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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】送り機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/24 20060101AFI20220729BHJP
   G02B 7/00 20210101ALI20220729BHJP
【FI】
F16H25/24 G
G02B7/00 H
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021079877
(22)【出願日】2021-05-10
(62)【分割の表示】P 2017165263の分割
【原出願日】2017-08-30
(65)【公開番号】P2021120594
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 耕平
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-307264(JP,A)
【文献】実開平7-7833(JP,U)
【文献】仏国特許発明第2079668(FR,A5)
【文献】米国特許第6311575(US,B1)
【文献】特開2009-92129(JP,A)
【文献】特開2011-69449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/24
G02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺子軸およびナットを含む送りねじと、移動体と、を備え、
前記螺子軸が回転して前記ナットが前記螺子軸上を移動することで前記移動体が前記螺子軸方向に移動する送り機構であって、
前記移動体または前記ナットは、凸部を有し、
前記ナットの移動によって前記移動体が移動している際、前記移動体が前記凸部のみを介して前記ナットに押されることで、前記ナットに対する前記移動体の傾きが許容され、
前記凸部は、前記ナットまたは前記移動体に対して点接触又は線接触
前記凸部は、前記移動体に形成されており、
前記移動体は、前記移動体の一部として固定され、当該移動体の一部を構成する押し板を備え、
前記押し板に前記凸部が形成されており、
前記押し板には、前記螺子軸が配置される螺子軸配置部が形成され、
前記螺子軸配置部は、前記螺子軸に対して前記押し板を前記螺子軸方向に垂直な方向から配置することができるように板面方向に開放されている、
送り機構。
【請求項2】
前記移動体または前記ナットのうち前記凸部を有しない方は、前記凸部に係合する対応凹部を有しない、
請求項1に記載の送り機構。
【請求項3】
前記移動体または前記ナットのうち前記凸部を有しない方における、前記凸部に接触する面は、平面である、
請求項1に記載の送り機構。
【請求項4】
前記凸部は、球面状または錐形状である、
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の送り機構。
【請求項5】
前記凸部は、複数設けられ、
前記複数の凸部は、一つの仮想直線上に配置されている、
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の送り機構。
【請求項6】
前記仮想直線は、前記螺子軸の中心を通る、
請求項5に記載の送り機構。
【請求項7】
前記凸部は、前記移動体または前記ナットに一体形成されている、
請求項1~請求項6の何れか一項に記載の送り機構。
【請求項8】
前記螺子軸の表面から前記凸部の頂点までの距離は、5mm以下である、
請求項1~請求項の何れか一項に記載の送り機構。
【請求項9】
前記凸部が2つ存在し、
前記2つの凸部を結ぶ仮想直線は、前記螺子軸の中心を通る、
請求項1~請求項の何れか一項に記載の送り機構。
【請求項10】
前記2つの凸部は、軸方向視において前記螺子軸の中心に対して点対称に位置している、
請求項に記載の送り機構。
【請求項11】
前記移動体は、スキャンユニットであり、
前記スキャンユニットは、前記送りねじによる移動により副走査方向に移動し、
前記スキャンユニットは、前記スキャンユニット内を主走査方向に移動する光学ヘッドを備え、
前記2つの凸部は、主走査方向に並んで位置している、
請求項または請求項10に記載の送り機構。
【請求項12】
前記ナットと前記移動体とを前記凸部において接触させる方向に弾性力を作用させる弾性体を更に備える、
請求項1~請求項11の何れか一項に記載の送り機構。
【請求項13】
前記移動体は、前記ナットと前記移動体との相対的な回転を防止する回転防止軸を有し、
前記回転防止軸の周りに前記弾性体が配置されている、
請求項12に記載の送り機構。
【請求項14】
