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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】吸水性樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/18 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
C08F2/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018006043
(22)【出願日】2018-01-18
(62)【分割の表示】P 2015253656の分割
【原出願日】2011-09-02
(65)【公開番号】P2018059124
(43)【公開日】2018-04-12
【審査請求日】2018-02-15
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2010198836
(32)【優先日】2010-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】半田 昌良
(72)【発明者】
【氏名】小野田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】上田 耕士
【合議体】
【審判長】佐藤 健史
【審判官】近野 光知
【審判官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-5808(JP,A)
【文献】特開2004-261796(JP,A)
【文献】特開2006-68731(JP,A)
【文献】国際公開第2007/123188(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/00-2/60
B01J20/00-20/28
B01J20/30-20/34
C08J3/00-3/28
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアクリル酸部分中和物の架橋体を含む吸水性樹脂と親水性繊維を配合してなる吸収体であって、
前記吸水性樹脂は、アスペクト比(長径/短径比)が1.1~2.2で、且つ、中位粒子径(d)が50~600μmの1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有し、該2次粒子が有する形態が、アスペクト比(長径/短径比)が1.0~1.7で、且つ、中位粒子径(D)が100~2000μm(200~400μmを除く)であり、
前記吸水性樹脂の1次粒子が、曲面から構成される形状であり、
前記吸水性樹脂は、粒子衝突試験後の荷重下の吸水能が16ml/g以上であり、
前記粒子衝突試験後の荷重下の吸水能は、下記式
粒子衝突試験後の荷重下の吸水能(ml/g)=Wc/0.10
(ここで、Wcは粒子衝突試験後の吸水性樹脂が吸水した0.9質量%食塩水量である)で求められ、
前記粒子衝突試験は、吸水性樹脂100gを外径8mm、内径6mm、長300mmの射出ノズルから50m/sの速度で噴射させて衝突板に衝突させて行い、
前記衝突板は厚みが4mmであるSUS304で形成され、
前記射出ノズルと前記衝突板との距離は10mmである、吸収体。
【請求項2】
前記吸水性樹脂の粒子径の均一度が1.0~2.2であり、
前記均一度は、下記式
均一度=X1/X2
(ここで、X1は中位粒子径測定において、積算質量百分率が15.9質量%に相当する粒子径、X2は積算質量百分率が84.1質量%の相当する粒子径である)
で求められる請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
前記吸水性樹脂の粉体の流動性指数が70~200であり、
前記粉体の流動性指数は、下記式
粉体の流動性指数=[(100/T2)×(1/D2)]/[(100/T1)×(1/D1)]×100
(ここで、D1は食塩の中位粒子径、D2は吸水性樹脂の中位粒子径、T1は食塩100gの移送時間、T2は吸水性樹脂100gの移送時間である)
で求められる請求項1又は2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記吸水性樹脂の吸水能保持率が80%以上である、請求項1~のいずれかに記載の吸収体。
【請求項5】
前記吸水性樹脂の粉体の流動性指数が110以上である、請求項1~のいずれかに記載の吸収体。
【請求項6】
前記吸水性樹脂は、前記粒子衝突試験後の粒子径保持率が80%以上であり、
前記粒子衝突試験後の粒子径保持率は、下記式
粒子衝突試験後の粒子径保持率(%)=[A2/A1]×100
(ここで、A1は衝突前の中位粒子径、A2は衝突後の中位粒子径である)
で求められる、請求項1~のいずれかに記載の吸収体。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の吸収体を液体透過性シートと液体不透過性シートで挟持してなる吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂に関する。さらに詳しくは、衛生材料に使用される吸水剤に好適な特性として、適度な粒子径、強い粒子強度、優れた吸収性能を有し、繊維への固着性と粉体としての流動性にも優れる吸水性樹脂に関する。また本発明は、かかる吸水性樹脂を用いた吸収体、及び紙おむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、近年、紙オムツや生理用品等の衛生用品、保水剤や土壌改良剤等の農園芸材料、止水材、結露防止剤等の工業資材など、種々の分野で広く使用されている。これらの分野の中でも、特に紙オムツや生理用品等の衛生用品に使用される事が多い。このような吸水性樹脂としては、例えば、澱粉-アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉-アクリル酸グラフト共重合体の中和物、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のけん化物、ポリアクリル酸部分中和物の架橋体等が知られている。
【0003】
通常、吸水性樹脂に望まれる特性としては、高い吸水量、優れた吸水速度、吸水後の高いゲル強度等が挙げられる。特に、衛生材料用途の吸収体に使用される吸水性樹脂に望まれる特性としては、高い吸水量、優れた吸水速度、吸水後の高いゲル強度に加えて、優れた荷重下の吸水能、適度な粒子径、狭い粒子径分布、吸収した物質の吸収体外部への逆戻りの少ないこと、吸収した物質の吸収体内部への拡散性に優れること等が挙げられる。
【0004】
紙おむつ等に代表される吸収性物品は、体液等の液体を吸収する吸収体が、体に接する側に配された柔軟な液体透過性の表面シート(トップシート)と、体と接する反対側に配された液体不透過性の背面シート(バックシート)とにより挟持された構造を有する。
【0005】
近年、デザイン性、携帯時における利便性、流通時における効率などの観点から、吸収性物品の薄型化、軽量化に対する要求は高まっている。吸収性物品において一般的に行われている薄型化のための方法としては、例えば、吸収体中の吸水性樹脂を固定する役割を有する木材の解砕パルプ等の親水性繊維を減らし、吸水性樹脂を増加させる方法がある。
【0006】
嵩高く吸収能力の低い親水性繊維の比率を低くし、嵩が小さく吸収能力の高い吸水性樹脂を多量に使用した吸収体は、吸収性物品の設計に見合う吸収容量を確保しながら、嵩高い素材を減らすことにより薄型化を目指したもので、合理的な改良方法である。しかしながら、実際に紙おむつ等の吸収性物品に使用された際の液体の分配や拡散を考えた場合、多量の吸水性樹脂が液体の吸収によって柔らかいゲル状になると、いわゆる「ゲルブロッキング現象」が発生し、液拡散性が格段に低下し、吸収体の液浸透速度が遅くなるという欠点を有する。この「ゲルブロッキング現象」とは、特に吸水性樹脂が多く密集した吸収体が液体を吸収する際、表層付近に存在する吸水性樹脂が液体を吸収し、表層付近で柔らかいゲルがさらに密になることで、吸収体内部への液体の浸透が妨げられ、内部の吸水性樹脂が効率良く液体を吸収できなくなる現象のことである。
【0007】
そこで、これまでにも親水性繊維を減らし、吸水性樹脂を多量に使用した時に発生するゲルブロッキング現象を防ぐ手段として、例えば、食塩水流れ誘導性、圧力下性能等を有する吸収性重合体を使用する方法(特許文献1)、吸水性樹脂前駆体に表面架橋剤を加熱処理した吸水性樹脂を用いる方法(特許文献2)等が提案されている。しかしながら、これらの方法では、吸水性樹脂を多量に使用した吸収体としての吸収性能は満足できるものではない。
【0008】
一方、紙おむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品の製造工程における利便性や、吸収性物品の吸収性能の安定性などを考慮すると、前記した吸収特性以外に、吸水性樹脂の形態に関わる特性、すなわち、吸水性樹脂の粒子径、粉体流動性、耐衝撃強度等も重要となってきている。一般的に、吸収性物品に用いられる吸収体は、ドラムフォーマーと呼ばれる設備において製造される。前記設備においては、解砕された繊維状パルプに、スクリューフィーダーのような粉体移送機で吸水性樹脂を供給して、両者を空気中で混合しつつ、金属スクリーンメッシュ上に吸引して積層することで、吸収体が製造される。その後、吸収体は形態保持性を上げるために、ロールプレス等によって圧縮され、吸収性物品に組み込まれる。
【0009】
吸収体の製造工程において、吸水性樹脂の粒子径が適度でない、具体的には粒子径が小さい場合、製造設備周辺に粉立ちが発生したり、メッシュからの目抜けによる生産性の悪化につながる。また、吸水性樹脂の粉体流動性が乏しいと、粉体移送機で供給量にばらつきが生じたり、投入口でブリッジを形成したりすることで、吸収性物品の性能が変動しやすくなる。さらに、吸水性樹脂が衝撃に弱い場合、メッシュへの衝突や、プレスによる圧縮で吸水性樹脂が破壊しやすくなる。吸水性樹脂の粒子径が大きい場合、特に粒子を凝集させて粒子径を大きくした場合に、衝撃に弱い傾向がある。
