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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】フォトポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20220801BHJP
   G03H 1/02 20060101ALI20220801BHJP
   C08F 291/00 20060101ALI20220801BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
C08F2/44 C
G03H1/02
C08F291/00
C08F2/46
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021501285
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 KR2020000496
(87)【国際公開番号】W WO2020153638
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】10-2019-0009986
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソクフン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ホン・キム
(72)【発明者】
【氏名】セ・ヒョン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンレ・チャン
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-510203(JP,A)
【文献】特公平07-064930(JP,B2)
【文献】特表昭63-501367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/44
G03H 1/02
C08F 291/00
C08F 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
80℃以下のガラス転移温度を有する高分子マトリックスまたはその前駆体;
光反応性単量体;
1.3以上1.45未満の屈折率を有する低屈折率フッ素系化合物;および
光開始剤;を含み、
前記低屈折率フッ素系化合物は、下記化学式1の化合物:
【化1】
(上記化学式1中、
11 およびR 12 はそれぞれ独立して、ジフルオロメチレン基であり、
13 およびR 16 はそれぞれ独立して、メチレン基であり、
14 およびR 15 はそれぞれ独立して、ジフルオロメチレン基であり、
17 およびR 18 はそれぞれ独立して、ポリアルキレンオキシド基であり、
mは1~3の整数である。)
を含む、ホログラム形成用フォトポリマー組成物。
【請求項2】
前記80℃以下のガラス転移温度を有する高分子マトリックスまたはその前駆体としては、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチレート、ポリビニルホルマール、ポリビニルカルバゾール、ポリアクリル酸、ポリメタクリロニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリ-1,2-ジクロロエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、シンジオタクチック型ポリメチルメタクリレート、ポリ-α-ビニルナフタレート、ポリカーボネート、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン、ポリ-o-メチルスチレン、ポリ-p-メチルスチレン、ポリ-p-フェニルスチレン、ポリ-p-クロロスチレン、ポリ-2,5-ジクロロスチレン、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、水素化スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸環状脂肪族エステルとメチル(メタ)アクリレートとの共重合体、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される1種以上の高分子を含む、請求項1に記載のホログラム形成用フォトポリマー組成物。
【請求項3】
前記80℃以下のガラス転移温度を有する高分子マトリックスまたはその前駆体は、
20℃~60℃のガラス転移温度を有し、5万~60万の重量平均分子量を有するポリビニルアセテートを含む、請求項1または2に記載のホログラム形成用フォトポリマー組成物。
【請求項4】
前記光反応性単量体は、多官能(メタ)アクリレート単量体、または単官能(メタ)アクリレート単量体を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のホログラム形成用フォトポリマー組成物。
【請求項5】
前記高分子マトリックスまたはその前駆体1重量%~80重量%;前記光反応性単量体1重量%~80重量%;前記低屈折率フッ素系化合物0.0001~10重量%;および光開始剤0.1重量%~20重量%;を含み、前記成分の含有量は、前記高分子マトリックスまたはその前駆体、前記光反応性単量体、前記低屈折率フッ素系化合物および光開始剤の総和を基準とする、請求項1からのいずれか一項に記載のホログラム形成用フォトポリマー組成物。
【請求項6】