前記回転防止軸が2つ存在し、
前記2つの回転防止軸は、前記ナットの中心に対して点対称に設けられている、
請求項13に記載の送り機構。
【請求項15】
前記ナットと前記移動体とを前記凸部において接触させる方向に弾性力を作用させる弾性体を更に備え、
前記凸部が2つ存在し、
前記2つの凸部は、軸方向視において前記螺子軸の中心に対して点対称に位置し、
前記移動体は、前記ナットと前記移動体との相対的な回転を防止する回転防止軸を有し、
前記回転防止軸の周りに前記弾性体が配置され、
前記回転防止軸が2つ存在し、
前記2つの回転防止軸は、前記ナットの中心に対して点対称に設けられており、
前記2つの凸部が並ぶ方向と前記2つの回転防止軸が並ぶ方向とが交差している、
請求項1~請求項14の何れか一項に記載の送り機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送り機構に関する。
【背景技術】
【0002】
螺子軸およびナットを備える送りねじによって移動体を直線移動させる送り機構は、従来から知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-92129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ナットが螺子軸上を移動している際、螺子軸に対してナットが傾くことがある。そのため、特許文献1記載の技術のようにナットに対して移動体が固定されていると、ナットの傾きが移動体にそのまま伝わる。すると、移動体の送り位置の精確度が低下し、送りムラが生じることとなる。
【0005】
本発明は、送りねじのナットの傾きによる送りムラを抑制することができる送り機構を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の送り機構は、螺子軸およびナットを含む送りねじと、移動体と、を備え、螺子軸が回転してナットが螺子軸上を移動することで移動体が螺子軸方向に移動する送り機構であって、移動体またはナットは、凸部を有し、ナットの移動によって移動体が移動している際、移動体が凸部のみを介してナットに押されることで、ナットに対する移動体の傾きが許容される。
【0007】
この態様では、送り機構が送りねじと移動体とを備える。そして、螺子軸が回転してナットが螺子軸上を移動することで、移動体が螺子軸方向に移動する。ここで、移動体またはナットは凸部を有し、ナットの移動により移動体が移動している際、移動体が凸部のみを介してナットに押されることで、ナットに対する移動体の傾きが許容される。このため、ナットが螺旋軸上を移動している際に傾いた場合でも、この傾きから移動体が影響を受けることが抑制される。よって、送りねじのナットの傾きによる送りムラを抑制することができる。
【0008】
第2の態様の送り機構は、第1の態様において、螺子軸の表面から凸部の頂点までの距離は、5mm以下である。
【0009】
この態様では、螺子軸の表面から凸部の頂点までの距離が5mm以下であるため、ナットの傾きが移動体に影響しにくい。
【0010】
第3の態様の送り機構は、第1または第2の態様において、凸部が2つ存在し、2つの凸部を結ぶ仮想直線は、螺子軸の中心を通る。
【0011】
この態様では、凸部が2つ存在する。そして、2つの凸部を結ぶ仮想直線は、螺子軸の中心を通る。このため、特に、2つの凸部を結ぶ仮想直線を軸とするナットの傾きが移動体に影響し難くなる。
【0012】
第4の態様の送り機構は、第3の態様において、2つの凸部は、軸方向視において螺子軸の中心に対して点対称に位置している。
【0013】
この態様では、軸方向視において螺子軸の中心に対して点対称な位置でナットと移動体とが作用反作用を及ぼしあうので、移動体からの反作用によりナットが傾くことが抑制できる。
【0014】
第5の態様の送り機構は、第3または第4の態様において、移動体は、スキャンユニットであり、スキャンユニットは、送りねじによる移動により副走査方向に移動し、スキャンユニットは、スキャンユニット内を主走査方向に移動する光学ヘッドを備え、2つの凸部は、主走査方向に並んで位置している。
【0015】
この態様では、スキャンユニットによる画像読取において、横筋ムラを抑制することができる。
【0016】
第6の態様の送り機構は、第1~第5の何れかの態様において、ナットと移動体とを凸部において接触させる方向に弾性力を作用させる弾性体を更に備える。
【0017】
この態様では、送り機構が弾性体を更に備え、弾性体は、ナットと移動体とを凸部において接触させる方向に弾性力を作用させる。このため、ナットと移動体とが凸部において接触した状態が保たれやすくなり、ナットが移動体に接触していない状態から接触することによる移動体に対する衝撃を抑制することができる。
【0018】