【0010】
さらに、近年の吸収体の薄型化により、吸収体中で吸水性樹脂の固着に寄与する親水性繊維が減量されたことが主な要因となり、吸収性物品の輸送時や、消費者の装着時に、吸水性樹脂が吸収体の中で移動するという課題が浮上してきた。吸水性樹脂のばらつきが生じた吸収体は、液体を吸収した際、ゲルブロッキングや断裂が起こりやすく、本来の吸収性能を発揮できない。よって、吸収体製造の観点から、吸水性樹脂には、適度な大きさの中位粒子径を有しながらも耐衝撃強度(粒子強度)に優れること、及び粉体流動性に優れながらも繊維への固着性に優れるという、相反する性能の両立が求められている。
【0011】
これら個々の課題を達成するために、様々な吸水性樹脂の様々な製造技術が提案されている。主な吸水性樹脂の製造方法としては、単量体水溶液を疎水性有機溶媒(分散媒)中に粒子状で懸濁させた後に重合する逆相懸濁重合法と、分散媒等を用いずに単量体水溶液を重合する水溶液重合法等がある。
【0012】
例えば、逆相懸濁重合の技術領域からは、アクリル酸塩をエリスリトール脂肪酸エステルの存在下、石油系炭化水素溶媒中で逆相懸濁重合する方法(特許文献3)、アクリル酸系モノマーを、常温で固体のソルビタン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルとの混合界面活性剤を用いて逆相懸濁重合する方法(特許文献4)がある。このような逆相懸濁重合により得られる真球状の吸水性樹脂は、粉体流動性と粒子強度には優れるものの、吸収体の製造に適した粒子径としては十分ではない。
【0013】
これを改良すべく、水溶性エチレン性不飽和単量体を、1段目の逆相懸濁重合反応に付した後、水溶性エチレン性不飽和単量体を1段目の重合で生成した含水ゲルに吸収させ、さらに逆相懸濁重合反応を行なう操作を1回以上繰り返す方法(特許文献5)、水溶性エチレン性不飽和単量体を、油中水滴型の逆相懸濁重合法により重合させてスラリー液を形成させ、更に重合性単量体を添加して重合させて高吸水性ポリマー粒子の凝集粒子を造成する方法(特許文献6)などの真球状粒子の凝集物が提案されている。これらの方法により、流動性に優れた適度な粒子径の吸水性樹脂は得られるものの、繊維への固着性が十分ではないという課題があった。
【0014】
一方、水溶液重合の技術領域からは、重合途中の吸水性樹脂含水ゲルに、粒子径のより小さい吸水性樹脂微粉末を混合する方法(特許文献7)吸水性樹脂一次粒子と吸水性樹脂造粒物の混合物を表面架橋する方法(特許文献8)等の技術により、適度な粒子径は得ら
れるものの、粉体流動性に劣り、粒子強度も十分ではない。これを改良すべく、吸水性樹脂含水物に吸水性樹脂以外の微粒子を混合する方法(特許文献9)等が提案されているが、前記逆相懸濁重合品の粉体流動性、及び粒子強度と比較すると、十分に満足できるものではない。
【0015】
繊維への固着性を改良する技術もいくつか提案されている。例えば、粒子の平均長径と平均短径の比が1.5~20で角を有さない非球状の吸水性樹脂を用いる方法(特許文献10)、先行逆相懸濁重合の後に、漸次的にモノマーを添加して、回分方式で逆相懸濁重合を行うことで吸水性樹脂を得る方法(特許文献11)、アスペクト比(粒子の長径/短径)が1.5以上の造粒粒子である吸水性樹脂を用いる方法(特許文献12)等が挙げられる。しかし、吸水性樹脂の長径/短径比率を大きくし、吸水性樹脂の形態を細長くした場合、繊維への固着性は改善されるかもしれないが、粉体流動性と粒子強度は低下する傾向にあるため、薄型吸収体の製造に好適なものではない。
【0016】
よって、薄型の吸収体製造に好適に用いられる要件を兼ね備えた吸水性樹脂、すなわち、一般的な吸水性能に優れるうえに、適度な粒子径を有しながらも強い粒子強度を有し、繊維との固着性に優れながらも、粉体流動性にも優れる吸水性樹脂の開発が待ち望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特表平9-510889号公報
【文献】特開平8-57311号公報
【文献】特開平1-294703号公報
【文献】特開平2-153907号公報
【文献】特開平3-227301号公報
【文献】特開平5-17509号公報
【文献】特開平5-43610号公報
【文献】特開平11-140194号公報
【文献】特開2008-533213号公報
【文献】特開平2-196802号公報
【文献】特開2002-284803号公報
【文献】特開2004-2891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の主な目的は、衛生材料用途での吸水剤として好適な特性として、吸水性樹脂としての一般的な吸収性能に優れるうえに、適度な粒子径、並びに強い粒子強度を有し、さらに繊維との固着性、及び粉体としての流動性に優れる吸水性樹脂、並びにその製造方法を提供することにある。さらに、このような吸水性樹脂を用いた吸収体、及び吸収性物品を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のアスペクト比、及び粒子径を満足する1次粒子が凝集し、特定のアスペクト比、及び粒子径を満足する2次粒子の形態の有する吸水性樹脂が、吸水性樹脂としての一般的な吸収性能に優れるうえに、強い粒子強度を有し、繊維への固着性、且つ粉体としての流動性に優れることを見出した。
【0020】
すなわち、本発明は下記に示す態様を含むものである。
【0021】
項1 アスペクト比が1.1~2.2で、且つ、中位粒子径(d)が50~600μmの1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂であって、該2次粒子が有する形態が、アスペクト比が1.0~1.7で、且つ、中位粒子径(D)が100~2000μmである、吸水性樹脂。
【0022】
項2 吸水性樹脂の粒子径の均一度が1.0~2.2である項1に記載の吸水性樹脂。
【0023】
項3 流動性指数が70~200で、且つ繊維への固着性指数が50~100である項1又は2に記載の吸水性樹脂。
【0024】
項4 1次粒子が、曲面から構成される形状である項1~3のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【0025】
項5 粒子強度が82%以上である、項1~4のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【0026】
項6 衝突試験後の荷重下の吸水能が16g/g以上、項1~5のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【0027】
項7 吸水能保持率が84%以上である、項1~6のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【0028】
項8 粉体の流動性指数が110以上である、項1~7のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【0029】
項9 項1~8のいずれかに記載の吸水性樹脂と親水性繊維を配合してなる吸収体。
【0030】
項10 項9に記載の吸収体を液体透過性シートと液体不透過性シートで挟持してなる吸収性物品。
【発明の効果】
【0031】
本発明にかかる2次粒子の形態を有する吸水性樹脂は、一般的な吸収性能に優れるうえに、適度な粒子径を有しながらも強い粒子強度を有する。また本発明の吸水性樹脂は、繊維との固着性に優れながらも、小さいアスペクト比を有するため粉体としての流動性に優れる性質を有する。従って、本発明の吸水性樹脂を用いた薄型吸収体は、液体の吸収性能、及び形態保持性も高いため、薄型の吸収性物品に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明にかかる吸水性樹脂
本発明にかかる吸水性樹脂を、図1に示す模式図を例示して説明する。吸水性樹脂は、曲面から構成される1次粒子aが凝集した2次粒子の形態を有する。
【0033】
1次粒子のアスペクト比は1.1~200であり、好ましくは1.2~100、より好ましくは1.3~80、さらに好ましくは1.4~50、特に好ましくは1.6~30である。
【0034】
1次粒子のアスペクト比を1.1以上とすることで、1次粒子が凝集して形成される2次粒子では、表面の窪みcが深くなり、繊維等と共に吸収体として用いる際に、繊維等との固着性が良くなる。また、1次粒子のアスペクト比を200より小さくすることで、1次粒子が凝集して2次粒子を形成することが容易になると共に、1次粒子同士の接合面積が大きくなるので凝集後の2次粒子の吸水性樹脂としての強度が強くなる。
【0035】
1次粒子の中位粒子径(d)は50~600μmであり、好ましくは60~500μm、より好ましくは80~450μm、最も好ましくは100~400μmである。
【0036】
1次粒子の中位粒子径が50μmより大きくすると、1次粒子が凝集して形成される、2次粒子の粒子径が適度な範囲となり、吸水性樹脂としての粉体流動性が向上する。また、1次粒子が凝集して形成される2次粒子の表面の窪みcが深くなり、繊維等と共に吸収体として用いる際に、繊維等との固着性が良くなる。
【0037】
さらに、1次粒子の中位粒子径が600μmより小さくすることで、1次粒子が凝集して形成される2次粒子の粒子径を適度な範囲とすることができ、吸収体として用いた際に触感が良好となる。そして、1次粒子同士の接合面積が大きくなるために、このような1次粒子が凝集して形成される2次粒子の吸水性樹脂としての強度が高くなる。
【0038】
1次粒子の形態は、特に限定されないが、曲面のみから構成されることが好ましい。好ましい具体例としては、勾玉状、楕円球状、ウインナー状、ラグビーボール状などの形態を挙げることができる。このような形態の1次粒子が凝集して2次粒子を形成することにより、粉体としての流動性が高くなるうえに、凝集した2次粒子が密に充填されやすいために衝撃を受けても破壊されにくく、粒子強度が高い吸水性樹脂とすることができる。
