと低倍率レンズを交換可能なカメラや、ズームレンズを用いることにより、単一のカメラで高倍率と低倍率の計測を可能にしてもよい。
【0070】
撮像装置14によって取得したマスクフレーム6aの位置情報および基板5の位置情報から、マスクフレーム6aと基板5との相対位置情報を取得することができる。この相対位置情報を、アライメント装置の制御部70にフィードバックし、昇降スライダ10、回転並進機構11、キャリア支持部8など、それぞれの駆動部の駆動量を制御する。
【0071】
(基板載置方法)
以下では、基板5を基板キャリア9にセットし、基板キャリア9上の基板5とマスク6とをアライメントし、基板キャリア9(基板5)をマスク6上に載置するまでの、蒸着装置の一連の動作を説明する。
【0072】
図11は、実施形態の蒸着装置の動作シーケンスを示すフローチャートである。
【0073】
まず、ステップS101では、不図示のローラ搬送機構に搭載された基板キャリア9がゲートバルブを介してチャンバ4内に搬入され、キャリア支持部8の両側のキャリア受け爪42上に載置される。一方のキャリア受け爪42aは、基板5(基板キャリア9)の一辺に沿って所定の間隔を空けて複数配置され、該基板5の一辺近傍において基板キャリア9の周縁部を支持する。他方のキャリア受け爪42bは、基板5の上記一辺と対向する第二辺に沿って所定の間隔を空けて複数配置され、該基板5の第二辺近傍において基板キャリア9の周縁部を支持する。
【0074】
次に、ステップS103では、基板キャリア9を下降させ、低倍率CCDカメラで撮像する高さにセットする。次に、ステップS104では、低倍率CCDカメラで基板5に設けられた基板マーク37を撮像する。制御部70は、撮像された画像に基づき基板5の位置情報を取得してメモリに保存する。
【0075】
ステップS105は、ステップS104に続いて実行される場合と、ステップS109またはステップS113での判定が「NO」のとき、これらのS109またはS113に続いて実行される場合とがある。
【0076】
ステップS104に続いて実行されるステップS105では、基板キャリア9を下降させ、アライメント動作高さにセットし、ステップS104で取得した位置情報に基づいて基板5の位置を調整する。
【0077】
まず基板キャリア9の高さについて言えば、キャリア受け面41(キャリア受け爪42の上面)とマスク6とを隔てる距離を、ステップS104のときより低い高さ変更する。ただしこのとき、キャリア受け面41の位置は、自重により撓んだ基板キャリア9上の基板5がマスク6と接触しない高さに設定する。なお、場合によっては、ステップS105とステップS104を同じ高さで実行してもよい。
【0078】
ステップS104に続いて実行されるステップS105におけるアライメント動作では、制御部70は、ステップS104で取得した基板5の位置情報に基づいて、アライメント装置1が備える位置合わせ機構60を駆動する。すなわち、制御部70は、基板5の基板マーク37が高倍率CCDカメラの視野内に入るように基板5の位置を調整する。なお、マスク6については、マスクマーク38が高倍率CCDカメラの視野内(望ましくは視野中心)に入るように、予め、マスク6と高倍率CCDカメラの相対位置が調整済みである。このため、ステップS104に続いて実行されるステップS105におけるアライメント動作により、基板マーク37とマスクマーク38の両方が高倍率CCDカメラの視野内に入るように調整される。ただしこの時点では、被写界深度の関係から、基板マーク37が高倍率CCDカメラで撮像できない可能性がある。なお、アライメント動作では、基板5をXYθz方向に移動させるが、前述のように自重により撓んだ基板5がマスク6と接触しない高さで移動させるため、基板5の表面、あるいは、基板5表面に既に形成された膜パターンがマスク6と摺動して破損することはない。
【0079】
次に、ステップS106では、基板キャリア9を下降させ、高倍率CCDカメラで撮像する高さに基板5をセットする。
【0080】
ここでは、被写界深度が浅い高倍率CCDカメラを、基板マーク37とマスクマーク36の両方に合焦させて撮影するために、基板5の少なくとも一部(撓んだ部分)がマスク6に接触して基板マスク当接部ができるまで、基板5をマスク6に近接させる
【0081】
次に、ステップS108では、高倍率CCDカメラによって基板5の基板マーク37とマスク6のマスクマーク38とを同時に撮像する。制御部70は、撮像された画像に基づき基板5とマスク6の相対位置情報を取得する。ここでいう相対位置情報とは、具体的には、基板マーク37とマスクマーク38の中心位置どうしの距離と位置ズレの方向に関する情報である。ステップS108は、基板5とマスク6の相対位置情報(相対位置ズレ量)を取得し、基板5とマスク6の位置ズレ量を計測する計測工程(計測処理)である。
【0082】
次に、ステップS109では、制御部70はステップS108で計測した基板5とマスク6の位置ズレ量が所定の閾値以下かどうかを判定する。所定の閾値は、基板5とマスク6の位置ズレ量が成膜を行っても支障ない範囲内に収まるように、予め設定された値である。閾値は、求められる基板5とマスク6の位置合わせ精度を達成し得るように設定される。閾値は例えば、誤差数μm内のオーダーとする。
