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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】光電式エンコーダの信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
G01D5/347 110M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018126818
(22)【出願日】2018-07-03
(65)【公開番号】P2020008312
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100080252
【氏名又は名称】鈴木 征四郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慶顕
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-293949(JP,A)
【文献】特開2017-058138(JP,A)
【文献】特開2015-105849(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0085677(US,A1)
【文献】特開2000-321050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00-21/32
G01D 5/00- 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電式エンコーダの信号処理方法であって、
前記光電式エンコーダは、
2準位符号パターンが測長方向に沿って設けられたスケールと、
前記スケールに沿って相対的に移動可能に設けられ、前記スケール上の前記2準位符号パターンに基づいて前記スケールに対する相対位置を検出する検出部と、を備え、
前記検出部は、
光源と、
前記スケールからの反射光または透過光を受光して明暗イメージを取得する受光検出器と、
前記光源と前記受光検出器との間に配設されたレンズと、を備え、
前記検出部は、
前記受光検出器で取得した前記明暗イメージにおいて、前記レンズの中央領域に対応する結像領域と、前記レンズの中央領域以外に対応する非結像領域と、を区分し、
前記結像領域の光強度を反映した代表値を算出し、
前記非結像領域の光強度を前記代表値で置換した前処理済み明暗イメージを求め
さらに、
前記前処理済み明暗イメージに対してフーリエ変換を行い、
所定周波数以下の長周期成分からなる閾値線を求め、
前記明暗イメージと前記閾値線とに基づいて前記明暗イメージの明暗判定を行う
ことを特徴とする光電式エンコーダの信号処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光電式エンコーダの信号処理方法において、
前記レンズはマイクロレンズアレイであって、
前記明暗イメージのなかで前記結像領域と前記非結像領域とを区分したうえで、さらに、順に、
結像領域に対して、第0結像領域、第1結像領域、第2結像領域、・・・、と区別し、
非結像領域に対して、第0非結像領域、第1非結像領域、第2非結像領域、・・・、と区別し、
第k非結像領域を挟んで隣り合う第k結像領域と第k+1結像領域とで前記代表値Ikを算出し、
前記第k非結像領域の光強度を前記代表値Ikで置換する
ことを特徴とする光電式エンコーダの信号処理方法。
なお、kは、0、1、2、3、・・・である。
【請求項3】
請求項2に記載の光電式エンコーダの信号処理方法において、
さらに、一つの前記第k結像領域を半分に区分けして、第kL結像領域と第kR結像領域とし、
第k非結像領域を挟んで隣り合う第kR結像領域と第(k+1)L結像領域とで前記代表値Ik(RL)を算出し、
前記第k非結像領域の光強度を前記代表値Ik(RL)で置換する
ことを特徴とする光電式エンコーダの信号処理方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の光電式エンコーダの信号処理方法において、
前記代表値は、平均値または中間値である
ことを特徴とする光電式エンコーダの信号処理方法。
【請求項5】
光電式エンコーダの信号処理方法であって、
前記光電式エンコーダは、
2準位符号パターンが測長方向に沿って設けられたスケールと、
前記スケールに沿って相対的に移動可能に設けられ、前記スケール上の前記2準位符号パターンに基づいて前記スケールに対する相対位置を検出する検出部と、を備え、
前記検出部は、
光源と、
前記スケールからの反射光または透過光を受光して明暗イメージを取得する受光検出器と、