【0039】
2次粒子のアスペクト比は、1.0~3.0であり、好ましくは1.0~2.5、より好ましくは1.0~2.0、さらに好ましくは1.0~1.7、特に好ましくは1.0~1.4である。
【0040】
2次粒子の吸水性樹脂の中位粒子径(D)は、100μm~2000μmであり、好ましくは200~1500μm、より好ましくは300~1200μm、特に好ましくは360~1000μmである。
【0041】
2次粒子の中位粒子径を100μmより大きくすることで、吸水性樹脂として吸収体等に適用した際に、液の拡散性を阻害する現象、すなわちゲルブロッキングが起こりにくいうえに、粉体としての流動性に富み、吸収体の生産性に悪影響を及ぼさない。また、2次粒子の中位粒子径を2000μmより小さくすることで、吸水性樹脂として吸収体等に使用された場合の触感が良く、柔軟性に富むので好ましい。
【0042】
本発明にかかる吸水性樹脂の素材は、一般的に吸水性樹脂として使用される素材であればよく、例えば、澱粉-アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉-アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のケン化物、ポリアクリル酸部分中和物の架橋体等が挙げられる。これらのなかでは、生産量、製造コストや吸水性能等の観点から、ポリアクリル酸部分中和物の架橋体が好ましい。
【0043】
本発明にかかる吸水性樹脂の粒子径分布の均一度は、通常1.0~2.2となり、好ましくは1.0~2.0、より好ましくは1.2~1.8である。吸水性樹脂を吸収体として使用する場合、大きな粒子が多ければ、圧縮後の吸収体が部分的に硬くなるため好ましくない。さらに、小さな粒子が多ければ、薄型吸収体中で粒子が移動しやすく、均一性が損なわれるため好ましくない。従って吸収体に用いる吸水性樹脂は、狭い粒度分布を持つもの、言い換えると粒子径分布の均一度が小さいほうが好ましい。上記範囲を満たす本発明にかかる吸水性樹脂は、粒子径分布の均一度が小さいので、吸収体に好適に用いることができる。
【0044】
本発明にかかる吸水性樹脂の特徴を示す指標として、吸水能が挙げられ、通常30g/
g以上である。好ましくは35~85g/g、さらに好ましくは40~75g/g、特に好ましくは45~70g/gである。このような範囲の数値を満たす事によって、ゲルを強く保ってゲルブロッキングを防止し、かつ過度な架橋を避けて吸収容量を高めることができる。吸水能の測定は、後述の実施例に記載の方法により実施することができる。
【0045】
本発明にかかる吸水性樹脂の特徴を示す指標として、粒子衝突試験後の粒子径保持率が挙げられ、通常80%以上である。好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。これらの数値が高い方が粒子強度は高くなる。上記範囲の数値を満たす本発明にかかる吸水性樹脂は、吸収体の製造時に衝突にさらされた場合でも破壊されにくく、且つ、微粉末の割合が増えにくいだけでなく、該吸収体の品質が安定し、高性能を維持することができる。粒子衝突試験後の粒子径保持率の測定は、後述の実施例に記載の方法により実施することができる。
【0046】
本発明にかかる吸水性樹脂の特徴を示す指標として荷重下の生理食塩水吸水能が挙げられ、通常12mL/g以上である。好ましくは14mL/g以上であり、さらに好ましくは16mL/g以上、特に好ましくは18mL/g以上である。これらの数値が高いほうが吸収体として用いた場合、荷重下における使用においても、液体をより吸収することができる。上記範囲の数値を満たす本発明にかかる吸水性樹脂は、吸収体として用いた際の性能を維持することができる。吸水性樹脂の荷重下の生理食塩水吸水能の測定は、後述の実施例に記載の方法により実施することができる。
【0047】
本発明にかかる吸水性樹脂の特徴を示す指標として、粒子衝突試験後の荷重下の生理食塩水吸水能保持率が挙げられ、通常80%以上である。好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。これらの数値が高い方が、吸収体の製造時に衝突にさらされた場合でも吸水性樹脂の荷重下の吸水能が高いため、吸収体に用いた際の性能が維持できる。上記範囲の数値を満たす本発明にかかる吸水性樹脂は、吸収体として用いた際の性能を維持することができる。粒子衝突試験後の荷重下の吸水能保持率の測定は、後述の実施例に記載の方法により実施することができる。
【0048】
本発明にかかる吸水性樹脂の特徴を示す指標として、繊維への固着性指数が挙げられ、吸水性樹脂を吸収体に使用した際に、その吸収体を振とうした後でも繊維との固着を維持する吸水性樹脂の割合で表される数値である。本発明にかかる吸水性樹脂が示す当該数値は、通常50~100である。好ましくは60~100であり、さらに好ましくは70~100であり、特に好ましくは80~100である。これらの数値が高い方が、吸収体に用いられた場合でも、吸収体の中で吸水性樹脂の偏りが発生しにくくなる。上記範囲の数値を満たす本発明にかかる吸水性樹脂は、吸収性物品として用いた際の液体吸収性能を維持することができる。吸水性樹脂の繊維への固着性指数の測定は、後述の実施例に記載の方法により実施することができる。
【0049】
本発明の吸水性樹脂の特徴を示す指標として、粉体の流動性指数が挙げられ、粉体搬送機における食塩の流動量に対する比率で表される数値である。本発明にかかる吸水性樹脂が示す当該数値は、通常70~200である。好ましくは、80~180であり、より好ましくは90~160である。これらの数値が高い方が、吸収体を製造する場合、粉体移送がしやすく供給量が安定するため、吸収体中の吸水性樹脂量のバラツキが少なくなるほか、粉体ホッパーでのブリッジ形成による移送トラブルも発生しにくくなる。上記範囲の数値を満たす本発明にかかる吸水性樹脂は、吸収体を製造する点でも優位な効果を有する。吸水性樹脂の粉体の流動指数の測定は、後述の実施例に記載の方法により実施することができる。
本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法
本発明にかかる2次粒子の形態を有する吸水性樹脂を形成する1次粒子の製造方法は、
特に限定されないが、例えば、逆相懸濁重合法による重合を1段で行って得られる、適度な大きさで粒度の揃った含水ゲル状態の吸水性樹脂そのもの、若しくはそれを乾燥したもの、水溶液重合法等の方法を用いて得られる塊状の含水ゲルを、乾燥、粉砕して得られる広い粒度分布の吸水性樹脂そのもの、若しくはそれを分級したもの等が挙げられる。なかでも、粉砕、分級工程等の負荷等が少なく、製造工程の簡便さと、得られる吸水性樹脂の吸水性能、粒子強度等の各種性能が高くなる観点から、逆相懸濁重合法により1次粒子を製造することが好ましい。
【0050】
上述の方法を用いて製造した1次粒子を凝集させて2次粒子を形成することで、本発明の吸水性樹脂を製造すればよい。凝集させる方法は、特に限定はされないが、例えば、上述の方法を用いて作製された1次粒子を、水、接着剤等のバインダーを用いて造粒して凝集する方法、上記1次粒子を製造する方法として逆相懸濁重合法を用い、引き続き逆相懸濁重合法用いて1次粒子を凝集させる多段逆相懸濁重合法等が挙げられる。なかでも、製造工程の簡便さと、得られる2次粒子の吸水性樹脂としての吸水性能、粒子強度等の各種性能が高くなる観点から、後者の多段逆相懸濁重合法が好ましい。
【0051】
以下、本発明にかかる2次粒子の形態を有する吸水性樹脂の製造方法の態様として、以下の工程1及び2を含む多段逆相懸濁重合法を採用する製造方法を例示して説明するが、かかる例示のみに限定されるものではない。
(1)増粘剤、及び分散安定剤の存在下に水溶性エチレン性不飽和単量体の重合反応を行い、1次粒子が分散するスラリーを作製する工程1。
(2)工程1にて得られるスラリーを冷却して分散安定剤を析出させた後、さらに水溶性エチレン性不飽和単量体を加えて重合反応することで、該スラリー中に分散する1次粒子を凝集させて2次粒子の形態を有する吸水性樹脂とする工程2。
工程1について
逆相懸濁重合とは、分散媒中で、分散安定剤の存在下、単量体水溶液を撹拌することによって懸濁させ、液滴状となった水溶液中にて単量体を重合させる方法である。すなわち工程1では、増粘剤及び分散安定剤の存在下に水溶性エチレン性不飽和単量体の重合反応を行い、上述の粒子径及びアスペクト比を満たす1次粒子の形態を有する重合体が分散するスラリーが製造される。
【0052】
増粘剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸(部分)中和物、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を用いることができる。なかでも、単量体水溶液への溶解しやすさと粘性発現効果の高さの面から、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0053】
通常、逆相懸濁重合反応において、撹拌する際の回転数が同じであれば、単量体水溶液の粘度が高いほど得られる1次粒子径は大きくなる。また、同じ1次粒子径であっても、単量体水溶液の粘度を高くして、撹拌回転数を速くした粒子のほうが、1次粒子のアスペクト比は大きくなる。
【0054】
増粘剤の添加量は、その種類によって単量体水溶液の粘度が変化するので、一概に決定できないが、単量体水溶液の粘度を、通常10~500000mPa・sとする量を添加すればよく、好ましくは20~300000mPa・s、より好ましくは50~100000mPa・s(ブルックフィールド型粘度計、20℃、6rpm)である。このときの増粘剤の添加量は、単量体水溶液の質量に対して、通常0.005~10質量%とすればよく、好ましくは0.01~5質量%であり、さらに好ましくは0.03~3質量%であ
る。このような範囲の量の増粘剤を、単量体水溶液に添加することによって、得られる1次粒子のアスペクト比を上述の範囲とすることができる。
