(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】負極スラリー組成物、これを用いて製造された負極及び二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20220801BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20220801BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220801BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/13
(21)【出願番号】P 2020530945
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 KR2019001483
(87)【国際公開番号】W WO2019168278
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-06-05
(31)【優先権主張番号】10-2018-0025364
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】チョル・フン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ヒ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ア・カン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ス・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ジョ・リュ
【審査官】近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-203555(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105742641(CN,A)
【文献】特開2004-022504(JP,A)
【文献】特開2014-220082(JP,A)
【文献】中村浩,外1名,“水性塗料用コア・シェル粒子の膨潤メカニズム”,豊田中央研究所R&Dレビュー,日本,株式会社豊田中央研究所,1995年06月,第30巻,第2号,p.69-77
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
H01M 4/139
H01M 4/13
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質;
疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン;及び
溶媒を含
む負極スラリー組成物であって、
前記アルカリ膨潤性エマルジョンは、前記負極スラリー組成物内の全固形分100重量部に対して0.1から3重量部で含まれ、
前記アルカリ膨潤性エマルジョンは、
前記疎水性官能基及び酸官能基を含むアクリルポリマーが水に分散されており、
前記アクリルポリマーは、高分子電解質主鎖に
前記疎水性官能基がペンダント基として結合されている、負極スラリー組成物。
【請求項2】
前記疎水性官能基は、炭素数5から20のアルキル基である、請求項1に記載の負極スラリー組成物。
【請求項3】
前記溶媒は水を含む、請求項1または2に記載の負極スラリー組成物。
【請求項4】
前記負極スラリー組成物は、バインダー、導電材及び充填剤のうち少なくとも一つ以上をさらに含む、請求項1から3の何れか一項に記載の負極スラリー組成物。
【請求項5】
前記負極スラリー組成物は、バインダー及び導電材をさらに含み、
前記負極スラリー組成物内の全固形分100重量部に対して、
80から99.7重量部の
前記負極活物質;
0.1から5重量部の
前記疎水性官能基で変性された
前記アルカリ膨潤性エマルジョン;
0.1から10重量部のバインダー;及び
0.1から5重量部の導電材を含む、請求項1から4の何れか一項に記載の負極スラリー組成物。
【請求項6】
集電体、及び前記集電体の少なくとも一面に形成される負極活物質層を含む負極であり、
前記負極活物質層は、請求項1から5のいずれか一項に記載の負極スラリー組成物により形成されたものである負極。
【請求項7】
請求項6に記載の負極を含む二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年3月2日付に出願された韓国特許出願第2018-0025364号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、負極スラリー組成物及びこれを用いて製造された負極及び二次電池に関し、より具体的には、高エネルギー電極において優れた電極接着力を具現することができる負極スラリー組成物及びこれを用いて製造された負極及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池は、化学エネルギーが電気エネルギーに変換される放電と逆方向である充電の過程を介して繰り返し使用可能な電池である。一般に、二次電池は、正極、負極、電解質、及び分離膜で構成される。負極は、正極から放出されたリチウムイオンを挿入して脱離させる負極活物質に導電材、バインダー、分散剤、増粘剤などを混合して負極スラリーを製造した後、この負極スラリーを銅ホイルなどのような電極集電体に塗布し、乾燥した後、圧延する工程を介して製造される。
【0004】
