(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】感光性転写フィルム、帯電防止パターンの製造方法、感光性転写フィルムの製造方法、積層体、タッチパネル、タッチパネルの製造方法、及びタッチパネル付き表示装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20220729BHJP
G03F 7/033 20060101ALI20220729BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20220729BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220729BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20220729BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20220729BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220729BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
G03F7/11 501
G03F7/033
G03F7/038 501
G03F7/004 512
G06F3/041 660
G06F3/044 127
B32B27/30 A
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2021509355
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012526
(87)【国際公開番号】W WO2020196345
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2019064595
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019091114
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019175547
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】霜山 達也
(72)【発明者】
【氏名】植木 啓吾
【審査官】倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-201354(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061506(WO,A1)
【文献】特開2003-107674(JP,A)
【文献】特開2006-048024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
G03F 7/033
G03F 7/038
G03F 7/004
G06F 3/041
G06F 3/044
B32B 27/30
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが10μm以下の感光性層と、
帯電防止層と、
を有し、
前記感光性層が、アルカリ可溶性アクリル樹脂と、エチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有
し、
前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×10
6
Ω/□以上1.0×10
12
Ω/□以下である、
感光性転写フィルム。
【請求項2】
透明フィルム1と、前記感光性層と、前記帯電防止層と、透明フィルム2と、をこの順で有する請求項1に記載の感光性転写フィルム。
【請求項3】
前記帯電防止層の表面抵抗値が、
1.0×10
7
Ω/□以上1.0×10
12Ω/□以下である請求項1又は請求項2に記載の感光性転写フィルム。
【請求項4】
前記アルカリ可溶性アクリル樹脂の酸価が、60mgKOH/g以上である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の感光性転写フィルム。
【請求項5】
前記帯電防止層の厚さが、0.4μm以下である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の感光性転写フィルム。
【請求項6】
前記帯電防止層が、帯電防止剤として、イオン性液体、イオン伝導ポリマー、イオン伝導フィラー、及び電子伝導ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の感光性転写フィルム。
【請求項7】
前記感光性層の前記帯電防止層とは反対側の表面から、前記感光性層及び前記帯電防止層の合計厚さの40%までの領域において、帯電防止剤が検出されない請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の感光性転写フィルム。
【請求項8】
基材上に、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の感光性転写フィルムにおける前記感光性層及び前記帯電防止層をこの順で積層する工程と、
前記感光性層をパターン露光する工程と、
前記感光性層を現像する工程と、
をこの順番に含む帯電防止パターンの製造方法。
【請求項9】
前記透明フィルム2上に、帯電防止層用組成物、及び感光性層用組成物をこの順で塗布する工程を含む、請求項2に記載の感光性転写フィルムの製造方法。
【請求項10】
基材と、
透明電極層と、
パターン形状を有する、感光性組成物の硬化物層と、
前記硬化物層の前記パターン形状と同一のパターン形状を有する帯電防止層と、
をこの順で有
し、
前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×10
6
Ω/□以上1.0×10
12
Ω/□以下である、
積層体。
【請求項11】
前記帯電防止層の表面抵抗値が、
1.0×10
7
Ω/□以上1.0×10
12Ω/□以下である請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
前記帯電防止層の厚さが、0.4μm以下である請求項10又は請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
前記帯電防止層が、帯電防止剤として、イオン性液体、イオン伝導ポリマー、イオン伝導フィラー、及び電子伝導ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する請求項10~請求項12のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項14】
前記硬化物層の厚さが、10μm以下である請求項10~請求項13のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項15】
前記硬化物層の前記帯電防止層とは反対側の表面から、前記硬化物層及び前記帯電防止層の合計厚さの40%までの領域において、帯電防止剤が検出されない請求項10~請求項14のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項16】
前記透明電極層が、銀ナノワイヤーを含有する層である請求項10~請求項15のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項17】
請求項10~請求項16のいずれか1項に記載の積層体を備えるタッチパネル。
【請求項18】
基材を準備する工程と、
前記基材上に銀導電性材料を用いてタッチパネル用透明電極を形成する工程と、
前記タッチパネル用透明電極上に金属層を形成する工程と、
前記金属層を、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアゾール化合物、及びチアジアゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のアゾール化合物を含有する処理液を用いて処理する工程と、
前記金属層から引き回し配線を形成する工程と、
前記基材の前記引き回し配線及び前記タッチパネル用透明電極が配置された面側に、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の感光性転写フィルムにおける前記感光性層及び前記帯電防止層をこの順で積層する工程と、
前記感光性層と前記帯電防止層とをパターン露光する工程と、
前記感光性層と前記帯電防止層とを現像してパターンを形成する工程と、
をこの順に含むタッチパネルの製造方法。
【請求項19】
基材を準備する工程と、
前記基材上に金属層を形成する工程と、
前記金属層を、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアゾール化合物、及びチアジアゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のアゾール化合物を含有する処理液を用いて処理する工程と、
前記金属層から引き回し配線を形成する工程と、
前記引き回し配線上に銀導電性材料を用いてタッチパネル用透明電極を形成する工程と、
前記基材の前記引き回し配線及び前記タッチパネル用透明電極が配置された面側に、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の感光性転写フィルムにおける前記感光性層及び前記帯電防止層をこの順で積層する工程と、
前記感光性層と前記帯電防止層とをパターン露光する工程と、
前記感光性層と前記帯電防止層とを現像してパターンを形成する工程と、
をこの順に含むタッチパネルの製造方法。
【請求項20】
前記イミダゾール化合物、前記トリアゾール化合物、前記テトラゾール化合物、前記チアゾール化合物、及び前記チアジアゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の前記アゾール化合物の共役酸のpKaが、4.00以下である請求項18又は請求項19に記載のタッチパネルの製造方法。
【請求項21】
請求項17に記載のタッチパネルと、表示装置と、を備えるタッチパネル付き表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性転写フィルム、帯電防止パターンの製造方法、感光性転写フィルムの製造方法、積層体、タッチパネル、タッチパネルの製造方法、及びタッチパネル付き表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィにおいては、種々の帯電防止技術が検討されている。
【0003】
特開2016-118727号公報には、ポリエステルフィルムの片面に、長鎖アルキル基含有化合物及び帯電防止剤と、アクリル樹脂又はポリビニルアルコールとを含有する塗布液から形成された塗布層を有し、上記塗布層表面の最大突起高さ(Rt)が0.1~1.0μmであることを特徴とするドライフィルムレジスト用保護フィルム、及びベースフィルム上に形成された感光性樹脂層表面に上記保護フィルムが積層された構成を有することを特徴とする感光性樹脂積層体が開示されている。
【0004】
特開2016-80964号公報には、ネガ型の化学増幅型レジストからなるレジスト層を片面上に有する基板の上記レジスト層の表面に、導電性組成物を塗布して帯電防止膜を形成する積層工程等を有し、ネガ型レジスト減膜率が0%以上12%以下である、レジストパターンの形成方法が開示されている。
【0005】
特開2005-321716号公報には、帯電防止性又は導電性を有する感光性樹脂層(1)と絶縁性を有する感光性樹脂層(2)を積層してなるドライフィルムが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ドライフィルム(感光性転写フィルムともいう。)を用いて形成されるレジストパターンにおいては、現像工程におけるマスクとしての役割に加えて、例えば電極保護膜として利用されることがある。このため、上記レジストパターンにおける帯電を防止することが求められている。上記レジストパターンのような所定の形状を有する部材の帯電を防止する場合、帯電防止を必要としない領域に帯電防止層が形成されると、例えば、帯電防止層を通して電気が流れることによって所望の電気特性が得られないことがある。また、ドライフィルムを用いて形成されるレジストパターンにおいては、透明性及び耐屈曲性も求められている。
【0007】
しかしながら、例えば、特開2016-118727号公報に記載された感光性樹脂積層体においては、保護フィルムに帯電防止剤が含まれているため、帯電防止を必要とする領域に対して選択的に帯電防止層を形成することはできない。また、特開2016-80964号公報、及び特開2005-321716号公報に記載されるような従来技術においても、帯電防止を必要とする所定の領域に帯電防止層を形成し、さらに、透明性及び耐屈曲性に優れる硬化膜を形成するという点で改善の余地がある。
【0008】
本開示の一態様は、帯電防止層をパターニングすることが可能であり、かつ、透明性及び耐屈曲性に優れる硬化膜を形成できる感光性転写フィルムを提供することを目的とする。
本開示の他の一態様は、帯電防止層のパターニング性に優れ、かつ、透明性及び耐屈曲性に優れる帯電防止パターンの製造方法を提供することを目的とする。
本開示の他の一態様は、帯電防止層をパターニングすることが可能であり、かつ、透明性及び耐屈曲性に優れる硬化膜を形成できる感光性転写フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本開示の他の一態様は、パターン状の電極保護膜の帯電を防止することが可能である積層体を提供することを目的とする。
本開示の他の一態様は、パターン状の電極保護膜の帯電を防止することが可能である積層体を有するタッチパネルを提供することを目的とする。
本開示の他の一態様は、パターン状の電極保護膜の帯電を防止し、かつ、引き回し配線の変色を抑制することが可能であるタッチパネルの製造方法を提供することを目的とする。
本開示の他の一態様は、パターン状の電極保護膜の帯電を防止することが可能である積層体を有するタッチパネル付き表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 厚さが10μm以下の感光性層と、帯電防止層と、を有し、上記感光性層が、アルカリ可溶性アクリル樹脂と、エチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する感光性転写フィルム。
<2> 透明フィルム1と、上記感光性層と、上記帯電防止層と、透明フィルム2と、をこの順で有する<1>に記載の感光性転写フィルム。
<3> 上記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×1012Ω/□以下である<1>又は<2>に記載の感光性転写フィルム。
<4> 上記アルカリ可溶性アクリル樹脂の酸価が、60mgKOH/g以上である<1>~<3>のいずれか1つに記載の感光性転写フィルム。
<5> 上記帯電防止層の厚さが、0.4μm以下である<1>~<4>のいずれか1つに記載の感光性転写フィルム。
<6> 上記帯電防止層が、帯電防止剤として、イオン性液体、イオン伝導ポリマー、イオン伝導フィラー、及び電子伝導ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する<1>~<5>のいずれか1つに記載の感光性転写フィルム。
<7> 上記感光性層の上記帯電防止層とは反対側の表面から、上記感光性層及び上記帯電防止層の合計厚さの40%までの領域において、帯電防止剤が検出されない<1>~<6>のいずれか1つに記載の感光性転写フィルム。
<8> 基材上に、<1>~<7>のいずれか1つに記載の感光性転写フィルムにおける上記感光性層及び上記帯電防止層をこの順で積層する工程と、上記感光性層をパターン露光する工程と、上記感光性層を現像する工程と、をこの順番に含む帯電防止パターンの製造方法。
<9> 上記透明フィルム2上に、帯電防止層用組成物、及び感光性層用組成物をこの順で塗布する工程を含む、<2>に記載の感光性転写フィルムの製造方法。
<10> 基材と、透明電極層と、パターン形状を有する、感光性組成物の硬化物層と、上記硬化物層の上記パターン形状と同一のパターン形状を有する帯電防止層と、をこの順で有する積層体。
<11> 上記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×1012Ω/□以下である<10>に記載の積層体。
<12> 上記帯電防止層の厚さが、0.4μm以下である<10>又は<11>に記載の積層体。
<13> 上記帯電防止層が、帯電防止剤として、イオン性液体、イオン伝導ポリマー、イオン伝導フィラー、及び電子伝導ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する<10>~<12>のいずれか1つに記載の積層体。
<14> 上記硬化物層の厚さが、10μm以下である<10>~<13>のいずれか1つに記載の積層体。
<15> 上記硬化物層の上記帯電防止層とは反対側の表面から、上記硬化物層及び上記帯電防止層の合計厚さの40%までの領域において、帯電防止剤が検出されない<10>~<14>のいずれか1つに記載の積層体。
<16> 上記透明電極層が、銀ナノワイヤーを含有する層である<10>~<15>のいずれか1つに記載の積層体。
<17> <10>~<16>のいずれか1つに記載の積層体を備えるタッチパネル。
<18> 基材を準備する工程と、上記基材上に銀導電性材料を用いてタッチパネル用透明電極を形成する工程と、上記タッチパネル用透明電極上に金属層を形成する工程と、上記金属層を、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアゾール化合物、及びチアジアゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のアゾール化合物を含有する処理液を用いて処理する工程と、上記金属層から引き回し配線を形成する工程と、上記基材の上記引き回し配線及び上記タッチパネル用透明電極が配置された面側に、<1>~<7>のいずれか1つに記載の感光性転写フィルムにおける上記感光性層及び上記帯電防止層をこの順で積層する工程と、上記感光性層と上記帯電防止層とをパターン露光する工程と、上記感光性層と上記帯電防止層とを現像してパターンを形成する工程と、をこの順に含むタッチパネルの製造方法。
<19> 基材を準備する工程と、上記基材上に金属層を形成する工程と、上記金属層を、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアゾール化合物、及びチアジアゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のアゾール化合物を含有する処理液を用いて処理する工程と、上記金属層から引き回し配線を形成する工程と、上記引き回し配線上に銀導電性材料を用いてタッチパネル用透明電極を形成する工程と、上記基材の上記引き回し配線及び上記タッチパネル用透明電極が配置された面側に、<1>~<7>のいずれか1つに記載の感光性転写フィルムにおける上記感光性層及び上記帯電防止層をこの順で積層する工程と、上記感光性層と上記帯電防止層とをパターン露光する工程と、上記感光性層と上記帯電防止層とを現像してパターンを形成する工程と、をこの順に含むタッチパネルの製造方法。
<20> 上記イミダゾール化合物、上記トリアゾール化合物、上記テトラゾール化合物、上記チアゾール化合物、及び上記チアジアゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の上記アゾール化合物の共役酸のpKaが、4.00以下である<18>又は<19>に記載のタッチパネルの製造方法。
<21> <17>に記載のタッチパネルと、表示装置と、を備えるタッチパネル付き表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、帯電防止層をパターニングすることが可能であり、かつ、透明性及び耐屈曲性に優れる硬化膜を形成できる感光性転写フィルムが提供される。
本開示の他の一態様によれば、帯電防止層のパターニング性に優れ、かつ、透明性及び耐屈曲性に優れる帯電防止パターンの製造方法が提供される。
本開示の他の一態様によれば、帯電防止層をパターニングすることが可能であり、かつ、透明性及び耐屈曲性に優れる硬化膜を形成できる感光性転写フィルムの製造方法が提供される。
本開示の他の一態様によれば、パターン状の電極保護膜の帯電を防止することが可能である積層体が提供される。
本開示の他の一態様によれば、パターン状の電極保護膜の帯電を防止することが可能である積層体を有するタッチパネルが提供される。
本開示の他の一態様によれば、パターン状の電極保護膜の帯電を防止し、かつ、かつ、引き回し配線の変色を抑制することが可能であるタッチパネルの製造方法が提供される。
本開示の他の一態様によれば、パターン状の電極保護膜の帯電を防止することが可能である積層体を有するタッチパネル付き表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の転写フィルムの一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本開示に係るタッチパネルの第1具体例を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、本開示に係るタッチパネルの第2具体例を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、曲げ耐性の評価における曲げ耐性評価用試料の状態の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示は、そのような実施態様に限定されるものではない。
【0013】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
【0014】
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0015】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0016】
本開示における基(所謂、原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないもの及び置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(所謂、無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(所謂、置換アルキル基)も包含するものである。
【0017】
本開示において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロキシ基」は、アクリロキシ基及びメタクリロキシ基の両方を包含する概念である。
【0018】
本開示において、「全固形分量」とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の全質量を意味する。また、「固形分」とは、上述のように、溶剤を除いた成分であり、例えば、25℃において、固体であってもよく、液体であってもよい。
【0019】
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
【0020】
本開示において、「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
【0021】
本開示において、分子量分布がある場合の分子量は、特に断りがない限り、重量平均分子量(Mw)を表す。
【0022】
本開示における重量平均分子量(Mw)は、特に断りのない限り、カラムとして、TSKgel(登録商標) GMHxL、TSKgel(登録商標) G4000HxL、及びTSKgel(登録商標) G2000HxL(いずれも商品名、東ソー株式会社製)を使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、示差屈折率(RI)検出器により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
【0023】
本開示において、ポリマー中の各構成単位の割合は、特に断りがない限り、モル割合を表す。
【0024】
本開示において、「光」は、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線等の活性エネルギー線を包含する概念である。
【0025】
本開示において、「透明」とは、温度23℃における波長380nm~780nmにおける全光線透過率が、85%以上(好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上)であることを意味する。上記全光線透過率は、分光光度計〔例えば、株式会社日立製作所の分光光度計「U-3310(商品名)」〕を用いて測定される。
【0026】
本開示における「屈折率」は、特に断りがない限り、温度23℃において波長550nmの可視光により、エリプソメトリー法により測定した値を意味する。
【0027】
本開示において、「透明フィルム」という用語の末尾に付記される数字は、構成要素の混同を防止するための符号であり、構成要素の数、及び構成要素の優劣を制限するものではない。
【0028】
<感光性転写フィルム>
本開示に係る感光性転写フィルムは、厚さが10μm以下の感光性層と、帯電防止層と、を有し、上記感光性層が、アルカリ可溶性アクリル樹脂と、エチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する。
【0029】
本開示に係る感光性転写フィルムは、上記構成を備えることで、帯電防止層をパターニングすることが可能であり、かつ、透明性及び耐屈曲性に優れる硬化膜を形成できる。本開示に係る感光性転写フィルムが、上記効果を奏する理由は明らかではないが、以下のように推察される。
本開示に係る感光性転写フィルムにおいては、厚さが10μm以下の感光性層と、帯電防止層と、を有し、上記感光性層が、アルカリ可溶性アクリル樹脂と、エチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有することで、感光性層とともに帯電防止層をパターニングすることができ、さらに、露光により硬化した感光性層の透明性及び曲げ耐性を向上できると考えられる。このため、本開示に係る感光性転写フィルムは、帯電防止層をパターニングすることが可能であり、かつ、透明性及び耐屈曲性に優れる硬化膜を形成できる。
【0030】
また、本開示に係る感光性転写フィルムによれば、感光性層とともに帯電防止層をパターニングすることができるため、形成されるレジストパターンを電極保護膜として用いた場合に、パターン状の電極保護膜においても帯電を防止することができる。
【0031】
[感光性層]
本開示に係る感光性転写フィルムは、厚さが10μm以下の感光性層を有する。本開示に係る感光性転写フィルムにおいて、上記感光性層は、アルカリ可溶性アクリル樹脂と、エチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する。本開示に係る感光性転写フィルムにおいて、感光性層の厚さが10μm以下であり、そして、感光性層がアルカリ可溶性アクリル樹脂等を含有することで、形成される硬化膜の透明性及び耐屈曲性を向上させる。
【0032】
(アルカリ可溶性アクリル樹脂)
感光性層は、アルカリ可溶性アクリル樹脂を含有する。感光性層がアルカリ可溶性アクリル樹脂を含有することで、形成される硬化膜の透明性を向上させる。また、感光性層がアルカリ可溶性アクリル樹脂を含有することで、現像液への感光性層(非露光部)の溶解性も向上できる。
【0033】
本開示において、「アルカリ可溶性」とは、以下の方法によって求められる溶解速度が0.01μm/秒以上であることをいう。
