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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】スパッタリング装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20220801BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
C23C14/34 D
C23C14/34 U
H05H1/46 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018124216
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020002440
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】中光 豊
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-193410(JP,A)
【文献】特開2001-335924(JP,A)
【文献】特開2010-013724(JP,A)
【文献】特開2007-131930(JP,A)
【文献】特開2002-038263(JP,A)
【文献】実開昭47-000052(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一、第二のカソード電極と、
前記第一のカソード電極に配置された第一のスパッタリングターゲットと、
前記第二のカソード電極に配置された第二のスパッタリングターゲットと、
前記第一、第二のスパッタリングターゲットで挟まれたスパッタリング空間の側方位置に配置されたアノード電極と、接地端子と電源端子とを有し、前記接地端子と前記電源端子との間に交流のスパッタ電圧を出力するスパッタ電源と、を有し、
前記第一、第二のスパッタリングターゲットは対向配置され、前記第一、第二のカソード電極と接地電位の間には前記スパッタ電圧が印加されて前記第一、第二のスパッタリングターゲットがスパッタリングされ、前記スパッタリング空間を間にして前記アノード電極とは反対側に位置する成膜槽の内部に配置された基板の表面に薄膜が成長されるスパッタリング装置であって、
前記アノード電極の前記スパッタリング空間に対面する表面には凹凸が形成され、前記スパッタリング空間と対面する前記成膜の内壁面よりも前記アノード電極の表面積が大きいスパッタリング装置。
【請求項2】
前記アノード電極と前記接地端子との間のインピーダンスは、前記成膜槽と前記接地端子との間のインピーダンスよりも小さくされた請求項1記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記アノード電極と前記接地端子とを電気的に接続させる接地配線が設けられた請求項1又は2記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記接地配線の少なくとも一部には、同軸ケーブルの外部導体が用いられた請求項3記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記成膜槽に、前記成膜槽から電気的に浮遊した防着板を設けた請求項1乃至4のいずれか1項記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
前記第一、第二のスパッタリングターゲットが配置されたスパッタ槽の開口に、前記成膜槽から電気的に浮遊したプラズマ制限シールド筒を設けた請求項1乃至5のいずれか1項記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
前記防着板は、前記成膜槽の内部表面を覆う請求項5記載のスパッタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパッタリング装置の技術分野にかかり、特に、一対のスパッタリングターゲットを対向させて高周波電源を用いて放電させることにより成膜を行うスパッタ成膜装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図4の符号102は従来技術のスパッタリング装置であり、真空槽111を有している。真空槽111は、第一、第二のスパッタリングターゲット1051、1052のスパッタリングが行われるスパッタ槽111aと基板110が配置される成膜槽111bとを有しており、第一、第二のスパッタリングターゲット1051、1052は、第一、第二のカソード電極1461、1462にそれぞれ設けられ、互いに対向して配置されている。