従来の負極スラリー組成物の場合、スラリー組成物の粘度及び分散性を調節するため、分散剤及び増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(Carboxy Methyl Cellulose、CMC)を主に用いていた。しかし、CMCは脆性特性を有するため、活物質の含量が高い高エネルギー電極に用いる場合、電極接着力の低下及び電極スリット時に電極の脱離現象を引き起こし得るという問題点があった。
【0005】
一方、現在、二次電池としてはリチウム二次電池が主に用いられているが、リチウムの埋蔵量が限定されているため、リチウム二次電池を代替することができる新たな二次電池に対する開発が試みられている。具体的には、リチウム二次電池の代替材として、ナトリウムやマンガンを用いたナトリウム二次電池、マンガン二次電池などの開発がなされている。しかし、ナトリウム二次電池やマンガン二次電池などに既存のリチウム二次電池で用いられていた電極素材をそのまま適用する場合、容量発現が不足したり、急激な容量の劣化及び特性の低下が発生したりするなどの問題点がある。
【0006】
したがって、活物質の含量が高い負極スラリーにおいて優れた安定性を確保しながら、電極スリットのような後工程における欠陥の発生を減らすことができ、ナトリウム及び/またはマンガンを用いる新素材電池に適用され、優れた電極特性を具現することができる新たな電極素材の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第2014-0103376号公報(公開日:2014.08.27.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記のような問題点を解決するためのものであって、高エネルギー電極で優れた電極接着力を具現することができる負極スラリー組成物の提供を図る。
【0009】
また、本発明は、リチウム二次電池だけでなく、ナトリウムやマンガンなどを用いる二次電池にも適用可能な負極スラリー組成物の提供を図る。
【0010】
また、本発明は、前記負極スラリー組成物を用いて製造された負極及びこれを含む二次電池の提供を図る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一側面において、本発明は、負極活物質;疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(hydrophobically modified alkali-swellable emulsion);及び溶媒を含む負極スラリー組成物を提供する。
【0012】
このとき、前記アルカリ膨潤性エマルジョンは、前記スラリー組成物内の全固形分100重量部に対して0.1から5重量部、好ましくは0.1から3重量部、より好ましくは1から3重量部で含まれてよい。
【0013】
一方、前記アルカリ膨潤性エマルジョンは、疎水性官能基及び酸官能基を含むアクリルポリマーが水に分散されたものであってよく、前記アクリルポリマーは、高分子電解質主鎖に疎水性官能基がペンダント基として結合されているものであってよい。
【0014】
一方、前記疎水性官能基は、炭素数5から20のアルキル基であってよい。
【0015】
他の側面において、本発明は、集電体、及び前記集電体の少なくとも一面に形成される負極活物質層を含み、前記負極活物質層が前記本発明による負極スラリー組成物により形成されたものである負極及びこれを含む二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0016】
疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョンを含む本発明による負極スラリー組成物は、スラリー安定性に優れ、これを用いて電極を製造する場合、電極接着力が高く、電極スリットのような後工程において電極脱離の現象が発生することを効果的に抑制することができるので、欠陥の発生を減らすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために、用語の概念を適宜定義することができるとの原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0018】
本明細書で用いられる用語は、単に例示的な実施例を説明するために用いられるものであって、本発明を限定しようとする意図のものではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0019】
本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素、またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素、またはこれらの組み合わせなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除するものではないと理解されるべきである。
【0020】
本明細書において、「%」は、明示的な他の表示がない限り、重量%を意味する。
【0021】
以下、本発明に対して具体的に説明する。
【0022】
負極スラリー組成物
先ず、本発明による負極スラリー組成物に対して説明する。
【0023】
本発明による負極スラリー組成物は、(1)負極活物質、(2)疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(hydrophobically modified alkali-swellable emulsion)及び(3)溶媒を含む。
【0024】