前記光反応性単量体100重量部に対して、前記低屈折率フッ素系化合物10重量部~250重量部を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のホログラム形成用フォトポリマー組成物。
【請求項7】
前記フォトポリマー組成物は、ホスフェート系化合物をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載のフォトポリマー組成物。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載のフォトポリマー組成物から製造される、ホログラム記録媒体。
【請求項9】
請求項に記載のホログラム記録媒体を含む、光学素子。
【請求項10】
可干渉性光源によって請求項1からのいずれか一項に記載のフォトポリマー組成物に含まれている光反応性単量体を選択的に重合させる段階を含む、ホログラフィック記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年1月25日付の韓国特許出願第10-2019-0009986号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、フォトポリマー組成物、ホログラム記録媒体、光学素子およびホログラフィック記録方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ホログラム(hologram)記録メディアは、露光過程により前記メディア内ホログラフィック記録層内の屈折率を変化させることによって情報を記録し、このように記録されたメディア内の屈折率の変化を読み取って情報を再生する。
【0004】
フォトポリマー(感光性樹脂、photopolymer)を利用する場合、低分子単量体の光重合によって光干渉パターンをホログラムとして容易に保存できるため、光学レンズ、ミラー、偏向ミラー、フィルター、拡散スクリーン、回折部材、導光体、導波管、映写スクリーンおよび/またはマスクの機能を有するホログラフィック光学素子、光メモリシステムの媒質と光拡散板、光波長分割器、反射型、透過型カラーフィルターなど多様な分野で使用される。
【0005】
通常、ホログラム製造用フォトポリマー組成物は、高分子バインダー、単量体および光開始剤を含み、このような組成物から製造された感光性フィルムに対してレーザ干渉光を照射して局所的な単量体の光重合を誘導する。
【0006】
このような光重合過程で、単量体が相対的に多く存在する部分では屈折率が高くなり、高分子バインダーが相対的に多く存在する部分では屈折率が相対的に低くなって屈折率変調が生じることになり、このような屈折率変調によって回折格子が生成される。屈折率変調値nは、フォトポリマー層の厚さと回折効率DEの影響を受け、角度選択性は厚さが薄いほど広くなることになる。
【0007】
最近、高い回折効率と安定的にホログラムを維持できる材料の開発に対する要求とともに、薄い厚さを有しながらも屈折率変調値が大きいフォトポリマー層の製造のための多様な試みがなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、薄い厚さを有し、かつより高い屈折率変調値および回折効率を実現し、相対的に速い反応速度を有して記録時間を短縮することができ、記録光に対して高い感度を実現し、記録効率を向上することができるホログラム形成用フォトポリマー組成物を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、薄い厚さを有し、かつより高い屈折率変調値および回折効率を実現し、相対的に速い反応速度を有して記録時間を短縮することができ、記録光に対して高い感度を実現し、記録効率を向上することができるホログラム記録媒体を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、ホログラム記録媒体を含む光学素子を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、可干渉性のレーザによって前記ホログラム記録媒体に含まれている光反応性単量体を選択的に重合させる段階を含む、ホログラフィック記録方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、80℃以下のガラス転移温度を有する高分子マトリックスまたはその前駆体;光反応性単量体;低屈折率フッ素系化合物;および光開始剤;を含む、ホログラム形成用フォトポリマー組成物が提供される。
【0013】
また、本発明では、前記フォトポリマー組成物から製造されたホログラム記録媒体が提供される。
【0014】
また、本発明では、前記ホログラム記録媒体を含む光学素子が提供される。
【0015】
また、本発明では、可干渉性光源によって前記フォトポリマー組成物に含まれている光反応性単量体を選択的に重合させる段階を含む、ホログラフィック記録方法が提供される。
【0016】
以下、本発明の具体的な実施形態によるフォトポリマー組成物、ホログラム記録媒体、光学素子、およびホログラフィック記録方法についてより詳しく説明する。
【0017】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。
【0018】
本明細書において、(共)重合体は、単独重合体または共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を含む)を意味する。
【0019】