【0003】
真空槽111の外部には高周波スパッタ電源113とマッチングボックス116とが配置されている。スパッタ電源113は電源端子113aと接地端子113bとを有しており、マッチングボックス116は入力端子114aと接続端子114bと出力端子138とを有している。
【0004】
電源端子113aは入力端子114aに接続され、出力端子138が第一、第二のカソード電極1461,1462に接続されており、電源端子113aは、マッチングボックス116を介して第一、第二のカソード電極1461,1462に接続されている。
【0005】
スパッタ槽111aは高周波シールドカバー104の内部に配置されている。スパッタ槽111aは成膜槽111bに接触されて成膜槽111bに電気的・機械的に接続されており、成膜槽111bは高周波シールドカバー104に接触されて高周波シールドカバー104に電気的・機械的に接続されている。
【0006】
接地端子113bは、接続端子114bと高周波シールドカバー104に接続されており、スパッタ槽111aは、成膜槽111bと高周波シールドカバー104とを介して接地端子113bに接続されており、高周波スパッタ電源113が動作して、接地端子113bと電源端子113aとの間に交流のスパッタ電圧が出力されると、スパッタ電圧はスパッタ槽111aと第一、第二のカソード電極1461,1462との間に印加される。
【0007】
真空排気装置142によって真空槽111の内部を真空排気し、スパッタリングガス導入装置141から真空槽111の内部にスパッタリングガスを導入し、高周波スパッタ電源113からスパッタ電圧を出力させるとスパッタ槽111aがアノード電極となって、第一、第二のスパッタリングターゲット1051、1052が対面するスパッタ空間118にプラズマが形成され、第一、第二のスパッタリングターゲット1051、1052がスパッタリングされる。
【0008】
第一、第二のスパッタリングターゲット1051、1052は、それぞれリング上の第一、第二の磁石装置1431、1432によって取り囲まれており、第一、第二の磁石装置1431、1432は異なる磁極が互いに向けられ、筒形形状の磁力線が形成され、スパッタ空間118は、その筒型形状の磁力線の中に配置され、スパッタリングによって磁力線の中でスパッタリング粒子が生成される。
【0009】
スパッタリングによって生成されたスパッタリング粒子は、スパッタ槽111aの内部と成膜槽111bの内部とを接続する放出口137から成膜槽111bの内部に放出され、成膜槽111bの内部の放出口137と対面する場所に位置する基板110の表面に到達し、薄膜が成長する。
【0010】
従来の高周波電源を用いた対向ターゲット式スパッタ装置では高周波スパッタ電源113から供給される高周波電流の大部分はマッチングボックス116を経由し第一、第二のカソード電極1461、1462に供給され、プラズマを通ってアノード電極に流れるが、スパッタ槽111a内のアノード電極面積が成膜槽111b内のアノード電極面積より小さいためスパッタ槽111a内で発生したプラズマが成膜槽111b内側に広がり、基板110がプラズマに曝されることによりダメージを受ける虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2002-38263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記従来技術の問題点を解決するために創作されたものであり、プラズマが成膜槽に広がるのを抑制するスパッタリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第一、第二のカソード電極と、前記第一のカソード電極に配置された第一のスパッタリングターゲットと、前記第二のカソード電極に配置された第二のスパッタリングターゲットと、前記第一、第二のスパッタリングターゲットで挟まれたスパッタリング空間の側方位置に配置されたアノード電極と、接地端子と電源端子とを有し、前記接地端子と前記電源端子との間に交流のスパッタ電圧を出力するスパッタ電源と、を有し、前記第一、第二のスパッタリングターゲットは対向配置され、前記第一、第二のカソード電極と接地電位の間には前記スパッタ電圧が印加されて前記第一、第二のスパッタリングターゲットがスパッタリングされ、前記スパッタリング空間を間にして前記アノード電極とは反対側に位置する成膜槽の内部に配置された基板の表面に薄膜が成長されるスパッタリング装置であって、前記アノード電極の前記スパッタリング空間に対面する表面には凹凸が形成されたスパッタリング装置である。