【0055】
分散媒には、石油系炭化水素分散媒を用いればよく、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、リグロイン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、並びに、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができる。これらの分散媒のなかでも、工業的に入手が容易であり、品質が安定しており、さらに安価であるため、n-ヘキサン、n-ヘプタン、及びシクロヘキサンが好適に用いられる。これらの分散媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
使用する水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(本明細書においては、「アクリル」、及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記し、「アクリレート」、及び「メタクリレート」を合わせて「(メタ)アクリレート」とそれぞれ表記する。)、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体、並びに、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体やその4級化物等を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種を用いればよい。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体のなかでも、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミドが好ましく用いられる。
【0057】
単量体水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度は、特に限定はされないが、単量体水溶液当り、通常20質量%以上飽和濃度以下の範囲とすればよく、好ましくは30~55質量%、より好ましくは35~46質量%である。このような濃度とすることによって、急激な反応を回避しながら高い生産性を保つことができる。
【0058】
なお、水溶性エチレン性不飽和単量体として、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のように酸基を有する単量体を用いる場合、その酸基を予めアルカリ性中和剤によって中和してもよい。このようなアルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物、およびアンモニア等が挙げられ、水溶液の状態にして用いてもよい。また、アルカリ性中和剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
アルカリ性中和剤による全ての酸基に対する中和度は、得られる2次粒子の形態を有する吸水性樹脂の浸透圧を高めることで吸収性能を高め、かつ余剰のアルカリ性中和剤の存在により、安全性などに問題が生じないようにする観点から、通常0~100モル%とすればよく、好ましくは30~90モル%、より好ましくは50~80モル%である。
【0060】
分散安定剤としては界面活性剤を用いればよく、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エス
テル、アルキルグルコシド、N-アルキルグルコンアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。
【0061】
これらの分散安定剤のなかでも、単量体水溶液の分散安定性の面から、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルが好適に用いられる。これらの界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
分散剤として用いる界面活性剤のHLB値は、界面活性剤の種類によっても得られる1次粒子の形態が異なるため一概に決定はされないが、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルであれば、HLB5以下の範囲のものを、ポリグリセリン脂肪酸エステルであれば、HLB10以下の範囲のものを使用すればよい。
【0063】
上記界面活性剤と共に、高分子分散剤を分散安定剤として併用してもよい。併用する高分子分散剤としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、エチレン・無水マレイン酸共重合体、エチレン・プロピレン・無水マレイン酸共重合体、ブタジエン・無水マレイン酸共重合体、酸化型ポリエチレン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。これらの高分子分散剤のなかでも、単量体水溶液の分散安定性の面から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン及びエチレン・アクリル酸共重合体が好適に用いられる。これらの高分子分散剤は、単独で上記界面活性剤と併用してもよいし、2種以上の高分子系分散剤を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
これらの分散安定剤の使用量は、分散媒として用いる石油系炭化水素分散媒中における、単量体水溶液の分散状態を良好に保ち、かつ使用量に見合う分散効果を得るため、単量体水溶液100質量部に対して、通常0.1~5質量部とすればよく、好ましくは0.2~3質量部である。
【0065】
単量体水溶液に添加されるラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、過酸化水素等の過酸化物類、並びに、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩、2,2’-アゾビス〔2-(N-フェニルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’-アゾビス〔2-(N-アリルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-〔1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル〕プロパン}2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-〔1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾ化合物等を挙げることができる。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
ラジカル重合開始剤の使用量は、本工程における単量体の総量に対して通常0.005~1モル%とすればよい。このような数値の範囲で用いることによって、急激な反応を起こすことなく、且つ、長い反応時間を要することもないので良好な逆相懸濁重合反応とす
ることができる。
【0067】
なお、前記ラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L-アスコルビン酸等の還元剤と併用し、レドックス重合開始剤として用いてもよい。
【0068】
単量体水溶液には、得られる2次粒子の形態を有する吸水性樹脂の吸収性能を制御するために、連鎖移動剤を添加してもよい。このような連鎖移動剤としては、次亜りん酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類などを例示することができる。
【0069】
単量体水溶液には、必要に応じて架橋剤(内部架橋剤)を添加して重合してもよい。このような内部架橋剤としては、重合性不飽和基を2個以上有する化合物が用いられる。例えば、(ポリ)エチレングリコール[本明細書において、例えば、「ポリエチレングリコ
ール」と「エチレングリコール」を合わせて「(ポリ)エチレングリコール」と表記する。]、(ポリ)プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシ
エチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、(ポリ)グリセリン等のポリオール類のジ、又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類、前記のポリオールとマレイン酸、フマール酸等の不飽和酸類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビスアクリルアミド類、ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ、又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類、トリレンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類、アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N”-トリアリルイソシアヌレート、並びに、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0070】
また、内部架橋剤としては、重合性不飽和基を2個以上有する前記化合物に加えて、その他の反応性官能基を2個以上有する化合物も用いることができる。例えば、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のグリシジル基含有化合物、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの内部架橋剤は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