また、本明細書において、ホログラム(hologram)は、露光過程により全可視範囲および近紫外線範囲(300~800nm)で光学的情報が記録された記録メディアを意味し、例えば、インライン(ガボール(Gabor))ホログラム、オフアクシス(off-axis)ホログラム、フルアパーチャ(full-aperture)トランスファーホログラム、白色光透過ホログラム(「レインボーホログラム」)、デニシューク(Denisyuk)ホログラム、オフアクシス反射ホログラム、エッジリット(edge-literature)ホログラムまたはホログラフィックステレオグラム(stereogram)などの視覚的ホログラム(visual hologram)をすべて含む。
【0020】
本明細書において、アルキル基は直鎖または分枝鎖であり得、炭素数は特に限定されないが、1~40であることが好ましい。一実施状態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。他の一実施状態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。さらに他の一実施状態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書において、アルキレン基はアルカン(alkane)に由来する2価の官能基であって、例えば直鎖状、分枝状または環状で、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などであり得る。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、80℃以下のガラス転移温度を有する高分子マトリックスまたはその前駆体;光反応性単量体;低屈折率フッ素系化合物;および光開始剤;を含む、ホログラム形成用フォトポリマー組成物が提供される。
【0023】
本発明者らは、上述した成分を含むホログラム形成用フォトポリマー組成物を利用すると、薄い厚さを有し、かつより高い屈折率変調値および回折効率を実現し、相対的に速い反応速度を有して記録時間を短縮することができ、記録光に対して高い感度を実現し記録効率を向上できるホログラムを形成できることを実験を通して確認して、発明を完成した。
【0024】
前記ホログラム形成用フォトポリマー組成物は、上述した80℃以下のガラス転移温度を有する高分子マトリックスまたはその前駆体および低屈折率フッ素系化合物を共に使用して、屈折率変調値および回折効率をより容易に向上させることができ、ホログラフィック媒体に適用時、相対的に速い反応速度を有して記録時間を短縮することができる。
【0025】
前記高分子マトリックスまたはその前駆体は、前記ホログラム記録媒体およびこれから製造された最終製品の支持体としての役割を果たすことができ、前記光反応性単量体は記録単量体としての役割を果たすことができ、これを使用することで、ホログラフィックの記録時、前記高分子マトリックス上に前記光反応性単量体を選択的に重合して、屈折率の異なる部分による屈折率変調が生じることがある。
【0026】
前記高分子マトリックスまたはその前駆体は80℃以下、または60℃以下、または10℃~80℃、または20℃~60℃、または25℃~45℃のガラス転移温度を有し得る。前記高分子マトリックスまたはその前駆体が、上述したガラス転移温度を有することで、常温で熱的安定性を有し、かつ記録時にはフォトポリマー組成物内の成分の流動性を十分に確保することができる。
【0027】
前記高分子マトリックスまたはその前駆体としては、ホログラム記録媒体を提供するフォトポリマー組成物で通常使用可能な化合物を特に制限なく使用することができる。
【0028】
例えば、前記80℃以下のガラス転移温度を有する高分子マトリックスまたはその前駆体としては、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチレート、ポリビニルホルマール、ポリビニルカルバゾール、ポリアクリル酸、ポリメタクリロニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリ-1,2-ジクロロエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、シンジオタクチック型ポリメチルメタクリレート、ポリ-α-ビニルナフタレート、ポリカーボネート、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン、ポリ-o-メチルスチレン、ポリ-p-メチルスチレン、ポリ-p-フェニルスチレン、ポリ-p-クロロスチレン、ポリ-2,5-ジクロロスチレン、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、水素化スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸環状脂肪族エステルとメチル(メタ)アクリレートとの共重合体、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される1種以上の高分子を含み得る。
【0029】
より具体的には、前記80℃以下のガラス転移温度を有する高分子マトリックスまたはその前駆体は20℃~60℃、または25℃~45℃のガラス転移温度を有し、5万~60万の重量平均分子量を有するポリビニルアセテートを含み得る。
【0030】