本発明は、前記アノード電極と前記接地端子との間のインピーダンスは、前記成膜槽と前記接地端子との間のインピーダンスよりも小さくされたスパッタリング装置である。
本発明は、前記アノード電極と前記接地端子とを電気的に接続させる接地配線が設けられたスパッタリング装置である。
本発明は、前記接地配線の少なくとも一部には、前記同軸ケーブルの外部導体が用いられたスパッタリング装置である。
本発明は、前記成膜槽に、前記成膜槽から電気的に浮遊した防着板を設けたスパッタリング装置である。
本発明は、前記第一、第二のスパッタリングターゲットが配置されたスパッタ槽の開口に、前記成膜槽から電気的に浮遊したプラズマ制限シールド筒を設けたスパッタリング装置である。
本発明は、前記成膜槽の内部表面を覆い前記成膜槽から電気的に浮遊した防着板が形成されたスパッタリング装置である。
【0014】
なお、入力端子が同軸ケーブルの内部導体によって前記電源端子に接続され、出力端子が前記第一、第二のカソード電極に接続され、前記スパッタ電源の出力インピーダンスと前記スパッタ電源の負荷のインピーダンスとを整合させるマッチングボックスを本発明に設け、前記接地配線の少なくとも一部に、前記同軸ケーブルの外部導体を用いることができる。
【0015】
また、前記第一、第二のカソード電極は高周波シールドカバーの内部に配置され、前記薄膜が成長中の前記基板は前記成膜槽の内部に位置しており、前記成膜槽と前記高周波シールドカバーとは導電性を有し、前記成膜槽は前記高周波シールドカバーを介して前記接地端子に電気的に接続され、前記アノード電極と前記接地端子との間のインピーダンスは、前記成膜槽と前記接地端子との間のインピーダンスよりも小さくされてもよい。
【発明の効果】
【0016】
基板が配置される成膜槽とは反対側に位置するアノード電極とスパッタ電源の接地端子との間のインピーダンスは、成膜槽と接地端子との間のインピーダンスよりも小さいので、スパッタリングの際には成膜槽よりもアノード電極に大きな電流が流れ、プラズマが成膜槽側に広がらない。
【0017】
成膜槽内のアノード電極の表面に電気的絶縁状態のシールドを設置し高周波電流が成膜槽内のアノード電極に流れにくくし、スパッタ槽内のアノード電極に高周波電流が流れ易くするためアノード電極表面に凹凸形状を形成し表面積を広げ、スパッタ槽内のアノード電極に流れる高周波電流を成膜槽を経由せず高周波電源に戻す電気回路を形成することでプラズマが成膜槽側に広がるのを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のスパッタリング装置を説明するための図
図2】同軸ケーブルを説明するための図
図3】(a):アノード電極の平面図 (b):アノード電極の断面図
図4】従来技術のスパッタリング装置を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1の符号2は、本発明の一例のスパッタリング装置を示している。
このスパッタリング装置2は真空槽11と高周波シールドカバー4とを有している。
【0020】
真空槽11はスパッタ槽11aと成膜槽11bとを有しており、スパッタ槽11aは高周波シールドカバー4の中に配置されている。
【0021】
スパッタ槽11aは有底の四角筒体形形状であり、スパッタ槽11aは、四角筒体形形状の底面を構成するアノード電極7と、四角筒体形形状の壁面を構成する平板状の第一、第二のターゲット装置151、152と、同様に四角筒体形形状の壁面を構成する第一、第二の壁部材171、172とを有している。
【0022】
第一、第二のターゲット装置151、152には、スパッタ槽11aを気密にさせる第一、第二の外装部451、452が取り付けられている。
【0023】
第一のターゲット装置151と第二のターゲット装置152とは、スパッタ槽11aの四側面のうちの対面する二面に配置されており、また、第一の壁部材171と第二の壁部材172とは、四側面のうちの他の対面する二面に配置されている。
【0024】
スパッタ槽11aの内部の、第一、第二のターゲット装置151、152で挟まれた領域をスパッタリング空間18とすると、スパッタ槽11aの、スパッタリング空間18を挟んでアノード電極7とは反対側には開口371が設けられており、その開口371には中空筒形形状のプラズマ制限シールド筒47の一端である入射口372が接続されている。
【0025】