【0083】
ステップS109において、基板5とマスク6の位置ズレ量が所定の閾値を越えると判定した場合には(ステップS109:NO)、ステップS105に戻ってアライメント動作を実行し、さらにステップS106以降の処理を続行する。
【0084】
ステップS109の判定がNOの場合に実行されるステップS105では、基板キャリア9を上昇させ、アライメント動作高さにセットし、ステップS108で取得した相対位置情報に基づいて基板5の位置を調整する。
【0085】
ステップS109の判定がNOの場合に実行されるアライメント動作では、制御部70
は、ステップS108で取得した基板5とマスク6の相対位置情報に基づいて、アライメント装置1が備える位置合わせ機構を駆動する。すなわち、制御部70は、基板5の基板マーク37とマスク6のマスクマーク38とがより近接する位置関係になるように、基板5をXYθz方向に移動させて位置を調整する。
【0086】
アライメント動作では、基板5をXYθz方向に移動させるが、前述のように自重により撓んだ基板5がマスク6と接触しない高さでの移動であるため、基板5の表面、あるいは、基板5表面に既に形成された膜パターンがマスク6と摺動して破損することはない。
【0087】
ステップS105は、基板5とマスク6の位置ズレ量が減少するように基板5を移動させるアライメント工程(アライメント処理)であり、ステップS109の判定がNOの場合にはファインアライメントが行われる。
【0088】
ステップS109の判定がYESの場合には、ステップS110において、基板キャリア9をさらに下降して、基板キャリア9全体がマスクフレーム6a上に載置された状態にする。すなわち、キャリア支持部8による基板キャリア9の支持が解かれ、基板キャリア9(基板5)とこれを搭載するマスクフレーム6a(マスク6)とが共に、マスク受け台16(マスク支持部)によって支持される状態となる。そして、ステップS112において、高倍率CCDカメラにより基板マーク37とマスクマーク36を撮像し、基板5とマスク6の相対位置情報を取得する。
【0089】
次に、ステップS113では、制御部70はステップS112で取得した基板5とマスク6の相対位置情報に基づき、基板5とマスク6の位置ズレ量が所定の閾値以下かどうかを判定する。所定の閾値は、その閾値内であれば成膜を行っても支障ない範囲内である条件として、予め設定しておく。
【0090】
ステップS113において、基板5とマスク6の位置ズレ量が所定の閾値を越えると判定した場合には(ステップS113:NO)、キャリア受け爪42を基板5の高さに上昇させ基板キャリア9を支持する。なお、かかるNO判定は、例えばステップS109~ステップS114の間に、外部振動により位置ズレが発生した場合などに起こりえる。
【0091】
そして、ステップS105に戻ってアライメント動作を実行する。その後、ステップS106以降の処理を続行する。
【0092】
一方、ステップS113において、基板5とマスク6aの位置ズレ量が所定の閾値以下であると判定した場合には(ステップS113:YES)、ステップS114に移行し、マスク昇降台16を下降させて、搬送ローラ15に受け渡す。これによりアライメントシーケンスは完了する(END)。
【0093】
本実施形態では、支持工程として、基板キャリア9の周縁部における一対の周縁領域として、基板5の周縁部をなす四辺のうちの一対の対向辺に対応した基板キャリア9の対向周縁部を、該対向周縁部が所定の方向に沿うように、基板キャリア支持部8で支持する。また、マスク6の周縁部における一対の周縁領域として、マスク6の周縁部をなす四辺のうちの一対の対向辺に対応したマスク6(マスクフレーム6a)の対向周縁部を、該対向周縁部が所定の方向に沿うように、マスク支持部(マスク受け台16)で支持する。なお、本実施形態では、所定の方向(第1の方向)をY軸方向とし、第2の方向をX軸方向(第1の支持部としてのキャリア受け面41aから第2の支持部としてのキャリア受け面41bに向かう方向、あるいはそれらによって支持される基板キャリア9の一対の周縁領域の一方から他方へ向かう方向)、第3の方向をZ軸方向としているがこれに限定されるものではない。また、本実施例では矩形の基板5、矩形のマスク6をそれぞれ例示したが、
基板、マスクの形状は矩形に限定されるものでなく、基板やマスクの周縁部をなす複数辺のうち所定の方向に沿って配された一対の対向辺に対応した一対の周縁領域を支持する構成とすることができる。
【0094】
そして、取付工程として、基板キャリア9とマスク6を、基板キャリア9がマスク6から上方に離れた離隔位置から、基板キャリア9がマスク6の上に載せられる取付位置へと移動させる(離隔状態から取付状態へ移行させる)べく、基板キャリア支持部8を下降させる。本実施例では、第3の方向としてのZ軸方向に沿って下降させているが、本発明の所望の載置動作が実現できる範囲においてZ軸方向に対して多少の角度がついた方向であってもよい。また、基板キャリア支持部8は移動させず、マスク支持部の方を移動させてもよいし、両者を移動させてもよい。