前記光源と前記受光検出器との間に配設されたレンズと、を備え、
前記検出部は、
前記受光検出器で取得した前記明暗イメージにおいて、前記レンズの中央領域に対応する結像領域と、前記レンズの中央領域以外に対応する非結像領域と、を区分し、
前記結像領域の光強度を反映した代表値を算出し、
前記非結像領域の光強度を前記代表値で置換した前処理済み明暗イメージを求め
さらに
前記前処理済み明暗イメージに対して長周期の歪みを取り除くフィルタリング処理を行って、
所定周波数以下の長周期成分からなる閾値線を求め、
前記明暗イメージと前記閾値線とに基づいて前記明暗イメージの明暗判定を行う
ことを特徴とする光電式エンコーダの信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光電式エンコーダの信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
位置あるいは変位の測定装置として光電式エンコーダが広く利用されている。
図1に光電式エンコーダ100の主要構成を示す。光電式エンコーダ100は、光源110と、スケールパターン210を有するメインスケール200と、メインスケール200からの反射光または透過光を受光する受光検出器300と、受光検出器300で受光した明暗パターンから位置あるいは変位を求める信号処理部400と、を備える。
【0003】
光源110からの光は、マイクロレンズアレイ115(以下、レンズアレイ115と称することもある)としてメインスケール200に照射される。
光源110、レンズアレイ115および受光検出器300は検出ヘッドとしてユニット化され、検出ヘッドはメインスケール200に対して相対変位可能に設けられる。
レンズアレイ115は、単レンズに比べて、検出領域の幅が広く、かつ、焦点距離を短くできる。したがって、検出ヘッドを小型化できるという利点がある。なお、レンズアレイを構成する一のレンズの径は数ミリメートル程度である。
【0004】
スケールパターン210は、透過型光電式エンコーダであれば、透過部と非透過部とが所定ピッチあるいはランダムピッチで交互に配置されたものである。また、反射型光電式エンコーダであれば、スケールパターンは、反射部と非反射部とが所定ピッチあるいはランダムピッチで交互に配置されたものである。なお、一つの透過部(非透過部)の幅は、数十マイクロメートル程度である。
【0005】
例えば、図1のように、透過部と非透過部とがランダムピッチで交互に配置されたスケールパターン210に光を照射して、その透過光によって形成される明暗パターンを画像として受光検出器300で取得したとする。
受光検出器300で取得する明暗パターンの像を「明暗イメージ」と称することにする。
明暗イメージの光強度分布は、理想的には図2に例示するように、透過部に相当する最大の光強度がすべて同じとなり、非透過部に相当する最低の光強度がすべて同じとなるはずである。このように理想的光強度分布であれば、一つの固定的に設定された閾値によって明部と暗部とを正確に判別できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-58138
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、実際には、光源110の光量分布、レンズの歪み、マイクロレンズアレイ115のレンズの間(境界部分)、など種々の要因により、明暗イメージの光強度分布は図3に例示のように歪む。このように歪んだ明暗イメージに対して固定的に設定された閾値を適用すると、明部と暗部とを正確に判別できない。そこで、フーリエ変換を用いた長周期の歪みを取り除くフィルタリング処理によって閾値を算出することが考えられる。
図3中の破線は、フーリエ変換によって理想的に求めた閾値線の例示である。
【0008】
しかし、単純なフーリエ変換によるフィルタリングだけでは、光強度分布に大きな偏りが含まれている場合に正しく明暗の判別ができない問題がある。
レンズアレイを採用する場合には、レンズとレンズとの境界部分は像が取れない。そのため、明暗イメージには必ず一定のピッチで暗部が並ぶ領域が出現する。いま、明暗イメージのなかで、レンズとレンズとの境界部分で結像しないことによってできる暗部の領域を、「非結像領域」と称することにする。また、明暗イメージのなかで、レンズによって結像することでスケールパターン210の像ができる領域を結像領域と称することにする。
【0009】
一定ピッチで非結像領域が並ぶ明暗イメージにフーリエ変換をかけると、例えば図4に例示のように、大きな振幅でうねる波が表れてしまう。(例えば、この明暗イメージを単一の正弦波で近似することを考えた場合、正弦波は、非結像領域の暗部のところで大きく押し下げられ、その反動で結像領域の明部のところで大きく上がってしまう。)すると、例えば、図4中の丸囲みの箇所では、明部が正しく検出できないことになる。