対象化合物(例えば、樹脂)の濃度が25質量%であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液をガラス基板上に塗布し、次いで、100℃のオーブンで3分間加熱することによって上記化合物の塗膜(厚さ:2.0μm)を形成する。上記塗膜を炭酸ナトリウム1質量%水溶液(液温:30℃)に浸漬させることにより、上記塗膜の溶解速度(μm/秒)を求める。
なお、対象化合物がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解しない場合は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート以外の沸点200℃未満の有機溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、又はエタノール)に対象化合物を溶解させる。
【0034】
アルカリ可溶性アクリル樹脂としては、上記において説明したアルカリ可溶性を有するアクリル樹脂であれば制限されない。ここで、「アクリル樹脂」とは、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の少なくとも一方を含む樹脂を意味する。
【0035】
アルカリ可溶性アクリル樹脂における(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の合計割合は、アルカリ可溶性アクリル樹脂の全量に対して、30モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましい。アルカリ可溶性アクリル樹脂における(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の合計割合の上限は、制限されない。アルカリ可溶性アクリル樹脂における(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の合計割合は、アルカリ可溶性アクリル樹脂の全量に対して、100モル%以下の範囲で決定すればよい。
【0036】
本開示において、「構成単位」の含有量をモル分率(モル割合)で規定する場合、特に断りのない限り、上記「構成単位」は「モノマー単位」と同義であるものとする。また、本開示において、樹脂又は重合体が2種以上の特定の構成単位を有する場合、特に断りのない限り、上記特定の構成単位の含有量は、上記2種以上の特定の構成単位の総含有量を表すものとする。
【0037】
アルカリ可溶性アクリル樹脂は、現像性の観点から、カルボキシ基を有することが好ましい。アルカリ可溶性アクリル樹脂へのカルボキシ基の導入方法としては、例えば、カルボキシ基を有するモノマーを用いてアルカリ可溶性アクリル樹脂を合成する方法が挙げられる。上記方法により、カルボキシ基を有するモノマーは、カルボキシ基を有する構成単位としてアルカリ可溶性アクリル樹脂に導入される。カルボキシ基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、及びメタクリル酸が挙げられる。
【0038】
アルカリ可溶性アクリル樹脂は、1つのカルボキシ基を有していてもよく、2つ以上のカルボキシ基を有していてもよい。また、アルカリ可溶性アクリル樹脂におけるカルボキシ基を有する構成単位は、1種単独であってもよく、又は2種以上であってもよい。
【0039】
アルカリ可溶性アクリル樹脂がカルボキシ基を有する構成単位を有する場合、カルボキシ基を有する構成単位の含有量は、アルカリ可溶性アクリル樹脂の全量に対して、5モル%~50モル%であることが好ましく、5モル%~40モル%であることがより好ましく、10モル%~30モル%であることが特に好ましい。
【0040】
アルカリ可溶性アクリル樹脂は、硬化後の透湿度及び強度の観点から、芳香環を有する構成単位を有することが好ましい。芳香環を有する構成単位としては、スチレン化合物由来の構成単位であることが好ましい。
【0041】
芳香環を有する構成単位を形成するモノマーとしては、例えば、スチレン化合物由来の構成単位を形成するモノマー、及びベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
上記スチレン化合物由来の構成単位を形成するモノマーとしては、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、α,p-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、t-ブトキシスチレン、及び1,1-ジフェニルエチレンが挙げられ、スチレン、又はα-メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0043】
アルカリ可溶性アクリル樹脂における芳香環を有する構成単位は、1種単独であってもよく、又は2種以上であってもよい。
【0044】
アルカリ可溶性アクリル樹脂が芳香環を有する構成単位を有する場合、芳香環を有する構成単位の含有量は、アルカリ可溶性アクリル樹脂の全量に対し、5モル%~90モル%であることが好ましく、10モル%~90モル%であることがより好ましく、15モル%~90モル%であることが特に好ましい。
【0045】
アルカリ可溶性アクリル樹脂は、タック性、及び硬化後の強度の観点から、脂肪族環式骨格を有する構成単位を含むことが好ましい。
【0046】
脂肪族環式骨格における脂肪族環としては、例えば、ジシクロペンタン環、シクロヘキサン環、イソボロン環、及びトリシクロデカン環が挙げられる。上記の中でも、脂肪族環式骨格における脂肪族環としては、トリシクロデカン環が特に好ましい。
【0047】
脂肪族環式骨格を有する構成単位を形成するモノマーとしては、例えば、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0048】
アルカリ可溶性アクリル樹脂における脂肪族環式骨格を有する構成単位は、1種単独であってもよく、又は2種以上であってもよい。
【0049】
アルカリ可溶性アクリル樹脂が脂肪族環式骨格を有する構成単位を有する場合、脂肪族環式骨格を有する構成単位の含有量は、アルカリ可溶性アクリル樹脂の全量に対し、5モル%~90モル%であることが好ましく、10モル%~80モル%であることがより好ましく、10モル%~70モル%であることが特に好ましい。
【0050】
アルカリ可溶性アクリル樹脂は、タック性、及び、硬化後の強度の観点から、反応性基を有していることが好ましい。
【0051】
反応性基としては、ラジカル重合性基が好ましく、エチレン性不飽和基がより好ましい。また、アルカリ可溶性アクリル樹脂がエチレン性不飽和基を有する場合、アルカリ可溶性アクリル樹脂は、側鎖にエチレン性不飽和基を有する構成単位を有することが好ましい。
【0052】
本開示において、「主鎖」とは、樹脂を構成する高分子化合物の分子中で相対的に最も長い結合鎖を表し、「側鎖」とは、主鎖から枝分かれしている原子団を表す。
【0053】
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリル基、又は(メタ)アクリロキシ基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
【0054】
アルカリ可溶性アクリル樹脂におけるエチレン性不飽和基を有する構成単位は、1種単独であってもよく、又は2種以上であってもよい。
【0055】
アルカリ可溶性アクリル樹脂がエチレン性不飽和基を有する構成単位を有する場合、エチレン性不飽和基を有する構成単位の含有量は、アルカリ可溶性アクリル樹脂の全量に対し、5モル%~70モル%であることが好ましく、10モル%~50モル%であることがより好ましく、15モル%~40モル%であることが特に好ましい。
【0056】
反応性基をアルカリ可溶性アクリル樹脂に導入する手段としては、水酸基、カルボキシ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、アセトアセチル基、スルホン酸等に、エポキシ化合物、ブロックイソシアネート化合物、イソシアネート化合物、ビニルスルホン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、カルボン酸無水物等を反応させる方法が挙げられる。
【0057】
反応性基をアルカリ可溶性アクリル樹脂に導入する手段の好ましい例としては、カルボキシ基を有するアルカリ可溶性アクリル樹脂を重合反応により合成した後、ポリマー反応により、アルカリ可溶性アクリル樹脂のカルボキシ基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させることで、(メタ)アクリロキシ基をアルカリ可溶性アクリル樹脂に導入する手段が挙げられる。上記手段により、側鎖に(メタ)アクリロキシ基を有するアルカリ可溶性アクリル樹脂を得ることができる。
【0058】
上記重合反応は、70℃~100℃の温度条件で行うことが好ましく、80℃~90℃の温度条件で行うことがより好ましい。上記重合反応に用いる重合開始剤としては、アゾ系開始剤が好ましく、例えば、富士フイルム和光純薬株式会社製のV-601(商品名)又はV-65(商品名)がより好ましい。また、上記ポリマー反応は、80℃~110℃の温度条件で行うことが好ましい。上記ポリマー反応においては、アンモニウム塩等の触媒を用いることが好ましい。
【0059】
アルカリ可溶性アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10,000以上であることが好ましく、10,000~100,000であることがより好ましく、15,000~50,000であることが特に好ましい。
【0060】
アルカリ可溶性アクリル樹脂の酸価は、現像性の観点から、50mgKOH/g以上であることが好ましく、60mgKOH/g以上であることがより好ましく、70mgKOH/g以上であることがさらに好ましく、80mgKOH/g以上であることが特に好ましい。本開示において、アルカリ可溶性アクリル樹脂の酸価は、JIS K0070:1992に記載の方法に従って測定される値である。
【0061】
アルカリ可溶性アクリル樹脂の酸価は、露光された感光性層(露光部)が現像液へ溶解することを抑止する観点から、200mgKOH/g以下であることが好ましく、150mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0062】
アルカリ可溶性アクリル樹脂の具体例を以下に示す。なお、下記アルカリ可溶性アクリル樹脂における各構成単位の含有比率(モル比)は、目的に応じて適宜設定することができる。
【0063】
【0064】
【0065】
感光性層は、1種単独のアルカリ可溶性アクリル樹脂を含有していてもよく、又は2種以上のアルカリ可溶性アクリル樹脂を含有していてもよい。
【0066】
アルカリ可溶性アクリル樹脂の含有量は、現像性の観点から、感光性層の全質量に対し、10質量%~90質量%であることが好ましく、20質量%~80質量%であることがより好ましく、30質量%~70質量%であることが特に好ましい。
【0067】
アルカリ可溶性樹脂の各構成単位の残存モノマーの含有量は、パターニング性、及び信頼性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全質量に対して、1,000質量ppm以下であることが好ましく、500質量ppm以下であることがより好ましく、100質量ppm以下であることが特に好ましい。上記残存モノマーの含有量は、アルカリ可溶性樹脂の全質量に対して、0.1質量ppm以上であることが好ましく、1質量ppm以上がより好ましい。高分子反応でアルカリ可溶性樹脂を合成する際のモノマーの残存モノマー量も上記範囲とすることが好ましい。例えば、カルボン酸側鎖にアクリル酸グリシジルを反応させてアルカリ可溶性樹脂を合成する場合には、アクリル酸グリシジルの含有量を上記範囲にすることが好ましい。残存モノマーの量は、例えばガスクロマトグラフィーなどの公知の方法で測定することができる。
【0068】
(エチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物)
感光性層は、エチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物(以下、単に「エチレン性不飽和化合物」ともいう。)を含有する。エチレン性不飽和化合物は、感光性(すなわち、光硬化性)、及び感光性層の硬化により形成される硬化膜の強度に寄与する。
【0069】
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0070】
エチレン性不飽和化合物としては、2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。ここで、「2官能以上のエチレン性不飽和化合物」とは、一分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物を意味する。
【0071】
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0072】
エチレン性不飽和化合物としては、例えば、硬化後の膜強度の観点から、2官能のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、2官能の(メタ)アクリレート化合物)と、3官能以上のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物)と、を含むことが好ましい。
【0073】
2官能のエチレン性不飽和化合物としては、制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。2官能のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、及び1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0074】
2官能のエチレン性不飽和化合物の市販品としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート〔商品名:NKエステル A-DCP、新中村化学工業株式会社〕、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート〔商品名:NKエステル DCP、新中村化学工業株式会社〕、1,9-ノナンジオールジアクリレート〔商品名:NKエステル A-NOD-N、新中村化学工業株式会社〕、1,10-デカンジオールジアクリレート〔商品名:NKエステル A-DOD-N、新中村化学工業株式会社〕、及び1,6-ヘキサンジオールジアクリレート〔商品名:NKエステル A-HD-N、新中村化学工業株式会社〕が挙げられる。
【0075】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、及びグリセリントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0076】
ここで、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及びヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念である。また、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。
【0077】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物の市販品としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔商品名:KAYARAD DPHA、新中村化学工業株式会社〕が挙げられる。
【0078】
エチレン性不飽和化合物として、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート又は1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートと、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレートとを含むことがより好ましい。
【0079】
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性化合物〔日本化薬株式会社のKAYARAD(登録商標) DPCA-20、新中村化学工業株式会社のA-9300-1CL等〕、(メタ)アクリレート化合物のアルキレンオキサイド変性化合物〔日本化薬株式会社のKAYARAD(登録商標) RP-1040、新中村化学工業株式会社のATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス社のEBECRYL(登録商標) 135等〕、エトキシル化グリセリントリアクリレート〔新中村化学工業株式会社のNKエステル A-GLY-9E等〕なども挙げられる。
【0080】
エチレン性不飽和化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート化合物も挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物が好ましい。3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、8UX-015A〔大成ファインケミカル株式会社〕、NKエステル UA-32P〔新中村化学工業株式会社〕、及びNKエステル UA-1100H〔新中村化学工業株式会社〕が挙げられる。
【0081】
エチレン性不飽和化合物としては、例えば、現像性向上の観点から、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
【0082】
酸基としては、例えば、リン酸基、スルホン酸基、及びカルボキシ基が挙げられる。上記の中でも、酸基としては、カルボキシ基が好ましい。
【0083】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、酸基を有する3~4官能のエチレン性不飽和化合物〔例えば、ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(PETA)骨格にカルボキシ基を導入した化合物(酸価:80mgKOH/g~120mgKOH/g)〕、及び酸基を有する5~6官能のエチレン性不飽和化合物〔例えば、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(DPHA)骨格にカルボキシ基を導入した化合物(酸価:25mgKOH/g~70mgKOH/g)〕が挙げられる。酸基を有する3官能以上のエチレン性不飽和化合物は、必要に応じ、酸基を有する2官能のエチレン性不飽和化合物と併用してもよい。
【0084】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物、及びそのカルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。酸基を有するエチレン性不飽和化合物が、カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物、及びそのカルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であると、現像性及び膜強度がより高まる。
【0085】
カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物は、制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物の好ましい例としては、アロニックス(登録商標) TO-2349〔東亞合成株式会社〕、アロニックス(登録商標) M-520〔東亞合成株式会社〕、及びアロニックス(登録商標) M-510〔東亞合成株式会社〕が挙げられる。
【0086】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、特開2004-239942号公報の段落[0025]~段落[0030]に記載の酸基を有する重合性化合物を好ましく用いることができ、この公報に記載の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
エチレン性不飽和化合物の分子量は、200~3,000であることが好ましく、250~2,600であることがより好ましく、280~2,200であることがさらに好ましく、300~2,200であることが特に好ましい。
【0088】
感光性層におけるエチレン性不飽和化合物のうち、分子量が300以下のエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物の含有量に対し、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。分子量が300以下のエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物の含有量に対し、0質量%であってもよく、又は0質量%を超えていてもよい。
【0089】
感光性層は、1種単独のエチレン性不飽和化合物を含有していてもよく、又は2種以上のエチレン性不飽和化合物を含有していてもよい。
【0090】
エチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性層の全質量に対し、1質量%~70質量%であることが好ましく、10質量%~70質量%であることがより好ましく、20質量%~60質量%であることがさらに好ましく、20質量%~50質量%であることが特に好ましい。
【0091】
感光性層が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含む場合、さらに単官能エチレン性不飽和化合物を含有していてもよい。
【0092】
感光性層が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有する場合、2官能以上のエチレン性不飽和化合物は、感光性層に含まれるエチレン性不飽和化合物において主成分であることが好ましい。
【0093】
感光性層が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有する場合、2官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物の含有量に対し、60質量%~100質量%であることが好ましく、80質量%~100質量%であることがより好ましく、90質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0094】
感光性層が酸基を有するエチレン性不飽和化合物(好ましくは、カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物又はそのカルボン酸無水物)を含有する場合、酸基を有するエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性層の全質量に対し、1質量%~50質量%であることが好ましく、1質量%~20質量%であることがより好ましく、1質量%~10質量%であることが特に好ましい。
【0095】
(光重合開始剤)
感光性層は、光重合開始剤を含有する。
【0096】
光重合開始剤としては、制限されず、公知の光重合開始剤を適用できる。光重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル構造を有する光重合開始剤(以下、「オキシム系光重合開始剤」ともいう。)、α-アミノアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤(以下、「α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤」ともいう。)、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤(以下、「α-ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤」ともいう。)、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する光重合開始剤(以下、「アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤」ともいう。)、及びN-フェニルグリシン構造を有する光重合開始剤(以下、「N-フェニルグリシン系光重合開始剤」ともいう。)が挙げられる。
【0097】
光重合開始剤は、オキシム系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤、及びN-フェニルグリシン系光重合開始剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、オキシム系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、及びN-フェニルグリシン系光重合開始剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0098】
また、光重合開始剤としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落[0031]~[0042]、及び特開2015-014783号公報の段落[0064]~段落[0081]に記載された重合開始剤を用いてもよい。
【0099】
光重合開始剤の市販品としては、例えば、1-[4-(フェニルチオ)]フェニル-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)〔商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-01、BASF社製〕、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)〔商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-02、BASF社製〕、[8-[5-(2,4,6-トリメチルフェニル)-11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾイル][2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)フェニル]メタノン-(O-アセチルオキシム)〔商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-03、BASF社製〕、1-[4-[4-(2-ベンゾフラニルカルボニル)フェニル]チオ]フェニル]-4-メチル-1-ペンタノン-1-(O-アセチルオキシム)〔商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-04、BASF社製〕、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン〔商品名:IRGACURE(登録商標) 379EG、BASF社製〕、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン〔商品名:IRGACURE(登録商標) 907、BASF社製〕、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン〔商品名:IRGACURE(登録商標) 127、BASF社製〕、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1〔商品名:IRGACURE(登録商標) 369、BASF社製〕、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン〔商品名:IRGACURE(登録商標) 1173、BASF社製〕、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔商品名:IRGACURE(登録商標) 184、BASF社製〕、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン〔商品名:IRGACURE 651、BASF社製〕、及びオキシムエステル系の化合物〔商品名:Lunar(登録商標) 6、DKSHジャパン株式会社製〕が挙げられる。