【0095】
このとき、基板キャリア支持部8のみによって支持された基板キャリア9と、マスク支持部のみによって支持されたマスク6は、上述したようにdc>dm(式(1))の関係を満たすように、それぞれ支持されている。したがって、基板キャリア9とマスク6は、上記離隔位置から上記取付位置へ移動する際に、基板キャリア9において上記第3の方向に撓みが最も大きい部分と、マスク6において上記第3の方向に撓みが最も大きい部分と、から接触が開始される。
【0096】
上述したように、基板キャリア9は、上記離隔位置から上記取付位置への移動においてマスク6と接触した際に、上記第3の方向と直交する方向において、マスク6に対する滑りやすさよりも基板キャリア支持部8(キャリア受け面41)に対する滑りやすさが大きくなるように、基板キャリア支持部8によって支持されている。すなわち、基板キャリア9は、撓み状態の解消に伴い、上記第2の方向における両端部の位置が第2の方向に変位するような変形を生じるが、この両端部の変位を、マスク6との滑りではなく、基板キャリア支持部8(キャリア受け面41)との滑りによって吸収、解消できるように構成されている。これにより、基板キャリア9がマスク6の上に載置される際の平面方向の位置ズレが効果的に抑制される。
【0097】
上述した滑りやすさの大小の制御は、種々の手法を用いてよい。例えば、基板キャリア9の着座部材31を、マスク6(マスクフレーム6a)と同様に鉄などの金属製の部材で構成するとともに、少なくとも両者の接触部を研磨加工面や研削加工面で構成し、接触部における接触面積を適宜設定する。一方、キヤリア受け面41には、単独支持の際に基板キャリア9が滑り落ちてしまうことが無い程度の摩擦力は担保しつつ、着座部材31とマスク6との間よりは基板キャリア9に対して滑りやすくなるように、種々のコーティング被膜を施してよい。なお、本実施形態で説明した手法以外の手法を適宜用いてもよい。
【0098】
本実施形態によれば、蒸着装置において基板キャリアとマスクをアライメントする際に、基板をマスクに正確に位置合わせすることが可能となり、基板とマスクとの間の隙間を十分に小さくして基板にマスクを装着させることが可能となる。したがって、成膜ムラを低減することが可能となり、成膜精度の向上を図ることが可能となる。
【0099】
[実施形態2]
次に、本発明に係る他の実施形態について説明する。実施形態1では基板とマスクのアライメントと成膜の両方を1つのチャンバ内で行う蒸着装置について説明した。本実施形態では、少なくとも2つのチャンバを用い、マスク取付室としての第1チャンバで基板とマスクのアライメントを行って基板にマスクを装着し、マスクを装着した基板を、成膜室としての第2チャンバに搬送して第2チャンバでマスクを介して基板に成膜を行う。すなわち、本実施形態に係る成膜装置は、基板とマスクのアライメントを行うアライメント室と、基板に成膜を行う成膜室と、を有している。なお、実施形態2の説明において実施形
態1と共通する構成については同じ符号を用いるものとして、実施形態2において実施形態1と共通する内容については再度の説明を省略する。実施形態2において特段説明のない事項は、実施形態1と同様である。
【0100】
次に、本発明を実施した製造システム(成膜システム)について説明する。
図12は、本発明を実施した製造システムの模式的な構成図であり、有機ELパネルをインラインで製造する製造システム300を例示している。90はキャリア基板とマスクをライン上に投入するための投入室である。アライメント室100は本発明のアライメント装置1が搭載されており、基板キャリア9に載った基板5とマスク6を高精度で位置合わせを行い、その後搬送ローラ15に受け渡し次工程に搬送を開始する。成膜室110は搬入されてきた基板キャリア9上の基板5を、蒸着源7上を通過することで基板5のマスク6によって遮られる個所以外の面を成膜する。
【0101】
[実施形態3]
<電子デバイスの製造方法>
上記の基板処理装置を用いて、電子デバイスを製造する方法について説明する。ここでは、電子デバイスの一例として、有機EL表示装置のようなディスプレイ装置などに用いられる有機EL素子の場合を例にして説明する。なお、本発明に係る電子デバイスはこれに限定はされず、薄膜太陽電池や有機CMOSイメージセンサであってもよい。本実施例においては、上記の成膜方法を用いて、基板5上に有機膜を形成する工程を有する。また、基板5上に有機膜を形成させた後に、金属膜または金属酸化物膜を形成する工程を有する。このような工程により得られる有機EL表示装置600の構造について、以下に説明する。
【0102】
図13(a)は有機EL表示装置600の全体図、
図13(b)は一つの画素の断面構造を表している。
図13(a)に示すように、有機EL表示装置600の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本図の有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。また、各発光素子は複数の発光層が積層されて構成されていてもよい。