重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(単位:g/mol)を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られている分析装置と示差屈折率検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用い、通常適用される温度条件、溶媒、流速(flow rate)を適用することができる。前記測定条件の具体的な例として、30℃の温度、クロロホルム溶媒(Chloroform)および1mL/minの流速が挙げられる。
【0031】
ガラス転移温度は、DMA(動的機械分析、dynamic mechanical analyzer)またはDSC(示差走査熱量計、Differential Scanning Calorimetry)などを用いて測定することができる。ガラス転移温度の測定方法の具体的な例として、DSC(differential scanning calorimetry)測定装備を用いて、昇温速度10℃/minのセッティング条件で-50℃~100℃の領域で高分子マトリックスまたは前駆体の温度に応じた熱量変化を測定する方法が挙げられる。
【0032】
前記低屈折率フッ素系化合物は、反応性がほとんどない安定性を有し、低屈折特性を有するので、前記フォトポリマー組成物内に添加時、高分子マトリックスの屈折率をさらに下げることができ、モノマーとの屈折率変調を極大化させることができ、最終製造されるホログラム記録媒体の回折効率をさらに高めることができる。
【0033】
前記低屈折率フッ素系化合物は、屈折率が1.45未満、または1.3以上1.45未満である。前記低屈折率フッ素系化合物は、光反応性単量体より低い屈折率により、高分子マトリックスの屈折率をさらに下げることができ、モノマーとの屈折率変調を極大化させることができる。
【0034】
前記低屈折率フッ素系化合物の例としては、エーテル基、エステル基およびアミド基からなる群から選択される1種以上の官能基および2以上のジフルオロメチレン基を含む低屈折率フッ素系化合物が挙げられる。
【0035】
前記低屈折率フッ素系化合物は1.45未満の屈折率を有し、エーテル基、エステル基およびアミド基からなる群から選択される1種以上の官能基および2以上のジフルオロメチレン基を含む化合物であり得る。
【0036】
具体的には、前記低屈折率フッ素系化合物は、2個のジフルオロメチレン基間の直接結合またはエーテル結合を含む中心の官能基の両末端にエーテル基を含む官能基が結合した構造を有し得る。
【0037】
前記低屈折率フッ素系化合物の具体的な例としては、2個のジフルオロメチレン基間の直接結合またはエーテル結合を含む中心の官能基の両末端にエーテル基を含む官能基が結合した下記化学式1の化合物が挙げられる。
【0038】
【化1】
【0039】
上記化学式1中、R11およびR12はそれぞれ独立して、ジフルオロメチレン基であり、R13およびR16はそれぞれ独立して、メチレン基であり、R14およびR15はそれぞれ独立して、ジフルオロメチレン基であり、R17およびR18はそれぞれ独立して、ポリアルキレンオキシド基であり、mは1以上、または1~10、または1~3の整数である。
【0040】
好ましくは、上記化学式1中、R11およびR12はそれぞれ独立して、ジフルオロメチレン基であり、R13およびR16はそれぞれ独立して、メチレン基であり、R14およびR15はそれぞれ独立して、ジフルオロメチレン基であり、R17およびR18はそれぞれ独立して、2-メトキシエトキシメトキシ基であり、mは2の整数である。
【0041】
具体的には、前記低屈折率フッ素系化合物の含有量は、光反応性単量体100重量部に対して10重量部~250重量部、20重量部~150重量部、または40重量部~100重量部である。
【0042】
前記光反応性単量体に対して低屈折率フッ素系化合物の含有量が少なすぎると、低屈折成分の不足により記録後の屈折率変調値が低下することがある。前記光反応性単量体に対して低屈折率フッ素系化合物の含有量が多すぎると、その他の成分との相溶性の問題でヘイズが発生するか、または一部のフッ素系化合物がコーティング層の表面に溶出する問題が発生することがある。
【0043】
前記低屈折率フッ素系化合物は、重量平均分子量(GPC測定)が300以上、または300~1,000である。重量平均分子量を測定する具体的な方法は上述した通りである。
【0044】
一方、前記光反応性単量体は、多官能(メタ)アクリレート単量体または単官能(メタ)アクリレート単量体を含み得る。
【0045】
上述したように、前記フォトポリマー組成物の光重合過程で単量体が重合して、ポリマーが相対的に多く存在する部分では屈折率が高くなり、高分子バインダーが相対的に多く存在する部分では屈折率が相対的に低くなって屈折率変調が生じ、このような屈折率変調により回折格子が生成される。
【0046】
具体的には、前記光反応性単量体の一例としては、(メタ)アクリレート系α,β-不飽和カルボン酸誘導体、例えば、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルまたは(メタ)アクリル酸などや、またはビニル基(vinyl)またはチオール基(thiol)を含む化合物が挙げられる。
【0047】
前記光反応性単量体の一例として屈折率が1.5以上、または1.53以上、または1.5~1.7である多官能(メタ)アクリレート単量体が挙げられ、このような屈折率が1.5以上、または1.53以上、または1.5~1.7の多官能(メタ)アクリレート単量体は、ハロゲン原子(臭素(bromine)、ヨウ素(iodine)など)、硫黄(S)、リン(P)または芳香族環(aromatic ring)を含み得る。
【0048】