【0100】
感光性層は、1種単独の光重合開始剤を含有していてもよく、又は2種以上の光重合開始剤を含有していてもよい。
【0101】
光重合開始剤の含有量は、感光性層の全質量に対し、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることが特に好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、感光性層の全質量に対し、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0102】
(カルボン酸無水物構造を有する構成単位を含む重合体)
感光性層は、バインダーとして、カルボン酸無水物構造を有する構成単位を含む重合体(以下、「重合体B」ともいう。)をさらに含有することが好ましい。感光性層が特定重合体Bを含有することで、現像性、及び硬化後の強度を向上できる。
【0103】
カルボン酸無水物構造は、鎖状カルボン酸無水物構造、及び環状カルボン酸無水物構造のいずれであってもよいが、環状カルボン酸無水物構造であることが好ましい。
【0104】
環状カルボン酸無水物構造の環としては、5員環~7員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましく、5員環が特に好ましい。
【0105】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、下記式P-1で表される化合物から水素原子を2つ除いた2価の基を主鎖中に含む構成単位、又は下記式P-1で表される化合物から水素原子を1つ除いた1価の基が主鎖に対して直接又は2価の連結基を介して結合している構成単位であることが好ましい。
【0106】
【0107】
式P-1中、RA1aは、置換基を表し、n1a個のRA1aは、同一でも異なっていてもよく、Z1aは、-C(=O)-O-C(=O)-を含む環を形成する2価の基を表し、n1aは、0以上の整数を表す。
【0108】
RA1aで表される置換基としては、例えば、アルキル基が挙げられる。
【0109】
Z1aとしては、炭素数2~4のアルキレン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基がより好ましく、炭素数2のアルキレン基が特に好ましい。
【0110】
n1aは、0以上の整数を表す。Z1aが炭素数2~4のアルキレン基を表す場合、n1aは、0~4の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
【0111】
n1aが2以上の整数を表す場合、複数存在するRA1aは、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在するRA1aは、互いに結合して環を形成してもよいが、互いに結合して環を形成していないことが好ましい。
【0112】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、不飽和カルボン酸無水物に由来する構成単位であることが好ましく、不飽和環式カルボン酸無水物に由来する構成単位であることがより好ましく、不飽和脂肪族環式カルボン酸無水物に由来する構成単位であることがさらに好ましく、無水マレイン酸又は無水イタコン酸に由来する構成単位であることが特に好ましく、無水マレイン酸に由来する構成単位であることが最も好ましい。
【0113】
重合体Bにおけるカルボン酸無水物構造を有する構成単位は、1種単独であってもよく、又は2種以上であってもよい。
【0114】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位の含有量は、重合体Bの全量に対し、0モル%を超えて60モル%以下であることが好ましく、5モル%~40モル%であることがより好ましく、10モル%~35モル%であることが特に好ましい。
【0115】
感光性層は、1種単独の重合体Bを含有していてもよく、又は2種以上の重合体Bを含有していてもよい。
【0116】
感光性層が重合体Bを含有する場合、重合体Bの含有量は、現像性、及び硬化後の強度の観点から、感光性層の全質量に対し、0.1質量%~30質量%であることが好ましく、0.2質量%~20質量%であることがより好ましく、0.5質量%~20質量%であることがさらに好ましく、1質量%~20質量%であることが特に好ましい。
【0117】
(複素環化合物)
感光性層は、複素環化合物を含有することが好ましい。複素環化合物は、基材(特に、銅基板)に対する密着性、及び金属(特に、銅)の腐食抑制性の向上に寄与する。
【0118】
複素環化合物が有する複素環は、単環及び多環のいずれの複素環でもよい。
【0119】
複素環化合物が有するヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子が挙げられる。複素環化合物は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を有することが好ましく、窒素原子を有することがより好ましい。
【0120】
複素環化合物としては、例えば、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、又は、ピリミジン化合物が好ましく挙げられる。上記の中でも、複素環化合物は、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、及びベンゾオキサゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましく、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、及びベンゾオキサゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。
【0121】
複素環化合物の好ましい具体例を以下に示す。トリアゾール化合物、及びベンゾトリアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0122】
【0123】
【0124】
テトラゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0125】
【0126】
【0127】
チアジアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0128】
【0129】
トリアジン化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0130】
【0131】
ローダニン化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0132】
【0133】
チアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0134】
【0135】
ベンゾチアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0136】
【0137】
ベンゾイミダゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0138】
【0139】
【0140】
ベンゾオキサゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0141】
【0142】
感光性層は、1種単独の複素環化合物を含有していてもよく、又は2種以上の複素環化合物を含有していてもよい。
【0143】
感光性層が複素環化合物を含有する場合、複素環化合物の含有量は、感光性層の全質量に対し、0.01質量%~20質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、0.3質量%~8質量%であることがさらに好ましく、0.5質量%~5質量%であることが特に好ましい。複素環化合物の含有量が上記範囲内であることで、基材(特に、銅基板)に対する密着性、及び金属(特に、銅)の腐食抑制性を向上できる。
【0144】
(脂肪族チオール化合物)
感光性層は、脂肪族チオール化合物を含有することが好ましい。
【0145】
感光性層が脂肪族チオール化合物を含有することで、脂肪族チオール化合物がエン-チオール反応することで、形成される膜の硬化収縮が抑えられ、応力が緩和されるため、形成される硬化膜の基材に対する密着性(特に、露光後における密着性)が向上する傾向がある。一般に、感光性層が脂肪族チオール化合物を含むと、金属(特に、銅)がより腐食しやすい。これに対し、本開示における感光性層は、脂肪族チオール化合物を含む場合であっても、金属(特に、銅)の腐食抑制性に優れる硬化膜を形成できるという利点を有する。
【0146】
脂肪族チオール化合物としては、単官能の脂肪族チオール化合物、又は多官能の脂肪族チオール化合物(すなわち、2官能以上の脂肪族チオール化合物)が好適に用いられる。
【0147】
上記の中でも、脂肪族チオール化合物としては、例えば、形成される硬化膜の基板に対する密着性(特に、露光後における密着性)の観点から、多官能の脂肪族チオール化合物を含むことが好ましく、多官能の脂肪族チオール化合物であることがより好ましい。
【0148】
本開示において、「多官能の脂肪族チオール化合物」とは、チオール基(「メルカプト基」ともいう。)を分子内に2個以上有する脂肪族化合物を意味する。
【0149】
多官能の脂肪族チオール化合物は、分子量が100以上の低分子化合物であることが好ましい。具体的には、多官能の脂肪族チオール化合物の分子量は、100~1,500であることがより好ましく、150~1,000であることが特に好ましい。
【0150】
多官能の脂肪族チオール化合物の官能基数(すなわち、チオール基の数)は、例えば、形成される硬化膜の基板に対する密着性の観点から、2官能~10官能であることが好ましく、2官能~8官能であることがより好ましく、2官能~6官能であることが特に好ましい。
【0151】
多官能の脂肪族チオール化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオプロピオネート、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,6-ヘキサメチレンジチオール、2,2’-(エチレンジチオ)ジエタンチオール、meso-2,3-ジメルカプトコハク酸、及びジ(メルカプトエチル)エーテルが挙げられる。
【0152】
上記の中でも、多官能の脂肪族チオール化合物としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、及び1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0153】
単官能の脂肪族チオール化合物としては、例えば、1-オクタンチオール、1-ドデカンチオール、β-メルカプトプロピオン酸、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート、及びステアリル-3-メルカプトプロピオネートが挙げられる。
【0154】
感光性層は、1種単独の脂肪族チオール化合物を含有していてもよく、又は2種以上の脂肪族チオール化合物を含有していてもよい。
【0155】
感光性層が脂肪族チオール化合物を含有する場合、脂肪族チオール化合物の含有量は、感光性層の全質量に対し、5質量%以上であることが好ましく、5質量%~50質量%であることがより好ましく、5質量%~30質量%であることがさらに好ましく、8質量%~20質量%であることが特に好ましい。脂肪族チオール化合物の含有量が5質量%以上であると、基板(特に、銅基板)に対する密着性(特に、露光後の密着性)により優れる硬化膜を形成できる傾向がある。
【0156】
(ブロックイソシアネート化合物)
感光性層は、ブロックイソシアネート化合物を含有することが好ましい。ブロックイソシアネート化合物は、硬化膜の強度の向上に寄与する。
【0157】
ブロックイソシアネート化合物は、水酸基及びカルボキシ基と反応するため、例えば、アルカリ可溶性アクリル樹脂及びエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物の少なくとも一方が、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する場合には、形成される膜の親水性が下がり、保護膜としての機能が強化される傾向がある。なお、ブロックイソシアネート化合物とは、「イソシアネートのイソシアネート基をブロック剤で保護(いわゆる、マスク)した構造を有する化合物」を指す。
【0158】
ブロックイソシアネート化合物の解離温度は、100℃~160℃であることが好ましく、110℃~150℃であることがより好ましい。
【0159】
本開示において、「ブロックイソシアネート化合物の解離温度」とは、示差走査熱量計を用いて、DSC(Differential scanning calorimetry)分析にて測定した場合における、ブロックイソシアネート化合物の脱保護反応に伴う吸熱ピークの温度を意味する。示差走査熱量計としては、例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製の示差走査熱量計(型式:DSC6200)を好適に用いることができる。ただし、示差走査熱量計は、上記した示差走査熱量計に制限されない。
【0160】
解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、例えば、活性メチレン化合物〔例えば、マロン酸ジエステル(例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル等)〕、オキシム化合物(例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等の分子内に-C(=N-OH)-で表される構造を有する化合物)などが挙げられる。上記の中でも、解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、例えば、保存安定性の観点から、オキシム化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0161】
ブロックイソシアネート化合物は、例えば、膜の脆性改良、被転写体との密着力向上等の観点から、イソシアヌレート構造を有することが好ましい。イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート化して保護することにより得られる。
【0162】
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物の中でも、オキシム化合物をブロック剤として用いたオキシム構造を有する化合物が、オキシム構造を有さない化合物よりも解離温度を好ましい範囲にしやすく、かつ、現像残渣を少なくしやすいという観点から好ましい。
【0163】
ブロックイソシアネート化合物は、例えば、硬化膜の強度の観点から、重合性基を有することが好ましく、ラジカル重合性基を有することがより好ましい。
【0164】
重合性基としては、特に制限はなく、公知の重合性基を用いることができる。重合性基としては、例えば、エチレン性不飽和基(例えば、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、及びスチリル基)、及びエポキシ基(例えば、グリシジル基)を有する基が挙げられる。上記の中でも、重合性基としては、得られる硬化膜における表面の面状、現像速度、及び反応性の観点から、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
【0165】
ブロックイソシアネート化合物としては、市販品を用いることができる。ブロックイソシアネート化合物の市販品の例としては、例えば、カレンズ(登録商標) AOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BM、カレンズ(登録商標) AOI-BP、カレンズ(登録商標) MOI-BP等〔以上、昭和電工株式会社製〕、及びブロック型のデュラネートシリーズ〔例えば、デュラネート(登録商標) TPA-B80E、旭化成ケミカルズ株式会社製〕が挙げられる。
【0166】
感光性層は、1種単独のブロックイソシアネート化合物を含有していてもよく、又は2種以上のブロックイソシアネート化合物を含有していてもよい。
【0167】
感光性層がブロックイソシアネート化合物を含有する場合、ブロックイソシアネート化合物の含有量は、感光性層の全質量に対し、1質量%~50質量%であることが好ましく、5質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0168】
(界面活性剤)
感光性層は、界面活性剤を含有することが好ましい。
【0169】
界面活性剤としては、制限されず、公知の界面活性剤を適用できる。界面活性剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落[0017]、及び特開2009-237362号公報の段落[0060]~段落[0071]に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0170】
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤又はケイ素系界面活性剤が好ましい。フッ素系界面活性剤の市販品の例としては、メガファック(登録商標)F551A(DIC株式会社製)が挙げられる。ケイ素系界面活性剤の市販品の例としては、DOWSIL(登録商標)8032 Additiveが挙げられる。
【0171】
感光性層は、1種単独の界面活性剤を含有していてもよく、又は2種以上の界面活性剤を含有していてもよい。
【0172】
感光性層が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、感光性層の全質量に対し、0.01質量%~3質量%であることが好ましく、0.05質量%~1質量%であることがより好ましく、0.1質量%~0.8質量%であることが特に好ましい。
【0173】
(水素供与性化合物)
感光性層は、水素供与性化合物を含有することが好ましい。水素供与性化合物は、光重合開始剤の活性光線に対する感度を一層向上させる、酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
【0174】
水素供与性化合物としては、アミン類、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44-20189号公報、特開昭51-82102号公報、特開昭52-134692号公報、特開昭59-138205号公報、特開昭60-84305号公報、特開昭62-18537号公報、特開昭64-33104号公報、Research Disclosure 33825号等に記載の化合物などが挙げられる。
【0175】
水素供与性化合物の具体例としては、トリエタノールアミン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ホルミルジメチルアニリン、及びp-メチルチオジメチルアニリンが挙げられる。
【0176】
また、水素供与性化合物としては、アミノ酸化合物(N-フェニルグリシン等)、特公昭48-42965号公報に記載の有機金属化合物(トリブチル錫アセテート等)、特公昭55-34414号公報に記載の水素供与体、特開平6-308727号公報に記載のイオウ化合物(トリチアン等)等も挙げられる。
【0177】
感光性層は、1種単独の水素供与性化合物を含有していてもよく、又は2種以上の水素供与性化合物を含有していてもよい。
【0178】
感光性層が水素供与性化合物を含有する場合、水素供与性化合物の含有量は、例えば、重合成長速度と連鎖移動のバランスとによる硬化速度の向上の観点から、感光性層の全質量に対し、0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.03質量%~5質量%であることがより好ましく、0.05質量%~3質量%であることが特に好ましい。
【0179】
(他の成分)
感光性層は、既述の成分以外の成分(以下、「他の成分」ともいう。)を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、粒子(例えば、金属酸化物粒子)、及び着色剤が挙げられる。また、他の成分としては、例えば、特許第4502784号公報の段落[0018]に記載の熱重合防止剤、及び特開2000-310706号公報の段落[0058]~段落[0071]に記載のその他の添加剤も挙げられる。
【0180】
-粒子-
感光性層は、屈折率、光透過性等の調節を目的として、粒子を含有していてもよい。粒子としては、例えば、金属酸化物粒子が挙げられる。
【0181】
金属酸化物粒子における金属には、B、Si、Ge、As、Sb、Te等の半金属も含まれる。
【0182】
粒子の平均一次粒子径は、例えば、硬化膜の透明性の観点から、1nm~200nmであることが好ましく、3nm~80nmであることがより好ましい。粒子の平均一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて任意の粒子200個の粒子径を測定し、測定結果を算術平均することにより算出される。なお、粒子の形状が球形でない場合には、長軸の長さを粒子径とする。
【0183】
感光性層は、1種単独の粒子を含有していてもよく、又は2種以上の粒子を含有していてもよい。また、感光性層が粒子を含有する場合、感光性層は、金属種、大きさ等の異なる粒子を1種のみ含有していてもよく、又は2種以上含有していてもよい。
【0184】
感光性層は、粒子を含有しないか、又は粒子の含有量が感光性層の全質量に対し0質量%を超えて35質量%以下であることが好ましく、粒子を含有しないか、又は粒子の含有量が感光性層の全質量に対し0質量%を超えて10質量%以下であることがより好ましく、粒子を含有しないか、又は粒子の含有量が感光性層の全質量に対し0質量%を超えて5質量%以下であることがさらに好ましく、粒子を含有しないか、又は粒子の含有量が感光性層の全質量に対し0質量%を超えて1質量%以下であることが特に好ましく、粒子を含有しないことが最も好ましい。
【0185】
-着色剤-
感光性層は、微量の着色剤(例えば、顔料、及び染料)を含有していてもよい。ただし、感光性層は、例えば透明性の観点からは、着色剤を実質的に含有していないことが好ましい。
【0186】
着色剤の含有量は、感光性層の全質量に対し、1質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがより好ましい。着色剤の含有量の下限は、感光性層の全質量に対し、0質量%以上の範囲で適宜設定すればよい。着色剤の含有量は、感光性層の全質量に対し、0質量%であってもよく、又は0質量%を超えていてもよい。
【0187】
-化合物A-
感光性層は、金属還元性基及び金属配位性基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を有する化合物Aを含有していてもよい。
【0188】
上記化合物Aは、金属の湿熱耐久性の観点から、金属還元性基を有する化合物であることが好ましい。上記化合物Aが金属還元性基を有することにより、金属のイオン化を抑制し、金属、特に金属電極の湿熱耐久性を向上することができると推定している。
【0189】
上記化合物Aは、金属の湿熱耐久性の観点から、金属配位性基を有する化合物であることが好ましい。上記化合物Aが金属配位性基を有することにより、ハロゲン等の有害物質の金属への接近及び金属の酸化及びイオン化を抑制し、金属電極の湿熱耐久性を向上することができると推定している。
【0190】
また、上記化合物Aは、金属の湿熱耐久性の観点から、金属還元性基及び金属配位性基を有する化合物であることがより好ましい。上記化合物Aが金属還元性基及び金属配位性基の両方を有することにより、上述の効果に加えて、金属配位性基による金属への配位のため、金属の近傍で金属還元性基の還元性を発現できるため、より効果的に金属の湿熱耐久性を向上することができる。
【0191】
上記金属還元性基は、対象となる少なくとも1種の金属を還元可能な基であればよい。上記金属還元性基としては、例えば、アルデヒド基、アミノ基、三重結合を有する基(例えば、アセチレン基、及びプロパルギル基)、及びメルカプト基が挙げられる。また、上記金属還元性基としては、例えば、ヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシウレタン類、ヒドロキシセミカルバジド類、レダクトン類(レダクトン誘導体を含む)、アニリン類、フェノール類(クロマン-6-オール類、2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-オール類、アミノフェノール類、スルホンアミドフェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類、レゾルシノール類、ベンゼントリオール類、ビスフェノール類のようなポリフェノール類を含む。)、アシルヒドラジン類、カルバモイルヒドラジン類、及び、3-ピラゾリドン類よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物から水素原子を1つ除去した残基が挙げられる。
【0192】
上記の中でも、上記金属還元性基は、金属還元能、及び、金属の湿熱耐久性の観点から、アルデヒド基又は第一級~第三級アミノ基であることが好ましく、アルデヒド基又は第一級アミノ基であることがより好ましく、アルデヒド基であることが特に好ましい。
【0193】
上記金属配位性基は、対象となる少なくとも1種の金属に直接配位する基、又は、上記金属への配位を促進する基であればよい。上記金属配位性基として、具体的には、メルカプト基(又はその塩)、チオン基(-C(=S)-)、窒素原子、硫黄原子、セレン原子、及びテルル原子よりなる群から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基、チオエーテル基、ジスルフィド基、カチオン性基、エチニル基等が挙げられる。
【0194】
上記金属配位性基におけるメルカプト基(又はその塩)は、ヘテロ環基、アリール基又はアルキル基に置換したメルカプト基(又はその塩)であることが好ましく、ヘテロ環基又はアリール基に置換したメルカプト基(又はその塩)であることがより好ましく、芳香族ヘテロ環基又はアリール基に置換したメルカプト基(又はその塩)であることが特に好ましい。
【0195】
ヘテロ環基とは、少なくとも5員~7員の、単環若しくは縮合環の、芳香族又は非芳香族のヘテロ環基、例えば、イミダゾール環基、チアゾール環基、オキサゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、トリアゾール環基、チアジアゾール環基、オキサジアゾール環基、テトラゾール環基、プリン環基、ピリジン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、ピリミジン環基、トリアジン環基等が挙げられる。また、四級化された窒素原子を含むヘテロ環基であってもよく、この場合、置換したメルカプト基が解離してメソイオンとなっていてもよい。
【0196】
メルカプト基が塩を形成する場合、対イオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属等のカチオン(例えば、Li+、Na+、K+、Mg2+、Ag+、及びZn2+)、アンモニウムイオン、四級化された窒素原子を含むヘテロ環基、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0197】
上記金属配位性基におけるメルカプト基は、互変異性化してチオン基となっていてもよい。
【0198】
上記金属配位性基におけるチオン基には、鎖状若しくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、又はジチオカルバミン酸エステル基も含まれる。
【0199】