【0103】
また、画素62を同じ発光を示す複数の発光素子で構成し、それぞれの発光素子に対応するように複数の異なる色変換素子がパターン状に配置されたカラーフィルタを用いて、1つの画素が表示領域61において所望の色の表示を可能としてもよい。例えば、画素62を少なくとも3つの白色発光素子で構成し、それぞれの発光素子に対応するように、赤色、緑色、青色の各色変換素子が配列されたカラーフィルタを用いてもよい。あるいは、画素62を少なくとも3つの青色発光素子で構成し、それぞれの発光素子に対応するように、赤色、緑色、無色の各色変換素子が配列されたカラーフィルタを用いてもよい。後者の場合には、カラーフィルタを構成する材料として量子ドット(Quantum Dot:QD)材料を用いた量子ドットカラーフィルタ(QD-CF)を用いることで、量子ドットカラーフィルタを用いない通常の有機EL表示装置よりも表示色域を広くすることができる。
【0104】
図13(b)は、
図13(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板5上に、第1電極(陽極)64と、正孔輸送層65と、発光層66R,66G,6
6Bのいずれかと、電子輸送層67と、第2電極(陰極)68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R,66G,66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。なお、上述のようにカラーフィルタまたは量子ドットカラーフィルタを用いる場合には、各発光層の光出射側、すなわち、
図13(b)の上部または下部にカラーフィルタまたは量子ドットカラーフィルタが配置されるが、図示は省略する。
【0105】
発光層66R,66G,66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と第2電極68は、複数の発光素子62R,62G,62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層Pが設けられている。
【0106】
次に、電子デバイスとしての有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極64が形成された基板5を準備する。
【0107】
次に、第1電極64が形成された基板5の上にアクリル樹脂やポリイミド等の樹脂層をスピンコートで形成し、樹脂層をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0108】
次に、絶縁層69がパターニングされた基板5を第1の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。ここで、本ステップでの成膜や、以下の各レイヤーの成膜において用いられる成膜装置は、上記各実施形態のいずれかに記載された成膜装置である。
【0109】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板5を第2の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板5の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。本例によれば、マスクと基板とを良好に重ね合わせることができ、高精度な成膜を行うことができる。
【0110】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。発光層66R、66G、66Bのそれぞれは単層であってもよいし、複数の異なる層が積層された層であってもよい。電子輸送層65は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。本実施形態では、電子輸送層67、発光層66R、66G、66Bは真空蒸着により成膜される。
【0111】
続いて、電子輸送層67の上に第2電極68を成膜する。第2電極は真空蒸着によって形成してもよいし、スパッタリングによって形成してもよい。その後、第2電極68が形成された基板を封止装置に移動してプラズマCVDによって保護層Pを成膜して(封止工
程)、有機EL表示装置600が完成する。なお、ここでは保護層PをCVD法によって形成するものとしたが、これに限定はされず、ALD法やインクジェット法によって形成してもよい。
【0112】
絶縁層69がパターニングされた基板5を成膜装置に搬入してから保護層Pの成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【符号の説明】
【0113】
100:アライメント室,1:アライメント装置,8:基板キャリア支持部,9:基板キャリア,60:位置合わせ機構,11:回転並進機構,10:Z昇降スライダ,13:Z昇降ベース,18:Zガイド,70:制御部,5:基板,6:マスク,6a:マスクフレーム,31:着座ブロック