プラズマ制限シールド筒47の他端は放出口373にされ、成膜槽11bの内部に配置されており、スパッタリング空間18はスパッタ槽11aの開口371とプラズマ制限シールド筒47の入射口372と、プラズマ制限シールド筒47の中空内部と、放出口373とによって成膜槽11bの内部に接続されている。
【0026】
第一のターゲット装置151は、第一のカソード電極461と、第一のスパッタリングターゲット51と、第一の磁石装置431と、第一のヨーク441とを有しており、同様に、第二のターゲット装置152は、第二のカソード電極462と、第二のスパッタリングターゲット52と、第二の磁石装置432と、第二のヨーク442とを有している。
【0027】
第一、第二のカソード電極461、462は第一、第二の外装部451、452にそれぞれ固定されてスパッタ槽11aが気密にされており、第一のスパッタリングターゲット51は第一のカソード電極461のスパッタリング空間18に向いた面に配置され、第一のカソード電極461の反対側の面には、第一の磁石装置431が配置されている。
【0028】
同様に、第二のスパッタリングターゲット52は第二のカソード電極462のスパッタリング空間18に向いた面に配置され、第二のカソード電極462の反対側の面には、第二の磁石装置432が配置されている。
【0029】
第一、第二の磁石装置431、432はリング形形状にされており、リング形形状の外周側面と内周側面とを除いた二個の底面が、第一、第二のスパッタリングターゲット51、52の表面と平行になるように配置されている。
【0030】
そしてN極とS極とのうち、いずれか一方を第一の磁極とし他方を第二の磁極とすると、第一の磁石装置431の第一のスパッタリングターゲット51に向けられた底面には第一の磁極が設けられ、第二の磁石装置432の第二のスパッタリングターゲット52に向けられた底面には第二の磁極が設けられており、第一、第二の磁石装置431、432は、第一の磁石装置431の第一の磁極と、第二の磁石装置432の第二の磁極とは向かい合って配置されている。
【0031】
第一の磁石装置431の第一の磁極と、第二の磁石装置432の第二の磁極との間には、第一の磁石装置431のリング形形状を一方の底面の外周とし、第二の磁石装置432のリング形形状を他方の底面の外周とする筒形形状の磁力線が形成されている。
【0032】
第一、第二のスパッタリングターゲット51、52は第一の磁石装置431と第二の磁石装置432との間に位置しており、スパッタリング空間18は第一、第二のスパッタリングターゲット51、52に挟まれている。
【0033】
第一の磁石装置431と第二の磁石装置432との間に形成される筒形形状の磁力線は、第一、第二のスパッタリングターゲット51、52とスパッタリング空間18とを貫通するから、スパッタリング空間18の少なくとも一部は筒形形状の磁力線によって囲まれており、スパッタリング空間18にプラズマが形成されたときに、筒形形状の磁力線によってプラズマが閉じ込められ、プラズマがスパッタリング空間18の外部に広がりにくいようになっている。
【0034】
真空槽11の外部にはスパッタ電源13とマッチングボックス16とが配置されている。
マッチングボックス16は入力端子14aと接続端子14bと出力端子38とを有している。マッチングボックス16の内部には、入力端子14aと出力端子38との間を所定の第一のインピーダンスで接続すると共に、入力端子14aと接続端子14bとの間を所定の第二のインピーダンスで接続する電子回路20が設けられている。第一、第二のインピーダンスの大きさは変更できるようにされている。
【0035】
スパッタリング装置2には制御装置が設けられており、電子回路20の第一、第二のインピーダンスの大きさは制御装置によって制御される。
【0036】
電子回路20は、第一、第二の可変コンデンサ191、193と、コイル192とを有している。入力端子14aと出力端子38とは、第一の可変コンデンサ191とコイル192の直列接続回路によって接続されており、この直列接続回路のインピーダンスが第一のインピーダンスになり、また、入力端子14aと接続端子14bとの間は、第二の可変コンデンサ193によって接続されており、第二の可変コンデンサ193のインピーダンスが第二のインピーダンスになっている。
【0037】
スパッタ電源13は、電源端子13aと接地端子13bとを有しており、スパッタ電源13が動作すると、電源端子13aと接地端子13bとの間に負の交流電圧であるスパッタ電圧が出力される。
【0038】