第7の態様の送り機構は、第6の態様において、移動体は、ナットと移動体との相対的な回転を防止する回転防止軸を有し、回転防止軸の周りに弾性体が配置されている。
【0019】
この態様では、移動体は、ナットと移動体との相対的な回転を防止する回転防止軸を有し、回転防止軸の周りに弾性体が配置されている。このため、回転防止軸とは別の位置に弾性体を配置するための部品を設ける態様と比べて、部品点数を減らすことができる。
【0020】
第8の態様の送り機構は、第7の態様において、回転防止軸が2つ存在し、2つの回転防止軸は、ナットの中心に対して点対称に設けられている。
【0021】
この態様では、弾性体が設けられた回転防止軸が2つ存在し、2つの回転防止軸はナットの中心に対して点対称に設けられている。このため、ナットと移動体に対してバランスよく弾性体の弾性力が作用させることができ、ナットと移動体との相対的な姿勢が安定する。
【0022】
第9の態様の送り機構は、第1~第8の何れかの態様において、ナットと移動体とを凸部において接触させる方向に弾性力を作用させる弾性体を更に備え、凸部が2つ存在し、2つの凸部は、軸方向視において螺子軸の中心に対して点対称に位置し、移動体は、ナットと移動体との相対的な回転を防止する回転防止軸を有し、回転防止軸の周りに弾性体が配置され、回転防止軸が2つ存在し、2つの回転防止軸は、ナットの中心に対して点対称に設けられており、2つの凸部が並ぶ方向と2つの回転防止軸が並ぶ方向とが交差している。
【0023】
この態様では、ナットが2つの凸部に接触したまま傾く方向(2つの凸部が並ぶ方向を軸とする傾き方向)の2方向のうち、両方の方向に対して2つの弾性体がそれぞれ弾性力を作用させるようになっている。したがって、移動体に対するナットの角度が安定する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、送りねじのナットの傾きによる送りムラを抑制することができる
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態の副走査機構を示す斜視図である。
図2】実施形態の副走査機構の分解斜視図である。
図3】実施形態の副走査機構の側面図である。
図4】実施形態の副走査機構の平面図である。
図5】実施形態の副走査機構をスキャンユニット本体と共に示す斜視図である。
図6】主走査および副走査による画像読取において、ナットの傾きによる送りムラにより横筋ムラが発生することを説明する説明図である。
図7】押し板を示す斜視図である。
図8】スキャンユニットがY方向一方側へ移動している状態を示す側面図である。
図9図8においてナットが傾いた状態を示す側面図である。
図10】変形例の副走査機構を示す側面図である。
図11】変形例の副走査機構を示す平面図である。
図12】実施形態の画像読取装置の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0027】
本実施形態の画像読取装置110は、オートラジオグラフィ画像検出システム、化学発光画像検出システム、電子顕微鏡による画像検出システム、放射線回折画像検出システム、蛍光画像検出システム等に共通して使用可能なものである。
【0028】
図12に、本実施形態の画像読取装置110の概略構成を示す。図12に示されるように、画像読取装置110は、画像担体21を載置するステージ20と、画像担体21上に励起光Eを照射しかつ画像担体21から発せられた発光光Lを集光するための光学ヘッド15と、選択的に励起光Eを発生させる光源光学系50と、発光光Lを検出する光検出手段であるフォトマルチプライア30と、光源光学系50の光を光学ヘッド15に導光しかつ発光光Lをフォトマルチプライア30に導光するための光学手段60と、を備える。
【0029】
光源光学系50は、640nmの波長のレーザ光Eを発する第1のレーザ励起光源1と、532nmの波長のレーザ光Eを発する第2のレーザ励起光源2と、473nmの波長のレーザ光Eを発する第3のレーザ励起光源3とを備える。第1のレーザ励起光源1は、半導体レーザによって構成される。また、第2のレーザ励起光源2および第3のレーザ励起光源3は、いずれも、半導体レーザおよび第二高調波生成(Second Harmonic Generation) 素子によって構成される。また、光源光学系50は、複数の励起光源1、2、3からのレーザ光Eを平行な光とするためのコリメータレンズ5、10、11、レーザ光Eを光学手段60へ導くためのミラー6、9およびダイクロイックミラー7、8を備える。
【0030】
第1のレーザ励起光源1により発生されたレーザ光Eは、コリメータレンズ5によって、平行な光とされた後、ミラー6によって反射される。第1のレーザ励起光源1によって発生されたレーザ光Eの光路には、640nmのレーザ光Eを透過し、532nmの波長の光を反射する第1のダイクロイックミラー7および532nm以上の波長の光を透過し、473nmの波長の光を反射する第2のダイクロイックミラー8が設けられている。第1のレーザ励起光源1により発生され、ミラー6によって反射されたレーザ光Eは、第1のダイクロイックミラー7および第2のダイクロイックミラー8を透過し、ミラー9に入射する。