上記金属配位性基における窒素原子、硫黄原子、セレン原子、及びテルル原子よりなる群から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基とは、イミノ化金属を形成しうる-NH-基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基、又は、配位結合で金属イオンに配位し得る、“-S-”基又は“-Se-”基又は“-Te-”基又は“=N-”基をヘテロ環の部分構造として有するヘテロ環基である。前者の例としては、ベンゾトリアゾール基、トリアゾール基、インダゾール基、ピラゾール基、テトラゾール基、ベンゾイミダゾール基、イミダゾール基、プリン基などが挙げられる。後者の例としては、チオフェン基、チアゾール基、オキサゾール基、ベンゾチオフェン基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基、トリアジン基、セレノアゾール基、ベンゾセレノアゾール基、テルルアゾール基、ベンゾテルルアゾール基などが挙げられる。
【0200】
上記金属配位性基におけるチオエーテル基(スルフィド基)又はジスルフィド基とは、-S-、又は-S-S-の部分構造を有する基すべてが挙げられる。チオエーテル基及びジスルフィド基としては、例えば、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジスルフィド基、アリールジスルフィド基等が挙げられる。
【0201】
上記金属配位性基におけるカチオン性基は、窒素原子上にカチオンを有する基であることが好ましい。具体的には第一級~第四級アンモニオ基又は四級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基等が挙げられる。四級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基としては、例えば、ピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基、イミダゾリオ基などが挙げられる。
【0202】
上記金属配位性基におけるエチニル基とは、-C≡CH基を意味し、上記-C≡CH基における水素原子は置換されていてもよい。
【0203】
上記金属配位性基は、任意の置換基を有していてもよい。
【0204】
上記金属配位性基の具体例としては、特開平11-95355号公報の明細書4頁~7頁に記載されているものが挙げられる。
【0205】
上記金属配位性基としては、金属への配位能、及び、金属の湿熱耐久性の観点から、チオエーテル基、メルカプト基、又は、窒素原子、硫黄原子、セレン原子、及びテルル原子よりなる群から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基であることが好ましく、チオエーテル基、メルカプト基、又は、窒素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基であることがより好ましく、チオエーテル基、又は、メルカプト基であることが更に好ましく、チオエーテル基であることが特に好ましい。
【0206】
上記化合物Aの分子量は、100~10,000であることが好ましく、120~1,000であることがより好ましく、120~500であることがより好ましい。上記化合物Aの分子量を上記範囲にすることで、作製プロセスや耐久試験における化合物Aの揮散を抑制でき、また、感光性層及び転写され接触した層中の拡散性にも優れ、金属の湿熱耐久性により優れる。
【0207】
上記化合物Aにおける金属還元性基の数は、金属の湿熱耐久性の観点から、1以上であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~3であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。金属還元性基の数が2以上である場合、同じ基であっても、異なる基であってもよい。
【0208】
上記化合物Aにおける金属配位性基の数は、金属の湿熱耐久性の観点から、1以上であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~3であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。金属配位性基の数が2以上である場合、同じ基であっても、異なる基であってもよい。
【0209】
上記化合物Aとしては、金属の湿熱耐久性の観点から、下記式(D1)で表される化合物であることが好ましく、下記式(D2)で表される基であることがより好ましい。
【0210】
【0211】
式D1及び式D2中、Arは、芳香環化合物又は芳香族ヘテロ環化合物から芳香環又は芳香族ヘテロ環上の水素原子を(nr+nc)個除いた基を表し、Rrはそれぞれ独立に、金属還元性基を表し、Rcはそれぞれ独立に、金属配位性基を表し、Rsはそれぞれ独立に、置換基を表し、nrは0~3の整数を表し、ncは0~3の整数を表し、nsは0以上の整数を表し、nr+ncの値は、1~6の整数であり、式D2においては、nr+nc+nsの値は、1~6の整数である。
【0212】
Arは、置換基を有していてもよい、ベンゼン、チアジアゾール、チアゾール、ベンゾトリアゾールから芳香環又はヘテロ環上の水素原子を(nr+nc)個除いた基であることが好ましく、置換基を有していてもよい、ベンゼンから芳香環の水素原子を(nr+nc)個除いた基であることがより好ましい。Arにおける置換基は、特に制限はないが、後述するRsにおける置換基が好ましく挙げられる。
Rrにおける金属還元性基としては、上述した金属還元性基が好ましく挙げられる。
Rcにおける金属配位性基としては、上述した金属配位性基が好ましく挙げられる。
Rsにおける置換基としては、上記金属還元性基及び上記金属配位性基以外の基であれば特に制限はないが、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アミド基、シアノ基、ニトロ基などが好ましい具体例として挙げられる。
nrは、1~3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
ncは、1~3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
nsは、0~4の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましい。
【0213】
感光性層は、1種単独の化合物Aを含有していてもよく、2種以上の化合物Aを含有していてもよい。
【0214】
感光性層中における化合物Aの含有量は、上記感光性層の全質量に対し、化合物Aを含有しないか、0質量%を超えて10質量%であることが好ましく、1質量%~10質量%であることがより好ましく、1質量%~6質量%であることが更に好ましく、2質量%~4質量%であることが特に好ましい。化合物Aの含有量を上記の範囲にすることで金属の湿熱耐久を向上させることができる。
【0215】
以下に本開示に用いられる化合物Aを例示するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0216】
【0217】
さらに、欧州特許第1308776号明細書の73頁~87頁に記載の具体的化合物1~30、1”-1~1”-77も本開示における化合物Aの好ましい例として挙げられる。
【0218】
感光性層は金属添加剤を含有していてもよい。金属添加剤は金属を含む添加剤である。金属添加剤としては、特に制限は無いが、感光性転写フィルムの透明性の点から金属粒子、金属酸化物粒子、又は金属錯体化合物が好ましい。
【0219】
金属酸化物粒子としては、酸化アルミニニウム粒子、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子等が挙げられる。金属酸化物としては、特に制限は無いが、感光性転写フィルムの透明性の点から、一次粒子径が100nm以下であることが好ましい。
【0220】
金属添加剤は、感光性樹脂中への溶解性の観点から、金属錯体化合物であることが好ましい。金属錯体を感光性層に含有させることで、可視光による金属、特に金属電極の劣化を抑制することができる。
【0221】
金属錯体化合物としては、特に限定されないが、鉄、ニッケル、コバルト、アルミニウム、チタン、又はジルコニウムを含むことが好ましく、鉄を含むことがより好ましい。
【0222】
鉄を含む金属錯体化合物としては、例えば、トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)(「アセチルアセトン鉄錯体」ともいう)及びその類縁体、フェロセン及びその類縁体、トリス(ジベンゾイルメタナト)鉄(III)等が挙げられる。これらの中でも、有機溶剤への溶解性及び耐酸化性などの観点から、フェロセンが好ましい。
【0223】
感光性層中における金属添加物の含有量は、上記感光性層の全質量に対し、金属添加物を含有しないか、0質量%を超えて10質量%であることが好ましく、0.001質量%~5質量%であることがより好ましく、0.01質量%~3質量%であることが更に好ましく、0.1質量%~3質量%であることが特に好ましい。金属添加物の含有量を上記の範囲にすることで可視光による金属の劣化を抑制することができる。
【0224】
(感光性層の厚さ)
感光性層の厚さは、10μm以下であり、8μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、4μm以下であることが特に好ましい。感光性層の厚さが10μm以下であることで、耐屈曲性を向上できる。
【0225】
感光性層の厚さの下限は、制限されない。感光性層の厚さが小さいほど、耐屈曲性を向上できる。感光性層の厚さは、製造適性の観点から、0.05μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。
【0226】
感光性層の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により測定した任意の5点の平均値として算出する。
【0227】
(不純物等)
本開示に係る感光性転写フィルムにおいて、信頼性、及びパターニング性を向上させる観点から、感光性層の不純物は所定の含有量であることが好ましい。不純物の具体例としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、ハロゲン及びこれらのイオンなどが挙げられる。中でも、ハロゲン化物イオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンは不純物として混入し易いため、下記の含有量にすることが特に好ましい。
【0228】
感光性層における不純物の含有量は、質量基準で、80ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、2ppm以下が特に好ましい。感光性層における不純物の含有量は、質量基準で、1ppb以上又は0.1ppm以上とすることができる。
【0229】
不純物を上記範囲にする方法としては、感光性層の原料として不純物の含有量が少ないものを選択すること、及び感光性層の形成時に不純物の混入を防ぐこと、洗浄して除去すること等が挙げられる。このような方法により、不純物量を上記範囲内とすることができる。
【0230】
不純物は、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法、原子吸光分光法、イオンクロマトグラフィー法等の公知の方法で定量することができる。
【0231】
感光性層における、ベンゼン、ホルムアルデヒド、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、四塩化炭素、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ヘキサン等の化合物の含有量が少ないことが好ましい。これら化合物の感光性層中における含有量としては、質量基準で、100ppm以下が好ましく、20ppm以下がより好ましく、4ppm以下が特に好ましい。下限は質量基準で、10ppb以上とすることができ、100ppb以上とすることができる。これら化合物は、上記の金属の不純物と同様の方法で含有量を抑制することができる。また、公知の測定法により定量することができる。
【0232】
感光性層における水の含有量は、信頼性及びラミネート性を向上させる観点から、0.01質量%以上1.0質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
【0233】
感光性層における有機溶剤の含有量は、ラミネート性を向上させる観点から、0.001質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1.0質量%以下がより好ましい。
【0234】
(感光性層の屈折率)
感光性層の屈折率は、1.47~1.56であることが好ましく、1.49~1.54であることがより好ましい。
(感光性層の色)
感光性層は、無彩色であることが好ましい。具体的には、全反射(入射角:8°、光源:D-65(2°視野))が、CIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*値が10~90であることが好ましく、a*値が-1.0~1.0であることが好ましく、b*値が-1.0~1.0であることが好ましい。
【0235】
(感光性層の形成方法)
感光性層の形成方法としては、制限されず、公知の方法を適用できる。感光性層の形成方法としては、例えば、感光性層用組成物を用いる方法が挙げられる。例えば、被塗布物(例えば、後述の透明フィルム1)上に、感光性層用組成物を塗布し、そして、必要に応じて乾燥させることにより感光性層を形成できる。
【0236】
感光性層用組成物の製造方法としては、例えば、上記各成分及び溶剤を混合する方法が挙げられる。混合方法は、制限されず、公知の方法を適用できる。
【0237】
溶剤としては、制限されず、公知の溶剤を適用できる。溶剤としては、有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名:1-メトキシ-2-プロピルアセテート)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、乳酸エチル、乳酸メチル、カプロラクタム、n-プロパノール、及び2-プロパノールが挙げられる。溶剤としては、メチルエチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶剤、又はジエチレングリコールエチルメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶剤が好ましい。
【0238】
溶剤としては、米国特許公開第2005/282073号明細書の段落[0054]及び段落[0055]に記載のSolventを用いることもでき、この明細書の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0239】
また、溶剤としては、必要に応じ、沸点が180℃~250℃である有機溶剤(高沸点溶剤)を用いることもできる。
【0240】
感光性層用組成物は、1種単独の溶剤を含有していてもよく、又は2種以上の溶剤を含有していてもよい。
【0241】
感光性層用組成物が溶剤を含有する場合、感光性層用組成物の全固形分量は、感光性層用組成物の全質量に対し、5質量%~80質量%であることが好ましく、5質量%~40質量%であることがより好ましく、5質量%~30質量%であることが特に好ましい。
【0242】
感光性層用組成物が溶剤を含有する場合、感光性層用組成物の25℃における粘度は、例えば、塗布性の観点から、1mPa・s~50mPa・sであることが好ましく、2mPa・s~40mPa・sであることがより好ましく、3mPa・s~30mPa・sであることが特に好ましい。粘度は、粘度計を用いて測定する。粘度計としては、例えば、東機産業株式会社製の粘度計(商品名:VISCOMETER TV-22)を好適に用いることができる。但し、粘度計は、上記した粘度計に制限されない。
【0243】
感光性層用組成物が溶剤を含有する場合、感光性層用組成物の25℃における表面張力は、例えば、塗布性の観点から、5mN/m~100mN/mであることが好ましく、10mN/m~80mN/mであることがより好ましく、15mN/m~40mN/mであることが特に好ましい。表面張力は、表面張力計を用いて測定する。表面張力計としては、例えば、協和界面科学株式会社製の表面張力計(商品名:Automatic Surface Tensiometer CBVP-Zを好適に用いることができる。ただし、表面張力計は、上記した表面張力計に制限されない。
【0244】
塗布方法としては、制限されず、公知の方法を適用ができる。塗布方法としては、例えば、印刷法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、スピンコート法、及びダイコート法(すなわち、スリットコート法)が挙げられる。上記の中でも、塗布方法としては、ダイコート法が好ましい。
【0245】
乾燥方法としては、制限されず、公知の方法を適用ができる。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、及び減圧乾燥が挙げられる。上記した方法を単独で又は複数組み合わせて適用することができる。
【0246】
本開示において、「乾燥」とは、組成物に含まれるすべての溶剤を除去することに限られず、組成物に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去することを包含する。
【0247】
[帯電防止層]
本開示に係る感光性転写フィルムは、帯電防止層を有する。本開示に係る感光性転写フィルムが上記感光性層に加えて帯電防止層を有することで、帯電防止層をパターニングすることができる。さらに、本開示に係る感光性転写フィルムが帯電防止層を有することで、帯電防止層上に配置されたフィルム等を剥離する際における静電気の発生を抑制でき、また、設備又は他のフィルム等との擦れによる静電気の発生も抑制できるため、例えば、電子機器における不具合の発生を抑止できる。
【0248】
本開示に係る感光性転写フィルムにおいて、上記感光性層、及び上記帯電防止層は、互いに接触して配置されていることが好ましい。上記感光性層及び上記帯電防止層が互いに接触して配置されていることで、帯電防止層のパターニング性を向上できる。
【0249】
帯電防止層は、帯電防止性を有する層であり、帯電防止剤を少なくとも含有する。帯電防止剤としては、制限されず、公知の帯電防止剤を適用できる。
【0250】
帯電防止層は、帯電防止剤として、イオン性液体、イオン伝導ポリマー、イオン伝導フィラー、及び電気伝導ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。
【0251】
(イオン性液体)
イオン性液体としては、帯電防止層の効果を損なわない範囲において、公知のイオン性液体を適用できる。ここで、「イオン性液体」とは、25℃で液状である溶融塩(すなわち、イオン性化合物)を意味する。
【0252】
イオン性液体は、フルオロ有機アニオン及びオニウムカチオンから構成されるイオン性液体であることが好ましい。イオン性液体が、フルオロ有機アニオン及びオニウムカチオンから構成されるイオン性液体であることで、帯電防止層上に配置されたフィルム等を剥離する際に生じ得る剥離帯電を抑制でき、また、設備又は他のフィルム等との擦れによって生じ得る帯電もより抑制できる。
【0253】
イオン性液体の具体例としては、例えば、1-ヘキシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルピリジニウムペンタフルオロエタンスルホネート、1-エチル-3-メチルピリジニウムヘプタフルオロプロパンスルホネート、1-エチル-3-メチルピリジニウムノナフルオロブタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘプタフルオロプロパンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、トリメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドが挙げられる。
【0254】
イオン性液体は、例えば、IL-AP3(広江化学工業株式会社)として入手可能である。
【0255】
帯電防止層は、1種単独のイオン性液体を含有していてもよく、又は2種以上のイオン性液体を含有していてもよい。
【0256】
(イオン伝導ポリマー)
イオン伝導ポリマーとしては、帯電防止層の効果を損なわない範囲において、公知のイオン伝導ポリマーを適用できる。
【0257】
イオン伝導ポリマーとしては、例えば、4級アンモニウム塩基を有するモノマーを重合又は共重合して得られたイオン導電性重合体が挙げられる。
【0258】
イオン伝導ポリマーは、例えば、アクリット1SXシリーズ(例えば、商品名1SX-1055F、大成ファインケミカル株式会社)として入手可能である。
【0259】
帯電防止層は、1種単独のイオン伝導ポリマーを含有していてもよく、又は2種以上のイオン伝導ポリマーを含有していてもよい。
【0260】
(イオン伝導フィラー)
イオン伝導フィラーとしては、帯電防止層の効果を損なわない範囲において、公知のイオン伝導フィラーを適用できる。
【0261】
イオン伝導フィラーとしては、例えば、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化亜鉛、インジウム、錫、アンチモン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、ヨウ化銅、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、及びATO(酸化アンチモン/酸化錫)が挙げられる。
【0262】
イオン伝導フィラーは、例えば、FSシリーズ(例えば、商品名FS-10D、石原産業株式会社)として入手可能である。
【0263】
帯電防止層は、1種単独のイオン伝導フィラーを含有していてもよく、又は2種以上のイオン伝導フィラーを含有していてもよい。
【0264】
(電気伝導ポリマー)
電気伝導ポリマーとしては、帯電防止層の効果を損なわない範囲において、公知の電気伝導ポリマーを適用できる。
【0265】
電気伝導ポリマーとしては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリエチレンイミン、及びアリルアミン系重合体が挙げられる。具体的な電気伝導ポリマーとしては、例えば、(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)が挙げられる。
【0266】
ポリチオフェンとしては、PEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))を含む高分子化合物が好ましく、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸とからなる導電性高分子化合物(以下、PEDOT/PSSと略す。)が特に好ましい。ポリチオフェンの市販品としては、例えば、Cleviosシリーズ(ヘレオス株式会社)、ORGACONシリーズ(日本アグファマテリアルズ社)、デナトロンP-502RG(ナガセケムテックス株式会社)、同PT-432ME、同N8-2-1、セプルジーダAS-X(信越ポリマー株式会社)、同AS-D、同AS-H、同AS-F、同HC-R、同HC-A、同SAS-P、同SAS-M、及び同SAS-Fが挙げられる。
ポリアニリンとしては、例えば、ORMECONシリーズ(日産化学工業株式会社)が挙げられる。
ポリピロールとしては、例えば、482552(Aldrich株式会社)、及び同735817が挙げられる。
本開示においては、電気伝導ポリマーとして、上記市販品を好ましく用いることができる。
【0267】
帯電防止層は、1種単独の電気伝導ポリマーを含有していてもよく、又は2種以上の電気伝導ポリマーを含有していてもよい。
【0268】
帯電防止層に含有される帯電防止剤は、溶剤分散型の帯電防止剤であることが好ましい。帯電防止剤が溶剤分散型の帯電防止剤であることで、例えば、感光性転写フィルムの製造において、帯電防止層上に感光性層用組成物を塗布した際の帯電防止剤の溶出を抑制できるため、帯電防止剤が検出されない領域を後述の範囲に調節できる。
【0269】
帯電防止層は、1種単独の帯電防止剤を含有していてもよく、又は2種以上の帯電防止剤を含有していてもよい。
【0270】
帯電防止剤の含有量は、帯電防止性の観点から、帯電防止層の全質量に対し、0.1質量%~100質量%であることが好ましい。帯電防止剤が溶剤分散型の帯電防止剤である場合、帯電防止剤の含有量は、帯電防止層の全質量に対し、1質量%~10質量%であることがより好ましく、3質量%~10質量%であることが特に好ましい。帯電防止剤が溶剤分散型の帯電防止剤でない場合、帯電防止剤の含有量は、帯電防止層の全質量に対し、60質量%~100質量%であることがより好ましく、70質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0271】
帯電防止剤は、感光性層の帯電防止層とは反対側の表面から、感光性層及び帯電防止層の合計厚さの40%までの領域において検出されないことが好ましく、80%までの領域において検出されないことがより好ましく、90%までの領域において検出されないことが特に好ましい。帯電防止剤が検出されない領域を上記の範囲にすることで、帯電防止剤が感光性層を経由して他の部材に移動することを抑制できる。例えば、本開示に係る感光性転写フィルムを用いて、表面に電極層(例えば、銀ナノワイヤーを含有する層)を有する基材上に感光性層及び帯電防止層をこの順で積層した場合に、加熱又は湿熱条件下における帯電防止剤の導電層への移動を抑制し、この結果、電極層の劣化を抑制できる。
【0272】
帯電防止剤が検出されない領域は、飛行時間型二次イオン質量分析計(TOF-SIMS (Time of Flight - Secondary Ion Mass Spectrometry))及びイオン銃を用いて、感光性層の帯電防止層とは反対側の表面から、感光性層及び帯電防止層の深さ方向に存在する分子起因の特異的なフラグメントイオンのピーク強度を計測し、次いで、感光性層の帯電防止層とは反対側の表面から帯電防止剤に起因するフラグメントイオンが検出されなかった領域までの長さ(深さ)を、感光性層及び帯電防止層の合計厚さで除算することによって求める。なお、TOF-SIMS法については、具体的には日本表面科学会編「表面分析技術選書 二次イオン質量分析法」丸善株式会社(1999年発行)に記載されている。
【0273】
(他の成分)
帯電防止層は、必要に応じて、帯電防止剤以外の成分をさらに含有していてもよい。帯電防止剤以外の成分としては、制限されず、公知の成分を適用できる。帯電防止剤以外の成分としては、例えば、バインダーポリマー、硬化成分、及び界面活性剤が挙げられる。また、帯電防止剤は、必要に応じて、上記した成分以外の公知の添加剤をさらに含有していてもよい。
-バインダーポリマー-
バインダーポリマーとしては、制限されず、公知の重合体を適用できる。ただし、バインダーポリマーに上記帯電防止剤は含まれない。バインダーポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びアクリル樹脂が挙げられる。
【0274】
バインダーポリマーは、アルカリ可溶性のバインダーポリマーであってもよく、アルカリ不溶性のバインダーポリマーであってもよい。ここで、「アルカリ不溶性」とは、上記した「アルカリ可溶性」に該当しない性質を指す。また、バインダーポリマーとしては、上記「感光性層」の項において説明したアルカリ可溶性アクリル樹脂を適用することもできる。バインダーポリマーがアルカリ可溶性アクリル樹脂である場合、アルカリ可溶性アクリル樹脂の好ましい実施形態は、上記「感光性層」の項において説明したアルカリ可溶性アクリル樹脂と同様である。
【0275】
帯電防止層がバインダーポリマーを含有する場合、帯電防止層のパターニング性(露光部の現像液溶解抑止)の観点から、バインダーポリマーの酸価は、60mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0276】