【0010】
ちなみに、レンズアレイ115のレンズとレンズとの間が非結像領域であることは設計段階で分かっているのであるから、予め非結像領域を明暗イメージから除外した後、結像領域だけを対象にフーリエ変換すればよいのではないかとの指摘は有り得る。
しかし、フーリエ変換を高速化するためには2のn乗個(例えば256個)のデータが必要となる。したがって、単純に非結像領域を予め明暗イメージから除外した後にフーリエ変換を行うことは得策とはいえない。
【0011】
そこで、明暗解析の信頼性向上とともに測定の高速化を図ることができる光電式エンコーダが望まれている。
【0012】
本発明の目的は、光強度分布に歪みがある明暗パターンからでも適切な閾値の設定によって正確に明暗の判別を行うことができる光電式エンコーダの信号処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の光電式エンコーダの信号処理方法は、
光電式エンコーダの信号処理方法であって、
前記光電式エンコーダは、
2準位符号パターンが測長方向に沿って設けられたスケールと、
前記スケールに沿って相対的に移動可能に設けられ、前記スケール上の前記2準位符号パターンに基づいて前記スケールに対する相対位置を検出する検出部と、を備え、
前記検出部は、
光源と、
前記スケールからの反射光または透過光を受光して明暗イメージを取得する受光検出器と、
前記光源と前記受光検出器との間に配設されたレンズと、を備え、
前記検出部は、
前記受光検出器で取得した前記明暗イメージにおいて、前記レンズの中央領域に対応する結像領域と、前記レンズの中央領域以外に対応する非結像領域と、を区分し、
前記結像領域の光強度を反映した代表値を算出し、
前記非結像領域の光強度を前記代表値で置換した前処理済み明暗イメージを求める
ことを特徴とする。
【0014】
本発明では、
前記前処理済み明暗イメージに対してフーリエ変換を行い、
所定周波数以下の長周期成分からなる閾値線を求め、
前記明暗イメージと前記閾値線とに基づいて前記明暗イメージの明暗判定を行う
ことが好ましい。
【0015】
本発明では、
前記レンズはマイクロレンズアレイであって、
前記明暗イメージのなかで前記結像領域と前記非結像領域とを区分したうえで、さらに、順に、
結像領域に対して、第0結像領域、第1結像領域、第2結像領域、・・・、と区別し、
非結像領域に対して、第0非結像領域、第1非結像領域、第2非結像領域、・・・、と区別し、
第k非結像領域を挟んで隣り合う第k結像領域と第k+1結像領域とで前記代表値Ikを算出し、
前記第k非結像領域の光強度を前記代表値Ikで置換する
ことが好ましい。
なお、kは、0,1、2、3、・・・である。
【0016】
本発明では、
さらに、一つの前記第k結像領域を半分に区分けして、第kL結像領域と第kR結像領域とし、
第k非結像領域を挟んで隣り合う第kR結像領域と第(k+1)L結像領域とで前記代表値Ik(RL)を算出し、
前記第k非結像領域の光強度を前記代表値Ik(RL)で置換する
ことが好ましい。
【0017】
本発明では、
前記代表値は、平均値または中間値である
ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】光電式エンコーダの主要構成を示す図である。
図2】理想的な明暗イメージを例示する図である。
図3】歪みをもった明暗イメージを例示する図である。
図4】歪みをもった明暗イメージからフーリエ変換で長周期成分からなる閾値線を求めた様子を例示する図である。
図5】スケールパターンの一例を示す図である。
図6】符号1および符号0を表現するビットの組み合わせを例示した図である。
図7】取得された明暗パターンから絶対位置を算出する手順のフローチャートである。
図8】符号化した結果を例示する図である。
図9】量子化工程の全体フローを示すフローチャートである。
図10】明暗イメージからすべての結像領域を抜き出して、結像領域の光強度の平均値IAを算出する様子を例示する図である。
図11】前処理済み明暗イメージを例示した図である。
図12】前処理済み明暗イメージからフーリエ変換で求めた閾値線を例示した図である。
図13】第2実施形態の量子化工程の手順を示すフローチャートである。
図14】明暗イメージから結像領域と非結像領域とを区分したうえで、左から順に番号を付けて結像領域と非結像領域とを一つずつ区別する様子を模式的に説明するための図である。
図15】非結像領域の隣りの結像領域の光強度に基づいて平均強度IAkを算出する様子を例示する図である。
図16】前処理済み明暗イメージを例示した図である。