前記屈折率が1.5以上の多官能(メタ)アクリレート単量体のより具体的な例としては、ビスフェノールA変性ジアクリレート(bisphenol A modified diacrylate)系、フルオレンアクリレート(fluorene acrylate)系(HR6022など、Miwon社製)、ビスフェノールフルオレンエポキシアクリレート(bisphenol fluorene epoxy acrylate)系(HR6100、HR6060、HR6042など、Miwon社製)、ハロゲン化エポキシアクリレート(Halogenated epoxy acrylate)系(HR1139、HR3362など、Miwon社製)などが挙げられる。
【0049】
前記光反応性単量体の他の一例として、単官能(メタ)アクリレート単量体が挙げられる。前記単官能(メタ)アクリレート単量体は、分子の内部にエーテル結合およびフルオレン官能基を含み得、このような単官能(メタ)アクリレート単量体の具体的な例としては、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールエチレンオキシド(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-(フェニルチオ)エチル(メタ)アクリレート、またはビフェニルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0050】
一方、前記光反応性単量体としては、50g/mol~1,000g/mol、または200g/mol~600g/molの重量平均分子量を有し得る。前記重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0051】
一方、前記実施形態のホログラム記録媒体は光開始剤を含み得る。前記光開始剤は、光または化学放射線によって活性化する化合物であり、前記光反応性単量体などの光反応性官能基を含む化合物の重合を開始する。
【0052】
前記光開始剤としては、通常知られている光開始剤を特に制限なく使用することができるが、その具体的な例としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤または光アニオン重合開始剤が挙げられる。
【0053】
前記光ラジカル重合開始剤の具体的な例としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N-アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン、アルミネート錯体、有機過酸化物、N-アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体、アミン誘導体などが挙げられる。より具体的には、前記光ラジカル重合開始剤としては、1,3-ジ(t-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン(1,3-di(t-butyldioxycarbonyl)benzophenone)、3,3’,4,4’’-テトラキス(t-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン(3,3’,4,4’’-tetrakis(t-butyldioxycarbonyl)benzophenone)、3-フェニル-5-イソオキサゾロン(3-phenyl-5-isoxazolone)、2-メルカプトベンズイミダゾール(2-mercapto benzimidazole)、ビス(2,4,5-トリフェニル)イミダゾール(bis(2,4,5-triphenyl)imidazole)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(2,2-dimethoxy-1,2-diphenylethane-1-one)(製品名:Irgacure 651/製造会社:BASF社)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(1-hydroxy-cyclohexyl-phenyl-ketone)(製品名:Irgacure 184/製造会社:BASF社)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1(2-benzyl-2-dimethylamino-1-(4-morpholinophenyl)-butanone-1)(製品名:Irgacure 369/製造会社:BASF社)、およびビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタン(bis(η5-2,4-cyclopentadiene-1-yl)-bis(2,6-difluoro-3-(1H-pyrrole-1-yl)-phenyl)titanium)(製品名:Irgacure 784/製造会社:BASF社)、Ebecryl P-115(製造会社:SK entis社)などが挙げられる。
【0054】
前記光カチオン重合開始剤としては、ジアゾニウム塩(diazonium salt)、スルホニウム塩(sulfonium salt)、またはヨードニウム塩(iodonium salt)が挙げられ、例えば、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル-4-ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸-p-ニトロベンジルエステル、シラノール-アルミニウム錯体、(η6-ベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)などが挙げられる。また、ベンゾイントシレート、2,5-ジニトロベンジルトシレート、N-トシルフタル酸イミドなども挙げられる。前記光カチオン重合開始剤のより具体的な例としては、Cyracure UVI-6970、Cyracure UVI-6974およびCyracure UVI-6990(製造会社:Dow Chemical Co.in USA)やIrgacure 264およびIrgacure 250(製造会社:BASF社)、またはCIT-1682(製造会社:Nippon Soda社)などの市販製品が挙げられる。