帯電防止層は、1種単独のバインダーポリマーを含有していてもよく、又は2種以上のバインダーポリマーを含有していてもよい。
【0277】
上記帯電防止剤以外のバインダーポリマーの含有量は、帯電防止層の全質量に対し、0質量%~70質量%であることが好ましく、0質量%~60質量%であることがより好ましく、0質量%~55質量%であることが特に好ましいい。
【0278】
-硬化成分-
硬化成分としては、例えば、重合性化合物、及び光重合開始剤が挙げられる。
【0279】
重合性化合物としては、制限されず、公知の重合性化合物を適用できる。重合性化合物としては、例えば、上記「感光性層」の項において説明したエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物(すなわち、エチレン性不飽和化合物)が挙げられる。帯電防止層におけるエチレン性不飽和化合物の好ましい実施形態は、上記「感光性層」の項において説明したエチレン性不飽和化合物と同様である。
【0280】
光重合開始剤としては、制限されず、公知の光重合開始剤を適用できる。光重合開始剤としては、例えば、上記「感光性層」の項において説明した光重合開始剤が挙げられる。帯電防止層における光重合開始剤の好ましい実施形態は、上記「感光性層」の項において説明した光重合開始剤と同様である。
【0281】
帯電防止層が、酸価が60mgKOH/g以上のバインダーポリマーを含有する場合には、帯電防止層は、硬化成分として、さらに重合性化合物、及び光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0282】
帯電防止層は、1種単独の重合性化合物を含有していてもよく、又は2種以上の重合性化合物を含有していてもよい。
【0283】
帯電防止層が重合性化合物を含有する場合、重合性化合物の含有量は、帯電防止層の全質量に対し、5質量%~60質量%であることが好ましく、5質量%~50質量%であることがより好ましく、5質量%~45質量%であることが特に好ましい。
【0284】
帯電防止層は、1種単独の光重合開始剤を含有していてもよく、又は2種以上の光重合開始剤を含有していてもよい。
【0285】
帯電防止層が重合性化合物を含有する場合、光重合開始剤の含有量は、帯電防止層の全質量に対し、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~7.5質量%であることがより好ましく、0.1質量%~5質量%であることが特に好ましい。
【0286】
-界面活性剤-
界面活性剤としては、例えば、上記「感光性層」の項において説明した界面活性剤が挙げられる。帯電防止層における界面活性剤の好ましい実施形態は、上記「感光性層」の項において説明した界面活性剤と同様である。
【0287】
帯電防止層は、1種単独の界面活性剤を含有していてもよく、又は2種以上の界面活性剤を含有していてもよい。
【0288】
帯電防止層が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、帯電防止層の全質量に対し、0質量%を超え1質量%以下であることが好ましい。
【0289】
(表面抵抗値)
帯電防止層の表面抵抗値は、1.0×1012Ω/□以下であることが好ましく、1.0×1011Ω/□以下であることがより好ましく、5.0×1010Ω/□以下であることが特に好ましい。帯電防止層の表面抵抗が上記範囲内であることで、帯電防止層の表面抵抗を下げることができるため、帯電防止層上に配置されたフィルム等を剥離する際における静電気の発生を抑制できる。
【0290】
帯電防止層の表面抵抗値の下限は、制限されない。帯電防止層の表面抵抗値は、1.0×106Ω/□以上であることが好ましく、1.0×107Ω/□以上であることがより好ましい。
【0291】
帯電防止層の表面抵抗値は、抵抗率計(株式会社三菱ケミカルアナリテック製 ハイレスタ-UX MCP-HT800)を用いて測定する。
【0292】
(帯電防止層の厚さ)
帯電防止層の厚さは、1μm以下であることが好ましく、0.6μm以下であることがより好ましく、0.4μm以下であることがさらに好ましく、0.2μm以下であることが特に好ましい。帯電防止層の厚さが1μm以下であることで、ヘイズを小さくできる。
【0293】
帯電防止層の厚さの下限は、制限されない。帯電防止層の厚さが小さいほど、ヘイズを小さくできる。帯電防止層の厚さは、製造適性の観点から、0.01μm以上であることが好ましい。
【0294】
帯電防止層の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により測定した任意の5点の平均値として算出する。
【0295】
(帯電防止層の色)
帯電防止層は、無彩色であることが好ましい。具体的には、全反射(入射角:8°、光源:D-65(2°視野))が、CIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*値が10~90であることが好ましく、a*値が-1.0~1.0であることが好ましく、b*値が-1.0~1.0であることが好ましい。
【0296】
(帯電防止層の形成方法)
帯電防止層の形成方法としては、制限されず、公知の方法を適用できる。帯電防止層の形成方法としては、例えば、帯電防止層用組成物を用いる方法が挙げられる。例えば、被塗布物(例えば、感光性層)上に、帯電防止層用組成物を塗布し、そして、必要に応じて乾燥させることにより帯電防止層を形成できる。
【0297】
帯電防止層用組成物の製造方法としては、例えば、上記各成分及び溶剤を混合する方法が挙げられる。混合方法は、制限されず、公知の方法を適用できる。
【0298】
溶剤としては、制限されず、公知の溶剤を適用できる。溶剤としては、例えば、水、及び上記「感光性層の形成方法」の項において説明した有機溶剤が挙げられる。
【0299】
帯電防止層用組成物は、1種単独の溶剤を含有していてもよく、又は2種以上の溶剤を含有していてもよい。
【0300】
帯電防止層用組成物が溶剤を含有する場合、帯電防止層用組成物の全固形分量は、帯電防止層用組成物の全質量に対し、0.5質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~7質量%であることがより好ましく、0.5質量%~5質量%であることが特に好ましい。
【0301】
塗布方法としては、制限されず、公知の方法を適用ができる。塗布方法としては、例えば、印刷法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、スピンコート法、及びダイコート法(すなわち、スリットコート法)が挙げられる。上記の中でも、塗布方法としては、ダイコート法が好ましい。
【0302】
乾燥方法としては、制限されず、公知の方法を適用ができる。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、及び減圧乾燥が挙げられる。上記した方法を単独で又は複数組み合わせて適用することができる。
【0303】
[透明フィルム1]
本開示に係る感光性転写フィルムは、上記感光性層の上記帯電防止層が配置された側とは反対側に、透明フィルム1をさらに有することが好ましい。具体的に、本開示に係る感光性転写フィルムは、透明フィルム1と、感光性層と、帯電防止層と、をこの順で有することが好ましい。本開示に係る感光性転写フィルムが透明フィルム1を有することで、少なくとも感光性層及び帯電防止層を支持でき、また、感光性層を保護できる。
【0304】
本開示に係る感光性転写フィルムが透明フィルム1を有する場合、透明フィルム1は、感光性層に対して帯電防止層が配置された側とは反対側の最外層であることが好ましい。
【0305】
透明フィルム1としては、制限されず、公知の透明フィルムを適用できる。透明フィルム1としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。上記の中でも、透明フィルム1は、光学特性の観点から、ポリプロピレンフィルム、又はポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0306】
透明フィルム1は、例えば、王子エフテックス株式会社製のアルファン(登録商標)FG-201、東レフィルム加工株式会社製のセラピール(登録商標)25WZ、東レ株式会社製のルミラー(登録商標)16QS62、及びルミラー(登録商標)16FB40として入手することもできる。
【0307】
透明フィルム1の厚さは、取り扱いやすさ、及び汎用性の観点から、5μm~200μmであることが好ましく、10μm~150μmであることがより好ましく、10μm~50μmであることが更に好ましい。
【0308】
透明フィルム1の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により測定した任意の5点の平均値として算出する。
【0309】
透明フィルム1と感光性層との間の接着力は、透明フィルム1を感光性層から剥離し易くするため、透明フィルム2と帯電防止層との間の接着力よりも小さいことが好ましい。
【0310】
また、透明フィルム1は、透明フィルム1中に含まれる直径80μm以上のフィッシュアイ数が5個/m2以下であることが好ましい。なお、「フィッシュアイ」とは、例えば、材料の熱溶融、混練、押出、2軸延伸、及びキャスティングによりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものである。
【0311】
透明フィルム1に含まれる直径3μm以上の粒子の数が30個/mm2以下であることが好ましく、10個/mm2以下であることがより好ましく、5個/mm2以下であることが更に好ましい。これにより、透明フィルム1に含まれる粒子に起因する凹凸が感光性層に転写されることにより生じる欠陥を抑制することができる。
【0312】
巻き取り性を付与する観点から、透明フィルム1の感光性層と接する面とは反対側の面の算術平均粗さRaが、0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましく、0.03μm以上であることが更に好ましい。一方で、上記算術平均粗さRaは、0.50μm未満であることが好ましく、0.40μm以下であることがより好ましく、0.30μm以下であることが更に好ましい。
【0313】
転写時の欠陥抑制の観点から、透明フィルム1の感光性層と接する面の算術平均粗さRaは、0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましく、0.03μm以上であることが更に好ましい。一方で、一方で、上記算術平均粗さRaは、0.50μm未満であることが好ましく、0.40μm以下であることがより好ましく、0.30μm以下であることが更に好ましい。
【0314】
[透明フィルム2]
本開示に係る感光性転写フィルムは、上記帯電防止層の上記感光性層が配置された側とは反対側に、透明フィルム2をさらに有することが好ましい。具体的に、本開示に係る感光性転写フィルムは、感光性層と、帯電防止層と、透明フィルム2と、をこの順で有することが好ましい。本開示に係る感光性転写フィルムが透明フィルム2を有することで、少なくとも感光性層及び帯電防止層を支持でき、また、帯電防止層を保護できる。さらに、本開示に係る感光性転写フィルムが透明フィルム2を有することで、後述するように透明フィルム2を介して感光性層を露光することもできる。
【0315】
本開示に係る感光性転写フィルムが透明フィルム2を有する場合、透明フィルム2は、帯電防止層に対して感光性層が配置された側とは反対側の最外層であることが好ましい。
【0316】
また、本開示に係る感光性転写フィルムが透明フィルム1及び透明フィルム2を有する場合、本開示に係る感光性転写フィルムは、透明フィルム1と、感光性層と、帯電防止層と、透明フィルム2と、をこの順で有することが好ましい。
【0317】
本開示に係る感光性転写フィルムの一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本開示に係る感光性転写フィルムの一例を示す概略断面図である。
図1に示される感光性転写フィルム110は、透明フィルム10と、感光性層20と、帯電防止層30と、透明フィルム40と、をこの順で有する。透明フィルム10は、透明フィルム1の一例である。透明フィルム40は、透明フィルム2の一例である。
【0318】
透明フィルム2としては、制限されず、公知の透明フィルムを適用できる。透明フィルム2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。上記の中でも、透明フィルム2は、光学特性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0319】
透明フィルム2は、例えば、コスモシャイン(登録商標)A4100、コスモシャイン(登録商標)A4300、コスモシャイン(登録商標)A8300(以上、東洋紡株式会社製)、東レ株式会社製のルミラー(登録商標)16FB40、及び東レ株式会社製のルミラー(登録商標)16QS62として入手することもできる。
【0320】
透明フィルム2の厚さは、取り扱いやすさ、及び汎用性の観点から、5μm~200μmであることが好ましく、10μm~150μmであることがより好ましく、10μm~50μmであることが更に好ましい。
【0321】
透明フィルム2の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により測定した任意の5点の平均値として算出する。
【0322】
露光感度向上の観点から、透明フィルム2のヘイズは、小さい方が好ましく、2%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。ハンドリング性向上の観点から、透明フィルム2のヘイズは、0.1%以上であることが好ましい。
【0323】
露光感度向上及び解像度向上の観点から、透明フィルム2に含まれる微粒子、異物、及び欠陥(例えば、ピンホール)の数は少ない方が好ましい。透明フィルム2に含まれる直径1μm以上の、微粒子、異物、及び欠陥の数は、50個/10mm2以下であることが好ましく、10個/10mm2以下であることがより好ましい。ハンドリング性向上の観点から、透明フィルム2に含まれる直径1μm以上の、微粒子、異物、及び欠陥の数は、1個/10mm2以上であることが好ましい。
【0324】
透明フィルム2の好ましい態様としては、例えば、特開2014-85643号公報の段落[0017]~段落[0018]、特開2016-27363号公報の段落[0019]~段落[0026]、国際公開第2012/081680号の段落[0041]~段落[0057]、及び国際公開第2018/179370号の段落[0029]~段落[0040]に記載があり、これらの公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0325】
また、透明フィルム2の特に好ましい態様としては、厚さ16μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び、厚さ10μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを挙げることができる。
【0326】
[屈折率調整層]
本開示に係る感光性転写フィルムは、屈折率調整層をさらに有していてもよい。本開示に係る感光性転写フィルムが屈折率調整層を有する場合、本開示に係る感光性転写フィルムは、上記感光性層の上記帯電防止層が配置された側とは反対側に、屈折率調整層を有することが好ましい。また、本開示に係る感光性転写フィルムが透明フィルム1を有する場合、屈折率調整層は、透明フィルム1と感光性層との間に配置されていることが好ましい。
【0327】
屈折率調整層としては、制限されず、公知の屈折率調整層を適用できる。屈折率調整層に含有される材料としては、例えば、バインダー、及び粒子が挙げられる。
【0328】
バインダーとしては、制限されず、公知のバインダーを適用できる。バインダーとしては、例えば、上記「感光性層」の項において説明したアルカリ可溶性アクリル樹脂、及び上記「帯電防止層」の項において説明したバインダーポリマーが挙げられる。
【0329】
粒子としては、制限されず、公知の粒子を適用できる。粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム粒子(ZrO2粒子)、酸化ニオブ粒子(Nb2O5粒子)、酸化チタン粒子(TiO2粒子)、及び二酸化珪素粒子(SiO2粒子)が挙げられる。
【0330】
また、屈折率調整層は、金属酸化抑制剤を含有することが好ましい。屈折率調整層が金属酸化抑制剤を含有することで、屈折率用調整層に接する金属の酸化を抑制できる。
【0331】
金属酸化抑制剤としては、例えば、分子内に窒素原子を含む芳香環を有する化合物が好ましく挙げられる。具体的な金属酸化抑制剤としては、例えば、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、テトラゾール、メルカプトチアジアゾール、及びベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0332】
屈折率調整層の屈折率は、1.50以上であることが好ましく、1.55以上であることがより好ましく、1.60以上であることが特に好ましい。
【0333】
屈折率調整層の屈折率の上限は、特に制限されない。屈折率調整層の屈折率は、2.10以下であることが好ましく、1.85以下であることがより好ましい。
【0334】
屈折率調整層の厚さは、500nm以下であることが好ましく、110nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。
【0335】
屈折率調整層の厚さは、20nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。
【0336】
屈折率調整層の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により測定した任意の5点の平均値として算出する。
【0337】
屈折率調整層の形成方法としては、制限されず、公知の方法を適用できる。屈折率調整層の形成方法としては、例えば、屈折率調整層用組成物を用いる方法が挙げられる。例えば、被塗布物上に、屈折率調整層用組成物を塗布し、そして、必要に応じて乾燥させることにより屈折率調整層を形成できる。
【0338】
屈折率調整層用組成物の製造方法としては、例えば、上記各成分及び溶剤を混合する方法が挙げられる。混合方法は、制限されず、公知の方法を適用できる。
【0339】
溶剤としては、制限されず、公知の溶剤を適用できる。溶剤としては、例えば、水、及び上記「感光性層の形成方法」の項において説明した有機溶剤が挙げられる。
【0340】
塗布方法及び乾燥方法としては、それぞれ、上記「感光性層の形成方法」の項において説明した塗布方法及び乾燥方法を適用できる。
【0341】
[熱可塑性樹脂層]
本開示に係る感光性転写フィルムは、熱可塑性樹脂層をさらに有していてもよい。本開示に係る感光性転写フィルムが熱可塑性樹脂層を有する場合、上記帯電防止層の上記感光性層が配置された側とは反対側に、熱可塑性樹脂層を有することが好ましい。また、本開示に係る感光性転写フィルムが透明フィルム2を有する場合、熱可塑性樹脂層は、帯電防止層と透明フィルム2との間に配置されていることが好ましい。
【0342】
熱可塑性樹脂は、基材表面の凹凸を吸収するクッション材として機能する。このため、感光性転写フィルムを基材に貼り合わせる際における気泡の発生を抑制できる。
【0343】
熱可塑性樹脂層は、アルカリ可溶性を有することが好ましい。また、熱可塑性樹脂層は、凹凸に応じて変形し得る性質を有していることが好ましい。
【0344】
また、熱可塑性樹脂層は、現像処理によって除去され得るものであってもよく、透明フィルム2の剥離とともに感光性層から剥離され得るものであってもよい。
【0345】
熱可塑性樹脂層は、特開平5-72724号公報に記載の有機高分子物質を含むことが好ましく、ヴィカー(Vicat)法(具体的には、アメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質を含むことがより好ましい。
【0346】
熱可塑性樹脂層の厚さは、例えば、3μm~30μmであることが好ましく、4μm~25μmであることがより好ましく、5μm~20μmであることが特に好ましい。
熱可塑性樹脂層の厚さが3μm以上であると、基材表面の凹凸に対する追従性がより向上するため、基材表面の凹凸をより効果的に吸収できる。
熱可塑性樹脂層の厚さが30μm以下であると、製造適性がより向上するため、例えば、熱可塑性樹脂層を塗布形成する際の乾燥(いわゆる、溶剤除去のための乾燥)の負荷がより軽減され、また、転写後の熱可塑性樹脂層の現像時間がより短縮される。
【0347】
熱可塑性樹脂層は、溶剤及び熱可塑性の有機高分子を含む熱可塑性樹脂層形成用組成物を被塗布物上に塗布し、そして、必要に応じて乾燥させることによって形成され得る。
熱可塑性樹脂層の形成方法における塗布及び乾燥の方法の具体例は、それぞれ感光性層の形成方法における塗布及び乾燥の具体例と同様である。
溶剤は、熱可塑性樹脂層を形成する高分子成分を溶解するものであれば、特に制限されない。
溶剤としては、有機溶剤(例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、n-プロパノール、及び2-プロパノール)が挙げられる。
【0348】
熱可塑性樹脂層は、100℃で測定した粘度が1,000Pa・s~10,000Pa・sであることが好ましい。また、100℃で測定した熱可塑性樹脂層の粘度が、100℃で測定した感光性層の粘度よりも低いことが好ましい。
【0349】
[中間層]
本開示に係る感光性転写フィルムは、中間層をさらに有していてもよい。本開示に係る感光性転写フィルムが中間層を有する場合、上記帯電防止層の上記感光性層が配置された側とは反対側に、中間層を有することが好ましい。本開示に係る感光性転写フィルムが透明フィルム2を有する場合、中間層は、帯電防止層と透明フィルム2との間に配置されていることが好ましい。本開示に係る感光性転写フィルムが熱可塑性樹脂層を有する場合、中間層は、帯電防止層と熱可塑性樹脂層との間に配置されていることが好ましい。
【0350】
中間層に含まれる成分としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びセルロースからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーが挙げられる。
また、中間層としては、特開平5-72724号公報に「分離層」として記載されているものを用いることもできる。
【0351】
中間層は、例えば、熱可塑性樹脂層を溶解しない溶剤、及び、中間層の成分としての上記ポリマーを含む中間層形成用組成物を被塗布物上に塗布し、そして、必要に応じて乾燥させることによって形成され得る。
中間層の形成方法における塗布及び乾燥の方法の具体例は、それぞれ感光性層の形成方法における塗布及び乾燥の具体例と同様である。
【0352】
[感光性転写フィルムの層構成]
本開示に係る感光性転写フィルムの層構成の例を以下に示す。なお、以下に示す層構成において、「/」は、層と層との境界を表す。
(1)感光性層/帯電防止層
(2)透明フィルム1/感光性層/帯電防止層
(3)感光性層/帯電防止層/透明フィルム2
(4)透明フィルム1/感光性層/帯電防止層/透明フィルム2
(5)透明フィルム1/屈折率調整層/感光性層/帯電防止層/透明フィルム2
(6)透明フィルム1/感光性層/帯電防止層/熱可塑性樹脂層/透明フィルム2
(7)透明フィルム1/感光性層/帯電防止層/中間層/熱可塑性樹脂層/透明フィルム2
【0353】
[感光性転写フィルムの製造方法]
本開示に係る感光性転写フィルムの製造方法は、制限されず、公知の方法を適用できる。本開示に係る感光性転写フィルムは、例えば、上記各層の形成方法を利用することによって製造できる。
【0354】
以下、透明フィルム1と、感光性層と、帯電防止層と、透明フィルム2と、をこの順で有する感光性転写フィルムの製造方法の一例について説明する。上記感光性転写フィルムの製造方法は、例えば、透明フィルム1上に感光性層を形成する工程と、上記感光性層上に帯電防止層を形成する工程と、上記帯電防止層上に透明フィルム2を貼り合わせる工程と、を有する。感光性層を形成する工程としては、上記「感光性層の形成方法」の項において説明した方法を適用できる。また、帯電防止層を形成する工程としては、上記「帯電防止層の形成方法」の項において説明した方法を適用できる。
【0355】
透明フィルム1と、感光性層と、帯電防止層と、透明フィルム2と、をこの順で有する感光性転写フィルムの製造方法においては、透明フィルム2上に、帯電防止層用組成物、及び感光性層用組成物をこの順で塗布する工程を含むことが好ましい。透明フィルム2上に、帯電防止層、及び感光性層をこの順で形成することにより、帯電防止剤が検出されない領域を上述の範囲に容易に調節できる。
【0356】
<帯電防止パターンの製造方法>
本開示に係る帯電防止パターンの製造方法は、本開示に係る感光性転写フィルムを用いる方法であれば制限されない。本開示に係る帯電防止パターンの製造方法は、基材上に、上記感光性転写フィルムにおける上記感光性層及び上記帯電防止層をこの順で積層する工程(以下、「積層工程」ともいう。)と、上記感光性層をパターン露光する工程(以下、「露光工程」ともいう。)と、上記感光性層を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう。)と、をこの順番に含むことが好ましい。本開示に係る帯電防止パターンの製造方法は、上記工程を含むことで、帯電防止層のパターニング性に優れ、かつ、透明性及び耐屈曲性に優れる帯電防止パターンを形成できる。
【0357】
[積層工程]
積層工程においては、基材上に、上記感光性転写フィルムにおける上記感光性層及び上記帯電防止層をこの順で積層する。
【0358】
積層工程に使用される感光性転写フィルムとしては、上記「感光性転写フィルム」の項において説明した感光性転写フィルムを適用することができ、好ましい実施形態も同様である。
【0359】
基材としては、ガラス基材、又は樹脂基材が好ましい。また、基材は、透明な基材であることが好ましく、透明な樹脂基材であることがより好ましい。
【0360】
ガラス基材としては、例えば、コーニング社のゴリラガラス(登録商標)等の強化ガラスを用いることができる。
【0361】
樹脂基材としては、光学的に歪みがない樹脂基材及び透明度が高い樹脂基材の少なくとも一方を用いることが好ましい。樹脂基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリイミド(PI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、及びシクロオレフィンポリマー(COP)が挙げられる。
【0362】
透明な基材の材質としては、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報、及び特開2010-257492号公報に記載の材質が好ましい。
【0363】
基材の屈折率は、1.50~1.52であることが好ましい。
【0364】
基材の厚さは、制限されず、例えば用途に応じて、10μm~1mmの範囲内で適宜設定すればよい。
【0365】
基材の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)又は光学顕微鏡による断面観察により測定した任意の5点の平均値として算出する。
【0366】
基材は、少なくとも一方の表面に電極層を有していてもよい。電極層としては、金属、又は金属酸化物を含む層が挙げられる。
【0367】
金属としては、例えば、金、銀、銅、モリブデン、アルミニウム、チタン、クロム、亜鉛、及びマンガン、並びにこれらの金属元素の2種以上からなる合金が挙げられる。
【0368】
金属酸化物としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、及びIZO(酸化インジウム亜鉛)が挙げられる。
【0369】