【0031】
他方、第2のレーザ励起光源2より発生されたレーザ光Eは、コリメータレンズ10によって、平行な光とされた後、第1のダイクロイックミラー7によって反射されて、その向きが90度変えられ、第2のダイクロイックミラー8を透過して、ミラー9に入射する。
【0032】
さらに、第3のレーザ励起光源3から発生されたレーザ光Eは、コリメータレンズ11によって、平行な光とされた後、第2のダイクロイックミラー8によって反射されて、その向きが90度変えられ、ミラー9に入射する。
【0033】
ミラー9に入射したレーザ光Eは、ミラー9によって反射され、後述の光学手段60のミラー12に入射する。
【0034】
光学ヘッド15は、図示しない凹面ミラーと非球面レンズとを備える。光学ヘッド15に入射したレーザ光Eは、凹面ミラーによって画像担体21に向けて反射され、非球面レンズによってステージ20上にセットされた画像担体21に集光される。このレーザ光Eの照射により画像担体21から発光された発光光Lは、非球面レンズによって集光され、凹面ミラーに入射されて、凹面ミラーによってさらに集光される。さらに、発光光Lは、レーザ光Eの光路と同じ側に反射され、略平行な光とされて、後述の光学手段60の凹面ミラー18に入射される。
【0035】
光学ヘッド15は、基板40上を主走査方向(X方向)に移動可能である。そして、基板40は、後述する副走査機構S1により副走査方向(Y方向)に移動可能である。したがって、光学ヘッド15が基板40上を主走査方向Xに移動すると共に基板40が副走査方向Yに移動することによって、光学ヘッド15は、XY方向の2次元に走査し、画像担体21の全面を読み取ることができる。なお、画像担体21は、例えば、イメージングプレートや蛍光染色された生物由来資料などである。
【0036】
光学手段60は、ミラー12、励起光Eと発光光Lを分岐させるための、中央部に穴13を有する凹面ミラーからなる穴開きミラー14、凹面ミラー18、およびフォトマルチプライア30に選択的に光を入射させるためのフィルタユニット28とを備えてなる。
【0037】
光源光学系50のミラー9で反射されて、ミラー12に入射されたレーザ光Eは、該ミラー12によって反射され、穴開きミラー14の穴13を通過して、凹面ミラー18に入射し、該凹面ミラー18によって反射されて、光学ヘッド15に入射する。
【0038】
また、画像担体21から発せられ、光学ヘッド15の凹面ミラーによって反射され凹面ミラー18に入射した発光光Lは、凹面ミラー18によって反射されて、穴開きミラー14に入射する。
【0039】
穴開きミラー14に入射した発光光Lは、該穴開きミラー14によって、下方に反射されて、フィルタユニット28に入射し、所定の波長の光がカットされて、フォトマルチプライア30に入射し、光電的に検出される。
【0040】
(送り機構としての副走査機構S1)
次に、基板40(具体的には、基板40を含んで構成されるスキャンユニット70、図5参照)を副走査方向に移動させる「送り機構」としての副走査機構S1について説明する。
【0041】
なお、以下の説明では、各図に示す矢印XをX方向一方側、矢印YをY方向一方側、矢印ZをZ方向一方側という。また、矢印Xと反対方向をX方向他方側、矢印Yと反対方向をY方向他方側、矢印Zと反対方向をZ方向他方側という。
【0042】
図5に示されるように、副走査機構S1は、送りねじ80を備える。送りねじ80は、螺子軸81とナット82とを備える。螺子軸81の長手方向一方側にはモータ83が設けられており、モータ83によって螺子軸81が回転する。本実施形態では、送りねじ80は、ボールねじであり、螺子軸81とナット82との間に図示しない複数のボールを更に備える。
【0043】
図2に示されるように、ナット82は、円筒部84と板部85とを有する。円筒部84は、螺子軸81と同軸的な円筒形状とされている。板部85は、円筒部84に対して軸方向一方側(Y方向一方側)に形成されており、円筒部84を径方向に拡大した形状とされている。板部85は、螺子軸方向(Y方向)を板厚方向とする板状に形成されており、具体的には、X方向を長手方向とする略長方形の板状とされている。
【0044】
板部85には、後述する回転防止軸74が通る貫通孔85Aが形成されている。貫通孔85Aは、板部85を貫通しており、2つ形成されている(なお、図1および図2では、2つのうち1つの貫通孔85Aがナット82の円筒部84により隠れている。)。2つの貫通孔85Aを結ぶ仮想直線は、螺子軸81の中心を通り、また、X方向に対して斜めに傾斜している。
【0045】