内部架橋剤の添加量は、得られる吸水性樹脂の吸水性能を十分に高める観点から、本工程における単量体の総量に対して通常1モル%以下とすればよく、好ましくは0.5モル%以下であり、より好ましくは0.001~0.25モル%以下である。
【0072】
本工程での重合反応の反応温度は、ラジカル重合開始剤の使用の有無や、その使用するラジカル重合開始剤の種類によって異なるが、通常20~110℃とすればよく、好ましくは40~90℃である。このような範囲の温度とすることで、単量体の重合にかかる時間を適度にすることができる。また、重合熱の除去が容易となるために、円滑に重合反応を行なうことができる。反応時間は、0.1時間以上4時間以下とすればよい。
【0073】
本工程において作製する1次粒子の粒子径、及びアスペクト比の制御は、例えば各種の攪拌翼を用いて、重合反応時の攪拌回転数を変更することによって行なうことも可能である。攪拌翼としては、例えば、プロペラ翼、パドル翼、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、リボン翼、フルゾーン翼(神鋼パンテック(株)製)、マックスブレンド翼(住友重機械工業(株)製)、スーパーミックス翼(サタケ化学機械工業(株)製)等を使用することが可能である。通常、同一種の撹拌翼であれば、撹拌回転数を高めるほど1次粒子径
は小さくなる。
工程2について
工程2は、工程1によって得られる1次粒子の形態を有する重合体が分散したスラリーを冷却して、分散安定剤を析出させた後、さらに水溶性エチレン性不飽和単量体を加えて重合反応をさせることで、該スラリー中に分散する1次粒子の形態を有する重合体を凝集させて、上述の粒子径及びアスペクト比を満たす2次粒子の形態を有する吸水性樹脂を製造する工程である。
【0074】
冷却温度は、工程1にて使用した分散安定剤の種類や分散媒種によって析出温度が異なるため、特に限定されないが、通常10~50℃とすればよく、20~40℃がより好ましい。分散安定剤の析出は、スラリーの白濁によって確認することができる、具体的には、目視、又は濁度計により判定することができる。また、析出の温度を変更することによって、吸水性樹脂の粒子径や形態を制御することも可能である。具体的には、50℃程度の温度であれば、中位粒子径の小さい吸水性樹脂を製造することができ、10℃程度の温度であれば、中位粒子径の大きい吸水性樹脂を製造することができる。
【0075】
スラリーに加える水溶性エチレン性不飽和単量体は、特に限定されないが、工程1にて用いる水溶性エチレン性不飽和単量体として例示した単量体から適宜選択して用いればよい。なかでも、適度な粒子径や狭い粒子径分布が得られやすい点から、工程1にて用いた単量体と同じ化合物を用いることが好ましい。
【0076】
水溶性エチレン性不飽和単量体の使用量は、工程1にて用いた水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、通常は90~200質量部とすればよく、好ましくは、110~180質量部、より好ましくは120~160質量部である。水溶性エチレン性不飽和単量体の使用量を90質量部以上とすることで、1次粒子の形態を有する重合体の凝集させるにあたり、十分な単量体の量とすることができる。従って、重合体の最適な凝集が生じ、得られる2次粒子の形態を有する吸水性樹脂を、上述した範囲の中位粒子径を満たすものとすることができる。さらに強い粒子強度を有する吸水性樹脂を得ることができる。
【0077】
また、使用量を200質量部以下とすることで、余剰な単量体が重合して形成される微粒子によって、吸水性樹脂の表面の窪みが塞がることを防ぎ、得られる吸水性樹脂を吸収体として用いた際に、該微粒子によるゲルブロッキングの発生を抑えることができる。
【0078】
工程2で、単量体水溶液に添加されるラジカル重合開始剤は、工程1にてラジカル重合開始剤として例示した化合物を用いればよく、中でも工程1にて用いた化合物と同じものを用いることが好ましい。また、使用量は工程2にて用いる単量体の総量に対して通常0.005~1モル%程度とすればよい。
【0079】
なお、前記ラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L-アスコルビン酸等の還元剤を併用してレドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0080】
工程2では、2次粒子の形態を有する吸水性樹脂の吸収性能等を制御するために、水溶性エチレン性不飽和単量体と共に、連鎖移動剤を用いてもよい。使用する連鎖移動剤は、工程1にて連鎖移動剤として例示した化合物を使用すればよい。
【0081】
工程2での重合反応の反応温度は、使用するラジカル重合開始剤によって異なるが、工程1と同様な温度範囲であることが好ましい。
【0082】
工程2の後に、架橋剤を用いて2次粒子の形態を有する吸水性樹脂を後架橋する工程が含まれていても良い。架橋剤の添加時期は特に限定されないが、吸水性樹脂に含まれる水溶性エチレン性不飽和単量体の総量100質量部に対し、通常1~400質量部の水分を含有する時に使用すればよく、好ましくは5~200質量部の水分を含有する時、さらに好ましくは10~100質量部の水分を含有する時、特に好ましくは20~60質量部の水分を含有する時である。このように、吸水性樹脂が含有する水分量に従って、架橋剤添加時を選択することによって、より好適に、吸水性樹脂の表面近傍における架橋を施すことができ、優れた荷重下の生理食塩水吸水能を有する吸水性樹脂を製造することができる。
【0083】
後架橋に用いられる架橋剤は、反応性官能基を2個以上有する化合物であれば特に限定はされない。具体例としては、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロール(ポリ)グリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のジグリシジル基含有化合物、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。これらの中でも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテルが特に好ましい。これらの架橋剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0084】
後架橋剤の使用量は、得られる2次粒子の形態を有する吸水性樹脂の吸収性能を低下させず、かつ表面近傍の架橋密度を強めて、荷重下の生理食塩水吸水能を高める観点から、重合反応に用いられた単量体の総量に対して、通常0.005~1モル%とすればよく、好ましくは0.01~0.75モル%、より好ましくは0.02~0.5モル%である。
【0085】
後架橋剤を使用する際には、後架橋剤をそのまま添加しても、水溶液として添加しても良いが、必要に応じて溶媒として水や親水性有機溶媒を用いてもよい。親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類、並びに、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これらの親水性有機溶媒は、それぞれ単独で利用してもよく、2種以上を併用、あるいは水との混合溶媒としても使用してもよい。
【0086】
後架橋処理における反応温度は、50~250℃であることが好ましく、60~180℃であることがより好ましく、60~140℃であることがさらに好ましく、70~120℃であることが、よりさらに好ましい。反応時間は、通常1時間以上5時間以下とすればよい。
【0087】
工程2の後、又は必要に応じて架橋剤による処理された後に得られる2次粒子の形態を有する吸水性樹脂はさらに乾燥処理に供してもよい。吸水性樹脂の最終的な水分率は、吸水性樹脂が粉体として良好な流動性を得る観点から、通常20%以下とすればよく、好ましくは2~15%、より好ましくは5~10%である。
前記乾燥処理は、常圧下で行ってもよく、乾燥効率を高めるため、窒素などの気流下で行ってもよい。乾燥が常圧の場合、乾燥温度は70~250℃であることが好ましく、80~180℃であることがよち好ましく、80~140℃であることがさらに好ましく、90~130℃であることがよりさらに好ましい。また、減圧下の場合、乾燥温度は60~100℃であることが好ましく、70~90℃であることがさらに好ましい。
【0088】
上述の工程によって製造される2次粒子の形態を有する吸水性樹脂は、吸水能や荷重下
の生理食塩水吸水能に代表される吸水性樹脂としての一般的な吸水性能に優れる点、適度な粒子径を有しながらも強い粒子強度を有し、繊維との固着性に優れる点、及び小さいアスペクト比を有するため粉体流動性に優れる点等から、吸収体やそれを用いた吸収性物品に好適に使用される。
本発明の吸収体
本発明の吸水性樹脂は、上述のように吸収体としても有用に用いることのできる性質を有しており、親水性繊維と共に使用して吸収体として提供することができる。
【0089】
親水性繊維としては、例えば、セルロース繊維、人工セルロース繊維等が挙げられる。なお、親水性繊維には、本発明の目的が阻害されない範囲内であれば、疎水性を有する合成繊維が含有されていてもよい。
【0090】
吸収体における吸水性樹脂の含有量は、尿等の体液を十分に吸収し、快適な装着感を付与する観点から、通常40質量%程度以上とすればよく、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。また、吸収体における吸水性樹脂の含有量は、得られる吸収体の形態保持性を高めるために、親水性繊維等を適量含有させることを考慮して、通常98質量%程度以下とすればよく、好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
【0091】