【0055】
前記光アニオン重合開始剤としては、ボレート塩(Borate salt)が挙げられ、例えば、ブチリルコリンブチルトリフェニルボレート(BUTYRYL CHOLINE BUTYLTRIPHENYLBORATE)などが挙げられる。前記光アニオン重合開始剤のより具体的な例としては、Borate V(製造会社:Spectra group社)などの市販製品が挙げられる。
【0056】
また、前記フォトポリマー組成物は、一分子(類型I)または二分子(類型II)開始剤を使用することもできる。前記フリーラジカル光重合のための(類型I)システムは、例えば、3級アミンと組合わせた芳香族ケトン化合物、例えば、ベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラー(Michler’s)ケトン)、アントロンおよびハロゲン化ベンゾフェノンまたは前記類型の混合物である。前記二分子(類型II)開始剤としては、ベンゾインおよびその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスフィンオキシド、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、フェニルグリオキシルエステル、カンファーキノン、α-アミノアルキルフェノン、α,α-ジアルコキシアセトフェノン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、およびα-ヒドロキシアルキルフェノンなどが挙げられる。
【0057】
前記実施形態のフォトポリマー組成物は、前記高分子マトリックスまたはその前駆体1重量%~80重量%;前記光反応性単量体1重量%~80重量%;前記低屈折率フッ素系化合物0.0001~10重量%;および光開始剤0.1重量%~20重量%;を含み得る。後述するように、前記フォトポリマー組成物が有機溶媒をさらに含む場合、前記成分の含有量は、これら成分の総和(有機溶媒を除いた成分の総和)を基準とする。
【0058】
前記フォトポリマー組成物は、ホスフェート系化合物をさらに含み得る。
【0059】
前記ホスフェート系化合物は可塑剤としての役割を果たし、前記高分子マトリックスのガラス転移温度を下げて光反応性単量体と低屈折成分の流動性(mobility)を高め、フォトポリマー組成物の成形性向上にも寄与できる。
【0060】
前記ホスフェート系化合物の具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートなどが挙げられる。
【0061】
前記ホスフェート系化合物は、上述したフッ素系化合物と共に1:5~5:1の重量比率で添加される。前記ホスフェート系化合物は、屈折率が1.5未満であり、分子量が700以下である。
【0062】
前記フォトポリマー組成物は、その他添加剤をさらに含むことができ、添加剤の例としては消泡剤が挙げられる。前記消泡剤としてはシリコーン系添加剤を使用することができ、その例としてTego Rad2500、BYK-3500などが挙げられる。
【0063】
一方、前記実施形態のフォトポリマー組成物は、光感応染料をさらに含み得る。
【0064】
前記光感応染料は、前記光開始剤を増減させる増減色素の役割を果たすが、より具体的には、前記光感応染料は、光重合体組成物に照射された光によって刺激されてモノマーおよび架橋モノマーの重合を開始する開始剤の役割も併せて果たすことができる。
【0065】
前記光感応染料の例は特に限定されるものではなく、通常知られている多様な化合物を使用することができる。前記光感応染料の具体的な例としては、セラミドニンのスルホニウム誘導体(sulfonium derivative)、ニューメチレンブルー(new methylene blue)、チオエリスロシントリエチルアンモニウム(thioerythrosine triethylammonium)、6-アセチルアミノ-2-メチルセラミドニン(6-acetylamino-2-methylceramidonin)、エオシン(eosin)、エリスロシン(erythrosine)、ローズベンガル(rose bengal)、チオニン(thionine)、ベーシックイエロー(baseic yellow)、ピナシアノールクロリド(Pinacyanol chloride)、ローダミン6G(rhodamine 6G)、ガロシアニン(gallocyanine)、エチルバイオレット(ethyl violet)、ビクトリアブルーR(Victoria blue R)、セレスチンブルー(Celestine blue)、キナルジンレッド(Quinaldine Red)、クリスタルバイオレット(crystal violet)、ブリリアントグリーン(Brilliant Green)、アストラゾンオレンジG(Astrazon orange G)、ダローレッド(darrow red)、ピロニンY(pyronin Y)、ベーシックレッド29(basic red 29)、ピリリウムI(pyrylium iodide)、サフラニンO(Safranin O)、シアニン、メチレンブルー、アズールA(Azure A)、またはこれらの2以上の組み合わせが挙げられる。