また、副走査機構S1は、送りねじ80によって移動する「移動体」としてのスキャンユニット70を備える。図5に示すように、スキャンユニット70は、スキャンユニット本体71と、ナット側部材73と、スキャンユニット本体71とナット側部材73とを連結する連結部材72と、を含んで構成されている。
【0046】
スキャンユニット本体71は、基板40、光学ヘッド15および凹面ミラー18(図12参照)を含んで構成され、スキャンユニット70の主要部を構成する。図5に示すように、スキャンユニット本体71は、送りねじ80の上方(Z方向一方側)に位置する。スキャンユニット本体71は、そのX方向両側の部分において図示しない一対のレールにより副走査方向(Y方向)に直線移動可能に支持されている。
【0047】
図4に示されるように、ナット側部材73は、平面視で略C字状に形成されている。すなわち、ナット側部材73は、板厚方向をY方向に向けた本体板部73Hと、本体板部73HのX方向両端からY方向一方側へ延びる一対の側板部73Sと、を備えている。
【0048】
ナット側部材73には、送りねじ80の螺子軸81が通される貫通孔73Aが形成されている(図4参照)。貫通孔85Aは、ナット側部材73の本体板部73Hの幅方向(X方向)中央部を貫通している。
【0049】
また、ナット側部材73には、回転防止軸74を固定するための固定孔73Bが形成されている(図4参照)。固定孔73Bに回転防止軸74の被固定部74Aが螺合することでナット側部材73に回転防止軸74が固定される。
【0050】
回転防止軸74は、軸方向を螺子軸81方向と平行な方向に向け、ナット側部材73からY方向他方側へ向けて突出する。回転防止軸74は、Y方向一方側から他方側へ向けて(先端側へ向けて)、被固定部74A、台座部74Bおよび軸部74Cをこの順に有する。このうち、台座部74Bおよび軸部74Cがナット側部材73からY方向他方側へ突出する。
【0051】
台座部74Bは、被固定部74Aよりも径が拡大された円柱形状に形成されている。台座部74BのY方向一方側の面は、ナット側部材73の本体板部73HのY方向他方側の面に接触する。
【0052】
軸部74Cは、台座部74Bよりも径が縮小された円柱形状であり、台座部74Bよりも軸方向の寸法が長い。軸部74Cの先端部(Y方向他方側の端部)には、オネジが切られた螺子部74CAが形成されている。
【0053】
さらに、スキャンユニット70は、押し板75を備えている。図7に示すように、押し板75は、一例として金属製の平板状とされている。
【0054】
押し板75には、送りねじ80の螺子軸81が配置される螺子軸配置部75Aが形成されている。螺子軸配置部75Aは、押し板75の下辺における幅方向(X方向)中央部を上方へ向けて抉った形状とされ、下方へ向けて開放されている。
【0055】
また、押し板75には、回転防止軸74の軸部74Cが通される軸挿通孔75Bが形成されている。軸挿通孔75Bは、押し板75を貫通しており、回転防止軸74の数に対応して2つ形成されている。2つの軸挿通孔75Bを結ぶ仮想直線は、螺子軸81の中心を通り、また、X方向に対して斜めに傾斜している。また、2つの軸挿通孔75Bは、軸方向視において螺子軸81の中心に対して点対称の位置に形成されている。
【0056】
また、押し板75には、凸部75Cが形成されている。凸部75Cは、ナット82に対して点接触する点状の凸部であり、板厚方向一方側(Y方向他方側)に突出している。凸部75Cは、2つ形成されている。凸部75Cの形状は、略球面形状とされている。2つの凸部75Cを結ぶ仮想直線は、螺子軸81の中心を通り、また、X方向に対して平行である。さらに、2つの凸部75Cは、軸方向視において螺子軸81の中心に対して点対称の位置に形成されている。
【0057】
図2に示されるように、押し板75の軸挿通孔75Bに回転防止軸74の軸部74Cが通され、台座部74BのY方向他方側の面に押し板75のY方向一方側の面が接触する。この状態で、押し板75が回転防止軸74に固定される。これにより、押し板75は、ナット側部材73および回転防止軸74と一体化され、スキャンユニット70の一部を構成する。ナット側部材73の本体板部73Hと押し板75との間には、回転防止軸74の台座部74Bの軸方向の寸法だけ隙間が形成される。また、押し板75の凸部75Cは、送りねじ80の螺子軸81の近傍に配置される。螺子軸81の表面から凸部75Cの頂点までの距離D(Y方向に垂直な距離、図4参照)は、5mm以下が望ましい。
【0058】
軸部74Cのうち押し板75よりも先端側は、ナット82の板部85の貫通孔85Aに通される。軸部74Cの径は、ナット82の貫通孔85Aよりも小さい。このため、ナット82の貫通孔85Aに回転防止軸74の軸部74Cが通された状態で、ナット82が回転防止軸74に対して傾くことが可能である。
【0059】