マッチングボックス16内部の第一、第二のインピーダンスの大きさは、スパッタ電源13の出力インピーダンスと、スパッタ電源13に接続される負荷のインピーダンスとが整合するように調整される。
スパッタ電源13とマッチングボックス16とは同軸ケーブル6によって電気的に接続されている。
【0039】
同軸ケーブル6を説明すると、図2を参照し、同軸ケーブル6は柔軟性を有する金属線やより線で構成された内部導体23を有している。内部導体23は「芯線」とも呼ばれており、絶縁性のチューブである内部絶縁チューブ21に挿通されている。内部絶縁チューブ21は、金属細線が筒編みされ、導電性を有する外部導体24に挿通されている。外部導体24は、内部絶縁チューブ21と内部導体23とが挿入された状態で、絶縁性のチューブである外部絶縁チューブ25に挿通されている。
【0040】
内部導体23と外部導体24とは、同軸ケーブル6の両端で、互いに接触しない状態で露出されており、互いに絶縁された状態が維持されている。そして同軸ケーブル6の一端では、露出された内部導体23が電源端子13aに電気的に接続され、露出された外部導体24が接地端子13bに電気的に接続されている。接地端子13bには接続端子14bも電気的に接続されている。
【0041】
同軸ケーブル6の他端では、露出された内部導体23が入力端子14aに電気的に接続され、露出された外部導体24は接地配線8によってアノード電極7に電気的に接続されている。
【0042】
出力端子38は電源配線31によって第一、第二のカソード電極461、462に接続されており、スパッタ電源13が電源端子13aと接地端子13bとの間にスパッタ電圧を出力すると、スパッタ電圧はマッチングボックス16を介して第一、第二のカソード電極461、462に印加される。アノード電極7は接地配線8と同軸ケーブル6とによって接地端子13bに接続されており、スパッタ電圧は接地電位に対して負の交流電圧である。
【0043】
成膜槽11bにはスパッタリングガス供給装置41と、真空排気装置42とが接続されている。
第一、第二のスパッタリングターゲット51、52をスパッタリングする際には、真空排気装置42によって真空槽11の内部(本例では成膜槽11bの内部とスパッタ槽11aの内部)を真空排気して真空雰囲気を形成する。
【0044】
次いで、真空雰囲気を維持しながら成膜槽11bの内部に基板10が搬入され、放出口373と対面する場所で静止される。次いで、スパッタリングガス供給装置41によって真空槽11の内部にスパッタリングガスが導入され、真空槽11の内部が所定圧力のスパッタリングガス雰囲気にされた後、スパッタ電源13が動作し、第一、第二のカソード電極461、462とアノード電極7との間にスパッタ電圧が印加され、磁力線で囲まれたスパッタリング空間18にプラズマが形成され、スパッタリングガスイオンや分子が第一、第二のスパッタリングターゲット51、52に入射し、第一、第二のスパッタリングターゲット51、52がスパッタリングされる。スパッタリングにより、第一、第二のスパッタリングターゲット51、52の表面からスパッタリング粒子が飛び出す。
【0045】
スパッタリング粒子の一部は対向する第一又は第二のスパッタリングターゲット51、52に入射し、また、他の一部は放出口373から放出され、放出口373と対面する場所に位置する基板10の表面に到達する。
【0046】
なお、基板10は放出口373と対面する位置で静止する場合に限定されず、放出口373と対面する場所を通過するように移動しながらスパッタリング粒子が基板10に到達する場合も本発明に含まれる。
【0047】
スパッタリング粒子が静止又は移動中の基板10の表面に到達すると、到達した表面に薄膜が成長する。
アノード電極7は、外部導体24と接地配線8とによって接地端子13bに接続されている。
【0048】
ここで、接地端子13bの電位を接地電位とすると、アノード電極7は接地電位に接続され、スパッタリング空間18に対面しているから、第一、第二のカソード電極461、462にスパッタ電圧が印加されてスパッタリング空間18にプラズマが形成されると、プラズマを通ってアノード電極7と第一、第二のカソード電極461、462との間に電流が流れる。
【0049】
アノード電極7は電圧降下が小さいアルミニウム等の低インピーダンスの材料で構成されており、プラズマが形成され、アノード電極7と第一、第二のカソード電極461、462との間に流れる電流が、外部導体24と接地配線8とを電流経路として流れても、アノード電極7に発生する電圧降下は小さい。
【0050】