電極層は、透明電極層であることが好ましい。透明電極層としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)層、IZO(酸化インジウム亜鉛)層、及び銀ナノワイヤーを含有する層が挙げられる。上記の中でも、透明電極層は、ITO(酸化インジウムスズ)層、又は銀ナノワイヤーを含有する層であることが好ましく、銀ナノワイヤーを含有する層であることがより好ましい。
【0370】
基材上に、感光性転写フィルムにおける感光性層及び帯電防止層をこの順で積層する方法としては、例えば、基材及び感光性転写フィルムを貼り合わせる方法(以下、「ラミネート」ともいう。)が挙げられる。具体的な方法として、例えば、感光性転写フィルムにおける感光性層と基材とが接触するように、基材及び感光性転写フィルムを貼り合わせる方法が挙げられる。上記方法により基材及び感光性転写フィルムを貼り合わせることで、基材と、感光性層と、帯電防止層と、をこの順で有する構造体が形成される。
【0371】
感光性転写フィルムが上記透明フィルム1を有する場合には、感光性転写フィルムから透明フィルム1を剥離した後、基材及び感光性転写フィルムを貼り合わせる。具体的に、まず、感光性転写フィルムから透明フィルム1を剥離することにより感光性層を露出させ、次いで、露出した感光性層と基材とが接触するように、基材及び感光性転写フィルムを貼り合わせる。
【0372】
感光性転写フィルムが上記透明フィルム2を有する場合には、感光性転写フィルムから透明フィルム2を剥離せずに、基材及び感光性転写フィルムを貼り合わせることができる。そして、基材及び感光性転写フィルムを貼り合わせた後、得られる構造体(例えば、基材/感光性層/帯電防止層/透明フィルム2の積層構造を有する構造体)から透明フィルム2を剥離してもよい。また、構造体から透明フィルム2を剥離せず、すなわち、透明フィルム2を残したまま、後述の露光工程を行ってもよい。
【0373】
感光性転写フィルムが感光性層及び帯電防止層以外の層(例えば、屈折率調節層、熱可塑性樹脂層、及び中間層が挙げられる。以下、本段落において「他の層」という。)を有する場合、他の層は、感光性層と帯電防止層との位置関係を維持しながら、感光性層及び帯電防止層とともに基材上に積層される。例えば、感光性転写フィルムが屈折率調整層、感光性層、及び帯電防止層をこの順で有する場合、積層工程においては、基材上に、屈折率調整層、感光性層、及び帯電防止層をこの順で積層する。
【0374】
ラミネートは、公知のラミネーターを用いて行うことができる。ラミネーターとしては、例えば、真空ラミネーター、及びオートカットラミネーターが挙げられる。
【0375】
ラミネート条件としては、制限されず、一般的な条件を適用できる。
【0376】
ラミネート温度は、80℃~150℃であることが好ましく、90℃~150℃であることがより好ましく、100℃~150℃であることが特に好ましい。ゴムローラーを備えたラミネーターを用いる場合、ラミネート温度は、ゴムローラーの温度を指す。
【0377】
ラミネート時の基材温度は、特に制限されない。ラミネート時の基材温度としては、例えば、10℃~150℃が挙げられ、20℃~150℃が好ましく、30℃~150℃がより好ましい。
【0378】
基材として樹脂基材を用いる場合には、ラミネート時の基材温度としては、10℃~80℃が好ましく、20℃~60℃がより好ましく、30℃~50℃が特に好ましい。
【0379】
ラミネート時の線圧としては、0.5N/cm~20N/cmが好ましく、1N/cm~10N/cmがより好ましく、1N/cm~5N/cmが特に好ましい。
【0380】
ラミネート時の搬送速度(ラミネート速度)としては、0.5m/分~5m/分が好ましく、1.5m/分~3m/分がより好ましい。
【0381】
[露光工程]
露光工程においては、上記感光性層をパターン露光する。ここで、「パターン露光」とは、パターン状に露光する態様、すなわち、露光部と非露光部とが存在する態様の露光を指す。感光性層をパターン露光することで、感光性層における露光部が硬化する。一方、感光性層における非露光部は硬化せず、後述する現像工程において除去される。また、帯電防止層が硬化成分を含有する場合には、帯電防止層における露光部も硬化する。
【0382】
パターン露光は、マスクを介した露光でもよく、又はレーザー等を用いたデジタル露光でもよい。
【0383】
パターン露光の光源としては、少なくとも感光性層を硬化し得る波長域の光(例えば、365nm又は405nm)を照射できるものであれば適宜選定して用いることができる。
【0384】
光源としては、例えば、各種レーザー、発光ダイオード(LED)、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、及びメタルハライドランプが挙げられる。
【0385】
露光量は、5mJ/cm2~200mJ/cm2であることが好ましく、10mJ/cm2~200mJ/cm2であることがより好ましい。
【0386】
パターンの形状としては、制限されず、例えば用途に応じて適宜設定すればよい。
【0387】
上記積層工程において透明フィルム2を有する感光性転写フィルムを用いた場合には、透明フィルム2を剥離した後にパターン露光を行ってもよく、透明フィルム2を剥離する前にパターン露光を行い、その後、透明フィルム2を剥離してもよい。
【0388】
また、露光工程では、パターン露光後であって後述の現像工程前に、感光性層に対して熱処理〔いわゆる、PEB(Post Exposure Bake)〕を施してもよい。
【0389】
[現像工程]
現像工程においては、上記感光性層を現像する。感光性層を現像することで、感光性層における非露光部が除去されるとともに、感光性層における非露光部の上に配置された帯電防止層も除去される。この結果、硬化した感光性層のパターン(すなわち、レジストパターン)の上に、パターン状の帯電防止層(すなわち、帯電防止パターン)が形成される。よって、本開示に係る帯電防止パターンの製造方法により形成される帯電防止パターンは、硬化した感光性層のパターンの帯電を防止できる。
【0390】
現像に用いる現像液としては、制限されず、公知の現像液を適用できる。現像液としては、特開平5-72724号公報に記載の現像液が挙げられる。
【0391】
現像工程においては、現像液として、アルカリ性水溶液を用いることが好ましい。アルカリ性水溶液に含まれ得るアルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、及びコリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)が挙げられる。
【0392】
アルカリ性水溶液の25℃におけるpHは、8~13であることが好ましく、9~12であることがより好ましく、10~12であることが特に好ましい。
【0393】
アルカリ性水溶液中におけるアルカリ性化合物の含有量は、アルカリ性水溶液の全質量に対し、0.1質量%~5質量%であることが好ましく、0.1質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0394】
現像液は、水に対して混和性を有する有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、乳酸エチル、乳酸メチル、ε-カプロラクタム、及びN-メチルピロリドンが挙げられる。
現像液中の有機溶剤の濃度は、0.1質量%~30質量%であることが好ましい。
【0395】
現像液は、公知の界面活性剤を含んでもよい。現像液中の界面活性剤の濃度は、0.01質量%~10質量%であることが好ましい。
【0396】
現像液の液温度は、20℃~40℃であることが好ましい。
【0397】
現像の方式としては、例えば、パドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像、ディップ現像等の方式が挙げられる。
【0398】
シャワー現像を行う場合、パターン露光後の感光性層に現像液をシャワー状に吹き付けることにより、感光性層の非露光部を除去する。
【0399】
感光性層と熱可塑性樹脂層及び中間層の少なくとも一方とを有する感光性転写フィルムを用いた場合には、積層工程後であって感光性層の現像の前に、感光性層の溶解性が低いアルカリ性の液をシャワー状に吹き付け、熱可塑性樹脂層及び中間層の少なくとも一方(両方存在する場合には両方)を予め除去してもよい。
【0400】
また、現像の後に、洗浄剤等をシャワーにより吹き付けつつ、ブラシ等で擦ることにより、現像残渣を除去することが好ましい。
【0401】
現像工程は、上記現像を行う段階と、上記現像によって得られたパターンを加熱処理(以下、「ポストベーク」ともいう。)する段階と、を含んでいてもよい。上記ポストベークにより、透明電極層の抵抗値を調整することもできる。基材が樹脂基材である場合には、ポストベークの温度は、100℃~160℃であることが好ましく、130℃~160℃であることがより好ましい。
【0402】
感光性層がカルボキシ基を有する(メタ)アクリル樹脂を含有する場合には、ポストベークにより、上記(メタ)アクリル樹脂の少なくとも一部をカルボン酸無水物に変化させることができる。カルボン酸無水物に変化させると、現像性、及び硬化膜の強度に優れる。
【0403】
現像工程は、上記現像を行う段階と、上記現像によって得られたパターンを露光(以下、「ポスト露光」ともいう。)する段階と、を含んでいてもよい。現像工程がポスト露光する段階及びポストベークする段階の両方を含む場合、ポスト露光の後、ポストベークを実施することが好ましい。
【0404】
パターン露光、現像等については、例えば、特開2006-23696号公報の段落[0035]~段落[0051]の記載を参照することもできる。
【0405】
本開示に係る帯電防止パターンの製造方法は、上記した各工程以外の工程を含んでいてもよい。本開示に係る帯電防止パターンの製造方法は、例えば、通常のフォトリソグラフィ工程に設けられることがある工程(例えば、洗浄工程)を含んでいてもよい。
【0406】
<積層体>
本開示に係る積層体は、基材と、透明電極層と、パターン形状を有する、感光性組成物の硬化物層と、上記硬化物層の上記パターン形状と同一のパターン形状を有する帯電防止層と、をこの順で有する。本開示に係る積層体が上記構成を有することで、パターン状の電極保護膜(すなわち、感光性組成物の硬化物層)の帯電を防止する。
【0407】
(基材)
本開示に係る積層体は、基材を有する。
【0408】
基材としては、制限されず、公知の基材を適用できる。基材としては、例えば、上記「帯電防止パターンの製造方法」の項において説明した基材が挙げられる。本開示に係る積層体における基材の好ましい実施形態は、上記「帯電防止パターンの製造方法」の項において説明した基材と同様である。
【0409】
基材の厚さは、制限されず、例えば、10μm~1mmの範囲内で適宜設定すればよい。
【0410】
基材の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により測定した任意の5点の平均値として算出する。
【0411】
(透明電極層)
本開示に係る積層体は、透明電極層を有する。
【0412】
透明電極層としては、制限されず、公知の透明電極層を適用できる。透明電極層としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)層、IZO(酸化インジウム亜鉛)層、銅層、及び銀ナノワイヤーを含有する層が挙げられる。上記の中でも、透明電極層は、ITO(酸化インジウムスズ)層、又は銀ナノワイヤーを含有する層であることが好ましく、銀ナノワイヤーを含有する層であることがより好ましい。
【0413】
透明電極層の厚さは、導電性、及び透明性の観点から、0.01μm~1μmであることが好ましく、0.03μm~0.5μmであることがより好ましい。
【0414】
透明電極層の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により測定した任意の5点の平均値として算出する。
【0415】
透明電極層の形成方法としては、制限されず、公知の方法を適用できる。透明電極層の形成方法としては、例えば、スパッタ法、及び塗布法が挙げられる。
【0416】
(感光性組成物の硬化物層)
本開示に係る積層体は、パターン形状を有する、感光性組成物の硬化物層(以下、単に「硬化物層」ともいう。」を有する。本開示に係る積層体において、硬化物層は、透明電極層を保護する層、すなわち、電極保護膜として機能できる。
【0417】
本開示において、「感光性組成物の硬化物層」とは、感光性組成物が硬化してなる層を意味する。感光性組成物が溶剤を含有する場合、「感光性組成物の硬化物層」とは、感光性組成物の固形分が硬化してなる層を意味する。
【0418】
感光性組成物を前駆体とする硬化物層は、後述する感光性組成物を構成する成分を含有する。感光性組成物に含有される硬化性の成分(例えば、重合性化合物)は、硬化物層において例えば重合硬化物として存在し得る。また、硬化物層は、本開示に係る積層体の効果を妨げない範囲内であれば、感光性組成物を硬化する成分(例えば、重合性化合物、及び光重合開始剤)、及び溶剤を含有していてもよい。
【0419】
硬化物層は、アクリル樹脂を含有することが好ましい。硬化物層がアクリル樹脂を含有することで、透明性を向上できる。
【0420】
アクリル樹脂における(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の合計割合は、30モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましい。
【0421】
硬化物層におけるアクリル樹脂は、アルカリ可溶性アクリル樹脂であってもよい。アクリル樹脂がアルカリ可溶性アクリル樹脂であることで、例えば、後述するように、パターン露光及び現像を経てパターン形状を有する硬化物層を形成する際の現像性を向上できる。
【0422】
硬化物層におけるアルカリ可溶性アクリル樹脂の好ましい実施形態は、上記「感光性層」の項において説明したアルカリ可溶性アクリル樹脂と同様である。
【0423】
硬化物層は、1種単独のアクリル樹脂を含有していてもよく、又は2種以上のアクリル樹脂を含有していてもよい。
【0424】
アクリル樹脂の含有量は、透明性の観点から、硬化物層の全質量に対し、10質量%~90質量%であることが好ましく、20質量%~80質量%であることがより好ましく、30質量%~70質量%であることが特に好ましい。
【0425】
硬化物層のパターン形状としては、制限されず、例えば用途に応じて適宜設定すればよい。パターン形状としては、例えば、直線状、曲線状、ダイヤモンド形状、及び格子状が挙げられる。
【0426】
硬化物層の厚さは、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましく、4μm以下であることが特に好ましい。感光性層の厚さが10μm以下であることで、耐屈曲性を向上できる。
【0427】
硬化物層の厚さは、製造適性の観点から、0.05μm以上であることが好ましい。
【0428】
硬化物層の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により測定した任意の5点の平均値として算出する。
【0429】
硬化物層の形成方法としては、感光性組成物を硬化する方法であれば制限されない。硬化物層の形成方法としては、例えば、基材上に感光性組成物を塗布することにより形成した層(以下、「感光性組成物層」ともいう。)を、パターン露光し、次いで、現像する方法が挙げられる。上記方法においては、帯電防止層とともに感光性組成物層をパターン露光及び現像することが好ましい。また、感光性組成物が溶剤を含有する場合、感光性組成物の塗布後であってパターン露光前に、感光性組成物を乾燥させることが好ましい。
【0430】
感光性組成物としては、硬化性の成分を含有する組成物であれば制限されない。感光性組成物は、アクリル樹脂、重合性化合物、及び光重合開始剤を含有することが好ましい。重合性化合物及び光重合開始剤を含有する感光性組成物は、光を照射されることで硬化できる。
【0431】
感光性組成物におけるアクリル樹脂は、硬化物層の一成分として上記で説明したとおりであり、好ましい実施形態も同様である。
【0432】
重合性化合物としては、制限されず、公知の重合性化合物を適用できる。重合性化合物としては、例えば、上記「感光性層」の項において説明したエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物(すなわち、エチレン性不飽和化合物)が挙げられる。感光性組成物におけるエチレン性不飽和化合物の好ましい実施形態は、上記「感光性層」の項において説明したエチレン性不飽和化合物と同様である。
【0433】
光重合開始剤としては、制限されず、公知の光重合開始剤を適用できる。光重合開始剤としては、例えば、上記「感光性層」の項において説明した光重合開始剤が挙げられる。感光性組成物における光重合開始剤の好ましい実施形態は、上記「感光性層」の項において説明した光重合開始剤と同様である。
【0434】
感光性組成物は、必要に応じて、溶剤を含有していてもよい。溶剤としては、例えば、上記「感光性層の形成方法」の項において説明した溶剤を適用できる。
【0435】
感光性組成物は、必要に応じて、上記以外の成分として、上記「感光性層」の項において説明した各成分(例えば、界面活性剤)を含有していてもよい。
【0436】
感光性組成物の製造方法は、制限されず、公知の方法を適用できる。例えば、感光性組成物は、上記各成分、及び必要に応じて溶剤を混合することにより製造できる。
【0437】
塗布方法及び乾燥方法としては、それぞれ、上記「感光性層の形成方法」の項において説明した塗布方法及び乾燥方法を適用できる。
【0438】
パターン露光方法及び現像方法としては、それぞれ、上記「帯電防止パターンの製造方法」の項において説明したパターン露光方法及び現像方法を適用できる。
【0439】
また、硬化物層の形成方法としては、後述するとおり、本開示に係る感光性転写フィルムを用いる方法も挙げられる。
【0440】
(帯電防止層)
本開示に係る積層体は、上記硬化物層の上記パターン形状と同一のパターン形状を有する帯電防止層を有する。本開示に係る積層体が硬化物層のパターン形状と同一のパターン形状を有する帯電防止層を有することで、パターン状の電極保護膜(すなわち、感光性組成物の硬化物層)の帯電を防止する。
【0441】
本開示において、「同一のパターン形状」との用語は、完全に同一のパターン形状である場合に限られず、本開示に係る積層体の効果を奏する範囲内において、例えば製造上の誤差等によりパターン形状が完全に一致しない場合を含む。
【0442】
本開示に係る積層体における帯電防止層としては、例えば、上記「感光性転写フィルム」の項において説明した帯電防止層を適用できる。本開示に係る積層体における帯電防止層の好ましい実施形態は、上記「感光性転写フィルム」の項において説明した帯電防止層と同様である。以下、帯電防止層の好ましい実施形態を説明する。ただし、帯電防止層の好ましい実施形態は、以下の実施形態に制限されるものではなく、上記「感光性転写フィルム」の項において説明した帯電防止層の好ましい実施形態を適宜適用できる。
【0443】
帯電防止層は、帯電防止剤として、イオン性液体、イオン伝導ポリマー、イオン伝導フィラー、及び電気伝導ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。イオン性液体、イオン伝導ポリマー、イオン伝導フィラー、及び電気伝導ポリマーは、それぞれ、上記「感光性転写フィルム」の項において説明したイオン性液体、イオン伝導ポリマー、イオン伝導フィラー、及び電気伝導ポリマーと同義である。
【0444】
帯電防止剤は、硬化物層の帯電防止層とは反対側の表面から、硬化物層及び帯電防止層の合計厚さの40%までの領域において検出されないことが好ましく、80%までの領域において検出されないことがより好ましく、90%までの領域において検出されないことが特に好ましい。帯電防止剤が検出されない領域は、上記「感光性転写フィルム」の項において説明した測定方法に準ずる方法(すなわち、TOF-SIMS)によって測定する。本開示に係る積層体において、帯電防止剤が検出されない領域をTOF-SIMSによって測定する場合、帯電防止層の表面から硬化物層に向かって、帯電防止層及び硬化物層の深さ方向に存在する分子起因の特異的なフラグメントイオンのピーク強度を計測することが好ましい。
【0445】
帯電防止層の表面抵抗値は、1.0×1012Ω/□以下であることが好ましく、1.0×1011Ω/□以下であることがより好ましく、5.0×1010Ω/□以下であることが特に好ましい。帯電防止層の表面抵抗が上記範囲内であることで、帯電防止層の表面抵抗を下げることができるため、帯電防止層上に配置されたフィルム等を剥離する際における静電気の発生を抑制できる。
【0446】
帯電防止層の表面抵抗値の下限は、制限されない。帯電防止層の表面抵抗値は、1.0×106Ω/□以上であることが好ましく、1.0×107Ω/□以上であることがより好ましい。
【0447】
帯電防止層の表面抵抗値は、抵抗率計(株式会社三菱ケミカルアナリテック製 ハイレスタ-UX MCP-HT800)を用いて測定する。
【0448】
帯電防止層の厚さは、1μm以下であることが好ましく、0.6μm以下であることがより好ましく、0.4μm以下であることがさらに好ましく、0.2μm以下であることが特に好ましい。帯電防止層の厚さが1μm以下であることで、ヘイズを小さくできる。
【0449】
帯電防止層の厚さの下限は、制限されない。帯電防止層の厚さが小さいほど、ヘイズを小さくできる。帯電防止層の厚さは、製造適性の観点から、0.01μm以上であることが好ましい。
【0450】
帯電防止層の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により測定した任意の5点の平均値として算出する。
【0451】
帯電防止層の形成方法としては、制限されず、公知の方法を適用できる。帯電防止層の形成方法として、例えば、帯電防止層用組成物を用いる方法が挙げられる。例えば、感光性組成物層の上に、帯電防止層用組成物を塗布し、そして、必要に応じて乾燥した後、パターン露光及び現像を行うことによって、パターン形状を有する帯電防止層を形成できる。
【0452】
帯電防止層用組成物については、上記「帯電防止層の形成方法」において説明したとおりである。
【0453】
塗布方法及び乾燥方法としては、それぞれ、上記「帯電防止層の形成方法」の項において説明した塗布方法及び乾燥方法を適用できる。
【0454】
パターン露光方法及び現像方法としては、それぞれ、上記「帯電防止パターンの製造方法」の項において説明したパターン露光方法及び現像方法を適用できる。
【0455】
また、硬化物層の形成方法としては、後述するとおり、本開示に係る感光性転写フィルムを用いる方法も挙げられる。
【0456】
(他の層)
本開示に係る積層体は、上記した層以外の層(以下、本段落において「他の層」という。)をさらに有していてもよい。他の層としては、例えば、屈折率調節層が挙げられる。屈折率調節層は、透明電極層と硬化物層との間に配置されることが好ましい。屈折率調節層については、上記「屈折率調節層」の項において説明したとおりである。
【0457】
(積層体の色)
本開示に係る積層体は、無彩色であることが好ましい。具体的には、全反射(入射角8°、光源:D-65(2°視野))が、CIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*値が10~90であることが好ましく、a*値が-1.0~1.0であることが好ましく、b*値が-1.0~1.0であることが好ましい。
【0458】
(積層体の製造方法)
本開示に係る積層体の製造方法は、制限されず、公知の方法を適用できる。本開示に係る積層体は、例えば、上記各層の形成方法を利用することによって製造できる。
【0459】
本開示に係る積層体の製造方法としては、本開示に係る感光性転写フィルムを用いる方法が好ましい。感光性転写フィルムを用いて積層体を製造する方法としては、例えば、上記「帯電防止パターンの製造方法」の項において説明した積層工程、露光工程、及び現像工程を行う方法が挙げられる。積層工程においては、例えば、基材上に形成された透明電極層と感光性転写フィルムとを貼り合わせることで、基材と、透明電極層と、感光性層と、帯電防止層と、をこの順で有する構造体が形成される。得られた構造体を、パターン露光し、次いで現像することにより、積層体を得ることができる。
【0460】
<タッチパネル>
本開示に係るタッチパネルは、本開示に係る積層体を備える。本開示に係るタッチパネルが上記積層体を備えることで、パターン状の電極保護膜の帯電を防止する。
【0461】
本開示に係るタッチパネルにおける積層体は、上記「積層体」の項において説明した積層体と同義であり、好ましい実施形態も同様である。
【0462】
本開示に係るタッチパネルにおいて、透明電極層は、タッチパネルの枠部に配置される引き回し配線(いわゆる、取り出し配線)を形成していてもよく、又はタッチパネルの視認部に配置される電極を形成していてもよい。積層体における透明電極層は、タッチパネルの視認部に配置される電極を形成していることが好ましい。
【0463】
本開示に係るタッチパネルは、透明電極層の基材が配置された面とは反対側の面に、引き回し配線を有していてもよい。また、本開示に係るタッチパネルは、基材と透明電極層との間に、引き回し配線を有していてもよい。
【0464】
引き回し配線の材料としては、金属が好ましい。金属としては、例えば、金、銀、銅、モリブデン、アルミニウム、チタン、クロム、亜鉛、及びマンガン、並びにこれらの金属元素の2種以上からなる合金が挙げられる。上記の中でも、金属としては、銅、モリブデン、アルミニウム、又はチタンが好ましく、電気抵抗が低い点で、銅がより好ましい。一方、銅は容易に酸化されて変色するため、後述の処理液による処理を施すことが好ましい。
【0465】
本開示に係るタッチパネルの検出方法としては、例えば、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式、及び光学方式が挙げられる。上記の中でも、検出方法は、静電容量方式であることが好ましい。
【0466】
タッチパネル型としては、例えば、いわゆる、インセル型(例えば、特表2012-517051号公報の
図5、
図6、
図7、
図8に記載のもの)、いわゆる、オンセル型(例えば、特開2013-168125号公報の
図19に記載のもの、特開2012-89102号公報の
図1及び
図5に記載のもの)、OGS(One Glass Solution)型、TOL(Touch-on-Lens)型(例えば、特開2013-54727号公報の
図2に記載のもの)、その他の構成(例えば、特開2013-164871号公報の
図6に記載のもの)、及び各種アウトセル型(いわゆる、GG、G1・G2、GFF、GF2、GF1、G1Fなど)が挙げられる。
【0467】
ここで、本開示に係るタッチパネルの第1具体例について、
図2を参照して説明する。
図2は、本開示に係るタッチパネルの第1具体例を示す概略断面図である。
【0468】
図2に示すように、タッチパネル90は、画像表示領域74、及び画像非表示領域75(すなわち、枠部)を有する。
【0469】
タッチパネル90は、基板50の両面にそれぞれタッチパネル用透明電極を有する。詳細には、タッチパネル90は、基板50の一方の面に第1のタッチパネル用透明電極70を有し、基板50の他方の面に第2のタッチパネル用透明電極72を有する。
【0470】
タッチパネル90の画像非表示領域75において、第1のタッチパネル用透明電極70、及び第2のタッチパネル用透明電極72にそれぞれ引き回し配線56が接続している。引き回し配線56としては、例えば、銅配線、又は銀配線が挙げられる。
【0471】
タッチパネル90では、基板50の一方の面において、第1のタッチパネル用透明電極70及び引き回し配線56を覆うように、硬化物層22が配置されており、基板50の他方の面において、第1のタッチパネル用透明電極72及び引き回し配線56を覆うように硬化物層22が配置されている。
【0472】
タッチパネル90において、硬化物層22の基板50が配置された面とは反対側の面に帯電防止層30が配置されている。
【0473】
タッチパネル90において、基板50の一方の面に屈折率調整層が配置されていてもよい。
【0474】