軸部74Cのうちナット82の板部85よりも先端側には、「弾性体」としてのバネ76が取付けられる。さらに、軸部74Cの先端部の螺子部74CAには、第二ナット77が螺合される。これにより、バネ76は軸方向に弾性圧縮された状態で、ナット82の板部85と第二ナット77との間に配置される。このため、バネ76の弾性力は、スキャンユニット70(押し板75の凸部75C)をナット82の板部85に押し付けるように作用する。換言すると、バネ76の弾性力は、凸部75Cとナット82とを接触させる方向に作用する。
【0060】
以上のように構成された副走査機構S1では、図8に示すように、螺子軸81が回転させることで、回転防止軸74によってスキャンユニット70に対する回転が防止されたナット82が螺子軸81上を直線移動し、ナット82の板部85が押し板75の凸部75Cを押して、スキャンユニット70がY方向一方側へ移動する。
【0061】
ここで、ナット82が螺子軸81上を直線移動している際に、図9に示すように、ナット82が螺子軸81に対して傾くことがある(なお、図9に示す傾きはX方向の軸周りの傾きである。)。この場合でも、ナット82がスキャンユニット70の一部である押し板75の凸部75Cとのみ接触しているので、ナット82の傾きがスキャンユニット70に影響を与えない。換言すると、ナット82が多少傾いたとしてもスキャンユニット70は傾かない。
【0062】
つまり、2つの凸部75Cが、ナット中心を通りX方向に平行な仮想直線上に配置されているので、図9に示すX方向の軸周りの傾きがナット82に発生したとしても、ナット82における凸部75Cに接触している部分のY方向の位置にムラを抑制できる。
【0063】
このように、スキャンユニット70は、凸部75Cのみを介してナット82に押されることで移動するように構成されている。具体的には、凸部75C以外の部分では、スキャンユニット70の押し板75とナット82の板部85との間には、Y方向の隙間が形成されている。このため、ナット82が多少傾いたとしても、凸部75C以外の部分を介して、スキャンユニット70がナット82に押されることがない。よって、ナット82の傾きがスキャンユニット70に影響を与えないようになっている。
【0064】
一方、スキャンユニット70をY方向他方側へ移動させる場合、螺子軸81を反対回転させることで、ナット82がY方向他方側へ移動し、バネ76を介して回転防止軸74に螺合された第二ナット77にY方向他方側への力が作用する。これにより、スキャンユニット70がY方向他方側へ移動する。
【0065】
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0066】
本実施形態では、副走査機構S1が、螺子軸81およびナット82を含む送りねじ80と、スキャンユニット70と、を備える。そして、螺子軸81が回転してナット82が螺子軸81上を移動することで、スキャンユニット70が螺子軸方向に移動する。
ところで、螺子軸81が回転してナット82が螺子軸81上を移動する際、ナット82が螺子軸81に対して傾くことがある。このため、スキャンユニット70がナット82に対して固定される態様の場合、ナットの傾きがそのまま移動体に伝わり、スキャンユニット70の送り位置の精度が落ちる虞がある。
そこで、本実施形態では、ナット82の移動によりスキャンユニット70が移動している際、ナット82に対するスキャンユニット70の傾きが許容される。このため、図9に示すように、ナット82が螺子軸81上を移動している際に傾いた場合でも、この傾きからスキャンユニット70が影響を受け難い。その結果、ナット82の傾きによる送りムラを抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、スキャンユニット70が凸部75Cを有する。そして、スキャンユニット70は、凸部75Cのみを介してナット82に押されることで螺子軸81方向に移動する。これにより、ナット82の移動によりスキャンユニット70が移動している際、ナット82に対するスキャンユニット70の傾きが許容される構造(傾き吸収構造)を実現している。このため、簡単な構造により、ナット82の傾きによる送りムラを抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態では、凸部75Cが2つ存在し、2つの凸部75Cを結ぶ仮想直線は螺子軸81の中心を通る。このため、特に、2つの凸部75Cを結ぶ仮想直線を軸とするナット82の傾きがスキャンユニット70に影響し難くなる。さらに、2つの凸部75Cは、軸方向視において螺子軸81の中心に対して点対称に位置しているため、軸方向視において螺子軸81の中心に対して点対称な位置でナット82とスキャンユニット70とが作用反作用を及ぼしあう。よって、スキャンユニット70からの反作用によりナット82が傾くことが抑制できる。
【0069】