本発明の発明者らは、従来の負極スラリー組成物で主に用いられていた分散剤及び/または増粘剤の代わりに、疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョンを用いることにより、スラリー組成物内の活物質の含量が高い場合にもスラリー組成物の安定性を確保することができるだけでなく、CMCのような従来の分散剤及び/または増粘剤を使用したスラリー組成物を用いて電極を形成する場合に比べ、電極接着力が高く、電極脱離などのような欠陥の発生が少ない電極を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0025】
以下、本発明による負極スラリー組成物の各成分に対し、具体的に説明する。
【0026】
(1)負極活物質
前記負極活物質は、リチウム、ナトリウム、及び/またはマンガンイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられてよく、その種類が特に限定されるものではない。例えば、前記負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンのような炭素質材料;Si、Ge、Sn、Pb、In、Zn、Ca、Sr、Ba、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Cd、Hg、Ga、Tl、C、N、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Clなどのように、M(前記Mは、リチウム、ナトリウムまたはマンガン)と合金化する元素の単体、これらの合金、これらの元素を含んだ酸化物(SiOx(0<x<2)、二酸化スズ(SnO2)、SnOx(0<x<2)、SnSiO3など)及び炭化物(炭化ケイ素(SiC)など);二酸化チタンやM-チタン複合酸化物(前記Mは、リチウム、ナトリウムまたはマンガン)などのM-遷移金属複合酸化物(前記Mは、リチウム、ナトリウムまたはマンガン)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの負極活物質は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記負極活物質は、負極スラリー組成物の全固形分100重量部に対して80から99.7重量部、好ましくは90から99.5重量部、より好ましくは90から98重量部で含まれてよい。負極活物質の含量が前記範囲を満たすとき、優れた容量特性を具現することができる。
【0028】
(2)疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン
前記疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(hydrophobically modified alkali-swellable emulsion)は、スラリー組成物の分散性を向上させ、適した粘度を維持できるようにするためのものである。
【0029】
アルカリ膨潤性エマルジョンは、酸官能基を有するアクリルポリマーが水に分散された分散液であって、pH5以下の酸性雰囲気では高分子鎖が固まって堅いコイル状の構造を有するが、pH7以上の塩基雰囲気では高分子鎖が広がりながら膨張される特性を有している。このとき、前記酸官能基を有するアクリルポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸などであってよいが、これに限定されるものではない。
【0030】
本発明では、前記のようなアルカリ膨潤性エマルジョンに疎水性官能基を有するモノマーを共重合して疎水性官能基を有するように変性されたアルカリ膨潤性エマルジョンを用いる。このとき、前記疎水性官能基は、長い鎖を有する脂肪族炭化水素であってよく、例えば、炭素数5から20のアルキル基であってよい。
【0031】
具体的には、前記疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョンは、疎水性官能基及び酸官能基を含むアクリルポリマーが水に分散されたものであってよく、さらに具体的には、酸官能基を有する高分子電解質主鎖に疎水性官能基がペンダント基として結合されているアクリルポリマーが水に分散されたものであってよい。
【0032】
前記のような疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョンは、市販の製品を購入して用いてよく、例えば、BASF社製のASE、HASE、HEURなどを用いてよい。
【0033】
前記のような疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョンを負極スラリー組成物に添加する場合、スラリー組成物の分散性が向上され、粘度が低くなるのでスラリー組成物の安定性が向上する。
【0034】
また、前記疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョンを含む負極スラリー組成物を用いて電極を製造する場合、従来に比べて高い電極接着力を得ることができ、電極スリットのような後工程において電極が脱離されることを効果的に抑制することができる。
【0035】
一方、前記疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョンは、前記負極スラリー組成物内の全固形分100重量部に対して0.1から5重量部、好ましくは0.1から3重量部、より好ましくは1から3重量部で含まれてよい。疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョンの含量が前記範囲を満たす場合、負極スラリーの相安定性及び電極接着力に優れるだけでなく、電池寿命特性及び抵抗特性にも優れる。