好適な吸収体の態様としては、例えば、吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを均一な組成となるように混合することによって得られた混合分散体、2枚の層状の親水性繊維の間に吸水性樹脂が挟まれたサンドイッチ構造体等が挙げられる。
【0092】
前記吸収体を、例えば、液体透過性シートと、液体不透過性シートとの間に保持することにより、吸収性物品とすることができる。
【0093】
液体透過性シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の繊維からなる、エアスルー型、スパンボンド型、ケミカルボンド型、ニードルパンチ型等の不織布等が挙げられる。
【0094】
液体不透過性シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂からなる合成樹脂フィルム等が挙げられる。
【0095】
吸収性物品の種類は、特に限定されない。その代表例としては、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド等の衛生材料、ペット用の尿吸収材料等をはじめ、パッキング材等の土木建築用資材、ドリップ吸収剤、保冷剤等の食品鮮度保持用材料、土壌用保水材等の農園芸用物品、止水材等が挙げられる。
【実施例
【0096】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn-ヘプタン500mlをとり、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルS-370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、50℃まで冷却した。
【0097】
一方、500mlの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しつつ、18.4質量%の水酸化ナトリウム水溶液167.7gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業社製、品番:SP-600)2.30gを添加し、室温にて撹拌して完全に溶解させた。過硫酸カリウム0.11g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド9.2mgを加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。(この水溶液の粘度は10000mPa・sであった。)
攪拌機の回転数を600rpmとして、前記単量体水溶液を前記セパブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行なうことにより、第1段目の重合後スラリーを得た。(なお、この重合後スラリーを120℃の油浴を用いて、水とn-ヘプタンを共沸し、水のみを系外へ抜き出した後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、楕円球状の1次粒子の中位粒子径は190μm、アスペクト比は1.9であった。)
一方、別の500mlの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液110.4gをとり、外部より冷却しつつ、24.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液149.3gを滴下して75モル%の中和を行なったのち、過硫酸カリウム0.13g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド11.0mgを加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製し、温度を約24℃に保持した。
【0098】
前記重合後スラリーの撹拌回転数を1000rpmに変更した後、24℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持したのち、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行なうことにより、第2段目の重合後スラリーを得た。
【0099】
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn-ヘプタンを共沸することにより、n-ヘプタンを還流しながら、259.8gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液5.06gを添加し、80℃で2時間保持した後、n-へプタンを蒸発させて乾燥することによって、楕円球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂212.5gを得た。得られた吸水性樹脂の中位粒子径は600μm、水分率は6%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
実施例2
実施例1において、第1段目の重合時の撹拌回転数を400rpmに変更し、共沸脱水後に添加するエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液の量を11.13gとする以外は、実施例1と同様の操作を行い、楕円球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂213.1gを得た。(なお、第1段目の重合後スラリーを120℃の油浴を用いて、水とn-ヘプタンを共沸し、水のみを系外へ抜き出した後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、楕円球状の1次粒子の中位粒子径は280μm、アスペクト比は1.4であった。)得られた吸水性樹脂の中位粒子径は720μm、水分率は7%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
実施例3
実施例1において、第1段目の重合時の撹拌回転数を700rpmに変更し、共沸脱水後に添加するエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液の量を6.07gとする以外は、実施例1と同様の操作を行い、楕円球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂214.0gを得た。(なお、第1段目の重合後スラリーを120℃の油浴を用いて、水とn-ヘプタンを共沸し、水のみを系外へ抜き出した後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、楕円球状の1次粒子の中位粒子径は110μm、アスペクト比は1.6であった。)得られた吸水性樹脂の中位粒子径は470μm、水分率は7%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
比較例5
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パ
ドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn-ヘプタン500mlをとり、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルS-370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、78℃にて系内を窒素で置換した。
【0100】
一方、500mlの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しつつ、20.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液154.1gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業社製、品番:SP-600)2.76gを添加し、室温にて撹拌して完全に溶解させた。過硫酸カリウム0.11g、エチレングリコールジグリシジルエーテル9.2mgを加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。この水溶液の粘度は26000mPa・sであった。
【0101】
攪拌機の回転数を600rpmとして、前記セパブルフラスコ系内の窒素置換を継続しながら、前記単量体水溶液を5mL/分の速度で添加し、74~78℃で重合を行なうこ
とにより、第1段目の重合後スラリーを得た。(なお、この重合後スラリーを120℃の油浴を用いて、水とn-ヘプタンを共沸し、水のみを系外へ抜き出した後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、勾玉状の1次粒子の中位粒子径は430μm、アスペクト比は5.5であった。)
一方、別の500mlの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液110.4gをとり、外部より冷却しつつ、24.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液149.9gを滴下して75モル%の中和を行なったのち、過硫酸カリウム0.13g、エチレングリコールジグリシジルエーテル11.0mgを加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製し、温度を約25℃に保持した。
【0102】
前記重合後スラリーの撹拌回転数を1000rpmに変更した後、25℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持したのち、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行なうことにより、第2段目の重合後スラリーを得た。
【0103】