成膜槽11bは、アノード電極7とは反対側でスパッタリング空間18に対面しており、高周波シールドカバー4と成膜槽11bとは金属材料で構成され、導電性を有しており、成膜槽11bは高周波シールドカバー4に接触され、高周波シールドカバー4はシールド用配線32によって接地配線8に接続されている。
【0051】
従って、成膜槽11bは接地電位に接続されており、第一、第二のカソード電極461、462に負の交流電圧が印加されると、成膜槽11bと第一、第二のカソード電極461、462との間にも電流が流れる。
【0052】
スパッタ電源13から成膜槽11bに供給される電流は、高周波シールドカバー4と成膜槽11bとを通る電流経路を流れることになるが、高周波シールドカバー4と成膜槽11bとのインピーダンスは、外部導体24と接地配線8とアノード電極7とのインピーダンスよりも大きく、成膜槽11bの電圧降下はアノード電極7よりも大きい。
【0053】
従って、接地電位と第一、第二のカソード電極461、462との間に流れる電流の大部分はアノード電極7を通って流れ、接地配線8が設けられなかったとしても成膜槽11bに流れる電流は少ないから、プラズマは成膜槽11bの内部に広がらず、プラズマによる基板10へのダメージは少なくなる。
【0054】
なお、ここでは高周波シールドカバー4にはシールド用配線32の一端が電気的・機械的に接続されており、高周波シールドカバー4は、シールド用配線32によって接地配線8に接続されているが、別のシールド用配線によって外部導体24に接続するようにしてもよい。
【0055】
また、上記例では成膜槽11bの内部には、成膜槽11bの金属製の壁面が露出されていたが、成膜槽11bの内部表面を電気的に浮遊した防着板で覆い、成膜槽11bをフローティング電位にしておくと、成膜槽11bに電流を流さずに済む。
【0056】
本例では、平面図の図3(a)と断面図の図3(b)に示すように、アノード電極7のスパッタリング空間18に向く底面34には、有底の孔35が複数個形成されており、孔35が形成されておらず、スパッタリング空間18に対面する底面34が平坦な場合に比べて2倍以上の面積を有するようにされている。
【0057】
孔35に替え、又は孔35と共に突条を設けて底面34が平坦な場合に比べて2倍以上の面積を有するようにしてもよく、要するに、底面34に凹凸を設け、平坦な場合に比べて2倍以上の面積を有するようにすればよい。
【0058】
なお第一、第二の壁部材171、172のいずれか若しくは両方に凹凸を設け、第2、第3のアノード電極とされてもよい。その場合アノード電極7(第1のアノード電極)は省略することもできるが、基板に対するプラズマ均一性が損なわれる恐れがある。
【0059】
他方、成膜槽11bの内壁面は平坦であり、スパッタリング空間18と対面する内壁面の表面積とアノード電極7の表面積とはアノード電極7の方が大きくされており、成膜槽11bよりもアノード電極7の方に電流が流れ易いから、第一、第二のスパッタリングターゲット51、52に流れた電流は大部分がアノード電極7と接地配線8とを流れ、成膜槽11bと高周波シールドカバー4とに流れる電流は少ない。このことからも、プラズマが成膜槽11bの内部に広がらず、基板10がプラズマに曝されにくいようになっている。
【0060】
なお、カソード電極461、462とアノード電極7との間や、カソード電極461、462と成膜槽11bとの間には絶縁部材12a1、12a2、12b1、12b2が設けられており、カソード電極461、462とアノード電極7の間やカソード電極461、462と成膜槽11bとの間は絶縁されている。
【0061】
プラズマ制限シールド筒47は導電性を有しておらず、電流が流れないか、又は微少量の電流しか流れないようになっている。スパッタ槽11aの開口371の近傍には成膜槽11bの壁が位置しているが、開口371にはプラズマ制限シールド筒47が設けられており、スパッタ槽11aは成膜槽11bから離間されている。プラズマ制限シールド筒47は導電率が低い材料で構成されており、電流が流れにくいから、アノード電極7に流れる電流が大きい。
【符号の説明】
【0062】
2……スパッタリング装置
4……高周波シールドカバー
1……第一のスパッタリングターゲット
2……第二のスパッタリングターゲット
6……同軸ケーブル
7……アノード電極
8……接地配線
10……基板
11a……スパッタ槽
11b……成膜槽
13……スパッタ電源
13a……電源端子
13b……接地端子
14a……入力端子
14b……接続端子
16……マッチングボックス
18……スパッタリング空間
23……内部導体
24……外部導体
38……出力端子
461……第一のカソード電極
462……第二のカソード電極
図1
図2
図3
図4