また、本実施形態では、「移動体」はスキャンユニット70であり、スキャンユニット70は、送りねじ80による移動により副走査方向に移動し、スキャンユニット70は、スキャンユニット70内を主走査方向に移動する光学ヘッド15を備え、2つの凸部75Cは、主走査方向に並んで位置している。このため、横筋ムラを抑制することができる。
【0070】
ここで、横筋ムラについて図6を用いて具体的に説明する。
例えば画像担体21がイメージングプレートの場合、イメージングプレートに蓄積されたエネルギーは、特定のレーザ光により二次励起されて輝尽発光として取り出され、それを読み取り信号として画像化する。そしてその信号が得られた個所の蓄積エネルギーは大幅に減少している。つまり読み取りと消去が同時に行われるのである。ここで、副走査機構S1の副走査送り螺子のナットに不特定な傾きがあって、スキャンユニット70の副走査方向のスキャン位置に図6(A)に示すようなぶれが発生すると、図6(B)に示すように、消去および読み取りラインが近い密部と消去および読取ラインが遠い疎部が生まれる。密部においては消去ラインを部分的に再読み取りするため、読み取り信号が低下する一方、疎部においては読み取りレーザ光のスポットはひとつ前の走査ライン(消去済みのライン)との重なりが少ないから読み取り信号が増加する。その結果、副走査方向の位置によってムラが発生する。これが横筋ムラの発生メカニズムである。
【0071】
また、本実施形態では、ナット82に対してスキャンユニット70の光学ヘッド15が上方側に位置しているため、ナット82のX方向の軸周りの傾きがスキャンユニット70に伝わることで、Y方向(副走査方向)の送りムラが大きくなってしまう。そこで、本実施形態では、2つの凸部75CがX方向(主走査方向)に並んでいる。このため、X方向の軸周りのナット82の傾きがスキャンユニット70に影響を与え難くなっており、その結果、Y方向(副走査方向)の送りムラを効果的に抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態では、副走査機構S1が、ナット82とスキャンユニット70とを凸部75Cにおいて接触させる方向に弾性力を作用させるバネ76を更に備える。このため、ナット82とスキャンユニット70とが凸部75Cにおいて接触した状態が保たれやすくなり、ナット82がスキャンユニット70に接触していない状態から接触することによるスキャンユニット70に対する衝撃を抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態では、スキャンユニット70は、ナット82とスキャンユニット70との相対的な回転を防止する回転防止軸74を有し、回転防止軸74の周りにバネ76が配置されている。このため、回転防止軸74とは別の位置にバネ76を配置するための部品を設ける態様と比べて、部品点数を減らすことができる。
【0074】
また、本実施形態では、バネ76が設けられた回転防止軸74は2つ存在し、2つの回転防止軸74はナット82の中心に対して点対称に設けられている。このため、ナット82とスキャンユニット70に対してバランスよくバネ76の弾性力が作用させることができ、ナット82とスキャンユニット70との相対的な姿勢が安定する。
【0075】
また、本実施形態では、2つの凸部75Cが並ぶ方向(X方向と平行な方向)と、2つのバネ76が並ぶ方向(X方向に対して傾いた方向)とが交差している。
このため、ナット82が2つの凸部75Cに接触したまま傾く方向の2方向(X軸周りのプラス方向の傾きとマイナス方向の傾き)のうち、両方の方向に対して2つのバネ76がそれぞれ弾性力を作用させるようになっている。したがって、スキャンユニット70に対するナット82の角度が安定する。
【0076】
〔変形例〕
次に、図10および図11を用いて、変形例に係る副走査機構S2について説明する。なお、上記実施形態と同等の部位には同じ符号を付して詳細な説明(共通する作用も含む)は適宜省略する。
【0077】
上記実施形態では、スキャンユニット70をY方向一方側に移動させる際に、スキャンユニット70が凸部75Cを介してナット82に押される態様を説明した。これに対し、変形例では、Y方向一方側への移動だけでなく、Y方向他方側へのスキャンユニット70の移動に際しても、スキャンユニット70が凸部(反対側凸部175C)のみを介してナット(反対側ナット182)に押されるように構成されている。
【0078】
図10および図11に示すように、スキャンユニット70をY方向一方側へ移動させる際には、ナット82が凸部75Cを介してスキャンユニット70を押す。このとき、反対側ナット182は反対側凸部175Cに接触しないように、ナット82と反対側ナット182との螺子軸81上のY方向の距離が設定されている。なお、図10および図11に示すように、変形例の副走査機構S2は、上記実施形態のバネ76と第二ナット77とを備えない。
【0079】