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn-ヘプタンを共沸することにより、n-ヘプタンを還流しながら、259.8gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液4.05gを添加し、80℃で2時間保持した後、n-へプタンを蒸発させて乾燥することによって、勾玉状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂213.3gを得た。得られた吸水性樹脂の中位粒子径は900μm、水分率は6%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
実施例5
比較例5において、第1段目の重合時の撹拌回転数を1200rpmに変更し、第2段目の単量体水溶液、及び第1段目重合後スラリーの温度をそれぞれ23℃に変更し、共沸脱水後に添加するエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液の量を8.10gとする以外は、比較例5と同様の操作を行い、楕円球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂212.8gを得た。(なお、第1段目の重合後スラリーを120℃の油浴を用いて、水とn-ヘプタンを共沸し、水のみを系外へ抜き出した後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、楕円球状の1次粒子の中位粒子径は80μm、アスペクト比は2.2であった。)得られた吸水性樹脂の中位粒子径は390μm、水分率は5%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
比較例1
実施例1において、ヒドロキシエチルセルロースを添加しない以外は、実施例1と同様
の操作を行い、真球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂213.9gを得た。(なお第1段目の重合後スラリーを120℃の油浴を用いて、水とn-ヘプタンを共沸し、水のみを系外へ抜き出した後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、真球状の1次粒子の中位粒子径は60μm、アスペクト比は1.0であった。)得られた吸水性樹脂の中位粒子径は355μm、水分率は6%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
比較例2
比較例5において、2段目の単量体水溶液の添加、及び2段目の重合を実施せず、共沸脱水量を141.8gに変更し、共沸脱水後に添加するエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液の量を1.84gと変更する以外は、比較例5と同様の操作を行い、凝集していない勾玉状の1次粒子の吸水性樹脂96.8gを得た。勾玉状の1次粒子の中位粒子径は430μm、水分率は6%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
比較例3
アクリル酸160gを10.3gの水で希釈し、冷却しつつ25質量%の水酸化ナトリウム水溶液266.6gを加えて中和した。この溶液にエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.08g、次亜リン酸ソーダ・1水和物を0.016g、及び過硫酸カリウムを0.08g添加して溶解させ、モノマー水溶液とした。
【0104】
上記で調製したモノマー水溶液の一部80.0gを200mlのビーカーに採り、これに分散剤としてポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルリン酸(第一工業製薬社製品、プライサーフA210G、オキシエチレン基の平均重合度約7)0.60g、及びシクロヘキサン20.0gを加え機械乳化機(特殊機化工業社製、ホモミキサーMarkII)10000回転で3分間乳化させ、モノマー乳化液とした。
【0105】
攪拌機、還流冷却器、温度計、及び窒素ガス導入管を付設した容量2リットルの四つ口丸底フラスコにシクロヘキサン624gを入れ、これに分散剤としてポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルリン酸(第一工業製薬社製、プライサーフA210G、オキシエチレン基の平均重合度約7)1.56gを加え、420rpmで撹拌して分散させた。フラスコを窒素置換したのち、80℃に昇温してシクロヘキサンを還流させた。これに上記のモノマー乳化液の50.3gをとり、6.6g/分で8分間にて滴下した。滴下終了後10分間同一温度に放置後、最初に調製したモノマー水溶液のうち、357gを6.6g/分で54分間にて滴下した。滴下終了後、内温75℃で30分間保持したのち、シクロヘキサンとの共沸によって生成した樹脂粒子の含水率が7%になるまで脱水を行った。
【0106】
脱水終了後、撹拌を停止して、フラスコの底に沈降した固形物をデカンテーションによって、液体と分離した。得られた固形物を90℃で減圧乾燥して、シクロヘキサン、及び水を除去し、表面に凹凸を有する柱状の1次粒子の形態を有する吸水性樹脂189.5gを得た。1次粒子の中位粒子径は400μm、水分率は5%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
比較例4
シグマ型羽根を2本有する内容積5リットルのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液3300g(不飽和単量体濃度38質量%)にポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数:8)2.65gを溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、30分間脱気した。次いで、反応液に10質量%過硫酸ナトリウム水溶液19.8g、及び1質量%L-アスコルビン酸水溶液0.70gを攪拌しながら添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、20~95℃で重合を行い、重合が開始して50分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状架橋重合体を目開き300μmのJIS標
準篩の金網上に広げ、180℃に設定した熱風乾燥機で90分間乾燥した。次いで、ロール粉砕機を用いて粉砕し、さらに目開き850μmのJIS標準篩を通過させることで、吸水性樹脂前駆体を得た。
【0107】
撹拌羽根を付した1L-セパラブルフラスコに、前記吸水性樹脂前駆体100gを量りとり、前記前駆体を攪拌しつつ、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03g、プロピレングリコール0.9g、水3gを混合した架橋剤をスプレーで噴霧添加した後、190℃の湯浴に前記フラスコを浸漬し、45分間加熱処理を行った。加熱後のサンプルを目開き850μmのJIS標準篩で分級し、破砕状の形態を有する吸水性樹脂98.5gを得た。得られた吸水性樹脂の中位粒子径は300μm、水分率は1%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
各実施例、及び比較例で得られたそれぞれの吸水性樹脂の表1に示す各種性能は以下に示す方法により測定した。
(吸水能)
500mLビーカーに0.9質量%食塩水500gを入れ、これに吸水性樹脂2.0gを添加して60分間攪拌した。目開き75μmのJIS標準篩いの質量Wa(g)をあらかじめ測定しておき、これを用いて、前記ビーカーの内容物をろ過し、篩いを水平に対して約30度の傾斜角となるように傾けた状態で、30分間放置することにより余剰の水分をろ別した。吸水ゲルの入った篩いの質量Wb(g)を測定し、以下の式により、吸水能を求めた。
【0110】
吸水能(g/g)=(Wb-Wa)/2.0
(1次粒子の中位粒子径)
吸水性樹脂50gに、滑剤として、0.25gの非晶質シリカ(デグサジャパン社製、品番:Sipernat 200)を混合した。
【0111】
JIS標準篩いを上から、目開き500μm、355μm、250μm、180μm、106μm、75μm、38μm、受け皿の順に組み合わせて、前記吸水性樹脂を最上の篩いに入れ、ロータップ式振とう機を用いて、20分間振とうさせた。
【0112】
次に、各篩上に残った吸水性樹脂の質量を全量に対する質量百分率として計算し、粒子径の大きい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を1次粒子の中位粒子径とした。
(2次粒子の中位粒子径)
吸水性樹脂100gに、滑剤として、0.5gの非晶質シリカ(デグサジャパン社製、品番:Sipernat 200)を混合した。
【0113】
この測定では13種類のJIS標準篩(目開き2.36mm、1.7mm、1.4mm、850μm、600μm、500μm、355μm、300μm、250μm、180μm、106μm、75μm、45μm)の中から、連続する7種類を使用する。
【0114】
前記吸水性樹脂を、600μm、500μm、355μm、300μm、250μm、180μm、106μm、受け皿の順に組み合わせた篩いの最上に入れ、ロータップ式振とう器を用いて、20分間振とうさせた。
【0115】
次に、各篩上に残った吸水性樹脂の質量を全量に対する質量百分率として計算し、粒子径の大きい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を2次粒子の中位粒子径とした。
【0116】
最上段の篩上、あるいは最下段の皿に残った吸水性樹脂の質量百分率のいずれかが15.9%を越えた場合、後述する均一度が正確に求められないため、前記篩の中から連続する7種類の組み合わせを選択し直して、最上段の篩上、及び最下段の皿に残った吸水性樹脂の質量百分率が15.9%以下になるように、粒子径分布を再測定した。