【0066】
一方、前記フォトポリマー組成物は有機溶媒をさらに含み得る。前記有機溶媒の非制限的な例としてはケトン類、アルコール類、アセテート類およびエーテル類、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0067】
このような有機溶媒の具体的な例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンまたはイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノールまたはt-ブタノールなどのアルコール類;酢酸エチル、i-プロピルアセテートまたはポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;テトラヒドロフランまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0068】
前記有機溶媒は、前記ホログラム記録媒体を製造するためのフォトポリマー組成物に含まれる各成分を混合する時期に添加されるか、または各成分が有機溶媒に分散または混合した状態で添加されて前記フォトポリマー組成物に含まれる。前記フォトポリマー組成物中の有機溶媒の含有量が少なすぎると、前記フォトポリマー組成物の流れ性が低下して最終製造されるフィルムに縞模様が生じるなどの不良が発生することがある。また、前記有機溶媒の過剰添加時に固形分の含有量が低くなり、コーティングおよび成膜が十分に行われずフィルムの物性や表面特性が低下することがあり、乾燥および硬化過程で不良が発生することがある。これにより、前記フォトポリマー組成物は、含まれる成分の全体固形分の濃度が1重量%~70重量%、または2重量%~50重量%となるように有機溶媒を含み得る。
【0069】
一方、本発明の他の実施形態によれば、フォトポリマー組成物から製造されたホログラム記録媒体が提供される。
【0070】
前記ホログラム記録媒体は、5μm~50μmの厚さで50%以上、または85%以上、または85~99%の回折効率を実現することができる。
【0071】
前記ホログラム記録媒体を製造するためのフォトポリマー組成物は、これに含まれるそれぞれの成分を均一に混合し、20℃以上の温度で乾燥および硬化を行った後、所定の露光過程を経て全体可視範囲および近紫外線領域(300~800nm)での光学的適用のためのホログラムに製造される。
【0072】
前記フォトポリマー組成物のうち、高分子マトリックスまたはその前駆体を形成する成分をまず均質に混合し、以後、その他の成分を共に混合してホログラムの形成過程を準備することができる。
【0073】
前記フォトポリマー組成物は、これに含まれるそれぞれの成分の混合には、通常知られている混合機、攪拌機またはミキサーなどを格別の制限なく使用することができ、前記混合過程での温度は0℃~100℃、好ましくは10℃~80℃、より好ましくは20℃~60℃である。
【0074】
一方、前記フォトポリマー組成物のうち、高分子マトリックスまたはその前駆体を形成する成分をまず均質に混合した後、前記フォトポリマー組成物は20℃以上の温度で硬化する液体配合物であり得る。前記硬化温度は、前記フォトポリマーの組成によって異なり、例えば30℃~180℃の温度で加熱することによって促進される。
【0075】
前記硬化の際、前記フォトポリマーは所定の基板やモールドに注入またはコーティングされた状態であり得る。
【0076】
一方、前記フォトポリマー組成物から製造されたホログラム記録媒体に視覚的ホログラムを記録する方法は、通常知られている方法を特に制限なく使用することができ、後述する実施形態のホログラフィック記録方法で説明する方法を一つの例として採用することができる。
【0077】
また、本発明のさらに他の実施形態によれば、可干渉性のレーザによって前記フォトポリマー組成物に含まれている光反応性単量体を選択的に重合させる段階を含む、ホログラフィック記録方法が提供される。
【0078】
前述のように、前記フォトポリマー組成物を混合および硬化する過程により視覚的ホログラムが記録されない状態の媒体を製造することができ、所定の露出過程により前記媒体上に視覚的ホログラムを記録することができる。
【0079】
前記フォトポリマー組成物を混合および硬化する過程により提供される媒体に、通常知られている条件下で公知の装置および方法を用いて視覚的ホログラムを記録することができる。
【0080】
一方、本発明のさらに他の実施形態によれば、ホログラム記録媒体を含む光学素子が提供される。
【0081】
前記光学素子の具体的な例としては、光学レンズ、ミラー、偏向ミラー、フィルター、拡散スクリーン、回折部材、導光体、導波管、映写スクリーンおよび/またはマスクの機能を有するホログラフィック光学素子、光メモリシステムの媒質と光拡散板、光波長分割器、反射型、透過型カラーフィルターなどが挙げられる。
【0082】
前記ホログラム記録媒体を含む光学素子の一例として、ホログラムディスプレイ装置が挙げられる。
【0083】
前記ホログラムディスプレイ装置は、光源部、入力部、光学系および表示部を含む。前記光源部は、入力部および表示部で物体の3次元映像情報を提供、記録および再生するために用いられるレーザビームを照射する部分である。また、前記入力部は、表示部に記録する物体の3次元映像情報を予め入力する部分であり、例えば、電気駆動液晶SLM(electrically addressed liquid crystal SLM)に空間別に光の強さと位相などの物体の3次元情報を入力することができ、この時、入力ビームが用いられる。前記光学系は、ミラー、偏光器、ビームスプリッタ、ビームシャッター、レンズなどで構成され、前記光学系は、光源部から放出されるレーザビームを入力部に送る入力ビーム、表示部に送る記録ビーム、基準ビーム、消去ビーム、読み出しビームなどに分配することができる。