【0036】
(3)溶媒
本発明による負極スラリー組成物は、溶媒として水を含んでよい。前記溶媒は、負極スラリー組成物が適した粘度を有するように含まれてよい。
【0037】
(4)その他の成分
一方、本発明による負極スラリー組成物は、必要に応じて、前記成分以外にバインダー、導電材及び/または充填剤のような成分をさらに含んでよい。
【0038】
前記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride、PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸(poly acrylic acid)及びこれらの水素をLi、NaまたはCaなどで置換された物質からなる群から選択される少なくともいずれか一つを含んでよく、またこれらの多様な共重合体を含んでよい。
【0039】
このとき、前記バインダーは、前記負極スラリー組成物内の全固形分100重量部に対して0.1から10重量部、好ましくは0.1から5重量部で含まれてよい。
【0040】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;炭素ナノチューブなどの導電性チューブ;フルオロカーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてよい。
【0041】
このとき、前記導電材は、前記負極スラリー組成物内の全固形分100重量部に対して0.1から5重量部、好ましくは0.1から3重量部で含まれてよい。
【0042】
前記充填剤は、電極の膨張を抑制する成分として選択的に用いられ、当該電池に化学的変化を誘発することなく繊維状の材料であれば、特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が用いられてよい。
【0043】
このとき、前記充填剤は、前記負極スラリー組成物内の全固形分100重量部に対して0.1から5重量部、好ましくは0.1から3重量部で含まれてよい。
【0044】
前記のように、疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョンを含む本発明の負極スラリー組成物は、従来の負極スラリー組成物に比べて活物質の含量が高い場合にも優れた相安定性及び低い粘度を有するので、工程性に優れる。また、前記のような負極スラリー組成物を用いて製造された負極の場合、電極接着力に優れ、電極スリットのような後工程において電極の脱離が少ないため、欠陥の発生が少なく、優れた電池特性を具現することができる。
【0045】
負極
次に、本発明による負極に対して説明する。
【0046】
本発明の負極は、前述の本発明による負極スラリー組成物により形成された負極活物質層を含む。
【0047】
例えば、本発明による負極は、集電体、及び前記集電体の少なくとも一面に形成される負極活物質層を含み、このとき、前記負極活物質層は、集電体上に前記本発明による負極スラリー組成物、すなわち、負極活物質、疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン及び溶媒を含む負極スラリー組成物により形成される。負極スラリー組成物は前述したところと同一なので、具体的な説明は省略する。
【0048】
前記集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてよい。また、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態に用いられてよい。
【0049】
前記負極は、当分野に知られている通常の方法で製造されてよく、例えば、集電体上に本発明による負極スラリー組成物を塗布した後、乾燥及び圧延する方法で製造されてよい。
【0050】
二次電池
次に、本発明による二次電池に対して説明する。
【0051】
本発明の二次電池は、前述の本発明による負極を含む。具体的には、前記二次電池は、正極、負極、前記正極及び負極の間に配置された分離膜及び電解質を含んでよく、このとき、前記負極は、前述の本発明の負極スラリー組成物により形成された負極活物質を含む負極である。負極スラリー組成物及び負極に対しては前述したので、以下では残りの構成要素に対してのみ説明する。
【0052】
前記正極は、正極集電体及び前記正極集電体上に形成された正極活物質層を含む。前記正極活物質層は正極活物質を含み、必要に応じてバインダー、導電材及び/または充填剤などをさらに含んでよい。
【0053】
一方、前記正極活物質としては、リチウム、ナトリウム、及び/またはマンガンイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられてよく、例えば、層状酸化物系材料であるM-鉄複合酸化物(MFeO2など、前記Mは、リチウム、ナトリウムまたはマンガン)、M-コバルト複合酸化物(MCoO2など、前記Mは、リチウム、ナトリウムまたはマンガン)、M-クロム複合酸化物(MCrO2など、前記Mは、リチウム、ナトリウムまたはマンガン)、M-マンガン複合酸化物(MMnO2、M2/3MnO2、MMn2O4など、前記Mは、リチウム、ナトリウムまたはマンガン)、M-ニッケル複合酸化物(MNiO2など、前記Mは、リチウム、ナトリウムまたはマンガン)、M-ニッケル-チタン複合酸化物(MNiaTibO2、前記Mは、リチウム、ナトリウムまたはマンガンであり、0<a<1、0<b<1、a+b=1)、M-ニッケル-マンガン複合酸化物(MNiaMnbO2、前記Mは、リチウム、ナトリウムまたはマンガンであり、0<a<1、0<b<1、a+b=1)、M-鉄-マンガン複合酸化物(M2/3FeaMnbO2、前記Mは、リチウム、ナトリウムまたはマンガンであり、0<a<1、0<b<1、a+b=1)、M-ニッケル-コバルト-マンガン複合酸化物(MNiaCobMncO2、前記Mは、リチウム、ナトリウムまたはマンガンであり、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、オリビン系材料であるM-鉄リン酸化合物(MFePO4、前記Mは、リチウム、ナトリウムまたはマンガン)、M-マンガンリン酸化合物(MMnPO4、前記Mは、リチウム、ナトリウムまたはマンガン)、M-コバルトリン酸化合物(MCoPO4、前記Mは、リチウム、ナトリウムまたはマンガン)、フッ化オリビン系材料であるM2FePO4F、M2MnPO4F、M2CoPO4F(前記Mは、リチウム、ナトリウムまたはマンガン)またはこれらの固溶体や非化学量論組成の化合物などが用いられてよいが、これらに限定されるものではない。
【0054】
また、前記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride、PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸(poly acrylic acid)及びこれらの水素がLi、NaまたはCaなどで置換された物質からなる群から選択される少なくともいずれか一つを含んでよく、またこれらの多様な共重合体を含んでよい。
【0055】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;炭素ナノチューブなどの導電性チューブ;フルオロカーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてよい。
【0056】
前記充填剤は、電極の膨張を抑制する成分として選択的に用いられ、当該電池に化学的変化を誘発することなく繊維状の材料であれば、特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が用いられてよい。
【0057】
前記分離膜は、負極と正極を分離してリチウム、ナトリウム及び/またはマンガンイオンの移動通路を提供するものであって、通常、二次電池において分離膜として用いられるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら、電解液の含湿能に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム、またはこれらの2層以上の積層構造体が用いられてよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などでなる不織布が用いられてよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のため、セラミックス成分または高分子物質が含まれたコーティングされた分離膜が用いられてもよく、選択的に単層または多層構造で用いられてよい。
【0058】
前記電解質は、有機溶媒にM(前記Mは、リチウム、ナトリウムまたはマンガン)塩が溶解されたものであって、有機溶媒にMClO4、MAsF6、MBF4、MPF6、MSbF6、MCF3SO3またはMN(SO2CF3)2のうち少なくとも一つを含んでなるのが好ましく、有機溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、イソプロピルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、フッ化エチレンカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、γ-ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、ジエチルエーテルまたはスルホランの中の一つであることが好ましく、場合に応じて一つ以上を組み合わせて用いることができる。負極と正極を用いたナトリウム二次電池の性能を最大化するために前記電解質を用いるのが効果的である。
【実施例】
【0059】
以下、具体的な実施例を介して、本発明をより具体的に説明する。
【0060】
実施例1
負極活物質:疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン:バインダー:導電材を94.5:1:3:1.5の重量比で混合した後、水に溶解させて負極スラリーを製造した。このとき、負極活物質としてはSiO:人造黒鉛を3:7重量比で混合した混合物を用い、疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョンとしてはBASF社製のHASE、バインダーとしてはSBR(LG化学社製、AD-B22)、導電材としてはスーパー-C 65(TIMCAL社製)を用いた。
【0061】
実施例2
負極活物質:疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン:バインダー:導電材を93.5:2:3:1.5の重量比で混合した点を除いては、実施例1と同一の方法で負極スラリー組成物を製造した。
【0062】
実施例3
負極活物質:疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン:バインダー:導電材を92.5:3:3:1.5の重量比で混合した点を除いては、実施例1と同一の方法で負極スラリー組成物を製造した。
【0063】
比較例1