図17】前処理済み明暗イメージからフーリエ変換で求めた閾値線を例示した図である。
図18】第3実施形態の量子化工程の手順を示すフローチャートである。
図19】明暗イメージから結像領域と非結像領域とを区分したうえで、左から順に番号を付けて結像領域と非結像領域とを一つずつ区別する様子を模式的に説明するための図である。
図20】非結像領域の隣りの結像領域の光強度に基づいて平均強度IAk(RL)を算出する様子を例示する図である。
図21】明暗イメージを単純に矩形波で近似した図である。
図22】光電式エンコーダが単レンズの場合の結像領域と非結像領域を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明は、光強度分布に歪みがある明暗パターンからでも正確に明暗の判別を行うことができる光電式エンコーダの信号処理方法に関する。
発明のポイントは、"適切な閾値の設定"にあるが、その前に、スケールパターン210の例を説明しておく。
図5は、擬似ランダム符号を利用した透過型光電式アブソリュートエンコーダのスケールパターンである。
このスケールパターンから絶対位置を正確に精度よく取得するには、できる限り多くのビットの明(H)、暗(L)を正確に精度よく検出する必要がある。
【0020】
(スケールパターンの説明)
図5のスケールパターン210は、擬似ランダム符号系列の一種であるM系列符号を使用したABS(Absolute)スケールパターンである。M系列符号パターン内の連続するNコの符号を取り出したとき、M系列符号パターンの一周期内において、このNコの符号パターンと同一のものは一か所にしか出現しない。図5の例では、"1"と"0"とをランダムに配置したABSスケールパターンにおいて、"1","0"の符号をそれぞれ2ビットで表現している。
符号"1"は非透過部と透過部との組み合わせである。一方、符号"0"は2ビットとも透過部であるか、2ビットとも非透過部である。
【0021】
ここで、後の説明のため、透過部を「明部」(または"H")とし、非透過部を「暗部」(または"L")とする。
【0022】
このスケールパターン210では、符号"0"を表現するのに、二種類のパターン(2ビットとも透過部、2ビットとも非透過部)を使用している(図6)。
いま、2ビットとも非透過部であるパターンをBパターンと称し、2ビットとも透過部であるパターンをCパターンと称することにする。符号"0"を表現するにあたっては、BパターンとCパターンとを交互に使用するようにする。つまり、符号"0"が連続する箇所ではBパターンとCパターンとが交互に並ぶようにする。この配列ルール(設計ルール)を適用すると、明部(H)も暗部(L)も最大で3つしか連続しないはずである。
【0023】
もちろん、BパターンとCパターンとを必ず交互にしなければならないというわけではなく、Bパターンだけ、あるいはCパターンだけ、が連続する個数の上限値を何か決めておけばよい。すると、明部(H)だけが連続する個数の上限値、および、暗部(L)だけが連続する個数の上限値が自ずと決まる。
【0024】
なお、本発明は、擬似ランダム符号系列(例えばM系列符号)を使用したABS(Absolute)スケールパターンに限定されず、例えば、インクリメント式のスケールパターンの読み取りにも適用できる。
【0025】
(動作の説明)
受光検出器300で取得された明暗パターン(明暗イメージ)から絶対位置を算出する手順を図7のフローチャートに示す。
この演算処理動作は信号処理部400で実行される。
まず、信号処理部400は、受光検出器300の受光素子アレイからの信号を順次掃引してABSスケール200の透過光パターンを明暗イメージとして取得する(ST110)。そして、取得した明暗イメージを順次量子化していく(ST200)。つまり、取得した明暗イメージの光強度に対して閾値判定を行い、暗部と明部とを区別して2値化する。
この際の閾値設定については後述する。
暗部を"L"とし明部を"H"とする。
【0026】
続いて、符号化を行う(ST310)。
2ビットで1つの符号を表す。
(L、H)の組は符号"1"に変換される。
(L、L)および(H、H)の組は符号"0"に変換される。
図8は、符号化した結果の例示である。
【0027】
このようにして符号化されたデータを用いて参照パターンとの相関演算を行う(ST320)。
相関演算で最も高い相関を示す位置が現在の絶対位置として求められる(ST330)。
なお、参照パターンとしては、例えば、設計ルール通りに設けられたスケールパターンを用いればよい。
【0028】
(量子化工程ST200)
さて、量子化工程ST200のフローチャートを図9に示す。
量子化工程ST200にあたっては、まず、明暗イメージのなかで結像領域と非結像領域とを区分したうえで、結像領域全体の光強度の平均値IAを求める(ST211)。
いま、受光検出器300で取得された明暗イメージの光強度分布が図10のようになったとする。
これまでに説明したように、明暗イメージは、非結像領域と結像領域とが所定のピッチで繰り返すようなパターンとなる。レンズアレイ115のレンズとレンズとの間が非結像領域となり、レンズに対応する領域が結像領域となる。これらは検出ヘッドの設計段階で分かっており、したがって、明暗イメージのなかでどこからどこまでが非結像領域であり、どこからどこまでが結像領域であるかは予め分かっている。
【0029】
そこで、図10に模式的に示すように、明暗イメージからすべての結像領域を抜き出し、結像領域の光強度の平均値IAを算出する(ST211)。「結像領域の光強度の平均値IA」を平均強度IAと称することにする。
【0030】
次に、明暗イメージのなかの非結像領域の光強度をさきほど算出した平均強度IAで置換してしまう(ST212、図11参照)。非結像領域の光強度を平均強度IAで置換したあとの明暗イメージを前処理済み明暗イメージと称することにする。
図11は、前処理済み明暗イメージを例示した図である。
【0031】
あとは、前処理済み明暗イメージに対してフーリエ変換を行って(ST215)、所定周波数以下の長周期の成分から閾値を生成する(ST214)。
図12は、前処理済み明暗イメージからフーリエ変換で求めた閾値線を例示した図である。そして、この閾値を用いて明暗判定を行う(ST215)。(もちろん、この閾値を元の明暗イメージに適用して明暗判定を行う。)
【0032】
本実施形態によれば、非結像領域の暗部が閾値の生成に影響しなくなり、明暗判定のための理想的な閾値を得ることができる。
したがって、正しい明暗判定により得たビット情報に基づき、絶対位置を正確に精度よく求めることができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態を説明する。
第2実施形態は、第1実施形態と基本的に同様であるが、非結像領域の光強度を隣接する結像領域の平均強度で置換する点に特徴を有する。
図13は、第2実施形態の量子化工程の手順を示すフローチャートである。
第2実施形態においては、まず、明暗イメージのなかで結像領域と非結像領域とを区分したうえで、左から順に番号を付けて結像領域と非結像領域とを一つずつ区別する。
これを図14に例示した。
結像領域に対して、左から順に、第0結像領域、第1結像領域、第2結像領域、第3結像領域、・・・と区別する。
同じく、非結像領域に対して、左から順に、第0非結像領域、第1非結像領域、第2非結像領域、第3非結像領域、・・・、と区別する。
【0034】
そのうえで、隣り合う結像領域同士の光強度の平均値を算出する(ST221)。
例えば、第k非結像領域を挟んで隣り合う第k結像領域と第k+1結像領域とで平均強度Ikを算出する(図15参照)。
なお、kは、0,1、2、3、・・・。
【0035】
そして、第k結像領域と第k+1結像領域との間の非結像領域である第k非結像領域の光強度をさきほど算出した平均強度Ikで置換する(ST222、図16参照)。このようにして、図16に例示するような前処理済み明暗イメージが得られる。
【0036】
あとは、前処理済み明暗イメージに対してフーリエ変換を行って(ST223)、所定周波数以下の長周期の成分から閾値を生成する(ST224)。
図17は、閾値線の例示である。そして、この閾値を用いて明暗判定を行う(ST225)。
【0037】
光源からの光量分布にムラがあったりすると、結像領域といっても場所によって光強度のピークやベースの値が異なってくることがある。このような状況で、非結像領域の光強度を全体の平均強度IAで置き換えると、場所によっては閾値線が高すぎたり低すぎたりということがあり得る。
この点、第2実施形態のように非結像領域の光強度を隣接する結像領域の平均強度で置換するようにすれば、光量分布のムラなどを反映した閾値線が得られ、明暗判定のための理想的な閾値を得ることができる。
【0038】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態を説明する。
第3実施形態は、第2実施形態と基本的に同様であるが、非結像領域の光強度を隣接する結像領域の平均強度で置換するにあたって、結像領域をさらに細分化する点に特徴を有する。
図18は、第3実施形態の量子化工程の手順を示すフローチャートである。
第3実施形態においては、明暗イメージのなかで結像領域と非結像領域とを区分したうえで、左から順に番号を付けて結像領域と非結像領域とを一つずつ区別する。
このとき、各結像領域をさらに半分に区分けし、左側を"L"、右側を"R"、とする。