一方、図示は省略するが、スキャンユニット70をY方向他方側へ移動させる際には、反対側ナット182が反対側凸部175Cを介してスキャンユニット70をY方向他方側へ押す。このとき、ナット82は凸部75Cと隙間を開け、接触しない。
【0080】
変形例の副走査機構S2では、スキャンユニット70をY方向一方側へ移動させるときだけでなく、Y方向他方側へ移動させるときの送りムラをも抑制することができる。したがって、スキャンユニット70をY方向一方側へ移動させるときに画像読取を行うだけでなく、Y方向他方側へ移動させるときにも画像読取を行う画像読取装置に好適に用いることができる。
【0081】
〔補足説明〕
以上、実施形態に係る送り機構S1について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る送り機構は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。
【0082】
また、上記実施形態では、スキャンユニット70(移動体)の一部を構成する押し板75に凸部75Cが形成されていることで、移動体が凸部75Cを有する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、押し板75が設けられず、凸部75Cがナット側部材73の本体板部73Hに形成されていてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、凸部75Cが2つ存在する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。凸部75Cが1つのみ存在する態様であってもよい。なぜならば、例えば上記実施形態における2つの凸部75Cの片方を無くしたとしても、ナット82の移動によりスキャンユニット70が移動している際のナット82に対するスキャンユニット70の傾きが一定程度許容されるからである。
【0084】
また、上記実施形態では、凸部75Cが点状である例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、凸部は、ナットに対して線接触する線状の凸部であってもよい。この場合、螺子軸中心(ナット中心)を通る仮想直線上に延びる線状の凸部であることが好ましい。
【0085】
また、上記実施形態では、凸部75Cが球面形状である例を説明したが、本発明はこれに限定されない。凸部は、例えば、円錐形状であってもよいし、角錐形状であってもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、移動体が凸部を有する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ナット82の板部85に凸部75Cが形成されていることで、ナット82が凸部を有する態様に変更してもよい。この場合、押し板75の凸部75Cを省略し、ナット82の凸部が押し板75の平面に接触するように構成すればよい。また、押し板75自体を省略し、ナット82の凸部がナット側部材73の本体板部に接触するように構成してもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、送りねじ80がボールねじである例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、送りねじは、すべりねじでもよいし、遊星ローラねじでもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、送り機構が、画像読取装置110において光学ヘッド15を副走査させる副走査機構S1に適用されている例を説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0089】
また、上記実施形態では、連結部材72がスキャンユニット本体71のX方向の他方側の端部に連結され、送りねじ80からの荷重がスキャンユニット70のX方向他方側の端部に伝達する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、連結部材72をスキャンユニット本体71の幅方向(X方向)の中央部分に連結することで、送りねじ80からの荷重をスキャンユニット70の幅方向(X方向)の中央部分に伝達するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
70 スキャンユニット(移動体)
74 回転防止軸
75C 凸部
76 バネ(弾性体)
80 送りねじ
81 螺子軸
82 ナット
図1
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図5
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図11
図12