次に、本開示に係るタッチパネルの第2具体例について、
図3を参照して説明する。
図3は、本開示に係るタッチパネルの第2具体例を示す概略断面図である。
【0475】
図3に示すように、タッチパネル92は、画像表示領域74、及び画像非表示領域75(すなわち、枠部)を有する。
【0476】
タッチパネル92の画像表示領域74において、基板50の一方の面に第1のタッチパネル用透明電極70が配置され、基板50の他方の面に第2のタッチパネル用透明電極72が配置されている。
【0477】
タッチパネル92の画像非表示領域75において、基板50の両面にそれぞれ引き回し配線56が配置されている。引き回し配線56としては、例えば、銅配線、又は銀配線が挙げられる。引き回し配線56は、硬化物層22、及び、第1のタッチパネル用透明電極70又は第2のタッチパネル用透明電極72に囲まれるように配置されている。
【0478】
タッチパネル92の画像非表示領域75において、基板50の一方の面に配置された引き回し配線56に第1のタッチパネル用透明電極70が接続しており、基板50の他方の面に配置された引き回し配線56に第2のタッチパネル用透明電極72が接続している。
【0479】
タッチパネル92では、基板50の一方の面において、第1のタッチパネル用透明電極70を覆うように、硬化物層22が配置されており、基板50の他方の面において、第2のタッチパネル用透明電極72を覆うように硬化物層22が配置されている。硬化物層22は、電極の保護膜として機能する。
【0480】
タッチパネル92において、硬化物層22の基板50が配置された面とは反対側の面に帯電防止層30が配置されている。
【0481】
タッチパネル92において、基板50の一方の面に屈折率調整層が配置されていてもよい。
【0482】
[タッチパネルの製造方法]
本開示に係るタッチパネルの製造方法としては、制限されず、公知の方法を適用できる。本開示に係るタッチパネルの製造方法においては、例えば、本開示に係る帯電防止パターンの製造方法を適用できる。例えば、少なくとも一方の表面に透明電極層を有する基材に、本開示に係る感光性転写フィルムを貼り合わせた後、パターン露光及び現像を行うことによって、本開示に係るタッチパネルを製造できる。
【0483】
以下、本開示に係るタッチパネルの好ましい製造方法について説明する。
【0484】
本開示に係るタッチパネルの製造方法の第1実施形態は、基材を準備する工程と、上記基材上に銀導電性材料を用いてタッチパネル用透明電極を形成する工程と、上記タッチパネル用透明電極上に金属層を形成する工程と、上記金属層を、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアゾール化合物、及びチアジアゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のアゾール化合物(以下、「特定アゾール化合物」という場合がある。)を含有する処理液を用いて処理する工程と、上記金属層から引き回し配線を形成する工程と、上記基材の上記引き回し配線及び上記タッチパネル用透明電極が配置された面側に、本開示に係る感光性転写フィルムにおける上記感光性層及び上記帯電防止層をこの順で積層する工程と、上記感光性層と上記帯電防止層とをパターン露光する工程と、上記感光性層と上記帯電防止層とを現像してパターンを形成する工程と、をこの順に含む。本開示に係るタッチパネルの製造方法の第1実施形態は、上記工程を含むことで、パターン状の電極保護膜の帯電を防止することが可能であるタッチパネルを製造することができる。また、本開示に係るタッチパネルの製造方法の第1実施形態によれば、金属層を、特定アゾール化合物を含有する処理液を用いて処理することで、引き回し配線(特に、銅を含む引き回し配線)の変色を抑制することができる。
【0485】
基材としては、例えば、上記「帯電防止パターンの製造方法」の項において説明した基材を適用することができる。
【0486】
銀導電性材料としては、銀を含有する導電性材料であれば制限されない。銀導電性材料は、銀ナノワイヤーを含有することが好ましい。
【0487】
銀導電性材料を用いてタッチパネル用透明電極を形成する方法としては、例えば、フォトリソグラフィが挙げられる。例えば、基材上に配置された銀導電性材料を、フォトリソグラフィによって加工することで、タッチパネル用透明電極を形成することができる。
【0488】
金属層を形成する方法としては、制限されず、公知の方法を適用できる。金属層を形成する方法としては、例えば、スパッタ法、及び塗布法が挙げられる。
【0489】
金属層に含まれる金属としては、例えば、金、銀、銅、モリブデン、アルミニウム、チタン、クロム、亜鉛、及びマンガン、並びにこれらの金属元素の2種以上からなる合金が挙げられる。上記の中でも、金属層に含まれる金属としては、銅、モリブデン、アルミニウム、又はチタンが好ましく、電気抵抗が低い点で、銅がより好ましい。
【0490】
特定アゾール化合物としては、特に制限されない。金属層(特に銅を含む金属層)の変色をより抑制する観点からは、特定アゾール化合物の共役酸のpKaは、4.00以下であることが好ましく、2.00以下であることがより好ましい。特定アゾール化合物の共役酸のpKaの下限は、特に制限されない。なお、本明細書における共役酸のpKaは、ACD/ChemSketch(ACD/Labs 8.00 Release Product Version:8.08)により求めた計算値である。
【0491】
特定アゾール化合物の分子量は、特に制限されず、例えば、1,000以下であることが好ましい。
【0492】
特定アゾール化合物の具体例としては、上記「感光性層」の項において説明した複素環化合物が好ましく適用される。これらの中でも、特定アゾール化合物としては、金属層(特に銅を含む金属層)の変色をより抑制する観点から、トリアゾール化合物、及びテトラゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のアゾール化合物が好ましく、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、及び5-アミノ-1H-テトラゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアゾール化合物がより好ましく、1,2,4-トリアゾール、及び5-アミノ-1H-テトラゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアゾール化合物が更に好ましい。
【0493】
処理液は、特定アゾール化合物を、1種のみ含有していてもよく、又は2種以上含有していてもよい。
【0494】
処理液中における特定アゾール化合物の含有率は、処理液の全質量に対して、0.005質量%以上が好ましく、0.008質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましい。処理液中における特定アゾール化合物の含有率の上限は、特に制限されない。処理液中における特定アゾール化合物の含有率は、特定アゾール化合物の溶解性から、処理液の全質量に対して、5質量%以下であることが好ましい。
【0495】
処理液は、水を含有することが好ましい。水としては、特に制限されないが、不純物を含まないことが好ましい。水の例としては、蒸留水、イオン交換水、純水等が挙げられる。処理液中の水の含有率は、特に制限されず、例えば、処理液の全質量に対して、70質量%以上99.9質量%以下が好ましく、90.0質量%以上99.9質量%以下がより好ましく、95.0質量%以上99.9質量%以下が更に好ましく、98.0質量%以上99.9質量%以下が特に好ましい。
【0496】
処理液は、水に対して混和性を有する有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、乳酸エチル、乳酸メチル、ε-カプロラクタム、N-メチルピロリドン等が挙げられる。処理液が有機溶剤を含有する場合、処理液中の有機溶剤の含有率は、処理液の全質量に対して、0.1質量%以上30質量%以下が好ましい。
【0497】
処理液は、公知の界面活性剤を含有してもよい。処理液が界面活性剤を含有する場合、処理液中の界面活性剤の含有率は、処理液の全質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0498】
処理液を用いた処理の方式としては、例えば、パドル処理、シャワー処理、シャワー、スピン処理、ディップ処理等の方式が挙げられる。
【0499】
処理液の温度は、20℃~40℃であることが好ましい。
【0500】
金属層から引き回し配線を形成する方法としては、例えば、フォトリソグラフィが挙げられる。例えば、フォトリソグラフィによって金属層を加工することで、引き回し配線を形成することができる。
【0501】
基材の引き回し配線及びタッチパネル用透明電極が配置された面側に、感光性転写フィルムにおける感光性層及び帯電防止層をこの順で積層する工程の方法、及び条件としては、上記「積層工程」の項において説明した方法、及び条件を適用できる。基材の引き回し配線及びタッチパネル用透明電極が配置された面側に、感光性転写フィルムにおける感光性層及び帯電防止層をこの順で積層することで、引き回し配線、及びタッチパネル用透明電極を覆うように感光性層及び帯電防止層が基材上に積層される。
【0502】
感光性層と帯電防止層とをパターン露光する工程の方法、及び条件としては、上記「露光工程」の項において説明した方法、及び条件を適用できる。
【0503】
感光性層と帯電防止層とを現像してパターンを形成する工程の方法、及び条件としては、上記「現像工程」の項において説明した方法、及び条件を適用できる。
【0504】
本開示に係るタッチパネルの製造方法の第2実施形態は、基材を準備する工程と、上記基材上に金属層を形成する工程と、上記金属層を、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアゾール化合物、及びチアジアゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のアゾール化合物を含有する処理液を用いて処理する工程と、上記金属層から引き回し配線を形成する工程と、上記引き回し配線上に銀導電性材料を用いてタッチパネル用透明電極を形成する工程と、上記基材の上記引き回し配線及び上記タッチパネル用透明電極が配置された面側に、本開示に係る感光性転写フィルムにおける上記感光性層及び上記帯電防止層をこの順で積層する工程と、上記感光性層と上記帯電防止層とをパターン露光する工程と、上記感光性層と上記帯電防止層とを現像してパターンを形成する工程と、をこの順に含む。本開示に係るタッチパネルの製造方法の第2実施形態は、上記工程を含むことで、パターン状の電極保護膜の帯電を防止することが可能であるタッチパネルを製造することができる。また、本開示に係るタッチパネルの製造方法の第2実施形態によれば、金属層を、特定アゾール化合物を含有する処理液を用いて処理することで、引き回し配線(特に、銅を含む引き回し配線)の変色を抑制することができる。
【0505】
本開示に係るタッチパネルの製造方法の第2実施形態は、上記した本開示に係るタッチパネルの製造方法の第1実施形態において、タッチパネル用透明電極、及び引き回し配線を形成する順番を変更したものである。すなわち、本開示に係るタッチパネルの製造方法の第2実施形態では、基材上に、引き回し配線、及びタッチパネル用透明電極をこの順で形成するのに対して、本開示に係るタッチパネルの製造方法の第1実施形態では、基材上に、タッチパネル用透明電極、及び引き回し配線をこの順で形成する。本開示に係るタッチパネルの製造方法の第2実施形態の各工程の方法、及び条件としては、上記した本開示に係るタッチパネルの製造方法の第1実施形態の方法、及び条件を適用できる。
【0506】
<タッチパネル付き表示装置>
本開示に係るタッチパネル付き表示装置は、本開示に係るタッチパネルと、表示装置と、を備える。本開示に係るタッチパネル付き表示装置が上記タッチパネル及び表示装置を備えることで、パターン状の電極保護膜の帯電を防止することが可能となる。
【0507】
また、本開示に係るタッチパネル付き表示装置は、タッチパネルを介して画像が表示され、タッチパネル上で操作を行うことができる。
【0508】
本開示に係るタッチパネル付き表示装置における積層体は、上記「積層体」の項において説明した積層体と同義であり、好ましい実施形態も同様である。
【0509】
本開示に係るタッチパネル付き表示装置におけるタッチパネルは、上記「タッチパネル」の項において説明したとおりである。
【0510】
本開示に係るタッチパネル付き表示装置における表示装置としては、制限されず、公知の表示装置を適用できる。表示装置としては、例えば、液晶表示装置、及び有機EL(Electro Luminescence)表示装置が挙げられる。
【0511】
本開示に係るタッチパネル付き表示装置の製造方法としては、制限されず、公知の方法を適用できる。
【実施例】
【0512】
以下に実施例を挙げて本開示を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本開示の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、及び「%」は質量基準である。なお、以下の実施例において、樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算で求めた重量平均分子量である。また、酸価は、理論酸価を用いた。
【0513】
<重合体P-1~P-6の合成>
下記重合体P-1~P-6をそれぞれ合成した。下記重合体P-1~P-6における各構成単位の比は、モル比である。
【0514】
・重合体P-1:下記に示す構造を有する重合体(重量平均分子量:30,000、アルカリ可溶性アクリル樹脂)
【0515】
【0516】
・重合体P-2:下記に示す構造を有する重合体(重量平均分子量:30,000、アルカリ可溶性アクリル樹脂)
【0517】
【0518】
・重合体P-3:下記に示す構造を有する重合体(重量平均分子量:29,000、アルカリ可溶性アクリル樹脂)
【0519】
【0520】
・重合体P-4:下記に示す構造を有する重合体(重量平均分子量:29,000、アルカリ可溶性アクリル樹脂)
【0521】
【0522】
・重合体P-5:下記に示す構造を有する重合体(重量平均分子量:30,000、アルカリ可溶性アクリル樹脂)
【0523】
【0524】
・重合体P-6:下記に示す構造を有する重合体(重量平均分子量:30,000)
【0525】
【0526】
<重合体P-7の合成>
反応器(撹拌機、還流冷却器、及び窒素導入菅付き)中、窒素雰囲気下、N,N-ジメチルアセトアミド700g、及びジエチレングリコールジメチルエーテル350gに、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン173.2g(0.593モル)を溶解し、次に、得られた溶液を撹拌しながら乾燥固体のピロメリット酸二無水物126.8g(0.582モル、モル比:0.981)を少量ずつ添加した。上記ピロメリット酸二無水物を添加する間の反応液の温度を25~30℃に保ち、添加後20時間窒素雰囲気下で撹拌を継続することによって、固形分が22.2質量%のポリアミド酸である重合体P-7溶液を得た。
【0527】
<重合体P-8の合成>
反応器(撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、及び窒素導入菅付き)中、窒素雰囲気下、ピロメリット酸二無水物(株式会社ダイセル製)15.3g、及びN,N-ジメチルアセトアミド(株式会社ダイセル製)75gを撹拌しながら内部温度を50℃まで昇温した。上記各成分の混合物の温度を50℃に調節した上で、滴下ロートからポリプロピレングリコールジアミン(ジェファーミンD400、サンテクノケミカル社製)6.36gを少量ずつ2時間かけて滴下した。滴下終了後、50℃で1時間撹拌を継続させた。その後、反応液の温度を30℃以下に冷却し、次いで、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(三井化学株式会社製)を16.4g添加した後、20時間窒素雰囲気下で撹拌を継続することによって、固形分が33.7質量%のポリアミド酸である重合体P-8溶液を得た。
【0528】
<重合体P-9の合成>
プロピレングリコールモノメチルエーテル82.4gをフラスコに仕込み窒素気流下90℃に加熱した。この液にスチレン38.4g、ジシクロペンタニルメタクリレート30.1g、メタクリル酸34.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテル20gに溶解させた溶液、及び、重合開始剤V-601(富士フイルム和光純薬株式会社製)5.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート43.6gに溶解させた溶液を同時に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間おきに3回V-601を0.75g添加した。その後更に3時間反応させた。その後プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート58.4g、プロピレングリコールモノメチルエーテル11.7gで希釈した。空気気流下、反応液を100℃に昇温し、テトラエチルアンモニウムアセテート0.80g、p-メトキシフェノール0.26gを添加した。これにグリシジルメタクリレート(日油社製ブレンマーGH)25.5gを20分かけて滴下した。これを100℃で7時間反応させ、アルカリ可溶アクリル重合体P-9の溶液を得た。得られた溶液の固形分濃度は36.2%であった。得られた重合体P-9の溶液を乾燥し、溶媒を蒸発させ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで再溶解して固形分濃度27.0質量%の重合体P-9の溶液を得た。GPCにおける標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は17000、分散度は2.4、ポリマーの酸価は94mgKOH/gであった。ガスクロマトグラフィーを用いて測定した残存モノマー量はいずれのモノマーにおいてもポリマー固形分に対し0.1質量%未満であった。
【0529】
<感光性層用組成物の調製>
下記表1~表3に示す組成の感光性層用組成物A-1~A-31をそれぞれ調製した。表1~表3において各成分の欄に記載された数値の単位は、質量部である。
【0530】
【0531】
【0532】
【0533】
<帯電防止層用組成物の調製>
下記表4に示す組成の帯電防止層用組成物B-1~B-7をそれぞれ調製した。表4において各成分の欄に記載された数値の単位は、質量部である。
【0534】
【0535】
<実施例1~15、及び比較例2~3>
透明フィルム1(セラピール25WZ、厚さ:25μm、東レフィルム加工株式会社製、離型層付きポリエチレンテレフタレートフィルム)の離型層が形成された面に、スリット状ノズルを用いて、表6及び表7の記載に従って感光性層用組成物(A-1~A-6)を塗布し、次いで、120℃の乾燥ゾーンで溶剤を揮発させることにより、感光性層を形成した。感光性層用組成物の塗布量は、表6及び表7に記載された感光性層の厚さになるように調節した。上記感光性層上に、スリット状ノズルを用いて、表6及び表7の記載に従って帯電防止層用組成物(B-1~B-6)を塗布し、次いで、乾燥させることにより、帯電防止層を形成した。帯電防止層用組成物の塗布量は、表6及び表7に記載された帯電防止層の厚さになるように調節した。次に、上記帯電防止層上に、透明フィルム2(ルミラー16QS62、厚さ:16μm、東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレートフィルム)を圧着した。
以上の手順により、実施例1~15、及び比較例2~3の感光性転写フィルムをそれぞれ作製した。上記各感光性転写フィルムは、透明フィルム1、感光性層、帯電防止層、及び透明フィルム2をこの順で有する。
【0536】
<比較例1>
帯電防止層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較例1の感光性転写フィルムを作製した。比較例1の感光性転写フィルムは、透明フィルム1、感光性層、及び透明フィルム2をこの順で有する。
【0537】
<比較例4>
透明フィルム2(ポリエチレンテレフタレートフィルムG2、帝人フィルムソリューション株式会社製)に、帯電防止層用組成物B-7をグラビアコータ-により塗工厚み6μmで塗布し、次いで、80℃で4分間乾燥することにより、厚さが2μmの帯電防止層を形成した。上記帯電防止層の上に、感光性層用組成物A-7をカンマコーターにより塗工厚み50μmで塗布し、次いで、90℃で15分間乾燥することにより、厚さが20μmの感光性層を作製した。さらに、上記感光性層の上に、透明フィルム1(ポリエチレンフィルムGF-1、タマポリ株式会社製)をラミネート機により、50℃で0.5MPaの圧力で貼り合わせることにより、比較例4の感光性転写フィルムを作製した。比較例4の感光性転写フィルムは、透明フィルム1、感光性層、帯電防止層、及び透明フィルム2をこの順で有する。
【0538】
<比較例5>
透明フィルム1(セラピール25WZ、厚さ:25μm、東レフィルム加工株式会社製、離型層付きポリエチレンテレフタレートフィルム)の離型層が形成された面に、感光性層用組成物A-7をグラビアコータ-により塗工厚み27μmで塗布し、次いで、80℃で4分間乾燥することにより、厚さが9μmの感光性層を形成した。上記感光性層の上に、スリット状ノズルを用いて帯電防止層用組成物B-1を塗布し、次いで、乾燥させることにより、厚さが0.1μmの帯電防止層を形成した。次に、上記帯電防止層の上に、透明フィルム2(ルミラー16QS62、厚さ:16μm、東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレートフィルム)を圧着することにより、比較例5の感光性転写フィルムを作製した。比較例5の感光性転写フィルムは、透明フィルム1、感光性層、帯電防止層、及び透明フィルム2をこの順で有する。
【0539】
<合成例1:ポリスチレンスルホン酸>
1000mLのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、次いで、80℃にて撹拌しながら、予め10mLの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤水溶液を20分間滴下した後、溶液を12時間撹拌した。
得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム含有水溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000mL添加した後、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有水溶液の1000mL溶液を除去した。残液に2000mLのイオン交換水を加えた後、限外ろ過法を用いて約2000mLの溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。
さらに、得られたろ液に約2000mLのイオン交換水を添加した後、限外ろ過法を用いて約2000mLの溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形物を得た。得られたポリスチレンスルホン酸についてGPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)カラムを用いたHPLC(高速液体クロマトグラフィー)システムを用いて、昭和電工株式会社製プルランを標準物質として重量平均分子量を測定した結果、分子量は30万であった。
【0540】
<分散液AS-1の調製>
14.2gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、合成例1で得られたポリスチレンスルホン酸36.7gを2000mLのイオン交換水に溶かした溶液と、を20℃で混合した。これにより得られた混合溶液を20℃に保ち撹拌を行いながら、200mLのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくりと添加し、3時間撹拌して反応させた。
得られた反応液に2000mLのイオン交換水を添加した後、限外ろ過法を用いて約2000mL溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
次に、得られた溶液に、200mLの10質量%硫酸水溶液と2000mLのイオン交換水とを加え、限外ろ過法を用いて約2000mLの溶液を除去した。残液に2000mLのイオン交換水を加えた後、限外ろ過法を用いて約2000mLの溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mLのイオン交換水を加えた後、限外ろ過法を用いて約2000mLの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、1.2質量%の青色のPEDOT/PSSの水溶液を得た。
上記で得たPEDOT/PSSの水溶液100gと、100gのメタノールとを混合し、50℃で撹拌しながら、200gのメタノールと12.5gのC12、C13混合高級アルコールグリシジルエーテルとの混合液を60分間滴下して、紺色の析出物を得た。この析出物を濾過回収した後、メチルエチルケトン(MEK)に分散させ、PEDOT/PSSの1質量%のMEK分散液(AS-1)を得た。
【0541】
<帯電防止層用組成物の調製>
下記表5に示す組成の帯電防止層用組成物B-8~B-13をそれぞれ調製した。表5において各成分の欄に記載された数値の単位は、質量部である。
【0542】
【0543】
<実施例16>
透明フィルム2(ルミラー16QS62、厚さ:16μm、東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレートフィルム)に、帯電防止層用組成物B-8をスリット状ノズルを用いて乾燥後の厚みが0.1μmとなるように塗布し、次いで、80℃で2分間乾燥することにより、帯電防止層を形成した。上記帯電防止層の上に、感光性層用組成物A-3をスリット状ノズルを用いて乾燥後の厚みが8.0μmとなるように塗布し、次いで、120℃の乾燥ゾーンで溶剤を揮発させることにより、感光性層を作製した。さらに、上記感光性層の上に、透明フィルム1(ルミラー16QS62、厚さ:16μm、東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレートフィルム)をラミネート機により、50℃で0.5MPaの圧力で貼り合わせることにより、実施例16の感光性転写フィルムを作製した。
【0544】
<実施例17>
帯電防止層用組成物としてB-9を使用した以外、実施例16と同様にして実施例17の感光性転写フィルムを作製した。
【0545】
<実施例18>
帯電防止層用組成物としてB-10を使用した以外、実施例16と同様にして実施例18の感光性転写フィルムを作製した。
【0546】
<実施例19>
帯電防止層用組成物としてB-11を使用した以外、実施例16と同様にして実施例19の感光性転写フィルムを作製した。
【0547】
<実施例20>
帯電防止層用組成物としてB-12を使用した以外、実施例16と同様にして実施例20の感光性転写フィルムを作製した。
【0548】
<実施例21>
感光性層の乾燥後の厚みが4.0μmとなるように感光性層用組成物A-3を塗布した以外、実施例19と同様にして実施例21の感光性転写フィルムを作製した。
【0549】
<実施例22>
感光性層の乾燥後の厚みが1.0μmとなるように感光性層用組成物A-3を塗布した以外、実施例19と同様にして実施例22の感光性転写フィルムを作製した。
【0550】
<実施例23>
感光性層の乾燥後の厚みが0.5μmとなるように感光性層用組成物A-3を塗布した以外、実施例19と同様にして実施例23の感光性転写フィルムを作製した。
【0551】
以上の手順により、実施例16~23の感光性転写フィルムをそれぞれ作製した。上記各感光性転写フィルムは、透明フィルム2、帯電防止層、感光性層、及び透明フィルム1をこの順で有する。