負極活物質:分散剤:バインダー:導電材を94.5:1:3:1.5の重量比で混合した後、水に溶解させて負極スラリーを製造した。このとき、負極活物質としてはSiO:人造黒鉛を3:7重量比で混合した混合物を用い、分散剤としては重量平均分子量が90万のカルボキシメチルセルロース(CMC)、バインダーとしてはSBR、導電材としてはスーパー-C 65を用いた。
【0064】
比較例2
重量平均分子量が90万のカルボキシメチルセルロース(CMC)の代わりに、重量平均分子量が170万のカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いた点を除いては、比較例1と同一の方法で負極スラリー組成物を製造した。
【0065】
比較例3
重量平均分子量が90万のカルボキシメチルセルロース(CMC)の代わりに、重量平均分子量が270万のカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いた点を除いては、比較例1と同一の方法で負極スラリー組成物を製造した。
【0066】
比較例4
重量平均分子量が90万のカルボキシメチルセルロース(CMC)の代わりに、重量平均分子量が20万のポリアクリル酸を用いた点を除いては、比較例1と同一の方法で負極スラリー組成物を製造した。
【0067】
比較例5
バインダーとして、SBRの代わりにSBR:ポリアクリル酸(重量平均分子量20万)を1:15の重量比で混合して用いた点を除いては、比較例1と同一の方法で負極スラリー組成物を製造した。
【0068】
実験例1
実施例1~3及び比較例1~5により製造された負極スラリー組成物の粘度をブルックフィールド粘度計の2番スピンドルを用いて、25℃、60rpmの条件で測定した。測定の結果は、下記表1に示した。
【0069】
実験例2
実施例1~3及び比較例1~5により製造された負極スラリー組成物のそれぞれを負極集電体である銅(Cu)金属薄膜に塗布してから、90℃で乾燥した後、圧延(roll press)して130℃の真空オーブンで8時間の間乾燥させて負極を製造した。
【0070】
前記のように製造された負極の接着力及び電極脱離量を下記方法を介して測定した。測定の結果は、下記表1に示した。
【0071】
(1)接着力[単位:gf/inch]
前記で製造されたそれぞれの負極をパンチング(Pounching)機器を用いて20mm幅の電極にパンチングした後、ロールプレスを実施して、120℃で12時間の間真空乾燥した。その後、両面テープが付着されたガラスの上に前記負極スラリーが塗布された面を付着し、ローラーを用いてプレスした後、UTM機器を用いて電極の180度剥離接着力を測定した。
【0072】
(2)電極脱離量[単位:g]
負極のローディング値を基に、前記で製造されたそれぞれの負極の理論電極重量を算出した。その後、前記で製造されたそれぞれの負極をパンチング(Pounching)機器を用いて20mm幅の電極にパンチングした後、ロールプレスを実施し、120℃で12時間の間真空乾燥した後、それぞれの負極の重量を測定して理論電極重量との差を計算し、これを電極脱離量として評価した。
【0073】
実験例3:電池寿命の評価
<正極の製造>
正極活物質として、Li[Ni0.8Co0.1Mn0.1]O2 97重量%、導電材としてカーボンブラック1重量%、バインダーとしてPVdF 2重量%を溶剤であるN-メチル-2ピロリドン(NMP)に添加し、正極混合物スラリーを製造した。前記正極混合物スラリーを厚さ20μm程度の正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布して乾燥した後、ロールプレス(roll press)を実施して正極を製造した。
【0074】
<リチウム二次電池の製造>
前記で製造された正極と前記実験例2で製造された負極との間にポリプロピレンセパレーターを介在させた後、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を20:10:70の体積比で混合した溶媒に1M LiPF6を溶解させて電解質を製造し、これを注入してリチウム二次電池を製造した。
【0075】
製造された二次電池を充放電電流密度0.2Cに、充電終止電圧を4.5V、放電終止電圧を2.5Vにした充放電試験を2回行った。次いで、充放電電流密度を1Cに、充電終止電圧を4.5V、放電終止電圧を2.5Vにした充放電試験を48回行った。全ての充電は、定電流/定電圧で行い、定電圧充電の終止電流は0.05Cとした。合計50サイクルの試験を完了した後、50サイクル後の充電容量を初サイクルの充電容量に分けて、容量維持率(50回/1回)を計算した。
【0076】
【0077】
前記表1に示すとおり、疎水性官能基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョンを用いた実施例1~3の負極スラリー組成物は、スラリー組成物の粘度が2500から7500cpsと低く示され、スラリー組成物の安定性に優れていることが分かる。これに比べ、実施例1と同量のCMCを用いた比較例1~3の負極スラリー組成物は、実施例1の負極スラリー組成物に比べて高い粘度を有することが確認できる。また、実施例1~3の負極スラリー組成物を用いて製造された負極の場合、比較例の負極スラリー組成物を用いて製造された負極に比べて電極接着力が高く、電極脱離量が低いため、二次電池への適用時に比較例に比べて優れた寿命特性を示すことが確認できる。
【0078】
一方、疎水性官能基を含まないポリアクリル酸を用いた比較例4及び5の場合、スラリー組成物の粘度は低く示されたが、電極接着力が低く、電極脱離量が多いため、寿命特性が顕著に劣ることを確認できる。