(粒子径分布の均一度)
前記2次粒子の中位粒子径測定において、積算質量百分率が15.9質量%に相当する粒子径(X1)、及び84.1質量%の相当する粒子径(X2)を求め、下記式により均一度を求めた。
【0117】
均一度=X1/X2
すなわち、粒子径分布が狭い場合、均一度は1に近づき、粒子径分布が広くなれば、均一度が1より大きくなる。
(粒子衝突試験後の粒子径保持率)
吸水性樹脂の粒子衝突試験における粒子径保持率は、図2に概略を示した試験装置Xを用いて、吸水性樹脂を衝突板に衝突させた時、その粒子径分布を測定することにより求めた。
【0118】
図2に示した試験装置Xは、ホッパー(蓋つき)1と加圧空気導入管2、射出ノズル3、衝突板4、流量計5からなっている。加圧空気導入管2は、ホッパー1の内部まで導入されており、射出ノズル3はホッパー1とつながっている。加圧空気導入管2の外径は3.7mm、内径は2.5mm、射出ノズル3の外径は8mm、内径は6mm、長さ300mmである。衝突板4の材質はSUS304であり、厚みは4mm、射出ノズル3の先端と衝突板4の距離は10mmに固定してある。流量計5は、加圧空気の流速が射出ノズル3の先端において50m/sとなるように調整されている。
【0119】
このような構成の試験装置Xに、まず、ホッパー1に、衝突前の中位粒子径(A1)をあらかじめ測定した吸水性樹脂6を100g入れ、蓋をする。次いで、加圧空気導入管2から圧力を調整した加圧空気を導入し、射出ノズル3から衝突板4へ吸水性樹脂6を噴射させる。全量を射出、衝突させた後の吸水性樹脂を回収し、粒子径分布を測定することで衝突後の中位粒子径(A2)を求める。得られた測定値を用いて、粒子衝突試験後の粒子径保持率を次式により求めた。
【0120】
粒子衝突試験後の粒子径保持率(%)=[A2/A1]×100
(荷重下の生理食塩水吸水能)
吸水性樹脂の荷重下の生理食塩水吸水能は、図3に概略を示した測定装置Yを用いて測定した。図2に示した測定装置Yは、ビュレット部7と導管8、測定台9、測定台9上に置かれた測定部10からなっている。ビュレット部7は、ビュレット70の上部にゴム栓74、下部に空気導入管71とコック72が連結されており、さらに、空気導入管71は先端にコック73を有している。ビュレット部7と測定台9の間には、導管8が取り付けられており、導管8の内径は6mmである。測定台9の中央部には、直径2mmの穴があいており、導管8が連結されている。測定部10は、円筒100(プレキシグラス製)と、この円筒40の底部に接着されたナイロンメッシュ101と、重り102とを有している。円筒100の内径は、20mmである。ナイロンメッシュ101の目開きは、75μm(200メッシュ)である。そして、測定時にはナイロンメッシュ101上に吸水性樹脂11が均一に撒布されている。重り102は、直径19mm、質量119.6gである。この重りは、吸水性樹脂11上に置かれ、吸水性樹脂11に対して4.14kPaの荷重を加えることができるようになっている。
【0121】
次に測定手順を説明する。測定は25℃の室内にて行なわれる。まずビュレット部7のコック72とコック73を閉め、25℃に調節された0.9質量%食塩水をビュレット70上部から入れ、ゴム栓74でビュレット上部の栓をした後、ビュレット部7のコック72、コック73を開ける。次に、測定台9中心部の導管口から出てくる0.9質量%食塩水の水面と、測定台9の上面とが同じ高さになるように測定台9の高さの調整を行った。
【0122】
別途、円筒100のナイロンメッシュ101上に0.10gの吸水性樹脂11粒子を均一に撒布して、この吸水性樹脂11上に重り102を置いて、測定部10を準備する。次いで、測定部10を、その中心部が測定台9中心部の導管口に一致するようにして置いた。
【0123】
吸水性樹脂11が吸水し始めた時点から、ビュレット100内の0.9質量%食塩水の減少量(すなわち、吸水性樹脂11が吸水した0.9質量%食塩水量)Wc(ml)を読み取った。吸水開始から60分間経過後における吸水性樹脂11の荷重下の生理食塩水吸水能は、以下の式により求めた。
【0124】
荷重下の生理食塩水吸水能(ml/g)=Wc/0.10
(粒子衝突試験後の荷重下の吸水能保持率)
あらかじめ、前記荷重下の生理食塩水吸水能に記載の方法にしたがって、粒子衝突試験前の荷重下の吸水能(B1)を測定した吸水性樹脂100gを、前記粒子衝突試験後の粒子径保持率に記載の方法にしたがって、粒子衝突試験に供した。回収した吸水性樹脂を用いて、再度、荷重下の吸水能に記載の方法にしたがって測定し、粒子衝突試験後の荷重下の吸水能(B2)を求めた。得られた測定値を用いて、粒子衝突試験後の荷重下吸水能保持率を次式により求めた。
【0125】
粒子衝突試験後の荷重下の吸水能保持率(%)=[B2/B1]×100
(アスペクト比)
吸水性樹脂の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を撮影した。写真の中から50個の粒子を任意に選択し、各粒子の長手方向の最大長を長径とし、長径の線上に直行する最大長を短径として測定した。各粒子の測定値の平均値を算出し、樹脂粒子のアスペクト比(長径/短径比)を算出した。
(粉体の流動性指数)
吸水性樹脂の粉体の流動性指数は、図4に概略を示した粉体の流動性測定装置Zを用いて測定した。粉体の流動性指数の算出は、振動型粉体試料供給装置(フリッチュ社製、品番:L-24)を用いて行った。まず、温度25℃、相対湿度50~75%の室内に、前記供給装置のホッパー12とV字型トラフ13のクリアランスを2mmに固定した後、トラフの水平に対してなす角が-0.5±0.5度となるように本体を固定した。トラフの先端下部に、金属トレイ14を載せた電子天秤15(0.01gまで測定可)を置いた。次に、食塩(和光純薬社、試薬特級、中位粒子径550μm)200gをホッパーに投入した。Feed Rate:5(10段階中)、Vibration Frequency:Highに設定して粉体を流動させ、トレイへの積算供給量が50gから150gとなるまでの時間を測定し、食塩100gあたりの移送時間T1(秒)を測定した。前記食塩については、約150秒程度の測定値が得られた。
【0126】
吸水性樹脂についても同様に試験を行い、吸水性樹脂100gの移送時間T2(秒)を測定した。以下の式によって、吸水性樹脂の粉体の流動性指数を算出した。なお、一般的に、粉体は同様な製造条件であっても、粒子径の大きさにより供給速度は異なり、粒子径の小さいものほど見掛けの供給時間は長くなる傾向にあるため、流動性指数においては、食塩の中位粒子径D1と、吸水性樹脂の中位粒子径D2を用いて補正した。
【0127】
粉体の流動性指数=[(100/T2)×(1/D2)]/[(100/T1)×(1/
D1)]×100
(繊維への固着性指数)
吸水性樹脂5.3g(Wd)と解砕された木材パルプ2.2gとを乾式混合した。得られた混合物を、大きさが15cm×12cmのティッシュ上に吹き付けた後、混合物の全体に196kPaの荷重を30秒間加えてプレスすることにより吸収体を作製した。受け皿を付したJIS標準篩(内径20cm、目開き1.18mm)の中心部に、前記吸収体を注意深く載置し、ティッシュを取り除き、さらに上部から、16×12cmのアクリル板を挿入した。前記アクリル板は吸収体のよれや偏りを防止するものであり、メッシュから5mm上部の位置で留まるため吸収体に実質的な荷重はかからず、振とうによって水平方向にも動かないものであった。篩の上部から蓋をして測定ユニットを形成した。
【0128】
この測定用ユニットを、恒温振とう水槽(EYELA社製プロサーモシェーカー、品番:NTS2100)の振とう部分に固定し、130rpmで水平方向に15分間振とうした後、注意深く吸収体を裏返して、同条件でさらに15分間振とうした。
【0129】
脱落して受け皿に落ちた吸水性樹脂とパルプから、注意深く吸水性樹脂のみを採取し、吸水性樹脂の脱落量(We)を測定した。下記式により繊維への固着性指数を求めた。
【0130】
繊維への固着性指数=[Wd-We]/Wd×100
(水分率)
吸水性樹脂2gを、あらかじめ秤量したアルミホイールケース(8号)に精秤した(Wf(g))。上記サンプルを、内温を105℃に設定した熱風乾燥機(ADVANTEC社製)で2時間乾燥させた後、デシケーター中で放冷して、乾燥後の吸水性樹脂の質量Wg(g)を測定した。以下の式から、吸水性樹脂の水分率を算出した。
【0131】
水分率(%)=[Wf―Wg]/Wf×100
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の製造方法によれば、吸水性樹脂としての一般的な吸収性能に優れるうえに、適度な粒子径を有しながらも強い粒子強度を有し、繊維との固着性に優れながらも、小さいアスペクト比を有するため粉体としての流動性に優れる吸水性樹脂を得ることができる。このような特性を有する吸水性樹脂は、吸収性樹脂の割合が多い薄型の吸収体、及びそれを用いた吸収性物品に好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0133】
図1】本発明の吸水性樹脂を表す模式図である。
図2】衝突試験をするための装置の概略構成を示す模式図である。
図3】荷重下の生理食塩水吸水能を測定するための装置の概略構成を示す模式図である。
図4】粉体の流動性を測定するための装置の概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0134】
a 1次粒子
b 吸水性樹脂
c 窪み
X 衝突試験装置
1 ホッパー
2 加圧空気導入管
3 射出ノズル
4 衝突板
5 流量計
6 吸水性樹脂
Y 荷重下の生理食塩水吸水能測定装置
7 ビュレット部
70 ビュレット
71 空気導入管
72 コック
73 コック
74 ゴム栓
8 導管
9 測定台
10 測定部
100 円筒
101 ナイロンメッシュ
102 重り
11 吸水性樹脂
Z 粉体の流動性測定装置
12 ホッパー
13 V字型トラフ
14 金属トレイ
15 電子天秤
図1
図2
図3
図4