【0552】
<実施例24~51>
表9~表12の記載に従って感光性層用組成物(A-8~A-31)を、感光性層用組成物の塗布量が表9~表12に記載された感光性層の厚さになるように調節した。上記感光性層上に、スリット状ノズルを用いて、表9~表12の記載に従って帯電防止層用組成物(B-11~B-13)を塗布し、次いで、乾燥させることにより、帯電防止層を形成した。帯電防止層用組成物の塗布量は、表9~表12に記載された帯電防止層の厚さになるように調節した。次に、上記帯電防止層上に、透明フィルム2(ルミラー16QS62、厚さ:16μm、東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレートフィルム)を圧着した。以上の手順により、実施例24~51の感光性転写フィルムをそれぞれ作製した。上記各感光性転写フィルムは、透明フィルム1、感光性層、帯電防止層、及び透明フィルム2をこの順で有する。
【0553】
<表面抵抗値の測定>
実施例1~51及び比較例2~3の各感光性転写フィルムについて、透明フィルム1を剥離した後、露出した感光性層の表面をガラス基材(Eagle XG、厚さ:0.7mm、コーニング社製)にラミネートすることにより、透明フィルム2/帯電防止層/感光性層/ガラス基材の積層構造を有する構造体をそれぞれ得た。ラミネート条件は、ロール温度:110℃、線圧:0.6MPa、線速度(ラミネート速度):2.0m/分とした。上記各構造体から透明フィルム2を剥離し、次いで、帯電防止層/感光性層/ガラス基材の3層の積層構造を有する構造体を、温度23℃、湿度55%の条件下で24時間調湿した後、印加電圧1000V下において抵抗率計(株式会社三菱ケミカルアナリテック製 ハイレスタ-UX MCP-HT800)を用いて帯電防止層の表面抵抗値を測定した。また、上記と同様の方法により、比較例1の感光性転写フィルムを用いて、感光性層/ガラス基材の積層構造を有する構造体を作製した後、感光性層の表面抵抗値を測定した。
また、比較例4~5の各感光性転写フィルムについては、透明フィルム1を剥離した後、露出した感光性層の表面をガラス基材(EagleXG、厚さ:0.7mm、コーニング社製)にラミネートして、透明フィルム2/帯電防止層/感光性層/ガラス基材の積層構造を有する構造体をそれぞれ得た。ラミネート条件は、真空度を0.5hPaとし、プレス圧(加圧)を0.5MPaとし、プレス温度(ドライフィルムの温度)を80℃とし、加圧時間を90秒とした。次に、上記各構造体について、透明フィルム2の上から、露光マスクを介さずに600mJ/cm2の露光量で露光を行った。露光機は、ランプに高圧水銀ランプを用いているHMW-532D(株式会社オーク製作所製)を用いた。さらに、透明フィルム2を剥がした後、140℃で20分間、180℃で20分間、次いで240℃で20分間加熱することにより熱硬化を行った。次に、帯電防止層/感光性層/ガラス基材の3層の積層構造を有する構造体を、温度23℃、湿度55%の条件下で24時間調湿した後、印加電圧1000V下において抵抗率計(株式会社三菱ケミカルアナリテック製 ハイレスタ-UX MCP-HT800)を用いて帯電防止層の表面抵抗値を測定した。
表面抵抗値の測定結果を表6~表12に示す。
【0554】
<帯電防止層のパターニング性の評価>
帯電防止層のパターニング性の1つの指標(すなわち、現像性)として、以下の方法により、L/S=100μm/100μmのパターンを解像するのに必要な最短の現像時間を求めた。
実施例1~51及び比較例2~3の各転写フィルムについて、透明フィルム1を剥離した後、露出した感光性層の表面をITO基材にラミネートすることにより、透明フィルム2/帯電防止層/感光性層/基材の積層構造を有する構造体をそれぞれ得た。ラミネート条件は、ロール温度:110℃、線圧:0.6MPa、線速度(ラミネート速度):2.0m/分とした。上記各構造体に対して、透明フィルム2を剥離せずに、L/S=100μm/100μmのパターンを有するマスクを介して、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)を用い、露光量120mJ/cm2(i線)で露光した。露光後、1時間放置してから、上記各構造体の透明フィルム2を剥離した後、炭酸ナトリウム1質量%水溶液(液温:30℃)を用いて現像することにより、非露光部における帯電防止層及び感光性層を現像除去した。更に、エアを吹きかけて水分を除去した。現像時間を変えながら現像を実施し、L/S=100μm/100μmのパターンを解像するのに必要な最短の現像時間を求めた。
上記現像後の全ての実施例において、帯電防止層は、感光性層の残存部(すなわち、感光性組成物の硬化物層)のパターン形状と、同一のパターン形状であった。
また、比較例4~5の各感光性転写フィルムについては、透明フィルム1を剥離した後、露出した感光性層の表面をITO基材にラミネートすることにより、透明フィルム2/帯電防止層/感光性層/基材の積層構造を有する構造体をそれぞれ得た。ラミネート条件は、真空度を0.5hPaとし、プレス圧(加圧)を0.5MPaとし、プレス温度(ドライフィルムの温度)を80℃とし、加圧時間を90秒とした。上記各構造体に対して、透明フィルム2を剥離せずに、L/S=100μm/100μmのパターンを有するマスクを介して、600mj/cm2の露光量で露光を行った。露光機は、ランプに高圧水銀ランプを用いているHMW-532D(株式会社オーク製作所製)を用いた。上記各構造体の透明フィルム2を剥離した後、炭酸ナトリウム1質量%水溶液(液温30℃)を用いて現像することで、非露光部における帯電防止層及び感光性層を現像除去した。更に、エアを吹きかけて水分を除去した。現像時間を変えながら現像を実施し、L/S=100μm/100μmのパターンを解像するのに必要な最短の現像時間を求めた。
以下の基準に従って、帯電防止層のパターニング性について評価した。評価結果を表6~表12に示す。なお、実施例のすべてにおいて、現像後の残存パターンは、帯電防止層/感光性層/基材の積層構造を有していた。
(基準)
A:最短の現像時間が60秒以下である。
B:最短の現像時間が60秒より大きく、120秒以下である。
C:最短の現像時間が120秒より大きい、又は現像ができない。
【0555】
<剥離帯電圧の評価>
実施例1~51及び比較例2~5の各感光性転写フィルムについて、透明フィルム1を剥離した後、露出した感光性層の表面をガラス基板(Eagle XG、厚さ:0.7mm、コーニング社製)にラミネートすることにより、透明フィルム2/帯電防止層/感光性層/ガラス基材の積層構造を有する構造体をそれぞれ得た。また、上記と同様の方法により、比較例1の感光性転写フィルムを用いて、透明フィルム2/感光性層/ガラス基材の積層構造を有する構造体を得た。実施例1~23及び比較例1~3の各感光性転写フィルムのラミネート条件は、ロール温度:110℃、線圧:0.6MPa、線速度(ラミネート速度):2.0m/分とした。また、比較例4~5の各感光性転写フィルムのラミネート条件は、真空度を0.5hPaとし、プレス圧(加圧)を0.5MPaとし、プレス温度(ドライフィルムの温度)を80℃とし、加圧時間を90秒とした。温度23℃、湿度50%RH(相対湿度)の雰囲気下、上記各構造体から、透明フィルム2を剥離速度10m/分で180°剥離した際に生じる剥離帯電圧を、春日電機株式会社製の静電電位測定器KSD-0103を使用して測定した。測定位置は、上記各構造体における透明フィルム2の表面から離間する方向に10cm離れた位置とした。
得られた剥離帯電圧を、以下の基準に従って評価した。評価結果を表6~表12に示す。
(基準)
A:剥離帯電圧が500V以下である。
B:剥離帯電圧が500Vより大きく、1000V以下である。
C:剥離帯電圧が1000Vより大きい。
【0556】
<ベーク後透過率の評価>
実施例1~51及び比較例2~3の各感光性転写フィルムについて、透明フィルム1を剥離した後、露出した感光性層の表面をガラス基板(Eagle XG、厚さ:0.7mm、コーニング社製)にラミネートすることにより、透明フィルム2/帯電防止層/感光性層/ガラス基材の積層構造を有する構造体を得た。また、上記と同様の方法により、比較例1の感光性転写フィルムを用いて、透明フィルム2/感光性層/ガラス基材の積層構造を有する構造体を得た。実施例1~51及び比較例1~3の各感光性転写フィルムのラミネート条件は、ロール温度:110℃、線圧:0.6MPa、線速度(ラミネート速度):2.0m/分とした。上記各構造体に対して、透明フィルム2を剥離せずに、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)を用いて、露光量120mJ/cm2(i線)で露光した。透明フィルム2を剥離した後、更に露光量375mJ/cm2(i線)で露光し、次いで、145℃、30分間のポストベークを行うことにより、帯電防止層及び感光性層を硬化させて硬化膜(すなわち、硬化物層)を形成した。
比較例4~5の各感光性転写フィルムについては、透明フィルム1を剥離した後、露出した感光性層の表面をガラス基材(EagleXG、厚さ:0.7mm、コーニング社製)にラミネートすることにより、透明フィルム2/帯電防止層/感光性層/ガラス基材の積層構造を有する構造体をそれぞれ得た。ラミネート条件は、真空度を0.5hPaとし、プレス圧(加圧)を0.5MPaとし、プレス温度(ドライフィルムの温度)を80℃とし、加圧時間を90秒とした。上記各構造体について、透明フィルム2の上から、600mj/cm2の露光量で露光を行った。露光機は、ランプに高圧水銀ランプを用いているHMW-532D(株式会社オーク製作所)を用いた。さらに、透明フィルム2を剥離した後、140℃で20分間、180℃で20分間、次いで240℃で20分間加熱することにより、感光性層を硬化させて硬化膜を形成した。
分光光度計UV1800型(株式会社島津製作所製)を用いて、波長400~800nmの透過率を測定した。得られた透過率を、以下の基準に従って評価した。評価結果を表6~表12に示す。
(基準)
A:波長400~800nmの平均透過率が90%以上である。
B:波長400~800nmの平均透過率が85%以上90%未満である。
C:波長400~800nmの平均透過率が85%未満である。
【0557】
<ヘイズの測定>
実施例1~51及び比較例2~5の各感光性転写フィルムについて、透明フィルム1を剥離した後、露出した感光性層の表面をガラス基材(Eagle XG、厚さ:0.7mm、コーニング社製)にラミネートすることにより、透明フィルム2/帯電防止層/感光性層/ガラス基材の積層構造を有する構造体をそれぞれ得た。また、上記と同様の方法により、比較例1の感光性転写フィルムを用いて、透明フィルム2/感光性層/ガラス基材の積層構造を有する構造体を得た。実施例1~51及び比較例1~3の各感光性転写フィルムのラミネート条件は、ロール温度:110℃、線圧:0.6MPa、線速度(ラミネート速度):2.0m/分とした。また、比較例4~5の各感光性転写フィルムのラミネート条件は、真空度を0.5hPaとし、プレス圧(加圧)を0.5MPaとし、プレス温度(ドライフィルムの温度)を80℃とし、加圧時間を90秒とした。
上記各構造体から、透明フィルム2を剥離した後、ヘイズメータNDH4000(日本電色工業株式会社製)を用いて、帯電防止層/感光性層/ガラス基材の3層の積層構造を有する構造体(実施例1~51及び比較例2~5)、及び感光性層/ガラス基材の積層構造を有する構造体(比較例1)のヘイズをそれぞれ測定した。更に、上記各構造体の作製に使用したガラス基材のヘイズを上記と同様の方法で測定した。そして、各構造体のヘイズからガラス基材のヘイズを減算することにより、帯電防止層/感光性層の積層構造のヘイズ、及び感光性層のヘイズをそれぞれ求めた。得られたヘイズを、以下の基準に従って評価した。評価結果を表6~表12に示す。
(基準)
A:ヘイズが3%以下である。
B:ヘイズが3%より大きく、10%以下である。
C:ヘイズが10%より大きい。
【0558】
<曲げ耐性(耐屈曲性)の評価>
-曲げ耐性評価用試料の作製-
実施例1~51及び比較例2~5の各感光性転写フィルムについて、透明フィルム1を剥離した後、露出した感光性層の表面を145℃30分間の熱処理をした東レデュポン株式会社製ポリイミドフィルムのカプトン(厚さ:50μm)の片面にラミネートすることにより、透明フィルム2/帯電防止層/感光性層/カプトン(厚さ:50μm)の積層構造を有する構造体をそれぞれ作製した。また、上記と同様の方法により、比較例1の感光性転写フィルムを用いて、透明フィルム2/感光性層/カプトン(厚さ:50μm)の積層構造を有する構造体を作製した。実施例1~51及び比較例1~3の転写フィルムのラミネート条件は、ロール温度:110℃、線圧:0.6MPa、線速度(ラミネート速度):2.0m/分とした。また、比較例4~5の各感光性転写フィルムのラミネート条件は、真空度を0.5hPaとし、プレス圧(加圧)を0.5MPaとし、プレス温度(ドライフィルムの温度)を80℃とし、加圧時間を90秒とした。
次に、実施例1~51及び比較例1~3については、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)を用いて、透明フィルム2を介して露光量100mJ/cm2(i線)で両面を全面露光した。透明フィルム2を剥離した後、更に露光量375mJ/cm2(i線)で両面露光した後、145℃、30分間のポストベークを行うことにより、帯電防止層及び感光性層を硬化させて硬化膜(すなわち、硬化物層)を形成した。
比較例4~5については、透明フィルム2/帯電防止層/感光性層/カプトン(厚さ:50μm)の層構造を有する構造体における透明フィルム2の上から、露光マスクを介さずに600mj/cm2の露光量で露光を行った。露光機は、ランプに高圧水銀ランプを用いているHMW-532D(株式会社オーク製作所)を用いた。さらに、透明フィルム2を剥離した後、140℃で20分間、180℃で20分間、次いで、240℃で20分間加熱し、帯電防止層及び感光性層を硬化させて硬化膜を形成した。
以上の手順により、帯電防止層の硬化膜/感光性層の硬化膜/カプトン(厚さ:50μm)の積層構造、又は感光性層の硬化膜/カプトン(厚さ:50μm)の積層構造を有する曲げ耐性評価用試料をそれぞれ得た。
【0559】
-曲げ耐性(耐屈曲性)の評価-
以下の方法により、上記各曲げ耐性評価用試料の曲げ耐性を評価した。以下、曲げ耐性の評価について図面を参照しながら説明する。
図4は、曲げ耐性の評価における曲げ耐性評価用試料の状態の一例を示す断面模式図である。
まず、上記各曲げ耐性評価用試料を5cm×12cmの長方形に裁断した。
図4に示すように、裁断した曲げ耐性評価用試料102のうち、短辺の一方に100gのおもり104をつけて加重し、直径d(単位:ミリメートル)の金属製ロッド106に90°の角度で接するように保持した(
図4における曲げ耐性評価用試料102の状態)。
次に、カプトン(厚さ:50μm)と金属製ロッド106が接するようにして、金属製ロッド106に巻きつくように曲げ耐性評価用試料102を180°に曲げた状態(
図4における曲げ後の曲げ耐性評価用試料102Aの状態)となるまで曲げ耐性評価用試料102を屈曲させて、元の位置に戻す運動(往復方向D)を10往復させた後、試料の表面のクラックの有無を目視で確認した。
上記金属製ロッド106の直径dを変えながら、上記の試験を行い、クラックが発生しない最も小さい直径dを求めた。以下の基準に従って、曲げ耐性について評価した。下記基準において、Aが曲げ耐性が最も良く、Dが曲げ耐性が最も悪い。A又はBが実用上の許容レベルである。
(基準)
A:クラックが発生しない最も小さい直径dが3mm以下である。
B:クラックが発生しない最も小さい直径dが3mmより大きく4mm以下である。
C:クラックが発生しない最も小さい直径dが4mmより大きく5mm以下である。
D:クラックが発生しない最も小さい直径dが5mmより大きい。
【0560】
<銀ナノワイヤー耐久性(抵抗値変化)の評価>
実施例16~51の各感光性転写フィルムについて、透明フィルム1を剥離した後、露出した感光性層を表面に銀ナノワイヤーを含有する層を有する基材にラミネートすることにより、透明フィルム2/帯電防止層/感光性層/銀ナノワイヤーを含む層/基材の積層構造を有する構造体を得た。以下、「銀ナノワイヤーを含有する層/基材」を「銀ナノワイヤー基材」という。実施例16~23の各感光性転写フィルムのラミネート条件は、ロール温度:110℃、線圧:0.6MPa、線速度(ラミネート速度):2.0m/分とした。上記各構造体に対して、透明フィルム2を剥離せずに、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)を用いて、露光量120mJ/cm2(i線)で露光した。透明フィルム2を剥離した後、更に露光量375mJ/cm2(i線)で露光し、次いで、145℃、30分間のポストベークを行うことにより、帯電防止層及び感光性層を硬化させて硬化膜(すなわち、硬化物層)を形成した。
以上の手順により、帯電防止層の硬化膜/感光性層の硬化膜/銀ナノワイヤー基材の積層構造を得た。上記積層構造を10cm×10cmの正方形に裁断した。積層構造における銀ナノワイヤー基材の抵抗値を、非接触抵抗計EC-80P(ナプソン株式会社製)を用いて、非接触抵抗計のプローブを積層構造の帯電防止層側に押し当てて計測し、面内9点の平均を積層構造の初期の抵抗値とした。
上記で抵抗値を測定した積層構造を85℃、85%RH(相対湿度)の環境下で500時間放置した後、上記と同様の方法で耐久後の抵抗値を測定し、初期の抵抗値からの変化率を以下の式(1)で算出した。
抵抗値の変化率=耐久後の抵抗値÷初期の抵抗値-1 ・・・式(1)
得られた抵抗値の変化率を、以下の基準に従って評価した。下記基準において、Aが最も耐久性が良く、Cが最も耐久性が悪い。評価結果を表8~表12に示す。
(基準)
A:抵抗値変化が10%以下である。
B:抵抗値変化が10%より大きく、30%以下である。
C:抵抗値変化が30%より大きい。
【0561】
<帯電防止剤が検出されない領域の評価>
実施例16~51の各感光性転写フィルムについて、透明フィルム1を剥離した後、既述の方法に従って、露出した感光性層の表面からION-TOF社製TOF.SIMS5(商品名)とAr+クラスター銃を用いて、帯電防止剤が検出されない領域の測定を行った。評価結果を表8~表12に示す。
【0562】
【0563】
【0564】
【0565】
【0566】
【0567】
【0568】
【0569】
表8~表12において、「割合」の欄に記載された数値は、感光性層の帯電防止層とは反対側の表面から帯電防止剤に起因するフラグメントイオンが検出されなかった領域までの長さ(表8~表12において「帯電防止剤が検出されなかった深さ」の欄に記載された数値)を、感光性層及び帯電防止層の合計厚さで除算した値である。
【0570】
表6~表12より、実施例1~51の各感光性転写フィルムは、帯電防止層をパターニングすることができることがわかった。また、実施例1~51の各感光性転写フィルムは、感光性層におけるアクリル樹脂がアルカリ可溶性ではない比較例2の感光性転写フィルムと比較して、パターニング性に優れることがわかった。
【0571】
表6~表12より、実施例1~51は、感光性層の厚さが10μmを超える比較例3と比較して、耐屈曲性に優れることがわかった。
【0572】
表6~表12より、実施例1~51は、感光性層の厚さが10μmを超え、かつ、感光性層がアルカリ可溶性アクリル樹脂を含有しない比較例4、及び感光性層がアルカリ可溶性アクリル樹脂を含有しない比較例5と比較して、透明性及び耐屈曲性に優れることがわかった。
【0573】
表4~表6より、実施例1~23は、帯電防止層を有しない比較例1と比較して、剥離帯電を抑制できることがわかった。
【0574】
表4~表6より、実施例1~23は、比較例4と比較して、ヘイズが小さいことがわかった。
【0575】
表8~表12より、帯電防止剤が溶剤分散型である実施例17~51は、帯電防止剤が溶剤分散型でない実施例16と比較して、帯電防止剤が検出されない領域が大きく、銀ナノワイヤー耐久性に優れることがわかった。
【0576】
(実施例101~105)
<添加液Aの調製>
硝酸銀粉末0.51gを純水50mLに溶解した。得られた液に、1mol/Lのアンモニア水を液が透明になるまで添加した。その後、得られた液に、液の全量が100mLになるように純水を添加して、添加液Aを調製した。
【0577】
<添加液Gの調製>
グルコース粉末0.5gを140mLの純水で溶解して、添加液Gを調製した。
【0578】
<添加液Hの調製>
HTAB(ヘキサデシル-トリメチルアンモニウムブロミド)粉末0.5gを27.5mLの純水で溶解して、添加液Hを調製した。
【0579】
<銀ナノワイヤー層形成用塗布液の調製>
三口フラスコ内に純水(410mL)を添加した後、20℃にて撹拌しながら、添加液H(82.5mL)、及び添加液G(206mL)をロートにて添加した。得られた液に、添加液A(206mL)を、流量を2.0mL/分、撹拌回転数を800rpm(revolutions per minute。以下同じ。)で添加した。10分後、得られた液に、添加液Hを82.5mL添加した。その後、得られた液を、3℃/分で内温75℃まで昇温した。その後、撹拌回転数を200rpmに落とし、5時間加熱した。得られた液を冷却した後、ステンレスカップに入れ、限外濾過モジュールSIP1013(旭化成(株)製、分画分子量:6,000)、マグネットポンプ、及びステンレスカップをシリコンチューブで接続した限外濾過装置を用いて限外濾過を行った。モジュールからの濾液が50mLになった時点で、ステンレスカップに950mLの蒸留水を加え、洗浄を行った。上記の洗浄を10回繰り返した後、液の量が50mLになるまで濃縮を行った。なお、添加液A、添加液G、添加液Hについて、上記の方法で繰り返し作製し、銀ナノワイヤー層形成用塗布液の調製に用いた。
得られた濃縮液を、純水及びメタノール(純水及びメタノールの体積比率:60/40)で希釈することによって、銀ナノワイヤー層形成用塗布液を得た。
【0580】
<評価用積層体の作製>
厚さ100μmのシクロオレフィンポリマー(COP)フィルムを透明な基板として準備した。次いで、基板の片面に銅膜をスパッタリング法で500nmの厚みで形成し、銅膜/基板の積層構造を有する積層体を作製した。
【0581】
<積層体の処理>
上記で作製した積層体の処理液として、下記の表13に示す組成の処理液C-1~C-4を調製した。具体的には、イオン交換水の中に、特定アゾール化合物を添加し、30分間撹拌混合することにより、処理液を調製した。
次いで、上記の積層体の銅膜側を、上記にて調製した処理液を用いて40秒間シャワー処理した。処理後、純水で洗浄し、次いで、エアを吹きかけて水分を除去し、80℃で1分間の加熱処理を行うことにより、処理された積層体を得た。
【0582】
<銅膜のエッチング>
次いで、1質量%炭酸ナトリウム水溶液によって現像可能なネガタイプのアクリル系感光性層(以下、本段落において単に「レジスト層」という場合がある。)を備えた感光性転写フィルムを用い、厚さ1μmのレジスト層を、上記にて作製した積層体の銅膜の表面に転写し、レジスト層/銅膜/基板の積層構造を有する積層体を得た。次に、得られた積層体のレジスト層側の面から、マスクを介して、メタルハライドランプを用いた露光を行った後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に浸して、レジスト層に現像処理を施した。
次いで、エッチング液である塩化第二鉄水溶液を用いて、パターン化されたレジスト層が積層されていない部分の銅膜をエッチング除去した後、剥離液を用いてレジスト層を剥離した。
その結果、透明な基板上の周辺部に銅膜(引き回し配線)が形成された積層体が得られた。
【0583】
<パターニングされた銀ナノワイヤーを含有する層(タッチパネル用透明電極)の形成>
次に、上記で作製した銀ナノワイヤー層形成用塗布液を、上記で得られた積層体の銅膜(引き回し配線)側に塗布し、80℃で1分間の加熱処理を行うことにより、銀ナノワイヤーを含む層/銅膜(引き回し配線)/基板の積層構造を有する積層体を作製した。なお、銀ナノワイヤーを含有する層形成用塗布液の塗布量は、ウェット膜厚が20μmとなる量とし、乾燥後の銀ナノワイヤーを含有する層の層厚は30nmであり、また、銀ナノワイヤーの直径は17nm、長軸長さは35μmであった。
次いで、1質量%炭酸ナトリウム水溶液によって現像可能なネガタイプのアクリル系感光性層(以下、本段落において単に「レジスト層」という場合がある。)を備えた感光性転写フィルムを用い、厚さ1μmのレジスト層を、上記にて作製した積層体の銀ナノワイヤーを含有する層の表面に転写し、レジスト層/銀ナノワイヤーを含有する層/銅膜(引き回し配線)/基板の積層構造を有する積層体を得た。次に、得られた積層体のレジスト層側の面から、タッチパネル電極パターンのマスクを介して、メタルハライドランプを用いた露光を行った後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に浸して、レジスト層に現像処理を施した。
次いで、エッチング液である塩化第二鉄水溶液を用いて、パターン化されたレジスト層が積層されていない部分の銀ナノワイヤーを含有する層及び銀ナノワイヤーを含む層/銅膜をエッチング除去した後、剥離液を用いてレジスト層を剥離した。
以上の手順によって、パターニングされた銀ナノワイヤーを含有する層を得た。
【0584】
<感光性転写フィルムのラミネート>
以下の表13に示す感光性転写フィルム(すなわち、実施例19で作製した感光性転写フィルム)について、透明フィルム1を剥離した後、露出した感光性層を上記でレジスト層が剥離処理された積層体の銀ナノワイヤーを含有する層側にラミネートし、感光性層、及び帯電防止層を転写した。ラミネート加工は、MCK社製真空ラミネーターを用いて、シクロオレフィンポリマーフィルム温度:40℃、ゴムローラー温度:100℃、線圧:3N/cm、搬送速度:2m/分の条件で行った。
次に、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、透明フィルム2を介して露光量60mJ/cm2(i線)で感光性層を保護膜パターンのマスクを介してパターン露光した。
透明フィルム2を剥離後、炭酸ソーダ1質量%水溶液を用いて、32℃で60秒間現像処理を実施し、外部との接続部分の感光性層、及び帯電防止層を除去した。現像処理後、感光性層、及び帯電防止層付き積層体に超高圧洗浄ノズルから超純水を噴射し、その後、エアを吹きかけて水分を除去した。
次に、感光性層、及び帯電防止層の上から、露光マスクを介さずに更に375mJ/cm2の露光量で露光し、次いで140℃で20分間加熱することにより熱硬化を行い、帯電防止層の硬化層/感光性層の硬化層/銀ナノワイヤーを含有する層/銅膜(引き回し配線)/基板の積層構造を有する積層体を作製した。
【0585】
<銅の変色評価>
上記で作製した積層体を85℃、85%RH(相対湿度)の環境下で100時間放置した後、銅膜(引き回し配線)部分を硬化層側から、硬化層を通して光学顕微鏡(倍率:50倍)を用いて観察し、以下の評価基準に基づき評価した。
A:変色した部分が全く確認されなかった。
B:変色した部分の割合が、銅膜(配線)の面積の50%以下であった。
C:変色した部分の割合が、銅膜(配線)の面積の50%を超えて80%以下であった。
D:変色した部分の割合が、銅膜(配線)の面積の80%を超えていた。
【0586】
評価結果をまとめて表13に示す。
【0587】
【0588】
なお、表13に記載のpKaの値は、共役酸のpKaを表す。
【0589】
(実施例201~204)
実施例51において、透明フィルム1及び透明フィルム2を表14のように変更したこと以外は、実施例51と同様にして、感光性転写フィルム及び積層体を作成し、実施例51と同様に評価した。いずれも実施例51と同じ評価結果であった。
【0590】
【0591】
2019年3月28日に出願された日本国特許出願2019-064595号、2019年5月14日に出願された日本国特許出願2019-091114号、及び2019年9月26日に出願された日本国特許出願2019-175547号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記載された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。