【0084】
前記表示部は、入力部から物体の3次元映像情報を受信して、光学駆動SLM(optically addressed SLM)からなるホログラムプレートに記録し、物体の3次元映像を再生することができる。この時、入力ビームと基準ビームの干渉により物体の3次元映像情報を記録することができる。前記ホログラムプレートに記録された物体の3次元映像情報は、読み出しビームが生成する回折パターンによって3次元映像として再生され、消去ビームは形成された回折パターンを速やかに除去するために用いられる。一方、前記ホログラムプレートは、3次元映像を入力する位置と再生する位置との間で移動可能である。
【発明の効果】
【0085】
本発明によれば、薄い厚さを有し、かつより高い屈折率変調値および回折効率を実現し、相対的に速い反応速度を有して記録時間を短縮することができ、記録光に対して高い感度を実現し、記録効率を向上できるホログラム形成用フォトポリマー組成物と、これから製造されたホログラム記録媒体、これを含む光学素子および前記ホログラム記録媒体を用いたホログラフィック記録方法が提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0086】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0087】
[製造例1:低屈折率フッ素系化合物の製造]
1,000mlフラスコに、2,2’-((オキシビス(1,1,2,2-テトラフルオロエタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ))ビス(2,2-ジフルオロエタン-1-オール)(2,2’-((oxybis(1,1,2,2-tetrafluoroethane-2,1-diyl))bis(oxy))bis(2,2-difluoroethan-1-ol))20.51gを入れた後、テトラヒドロフラン500gに溶かして0℃で攪拌しながら、水素化ナトリウム(sodium hydride)(鉱油中60%分散体)4.40gを数回にわたって注意深く添加した。0℃で20分間攪拌した後、2-メトキシエトキシメチルクロリド(2-methoxyethoxymethyl chloride)12.50mlをゆっくり滴下した。H NMRにて反応物が全て消耗したことが確認されると、減圧して反応溶媒を全て除去した。ジクロロメタン300gで3回抽出して有機層を集めた後、硫酸マグネシウム(magnesium sulfate)でろ過した後、減圧してジクロロメタンを全て除去して、純度95%以上の液状生成物29gを98%の収率で得た。
【0088】
[実施例および比較例:フォトポリマー組成物の製造]
下記表1、2に記載されている通り、高分子マトリックス(Aldrich社製)、光反応性単量体(高屈折アクリレート、屈折率1.600、HR6022[味元社製])、製造例1の非反応性低屈折物質、トリブチルホスフェート(Tributyl phosphate[TBP]、Safranin O[Aldrich社製]、Borate V(Spectra group)、Irgacure 250(Onium salt、BASF社製)およびメチルイソブチルケトン(MIBK)を光を遮断した状態で混合し、均質な混合のために60℃の温度で5~10分程度攪拌を進行した。さらに、ペースト(Paste)ミキサーで常温で約10分間攪拌して、透明なコーティング液を得て、80μm厚さのTAC基材に15μmの厚さでコーティングして60℃で30分間乾燥させた。
【0089】
[実験例:ホログラフィック記録]
(1)前記実施例および比較例それぞれで製造されたフォトポリマー(ホログラム記録媒体)コーティング面をスライドガラスにラミネートし、記録時にレーザがガラス面を先に通過するように固定した。
【0090】
(2)回折効率(η)測定
二つの干渉光(参照光および物体光)の干渉によりホログラフィックを記録し、反射型記録は二つのビームをサンプルの反対面に入射した。二つのビームの入射角に応じて回折効率は変化し、二つのビームの入射角が同じである場合non-slantedとなる。non-slanted記録は、二つのビームの入射角が法線基準で同じであるので、回折格子はフィルムに平行に生成される。
【0091】
532nm波長のレーザを用いて反射型slanted方式で記録(参照光=30°、物体光=40°)し、下記一般式1で回折効率(η)を計算した。
【0092】
【数1】
【0093】
上記一般式1中、ηは回折効率であり、Pは記録後のサンプルの回折されたビームの出力量(mW/cm)であり、Pは記録したサンプルの透過したビームの出力量(mW/cm)である。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
上記表1および表2に示すように、実施例のホログラム記録媒体は50%以上の回折効率を実現するのに対して、比較例のホログラム記録媒体は最大10%水準の低い回折効率を有することが確認された。
【0097】
すなわち、実施例に対するホログラム記録(532nm レーザー)後の評価結果、高分子マトリックス内の成分の流動性の確保および非反応性低屈折材料(非反応性フッ素系化合物と可塑剤)の移動により、もっと高い屈折率変調値および回折効率を実現できることを明確に確認することができた。