これを図19に例示した。
つまり、結像領域に対して、左から順に、第0L結像領域、第0R結像領域、第1L結像領域、第1R結像領域、第2L結像領域、第2R結像領域、・・・、と区別する。
非結像領域に対して、左から順に、第0非結像領域、第1非結像領域、第2非結像領域、・・・、と区別する。
【0039】
そのうえで、非結像領域を挟んで隣り合う結像領域同士の光強度の平均値を算出する(ST231)。
例えば、第k非結像領域を挟んで隣り合う第kR結像領域と第(k+1)L結像領域とで平均強度IAk(RL)を算出する(図20参照)。
なお、kは、0,1、2、3、・・・。
【0040】
そして、第kR結像領域と第(k+1)L結像領域との間の非結像領域である第k非結像領域の光強度をさきほど算出した平均強度IAk(RL)で置換する(ST232)。
このようにして、前処理済み明暗イメージが得られる。
あとは、前処理済み明暗イメージに対してフーリエ変換を行って(ST233)、所定周波数以下の長周期の成分から閾値を生成する(ST234)。そして、この閾値を用いて明暗判定を行う(ST235)。
【0041】
非結像領域の光強度を隣接する結像領域の平均強度で置換するようにすれば、光量分布のムラなどを反映した閾値線が得られ、明暗判定のための理想的な閾値を得ることができる。このとき、第3実施形態のように結像領域をさらに細分化することにより、光量分布のムラなどをより適確に反映した閾値線が得られる。
【0042】
(変形例1)
上記第2、第3実施形態では、第k非結像領域の光強度を第k非結像領域の隣にある結像領域の光強度を反映した値(平均強度IAK、IAK(RL))で置き換えるとした。
変形例として、第k非結像領域の一つ隣の結像領域だけでなく、2つ隣りや3つ隣りの結像領域まで含めて平均強度を求めるようにしてもよい。メインスケールに汚れがついていたりすると、一の結像領域の一部あるいは全部が暗部(または明部)になることもあり得る。平均強度の算出にあたって、第k非結像領域の周辺にある複数の結像領域を含めることで、特異的に暗いまたは明るいといった結像領域の異常値の影響を小さくできる。
【0043】
(変形例2)
結像領域と非結像領域とを区別するにあたって、上記実施形態ではレンズアレイの設計値に基づくとしたが、明暗イメージを解析して結像領域と非結像領域とを判別するようにしてもよい。
例えば、スケールパターンの設計からいって、暗部が所定数(例えば10個や100個)以上連続するところはレンズ間の非結像領域であると判定してもよい。
【0044】
あるいは、結像領域と非結像領域とを区別するためにフーリエ変換を利用してもよい。所定のピッチで必ず結像領域と非結像領域とが繰り返すパターンになるので、例えば図21に例示するように、明暗イメージを単純に矩形波としてみることができる。
明暗イメージに対してフーリエ変換を行い、低周波成分(例えば1次から3次成分あたり)を抽出すると、図21のような矩形波が得られる。この矩形波に対して、光強度0.5あたり(つまり全体の平均強度)を閾値にして明暗判定すると、結像領域と非結像領域とを区分けすることができる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
上記実施形態では、マイクロレンズアレイのレンズ間が非結像領域となる場合を例にしたが、例えば図22に例示のように、レンズアレイではなく単レンズの場合でも非結像領域は表れる。すなわち、受光検出器300においてレンズの中央領域に対応する領域は結像領域となり、受光検出器300においてレンズの周縁領域に対応する領域は非結像領域となる。
この場合でも、高速フーリエ変換のためには、2のn乗個のデータがほしいので、結像領域だけではなくその周囲の非結像領域まで含めた明暗イメージが必要となる。すると、非結像領域の光強度を置換する本発明の前処理が有効となる。
【0046】
本発明は、非結像領域の光強度を結像領域の光強度を反映した値(代表値)で置き換えることにポイントがある。
結像領域の光強度を反映した値として上記実施形態では平均強度IAを例にしたが、結像領域の光強度を反映した値としては"平均値"に限定されない。
例えば、中間値(中央値)でもよいだろう。
【0047】
上記実施形態では、ABSスケールが透過型であるとしたが、反射型のスケールであってもよい。
上記実施形態では直線型のスケールおよびエンコーダを例示したが、本発明はロータリーエンコーダにも適用できる。
【符号の説明】
【0048】
100…光電式エンコーダ、
110…光源、115…レンズ、
200…メインスケール、210…スケールパターン、
300…受光検出器、
400…信号処理部。
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